説明

インクジェット用導電性インク、導電性パターンおよび導電体

【課題】本発明は、導電性の高い導電膜や導電性パターン等を形成可能なインクジェット用導電性インクを提供する。
【解決手段】本発明のインクジェット用導電性インクは、導電性粒子と、イオン性液体と、バインダ樹脂と、溶剤とを含む。イオン性液体は、例えば、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、ピロリジニウム塩、ホスホニウム塩、およびアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の塩を含む。導電性粒子の平均粒径は、1nm〜200nmであると好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用導電性インク、これを用いて形成された導電性パターンおよび導電体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、導電性インクを用いたインクジェット印刷が注目されている。インクジェット印刷により導電膜や導電性パターンを形成できれば、インクジェット印刷を、例えば、半導体装置等の電子部品の分野に適用でき、例えば、プリント基板等の配線パターンを容易に形成できからである。
【0003】
スクリーン印刷法等により基材に塗布される従来の導電性塗料は、主として、例えば、溶媒と、この溶媒に分散されたインジウム錫酸化物(ITO)、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、銀、ニッケル、金、銀、銅、または白金等の導電性微粒子とを含んでいる。しかし、この導電性塗料は粘度が高いため、インクジェット印刷には用いることができない。また、インクジェット印刷を可能とするために、導電性微粒子の濃度を下げて導電性塗料の粘度を下げると、導電性塗料の安定性が悪化し2相に分離する等の問題が生じる。
【0004】
ところで、インクジェット用インクの一成分としてイオン性液体を用いることは既に知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。特許文献1には、イオン性液体と非イオン界面活性剤を含む分散体が開示され、特許文献2には、カーボンナノチューブとイオン性液体からなるインクジェット用インク(光熱変換材料)が開示され、特許文献3には、水と色素とイオン性液体からなるインクジェット用インクが開示されている。しかし、特許文献1〜3には、いずれも、インクジェット用導電性インクについては記載も示唆もされていない。
【特許文献1】特開2003−186138号公報
【特許文献2】特開2004−276535号公報
【特許文献3】米国特許第6048388号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のとおり、導電性の高い導電膜や導電性パターン等を形成可能なインクジェット用導電性インクについては、いまだ開発されていない。
【0006】
本発明は、導電性の高い導電膜や導電性パターン等を形成可能なインクジェット用導電性インクを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のインクジェット用導電性インクは、導電性粒子と、イオン性液体と、バインダ樹脂と、溶剤とを含んでいる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、導電性の高い導電膜や導電パターンを形成可能なインクジェット用導電性インクを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(実施形態1)
実施形態1では、本発明のインクジェット用導電性インクの一例について説明する。
【0010】
本実施形態のインクジェット用導電性インクは、導電性粒子と、イオン性液体と、バインダ樹脂と、溶剤とを含んでいる。
【0011】
本実施形態のインクジェット用導電性インクを用いれば、後述する実施例において示すように、インクジェット印刷により、導電性の優れた導電膜や導電性パターン(以下、「導電膜等」とも言う。)を提供できる。これはイオン性液体が、常温常圧で液体であり、蒸気圧がないかあるいは極めて小さく、かつイオン伝導性を有することに起因しているものと思われる。イオン性液体は、導電膜等中において導電性粒子間に存在することにより、導電膜等の導電性を向上させているものと思われる。
【0012】
例えば、導電性粒子の含有率が高い従来の導電性塗料(イオン性液体は含まない)を塗布することにより形成された導電膜中には、隣り合う導電性粒子同士が接触しない部分が多く存在する。本実施形態のインクジェット用導電性インクを用いて形成された導電膜では、隣り合う導電性粒子間にイオン性液体が存在することにより、導電性粒子間の導通が補助されているものと思われる。
