説明

アンテナ装置

【課題】装置を小型化して増幅回路の入力部と出力部とがより近接しても、信号漏洩による異常発振を生じることを防止することができるアンテナ装置を提供する。
【解決手段】アンテナ装置1は、電波を受信する受信手段7を有するアンテナ素子2と、アンテナ素子2からの入力信号を増幅する増幅回路が形成されアンテナ素子2からの入力部3bおよび増幅された信号の出力部3cが設けられた回路基板3と、回路基板3上の増幅回路を覆って妨害波を遮蔽し接地されるシールドカバー5とを備え、シールドカバー5内側の回路基板3の入力部3bおよび出力部3cとの間に、接地され、入力部3bおよび出力部3cとの間の信号漏洩を遮断する遮断壁8が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置に係り、特に、GPS(Global Positioning System)や衛星ラジオ用等の電波を受信するために用いられるアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、測位システムとして普及している車載用のGPSシステムのアンテナ装置や、米国で実用化されている車載型或いは家庭等での据え付け型の衛星ラジオ等に用いるアンテナ装置として種々のアンテナ装置が開発されている(例えば特許文献1〜3等参照)。
【0003】
これらのアンテナ装置では、図5に例示するアンテナ装置100のように、例えば、電波を受信するパッチ型の受信面101を有するアンテナ素子102の背面に回路基板103が貼付されている。回路基板103のアンテナ素子102と反対側の面にはアンテナ素子102から入力された信号を増幅する図示しない増幅回路が形成されており、その増幅回路が形成された面が、外部からの妨害波を遮蔽する略箱状のシールドカバー104で覆われている。なお、図5では受信面101が実際よりも厚く表されている。
【0004】
アンテナ素子102と回路基板103とには、入力ピン105がアンテナ素子102や回路基板103に垂直に貫挿されており、入力ピン105の一端側が半田付けによりアンテナ素子102の受信面101に電気的に接続されている。また、入力ピン105の他端側は回路基板103上の増幅回路に半田付けされて電気的に接続されていて入力部103aが形成されている。入力ピン105は、アンテナ素子102の受信面101で受信した電波信号を回路基板103の増幅回路に入力させるようになっている。
【0005】
また、シールドカバー104の内側には、同軸ケーブル106が挿入されている。同軸ケーブル106の芯線106aは回路基板103上の増幅回路に半田付けされて電気的に接続され、その接続部分が増幅回路の出力部103bを構成している。同軸ケーブル106はその芯線106aを介して増幅回路に駆動電力を供給するとともに、アンテナ素子102で受信され増幅回路で増幅された信号を出力するようになっている。
【0006】
また、シールドカバー104はGNDも兼ねており、シールドカバー104の基面104aから同軸ケーブル106側に屈曲されて形成された舌片104bが同軸ケーブル106の外部導体106bに対して半田付けされて電気的に接続されることで、舌片104bを介してシールドカバー104がGND電位とされ、シールドカバー104を介して増幅回路が接地されるようになっている。
【特許文献1】特開2005−110007号公報
【特許文献2】特開2004−72320号公報
【特許文献3】特開2004−228357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このようなアンテナ装置では、近年、装置の小型化が図られている。しかしながら、このように装置が小型化すると、回路基板103の増幅回路の入力部103aと出力部103bとがより近接するようになる。このように回路の入力部103aと出力部103bとが近接すると、信号入出力のアイソレーションが劣化して入力部103aと出力部103bとの間で信号漏洩が生じるという問題がある。
【0008】
信号漏洩は、入力部103aと出力部103bとの間の空気中や回路基板中で生じる。信号漏洩によりアンテナ素子102から入力部103aを介して増幅回路に入力され増幅された信号の一部が出力部103bから入力部103aに漏洩して回路に正帰還が生じ、最悪の場合、増幅回路内に定在波が発生して特定波長の信号強度が強くなる異常発振現象が発生する。
【0009】
