説明

インクジェットプリンタのインク供給装置

【課題】サブタンクの容量を確保しつつ圧力制御手段側へのインク流入を防止し、プリンタヘッドに気泡を混在させず安定してインクを吐出できるインクジェットプリンタのインク供給装置を提供する。
【解決手段】このインク供給装置は、プリンタヘッドに接続され、液体インクが貯留されるインク室123が内部に形成されたサブタンク120と、サブタンク120に接続され、インク室123に供給される液体インクが貯留されたメインタンクとを有し、サブタンク120の下面側には、インク室123からヘッド側供給路125に連通するそれぞれ独立した複数の供給孔126b、127aが形成され、前記複数の供給孔のうち少なくとも2つの供給孔126b、127aには、インク室123にそれぞれ開口したインク室側開口が形成されており、該インク室側開口がインク室123の上下方向において互いに異なった高さ位置に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを吐出して印刷を施すプリンタヘッドにインクを供給するインクジェットプリンタのインク供給装置、およびそれを備えて構成されたインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタは、多数のノズルが形成されたプリンタヘッドを印刷媒体に対して相対移動させながらノズルからインクの微粒子を吐出して印刷媒体に塗着させ、印刷面に文字や図形、模様、写真等の情報を描画する装置である。このような構成のためインクジェットプリンタは、例えば長期間の不使用の状態が続くと、特にノズル部分に残留したインクが増粘し、インクが正常に吐出されなくなる虞がある。このため起動時などに、プリンタヘッドのノズル面をゴムキャップでキャッピングして、プリンタヘッド内に残留するインクを強制的に真空吸引する吸引回路が設けられているものがある(例えば、特許文献1参照)。これにより、増粘したインクが吸引されて除去されるとともに、新たなインクがプリンタヘッドに供給され、インクが正常に吐出される状態に回復させることができる。
【0003】
また、インクジェットプリンタでは、インクの吐出に応じてインクが消費されるため、用途に応じた容量のインクタンク(インクカートリッジ)がプリンタヘッドのキャリッジまたはプリンタ本体に設けられる。例えば、商業用の大判広告やのぼり等をプリントする大型のインクジェットプリンタでは、多量のインクが比較的短時間のうちに消費される。そのため、このような大型のインクジェットプリンタには、一般的に大容量のインクタンク(メインタンク)がプリンタ本体に設けられており、このインクタンクとプリンタヘッドとがチューブ等により接続されて、インクタンクからプリンタヘッドへインクが供給されるように構成される。
【0004】
ところで、プリンタヘッドの内圧が大気圧よりも高くなると、インクがノズルから押し出されて印刷媒体上に滴下し、いわゆる「ぼた落ち」の問題を生じる。この問題を回避するため従来、メインタンクとプリンタヘッドとを繋ぐ供給路に、小容量のインク室を有したサブタンクを設け、このサブタンクのインク室を減圧することによりプリンタヘッドを微負圧状態にする「負圧発生方式」のインク供給装置が知られている(例えば、特許文献2および特許文献3参照)。
【0005】
上記インク供給装置においては、プリンタヘッドへのインク供給が途絶えないように、ノズルからのインクの吐出量に応じて、サブタンクのインク室に所定量のインクが貯留されるように制御されている。この制御の一例として、サブタンク内におけるインクの液面高さが下限高さに低下したことが検出されたとき、メインタンクからサブタンクにインクを供給させるように制御が行われる。一般に液面高さを検出する方法として、磁石が取り付けられたフロートを上下移動可能に液面に浮かべ、磁石からの磁気を検出するセンサを所定の高さ位置に配設する構成が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【0006】
また、上記インク供給装置においては通常、サブタンクのインク室に圧力制御手段が接続されており、この圧力制御手段によりインク室の圧力調整が行われる。例えば、インク室内の空気を吸引することにより、インク室内を減圧してプリンタヘッドを微負圧状態に設定できるようになっている。もし、サブタンクと圧力制御手段とを繋ぐ接続路にインクが流入すると上記圧力調整が困難となり、「ぼた落ち」の問題が発生する虞がある。そのため、インク室におけるインクの液面高さが上限高さを超えるような場合には、メインタンクからサブタンクへのインク供給を規制する制御が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−216535号公報
【特許文献2】特開2004−284207号公報
【特許文献3】特開2006−62330号公報
【特許文献4】特開2001−141547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のようにプリンタヘッドのノズル面をキャッピングして残留したインクを吸引する際、例えばノズル面とゴムキャップとに位置ずれがあると、ノズル面とゴムキャップとの隙間から空気が巻き込まれて吸引力が低下することがある。そうすると、プリンタヘッドに残留したインクは吸引除去されるが、新たなインクがサブタンクからプリンタヘッドに供給されにくくなり、プリンタヘッドに気泡(空気)が混在してインクで満たされていない状態となりやすい。このような状態でインクを吐出させて印刷を行うと、ノズルから気泡が吐出されて吐出不良を発生することがあり、安定したインク吐出を得ることが困難であるという課題があった。
【0009】
また、上記フロートをサブタンクのインク液面に浮かべて、インク液面の変化に追従して真っ直ぐ上下移動させて精度良くインクの液面高さを検出するためには、例えばインク室の容積に応じた大きなフロートを用いる必要がある。このように大きなフロートを用いた場合、サブタンクにおけるインクの液面高さを高精度に検出できるが、インクを貯留するための容積が制限されてしまうという課題があった。
【0010】
さらに、上記フロートを用いてサブタンクのインクの液面高さを検出した場合、フロートがインク室の内壁に付着して正確に検出が行えないことがある。この場合には、正確なインクの液面高さに基づくインク供給制御が困難となり、インクが上限高さ以上に供給されてしまうことがあり得る。このように、インク室に所定の上限高さ以上のインクが供給されると、過剰に供給されたインクが圧力制御手段側に流入(以下において、このようなインクの流れを逆流とも称する)して、インク室の圧力調整が困難になるという課題もあった。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、サブタンクの容量を確保しつつ圧力制御手段側へのインク流入を防止するとともに、プリンタヘッドに気泡を混在させず安定してインクを吐出させることが可能なインクジェットプリンタのインク供給装置およびそれを備えたインクジェットプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明に係るインクジェットプリンタのインク供給装置は、液体インクを吐出するプリンタヘッドとヘッド側供給路(例えば、実施形態におけるコネクタ部125)を介して接続され、液体インクが貯留されるインク室が内部に形成されたサブタンクと、前記サブタンクに接続され、前記インク室に供給される液体インクが貯留されたメインタンクとを有し、前記サブタンクの下面側には、前記インク室から前記ヘッド側供給路に連通するそれぞれ独立した複数の供給孔(例えば、実施形態における第2導出路126b、第1導出路127a)が形成され、前記複数の供給孔のうち少なくとも2つの前記供給孔には、前記インク室にそれぞれ開口したインク室側開口が形成されており、該インク室側開口が前記インク室の上下方向において互いに異なった高さ位置に形成されている。
【0013】
また、前記ヘッド側供給路として、前記サブタンクの下面側の底壁から下方に突出したコネクタ部が形成され、該コネクタ部の内部には下方に向けて開口したコネクタ空間が形成され、前記コネクタ空間は、前記インク室の下方に配設され、前記少なくとも2つの供給孔のそれぞれにおける一方の端部が前記インク室に開口すると共に、他方の端部が前記コネクタ空間に開口して、該インク室と該コネクタ空間とが連通していることが好ましい。
【0014】
なお、前記インク室は、互いに連通した供給用インク室(例えば、実施形態におけるインク貯留室123)と検出用インク室(例えば、実施形態におけるフロート収容部124)とから構成され、前記供給用インク室に連通するように、前記メインタンクと接続されたインク流入孔(例えば、実施形態におけるチューブコネクタ128)が形成されており、前記検出用インク室には、液体インク中で浮かぶ液面指示部材(例えば、実施形態におけるマグネット134a)が上下移動自在に収容されていることが好ましい。
【0015】
また、前記液面指示部材は、前記検出用インク室に収容された状態において、前記インク室を形成する内壁と対向していることが好ましい。
【0016】
前記内壁には、前記インク室の内方に向けて立設して上下に延びたガイド突起(例えば、実施形態におけるガイドリブ224a)が形成されており、前記液面指示部材は、前記ガイド突起により囲まれて形成された前記検出用インク室に収容されて上下移動自在であることが好ましい。
【0017】
さらに、前記サブタンクが、前記液面指示部材の上下方向位置を検出して前記インク室のインク液面高さを検出する液面検出部(例えば、実施形態における液面検出センサ138)を備えたことが好ましい。
【0018】