【0013】
インクジェット用導電性インクを基材の一方の主面に印刷(塗布)して、基材上に導電膜を形成する場合、導電性の高い導電膜を得るためには、例えば、下記の2通りの方法が考えられる。1つ目は、インクジェット用導電性インクに含まれる導電性粒子の配合割合(体積割合)を高める方法であり、2つ目は、平均粒径の大きい導電性粒子を用いる方法である。
【0014】
インクジェット用導電性インクに含まれる導電性粒子の配合割合を高めれば、導電膜における導電性粒子の占有体積が大きくなり、導電膜の導電性が向上する。
【0015】
平均粒径の大きい導電性物粒子を用いると、導電性粒子内の電子伝導距離が長くなり、かつ、導電性粒子間の接触点が少なる。そのため、導電性粒子間の接触抵抗が小さくなり、導電膜の導電性が向上する。
【0016】
しかし、導電性粒子の配合割合が高すぎると(導電膜中の導電性粒子の占有体積が大きすぎると)、導電膜中のバインダ樹脂の量が少なくなり、導電性粒子同士の接合強度が低くなる。これにより、導電膜の強度が低下し、ひび割れ等が生じる。また、バインダ樹脂と基材との接合強度も低くなり、導電膜が基材から剥がれやすくなる。
【0017】
導電性粒子の平均粒径が大きすぎると、導電性粒子がインクジェット用導電性インク中において沈降等するため、インクジェット用導電性インクの安定性が悪くなる。また、導電性粒子の平均粒径が大きすぎると、ヘットを目詰りさせる恐れがある。
【0018】
本実施形態のインクジェット用導電性インクは、イオン性液体を含むことによって導電性が向上しているので、導電性粒子の配合割合、または導電性粒子の平均粒径について、選択の自由度が高い。よって、本実施形態のインクジェット用導電性インクによれば、導電性が高く、機械的強度の高い導電膜や導電性パターンを提供できる。
【0019】
また、本実施形態のインクジェット用導電性インクを用いて作製される導電膜や導電性パターンは、イオン性液体を含んでいるので、例えば、スパッタリング法、または蒸着法で形成された従来の導電膜よりも可撓性が高い。よって、本実施形態のインクジェット用導電性インクを用いれば、生産性に優れ、大面積化が容易に行え、特性安定性に優れたデバイス素子等を提供することが可能となる。
【0020】
導電性粒子としては、例えば、金粒子、銀粒子、白金粒子、銅粒子、酸化亜鉛粒子、酸化アンチモン粒子、粒子A、粒子B、粒子C、粒子D、および粒子Eからなる群から選ばれる少なくとも1種の粒子を用いることが好ましい。
【0021】
尚、粒子Aは、スズ、亜鉛及びアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の原子が酸化インジウムに添加された複合酸化インジウム粒子であり、粒子Bは、金粒子、銀粒子、銅粒子、およびニッケル粒子からなる群から選ばれる1つで被覆されたシリカ粒子であり、粒子Cは、金粒子、銀粒子、銅粒子、およびニッケル粒子からなる群から選ばれる1つで被覆されたベンゾグアナミン(Benzoguanamine)樹脂粒子であり、粒子Dは、金粒子、銀粒子、銅粒子、およびニッケル粒子からなる群から選ばれる1つで被覆されたポリメタクリル樹脂粒子であり、粒子Eは、スズおよびアルミニウムが、酸化インジウムと酸化亜鉛とを含む複合粒子に添加された、スズ亜鉛アルミニウム含有酸化インジウム粒子である。
【0022】
なかでも、粒子Aは、可視光についての透光性および導電性が優れているので、高い透光性および高い導電性が要求される用途に対して好適である。また、上記粒子は亜鉛を含んでいるので、紫外線遮蔽用途に適した導電膜等を作製できる。
【0023】
尚、本願において、「添加」とは、所定の結晶格子の原子が、他の原子によって置換されること、または、所定の格子欠陥に、原子がドープされることを意味する。
【0024】
可視光について高い透光性が要求される用途に対しては、本実施形態のインクジェット用導電性インクに含まれる導電性粒子の平均粒径は、光の波長の下限値(約400nm)の1/2よりも小さく、例えば、200nm以下であると好ましい。一方、平均粒径が小さくなりすぎると、粒子同士が凝集して凝集体を生成しやすく、導電性粒子が均一性よく分散したインクを得ることが困難となる。そのため、導電性粒子の平均粒径は、1nm以上であると好ましい。導電膜の透光性と導電性との両立を考慮すると、導電性粒子の平均粒径は、10nm〜100nmであるとより好ましい。
【0025】
このように、本実施形態のインクジェット用導電性インクにおいて、導電性粒子の種類や平均粒径を選択すれば、導電性のみならず、透光性も優れた導電膜や導電性パターンを提供できる。
【0026】