そのため、装置がより小型化して回路の入力部103aと出力部103bとの距離が近接すればするほど出力部103bから入力部103aへの信号漏洩の度合いが増大し、発生する異常発振が異常に強くなるという問題があった。また、信号漏洩はアンテナ素子102が受信する電波の波長によってもその特性が変化し、テレビの周波数である数百MHzでは回路基板中の信号漏洩よりも空気中を伝わる信号漏洩の寄与の方が大きくなることも知られている。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、装置を小型化して増幅回路の入力部と出力部とがより近接しても、信号漏洩による異常発振を生じることを防止することができるアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の問題を解決するために、請求項1に記載のアンテナ装置は、
電波を受信する受信手段を有するアンテナ素子と、
前記アンテナ素子からの入力信号を増幅する増幅回路が形成され、前記アンテナ素子からの入力部および増幅された信号の出力部が設けられた回路基板と、
前記回路基板上の前記増幅回路を覆って妨害波を遮蔽し、接地されるシールドカバーとを備え、
前記シールドカバー内側の前記回路基板の入力部および出力部との間に、接地され、前記入力部および出力部との間の信号漏洩を遮断する遮断壁が形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のアンテナ装置において、前記遮断壁は、前記シールドカバーの内面に形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のアンテナ装置において、前記遮断壁は、前記シールドカバーの一部が前記シールドカバーの内側に折り曲げられて形成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のアンテナ装置において、前記遮断壁の回路基板側端部が前記回路基板に半田付けされていることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のアンテナ装置において、前記遮断壁は、前記入力部または前記出力部の周囲の全部または一部を取り巻くように形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、回路基板上の増幅回路の入力部と出力部との間に遮断壁が設けられており接地されているため、出力部から漏洩した信号のうち少なくともシールドカバー内部の空気中を伝わって漏洩する信号を遮断壁が遮断して吸収する。そのため、空気中を伝達する漏洩信号は入力部には還流せず或いは入力部への還流が阻害される。
【0017】
このように、回路の出力部から入力部への正帰還が阻止または阻害されて回路内での定在波の発生が阻止または低減され、信号漏洩による異常発振が生じることが防止されまたは実用上問題がない程度まで抑制される。そのため、アンテナ装置の小型化が図られて増幅回路の入力部と出力部とが近接する状態となっても、信号入出力のアイソレーションが劣化することを防止することができ、信号漏洩による異常発振の発生を事実上防止することが可能となる。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、前記請求項1に記載の発明の効果に加え、シールドカバーの製造時にその内面に遮断壁を形成することで、遮断壁を容易かつ確実に形成することが可能となる。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、シールドカバーの一部をシールドカバーの内側に折り曲げて遮断壁を形成することで、遮断壁を容易かつ的確に形成することが可能となるとともに、遮断壁を形成するためにシールドカバーに形成された穴を介して入力部における入力ピンと増幅回路の配線との半田付け部分を視認することが可能となる。そのため、前記各請求項に記載の発明の効果に加え、アンテナ装置の製造作業者やユーザが容易に入力部の半田付けの有無や良不良を確認することが可能となる。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、遮断壁の回路基板側端部を回路基板に半田付けすることで、遮断壁によるシールドカバー内部の空間の遮蔽度が高くなり、空気中を伝達する漏洩信号の入力部への還流の阻害効果をより大きくすることが可能となる。