なお、前記サブタンクが、前記液面検出部を着脱可能に構成されたことが好ましい。
【0019】
また、前記液面指示部材は磁石を備えて構成され、前記液面検出部は、前記磁石からの磁気を検出して前記磁石の所定上下位置を検出する磁気センサ(例えば、実施形態におけるHi検出センサ136H、Lo検出センサ136L)を有して構成されたことが望ましい。
【0020】
前記磁気センサは、前記インク室におけるインク液面の上限高さおよび下限高さに位置して配設されたことが好ましい。
【0021】
さらに、上記インクジェットプリンタのインク供給装置において、前記供給用インク室に連通するように、前記インク室の内圧を調整する内圧制御手段(例えば、実施形態におけるサブタンク減圧部140、サブタンク加圧部150)と接続された圧力制御孔(例えば、実施形態における気体導入孔129a)が形成され、前記インク室には、液体インク中で浮かぶ封止用部材(例えば、実施形態における封止用フロート133)と、前記封止用部材を前記インク室でのインク液面の変化に応じて上下移動可能に支持する支持部(例えば、実施形態におけるフロート支持部132a)とを備えた逆流防止部が形成され、前記封止用部材が、前記インク室でのインク液面の上昇に応じて上動されたときに、前記圧力制御孔のインク室側開口を封止するように構成されたことが好ましい。
【0022】
なお、前記インク室側開口は、前記サブタンクの上壁面に形成され、前記支持部は、前記インク室側開口を囲むとともに前記上壁面に繋がって下方に延びて形成され、前記封止用部材は、前記支持部に保持されて前記インク室側開口の下方に位置したことが望ましい。
【0023】
また、前記サブタンクと前記内圧制御手段とを繋ぐ内圧調整路(例えば、実施形態におけるライン177)には、開閉可能な内圧制御弁(例えば、実施形態における合流回路開閉弁175)が配設されており、前記内圧制御弁と前記サブタンクとの間に、液体インクを貯留可能な上流側インク室(例えば、実施形態におけるインク室281)が形成された上流側インク貯留部材(例えば、実施形態におけるインク貯留容器280)が配設されて構成されたことが好ましい。
【0024】
さらに、前記内圧調整路における前記内圧制御弁と前記内圧制御手段との間に、前記サブタンクが配設されて構成されたことが好ましい。
【0025】
本発明に係るインクジェットプリンタは、上述のように構成されたインクジェットプリンタのインク供給装置を搭載して構成される。
【0026】
なお、上記インクジェットプリンタは、印刷媒体を支持する媒体支持部(例えば、実施形態におけるプラテン20)を備えた本体部材(例えば、実施形態における装置本体1)と、前記媒体支持部に支持された前記印刷媒体と対峙して前記本体部材に対して相対移動可能に設けられたキャリッジとを備え、前記メインタンクが前記本体部材に設けられ、前記プリンタヘッドおよび前記サブタンクが、前記キャリッジに設けられたことが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係るインクジェットプリンタのインク供給装置は、インク室からヘッド側供給路に連通する複数の供給孔が形成され、複数の供給孔のうち少なくとも2つの供給孔のインク室側開口が、インク室の内方向において互いに異なった高さ位置に形成されている。この構成より、例えばインクが排出されたヘッド側供給路およびプリンタヘッドにインクを充填する場合、複数の供給孔のうちインク室側開口が低い位置に形成された供給孔から、ヘッド側供給路を介してインクをプリンタヘッドに送ることができる。このとき、ヘッド側供給路内およびプリンタヘッド内に存在していた気泡を、徐々にヘッド側供給路に追いやることができる。そして、ヘッド側供給路に追いやられた気泡を、複数の供給孔のうちインク室側開口が高い位置に形成された供給孔を介して、インク室へ排出することができる。よって、ヘッド側供給路内およびプリンタヘッド内に、気泡を混在させることなくインクを充填することができ、安定したインク吐出を実現可能となる。
【0028】
なお、上記インク室が、互いに連通した供給用インク室と検出用インク室とから構成され、この検出用インク室に、液面指示部材が上下移動自在に収容された構成が好ましい。例えば、供給用インク室を検出用インク室よりも大きく構成することにより、検出用インク室に小さな液面指示部材を収容してインクの液面を検出できるとともに、大きく形成された供給用インク室内に多量のインクを貯留可能となる。よって、インクの液面検出を可能としつつ、インク室全体としてインクを貯留するための容積を確保できる。
【0029】
また、上記液面指示部材は、インク室を形成する内壁と対向している構成が好ましい。このように構成した場合、液面指示部材は検出用インク室内において、回転や揺動等することがなく内壁に沿うように、インクの液面に応じて真っ直ぐ上下移動可能となる。よって、インク室内のインクの液面高さを精度良く検出できる。
【0030】
上記内壁には、上下に延びたガイド突起が形成されており、液面指示部材はこのガイド突起により囲まれて形成された検出用インク室に収容されたことが好ましい。このように構成すると、液面指示部材と内壁とが接する面を減らすことができる。よって、例えば液面指示部材が、インクにより内壁に張り付くことを防止して、インク室内のインクの液面高さを確実に検出可能となる。
【0031】
さらに、上記サブタンクが、液面指示部材の上下方向位置を検出してインク室のインク液面高さを検出する液面検出部を備えたことが好ましい。この構成の場合、サブタンク単体でインクの液面高さが検出可能となり、例えば別途検出用装置をサブタンクの周囲に配設する必要がなく、サブタンク(インク供給装置)をコンパクトに構成できる。
【0032】
なお、サブタンクが、液面検出部を着脱可能に構成されたことが好ましい。このように構成すると、液面検出部の交換作業およびメンテナンス作業が簡易となる。
【0033】
また、液面検出部は、液面指示部材に備えられた磁石からの磁気を検出して、磁石の所定上下位置を検出する磁気センサを有した構成が望ましい。この構成の場合、磁石からの磁気は、インク中を透過して磁気センサにおいて検出できるので、インクの種類(例えば、色や物性等)に関係なくインクの液面高さを検出可能となる。
【0034】
上記磁気センサは、インク室におけるインク液面の上限高さおよび下限高さに位置した構成が好ましい。このように構成すると、例えば下限高さの磁気センサにおいて磁気が検出されたときにインク室へのインク供給を開始させ、上限高さの磁気センサにおいて磁気が検出されたときにインク供給を停止させる制御が可能となる。よって、簡易なインク供給制御でありながら、常時所定量のインクをインク室に貯留させておくことができる。
【0035】
上記インクジェットプリンタのインク供給装置において、封止用部材が、インク室でのインク液面の上昇に応じて上動されたときに、圧力制御孔のインク室側開口を封止する構成が好ましい。このように構成すると、例えばインク室から溢れるような多量のインクが供給された場合、このインクが圧力制御孔のインク室側開口に到達する前に、封止用部材が圧力制御孔のインク室側開口を封止できる。よって、万が一過剰にインクが供給された場合においても、インクが圧力制御手段側に流入することを防止して、インク室の内圧調整を継続して行うことができる。
【0036】
なお、上記支持部は、インク室側開口を囲むとともに下方に延びて形成され、封止用部材は、支持部に保持されてインク室側開口の下方に位置した構成が望ましい。この構成の場合、封止用部材がインク室におけるインク液面の上昇に応じて、支持部によって支持された位置からそのまま真っ直ぐ上動されることにより、インク室側開口を封止可能となる。よって、封止用部材は複雑な動きをすることなくインク室側開口を封止できるので、インクが圧力制御手段に流入することを確実に防止できる。また、支持部をシンプルな形状とすることが可能で、コスト低減を図ることもできる。
【0037】
また、内圧調整路における内圧制御弁とサブタンクとの間に、液体インクを貯留可能な上流側インク貯留部材が配設された構成が好ましい。このように構成すると、万が一、サブタンクに過剰なインクが供給されて、内圧調整路に流入した場合においても、一時的に上流側インク貯留部材にインクを貯留させて、インクが内圧制御弁に達するまでの時間を遅らせる(時間かせぎをする)ことができる。よって、この上流側インク貯留部材にインクが貯留されている間に、例えばサブタンクへのインク供給を停止させる等することにより、内圧制御弁にインクが流入することを防止可能である。
【0038】
さらに、内圧調整路における内圧制御弁と内圧制御手段との間に、サブタンクが配設されて構成されたことが好ましい。この構成の場合、上記サブタンクを、液面検出部を備えた構成としておくことにより、例えば上記サブタンクにおいてインクが流入したことが検出されたときに、プリンタヘッドと接続されたサブタンクへのインク供給を停止させる制御が可能となる。よって、内圧制御手段にインクが流入することを防止できるので、内圧調整路にインクが流入したときの損害を抑えることができる。
【0039】
本発明に係るインクジェットプリンタは、上述のように構成されたインクジェットプリンタのインク供給装置を搭載して構成される。この構成より、上記インクジェットプリンタにおいては、サブタンクからプリンタヘッドへ安定してインクが供給されるので、気泡を吐出する等の吐出不良を発生することなく、プリンタヘッドから精度良くインクを吐出させて高品質な印刷が可能となる。
【0040】
