説明

イオン注入装置およびイオン注入方法

【課題】本発明の一つの実施形態の目的は、ダミーウェハを使用することなく、ウェハが装着されない装着部の劣化を防止可能なイオン注入装置およびイオン注入方法を提供すること。
【解決手段】実施形態によれば、イオン注入装置が提供される。イオン注入装置は、イオン注入部と、複数の装着部と、傾斜機構とを備える。イオン注入部は、ウェハへイオンビームを照射して該ウェハへイオンを注入する。装着部は、ウェハをそれぞれ装着可能に構成され、前記イオンビームが照射される照射領域へ順次移動する。傾斜機構は、ウェハが装着されない前記装着部を前記イオンビームが照射されない位置まで傾斜させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、イオン注入装置およびイオン注入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェハ(以下、単に「ウェハ」と記載する)へイオンビームを照射することにより、複数のウェハへイオンを注入するバッチ式のイオン注入装置(以下、単に「イオン注入装置」と記載する)がある。かかるイオン注入装置は、ウェハがそれぞれ装着された複数の装着部をイオンビームが照射される照射領域まで順次移動させてイオンを注入することが一般的である。
【0003】
ここで、イオン注入装置では、装着部の数よりも少ない枚数のウェハを処理する場合、ウェハが装着されない装着部の装着面にもイオンビームが照射されるので、ウェハの装着されない装着部がイオンビームの照射により劣化する。かかる装着部の劣化を防止するため、イオン注入装置では、ウェハが装着されない装着部にダミーウェハを装着してイオンの注入が行われていた。
【0004】
しかしながら、ダミーウェハは、イオンビームの照射によって劣化するので定期的に交換が必要であり、製造コストの増大につながる。このため、ダミーウェハを使用することなく、ウェハが装着されない装着部の劣化を防止可能なイオン注入装置が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−117688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一つの実施形態の目的は、ダミーウェハを使用することなく、ウェハが装着されない装着部の劣化を防止可能なイオン注入装置およびイオン注入方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、イオン注入装置が提供される。イオン注入装置は、イオン注入部と、複数の装着部と、傾斜機構とを備える。イオン注入部は、ウェハへイオンビームを照射して該ウェハへイオンを注入する。装着部は、ウェハをそれぞれ装着可能に構成され、前記イオンビームが照射される照射領域へ順次移動する。傾斜機構は、ウェハが装着されない前記装着部を前記イオンビームが照射されない位置まで傾斜させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態に係るイオン注入装置を示す模式図。
【図2】第1の実施形態に係るイオン注入装置の処理ステージを示す平面図。
【図3】第1の実施形態に係るイオン注入装置の動作を示す図。
【図4A】第1の実施形態に係るイオン注入装置の動作の変形例1を示す図。
【図4B】第1の実施形態に係るイオン注入装置の動作の変形例1を示す図。
【図4C】第1の実施形態に係るイオン注入装置の動作の変形例1を示す図。
【図5A】第1の実施形態に係るイオン注入装置の動作の変形例2を示す図。
【図5B】第1の実施形態に係るイオン注入装置の動作の変形例2を示す図。
【図6】第2の実施形態に係るイオン注入装置を示す模式図。
【図7】第2の実施形態に係るイオン注入装置の遮断機構を示す平面図。
【図8A】第2の実施形態に係るイオン注入装置の動作を示す図。
【図8B】第2の実施形態に係るイオン注入装置の動作を示す図。
【図9】第3の実施形態に係るイオン注入装置を示す模式図。
【図10】第3の実施形態に係るイオン注入装置の遮断機構を示す平面図。
【図11A】第3の実施形態に係るイオン注入装置の動作を示す図。
【図11B】第3の実施形態に係るイオン注入装置の動作を示す図。
【図11C】第3の実施形態に係るイオン注入装置の動作を示す図。
