説明

インクジェット印刷装置およびインクジェットヘッドの洗浄方法

【課題】印刷物の大型化に伴い、複数のインクジェットヘッドを用いて印刷物を製造する場合、インクジェットヘッドのノズルからインクを吐出する際のインクの吐出量を一定にするためのインクジェットヘッドの洗浄方法とその方法を用いる洗浄手段を有するインクジェット印刷装置とを提供すること。
【解決手段】インク供給タンクと、前記インク供給タンクに接続されたマニホールド部より複数のインクジェットヘッドにインクを供給し、インクジェット印刷法にて記録画像を形成するインクジェット印刷装置において、ノズル洗浄でインクをインクジェットヘッドから押し出す際に、上記マニホールド部と各インクジェットヘッドとの間に開閉制御可能な弁を使用し、弁開閉のタイミングとスピードを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一の供給元から複数のヘッドにインクが供給されるインクジェット印刷装置およびインクジェットヘッドの洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板表面に、パターンを形成するための方法として、従来よりフォトリソグラフィー法が知られている。フォトリソグラフィー法は、基板全体に同一材料の感光性樹脂層を塗布し、塗布領域内を選択的に露光した後に現像工程により塗布膜の溶解部分を除去し、残った不溶部分をパターンとして形成する。使用する感光性樹脂の種類により、前記露光部分が硬化して現像液に不溶となるネガタイプと、前記露光部分が分解して現像液に溶解するポジタイプがある。このフォトリソグラフィー法は、半導体素子やプリント配線板、液晶表示装置、プラズマ表示装置、エレクトロルミネッセンスディスプレイ等、種々の光学素子や電気素子の製造に利用される。フォトリソグラフィー法によるパターンの利用形態は、形成されたパターンを最終形態でそのまま利用する場合と、形成されたパターンを耐エッチングレジストとして利用したり、めっきのマスクとして利用し、処理工程で利用した後は除去する場合がある。
【0003】
例えば、カラーフィルタの製造におけるフォトリソグラフィー法の適用事例は、形成されたパターンを最終形態でそのまま利用する場合の代表例であって、その製造工程を示すと、まず、基板全体に感光性樹脂から成る塗布膜を一色ずつ形成し、パターン状に露光した後に塗膜の不要な部分を取り除き、単色で複数の画素からなるフィルタセグメントのパターンを形成する。その後、加熱などにより、形成したフィルタセグメントを完全硬化させる。これを各色毎にパターン位置を一定量ずらして繰り返し、複数の色のフィルタセグメントからなるカラーフィルタを形成する。また、それぞれの画素と画素の間にコントラストを向上させるための黒色のブラックマトリックスを配置するのが一般的である。
【0004】
しかしながら、この方法では塗膜の多くが現像により除去されるため、大量の材料が無駄になるとともに、色の単位であるフィルタセグメント毎に塗膜形成、露光、現像、硬化などの工程を行うため、工程数が多くなるという問題がある。
【0005】
フォトリソグラフィー方式の上記問題は、基板の大型化に伴い顕著となり、コスト、環境面ともに問題を露呈するようになった。この問題を克服する方法として、インクジェット方式が有機エレクトロルミネッセンス素子やカラーフィルタといった光学素子の製造に応用されている(特許文献1〜4)。例えば、インクジェット方式によってカラーフィルタを製造する場合、透明基板に撥インク性を持った遮光部を形成し、その遮光部をブラッマトリックスとしてその間にR、G、Bの3色のインクを選択的に吐出して着色層を形成する。このため、フォトリソグラフィー法と比べ、インクの無駄もほとんど発生せず、また同時に3色画素を形成することができ工程が短縮されるため、環境負荷の低減と大幅なコストダウンが期待できる。
【0006】
インクジェット方式においては、基板の大型化に対応するため、ヘッドの長尺化等が検討されてきたが、長尺化を行うとインクジェットヘッドのコストアップとなったり、ヘッド内の気泡が滞留し易く不均一吐出の原因となったりするため、小型のヘッドを複数個配置して対応している場合が多い。その場合は、同一色用のインクジェットヘッドを複数個、描画の切れ目を作らないように配置し、インク供給タンクと、インク供給タンクに接続されたマニホールド部より複数のインクジェットヘッドに同一のインクを一括して供給するのが一般的である。