なお、上記インクジェットプリンタは、メインタンクが本体部材に設けられ、プリンタヘッドおよびサブタンクが、キャリッジに設けられたことが好ましい。この構成の場合、インクが多量に貯留されて比較的重いメインタンクを、印刷媒体に対して相対移動されるキャリッジではなく固定された本体部材に設けるため、キャリッジに搭載される機器や部材の重量を軽くすることができる。よって、例えばキャリッジを相対移動させる移動機構を、簡素且つ安価に構成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の適用例として示すプリンタ装置の斜め前方からの外観斜視図である。
【図2】上記プリンタ装置の斜め後方からの外観斜視図である。
【図3】上記プリンタ装置における装置本体の要部構成を示す正面図である。
【図4】インク供給装置の系統図である。
【図5】上記プリンタ装置におけるキャリッジ周辺の斜視図である。
【図6】キャリッジに設けられたサブタンクの外観斜視図である。
【図7】図6中のVII−VII部分を示した断面図である。
【図8】図6中のVIII−VIII部分を示した断面図である。
【図9】インク供給装置の概要ブロック図である。
【図10】インク充填プログラムのフローチャートである。
【図11】液面検出センサの変形例を示した斜視図である。
【図12】液面検出センサの変形例を示した斜視図である。
【図13】実施例2に係るインク供給装置の系統図(一部省略)である。
【図14】実施例2に係るサブタンクの外観斜視図である。
【図15】図14中のXIV−XIV部分を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、図面を参照しながら本発明の好ましい実施形態について、実施例1および実施例2を示して説明する。
【実施例1】
【0043】
本発明を適用したインクジェットプリンタの一例として、印刷対象面に沿った直交二軸のうち、一軸を印刷媒体移動、他の一軸をプリンタヘッド移動としたタイプを採り上げ、紫外光の照射を受けて硬化する紫外線硬化型のインク(いわゆるUVインク)を使用するUV硬化インクジェットプリンタ(以下、プリンタ装置と称する)に適用した構成例について説明する。本実施形態のプリンタ装置Pを斜め前方から見た斜視図を図1に示し、斜め後方から見た斜視図を図2に示すとともに、このプリンタ装置Pにおける装置本体1の要部構成を図3に示しており、まず、これらの図面を参照してプリンタ装置Pの全体構成について概要説明する。なお、以降の説明では、図1中に付記する矢印F,R,Uの指す方向を、それぞれ前方、右方、上方と称して説明する。
【0044】
プリンタ装置Pは、大別的には、描画機能を果たす装置本体1、装置本体1を支持する支持部2の前後に設けられロール状に巻かれた未印刷の印刷媒体Mを送り出す送り出し機構3、描画が終了した印刷媒体Mを巻き取る巻き取り機構4などから構成される。
【0045】
装置本体1は、躯体を形成するフレーム10の上下中間部に印刷媒体Mを前後に挿通させる横長窓状のメディア挿通部15が形成され、このメディア挿通部15の下側に位置する下部フレーム10Lに、印刷媒体Mを支持するプラテン20、およびプラテン20に支持された印刷媒体Mを前後に移動させるメディア移動機構30が設けられ、メディア挿通部15の上側に位置する上部フレーム10Uに、プリンタヘッド60を保持するキャリッジ40、およびキャリッジ40を左右に移動させるキャリッジ移動機構50が設けられている。装置本体1には、メディア移動機構30による印刷媒体Mの前後移動、キャリッジ移動機構50によるキャリッジ40の左右移動、プリンタヘッド60によるインクの吐出、後述するインク供給装置100によるインクの供給など、プリンタ装置Pの各部の作動を制御するコントロールユニット80が設けられ、操作パネル88が装置本体1の前面に配設されている。
【0046】
プラテン20は、メディア挿通部15の下側を前後に延びて下部フレーム10Lに設けられており、プリンタヘッド60による左右帯状の描画領域には、印刷媒体Mを水平に支持するメディア支持部21が形成されている。メディア支持部21には、小径の吸着孔が多数開口形成されてその下側に設けられた減圧室(不図示)に繋がっており、真空発生器の作動等により減圧室を負圧に設定したときに、印刷媒体Mがメディア支持部21に吸着保持され、プリント中に印刷媒体Mの位置がずれないようになっている。
【0047】
メディア移動機構30は、上部周面がプラテン20に露出して配設され左右に延びる円筒状の送りローラ31と、この送りローラ31をタイミングベルト32を介して回転駆動するローラ駆動モータ33などからなり、送りローラ31の上方には、各々前後に回動自在なピンチローラ36を有するローラアッセンブリ35が左右に並んで複数設けられている。ローラアッセンブリ35は、ピンチローラ36を送りローラ31に押しつけるクランプ位置と、送りローラ31から離隔させたアンクランプ位置とに設定可能に構成されており、ローラアッセンブリ35をクランプ位置に設定して印刷媒体Mをピンチローラ36と送りローラ31との間に挟み込んだ状態でローラ駆動モータ33を回転駆動することにより、印刷媒体Mが送りローラ31の回転角度(コントロールユニット80から出力される駆動制御値)に応じた送り量で前後に搬送される。なお、図3では、ローラアッセンブリ35をクランプ位置に設定した状態とアンクランプ位置に設定した状態の両方を併記している。
【0048】
キャリッジ40は、送りローラ31と平行に延びて上部フレーム10Uに取り付けられたガイドレール45に、図示省略するスライドブロックを介して左右に移動自在に支持されており、次述するキャリッジ駆動機構50により駆動される。キャリッジ40には、UVインクを吐出するプリンタヘッド60が設けられ、ヘッド下端のノズル面がプラテン20のメディア支持部21と所定ギャップを隔てて対向配置される。
【0049】
プリンタヘッド60は、一般的には、プリンタ装置Pで用いるインクの数量に応じた数のプリンタヘッドが左右に並んで配設され、例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の基本4色のUVインクについて、各色1本ずつインクカートリッジを使用するプリンタ装置の場合には、図5にキャリッジ周辺の斜視図を示すように、各インクカートリッジに対応した4つのプリンタヘッド60(第1プリンタヘッド60C,第2プリンタヘッド60M,第3プリンタヘッド60Y,第4プリンタヘッド60K)が設けられる。キャリッジ40には、後に詳述するインク供給装置100のサブタンク120(第1サブタンク120C,第2サブタンク120M,第3サブタンク120Y,第4サブタンク120K)が各プリンタヘッド60C,60M,60Y,60Kに対応して設けられている。また、図6および図7に示すように、プリンタヘッド60の上面には、フィルタ61bとフィルタ61bを保持するフィルタ保持部材61aとからなるフィルタアッセンブリ61が取り付けられている。フィルタ61bは、サブタンク120から送られるUVインクを濾過するものであり、フィルタ61bにおいて濾過されたUVインクが、プリンタヘッド60のインク室へ送られる。なお、プリンタヘッド60の駆動形態(インク微粒子の吐出方式)は、サーマル方式またはピエゾ方式のいずれであっても良い。
【0050】
キャリッジ40の左右側部に、プリンタヘッド60から印刷媒体Mに吐出されたUVインクに紫外光を照射して硬化させるUV光源が設けられている。UV光源は、キャリッジ40の左側部に設けられた左UV光源70Lと、キャリッジ40の右側部に設けられた右UV光源70Rとからなり、これら左右のUV光源70L,70Rがキャリッジ40に設けられた第1〜第4プリンタヘッド60C,60M,60Y,60Kを左右外側から挟みこむように配設される。左UV光源70Lおよび右UV光源70Rは、波長λ=100〜380nm程度の紫外光を出射する光源、例えば、UVランプやUV−LED等を用いて構成される。左右のUV光源70L,70Rの点滅作動は、キャリッジ駆動機構50によるキャリッジ40の移動およびプリンタヘッド60からのインクの吐出に応じて、コントロールユニット80により制御される。
【0051】
キャリッジ移動機構50は、ガイドレール45を挟んでフレーム10の左右側部に設けられた駆動プーリ51および従動プーリ52と、駆動プーリ51を回転駆動するキャリッジ駆動モータ53、駆動プーリ51と従動プーリ52との間に巻き掛けられた無端ベルト状のタイミングベルト55などから構成される。キャリッジ40はタイミングベルト55に連結固定されており、キャリッジ駆動モータ53を回転駆動することにより、ガイドレールに支持されたキャリッジ40が、キャリッジ駆動モータ53の回転角度(コントロールユニット80から出力される駆動制御値)に応じた移動量でプラテン20の上方を左右に移動される。
【0052】
コントロールユニット80は、プリンタ装置の各部の作動を制御する制御プログラムが書き込まれたROM81、印刷媒体Mに描画する印刷プログラム等を一時記憶するRAM82、RAM82から読みこまれた印刷プログラムや操作パネル88から入力された操作信号等について演算処理を行い、制御プログラムに従って各部の作動を制御する演算処理部83、プリンタ装置Pの作動状態等を表示する表示パネルおよび各種操作スイッチが設けられた操作パネル88などを備え、メディア移動機構30による印刷媒体Mの前後移動、キャリッジ移動機構50によるキャリッジ40の左右移動、インク供給装置100によるインクの供給、プリンタヘッド60の各ノズルからのインク吐出、インク供給装置100によるインクの供給などを制御する。
【0053】
例えば、コントロールユニット80に読み込まれた印刷プログラムに基づいて印刷媒体Mに描画を行う場合において、メディア移動機構30による印刷媒体の前後移動Mと、キャリッジ移動機構50によるキャリッジ40の左右移動とを組み合わせて印刷媒体Mとプリンタヘッド60とを相対移動させ、各プリンタヘッド60から印刷媒体Mにインクを吐出させるとともに、キャリッジ40の移動方向後方に位置するUV光源(例えば、キャリッジ右動時には左UV光源70L)を点灯させて、印刷プログラムに応じた情報を描画する。
