説明

インクジェット記録装置およびインクジェット記録装置の制御方法

【課題】予備吐出時などの記録に寄与しないインク吐出時に発生するインクミスト量を削減することが可能なインクジェット記録装置の提供を目的とする。
【解決手段】記録ヘッドの記録素子に印加する駆動電圧およびその駆動電圧の印加時間を決定する決定手段を備える。ここで、決定手段は、記録に寄与するインク吐出時の駆動電圧Vopと印加時間P3との乗算値と、記録に寄与しないインク吐出時の駆動電圧Vop’と印加時間P3’との乗算値とは一定に保つ。さらに、決定手段は、駆動電圧VopとVop’および印加時間P3とP3’をそれぞれ異ならせるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギーを印加することにより記録ヘッドからインクを吐出させて記録を行うインクジェット記録装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、記録ヘッドからインクを吐出して飛翔させ、記録媒体上に着弾させることにより記録を行う。このインクジェット記録装置に用いられる記録ヘッドには、インクを吐出させる複数の吐出口が配列されている。各吐出口はインクタンクからインクが供給される共通液室に液路を介して連通している。各液路には、吐出口からインクを吐出させるための吐出エネルギーを発生する吐出エネルギー発生素子が設けられている。現在使用されている吐出エネルギー発生素子としては、電気熱変換素子(ヒータ)あるいは電気機械変換素子(ピエゾ)があり、これらの吐出エネルギー発生素子はパルス状の電気信号(以下、駆動パルスとも言う)を入力することによって駆動される。
【0003】
ところで、上記のような記録ヘッドでは、吐出口から常にインクが露出しているため、非吐出の状態において吐出口よりインクが蒸発し、吐出口付近あるいは液路内のインクが増粘したり、吐出口から露出しているメニスカス部に膜が形成されたりすることがある。こうした現象が発生した場合、吐出時にインク滴の吐出速度および飛翔方向が不安定になり、記録媒体への着弾精度が低下して記録品位が損なわれるという不具合が生じる。そのため、記録動作開始前あるいは記録動作中の所定のタイミングにおいて、記録媒体以外の箇所に画像の形成に寄与しないインク吐出を行うことが従来より行われている。この吐出動作は一般に予備吐出と呼ばれ、この予備吐出を行うことによって常に吐出口内のインクを吐出に適した状態にリフレッシュさせることができ、記録品位の低下を軽減することができる。
【0004】
このような予備吐出によって吐出口内のインクを効果的にリフレッシュさせる技術として、特許文献1ないし3に開示されているものがある。
すなわち、特許文献1には、記録時における電気信号より大なるエネルギーの電気信号を設定することが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、インクジェット記録装置内の温度を検出し、その検出された温度に従って予備吐出用の駆動パルスのパルス幅を変更し、その変更された駆動パルスを用いて予備吐出を行なうことが開示されている。
【0006】
さらに、特許文献3には、予備吐出において一部の吐出口からのみインク滴を吐出させることにより、インク滴が吐出されなかった残りの吐出口のメニスカス面をインクのクロストークによって積極的に振動させる技術が開示されている。この技術によれば、インク滴が吐出されない他の吐出口の近傍に生じた増粘インクと、共通液室近傍に存在する低粘度のインクとをメニスカス面の振動によって混合させることができ、前記残りの吐出口からのインクの排出を適正に行うことができる。
【0007】
上記のように、インクジェット記録装置において記録ヘッドの吐出性能を維持するためには、上記のような予備吐出を行うことが必要である。しかし、記録ヘッドから吐出されるインクには、記録媒体に着弾して画像を形成する主滴以外に、記録に寄与しない細かなインク滴が吐出される。この細かなインク滴は、インクミストとなって記録装置内に浮遊し、記録媒体や記録装置内に付着し易く、記録品位の低下や記録装置の故障を招く原因となる。
【0008】
図28は、インク吐出の初期からインク滴形成までの過程を経過時間毎に示したものであり、ここに示す(a)から(m)は、数マイクロ秒(μsec.)毎に吐出状態を観察した結果を示している。各吐出状態を示す図において、矢印の先端で示される箇所に吐出口P701が形成されている。この図から明らかなように、駆動パルスが与えられ吐出口より吐出しはじめるインクは先頭に液滴部702が形成され、その後ろから吐出口に至る範囲には、糸状の液体部703が形成される。(以降、液滴部を主滴、糸状の液体部を尾引きと呼ぶ)。主滴702が完全に吐出口より離脱して遠ざかると、尾引きは長くなって糸状を維持できなくなり、いくつかの極小インク滴704に分裂する。以下、この分裂した極小インク滴704をサテライトと呼ぶ。
【0009】
通常、サテライト704は主滴と比較して飛翔速度が遅く液滴サイズも非常に小さいため、主滴702に比べて空気抵抗に影響され易く、主滴702より先に速度がゼロになる。その場合、サテライト704は、記録装置内を浮遊するインクミストとなる。この空中に浮遊しているインクミストはマイナスに帯電しているものが多いため、電気回路やセンサなどでプラスに帯電している部分に積極的に付着してしまい、記録品位の低下や記録装置の故障を招く原因となる。
【0010】
そこで、インクジェット記録装置では、一般に、図29に示すような予備吐出受け802を設け、これによって予備吐出時に発生するインクミストの影響を軽減するよう構成されている。
【0011】
図29は、記録媒体801と、予備吐出受け802に設けられたインク吸収体803と、インク吐出口804との相対位置を示している。ここで、図中の(a)に示す点線矢印は、予備吐出時においてインク吐出口805から吐出されたインク滴がインク吸収体803に達するまでの飛翔距離を示している。また、図中の(b)に示す点線矢印は、記録時においてインク吐出口805から吐出されたインク滴がインク吸収体803に達するまでの飛翔距離を示している。
【0012】
図示のように、ここに示す備吐出受け802は、記録媒体801を下方より支持するプラテン806の側方に設けられている。予備吐出受け802内にはインク吸収体803が設けられている。また、予備吐出受け802の外壁部804はインク吸収体を囲むと共に、その上端部は、プラテンより高く、記録ヘッド805の吐出口805aより低い位置に設定されている。これにより、多量の予備吐出を実施した際にも、インク吸収体803に着弾しなかったサテライトがミストとなって記録領域などに浮遊して来るのを外壁部804によって抑制することができ、記録媒体や記録装置内へのミストの付着を低減することができる。
【0013】
【特許文献1】特開昭61−146556号公報
【特許文献2】特開2003−312025号公報
【特許文献3】特開2003−159816号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、図29に示すような予備吐出受けは、予備吐出時に発生したインクミストを外壁部804とインク吸収体とによって囲まれた領域内に留める効果はあるが、サテライトの発生量自体を削減する機能はない。むしろインクミストの発生量は予備吐時の方が増大する傾向にある。これは、上記の予備吐出受け802では、外壁部804aの上端部を高く、インク吸収体803の上面の高さを低く設定しているため、インク滴の飛翔距離が図29(b)に示す記録時より、同図(a)に示す予備吐出時の方が大きくなるためである。すなわち、インク滴の飛翔距離が長いほど、サテライトの飛翔速度がインク吸収体に達する以前にゼロになり易く、ミストの発生量は増大する。そして、インクミストの発生量が一定量を超えると、それが予備吐出受け802の中から溢れ出して、記録装置内に浮遊するため、十分なミスト抑制効果が得られなくなる。
【0015】
特に、画像の高密度化に伴って吐出口および主滴の小サイズ化が進む近年のインクジェット記録装置では、サテライトのサイズも減少するため、予備吐出におけるミストの発生量はさらに増大する傾向にある。また、吐出口が小サイズ化されるほどインクの増粘、固着による吐出不良が発生し易くなるため、予備吐出を実施する時間間隔は非常に短縮されてきており、これもミスト量の増大を助長する要因となっている。
【0016】
このようにインクジェット記録装置では、予備吐出時に発生するミスト量増大して来ており、画像品質の向上を図る上で無視できない存在となってきている。
【0017】
本発明は、上記従来の課題に着目してなされたもので、予備吐出時に発生するインクミスト量を削減することが可能なインクジェット記録装置およびその制御方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第1の形態は、記録ヘッドに設けられた複数の記録素子に駆動電圧を印加することによりインクを吐出するインクジェット記録装置であって、前記記録素子に印加する前記駆動電圧および当該駆動電圧の印加時間を決定する決定手段を備え、前記決定手段は、前記駆動電圧と前記印加時間との乗算値を一定に保ちつつ、記録に寄与するインク吐出時と記録に寄与しないインク吐出時とで前記駆動電圧および前記印加時間が異なるように、前記駆動電圧および前記印加時間を決定することを特徴とする。
【0019】
本発明の第2の形態は、記録ヘッドに設けられた複数の記録素子に駆動電圧を印加することによりインクを吐出するインクジェット記録装置の制御方法であって、前記記録素子に印加する前記駆動電圧および当該駆動電圧の印加時間を決定する工程を含み、前記決定工程では、前記駆動電圧と前記印加時間との乗算値を一定に保ちつつ、記録に寄与するインク吐出時と記録に寄与しないインク吐出時とで前記駆動電圧と前記印加時間が異なるように、前記駆動電圧および前記印加時間を決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、予備吐出時におけるインク滴の吐出速度を遅くすることによって主滴が吐出口から飛び出すときの尾引きを短縮することができるため、インクミストの発生を抑制することが可能となる。このため、インクミストによる記録品位の低下、記録装置の故障などの発生を低減することができ、インクジェット記録装置の信頼性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0022】
