説明

イメージセンサ及びその製造方法並びに検査装置

【課題】集光効率が高く、かつ画素間のクロストークが少ないイメージセンサ及びその製造方法並びに検査装置を提供する。
【解決手段】複数の受光素子を備え、入射した光を電気信号に変換する光源変換部と、各受光素子の直上域に配置され、その直下に位置する受光素子に向けて光を集光する複数のレンズと、このレンズ上に形成され、光透過材料からなる絶縁層とを備えるイメージセンサにおいて、絶縁層の表面に、受光素子毎にそれぞれ離間して形成され、その中心が、各受光素子の受光部の中心とその直上に配置されたレンズの中心とを結んだ線の延長線上に位置する検出領域を設ける。そして、検出対象の試料を、少なくともこの検出領域に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、集光構造を備えるイメージセンサ及びその製造方法並びに検査装置に関する。より詳しくは、試料の発光過程を検出するイメージセンサ及びその製造方法並びに検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生命科学領域には、微小な発光過程を、多数の試料について同時並行的に検出する分析手法がある。例えば、溶液中に含まれるタンパク質を同定したい場合には、従来、ELISA法(Enzyme Linked Immuno Sorbent Assay:酵素免疫測定法)などが利用されている。ELISA法は、多数の抗体を配列・固定した基板を、測定対象のタンパク質を含有する溶液に浸漬した後、更に蛍光修飾した抗体にさらし、これを励起光に暴露して顕微鏡などで観察する測定法であり、蛍光の位置からどの抗体が反応したかを判別することができる。
【0003】
一方、蛍光をはじめとして発光過程で生じる光の多くは、周囲の空間に等方的に放射される。このため、前述したELISA法などのように、発光過程の観察に顕微鏡を用いる方法は、検出効率が顕微鏡の集光効率によって制限され、良好な結果が得られないという問題がある。
【0004】
この発光過程における検出効率を向上させる方法としては、受光素子を発光源(試料)近傍に設置することが考えられる。例えば、検出対象の発光過程が、十分に小さい空間で生じる現象であれば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補性金属酸化膜半導体)やCCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)イメージセンサを用いることができる。
【0005】
その場合、これらのイメージセンサの単位ピクセルに1つの発光過程を対応させる形態で、光検出系を構成することにより、同時並行的に100万単位の発光過程を、時系列で記録及び解析することができる。また、イメージセンサの表面近傍でこれらの発光過程が出現するような構成とすることで、多数の試料について同時並行的発光過程を、小型の検出系で測定することが可能となる。
【0006】
このような理由から、従来、細胞などの生体組織を測定するためのイメージセンサが提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。例えば、特許文献1に記載のイメージセンサでは、検出精度を向上させるために、各画素セルのフォトダイオード上面に、励起光の波長域を遮断すると共に蛍光の波長域を透過する光学フィルター層を設けている。
【0007】
一方、特許文献2に記載のイメージセンサは、受光面上に反射防止膜を形成することにより、受光面における透過率を向上させて、検出感度の向上を図っている。また、特許文献2に記載のイメージセンサでは、一本鎖プローブDNAなどの生体高分子が多数集まったスポットを、反射防止膜上にマトリクス状に形成し、このスポットに特定のサンプルが結合するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−227155号公報
【特許文献2】特開2006−30162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前述した従来のイメージセンサには、隣接する画素間でクロストークが生じるという問題点がある。例えば、センサ表面近傍で発光過程が生じた場合、前述したように試料から発せられた光は全方向に均等に放射されるため、直下の画素のみならず、その近傍の画素にも影響を与える。このため、従来のイメージセンサでは、ピクセル毎に独立して発光過程を検出することができず、必然的に検出できる発光過程の数が限られてしまう。
【0010】