【0054】
このように、概要構成されるプリンタ装置Pにあって、キャリッジ40に設けられたプリンタヘッド60にインク供給装置100によりUVインクが供給される。ここで、図4はインク供給装置100の系統図、図6はサブタンク120の外観斜視図、図7は図6中のVII−VII部分における断面図、図8は図6中のVIII−VIII部分における断面図、図9はインク供給装置100の概要ブロック図を示す。
【0055】
インク供給装置100は、プリンタヘッド60に接続されたサブタンク120、このサブタンク120に接続されサブタンク120に供給するUVインクが貯留されたメインタンク110、サブタンク120の内圧を負圧状態に減圧するサブタンク減圧部140、サブタンク120の内圧を正圧状態に加圧するサブタンク加圧部150、メインタンク110に貯留されたUVインクをサブタンク120に移送するインク移送部115などからなり、サブタンク減圧部140およびサブタンク加圧部150が一台の気送ポンプ160により構成される。
【0056】
メインタンク110は、このプリンタ装置Pにおける単位時間当たりのインク消費量に応じた容量のUVインクを貯留し得るように設定される。本実施形態では、前述したC,M,Y,Kの4色について、各色500ml程度の容量のカートリッジ式のメインタンク110(第1メインタンク110C,第2メインタンク110M,第3メインタンク110Y,第4メインタンク110K)を用い、これらのメインタンク110を装置本体1の背面に着脱可能に配設した構成例を示す(図2を参照)。このように構成することにより、後述する液送ポンプ118の揚程の範囲内で大型のメインタンク110を装置本体1の任意の位置に配設することができ、プリンタPの小型化が可能となる。また、メインタンク110を例えば作業者の手の届き易い位置に配設することにより、メインタンク110交換作業の容易化が可能となる。なお、メインタンク110の形態は、円筒容器状や柔軟性のある袋状など他の形態であってもよく、インクタンクの配設位置は、装置本体1の前面側や上部、あるいは装置本体1と別置きなど、適宜に配設することができる。
【0057】
サブタンク120は、図6に示すように、一側方(右方)に開口し、側面視において上下に長い薄型矩形箱状の容体部材121と、この容体部材121の開口面を覆って閉止される蓋部材122とからなり、蓋部材122の閉止によって形成されるタンク内部に、UVインクを貯留するインク貯留室123が形成されている。また、このインク貯留室123と連通し、インク貯留室123の後部において上下に延びる溝状のフロート収容部124が形成されている。フロート収容部124には、中心部にマグネット134aが固着されUVインクに浮揚する円盤状のフロート134が上下移動自在に収容される。なお、本実施形態において、比重が例えば1.0程度のUVインクを使用する場合、フロート134として、このUVインク中で浮かぶ例えば比重が0.25程度のものを用いた構成が好ましい。
【0058】
サブタンク120は、容体部材121の開口縁面にシーラントまたは接着剤を塗布して蓋部材122を閉止することにより一体に接合されるとともに、図示省略するネジ等の締結手段により強固に結合され、インク貯留室123が密閉状態に保持される。蓋部材122および容体部材121の少なくともいずれか一方は、透明または半透明の材料を用いて形成され、インク貯留室123のUVインクの貯留状態、およびUVインク中のフロート134の浮遊状態等を外部から目視確認可能に構成される。なお、蓋部材122として、例えば透明なフィルムを用いることも可能であり、この場合、容体部材121に透明なフィルムを溶着させることにより、インク貯留室123が密閉状態に保持される。
【0059】
サブタンク120の下面側には、容体部材121の底壁121bから下方に突出した短円筒状のコネクタ部125が形成され、このコネクタ部125の内部には下方に向けて開口したコネクタ空間125aが形成されている。コネクタ部125の上方に、底壁121bからインク貯留室123内を上方に延びるブロック状のダクト部126が形成されている。そして、底壁121bを上下に貫通してインク貯留室123の底面とコネクタ空間125aとを繋ぐ第1導出路127aが形成され、ダクト部126および底壁121bを上下に貫通してダクト部126の上面126aとコネクタ空間125aとを繋ぐ第2導出路126bが形成されている。また、コネクタ部125とフィルタアッセンブリ61とが、チューブ69を用いて接続され、チューブ69の内部にはチューブ空間69aが形成されている。よって、サブタンク120のインク貯留室123とプリンタヘッド60のインク室とが、第1導出路127a、第2導出路126b、コネクタ空間125aおよびチューブ空間69aを介して接続される。ここで、第1導出路127aの断面積は、第2導出路126bの断面積よりも小さく形成されている。なお、キャリッジ40を非印刷時の基準位置(いわゆるホームポジション)に位置させた状態において、プリンタヘッド60(60C,60M,60Y,60K)の下方に、UVインクを受け止めるバット状のインクトレイ180が設けられている(図5を参照)。
【0060】
サブタンク120の後面側に、インク貯留室123のUVインクの貯留状態を検出するサブタンク貯留検出部130が設けられている。サブタンク貯留検出部130は、上下に延びて形成されたフロート収容部124に上下移動自在に収容されて、インク貯留室123のUVインクの液面とともに上下移動するフロート134と、このフロート134に固着されたマグネット134aの磁気を検出することにより、UVインクの液面高さを検出する液面検出センサ138から構成される。液面検出センサ138は、マグネット134aの磁気を検出可能なHi検出センサ136HおよびLo検出センサ136Lが取り付けられた液面検出基板135が、ケース部材137に収容されて構成される。ここで、Hi検出センサ136HおよびLo検出センサ136Lは、例えばファラデー素子および磁気インピーダンス素子等を用いて構成することが可能であり、ホール素子が好適に用いられる。また、両極性検知のセンサを用いることもできる。なお、マグネット134aとして種々の磁石を用いることが可能であり、異方性フェライト磁石が好適に用いられる。
【0061】
容体部材121の後方壁121rには、上下に延びる溝状のセンサ装着部131が形成されており、このセンサ装着部131に液面検出センサ138が挿入されている。そして、図7に示すように、例えばケース部材137の取付孔137aに取付ネジ139を挿通させて締結することにより、液面検出センサ138が後方壁121rに装着固定される。液面検出センサ138が装着固定された状態において、Hi検出センサ136Hは、インク貯留室123におけるUVインクの液面が最高位置に達したことを検出可能な機能を備えている。一方Lo検出センサ136Lは、インク貯留室123におけるUVインクの液面が最低位置に達したことを検出可能な機能を備えている。
【0062】
また、液面検出センサ138は図7に示すように、後方壁121rを挟んでフロート134と対向配置されており、フロート134に固着されたマグネット134aの磁気をHi検出センサ136HまたはLo検出センサ136Lで検出することにより、フロート134の高さ位置、すなわち、インク貯留室123に貯留されたUVインクの液面高さを検出可能になっている。また、図7から分かるように、フロート収容部124の内壁とフロート134(マグネット134a)の前後側面とは僅かな隙間を空けた状態で対向しており、そのため、フロート134がUVインクの液面高さに応じてフロート収容部124を略真っ直ぐに上下移動自在となっている。この構成から、インク貯留室123のUVインクの液面高さは、液面検出センサ138において検出されて、その検出結果はコントロールユニット80に出力される。
【0063】
サブタンク120の前面側には、図7に示すように上下中間の所定高さ位置に、容体部材121の前方壁121fを前後に貫通するインク導入路が形成され、このインク導入路に接続するチューブコネクタ128が設けられている。また、サブタンク120の上面側には、容体部材121の天井壁121tを上下に貫通する気体導入路が形成され、中心部に気体導入孔129aが形成されたチューブコネクタ129が、この気体導入路に接続されている。
【0064】
また、図7に示すように、チューブコネクタ129の下方のインク貯留室123には、逆流防止部132が形成されている。逆流防止部132は、フロート支持部132aおよび封止用フロート133を主体に構成される。フロート支持部132aは前後一対となっており、それぞれ天井壁121tの下面から下方に垂直部132eが延びており、その先端部が前後に折曲して係止リブ132bが形成されている。係止リブ132,132は、前後にリブ間隙132cを隔てて位置し、また、フロート支持部132aは、図8に示すように蓋部材122との間に左右間隙132dを有している。そして、封止用フロート133は、前後一対のフロート支持部132aによって囲まれて上下に延びた封止用フロート収容部132fに収容されて、上下移動自在となっている。また、封止用フロート133は、封止用フロート収容部132f内において上限位置まで上昇したとき、気体導入孔129aの下端開口部と当接して、気体導入孔129aを塞ぐことができる大きさに形成されている。なお、後述するサブタンク減圧部140によるインク貯留室123の圧力制御は、インク貯留室123の空気を主に左右間隙132dを通過させて気体導入孔129aに吸引することにより行われる。また、後述するサブタンク加圧部150によるインク貯留室123の圧力制御は、空気を気体導入孔129aから主に左右間隙132dを通過させてインク貯留室123に流入させることにより行われる。また、封止用フロート133として、例えば比重が0.25程度のものを用いた構成が好ましい。