また、回路基板内部を伝わって漏洩する信号が入力部に向かう途中で半田付け部を介して遮断壁に吸収されるようになるから、基板中を伝達する漏洩信号についても入力部には還流せず或いは入力部への還流が阻害されるようにすることができる。そのため、前記各請求項に記載の発明の効果がより効果的に発揮されるとともに、遮断壁の半田付けにより、シールドカバー自体の構造強度が向上される。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、入力部や出力部の周囲の全部または一部を取り巻くように遮断壁を形成することで、シールドカバー内部の空気中を伝わって漏洩する信号や回路基板内部を伝わって漏洩する信号をより確実に遮断することが可能となり、前記各請求項に記載の発明の効果をより効果的に発揮させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係るアンテナ装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0023】
本実施形態に係るアンテナ装置1は、図1(A)、(B)および図2に示すように、アンテナ素子2、回路基板3、入力ピン4、シールドカバー5および同軸ケーブル6等を備えている。なお、図2では、アンテナ装置1が天地逆転された状態で示されており、また、後述するボトムカバー9の図示が省略されている。
【0024】
アンテナ素子2は、本実施形態ではセラミック製でやや肉厚の板状に形成されている。アンテナ素子2の一方側の面には、電波を受信する受信手段としてパッチ型の受信面7が貼付されている。なお、図1(A)や図(B)では、受信面7が実際よりも厚く表されている。また、アンテナ素子2の受信面7と反対側の面には、図示しない金属薄膜状のGNDパターンが入力ピン4およびその周囲の部分を除くほぼ全面に貼付されている。
【0025】
アンテナ素子2の受信面7と反対の面側には、回路基板3が設けられている。回路基板3のアンテナ素子2側の面には、アンテナ素子2のGNDパターンとは別体の図示しない金属薄膜状のGNDパターンが入力ピン4およびその周囲の部分を除くほぼ全面に貼付されている。
【0026】
本実施形態では、この回路基板3のGNDパターンとアンテナ素子2のGNDパターンとが例えば両面テープ等の接着部材で貼付されることでアンテナ素子2と回路基板3とが接着されるようになっている。また、アンテナ素子2自体のGNDパターンとともに、回路基板3のGNDパターンもアンテナ素子2のGNDパターンとして機能するようになっている。
【0027】
回路基板3のアンテナ素子2と反対側の面すなわち回路面3aには、アンテナ素子2からの入力を増幅して出力する図示しない回路が形成されている。回路基板3には、適宜の位置に図示しない複数のスルーホールが形成されており、これらのスルーホールを介して回路面3a上の回路のGNDと裏面のGNDパターンとが接続されるようになっている。
【0028】
アンテナ素子2と回路基板3の所定の位置には、入力ピン4がアンテナ素子2の受信面7や回路基板3の回路面3aに垂直に貫挿されている。本実施形態では、入力ピン4の一端側が半田付けによりアンテナ素子2の受信面7に電気的に接続されている。
【0029】
また、入力ピン4の他端側は回路基板3上の増幅回路に半田付けされて電気的に接続されており、その接続部分が回路の入力部3bとされている。入力ピン4は、アンテナ素子2の受信面7で受信した電波信号をこの入力部3bを介して回路基板3の増幅回路に入力させるようになっている。
【0030】
回路基板3の回路面3a側には、略箱状に形成された金属製のシールドカバー5が回路面3aを覆うように取り付けられており、シールドカバー5は、回路面3aに到達する外部からの妨害波を遮蔽するようになっている。また、略箱状のシールドカバー5の基面5aはアンテナ素子2の受信面7や回路基板3の回路面3aに平行に配置されるようになっている。
【0031】
図1(A)、(B)の断面図に示されているように、シールドカバー5は、その一部が突起状に形成されて回路基板3に貫通されることで、回路基板3に対して位置決めされるようになっている。また、図2に示すように、本実施形態では、シールドカバー5は回路基板3の回路面3a上で半田付けにより回路のGNDと電気的に接続されるようになっている。
【0032】
