インクジェット記録装置
【課題】 インクジェット記録装置において、予備吐出に伴うスループット低下を抑制しつつ、予備吐出に伴うインクミストの発生量を低減する。
【解決手段】 キャップ6と、このキャップよりも記録領域に近い位置にあるインク受け部6とを設け、キャップとインク受け部のいずれに対しても予備吐出可能とする。そして、予備吐出の回数が多いときには、キャップ6に対して予備吐出を行う第1予備吐出モードを選択し、予備吐出の回数が少ないときには、インク受け部9に対して予備吐出を行う第2予備吐出モードを選択する。
【解決手段】 キャップ6と、このキャップよりも記録領域に近い位置にあるインク受け部6とを設け、キャップとインク受け部のいずれに対しても予備吐出可能とする。そして、予備吐出の回数が多いときには、キャップ6に対して予備吐出を行う第1予備吐出モードを選択し、予備吐出の回数が少ないときには、インク受け部9に対して予備吐出を行う第2予備吐出モードを選択する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関し、特に記録ヘッドの回復処理として予備吐出を行う機能を備えたインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録対象となる文字や画像によっては、インクジェット記録ヘッドの複数の吐出口のうち、比較的長期間、インクが吐出されない吐出口が存在することもある。このような吐出口では、インクの揮発成分(主に水分)が蒸発してインクが増粘し、この増粘に起因して吐出不良が生じる場合がある。このような吐出不良を抑制するために、非記録領域で吐出口からインクを吐出することで吐出口内部の増粘インクを除去する、いわゆる予備吐出が行なわれている。予備吐出を行うことで、記録ヘッドからのインクの吐出状態を良好にすることができる。
【0003】
上述した予備吐出は、インクの揮発成分の蒸発を抑制するために記録ヘッドの吐出口面を覆うためのキャップに対して行われるのが一般的である。このようなキャップは、記録ヘッドの記録領域から外れた非記録領域に設けられるのが一般的で、記録ヘッドの移動方向において記録媒体の側端部から所定の距離隔てた位置に配置される。
【0004】
前述の予備吐出動作をキャップに対して行う場合、記録ヘッドをキャップの直上へ移動させる必要があるが、記録媒体の側端部からキャップまでの距離が比較的大きいと記録ヘッドの移動に時間がかかり、スループットが低下してしまう。特に記録ヘッドの走査ごとに予備吐出を行う場合、スループットの低下は顕著になる。
【0005】
このようなスループット低下を改善するために、キャップよりも記録媒体側端部に近い位置に予備吐出専用のインク受け部を設け、このインク受け部に対し予備吐出を行うことで、予備吐出のための記録ヘッド移動時間を低減する技術が提案されている(特許文献1参照)。この特許文献1によれば、キャップに対して予備吐出を行うよりもスループットを向上させることができる。
【特許文献1】特開平08−118674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載される技術では、スループットを向上させることはできるが、インクミストの発生量を抑制するには十分でない。すなわち、特許文献1では、記録ヘッドの移動中に予備吐出が指示された場合、インクミストの発生量に関連する予備吐出の回数に関わらず、キャップ部と予備吐出インク受け部の近い方へ予備吐出を行う。従って、予備吐出の回数が多い場合、例えば、吐出不良が起こりやすい環境下(例えば、低湿環境下)において予備吐出回数を増加させた場合であっても、予備吐出インク受け部に対して予備吐出が行われることになる。予備吐出インク受け部に対して多量の予備吐出を行うと、インクミストの発生量が多くなってしまい、装置内部の部材や記録媒体が汚されてしまう場合がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、予備吐出に伴うスループット低下を抑制しつつ、予備吐出に伴うインクミストの発生量を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明は、記録ヘッドを用いて記録を行うインクジェット記録装置であって、前記記録ヘッドをキャッピングするためのキャップと、前記キャップよりも、前記記録ヘッドの記録領域に近い位置に設けられたインク受け部と、前記記録ヘッドからのインクの吐出状態を良好にするための予備吐出を前記キャップに対して行う第1予備吐出モードまたは前記予備吐出を前記インク受け部に対して行う第2予備吐出モードを選択する選択手段とを備え、前記選択手段は、前記予備吐出の回数が所定数以上の場合には前記第1予備吐出モードを選択し、前記予備吐出の回数が前記所定数より少ない場合には前記第2予備吐出モードを選択することを特徴とする。
【0009】
以上の構成によれば、予備吐出の回数が少ないときにはスループットに有利なインク受け部に対する予備吐出を実行し、予備吐出の回数が多いときにはインクミスト発生の抑制に有利なキャップ部に対する予備吐出を実行する。これにより、予備吐出に伴うスループット低下を抑制しつつも、予備吐出に伴うインクミスト発生量を低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、予備吐出に伴うスループット低下を抑制しつつ、予備吐出に伴うインクミストの発生量を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は本実施形態で用いるインクジェット記録装置の概略構成図、図2は図1のインクジェット記録装置を記録媒体の搬送方向からみた図である。このインクジェット記録装置1は、記録ヘッド2が記録媒体上を往復移動(往復走査)しながらインクを吐出して記録を行うシリアル方式の記録装置である。以下、記録ヘッドの「移動」のことを記録ヘッドの「走査」ともいう。記録ヘッド2は、4つの記録ヘッド2a、2b,2c,および2dを有している。これら記録ヘッド2a、2b,2c,および2dはブラック(K)、シアン(C),マゼンタ(M),イエロ(Y)のインクに対応するものであって、各色の記録ヘッドはインクを吐出するための複数の吐出口が配置された吐出口面を有している。キャリッジ3は、記録ヘッド2a〜2dを搭載するためのもので、ガイド軸4、5に沿って往復移動する。記録ヘッド2a〜2dが搭載されたキャリッジ3の往復移動中に記録ヘッド2からインクが吐出され、これにより、プラテン11により支持される記録媒体10上に画像が形成される。また、記録ヘッドの移動可能領域内の非記録領域には、後述するキャップ6(6a〜6d)やワイパーブレード8等の回復処理機構15やインク受け部9が設けられており、非記録領域において記録ヘッドの吸引処理やキャッピング処理、予備吐出動作等が実行される。この予備吐出動作は様々なタイミングで実行され、例えば、記録ヘッドの走査と走査の間(詳しくは、キャリッジの反転時)のタイミングにて実行される。なお、予備吐出とは、記録ヘッドからのインクの吐出状態を良好にするために、非記録領域にインクを吐出する動作をいう。