【0065】
インク移送部115は、メインタンク110とサブタンク120との間を結ぶメイン供給回路116により形成される。メイン供給回路116は、メインタンク110と液送ポンプ118とに接続されたインク吸入ライン117a、液送ポンプ118とチューブコネクタ128とに接続されたインク送出ライン117b、装置本体1に設けられてメインタンク110に貯留されたUVインクをサブタンク120に供給する液送ポンプ118などから構成される。液送ポンプ118は、インク吸入ライン117aがUVインクで満たされず空気が混入した状態であっても、UVインクをサブタンク120に圧送し得るポンプであり、例えばチューブポンプやダイヤフラムポンプが好適に用いられる。
【0066】
サブタンク減圧部140は、サブタンク120と気送ポンプ160の吸入口161との間を結ぶ負圧回路141により形成される。負圧回路141は、その主要構成機器を図4中に枠Aで囲んで示すように、気密容器により構成されるエアチャンバー142、負圧回路141の圧力を検出する圧力センサ144、負圧回路141を開閉する負圧制御弁145、およびこれらの機器を接続して気送ポンプの吸入口161とサブタンク120との間を結ぶチューブにより形成されるライン147(147a,147b,147c,147d)などから構成される。なお、図4中に枠Cで囲まれた部分がキャリッジ40に設けられ、枠外の部分が装置本体1に設けられる機器である。
【0067】
エアチャンバー142は、気送ポンプ160の吸入口161と接続されており、気送ポンプ160の作動によりチャンバー内の空気が排気されて負圧状態に減圧される。エアチャンバー142には、負圧状態に減圧されたチャンバー内に空気を導入する空気導入ライン147iが設けられている。この空気導入ライン147iには、空気の流量を調整する流量調整弁143aおよび除塵用のエアフィルタ143bが設けられている。流量調整弁143aは、気送ポンプ160とサブタンク120が負圧回路141を介して接続された状態において、エアチャンバー142に流入する空気の流量を調整することによりエアチャンバー142の内圧を定圧化させる。これにより、インク貯留室123の内圧が、ノズル部におけるメニスカス形成に適宜な−1〜−2kPa程度の所定の負圧(例えば−1.2kPaの負圧:以下「設定負圧」という)になるように設定される。
【0068】
負圧制御弁145は、エアチャンバー142とサブタンク120との間に位置してキャリッジ40に設けられており、ライン147cとライン147dとを連通状態と遮断状態とに切り替える電磁弁である。本実施形態においては、負圧制御弁145として三方弁を用いた構成を例示しており、負圧制御弁145のコモンポート(COM)にライン147c、ノーマルオープンポート(NO)にライン147dが接続され、ノーマルクローズポート(NC)はライン147xおよびサイレンサ148を介して大気に開放されている。
【0069】
このため、負圧制御弁145が開いた状態のとき(印刷中や待機中など通常の稼働時、およびインクの補充充填時)には、ライン147cとライン147dとが接続されて負圧回路141が連通状態に設定され、吸入口161とサブタンク120とが後述する合流回路171を介して接続される。一方、負圧制御弁145が閉じた状態のとき(インクの初期充填時およびクリーニング時等)には、ライン147cとライン147dの接続が切り離されて負圧回路141が遮断されるとともに、ライン147cがライン147xに繋がり、気送ポンプ160の吸入口側の回路が大気に開放される。負圧制御弁145はコントロールユニット80に接続されており、コントロールユニット80により開閉制御される。なお、インクの補充充填時には、予め実験により求めた時間だけ負圧制御弁145を開き、その後は負圧制御弁145側へのインクの逆流を防止するために、負圧制御弁145を閉じる開閉制御が行われる構成が好ましい。
【0070】
圧力センサ144は、±5kPa程度の検出領域を有し、エアチャンバー142と負圧制御弁145の間に設けられたゲージ圧タイプの圧力センサであり、サブタンク近傍のライン147の圧力を検出する。圧力センサ144の検出信号は、コントロールユニット80に入力されている。
【0071】
サブタンク加圧部150は、サブタンク120と気送ポンプ160の吐出口162との間を結ぶ正圧回路151により形成される。正圧回路151は、この回路を構成する主要構成機器を図4中に枠Bで囲んで示すように、空気の流量を調整する流量調整弁153a、除塵用のエアフィルタ153b、正圧回路151の圧力を検出する圧力センサ154、正圧回路151を開閉する正圧制御弁155、およびこれらの機器を接続して気送ポンプ160の吐出口162とサブタンク120との間を結ぶチューブにより形成されるライン157(157a,157b,157c,157d)などから構成される。流量調整弁153aは、気送ポンプ160とサブタンク120とが正圧回路151により接続された状態において、正圧回路151を流れる空気流量を調整することによりインク貯留室123の内圧が所定値以上に上昇しないように調整するバルブである。
【0072】
正圧制御弁155は、流量調整弁153aとサブタンク120との間に位置してキャリッジ40に設けられており、ライン157cとライン157dとを連通状態と遮断状態とに切り替える電磁弁である。本実施形態においては、正圧制御弁155として三方弁を用いた構成を例示しており、正圧制御弁155のコモンポート(COM)にライン157c、ノーマルクローズポート(NC)にライン157dが接続され、ノーマルオープンポート(NO)はライン157xおよびサイレンサ158を介して大気に開放されている。
【0073】
このため、正圧制御弁155が開いた状態のとき(印刷中や待機中など通常の稼働時、およびインクの補充充填時)には、ライン157cとライン157dの接続が切り離されて正圧回路151が遮断されるとともに、ライン157cがライン157xに繋がり、気送ポンプ160の吐出口側の正圧回路が大気に開放される。一方、正圧制御弁155が閉じた状態のとき(インクの初期充填時およびクリーニング時等)には、ライン157cとライン157dとが接続されて正圧回路151が連通状態に設定され、吐出口162とサブタンク120が合流回路171を介して接続される。正圧制御弁155はコントロールユニット80に接続されており、コントロールユニット80により開閉制御される。
【0074】
圧力センサ154は、±50kPa程度の検出領域を有してキャリッジ40に設けられたゲージ圧タイプの圧力センサであり、サブタンク近傍のライン157の圧力を検出する。圧力センサ154の検出信号は、コントロールユニット80に入力されている。
【0075】
気送ポンプ160は、吸入口161に接続された負圧回路141から空気を吸入し、吸入した空気を吐出口162に接続された正圧回路151に圧送するポンプであり、吐出口162および吸入口161に所定の正負圧力を発生する形態のポンプが用いられる。例えば、±40kPA程度の正負圧力を発生させるダイヤフラムポンプが好適に用いられる。
【0076】
負圧回路141と正圧回路151とは、サブタンク120に向かう途上で合流し、合流回路171が形成される。合流回路171は、ライン147dおよびライン157dが合流して形成されサブタンクに接続されるライン177と、合流回路171を開閉する合流回路開閉弁175とから構成される。合流回路開閉弁175は、サブタンク120の数量に対応して設けられており、本実施形態においては、この合流回路開閉弁175において合流回路171(ライン177)が4つに分岐され、分岐された各合流回路(ライン177C,177M,177Y,177K、一部符番を省略)を個々に開閉可能に構成される場合を例示している。合流回路開閉弁175の作動はコントロールユニット80により制御される。
【0077】
以上のように構成されるインク供給装置100にあって、液送ポンプ118、負圧制御弁145、正圧制御弁155、気送ポンプ160の作動がコントロールユニット80によって以下のように制御される。なお、これまでの説明から明らかなように、UVインクの供給系については4つの系統(C,M,Y,K)について同様であるため、各系統に共通する事項については、これらの添え字を省略して説明する。
【0078】
(通常運転時の制御)
プリンタ装置Pのメイン電源がオンされると、コントロールユニット80はROM81に記憶された制御プログラムを読み出し、読み出された制御プログラムに基づいてプリンタ装置各部の作動を制御する。インク供給装置100については、気送ポンプ160に電力を供給して回転駆動状態とし、すべての合流回路開閉弁175を開く。このとき、サブタンクの内圧を負圧に維持(すなわち、負圧制御弁145および正圧制御弁155を開いた状態)した後に、すべての合流回路開閉弁175を開くことが好ましい。そして、合流回路開閉弁175を開いた後、負圧制御弁145および正圧制御弁155を開いた状態のままとする。これにより負圧回路141では、ライン147cとライン147dとが連通して吸入口161とインク貯留室123とが接続され、正圧回路151では、ライン157cとライン157xとが接続されて気送ポンプ160の吐出口側の回路が大気に開放される。このため、吸入口161に接続されたライン147内の空気が吸引されてエアチャンバー142が負圧に減圧され、流量調整弁143aにより調整された流入空気流量と気送ポンプ160により吸引される空気量とのバランスで定まる略一定の圧力で安定する。ここで、4つのサブタンクのインク貯留室123の内圧が、すべて同一の設定負圧に設定された状態で安定保持される。こうしてプリンタ装置Pが起動すると、以降、気送ポンプ160は継続運転され、印刷プログラムの実行中、待機中を問わずサブタンク120の内圧が常時設定負圧に保持される。