【図11D】第3の実施形態に係るイオン注入装置の動作を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、添付図面を参照して、実施形態に係るイオン注入装置およびイオン注入方法を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によって本発明が限定されるものではない。また、以下では、複数の半導体ウェハ(以下、単に「ウェハ」と記載する)を収納し、各ウェハへイオンビームを順次照射することにより、各ウェハへイオンを注入するバッチ式のイオン注入装置(以下、単に「イオン注入装置」と記載する)について説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態について、図1〜図3を用いて説明する。図1は、第1の実施形態に係るイオン注入装置1を示す模式図であり、図2は、第1の実施形態に係るイオン注入装置1の処理ステージ4を示す平面図であり、図3は、第1の実施形態に係るイオン注入装置1の動作を示す図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係るイオン注入装置1は、処理部2と制御部3とを備える。処理部2は、筐体20の内部に、イオン源21、引出し電極22、アナライザ23、加速器24、処理ステージ4を備える。
【0012】
かかる処理部2は、引出し電極22へ所定の電圧を印加することによりイオン源21からイオンビーム(以下、「ビームL」と記載する)を放出させ、アナライザ23および加速器24を経由させて処理ステージ4へ照射する。
【0013】
ここで、アナライザ23は、イオン源21から放出されたビームLのうち、所望の質量および価数のイオンを含むビームLを選択的に加速器24へ出力する処理部である。また、加速器24は、アナライザ23から入力されるビームLに含まれるイオンを加速して、ビームLの照射領域R内を通過するウェハWへ照射する処理部である。
【0014】
すなわち、本実施形態では、イオン源21、引出し電極22、アナライザ23および加速器24が、ウェハWへビームLを照射してウェハWへイオンを注入するイオン注入部として機能する。
【0015】
処理ステージ4は、図1および図2に示すように、円盤状のディスク部40と、ディスク部40の外周(円周)に沿って設けられ、それぞれにウェハWが装着される複数のウェハ装着部(以下、単に「装着部41」と記載する)を備える。
【0016】
これら複数の装着部41は、ウェハWと径が略同一の円盤状をしている。以下では、処理ステージ4が12枚の装着部41を備える場合について説明する。なお、装着部41の枚数は、12枚に限定するものではなく任意の枚数であってもよい。
【0017】
また、以下では、個々の装着部41を区別しない場合には、装着部41と記載する。また、個々の装着部41を区別する場合には、図2に示すように、ディスク部40の所定位置に設けられた装着部41を装着部41−1と記載し、装着部41−1を基準として、時計回りに配置された装着部41を装着部41−2、41−3、41−4、41−5、41−6、41−7、41−8、41−9、41−10、41−11、41−12とそれぞれ記載する。
【0018】
各装着部41は、ウェハWが装着される側面(以下、「表面」と記載する)に、ウェハWとの密着性を高めるシリコンラバー42を備える。また、各装着部41は、上記した表面と対向する側の面(以下、「裏面」と記載する)が支持体43および支持体駆動部44を介してディスク部40と連結されている。
【0019】
各支持体駆動部44は、内部にサーボモータ等の電動機が設けられており、制御部3による制御に従って電動機を駆動することにより装着部41(表面および裏面)を傾斜させる。なお、かかる装着部41の傾斜態様については、図3を用いて後述する。
【0020】
また、ディスク部40は、回転軸45を介してディスク駆動部46と連結されている。ディスク駆動部46は、内部に回転軸45を回転駆動するモータと、回転軸45をディスク部40の面と平行な方向へスライドさせるスライド機構とを備える。
【0021】
制御部3は、ディスク駆動部46および支持体駆動部44の動作を制御する処理部である。かかる制御部3は、ディスク駆動部46へ所定の制御信号を出力することにより回転軸45を一定の回転速度で回転させる。これにより、各装着部41は、ビームLが照射される照射領域Rへ順次移動する。
