説明

イリジウム(III)ケトケトネートの製造方法

ロジウム(III)−及びイリジウム(III)ケトケトネートの製造方法。本発明は、各種のオルガノ−ロジウム化合物及びオルガノ−イリジウム化合物の出発化合物として用いられるロジウム化合物及びイリジウム化合物の製造方法に関する。この反応は、ロジウム(III)又はイリジウム(III)塩から始まり、かつ異なる溶媒又は溶媒混合物が用いられる2工程で行われる。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
有機金属化合物−特にd金属の化合物−は、近い将来広い意味でエレクトロニクス工業に関連する異なるタイプの数多くの用途において機能材料のような着色成分としての用途が見出されるであろう。この点において近年に明らかになった発達は蛍光の代りに燐光を示す有機金属イリジウム(III)錯体(complexes)の利用である(M.A.Baldo, S. Lamansky, P. E. Burrows, M. E. Thompson, S. R. Forrest, Appl. Phys. Lett. 1999, 75, 4-6)。対応する高純度有機イリジウム化合物への効率的な合成化学の利用が工業的利用に成功するために重要である。これは経済的観点からと該クラスの化合物の資源保護利用の観点からも必要である。
【0002】
WO02/060910及びWO04/085449号に記載されているように、ホモレプティック(homoleptic)及びヘテロレプティック(heteroleptic)イリジウムβ-ケトケトネート、特にアセチルアセトネート(以降acacと略称する)が、高収量が得られるので高純度オルガノイリジウム化合物の出発原料として特に適している。ホモレプティック及びヘテロレプティックケトケトネート錯体は各種有機反応用の触媒又は触媒先駆体として適している。これらは、例えば、セラミックカラー、MOCVD(金属有機化学蒸着)又は異種触媒の出発化合物として用いることができる。従って、これらの出発化合物には大きな需要がある。
【0003】
文献は、ホモレプティックイリジウムβ-ケトケトネート合成の各種の方法を開示している。
【0004】
Dwyer et al.(J. Amer. Chem. Soc. 1953, 75, 984)は、KIrClから出発する合成を記載している。この方法は、濃硫酸の発煙を含み、方法手順が極めて複雑である欠点を有し、僅か10%の低収率である。
【0005】
Davignon et al. (J. Less Common Metals 1970, 21, 345)は、3種の異なる方法を開示するが、それぞれは5及び15%のの間の収率で与えるに過ぎない。
【0006】
Benett et al. (Inorg. Chem. 1976, 15, 2936)は、塩基としてNaHCOを用いて純粋なHacac中でIrClからIr(acac)の合成を記載している。ここでは、生成物は健康上の危険を示すジクロロメタンによる抽出で分離され、カラムクロマトグラフィで精製される。更なる欠点は僅か18%の低収率である。クロマトグラフ法の利用は工業的規模においては実際的でない。
【0007】
JP07316176号は、塩基を加えた水中でIrClをアセチルアセトンと反応させるIr(acac)の製造方法を開示する。生成物はベンゼンによる抽出で分離される。発癌性ベンゼンの問題のある利用に加えて20%の低収率もまたここでも不利である。
【0008】
EP1088812号はIr(acac)の調製方法を開示し、イリジウム(IV)化合物をイリジウム(III)に還元し、pH6.5〜7.5で約70℃においてアセチルアセトンと反応させて生成する沈殿を濾別する。ここでも約22%の収率は依然として不満足である。更なる欠点は48時間のオーダーの長い反応時間である。
【0009】
記載した方法は全て共通して極めて低い収率である。従って、満足できるものではなく、特にIr(acac)の合成のための資源保護方法においてはそうである。
【0010】
炭素を介して金属に結合しない単純な共配位子(coligands)でヘテロレプティックイリジウムβ-ケトケトネートの合成の文献における発表は実際上なかった。2つのacac配位子に加えて、炭素を介して結合した1個のacac配位子及び、例えばピリジンのような窒素含有配位子をも含有する錯体の合成が知られているのみである(M. A. Bennett et al., Inorg. Chem. 1976, 15, 2936)。然しながら、この合成は、常に別個の抽出工程で複雑な方法で分離しなければならないホモレプティック錯体との混合物を生じる。然しながら、極めて関連があるのは、上述したように、更なる合成のための出発化合物としてヘテロレプティック錯体の入手である。
【0011】
ヘテロレプティックロジウム錯体Na[Rh(acac)Cl](X. Y. Liu et al., Organometallic 2004, 23, 3584)の合成は、塩化ロジウム水和物とアセチルアセトン及び炭酸水素ナトリウムとのメタノール中での反応によって実施できる。生成物は、メタノールからの再結晶後に58%の収率で得られる。然しながら、塩化イリジウム水和物との対応する合成を繰返す試みでは不確定の反応混合物が生じ、当業者は対応するヘテロレプティックイリジウム錯体がどのようにして得られるかについてこの文献から教示を得ることができない。
