イオンビーム照射装置および半導体デバイスの製造方法
【課題】 電界放出型電子源を用いて、イオンビームの空間電荷を効率良く中和して、空間電荷によるイオンビームの発散を効果的に抑制することができる装置を提供する。
【解決手段】 このイオンビーム照射装置は、イオンビーム2の経路の近傍に設けられていて電子12を放出する電界放出型電子源10を備えている。電界放出型電子源10は、それから放出するときの電子12の、イオンビーム2の進行方向に平行な方向からの角度である入射角度が、−15度から+45度(イオンビーム2の内向きが+、外向きが−)の範囲内の角度を成す向きに配置されている。
【解決手段】 このイオンビーム照射装置は、イオンビーム2の経路の近傍に設けられていて電子12を放出する電界放出型電子源10を備えている。電界放出型電子源10は、それから放出するときの電子12の、イオンビーム2の進行方向に平行な方向からの角度である入射角度が、−15度から+45度(イオンビーム2の内向きが+、外向きが−)の範囲内の角度を成す向きに配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、イオン源から引き出したイオンビーム(この明細書では正イオンビーム)をターゲットに照射してイオン注入等の処理を施す構成のイオンビーム照射装置およびそれを用いた半導体デバイスの製造方法に関する。イオン注入を行う場合は、このイオンビーム照射装置はイオン注入装置とも呼ばれる。
【背景技術】
【0002】
イオン源から引き出したイオンビームをターゲットに照射してイオン注入等の処理を施すイオンビーム照射装置においては、装置のスループットを高めると共に、ターゲット上に形成する半導体デバイスの微細化に対応するためにイオン注入深さを浅くする等の観点から、低エネルギーかつ大電流のイオンビームを効率良く輸送することが望まれている。
【0003】
しかし、イオンビームが低エネルギーかつ大電流になるほど、イオンビームの空間電荷による発散が大きくなるため、イオンビームを効率良く輸送することが困難になる。この問題を解決する技術の一つとして、輸送中のイオンビームに外部から電子を供給して、当該電子によってイオンビームの空間電荷を中和する技術が知られている。
【0004】
その場合、中和を効率良く行うと共に、供給した電子によるターゲット表面の負帯電を抑制する等の理由から、低エネルギーの電子を多量に発生させることができる電子源を用いるのが好ましい。
【0005】
低エネルギーの電子を多量に発生させることができる電子源として、電界放出型電子源が特許文献1に記載されている。即ち、この文献には、低エネルギーの電子を多量に発生させることができる電界放出型電子源をターゲットの近くに配置し、当該電界放出型電子源から放出した電子をイオンビームの横からイオンビームにほぼ直角に入射させて、イオンビーム照射の際のターゲット表面の帯電(チャージアップ)を抑制する技術が記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−26189号公報(段落0007−0009、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されたターゲット表面の帯電抑制と、イオンビームの空間電荷中和とは、互いに目的が違う異なる技術であるが、発明者達は、特許文献1に記載されたような電界放出型電子源を、イオンビームの空間電荷中和に利用することを思いつき、検討してみた。
【0008】
しかし、特許文献1に記載の技術と同様に、電界放出型電子源から放出させた電子を横からイオンビームにほぼ直角に入射させても、イオンビームの空間電荷中和ひいてはイオンビームの発散抑制の効果は低いことが分かった。
【0009】
これは、電子を上記のように入射させても、電子の多くは、電子が持つ運動エネルギーによって、あるいはイオンビームが持つ正のビームポテンシャルによる加速も加わって、イオンビームを通り抜けてイオンビームを跨ぐように運動し、そのために上記電子のイオンビーム中での存在確率が低く、従ってイオンビームの空間電荷を効率良く中和することが難しいからである。
【0010】
そこでこの発明は、電界放出型電子源を用いて、イオンビームの空間電荷を効率良く中和して、空間電荷によるイオンビームの発散を効果的に抑制することができる装置を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係るイオンビーム照射装置は、イオンビームの経路の近傍に設けられていて電子を放出する電子源であって、導電性のカソード基板上に形成されていて先端が尖った形状をした多数の微小なエミッタ、および、この各エミッタの先端付近を微小な間隙をあけて取り囲む引出し電極を有する電界放出型電子源を備えており、かつ当該電界放出型電子源は、それから放出するときの電子の、前記イオンビームの進行方向に平行な方向からの角度である入射角度が、−15度から+45度(イオンビームの内向きが+、外向きが−)の範囲内の角度を成す向きに配置されている、ことを特徴としている。
【0012】
電界放出型電子源を上記のような向きに配置して、電界放出型電子源から放出するときの電子のイオンビームに対する入射角度を上記範囲内にすると、当該電子のイオンビーム中での存在確率が高まる。その結果、イオンビームの空間電荷を効率良く中和して、空間電荷によるイオンビームの発散を効果的に抑制することができる。
【0013】
上記入射角度は、−15度から+30度の範囲内がより好ましく、実質的に0度から+15度の範囲内が更に好ましく、実質的に0度が最も好ましい。
【0014】
上記電界放出型電子源は、イオンビームの進行方向の下流側に向けて電子を放出する向きに配置しても良いし、上流側に向けて電子を放出する向きに配置しても良い。
【0015】
上記電界放出型電子源は、イオンビームの経路の片側に配置しても良いし、イオンビームの経路を挟んで両側に配置しても良い。
【0016】
上記電界放出型電子源の位置において、イオンビームが、その進行方向Xと交差する面内におけるY方向の寸法が当該Y方向と直交するZ方向の寸法よりも大きい形状をしている場合、上記電界放出型電子源は、Y方向に沿って伸びた形状をしているのが好ましい。
【0017】
上記ターゲットを半導体基板とし、上記イオンビーム照射装置を用いて、当該半導体基板にイオンビームを照射してイオン注入を行って、当該半導体基板上に複数の半導体デバイスを製造しても良い。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、電界放出型電子源を上記のような向きに配置して、電界放出型電子源から放出するときの電子のイオンビームに対する入射角度を上記範囲内にすることによって、当該電子のイオンビーム中での存在確率が高まるので、イオンビームの空間電荷を効率良く中和して、空間電荷によるイオンビームの発散を効果的に抑制することができる。その結果、イオンビームの輸送効率を向上させることができる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、入射角度を上記範囲内にすることによって、電界放出型電子源から放出した電子によってイオンビームの空間電荷をより効率良く中和して、空間電荷によるイオンビームの発散をより効果的に抑制することができる。その結果、イオンビームの輸送効率をより向上させることができる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、入射角度を上記範囲内にすることによって、電界放出型電子源から放出した電子によってイオンビームの空間電荷をより一層効率良く中和して、空間電荷によるイオンビームの発散をより一層効果的に抑制することができる。その結果、イオンビームの輸送効率をより一層向上させることができる。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、入射角度を実質的に0度にすることによって、電界放出型電子源から放出した電子によってイオンビームの空間電荷を更に効率良く中和して、空間電荷によるイオンビームの発散を更に効果的に抑制することができる。その結果、イオンビームの輸送効率を更に向上させることができる。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、電界放出型電子源を下流側に向けて配置することによって、電界放出型電子源をターゲットよりも上流側に離して配置して、ターゲットまでの長い距離に亘ってイオンビームの発散を効果的に抑制することができる。
【0023】
請求項6に記載の発明によれば、電界放出型電子源を上流側に向けて配置することによって、電界放出型電子源から放出した電子によってイオンビームの空間電荷を効率良く中和して空間電荷によるイオンビームの発散を効果的に抑制することができることに加えて、電界放出型電子源から放出した電子がターゲットに入射しにくくなるので、当該電子によるターゲット表面の負帯電を抑制することができるという更なる効果を奏する。これは、電界放出型電子源から放出する電子のエネルギーがあまり低くない場合に特に大きな効果を発揮する。
【0024】
請求項7に記載の発明によれば、電界放出型電子源をイオンビームの経路を挟んで両側に配置することによって、イオンビームにその両側から電子を供給することができるので、イオンビームの空間電荷をより効率良く中和して、空間電荷によるイオンビームの発散をより効果的に抑制することができる。
【0025】
請求項8に記載の発明によれば、電界放出型電子源がY方向に沿って伸びた形状をしているので、イオンビームが、Y方向の走査を経ることによって、または走査を経ることなく、Y方向に長い形状をしていても、イオンビームのより広い領域に亘ってより均一にイオンビームの空間電荷を中和することができる。
【0026】
請求項9に記載の発明によれば、空間電荷が中和されて発散の少ないイオンビームを用いて、半導体基板上に複数の半導体デバイスを製造することができるので、同一の半導体基板上に特性の揃った複数の半導体デバイスを製造することができる。その結果、歩留まりが向上し、半導体デバイスの生産効率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1は、この発明に係るイオンビーム照射装置の一実施形態を示す概略側面図である。このイオンビーム照射装置は、イオン源1から引き出したイオンビーム2を、ホルダ6に保持されたターゲット4に照射して、ターゲット4にイオン注入等の処理を施すよう構成されている。ホルダ6は、例えば、接地電位にある。イオンビーム2の輸送経路およびホルダ6は、図示しない真空容器内に配置されていて、真空雰囲気中に置かれる。
【0028】
ターゲット4は、例えば、半導体基板、ガラス基板等である。
【0029】
イオン源1からホルダ6までのイオンビーム2の輸送経路には、必要に応じて、イオンビーム2の質量分離を行う質量分離器、イオンビーム2の走査を行う走査器等が設けられる。
【0030】
イオンビーム2の経路の近傍に、電子12を放出する電界放出型電子源10が設けられている。この実施形態では、電界放出型電子源10は、イオンビーム2の進行方向Xの下流側に向けて電子12を放出する向きに配置されている。更に、電界放出型電子源10は、イオンビーム2の経路を挟んで両側(Z方向の両側)に配置されている。
【0031】
電界放出型電子源10の位置において、イオンビーム2は、断面形状がスポット状をしていても良いし、図2に示す例のように、イオンビーム2の進行方向Xと交差する面内におけるY方向の寸法が当該Y方向と交差するZ方向の寸法よりも大きい(より具体的には、十分に大きい)、いわゆるリボン状(これはシート状または帯状とも呼ばれる)の形状をしていても良い。リボン状と言っても、厚さが紙のように薄いという意味ではない。
【0032】
リボン状のイオンビーム2は、例えば図2に示すようなスポット状のイオンビーム2aをY方向に往復走査することによってリボン状をしていても良いし、走査を経ることなく、イオン源1から引き出した状態でリボン状をしていても良い。
【0033】
ターゲット4は、この実施形態では、ホルダ6と共に、ターゲット駆動装置8によって、Y方向と交差する方向(即ち、Z方向に沿う方向、またはそれから傾いた方向)に機械的に往復駆動される。イオンビーム2のY方向の幅は、ターゲット4の同方向の寸法よりも若干大きく、このことと、上記往復駆動とによって、ターゲット4の全面にイオンビーム2を照射することができる。
【0034】
なお、上記Y方向を水平方向と見てもよいし、垂直方向と見ても良いし、それらから傾いた方向と見ても良い。
【0035】
電界放出型電子源10は、図3にその一部分を拡大して示すように、導電性のカソード基板16と、このカソード基板16の表面に形成されていて先端が尖った形状をした多数の微小なエミッタ18と、この各エミッタ18の先端付近を微小な間隙26をあけて取り囲む、各エミッタ18に共通の引出し電極(ゲート電極とも呼ばれる)22と、この引出し電極22とカソード基板16との間に設けられていて両者間を絶縁する絶縁層20とを備えている。カソード基板16と各エミッタ18とは互いに電気的に導通している。
【0036】
各エミッタ18は、先端が鋭く尖った形状をしている。換言すれば、先端ほど尖った形状をしている。図3に示した例は円錐状をしているが、それ以外に角錐状等の形状をしていても良い。
【0037】
引出し電極22は、各エミッタ18に対応する位置に微小な小孔24を有している。各小孔24は、例えば円形をしており、この各小孔24の中心部に各エミッタ18の先端付近が、小孔24の内壁との間に微小な間隙26をあけて位置している。
【0038】
各エミッタ18の高さ、基底部の直径D3 、各小孔24の直径、各間隙26の寸法は、μm単位の微小なものである。
【0039】
上記のようなエミッタ18をカソード基板16上に多数形成している。多数というのは数十個〜数百個というような数ではなく、簡単に言えば、少なくとも1万個程度以上ということである。具体例を示せば、この実施形態の電界放出型電子源10は、図2に示すように、1個の電界放出型電子源10内に、複数個の電子源アレイ14を有しており、各電子源アレイ14はそれぞれ1万〜2万個程度のエミッタ18を有している。各電界放出型電子源10を構成する電子源アレイ14の数は、図2に示す3個に限られるものではない。
【0040】
再び図3を参照して、電界放出型電子源10のカソード基板16と引出し電極22との間には、引出し電極22を正極側にして、各エミッタ18から電界放出によって電子12を放出させる引出し電圧V1 を印加する直流の引出し電源32が接続されている。引出し電圧V1 は、例えば、50V〜100V程度である。
【0041】
カソード基板16と接地電位部との間には、必要に応じて、図3に示す例のように、電界放出型電子源10から放出する電子12のエネルギーを調整するエネルギー調整電源36を接続しておいても良い。その出力電圧V3 は、例えば、0V〜50V程度である。
【0042】
この電界放出型電子源10は、上記のような低い引出し電圧V1 で電子12を放出させることができるので、低エネルギーの電子12を放出することができる。しかも、多数のエミッタ18を有しているので、電子12を多量に発生させることができる。例えば、1個の電子源アレイ14から100μA〜1mA程度の電子12を発生させることができる。電子源アレイ14を複数個有していれば、その個数倍の量の電子12を発生させることができる。
【0043】
また、電界放出型電子源10は、半導体デバイスに似た構造をしているので、非常に小型化することができる。しかも、イオンビーム2の経路を真空雰囲気に保つ真空容器内に配置して動作させることができる。従って、電界放出型電子源10をイオンビーム2の経路に非常に近づけて配置することができる。
【0044】
電界放出型電子源10は、図4に示す例のように、引出し電極22よりも電子12の放出方向側に引出し電極22に沿って設けられていて、多数の小孔30を有する第2引出し電極28を更に備えるものでも良い。両引出し電極22、28間は、空間または図示しない絶縁層等を介して電気的に絶縁されている。カソード基板16と第2引出し電極28との間には、両者間に、電界放出型電子源10から放出する電子12のエネルギーを調整する第2引出し電圧V2 を印加する直流の第2引出し電源34が接続されている。V2 >V1 とすれば、放出する電子12のエネルギーをより大きくする加速モードで運転し、V2 <V1 とすれば、放出する電子12のエネルギーをより小さくする減速モードで運転することができる。