【0007】
インクジェット法により着色層を形成する場合、各インクジェットノズルから吐出される吐出液量にはバラツキがあるため、ノズル毎の吐出量の調整が必要であり、ノズル毎の吐出量の調整方法はさまざまなものが提案されている(特許文献5)。しかし、前述したマニホールド部と複数のインクジェットヘッドを接続し、インクを一括供給する場合、複数のヘッドに分散された部分では、インク供給部に比べて、インクの圧力が減少するため、インクジェットヘッド内の気泡が抜けづらく、残留気泡の影響を受けたノズルの吐出量が変わるため、再度、吐出量調整工程が必要になる等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−347637号公報
【特許文献2】特開平7−35915号公報
【特許文献3】特開平7−35917号公報
【特許文献4】特開平7−248413号公報
【特許文献5】特開平10−278314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上の事情に鑑みて提案されたものであり、その課題とするところは、複数のインクジェットヘッドを用いて印刷物を製造する場合に、各インクジェットヘッドのノズルからインクを吐出する際のインクの吐出量を一定にすることであって、そのためのインクジェットヘッドの洗浄方法とその方法を用いるための洗浄手段を有するインクジェット印刷装置とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本願発明者らは鋭意研究を行い、以下のような発明を完成させた。
[請求項1]
インク供給タンクとインク供給タンクに接続されたインクジェットヘッドと、その経路内に少なくとも1つ以上の開閉可能な弁をもつインクジェット印刷装置において、
上記開閉可能な弁の開閉速度を調整できることを特徴とするインクジェット印刷装置
[請求項2]
請求項1に記載の開閉可能な弁に電磁弁を使用し、電磁弁の操作エアーにより開閉速度を調整できることを特徴とするインクジェット印刷装置
[請求項3]
インク供給タンクに接続されたマニホールド部より複数のインクジェットヘッドにインクを供給し、その経路内に少なくとも1つ以上の開閉可能な弁をもつインクジェット印刷装置において、上記マニホールド部と各インクジェットヘッドの間に開閉可能な弁を備えていることを特徴とするインクジェット印刷装置
[請求項4]
請求項3に記載の開閉可能な弁に電磁弁を使用し、電磁弁の操作エアーにより開閉速度を調整できることを特徴とするインクジェット印刷装置
[請求項5]
インクジェットヘッドの複数のノズルからインクを押し出して洗浄するインクジェットヘッドの洗浄方法であって、前記インク押し出し時に、前記マニホールド部と各インクジェットヘッドとの間に備えられた前記弁の開閉のタイミングを順次ずらせて開閉するとともに、各弁の開閉速度を制御することを特徴とする請求項3〜4に記載のインクジェットヘッドの洗浄方法。
[請求項6]
インク供給タンクを加圧してインクジェットヘッドの複数のノズルからインクを押し出して洗浄するインクジェットヘッドの洗浄方法であって、
前記マニホールド部と各インクジェットヘッドとの間に備えられた前記弁を閉じたままインク供給タンクの加圧を保持した後に、前記弁を開けてインクを押し出すことを特徴とする請求項1〜5に記載のインクジェットヘッドの洗浄方法。
[請求項7]
請求項1〜6のいずれかに記載の方法を用いて製造されたことを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
[その他の発明の構成]
[その他の構成1]
インク供給タンクに接続されたマニホールド部より複数のインクジェットヘッドにインクを供給し、インクジェット印刷法にて記録画像を形成するインクジェット印刷装置において、上記マニホールド部と各インクジェットヘッドとの間に開閉制御可能な弁を備えていることを特徴とするインクジェット印刷装置。
[その他の構成2]
前記弁が、開閉速度を調整できることを特徴とするその他の構成1に記載のインクジェット印刷装置。
