説明

アンカー

【課題】引抜き力に対して高い耐力を発揮することができるアンカーを提供する。
【解決手段】コンクリート5中に埋め込まれる主軸部3の長手方向の中間部から上端部に至るいずれかの位置において、主軸部を挟む両側に、側方ないしは斜め下方に張り出してコンクリート5中に埋込み状態となる側方張り出し筋6…が、主軸部3と一体的に備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物のコンクリート基礎などに用いられるアンカーに関する。
【背景技術】
【0002】
住宅用等の建物のコンクリート布基礎に用いられる従来のアンカーボルトとして、図3(イ)に示すように、基礎コンクリート55中に埋め込まれる主軸部53が備えられ、該主軸部53と周囲コンクリート55との付着力によって引抜きに耐えるようにしたものがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のようなアンカーボルト51では、図3(ロ)に示すように、引抜き力Fによって基礎52に強い曲げがかかると、基礎52の天面側のコンクリート55にクラック56が入り、主軸部53とコンクリート55との付着が一部切られて、引抜き耐力が低下してしまうことがあるという問題がある。
【0004】
本発明は、上記のような問題点に鑑み、引抜き力に対して高い耐力を発揮することができるアンカーを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は、コンクリート中に埋め込まれる主軸部の長手方向の中間部から上端部に至るいずれかの位置において、主軸部を挟む両側に、側方ないしは斜め下方に張り出してコンクリート中に埋込み状態となる側方張り出し筋が、主軸部と一体的に備えられていることを特徴とするアンカーによって解決される。
【0006】
このアンカーでは、引抜き力によってコンクリートの表面側に引張りの曲げ応力を生じると、主軸部の両側に該主軸部と一体的に備えられている側方張り出し筋が、クラックの入りを抑制ないしは防止するように働き、コンクリートと主軸部の付着切れを抑制ないしは防止して、引抜き力に対して高い耐力を発揮することができる。
【0007】
しかも、側方張り出し筋は、主軸部の長手方向の中間部から上端部に至るいずれかの位置に備えられているので、クラックの入り及びコンクリートと主軸部の付着切れを効果的に抑制ないしは防止することができる。
【0008】
加えて、側方張り出し筋は主軸部に一体に備えられているので、施工においては、このアンカーをセットしてコンクリートを打ち込むだけでよく、施工を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、以上のとおりのものであるから、引抜き力による主軸部とコンクリートとの付着の低下を防止して、引抜き力に対して高い耐力を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明の実施最良形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1に示す第1実施形態のアンカーボルト1は、コンクリートの布基礎などの基礎梁2に用いられるもので、3は主軸部、4はジョイント用のボルト部、5…は側方張り出し筋であり、図1(イ)に示すように、側方張り出し筋6…は、主軸部3の長手方向の中間部から上端部に至る範囲において上下方向に複数段備えられ、各段において、コンクリート基礎梁2の延びる両方向に向け、斜め下方に張り出して備えられている。なお、最上段の両張り出し筋6は、コンクリート5のかぶり厚さを確保できる範囲でできるだけ上方位置に備えられているのがよい。
【0012】
そして、本実施形態における側方張り出し筋6は、鉄筋棒の基端部6aを屈曲させてそこを主軸部3への取付け部とし、該取付け部6aが主軸部3に溶接などで一体的に取り付けられて、張り出し筋本体部6bが斜め下方に張り出すように備えられている。
【0013】
上記のアンカーボルト1では、図1(ロ)に示すように、主軸部3と側方張り出し筋6…をコンクリート5中に埋込み状態にした基礎梁2のアンカーボルト1に引抜き力Fが作用し、基礎梁2に曲げがかかり、基礎梁2の上面側のコンクリート部5に引張りの曲げ応力が作用すると、主軸部3と一体化し該コンクリート部5に対して付着状態となって斜め下方に張り出している側方張り出し筋6…が、該曲げ応力に対抗して主軸部3と周囲コンクリート5との間にクラックが入るのを抑制ないしは防止するように効果的に働き、コンクリート5と主軸部3の付着切れを抑制ないしは防止して、引抜き力Fに対して高い耐力を発揮することができる。