【0045】
図5に示すように、電界放出型電子源10から放出するときの電子12の、イオンビーム2の進行方向Xに平行な方向40からの角度θを入射角度と呼ぶことにする。この入射角度θは、イオンビーム2の内向きが+(正)、外向きが−(負)とする。
【0046】
上記特許文献1に記載されている電界放出型電子源は、この入射角度θでいえば、それが約90度を成す向きに配置されている。これに対して、この実施形態では、各電界放出型電子源10は、入射角度θが例えば−15度から+45度の範囲内の角度を成す向きに配置されている。
【0047】
各電界放出型電子源10を、このような90度よりも十分に小さい入射角度θの向きに配置することができるのは、前述したように、各電界放出型電子源10は非常に小型化することができ、かつ真空雰囲気中で動作させることができるので、各電界放出型電子源10をイオンビーム2の経路に非常に近づけて配置することができるからである。
【0048】
また、各電界放出型電子源10から電子12を上記のような小さい入射角度θで放出しても、イオンビーム2内およびその周りにはイオンビーム2が作る正のビームポテンシャルVP が存在するので、当該ビームポテンシャルVP によって電子12はイオンビーム2に引き込まれて、イオンビーム2の空間電荷の中和に寄与することができる。
【0049】
しかも、各電界放出型電子源10から放出するときの電子12の入射角度θを上記範囲内にすると、電子12がイオンビーム2を通り抜けてイオンビーム2を跨ぐように運動する割合が減るので、電子12のイオンビーム2中での存在確率が高まる。その結果、イオンビーム2の空間電荷を効率良く中和して、空間電荷によるイオンビーム2の発散を効果的に抑制することができる。従って、イオンビーム2の輸送効率を向上させることができる。
【0050】
上記電子12の入射角度θとイオンビーム2の中和、即ち発散抑制との関係をシミュレーションした結果を次に説明する。
【0051】
図7に、電子12を供給しないときのイオンビーム2の空間電荷による発散の一例を示す。これ以下のシミュレーションにおいて、イオンビーム2のイオン種は31P+ 、エネルギーは500eV、電流は25μA、X=0mmの位置における直径D1 は50mmとした。電子12を供給しないときは、X=350mmの位置において、イオンビーム2の直径D2 は193mmであり、大きく発散していることが分かる。
【0052】
図8に、電子12を供給してイオンビーム2の中和を行うシミュレーションの初期条件を示す。X=0mmの位置において、YZ平面内に、イオンビーム2を構成するイオン2bを分散させて配置し、その周囲に電子12を円形に配置した。この電子12を、様々な入射角度θで放出した。このとき、電子12のエネルギーは10eV、イオンビーム電流Ii に対する電子電流Ie の比Ie /Ii は34にした。
【0053】
図9に、入射角度θが89度の例を示す。これは、特許文献1に記載された電界放出型電子源の配置に近いものである。電子12はイオンビーム2を何度も通り抜けて往復振動していることが分かる。X=350mmの位置におけるイオンビーム2の直径D2 は186mmであり、イオンビーム2は大きく発散しており、電子12はイオンビーム2の空間電荷中和に殆ど寄与していないことが分かる。
【0054】
図10に、入射角度θが30度の例を示す。電子12の殆どがイオンビーム2の軌道内に捕捉されていることが分かる。X=350mmの位置におけるイオンビーム2の直径D2 は116mmであり、電子12がイオンビーム2の空間電荷中和に効率良く寄与して、イオンビーム2の発散が効果的に抑制されていることが分かる。
【0055】
図11に、入射角度θが15度の例を示す。電子12の殆どがイオンビーム2の軌道内に捕捉されていることが分かる。X=350mmの位置におけるイオンビーム2の直径D2 は113mmであり、電子12がイオンビーム2の空間電荷中和により効率良く寄与して、イオンビーム2の発散がより効果的に抑制されていることが分かる。
【0056】
図12に、入射角度θが0度の例を示す。X=350mmの位置におけるイオンビーム2の直径D2 は111mmであり、電子12がイオンビーム2の空間電荷中和に更に効率良く寄与して、イオンビーム2の発散が更に効果的に抑制されていることが分かる。
【0057】
図13に、入射角度θが−15度の例を示す。入射角度θが負でも、その絶対値がこのように小さければ、電子12の殆どが、イオンビーム2の正のビームポテンシャルによってイオンビーム2の軌道内に捕捉されることが分かる。X=350mmの位置におけるイオンビーム2の直径D2 は120mmであり、電子12がイオンビーム2の空間電荷中和に効率良く寄与して、イオンビーム2の発散が効果的に抑制されていることが分かる。
【0058】
上記以外の入射角度θでもシミュレーションを行った。図14に、各シミュレーションにおけるX=350mmの位置でのイオンビーム2の直径D2 を、電子12の入射角度θとの関係でまとめて示す。入射角度θが負側に大きくなるとイオンビーム2の発散が大きくなるのは、電子12がイオンビーム2から遠ざかる方向に放出され、イオンビーム2の正のビームポテンシャルに捕捉されにくくなるからであると考えられる。この図からも分かるように、電子12の入射角度θは、−15度から+45度の範囲内が好ましく、−15度から+30度の範囲内がより好ましく、実質的に0度から+15度の範囲内が更に好ましく、実質的に0度が最も好ましい。
【0059】
上記シミュレーションは、電子12をイオンビーム2の周囲から放出したものであるのに対して、図1の実施形態はイオンビーム2を挟む両側から、即ちイオンビーム2を挟む両側に配置された電界放出型電子源10から電子12を放出するものである点で両者は条件が若干異なるけれども、イオンビーム2の近傍から電子12を放出する点では共通しているので、上記実施形態の場合も、電界放出型電子源10から放出する電子12の入射角度θを上記のような範囲にすることによって、上記シミュレーションと同じような傾向の結果が得られることは、上記シミュレーションの結果から推定することができよう。
【0060】
即ち、上記各電界放出型電子源10は、それから放出する電子12の入射角度θが、−15度から+45度の範囲内の角度を成す向きに配置するのが好ましく、−15度から+30度の範囲内の角度を成す向きに配置するのがより好ましく、実質的に0度から+15度の範囲内の角度を成す向きに配置するのが更に好ましく、実質的に0度の角度を成す向きに配置するのが最も好ましい。入射角度θを小さくするほど、空間電荷によるイオンビーム2の発散をより抑制して、イオンビーム2の輸送効率をより向上させることができる。
【0061】
再び図1を参照して、電界放出型電子源10は、イオン源1からホルダ6までのイオンビーム2の経路のどこに配置しても良いけれども、イオンビーム2に電界や磁界を印加する機器が存在するとそこを電子12が通り抜けるのが難しくなるので、そのような機器とイオンビーム2の発散を抑制したい場所との間に、例えばそのような機器よりも下流側に配置するのが好ましい。イオン源1からホルダ6までのイオンビーム2の経路の複数箇所に電界放出型電子源10を設けても良い。
【0062】
電界放出型電子源10を、図1に示す実施形態のように下流側に向けて配置することによって、電界放出型電子源10をターゲット4よりも上流側に離して配置して、ターゲット4までの長い距離に亘ってイオンビーム2の発散を効果的に抑制することができる。
【0063】
電界放出型電子源10は、イオンビーム2の経路の片側に配置しても良いけれども、例えば図1、図2に示す実施形態のように、イオンビーム2の経路を挟んで両側に配置するのが好ましい。そのようにすると、イオンビーム2にその両側から電子12を供給することができるので、イオンビーム2の空間電荷をより効率良く中和して、空間電荷によるイオンビーム2の発散をより効果的に抑制することができる。必要に応じて、イオンビーム2の経路を取り囲む四方に、電界放出型電子源10を配置しても良い。そのようにすれば、上述したシミュレーションにより近づく。
【0064】
イオンビーム2が、例えば図2に示す例のようにリボン状の形状をしている場合、電界放出型電子源10は、例えば図2に示す例のように、Y方向に、即ちリボン状のイオンビーム2の幅方向に沿って長く伸びた形状をしているのが好ましい。そのようにすれば、イオンビーム2がY方向に長い形状をしていても、イオンビーム2のより広い領域に亘ってより均一にイオンビーム2の空間電荷を中和することができる。
【0065】
電界放出型電子源10は、図6に示す実施形態のように、イオンビーム2の上流側に向けて電子12を放出する向きに配置しても良い。この場合、電界放出型電子源10はホルダ6の上流側近傍に配置するのが好ましい。これ以外の事項については、上記実施形態の場合と同様であるので、重複説明を省略する。
【0066】
電界放出型電子源10を上流側に向けて配置しても、それから放出した電子12は上流側に向かって移動しつつイオンビーム2が持つ正のビームポテンシャルVP によって捕捉されるので、電界放出型電子源10を下流側に向けて配置した上記実施形態の場合と同様の作用によって、イオンビーム2の空間電荷を効率良く中和して空間電荷によるイオンビーム2の発散を効果的に抑制することができる。
【0067】
しかも、電界放出型電子源10を上流側に向けて配置することによって、電界放出型電子源10から放出した電子12がターゲット4に入射しにくくなるので、電子12がターゲット4に入射することによってターゲット4の表面に負帯電が生じるのを抑制することができる。これは、電界放出型電子源10から放出する電子12のエネルギーがあまり低くない場合に特に大きな効果を発揮する。
【0068】
上記ターゲット4を半導体基板(例えばシリコン基板)として、上記各実施形態のイオンビーム照射装置を用いて、当該半導体基板に上記イオンビーム2を照射してイオン注入を行って、当該半導体基板上に複数の半導体デバイスを製造しても良い。例えば、上記各実施形態のイオンビーム照射装置を、イオン注入によって半導体基板の表面または表層部の所要領域に所要のイオン(例えば不純物となるイオン)を注入する工程に用いて、半導体基板上に半導体デバイスとして複数の集積回路(例えばシステムLSI等)を製造しても良い。
【0069】
近年は、半導体基板上に形成する半導体デバイスの微細化が非常に進んでおり(換言すれば、超高集積化しており)、そのような半導体デバイスにイオン注入を行う場合、半導体基板の表面に形成された溝または凸状の部分に、イオン注入されない陰の部分が生じるのを防止することが課題となっている。そうしないと、形成される半導体デバイスの特性にばらつきが生じる。不良デバイスが生じることもある。
【0070】
上記課題を解決するためには、平行性の良いイオンビームを半導体基板に照射する必要があるが、イオンビームの空間電荷による発散が大きいと、平行性の良いイオンビームを半導体基板に照射することは難しい。これに対して、上記各実施形態のイオンビーム照射装置を用いれば、空間電荷が中和されて発散の少ないイオンビーム2を用いて、半導体基板上に複数の半導体デバイスを製造することができるので、同一の半導体基板上に特性の揃った複数の半導体デバイスを製造することができる。その結果、歩留まりが向上し、半導体デバイスの生産効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】この発明に係るイオンビーム照射装置の一実施形態を示す概略側面図である。
【図2】図1に示す電界放出型電子源およびイオンビームの例を線A−A方向に見て示す正面図である。
【図3】1引出し電極型の電界放出型電子源の一つのエミッタ周りを拡大して、電源の一例と共に示す図である。
【図4】2引出し電極型の電界放出型電子源の一つのエミッタ周りを拡大して、電源の一例と共に示す図である。
【図5】電界放出型電子源から放出される電子のイオンビームに対する入射角度を説明するための図である。
【図6】この発明に係るイオンビーム照射装置の他の実施形態を示す概略側面図である。
【図7】電子を供給しないときのイオンビームの空間電荷による発散をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
【図8】電子を供給してイオンビームの中和を行うシミュレーションの初期条件を示す図である。
【図9】イオンビームに電子を89度の入射角度で供給したときの電子の軌道およびイオンビームの発散をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
【図10】イオンビームに電子を30度の入射角度で供給したときの電子の軌道およびイオンビームの発散をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
【図11】イオンビームに電子を15度の入射角度で供給したときの電子の軌道およびイオンビームの発散をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
【図12】イオンビームに電子を0度の入射角度で供給したときの電子の軌道およびイオンビームの発散をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
【図13】イオンビームに電子を−15度の入射角度で供給したときの電子の軌道およびイオンビームの発散をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
【図14】X=350mmの位置でのイオンビームの直径を、電子の入射角度との関係でまとめて示す図である。
【符号の説明】
【0072】
1 イオン源
2 イオンビーム
4 ターゲット
6 ホルダ
10 電界放出型電子源
12 電子
16 カソード基板
18 エミッタ
θ 入射角度
【技術分野】
【0001】
この発明は、イオン源から引き出したイオンビーム(この明細書では正イオンビーム)をターゲットに照射してイオン注入等の処理を施す構成のイオンビーム照射装置およびそれを用いた半導体デバイスの製造方法に関する。イオン注入を行う場合は、このイオンビーム照射装置はイオン注入装置とも呼ばれる。
【背景技術】
【0002】
イオン源から引き出したイオンビームをターゲットに照射してイオン注入等の処理を施すイオンビーム照射装置においては、装置のスループットを高めると共に、ターゲット上に形成する半導体デバイスの微細化に対応するためにイオン注入深さを浅くする等の観点から、低エネルギーかつ大電流のイオンビームを効率良く輸送することが望まれている。
【0003】
しかし、イオンビームが低エネルギーかつ大電流になるほど、イオンビームの空間電荷による発散が大きくなるため、イオンビームを効率良く輸送することが困難になる。この問題を解決する技術の一つとして、輸送中のイオンビームに外部から電子を供給して、当該電子によってイオンビームの空間電荷を中和する技術が知られている。
【0004】
その場合、中和を効率良く行うと共に、供給した電子によるターゲット表面の負帯電を抑制する等の理由から、低エネルギーの電子を多量に発生させることができる電子源を用いるのが好ましい。
【0005】
低エネルギーの電子を多量に発生させることができる電子源として、電界放出型電子源が特許文献1に記載されている。即ち、この文献には、低エネルギーの電子を多量に発生させることができる電界放出型電子源をターゲットの近くに配置し、当該電界放出型電子源から放出した電子をイオンビームの横からイオンビームにほぼ直角に入射させて、イオンビーム照射の際のターゲット表面の帯電(チャージアップ)を抑制する技術が記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−26189号公報(段落0007−0009、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されたターゲット表面の帯電抑制と、イオンビームの空間電荷中和とは、互いに目的が違う異なる技術であるが、発明者達は、特許文献1に記載されたような電界放出型電子源を、イオンビームの空間電荷中和に利用することを思いつき、検討してみた。