尚、本願において、平均粒径は、上位、下位各々10%を除いた中位80%の一次粒子の平均粒径であり、透過型電子顕微鏡を用いて測定した値である。
【0027】
導電性粒子が、粒子Aである場合、スズ、亜鉛およびアルミニウムからなる群から選ばれる1種以上の原子の含有量は、インジウム100molに対して、1mol%〜200mol%であると好ましい。含有量が少なすぎまたは多すぎると、粒子の導電性が低下するからである。
【0028】
また、導電性粒子として粒子Eを用いれば、透光性、導電性および紫外線遮蔽性が優れた導電膜を作製できる。粒子Eにおいて、スズ、亜鉛およびアルミニウムの含有量は、インジウム100molに対して、それぞれ3mol%〜20mol%、10mol%〜200mol%、1mol%〜15mol%であると好ましい。
【0029】
尚、粒子Eについて、「複合」とは、結晶構造を変えることなく、互いに異なる材料が固溶体となっていることをいう。
【0030】
導電性粒子の形状について、特に制限はなく、略球状の他に、扁平状、紡錘状、棒状等であってもよい。
【0031】
導電性粒子は、市販のものを用いていてもよいが、例えば、特開2004−307221号に記載の方法で作製されたものを用いてもよい。
【0032】
イオン性液体としては、特に制限はないが、例えば、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、ピロリジニウム塩、ホスホニウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0033】
イミダゾリウム塩としては、例えば、1−エチル3−メチルイミダゾリニウムブロマイド、1−エチル3−メチルイミダゾリニウムヘキサフルオロフォスフェイト、1−エチル3−メチルイミダゾリニウムヘキサフルオロアンチモネイト、1−エチル3−メチルイミダゾリニウムテトラフルオロボレート、1−エチル3−メチルイミダゾリニウムトリフルオロメタンスルホネイト、1−エチル3−メチルイミダゾリニウムビストリフルオロメタンスルホンイミデイト、1−エチル3−メチルイミダゾリニウムメタンスルフェイト、1−エチル3−メチルイミダゾリニウムトシレイト、1−エチル3−メチルイミダゾリニウムビス[サリシレート(2)]ボレート、1−エチル3−メチルイミダゾリニウムコバルトテトラカルボニル、1−ブチル3−メチルイミダゾリニウムクロライド、1−ブチル3−メチルイミダゾリニウムヘキサフルオロフォスフェート、1−ブチル3−メチルイミダゾリニウムヘキサフルオロアンチモネート、1−ブチル3−メチルイミダゾリニウムテトラフルオロボレート、1−ブチル3−メチルイミダゾリニウムトリフルオロメタンスルホネイト、1−ブチル3−メチルイミダゾリニウムビストリフルオロメタンスルホンイミデイト、1−ブチル3−メチルイミダゾリニウムメタンスルフェイト、1−ブチル3−メチルイミダゾリニウムトシレイト、1−ブチル3−メチルイミダゾリニウムビス[サリシレート(2)]ボレート、1−ブチル3−メチルイミダゾリニウムコバルトテトラカルボニル、1−ヘキシル3−メチルイミダゾリニウムクロライド、1−ヘキシル3−メチルイミダゾリニウムヘキサフルオロフォスフェート、1−ヘキシル3−メチルイミダゾリニウムヘキサフルオロアンチモネート、1−ヘキシル3−メチルイミダゾリニウムテトラフルオロボレート、1−ヘキシル3−メチルイミダゾリニウムトリフルオロメタンスルホネイト、1−ヘキシル3−メチルイミダゾリニウムビストリフルオロメタンスルホンイミデイト、1−ヘキシル3−メチルイミダゾリニウムメタンスルフェイト、1−メチル3−オクチルイミダゾリニウムクロライド、1−メチル3−オクチルイミダゾリニウムヘキサフルオロフォスフェート、1−メチル3−オクチルイミダゾリニウムヘキサフルオロアンチモネート、1−メチル3−オクチルイミダゾリニウムテトラフルオロボレート、1−メチル3−オクチルイミダゾリニウムトリフルオロメタンスルホネイト、1−メチル3−オクチルイミダゾリニウムビストリフルオロメタンスルホンイミデイト、1−メチル3−オクチルイミダゾリニウムメタンスルフェイト、1−メチルN−ベンジルイミダゾリニウムクロライド、1−メチルN−ベンジルイミダゾリニウムヘキサフルオロフォスフェート、1−メチルN−ベンジルイミダゾリニウムヘキサフルオロアンチモネート、1−メチルN−ベンジルイミダゾリニウムテトラフルオロボレート、1−メチルN−ベンジルイミダゾリニウムトリフルオロメタンスルホネイト、1−メチルN−ベンジルイミダゾリニウムビストリフルオロメタンスルホンイミデイト、1−メチルN−ベンジルイミダゾリニウムメタンスルフェイト、1−メチル3−(3-フェニルプロピル)イミダゾリニウムクロライド、1−メチル3−(3-フェニルプロピル)イミダゾリニウムヘキサフルオロフォスフェート、1−メチル3−(3-フェニルプロピル)イミダゾリニウムヘキサフルオロアンチモネート、1−メチル3−(3-フェニルプロピル)イミダゾリニウムテトラフルオロボレート、1−メチル3−(3-フェニルプロピル)イミダゾリニウムトリフルオロメタンスルホネイト、1−メチル3−(3-フェニルプロピル)イミダゾリニウムビストリフルオロメタンスルホンイミデイト、1−メチル3−(3−フェニルプロピル)イミダゾリニウムメタンスルフェイト、1−ブチル2,3−ジメチルイミダゾリニウムクロライド、1−ブチル2,3−ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロフォスフェート、1−ブチル2,3−ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロアンチモネート、1−ブチル2,3−ジメチルイミダゾリニウムテトラフルオロボレート、1−ブチル2,3−ジメチルイミダゾリニウムトリフルオロメタンスルホネイト、1−ブチル2,3−ジメチルイミダゾリニウムビストリフルオロメタンスルホンイミデイト、1−ブチル2,3−ジメチルイミダゾリニウムメタンスルフェイト、1−エチル2,3−ジメチルイミダゾリニウムクロライド、1−エチル2,3−ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロフォスフェート、1−エチル2,3−ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロアンチモネート、1−エチル2,3−ジメチルイミダゾリニウムテトラフルオロボレート、1−エチル2,3−ジメチルイミダゾリニウムトリフルオロメタンスルホネイト、1−エチル2,3−ジメチルイミダゾリニウムビストリフルオロメタンスルホンイミデイト、1−エチル2,3−ジメチルイミダゾリニウムメタンスルフェイト等が挙げられる。
【0034】
ピリジニウム塩としては、例えば、N−ブチルピリジニウムクロライド、N−ブチルピリジニウムヘキサフルオロフォスフェート、N−ブチルピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、N−ブチルピリジニウムテトラフルオロボレート、N−ブチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネイト、N−ブチルピリジニウムビストリフルオロメタンスルホンイミデイト、N−ブチルピリジニウムメタンスルフェイト、3−メチル−N−ブチルピリジニウムクロライド、3−メチル−N−ブチルピリジニウムヘキサフルオロフォスフェート、3−メチル−N−ブチルピリジニウムヘキサフルオロアンチモネート、3−メチル−N−ブチルピリジニウムテトラフルオロボレート、3−メチル−N−ブチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネイト、3−メチル−N−ブチルピリジニウムビストリフルオロメタンスルホンイミデイト、3−メチル−N−ブチルピリジニウムメタンスルフェイト等が挙げられる。
【0035】
ピロリジニウム塩としては、例えば、1−エチル1−メチルピロリジニウムブロマイド、1−エチル1−メチルピロリジニウムヘキサフルオロフォスフェイト、1−エチル1−メチルピロリジニウムヘキサフルオロアンチモネイト、1−エチル1−メチルピロリジニウムテトラフルオロボレート、1−エチル1−メチルピロリジニウムトリフルオロメタンスルホネイト、1−エチル1−メチルピロリジニウムビストリフルオロメタンスルホンイミデイト、1−エチル1−メチルピロリジニウムメタンスルフェイト、1−ブチル1−メチルピロリジニウムブロマイド、1−ブチル1−メチルピロリジニウムヘキサフルオロフォスフェイト、1−ブチル1−メチルピロリジニウムヘキサフルオロアンチモネイト、1−ブチル1−メチルピロリジニウムテトラフルオロボレート、1−ブチル1−メチルピロリジニウムトリフルオロメタンスルホネイト、1−ブチル1−メチルピロリジニウムビストリフルオロメタンスルホンイミデイト、1−ブチル1−メチルピロリジニウムメタンスルフェイト等が挙げられる。
【0036】
アンモニウム塩としては、例えば、テトラnブチルアンモニウムクロライド、テトラnブチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
【0037】
ホスホニウム塩としては、例えば、テトラnブチルホスホニウムブロマイド等が挙げられる。
【0038】
バインダ樹脂について特に制限はないが、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、ブチラール樹脂、繊維素系樹脂(繊維素(例えばセルロース)を化学的に変成したもの)等が好ましい。なかでも、可視光に対して透光性の高いアクリル樹脂等が特に好ましい。
