説明

アンテナ装置、及び無線通信装置

【課題】指向性を2次元的に制御可能な小型のアンテナ装置及びこれを搭載した無線通信装置を提供すること。
【解決手段】略矩形のパッチアンテナと、前記パッチアンテナの各辺の周囲にそれぞれ配置された複数の寄生素子と、前記各寄生素子の電気長を切り替える切替手段と、を備え、前記切替手段は、前記寄生素子が反射器として機能するように前記電気長を切り替えることが可能である、アンテナ装置が提供される。また、これを搭載した無線通信装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置、及び無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体通信用基地局に用いられるアンテナ装置では、通信容量の増大のためMIMO(Multiple Input Multiple Output)機能や指向性可変機能が求められている。一般にアンテナ装置の指向性可変は複数のアンテナを配置して行うが、アンテナの回路構成が複雑になる。
【0003】
また、移動体通信用基地局は小型化に対する要求があり、アンテナ装置の小型化も望まれている。このアンテナ装置の小型化と指向性可変機能を有するアンテナ装置として、例えば、特許文献1に提案されたものがある。このアンテナ装置では、λ/4短絡型マイクロストリップアンテナの両端部に寄生素子を配置し、寄生素子に接続したスイッチのON/OFFにより指向性を可変している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−219574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記λ/4短絡型マイクロストリップアンテナでは、給電素子の両端部に配置した寄生素子を用いて指向性を可変させているが、指向性の可変方向は一次元方向に限られており、この点で改善の余地があった。また、このλ/4短絡型マイクロストリップアンテナでは、λ/4短絡型マイクロストリップアンテナ及び寄生素子が立体構成であるため、小型化の点で改善の余地があった。
【0006】
本発明は上記に鑑み、指向性の可変方向を改善し、構成の小型化を実現するアンテナ装置、及びこれを搭載した無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある観点によれば、略矩形のパッチアンテナと、前記パッチアンテナの各辺の周囲にそれぞれ配置された複数の寄生素子と、前記各寄生素子の電気長を切り替える切替手段と、を備え、前記切替手段は、前記寄生素子が反射器として機能するように前記電気長を切り替えることが可能である、アンテナ装置が提供される。例えば、パッチアンテナの一辺に略平行な寄生素子の電気長を切り替え、反射器として動作させることで、その寄生素子と反対方向に指向性を向けることができる。逆に、その寄生素子を導波器として機能させることで、その寄生素子の方向に指向性を向けることができる。上記のアンテナ装置は、パッチアンテナの各辺の周囲に寄生素子を配置しているため、少なくとも4つの寄生素子が存在する。そのため、少なくとも4つの寄生素子を同時に導波器又は反射器として動作させるように制御することで、2次元的に指向性を制御することが可能になる。
【0008】
また、前記切替手段は、前記寄生素子が導波器として機能するように前記電気長を切り替えることが可能であるように構成されていてもよい。かかる構成のように、寄生素子の電気長を適切に制御することにより、反射器としても、導波器としても機能するように構成することが可能になる。
【0009】
また、前記各寄生素子は、前記パッチアンテナの一辺と略平行になる1本の長辺と、当該長辺の端部に一端が接続され、かつ、他端がグラウンド導体に接続される2本の短辺とで構成される金属ワイヤにより形成されていてもよい。金属ワイヤにより構成することで、アンテナ装置の小型化が可能になる。
【0010】
また、前記切替手段は、前記長辺の中央付近に設けられ、オフの状態で当該長辺を分断する第1スイッチと、前記2本の短辺にそれぞれ設けられ、オフの状態で当該短辺を分断する2つの第2スイッチと、を含むように構成されていてもよい。さらに、前記第1及び第2スイッチが全てオンの状態で前記金属ワイヤの長さが前記パッチアンテナの共振周波数における波長の1/2の長さより長くなり、前記第1スイッチがオン、かつ、前記第2スイッチがオフの状態で前記金属ワイヤの長さが前記パッチアンテナの共振周波数における波長の1/2の長さより短くなるように構成されていてもよい。かかる構成によれば、スイッチの切り替えにより、寄生素子を導波器及び反射器として機能させることが容易に可能になる。
【0011】
また、前記各寄生素子は、前記パッチアンテナの一辺と略平行な方向を長手方向とし、前記パッチアンテナが設置される誘電体基板上に積層された導体薄板により形成されていてもよい。この場合、前記導体薄板の中央付近には、前記切替手段が形成される。かかる構成により、アンテナ装置の高さをより低くすることが可能になり、更なる小型化に寄与する。
【0012】
また、前記各寄生素子は、前記パッチアンテナの一辺と略平行な方向を長手方向とする第1の導体薄板と、前記第1の導体薄板よりも前記パッチアンテナの一辺から遠ざかった位置に配置され、前記パッチアンテナの一辺と略平行な方向を長手方向とする第2の導体薄板と、により形成されていてもよい。この場合、前記導体薄板の中央付近には、前記切替手段が形成される。かかる構成により、アンテナ装置の高さをより低くすることが可能になり、更なる小型化に寄与する。
【0013】
なお、前記切替手段は、例えば、オフの状態で前記導体薄板を分断するスイッチである。また、前記スイッチがオンの状態で前記導体薄板の長さが前記パッチアンテナの共振周波数における波長の1/2の長さより長くなるように設定される。かかる構成により、スイッチのオン/オフを切り替えることで、寄生素子の反射器としての機能を容易にオン/オフすることが可能になる。
【0014】
また、前記各寄生素子は、2本のL字型金属ワイヤにより形成されていてもよい。さらに、前記L字型金属ワイヤの一端は、前記パッチアンテナが設置される誘電体基板を貫通して、当該誘電体基板の裏面に設けられた前記切替手段に接続されるように構成されていてもよい。かかる構成によると、切替手段が誘電体基板の背面に設けられるため、アンテナ装置の高さを更に低減することが可能になり、更なる小型化に寄与する。
【0015】
また、前記切替手段は、オンの状態で前記2本のL字型金属ワイヤを接続し、オフの状態で前記2本のL字型金属ワイヤを分断するスイッチであってもよい。また、前記2本のL字型金属ワイヤの合計長さは、前記パッチアンテナの共振周波数における波長の1/2の長さより長くなるように設定される。かかる構成により、スイッチのオン/オフにより容易に寄生素子を反射器として機能させることが可能になる。
【0016】