この画素間のクロストークを低減する方法としては、イメージセンサの各画素の間に遮光壁を設けることが考えられるが、その場合、製造工程が複雑になるため、従来のイメージセンサでは、完全な遮光壁は形成されていないのが現状である。
【0011】
そこで、本開示は、集光効率が高く、かつ画素間のクロストークが少ないイメージセンサ及びその製造方法並びに検査装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示のイメージセンサは、複数の受光素子を備え、入射した光を電気信号に変換する光源変換部と、各受光素子の直上域に配置され、その直下に位置する受光素子の受光部に向けて光を集光する複数のレンズと、前記レンズ上に形成され、光透過材料からなる絶縁層と、前記絶縁層の表面に受光素子毎にそれぞれ離間して設けられ、その中心が、各受光素子の受光部の中心とその直上に配置されたレンズの中心とを結んだ線の延長線上に位置する検出領域と、を有し、検出対象の試料は少なくとも前記検出領域に固定されるものである。
このイメージセンサでは、絶縁層の屈折率をn、試料からレンズまでの距離をLとしたとき、前記レンズの焦点距離fを、試料とレンズ間の光路長(=n×L)よりも短くしてもよい。
また、前記検出領域にのみ検出対象の試料を固定することができる。
その場合、前記検出領域には、表面処理が施されていてもよく、又は、前記試料と結合する抗体、アダプター若しくは遺伝子吸着物質が固定されていてもよい。
更に、前記絶縁層の表面には、前記検出領域以外の部分に、遮光マスクが形成されていてもよい。
更にまた、前記絶縁層は、シリコンオキサイドにより形成することができる。
【0013】
本開示のイメージセンサの製造方法は、半導体ウエハに、複数の受光素子を備え、入射した光を電気信号に変換する光電変換部を形成する工程と、各受光素子の直上域に、その直下に位置する受光素子の受光部に向けて光を集光する複数のレンズを形成する工程と、前記レンズ上に、光透過性材料からなる絶縁層を形成する工程と、前記絶縁層の表面に、受光素子毎に、検出対象の試料が固定される検出領域を、相互に離間し、かつ中心が各受光素子の受光部の中心とその直上に配置されたレンズの中心とを結んだ線の延長線上に位置するように形成する工程と、を有する。
【0014】
本開示の検査装置は、前述したイメージセンサが搭載されたものである。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、絶縁層の表面の各受光素子の中心部の直上域に検出領域が設けられているため、集光効率が向上すると共に、画素間のクロストークを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本開示の第1の実施形態に係るイメージセンサの構成を模式的に示す平面図である。
【図2】図1に示す画素セル1の構成を示す断面図である。
【図3】(a)は本実施形態のイメージセンサ10における集光状態を示す図であり、(b)は従来のイメージセンサの集光状態を示す図である。
【図4】(a)はマイクロレンズ5の焦点形成を示す図である、(b)は従来のイメージセンサで測定したときの状態を示す図である。
【図5】マイクロレンズ5の焦点距離fの好適な条件を示す図である。
【図6】図1に示すイメージセンサ10の測定時の状態を模式的に示す図である。
【図7】検出領域を画素の中心部に限定しなかった場合の測定時の状態を模式的に示す図である。
【図8】本開示の第2の実施形態に係るイメージセンサの画素セルの構成を示す断面図である。
【図9】本開示の第3の実施形態に係る検査装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示を実施するための形態について、添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示す各実施形態に限定されるものではない。また、説明は、以下の順序で行う。

1.第1の実施の形態
(画素中心部にのみ試料が固定されるイメージセンサの例)
2.第2の実施の形態
(検出領域以外の部分に遮光マスクが設けられたイメージセンサの例)
3.第3の実施の形態
(イメージセンサを搭載した検査装置の例)

【0018】
<1.第1の実施の形態>
先ず、本開示の第1の実施形態に係るイメージセンサについて説明する。図1は本実施形態のイメージセンサの構成を模式的に示す平面図であり、図2はその画素セル1の構成を示す断面図である。
【0019】
[全体構成]