【0039】
本実施形態のインクジェット用導電性インクにおいて、イオン性液体は、導電性粒子100重量部に対して、0.01重量部〜10重量部含まれていると好ましい。イオン性液体が多すぎると、導電性向上の効果が不十分となり、多すぎるとブリードアウトする恐れがあるからである。
【0040】
インクジェット用導電性インクにおいて、バインダ樹脂は、導電性粒子100重量部に対して、50〜500重量部含まれていると好ましい。バインダ樹脂が多すぎると、導電膜等の導電性が低下するからである。バインダ樹脂の含有量は、さらには、50〜300重量部であるとより好ましい。
【0041】
溶剤について、特に制限はないが、例えば、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、クレゾール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、水等が用いられる。これらは、単独で用いてもよいし2種以上を混合して用いてもよい。なかでも、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、イソプロピルアルコールおよび水からなる群から選ばれる1種以上を用いることがより好ましい。
【0042】
本実施形態のインクジェット用導電性インクは、必要に応じて、着色剤等を含んでいてもよい。着色剤は、有機顔料、無機顔料、染料のいずれであっても良い。有機顔料としては、例えば、キナクドリン、ペリレンオレンジ等が、無機顔料としては、例えば、酸化チタン、コバルトーブルー等が、染料としては、アゾ染料、キノリン染料、アントラキノン染料等が用いられる。
【0043】
本実施形態のインクジェット用導電性インクは、必要に応じて、保湿剤、電荷調整剤、防黴剤、分散剤、消泡剤等を含んでいてもよい。これらには公知のものを使用すればよい。
【0044】
本実施形態のインクジェット用導電性インクは、CRT、PDP,LCD、OEL等のディスプレイデバイスやタッチパネル等の表示面に用いられる、帯電防止膜、電磁波遮蔽膜、反射防止膜の材料として有用であるが、各種表示装置や電池等に用いられる電極の材料としても有用である。また、本実施形態のインクジェット用導電性インクは、例えば、半導体装置等の電子部品の分野でも用いることができ、例えば、プリント基板等の配線パターンの材料として用いることも可能である。
【0045】
(実施形態2)
実施形態2では、本発明の導電膜の一例、導電体の一例について説明する。
【0046】
図1に示すように、本実施形態の導電体1は、基材2と、基材2の一方の主面に設けられた導電膜3とを含んでいる。
【0047】
基材2としては、可視光に対して光透過性を有し、平面を有していれば特に制限はないが、例えば、ガラス、セラミック、または樹脂を含む、フィルムまたはシート等が用いられる。樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、あるいは、ポリカーボネイト等が用いられる。可撓性を有する基材2を用いれば、可撓性を有する導電体1を提供できる。基材2の厚みは、導電体1の用途により異なるが、導電体1が、例えば、帯電防止膜、電磁波遮蔽膜、または反射防止膜等である場合は、50μm〜500μm程度が適当である。
【0048】
導電膜3は、実施形態1のインクジェット用導電性インクを用いたインクジェット印刷により形成されている。
【0049】
本実施形態の導電体1の製造方法では、インクジェット用導電性インクを用いたインクジェット印刷により導電膜3を形成するので、例えば、スパッタリング法、または蒸着法を用いる場合よりも、大量生産に適し、比較的簡便であり、低コスト化を実現できる。
【0050】
導電膜3の表面電気抵抗は、低ければ低いほど好ましいが、導電体1の用途が、例えば、帯電防止膜、電磁波遮蔽膜、または反射防止膜等である場合、5000Ω/□以下、さらには、3000Ω/□以下であると好ましい。
【0051】
導電体1の用途が、例えば、高い透光性が要求される用途(例えば、帯電防止膜、電磁波遮蔽膜、または反射防止膜等)である場合、導電膜側を光入射側として測定した導電体の全光透過率は、高ければ高いほど好ましいが、例えば、70%以上、さらには、80%以上であると好ましい。
【0052】
以下、実施例において本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されない。尚、実施例および比較例において、表面電気抵抗は下記の方法に従って測定した。
【0053】
[表面電気抵抗] 表面電気抵抗は、三菱化学(株)製の抵抗率計ロレスターGPを用いて、四端子法により測定した。電圧端子間距離は5mmとした。表面電気抵抗の値が小さいほど、導電性が高いことを意味する。