また、本発明の他の観点によれば、上記のアンテナ装置と、前記切替手段を制御する制御手段とを備える、無線通信装置が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、指向性を2次元方向に可変可能とし、構成の小型化を可能にするアンテナ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】本発明の第1実施形態に係るアンテナ装置の構成を示す図である。
【図1B】本発明の第1実施形態に係る寄生素子の構成を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る寄生素子のスイッチの切り替え動作の一例を示す図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るアンテナ装置の放射特性を可変した例を示すグラフである。
【図4A】本発明の第1実施形態に係るアンテナ装置における寄生素子のスイッチの切り替え動作例を示す図である。
【図4B】本発明の第1実施形態に係るアンテナ装置における寄生素子のスイッチの切り替え動作に伴う指向性の可変状態を示す図である。
【図5A】本発明の第1実施形態に係るアンテナ装置における寄生素子のスイッチの切り替え動作例を示す図である。
【図5B】本発明の第1実施形態に係るアンテナ装置における寄生素子のスイッチの切り替え動作に伴う指向性の可変状態を示す図である。
【図6A】本発明の第1実施形態に係るアンテナ装置における寄生素子のスイッチの他の切り替え動作例を示す図である。
【図6B】本発明の第1実施形態に係るアンテナ装置における寄生素子のスイッチの他の切り替え動作に伴う指向性の可変状態を示す図である。
【図7A】本発明の第2実施形態に係るアンテナ装置の構成を示す斜視図を示す図である。
【図7B】本発明の第2実施形態に係る寄生素子の構成を示す図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係るアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
【図9A】本発明の第3実施形態に係るアンテナ装置の構成を示す平面図である。
【図9B】本発明の第3実施形態に係るアンテナ装置の領域Aを拡大した図である。
【図10A】本発明の第3実施形態に係るアンテナ装置における寄生素子のスイッチの切り替え動作例を示す図である。
【図10B】本発明の第3実施形態に係るアンテナ装置における寄生素子のスイッチの切り替え動作例を示す図である。
【図11】本発明の第3実施形態に係る切り替え動作に対応する指向性の可変状態を示すグラフである。
【図12A】本発明の第4実施形態に係るアンテナ装置の構成を示した図である。
【図12B】本発明の第4実施形態に係るアンテナ装置の構成を示した図である。
【図12C】本発明の第4実施形態に係るアンテナ装置の構成を示した図である。
【図13A】本発明の第4実施形態に係るスイッチの構成を示した図である。
【図13B】本発明の第4実施形態に係るスイッチの構成を示した図である。
【図14】本発明の第4実施形態に係るアンテナ装置の動作例を示した図である。
【図15A】本発明の第4実施形態に係るアンテナ装置の動作例を示した図である。
【図15B】本発明の第4実施形態に係るアンテナ装置の放射特性を示した図である。
【図16A】本発明の第4実施形態に係るアンテナ装置の動作例を示した図である。
【図16B】本発明の第4実施形態に係るアンテナ装置の放射特性を示した図である。
【図17A】本発明の第4実施形態に係るアンテナ装置の動作例を示した図である。
【図17B】本発明の第4実施形態に係るアンテナ装置の放射特性を示した図である。
【図18】本発明の第4実施形態に係るアンテナ装置の動作例を示した図である。
【図19A】本発明の第4実施形態に係るアンテナ装置の動作例を示した図である。
【図19B】本発明の第4実施形態に係るアンテナ装置の放射特性を示した図である。
【図20A】本発明の第4実施形態に係るアンテナ装置の動作例を示した図である。
【図20B】本発明の第4実施形態に係るアンテナ装置の放射特性を示した図である。
【図21A】本発明の第4実施形態に係るアンテナ装置の動作例を示した図である。
【図21B】本発明の第4実施形態に係るアンテナ装置の放射特性を示した図である。
【図22】本発明の第4実施形態に係るアンテナ装置の一変形例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0020】
(第1実施形態:金属ワイヤで寄生素子を形成する構成)
以下、本発明の第1実施形態に係るアンテナ装置100について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
<構成>
図1Aは、第1実施形態に係るアンテナ装置100の構成を示す斜視図である。図1Aに示すように、アンテナ装置100は、グラウンド導体101と、パッチアンテナ102と、寄生素子103、104、105、106(無給電素子)と、を備える。例えば、寄生素子103、104、105、106は、金属ワイヤにより構成される。なお、金属ワイヤの材質としては、例えば、鉄やアルミ等の導体が用いられる。
【0022】
パッチアンテナ102は、矩形状であり、グラウンド導体101上にスペーサ(非図示)を介して配置されている。また、パッチアンテナ102には、検波方向が規定される位置に給電点107が設けられる。さらに、パッチアンテナ102は、給電点107を介してグラウンド導体101と接続される。グラウンド導体101及びパッチアンテナ102のサイズは任意に決めることができる。例えば、グラウンド導体101を1辺が50mmの正方形とし、パッチアンテナ102を1辺が24.4mmの正方形とすることができる。
【0023】
寄生素子103、104、105、106は、パッチアンテナ102の各辺の周囲に配置され、それぞれグラウンド導体101上に設けられる。また、寄生素子103、104、105、106には、それぞれ、略中央部及び両端部の3カ所にスイッチが設けられている。一例として、寄生素子103に設けられたスイッチの構成を図1Bに示した。図1Bに示すように、寄生素子103には、3ヶ所にスイッチSW1、SW2、SW3が設けられている。これらのスイッチSW1、SW2、SW3をON/OFFすることにより、寄生素子103を構成する金属ワイヤに設けられた間隙が短絡/開放される。なお、寄生素子104、105、106についても、同様のスイッチが設けられている。また、スイッチSW1、SW2、SW3は、機械的な接点を有するスイッチであってもよいし、或いは、機械的な接点を有しない半導体素子等を利用したスイッチであってもよい。
【0024】
ところで、寄生素子103、104、105、106の長さ(図1Aにおける長辺LA+短辺LD×2)は、例えば、パッチアンテナ102の共振周波数における波長λの1/2(即ちλ/2)程度に設定される。また、図1Aに示すように、寄生素子103、104、105、106は、それぞれ、グラウンド導体101の各辺から距離LBの位置に長辺部分が配置され、グラウンド導体101の各辺から距離LCの位置に短辺部分が配置される。例えば、長辺LAは47.2mmに設定され、短辺LDは2.8mmに設定され、距離LBは5.6mmに設定され、距離LCは2.8mmに設定されうる。もちろん、寄生素子103、104、105、106の寸法や配置はこれに限定されるものではなく、パッチアンテナ102の共振周波数やグラウンド導体101の大きさ等に応じて適宜変更可能である。