【0012】
驚くべきことに、ホモレプティック及びヘテロレプティックイリジウムケトケトネート錯体が、イリジウム(III)塩から出発する少なくとも2工程で実施し、それぞれに異なる溶媒又は溶媒混合物を用い、かつ反応混合物の溶媒を反応工程の間で交換することによって、簡便、迅速に及び極めて良好な収量で得られることが今や見出された。
【0013】
従って、本発明は、 式(1)
[LIrX] 式(1)
の構造単位を有するイリジウム(III)錯体を、イリジウム(III)塩と式(2)のアニオンを含有する化合物との反応によって製造する方法であって、出発物質を第一溶媒又は溶媒混合物中で反応させ、次いで溶媒又は溶媒混合物を反応混合物の塩状成分の物質の量を実質的に保持して部分的又は完全に交換し、及び第一溶媒又は溶媒混合物とは異なる更なる溶媒又は溶媒混合物中における更なる工程で反応を完結させる方法を記載する。
【0014】
ただし、式中、
X、Yは、その度毎に同一又は異なり、ヘテロ原子を介してイリジウムに結合した単座モノアニオン性配位子であり、
nは、その度毎に2又は3であり、
aは、n=3の場合は0であり又はn=2の場合は1であり、
Lは、その度毎に、同一又は異なり、両酸素原子を介してIrに配位する式(2)
【化5】

【0015】
式中、R、Rは、その度毎に同一又は異なり、H、CN、1〜20C原子を有する直鎖、分岐鎖又は環状アルキル又はアルコキシ基であって、1以上の非隣接CH基が−O−、−S−、−NR−、−CONR−、−CO−O−、−CR=CR−又は−C≡C−で置換されることがあり、かつ1以上のH原子がF、又は1以上の非芳香族基Rで置換されていることがある、4〜14C原子を有する芳香族又はヘテロ芳香族環システムで置換されることがあり;複数の置換基R及び/又はRは共に代りに更にモノ又はポリ環状、脂肪族又は芳香族環状システムを形成することがあり得る;
は、その度毎に同一又は異なり、H又は1〜20C原子を有する脂肪族又は芳香族炭化水素基である、
の配位子である。
【0016】
式(1)の構造単位はn=3の場合には中性錯体であり、n=2の場合には、式(1)の構造単位は錯体における対イオンをも含有するモノアニオンである。
【0017】
式(1)の構造単位を含む錯体は、モノ環状錯体であることが好ましい。
【0018】
本発明の目的において、溶媒は、溶媒が直接に反応に関与することなく特にイリジウムの配位圏内に配位子として生成物内に永続的に含まれることなく、物理的手段で他の物質を溶解又は懸濁することができる物質を意味するとする。
【0019】
本発明による溶媒交換は、ここでは連続的に行われるか又は中間体を単離し及び次いで第2溶媒又は溶媒混合物中で更に反応させる。
【0020】
本発明によると、反応混合物の塩状成分の物質の量は溶媒交換の間維持される。これは、低収量で生じるだけであるから、溶媒交換が、既に文献に記載されているように、次の再結晶によって既に形成した生成物の沈殿した留分の濾過によって除かれることを意味しない。反応混合物における塩状成分は、例えば、全てのイリジウム化合物、塩基(例えば水素炭酸塩)及びアセチルアセトネートアニオンであるが、例えば過剰の非-脱プロトン化アセチルアセトンは溶媒交換の間に同時に分離することができる。塩状成分の物質の量の優勢な保持は、少量の沈殿した副産物は濾別及び廃棄でき又はアセチルアセトンと平衡である若干のアセチルアセトネートは蒸発による混合物中に残らない。然しながら、濾過は2反応工程の間に行わないことが好ましい。
【0021】
式(2)の配位子(ligand)は、基Rの意味に応じて、β-ケトケトン、β-ケトエステル又はβ-ジエステルの対応イオンを表す。
【0022】
ヘテロ原子を介してイリジウムに結合する配位子X又はYは、炭素以外の原子を介してイリジウムに結合する配位子、即ち直接イリジウム−炭素結合を形成するオルガノ金属配位子ではないことを意味する。
【0023】
本発明の方法で調製されるホモレプティックイリジウム(III)錯体は式(3)の構造を有する。
【化6】

【0024】
式中、R、R及びRは、上述の意味を有する。
【0025】
本発明の方法で調製されるヘテロレプチックイリジウム(III)錯体は式(4)の構造を有する。
【化7】

【0026】
式中、X、Y、R、R及びRは上述した意味を有し、及びMは1価のカチオンを表す。
【0027】
特に好ましいものとしては式(4)におけるX=Yであることを特徴とする方法にある。X=Yの式(4)の化合物は特に容易に入手でき、この好ましさを示す。
【0028】
記載した方法は、式(4)のヘテロレプティックイリジウム錯体異性体の混合物を生じることが多い。従って、生成する式(4)のヘテロレプティックイリジウム(III)錯体が少なくとも2つの異性体の混合物であることを特徴とする本発明の方法が好ましい。
【0029】
生成する式(4)のヘテロレプティックイリジウム(III)錯体がX及びYアニオンに関して式(4a)のシス異性体及び式(4b)のトランス異性体の混合物であることを特徴とする方法が特に好ましい。
