説明

イベント情報配信システム及び情報配信方法

【課題】 無線LANの電波範囲内であってもアソシエートしていない端末に対しては情報を送ることができず、広告情報などの配信可能端末が限られてしまっていた。
【解決手段】 無線LANアクセスポイントから電波ビーコンに配信情報を付加して送信することにより、無線LANアクセスポイントとの接続が確立していない無線LAN端末に対する情報配信を実現する。また、配信情報をテキスト情報に限定することにより、無線空間の使用帯域を抑えて他の通信への影響を低減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イベント情報配信システム及び方法に関し、特に、電波ビーコンによって移動通信体にPUSH型のイベント情報の配信を行うシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線LANなどのアクセスポイントを設置して無線でのインターネット接続サービスを不特定多数の利用者に提供するホットスポットサービスが行われている。今後は、パーソナルコンピュータやPDA等の携帯情報端末からの無線LAN接続が大幅に増加し、さらに列車や航空機内での無線LAN接続や、タクシーや一般乗用車のカーナビゲーションシステムなどの移動通信体からこのような無線LANを利用してインターネットへ接続されることが予想される。
【0003】
このような無線LANを利用して、インターネットを介して無線LANのアクセスポイントに接続した情報通信機器に対し広告を配信するシステムがある(例えば、特許文献1)。このシステムでは、広告提供者が入力装置からインターネット接続システムに広告情報を登録すると、インターネット接続を行ってきた通信端末への転送データにそれが付加される。
【0004】
本願発明で用いるビーコン技術について、車載ナビゲーションシステムにおけるVICS受信器で電波ビーコンにより交通情報を取得する従来技術がある(例えば、特許文献2)。また、無線LANにおける暗号鍵をビーコンフレームにより端末に配信することが提案されている(例えば、特許文献3)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−236632号公報
【特許文献2】特開2002−365066号公報
【特許文献3】特開2003−258790号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記文献1のような方式では、無線LAN端末のwebブラウザ等により情報を取得して表示する必要がある。このため、webブラウザが情報配信するサーバと通信可能とするために、無線LAN端末からアクセスポイントに対し認証を行い通信を確立(以下、アソシエートと称す。)させる必要がある。したがって、無線LANの電波範囲内であってもアソシエートしていない端末に対しては情報を送ることができず、広告情報などの配信可能端末が限られてしまうという問題がある。
【0007】
また、例えば広告情報が画像や動画等を含むグラフィカルなものである場合、使用帯域に限界のある無線LANの通信帯域を多く消費するため、端末利用者にとって本来の目的である情報の送受信の帯域を圧迫してしまうという問題がある。
【0008】
本発明の情報配信システムおよび方法は、電波ビーコンを用いて無線LAN端末に情報配信を行うことにより、アクセスポイントとアソシエートしていない不特定多数の無線LAN端末に対して情報配信を行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく本発明は、無線LANを利用する情報通信端末に情報配信を行う情報配信システムにおいて、適宜の場所に設置される1以上の無線LANアクセスポイントと、当該無線LANアクセスポイントを介して情報を配信する配信サーバとを備え、前記無線LANアクセスポイントが、前記配信サーバから配信情報を受信する情報受信手段と、受け取った配信情報をビーコンに付加して不特定の無線LAN端末に送信するビーコン送信手段とを備えることを最も主要な特徴とする。
【0010】
本発明のシステムはまた、ユーザが利用する1以上の無線LAN端末を備え、当該無線LAN端末が、前記アクセスポイントから送信されるビーコンを受信するビーコン受信手段と、前記ビーコンに含まれる配信情報をユーザに認知させる出力手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
本発明のシステムはまた、通信ネットワークを介して情報提供者の情報通信端末から配信すべき情報を受け付ける情報収集サーバを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の情報配信システムにおいて、前記ビーコンは電波ビーコンであることが有効である。
【0013】
また、前記配信情報はテキスト情報であることが有効である。
【0014】