【実施例1】
【0054】
下記材料をサンドミルにて1時間分散混合して、インクジェット用導電性インクを得た。
【0055】
ITO粉末(平均粒径10nm) 100重量部
ポリビニルピロリドン樹脂(ISP社製 PVP K−30) 200重量部
1−エチル3−メチルイミダゾリニウムブロマイド 5重量部
ヘキサンジオール 50重量部
水 2000重量部
イソプロピルアルコール 500重量部
基材として、透明PETフィルム(厚み:100μm)を用意し、基材の一方の主面上に上記インクジェット用導電性インクをインクジェットプリンタ(ピエゾ式)により印刷した。次いで、印刷されたインクジェット用導電性インクを乾燥して、厚さ1μmの導電膜を含む導電体を得た。
【0056】
上記導電膜の表面電気抵抗は、3000Ω/□であった。
【実施例2】
【0057】
下記材料をサンドミルにて1時間分散混合して、インクジェット用導電性インクを得た。
【0058】
銀コロイド溶液(10wt%水溶液 平均粒径10nm) 1000重量部
ポリビニルピロリドン樹脂(ISP社製 PVP K−30) 200重量部
1−エチル3−メチルイミダゾリニウムブロマイド 5重量部
ヘキサンジオール 50重量部
水 2000重量部
イソプロピルアルコール 500重量部
基材として、透明PETフィルム(厚み:100μm)を用意し、基材の一方の主面上に上記インクジェット用導電性インクをインクジェットプリンタ(ピエゾ式)により印刷した。次いで、印刷されたインクジェット用導電性インクを乾燥して、厚さ1μmの導電膜を含む導電体を得た。
【0059】
上記導電膜の表面電気抵抗は、10Ω/□であった。
【実施例3】
【0060】
下記材料をサンドミルにて1時間分散混合して、インクジェット用導電性インクを得た。
【0061】
金コロイド溶液(10wt%水溶液 平均粒径7nm) 1000重量部
ポリビニルピロリドン樹脂(ISP社製 PVP K−30) 200重量部
1−エチル3−メチルイミダゾリニウムブロマイド 5重量部
ヘキサンジオール 50重量部
水 2000重量部
イソプロピルアルコール 500重量部
基材として、透明PETフィルム(厚み:100μm)を用意し、基材の一方の主面上に上記インクジェット用導電性インクをインクジェットプリンタ(ピエゾ式)により印刷した。次いで、印刷されたインクジェット用導電性インクを乾燥して、厚さ1μmの導電膜を含む導電体を得た。
【0062】
上記導電膜の表面電気抵抗は、5Ω/□であった。
【実施例4】
【0063】
下記材料をサンドミルにて1時間分散混合して、インクジェット用導電性インクを得た。
【0064】
白金コロイド溶液(10wt%水溶液 平均粒径5nm) 1000重量部
ポリビニルピロリドン樹脂(ISP社製 PVP K−30) 200重量部
1−エチル3−メチルイミダゾリニウムブロマイド 5重量部
ヘキサンジオール 50重量部
水 2000重量部
イソプロピルアルコール 500重量部
基材として、透明PETフィルム(厚み:100μm)を用意し、基材の一方の主面上に上記インクジェット用導電性インクをインクジェットプリンタ(ピエゾ式)により印刷した。次いで、印刷されたインクジェット用導電性インクを乾燥して、厚さ1μmの導電膜を含む導電体を得た。
【0065】
上記導電膜の表面電気抵抗は、10Ω/□であった。
【実施例5】
【0066】
実施例1において用いた1−エチル3−メチルイミダゾリニウムブロマイドに代えてN−ブチルピリジニウムヘキサフルオロフォスフェートを用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚さ1μmの導電膜を含む導電体を作製した。
【0067】
上記導電膜の表面電気抵抗は、3100Ω/□であった。
【実施例6】
【0068】
実施例1において用いた1−エチル3−メチルイミダゾリニウムブロマイドに代えて1−エチル1−メチルピロリジニウムブロマイドを用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚さ1μmの導電膜を含む導電体を作製した。
【0069】
上記導電膜の表面電気抵抗は、3300Ω/□であった。
【実施例7】
【0070】
実施例1において用いた1−エチル3−メチルイミダゾリニウムブロマイドに代えてテトラnブチルアンモニウムクロライドを用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚さ1μmの導電膜を含む導電体を作製した。
【0071】
上記導電膜の表面電気抵抗は、4000Ω/□であった。
【実施例8】
【0072】
実施例1において用いた1−エチル3−メチルイミダゾリニウムブロマイドに代えてテトラnブチルホスホニウムブロマイドを用いたこと以外は実施例1と同様にして、厚さ1μmの導電膜を含む導電体を作製した。