【0014】
特に、側方張り出し筋6…は、斜め下方に張り出しているので、引抜き力によって基礎梁コンクリートの上面側に作用する引張りの曲げ応力の方向に沿うことができて、主軸部3とコンクリート5との間へのクラックの入りを効果的に抑制ないしは防止することができる。
【0015】
また、上記のアンカーボルト1によれば、側方張り出し筋6…は主軸部3と一体的に備えられているので、型枠内にアンカーボルト1をセットしてコンクリートを打ち込むだけで上記のような効果を得られ、施工を容易に行うことができる。
【0016】
図2に示す第2実施形態のアンカーボルト1は、側方張り出し筋6…が曲線状をして斜め下方に張り出したもので、側方張り出し筋6の基端側から先端側に至る多くの部分が、コンクリート5側の引張り応力に効果的に対抗することができるようになり、クラックの発生をより一層効果的に防ぐことができる。
【0017】
なお、各段においてそれぞれ別の側方張り出し筋を各方向に張り出させるようにしてもよいし、両側方一体ものの円弧状の側方張り出し筋の中央部を主軸部3に溶接等で取り付けたものであってもよい。第1実施形態のアンカーボルト1についても、山形に屈折させた両側方一体ものの側方張り出し筋の中央屈折部を主軸部3に溶接等で取り付けたものであってもよい。
【0018】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、布基礎などのコンクリート基礎梁に用いられるアンカーを対象とした場合を示しているが、コンクリート基礎梁に限らず、コンクリート構造物のコンクリート梁の下面側に備えられるアンカーとして構成されていてもよいし、また、コンクリートスラブの上面側や下面側に備えられるアンカーとして構成されていてもよい。コンクリートスラブに用いる場合は、側方張り出し筋を三方以上に張り出させるとより効果的であり、側方張り出し筋として傘状などの面状筋が用いられてもよい。
【0019】
即ち、本発明でいう「長手方向の中間部から上端部」の文言や「側方ないしは斜め下方に」の文言における「上」「下」の語は、主軸部においてボルト部4あるいはナット部等の他の部材とのジョイント部が備えられている側を「上」とした場合の概念であり、そのため、例えば、アンカーのジョイント部側を下にして用いる場合は、上を下、下を上と考えて解釈しなければならない。
【0020】
また、上記の実施形態では側方張り出し筋が斜め下方に張り出している場合を示したが、側方、即ち真横に張り出していてもよいし、斜め下方と側方が組み合わされて備えられていてもよい。また、主軸部の長手方向に沿って複数の側方張り出し筋が備えられている場合には、主軸部の上端側の側方張り出し筋の傾斜小さくし、あるいは、なくし、主軸部の下端側の側方張り出し筋の傾斜を大きくする構成となされていてもよく、その場合には、各側方張り出し筋が、コンクリートに生じる引張りの曲げ応力をより的確にとらえて対抗することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図(イ)は第1実施形態のアンカーを示す正面図、図(ロ)はその使用状態を示す正面図である。
【図2】図(イ)は第2実施形態のアンカーを示す正面図、図(ロ)はその使用状態を示す正面図である。
【図3】図(イ)は従来のアンカーを示す正面図、図(ロ)はその使用状態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0022】
1…アンカーボルト(アンカー)
3…主軸部
6…側方張り出し筋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート中に埋め込まれる主軸部の長手方向の中間部から上端部に至るいずれかの位置において、主軸部を挟む両側に、側方ないしは斜め下方に張り出してコンクリート中に埋込み状態となる側方張り出し筋が、主軸部と一体的に備えられていることを特徴とするアンカー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−97393(P2006−97393A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−286171(P2004−286171)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】