【0013】
キャップ6は、記録ヘッド2a〜2dにそれぞれ対応するキャップ6a〜6dを有している。これらキャップ6は、記録ヘッド2の吐出口面をキャッピングすることで、吐出口からのインクの蒸発を抑制する乾燥抑制用キャップとして機能する。また、キャップ6は、ポンプ12によって記録ヘッド2からインクを強制的に排出させるための吸引用キャップとしても機能する他、記録ヘッドから予備吐出されたインクを受ける予備吐出用キャップとしても機能する。
【0014】
また、キャップ6は上下方向に昇降可能である。キャッピング時にはキャップ6が上方へ移動し、図17に示されるように記録ヘッドの吐出口面がキャップによって覆われる。一方、キャッピング状態から開放するときにはキャップ6は下方へ移動し、図18に示されるように記録ヘッドとキャップとが離間した状態となる。なお、このキャップの昇降機構については第2の実施実施形態について詳述するので、ここではその説明を省略する。
【0015】
インク受け部9は、記録ヘッド2により予備吐出されたインクを受ける部材である。インク受け部9に予備吐出されたインクは、後述の図6に示されるように重力方向下方に自重によって流れていき、最終的には経路13を介して廃インク収容部14に収容される。また、図1および図2に示される通り、インク受け部9は、キャップ6よりも、記録ヘッドの記録領域(記録ヘッドの移動可能領域内で且つ記録媒体に記録できる領域)に近い位置に配置されている。従って、インク受け部に予備吐出を行う方が、キャップに予備吐出を行うよりも、記録ヘッドの移動時間が短くて済むため、スループット向上には効果的である。
【0016】
このように本実施形態では、インク受け部9とキャップ6に予備吐出を行うことができる構成となっており、後述する図19の制御部200において、インク受け部9とキャップ6のいずれで予備吐出を行うかが選択される。詳しくは、予備吐出の回数が多い場合には、予備吐出をキャップ6に対して行う第1の予備吐出モードが選択され、予備吐出の回数が少ない場合には、予備吐出をインク受け部に対して行う第2の予備吐出モードが選択される。このように制御部200は、予備吐出の実行位置が異なる複数の予備吐出モードの中から、予備吐出の回数に応じた予備吐出モードを選択するための選択手段として機能する。
【0017】
ワイパーブレード8は、記録ヘッドの吐出口面をワイピングするための部材であり、記録動作や予備吐出動作によって記録ヘッドの吐出口面に付着したインクを取り除くものである。
【0018】
ポンプ12は、キャップ6を介して記録ヘッド2からインクを吸引するための手段として機能する他、予備吐出によってキャップ6に溜まったインクを廃インク収容器11へ導出するための手段としても機能する。具体的には、記録ヘッドからインクを吸引する場合には、図17に示されるように記録ヘッドの吐出口面をキャップ6により覆った状態でポンプ12を駆動する。これにより、キャップ内に負圧が発生し、記録ヘッドからインクを吸引することができる。一方、キャップ内に溜まったインクを廃インク収容器11へ導く場合には、図18に示されるように記録ヘッド2とキャップ6を離間した状態でポンプ12を駆動する。これにより、キャップ内に溜まったインクを廃インク収容器11に導くことができる。なお、後述する通り、キャップ6に対する予備吐出は、図18に示されるように記録ヘッド2とキャップ6が離間された状態で行われる。
【0019】
このようにしてポンプ12より吸引されたインクや予備吐出によりキャップ6に溜まったインクは、キャップ6と廃インク収容部14を接続するチューブ13を介して、装置底部に設けられた廃インク収容部14に導出される。廃インク収容部14内には、発泡スポンジや繊維等のインク吸収部材が充填されており、廃インク収容部14に導入されたインクはインク吸収部材によって保持される。
【0020】
環境センサ30は湿度を検知するためのセンサであり、この環境センサ30によって記録装置1の使用環境を検知することができる。この環境センサ30の検知結果は後述する図19の制御部200に送られ、RAM212に格納される。制御部200は、この検知結果に基づいて、予備吐出の回数を設定(変更)する。例えば、図11に示されるように、インク増粘が生じにくい多湿環境・常湿環境の場合には予備吐出数を比較的少ない数に設定し、インク増粘が生じやすい低湿環境の場合には予備吐出数を比較的少ない数に設定する。
【0021】
次に、キャップ6の構成並びにキャップ6に対して予備吐出を行う場合について説明する。図3はキャップ6の斜視図であり、図4はキャップ6に対して予備吐出を行うときの様子を示した図である。キャップ9は、主に、記録ヘッドの吐出口面を覆うゴムキャップ21、ゴムキャップ21内に設けられたインク吸収部材22、並びに、ゴムキャップ21を保持するキャップホルダ23により構成される。ゴムキャップ21は、記録ヘッドとの密着性をあげるために、記録ヘッドと当接している状態で吐出口面を囲めるようなリブ21aが形成されている。ゴムキャップ21の内部には、インクを保持するためのインク吸収部材22が装填され、ゴムキャップ21全体をキャップホルダ23が囲っている。キャップホルダ23の下部には、図2に示したチューブ13が接続されており、インク吸収部材22のインクはゴムキャップの穴21bを介してチューブ13に導かれる。チューブ13に導かれたインクは、上述の通り、廃インク収容部14に導かれる。
【0022】
キャップに対して予備吐出されたインクは、インクミストにならなければ、キャップ内のインク吸収部材22に着弾することになる。図4に示される通り、記録ヘッドの吐出口面とキャップ内のインク吸収部材22との距離は比較的小なる距離L1であるため、記録ヘッドから予備吐出されたインクがキャップ内にインク吸収部材22に到達せずにインクミストとなってしまう割合は少ない。このように予備吐出をキャップに対して行う第1予備吐出モードは、インクミストの発生を抑制するのに効果的である。なお、記録ヘッドの吐出口面とキャップ内のインク吸収部材22との距離L1は、後述するように、記録ヘッドの吐出口面とインク受け部との距離L2よりは短くなっている。
【0023】