【0025】
さて、本実施形態に係るアンテナ装置100は、寄生素子103、104、105、106にそれぞれ設けられているスイッチSW1、SW2、SW3のON/OFFを制御することにより、指向性を切り替えることができる。寄生素子103、104、105、106は、スイッチSW1、SW2、SW3のON/OFFの切り替えに応じて、導波器として機能する状態、反射器として機能する状態、或いは、導波器及び反射器として機能しない状態に変化する。そのため、寄生素子103、104、105、106のうち、導波器として機能するものと、反射器として機能するものと、導波器及び反射器として機能しないものとの組み合わせを変更することにより、指向性を切り替えることが可能になるのである。
【0026】
ここで、スイッチSW1、SW2、SW3のON/OFF状態と寄生素子103、104、105、106の機能との関係について、図2を参照しながら説明する。図2は、寄生素子103、104、105、106の機能とスイッチSW1、SW2、SW3のON/OFF状態との関係を示す表である。
【0027】
スイッチSW1、SW2、SW3が全てOFFの場合、寄生素子103、104、105、106を構成する金属ワイヤは分断されるため、導波器又は反射器としては機能しない(None)。スイッチSW1がON、スイッチSW2、SW3がOFFの場合(即ち、金属ワイヤの中央部を接続し、両端部を開放した場合)、金属ワイヤの電気長は、パッチアンテナ102の共振周波数における波長λの1/2(即ち、λ/2)より若干短くなる。そのため、寄生素子103、104、105、106は、導波器(Director)として機能する。一方、スイッチSW1、SW2、SW3が全てONの場合、金属ワイヤの電気長はλ/2より若干長くなる。そのため、寄生素子103、104、105、106は、反射器(Reflector)として機能する。
【0028】
以上、本実施形態に係るアンテナ装置100の構成について説明した。
【0029】
<動作>
次に、図3〜図6を参照しながら、本実施形態に係るアンテナ装置100の動作について説明する。なお、本実施形態に係るアンテナ装置100は、スイッチSW1、SW2、SW3を制御して指向性を切り替える際、例えば、対向配置された一対の寄生素子103、105を組にして制御し、対向配置された一対の寄生素子104、106を組にして制御する。例えば、アンテナ装置100は、寄生素子104を導波器、寄生素子106を反射器として動作させたり、或いは、寄生素子104を反射器、寄生素子106を導波器として動作させたりする。寄生素子103、105の組についても同様である。
【0030】
(放射特性)
まず、図3を参照しながら、寄生素子103、104、105、106の機能と放射特性との関係について説明する。図3は、寄生素子103、104、105、106の制御に伴う放射特性の変化を示したグラフである。
【0031】
図3に示した実線(none)は、寄生素子103、104、105、106のスイッチSW1、SW2、SW3を全てOFFとした場合に得られる放射特性を示している。つまり、この実線は、寄生素子103、104、105、106がいずれも導波器及び反射器として機能していない場合の放射特性を示している。
【0032】
一方、図3に示した点線(tilt)は、寄生素子103に設けたスイッチSW1、SW2、SW3を全てONとし、寄生素子105に設けたスイッチSW1をON、スイッチSW2、SW3をOFFとした場合の放射特性を示している。つまり、この点線(tilt)は、寄生素子103を反射器として動作させ、寄生素子105を導波器として動作させた場合の放射特性を示している。
【0033】
図3から分かるように、給電点107の位置から見てy方向に配置された寄生素子105を導波器として動作させ、−y方向に配置された寄生素子103を反射器として動作させることでy方向に寄った方向へと指向性が向く。給電点107の位置から見てy方向に配置された寄生素子105を反射器として動作させ、−y方向に配置された寄生素子103を導波器として動作させることで−y方向に寄った向きへと指向性が向く。
【0034】
また、寄生素子104、106の機能を制御することにより、x方向(又は−x方向)に寄った向きへと指向性を向かせることも可能である(後述する図5A〜図6Bを参照)。例えば、給電点107の位置から見てx方向に配置された寄生素子104を導波器として動作させ、−x方向に配置された寄生素子106を反射器として動作させることでx方向に寄った向きへと指向性が向く。同様に、給電点107の位置から見てx方向に配置された寄生素子104を反射器として動作させ、−x方向に配置された寄生素子106を導波器として動作させることで−x方向に寄った向きへと指向性が向く。
【0035】
ここで、図4A〜図6Bを参照しながら、x方向又はーx方向に寄った向きへと指向性を向かせる場合の制御方法、及び具体的な指向性の変化について具体例を示す。
【0036】
まず、図4A及び図4Bを参照する。
【0037】
図4Aは、寄生素子103、104、105、106の状態を示した図である。図4Aの場合、寄生素子103、104、105、106は、いずれも、反射器としても導波器としても機能しない状態に制御されている。つまり、寄生素子103、104、105、106は、いずれもスイッチSW1、SW2、SW3が全てOFFの状態である。なお、図4Aにおいて、スイッチSW1、SW2、SW3をそれぞれ丸で表した。また、白丸はOFFの状態、黒丸はONの状態を表す。図4Aのように寄生素子103、104、105、106の機能を制御した場合、アンテナ装置100の放射特性は、図4Bに示すようにx−y面内の方向に関して放射特性の偏りがないものとなる。つまり、指向性はz方向を向く。
【0038】
次に、図5A及び図5Bを参照する。
【0039】
図5Aは、寄生素子103、104、105、106の状態を示した図である。図5Aの場合、寄生素子103、105は、いずれも、反射器としても導波器としても機能しない状態に制御されている。一方、寄生素子104、106は、それぞれ反射器、導波器として機能する状態に制御されている。なお、図5Aにおいて、スイッチSW1、SW2、SW3をそれぞれ丸で表した。また、白丸はOFFの状態、黒丸はONの状態を表す。図5Aのように寄生素子103、104、105、106の機能を制御した場合、アンテナ装置100の放射特性は、図5Bに示すように、−x方向に寄った向きへと指向性が向いたものとなる。
【0040】
次に、図6A及び図6Bを参照する。
【0041】