【0079】
通常運転時にあっては、サブタンク120のインク貯留室123にある程度UVインクが貯留されている。このUVインクの貯留量は、UVインクの液面とともに上下移動するフロート134に固着したマグネット134aの磁気が、Hi検出センサ136Hによって検出されて、インク貯留室123におけるUVインクの液面が最高位置に達したことを検出できるようになっている。一方、マグネット134aの磁気が、Lo検出センサ136Lによって検出されて、インク貯留室123におけるUVインクの液面が最低位置に達したことを検出できるようになっている。このように、マグネット134aの磁気を磁気センサ136で検出させて液面高さ検出する構成により、例えば検査光を透過するか否かによって検出する方法と比較して、UVインクの色等の影響を受けることなく正確に液面高さを検出可能となっている。
【0080】
インク貯留室123に貯留されたUVインクは、印刷プログラムの実行等によりプリンタヘッド60のノズルから吐出されて消費され、貯留されたUVインクが徐々に減少する。そして、インク貯留室123に貯留されたUVインクが所定量以下になったときに、メインタンク110に貯留されたUVインクがインク移送部115によりサブタンク120に供給されてUVインクが補充される。
【0081】
具体的には、インク貯留室123に貯留されたUVインクが減少すると、UVインクの液面高さは下がり、フロート134も液面高さに応じてフロート収容部124を下方に移動される。そして、UVインクの残留量が所定量以下となったときに、フロート134に固着されたマグネット134aの磁気が、最低位置のLo検出センサ136Lによって検出される。液面検出センサ138から上記検出信号を受けたコントロールユニット80は、インク貯留室123が負圧状態に減圧された状態で液送ポンプ118を起動する。メインタンク110から液送ポンプ118により送り出されたUVインクは、ライン117bを通ってチューブコネクタ128からインク貯留室123に供給され、インク貯留室123の貯留インク量が増大する。このとき、貯留インク量の増大とともにUVインクの液面高さは上がり、フロート134も液面高さに応じてフロート収容部124を上方に移動される。そして、フロート134に固着されたマグネット134aの磁気が、最高位置のHi検出センサ136Hによって検出されたとき液送ポンプ118を停止させることにより、インク貯留室123へのUVインクの補充充填が完了する。
【0082】
ところで、フロート134およびマグネット134aが、フロート収容部124において何らかの原因によって、所定量以下の上下高さに位置したまま動かなくなった場合を想定する。上述のようにコントロールユニット80は、マグネット134aの磁気がHi検出センサ136Hによって検出されるまで液送ポンプ118を稼動させるため、この場合、充填基準高さを超えた後もUVインクが供給され続ける。このとき、封止用フロート収容部132fに流入したUVインクが、封止用フロート133を上方へ移動させる。そして、封止用フロート133の上面が気体導入孔129aの下端開口部と当接し、UVインクが気体導入孔129aに流入する前に、封止用フロート133が気体導入孔129aを塞ぐことができるようになっている。よって、万が一、マグネット134aによるUVインクの液面高さの検出が正常に行えない事態に陥っても、UVインクが気体導入孔129aに流入することを未然に防止できる。
【0083】
(インクの初期充填時の制御)
UVインクの初期充填時や、洗浄液を用いたノズルクリーニング後の立ち上げ時などにおいて、プリンタヘッド60のインク室、サブタンク120およびメイン供給回路のライン117内にUVインクが存在しない場合がある。このような場合に、操作パネル88からコントロールユニット80に入力されるインク充填指令に基づいて、以下のようにインクの初期充填制御が実行される。このインク充填制御に関しROM81に設定記憶されたインク充填プログラムPGのフローチャートを図10に示す。
【0084】
操作パネル88において、例えばファンクションキーの選択等により、「インク充填」処理が選択され、コントロールユニット80にプリンタヘッド60を特定してインク充填の実行指令が入力されると、演算処理部83は、インク充填プログラムに従い、ステップS10においてサブタンク内圧を負圧に保持した状態(すなわち、負圧制御弁145および正圧制御弁155を開いた状態)で、インク充填を実行すべきプリンタヘッドに該当する合流回路開閉弁を開き、他の合流回路開閉弁を閉じた状態とする処理(負圧維持処理)を実行してステップS20に進む。例えば、操作パネル88において第1プリンタヘッド60Cについてのみインク充填が選択された場合には、第1プリンタヘッド60に対応する第1合流回路開閉弁175Cのみを開き、第2〜第4プリンタヘッドに対応する第2〜第4合流回路開閉弁175M,175Y,175Kを閉じた状態にする(以下この場合について説明する)。
【0085】
ステップS20では、減圧された第1サブタンク120Cに、第1メインタンク110CからUVインクを移送し、第1サブタンク120Cにインクを補充する(インク補充処理)。すなわち、第1サブタンク120Cに対応する液送ポンプ118Cのみを起動し第1メインタンク110Cに貯留されたUVインクを第1サブタンク120Cに供給する。このとき、チューブコネクタ128からゆっくりとUVインクが供給される。そうすることにより、第1サブタンク120Cに供給されたUVインクは、低い位置に開口部が形成された第1導出路127aを通過して、コネクタ空間125aおよびチューブ空間69aの外周壁面を伝わって流下しフィルタ61bに導かれる。このとき、コネクタ空間125a、チューブ空間69aおよびフィルタ61bに存在していた気泡を、第2導出路126bからインク貯留室123へと導いて残らず除去するとともに、これらの領域をUVインクで満たすことができる。つまり、低い位置に開口部が形成された第1導出路127aをUVインク導入用とし、高い位置に開口部が形成された第2導出路126bを気泡除去用とすることにより、インク貯留室123からフィルタ61bまでの経路中を気泡が完全に除去された状態でUVインクを充填することが可能となる。そして、インク貯留室123からフィルタ61bまでの経路中がUVインクで満たされた後、フロート134に固着されたマグネット134aの磁気が、充填基準高さに位置したHi検出センサ136Hによって検出されたとき液送ポンプ118Cを停止させることにより、第1サブタンク120Cのインク貯留室123に十分な量のUVインクが貯留される。
【0086】
次に、ステップS30では、負圧回路141を遮断してサブタンク加圧部150により第1サブタンク120Cの内圧を正圧状態に加圧し、第1サブタンク120Cに貯留されたUVインクの一部を第1プリンタヘッド60Cから流出させる(プリンタヘッドインク充填処理)。具体的には、コントロールユニット80は、負圧制御弁145を閉じてライン147cとライン147dとの連通を遮断し、ライン147cをライン147xに接続して気送ポンプ160の吸入側回路を大気に開放する。また、正圧制御弁155を閉じて、ライン157cとライン157dとを連通させて気送ポンプの吐出口162と第1サブタンク60cのインク貯留室123とを接続する。この切り替え制御により、気送ポンプ160と第1サブタンク120Cとは正圧回路151を介して接続され、気送ポンプ160の吐出口162から吐出された空気が第1サブタンク120Cのインク貯留室123に供給される。その結果、第1サブタンク120Cのインク貯留室123に貯留されたUVインクが、タンク下端の第1導出路127aおよび第2導出路126bから押し出され、フィルタ61bで濾過された後に第1プリンタヘッド120Cのノズルに供給される。そして、第1プリンタヘッド120Cのノズルから流出したUVインクは、インクトレイ180に受け止められる。
【0087】
本ステップS30により、第1サブタンク120Cのインク貯留室123から第1プリンタヘッド60CのノズルまでがUVインクで満たされる。このとき、フィルタ61bから第1プリンタヘッド120Cのノズルまでの経路中に存在していた気泡はノズルから押し流されて、第1サブタンク120Cから第1プリンタヘッド60CのノズルまでがUVインクで満たされた状態になり、次のステップS40に進む。なお、このとき合流回路開閉弁175は、第1合流回路開閉弁175Cを除いて閉じた状態にあり、第2〜第4サブタンクの内圧は初期の設定負圧に保持されている。
【0088】
ステップS40では、正圧回路141を遮断してサブタンク減圧部140により第1サブタンク120Cの内圧を負圧状態に減圧し、減圧された第1サブタンク120Cにインク移送部115により第1メインタンク110Cからインクを移送して第1サブタンク120CにUVインクを充填する(サブタンクインク充填処理)。すなわち、コントロールユニット80は、正圧制御弁155を開いて、ライン157cとライン157dとの連通を遮断し、ライン157cをライン157xに接続して気送ポンプ160の吐出側回路を大気に開放する。また、負圧制御弁145も開いて、ライン147cとライン147dとを連通状態として、気送ポンプ160の吸入口161と第1サブタンク120Cのインク貯留室123とを接続する。
【0089】