【化8】

【0030】
式中、R、R、R、X及びYは上述の意味を有する。
【0031】
共配位子X及びYは、好ましくは、F-、Cl-、Br-、I-、OH-、OR-、CN-、OCN-、SCN-、NO-、NO-、及びR−COO-(Rは1〜20炭素原子を有する有機基、好ましくはアルキル鎖を示す)からなる単座配位子の群から選ばれる。特に好ましいのは、X及びYがCl-、Br-又はOH-、特に極めて好ましいのはCl-又はBr-、特にCl-である方法である。
【0032】
上記方法に用いる出発化合物は、式IrX又はMIrX(式中、Mはプロトン、アルカリ金属カチオン又はアンモニウムイオンに等しく、Xは上述した意味を有する)のイリジウム(III)塩、又は場合によってこれらの塩の水和物又は塩化水素水和物が好ましい。
【0033】
特に好ましいのは、式IrCl*yHO又はIrCl*xHCl*yHO(式中x=0〜10及びy=0〜100、好ましくはy=1〜100)の形態の水和物又は塩化水素水和物の形態であるイリジウム(III)塩化物、又は式IrBr*yHO又はIrBr*xHCl*yHO(式中x及びyは上述した意味を有する)の形態の水和物又は臭化水素水和物の形態であるイリジウム(III)臭化物の使用である。特に極めて好ましいのは、上記の式の水和物又は塩化水素水和物の形態の塩化イリジウム(III)の使用である。
【0034】
所望であれば、先ず第1工程においてイリジウム(III)に還元されるイリジウム(IV)を用いて本発明の実際の方法をイリジウム(III)から出発することもできる。これはイリジウム(IV)の部分をも含む対応するイリジウム(III)化合物についての本発明による方法の障害ではない。
【0035】
本発明による方法で製造されたヘテロレプティックイリジウム(III)錯体は、カウンターカチオンMとしてアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウム、テトラアルキルフォスフォニウム又はテトラアリールフォスフォニウムカチオンを有することが好ましい。イリジウム(III)錯体は、カウンターカチオンとしてアルカリ金属カチオンを有するものが特に好ましく、ナトリウム又はカリウムを有するものが極めて好ましい。
【0036】
更に好ましい方法は、R、Rが、その度毎に同一又は異なり、H、1〜5C原子を有する直鎖、分岐鎖又は環状アルキル又はアルコキシ基であって、更に、1以上のH原子が弗素、又は4〜6C原子を有する芳香族又はヘテロ芳香族基で置換されているものであって、それが1以上の非芳香族基Rで置換されていることがある方法である。
【0037】
特に好ましいのは、Rが1〜5C炭素原子を有するアルキル基又はフルオロアルキル基、特に好ましくはCH又はCF、特にCH、及びR=Hであることを特徴とする本発明による方法である。従って、式(2)の配位子がアセチルアセトネートアニオンを表すものが極めて好ましい。
【0038】
上記の本発明の方法によると、式(2)のアニオンを含む化合物は、1価又は2価の無機又は有機カチオンの塩の形態、好ましくはそのリチウム、ナトリウム又はカリウム塩の形態で用いられる。
【0039】
然しながら、式(2)の配位子は、塩基を用いて対応する1,3−ジケトン、3−ケトエステル又は1,3−ジエステルのデプロトネーションによって、その場で同様に調製できる。或いは、シッフ塩基、アゾメチン、オキシム、ヒドラゾン、アセタール、ケタール、ヘミケタール、アミナール等のような該イオンの単純誘導体も用いることができる。これらの化合物は第1工程において水の存在下で溶媒又は溶媒混合物によって加水分解して対応する1,3−ジケトン、3-ケトエステル又は1,3−ジエステルを生じることができるからである。この目的に必要な水は溶媒として直接加えるか又は適切な場合にはイリジウム塩の水和の水から生じる。
【0040】
式(2)のアニオンの形成を伴う1,3−ジケトン、3−ケトエステル又は1,3−ジエステルの脱プロトネーションは、好ましくは水素炭酸塩、炭酸塩又は水酸化物、特に対応するナトリウム又はカリウム塩、又は水性アンモニアを用いて行われる。脱プロトネーションは、水素炭酸塩、特にナトリウム水素炭酸塩又はカリウム水素炭酸塩を用いて行うのが好ましい。更に、脱プロトネーションは、別個に添加した塩基によって行う代りに、十分に塩基性である場合にはイリジウム化合物の対イオン、例えばIr(OH)によって行うこともできる。
【0041】
反応溶液のpHは好ましくは3と8の間、特に好ましくは4と7の間である。反応の間に、特に第1反応工程の間に、特定の値に溶液のpHを繰返しリセットすること又は塩基を少量づつ加えることには感受性でもあり得る。
【0042】
式(2)のアニオンに対するイリジウム(III)塩の全化学量論比は、式(3)のホモレプティック錯体又は式(4)のヘテロレプティック錯体が形成されるかにとって重要であり、この割合が所望の生成物のタイプの制御に役立つことを意味する。
【0043】