図6Aは、寄生素子103、104、105、106の状態を示した図である。図6Aの場合、寄生素子103、105は、いずれも、反射器としても導波器としても機能しない状態に制御されている。一方、寄生素子104、106は、それぞれ導波器、反射器として機能する状態に制御されている。なお、図6Aにおいて、スイッチSW1、SW2、SW3をそれぞれ丸で表した。また、白丸はOFFの状態、黒丸はONの状態を表す。図6Aのように寄生素子103、104、105、106の機能を制御した場合、アンテナ装置100の放射特性は、図6Bに示すように、x方向に寄った向きへと指向性が向いたものとなる。
【0042】
以上、寄生素子103、104、105、106の機能と指向性との関係について具体例を挙げて説明した。ここでは、図4A〜図6Bを参照しながら、寄生素子104、106の機能を制御してy方向又は−y方向に放射特性を偏らせる方法について考えた。また、寄生素子103、105の機能を制御してx方向又は−x方向に放射特性を偏らせる方法についても図3を参照しながら既に述べた。これらの制御方法を組み合わせ、寄生素子103、104、105、106の機能を同時に制御すると、x−y平面内で自由に放射特性の偏りを調整することが可能になり、2次元的に指向性を制御することができるようになる。
【0043】
以上、本発明の第1実施形態に係るアンテナ装置100の構成及び動作について説明した。上記のように、アンテナ装置100は、パッチアンテナ102の周囲に配置された寄生素子103、104、105、106の機能(導波器/反射器)を制御することで指向性を切り替える構成を有する。特に、y方向に沿って対向配置された寄生素子103、105と、x方向に沿って対向配置された寄生素子104、106とを適切に制御することにより、指向性の可変方向は2次元的に切り替えることが可能である。
【0044】
また、金属ワイヤ及びスイッチSW1、SW2、SW3で寄生素子103、104、105、106を構成しているため、高さが低く小型のアンテナ装置100を実現することが可能である。そのため、このアンテナ装置100の構成を採用することにより、2次元的な指向性の切り替えが可能な小型の移動体通信用基地局を実現することが可能になる。
【0045】
(第2実施形態:積層した金属材料の薄板で寄生素子を形成する構成)
次に、本発明の第2実施形態に係るアンテナ装置200について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0046】
<構成>
図7Aは、本実施形態に係るアンテナ装置200の構成を示す斜視図である。図7Aに示すように、アンテナ装置200は、グラウンド導体201と、パッチアンテナ202と、寄生素子203、204、205、206(無給電素子)と、を備える。なお、第1実施形態に係る寄生素子103、104、105、106は金属ワイヤで構成されていたが、本実施形態に係る寄生素子203、204、205、206は、グラウンド導体201(誘電体基板)上に金属材料の薄板を複数枚積層する形で形成されている。また、金属材料としては、例えば、鉄やアルミ等の導体を用いることができる。
【0047】
パッチアンテナ202は、矩形状であり、グラウンド導体201上にスペーサ(非図示)を介して配置されている。また、パッチアンテナ202には、検波方向が規定される位置に給電点207が設けられる。さらに、パッチアンテナ202は、給電点207を介してグラウンド導体201と接続される。グラウンド導体201及びパッチアンテナ202のサイズは任意に決めることができる。例えば、グラウンド導体201を1辺が50mmの正方形とし、パッチアンテナ202を1辺が24.4mmの正方形とし、グラウンド導体201の厚みLHは0.8mmとすることができる。
【0048】
寄生素子203、204、205、206は、パッチアンテナ202の各辺の周囲に配置される。また、寄生素子203、204、205、206には、それぞれ、略中央部及び両端部の3カ所にスイッチが設けられている。一例として、寄生素子203に設けられたスイッチの構成を図7Bに示した。図7Bに示すように、寄生素子203には、3ヶ所にスイッチSW1、SW2、SW3が設けられている。これらのスイッチSW1、SW2、SW3をON/OFFすることにより、寄生素子203の電気長が切り替えられる。例えば、スイッチSW1をOFFにすると、寄生素子203は、中央部分で分断される。
【0049】
なお、寄生素子204、205、206についても、同様のスイッチが設けられている。また、スイッチSW1、SW2、SW3は、機械的な接点を有するスイッチであってもよいし、機械的な接点を有しない半導体素子等を利用したスイッチであってもよい。
【0050】
ところで、寄生素子203、204、205、206の長さLEは、パッチアンテナ202の共振周波数における波長λの1/2(即ち、λ/2)程度に設定される。例えば、長さLEは30mmに設定され、幅LFは3mmに設定され、厚みLGは1.6mに設定される。もちろん、寄生素子203、204、205、206の寸法や配置はこれに限定されるものではなく、パッチアンテナ102の共振周波数やグラウンド導体201の大きさ等に応じて適宜変更可能である。
【0051】
さて、本実施形態に係るアンテナ装置200は、寄生素子203、204、205、206にそれぞれ設けられているスイッチSW1、SW2、SW3のON/OFFを制御することにより、指向性を切り替えることができる。寄生素子203、204、205、206は、スイッチSW1、SW2、SW3のON/OFFの切り替えに応じて、導波器として機能する状態、反射器として機能する状態、或いは、導波器及び反射器として機能しない状態に変化する。そのため、寄生素子203、204、205、206のうち、導波器として機能するものと、反射器として機能するものと、導波器及び反射器として機能しないものとの組み合わせを変更することにより、指向性を切り替えることが可能になるのである。
【0052】
例えば、スイッチSW1、SW2、SW3が全てOFFの場合、素子は分断された状態になり、導波器又は反射器として機能しない。また、スイッチSW1がONでスイッチSW2、SW3がOFFの場合、素子の中央部が接続され、両端部が開放された状態になり、素子の電気長はλ/2より若干短くなる。そのため、この状態における素子は、導波器(Director)として機能する。また、スイッチSW1、SW2、SW3が全てONの場合、素子の電気長はλ/2より若干長くなる。そのため、この状態における素子は、反射器(Reflector)として機能する。
【0053】
以上、本実施形態に係るアンテナ装置200の構成について説明した。上記の通り、本実施形態に係る寄生素子203、204、205、206も、スイッチSW1、SW2、SW3の制御によって導波器や反射器として機能するものに切り替えられる。そのため、第1実施形態と同様に、スイッチSW1、SW2、SW3の制御により指向性を2次元的に切り替えることができる。
【0054】