この切り替え制御により、負圧回路141において気送ポンプ160と第1サブタンク120Cとが接続され、第1サブタンクのインク貯留室123の空気が気送ポンプ160に吸引される。このため、第1サブタンク120Cの内圧が低下し、正圧状態から負圧状態に変化する。コントロールユニット80は、圧力センサ144によって検出される圧力が所定値以下(例えば−0.8kPa以下)の負圧になったとき液送ポンプ118Cを起動させる。そして、フロート134に固着されたマグネット134aの磁気が、Hi検出センサ136Hによって検出されたとき液送ポンプ118Cを停止させる。これにより、第1サブタンク120Cのインク貯留室123に、充填基準高さまでUVインクが充填される。
【0090】
続くステップS50では、圧力センサ144により検出される第1サブタンク120Cの内圧が設定負圧近傍(例えば、−1.0kPa程度)に到達するまで減圧され、この圧力以下になったときに、それまで閉じられていた第2〜第4合流回路開閉弁175M,175Y,175Kを開き、第1〜第4サブタンクのすべてが設定負圧の負圧状態に保持される(負圧維持処理)。
【0091】
そして、ステップS60に進み、例えばゴム材料で形成されたワイパ(図示せず)を、プリンタヘッド60の下面に形成されたヘッドノズル面(図示せず)に当接させて、ヘッドノズル面に付着したインク滴を除去する(ワイプ処理)。そして、各サブタンクは負圧状態に保持されているためノズル部分にメニスカスが形成され、ノズルからインクを吐出して印刷可能な状態となる。
【0092】
ステップS70に進み、インク充填プログラムPGを終了する。これにより、操作パネル88において選択された第1プリンタヘッド60Cにインクが充填され、第1サブタンクを含む全てのサブタンクが所定の設定負圧に設定されて待機保持される。なお、インク充填処理が複数のプリンタヘッドについて実行される場合にも、処理が実行される合流開閉弁を開いて上記同様に処理される。
【0093】
ここで、上述した実施例1に係るインク供給装置100の主な効果についてまとめると、以下のようになる。
【0094】
第1に、サブタンク120の下部には、開口部の高さ位置が異なった第1導出路127aおよび第2導出路126bが設けられている。このように構成することにより、例えばUVインクの初期充填時や、洗浄液を用いたノズルクリーニング後の立ち上げ時などにおいて、チューブコネクタ128からゆっくりと供給されたUVインクおよび洗浄液を、低い位置に開口部が形成された第1導出路127aからコネクタ空間125aに導くことができる。そして、コネクタ空間125aに導かれたUVインクは、コネクタ空間125aおよびチューブ空間69aの外周壁面を伝わってフィルタ61bに流下する。このとき、コネクタ空間125a、チューブ空間69aおよびフィルタ61bに存在していた気泡は、残らず第2導出路126bからインク貯留室123へと導かれて除去され、これらの領域をUVインクおよび洗浄液で満たすことが可能となる。このとき、インク貯留室123は負圧状態に保持されているために、インク貯留室123に導かれた気泡は、気体導入孔129aからライン177へとスムーズに導かれて除去される。そして、この状態において、サブタンク120の内圧を正圧状態に加圧することにより、サブタンク120からプリンタヘッド60のノズルまでの経路中に、気泡を混在させることなくUVインクおよび洗浄液を充填することができる。よって、吐出不良が発生せず安定したインク吐出を得ることが可能となる。
【0095】
第2に、フロート収容部124の内壁に対向した状態で収容されて、略真っ直ぐ上下移動可能となったフロート134に固着されたマグネット134aの磁気を、Hi検出センサ136HまたはLo検出センサ136Lで検出することにより、フロート134の高さ位置、すなわち、インク貯留室123に貯留されたUVインクの液面高さを検出可能に構成されている。このように構成することにより、マグネット134aは、向きを一定方向に保ったまま、UVインクの液面高さに応じて略真っ直ぐ上下移動できる。そのため、このように上下移動するマグネット134aの上下高さ位置は、UVインクの液面高さを忠実に反映している。よって、マグネット134aの磁気をHi検出センサ136HまたはLo検出センサ136Lで検出してマグネット134aの上下高さ位置を検出することにより、UVインクの液面高さを精度良く検出できる。
【0096】
第3に、チューブコネクタ129の下方のインク貯留室123において、フロート支持部132aおよび封止用フロート133を主体に構成された逆流防止部132が形成されている。この逆流防止部132により、例えばフロート134およびマグネット134aが、フロート収容部124において所定量以下の上下高さに位置したまま動かなくなった場合においても、充填基準高さ以上に供給されたUVインクが気体導入孔129aに流入することを未然に防止できる。具体的には、充填基準高さ以上に供給されて封止用フロート収容部132fに流入したUVインクが、封止用フロート収容部132fにおいて封止用フロート133を上方へ移動させる。そして、封止用フロート133の上面が気体導入孔129aの下端開口部と当接したとき、封止用フロート133が気体導入孔129aの下端開口部を覆って封止するように構成されている。よって、UVインクが気体導入孔129aに流入することを未然に防止できる。
【実施例2】
【0097】
以下に、実施例2に係るインク供給装置200について、図13〜15を追加参照しながら説明する。このインク供給装置200は、上述の実施例1に係るインク供給装置100に対して、一部の構成が異なっている。そこで、以下においては、インク供給装置100と同一部分には同一番号を付して説明を省略し、インク供給装置100に対して異なる部分を中心に説明する。なお、上述の実施例1と同様に、色毎の4つの系統(C,M,Y,K)に関しては各々同一構成であるため、各系統に共通する事項については、これらの添え字を省略して説明する。
【0098】
図13には、インク供給装置200のうち合流回路開閉弁175近傍の構成を示している。この図13から分かるように、プリンタヘッド60に対して、サブタンク220が接続されている。このサブタンク220が、インク貯留容器280を介して合流回路開閉弁175と接続されている。合流回路開閉弁175に接続されたライン177の途中には、サブタンク290が配設されている。なお、このサブタンク290は、上記サブタンク220と同一構成となっている。
【0099】
サブタンク220は、図14に示すように、紙面右方に開口した薄型矩形箱状の容体部材221と、この容体部材221の開口面を部分的に覆う板ばね241と、この板ばね241が取り付けられた開口面を覆って閉止する蓋部材222とを主体に構成される。そして、サブタンク220は、蓋部材222により閉止されて、内部にインク貯留室223が形成される。インク貯留室223を形成する紙面左方側底面には、上下に延びる2つのガイドリブ224aが形成されている(図15参照)。このガイドリブ224aの紙面右方には、ガイドリブ224aと対向する位置に、断面視コの字状の収容部形成部材242が取り付けられている。上記ガイドリブ224aおよび収容部形成部材242により、インク貯留室223と連通し、インク貯留室223の後部において上下に延びるフロート収容部224が形成される。フロート収容部224には、中心部にマグネット234aが固着されUVインクに浮揚する円盤状のフロート234が上下移動自在に収容されている。
【0100】
上記サブタンク220は、例えば黒色の樹脂材料を用いて容体部材221が形成されるとともに、透明且つ可撓性を有したフィルム状の蓋部材222を用いて形成される。そうすることにより、開口面を観察することによりインク貯留室223に貯留されたUVインクの量を目視で確認できるとともに、インク貯留室223に入り込む光(紫外線)を低減して、インク貯留室223に貯留されたUVインクが硬化されることを抑制できる。なお、上記板ばね241は、例えば板状の金属材料を用いて形成されており、フィルム状の蓋部材222の強度を補う役割がある。
【0101】
図15に示すように、サブタンク220の下面側には、下方に突出したコネクタ部225が形成され、このコネクタ部225の内部にはコネクタ空間225aが形成されている。コネクタ部225の上部にはダクト部226が形成されており、このダクト部226がインク貯留室223の内側に向けて突出している。容体部材221を上下に貫通し、インク貯留室223とコネクタ空間225aとを繋ぐ第1導出路227aが形成される。また、ダクト部226を上下に貫通し、インク貯留室223とコネクタ空間225aとを繋ぐ第2導出路226bが形成される。よって、インク貯留室223とプリンタヘッド60とが、第1導出路227aおよび第2導出路226bを介して接続されている。
【0102】
サブタンク220の後面側に、インク貯留室223のUVインクの貯留状態を検出するサブタンク貯留検出部230が設けられている(図14および図15参照)。サブタンク貯留検出部230は、フロート収容部224に収容されてインク貯留室223内のUVインクの液面に応じて上下移動するフロート234と、このフロート234に固着されたマグネット234aの磁気を検出することにより、UVインクの液面高さを検出する液面検出センサ238から構成される。フロート234は、上記ガイドリブ224aにガイドされて、フロート収容部224を真っ直ぐ上下に移動できるようになっている。
【0103】
図14から分かるように、フロート収容部224は、フロート234と対向する面が極力少なくなるように形成されている。そのため、フロート234がUVインクによってフロート収容部224を形成する側壁部分に張り付いて、正確な液面検出ができなくなることを効果的に防止できるようになっている。
【0104】