シールドカバー5の内側には、同軸ケーブル6が挿入されている。同軸ケーブル6の芯線6aは回路基板3上の増幅回路に半田付けされて電気的に接続されており、その接続部分が回路の出力部3cとされている。同軸ケーブル6は、芯線6aを介して増幅回路に駆動電力を供給するとともに、アンテナ素子2で受信され増幅回路で増幅されてこの出力部3cを介して出力された信号を下流側に出力するようになっている。
【0033】
シールドカバー5には、その基面5aから同軸ケーブル6側に屈曲されて舌片5bが形成されており、舌片5bが同軸ケーブル6の外部導体6bに半田付けされて電気的に接続されている。
【0034】
また、シールドカバー5の基面5aの内面には、平板状の遮断壁8が形成されており、遮断壁8が回路基板3上の増幅回路の入力部3bと出力部3cとの間に配置されるように、すなわち仮に入力部3bと出力部3cとを結ぶ直線を想定した場合にその直線を遮る状態に配置されるようになっている。
【0035】
遮断壁8は、本実施形態では、図1(A)に示すように、その先端部と回路基板3の回路面3aとの間に隙間を有しているが、図1(B)に示すように先端部を回路基板3まで延長して回路面3aに当接させても良く、また、図示しないが、遮断壁8の先端部を回路基板3に半田付けしても良い。
【0036】
本実施形態では、遮断壁8は、図2に示すように、シールドカバー5の基面5aの入力部3bと対向する部分がコ字状に切断され、その部分がシールドカバー5の内側に折り曲げられることで形成されている。
【0037】
シールドカバー5の基面5aの外側には、金属製の略平板状のボトムカバー9が基面5aと面接触するように設けられており、ボトムカバー9は、シールドカバー5の基面5aと面接触して遮断壁8の形成により開口した基面5aの穴5cを外側から塞ぐようになっている。
【0038】
なお、同軸ケーブルの外部導体6bにはGND電位が供給されるようになっており、前述した外部導体6bとシールドカバー5の舌片5bとの接続により同軸ケーブル6の外部導体6bから舌片5bおよびシールドカバー5を介して遮断壁8が接地され、回路基板3の増幅回路やアンテナ素子2にGND電位が供給されるようになっている。
【0039】
また、本実施形態では、前述したように金属製のボトムカバー9がシールドカバー5の基面5aと面接触することで、シールドカバー5を介して遮断壁8や増幅回路、アンテナ素子2の接地効率のさらなる向上が図られるようになっている。
【0040】
次に、本実施形態に係るアンテナ装置1の作用について説明する。
【0041】
アンテナ装置1の回路基板3上の増幅回路には、同軸ケーブル6の芯線6aから出力部3cを介して駆動電力が供給される。また、アンテナ素子2の受信面7がGPS用や衛星ラジオ用の高周波の電波を受信すると、入力部3bを介してその電波信号が増幅回路に送信され、増幅回路で増幅された電波信号が出力部3cから同軸ケーブル6の芯線6aを通じて出力される。
【0042】
回路基板3の増幅回路は、それを覆う金属製のシールドカバー5により外部からの妨害波から遮蔽される。また、増幅回路は、前述したようにそのGNDがシールドカバー5に接続され、同軸ケーブル6の外部導体6bからシールドカバー5にGND電位が供給されることにより接地される。このGND電位は回路基板3のスルーホールを介して回路基板3のGNDパターンにも供給され、回路基板3のGNDパターンが接地されてアンテナ素子2にGNDレベルが提供される。
【0043】
また、本実施形態では、アンテナ装置1の底部に設けられた金属製のボトムカバー9とシールドカバー5の基面5aとが面接触することでシールドカバー5の接地効率が向上され、増幅回路の接地効率がより向上される。
【0044】
一方、前述したように、本実施形態に係るアンテナ装置1のように増幅回路の入力部3bと出力部3cとが近接すると、信号の一部が出力部3cから入力部3bに漏洩する信号漏洩が発生し、増幅回路内に定在波が発生して異常発振現象を生じる。
【0045】
しかし、本実施形態では、回路の入力部3bと出力部3cとの間に遮断壁8が設けられており接地されているため、出力部3cから信号の一部が漏洩しても、漏洩した信号のうちシールドカバー5内部の空気中を漏洩する信号が入力部3bに向かう途中で遮断壁8に吸収され、シールドカバー5を介して同軸ケーブル6の外部導体6bやボトムカバー9に流れていく。そのため、少なくとも空気中を伝達する漏洩信号については入力部3bには還流せず或いは入力部3bへの還流が阻害される。
【0046】