また、積層した金属材料の薄板とスイッチSW1、SW2、SW3とで寄生素子203、204、205、206を構成しているため、高さが低く小型のアンテナ装置200を実現することが可能である。そのため、このアンテナ装置200の構成を採用することにより、2次元的な指向性の切り替えが可能な小型の移動体通信用基地局を実現することが可能になる。
【0055】
(第3実施形態:複数のパターンで寄生素子を形成する構成)
次に、本発明の第3実施形態に係るアンテナ装置300について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0056】
<構成>
図8は、本実施形態に係るアンテナ装置300の構成を示す斜視図である。図8に示すように、アンテナ装置300は、グラウンド導体301と、パッチアンテナ302と、複数の寄生素子303、304、305、306と、誘電体基板310と、を備える。
【0057】
誘電体基板310は、グラウンド導体301上にスペーサ(非図示)を介して配置されている。また、パッチアンテナ302及び複数の寄生素子303、304、305、306は、誘電体基板310上の同一面に形成されている。また、矩形状のパッチアンテナ302には、検波方向を規定する位置に給電点307が設けられている。このパッチアンテナ302は、給電点307を介してグラウンド導体301と接続されている。なお、グラウンド導体301及び誘電体基板310は、アンテナ装置300に対して要求される大きさ等に応じて適宜設定される。例えば、グラウンド導体301及び誘電体基板310は、1辺が50mmの正方形に設定される。
【0058】
図8に示すように、寄生素子303、304、305、306は、パッチアンテナ302の各辺の周囲に配置される。また、寄生素子303は、内側パターン303a、303bと、外側パターン303c、303dとで構成される。同様に、寄生素子304は内側パターン304a、304bと外側パターン304c、304dとで構成され、寄生素子305は内側パターン305a、305bと外側パターン305c、305dとで構成され、寄生素子306は、内側パターン306a、306bと外側パターン306c、306dとで構成される。なお、内側パターンはパッチアンテナ302の辺に近い位置に配置され、外側パターンは同じ辺から比較的遠い位置に配置されている。
【0059】
ここで、図9A及び図9Bを参照しながら、寄生素子303、304、305、306の構成について、より詳細に説明する。図9Aは、誘電体基板310の上側から見た平面図である。また、図9Bは、図9Aにおいて点線で囲んだ領域Aの拡大図である。なお、寄生素子303、304、305、306の構成は実質的に同じであるため、一例として図9Bに拡大図を示した寄生素子306について詳細に説明する。
【0060】
まず、図9Bを参照しながら、内側パターン306a、306b、及び外側パターン306c、306dの構成について説明する。なお、パッチアンテナ302に近づく方向を「内」、パッチアンテナ302から遠ざかる方向を「外」と表現する。
【0061】
内側パターン306a、306bは、パッチアンテナ302の側辺から距離LIだけ離れた位置に配置されるものとする。また、外側パターン306c、306dは、内側パターン306a、306bの外側に距離LJの間隔をおいて配置されるものとする。また、外側パターン306c、306dと、誘電体基板310の辺部との距離をLKと表記する。さらに、内側パターン306a、306bを合わせた内側パターン全体の長さをLLと表記する。そして、外側パターン306c、306dを合わせた外側パターン全体の長さをLMと表記する。
【0062】
なお、本実施形態に係る寄生素子306において、長さLLと長さLMとを加算した長さは、パッチアンテナ302の共振周波数における波長λの1/2(即ち、λ/2)程度に設定される。また、距離LI、距離LJ、距離LKは、パッチアンテナ302の共振周波数や誘電体基板310の大きさ等に応じて適宜設定される。例えば、距離LIは2.3mmに設定され、距離LJは3mmに設定され、距離LKは5mmに設定される。この場合、例えば、長さLLは28mmに設定され、長さLMは36mmに設定される。
【0063】
さて、内側パターン306a、306bは、ダイオードD2で接続されている。このダイオードD2は、内側パターン306a、306bの電気的な接続/分断を切り替えるスイッチとして機能する。同様に、外側パターン306c、306dは、ダイオードD1で接続されている。このダイオードD1は、外側パターン306c、306dの電気的な接続/分断を切り替えるスイッチとして機能する。なお、図9Aにおいて、ダイオードD1、D2は、丸で表現されている。また、図8にはダイオードD1、D2の存在を明記していないが、実際には寄生素子303、304、305、306のそれぞれについて、図9A及び図9Bと同様にダイオードD1及びD2が設けられている。
【0064】
本実施形態に係るアンテナ装置300は、ダイオードD1、D2のON/OFFを切り替えることにより、寄生素子303、304、305、306を導波器又は反射器として機能させ、2次元的な指向性の切り替えを実現する。このように、内側パターン及び外側パターンで構成される寄生素子303、304、305、306を用いて指向性の切り替えを実現することにより、より指向性の可変範囲を広げることができると共に、より指向性を鋭くすることが可能になる。
【0065】
<動作>
次に、図10A、図10B、及び図11を参照しながら、ダイオードD1、D2の切り替えと、指向性の変化との関係について述べる。なお、図10A及び図10Bにおいて、ダイオードD1、D2をそれぞれ丸で表した。また、白丸はOFFの状態、黒丸はONの状態を表す。
【0066】
図10Aに示すように、全ての寄生素子303、304、305、306についてダイオードD1、D2をOFFとした場合、各パターンは電気的に分断されるため、寄生素子303、304、305、306は、いずれも反射器として動作しない。そのため、アンテナ装置300の指向性は正面方向(z方向)を向く。一方、図10Bに示すように、寄生素子306についてダイオードD1、D2をONとし、寄生素子303、304、305についてダイオードD1、D2をOFFとした場合、寄生素子306の電気長がλ/2より若干長くなる。この場合、寄生素子306が反射器として動作するため、図11に示すように、アンテナ装置300の指向性はx方向に寄った向きへと向く。
【0067】
同様に、寄生素子304についてダイオードD1、D2をONとし、寄生素子303、305、306についてダイオードD1、D2をOFFとした場合、寄生素子304が反射器として動作するため、アンテナ装置300の指向性は−x方向に寄った向きへと向く。また、寄生素子303についてダイオードD1、D2をONとし、寄生素子304、305、306についてダイオードD1、D2をOFFとした場合、寄生素子303が反射器として動作するため、アンテナ装置300の指向性はy方向に寄った向きへと向く。さらに、寄生素子305についてダイオードD1、D2をONとし、寄生素子303、304、306についてダイオードD1、D2をOFFとした場合、寄生素子305が反射器として動作するため、アンテナ装置300の指向性は−y方向に寄った向きへと向く。