1. 記録システムの概要
図1は、本発明の一実施形態で適用する記録システムにおける画像データ処理の流れを説明するための図である。この記録システムJ0011は、記録すべき画像を示す画像データの生成やそのデータ生成のためのUI(ユーザインタフェース)の設定等を行うホスト装置J0012を具える。このホスト装置J0012で生成された画像データに基づいて記録媒体に記録を行う記録装置J0013を具える。記録装置J0013は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)、ブラック(K)の7色インクによって記録を行う。そのために、これら7色のインクを吐出する記録ヘッドH1001が用いられる。
【0023】
ホスト装置J0012のオペレーティングシステムで動作するプログラムとしてアプリケーションやプリンタドライバがある。アプリケーションJ0001は記録装置で記録するための画像データを作成する処理を実行する。この画像データもしくはその編集等がなされる前のデータは種々の媒体を介してPCに取り込むことができる。本実施形態のホスト装置は、まずデジタルカメラで撮像した例えばJPEG形式の画像データをCFカードによって取り込むことができる。また、スキャナで読み取った例えばTIFF形式の画像データやCD−ROMに格納される画像データをも取り込むことができる。さらには、インターネットを介してウェブ上のデータを取り込むことができる。これらの取り込まれたデータは、ホスト装置のモニタに表示されてアプリケーションJ0001を介した編集、加工等がなされ、例えばsRGB規格の画像データR、G、Bが作成される。ホスト装置J0012のモニタに表示されるUI画面において、ユーザは、記録に使用する記録媒体の種類や記録の品位等の設定を行うと共に記録指示を出す。この記録指示に応じて画像データR、G、Bがプリンタドライバに渡される。
【0024】
プリンタドライバはその処理として、前段処理J0002、後段処理J0003、γ補正J0004、ハーフトーニングJ0005および記録データ作成J0006を有している。以下、プリンタドライバで行われる各処理J0002〜J0006について簡単に説明する。
【0025】
(A)前段処理
前段処理J0002は色域(Gamut)のマッピングを行う。本実施形態では、sRGB規格の画像データR、G、Bによって再現される色域を、記録装置J0013によって再現される色域内に写像するためのデータ変換を行う。具体的には、R、G、Bのそれぞれが8ビットで表現された256階調の画像データR、G、Bを、3次元LUTを用いることにより、記録装置J0013の色域内の8ビットデータR、G、Bに変換する。
【0026】
(B)後段処理
後段処理J0003では、上記色域のマッピングがなされた8ビットデータR、G、Bに基づき、このデータが表す色を再現するインクの組み合わせに対応した8ビット・7色の色分解データY、M、C、K、R、G、Bを求める。本実施形態では、この処理は前段処理と同様3次元LUTに補間演算を併用して行う。
【0027】
(C)γ処理
γ補正J0004は、後段処理J0003によって求められた色分解データの各色のデータごとにその濃度値(階調値)変換を行う。具体的には、記録装置J0013の各色インクの階調特性に応じた1次元LUTを用いることにより、上記色分解データがプリンタの階調特性に線形的に対応づけられるような変換を行う。
【0028】
(D)ハーフトーニング
ハーフトーニングJ0005は、γ補正がなされた8ビットの色分解データY、M、、C、K、R、G、Bそれぞれについて4ビットのデータに変換する量子化を行う。本実施形態では、誤差拡散法を用いて256階調の8ビットデータを9階調の4ビットデータに変換する。この4ビットデータは、記録装置におけるドット配置のパターン化処理における配置パターンを示すためのインデックスとなるデータである。
【0029】
(E)記録データの作成処理
プリンタドライバで行う処理の最後には、記録データ作成処理J0006によって、上記4ビットのインデックスデータを内容とする記録画像データに記録制御情報を加えた記録データを作成する。
【0030】
図2はかかる記録データの構成例を示した図である。記録データは、記録の制御を司る記録制御情報および記録すべき画像を示す記録画像データ(上述の4ビットのインデックスデータ)で構成されている。記録制御情報は、「記録媒体情報」、「記録品位情報」、および給紙方法等のような「その他制御情報」から構成されている。記録媒体情報には、記録の対象となる記録媒体の種類が記述されており、普通紙、光沢紙、はがき、プリンタブルディスクなどのうち、いずれか1種類の記録媒体が規定されている。記録品位情報には、記録の品位が記述されており、「きれい」、「標準」、「はやい」等のうち、いずれか1種の品位が規定されている。なお、これらの記録制御情報は、ホスト装置J0012のモニタおけるUI画面にてユーザが指定した内容に基づいて形成されるものである。また、記録画像データは、前述のハーフトーン処理J0005によって生成された画像データが記述さているものとする。以上のようにして生成された記録データは、記録装置J0013へ供給される。
【0031】
記録装置J0013は、ホスト装置J0012から供給された当該記録データに対して、次に述べるドット配置パターン化処理J0007およびマスクデータ変換処理J0008を行う。
【0032】
(F)ドット配置パターン化処理
上述したハーフトーン処理J0005では、256値の多値濃度情報(8ビットデータ)を9値の階調値情報(4ビットデータ)まで階調レベル数を下げている。しかし、実際に記録装置J0013が記録できるデータは、インクドットを記録するか否かの2値データ(1ビットデータ)である。そこで、ドット配置パターン化処理J0007では、ハーフトーン処理J0005からの出力値である階調レベル0〜8の4ビットデータで表現される各画素ごとに、その画素の階調値(レベル0〜8)に対応したドット配置パターンを割当てる。これにより1画素内の複数のエリア各々にインクドットの記録の有無(ドットのオン・オフ)を定義し、1画素内の各エリアごとに「1」または「0」の1ビットの2値データを配置する。ここで、「1」はドットの記録を示す2値データであり、「0」は非記録を示す2値データである。
【0033】
図3は、本実施形態のドット配置パターン化処理で変換する、入力レベル0〜8に対する出力パターンを示している。図の左に示した各レベル値は、ホスト装置側のハーフトーン処理部からの出力値であるレベル0〜レベル8に相当している。右側に配列した縦2エリア×横4エリアで構成される領域は、ハーフトーン処理で出力される1画素の領域に対応するものである。また、1画素内の各エリアは、ドットのオン・オフが定義される最小単位に相当するものである。なお、本明細書において「画素」とは、階調表現可能な最小単位のことであり、複数ビットの多値データの画像処理(上記前段、後段、γ補正、ハーフトーニング等の処理)の対象となる最小単位である。
【0034】
図において、丸印を記入したエリアがドットの記録を行うエリアを示しており、レベル数が上がるに従って、記録するドット数も1つずつ増加している。本実施形態においては、最終的にこのような形でオリジナル画像の濃度情報が反映されていることになる。
【0035】
(4n)〜(4n+3)は、nに1以上の整数を代入することにより、記録すべき画像データの左端からの横方向の画素位置を示している。その下に示した各パターンは、同一の入力レベルにおいても画素位置に応じて互いに異なる複数のパターンが用意されていることを示している。すなわち、同一のレベルが入力された場合にも、記録媒体上では(4n)〜(4n+3)に示した4種類のドット配置パターンが巡回されて割当てられる構成となっているのである。
【0036】
図3においては、縦方向を記録ヘッドの吐出口が配列する方向、横方向を記録ヘッドの走査方向としている。このように同一レベルに対して複数の異なるドット配置で記録できる構成にしておくことは、ドット配置パターンの上段に位置するノズルと下段に位置するノズルとで吐出回数を分散させたり、記録装置特有の様々なノイズを分散させるという効果がある。
【0037】
以上説明したドット配置パターン化処理を終了した段階で、記録媒体に対するドットの配置パターンが全て決定される。
【0038】
(G)マスクデータ変換処理
上述したドット配置パターン化処理J0007により、記録媒体上の各エリアに対するドットの有無は決定されたので、このドット配置を示す2値データを記録ヘッドH1001の駆動回路J0009に入力すれば、所望の画像を記録することが可能である。この場合、記録媒体上の同一の走査領域に対する記録を1回の走査によって完成させる、いわゆる1パス記録が実行される。しかし、ここでは、記録媒体上の同一の走査領域に対する記録を複数回の走査によって完成させる、いわゆるマルチパス記録の例をとって説明する。
【0039】
図4は、マルチパス記録方法を説明するために、記録ヘッドおよび記録パターンを模式的に示したものである。本実施形態に適用される記録ヘッドH1001は実際には768個のノズルを有するが、ここでは簡単のため16個のノズルを有するものとして説明する。ノズルは、図のように第1〜第4の4つのノズル群に分割され、各ノズル群には4つずつのノズルが含まれている。マスクパターンP0002は、第1〜第4のマスクパターンP0002(a)〜P0002(d)で構成される。第1〜第4のマスクパターンP0002(a)〜P0002(d)は、それぞれ、第1〜第4のノズル群が記録可能なエリアを定義している。マスクパターンにおける黒塗りエリアは記録許容エリアを示し、白塗りエリアは非記録エリアを示している。第1〜第4のマスクパターンP0002(a)〜P0002(d)は互いに補完の関係にあり、これら4つのマスクパターンを重ね合わせると4×4のエリアに対応した領域の記録が完成される構成となっている。
【0040】