【0022】
さらに、制御部3は、ディスク部40の回転中に、ディスク駆動部46へ所定の制御信号を出力することにより回転軸45をディスク部40の面と平行な方向へスライドさせる。これにより、装着部41へ装着されたウェハWの表面全体へ均等にビームLが照射されてイオンの注入が行われる。
【0023】
ところで、イオン注入装置1では、装着部41の数よりも少ない枚数のウェハWに対して一回(1バッチ)の処理でイオンの注入を行う場合がある。かかる場合、ウェハWが装着されない装着部41が照射領域Rへ移動するとシリコンラバー42へビームLが直接照射されるので、シリコンラバー42が劣化する。
【0024】
そこで、制御部3は、ウェハWが装着されない装着部41(以下、「空の装着部41」と記載する)がある場合、空の装着部41に対応する支持体駆動部44へ所定の制御信号を出力して空の装着部41を傾斜させ、空の装着部41へのビームLの照射を回避する。
【0025】
以下では、処理対象のウェハWが7枚であり、装着部41−1〜41−7へウェハWが装着され、装着部41−8〜41−12へウェハWが装着されなかった場合におけるイオン注入装置1の動作について説明する。
【0026】
かかる場合、図3に示すように、制御部3は、空の装着部41−8〜41−12が照射領域Rまで移動してきてもビームLが照射されない位置まで空の装着部41−8〜41−12を傾斜させる。
【0027】
例えば、制御部3は、処理ステージ4におけるビームLが照射される側の盤面をディスク部40の表面とした場合、支持体43をディスク部40の裏面側へ折りたたむように支持体駆動部44を駆動させて空の装着部41−8〜41−12を傾斜させる。
【0028】
このとき、制御部3は、空の装着部41−8〜41−12の表面とビームLの照射方向(図3における一点鎖線矢印)とが平行となるまで空の装着部41−8〜41−12を傾斜させる。これにより、空の装着部41−8〜41−12の表面へビームLが照射されることを防止することができる。このように、本実施形態では、支持体43および支持体駆動部44が、空の装着部41−8〜41−12をビームLが照射されない位置まで傾斜させる傾斜機構として機能する。
【0029】
なお、制御部3は、処理ステージ4の所定箇所に設けられたセンサ(図示略)から入力される検知結果に基づいて、処理ステージ4における空の装着部41−8〜41−12の有無および位置を判別する。
【0030】
このように、イオン注入装置1では、空の装着部41−8〜41−12が照射領域Rまで移動してきたとしても、空の装着部41−8〜41−12へビームLが照射されることがない。
【0031】
したがって、イオン注入装置1によれば、空の装着部41−8〜41−12へダミーウェハを装着しなくても、ビームLの照射による空の装着部41−8〜41−12の劣化を防止することができる。
【0032】
また、イオン注入装置1では、例えば、装着部41が金属製の場合であっても、ビームLが空の装着部41−8〜41−12へ照射されてスパッタリング現象が発生することを防止することができる。これにより、イオン注入装置1は、かかるスパッタリング現象によって生じる金属粒子に起因したメタルコンタミネーションを防止することができる。
【0033】
次に、イオン注入装置1の動作の変形例1について、図4A、図4Bおよび図4Cを用いて説明する。図4A、図4Bおよび図4Cは、第1の実施形態に係るイオン注入装置1の動作の変形例1を示す図である。
【0034】
図3に示す例では、ビームLの照射中に、制御部3がディスク部40を一定の回転速度で回転させる場合について説明したが、本変形例1では、制御部3は、ディスク部40の回転速度および回転方向ならびに装着部41の回転位置を制御する。
【0035】
ここで、処理対象のウェハWが7枚であり、装着部41−1〜41−7へウェハWが装着され、装着部41−8〜41−12へウェハWが装着されなかったとする。かかる場合、イオン注入装置1では、ビームLの照射を開始する前に、制御部3が空の装着部41−8〜41−12をビームLが照射されない位置まで傾斜させる。
【0036】
続いて、イオン注入装置1では、例えば、図4Aに示すように、ウェハWの装着されない装着部41(ここでは、装着部41−8)が制御部3の制御によって照射領域Rまで移動された場合に、ビームLの照射を開始する。