[その他の構成3]
前記弁に電磁弁を使用し、電磁弁の操作エアーにより開閉速度を調整できることを特徴とするその他の構成1または2に記載のインクジェット印刷装置。
[その他の構成4]
その他の構成1〜3のいずれかに記載のインクジェット印刷装置の各インクジェットヘッドの複数のノズルからインクを押し出して洗浄するインクジェットヘッドの洗浄方法であって、前記インク押し出し時に、前記マニホールド部と各インクジェットヘッドとの間に備えられた前記弁の開閉のタイミングを順次ずらせて開閉するとともに、各弁の開閉速度を制御することを特徴とするインクジェットヘッドの洗浄方法。
【発明の効果】
【0011】
従来、複数のインクジェットヘッドを用いたインクジェット法により印刷物を製造する場合に、マニホールド部と複数のインクジェットヘッドを接続し、インクを一括供給する方式で、インクジェットヘッドのノズル詰まり等を解消するためにヘッド洗浄を実施しても、インクジェットヘッド内の気泡や乾燥インクが抜けづらく、残留気泡や乾燥インクによる詰まりの影響を受けたノズルの吐出量が変わるため、ムラが発生する問題があったが、本発明の印刷装置と洗浄方法によれば、各インクジェットヘッドのノズルからインクを吐出する際のインクの吐出量を一定にすることができ、係る問題を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の印刷装置の構成の一例を示す説明図である。
【図2】本発明を活用したカラーフィルタ用インクジェット印刷装置の構成の一例を示す説明図である。
【図3】インクジェットヘッドの洗浄により、ノズルの詰まりが解消する例を説明するための、インクジェットヘッドの断面模式図である。
【図4】インクジェットヘッドの洗浄が不完全で、ノズルの詰まりが解消しない例を説明するための、インクジェットヘッドの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について、水頭差を用いたインクジェット印刷装置の構成の一例を図1にて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0014】
図1において、インク供給タンク1に入っているインク2は、インク供給用チューブ6を通してサブタンク3に供給される。このとき、サブタンク3におけるインク5の液面高さがインクジェットヘッド10のノズル開口部と同じ高さになるように、即ち、水頭差8を0とするようにバランスを保って、インク供給タンク1への印加圧力11によりインク供給タンク1からの供給量を調整する。また、サブタンク3は大気開放部4により通常は大気に開放されており、大気圧となる。サブタンクは、インク供給用チューブ7でマニホールド9へ繋がり、マニホールドから複数のインクチューブ12が分岐して複数のインクジェットヘッド10に接続されている。
【0015】
各インクジェットヘッドの複数のノズルからインクを押し出して洗浄する際には、インク供給タンクへの印加圧力11を印加して、インク2をインクジェットヘッド10に送出することができる。この時はサブタンクの大気開放部4を閉じて、印加圧力11がインクジェットヘッド10に伝達するようにする。しかし、インクジェットヘッドがマニホールドで複数に分岐しているため、送出圧力を印加しても、途中経路での摩擦等による圧力損失が多く、インクジェットヘッドに印加される圧力は小さくなる。これを改良するため、上記マニホールドと各インクジェットヘッドとの間に開閉制御可能な弁13を備え、同時に開いている制御弁の個数を減らすと、圧力損失が減り、インクジェットヘッドへの送出圧力を確保することができる。
また、インクジェットヘッドを洗浄するために、インク供給タンクへの印加を行うが、インク供給タンクとインクジェットヘッドの経路が長い際にはインク供給タンクを印加してからインクジェットヘッドが印加されるまでに時間差が生じる。そうすると、インクジェットヘッドに必要圧力で液出しできず、ノズル内のエアーを除去できなかったり、液出しを行うインキの量が多くなったりするため、開閉制御可能な弁13を閉じた状態で一定時間インク供給タンクを印加すると、より効果的にインクジェットヘッドからインクを押し出すことができる。
【0016】
