説明

アントロディア・シナモメアから単離した化合物およびその使用

本願発明は、アントロディア・シナモメアに由来する新規化合物およびその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アントロディア・シナモメア(Antrodia cinnamomea)から単離したアントロディンC (Antrodin C)の代謝物由来の化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
アントロディア・シナモメア(サルノコシカケ科、ヒダナシタケ目)は、伝統的な漢方薬として台湾でよく知られている。それは、台湾に固有の常緑樹シナノムン・カネヒライ(Cinnamomun kanehirai)(Hey)(クスノキ科)の内部心材壁においてのみ生育する。それは、中毒、下痢、腹痛、高血圧、皮膚のかゆみ、および肝臓癌を治療するための治療食(treating food)として使用されてきた(Tsai ZT, et al. 1982 Sheng-Yun Publisher Inc.: Taichung, Taiwan, pp 116-117)。ステロイド酸(Chen CH, et al.1995 J Nat Prod 58: 1655-1661.; Yang SW, et al. 1996 Phytochemistry 41: 1389-1392)、トリテルペノイド(Cherng IH, et al, 1995 J Nat Prod 58: 365-371; Cherng IW, et al 1996 Phytochemistry 41: 263-267)、ジテルペン(Chen CC, et al. 2006 J Nat Prod 69: 689-691)、セスキテルペン・ラクトン(Chiang HC, et al. 1995 Phytochemistry, 39, 613-616)、ならびにフェニルおよびビフェニル(Chiang HC, et al. 1995 Phytochemistry, 39, 613-616; Huang KF, et al 2001 Chin Pherm J 53: 327-331)の化合物を、細胞毒性、神経保護性、抗炎症性、およびアポトーシス活性を有するアントロディア・シナモメアの子実体より単離した。さらに、アントロディア・シナモメアの別の部分である菌糸体は、抗酸化作用(Hsiao G, et al. 2003 J Agric Food Chem 51: 3302-3308; Song TY, et al 2003 J Agric Food Chem 51: 1571-1577)、肝臓保護作用(Han HF, et al 2006 Chem Pharm Bull 54: 496-500)、抗炎症作用(Shen YC, et al. 20
04 Planta Medica 70: 310-314; Hseu YC, et al. 2005 Int Immunopharmacol 5: 1914-1925)、抗B型肝炎ウイルス作用(Lee IH, et al. 2002 FEMS Microbiol Lett 209: 63-67)、血管緊張低下作用(Wang GJ, et al 2003 Life Sci 73: 2769-2783)、およびアポトーシス作用(Song TY, et al. 2005 JAgric Food Chem 53: 5559-5564)を有している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Tsai ZT, et al. 1982 Sheng-Yun Publisher Inc.
【非特許文献2】Taichung, Taiwan, pp 116-117
【非特許文献3】Chen CH, et al.1995 J Nat Prod 58: 1655-1661.
【非特許文献4】Yang SW, et al. 1996 Phytochemistry 41: 1389-1392
【非特許文献5】Cherng IH, et al, 1995 J Nat Prod 58: 365-371
【非特許文献6】Cherng IW, et al 1996 Phytochemistry 41: 263-267
【非特許文献7】Chen CC, et al. 2006 J Nat Prod 69: 689-691
【非特許文献8】Chiang HC, et al. 1995 Phytochemistry, 39, 613-616
【非特許文献9】Chiang HC, et al. 1995 Phytochemistry, 39, 613-616
【非特許文献10】Huang KF, et al 2001 Chin Pherm J 53: 327-331
【非特許文献11】Hsiao G, et al. 2003 J Agric Food Chem 51: 3302-3308
【非特許文献12】Song TY, et al 2003 J Agric Food Chem 51: 1571-1577
【非特許文献13】Han HF, et al 2006 Chem Pharm Bull 54: 496-500
【非特許文献14】Shen YC, et al. 2004 Planta Medica 70: 310-314
【非特許文献15】Hseu YC, et al. 2005 Int Immunopharmacol 5: 1914-1925
【非特許文献16】Lee IH, et al. 2002 FEMS Microbiol Lett 209: 63-67
【非特許文献17】Wang GJ, et al 2003 Life Sci 73: 2769-2783
【非特許文献18】Song TY, et al. 2005 JAgric Food Chem 53: 5559-5564
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、式
【化1】