従って、本発明による方法の好ましい態様は、イリジウム(III)塩対式(2)の全化学量論比が1:2〜1:4であることが好ましく、特に好ましくは1:2〜1:3、極めて好ましくは1:2〜1.25である。この好ましさは、この比が指摘したより低い場合には生成物の全収量が低下するが、この比が守られると式(4)のヘテロレプティック錯体が極めて良好な収量で形成されるとの観察によるものである。
【0044】
本発明の方法による更に好ましい態様は、イリジウム(III)塩に対する式(2)のアニオンの全化学量論比は少なくとも1:4、好ましくは1:4〜1:100、特に好ましくは1:4〜1:20、特に極めて好ましくは1:4〜1:10である。この比が守られると、式(3)のホモレプティック錯体は極めて良好な収量で得られる。
【0045】
本発明によると、イリジウム(III)塩に対する式(2)のβ-ケトケトネートがその場での脱プロトン化によって生じる対応する1,3-ジケトン、3-ケトエステル又は1,3-ジエステルのモル比は1:2〜1:100である。
【0046】
反応媒体中のイリジウム(III)塩の濃度は0.1〜1.0モル/Lの範囲にあることが好ましい。
【0047】
反応は、20℃〜200℃の範囲、特に好ましくは50℃〜150℃の範囲の温度すで行うのが好ましい。反応を対応する溶媒又は溶媒混合物中で還流下に行うことが特に極めて好ましい。これは溶媒の交換の前及び後の両反応工程に関する。
【0048】
本発明によると、方法は2(又は必要な場合はそれ以上の)工程で行われ、出発材料は第1溶媒又は溶媒混合物中で反応を実施し、次いで塩状成分の物質を実質的に保持して、溶媒の全部又は一部、好ましくは全部を交換し、及び最初のものとは異なる更なる溶媒又は溶媒混合物中での更なる反応工程で反応を完結する。
【0049】
第1反応工程のための溶媒(又は溶媒混合物)は第2反応工程のための溶媒(又は溶媒混合物)より極性であることが好ましい。溶媒の誘電率はここでは極性の尺度と考えられ、より極性の溶媒はより高い誘電率を有する。溶媒の誘電率の値は、例えばCRC Handbook of Chemistry and Physics, 62nd edition, 1981-1982, CRC Press, E52-E54に示されている。
【0050】
本発明の方法のための反応媒体は、全ての工程において二極性プロトン性及び/又は二極性非プロトン性溶媒及びその混合物を包含するのが好ましい。本発明の方法に用いる反応媒体は、全ての工程において二極性プロトン性又は二極性非プロトン性溶媒のみ、及びその混合物であることが好ましい。好ましい二極性プロトン性溶媒は、水、アルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、t-ブタノール、エチレングリコール又はプロピレングリコール、又は更に高級ジオール又はポリアルコール、例えばグリセロール又はポリエーテルアルコール、例えばポリエチレングリコールである。好ましい二極性非プロトン性溶媒は、ジメチルスルフォキサイド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトン又はN-メチル-2-ピロリドンである。特に好ましいののは、全て反応工程において二極性プロトン性溶媒である。
【0051】
出発材料及び反応生成物又は中間体は、反応条件下で溶媒又は溶媒混合物に主として又は完全に溶解することが好ましい。
【0052】
溶媒の交換前の第1反応工程に用いる溶媒は、水又は水と二極性プロトン性又は二極性非プロトン性溶媒との混合物であることが好ましい。ここで水の割合は少なくとも50%であることが好ましい。第1反応工程に用いられる溶媒は水が特に好ましい。
【0053】
溶媒の交換後の第2反応工程に用いられる溶媒は、1以上の二極性プロトン性溶媒、特にアルコール、又は1以上の二極性プロトン性溶媒と水又は1以上の二極性非プロトン性溶媒との混合物であることが好ましい。第2反応工程に用いられる溶媒は、アルコールであることが好ましく、特に好ましいのはメタノール又はエタノールであり、特にメタノールである。
【0054】
第1反応工程の反応時間は1〜24時間が好ましく、特に好ましいのは4時間と12時間の間である。第2反応工程の反応時間は1〜24時間が好ましく、4時間と12時間の間が特に好ましい。
【0055】
2つの反応工程の間で中間体又は粗生成物を固体として単離することが好ましい。これは、例えば真空及び/又は上昇温度における溶媒の除去によって行うことができる。これは、過剰の非−脱プロトン化β-ケトケトン、β-ケトエステル又はβ-ジエステルを同時に除くことができる利点を有する。濾過とは対照的に、溶媒の除去は塩状成分の離別を避け、全反応混合物を第2反応工程に導入することを意味し、これによって極めて高い収率が得られる。
【0056】
連続方法において反応工程の間に溶媒を交換することもできる。この場合、中間体又は粗生成物は固体として単離しない。このタイプの連続溶媒交換は、例えば蒸留による溶媒の連続的除去(適当な場合には共沸混合物として)及び対応する第2溶媒の連続的添加によって可能である。更に、連続溶媒交換には、第2溶媒より第1溶媒に対する浸透性が高い膜を用いることができる。ここで特に適しているのは、適当な膜の異なる透過性の結果として反応溶液上で生じる蒸気混合物が分離される浸透気化法(pervaporation)である。膜のガス側の蒸気を絶えず汲出すことによって、濃度傾斜が生じ、拡散を維持する。