次に、インク受け部9の構成並びにインク受け部9に対して予備吐出を行う場合について説明する。図5はインク受け部9の斜視図であり、図6はインク受け部9に対して予備吐出を行うときの様子を示した図である。インク受け面9aは予備吐出されたインクを受ける面であって、着弾したインクを穴9bへ流すために傾斜している。また、インク受け面の周囲には、受け面9aよりせりあがったフチ9cが形成されている。インク受け部9は、プラスチック一体成型で形成され、非記録領域内の、記録領域の近傍(記録媒体の側端部が通過する位置の近傍)にビス止めされただけの単純な構造である。
【0024】
インク受け部に対して予備吐出されたインクは、インクミストにならなければ、インク受け部内のインク受け面9aに着弾することになる。図6に示される通り、記録ヘッドの吐出口面とインク受け部内のインク受け面9aとの距離は比較的大なる距離L2であるため、記録ヘッドから予備吐出されたインクがインク受け面9aに到達せずにインクミストとなってしまう割合が多くなってしまう。なお、距離L2は、傾斜しているインク受け面と吐出口面との最小距離と最大距離の中間の値としている。このように予備吐出をインク受け部に対して行う第2予備吐出モードは、インクミストの発生を抑制するのには効果的ではない。しかし、インク受け部9はキャップ6よりも記録領域に近い位置に設けられているため、予備吐出位置まで記録ヘッドを移動させるのに要する時間は短くて済む。従って、第2予備吐出モードは、スループット向上に効果的なモードといえる。
【0025】
図19は、本実施形態で適用可能なインクジェット記録装置における制御系の概略構成を示すブロック図である。インクジェット記録装置1に接続されているホストコンピュータ300は、アプリケーション等から受け取った画像データをプリンタドライバにより処理し、処理した画像データを記録装置1に送信する。また、ホストコンピュータは、プリンタドライバにおいてユーザによって指定された記録媒体の種類(普通紙、光沢紙、厚紙等)や記録モードの種類(はやい、ふつう、きれい等)等の記録条件に関する情報や記録開始指令を示す情報等も記録装置1に送信する。記録装置1に送信された画像データやその他の情報等は、制御部200のRAM212に格納される。
【0026】
制御部200は、CPU210、ROM211、RAM212を備えている。CPU210は、ROM211に格納されている制御プログラムやテーブルに従って、所定の演算、判定、設定、選択、決定および制御等を行う。例えば、環境センサ30による検知結果に基づいて必要な予備吐出の回数を設定(判定)したり、この予備吐出の回数に従って実行すべき予備吐出モードを選択(決定)したりする。より詳しくは、制御部200は、図11に示されるように、多湿環境の場合には予備吐出の回数をX回に設定し、常湿環境の場合には予備吐出の回数をY回(Y>X)に設定し、低湿環境の場合には予備吐出の回数をZ(Z>Y>X)回に設定する。そして、設定された予備吐出の回数が閾値以上(ここでは、Z回以上)であれば上述した第1の予備吐出モードを選択し、設定された予備吐出の回数が閾値未満であれば上述した第2の予備吐出モードを選択する。また、CPU210は、ホストコンピュータにより送信された記録開始指令を示す情報に従って、データ処理やキャップ離間動作等の記録処理を開始する。
【0027】
ROM211は、CPU210によって実行される制御プログラムや予備吐出回数を決定するためのテーブルなどを格納するためのものである。このROM211には、例えば、図20、図21に示されるフローチャートを実行するための制御プログラムや、図11に示されるような環境センサによる検知結果と予備吐出回数との対応関係を示したテ−ブル等が格納されている。RAM212は、ホストコンピュータから送信される画像データや記録条件に関する情報、記録開始指令を示す情報等を格納するためのデータメモリ及びCPU210によって演算処理を実行するためのワーキングメモリとして機能するものである。
【0028】
また、制御部200には、ヘッド駆動回路202、キャリッジモータ204、搬送モータ206、キャップ駆動モータ67等が接続されている。ヘッド駆動回路202は、記録ヘッド2の吐出口に連通するインク流路内に設けられた記録素子(例えば、ヒータ)を駆動するための回路である。キャリッジモータ204は、キャリッジ3を往復移動させるためのモータであり、搬送モータ206は、記録媒体を搬送するための搬送ローラ205を回転させるモータであり、キャップ駆動モータ67は、キャップ6を上下方向に移動させるモータである。そして、制御部200は、記録開始指令に従って、ヘッド駆動回路202、キャリッジモータ204および搬送モータ206を駆動することによって、インクの吐出、キャリッジの移動および記録媒体の搬送を制御し、これにより記録媒体に画像を記録させる。このように制御部200は、記録媒体に画像を記録させる記録制御手段として機能する。また、制御部200は、ヘッド駆動回路202、キャリッジモータ204を駆動することによって、キャップ6あるいはインク受け部9に対する予備吐出動作を制御する予備吐出制御手段としても機能する。
【0029】
以上の構成を有する記録装置1では、ホストコンピュータ300のプリンタドライバから記録開始指令を示す情報を受け取ると、不図示の給紙部により記録媒体10が給紙される。そして、給紙された記録媒体10は、プラテン11に支持されながら搬送ローラ205によって、記録ヘッド2に対向する位置(記録領域)まで搬送される。次いで、記録ヘッド2に対向する位置まで搬送された記録媒体10に対して、記録ヘッド2をキャリッジ50と共に走査方向に移動(走査)させながら、画像データに従って記録ヘッドからインクを吐出させて、1バンド分の記録を行う。このような記録走査が終了すると、走査方向と直交する搬送方向へ記録媒体10を所定量だけ搬送する。その後、次のバンドへの記録を行うために、再度記録走査を行う。このような記録走査と搬送動作を繰り返すことにより、記録媒体に所望の画像が形成される。
【0030】
図20は、本実施形態の予備吐出動作の処理を示すフローチャートである。この処理は、ROM211に格納されている制御プログラムに従って、CPU210が各部を制御することにより実行される。
【0031】
まず、記録開始を示す指令が入力されると、ステップ1において環境センサ30により検知した結果を確認する。より詳しくは、CPU210がRAM212に記憶されている検知結果を読み出すことで、使用環境を確認することになる。本実施形態では、低湿環境、常湿環境および多湿度環境のいずれであるかを検知するものとし、検知した結果はRAM212に記憶される。環境センサによる検知は定期的あるいは不定期的に何度も行われるため、RAMには検知結果が上書きの保存されることになる。