を有する化合物を提供する
[前記式中、R1はC1-10カルボン酸またはC1-10エステルであり;R2はC1-10カルボン酸またはC1-10エステルであり;R3はH、C1-10アルキル、C2-10アルケニルまたはC2-10アルキニルであり;ならびにR4はH、C1-10アルキル、C2-10アルケニルまたはC2-10アルキニルである]。
【0005】
本発明は、式
【化2】

を有する化合物を含む組成物提供する
[前記式中、R1はC1-10カルボン酸またはC1-10エステルであり;R2はC1-10カルボン酸またはC1-10エステルであり;R3はH、C1-10アルキル、C2-10アルケニルまたはC2-10アルキニルであり;ならびにR4はH、C1-10アルキル、C2-10アルケニルまたはC2-10アルキニルである]。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明において、3つのマレイン酸および2つのコハク酸誘導体(アントロディンA-E)が、アントロディア・シナモメアの菌糸体より最初に単離され、アントロディンCおよびBのLLC細胞に対する細胞毒性活性が確認された(Nakamura N, et al. 2004 J Nat Prod 7: 46-48)。さらに、菌糸中に最も高い量であるアントロディンCは、LPSにより誘導される肝炎モデルに対して保護作用を提示した。アントロディア・シナモメアの化合物に対する代謝の研究は、これまで報告されていなかった。本願発明において、ラットの胆汁および糞におけるアントロディンCの代謝物を、電子スプレーイオン化(electrospary ionization (ESI))でLC/MS-MSにより同定し、ラット胆汁におけるM1の薬物動態を、PAD-HPLCによるアントロディンCの経口投与(50 mg/kg) および静脈注射(10 mg/kg)後に観測した。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】M1のHMBC (a)およびNOE (b)相関を表す。
【図2】M2およびM3のHMBC相関を表す。
【図3】服用量50 mg/kgのアントロディンCを経口投与した後の、排泄物(a)、胆汁(b)、および血漿(c)サンプルのTICを表す。
【図4】ラットの糞、胆汁、および血漿サンプル中のM1からM5およびアントロディンCのMSスペクトル(ネガティブモード)を表す。
【図5】アントロディンCおよびその代謝物の構造を表す。
【図6】服用量(a) 10mg/kgのアントロディンC点滴、および(b) 50mg/kgの経口投与後における胆汁サンプル中のM1の濃度-時間曲線を表す。
【図7】ラットにおける、アントロディンCを投与した後の、胆汁、および血漿中のTIC、ならびに糞のUVスペクトルを表す。
【図8】ブランク血漿サンプル、およびM1の点滴後の血漿サンプルのUVスペクトルを表す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、式
【化3】

を有する化合物を提供する[前記式中、R1はC1-10カルボン酸またはC1-10エステルであり;R2はC1-10カルボン酸またはC1-10エステルであり;R3はH、C1-10アルキル、C2-10アルケニルまたはC2-10アルキニルであり;ならびにR4はH、C1-10アルキル、C2-10アルケニルまたはC2-10アルキニルである]。
【0009】
前記化合物のR1またはR2は、C1-6カルボン酸である。好ましい実施態様において、R1またはR2は、COOHであり、R3はC1-6アルキルであり、かつR4はイソブチルである。より好ましい実施態様において、前記化合物は、(2Z)-2-イソブチル-3-{4-[(3-メチルブタ-2-エン-1-イル)オキシ]フェニル}ブタ-2-エン二酸、(2Z)-2-イソブチル-3-{4-[(3- メチルブタ-2-エン-1-イル)オキシ]フェニル}ブタ-2-エン二酸 4-メチルエステル、または(2Z)-2-イソブチル-3-{4-[(3-メチルブタ-2-エン-1-イル)オキシ]フェニル}ブタ-2-エン二酸 1-メチル エステルである。
【0010】
前記化合物は、ラットにおけるアントロディンCの代謝物であり、前記アントロディンCは、アントロディア・シナモメアの菌糸体より単離される。
【0011】
本発明は、式
【化4】