【0037】
このとき、装着部41−8は、ビームLの照射を回避可能な位置まで傾斜されているため、ビームLの照射によって劣化することはない。
【0038】
続いて、制御部3は、ディスク部40の回転を開始させ、ウェハWが装着された装着部41−1〜41−7のうち、最も早く照射領域Rへ移動してくる装着部41−7が照射領域Rへ進入するまでにディスク部40の回転速度を所定の回転速度まで上昇させる。
【0039】
その後、制御部3は、図4Bに示すように、装着部41−7が照射領域Rへ進入すると、ウェハWが装着された連続する装着部41−7〜41−1の列が照射領域Rを移動(通過)する期間、装着部41−7〜41−1の列を所定の移動速度で移動させる。
【0040】
そして、制御部3は、図4Cに示すように、空の装着部41(ここでは、装着部41−12)が照射領域Rへ移動するまでディスク部40を回転させた後、ディスク部40の回転方向を反転させる。このとき、装着部41−12は、ビームLの照射を回避可能な位置まで傾斜されているため、ビームLの照射によって劣化することはない。
【0041】
続いて、制御部3は、ウェハWが装着された連続する装着部41−7〜41−1の列が照射領域Rへ再度移動(進入)するまでに、装着部41−7〜41−1の列の移動速度を前述の所定の移動速度まで上昇させるようにディスク部40を回転させる。なお、このときの移動速度は、図4Aおよび図4Bに示す移動方向とは逆の移動方向における移動速度である。その後、制御部3は、上述したディスク部40の回転、回転方向の反転、反転した回転方向における回転速度の上昇を順次繰り返す。
【0042】
このように、本変形例におけるイオン注入装置1は、ウェハWが装着されない空の装着部41−8〜41−12の列のうち、空の装着部41−9〜41−11を照射領域Rまで移動させない。
【0043】
これにより、イオン注入装置1は、ウェハWが装着された装着部41−1〜41−7に対して効率的にイオンを注入することができる。したがって、イオン注入装置1によれば、イオンの注入処理に関するスループットを向上させることができる。
【0044】
しかも、イオン注入装置1では、ウェハWが装着された装着部41−1〜41−7の列が照射領域Rへ進入する前および再進入する前までに、装着部41−1〜41−7の列の移動速度が所定の移動速度となるように、ディスク部40の回転速度を制御する。
【0045】
これにより、ウェハWが装着された装着部41−1〜41−7は、所定の移動速度で照射領域R内を移動する。したがって、イオン注入装置1によれば、装着部41−1〜41−7へ装着されたウェハWに対して均等にイオンを注入することができる。
【0046】
なお、本変形例では、ウェハWが装着された装着部41−1〜41−7の列の前後に位置する任意枚数の空の装着部41が照射領域Rへ移動するまでディスク部40を回転させて装着部41の移動速度を所定の移動速度まで上昇させることもできる。
【0047】
次に、イオン注入装置1の動作の変形例2について、図5Aおよび図5Bを用いて説明する。図5Aおよび図5Bは、第1の実施形態に係るイオン注入装置1の動作の変形例2を示す図である。
【0048】
前述の変形例1では、制御部3が空の装着部41−8〜41−12の傾斜制御およびディスク部40の回転制御を行う場合について説明したが、本変形例2では、制御部3は、装着部41の傾斜制御を行わずにディスク部40の回転制御を行う。
【0049】
ここで、処理対象のウェハWが7枚であり、装着部41−1〜41−7へウェハWが装着され、装着部41−8〜41−12へウェハWが装着されなかったとする。かかる場合、イオン注入装置1では、例えば、図5Aに示すように、ウェハWが装着された装着部41−1〜41−7の列の移動方向(進行方向)先端に位置する装着部41−7が制御部3の制御によって照射領域Rまで移動された状態でビームLの照射を開始する。
【0050】
続いて、制御部3は、装着部41−7〜41−1の順に、各装着部41を照射領域Rへ順次移動させるようにディスク部40を回転させる。その後、制御部3は、図5Bに示すように、ウェハWが装着された装着部41−1〜41−7の列の移動方向(進行方向)後尾に位置する装着部41−1が照射領域Rへ移動すると、ディスク部40の回転方向を反転させる。