一方、開閉制御可能な弁13を急速に開閉すると、バルブの容積変化の影響による急速な圧力変化が短時間内で起こり、それが新たな気泡を発生させる原因となるので好ましくない。従って、前記弁は開閉速度を調整できるものにして、開閉のスピードを遅くする方が良い。
【0017】
インクジェットヘッドとマニホールドとの間に配置された弁13としては、開閉制御が可能な電磁弁を使用し、電磁弁の操作エアーにより弁の開閉速度を調整できるようにする。気体の流量をコントロールするタイプの速度制御弁として使われる、一般のスピードコントローラーを使用して、電磁弁を操作することができる。上記の機構により、開閉制御のスピードと制御開始のタイミングとを制御することができ、開閉制御可能な弁13のそれぞれの開閉状態を個別に制御すれば、吐出圧力の変動を抑制でき、各インクジェットヘッドに必要な吐出圧力を安定して得ることができるので、複数のノズルからインクを押し出して洗浄するインクジェットヘッドの洗浄によって、ノズルの詰まりの原因となる気泡や乾燥インクの排除を容易に行うことができる。
【0018】
前記の開閉制御可能な弁の機構を実用的に運用するためには、各インクジェットヘッドとマニホールドとの間に配置された複数の弁13のそれぞれの開閉動作を最適にプログラムした制御系を準備して、開閉制御のスピードと制御開始のタイミングとを自動制御することが好ましい。上記のスピードコントローラーの制御に直結させれば、通常の自動制御の手法により、容易に制御することができる。
【0019】
次にカラーフィルタ用インクジェット印刷装置の構成の一例を図2に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0020】
図2において、インクジェットヘッド10とテーブル21とは相対的に位置が固定されており、また、基板22は、可動ステージ23に固定され、該可動ステージ23は、該テーブル21の上を移動することができる。前記インクジェットヘッド10のノズルから吐出されるインクは、可動ステージ23に設置された基板22に吐出される。
【0021】
たとえば、ディスプレイ用のカラーフィルタを製造する場合では、前記基板22上に、前記インクが吐出される。基板22上には、事前に、遮光層の機能を果たすブラックマトリックスが形成されている。
【0022】
前記基板は、主として透明基板のことであり、硝子基板、石英基板、プラスチック基板等、公知の透明基板材料を使用することができるが、透明性、強度、耐熱性、耐候性に優れており、容易に入手できる硝子基板を使うことが望ましい。
【0023】
前記ブラックマトリックスは、前記インクが吐出される際に、カラーフィルタの着色層となる各色のフィルタセグメント同士の隔壁としての機能もはたし、該フィルタセグメントの形成される位置の間に配置される。
【0024】
前記ブラックマトリックスは、樹脂組成物を含有する隔壁形成用の材料を含む。さらに、該隔壁形成用の材料に黒色の顔料を加えると、ブラックマトリックスの遮光性を増すことができ、表示画面のコントラストを向上することができる。
【0025】
例えば、フォトリソグラフィー法によって隔壁を形成する場合には、樹脂組成物は、感光性を付与した感光性樹脂組成物を用い、また、印刷法で形成する場合には、熱硬化性樹脂組成物を用いる。必要によって、さらに隔壁材料に、レベリング剤、連鎖移動剤、安定剤、界面活性剤、カップリング剤等を加えることができる。その他、樹脂バインダーとして、隔壁を基板に固着して固定すると共に、隔壁に耐インク性を付与するものを含む。バインダー樹脂としては、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、ヒドロキシル基等を含有しているものがあり、これらの樹脂バインダーは単独で用いても、2種類以上混合してもよい。また、隔壁材料に含フッ素化合物や含ケイ素化合物等の撥インク剤を適量添加することで、適度な撥インク性を持たせることができる。
【0026】
前記ブラックマトリックスが形成された基板22をのせた前記可動ステージ23は、前記テーブル21の上に設置され、該テーブル21上で縦方向のYまたはY’の方向に動くことができる。また、横方向のXまたは、X’の方向に動くことができる。その動きは制御装置24によって制御される。
【0027】