を有する化合物を含む組成物を提供する
[前記式中、R1はC1-10カルボン酸またはC1-10エステルであり;R2はC1-10カルボン酸またはC1-10エステルであり;R3はH、C1-10アルキル、C2-10アルケニルまたはC2-10アルキニルであり;ならびにR4はH、C1-10アルキル、C2-10アルケニルまたはC2-10アルキニルである]。
【0012】
好ましい実施態様において、前記化合物は、(2Z)-2-イソブチル-3-{4-[(3-メチルブタ-2-エン-1-イル)オキシ]フェニル}ブタ-2-エン二酸、(2Z)-2-イソブチル-3-{4-[(3-メチルブタ-2-エン-1-イル)オキシ]フェニル}ブタ-2-エン二酸4-メチルエステル、または(2Z)-2-イソブチル-3-{4-[(3-メチルブタ-2-エン-1-イル)オキシ]フェニル}ブタ-2-エン二酸1-メチルエステルである。
【0013】
本願発明は、抗酸化活性、抗菌活性、抗バクテリア活性、AChE阻害活性、抗けいれん活性、または血管緊張低下活性を有する化合物を提供する。
【0014】
本発明の化合物は、収縮期の血圧を低下させる、または高濃度リポタンパク質を増加させることができる。さらに、同一の化合物は、中枢コリン作用アゴニズム(entral cholinergic agonism)活性、肝臓保護(hepatoprotection)活性、抗炎症活性または抗腫瘍活性を有する。特に、本発明の化合物は、肝臓、肺、腸、骨、血液、リンパ球、および乳房からなる群より選択される細胞または組織由来の腫瘍を阻害することができる。本発明の混合物を受容する被験者は、ヒト、哺乳動物、マウス、ラット、ウマ、ブタ、ニワトリ、アヒル、イヌおよびネコを含むが、それに限定されない。
【0015】
本発明はまた、本発明の化合物を含む組成物も提供する。本発明の組成物は、収縮期の血圧を低下させ、高濃度リポタンパク質を増加させることができる。さらに、本発明の組成物は、中枢コリン作用アゴニズム(entral cholinergic agonism)活性、肝臓保護(hepatoprotection)活性、抗炎症活性または抗腫瘍活性を有する。特に、本発明の化合物は、肝臓、肺、腸、骨、血液、リンパ球、および乳房からなる群より選択される細胞または組織由来の腫瘍を阻害することができる。本発明の混合物を受容する被験者は、ヒト、哺乳動物、マウス、ラット、ウマ、ブタ、ニワトリ、アヒル、イヌおよびネコを含むが、それに限定されない。
【実施例】
【0016】
化合物および試薬
一般嫌気性培地(GAM)ブロスを、Nissui Co. (Tokyo, Japan)より購入した。オープンカラムクロマトグラフィーのための、液体クロマトグラフィーグレード溶液、トリエチルアミン、4-ジメチルアミノピリジン(4-DMAP)、シリカゲルBW-820MH (Fuji Silysia)、ODS DM 1020T (Fuji Silysia)、TLC分析のためのMerckプレコートシリカゲル60F254 (0.25 mm)およびMerck RP-18F254 (0.25 mm)を、Wako Pure Chemical Industries Ltd. (Osaka, Japan)より取得した。
【0017】
装置
化合物を、内部標準としてテトラメチルシランとともにUnity Plus 500 (変動) NMRスペクトロメーターを使用して、1H-および13C-NMR、ならびに2D NMRにより分析し、化学シフトをδ値として示す。腸内細菌を、EAN-140 (Tabai Co., Osaka, Japanを使用して、嫌気的にインキュベートした。HPLC装置は、光ダイオードアレイ検出器(PAD)、および20 μlループを有するシリーズ7725iインジェクターを有するAgilent 1100シリーズバイナリーポンプを含むAgilent 1100システム (Agilent Technologies., Waldbronn, Germany)であった。ChemStationを使用して、データを取得し、統合した。HPLCシステムを、ESIソース(ESI source)を装備したEsquire 3000plusマススペクトロメーター(Bruker Daltonik GmbH, Bremen, Germany)に連結させた。全てのLC/MS-MSデータは、Esquireコントロールソフトウェアを使用して獲得され、Bruker Daltonicsによるソフトウェアを使用して解析された。