【0057】
相対的に少量の反応副産物を除くために、冷又は熱反応溶液を濾過することは常識的であり得る。これは第1反応工程の間又は後及び/又は第2反応工程の間又は後に行うことができる。濾過は、第2反応工程の後に行うのが好ましい。残留物の濾過及び廃棄は、反応混合物から生成物が沈殿しない場合にのみ意味がある。そうでなければ収率が減少するからである。第1反応工程と第2反応工程との間では濾過は行わないことが好ましい。
【0058】
生成物は第2工程の後に各種の方法、例えば結晶化又は抽出によって行うことができる。結晶化による生成物の単離は、この方法で単純に、高純度及び良好な収率で入手し易いので好ましい。同時に、かなり大量の毒性、塩素化及び/又は発癌性のあり得る溶媒の使用を避けられる。結晶化では、生成物の収量を増大するために、反応溶液は濃縮し、及び/又は第2反応工程が実施された後に(第2溶媒又は溶媒混合物中で加熱)、好ましくは<0℃、特に好ましくは<−10℃に冷却することは有用である。生成物を更に精製するために、例えば第1及び/又は第2反応工程の溶媒又は他の溶媒で洗浄することができる。当業者に親しみのある更なる精製法、例えば再結晶化は可能であるが、生成物は既に高純度で形成されるので本発明の方法においては、絶対的に必要なものではない。
【0059】
特に好ましい実際的な反応手順は、好ましい変形を制限するつもりはないが、例えば次の通りである。
【0060】
イリジウム(III)塩を、所望量のアセチルアセトン及び対応する量の塩基(所望の生成物に応じて)と水中で還流下に反応させる。上昇温度で真空下に蒸発乾燥した後、残留物をメタノールでとり、還流加熱し、熱時に濾過し、かつ溶液の量を濃縮する。生成物、式(3)又は式(4)の錯体を冷却中に結晶化し、濾過及び冷メタノールでの洗浄によって単離及び精製できる。式(3)の錯体が形成されるか又は式(4)の錯体が形成されるかはここではイリジウム:アセチルアセトン比に依存する。
【0061】
本発明の方法は、従来技術の方法に対して次の利点で識別される。
【0062】
1. 本発明の方法によって、ホモレプティックイリジウム(III)ケトケトネート化合物が60%以上の極めて高い収率で容易に入手できるが、従来技術では5〜22%の範囲の収量が記載されているのみである。これはほぼ3の因子による収量の増加に対応する。これはこれらの希有金属の資源保存利用に対する巨大な利点を提供する。
【0063】
2. 本発明の方法によって、ヘテロレプティックイリジウム(III)ケトケトネート化合物が極めて良好な収率で同様に入手できる。現在までこれらのヘテロレプティック化合物の合成は知られていないが、更なる合成のための出発化合物として、その入手可能性は極めて重要である。
【0064】
3. 本発明による方法は、健康に危険を示す溶媒を必要としない。反応は単に水及びアルコール中で行うことができ、かつ塩素含有溶媒又はベンゼンによる抽出工程が錯体の単離には必要ないからである。
【0065】
4. 本発明による方法は、クロマトグラフ法が精製のために必要ではないので、単純に工業的規模で利用することもできる。
【0066】
本発明の方法によって合成された錯体混合物は新規である。従って、本発明は、更に式(4a)の錯体の1〜99%及び式(4b)の錯体の99〜1%を包含する式(4a)及び(4b)の錯体の混合物にも関する。この混合物は、式(4a)の錯体の20〜80%及び式(4b)の錯体の80〜20%を包含するものが好ましく、式(4a)の錯体の30〜70%及び式(4b)の錯体の70〜30%を包含するものが特に好ましく、式(4a)の錯体の35〜65%及び式(4b)の錯体の65〜35%を包含するものが特に極めて好ましい。
【0067】
本発明は、同様に更なるイリジウム錯体、例えば、式(4a)の錯体及び式(4b)の錯体に加えて、式(3)の錯体又は他のイリジウム錯体をも包含する上記の混合物に関する。
【0068】
本発明は、同様に上記した本発明の方法によって得ることができる上記錯体混合物に関する。
【0069】
本発明は次の例によって詳細に説明するが、これらの例に限定することを望むものではない。従って、配位化学の領域の当業者にとって本発明による反応を−上述したように−更なる発明工程を必要としないで更なるシステムにおいて実施することは可能である。
【実施例】
【0070】
次に挙げる合成は、保護気体雰囲気を利用しないで実施した。用いた化学品(溶媒、アセチルアセトン、ナトリウムアセチルアセトネート、無機塩)は、Aldrich(Taufkirchen、ドイツ)から購入した。イリジウム(III)塩化物(塩化水素)水和物−以下では理論上の式IrCl・3HOによって計算した−はHeraeus(Hanau、ドイツ)から購入した。
【0071】
例1 ナトリウム(ビス(アセチルアセトナート)ジクロロ)イリデート(III)、
(シス及びトランス異性体の混合物)及びトリス(アセトアセトナート)−イリジウム(III)