P0003〜P0006で示した各パターンは、記録走査を重ねていくことによって画像が完成されていく様子を示したものである。各記録走査が終了するたびに、記録媒体は図の矢印の方向にノズル群の幅分(この図では4ノズル分)ずつ搬送される。よって、記録媒体の同一領域(各ノズル群の幅に対応する領域)は4回の記録走査によって初めて画像が完成される構成となっている。以上のように、記録媒体の各同一領域が複数回の走査で複数のノズル群によって形成されることは、ノズル特有のばらつきや記録媒体の搬送精度のばらつき等を低減させる効果がある。
【0041】
図5は、本実施形態で実際に適用可能なマスクパターンの一例を示したものである。本実施形態で適用する記録ヘッドH1001は768個のノズルを有しており、4つのノズル群にはそれぞれ192個ずつのノズルが属している。マスクパターン大きさは、縦方向がノズル数と同等の768エリア、横方向は256エリアとなっており、4つのノズル群それぞれに対応する4つのマスクパターンで互いに補完の関係を保つような構成となっている。
【0042】
ところで、本実施形態で適用するような、多数の小液滴を高周波数で吐出するようなインクジェット記録ヘッドにおいては、記録動作時に記録部近傍に気流が生じることが知られている。そして、この気流が特に記録ヘッドの端部に位置するノズルの吐出方向に影響を与えることが確認されている。よって、本実施形態のマスクパターンにおいては、図5からも判るように、各ノズル群また同一のノズル群の中でも、領域によって記録許容率の分布に偏りを持たせている。図5で示すように、端部のノズルの記録許容率を中央部の記録許容率よりも小さくした構成のマスクパターンを適用することにより、端部のノズルにより吐出されるインク滴の着弾位置ずれによる弊害を目立たなくすることが可能となるのである。
【0043】
なお、マスクパターンで定められる記録許容率は、次のように定義する。すなわち、マスクパターンを構成する記録許容エリア(図4のマスクパターンP0002の黒塗りエリア)と非記録許容エリア(図4のマスクパターンP0002の白塗りエリア)の合計数に対する記録許容エリアの数の割合を百分率で表したものである。従って、マスクパターンの記録許容エリアをM個、非記録許容エリアをN個とすると、そのマスクパターンの記録許容率(%)は、M÷(M+N)×100となる。
【0044】
本実施形態においては、図5で示したマスクデータが記録装置本体内のメモリに格納してある。そして、マスクデータ変換処理J0008においては、当該マスクデータと上述したドット配置パターン化処理で得られた2値データとの間でAND処理をかける。これにより、各記録走査での記録対象となる2値データが決定され、その2値データを駆動回路J0009へ送る。これにより、記録ヘッドH1001が駆動されて2値データに従ってインクが吐出される。
【0045】
なお、図1では、前述の処理J0002〜J0006がホスト装置J0012で実行され、前述の処理J0007およびJ0008が記録装置J0013で実行される形態について説明した。しかし本発明は、この形態に限られるものではない。例えば、ホスト装置J0012で実行している処理J0002〜J0005の一部を記録装置J0013にて実行する形態であってもよいし、すべてをホスト装置J0012にて実行する形態であってもよい。あるいは、処理J0002〜J0008を記録装置J0013にて実行する形態であってもよい。
【0046】
2. 機構部の構成
本実施形態で適用する記録装置における各機構部の構成を説明する。本実施形態における記録装置本体は、各機構部の役割から、概して、給紙部、用紙搬送部、排紙部、キャリッジ部、フラットパス記録部、およびクリーニング部等に分類することができ、これらは外装部に収納されている。
【0047】
図6、図7、図8、図12および図13は、本実施形態で適用する記録装置の外観を示す斜視図である。ここで、図6は記録装置の非使用時における前面から見た状態、図7は記録装置の非使用時における背面から見た状態、図8は記録装置の使用時における前面から見た状態をそれぞれ示している。また、図12はフラットパス記録時における前面から見た状態、図13はフラットパス記録時における背面から見た状態をそれぞれ示している。また、図9〜図11および図14〜図16は、記録装置本体の内部機構を説明するための図である。ここで、図9は右上部からの斜視図、図10は左上部からの斜視図、図11は記録装置本体の側断面図である。図14はフラットパス記録時の断面図である。さらに、図15はクリーニング部の斜視図、図16はクリーニング部におけるワイピング機構の構成および動作を説明するための断面図、図17はクリーニング部におけるウエット液転写部の断面図をそれぞれ示したものである。
【0048】
以下、これらの図面を適宜参照しながら、各部を順次説明する。
【0049】
(A)外装部(図6、図7)
外装部は、給紙部、用紙搬送部、排紙部、キャリッジ部、クリーニング部、フラットパス部およびウエット液転写部の回りを覆うように取り付けられている。外装部は主に、下ケースM7080、上ケースM7040、アクセスカバーM7030、コネクタカバーおよびフロントカバーM7010から構成されている。
【0050】
下ケースM7080の下部には、不図示の排紙トレイレールが設けられており、分割された排紙トレイM3160が収納可能に構成されている。また、フロントカバーM7010は、非使用時に排紙口を塞ぐ構成になっている。
【0051】
上ケースM7040には、アクセスカバーM7030が取り付けられており、回動可能に構成されている。上ケースの上面の一部は開口部を有しており、この位置で、インクタンクH1900および記録ヘッドH1001(図21)が交換可能となるように構成されている。なお、本実施形態の記録装置においては、記録ヘッドH1001は、1色のインクを吐出可能な吐出部を複数色分、一体的に構成したユニットの形態である。そして、インクタンクH1900が色毎に独立に着脱可能な記録ヘッドカートリッジH1000として構成されている。上ケースM7040には、アクセスカバーM7030の開閉を検知するための不図示のドアスイッチレバー、LEDの光を伝達・表示するLEDガイドM7060が設けられている。さらに、上ケースM7040には電源キーE0018、リジュームキーE0019およびフラットパスキーE3004等が設けられている。また、多段式の給紙トレイM2060が回動可能に取り付けられており、給紙部が使われない時は、給紙トレイM2060を収納することにより、給紙部のカバーにもなるように構成されている。
【0052】
上ケースM7040と下ケースM7080は、弾性を持った勘合爪で取り付けられており、その間のコネクタ部分が設けられている部分を、不図示のコネクタカバーが覆っている。
【0053】
(B)給紙部(図8、図11)
図8および図11を参照するに、給紙部は次のように構成されている。すなわち、記録媒体を積載する圧板M2010、記録媒体を1枚ずつ給紙する給紙ローラM2080、記録媒体を分離する分離ローラM2041、記録媒体を積載位置に戻すための戻しレバーM2020等がベースM2000に取り付けられることで構成されている。
【0054】
(C)用紙搬送部(図8〜図11)
曲げ起こした板金からなるシャーシM1010には、記録媒体を搬送する搬送ローラM3060とペーパエンドセンサ(以下PEセンサと称す)E0007が回動可能に取り付けられている。搬送ローラM3060は、金属軸の表面にセラミックの微小粒がコーティングされた構成となっており、両軸の金属部分を不図示の軸受けが受ける状態で、シャーシM1010に取り付けられている。搬送ローラM3060にはローラテンションバネ(不図示)が設けられており、搬送ローラM3060を付勢することにより、回転時に適量の負荷を与えて安定した搬送が行えるようになっている。
【0055】
搬送ローラM3060には、従動する複数のピンチローラM3070が当接して設けられている。ピンチローラM3070は、ピンチローラホルダM3000に保持されているが、不図示のピンチローラバネによって付勢されることで、搬送ローラM3060に圧接し、ここで記録媒体の搬送力を生み出している。この時、ピンチローラホルダM3000の回転軸は、シャーシM1010の軸受けに取り付けられ、この位置を中心に回転する。
【0056】
記録媒体が搬送されてくる入口には、記録媒体をガイドするためのペーパガイドフラッパM3030およびプラテンM3040が配設されている。また、ピンチローラホルダM3000には、PEセンサレバーM3021が設けられており、PEセンサレバーM3021は、記録媒体の先端および後端の検出をPEセンサE0007に伝える役割を果たす。プラテンM3040は、シャーシM1010に取り付けられ、位置決めされている。ペーパガイドフラッパM3030は、不図示の軸受け部を中心に回転可能で、シャーシM1010に当接することで位置決めされる。
【0057】
搬送ローラM3060の記録媒体搬送方向における下流側には、記録ヘッドH1001(図21)が設けられている。
【0058】
上記構成における搬送の過程を説明する。用紙搬送部に送られた記録媒体は、ピンチローラーホルダM3000およびペーパガイドフラッパM3030に案内されて、搬送ローラM3060とピンチローラM3070とのローラ対に送られる。この時、PEセンサレバ−M3021が、記録媒体の先端を検知して、これにより記録媒体に対する記録位置が求められている。搬送ローラM3060とピンチローラM3070とからなるローラ対は、LFモータE0002の駆動により回転され、この回転により記録媒体がプラテンM3040上を搬送される。プラテンM3040には、搬送基準面となるリブが形成されており、このリブにより、記録ヘッドH1001と記録媒体表面との間のギャップが管理されている。また同時に、当該リブが、後述する排紙部と合わせて、記録媒体の波打ちを抑制する役割も果たしている。
【0059】
搬送ローラM3060が回転するための駆動力は、例えばDCモータからなるLFモータE0002の回転力が、不図示のタイミングベルトを介して、搬送ローラM3060の軸上に配設されたプーリM3061に伝達されることによって得られている。また、搬送ローラM3060の軸上には、搬送ローラM3060による搬送量を検出するためのコードホイールM3062が設けられている。そして、隣接するシャーシM1010には、コードホイールM3062に形成されたマーキングを読み取るためのエンコードセンサM3090が配設されている。なお、コードホイールM3062に形成されたマーキングは、150〜300lpi(ライン/インチ;参考値)のピッチで形成されているものとする。