図1及び図2に示すように、本実施形態のイメージセンサ10では、画素セル1を構成する複数の受光素子がマトリクス状に配設された光電変換部3の上に、複数のマイクロレンズ5が配置されている。そして、各マイクロレンズ5を覆うように絶縁層6が形成されており、絶縁層6上には、画素セル1ごとに検出領域2が設けられている。
【0020】
[光電変換部3]
光電変換部3は、各受光素子により、試料11における発光過程などの光現象を検出して、電気信号として出力する部分である。例えば、CCDやCMOSなどの固体撮像素子を用いた場合、各受光素子はPN接合により構成される。また、光電変換部3の各画素セル1のサイズaは、特に限定されるものではないが、例えば0.2〜10μm角とすることができる。更に、光電変換部3の厚さtも、特に限定されるものではないが、従来のイメージセンサと同様に1〜10μm程度とすることができる。
【0021】
[マイクロレンズ5]
マイクロレンズ5は、光電変換部3に配設された各受光素子の受光部4に向けて光を集光するものであり、画素セル1ごとに受光素子の直上域に配置されている。本実施形態のイメージセンサ10においては、1つの受光素子に対して1つのマイクロレンズが設けられていてもよいが、1つのマイクロレンズが複数の受光素子に対応する構成としてもよい。また、マイクロレンズ5の形状は、特に限定されるものではなく、平凸レンズや両凸レンズなど各種形状のものを適用することができ、そのアレイ方式も特に限定されるものではなく、適宜選択することができる。
【0022】
図3(a)は本実施形態のイメージセンサ10における集光状態を示す図であり、図3(b)は従来のイメージセンサの集光状態を示す図である。また、図4(a)はマイクロレンズ5の焦点形成を示す図である、図4(b)は従来のイメージセンサで測定したときの状態を示す図である。更に、図5はマイクロレンズ5の焦点距離fの好適な条件を示す図である。更に、なお、図3〜図5においては、図を見やすくするために、受光部4とマイクロレンズ5との間の構成要素は省略し、マイクロレンズ5を両凸形状で記載している。
【0023】
図3(b)に示すように、従来のイメージセンサでは、通常、平行光を受光面に集光する構造をとっている。このため、マイクロレンズ105から受光面である受光部104までの屈折率をn、レンズ105から結像面までの距離をLとしたとき、マイクロレンズ105の焦点距離fは、f≧L×nとなるように設計されている。このため、図4(b)に示すように、従来のイメージセンサ構造の場合、仮に、画素中央部に試料11を固定したとしても、マイクロレンズ105から結像面までの距離Lは負の値となり、集光しない系となってしまう。
【0024】
一方、図3(a)及び図4(b)に示すように、本実施形態のイメージセンサ10では、検出領域2から発せられ、少なくとも集光途中にある光束を並行又は収束させて、対応する受光部4内に収まるように、マイクロレンズ5の焦点を形成する。具体的には、マイクロレンズ5の焦点距離fが、f<L×nとなるように、絶縁層6の厚さ、マイクロレンズ5から受光部4までの距離及び受光素子や受光部4の大きさなどを調整する。ここで、nは絶縁層6の屈折率、Lは試料11からマイクロレンズ5までの距離である。
【0025】
更に、マイクロレンズ5の焦点距離fは、図5に示すように検出領域2からの光が幾何学的に全て受光部4に入射する条件であることが好ましい。具体的には、検出領域2がマイクロレンズ5の光軸近傍のみに存在する場合は、口径Sのマイクロレンズ5から出射した光速が、全て、口径Sの受光部4に入射する条件は、幾何学的には、下記数式(1)で表される。ここで、下記数式(1)におけるLはマイクロレンズ5から受光部4までの距離であり、Lはマイクロレンズ5から焦点までの距離である。
【0026】
【数1】

【0027】
上記数式(1)をLについて解くと、下記数式(2)となる。
【0028】
【数2】

【0029】
そして、検出領域2からの光を、上記数式(2)で表されるLよりも手前で合焦させるためには、マイクロレンズ5の焦点距離fが下記数式(3)を満たすようにすればよい。ここで、下記数式(3)におけるnはマイクロレンズ5から受光部4までの屈折率、n2は絶縁層6の屈折率である。
【0030】
【数3】

【0031】
なお、マイクロレンズ5の焦点距離fは、下記数式(4)を満たすことが理想である。
【0032】
【数4】

【0033】
[絶縁層6]
絶縁層6は、光変換部3の保護、受光素子及びその周辺集積回路の電気的絶縁並びに構造的支持、表面の平坦化などのために設けられており、光を透過し、かつ試料11や受光素子での光検出に影響しない材料で形成されている。具体的には、絶縁層6は、例えば酸化シリコン(SiO)及び窒化シリコン(SiN)などの光透過性がある無機材料、ポリイミドなどの高融点でかつ光透過性がある高分子材料で形成することができる。