約200mLの1M水素炭酸ナトリウム水溶液及び次いで20.5mL(200mモル)のアセチルアセトンを激しく撹拌しながら蒸留水200mL中のIrCl・3HOの35.3g(100mモル)の溶液に加えた。反応混合物を100℃で10時間加熱し、80−90℃で真空下(1mバール)蒸発乾燥した。残留物を400mLのメタノールにとり、8時間還流下に加熱して熱い間に(P4frit)濾過した。濾液を70mLの容積に濃縮し、−20℃で24時間貯蔵した。生成した結晶は吸引濾過し僅かな冷メタノールで洗浄して乾燥した。オレンジ色の針状結晶の収量は理論値の47.7%に対応する23.1g(48mモル)であった。
【0072】
ナトリウム (ビス(アセチルアセトナート)ジクロロ)イリデート(III)の分析データ:
1H-NMR(DMSO−d6)、混合物:δ[ppm]=5.35、5.33、1.82、1.81、1.71.
シス異性体:δ[ppm]=5.35(s,2H,CH)、1.82(s,6H,CH)、1.71(s,6H,CH)。
【0073】
トランス異性体:δ[ppm]=5.33(s,2H,CH)、1.81(s,12H,CH)。
【0074】
シス:トランス比=1.6:1。
【0075】
13C-{H}-NMR(DMSO-d6)、混合物:δ[ppm]=183.28、182.76、181.68、101.56、101.25、26.35、26.15、25.88。
【0076】
シス異性体:δ[ppm]=183.28、182.76(CO)、101.25(CH)、26.15、25.88(CH)。
【0077】
トランス異性体: δ[ppm]=181.68(CO)、101.56(CH)、26.35(CH)。
【0078】
MS(アニオンESI):M-=459.0、460.0、461.9、462.9、464.0、464.9。
【0079】
EA:calc.=24.8%C、2.9%H、14.6%Cl、39.7%Ir;found=23.9%C、2.8%H、15.0%Cl、39.2%Ir。
【0080】
トリス(アセチルアセトナート)イリジウム(III)の分析データは、Benett et al.(Inorg. Chem. 1976, 15, 2936)に記載されている。
【0081】
例2〜8: 反応条件の変化の結果
ナトリウム (ビス(アセチルアセトナート)ジクロロ)イリデート(III)、(Na[Ir(acac)Cl]及びトリス(アセチルアセトナート)イリジウム(III)Ir(acac)の製造のために多くの実験を例1に従って行った。
【0082】
次の表は、原料のモル比及び生成物の収量を示す。
【表1】

【0083】
例9: ナトリウム (ビス(アセチルアセトナート)ジクロロ)イリデート(III)、
(シス及びトランス異性体の混合物)及びトランス(アセチルアセトナート)-
イリジウム(III)
蒸留水200mL中IrCl・3HOの35.3g(100mモル)の溶液を、激しく撹拌しながら1M炭酸水素ナトリウム水溶液の約80mLを添加してpH=4.5±0.5に調整した。
【0084】
90mL(875mモル)のアセチルアセトンを次いで混合物に加え、還流下で30分間加熱した。混合物を室温に冷却した後、1M炭酸水素ナトリウム水溶液の約20〜40mLの連続添加によってpHを4.5±0.5にリセットした。混合物を12時間再び還流沸騰させ、室温に冷却したた後、1M炭酸水素ナトリウム水溶液の約20〜40mLの連続添加によってpHを4.5±0.5にリセットし、混合物を更に6時間還流加熱した。pHリセット及び6時間の還流下加熱の最後のサイクルを、全化学量論的量のイリジウム:炭酸水素塩比及び従ってナトリウムアセチルアセトネート比の1:3に対応する全体で300mLの1M炭酸水素ナトリウム水溶液が消費されるまで繰返した。次いで反応混合物を80〜90℃で真空(1mバール)下に蒸発乾燥した。残留物は400mLのメタノールでとり、8時間還流加熱し、熱時(P4)濾過した。濾液は70mLの容積まで濃縮し、-20℃で24時間貯蔵した。形成した結晶を吸引濾別し、少量の冷メタノールで洗浄し、かつ乾燥した。オレンジ色の針状結晶の収量は、理論量の48.7%に対応する23.6g(49mモル)であった。
【0085】
分析データは例1を参照。
【0086】
例10〜16: 反応条件の変更の結果
ナトリウム (ビス(アセチルアセトナート)ジクロロ)イリデート(III)、(Na[Ir(acac)Cl]及びトリス(アセチルアセトナート)イリジウム(III)Ir(acac)の製造のために多くの実験を例9に示した手順に従って行った。
【0087】
次の表は、原料のモル比及び生成物の収量を示す。
【表2】

【0088】
例17: トリス(アセチルアセトナート)イリジウム(III)(比較例)
約600mLの1M炭酸水素ナトリウム水溶液及び次いで82.3mL(800mモル)のアセチルアセトンを激しく撹拌して200mLの蒸留水中35.3g(100mモル)のIrCl・3HOに加えた。反応混合物を100℃に10時間加熱し、放置して冷却させた。黄色沈殿を吸引濾過し、それぞれ水(50mL)及びメタノール(20mL)で3回洗浄した。収量は理論値の17.0%に相当する8.3g(17mモル)であった。母液に指定生成物を検出することはできなかった。
【0089】
例18: トリス(アセチルアセトナート)イリジウム(III) (比較例)