また、図1(A)に示したように、遮断壁8の先端部と回路基板3との間に隙間を有していても十分に漏洩信号の遮断効果が得られるが、信号漏洩の遮断効果は、遮断壁8によるシールドカバー5内部の空間の遮蔽度が高まるほど大きくなる。そのため、図1(B)に示したように遮断壁8の先端部と回路基板3とが当接されていたり遮断壁8の先端部が回路基板3に半田付けされていれば、空気中を伝達する漏洩信号については入力部3bへの還流の阻害の度合いが大きくなる。
【0047】
さらに、遮断壁8が回路基板3に半田付けされることで、回路基板3内部を伝わって漏洩する信号が入力部3bに向かう途中で半田付け部を介して遮断壁8に吸収されるようになるから、基板中を伝達する漏洩信号についても入力部3bには還流せず或いは入力部3bへの還流が阻害されるようにすることができる。
【0048】
以上のように、本実施形態に係るアンテナ装置1によれば、回路基板3上の増幅回路の入力部3bと出力部3cとの間に遮断壁8が設けられており接地されているため、出力部3cから漏洩した信号のうちシールドカバー5内部の空気中を伝わって漏洩する信号を遮断壁8が遮断して吸収する、そのため、少なくとも空気中を伝達する漏洩信号については入力部3bには還流せず或いは入力部3bへの還流が阻害される。
【0049】
このように、回路の入力部3bへの正帰還が阻止または阻害されて回路内での定在波の発生が阻止または低減され、信号漏洩による異常発振が生じることが防止されまたは実用上問題がない程度まで抑制される。そのため、アンテナ装置の小型化が図られて増幅回路の入力部3bと出力部3cとが近接する状態となっても、信号入出力のアイソレーションが劣化することを防止することができ、信号漏洩による異常発振の発生を事実上防止することが可能となる。
【0050】
また、本実施形態のように遮断壁8の先端部が回路基板3に半田付けされていれば、遮断壁8によるシールドカバー5内部の空間の遮蔽度が高くなり、空気中を伝達する漏洩信号の入力部3bへの還流の阻害効果をより大きくすることが可能となる。
【0051】
さらに、回路基板3内部を伝わって漏洩する信号が入力部3bに向かう途中で半田付け部を介して遮断壁8に吸収されるようになるから、基板中を伝達する漏洩信号についても入力部3bには還流せず或いは入力部3bへの還流が阻害されるようにすることができる。なお、遮断壁8の先端部が回路基板3に半田付けされることで、シールドカバー5の構造強度が向上されるという効果もある。
【0052】
一方、本実施形態のように、例えばシールドカバー5の基面5aの入力部3bと対向する部分をコ字状に切断し、その部分をシールドカバー5の内側に折り曲げて遮断壁8を形成することで、遮断壁8を容易かつ的確に設けることが可能となる。また、その際、シールドカバー5の入力部3bと対向する部分に穴5cが開口されるが、この穴5cを介して入力部3bにおける入力ピン4と増幅回路の配線との半田付け部分を視認することが可能となり、アンテナ装置1の製造作業者やユーザが容易に入力部3bの半田付けの有無や良不良を確認することが可能となる。
【0053】
また、この穴5cの開口によりシールドカバー5の妨害波の遮蔽効率が低下する場合があるが、本実施形態のようにシールドカバー5の外側から金属製のボトムカバー9でこの穴5cを塞ぐことで妨害波の遮蔽効率は十分に維持される。
【0054】
なお、金属製のボトムカバー9で穴5cを塞ぐ代わりに、この穴5cをシールドカバー5に着脱可能な銅テープのような金属テープで塞いだり或いは例えば樹脂製のボトムカバー9の穴5cに対応する部分に金属テープを貼付するなどしても同様に妨害波の遮蔽効率を維持することができる。
【0055】
また、図2のアンテナ装置1を真上から見た場合、本実施形態では、図3(A)の模式図に示すように遮断壁8が回路の入力部3bと出力部3cとの間に平板状に配置される場合について説明したが、このほかにも例えば図3(B)に示すように入力部3bの一部周囲を取り巻くように遮断壁8を形成することも可能であり、また、図3(C)に示すように入力部3bの全周を取り巻くように形成することも可能である。
【0056】
遮断壁8を、回路の入力部3bの周囲の全部または一部を取り巻く代わりに、或いは入力部3bの取り巻きとあわせて、出力部3c側の周囲の全部または一部を取り巻くように形成することも可能である。
【0057】