図2において、インクジェットヘッド10からのインクの吐出は、前記制御装置24によって制御される。また、前記可動ステージ23の位置情報などの情報により該可動ステージ23の移動と該インクの吐出とが同期して制御される。これらの制御により、基板上の前記ブラックマトリックスの間に該インクが精度良く吐出され、着色層であるフィルタセグメントが形成される。
【0028】
前記カラーフィルタの着色層である前記フィルタセグメントを形成するためのインクには溶剤と着色剤を含有する着色形成物との混合物を用いる。
【0029】
前記着色剤としては従来のカラーフィルタ製造に使用されている公知の顔料や染料のいずれも用いることができる。また、カラーフィルタの分光透過率を調整するために、複数の着色剤を組み合わせて用いることもできるが、溶剤を除くインクの全固形分の合計質量に占める着色剤の割合が3から70質量%であることが好ましい。インクに含まれる溶剤の含有量はインクに占める全固形分濃度が5から40質量%となるように調整するとよい。また、インクに含まれる着色剤以外の固形分としては、銀、銅等の金属粒子、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基を有する樹脂を挙げることができる。
【0030】
着色剤としての顔料には、有機または無機の顔料を、単独でまたは2種類以上混合して用いることができる。顔料は、発色性が高く、且つ耐熱性の高い顔料、特に耐熱分解性の高い顔料が好ましく、通常は有機顔料が用いられる。以下に、着色組成物に使用可能な有機顔料の具体例を、カラーインデックス番号で示す。
【0031】
赤色着色組成物には、例えばC.I.Pigment Red 7、14、41、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、81:4、146、168、177、178、179、184、185、187、200、202、208、210、246、254、255、264、270、272、279等の赤色顔料を用いることができ、黄色顔料を併用することもできる。黄色顔料としては、C.I. Pigment Yellow1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、126、127、128、129、138、147、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、199、198、213、214等が挙げられる。
【0032】
また緑色着色組成物には、例えばC.I.Pigment Green 7、10、36、37等の緑色顔料を用いることができ、黄色顔料を併用できる。黄色顔料としては、赤色着色組成物のところで挙げた顔料と同様のものが使用可能である。
【0033】
青色着色組成物には、例えばC.I.Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64等の青色顔料を用いることができ、紫色顔料を併用できる。紫色顔料としては、C.I.Pigment Violet 1、19、23、27、29、30、32、37、40、42、50等が挙げられる。
【0034】
また、顔料として無機顔料を用いることも可能であり、具体的には黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑等の金属酸化物粉、金属硫化物粉、金属粉等が挙げられる。無機顔料は、彩度と明度のバランスを取りつつ良好な塗布性、感度、現像性等を確保するために、有機顔料と組み合わせて用いられる。
【0035】
溶剤としては、例えばシクロヘキサノン、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチルベンゼン、エチレングリコールジエチルエーテル、キシレン、エチルセロソルブ、メチル−nアミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルケトン、石油系溶剤等が挙げられ、これらを単独でもしくは混合して用いる。
【0036】