本発明にかかる方法は、無線LANを利用する情報通信端末に情報配信を行う情報配信方法において、情報を配信する配信サーバが無線LANアクセスポイントに配信情報を送信するステップと、前記無線LANアクセスポイントが配信情報をビーコンに付加して不特定の無線LAN端末に送信するステップと、を含むことを特徴とする。
【0015】
この情報配信方法はさらに、前記無線LANアクセスポイントから送信されたビーコンをユーザの無線LAN端末が受信するステップと、前記無線LAN端末が受信したビーコンに含まれる配信情報をユーザに認知させるべく出力するステップと、を含むことを特徴とする。
【0016】
この情報配信方法はさらに、情報収集サーバが通信ネットワークを介して情報提供者の情報通信端末から配信すべき情報を受信するステップを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
電波ビーコンに配信情報を付加して送信することにより、無線LANアクセスポイントとの接続が確立(アソシエート)していない無線LAN端末に対しても情報配信を行うことが可能となる。したがって、アソシエートしている端末にのみ配信可能な従来例と比較して多くの端末にPUSH型情報配信を行うことが可能となる。
【0018】
また、情報提供者の通信端末からネットワークを介して配信すべき情報を受け付ける構成としたため、情報提供者はコンテンツをネットワークを介して送信するだけで不特定のユーザ端末にリアルタイムな情報配信を行うことができる。
【0019】
また、電波ビーコンを利用することにより、受信端末がユーザの鞄の中などに入っている場合でも受信させることができ、確実に情報を配信して衆知させることができる。
【0020】
また、配信情報をテキスト情報に限定することにより、無線空間の使用帯域を抑えて他の通信への影響を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においてイベント情報とは、企業がユーザに発信を希望する情報全般をいい、例えばアクセスポイント4の近隣で実施されるイベントの情報の他、ユーザ向けの広告や、ニュース等の情報が含まれるものとする。
【0022】
図1は、本発明にかかる情報配信システムの全体構成を示す概略図である。図1を参照すると、イベント情報配信システム1と、1以上の企業端末2と、複数の無線LANアクセスポイント4と、イベント情報受信端末5とがインターネット7を介して接続されている。無線LANアクセスポイント4は各地域でホットスポットを構成し、その電波範囲内にある無線LAN端末はアクセスポイント4を介してインターネット7に接続することができる。なお、このホットスポットは街中や建物、駅などの他、電車やタクシーなどの移動手段の中に構成されていてもよく、会員制であってもよいし、不特定多数のユーザが無料で利用できる形態であってもよい。
【0023】
図2は、イベント情報配信システム1の構成を示す図である。本図に示すように、イベント情報配信システム1はイベント情報収集サーバ10と、イベント情報配信サーバ20とで構成されている。イベント情報配信サーバ20は、例えばインターネットホームページが登録されたウェブサーバであり、インターネット7を介して企業端末2から配信すべきイベント情報を受け付けてデータベース(図示せず)に登録する。イベント情報配信サーバ20は、例えばワークステーション側サーバコンピュータであり、収集サーバ10に登録されたイベント情報を読み出して各ホットスポットの無線LANアクセスポイント4に配信する。
【0024】
企業端末2は、ユーザに情報を発信したい企業に属する情報通信端末であり、少なくともLANボードなどのインターネット接続手段と、キーボードやマウス等の情報入力手段と、表示画面とを備え、企業の担当者は当該企業端末2にイベント情報を入力して情報収集サーバ10に送信する。本実施例では情報収集サーバ10がウェブサーバであり、企業端末2からシステムのウェブページにアクセスするとイベント情報の入力画面が提示され、この入力欄にイベント情報を入力して画面上の送信ボタンをクリックすると、入力したイベント情報が情報収集サーバ10に送信され、情報収集サーバ10が備えるデータベース(図示せず)に登録される。ただし、イベント情報の収集はこの例に限るものではなく、例えば企業端末2から電子メール等の形で情報収集サーバ20に送信されるような構成であってもよい。なお本実施形態において、企業端末2から送信されるイベント情報はテキスト情報に限定されており、画像データ等は含まれないものとする。また、企業端末2はイベント情報の配信を希望する企業毎にインターネット7に複数接続されているものとする。
【0025】