【0018】
実施例1
M1-M3の合成
アントロディンC (50 mg)を水5 ml中に溶解させ、5分間撹拌しながら1N KOH (0.5 ml)を添加した。1N HClを使用して、pHを8に調節した。濾過後、溶液を一晩室温下に保持した。再度濾過した後、上清を凍結乾燥し、いくらかのMeOHにより再構成し、その後濾過し真空下で濃縮し、M1の収量は13 mg (26%)であった。
【0019】
M1の1H-および13C-NMRスペクトルは、アントロディンCのそれに非常に類似しており、イソブチル部分、3-メチル-2-ブテニルオキシ部分、およびパラ置換ベンゼン環の存在を示し、それは1H-1H COSY - HMQC実験によりサポートされた。しかし、カルボニル炭素(δ 178.9 : 1)、メチレン炭素(δ 39.7 : 1')、イソブチル部分のプロトン(δ 1.87 : 1')およびメチレンプロトン(δ 1.56 : 2')、オレフィン連結ベンゼン炭素(δ 131.6 : 1")、ならびにそれに隣接したベンゼンプロトン(δ 7.11 : 2", 6")は、アントロディンCのものと異なっており、M1のこれら全ての炭素は、アントロディンCのものよりもダウンフィールドにシフトしており、M1のこれらの全てのプロトンは、アントロディンCのものよりもアップフィールドにシフトしていた。HMBC実験において、図1(a)に示すように、長期間の相関が観察された。M1のNOESYスペクトルにおいて、1'-Hと、3 '4'-Hまたは6"-Hとの間にNOEが観察されたため、M1のオレフィンカップリング(2-Cおよび3-C)はZであると出願人は決定した(図1(b))。これらの結果によると、M1は、(2Z)-2-イソブチル-3-{4-[(3-メチルブタ-2-エン-1-イル)オキシ]フェニル}ブタ-2-エン二酸と規定された。無水物M4(アントロディンA)およびジカルボン酸M1を、酸及び塩基条件によりお互いに変換した。
【0020】
アントロディンA (500 mg)をMeOH 1 ml中に溶解させ、20分間25°Cで撹拌しながらトリエチルアミン(0.2 ml, 1.6 mmol)および4-ジメチルアミノピリジン(4-DMAP, 13.4 mg, 0.11 mmol)を添加した。その後混合物を、メタノールおよび水(30:70→ 100:0)でオープンODSカラムによりクロマトグラフィーにかけ、M2およびM3を含む画分を真空中で乾燥濃縮し、その後NMRおよびLC/MSで解析した。M1-M3の1H-および13C-NMRのデータを、表2に示した。M2およびM3の1H-および13C-NMRスペクトルはまた、メトキシ基を除いてM1のものに類似しており、イソブチル部分、3-メチル-2-ブテニルオキシ部分、およびパラ置換ベンゼン環の存在を示した。HMBC実験において、M2のイソブチル部分のメチレンプロトン(δ 2.16 : 1')およびカルボニル炭素(δ 174.0 : 1)は、長期間の相関を示し、M3のイソブチル部分のメチレンプロトン(δ 2.14 : 1')およびカルボニル炭素(δ 171.4 : 1)は、長期間の相関を示した(図2)。M2およびM3の構造は、それぞれ(2Z)-2-イソブチル-3-{4-[(3-メチルブタ-2-エン-1-イル)オキシ]フェニル}ブタ-2-エン二酸4-メチルエステル、および(2Z)-2-イソブチル-3-{4-[(3-メチルブタ-2-エン-1-イル)オキシ]フェニル}ブタ-2-エン二酸1-メチルエステルと規定された。
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