【0060】
(D)排紙部(図8〜図11)
排紙部は、第1の排紙ローラM3100および第2の排紙ローラM3110、複数の拍車M3120およびギア列などから構成されている。
【0061】
第1の排紙ローラM3100は、金属軸に複数のゴム部を設けて構成されている。第1の排紙ローラM3100の駆動は、搬送ローラM3060の駆動が、アイドラギアを介して第1の排紙ローラM3100まで伝達されることによって行われている。
【0062】
第2の排紙ローラM3110は、樹脂の軸にエラストマの弾性体M3111を複数取り付けた構成になっている。第2の排紙ローラM3110の駆動は、第1の排紙ローラM3100の駆動が、アイドラギアを介して伝達すること行われる。
【0063】
拍車M3120は、周囲に凸形状を複数設けた例えばSUSでなる円形の薄板を樹脂部と一体としたもので、拍車ホルダM3130に複数取り付けられている。この取り付けは、コイルバネを棒状に設けた拍車バネによって行われているが、同時に拍車バネのばね力は、拍車M3120を排紙ローラM3100およびM3110に対し所定圧で当接させている。この構成によって拍車M3120は、2つの排紙ローラM3100およびM3110に従動して回転可能となっている。拍車M3120のいくつかは、第1の排紙ローラM3100のゴム部、あるいは第2の排紙ローラM3110の弾性体M3111の位置に設けられており、主に記録媒体の搬送力を生み出す役割を果たしている。また、その他のいくつかは、ゴム部あるいは弾性体M3111が無い位置に設けられ、主に記録時の記録媒体の浮き上がりを抑える役割を果たしている。
【0064】
また、ギア列は、搬送ローラM3060の駆動を排紙ローラM3100およびM3110に伝達する役割を果たしている。
【0065】
以上の構成によって、画像形成された記録媒体は、第1の排紙ローラM3110と拍車M3120とのニップに挟まれ、搬送されて排紙トレイM3160に排出される。排紙トレイM3160は、複数に分割され、後述する下ケースM7080の下部に収納できる構成になっている。使用時は、引出して使用する。また、排紙トレイM3160は、先端に向けて高さが上がり、更にその両端は高い位置に保持されるよう設計されており、排出された記録媒体の積載性を向上し、記録面の擦れなどを防止している。
【0066】
(E)キャリッジ部(図9〜図11)
キャリッジ部は、記録ヘッドH1001を取り付けるためのキャリッジM4000を有しており、キャリッジM4000は、ガイドシャフトM4020およびガイドレールM1011によって支持されている。ガイドシャフトM4020は、シャーシM1010に取り付けられており、記録媒体の搬送方向に対して直角方向にキャリッジM4000を往復走査させるように案内支持している。ガイドレールM1011は、シャーシM1010に一体に形成されており、キャリッジM4000の後端を保持して記録ヘッドH1001と記録媒体との隙間を維持する役割を果たしている。また、ガイドレールM1011のキャリッジM4000との摺動側には、ステンレス等の薄板からなる摺動シートM4030が張設され、記録装置の摺動音の低減化を図っている。
【0067】
キャリッジM4000は、シャーシM1010に取り付けられたキャリッジモータE0001によりタイミングベルトM4041を介して駆動される。また、タイミングベルトM4041は、アイドルプーリM4042によって張設、支持されている。さらに、タイミングベルトM4041は、キャリッジM4000とゴム等からなるキャリッジダンパを介して結合されており、キャリッジモータE0001等の振動を減衰することで、記録される画像のむら等を低減している。
【0068】
キャリッジM4000の位置を検出するためのエンコーダスケールE0005(図18について後述)が、タイミングベルトM4041と平行に設けられている。エンコーダスケールE0005上には、150lpi〜300lpiのピッチでマーキングが形成されている。そして、当該マーキングを読み取るためのエンコーダセンサE0004(図18について後述)が、キャリッジM4000に搭載されたキャリッジ基板E0013(図18について後述)に設けられている。キャリッジ基板E0013には、記録ヘッドH1001と電気的な接続を行うためのヘッドコンタクトE0101も設けられている。また、キャリッジM4000には、電気基板E0014から記録ヘッドH1001へ、駆動信号を伝えるための不図示のフレキシブルケーブルE0012(図18について後述)が接続されている。
【0069】
記録ヘッドH1001をキャリッジM4000に固定するための構成として次のものが設けられている。すなわち、記録ヘッドH1001をキャリッジM4000に押し付けながら位置決めするための不図示の突き当て部と、所定の位置に固定するための不図示の押圧手段が、キャリッジM4000上に設けられている。押圧手段は、ヘッドセットレバーM4010に搭載され、記録ヘッドH1001をセットする際に、ヘッドセットレバーM4010を回転支点を中心に回して、記録ヘッドH1001に作用する構成になっている。
【0070】
さらに、キャリッジM4000には、CD−R等の特殊メディアへ記録を行う際や、記録結果や用紙端部等の位置検出用として、反射型の光センサからなる位置検出センサM4090が取り付けられている。位置検出センサM4090は、発光素子より発光し、その反射光を受光することで、キャリッジM4000の現在位置を検出することができる。
【0071】
上記構成において記録媒体に画像形成する場合、行位置に対しては、搬送ローラM3060およびピンチローラM3070からなるローラ対が、記録媒体を搬送して位置決めする。また、列位置に対しては、キャリッジモータE0001によりキャリッジM4000を上記搬送方向と垂直な方向に移動させて、記録ヘッドH1001を目的の画像形成位置に配置させる。位置決めされた記録ヘッドH1001は、電気基板E0014からの信号に従って、記録媒体に対しインクを吐出する。記録ヘッドH1001についての詳細な構成および記録システムは後述する。本実施形態の記録装置においては、記録ヘッドH1001により記録を行いながらキャリッジM4000が列方向に走査する記録主走査と、搬送ローラM3060により記録媒体が行方向に搬送される副走査とを交互に繰り返す。これにより、記録媒体上に画像が形成されて行く。
【0072】
(F)フラットパス記録部(図12〜図14)
給紙部からの給紙は、図11に示したように記録媒体が通る経路がピンチローラに達するまで曲がっているため、記録媒体を曲げた状態で行われることになる。従って、例えば0.5mm程度以上の厚い記録媒体等を給紙部から給紙しようとすると、曲げられた記録媒体の反力が発生し、給紙抵抗が増えて給紙が行えない場合がある。また、給紙が可能であっても、排紙後の記録媒体が曲がったままとなったり、折れたりすることもある。
【0073】
厚い記録媒体等、曲げたくない記録媒体や、CD−R等、曲げることのできない記録媒体に対して記録を行うのがフラットパス記録である。
【0074】
ここで、フラットパス記録には本体背面のスリット上の開口部から(給紙装置の下)、手差し給紙の態様で記録媒体を本体のピンチローラにニップさせ、記録を行うタイプがある。しかし本実施形態のフラットパス記録は、記録媒体を本体手前の排紙口から記録位置まで給紙し、スイッチバックしてから記録を行う形態のものである。
【0075】
フロントカバーM7010は、通常記録した記録媒体を数十枚程度積載しておくためのトレイを兼ねるために排紙部より下方にある(図8)。フラットパス記録時には、記録媒体を排紙口から水平に、通常の搬送方向とは反対方向に給紙するために、フロントトレイM7010を排紙口の位置まで上げる(図12)。フロントトレイM7010には不図示のフック等が設けられており、フラットパス給紙位置にフロントトレイを固定可能である。フロントトレイM7010がフラットパス記録位置にあることはセンサで検知可能であり、当該検知に応じてフラットパス記録モードと判断することができる。
【0076】
フラットパス記録モードでは、記録媒体をフロントトレイM7010に載せて排紙口から記録媒体を挿入するために、まずフラットパスキーE3004を操作する。これによって、想定している記録媒体の厚みより高い位置まで、拍車ホルダM3130とピンチローラホルダM3000とを不図示の機構により持ち上げる。またリアトレイボタンM7110を押すことによってリアトレイM7090を開き、さらにリアサブトレイM7091をV字に開くことも可能である(図13)。リアトレイM7090およびリアサブトレイM7091は、長い記録媒体を本体前面から挿入した場合は本体背面から突出するので、長い記録媒体を本体背面でも支えるためのトレイである。厚い記録媒体は記録中にフラットな姿勢を保たないとヘッドフェイス面と擦れたり、搬送負荷が変化したりすることから記録品位に影響を及ぼすおそれがあるので、これらのトレイの配設は有効である。しかし本体背面からはみ出ない程度の長さの記録媒体であれば、リアトレイM7090等を開く必要はない。
【0077】
以上によって、記録媒体を排紙口から本体内に挿入可能となる。記録媒体の後端部(ユーザに最も近く位置する手前側の端部)と右端部とをフロントトレイM7010のマーカ位置に揃えて、フロントトレイM7010に載せる。
【0078】
ここで再度フラットパスキーE3004を操作すると、拍車ホルダ3130が降りて排紙ローラM3100およびM3110と拍車3120とで記録媒体をニップする。その後、排紙ローラM3100,M3110で記録媒体を所定量本体内に引き込む(通常記録時の搬送方向とは逆方向)。最初に記録媒体をセットした際に記録媒体の手前側の端部(後端部)を揃えているので、短い記録媒体の前端部(ユーザから見て最も奥側の端部)は搬送ローラM3060まで届いていないことがある。従って所定量とは、想定している一番短い記録媒体の後端が搬送ローラM3060に届くまでの距離とする。所定量送られた記録媒体は搬送ローラM3060に届いているので、その位置でピンチローラホルダM3000を降ろして、搬送ローラM3060とピンチローラM3070とで記録媒体をニップさせる。そして記録媒体をさらに送り、その後端部が搬送ローラM3060とピンチローラM3070とでニップされるようにする。これで記録媒体のフラットパス記録のための給紙が終了したことになる(記録待機位置)。