【0068】
また、寄生素子303、304についてダイオードD1、D2をONとし、寄生素子305、306についてダイオードD1、D2をOFFとした場合、寄生素子303、304が反射器として動作するため、アンテナ装置300の指向性は−x方向及びy方向に寄った向きへと向く。このように、寄生素子303、304、305、306のいずれか1つ又は2つについてダイオードD1、D2をONとし、その他についてダイオードD1、D2をOFFとすることで、指向性を2次元的に自由に切り替えることができる。
【0069】
以上、本実施形態に係るアンテナ装置300の構成及び動作について説明した。このアンテナ装置300は、誘電体基板310上の同一面にパッチアンテナ302及び寄生素子33、304、305、306を配置する構成としている。そのため、アンテナ装置300は、先に紹介したアンテナ装置100、200に比べても、全体の高さを低減することができる。その結果、アンテナ装置300を搭載する移動体通信用基地局の更なる小型化が実現可能になる。ところで、上記の説明において、スイッチとしてダイオードを利用する構成を紹介したが、ダイオードに代えて、半導体スイッチやMEMSスイッチ等を利用することも可能である。
【0070】
(補足説明)
パッチアンテナ102、202、302において、給電点107、207、307を設ける位置を変更することにより偏波を切り替えられる。例えば、パッチアンテナ102、202、302の中心に対して給電点107、207、307を90°回転させた位置に他の給電点を配置してもよい。この場合、これら2つの給電点のうち、利用する給電点を切り替えることにより、偏波を可変することが可能になる。
【0071】
(第4実施形態:誘電体基板の裏面でスイッチに接続する構成)
次に、本発明の第4実施形態に係るアンテナ装置400について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0072】
<構成>
図12A〜図12Cは、本実施形態に係るアンテナ装置400の構成を示す図である。図12Aは斜視図であり、図12Bは上側から見た図であり、図12Cは下側から見た図である。図12A及び図12Bに示すように、アンテナ装置400は、パッチアンテナ402と、寄生素子403、404、405、406と、誘電体基板410とで構成される。また、パッチアンテナ402には、それぞれ検波方向が規定される位置に給電点407、408が設けられている。さらに、図12Cに示すように、誘電体基板310の下面には、グラウンド導体401が設けられている。なお、寄生素子403、404、405、406は、L字型の金属ワイヤにより構成される。金属ワイヤの材質としては、例えば、鉄やアルミ等の導体が用いられる。
【0073】
パッチアンテナ402は、矩形状であり、誘電体基板410上に配置されている。さらに、パッチアンテナ402は、給電点407、408を介してグラウンド導体401と接続される。また、誘電体基板410は、グラウンド導体401上にスペーサ(非図示)を介して配置されている。そして、パッチアンテナ402及び寄生素子403、404、405、406は、誘電体基板410上の同一面に形成されている。なお、グラウンド導体401、パッチアンテナ402、及び誘電体基板410のサイズは、アンテナ装置400に対して要求される大きさ等に応じて適宜設定される。
【0074】
図12Aに示すように、寄生素子403、404、405、406は、パッチアンテナ402の各辺の周囲に配置される。また、寄生素子403、404、405、406は、それぞれ2本のL字型金属ワイヤにより構成されている。そして、L字型金属ワイヤの一端は、誘電体基板410を貫通し、図12Cに示すように、誘電体基板410の裏面に設けられたスイッチSWに接続されている。このスイッチSWには、2本のL字型金属ワイヤの一端が接続される。例えば、寄生素子403を構成する2本のL字型金属ワイヤは、それぞれ誘電体基板410の裏面に設けられた同一のスイッチSWに接続される。寄生素子404、405、406についても同様である。
【0075】
スイッチSWは、図13A及び図13Bに示すように、バイアスラインを介してグラウンド導体401に接続されている。そして、スイッチSWには、バイアスラインを介してバイアスが供給される。図13Aは、スイッチSWが開放された状態を示している。一方、図13Bは、スイッチSWが短絡した状態を示している。スイッチSWが短絡すると、2本のL字型金属ワイヤが電気的に接続された状態となる。一方、スイッチSWが開放されると、2本のL字型金属ワイヤが電気的に分断された状態になる。そのため、スイッチSWの開放/短絡に応じて寄生素子403、404、405、406の電気長を可変することが可能になる。
【0076】
また、寄生素子403、404、405、406の長さ(図12Aにおける長辺LP×2+短辺LP×2)は、例えば、パッチアンテナ402の共振周波数における波長λの1/2(即ちλ/2)より若干長い程度に設定される。そのため、スイッチSWの開放/短絡に応じて寄生素子403、404、405、406の機能を切り替えることができる。例えば、寄生素子403のスイッチSWを短絡すると、寄生素子403は反射器として機能する。一方、寄生素子403のスイッチSWを開放すると、寄生素子403はλ/2よりも十分に短い2本のL字型金属ワイヤに分断されるため、反射器として機能しない。寄生素子404、405、406についても同様である。
【0077】
上記のように、アンテナ装置400は、寄生素子403、404、405、406の機能を自由に切り替えることができる。そのため、反射器として機能させる寄生素子403、404、405、406の組み合わせを適切に選択することにより、指向性を自由に切り替えることが可能になる。また、給電点407、408を切り替えて利用することにより、偏波を可変することが可能になる。
【0078】
(変形例:金属箔で寄生素子を形成する構成)
ここで、本実施形態に係るアンテナ装置400の一変形例について説明する。
【0079】
これまで、寄生素子403、404、405、406をL字型の金属ワイヤで形成する構成について説明してきたが、金属ワイヤ以外の材料を用いて寄生素子403、404、405、406を形成してもよい。例えば、アンテナ装置400の構成は、図22に示すような構成に変形することができる。なお、図22は、図12Aに示したアンテナ装置400と実質的に同じ構成要素に関して記載を省略している。例えば、給電点407、408や誘電体基板410の裏面に設けられたスイッチSWの構成については記載を省略している。
【0080】
図22に示したアンテナ装置400は、寄生素子413、414、415、416を備える。また、寄生素子413は、金属箔413Aと、スルーホール413Bと、誘電体基板413Cとにより形成される。誘電体基板413Cは、所定の方向に延伸した略棒状であり、誘電体基板410上に設置される。なお、誘電体基板413Cは、誘電体基板410と一体であってもよく、この場合には誘電体基板410の凸部が誘電体基板413Cを形成する。