図3は、インクジェットヘッドの洗浄により、ノズルの詰まりが解消する例を説明するための、インクジェットヘッドの断面模式図である。インクジェットヘッド10において、図3のように乾燥インク35や気泡36が噛むこと等によるノズルの詰まり、もしくは詰まりの予兆があった場合(a)、ノズル洗浄を実施する。ノズルの洗浄方法としては、まず、サブタンク3の大気開放部4を閉めて、インク供給タンク1への印加圧力11により、インクジェットヘッド10に送出圧力Zを印加し(b)、インクジェットヘッドのノズル開口部32からインクを押し出すことで、ノズル内部の乾燥インク35や気泡36を押し出されるインク33とともに除去する(c)。その後、インクジェットヘッド10と再び大気開放されたサブタンク3との水頭差を確保することで、インクジェットヘッドの液滴はノズル開口部32からノズル内部34に引いていき(d)、インクジェットヘッドのノズル表面の乾燥インク35や気泡36を完全に除去することができる。インクジェットヘッドのノズル表面の乾燥インク35や気泡36が完全に除去されると、各ノズルから吐出される均一量のインク37により(e)、その後は、基板に均一に塗布することができる。なお、上記水頭差を確保するとは、図1において、インクジェットヘッド10のノズル開口部とサブタンク内のインク5の上面との水頭差8を0または正とする状態であって、ノズル開口部のインクにかかる圧力が大気圧以下となり、図3(d)で0または負圧Z’がインクの引き込みを生じる状態を表す。
【0037】
図4は、インクジェットヘッドの洗浄が不完全で、ノズルの詰まりが解消しない例を説明するための、インクジェットヘッドの断面模式図である。このノズル洗浄において、乾燥インク35や気泡36がノズル内に残り除去できないと、図4(e)の各ノズルから吐出される不均一量のインク38のようにインクジェットヘッドのノズル毎の吐出液量が変わることを表しており、塗布された基板上に色むらが発生する。インクジェットヘッド10において、図4のように乾燥インク35や気泡36が噛むこと等によるノズルの詰まり、もしくは詰まりの予兆があった場合(a)、ノズル洗浄を実施する。ノズルの洗浄方法としては、まず、サブタンク3の大気開放部4を閉めて、インク供給タンク1への印加圧力11により、インクジェットヘッド10に送出圧力を印加するが、図3で説明したような詰まりの原因を除去できるだけの圧力がかからず、図3に示すZより小さい圧力Z−ΔZが印加すると(b)、インクジェットヘッドのノズル開口部32からインクを押し出す際に、ノズル内部の乾燥インク35や気泡36が押し出されず、インク33のみが押し出される(c)。その後、インクジェットヘッド10と再び大気開放されたサブタンク3との水頭差を確保することで、インクジェットヘッドの液滴はノズル開口部32からノズル内部34に引いていくが、ノズル内には依然として乾燥インク35や気泡36が残ることとなり(d)、インクジェットヘッドの洗浄は不完全である。その結果、洗浄後に各ノズルから吐出される不均一量のインク38により(e)、基板に均一に塗布することができない。
【0038】
上記のように、インクジェットヘッドの洗浄が不完全で、ノズルの詰まりが解消しない例が従来の洗浄では度々発生することがあった。即ち、インクジェットヘッドがマニホールドで複数に分岐している場合、インクジェットヘッドのノズルから押し出す圧力が小さくなる。そのため、ノズル洗浄の際にノズル内部の乾燥インクや気泡を完全に押し出すことが出来ない。本発明では、マニホールドと各インクジェットヘッドの間に開閉制御可能な弁15を備え、インク供給タンクに送出圧力を印加する際に順番に弁の開閉を切り替えることで、すべてのヘッドのノズルにおいてインクを押し出すのに必要な圧力を得ることができる。
【0039】
しかしながら、インクジェットヘッドのノズルに必要な圧力を得ることができたとしても、マニホールドと各インクジェットヘッドの間の弁の開閉を順に切り替える際に、バルブの容積変化で配管内に0.3MPa程度の圧力変化が起こり、その圧力変化が原因でキャビテーションが起こり、新たな気泡を発生し、結果としてノズル内部に気泡が残存することで、インクジェットノズル毎の吐出液量が変わり、色むらが発生してしまう。そのため、操作エアーにスピードコントローラーを使用し、開閉制御の速度を遅くして、開閉動作に要する時間を約1,000msと長くすることにより、バルブの開閉による圧力変化を0.05MPa以下にすることができ、ノズル洗浄後にも乾燥インクや気泡が残らないため、インクジェットヘッドのノズル毎の吐出液量に変化が生ぜず、色むらのないカラーフィルタを製造することができる。