【0023】
実施例2
動物の治療
オスのウィスター系ラット(9週齢)を、SLC Co. (Hamamastu, Japan)より購入し、標準研究用飼料(laboratory chow)で1週間飼育し、一晩絶食させ、薬剤投与の前に水に自由にアクセスできるようにした。メタボリックケージ(metabolic cage)中にラットを隔離している間、尿と糞のサンプルを回収した。外科処理する間、前記動物を、ジエチルエーテルで軽く麻酔した。アントロディンCを経口投与(50 mg/kg)および静脈注射投与(10 mg/kg)した後、ポリエチレンチューブ(PE-10)をラットの胆管にカニューレ挿入することにより、0、0.25、0.5、1、2、4、8、12、24、36および48時間の間隔で、胆汁サンプル(n=5)を回収した。投与後、中央下腹部切開により下腹部を露出させた際に、ヘパリン化インジェクターを使用して下大静脈から血液サンプルを回収した。血液サンプルを8000 x gで15分間遠心して血漿を分離し、その後全てのサンプルを、後の解析のために-20°Cで保存した。
【0024】
解析のためのサンプル調製
尿および糞のサンプル(0.5 ml)を解凍し、3倍量のアセトニトリル中に溶解させ、その後8000 x gで15分間遠心した。LC/MS-MS解析のために、0.45 μm Milliporeシリンジフィルター(Nihon Millipore, Tokyo, Japan)に上清を透過させた。アセトニトリル3 mlで洗浄し、水6 mlで平衡化した固相抽出カートリッジ(Solid Phase Extraction cartridge、Waters Co., Milford, U.S.A.)に、血漿サンプルを透過させた。カートリッジからアセトニトリル2-3 mlで成分を溶出させ、その後溶出液を35°Cで窒素流下において気化し、残余物をLC/MS-MS解析のためにアセトニトリル100 μl中に溶解させた。M2、M3、およびM4を含む薬物動態実験のための胆汁を、同量の水により溶出し、その後37°Cの槽で12時間インキュベートし、M2-M4は、完全にM1に変換されたであろう。上記のように胆汁サンプルを処理した後、M1の量をPAD-HPLCにより算出した。
【0025】
ラットの糞、胆汁、および血漿サンプル中の代謝物の同定
糞、胆汁、および血漿サンプル中の代謝物を、LC/MS-MSにより解析した。LC/MS-MS装置は、TSKゲルODS-80 Ts (粒径, 5 μm; 4.6x150 mm i.d., Tosoh Co., Tokyo, Japan)を含むカラムを含むものであった。30°C、流速1 ml/分で、0.1% AcOHおよびアセトニトリル(35: 65)でカラムからサンプルを溶出した。以下の条件で、標準陰イオンモード(standard negative ion mode)を選択した:フルスキャン範囲(full scan range)、50-800 m/z; スキャン解像度(scan resolution), 13000 m/z /秒; ネブライザー(nebulizer), 50.0 psi; 乾燥ガス(dry gas), 10.0 l/分; 乾燥温度(dry temperature), 360°C。m/z 50から600の領域におけるフルスキャンは、ブランクサンプルに比較して、TLCにおけるアントロディンCおよび代謝物の複数のピークを示した(図3)。MSスペクトルは、M1、M2、M3、M4、M5およびアントロディンCとして、それぞれm/z 331、345、345、313、312および328 [M-H]で強いイオンピークを示した(図4、表3)。糞において、代謝物は、オリジナルのアントロディンCを有するM1-M3、M5であり;胆汁ではM2-4;そして血漿では他の未知のピークを有するM1であった。尿サンプル中には、代謝物もアントロディンCも存在しなかった。標準物質と合成化合物を比較して、維持時間 (retention time)(tR) = 8.2分である、m/z 328 [M-H]におけるMSプロフィールにお駆るピークは、アントロディンC (MW 329) に由来し、M1 (m/z 331 [M-H]-, tR = 4.4分)は、アントロディンCの加水分解によるジカルボン酸であり、M2およびM3 (m/z 345 [M-H]-, tR = 7.7および8.4分)は、M1のものより14大きく、M1の2種類のモノメチルエステルであり、M4 (m/z 313 [M-H]-, tR = 21.6分)はアントロディンAであり、M5 (m/z 312 [M-H]-, tR = 11.5分)はアントロディンBであった。アントロディンCおよびその代謝物の構造を、図5に示した。
【0026】
【表3】