【0032】
環境センサによる検知は、記録開始指令を受けたタイミングで実行してもよいし、記録開始指令とは無関係に所定のタイミング(例えば、電源オン時のタイミングや所定期間経過毎のタイミング等)で実行してもよい。前者の場合、ステップS1では、記録開始指令を受けた直後に使用環境を検知し、その検知結果をRAMに格納し、RAMに格納された検知結果を読み出すことになる。一方、後者の形態の場合、ステップS1では、記録開始指令を受ける以前にRAMに格納された検知結果を読み出すことになる。
【0033】
次いで、ステップS2では、ステップS1において得られた使用環境に応じて、記録走査と記録走査の間に行われる予備吐出動作における各吐出口からの予備吐出数(予備吐出の回数)を設定する。より詳しくは、環境センサによる検知結果(多湿、常湿、低湿)と各吐出口からの予備吐出数(X発、Y発、Z発)との対応関係を示したテ−ブルがRAM212に格納されており、このテーブルを参照することで、環境に応じた予備吐出数を設定する。なお、記録走査と記録走査の間に行われる予備吐出とは、非記録領域を記録ヘッドが走査しているときに行われる予備吐出、あるいは、非記録領域において記録ヘッドが停止しているときに行われる予備吐出を指す。また、各吐出口からの予備吐出数は、記録ヘッド2a〜2d間で別個の値を設定してもよいし共通の値を設定してもよいが、本例では、記録ヘッド間で共通の値を設定するものとする。
【0034】
使用環境が常湿環境あるいは多湿環境の場合、低湿環境の場合に比べて、吐出不良は起こりにくい。従って、各吐出口からの予備吐出数は比較的少なめに設定する。例えば、図11に示されるように、多湿環境の場合にはX発(例えば、Xは6発)、常湿環境の場合にはY発(Y>X。例えば、Yは8発)に設定する。一方、使用環境が低湿環境の場合、インクの揮発成分(主に水分)が吐出口から蒸発しインクが増粘しやすいため、吐出口からのインクの吐出状態が不安定になりやすい。そこで、本実施形態では、使用環境が低湿環境の場合、常湿環境あるいは多湿環境の場合に比べて、予備吐出数を増加させる。すなわち、図11に示されるように、予備吐出回数をZ発(Z>Y>X。例えば、Zは30発)に設定する。なお、本例では、X=6、Y=8、Z=30に設定したが、X,Y,Zの値はこれに限られるものではない。X,Y,Zの値は、記録ヘッドからのインクの吐出状態を良好にするという予備吐出の機能が発揮できる範囲内で、インクの特性や記録ヘッドの特性に応じて適宜決定すればよい。
【0035】
次いで、ステップS3では、ステップS2において設定された予備吐出の回数が所定数(閾値)以上であるか否かを判定する。ここで、閾値(所定数)は、Z発(Z=20)に設定されている。ステップS3において予備吐出の回数が閾値以上であると判定された場合には、ステップS4においてキャップに対して予備吐出を行う第1の予備吐出モードを設定する。図7は、この第1の予備吐出モードに従って予備吐出を行う状態を示す図である。上述した通り、予備吐出数が多いときはインクミストの発生量が多くなるため、記録ヘッドの吐出口面までの距離(L1)が短いキャップ6に対して予備吐出が行なわれる。すなわち、キャップ6の場合、インク受け部9に比して、記録ヘッドの吐出口面までの重力方向(インク吐出方向)の距離が相対的に近いため、予備吐出されたインクが着弾地点まで到達せずにミストになってしまう確率が低く、ミストを抑制するのに有効である。
【0036】
一方、ステップS3において予備吐出の回数が閾値よりも少ないと判定された場合には、ステップS5においてインク受け部9に対して予備吐出を行う第2の予備吐出モードを設定する。図8は、この第2の予備吐出モードに従って予備吐出を行う状態を示す図である。上述した通り、予備吐出数が少ないときは、スループットに有利なインク受け部9に対して予備吐出が行われる。すなわち、予備吐出数が少ないときは、もともとインクミストの発生が少ないため、記録ヘッドの吐出口面までの距離(L2)が長いインク受け部9に予備吐出を行っても、問題になるほどミストは発生しない。そこで、インク受け部9を選択し、キャリッジ反転時の加速中に、記録ヘッド2a→2b→2c→2dの順に予備吐出を行い、予備吐出のための時間を削減し、スループット低下を抑制している。なお、図8(A)は記録ヘッド2aから予備吐出を行っている様子であり、図8(B)は記録ヘッド2dから予備吐出を行っている様子である。
【0037】
以上のようにして、第1の予備吐出モードあるいは第2の予備吐出モードを実行することで、図20に示されるフローチャートの処理は終了する。
【0038】
以上説明したように本実施形態によれば、予備吐出の回数が少ないときにはスループットに有利なインク受け部に対する予備吐出を実行し、予備吐出の回数が多いときにはインクミスト発生の抑制に有利なキャップ部に対する予備吐出を実行する。これにより、予備吐出に伴うスループット低下の抑制と、予備吐出に伴うインクミスト発生の低減とを両立させることができる。
【0039】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。予備吐出の回数が少ないときには第1の予備吐出モードを実行し、予備吐出の回数が多いときには第2の予備吐出モードを実行する点は、上述した第1の実施形態と同じであるため、予備吐出モードの選択の仕方については説明を省略する。
【0040】
本実施形態では、記録ヘッドとプラテンの間隔(以下、ヘッド−プラテン間距離)を変更できる機構を有しており、必要に応じてヘッド−プラテン間距離を広げる。ヘッド−プラテン間距離を広げた状態で予備吐出を行うと、インクミストの発生量が増加する傾向になる。特に、予備吐出数が多い第1の予備吐出モードでは上記傾向が顕著である。そこで、本実施形態では、ヘッド−プラテン間距離を広げた状態で第1の予備吐出モードを実行しても、インクミストの発生量が増えないようにするべく、記録ヘッドにキャップを近づけようにキャップを上方へ移動させる。すなわち、ヘッド−プラテン間距離が広がったとしても、記録ヘッドとキャップとの間隔(以下、ヘッド−キャップ間距離)が変わらないように、ヘッド−キャップ間距離を制御するのである。これにより、ヘッド−キャップ間距離は第1の実施形態の場合と同じになるため、予備吐出数が多い第1の予備吐出モードでのインクミストの発生を増加させずに済む。
【0041】
なお、ヘッド−プラテン間距離を広げた状態で第2の予備吐出モードを実行すると、広げた距離にもよるが、第1の実施形態よりはインクミストが発生しやすくなる。しかし、上述した通り、第2の予備吐出モードでは予備吐出数が少ないため、インクミストは殆ど問題にならない。従って、本実施形態では、第1の実施形態と同じように第2の予備吐出モードを実行する。