【0008】
しかし、特許文献1に記載の技術と同様に、電界放出型電子源から放出させた電子を横からイオンビームにほぼ直角に入射させても、イオンビームの空間電荷中和ひいてはイオンビームの発散抑制の効果は低いことが分かった。
【0009】
これは、電子を上記のように入射させても、電子の多くは、電子が持つ運動エネルギーによって、あるいはイオンビームが持つ正のビームポテンシャルによる加速も加わって、イオンビームを通り抜けてイオンビームを跨ぐように運動し、そのために上記電子のイオンビーム中での存在確率が低く、従ってイオンビームの空間電荷を効率良く中和することが難しいからである。
【0010】
そこでこの発明は、電界放出型電子源を用いて、イオンビームの空間電荷を効率良く中和して、空間電荷によるイオンビームの発散を効果的に抑制することができる装置を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係るイオンビーム照射装置は、イオンビームの経路の近傍に設けられていて電子を放出する電子源であって、導電性のカソード基板上に形成されていて先端が尖った形状をした多数の微小なエミッタ、および、この各エミッタの先端付近を微小な間隙をあけて取り囲む引出し電極を有する電界放出型電子源を備えており、かつ当該電界放出型電子源は、それから放出するときの電子の、前記イオンビームの進行方向に平行な方向からの角度である入射角度が、−15度から+45度(イオンビームの内向きが+、外向きが−)の範囲内の角度を成す向きに配置されている、ことを特徴としている。
【0012】
電界放出型電子源を上記のような向きに配置して、電界放出型電子源から放出するときの電子のイオンビームに対する入射角度を上記範囲内にすると、当該電子のイオンビーム中での存在確率が高まる。その結果、イオンビームの空間電荷を効率良く中和して、空間電荷によるイオンビームの発散を効果的に抑制することができる。
【0013】
上記入射角度は、−15度から+30度の範囲内がより好ましく、実質的に0度から+15度の範囲内が更に好ましく、実質的に0度が最も好ましい。
【0014】
上記電界放出型電子源は、イオンビームの進行方向の下流側に向けて電子を放出する向きに配置しても良いし、上流側に向けて電子を放出する向きに配置しても良い。
【0015】
上記電界放出型電子源は、イオンビームの経路の片側に配置しても良いし、イオンビームの経路を挟んで両側に配置しても良い。
【0016】
上記電界放出型電子源の位置において、イオンビームが、その進行方向Xと交差する面内におけるY方向の寸法が当該Y方向と直交するZ方向の寸法よりも大きい形状をしている場合、上記電界放出型電子源は、Y方向に沿って伸びた形状をしているのが好ましい。
【0017】
上記ターゲットを半導体基板とし、上記イオンビーム照射装置を用いて、当該半導体基板にイオンビームを照射してイオン注入を行って、当該半導体基板上に複数の半導体デバイスを製造しても良い。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、電界放出型電子源を上記のような向きに配置して、電界放出型電子源から放出するときの電子のイオンビームに対する入射角度を上記範囲内にすることによって、当該電子のイオンビーム中での存在確率が高まるので、イオンビームの空間電荷を効率良く中和して、空間電荷によるイオンビームの発散を効果的に抑制することができる。その結果、イオンビームの輸送効率を向上させることができる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、入射角度を上記範囲内にすることによって、電界放出型電子源から放出した電子によってイオンビームの空間電荷をより効率良く中和して、空間電荷によるイオンビームの発散をより効果的に抑制することができる。その結果、イオンビームの輸送効率をより向上させることができる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、入射角度を上記範囲内にすることによって、電界放出型電子源から放出した電子によってイオンビームの空間電荷をより一層効率良く中和して、空間電荷によるイオンビームの発散をより一層効果的に抑制することができる。その結果、イオンビームの輸送効率をより一層向上させることができる。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、入射角度を実質的に0度にすることによって、電界放出型電子源から放出した電子によってイオンビームの空間電荷を更に効率良く中和して、空間電荷によるイオンビームの発散を更に効果的に抑制することができる。その結果、イオンビームの輸送効率を更に向上させることができる。
【0022】
請求項5に記載の発明によれば、電界放出型電子源を下流側に向けて配置することによって、電界放出型電子源をターゲットよりも上流側に離して配置して、ターゲットまでの長い距離に亘ってイオンビームの発散を効果的に抑制することができる。
【0023】
請求項6に記載の発明によれば、電界放出型電子源を上流側に向けて配置することによって、電界放出型電子源から放出した電子によってイオンビームの空間電荷を効率良く中和して空間電荷によるイオンビームの発散を効果的に抑制することができることに加えて、電界放出型電子源から放出した電子がターゲットに入射しにくくなるので、当該電子によるターゲット表面の負帯電を抑制することができるという更なる効果を奏する。これは、電界放出型電子源から放出する電子のエネルギーがあまり低くない場合に特に大きな効果を発揮する。
【0024】
請求項7に記載の発明によれば、電界放出型電子源をイオンビームの経路を挟んで両側に配置することによって、イオンビームにその両側から電子を供給することができるので、イオンビームの空間電荷をより効率良く中和して、空間電荷によるイオンビームの発散をより効果的に抑制することができる。
【0025】
請求項8に記載の発明によれば、電界放出型電子源がY方向に沿って伸びた形状をしているので、イオンビームが、Y方向の走査を経ることによって、または走査を経ることなく、Y方向に長い形状をしていても、イオンビームのより広い領域に亘ってより均一にイオンビームの空間電荷を中和することができる。
【0026】
請求項9に記載の発明によれば、空間電荷が中和されて発散の少ないイオンビームを用いて、半導体基板上に複数の半導体デバイスを製造することができるので、同一の半導体基板上に特性の揃った複数の半導体デバイスを製造することができる。その結果、歩留まりが向上し、半導体デバイスの生産効率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1は、この発明に係るイオンビーム照射装置の一実施形態を示す概略側面図である。このイオンビーム照射装置は、イオン源1から引き出したイオンビーム2を、ホルダ6に保持されたターゲット4に照射して、ターゲット4にイオン注入等の処理を施すよう構成されている。ホルダ6は、例えば、接地電位にある。イオンビーム2の輸送経路およびホルダ6は、図示しない真空容器内に配置されていて、真空雰囲気中に置かれる。
【0028】
ターゲット4は、例えば、半導体基板、ガラス基板等である。
【0029】
イオン源1からホルダ6までのイオンビーム2の輸送経路には、必要に応じて、イオンビーム2の質量分離を行う質量分離器、イオンビーム2の走査を行う走査器等が設けられる。
【0030】
イオンビーム2の経路の近傍に、電子12を放出する電界放出型電子源10が設けられている。この実施形態では、電界放出型電子源10は、イオンビーム2の進行方向Xの下流側に向けて電子12を放出する向きに配置されている。更に、電界放出型電子源10は、イオンビーム2の経路を挟んで両側(Z方向の両側)に配置されている。
【0031】
電界放出型電子源10の位置において、イオンビーム2は、断面形状がスポット状をしていても良いし、図2に示す例のように、イオンビーム2の進行方向Xと交差する面内におけるY方向の寸法が当該Y方向と交差するZ方向の寸法よりも大きい(より具体的には、十分に大きい)、いわゆるリボン状(これはシート状または帯状とも呼ばれる)の形状をしていても良い。リボン状と言っても、厚さが紙のように薄いという意味ではない。