【0079】
排紙ローラM3100およびM3110と拍車M3120とのニップ力は、通常記録時の排紙時に形成画像に影響を与えないよう、比較的低く設定されている。従って、フラットパス記録時には記録を行うまでに記録媒体の位置がずれてしまうおそれがある。しかし本実施形態では、ニップ力が比較的高い搬送ローラM3060とピンチローラM3070とによって記録媒体をニップさせるので、記録媒体のセット位置が確保されたことになる。また、記録媒体を上記所定量だけ本体内に送るとき、プラテンM3040と拍車ホルダM3130の間にあるフラットパス紙検知センサM3170で記録媒体の後端位置(記録時の前端位置となる)を検知することができる。
【0080】
記録媒体が上記記録待機位置に設定されると、記録コマンドを実行する。すなわち、記録ヘッドH1001による記録位置まで搬送ローラM3060で記録媒体を搬送し、後は通常の記録動作と同じように記録を行い、記録後フロントトレイM7010に排紙することになる。
【0081】
フラットパス記録をさらに行いたい場合は、記録した記録媒体をフロントトレイM7010から取り出し、次の記録媒体をセットして、後は前述した処理を繰り返せばよい。具体的には、フラットパスキーE3004を押すことによって、拍車ホルダM3130とピンチローラホルダM3000とを持ち上げて、記録媒体をセットすることから始まる。
【0082】
一方、フラットパス記録を終了する場合は、フロントトレイM7010を通常記録位置に戻すことによって通常記録モードに戻すことができる。
【0083】
(G)クリーニング部(図15、図16)
クリーニング部は記録ヘッドH1001のクリーニングを行うための機構である。これは、ポンプM5000、記録ヘッドH1001の乾燥を抑えるためのキャップM5010、記録ヘッドH1001の吐出口形成面をクリーニングするためのブレードM5020などから構成されている。
【0084】
クリーニング部には、専用のクリーニングモータE0003が配されている。クリーニングモータE0003には、不図示のワンウェイクラッチが設けられており、一方向の回転でポンプM5000を作動させ、もう一方向の回転ではブレードM5020の移動およびキャップM5010の昇降を行わせるようになっている。
【0085】
キャップM5010はモータE0003から不図示の昇降機構を介して昇降可能に駆動される。そして、上昇位置では、記録ヘッドH1500に設けた数個の吐出部のフェイス面毎にキャッピングを施し、非記録動作時等においてその保護を行ったり、あるいは吸引回復を行うことが可能である。また、記録動作時には記録ヘッド9との干渉を避ける下降位置に設定され、またフェイス面との対向によって予備吐出を受けることが可能である。例えば記録ヘッドH1001に10個の吐出部が設けられ、5個の吐出部のフェイス面毎に一括してキャッピングを施すことが可能となるよう、図示の例ではキャップM5010は2つ設けられている。
【0086】
ゴム等の弾性部材でなるワイパ部H5020はワイパホルダH5021に固定されている。ワイパホルダH5021は図16の+Yおよび−Y方向(吐出部における吐出口の配列方向)に移動可能である。そして、記録ヘッドH1001がホームポジションに到達したときに、矢印−Y方向にワイパホルダ25が移動することによって、ワイピングが可能である。ワイピング動作が終了すると、キャリッジをワイピング領域の外に退避させてから、ワイパがフェイス面等と干渉しない位置に戻す。なお、本例のワイパ部M5020には、全吐出部のフェイス面を含む記録ヘッドH1001の面全体をワイピングするワイパブレードM5020Aが設けられている。また、5つの吐出部のフェイス面毎に、ノズル近傍をするワイピングする2つのワイパブレードM5020B,M5020Cが設けられている。
【0087】
そして、ワイピング後には、ワイパ部M5020がブレードクリーナM5060に当接することにより、ワイパブレードM5020A〜M5020C自身へ付着したインクなども除去することができる構成になっている。また、ワイピングに先立ってワイパブレードM5020A〜M5020Cにウエット液を転写させておくことによりワイピングによるクリーニング性を向上する構成(ウエット液転写部)が設けられている。このウエット液転写部の構成およびワイピング動作については後述する。
【0088】
吸引ポンプM5000は、キャップM5010をフェイス面に接合させてその内部に密閉空間を形成した状態で負圧を発生させることが可能である。これにより、インクタンクH1900から吐出部内にインクを充填させたり、吐出口もしくはその内方のインク路に存在する塵埃、固着物、気泡等を吸引除去したりすることができる。
【0089】
吸引ポンプM5000としては、例えばチューブポンプ形態のものが用いられる。これは、可撓性を有するものとしたチューブの少なくとも一部を沿わせて保持する曲面が形成された部材と、これに向けて可撓性チューブを押圧可能なローラと、このローラを支持して回転可能なローラ支持部とを有するものとすることができる。すなわち、ローラ支持部を所定方向に回転させることで、ローラは曲面形成部材上で可撓性チューブを押しつぶしながら転動する。これに伴い、キャップM5010が形成する密閉空間に負圧が生じてインクが吐出口より吸引され、キャップM5010からチューブないし吸引ポンプに引き込まれる。そして、引き込まれているインクはさらに下ケースM7080に設けた適宜の部材(廃インク吸収体)に向けて移送される。
【0090】
なお、キャップM5010の内側部分には、吸引後の記録ヘッドH1001のフェイス面に残るインクを削減するために、吸収体M5011が設けられている。また、キャップM5010を開放した状態で、キャップM5010ないし吸収体M5011に残っているインクを吸引することにより、残インクによる固着およびその後の弊害が起こらないように配慮されている。ここで、インク吸引経路の途中に大気開放弁(不図示)を設け、キャップM5010をフェイス面から離脱させる際に予めこれを開放しておくことで、フェイス面に急激な負圧が作用しないようにしておくことが好ましい。
【0091】
また、吸引ポンプM5000は、吸引回復だけでなく、キャップM5010がフェイス面に対向した状態で行われる予備吐出動作によってキャップM5010に受容されたインクを排出するためにも作動させることができる。すなわち、予備吐出されてキャップM5010に保持されたインクが所定量に達したときに吸引ポンプM5000を作動させることで、キャップM5010内に保持されていたインクをチューブを介して廃インク吸収体に移送することができる。
【0092】
以上のワイパ部M5020の動作、キャップM5010の昇降および弁の開閉など、連続して行われる一連の動作は、モータE0003の出力軸上に設けた不図示のメインカムおよびこれに従動する複数のカム,アーム等によって制御可能である。すなわち、モータE0003の回転方向に応じたメインカムの回動によってそれぞれの部位のカム部,アーム等が作動することで、所定の動作を行うことが可能である。メインカムの位置はフォトインタラプタ等の位置検出センサで検出することができる。
【0093】
(H)ウエット液転写部(図17、図16)
最近では、記録物の記録濃度、耐水性および耐光性等を向上する目的で、色材として顔料成分を含有するインク(以下、顔料インクという)が使用されることが多くなってきている。顔料インクは、元来固体である色材を、分散剤や、顔料表面に官能基を導入するなどして水中に分散させてなるものである。従って、フェイス面上でインク中の水分が蒸発し乾燥した顔料インクの乾燥物は、色材自体が分子レベルで溶解している染料系インクの乾燥固着物と比べ、フェイス面に与えるダメージが大きい。また、また顔料を溶剤中に分散させるために用いている高分子化合物が吐出面に対して吸着されやすいという性質が見られる。これは、インクの粘度調整や、耐光性向上その他の目的でインクに反応液を添加する結果インク中に高分子化合物が存在する場合には、顔料インク以外でも生じる問題である。
【0094】
この課題に対し、本実施形態では、ブレードM5020に液体を転写・付着させ、これによって濡れたブレードM5020でワイピングを行う。これにより、顔料インクによるフェイス面の劣化を防ぎ、かつワイパの磨耗を軽減し、さらにはフェイス面に蓄積したインク残渣を溶解させることによって蓄積物を除去するようにしている。かかる液体をその機能から本明細書ではウエット液と称し、これを用いるワイピングをウエットワイピングと称する。
【0095】
本実施形態では、ウエット液を記録装置本体内部に貯蔵する構成がとられている。M5090はウエット液タンクであり、ウエット液としてグリセリン溶液等を収納している。M5100はウエット液保持部材で、ウエット液がウエット液タンクM5090から漏れないように適度な表面張力を有する繊維質部材等であり、ウエット液を含浸保持している。M5080はウエット液転写部材であり、例えば、多孔質であって適度な毛管力を備えた材質でなり、ワイパブレードと接触するウエット液転写部M5081を有している。ウエット液転写部材M5080はウエット液が染み込んだウエット液保持部材M5100とも接しており、従ってウエット液転写部材M5080もウエット液が染み込むことになる。ウエット液転写部材M5080は、ウエット液が残り少なくなってもウエット液転写部M5081へウエット液を供給できるだけの毛管力を有した材質である。
【0096】
かかるウエット液転写部およびワイパ部の動作を説明する。
【0097】
まず、キャップM5010を下降位置に設定し、キャリッジM4000がブレードM5020A〜M5020Cに触れない位置に退避させる。この状態で、ワイパ部M5020を−Y方向に移動させ、ブレードクリーナM5060の部位を通過させて、ウエット液転写部M5081に接触させる(図17)。適切な時間だけ接触状態を維持することで、ブレードM5020にウエット液が適量転写される。
【0098】
次にワイパ部M5020を+Y方向に移動させるが、ブレードがブレードクリーナM5060に触れるのはウエット液が付着していない面であるので、ウエット液はブレードに保持されたままになる。