【0042】
ここで、記録ヘッドとプラテンの間隔を変更するための基本構成の一例に関し、図12〜図16を用いて説明する。図12および図13は、キャリッジを走査方向からみた断面図であり、図12はヘッド−プラテン間距離が比較的大きい状態を表しており、図13はヘッド−プラテン間距離が比較的小さい状態を表している。
【0043】
図14〜図16はキャリッジを記録媒体搬送方向からみた断面図であり、図14は記録ヘッドによる記録時の様子を、図15は予備吐出やキャッピングを行うときの様子を、図16はヘッド−プラテン間距離を変更するときの様子を、それぞれ示している。
【0044】
記録ヘッド2を保持するキャリッジ3は、トランスレータ3a、ヘッドホルダ3b、昇降カム3c、昇降カム軸3d、昇降ガイド3e、昇降ばね3f、伝達ギア3g、走査ガイド軸受3hによって構成される。ヘッドホルダ3bは、記録ヘッド2を固定するための部材である。ヘッドホルダ3bは、昇降ばね3fによって矢印AA方向に付勢されており、昇降カム3cが回転することにより昇降ガイド3eに沿って矢印AA及びその反対方向にトランスレータ3a内を移動する。昇降カム3cは、伝達ギア3gと共に昇降カム軸3dに結合しており、伝達ギア3gと共に矢印AB及びその反対方向に回転する。
【0045】
キャリッジ3は、その移動領域(走査領域)において記録中は図14のようにプラテンおよび記録媒体の真上に位置しているが、キャップへの予備吐出時やキャッピング時には図15のように回復処理機構15の真上に位置する。更に、上述した通り、記録ヘッドとプラテンの間隔(ヘッド−プラテン間距離)を切り替える場合、キャリッジ3は図16に示される位置に移動する。このとき、伝達ギア3gは、装置本体シャーシにとりつけられた切替ギア3iと係合する。切替ギア3iは、切替モータ3jから駆動力を受け矢印AB及びその反対方向に回転し、伝達ギア3gを回転させることで記録ヘッドとプラテンとの間隔を変更することができる。3kは切替ポジションセンサで、伝達ギア3gの特定部位を検出しその回転位置を特定可能である。そのため、伝達ギア3gを特定の回転位置で停止するように切替モータ3jを制御部200によって制御することで、記録ヘッドとプラテンとの間隔を所定の間隔に設定することができる。
【0046】
なお、トランスレータ3a、昇降カム3c、昇降カム軸3d、昇降ガイド3e、昇降ばね3f、伝達ギア3g、走査ガイド軸受3h、切替ギア3iは、切替モータ3j等は間接的に記録ヘッドを昇降させるものである。従って、これら部材をヘッド昇降手段と称する。
【0047】
使用環境による記録媒体の変形や記録媒体自体の腰により、記録ヘッドと記録媒体とが接触することで画像品位が低下してしまう場合がある。しかし、前述の構成によって、記録ヘッドと記録媒体の間隔を広げることで、厚紙を用いる場合や用紙浮き・用紙の変形等が生じる場合であっても、記録ヘッドと記録媒体とを接触させないようにすることができる。これにより、記録ヘッドと記録媒体とが接触することで生じる画像品位の低下を招かずに済む。
【0048】
ここで、記録ヘッドを通常よりもΔLだけ上昇させて、記録ヘッド2とプラテンの間隔を広くした状態での予備吐出制御について、図9〜図10を用いて説明する。図9は、ヘッド−プラテン距離を変更した場合の、記録ヘッド2とインク受け部9との間隔の変化の様子を示す図であり、(A)は前記間隔が狭い状態、(B)は前記間隔が広い状態を示している。図9(A)の場合、記録ヘッドとインク受け部との間隔はおおよそL2であるのに対して、図9(B)の場合、記録ヘッドとインク受け部との間隔はおおよそL2+ΔLであり、図9(B)の場合は図9(A)に比して前記間隔がΔLだけ広くなる。そのため、予備吐出されたインクがインク受け部に着弾する確率が減り、インクミストが発生やすくなる。しかし、インク受け部に対して予備吐出を行う第2の予備吐出モードでは、予備吐出の回数自体が少ないので、もともとインクミストの発生量が少ない。そこで、本実施形態では、第1の実施形態と同様、設定される予備吐出数が閾値よりも小さい場合には第2の予備吐出モードを実行する。但し、本実施形態の場合、記録ヘッドとインク受け部との間隔がL2+ΔLの状態で、インク受け部に対して予備吐出を行う。
【0049】
一方、図10は、ヘッド−プラテン距離を通常よりもΔLだけ広くした状態での、キャップ6に対する予備吐出の様子を示す図である。記録ヘッドとプラテンとの間隔がΔLだけ広くなっても、後述する図17〜図18の構成によってキャップ6をΔLだけ上昇させてキャップ6を記録ヘッド2へ近づけるため、記録ヘッドとキャップとの距離をL1に保つことができる。このため、インクミストの増加を防止できる。このように本実施形態によれば、図12〜図16の構成によって、記録ヘッドとプラテンとの間隔を広げたとしても、記録ヘッドとキャップとの距離は一定(L1)に保たれるため、予備吐出数が多い第1の予備吐出モードを実行しても、インクミストを増加させずに済む。
【0050】
ここで、記録ヘッドとキャップの間隔を変更するための構成の一例に関し、図17、および図18を用いて説明する。図17は、記録ヘッドとキャップが密着し、記録ヘッドの吐出口面がキャップによって覆われている様子、つまり、キャッピング状態にある様子を示している。図18は、記録ヘッドとキャップが離間しており、キャッピング状態にない様子を示している。
【0051】
キャッピング動作、吸引回復動作およびワイピング動作等の回復動作を行うための回復処理機構は、ゴムキャップ21・インク吸収部材22・キャップホルダ23を有するキャップ6、回復系本体ハウジング61、キャップ昇降カム62、キャップ昇降カム軸63、キャップ昇降ガイド64、キャップ昇降ばね65、キャップ駆動伝達ユニット66、キャップ駆動モータ67、エンコーダ68、エンコーダセンサ69によって構成される。キャップホルダ23は、キャップ昇降ばね65によって矢印AC方向に付勢されており、キャップ昇降カム62が回転することによりキャップ昇降ガイド64に沿って矢印AC及びその反対方向に移動可能となっている。キャップ昇降カム62は、エンコーダ68と共にキャップ昇降カム軸63と結合しており、キャップ駆動モータ67の駆動力をキャップ駆動伝達ユニット66から受けて矢印AD及びその反対方向に回転し、ゴムキャップ21を昇降させる。エンコーダセンサ69はエンコーダ68の回転位置を検出する。制御部200は、このエンコーダセンサ69による検出結果に基づいて、キャップ昇降カム62、キャップ昇降カム軸63を特定の回転位置で停止するようにキャップ駆動モータ67を制御する。したがって、記録ヘッドの高さがどのような場合であっても、記録ヘッドとゴムキャップ21の位置関係を当接状態から離間状態まで可変できるような構成となっている。