【実施例】
【0040】
以下に本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0041】
本発明の実施例として、本発明によるインクジェットヘッドの洗浄方法を用いたインクジェット印刷装置によりカラーフィルタを作製した。また、比較例として、本発明のインクジェット印刷装置を組み込まないインクジェット印刷装置でカラーフィルタを作製して、それぞれの色むらの発生の状態を比較して、本発明の効果を評価した。
【0042】
ブラックマトリックスはフォトリソグラフィー法を用いて作製した。基板として無アルカリガラスを用いた。基板上に、フッ素樹脂を含む感光性樹脂組成物を全面に、膜厚2μmの薄膜状に塗布した。その後、格子状のパターンを有するフォトマスクを用いて露光、その後、アルカリにて現像を行い、この基板をオーブンに入れ熱硬化処理を行うことで、ブラックマトリックスを作製した。このブラックマトリックスのOD値(光学濃度)を測定したところ、充分な遮光性を有することから、いずれも光遮光層として使用できることを確認した。
【0043】
インクとして、溶剤を除くインクの全固形分の合計質量に占める顔料の割合が50質量%で必要な分光特性となるように調整し、溶剤をインクに締める全固形分濃度が30質量%となるように調整した。
【0044】
インクジェット印刷装置で使用されるインクは、インク供給タンクに入っており、インク供給用チューブを通してサブタンクに供給される。このとき、サブタンクにおけるインクの液面高さがインクジェットヘッドのノズル開口部と同じ高さになるように、インク供給タンクへの加圧によりインク供給タンクからの供給量を調整する。また、サブタンクは大気開放部により大気に開放されており、大気圧となる。サブタンクは、インク供給用チューブでマニホールドへ繋がり、マニホールドからインクチューブが分岐して40個のインクジェットヘッドに接続されている。インクジェットヘッドの複数のノズルからインクを押し出して洗浄する際には、インク供給タンクに送出圧力を50kPa印加して、インクをインクジェットヘッドに送出するようにした。マニホールドと各インクジェットヘッドの間に開閉制御が可能な電磁弁を使用し、操作エアーにスピードコントローラーを用いた。
【0045】
上記作製したブラックマトリックス基板に、インクジェット印刷装置を用いて赤、青、緑からなる着色インクの吐出を行った。吐出された基板を240℃、20分オーブンで熱処理することにより、カラーフィルタを得た。得られたカラーフィルタを蛍光灯の光源を用いて、着色層形成領域をCCDカメラで撮影し画像として記録した。その後、この画像の濃淡分布を解析し、輝度分布として算出し、着色層形成領域の輝度が大きい場合には、その箇所のインク吐出量を少なく調整し、むらのない吐出条件の調整を行った。
【0046】
(カラーフィルタの作製)
上記作製したブラックマトリックス基板に、インクジェット印刷装置を用いて赤、青、緑からなる着色インクをそれぞれの基板に上記調整されたむらのない吐出条件に基づいて吐出を行った。吐出された基板を240℃、20分オーブンで熱処理することにより、むら不良の無いカラーフィルタを得た。
【0047】
連続したカラーフィルタ作製中に、不吐出等の発生により、インクジェットノズル洗浄の信号が出されると、インクジェットヘッドが洗浄装置へ移動を行う。インク供給タンクを加圧し、インクジェットヘッドのノズルからインクを押し出すことで、ノズル内部の乾燥インクや気泡を除去する。その際、電磁弁の制御エアーをスピードコントローラーを用いて調整し、電磁弁が開閉する際の配管内の圧力変化を0.05MPa以下にした。
【0048】
その後、インクジェットヘッドと大気開放されたサブタンクとの水頭差を確保することで、インクジェットヘッドの液滴はノズル内部に引いていく。その後、布で拭き取ることで、インクジェットノズル表面の乾燥インクや余分なインクを除去することができた。インクジェットノズルの洗浄完了の信号が出されると、着色層未塗工のブラックマトリックス上に移動し、再びインクジェット印刷装置を用いて赤、青、緑からなる着色インクをそれぞれの基板に上記吐出条件に基づいて吐出を行い、240℃、20分オーブンで熱処理することにより、カラーフィルタを得た。100枚のインクジェット印刷を実施後、加圧インク押し出しにより、インクジェットヘッドを洗浄した。不吐出の発生原因の乾燥インクや気泡を除去することができたため、ノズル毎の吐出量が初期と変わらず、色むら不良のない高品質なカラーフィルタを引き続き得ることができた。