無線LANアクセスポイント4は、イベント情報受信端末5とインターネット7の間の中継を行う無線基地局である。図3に、無線LANアクセスポイント4の構成を示す。本図に示されるように、アクセスポイント4は、イベント情報受信手段30と、電波ビーコン送信手段40とを備えている。イベント情報受信機能30は、イベント情報配信サーバ20から配信されるイベント情報を受信する。電波ビーコン送信手段40は、受信したイベント情報を電波ビーコンに載せて不特定のイベント情報受信端末5に送信する。この電波ビーコンのフレームフォーマットを図4に示す。電波ビーコン送信手段40は、図4に示すframeボディ部分にイベント情報を格納し、SSID(Sevice Set ID)や電波受信強度情報などの制御情報とともに定期的に送出する。
【0026】
イベント情報受信端末5は、無線LAN接続機能を備える情報通信端末であり、パーソナルコンピュータや携帯電話機、PDAなどユーザが保有するものである場合と、電車や自動車などの移動体に装備された無線LAN端末である場合がある。このイベント情報受信端末5の構成を図5に示す。本図に示されるように、イベント情報受信端末5は、電波ビーコン受信手段50と、イベント情報表示手段60とを備えている。電波ビーコン受信手段50は、無線LANアクセスポイント4から送信される電波ビーコンを受信する。イベント情報表示手段60は表示画面を備え、電波ビーコンを受信した場合に含まれるイベント情報を抽出して画面に表示する。なお、イベント情報受信端末5は、上記構成の他にインターネット7にアクセスするための無線LANカードやブラウザ手段、入力手段など必要な機能を備えるものとする。
【0027】
次に、図6以降を用いて情報配信方法のフローを説明する。図6は本発明の全体動作イメージを示す図である。イベント情報を発信したい企業は本願システムを利用する前提として、本願システムの運営者との契約を行う。契約が成立すると企業の担当者は企業端末2に配信したいイベント情報コンテンツを作成し、インターネット7を介してイベント情報配信システム1に送信する。システム1の情報収集サーバ10がこれを受け付けてデータベースに登録する。ここに登録されたイベント情報コンテンツは情報配信サーバ20により、インターネット7を介し無線LANアクセスポイント4に送られ、ここから電波ビーコンを利用してイベント情報受信端末5に配信される。また、企業はイベント情報に更新を行った場合は再度インターネット7を介してイベント配信システム1にアップデートを行い、これがインターネット7を介して電波ビーコンでイベント情報受信端末5に受信される。
【0028】
図7は、無線LANアクセスポイント4からイベント情報受信端末5へのイベント情報配信方法を示すイメージ図である。無線LANアクセスポイント4は、イベント情報配信サーバ20から受信したイベント情報を、電波ビーコン送信手段40を用いて電波ビーコンにイベント情報を付加して不特定多数のイベント情報受信端末5へ送信する。イベント情報受信端末5の電波ビーコン受信手段50が電波ビーコンを受信する。
【0029】
図8は、イベント情報受信端末5における情報出力までの動作を示すイメージ図である。イベント情報配信サーバ20から配信されるイベント情報は、無線LANアクセスポイント4のイベント情報受信手段30に受信され、電波ビーコン送信手段40にて各種制御信号にテキスト情報であるイベント情報が付加され電波ビーコンとして送信される。イベント情報受信端末4の電波ビーコン受信手段50がこれを受信し、イベント情報表示手段60が、電波ビーコンからイベント情報を取り出して表示画面に出力する。
【0030】
以上の構成により、各企業は自由に作成したイベント情報コンテンツを、インターネット7を介してイベント情報収集サーバ10にアップデートするだけで、イベント情報受信端末にイベント情報の配信を行うことができる。この場合に電波ビーコンを用いることにより、アクセスポイント4にアソシエートしていないイベント情報受信端末にもイベント情報の配信を行うことができる。また、電波ビーコンに載せるイベント情報をテキスト情報としているため無線空間の占有帯域を抑えることができる。
【0031】
以上に本発明の実施の一形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、他の様々な実施例として実現することができる。例えば、ホットスポットごとに、その地域や種別ごとに独自のイベント情報を配信する構成とすることができる。すなわち、イベント情報収集サーバ10は企業端末2からイベント情報を受理する際に、どの地域やどの種別(例えば、電車内など)のホットスポットに配信を希望するかの指定情報を取得するようにする。配信サーバ20はこの指定情報に従い、指定されたホットスポットにある無線LANアクセスポイント4のみを宛先としてイベント情報を配信し、当該ホットスポットにある無線LANアクセスポイント4から電波ビーコンに載せてイベント情報が配信されるようにする。
【0032】