【0052】
以上のような構成によって、記録ヘッドとプラテンとの間隔が広くなっても、キャップ6を上方へ移動させてキャップ6を記録ヘッド2へ近づけることができ、これにより、インクミストの増加を防止することができる。
【0053】
図21は、本実施形態の予備吐出動作の処理を示すフローチャートである。この処理は、ROM211に格納されている制御プログラムに従って、CPU210が各部を制御することにより実行される。なお、図21のステップS1〜S5は図20のステップS1〜S5と同じなので、詳細な説明は省略する。
【0054】
まず、記録開始を示す指令が入力されると、ステップ1において環境センサ30により検知した結果を確認する。次いで、ステップS2では、ステップS1において得られた使用環境に応じて、記録走査と記録走査の間に行われる予備吐出動作における各吐出口からの予備吐出数(予備吐出の回数)を設定する。次いで、ステップS3では、ステップS3において設定された予備吐出の回数が所定数(閾値)以上であるか否かを判定する。ステップS3において予備吐出の回数が閾値以上であると判定された場合には、ステップS5においてキャップに対して予備吐出を行う第1の予備吐出モードを設定する。一方、ステップS3において予備吐出の回数が閾値よりも少ないと判定された場合には、ステップS4においてインク受け部9に対して予備吐出を行う第2の予備吐出モードを設定する。
【0055】
次いで、ステップS5において第1の予備吐出モードが設定されたら、ステップS6において記録ヘッドとプラテンの間隔が第1の間隔(デフォルト間隔)に設定されているか第1の間隔よりも広い第2の間隔(広めの間隔)に設定されているかを判定する。なお、上述から明らかなように、第2の間隔は、第1の間隔よりもΔLだけ大きい。第1の間隔に設定されている場合には、記録ヘッドとキャップとの間隔はL1のままなので、記録ヘッドの上方への移動は行わずに、そのまま処理を終了する。一方、第2の間隔に設定されている場合にはステップS7へ進み、このままでは記録ヘッドとキャップとの間隔がL1+ΔLのままなので、キャップを上方へΔLだけ移動させて、記録ヘッドとキャップとの間隔をL1に変更する。これにより、記録ヘッドとプラテンとの間隔によらず、記録ヘッドとキャップとの間隔を一定に保つことができる。
【0056】
以上説明したように本実施形態によれば、予備吐出の回数が少ないときにはスループットに有利なインク受け部に対する予備吐出を実行し、予備吐出の回数が多いときにはインクミスト発生の抑制に有利なキャップ部に対する予備吐出を実行する。これにより、予備吐出に伴うスループット低下の抑制と、予備吐出に伴うインクミスト発生の低減とを両立させることができる。
【0057】
(その他の実施形態)
上記した実施形態では、環境センサの検知結果として湿度の情報を利用する例について説明したが、温度と湿度の情報を利用する形態であってもよく、この形態の場合、湿度と温度に応じて予備吐出数を設定することになる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明で適用可能なインクジェット記録装置の概略構成図である。
【図2】図1のインクジェット記録装置を記録媒体の搬送方向からみた図である。
【図3】キャップ6の斜視図である。
【図4】キャップ6に対して予備吐出を行うときの様子を示した図である。
【図5】インク受け部9の斜視図である。
【図6】インク受け部に対して予備吐出を行うときの様子を示した図である。
【図7】第1の予備吐出モードに従って予備吐出を行う状態を示した図である。
【図8】第2の予備吐出モードに従って予備吐出を行う状態を示した図である。
【図9】ヘッド−プラテン距離を変更した場合の、記録ヘッド2とインク受け部9との間隔の変化の様子を示す図であり、(A)は前記間隔が狭い状態、(B)は前記間隔が広い状態を示している。
【図10】ヘッド−プラテン距離を通常よりもΔLだけ広くした状態での、キャップ6に対する予備吐出の様子を示す図である。
【図11】環境センサによる検知結果と各吐出口からの予備吐出数との対応関係を示したテ−ブルである。
【図12】キャリッジを走査方向からみた断面図であり、ヘッド−プラテン間距離が比較的大きい状態を表している。
【図13】キャリッジを走査方向からみた断面図であり、ヘッド−プラテン間距離が比較的小さい状態を表している。
【図14】キャリッジを記録媒体搬送方向からみた断面図であり、記録ヘッドによる記録時の様子を示している。
【図15】キャリッジを記録媒体搬送方向からみた断面図であり、予備吐出やキャッピングを行うときの様子を示している。
【図16】キャリッジを記録媒体搬送方向からみた断面図であり、ヘッド−プラテン間距離を変更するときの様子を示している。
【図17】記録ヘッドとキャップが密着し、キャッピング状態にある様子を示している。
【図18】記録ヘッドとキャップが離間しており、キャッピング状態にない様子を示している。
【図19】インクジェット記録装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図20】第1の実施形態における予備吐出動作の処理を示すフローチャートである。
【図21】第2の実施形態における予備吐出動作の処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0059】
1 記録装置
2 記録ヘッド
3 キャリッジ
6 キャップ
8 ワイパー
9 インク受け部
11 プラテン
14 廃インク収容部
15 回復処理機構
21 ゴムキャップ
22 インク吸収部材
23 キャップホルダ
30 環境センサ
200 制御部
210 CPU
211 ROM
212 RAM
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関し、特に記録ヘッドの回復処理として予備吐出を行う機能を備えたインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録対象となる文字や画像によっては、インクジェット記録ヘッドの複数の吐出口のうち、比較的長期間、インクが吐出されない吐出口が存在することもある。このような吐出口では、インクの揮発成分(主に水分)が蒸発してインクが増粘し、この増粘に起因して吐出不良が生じる場合がある。このような吐出不良を抑制するために、非記録領域で吐出口からインクを吐出することで吐出口内部の増粘インクを除去する、いわゆる予備吐出が行なわれている。予備吐出を行うことで、記録ヘッドからのインクの吐出状態を良好にすることができる。