【0099】
ブレードをワイピング開始位置まで戻した後、キャリッジM4000をワイピング位置まで移動させる。再度、ワイパ部M5020を−Y方向に移動させることによって、ウエット液が付いた面で記録ヘッドH1001のフェイス面をワイピングすることが可能となる。
【0100】
3. 電気回路構成
次に本実施形態における電気的回路の構成を説明する。
図18は、記録装置J0013における電気的回路の全体構成を概略的に説明するためのブロック図である。本実施形態で適用する記録装置では、主にキャリッジ基板E0013、メイン基板E0014、電源ユニットE0015およびフロントパネルE0106等によって構成されている。
【0101】
ここで、電源ユニットE0015は、メイン基板E0014と接続され、各種駆動電源を供給するものとなっている。
【0102】
キャリッジ基板E0013は、キャリッジM4000に搭載されたプリント基板ユニットであり、ヘッドコネクタE0101を通じて記録ヘッドH1001との信号の授受、ヘッド駆動電源の供給を行うインターフェースとして機能する。ヘッド駆動電源の制御に供する部分として、記録ヘッドH1001の各色吐出部に対する複数チャネルのヘッド駆動電圧変調回路E3001を有する。そして、フレキシブルフラットケーブル(CRFFC)E0012を通じてメイン基板E0014から指定された条件に従ってヘッド駆動電源電圧を発生する。また、キャリッジM4000の移動に伴ってエンコーダセンサE0004から出力されるパルス信号に基づいて、エンコーダスケールE0005とエンコーダセンサE0004との位置関係の変化を検出する。更にその出力信号をフレキシブルフラットケーブル(CRFFC)E0012を通じてメイン基板E0014へと出力する。
【0103】
キャリッジ基板E0013には、図20に示すように、2つの発光素子(LED)E3011および受光素子E3013でなる光学センサE3010および周囲温度を検出するためのサーミスタE3020が接続されている。以下、これらのセンサをマルチセンサE3000として参照する。マルチセンサE3000により得られる情報は、フレキシブルフラットケーブル(CRFFC)E0012を通じてメイン基板E0014へと出力される。
【0104】
メイン基板E0014は、本実施形態におけるインクジェット記録装置の各部の駆動制御を司るプリント基板ユニットである。この基板上にホストインタフェース(ホストI/F)E0017が設けられており、不図示のホストコンピュータからの受信データをもとに記録動作の制御を行う。また、メイン基板E0014は、各種モータと接続されて各機能の駆動を制御している。すなわち、メイン基板E0014には、キャリッジM4000を主走査させるための駆動源となるキャリッジモータE0001、記録媒体を搬送するための駆動源となるLFモータE0002が接続されている。さらに、メイン基板E0014には、記録ヘッドH1001の回復動作および記録媒体の給紙動作の駆動源となるAPモータE3005、フラットパス記録動作の駆動源となるPRモータE3006が接続されている。また、PEセンサ、CRリフトセンサ、LFエンコーダセンサ、PGセンサのような、プリンタ各部の動作状態を検出する様々なセンサに対して、制御信号および検出信号の送受信を行うためのセンサ信号E0104に接続される。また、メイン基板E0014は、CRFFC E0012および電源ユニットE0015にそれぞれ接続されるとともに、さらにパネル信号E0107を介してフロントパネルE0106と情報の授受を行うためのインターフェースを有している。
【0105】
フロントパネルE0106は、ユーザ操作の利便性のために、記録装置本体の正面に設けたユニットである。これは、リジュームキーE0019、LED E0020、電源キーE0018およびフラットパスキーE3004を有するほか(図6)、さらにデジタルカメラ等の周辺デバイスとの接続に用いるデバイスI/F E0100を有している。
【0106】
図19は、メイン基板E1004の内部構成を示すブロック図である。
図において、E1102はASIC(Application Specific Integrated Circuit)であり、制御バスE1014を通じてROM E1004に接続されている。そして、このASIC E1102は、ROM E1004に格納されたプログラムに従って、各種制御を行っている。例えば、各種センサに関連するセンサ信号E0104や、マルチセンサE3000に関連するマルチセンサ信号E4003の送受信を行う。そのほか、エンコーダ信号E1020、フロントパネルE0106上の電源キーE0018、リジュームキーE0019およびフラットパスキーE3004からの出力の状態を検出している。また、ホストI/F E0017、フロントパネル上のデバイスI/F E0100の接続およびデータ入力状態に応じて、各種論理演算や条件判断等を行い、各構成要素を制御し、インクジェット記録装置の駆動制御を司っている。
【0107】
E1103はドライバ・リセット回路である。これは、ASIC E1102からのモータ制御信号E1106に従って、CRモータ駆動信号E1037、LFモータ駆動信号E1035、APモータ駆動信号E4001およびPRモータ駆動信号E4002を生成し、各モータを駆動する。さらに、ドライバ・リセット回路E1103は、電源回路を有しており、メイン基板E0014、キャリッジ基板E0013、フロントパネルE0106など各部に必要な電源を供給する。さらにドライバ・リセット回路E1103は、電源電圧の低下を検出して、リセット信号E1015を発生および初期化を行う。
【0108】
E1010は電源制御回路であり、ASIC E1102からの電源制御信号E1024に従って発光素子を有する各センサ等への電源供給を制御する。
【0109】
ホストI/F E0017は、ASIC E1102からのホストI/F信号E1028を、外部に接続されるホストI/FケーブルE1029に伝達し、またこのケーブルE1029からの信号をASIC E1102に伝達する。
【0110】
一方、電源ユニットE0015からは電力が供給される。供給された電力は、メイン基板E0014内外の各部へ、必要に応じて電圧変換された上で供給される。また、ASIC E1102からの電源ユニット制御信号E4000が電源ユニットE0015に接続され、記録装置本体の低消費電力モード等を制御する。
【0111】
ASIC E1102は1チップの演算処理装置内蔵半導体集積回路であり、前述したモータ制御信号E1106、電源制御信号E1024および電源ユニット制御信号E4000等を出力する。そして、ホストI/F E0017との信号の授受を行うとともに、パネル信号E0107を通じて、フロントパネル上のデバイスI/F E0100との信号の授受を行う。さらに、センサ信号E0104を通じてPEセンサ、ASFセンサ等各部センサ類により状態を検知する。さらにマルチセンサ信号E4003を通じてマルチセンサE3000を制御するとともに状態を検知する。またパネル信号E0107の状態を検知して、パネル信号E0107の駆動を制御してフロントパネル上のLED E0020の点滅を行う。
【0112】
さらにASIC E1102は、エンコーダ信号(ENC)E1020の状態を検知してタイミング信号を生成し、ヘッド制御信号E1021で記録ヘッドH1001とのインターフェースをとり記録動作を制御する。ここにおいて、エンコーダ信号(ENC)E1020はCRFFC E0012を通じて入力されるエンコーダセンサE0004の出力信号である。また、ヘッド制御信号E1021は、フレキシブルフラットケーブルE0012を通じてキャリッジ基板E0013に接続される。そして、前述のヘッド駆動電圧変調回路E3001およびヘッドコネクタE0101を経て記録ヘッドH1001に供給されるとともに、記録ヘッドH1001からの各種情報をASIC E1102に伝達する。このうち吐出部毎のヘッド温度情報については、メイン基板上のヘッド温度検出回路E3002で信号増幅された後、ASIC E1102に入力され、各種制御判断に用いられる。
【0113】
図中、E3007はDRAMであり、記録用のデータバッファ、ホストコンピュータからの受信データバッファ等として、また各種制御動作に必要なワーク領域しても使用されている。
【0114】
4 記録ヘッド構成
以下に本実施形態で適用するヘッドカートリッジH1000の構成について説明する。 本実施形態におけるヘッドカートリッジH1000は、記録ヘッドH1001と、インクタンクH1900を搭載する手段およびインクタンクH1900から記録ヘッドにインクを供給するための手段を有している。そして、キャリッジM4000に対して着脱可能に搭載される。
【0115】
図21は、本実施形態で適用するヘッドカートリッジH1000に対し、インクタンクH1900を装着する様子を示した図である。本実施形態の記録装置は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)、レッド(R)、グリーン(G)およびブルー(B)の7色の顔料インクによって画像を形成する。従ってインクタンクT0001も7色分が独立に用意されている。そして、図に示すように、インクタンクそれぞれがヘッドカートリッジH1000に対して着脱自在となっている。なお、インクタンクH1900の着脱は、キャリッジM4000にヘッドカートリッジH1000が搭載された状態で行えるようになっている。
【0116】
図22は、ヘッドカートリッジH1000の分解斜視図を示したものである。図において、ヘッドカートリッジH1000は、第1の記録素子基板H1100および第2の記録素子基板H1101、第1のプレートH1200、第2のプレートH1400、電気配線基板H1300を有する。さらに、ヘッドカートリッジH1000は、タンクホルダーH1500、流路形成部材H1600、フィルターH1700、シールゴムH1800などを有する構成となっている。
【0117】
第1の記録素子基板H1100および第2の記録素子基板H1101はSi基板であり、その片面にインクを吐出するための複数の記録素子(ノズル)がフォトリソ技術により形成されている。各記録素子に電力を供給するAI等の電気配線は、成膜技術により形成されており、個々の記録素子に対応した複数のインク流路もまた、フォトリソ技術により形成されている。さらに、複数のインク流路にインクを供給するためのインク供給口が裏面に開口するように形成されている。