50.4g(600mモル)の炭酸水素ナトリウム及び次いで82.3mL(800mモル)のアセチルアセトンを400mLのメタノール中35.3g(100mモル)のIrCl・3HOの溶液に添加した。反応混合物を還流下10時間加熱し、放置して冷却した。約150mLの濃度まで濃縮してもトリス(アセチルアセトナート)イリジウム(III)は結晶化しなかったし、反応溶液に所定の生成物は検出できなかった。
【0090】
例19: トリス(アセチルアセトナート)イリジウム(III) (比較例)
反応を100mLの蒸留水及び100mLのメタノール中で行ったことが異なった反応を、例17のように実施した。黄色の沈殿が形成され、吸引濾過し、かつ冷メタノールで洗浄した。収量は5.9g(12mモル)で、理論値の12%であった。所定の生成物を母液中に検出することはできなかった。
【0091】
本発明による例1〜16から明らかなように、ホモレプティック及びヘテロレプティックイリジウムケトケトネート化合物が、本発明による方法で極めて良好な収量で合成できる。これに対して、従来技術に従って反応を水中でのみ行うと、所定の生成物は全く単離できない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
[LIrX] 式(1)
式中、
X、Yは、その度毎に同一又は異なり、ヘテロ原子を介してイリジウムに結合した単座、モノアニオン性配位子であり、
nは、その度毎に2又は3であり、
aは、n=3の場合は0であり又はn=2の場合は1であり、
Lは、その度毎に、同一又は異なり、両酸素原子を介してIrに配位する式(2)の配位子であり、
【化1】

式中、R、Rは、その度毎に同一又は異なり、H、CN、1〜20C原子を有する直鎖、分岐鎖又は環状アルキル又はアルコキシ基であって、1以上の非隣接CH基が−O−、−S−、−NR−、−CONR−、−CO−O−、−CR=CR−又は−C≡C−で置換されることがあり、かつ1以上のH原子がF、又は1以上の非芳香族基Rで置換されていることがある、4〜14C原子を有する芳香族又はヘテロ芳香族環システムで置換されることがあり;複数の置換基R及び/又はRは共に代りに更にモノ又はポリ環状、脂肪族又は芳香族環状システムを形成することがあり得る;
は、その度毎に同一又は異なり、H又は1〜20C原子を有する脂肪族又は芳香族炭化水素基である、
の構造単位を含有するイリジウム(III)錯体を、イリジウム(III)塩と式(2)のアニオンを含有する化合物との反応によって製造する方法であって、
出発物質を第一溶媒又は溶媒混合物中で反応させ、次いで溶媒又は溶媒混合物を反応混合物の塩状成分の物質の量を実質的に保持して部分的又は完全に交換し、及び第一溶媒又は溶媒混合物とは異なる更なる溶媒又は溶媒混合物中における更なる工程で反応を完結させる方法。
【請求項2】
式(3)のホモレプティックイリジウム(III)錯体を得ることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【化2】

式中、R、R及びRは請求項1において定義した意味を有する。
【請求項3】
式(4)のヘテロレプティックイリジウム(III)錯体を得ることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【化3】

式中、X、Y、R、R及びRは請求項1において定義した意味を有し、及びMは一価のカチオンを示す。
【請求項4】
X=Yであることを特徴とする請求項1及び/又は3に記載の方法。
【請求項5】
形成されるヘテロレプティックイリジウム(III)錯体がX及びY配位子に関してシス異性体(式4a)及びトランス異性体(式4b)の混合物であることを特徴とする請求項1、3及び/又は4に記載の方法。
【化4】

式中、R、R及びR、X及びYは請求項1において定義した意味を有する。
【請求項6】
配位子X及びYは、F-、Cl-、Br-、I-、OH-、OR-、CN-、OCN-、SCN-、NO-、NO-、及びR−COO-(Rは1〜20炭素原子を有する有機基を示す)から選ばれることを特徴とする請求項1及び/又は3乃至5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
X及びY=Cl-、Br-、又はOH-であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
用いる出発化合物が式IrX又はMIrX(式中、Mはプロトン、アルカリ金属カチオン又はアンモニウムイオンに等しく、Xは請求項1において定義した意味を有する)のイリジウム(III)塩又は場合によってこれらの塩の水和物又は塩化水素水和物であることを特徴とする請求項1〜7の1又はそれ以上に記載の方法。
【請求項9】
用いる出発化合物が、IrCl*yHO又はIrCl*xHCl*yHO(式中x=0〜10及びy=0〜100)の形態の水和物又は塩化水素水和物の形態であるイリジウム(III)塩化物であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