【0003】
上述した予備吐出は、インクの揮発成分の蒸発を抑制するために記録ヘッドの吐出口面を覆うためのキャップに対して行われるのが一般的である。このようなキャップは、記録ヘッドの記録領域から外れた非記録領域に設けられるのが一般的で、記録ヘッドの移動方向において記録媒体の側端部から所定の距離隔てた位置に配置される。
【0004】
前述の予備吐出動作をキャップに対して行う場合、記録ヘッドをキャップの直上へ移動させる必要があるが、記録媒体の側端部からキャップまでの距離が比較的大きいと記録ヘッドの移動に時間がかかり、スループットが低下してしまう。特に記録ヘッドの走査ごとに予備吐出を行う場合、スループットの低下は顕著になる。
【0005】
このようなスループット低下を改善するために、キャップよりも記録媒体側端部に近い位置に予備吐出専用のインク受け部を設け、このインク受け部に対し予備吐出を行うことで、予備吐出のための記録ヘッド移動時間を低減する技術が提案されている(特許文献1参照)。この特許文献1によれば、キャップに対して予備吐出を行うよりもスループットを向上させることができる。
【特許文献1】特開平08−118674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載される技術では、スループットを向上させることはできるが、インクミストの発生量を抑制するには十分でない。すなわち、特許文献1では、記録ヘッドの移動中に予備吐出が指示された場合、インクミストの発生量に関連する予備吐出の回数に関わらず、キャップ部と予備吐出インク受け部の近い方へ予備吐出を行う。従って、予備吐出の回数が多い場合、例えば、吐出不良が起こりやすい環境下(例えば、低湿環境下)において予備吐出回数を増加させた場合であっても、予備吐出インク受け部に対して予備吐出が行われることになる。予備吐出インク受け部に対して多量の予備吐出を行うと、インクミストの発生量が多くなってしまい、装置内部の部材や記録媒体が汚されてしまう場合がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、予備吐出に伴うスループット低下を抑制しつつ、予備吐出に伴うインクミストの発生量を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明は、記録ヘッドを用いて記録を行うインクジェット記録装置であって、前記記録ヘッドをキャッピングするためのキャップと、前記キャップよりも、前記記録ヘッドの記録領域に近い位置に設けられたインク受け部と、前記記録ヘッドからのインクの吐出状態を良好にするための予備吐出を前記キャップに対して行う第1予備吐出モードまたは前記予備吐出を前記インク受け部に対して行う第2予備吐出モードを選択する選択手段とを備え、前記選択手段は、前記予備吐出の回数が所定数以上の場合には前記第1予備吐出モードを選択し、前記予備吐出の回数が前記所定数より少ない場合には前記第2予備吐出モードを選択することを特徴とする。
【0009】
以上の構成によれば、予備吐出の回数が少ないときにはスループットに有利なインク受け部に対する予備吐出を実行し、予備吐出の回数が多いときにはインクミスト発生の抑制に有利なキャップ部に対する予備吐出を実行する。これにより、予備吐出に伴うスループット低下を抑制しつつも、予備吐出に伴うインクミスト発生量を低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、予備吐出に伴うスループット低下を抑制しつつ、予備吐出に伴うインクミストの発生量を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は本実施形態で用いるインクジェット記録装置の概略構成図、図2は図1のインクジェット記録装置を記録媒体の搬送方向からみた図である。このインクジェット記録装置1は、記録ヘッド2が記録媒体上を往復移動(往復走査)しながらインクを吐出して記録を行うシリアル方式の記録装置である。以下、記録ヘッドの「移動」のことを記録ヘッドの「走査」ともいう。記録ヘッド2は、4つの記録ヘッド2a、2b,2c,および2dを有している。これら記録ヘッド2a、2b,2c,および2dはブラック(K)、シアン(C),マゼンタ(M),イエロ(Y)のインクに対応するものであって、各色の記録ヘッドはインクを吐出するための複数の吐出口が配置された吐出口面を有している。キャリッジ3は、記録ヘッド2a〜2dを搭載するためのもので、ガイド軸4、5に沿って往復移動する。記録ヘッド2a〜2dが搭載されたキャリッジ3の往復移動中に記録ヘッド2からインクが吐出され、これにより、プラテン11により支持される記録媒体10上に画像が形成される。また、記録ヘッドの移動可能領域内の非記録領域には、後述するキャップ6(6a〜6d)やワイパーブレード8等の回復処理機構15やインク受け部9が設けられており、非記録領域において記録ヘッドの吸引処理やキャッピング処理、予備吐出動作等が実行される。この予備吐出動作は様々なタイミングで実行され、例えば、記録ヘッドの走査と走査の間(詳しくは、キャリッジの反転時)のタイミングにて実行される。なお、予備吐出とは、記録ヘッドからのインクの吐出状態を良好にするために、非記録領域にインクを吐出する動作をいう。
【0013】
キャップ6は、記録ヘッド2a〜2dにそれぞれ対応するキャップ6a〜6dを有している。これらキャップ6は、記録ヘッド2の吐出口面をキャッピングすることで、吐出口からのインクの蒸発を抑制する乾燥抑制用キャップとして機能する。また、キャップ6は、ポンプ12によって記録ヘッド2からインクを強制的に排出させるための吸引用キャップとしても機能する他、記録ヘッドから予備吐出されたインクを受ける予備吐出用キャップとしても機能する。
【0014】
また、キャップ6は上下方向に昇降可能である。キャッピング時にはキャップ6が上方へ移動し、図17に示されるように記録ヘッドの吐出口面がキャップによって覆われる。一方、キャッピング状態から開放するときにはキャップ6は下方へ移動し、図18に示されるように記録ヘッドとキャップとが離間した状態となる。なお、このキャップの昇降機構については第2の実施実施形態について詳述するので、ここではその説明を省略する。
【0015】