【0027】
アントロディンCの代謝およびin vitroにおける腸内バクテリアによる代謝物
文献に記載されているように調製したラット(RIB)またはヒト(HIB)の腸内バクテリア(各5 g)と、Tween 20 (0.5 ml)中に溶解したアントロディンC (5 mg)と、水(1.0 ml)、またはアントロディンCの経口投与後に回収した、代謝物M2-M4を有するラット胆汁サンプル(10 ml)中に溶解したM1 (5mg)との混合物を、GAMブロス(50 ml)に添加し、嫌気的に37°Cで3日間インキュベートした。インキュベートした混合物を3倍量のアセトニトリルで抽出し、その後0.45 μmフィルターに透過させた。その後、アントロディンCをM5 (アントロディンB)に転換した。さらに、ラットにアントロディンCを経口投与した後に回収した胆汁サンプル中における代謝物(M2-M4)を、30分間インキュベートした後、完全にM1に変換することができた。一方で、インキュベート時間を3日間に延長したにもかかわらず、腸内バクテリアフローラ(flora)によってM1は代謝されなかった。
【0028】
PAD-HPLCによるM1の評価
線形性(Linearity):M1をラットブランク胆汁に溶解させ、標準溶液の7つの溶液を調製した。応答の線形性を、各レベルに対して3回注入した後、7つの濃度に対して測定した。シグナル対ノイズ比(S/N)が5であるときに、各成分に対する方法の検出限界(LOD)であると確立した。
【0029】
正確性(Accuracy):ラットの胆汁の高、中、および低標準濃縮物を、同じ日に5回、5日間連続してそれぞれ解析することにより、内部および相互アッセイ変動を測定した。
【0030】
回復性(Recovery):既知の量のM1とアントロディンCを経口投与した後、ラット胆汁サンプルと、2つの標準濃縮物を混合し、添加量の回復率を算出した。
【0031】
安定性(Stability):PAD-HPLC解析のために調製した胆汁サンプルの3つの濃縮物を、室温に12時間設置するか、または1日、3日、および5日間、4°Cで冷蔵庫に設置した。サンプル中の成分の平均ピーク領域および相対標準分散(RSD)を算出した。
【0032】
PAD-HPLC定量評価
ラット胆汁サンプル中のM1の回帰方程式は、Y = 610.22X- 3.94であり;γ = 0.9998であり;ならびに線形範囲は0.05-2.0 μg/mlであった。ラット胆汁サンプル中のM1の日内および日間変動(n=5)を、表4に示した。CVは6%を超えず、正確率(accuracy rate)は、全て85-110%の範囲内であった。回復率のCV値を表5に示し、それは、93.4%および99.6%の回復率低濃縮物および高濃縮物で、10%より低かった。安定性試験により、全ての条件下で、相対標準変動は5%ないに留まること;それゆえ、試験中サンプルは安定であることが示された。そして、正確性、回復、および安定性試験は、胆汁サンプル中の定量測定のための基準を満たした。
【0033】
【表4】