式(4)のヘテロレプティックイリジウム(III)錯体がアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウム、テトラアルキルフォスフォニウム、又はテトラアリールフォスフォニウムカチオンをカウンターカチオンとして有することを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
錯体がカウンタターカチオンとしてアルカリ金属カチオンを有することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
、Rが、その度毎に同一又は異なり、H、1〜5C原子を有する直鎖、分岐鎖又は環状アルキル又はアルコキシ基であり、それに加えて1以上のH原子がF、又は4〜6C原子を有するアリール又はヘテロアリール基であって1以上の非芳香族基Rで置換されていることがあるもので置換されていることを特徴とする請求項1〜11の1以上に記載の方法。
【請求項13】
=CH及びR=Hであることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
式(2)のアニオンを含む化合物が、1価又は2価の無機又は有機のカチオンの塩の形態で用いられるか又は塩基を用いる対応する1,3−ジケトン、3−ケトエステル又は1,3−ジエステルの脱プロトン化によってその場で調製されることを特徴とする請求項1〜13の1以上に記載の方法。
【請求項15】
1,3−ジケトン、3−ケトエステル又は1,3−ジエステルの脱プロトン化による式(2)の化合物の形成が、水素炭酸塩、炭酸塩、水酸化物又は水性アンモニアを用いて行われることを特徴とする請求項1〜14の1以上に記載の方法。
【請求項16】
式(4)の錯体の合成のために、イリジウム(III)塩対式(2)のアニオンの全化学量論比が1:2〜1:4であることを特徴とする請求項1及び/又は3〜15の1以上に記載の方法。
【請求項17】
式(3)の錯体の合成のために、イリジウム(III)塩対式(2)のアニオンの全化学量論比が少なくとも1:4であることを特徴とする請求項1、2、4、8、9、12、13、14及び/又は15の1以上に記載の方法。
【請求項18】
反応を20℃〜200℃の範囲の温度で行うことを特徴とする請求項1〜17の1以上に記載の方法。
【請求項19】
反応を還流下に行うことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
第1反応工程のための溶媒又は溶媒混合物が次の反応工程のための溶媒又は溶媒混合物より一層極性であることを特徴とする請求項1〜19の1以上に記載の方法。
【請求項21】
用いる反応媒体が双極性プロトン性又は双極性非プロトン性溶媒、及びその混合物であることを特徴とする請求項1〜20の1以上に記載の方法。
【請求項22】
用いる溶媒が、水、アルコール、グリコール、高級ジオール、ポリアルコール、ポリエーテルアルコール、ジメチルスルホキサイド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトン又はN−メチル-2-ピロリドンであることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
溶媒の交換前に第1反応工程に用いる溶媒が水であることを特徴とする請求項1〜22の1以上に記載の方法。
【請求項24】
溶媒の交換後の第2反応工程に用いる溶媒がアルコールであることを特徴とする請求項1〜23の1以上に記載の方法。
【請求項25】
第2反応工程に用いる溶媒がメタノールであることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
第1反応工程後に中間体又は粗生成物を固体として単離することを特徴とする請求項1〜25の1以上に記載の方法。
【請求項27】
式(3)又は式(4)の生成物を結晶化によって、必要な場合には溶液の濃縮及び/又は冷却によって、単離することを特徴とする請求項1〜26の1以上に記載の方法。
【請求項28】
式(4a)の錯体1〜99%及び式(4b)の錯体99〜1%を包含する請求項5に定義した式(4a)及び(4b)の錯体の混合物。
【請求項29】
式(4a)の錯体及び式(4b)の錯体に加えて更にイリジウム錯体を包含することを特徴とする請求項28に記載の混合物。
【請求項30】
請求項1、3〜16及び/又は18〜27の1以上に記載の方法によって得ることができる請求項28及び/又は請求項29に記載の錯体の混合物。

【公表番号】特表2008−509186(P2008−509186A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−525247(P2007−525247)
【出願日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【国際出願番号】PCT/EP2005/008670
【国際公開番号】WO2006/018202
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(597035528)メルク パテント ゲーエムベーハー (209)
【Fターム(参考)】