【0032】
リボン状のイオンビーム2は、例えば図2に示すようなスポット状のイオンビーム2aをY方向に往復走査することによってリボン状をしていても良いし、走査を経ることなく、イオン源1から引き出した状態でリボン状をしていても良い。
【0033】
ターゲット4は、この実施形態では、ホルダ6と共に、ターゲット駆動装置8によって、Y方向と交差する方向(即ち、Z方向に沿う方向、またはそれから傾いた方向)に機械的に往復駆動される。イオンビーム2のY方向の幅は、ターゲット4の同方向の寸法よりも若干大きく、このことと、上記往復駆動とによって、ターゲット4の全面にイオンビーム2を照射することができる。
【0034】
なお、上記Y方向を水平方向と見てもよいし、垂直方向と見ても良いし、それらから傾いた方向と見ても良い。
【0035】
電界放出型電子源10は、図3にその一部分を拡大して示すように、導電性のカソード基板16と、このカソード基板16の表面に形成されていて先端が尖った形状をした多数の微小なエミッタ18と、この各エミッタ18の先端付近を微小な間隙26をあけて取り囲む、各エミッタ18に共通の引出し電極(ゲート電極とも呼ばれる)22と、この引出し電極22とカソード基板16との間に設けられていて両者間を絶縁する絶縁層20とを備えている。カソード基板16と各エミッタ18とは互いに電気的に導通している。
【0036】
各エミッタ18は、先端が鋭く尖った形状をしている。換言すれば、先端ほど尖った形状をしている。図3に示した例は円錐状をしているが、それ以外に角錐状等の形状をしていても良い。
【0037】
引出し電極22は、各エミッタ18に対応する位置に微小な小孔24を有している。各小孔24は、例えば円形をしており、この各小孔24の中心部に各エミッタ18の先端付近が、小孔24の内壁との間に微小な間隙26をあけて位置している。
【0038】
各エミッタ18の高さ、基底部の直径D3 、各小孔24の直径、各間隙26の寸法は、μm単位の微小なものである。
【0039】
上記のようなエミッタ18をカソード基板16上に多数形成している。多数というのは数十個〜数百個というような数ではなく、簡単に言えば、少なくとも1万個程度以上ということである。具体例を示せば、この実施形態の電界放出型電子源10は、図2に示すように、1個の電界放出型電子源10内に、複数個の電子源アレイ14を有しており、各電子源アレイ14はそれぞれ1万〜2万個程度のエミッタ18を有している。各電界放出型電子源10を構成する電子源アレイ14の数は、図2に示す3個に限られるものではない。
【0040】
再び図3を参照して、電界放出型電子源10のカソード基板16と引出し電極22との間には、引出し電極22を正極側にして、各エミッタ18から電界放出によって電子12を放出させる引出し電圧V1 を印加する直流の引出し電源32が接続されている。引出し電圧V1 は、例えば、50V〜100V程度である。
【0041】
カソード基板16と接地電位部との間には、必要に応じて、図3に示す例のように、電界放出型電子源10から放出する電子12のエネルギーを調整するエネルギー調整電源36を接続しておいても良い。その出力電圧V3 は、例えば、0V〜50V程度である。
【0042】
この電界放出型電子源10は、上記のような低い引出し電圧V1 で電子12を放出させることができるので、低エネルギーの電子12を放出することができる。しかも、多数のエミッタ18を有しているので、電子12を多量に発生させることができる。例えば、1個の電子源アレイ14から100μA〜1mA程度の電子12を発生させることができる。電子源アレイ14を複数個有していれば、その個数倍の量の電子12を発生させることができる。
【0043】
また、電界放出型電子源10は、半導体デバイスに似た構造をしているので、非常に小型化することができる。しかも、イオンビーム2の経路を真空雰囲気に保つ真空容器内に配置して動作させることができる。従って、電界放出型電子源10をイオンビーム2の経路に非常に近づけて配置することができる。
【0044】
電界放出型電子源10は、図4に示す例のように、引出し電極22よりも電子12の放出方向側に引出し電極22に沿って設けられていて、多数の小孔30を有する第2引出し電極28を更に備えるものでも良い。両引出し電極22、28間は、空間または図示しない絶縁層等を介して電気的に絶縁されている。カソード基板16と第2引出し電極28との間には、両者間に、電界放出型電子源10から放出する電子12のエネルギーを調整する第2引出し電圧V2 を印加する直流の第2引出し電源34が接続されている。V2 >V1 とすれば、放出する電子12のエネルギーをより大きくする加速モードで運転し、V2 <V1 とすれば、放出する電子12のエネルギーをより小さくする減速モードで運転することができる。
【0045】
図5に示すように、電界放出型電子源10から放出するときの電子12の、イオンビーム2の進行方向Xに平行な方向40からの角度θを入射角度と呼ぶことにする。この入射角度θは、イオンビーム2の内向きが+(正)、外向きが−(負)とする。
【0046】
上記特許文献1に記載されている電界放出型電子源は、この入射角度θでいえば、それが約90度を成す向きに配置されている。これに対して、この実施形態では、各電界放出型電子源10は、入射角度θが例えば−15度から+45度の範囲内の角度を成す向きに配置されている。
【0047】
各電界放出型電子源10を、このような90度よりも十分に小さい入射角度θの向きに配置することができるのは、前述したように、各電界放出型電子源10は非常に小型化することができ、かつ真空雰囲気中で動作させることができるので、各電界放出型電子源10をイオンビーム2の経路に非常に近づけて配置することができるからである。
【0048】
また、各電界放出型電子源10から電子12を上記のような小さい入射角度θで放出しても、イオンビーム2内およびその周りにはイオンビーム2が作る正のビームポテンシャルVP が存在するので、当該ビームポテンシャルVP によって電子12はイオンビーム2に引き込まれて、イオンビーム2の空間電荷の中和に寄与することができる。
【0049】
しかも、各電界放出型電子源10から放出するときの電子12の入射角度θを上記範囲内にすると、電子12がイオンビーム2を通り抜けてイオンビーム2を跨ぐように運動する割合が減るので、電子12のイオンビーム2中での存在確率が高まる。その結果、イオンビーム2の空間電荷を効率良く中和して、空間電荷によるイオンビーム2の発散を効果的に抑制することができる。従って、イオンビーム2の輸送効率を向上させることができる。
【0050】
上記電子12の入射角度θとイオンビーム2の中和、即ち発散抑制との関係をシミュレーションした結果を次に説明する。
【0051】
図7に、電子12を供給しないときのイオンビーム2の空間電荷による発散の一例を示す。これ以下のシミュレーションにおいて、イオンビーム2のイオン種は31P+ 、エネルギーは500eV、電流は25μA、X=0mmの位置における直径D1 は50mmとした。電子12を供給しないときは、X=350mmの位置において、イオンビーム2の直径D2 は193mmであり、大きく発散していることが分かる。
【0052】
図8に、電子12を供給してイオンビーム2の中和を行うシミュレーションの初期条件を示す。X=0mmの位置において、YZ平面内に、イオンビーム2を構成するイオン2bを分散させて配置し、その周囲に電子12を円形に配置した。この電子12を、様々な入射角度θで放出した。このとき、電子12のエネルギーは10eV、イオンビーム電流Ii に対する電子電流Ie の比Ie /Ii は34にした。
【0053】
図9に、入射角度θが89度の例を示す。これは、特許文献1に記載された電界放出型電子源の配置に近いものである。電子12はイオンビーム2を何度も通り抜けて往復振動していることが分かる。X=350mmの位置におけるイオンビーム2の直径D2 は186mmであり、イオンビーム2は大きく発散しており、電子12はイオンビーム2の空間電荷中和に殆ど寄与していないことが分かる。
【0054】