【0034】
【表5】

【0035】
ラット胆汁中の薬物動態
ラット胆汁(n=5)中における濃度-時間データを、中国薬理学会(Chinese Pharmacological Society)の数理薬理委員会(Mathematics Pharmacological Committee)により編集された薬物動態3p97のプログラムを使用して、コンピューターでフィッティングさせた。以下の薬物動態パラメーターを取得した:服用量50 mg/kgのアントロディンCを経口投与した後の、胆汁サンプル中の吸着相の半減期(half-time of absorption phase)(t1/2 (Kα))、および除去相の半減期(half-time of elimination phase)(t1/2 (Kβ))。濃度-時間曲線下の領域(AUC(i.v.)およびAUC(p.o.))を、非コンパートメント薬物動態解析の統計モーメント法により算出した。その後、クリアランス(Clm, b)および完全生物利用性(absolute bioavailability)(Fm, b)を、以下の等式により算出した:Clm, b (ml/h-kg) = 投与量(Dose) (i.v.)/ AUC (i.v.)、およびFm, b (%) = AUC (p.o.)・投与量(i.v.)/ [AUC (i.v.)・投与量(p.o.)]。データを各群の平均および標準偏差(S.D.)として表した。
【0036】
胆汁サンプル中のM1の濃度を、アントロディンCの50 mg/kgの経口投与後、および10 mg/kgのアントロディンC点滴後に算出した。M1の濃度-時間曲線を、図6に示した。薬物動態パラメーターを、図6に示した。経口投与後、は、t1/2 (Kα)およびt1/2 (Kβ)それぞれ0.95時間および12.64時間であった。AUC0-limは、1.61 (経口)および1.68時間mg/ml(点滴)であり、Clm.bは5.96 ml/時間-kgであり、Fm.b.は19.43(%)であった。アントロディンCの蓄積排出比率は、5.46+1.62 % (経口)および56.85113.40 % (点滴)であった。それゆえ、アントロディンCは、非常に早く胃腸より吸収されるのみならず、肝臓において代謝される。ラットにおいて、主な排出は胆汁-糞経路であった。
【0037】
【表6】

【0038】
実施例3
実施例2を繰り返し、結果を図7および8に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

を有する化合物
[前記式中、R1はC1-10カルボン酸またはC1-10エステルであり;
R2はC1-10カルボン酸またはC1-10エステルであり;
R3はH、C1-10アルキル、C2-10アルケニルまたはC2-10アルキニルであり;ならびに
R4はH、C2-10アルキル、C2-10アルケニルまたはC2-10アルキニルである]。
【請求項2】
R1またはR2がC1-6カルボン酸である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R1またはR2がCOOHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
R3がC1-6アルキルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
R4がイソブチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
(2Z)-2-イソブチル-3-{4-[(3-メチルブタ-2-エン-1-イル)オキシ]フェニル}ブタ-2-エン二酸、(2Z)-2-イソブチル-3-{4-[(3-メチルブタ-2-エン-1-イル)オキシ]フェニル}ブタ-2-エン二酸4-メチルエステル、または(2Z)-2-イソブチル-3-{4-[(3-メチルブタ-2-エン-1-イル)オキシ]フェニル}ブタ-2-エン二酸1-メチルエステルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
ラットにおけるアントロディンCの代謝物である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
アントロディンCがアントロディア・シナモメアの菌糸体より単離される、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】

【化2】

を有する化合物を含む組成物
[前記式中、R1はC1-10カルボン酸またはC1-10エステルであり;
R2はC1-10カルボン酸またはC1-10エステルであり;
R3はH、C1-10アルキル、C2-10アルケニルまたはC2-10アルキニルであり;ならびに
R4はH、C2-10アルケニル、C2-10アルキニル、またはイソブチルである]。
【請求項10】
前記化合物が、(2Z)-2-イソブチル-3-{4-[(3-メチルブタ-2-エン-1-イル)オキシ]フェニル}ブタ-2-エン二酸、(2Z)-2-イソブチル-3-{4-[(3-メチルブタ-2-エン-1-イル)オキシ]フェニル}ブタ-2-エン二酸4-メチルエステル、または(2Z)-2-イソブチル-3-{4-[(3-メチルブタ-2-エン-1-イル)オキシ]フェニル}ブタ-2-エン二酸1-メチルエステルである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
化合物が、抗酸化活性、抗菌活性、抗バクテリア活性、AChE阻害活性、抗けいれん活性、または血管緊張低下活性を有する、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
収縮期の血圧を低下させる、または高濃度リポタンパク質を増加させる、請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
中枢コリン作用アゴニズム活性、肝臓保護活性、抗炎症活性または抗腫瘍活性を有する、請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
腫瘍が、肝臓、腸、骨、血液、リンパ球、および乳房からなる群より選択される細胞または組織に由来する、請求項12に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−539106(P2010−539106A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524331(P2010−524331)
【出願日】平成19年9月17日(2007.9.17)
【国際出願番号】PCT/CN2007/002727
【国際公開番号】WO2009/036590
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(509122212)シンプソン・バイオテック・カンパニー・リミテッド (3)
【Fターム(参考)】