【0051】
そして、制御部3は、装着部41−1〜41−7の順に、各装着部41を照射領域Rへ順次移動させるようにディスク部40を回転させる。その後、制御部3は、かかるディスク部40の回転および回転方向の反転を反復して行う。
【0052】
このように、本変形例におけるイオン注入装置1は、ウェハWが装着された装着部41−1〜41−7の列が反復(往復)して照射領域Rを通過するようにディスク部40の回転制御を行う。これにより、イオン注入装置1では、空の装着部41−8〜41−12が照射領域Rを通過することがない。
【0053】
したがって、イオン注入装置1では、空の装着部41−8〜41−12へダミーウェハを装着しなくても、ビームLの照射による空の装着部41−8〜41−12の劣化を防止することができる。
【0054】
また、本変形例におけるイオン注入装置1は、空の装着部41−8〜41−12へビームLを照射せず、ウェハWが装着された装着部41−1〜41−7へ選択的にビームLを照射するのでイオンの注入処理に関するスループットをさらに向上させることができる。
【0055】
しかも、本変形例におけるイオン注入装置1は、空の装着部41−8〜41−12を傾斜させることなく、ディスク部40の回転制御を行うことで、空の装着部41−8〜41−12へのビームLの照射を回避することができる。
【0056】
したがって、本変形例におけるイオン注入装置1では、空の装着部41−8〜41−12を傾斜させる機構(支持体駆動部44)および、支持体駆動部44を制御する処理を省略することができるため、イオン注入装置1のコストを低減することが可能となる。
【0057】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について、図6〜図8Bを用いて説明する。図6は、第2の実施形態に係るイオン注入装置1aを示す模式図であり、図7は、第2の実施形態に係るイオン注入装置1aの遮断機構5を示す平面図である。
【0058】
また、図8Aおよび図8Bは、第2の実施形態に係るイオン注入装置1aの動作を示す図である。なお、図6〜図8Bでは、図1および図2に示す構成要素と同様の構成要素に対して同一の符号を付している。
【0059】
図6に示すように、本実施形態に係るイオン注入装置1aは、処理部2aが遮断機構5を備えた点、処理ステージ4aの装着部41が支持体43によりディスク部40へ固定された点および制御部3aの制御内容が第1の実施形態に係るイオン注入装置1と異なる。
【0060】
このため、以下では、遮断機構5の構成および制御部3aの制御内容について説明する。なお、処理ステージ4aは、円盤状のディスク部40と、ディスク部40の外周(円周)に沿って設けられた12枚の装着部41を備える。
【0061】
図6および図7に示すように、遮断機構5は、複数(ここでは、12本)のロッド駆動部51と、各ロッド駆動部51の先端から各ロッド駆動部51の伸延方向へ進退自在に設けられたロッド52と、各ロッド52の先端に設けられたシャッタ53とを備える。
【0062】
複数のロッド駆動部51は、ディスク部40の回転軸45aを中心に、ディスク部40の周方向へそれぞれ放射状に伸延する。各ロッド駆動部51は、内部にエアシリンダを備えており、制御部3aによる制御に従ってエアシリンダを動作させることによって、対応する各ロッド52を個別に進出または後退させる。なお、ロッド52の駆動源はエアシリンダに限定するものではなく、ロッド52を進退可能な任意のアクチュエータを用いることができる。
【0063】
シャッタ53は、径が装着部41と略同一の円盤状をしており、12枚の装着部41にそれぞれ対応して設けられる。各シャッタ53は、ロッド52がロッド駆動部51から進出した場合に、盤面が対応する装着部41の盤面と対向(対面)状態となり、ロッド52が後退した場合に、対向状態が解除される。
【0064】
なお、シャッタ53は、例えば、C(カーボン)、W(タングステン)、Mo(モリブデン)あるいは、これらを含有する化合物、合金等のように、ビームLが照射されてもスパッタリング現象が発生し難く、耐熱性を備えた材料によって構成される。
【0065】