図10に、入射角度θが30度の例を示す。電子12の殆どがイオンビーム2の軌道内に捕捉されていることが分かる。X=350mmの位置におけるイオンビーム2の直径D2 は116mmであり、電子12がイオンビーム2の空間電荷中和に効率良く寄与して、イオンビーム2の発散が効果的に抑制されていることが分かる。
【0055】
図11に、入射角度θが15度の例を示す。電子12の殆どがイオンビーム2の軌道内に捕捉されていることが分かる。X=350mmの位置におけるイオンビーム2の直径D2 は113mmであり、電子12がイオンビーム2の空間電荷中和により効率良く寄与して、イオンビーム2の発散がより効果的に抑制されていることが分かる。
【0056】
図12に、入射角度θが0度の例を示す。X=350mmの位置におけるイオンビーム2の直径D2 は111mmであり、電子12がイオンビーム2の空間電荷中和に更に効率良く寄与して、イオンビーム2の発散が更に効果的に抑制されていることが分かる。
【0057】
図13に、入射角度θが−15度の例を示す。入射角度θが負でも、その絶対値がこのように小さければ、電子12の殆どが、イオンビーム2の正のビームポテンシャルによってイオンビーム2の軌道内に捕捉されることが分かる。X=350mmの位置におけるイオンビーム2の直径D2 は120mmであり、電子12がイオンビーム2の空間電荷中和に効率良く寄与して、イオンビーム2の発散が効果的に抑制されていることが分かる。
【0058】
上記以外の入射角度θでもシミュレーションを行った。図14に、各シミュレーションにおけるX=350mmの位置でのイオンビーム2の直径D2 を、電子12の入射角度θとの関係でまとめて示す。入射角度θが負側に大きくなるとイオンビーム2の発散が大きくなるのは、電子12がイオンビーム2から遠ざかる方向に放出され、イオンビーム2の正のビームポテンシャルに捕捉されにくくなるからであると考えられる。この図からも分かるように、電子12の入射角度θは、−15度から+45度の範囲内が好ましく、−15度から+30度の範囲内がより好ましく、実質的に0度から+15度の範囲内が更に好ましく、実質的に0度が最も好ましい。
【0059】
上記シミュレーションは、電子12をイオンビーム2の周囲から放出したものであるのに対して、図1の実施形態はイオンビーム2を挟む両側から、即ちイオンビーム2を挟む両側に配置された電界放出型電子源10から電子12を放出するものである点で両者は条件が若干異なるけれども、イオンビーム2の近傍から電子12を放出する点では共通しているので、上記実施形態の場合も、電界放出型電子源10から放出する電子12の入射角度θを上記のような範囲にすることによって、上記シミュレーションと同じような傾向の結果が得られることは、上記シミュレーションの結果から推定することができよう。
【0060】
即ち、上記各電界放出型電子源10は、それから放出する電子12の入射角度θが、−15度から+45度の範囲内の角度を成す向きに配置するのが好ましく、−15度から+30度の範囲内の角度を成す向きに配置するのがより好ましく、実質的に0度から+15度の範囲内の角度を成す向きに配置するのが更に好ましく、実質的に0度の角度を成す向きに配置するのが最も好ましい。入射角度θを小さくするほど、空間電荷によるイオンビーム2の発散をより抑制して、イオンビーム2の輸送効率をより向上させることができる。
【0061】
再び図1を参照して、電界放出型電子源10は、イオン源1からホルダ6までのイオンビーム2の経路のどこに配置しても良いけれども、イオンビーム2に電界や磁界を印加する機器が存在するとそこを電子12が通り抜けるのが難しくなるので、そのような機器とイオンビーム2の発散を抑制したい場所との間に、例えばそのような機器よりも下流側に配置するのが好ましい。イオン源1からホルダ6までのイオンビーム2の経路の複数箇所に電界放出型電子源10を設けても良い。
【0062】
電界放出型電子源10を、図1に示す実施形態のように下流側に向けて配置することによって、電界放出型電子源10をターゲット4よりも上流側に離して配置して、ターゲット4までの長い距離に亘ってイオンビーム2の発散を効果的に抑制することができる。
【0063】
電界放出型電子源10は、イオンビーム2の経路の片側に配置しても良いけれども、例えば図1、図2に示す実施形態のように、イオンビーム2の経路を挟んで両側に配置するのが好ましい。そのようにすると、イオンビーム2にその両側から電子12を供給することができるので、イオンビーム2の空間電荷をより効率良く中和して、空間電荷によるイオンビーム2の発散をより効果的に抑制することができる。必要に応じて、イオンビーム2の経路を取り囲む四方に、電界放出型電子源10を配置しても良い。そのようにすれば、上述したシミュレーションにより近づく。
【0064】
イオンビーム2が、例えば図2に示す例のようにリボン状の形状をしている場合、電界放出型電子源10は、例えば図2に示す例のように、Y方向に、即ちリボン状のイオンビーム2の幅方向に沿って長く伸びた形状をしているのが好ましい。そのようにすれば、イオンビーム2がY方向に長い形状をしていても、イオンビーム2のより広い領域に亘ってより均一にイオンビーム2の空間電荷を中和することができる。
【0065】
電界放出型電子源10は、図6に示す実施形態のように、イオンビーム2の上流側に向けて電子12を放出する向きに配置しても良い。この場合、電界放出型電子源10はホルダ6の上流側近傍に配置するのが好ましい。これ以外の事項については、上記実施形態の場合と同様であるので、重複説明を省略する。
【0066】
電界放出型電子源10を上流側に向けて配置しても、それから放出した電子12は上流側に向かって移動しつつイオンビーム2が持つ正のビームポテンシャルVP によって捕捉されるので、電界放出型電子源10を下流側に向けて配置した上記実施形態の場合と同様の作用によって、イオンビーム2の空間電荷を効率良く中和して空間電荷によるイオンビーム2の発散を効果的に抑制することができる。
【0067】
しかも、電界放出型電子源10を上流側に向けて配置することによって、電界放出型電子源10から放出した電子12がターゲット4に入射しにくくなるので、電子12がターゲット4に入射することによってターゲット4の表面に負帯電が生じるのを抑制することができる。これは、電界放出型電子源10から放出する電子12のエネルギーがあまり低くない場合に特に大きな効果を発揮する。
【0068】
上記ターゲット4を半導体基板(例えばシリコン基板)として、上記各実施形態のイオンビーム照射装置を用いて、当該半導体基板に上記イオンビーム2を照射してイオン注入を行って、当該半導体基板上に複数の半導体デバイスを製造しても良い。例えば、上記各実施形態のイオンビーム照射装置を、イオン注入によって半導体基板の表面または表層部の所要領域に所要のイオン(例えば不純物となるイオン)を注入する工程に用いて、半導体基板上に半導体デバイスとして複数の集積回路(例えばシステムLSI等)を製造しても良い。
【0069】
近年は、半導体基板上に形成する半導体デバイスの微細化が非常に進んでおり(換言すれば、超高集積化しており)、そのような半導体デバイスにイオン注入を行う場合、半導体基板の表面に形成された溝または凸状の部分に、イオン注入されない陰の部分が生じるのを防止することが課題となっている。そうしないと、形成される半導体デバイスの特性にばらつきが生じる。不良デバイスが生じることもある。
【0070】
上記課題を解決するためには、平行性の良いイオンビームを半導体基板に照射する必要があるが、イオンビームの空間電荷による発散が大きいと、平行性の良いイオンビームを半導体基板に照射することは難しい。これに対して、上記各実施形態のイオンビーム照射装置を用いれば、空間電荷が中和されて発散の少ないイオンビーム2を用いて、半導体基板上に複数の半導体デバイスを製造することができるので、同一の半導体基板上に特性の揃った複数の半導体デバイスを製造することができる。その結果、歩留まりが向上し、半導体デバイスの生産効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】この発明に係るイオンビーム照射装置の一実施形態を示す概略側面図である。