【0081】
また、誘電体基板413Cの上面には、誘電体基板413Cの各端部から中央部に向かって所定の長さの金属箔413Aが貼られている。つまり、誘電体基板413Cには、2枚の金属箔413Aが設けられている。金属箔413Aの長さは、2枚の金属箔413Aの合計長さがパッチアンテナ402の共振周波数における波長λの1/2(即ちλ/2)より若干長い程度に設定される。
【0082】
また、誘電体基板413Cの中央部に近い場所には、金属箔413A、誘電体基板413C、誘電体基板410を貫通し、誘電体基板410の裏面に設けられたスイッチSWに接続可能なスルーホール413Bが設けられている。このスルーホール413Bを介して、金属箔413Aと、誘電体基板410の裏面に設けられたスイッチSWとが接続される。より詳細には、2枚の金属箔413Aのそれぞれが図12Cに示したスイッチSWに接続され、スイッチSWの開放/短絡を切り替えることにより、2枚の金属箔413Aの電気的な接続状態が制御できるように構成されている。
【0083】
上記の通り、2枚の金属箔413Aの合計長さがパッチアンテナ402の共振周波数における波長λの1/2(即ちλ/2)より若干長い程度に設定されているため、スイッチSWの開放/短絡に応じて寄生素子413の機能を切り替えることができる。例えば、寄生素子413のスイッチSWを短絡すると、寄生素子413は反射器として機能する。一方、寄生素子413のスイッチSWを開放すると、反射器として機能しない。このような機能の制御方法及びその原理に関しては図12Aに示したアンテナ装置400と実質的に同じである。また、ここでは寄生素子413を例に挙げて説明したが、寄生素子414、415、416についても同じである。
【0084】
従って、寄生素子413、414、415、416のスイッチSWを全て開放した状態では図15Bに示したような放射特性が得られ、寄生素子415のスイッチSWだけを短絡した状態では図16Bに示したような放射特性が得られ、寄生素子417のスイッチSWだけを短絡した状態では図17Bに示したような放射特性が得られる。同様に、寄生素子414のスイッチSWだけを短絡した状態では図20Bに示したような放射特性が得られ、寄生素子416のスイッチSWだけを短絡した状態では図21Bに示したような放射特性が得られる。また、利用する給電点407、408の切替により偏波を可変できる点についても同様である。
【0085】
以上、本実施形態に係るアンテナ装置400の構成及び変形例について説明した。
【0086】
<動作>
次に、図14〜図22Bを参照しながら、本実施形態に係るアンテナ装置400の動作及び放射特性の変化について説明する。なお、図15A、図16A、図17A、図18A、図19A、図20A、図21Aに示したシミュレーション結果は、次の条件(図12A〜図12Cを参照)で算出されたものである。hp=1.4mm、h=1.6mm、w=80mm、ε=4.8(誘電率)、a=23.6mm、d=4.5mm、lp=23.1mm、dp=12.5mm、g=1.0mm、b=33.0mm、w1=3.0mm、w2=2.0mm、w3=5.8mm。
【0087】
(放射特性#1)
まず、図14〜図17Bを参照しながら、アンテナ装置400の動作及び放射特性の変化について考察する。ここでは、図14に示すように、給電点407を利用し、寄生素子403、405を制御する場合における放射特性の変化について考えてみたい。
【0088】
図15Aに示すように、寄生素子403、404、405、406のスイッチSWを全て開放した場合、寄生素子403、404、405、406はいずれも反射器として機能しない。そのため、アンテナ装置400の指向性は、図15Bに示すように、正面方向(z方向)を向く。一方、図16Aに示すように、寄生素子405のスイッチSWを短絡し、寄生素子403、404、406のスイッチSWを開放した場合、寄生素子405が反射器として機能する。そのため、アンテナ装置400の指向性は、図16Bに示すように、x方向に寄った向きに向く。また、図17Aに示すように、寄生素子403のスイッチSWを短絡し、寄生素子404、405、406のスイッチSWを開放した場合、寄生素子403が反射器として機能する。そのため、アンテナ装置400の指向性は、図17Bに示すように、−x方向に寄った向きに向く。
【0089】
(放射特性#2)
次に、図18〜図21Bを参照しながら、アンテナ装置400の動作及び放射特性の変化について更に考察する。ここでは、図18に示すように、給電点408を利用し、寄生素子404、406を制御する場合における放射特性の変化について考えてみたい。
【0090】
図19Aに示すように、寄生素子403、404、405、406のスイッチSWを全て開放した場合、寄生素子403、404、405、406はいずれも反射器として機能しない。そのため、アンテナ装置400の指向性は、図19Bに示すように、正面方向(z方向)を向く。一方、図20Aに示すように、寄生素子404のスイッチSWを短絡し、寄生素子403、405、406のスイッチSWを開放した場合、寄生素子404が反射器として機能する。そのため、アンテナ装置400の指向性は、図20Bに示すように、−y方向に寄った向きに向く。また、図21Aに示すように、寄生素子406のスイッチSWを短絡し、寄生素子403、404、405のスイッチSWを開放した場合、寄生素子406が反射器として機能する。そのため、アンテナ装置400の指向性は、図21Bに示すように、y方向に寄った向きに向く。
【0091】
以上、寄生素子403、404、405、406の機能と指向性との関係について具体例を挙げて説明した。ここでは、y方向又は−y方向に放射特性を偏らせる方法、及び、x方向又は−x方向に放射特性を偏らせる方法について別々に示したが、これらの制御方法を組み合わせると、x−y平面内で自由に指向性を切り替えることが可能になる。
【0092】
以上、本発明の第4実施形態に係るアンテナ装置400の構成及び動作について説明した。上記のように、アンテナ装置400は、パッチアンテナ402の周囲に配置された寄生素子403、404、405、406の反射器としての機能を制御することで指向性を切り替える構成を有する。特に、x方向に沿って対向配置された寄生素子403、405と、y方向に沿って対向配置された寄生素子404、406とを適切に制御することにより、指向性の可変方向は2次元的に切り替えることが可能である。
【0093】
また、L字型金属ワイヤと、誘電体基板410の裏面に設けられたスイッチSWとで寄生素子403、404、405、406を構成しているため、高さが低く小型のアンテナ装置400を実現することが可能である。そのため、このアンテナ装置400の構成を採用することにより、2次元的な指向性の切り替えが可能な小型の移動体通信用基地局を実現することが可能になる。
【0094】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0095】