【0034】
また、蛍光などの検出対象の波長の光のみを透過し、励起光など検出対象外の光を吸収又は反射する材料で形成してもよい。更に、絶縁層6が透明材料で形成されている場合は、マイクロレンズ5と受光部4との間に、検出対象の波長の光のみを透過し、検出対象外の光を吸収するカラーフィルターを設けることが望ましい。なお、絶縁層6の厚さは、特に限定されるものではなく、表面を平坦化できる程度であればよいが、レンズの焦点距離fとの関係から、1〜30μm程度が好適である。
【0035】
[検出領域2]
検出領域2は、絶縁層6の表面に、受光素子ごとにそれぞれ離間して設けられている。また、検出領域2の中心は、各受光素子の受光部4の中心とその直上に配置されたレンズ5の中心とを結んだ線の延長線上に位置している。そして、本実施形態のイメージセンサ10においては、検出領域2にのみ試料11が固定され、この部分での発光のみが受光部4において検出される。ここで、画素セル1における検出領域2の割合は、受光素子の受光面の大きさなどに応じて適宜設定することができるが、クロストーク抑制の観点から、1〜70%程度が好適である。
【0036】
試料11を固定する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、検出領域2に疎水処理又は親水処理などの表面処理を施し、その部分にのみ、試料11が固定されるようにしてもよい。また、予め、インクジェット法などの各種印刷方法などにより、検出領域2に、試料11と結合する抗体、アダプター又は遺伝子吸着物質などを固定しておき、これらに試料11を結合させることにより、試料11を固定することもできる。
【0037】
[製造方法]
次に、前述の如く構成されるイメージセンサ10の製造方法について説明する。本実施形態のイメージセンサ10を製造する場合は、先ず、半導体ウエハに、複数の受光素子を備え、入射した光を電気信号に変換する光電変換部3を形成する。次に、各受光素子の直上域に、その直下に位置する受光素子の受光部4に向けて光を集光する複数のマイクロレンズ5を形成し、更に、その上に光透過性材料からなる絶縁層6を形成する。これら光電変換部3、マイクロレンズ5及び絶縁層6の形成方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を適用することができる。
【0038】
次に、絶縁層6の表面に、受光素子毎に、検出対象の試料が固定される検出領域2を、相互に離間し、かつ中心が各受光素子の受光部の中心とその直上に配置されたレンズの中心とを結んだ線の延長線上に位置するように形成する。その際、例えば、検出領域2に、疎水処理や親水処理などの表面処理を施したり、各種印刷方法などによって、試料11と結合する抗体、アダプター若しくは遺伝子吸着物質などを固定したりすることもできる。これにより、容易に、検出領域2にのみ試料11を固定することができる。その後、公知の方法によりウエハを切断し、個々のイメージセンサ10に分離する。
【0039】
[動作]
次に、本実施形態のイメージセンサ10の動作について、蛍光色素で修飾された試料の発光過程を測定する場合を例にして説明する。図6はイメージセンサ10の測定時の状態を模式的に示す図であり、図7は検出領域2を画素の中心部に限定しなかった場合の測定時の状態を模式的に示す図である。なお、図6及び図7においては、図を見やすくするために、受光部4とマイクロレンズ5との間の構成要素は省略し、マイクロレンズ5を両凸形状で記載している。
【0040】
図6に示すように、本実施形態のイメージセンサ10では、検出領域2に固定された試料11a〜11cに励起光12を照射する。これにより、各試料11a〜11cに応じた蛍光が発生する。そして、例えば、試料11bの場合、励起光12により生じた蛍光13は、絶縁層6に入射し、マイクロレンズ5で集光され、受光素子の受光部4に入射する。
【0041】
このとき、本実施形態のイメージセンサ10では、検出領域2の中心が、マイクロレンズ5の中心と受光部4の中心を結ぶ線(光軸)の延長線上に位置しており、その近傍でのみ発光が生じる。これにより、試料11bから発せられた蛍光13を、マイクロレンズ5で効率的に集光することができ、検出感度が向上する。また、イメージセンサ10は、他の試料11a,11cから発せられた蛍光が他の受光部4に入射するクロストークも防止できる。
【0042】