かかる遮断機構5は、ロッド駆動部51の各基端がディスク部40の回転軸45aと連結されており、回転軸45aの回転にともないディスク部40と一体に回転する。すなわち、遮断機構5では、シャッタ53と装着部41とを対向状態とすることで、シャッタ53と対向状態にある装着部41が照射領域Rへ進入した場合に、シャッタ53が装着部41へ照射されるビームLを遮断する遮断部として機能する。
【0066】
ここで、本実施形態に係るイオン注入装置1aの動作について説明する。ここでは、処理対象のウェハWが7枚であり、装着部41−1〜41−7へウェハWが装着され、装着部41−8〜41−12へウェハWが装着されなかった場合について説明する。
【0067】
かかる場合、イオン注入装置1aでは、ビームLを照射する前に、制御部3aがウェハWの装着された装着部41−1〜41−7に対応するロッド52を後退させ、空の装着部41−8〜41−12に対応するロッド52を進出させる。
【0068】
すなわち、制御部3aは、ウェハWが装着された装着部41−1〜41−7に対応するシャッタ53をビームLの遮断が不可能な位置へ移動させ、空の装着部41−8〜41−12に対応するシャッタ53をビームLの遮断が可能な位置へ移動させて装着部41とともに移動させる。
【0069】
これにより、図8Aに示すように、ウェハWの装着された装着部41−1〜41−7が照射領域Rへ進入した場合には、装着部41−1〜41−7へ装着されたウェハWへビームLが照射されてイオンの注入が行われる。
【0070】
一方、図8Bに示すように、空の装着部41−8〜41−12が照射領域Rへ進入した場合には、シャッタ53によってビームLが遮断されるため、ビームLの照射による空の装着部41−8〜41−12の劣化を防止することができる。
【0071】
したがって、本実施形態に係るイオン注入装置1aによれば、空の装着部41−8〜41−12へダミーウェハを装着しなくても、ビームLの照射による空の装着部41−8〜41−12の劣化を防止することができる。
【0072】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について、図9〜図11Dを用いて説明する。図9は、第3の実施形態に係るイオン注入装置1bを示す模式図であり、図10は、第3の実施形態に係るイオン注入装置1bの遮断機構を示す平面図である。
【0073】
また、図11A〜図11Dは、第3の実施形態に係るイオン注入装置1bの動作を示す図である。なお、図9〜図11Dでは、図1、図2および図6に示す構成要素と同様の構成要素に対して同一の符号を付している。
【0074】
図9に示すように、本実施形態に係るイオン注入装置1bは、処理部2bが遮断機構5とは構成が異なる遮断機構6を備えた点、および制御部3bの制御内容が第2の実施形態に係るイオン注入装置1aと異なる。
【0075】
このため、以下では、遮断機構6の構成および制御部3bの制御内容について説明する。なお、処理ステージ4aは、第2の実施形態と同様に、円盤状のディスク部40と、ディスク部40の外周(円周)に沿って設けられた12枚の装着部41を備える。
【0076】
遮断機構6は、図9および図10に示すように、ディスク部40の回転軸45と同じ軸を中心に回転軸45の内側で回転する遮断機構6用の回転軸47の先端からディスク部40の径方向へ伸延する1本のロッド61と、ロッド61の先端に設けられたシャッタ62とを備える。
【0077】
以下では、便宜上、ディスク部40の回転軸45を「外軸45」と記載し、遮断機構6用の回転軸47を「内軸47」と記載する。これら外軸45および内軸47は、制御部3bがディスク駆動部46bの動作を制御することにより、それぞれ個別に回転制御される。
【0078】
すなわち、ディスク駆動部46bは、内部に外軸45を駆動するモータと、内軸47を駆動するモータとを備え、制御部3bの制御に従って各モータを個別に動作させることにより、外軸45および内軸47の回転、停止、回転速度の調整を行う。
【0079】
また、シャッタ62は、径が装着部41と略同一の円盤状をしている。そして、シャッタ62の盤面は、内軸47の回転に伴うロッド61の回転位置によって、12枚の装着部41のうちいずれか1枚の装着部41の盤面と対向状態となる。
【0080】
すなわち、シャッタ62は、照射領域R内において、盤面がいずれかの装着部41の盤面と対向状態となった場合に、シャッタ62と対向状態にある装着部41へ照射されるビームLを遮断する遮断部として機能する。
【0081】