100、200、300、400 アンテナ装置
101、401 グラウンド導体
102、202、302、402 パッチアンテナ
103、104、105、106、203、204、205、206、303、304、305、306、403、404、405、406 寄生素子
107、207、307、407、408 給電点
310、410 誘電体基板
D1、D2 ダイオード
SW1、SW2、SW3、SW スイッチ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
略矩形のパッチアンテナと、
前記パッチアンテナの各辺の周囲にそれぞれ配置された複数の寄生素子と、
前記各寄生素子の電気長を切り替える切替手段と、
を備え、
前記切替手段は、前記寄生素子が反射器として機能するように前記電気長を切り替えることが可能である
ことを特徴とする、アンテナ装置。
【請求項2】
前記切替手段は、前記寄生素子が導波器として機能するように前記電気長を切り替えることが可能である
ことを特徴とする、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記各寄生素子は、前記パッチアンテナの一辺と略平行になる1本の長辺と、当該長辺の端部に一端が接続され、かつ、他端がグラウンド導体に接続される2本の短辺とで構成される金属ワイヤにより形成される
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記切替手段は、
前記長辺の中央付近に設けられ、オフの状態で当該長辺を分断する第1スイッチと、
前記2本の短辺にそれぞれ設けられ、オフの状態で当該短辺を分断する2つの第2スイッチと、
を含み、
前記第1及び第2スイッチが全てオンの状態で前記金属ワイヤの長さが前記パッチアンテナの共振周波数における波長の1/2の長さより長くなり、前記第1スイッチがオン、かつ、前記第2スイッチがオフの状態で前記金属ワイヤの長さが前記パッチアンテナの共振周波数における波長の1/2の長さより短くなる
ことを特徴とする、請求項3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記各寄生素子は、前記パッチアンテナの一辺と略平行な方向を長手方向とし、前記パッチアンテナが設置される誘電体基板上に積層された導体薄板により形成され、
前記導体薄板の中央付近には、前記切替手段が形成される
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記各寄生素子は、
前記パッチアンテナの一辺と略平行な方向を長手方向とする第1の導体薄板と、
前記第1の導体薄板よりも前記パッチアンテナの一辺から遠ざかった位置に配置され、前記パッチアンテナの一辺と略平行な方向を長手方向とする第2の導体薄板と、
により形成され、
前記導体薄板の中央付近には、前記切替手段が形成される
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のアンテナ装置。
【請求項7】
前記切替手段は、オフの状態で前記導体薄板を分断するスイッチであり、
前記スイッチがオンの状態で前記導体薄板の長さが前記パッチアンテナの共振周波数における波長の1/2の長さより長くなる
ことを特徴とする、請求項5又は6に記載のアンテナ装置。
【請求項8】
前記寄生素子は、前記パッチアンテナが設置される誘電体基板を貫通して、当該誘電体基板の裏面に設けられた前記切替手段に接続される
ことを特徴とする、請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記各寄生素子は、前記パッチアンテナの各辺に沿った方向に延伸し、電気的に分離した2つの部分で構成される金属材料により形成され、
前記金属材料の各部分は、前記パッチアンテナが設置される誘電体基板を貫通して、当該誘電体基板の裏面に設けられた前記切替手段に接続される
ことを特徴とする、請求項8に記載のアンテナ装置。
【請求項10】
前記金属材料は、金属箔又はL字型金属ワイヤである
ことを特徴とする、請求項9に記載のアンテナ装置。
【請求項11】
前記切替手段は、オンの状態で前記金属材料の2つの部分を接続し、オフの状態で前記金属材料の2つの部分を分断するスイッチであり、
前記金属材料の2つの部分の合計長さは、前記パッチアンテナの共振周波数における波長の1/2の長さより長い
ことを特徴とする、請求項9又は10に記載のアンテナ装置。
【請求項12】
複数の給電点をさらに備え、
利用する前記給電点を切り替えることにより偏波を可変する
ことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のアンテナ装置と、
前記切替手段を制御する制御手段と、
を備える
ことを特徴とする、無線通信装置。


【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図5A】
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【図6A】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14】
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【図18】
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【図22】
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【図4B】
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【図5B】
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【図6B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17A】
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【図17B】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21A】
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【図21B】
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【公開番号】特開2012−120150(P2012−120150A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186157(P2011−186157)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(598045058)株式会社サムスン横浜研究所 (294)
【Fターム(参考)】