【0049】
(比較例)
マニホールドと各インクジェットヘッドとの間に開閉制御が可能な弁がない装置を用いた場合、もしくは、弁の開閉速度を調整しなかった場合、弁の開閉動作に要する時間は50msと短く、加圧インクの押し出しによるインクジェットヘッドの洗浄の際に、ノズル内部の乾燥インクや気泡を押し出すことができずに、各ノズルから出るインク吐出量が変わるため、色むら不良が発生し、高品質なカラーフィルタを得ることが出来なかった。
【符号の説明】
【0050】
1・・・・インク供給タンク
2・・・・インク
3・・・・サブタンク
4・・・・サブタンクの大気開放部
5・・・・サブタンク内のインク
6・・・・インク供給タンクからサブタンクへと通じる経路
7・・・・サブタンクからインクジェットヘッドへと通じる経路
8・・・・インクジェットヘッドとサブタンクとの水頭差
9・・・・マニホールド
10・・・インクジェットヘッド
11・・・インク供給タンクへの印加圧力
12・・・マニホールドから分岐しているインク供給チューブ
13・・・開閉制御可能な弁
21・・・テーブル
22・・・基板
23・・・可動ステージ
24・・・制御装置
32・・・ノズル開口部
33・・・押し出されたインク
34・・・ノズル内部
35・・・乾燥インク
36・・・気泡
37・・・各ノズルから吐出される均一量のインク
38・・・各ノズルから吐出される不均一量のインク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク供給タンクとインク供給タンクに接続されたインクジェットヘッドと、その経路内に少なくとも1つ以上の開閉可能な弁をもつインクジェット印刷装置において、
上記開閉可能な弁の開閉速度を調整できることを特徴とするインクジェット印刷装置
【請求項2】
請求項1に記載の開閉可能な弁に電磁弁を使用し、電磁弁の操作エアーにより開閉速度を調整できることを特徴とするインクジェット印刷装置
【請求項3】
インク供給タンクに接続されたマニホールド部より複数のインクジェットヘッドにインクを供給し、その経路内に少なくとも1つ以上の開閉可能な弁をもつインクジェット印刷装置において、上記マニホールド部と各インクジェットヘッドの間に開閉可能な弁を備えていることを特徴とするインクジェット印刷装置
【請求項4】
請求項3に記載の開閉可能な弁に電磁弁を使用し、電磁弁の操作エアーにより開閉速度を調整できることを特徴とするインクジェット印刷装置
【請求項5】
インクジェットヘッドの複数のノズルからインクを押し出して洗浄するインクジェットヘッドの洗浄方法であって、前記インク押し出し時に、前記マニホールド部と各インクジェットヘッドとの間に備えられた前記弁の開閉のタイミングを順次ずらせて開閉するとともに、各弁の開閉速度を制御することを特徴とする請求項3〜4に記載のインクジェットヘッドの洗浄方法。
【請求項6】
インク供給タンクを加圧してインクジェットヘッドの複数のノズルからインクを押し出して洗浄するインクジェットヘッドの洗浄方法であって、
前記マニホールド部と各インクジェットヘッドとの間に備えられた前記弁を閉じたままインク供給タンクの加圧を保持した後に、前記弁を開けてインクを押し出すことを特徴とする請求項1〜5に記載のインクジェットヘッドの洗浄方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の方法を用いて製造されたことを特徴とするカラーフィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−131582(P2010−131582A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105015(P2009−105015)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】