【図2】図1に示す電界放出型電子源およびイオンビームの例を線A−A方向に見て示す正面図である。
【図3】1引出し電極型の電界放出型電子源の一つのエミッタ周りを拡大して、電源の一例と共に示す図である。
【図4】2引出し電極型の電界放出型電子源の一つのエミッタ周りを拡大して、電源の一例と共に示す図である。
【図5】電界放出型電子源から放出される電子のイオンビームに対する入射角度を説明するための図である。
【図6】この発明に係るイオンビーム照射装置の他の実施形態を示す概略側面図である。
【図7】電子を供給しないときのイオンビームの空間電荷による発散をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
【図8】電子を供給してイオンビームの中和を行うシミュレーションの初期条件を示す図である。
【図9】イオンビームに電子を89度の入射角度で供給したときの電子の軌道およびイオンビームの発散をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
【図10】イオンビームに電子を30度の入射角度で供給したときの電子の軌道およびイオンビームの発散をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
【図11】イオンビームに電子を15度の入射角度で供給したときの電子の軌道およびイオンビームの発散をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
【図12】イオンビームに電子を0度の入射角度で供給したときの電子の軌道およびイオンビームの発散をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
【図13】イオンビームに電子を−15度の入射角度で供給したときの電子の軌道およびイオンビームの発散をシミュレーションした結果の一例を示す図である。
【図14】X=350mmの位置でのイオンビームの直径を、電子の入射角度との関係でまとめて示す図である。
【符号の説明】
【0072】
1 イオン源
2 イオンビーム
4 ターゲット
6 ホルダ
10 電界放出型電子源
12 電子
16 カソード基板
18 エミッタ
θ 入射角度
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン源から引き出したイオンビームをターゲットに照射する構成のイオンビーム照射装置において、
前記イオンビームの経路の近傍に設けられていて電子を放出する電子源であって、導電性のカソード基板上に形成されていて先端が尖った形状をした多数の微小なエミッタ、および、この各エミッタの先端付近を微小な間隙をあけて取り囲む引出し電極を有する電界放出型電子源を備えており、
かつ前記電界放出型電子源は、それから放出するときの電子の、前記イオンビームの進行方向に平行な方向からの角度である入射角度が、−15度から+45度(イオンビームの内向きが+、外向きが−)の範囲内の角度を成す向きに配置されている、ことを特徴とするイオンビーム照射装置。
【請求項2】
前記電界放出型電子源は、前記入射角度が、−15度から+30度の範囲内の角度を成す向きに配置されている、請求項1記載のイオンビーム照射装置。
【請求項3】
前記電界放出型電子源は、前記入射角度が、実質的に0度から+15度の範囲内の角度を成す向きに配置されている、請求項1記載のイオンビーム照射装置。
【請求項4】
前記電界放出型電子源は、前記入射角度が、実質的に0度の角度を成す向きに配置されている、請求項1記載のイオンビーム照射装置。
【請求項5】
前記電界放出型電子源は、前記イオンビームの進行方向の下流側に向けて電子を放出する向きに配置されている、請求項1ないし4のいずれかに記載のイオンビーム照射装置。
【請求項6】
前記電界放出型電子源は、前記イオンビームの進行方向の上流側に向けて電子を放出する向きに配置されている、請求項1ないし4のいずれかに記載のイオンビーム照射装置。
【請求項7】
前記電界放出型電子源は、前記イオンビームの経路を挟んで両側に配置されている、請求項1ないし6のいずれかに記載のイオンビーム照射装置。
【請求項8】
前記電界放出型電子源の位置において、前記イオンビームは、その進行方向Xと交差する面内におけるY方向の寸法が当該Y方向と直交するZ方向の寸法よりも大きい形状をしており、前記電界放出型電子源は、Y方向に沿って伸びた形状をしている、請求項1ないし7のいずれかに記載のイオンビーム照射装置。
【請求項9】
前記ターゲットが半導体基板であり、請求項1ないし8のいずれかに記載のイオンビーム照射装置を用いて、当該半導体基板に前記イオンビームを照射してイオン注入を行って、当該半導体基板上に複数の半導体デバイスを製造することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【請求項1】
イオン源から引き出したイオンビームをターゲットに照射する構成のイオンビーム照射装置において、
前記イオンビームの経路の近傍に設けられていて電子を放出する電子源であって、導電性のカソード基板上に形成されていて先端が尖った形状をした多数の微小なエミッタ、および、この各エミッタの先端付近を微小な間隙をあけて取り囲む引出し電極を有する電界放出型電子源を備えており、
かつ前記電界放出型電子源は、それから放出するときの電子の、前記イオンビームの進行方向に平行な方向からの角度である入射角度が、−15度から+45度(イオンビームの内向きが+、外向きが−)の範囲内の角度を成す向きに配置されている、ことを特徴とするイオンビーム照射装置。
【請求項2】
前記電界放出型電子源は、前記入射角度が、−15度から+30度の範囲内の角度を成す向きに配置されている、請求項1記載のイオンビーム照射装置。
【請求項3】
前記電界放出型電子源は、前記入射角度が、実質的に0度から+15度の範囲内の角度を成す向きに配置されている、請求項1記載のイオンビーム照射装置。
【請求項4】
前記電界放出型電子源は、前記入射角度が、実質的に0度の角度を成す向きに配置されている、請求項1記載のイオンビーム照射装置。
【請求項5】
前記電界放出型電子源は、前記イオンビームの進行方向の下流側に向けて電子を放出する向きに配置されている、請求項1ないし4のいずれかに記載のイオンビーム照射装置。
【請求項6】
前記電界放出型電子源は、前記イオンビームの進行方向の上流側に向けて電子を放出する向きに配置されている、請求項1ないし4のいずれかに記載のイオンビーム照射装置。
【請求項7】
前記電界放出型電子源は、前記イオンビームの経路を挟んで両側に配置されている、請求項1ないし6のいずれかに記載のイオンビーム照射装置。
【請求項8】
前記電界放出型電子源の位置において、前記イオンビームは、その進行方向Xと交差する面内におけるY方向の寸法が当該Y方向と直交するZ方向の寸法よりも大きい形状をしており、前記電界放出型電子源は、Y方向に沿って伸びた形状をしている、請求項1ないし7のいずれかに記載のイオンビーム照射装置。
【請求項9】
前記ターゲットが半導体基板であり、請求項1ないし8のいずれかに記載のイオンビーム照射装置を用いて、当該半導体基板に前記イオンビームを照射してイオン注入を行って、当該半導体基板上に複数の半導体デバイスを製造することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−335110(P2007−335110A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−162394(P2006−162394)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【出願人】(302054866)日新イオン機器株式会社 (161)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【出願人】(302054866)日新イオン機器株式会社 (161)
【Fターム(参考)】
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