【0118】
図23は、第1の記録素子基板H1100および第2の記録素子基板H1101の構成を説明するための正面拡大図である。
図において、H2000〜H2600は、それぞれ異なるインク色に対応する記録素子の列(以下ノズル列ともいう)である。第1の記録素子基板H1100には、シアンインクの供給されるノズル列H2000、マゼンタインクの供給されるノズル列H2100、およびイエローインクの供給されるノズル列H2200の3色分のノズル列が構成されている。第2の記録素子基板H1101には、4色分のノズル列が構成されている。すなわち、ブラックインクの供給されるノズル列H2300、レッドインクの供給されるノズル列H2400、グリーンインクの供給されるノズル列H2500、ブルーインクの供給されるノズル列H2600の4色分のノズル列が構成されている。
【0119】
各ノズル列は、記録媒体の搬送方向に1200dpi(dot/inch;参考値)の間隔で並ぶ768個のノズルによって構成され、約2ピコリットルのインク滴を吐出させる。各ノズル吐出口における開口面積は、およそ100平方μmに設定されている。
【0120】
再び図22を参照するに、第1の記録素子基板H1100および第2の記録素子基板H1101は第1のプレートH1200に接着固定されている。ここには、第1の記録素子基板H1100および第2の記録素子基板H1101にインクを供給するためのインク供給口H1201が形成されている。
【0121】
さらに、第1のプレートH1200には、開口部を有する第2のプレートH1400が接着固定されている。この第2のプレートH1400は、電気配線基板H1300と第1の記録素子基板H1100および第2の記録素子基板H1101とが電気的に接続されるように、電気配線基板H1300を保持している。
【0122】
電気配線基板H1300は、第1の記録素子基板H1100および第2の記録素子基板H1101に形成されている各ノズルからインクを吐出するための電気信号を印加するものである。この電気配線基板H1300は、第1の記録素子基板H1100および第2の記録素子基板H1101に対応する電気配線と、この電気配線端部に位置し記録装置本体からの電気信号を受け取るための外部信号入力端子H1301とを有している。外部信号入力端子H1301は、タンクホルダーH1500の背面側に位置決め固定されている。
【0123】
一方、インクタンクH1900を保持するタンクホルダーH1500には、流路形成部材H1600が例えば超音波溶着により固定され、インクタンクH1900から第1のプレートH1200に通じるインク流路H1501を形成している。
【0124】
インクタンクH1900と係合するインク流路H1501のインクタンク側端部には、フィルターH1700が設けられており、外部からの塵埃の侵入を防止し得るようになっている。また、インクタンクH1900との係合部にはシールゴムH1800が装着され、係合部からのインクの蒸発を防止し得るようになっている。
【0125】
さらに、前記部材H1500、1600、1700及びH1800から構成されるタンクホルダー部と、前記部材H1100、H1101、H1200、1300、H1301及びH1400から構成される記録ヘッド部H1001とが接着等で結合されている。これにより、ヘッドカートリッジH1000が構成されている。
5. 記録ヘッドの駆動制御
次に本実施形態において実施される記録ヘッドの駆動制御について説明する。
【0126】
図24は本実施形態で使用する上記記録ヘッドH1001に印加する駆動パルスのタイミングチャートの概略を示す図である。本実施形態では、インク滴の一回の吐出動作において使用する駆動パルス2つのパルスによって構成されており、各パルス毎にパルス幅変調を行うようになっている。すなわち、P1はプレヒートパルス、P2はインターバルタイム、P3はメインヒートパルスを示している。記録ヘッドの設けられた温度センサ(ダイオードセンサ等)の温度情報に基づいて、プレヒートパルスP1、インターバルタイムP2およびメインパルスP3のうち、少なくとも1つ以上の時間幅(パルス幅またはインターバルタイム)が変調される。また、T1はプレヒートパルスの立下りの時刻を、T2はメインヒートパルスの立ち上がりの時刻を、T3はメインヒートパルスの立下りの時刻をそれぞれ示しており、これらによってP1、P2、P3の時間幅が決定される。
【0127】
プレヒートパルスP1は、主にノズル(液路)内のインク温度を制御するためのパルスであり、記録ヘッドH1001の温度センサを利用して検知された温度に従って、そのパルス幅が制御される。このプレヒートパルスP1の幅は、各ノズル列の形成された第1、第2の記録素子基板H1100、H1101を構成するヒータボード上に熱エネルギーを加え過ぎてプレヒートの段階で発泡現象が発生しないような値に設定されている。
【0128】
インターバルタイムP2は、プレヒートパルスP1とメインヒートパルスP3が相互干渉しないように、各ヒートパルスの間に一定の非加熱時間設ける役割を果たす。さらに、このインターバルタイムP2は、ヒータに発生させた熱エネルギーをインク中へ拡散させ、ノズル内のインクの温度分布を均一化する役割も果たす。
【0129】
メインヒートパルスP3は、第1、第2の記録素子基板H1100、H1101に設けられるヒータ上に発泡現象を発生させ吐出口よりインク滴を吐出させるエネルギーを与える。実際の記録ヘッドを駆動するための駆動パルス幅と駆動電圧Vopは、ヒータの面積、抵抗値、膜構造や記録ヘッドのノズル構造によって決まる。
【0130】
図25に駆動電圧Vopを固定している場合の駆動パルスのテーブルの一例を示す。このテーブルはROM E1004に格納される。また、書き換え可能なようにEEPROMやFeRAMに格納しても良い。このテーブルでは、簡略化してP3を全て同じ値としているが、実際には同時に駆動するノズル数が増えると回路の電圧降下が大きくなるためヒータに印加される駆動電圧が低下する。そのため発砲のためのパルスP3を印加したときにヒータに供給される電気エネルギーが低下してしまい、インクを適正に吐出させることができなくなる可能性がある。このため、記録動作時には、ヒータの同時駆動数をモニタリングしておき、そのヒータの駆動数に応じてパルスP3のパルス幅を変調し、ヒータに供給される電気エネルギーが一定となるように制御している。
【0131】
本発明者らは、予備吐出時のインクの吐出速度を低下させると、主滴に続く尾引きが短くなり、サテライト数を減少させることができることを見出した。つまり、インク滴の吐出速度を低下させることによってインクミストの発生量を減少させ得ることが明らかとなった。但し、図24に示すように駆動電圧Vopを一定にしてインクの吐出速度を低下させるためには、プレヒートパルスP1もしくはメインヒートパルスP3の幅を小さくして吐出エネルギーを下げることが必要となる。この場合、ヒータに供給される電気エネルギーが不足してしまい、サテライト数を減少させる以前に、予備吐出そのものが実施できなくなってしまう虞がある。
【0132】
そこで、本実施形態では、記録動作時と予備吐出時とで、図26(a)、(b)に示すように駆動制御のメインヒートパルスP3を切換えてインクの吐出動作を行う。
【0133】
図26(a)は記録時に用いる駆動制御のメインヒートパルスP3を示している。メインヒートパルスP3は、駆動電圧Vopを与えたときに、インクが発砲するのに最低限必要とされるパルス幅Pthより、所定時間だけ長いパルス幅に設定されている。通常、メインパルスの幅P3はPthの1.1〜1.2倍程度がよい。
【0134】
図26(b)は本実施形態における予備吐出駆動制御に用いるヒートパルスP3’を示している。ここに示すヒートパルスP3’の予備吐出駆動電圧Vopは、記録時に用いるメインヒートパルスP3の電圧Vopよりも高くなっている。これにより、予備吐出時においてインクが発泡するのに必要なパルス幅Pth’は、記録時のパルス幅Pthよりも短い時間となり、これに伴ってメインヒートパルスP3’のパルス幅も記録時のメインヒートパルスP3のパルス幅より短くなる。さらに、予備吐出駆動電圧Vop’は記録時の駆動電圧Vopよりも高く設定している。このため、予備吐出においてインクを発泡させるための発泡エネルギー(インク吐出エネルギー)、すなわち、ヒータに供給される電気エネルギーが、記録時にインクを発泡させるエネルギーよりも少なくならないよう調整している。具体的には、駆動制御回路(ASIC E1102)に対し、
Pth×P3≒Pth’×P3’
という条件を設定する。これにより、駆動制御回路は、ヘッド駆動電圧変調回路E3001を制御して記録ヘッドのヒータ(記録素子)に印加される印加電圧を変更すると共に、前記印加電圧をヒータに印加する時間を変更する。なお、この記録ヘッドのヒータに印加されるパルス状の印加電圧を、以下の説明においては駆動パルスとも言う。また、前記印加電圧の印加時間を駆動パルス幅、前記印加電圧を駆動電圧とも言う。
【0135】
以上のようにして、予備吐出における駆動電圧および駆動パルス幅を変更することにより、発砲のためのエネルギー不足による予備吐出自体が実施できなくなる危険性を回避でき、かつ吐出速度を遅くして尾引きを短くしサテライトを減らすことができる。その結果、予備吐出時のミストの発生量を減少させることができる。
【0136】
図26に示すような駆動パルスを用いることにより、上記のような結果が得られる理由として以下のようなことが考えられる。
すなわち、本実施形態における予備吐出の駆動制御では、記録時より短時間で記録時と同等のエネルギーをヒーターボードに与えるため、ヒーター上での熱拡散範囲が狭くなり、ヒーターから熱を受け発泡に寄与するインクの量が少なくなる。その結果、発泡自体が小さくなり、吐出するインク滴の運動エネルギーも小さくなって吐出量・吐出速度を下げることができる。
【0137】