かかるシャッタ62は、図7に示すシャッタ53と同様に、例えば、C(カーボン)、W(タングステン)、Mo(モリブデン)あるいは、これらを含有する化合物、合金等のように、ビームLが照射されてもスパッタリング現象が発生し難く、耐熱性を備えた材料によって構成される。
【0082】
ここで、本実施形態に係るイオン注入装置1bの動作について説明する。ここでは、処理対象のウェハWが7枚であり、装着部41−1〜41−7へウェハWが装着され、装着部41−8〜41−12へウェハWが装着されなかった場合について説明する。
【0083】
かかる場合、イオン注入装置1bでは、ビームLを照射する前に制御部3bが内軸47を回転させる。そして、図11Aに示すように、制御部3bは、連続する空の装着部41−8〜41−12のうち、ディスク部40の回転により最も早く照射領域Rへ進入する装着部41−12とシャッタ62とを対向状態とする。
【0084】
続いて、ビームLの照射が開始されると、制御部3bは、内軸47および外軸45を同一の回転速度で回転させることにより、シャッタ62と装着部41−12との対向状態を保持しながらシャッタ62およびディスク部40を回転させる。
【0085】
その後、図11Bに示すように、シャッタ62が照射領域Rまで移動すると、制御部3bは、内軸47の回転を停止させ、照射領域R内でシャッタ62を停止させる。このとき、制御部3bは、外軸45の回転を継続させる。
【0086】
そして、図11Cに示すように、制御部3bは、連続する空の装着部41−8〜41−12の列における進行方向後尾にあたる装着部41−8が照射領域Rへ移動するまで、シャッタ62の停止を継続させる。
【0087】
すなわち、制御部3bは、連続する空の装着部41−8〜41−12の列が照射領域Rを移動する期間、照射領域Rを移動する装着部41−8〜41−12に対してビームLを遮断可能な位置にシャッタ62を停止させる。
【0088】
これにより、本実施形態に係るイオン注入装置1bでは、空の装着部41−8〜41−12へビームLが照射されることを防止することができるため、空の装着部41−8〜41−12がビームLの照射によって劣化することを防止することができる。
【0089】
したがって、本実施形態に係るイオン注入装置1bによれば、空の装着部41−8〜41−12へダミーウェハを装着しなくても、ビームLの照射による空の装着部41−8〜41−12の劣化を防止することができる。
【0090】
続いて、制御部3bは、照射領域Rへ次に移動する装着部41−7へウェハWが装着されていた場合に、照射領域Rを移動中の装着部41−8とともに照射領域Rからシャッタ62を移動させる。
【0091】
その後、図11Dに示すように、制御部3bは、内軸47を外軸45よりも高い回転速度で回転させる。そして、制御部3bは、連続する空の装着部41−8〜41−12の列における進行方向先頭にあたる装着部41−12が、次回、照射領域Rへ進入するまでに、シャッタ62を装着部41−12と対向する位置まで移動させる。
【0092】
以後、制御部3bは、図11A〜図11Dを用いて説明したシャッタ62の回転および停止を繰り返しながらディスク部40を回転させてイオンの注入処理を行う。これにより、本実施形態に係るイオン注入装置1bでは、連続する空の装着部41−8〜41−12の列が、次回以降、照射領域Rを通過する場合に、空の装着部41−8〜41−12へビームLが照射されることを防止することができる。
【0093】
なお、上記した各実施形態では、各装着部41が円軌道を周回移動または往復移動しながら照射領域Rへ順次移動する場合について説明したが、各装着部41が移動する軌道は、円軌道に限定するものではない。
【0094】
例えば、実施形態に係るイオン注入装置は、装着部41が円以外の周回軌道を周回移動または往復移動して、照射領域Rへ順次移動するように構成されてもよい。また、実施形態に係るイオン注入装置は、一直線上に並んだ複数の装着部41が直線上を往復移動して、照射領域Rへ順次移動するように構成されてもよい。
【0095】
また、第2の実施形態および第3の実施形態では、シャッタ53,62が装着部41とともに回転する場合について説明したが、シャッタの構成は、これに限定するものではない。
【0096】