これに対して、図7に示す従来のイメージセンサでは、各画素セル1の全面に試料11a〜11cが固定されているため、例えば、励起光12の照射により試料11bから発せられた蛍光13は、同一画素セル1内の受光部4に集光されると共に、それ以外にも隣接する他の受光部4にも入射する。即ち、隣接する画素間で、クロストークが生じる。
【0043】
以上詳述したように、本実施形態のイメージセンサ10では、その中心がマイクロレンズ5の光軸の延長線上位置し、受光素子毎に離間して設けられた検出領域2にのみ試料11が固定されるため、集光効率を高めることができると共に、隣接画素への迷光の伝搬を防止することができる。
【0044】
<2.第2の実施の形態>
次に、本開示の第2の実施形態に係るイメージセンサについて説明する。図8は本実施形態のイメージセンサの画素セルの構成を示す断面図である。なお、図8においては、図2に示す第1の実施形態のイメージセンサの画素セル1の構成要素と同じものには同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0045】
[全体構成]
図8に示すように、本実施形態のイメージセンサにおいては、絶縁層6の表面の検出領域2以外の部分に、光を遮光する遮光マスク22が形成されている。
【0046】
[遮光マスク22]
遮光マスク22は、励起光12や試料11から発せられる蛍光13などの光を吸収及び/又は反射するものであればよく、その材質は特に限定されるものではないが、例えばアルミニウム薄膜、酸化クロム薄膜及び感光性樹脂などにより形成することができる。また、その形成方法も、特に限定されるものではなく、ドライエッチングや光リソグラフィーなどの公知の方法を適用することができる。
【0047】
[動作]
本実施形態のイメージセンサは、例えば、発光過程の要因となる核が、各画素セル21の非遮光部(検出領域2)に、およそ1つずつ入る程度の密度でランダムに核の形成を行うことができる。また、本実施形態のイメージセンサでは、検出領域2以外の部分にも試料11が固定されていてもよい。このため、例えば、遮光マスク22の上から、より荒い精度で印刷など行い、試料11や、試料11と結合する抗体、アダプター又は遺伝子吸着物質を画素セル21の表面に固定してもよい。
【0048】
以上詳述したように、本実施形態のイメージセンサでは、検出領域2以外の部分に遮光マスク22が形成されているため、画素セル21の表面全域に試料11が固定されていても、隣接画素への迷光の伝搬を防止することができる。なお、本実施形態のイメージセンサにおける上記以外の構成及び効果は、前述した第1の実施形態と同様である。
【0049】
<2.第3の実施の形態>
次に、本開示の第3の実施形態に係る検査装置について説明する。図9は本実施形態の検査装置の構成を示すブロック図である。図9に示すように、本実施形態の検査装置30は、前述した第1の実施形態のイメージセンサ10が搭載されたものであり、例えば、試料注入部33から注入された試料11に、光源32から出射された光を照射し、その発光過程を検出するものである。
【0050】
この検査装置30の撮像装置31には、イメージセンサ10の他に、検出信号を処理する画像処理部34、処理されたデータを記憶するメモリ35や表示する表示部36、メモリ35内のデータを送信する送信部37が設けられている。また、撮像装置31には、イメージセンサ10、画像処理部34、送信部37、光源32及び試料注入部33を制御する制御部38が設けられている。
【0051】
本実施形態の検査装置30では、隣接画素への迷光の伝搬が低減されたイメージセンサ10を搭載しているため、精度良く試料の発光過程を検出することができる。なお、本実施形態において、イメージセンサ10が搭載されている場合を例にして説明したが、本開示はこれに限定されるものではなく、第2の実施形態のイメージセンサを搭載した場合でも、同様の効果が得られる。
【0052】
また、本開示は、以下のような構成をとることもできる。
(1)
複数の受光素子を備え、入射した光を電気信号に変換する光源変換部と、
各受光素子の直上域に配置され、その直下に位置する受光素子の受光部に向けて光を集光する複数のレンズと、
前記レンズ上に形成され、光透過材料からなる絶縁層と、
前記絶縁層の表面に受光素子毎にそれぞれ離間して設けられ、その中心が、各受光素子の受光部の中心とその直上に配置されたレンズの中心とを結んだ線の延長線上に位置する検出領域と、
を有し、
検出対象の試料は少なくとも前記検出領域に固定されるイメージセンサ。
(2)
絶縁層の屈折率をn、試料からレンズまでの距離をLとしたとき、前記レンズの焦点距離fが、試料とレンズ間の光路長(=n×L)よりも短い(1)に記載のイメージセンサ。