上記のような現象は、図27に示すような実験結果によって裏付けられる。図27は、発泡エネルギーを一定にした場合における駆動電圧VHとインク吐出量Vdの関係を測定した結果を示している。なお、この測定では、キヤノン株式会社製のブラックインクBCI−7を用いた。図27から明らかなように、発泡エネルギーを一定にした状態で、ヒートパルス電圧を高めることにより、インクの吐出速度は減少している。従って、本実施形態の予備吐出のように、予備吐出駆動電圧Vop’を記録時の駆動電圧Vopより高めることによって、吐出速度を低下させることができると共に、吐出されるインク量が低下する。このインク量の低下によって主滴のサイズが小さくなる。
【0138】
そこで、本実施形態では、サイズが小さい主滴でも予備吐出受けに到達できるように、予備吐出受けと記録ヘッドの吐出口との距離を設定している。
ここで、この距離の設定方法について説明する。
空気中を飛翔するインク滴の挙動は下記の近似式でおよそ説明がつく。
【0139】
ストークス近似から導かれる液滴の運動方程式:
【0140】
【数1】

【0141】
【数2】

【0142】
【数3】

【0143】
但し
【0144】
【数4】

【0145】
mは液滴質量、rは液滴半径、ρは空気密度、νは空気動粘度である。
【0146】
この運動方程式において、予備吐出時の主滴の吐出量をmに、そのときの主滴半径をrにそれぞれ代入するとどのくらいの飛翔距離で主滴の速度がゼロに近づくかがわかる。本実施形態では、予備吐出時の主滴の吐出量に基づいて、速度がゼロに近くなる飛翔距離を上記のようにして求め、その飛翔距離よりも近い位置に予備吐受けを設けている。
【0147】
例えば、実測でミスト滴の径が約10μmの場合には、ミストの質量が0.5ngとわかる。そのときミスト滴の初速が8m/sであれば、ρ=0.001293g/cm
ν=0.15cm/sとしたとき、飛翔距離は約2.3mmになる。従って、このような条件の場合は、予備吐受けの位置を記録ヘッドのインク吐出口から約2mm離れた位置に、予備吐出受けを設定すれば良い。なお、予備吐出受けは、図29に示したものと同様に、インク吸収体を有する構成とすることが望ましい。但し、サテライトの発生を抑えることができる本実施形態では、外壁部を設ける必要はない。
【0148】
以上のように、本実施形態では、予備吐出時の尾引きを短くしてサテライトの数を減らすと共に、予備吐受けまでの距離を最適化することによってサテライトがミストになることを防ぐことにより、予備吐出時に発生するミスト量を減らすことができる。
【0149】
また、本発明における予備吐出駆動制御では、メインヒートパルスP3を記録時より小さく設定したが、同様な効果が得られるのであれば、プレヒートパルスP1を小さくしても良い。また、プレヒートパルスP1を用いず、メインヒートパルスP3のみでインク吐出を行う場合にも、上記実施形態のようにメインヒートパルスを変調することによって同様の効果を得ることができる。
【0150】
また、上記実施形態では、シリアル型のインクジェット記録装置を例に採り説明したが、本発明は、長尺な記録ヘッドを定位置に保持し、記録媒体を移動させて記録を行うライン型のインクジェット記録装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】本発明の一実施形態で適用する記録システムにおける画像データ処理の流れを説明するための図である。
【図2】図1の記録システムにおいて、ホスト装置のプリンタドライバが記録装置に渡す記録データの構成例を示す説明図である。
【図3】実施形態で用いられる記録装置がドット配列パターン化処理で変換する入力レベルに対する出力パターンを示した図である。
【図4】実施形態で用いられる記録装置が実行するマルチパス記録方法を説明するための模式図である。
【図5】実施形態で用いられる記録装置が実行するマルチパス記録方法に適用されるマスクパターンの一例を示す説明図である。
【図6】実施形態で用いられる記録装置の斜視図であり、非使用時における前面から見た状態を示している。
【図7】実施形態で用いられる記録装置の斜視図であり、非使用時における背面から見た状態を示している。
【図8】実施形態で用いられる記録装置の斜視図であり、使用時における前面から見た状態を示している。
【図9】実施形態で用いられる記録装置本体の内部機構を説明するための図であり、右上部からの斜視図である。
【図10】実施形態で用いられる記録装置本体の内部機構を説明するための図であり、左上部からの斜視図である。
【図11】実施形態で用いられる記録装置本体の内部機構を説明するための側断面図である。
【図12】実施形態で用いられる記録装置の斜視図であり、フラットパス記録時における前面から見た状態を示している。
【図13】実施形態で用いられる記録装置の斜視図であり、フラットパス記録時における背面から見た状態を示している。
【図14】実施形態で行われるフラットパス記録を説明するための模式的側断面図である。
【図15】実施形態で用いられる記録装置本体におけるクリーニング部を示す斜視図である。
【図16】図15のクリーニング部におけるワイパ部の構成および動作を説明するための断面図である。
【図17】図15のクリーニング部におけるウエット液転写部の構成および動作を説明するための断面図である。
【図18】本発明の実施形態における電気的回路の全体構成を概略的に示すブロック図である。
【図19】図18におけるメイン基板の内部構成例を示すブロック図である。
【図20】図18におけるキャリッジ基板に実装されるマルチセンサの構成例を示す図である。
【図21】実施形態で適用したヘッドカートリッジにインクタンクを装着する状態示した斜視図である。
【図22】図21におけるヘッドカートリッジの分解斜視図である。
【図23】図22に示した第1の記録素子基板および第2の記録素子基板の構成を説明するための正面拡大図である。
【図24】本実施形態で使用する上記記録ヘッドに印加する駆動パルスのタイミングチャートの概略を示す図である。
【図25】本実施形態において、駆動電圧を固定している場合の駆動パルスのテーブルの一例を示す。
【図26】本実施形態において、記録動作時と予備吐出時とで切り換えて使用する駆動パルスを示す図である。
【図27】本実施形態において、発泡エネルギーを一定にした場合における駆動電圧とインク吐出量の関係を測定した結果を示す図である。
【図28】インク吐出の初期からインク滴形成までの過程を経過時間毎に示した説明図である。
【図29】記録媒体と、予備吐出受けに設けられたインク吸収体と、インク吐出口との相対位置を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0152】
J0009 ヘッド駆動回路
H1001 記録ヘッド
J0011 記録システム
J0012 ホスト装置
J0013 記録装置
M4000 キャリッジ
M5000 ポンプ
M5010 キャップ
M5011 キャップ吸収体
E0001 キャリッジモータ
E0002 LFモータ
E0012 CRFFC(フレキシブルフラットケーブル)
E0013 キャリッジ基板
E0014 メイン基板
E0015 電源ユニット
E0017 ホストI/F
E1004 ROM
E1010 電源制御回路
E1014 制御バス
E1021 ヘッド制御信号
E1024 電源制御信号
E1102 ASIC
E1103 ドライバ・リセット回路
E3001 ヘッド駆動電圧変調回路
E3002 ヘッド温度検出回路
E3007 RAM
H1000 ヘッドカートリッジ
H1001 記録ヘッド
H1900 インクタンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドに設けられた複数の記録素子に駆動電圧を印加することによりインクを吐出するインクジェット記録装置であって、
前記記録素子に印加する前記駆動電圧および当該駆動電圧の印加時間を決定する決定手段を備え、
前記決定手段は、前記駆動電圧と前記印加時間との乗算値を一定に保ちつつ、記録に寄与するインク吐出時と記録に寄与しないインク吐出時とで前記駆動電圧および前記印加時間が異なるように、前記駆動電圧および前記印加時間を決定することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記決定手段は、記録に寄与しないインク吐出において前記記録素子に印加する前記駆動電圧を、記録に寄与するインク吐出において前記記録素子に印加する前記駆動電圧より高めることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記決定手段は、記録に寄与しないインク吐出において前記記録素子に印加する前記駆動電圧の印加時間を、記録に寄与しないインク吐出において前記記録素子に印加する前記駆動電圧の印加時間より短くすることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記記録に寄与するインク吐出とは、記録媒体上へのインクの吐出であり、
記録に寄与しないインク吐出とは、前記記録媒体の存在位置から外れた位置に設けられたインク受け部へのインク吐出であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記記録素子は、前記駆動電圧に応じて熱エネルギーを発する電気熱変換素子であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
記録ヘッドに設けられた複数の記録素子に駆動電圧を印加することによりインクを吐出するインクジェット記録装置の制御方法であって、
前記記録素子に印加する前記駆動電圧および当該駆動電圧の印加時間を決定する工程を含み、
前記決定工程では、前記駆動電圧と前記印加時間との乗算値を一定に保ちつつ、記録に寄与するインク吐出時と記録に寄与しないインク吐出時とで前記駆動電圧と前記印加時間が異なるように、前記駆動電圧および前記印加時間を決定することを特徴とするインクジェット記録装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2007−160753(P2007−160753A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−360993(P2005−360993)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】