例えば、実施形態に係るイオン注入装置は、イオンビームLを遮断する位置と、遮断しない位置とに変位するシャッタを設け、空の装着部41が照射領域Rへ進入する場合に、イオンビームLを遮断する位置へシャッタを変位させるように構成してもよい。
【0097】
かかる場合、シャッタは、イオビームLの上流側に設けることが望ましい。例えば、図1におけるアナライザ23と加速器24との間、または、引出し電極22とアナライザ23との間へ設ける。これにより、イオンビームLを遮断する遮断機構の構成を簡略化することが可能となるため、イオン注入装置のコストをさらに低減することができる。
【0098】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0099】
1,1a,1b イオン注入装置、 2,2a,2b 処理部、 20 筐体、 21 イオン源、 22 引出し電極、 23 アナライザ、 24 加速器、 3,3a,3b 制御部、 4,4a 処理ステージ、 40 ディスク部、 41(41−1〜41−12) 装着部、 42 シリコンラバー、 43 支持体、 44 支持体駆動部、 45 回転軸(外軸)、 45a 回転軸、 47 回転軸(内軸)、 46,46b ディスク駆動部、 5,6 遮断機構、 51 ロッド駆動部、 52,61 ロッド、 53,62 シャッタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハへイオンビームを照射して該ウェハへイオンを注入するイオン注入部と、
ウェハをそれぞれ装着可能に構成され、前記イオンビームが照射される照射領域へ順次移動可能な複数の装着部と、
ウェハが装着されない前記装着部を前記イオンビームが照射されない位置まで傾斜させる傾斜機構と
を備えたことを特徴とするイオン注入装置。
【請求項2】
ウェハが装着された連続する前記装着部の列が前記照射領域を移動する期間、該装着部の列を所定の移動速度で移動させた後に移動方向を反転させ、該装着部の列が前記照射領域へ再度移動するまでに、該装着部の列の移動速度を前記所定の移動速度まで上昇させる移動速度制御部
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のイオン注入装置。
【請求項3】
ウェハへイオンビームを照射して該ウェハへイオンを注入するイオン注入部と、
ウェハをそれぞれ装着可能に構成され、前記イオンビームが照射される照射領域へ順次移動可能な複数の装着部と、
前記装着部にそれぞれ対応して設けられ、前記イオンビームを遮断する遮断部と、
ウェハが装着された前記装着部に対応する前記遮断部を前記イオンビームの遮断が不可能な位置へ移動させ、ウェハが装着されない前記装着部に対応する前記遮断部を前記イオンビームの遮断が可能な位置へ移動させて該装着部とともに移動させる遮断部移動機構と
を備えたことを特徴とするイオン注入装置。
【請求項4】
ウェハへイオンビームを照射して該ウェハへイオンを注入するイオン注入部と、
ウェハをそれぞれ装着可能に構成され、前記イオンビームが照射される照射領域へ順次移動可能な複数の装着部と、
前記イオンビームを遮断する遮断部と、
ウェハが装着されない連続する前記装着部の列が前記照射領域を移動する期間、前記照射領域を移動する前記装着部に対してイオンビームを遮断可能な位置に前記遮断部を停止させ、前記照射領域へ次に移動する前記装着部へウェハが装着されていた場合に、前記照射領域を移動中の前記装着部とともに前記照射領域から前記遮断部を移動させる遮断部移動機構と
を備えたことを特徴とするイオン注入装置。
【請求項5】
ウェハへイオンビームを照射して該ウェハへイオンを注入するイオン注入部によって前記イオンビームが照射される照射領域へ、ウェハがそれぞれ装着される複数の装着部を順次移動させる移動工程と、
ウェハが装着されない前記装着部を前記イオンビームが照射されない位置まで傾斜させる傾斜工程と
を含むことを特徴とするイオン注入方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【公開番号】特開2013−16318(P2013−16318A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147449(P2011−147449)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】