(3)
前記検出領域にのみ検出対象の試料が固定される(1)又は(2)に記載のイメージセンサ。
(4)
前記検出領域には、表面処理が施されている(3)に記載のイメージセンサ。
(5)
前記検出領域には、前記試料と結合する抗体、アダプター又は遺伝子吸着物質が固定されている(3)に記載のイメージセンサ。
(6)
前記絶縁層の表面には、前記検出領域以外の部分に、遮光マスクが形成されている(1)〜(5)のいずれかに記載のイメージセンサ。
(7)
前記絶縁層は、シリコンオキサイドにより形成されている(1)〜(6)のいずれかに記載のイメージセンサ。
(8)
半導体ウエハに、複数の受光素子を備え、入射した光を電気信号に変換する光電変換部を形成する工程と、
各受光素子の直上域に、その直下に位置する受光素子の受光部に向けて光を集光する複数のレンズを形成する工程と、
前記レンズ上に、光透過性材料からなる絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層の表面に、受光素子毎に、検出対象の試料が固定される検出領域を、相互に離間し、かつ中心が各受光素子の受光部の中心とその直上に配置されたレンズの中心とを結んだ線の延長線上に位置するように形成する工程と、
を有するイメージセンサの製造方法。
(9)
(1)〜(7)のいずれかに記載のイメージセンサが搭載された検査装置。
【符号の説明】
【0053】
1、21 画素セル
2 検出領域
3 光電変換部
4、104 受光部
5、105 マイクロレンズ
6 絶縁層
10 イメージセンサ
11、11a〜11c 試料
12 励起光
13 蛍光
a 画素セル1のサイズ
t 光電変換部3の厚さ
30 検査装置
31 撮像装置
32 光源
33 試料注入部
34 画像処理部
35 メモリ
36 表示部
37 送信部
38 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の受光素子を備え、入射した光を電気信号に変換する光源変換部と、
各受光素子の直上域に配置され、その直下に位置する受光素子の受光部に向けて光を集光する複数のレンズと、
前記レンズ上に形成され、光透過材料からなる絶縁層と、
前記絶縁層の表面に受光素子毎にそれぞれ離間して設けられ、その中心が、各受光素子の受光部の中心とその直上に配置されたレンズの中心とを結んだ線の延長線上に位置する検出領域と、
を有し、
検出対象の試料は少なくとも前記検出領域に固定されるイメージセンサ。
【請求項2】
絶縁層の屈折率をn、試料からレンズまでの距離をLとしたとき、前記レンズの焦点距離fが、試料とレンズ間の光路長(=n×L)よりも短い請求項1に記載のイメージセンサ。
【請求項3】
前記検出領域にのみ検出対象の試料が固定される請求項1に記載のイメージセンサ。
【請求項4】
前記検出領域には、表面処理が施されている請求項3に記載のイメージセンサ。
【請求項5】
前記検出領域には、前記試料と結合する抗体、アダプター又は遺伝子吸着物質が固定されている請求項3に記載のイメージセンサ。
【請求項6】
前記絶縁層の表面には、前記検出領域以外の部分に、遮光マスクが形成されている請求項1に記載のイメージセンサ。
【請求項7】
前記絶縁層は、シリコンオキサイドにより形成されている請求項1に記載のイメージセンサ。
【請求項8】
半導体ウエハに、複数の受光素子を備え、入射した光を電気信号に変換する光電変換部を形成する工程と、
各受光素子の直上域に、その直下に位置する受光素子の受光部に向けて光を集光する複数のレンズを形成する工程と、
前記レンズ上に、光透過性材料からなる絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層の表面に、受光素子毎に、検出対象の試料が固定される検出領域を、相互に離間し、かつ中心が各受光素子の受光部の中心とその直上に配置されたレンズの中心とを結んだ線の延長線上に位置するように形成する工程と、
を有するイメージセンサの製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載のイメージセンサが搭載された検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−45857(P2013−45857A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182131(P2011−182131)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】