このように、遮断壁8で回路の入力部3bや出力部3cの周囲の全部または一部を取り巻くことで、シールドカバー5内部の空気中を伝わって漏洩する信号や回路基板3内部を伝わって漏洩する信号をより確実に遮断することが可能となり、入力部3bへの信号の漏洩をより的確に阻止または阻害することが可能となる。
【0058】
例えば、本実施形態のようにシールドカバー5の一部を内側に折り曲げて遮断壁8を形成する場合には、図4に示すように、折り曲げて形成した遮断壁8の両端部を入力部3b側や出力部3c側に折り曲げることで図3(B)、(C)に示したような入力部3bや出力部3cの周囲の全部または一部を取り巻く遮断壁8を形成することができる。
【0059】
なお、図3や図4では、入力部3bや出力部3cを取り巻く遮断壁8の各面を平面状に形成する場合について述べたが、各面が曲面状になるように遮断壁8を形成することも可能であり、遮断壁8を断面円形や断面楕円形等の筒状あるいはその一部分の形状に形成することも可能である。
【0060】
また、遮断壁8を、シールドカバー5の一部を内側に折り曲げて形成する代わりに、シールドカバー5の内面の適切な位置に平板状や筒状等に形成された金属片を溶着等で取り付けるようにして遮断壁8を設けることも可能である。また、逆に、遮断壁8を例えば回路基板3のスルーホールを介してアンテナ素子2のGNDパターンに接続して接地した状態で回路基板3側からシールドカバー5側に突き出すように設けることも可能である。
【0061】
さらに、本実施形態では、アンテナ素子2の表面にGPS用や衛星ラジオ用の高周波の電波を受信するパッチ型の受信面7を備えたアンテナ装置1について述べたが、アンテナ素子の構成はパッチ型の受信面を備えた構成に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本実施形態に係るアンテナ装置の構成を示す概略断面図であり、(A)は遮断壁の先端部と回路基板との間に隙間がある場合、(B)は遮断壁の先端部と回路基板とが当接している場合を示す。
【図2】図1のアンテナ装置を天地逆転した状態のシールドカバーや遮断壁等を表す斜視図である。
【図3】遮断壁の形状を示す模式図であり、(A)は本実施形態の場合、(B)は入力部の一部周囲を、(C)は入力部の全周を取り巻くように形成した場合を示す。
【図4】両端部がさらに折り曲げられた遮断壁を示す概略斜視図である。
【図5】従来のアンテナ装置の構成を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 アンテナ装置
2 アンテナ素子
3 回路基板
3b 入力部
3c 出力部
5 シールドカバー
7 受信面(受信手段)
8 遮断壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を受信する受信手段を有するアンテナ素子と、
前記アンテナ素子からの入力信号を増幅する増幅回路が形成され、前記アンテナ素子からの入力部および増幅された信号の出力部が設けられた回路基板と、
前記回路基板上の前記増幅回路を覆って妨害波を遮蔽し、接地されるシールドカバーとを備え、
前記シールドカバー内側の前記回路基板の入力部および出力部との間に、接地され、前記入力部および出力部との間の信号漏洩を遮断する遮断壁が形成されていることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記遮断壁は、前記シールドカバーの内面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記遮断壁は、前記シールドカバーの一部が前記シールドカバーの内側に折り曲げられて形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記遮断壁の回路基板側端部が前記回路基板に半田付けされていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記遮断壁は、前記入力部または前記出力部の周囲の全部または一部を取り巻くように形成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−78721(P2008−78721A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−252312(P2006−252312)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】