また、上記実施例では電波ビーコンにイベント情報を載せて配信しているが、これに光ビーコンを用いるようにしてもよい。ただし、光ビーコンではイベント情報受信端末5が鞄の中などに入ってしまっている場合に受信できなくなる可能性があるため、電波ビーコンの方が確実に情報配信を行える点で好適である。さらに、上記実施例では配信されるイベント情報はテキスト情報となっているが、これは無線空間の帯域占有を気にしなければ画像や動画データを含んでいてもよく、また音声データであってもよい。この場合、イベント情報受信端末5における出力手段60は表示画面以外にスピーカ等の音声出力手段を備える構成となるのは自明である。
【0033】
また、上記実施例の細かい構成は本発明の目的を得られる限りにおいて変更可能である。例えば、システム1においてイベント情報収集サーバ10はイベント情報配信サーバ20を兼ねていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、電波ビーコンを用いて受信端末に広告やニュース等のイベント情報を配信するものであり、情報通信産業や広告産業に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の情報配信システムの全体の構成図である。
【図2】情報配信システム1の構成を示す概略図である。
【図3】無線LANアクセスポイントの構成を示す概略図である。
【図4】電波ビーコンのフレームフォーマット構成を示す図である。
【図5】イベント情報受信端末5の構成を示す概略図である。
【図6】本願システムによる情報配信方法のフローを説明するための図である。
【図7】本願システムによる情報配信方法のフローを説明するための図である。
【図8】本願システムによる情報配信方法のフローを説明するための図である。
【符号の説明】
【0036】
1 イベント情報配信システム
2 企業端末
4 無線LANアクセスポイント
5 イベント情報受信端末
7 インターネット
10 イベント情報収集サーバ
20 イベント情報配信サーバ
30 イベント情報受信手段
40 電波ビーコン送信手段
50 電波ビーコン受信手段
60 イベント情報表示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線LANを利用する情報通信端末に情報配信を行う情報配信システムにおいて、適宜の場所に設置される1以上の無線LANアクセスポイントと、当該無線LANアクセスポイントを介して情報を配信する配信サーバとを備え、前記無線LANアクセスポイントが、前記配信サーバから配信情報を受信する情報受信手段と、受け取った配信情報をビーコンに付加して送信するビーコン送信手段とを備えることを特徴とする情報配信システム。
【請求項2】
請求項1に記載の情報配信システムがさらに、ユーザが利用する1以上の無線LAN端末を備え、当該無線LAN端末が、前記アクセスポイントから送信されるビーコンを受信するビーコン受信手段と、前記ビーコンに含まれる配信情報をユーザに認知させる出力手段とを備えることを特徴とする情報配信システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の情報配信システムがさらに、通信ネットワークを介して情報提供者の情報通信端末から配信すべき情報を受け付ける情報収集サーバを備えることを特徴とする情報配信システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の情報配信システムにおいて、前記ビーコンは電波ビーコンであることを特徴とする情報配信システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の情報配信システムにおいて、前記配信情報はテキスト情報であることを特徴とする情報配信システム。
【請求項6】
無線LANを利用する情報通信端末に情報配信を行う情報配信方法において、情報を配信する配信サーバが無線LANアクセスポイントに配信情報を送信するステップと、前記無線LANアクセスポイントが配信情報をビーコンに付加して不特定の無線LAN端末に送信するステップと、を含むことを特徴とする情報配信方法。
【請求項7】
請求項6に記載の情報配信方法がさらに、前記無線LANアクセスポイントから送信されたビーコンをユーザの無線LAN端末が受信するステップと、前記無線LAN端末が受信したビーコンに含まれる配信情報をユーザに認知させるべく出力するステップと、を含むことを特徴とする情報配信方法。
【請求項8】
請求項6または7に記載の情報配信方法がさらに、情報収集サーバが通信ネットワークを介して情報提供者の情報通信端末から配信すべき情報を受信するステップを含むことを特徴とする情報配信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−245906(P2006−245906A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−57526(P2005−57526)
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(000232140)NECフィールディング株式会社 (373)
【Fターム(参考)】