液面検出センサ238には、例えばマグネット234aの磁気を検出可能なHi検出センサ(図示せず)、およびLo検出センサ(図示せず)が取り付けられた液面検出基板235が収容されている。容体部材221の後面には、上下に延びる溝状のセンサ装着部231が形成されており、このセンサ装着部231に液面検出センサ238が挿入されて固定される。
【0105】
図15に示すように、液面検出センサ238は、センサ装着部231に挿入されてフロート234と対向配置され、マグネット234aの磁気をHi検出センサまたはLo検出センサで検出することにより、フロート234の高さ位置、すなわち、インク貯留室223に貯留されたUVインクの液面高さを検出可能となっている。この液面検出センサ238において検出された結果は、コントロールユニット80に出力される。サブタンク220の前面側には、インク貯留室223に連通したチューブコネクタ228が設けられている。サブタンク220の上面側には、インク貯留室223に連通したチューブコネクタ229が設けられている。
【0106】
インク貯留容器280は、その内部にUVインクを貯留可能なインク室281が形成されている。また、ライン177にはサブタンク290が配設されており、このサブタンク290のコネクタ部225が合流回路開閉弁175側に接続され、チューブコネクタ229が気送ポンプ160側に接続されている。なお、サブタンク290の側面に形成されたチューブコネクタ(上記チューブコネクタ228に相当)は閉止されている。このサブタンク290の液面検出センサ(図示せず)における検出結果は、コントロールユニット80に出力される。
【0107】
サブタンク220の内圧制御は、インク貯留容器280およびサブタンク290を介して行われるように構成されている。この構成により、例えばサブタンク220において液面検出が正確に行われず、液送ポンプ118によりインク貯留室223へ多量のUVインクが供給された場合、チューブコネクタ229側へ流入したUVインクを一時的にインク室281に貯留させることができるので、UVインクが一気に合流回路開閉弁175に流入することを防止可能である。よって、UVインクがインク室281に貯留されている間(合流回路開閉弁175に到達する前)に、例えば液送ポンプ118を停止させることにより、合流回路開閉弁175にUVインクが流入することを防止して、UVインクがチューブコネクタ229側へ流入したときの損害を最小限に抑えることができる。
【0108】
仮に、インク室281および合流回路開閉弁175がUVインクで満たされて、サブタンク290にUVインクが流入した場合には、サブタンク290に流入したUVインクの液面高さを検出し、この検出結果に基づいて例えば液送ポンプ118の駆動を停止させる制御が行われる。そうすることにより、ライン147dおよびライン157dにUVインクが流入することを防止して、UVインクがチューブコネクタ229側へ流入したときの損害を抑えることができる。なお、サブタンク290に代えて、インク貯留容器280を配設することも可能であり、このように構成すると、製造コストを低減しつつUVインクがチューブコネクタ229側へ流入したときの損害をなるべく抑えることが可能となる。
【0109】
上述の実施例1において、サブタンク120に対して液面検出センサ138が脱着可能な構成を説明したが、例えばHi検出センサ136H、Lo検出センサ136Lおよび液面検出基板135がサブタンク120に組み込まれた構成でも良い。また、実施例2に係るサブタンク220についても同様に、適用可能である。
【0110】
上述の実施例1において、液面検出センサ138として、液面検出基板135がケース部材137に収容された構成を説明したが、この構成に限定されない。例えば図11に示すように、液面検出基板135をケース部材137に収容することなく、液面検出基板135の形状に合わせて形成されたセンサ装着部131aに装着する構成でも良い。また、実施例2に係るサブタンク220についても同様に、適用可能である。
【0111】
上述の実施例1においては、Hi検出センサ136HおよびLo検出センサ136Lを用いた構成を例示したが、この構成に限定されない。例えば図12に示すように、3つ以上の検出センサ136を上下に並べて構成された液面検出基板135aを、センサ装着部131aに装着する構成でも良い。または、この液面検出基板135aをケース部材137に収容した状態で、サブタンク120に取り付ける構成でも良い。このように構成すると、インク貯留室123のUVインクの液面高さ位置を細かく検出可能となる。そして、検出された液面高さ位置に基づいて、例えばUVインクの残量の時間的推移を把握した上で、必要になると予測される次の処理をオペレータに報知する制御等が可能となる。上記構成は、実施例2に係るサブタンク220についても適用可能である。
【0112】
上述の実施例1においては、インク貯留室123とコネクタ空間125aとを繋ぐ第1導出路127aおよび第2導出路126bの2つの導出路が形成された構成を例示したが、本発明はこの構成に限定して解釈されるものではない。例えばインク貯留室123とコネクタ空間125aとを繋ぐ導出路を3つ形成するとともに、3つの導出路のうち少なくとも2つの導出路におけるインク貯留室123側の開口部の高さ位置が、互いに異なるように構成しても良い。さらには、導出路を4つ以上形成するとともに、4つ以上の導出路のうち少なくとも2つの導出路におけるインク貯留室123側の開口部の高さ位置が、互いに異なるように構成しても良い。この構成は、実施例2に係るサブタンク220についても適用可能である。
【0113】
上述の実施例1および2では、本発明を適用したインクジェットプリンタの一例として、一軸印刷媒体移動、一軸プリンタヘッド移動タイプのUV硬化インクジェットプリンタに適用した構成例について説明したが、本発明は他の形態のインクジェットプリンタ、例えば二軸プリンタヘッド移動タイプのインクジェットプリンタや、二軸印刷媒体移動タイプのインクジェットプリンタにも適用することができ、使用するインクについても染料系や顔料系など他の種類のインクを用いたインクジェットプリンタに適用することができる。
【符号の説明】
【0114】
M 印刷媒体
P プリンタ装置(インクジェットプリンタ)
1 装置本体(本体部材)
20 プラテン(媒体支持部)
40 キャリッジ
60 プリンタヘッド(60C:第1プリンタヘッド、60M:第2プリンタヘッド、60Y:第3プリンタヘッド、60K:第4プリンタヘッド)
100 インク供給装置
110 メインタンク(110C:第1メインタンク、110M:第2メインタンク、110Y:第3メインタンク、110K:第4メインタンク)
120 サブタンク(120C:第1サブタンク、120M:第2サブタンク、120Y:第3サブタンク、120K:第4サブタンク)
123 インク貯留室(供給用インク室)
124 フロート収容部(検出用インク室)
125 コネクタ部(ヘッド側供給路)
126b 第2導出路(供給孔)
127a 第1導出路(供給孔)
128 チューブコネクタ(インク流入孔)
129a 気体導入孔(圧力制御孔)
132 逆流防止部
132a フロート支持部(支持部)
133 封止用フロート(封止用部材)
134a マグネット(液面指示部材、磁石)
136H Hi検出センサ(磁気センサ)
136L Lo検出センサ(磁気センサ)
138 液面検出センサ(液面検出部)
140 サブタンク減圧部(圧力制御手段)
150 サブタンク加圧部(圧力制御手段)
175 合流回路開閉弁(内圧制御弁)
177 ライン(内圧調整路)
224a ガイドリブ(ガイド突起)
280 インク貯留容器(上流側インク貯留部材)
281 インク室(上流側インク室)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体インクを吐出するプリンタヘッドとヘッド側供給路を介して接続され、液体インクが貯留されるインク室が内部に形成されたサブタンクと、
前記サブタンクに接続され、前記インク室に供給される液体インクが貯留されたメインタンクとを有したインクジェットプリンタのインク供給装置において、
前記サブタンクの下面側には、前記インク室から前記ヘッド側供給路に連通するそれぞれ独立した複数の供給孔が形成され、
前記複数の供給孔のうち少なくとも2つの前記供給孔には、前記インク室にそれぞれ開口したインク室側開口が形成されており、該インク室側開口が前記インク室の上下方向において互いに異なった高さ位置に形成されたことを特徴とするインクジェットプリンタのインク供給装置。
【請求項2】
前記ヘッド側供給路として、前記サブタンクの下面側の底壁から下方に突出したコネクタ部が形成され、該コネクタ部の内部には下方に向けて開口したコネクタ空間が形成され、
前記コネクタ空間は、前記インク室の下方に配設され、
前記少なくとも2つの供給孔のそれぞれにおける一方の端部が前記インク室に開口すると共に、他方の端部が前記コネクタ空間に開口して、該インク室と該コネクタ空間とが連通していることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットプリンタのインク供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−210824(P2012−210824A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−174423(P2012−174423)
【出願日】平成24年8月6日(2012.8.6)
【分割の表示】特願2010−508245(P2010−508245)の分割
【原出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(000137823)株式会社ミマキエンジニアリング (437)
【Fターム(参考)】