【0073】
上記導電膜の表面電気抵抗は、3400Ω/□であった。
【0074】
(比較例1)
1−エチル3−メチルイミダゾリニウムブロマイドを用いないこと以外は実施例1と同様にして、厚さ1μmの導電膜を含む導電体を作製した。
【0075】
上記導電膜の表面電気抵抗は、18000Ω/□であった。
【0076】
実施例1〜8および比較例1のいずれにおいても、インクジェットプリンタのヘッドの目詰まりは生じなかった。
【0077】
また、実施例1〜8と比較例1とを比較すると、イオン性液体を含むインクジェット用導電性インクを用いて作製された導電膜(実施例1〜8)では、イオン性液体を含まないインクジェット用導電性インクを用いて作製された導電膜(比較例1)よりも、表面電気抵抗が低い。この結果から、インクジェット用導電性インクにイオン性液体が含まれていると、これを用いて作製された導電膜の導電性が向上することが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明のインクジェット用導電性インクは、導電性の優れた導電膜や導電体を提供できるので、例えば、CRT、PDP,LCD、OEL等のディスプレイデバイスやタッチパネル等の表示面に用いられる、帯電防止膜、電磁波遮蔽膜、反射防止膜、または各種表示装置や電池等に用いられる電極の材料としても有用である。また、本実施形態のインクジェット用導電性インクは、例えば、半導体装置等の電子部品の分野でも用いることができ、例えば、プリント基板等の配線パターンの材料として用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本実施形態の導電体の一例を示した断面図
【符号の説明】
【0080】
1 導電体
2 基材
3 導電膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性粒子と、イオン性液体と、バインダ樹脂と、溶剤とを含むインクジェット用導電性インク。
【請求項2】
前記導電性粒子は、金粒子、銀粒子、白金粒子、銅粒子、酸化亜鉛粒子、酸化アンチモン粒子、粒子A、粒子B、粒子C、粒子D、および粒子Eからなる群から選ばれる少なくとも1種の粒子を含む請求項1に記載のインクジェット用導電性インク。
ただし、
前記粒子Aは、スズ、亜鉛及びアルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも1種の原子が酸化インジウムに添加された複合酸化インジウム粒子、
前記粒子Bは、金粒子、銀粒子、銅粒子、およびニッケル粒子からなる群から選ばれる1つで被覆されたシリカ粒子、
前記粒子Cは、金粒子、銀粒子、銅粒子、およびニッケル粒子からなる群から選ばれる1つで被覆されたベンゾグアナミン樹脂粒子、
前記粒子Dは、金粒子、銀粒子、銅粒子、およびニッケル粒子からなる群から選ばれる1つで被覆されたポリメタクリル樹脂粒子、
前記粒子Eは、スズおよびアルミニウムが、酸化インジウムと酸化亜鉛とを含む複合粒子に添加された、スズ亜鉛アルミニウム含有酸化インジウム粒子である。
【請求項3】
前記イオン性液体は、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、ピロリジニウム塩、ホスホニウム塩、およびアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の塩を含む請求項1または2に記載のインクジェット用導電性インク。
【請求項4】
前記導電性粒子の平均粒径は、1nm〜200nmである請求項1〜3のいずれかの項に記載のインクジェット用導電性インク。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの項に記載のインクジェット用導電性インクを用いて形成されたことを特徴とする導電性パターン。
【請求項6】
基材と、前記基材の一方の主面に設けられ請求項1〜4のいずれかの項に記載のインクジェット用導電性インクを用いて形成された導電性パターンとを含むことを特徴とする導電体。
【請求項7】
前記基材は、ガラス、セラミック、または樹脂を含む請求項6に記載の導電体。


【図1】
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【公開番号】特開2006−335995(P2006−335995A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−165878(P2005−165878)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】