インク受け部9は、記録ヘッド2により予備吐出されたインクを受ける部材である。インク受け部9に予備吐出されたインクは、後述の図6に示されるように重力方向下方に自重によって流れていき、最終的には経路13を介して廃インク収容部14に収容される。また、図1および図2に示される通り、インク受け部9は、キャップ6よりも、記録ヘッドの記録領域(記録ヘッドの移動可能領域内で且つ記録媒体に記録できる領域)に近い位置に配置されている。従って、インク受け部に予備吐出を行う方が、キャップに予備吐出を行うよりも、記録ヘッドの移動時間が短くて済むため、スループット向上には効果的である。
【0016】
このように本実施形態では、インク受け部9とキャップ6に予備吐出を行うことができる構成となっており、後述する図19の制御部200において、インク受け部9とキャップ6のいずれで予備吐出を行うかが選択される。詳しくは、予備吐出の回数が多い場合には、予備吐出をキャップ6に対して行う第1の予備吐出モードが選択され、予備吐出の回数が少ない場合には、予備吐出をインク受け部に対して行う第2の予備吐出モードが選択される。このように制御部200は、予備吐出の実行位置が異なる複数の予備吐出モードの中から、予備吐出の回数に応じた予備吐出モードを選択するための選択手段として機能する。
【0017】
ワイパーブレード8は、記録ヘッドの吐出口面をワイピングするための部材であり、記録動作や予備吐出動作によって記録ヘッドの吐出口面に付着したインクを取り除くものである。
【0018】
ポンプ12は、キャップ6を介して記録ヘッド2からインクを吸引するための手段として機能する他、予備吐出によってキャップ6に溜まったインクを廃インク収容器11へ導出するための手段としても機能する。具体的には、記録ヘッドからインクを吸引する場合には、図17に示されるように記録ヘッドの吐出口面をキャップ6により覆った状態でポンプ12を駆動する。これにより、キャップ内に負圧が発生し、記録ヘッドからインクを吸引することができる。一方、キャップ内に溜まったインクを廃インク収容器11へ導く場合には、図18に示されるように記録ヘッド2とキャップ6を離間した状態でポンプ12を駆動する。これにより、キャップ内に溜まったインクを廃インク収容器11に導くことができる。なお、後述する通り、キャップ6に対する予備吐出は、図18に示されるように記録ヘッド2とキャップ6が離間された状態で行われる。
【0019】
このようにしてポンプ12より吸引されたインクや予備吐出によりキャップ6に溜まったインクは、キャップ6と廃インク収容部14を接続するチューブ13を介して、装置底部に設けられた廃インク収容部14に導出される。廃インク収容部14内には、発泡スポンジや繊維等のインク吸収部材が充填されており、廃インク収容部14に導入されたインクはインク吸収部材によって保持される。
【0020】
環境センサ30は湿度を検知するためのセンサであり、この環境センサ30によって記録装置1の使用環境を検知することができる。この環境センサ30の検知結果は後述する図19の制御部200に送られ、RAM212に格納される。制御部200は、この検知結果に基づいて、予備吐出の回数を設定(変更)する。例えば、図11に示されるように、インク増粘が生じにくい多湿環境・常湿環境の場合には予備吐出数を比較的少ない数に設定し、インク増粘が生じやすい低湿環境の場合には予備吐出数を比較的少ない数に設定する。
【0021】
次に、キャップ6の構成並びにキャップ6に対して予備吐出を行う場合について説明する。図3はキャップ6の斜視図であり、図4はキャップ6に対して予備吐出を行うときの様子を示した図である。キャップ9は、主に、記録ヘッドの吐出口面を覆うゴムキャップ21、ゴムキャップ21内に設けられたインク吸収部材22、並びに、ゴムキャップ21を保持するキャップホルダ23により構成される。ゴムキャップ21は、記録ヘッドとの密着性をあげるために、記録ヘッドと当接している状態で吐出口面を囲めるようなリブ21aが形成されている。ゴムキャップ21の内部には、インクを保持するためのインク吸収部材22が装填され、ゴムキャップ21全体をキャップホルダ23が囲っている。キャップホルダ23の下部には、図2に示したチューブ13が接続されており、インク吸収部材22のインクはゴムキャップの穴21bを介してチューブ13に導かれる。チューブ13に導かれたインクは、上述の通り、廃インク収容部14に導かれる。
【0022】
キャップに対して予備吐出されたインクは、インクミストにならなければ、キャップ内のインク吸収部材22に着弾することになる。図4に示される通り、記録ヘッドの吐出口面とキャップ内のインク吸収部材22との距離は比較的小なる距離L1であるため、記録ヘッドから予備吐出されたインクがキャップ内にインク吸収部材22に到達せずにインクミストとなってしまう割合は少ない。このように予備吐出をキャップに対して行う第1予備吐出モードは、インクミストの発生を抑制するのに効果的である。なお、記録ヘッドの吐出口面とキャップ内のインク吸収部材22との距離L1は、後述するように、記録ヘッドの吐出口面とインク受け部との距離L2よりは短くなっている。
【0023】
次に、インク受け部9の構成並びにインク受け部9に対して予備吐出を行う場合について説明する。図5はインク受け部9の斜視図であり、図6はインク受け部9に対して予備吐出を行うときの様子を示した図である。インク受け面9aは予備吐出されたインクを受ける面であって、着弾したインクを穴9bへ流すために傾斜している。また、インク受け面の周囲には、受け面9aよりせりあがったフチ9cが形成されている。インク受け部9は、プラスチック一体成型で形成され、非記録領域内の、記録領域の近傍(記録媒体の側端部が通過する位置の近傍)にビス止めされただけの単純な構造である。
【0024】
インク受け部に対して予備吐出されたインクは、インクミストにならなければ、インク受け部内のインク受け面9aに着弾することになる。図6に示される通り、記録ヘッドの吐出口面とインク受け部内のインク受け面9aとの距離は比較的大なる距離L2であるため、記録ヘッドから予備吐出されたインクがインク受け面9aに到達せずにインクミストとなってしまう割合が多くなってしまう。なお、距離L2は、傾斜しているインク受け面と吐出口面との最小距離と最大距離の中間の値としている。このように予備吐出をインク受け部に対して行う第2予備吐出モードは、インクミストの発生を抑制するのには効果的ではない。しかし、インク受け部9はキャップ6よりも記録領域に近い位置に設けられているため、予備吐出位置まで記録ヘッドを移動させるのに要する時間は短くて済む。従って、第2予備吐出モードは、スループット向上に効果的なモードといえる。
【0025】
図19は、本実施形態で適用可能なインクジェット記録装置における制御系の概略構成を示すブロック図である。インクジェット記録装置1に接続されているホストコンピュータ300は、アプリケーション等から受け取った画像データをプリンタドライバにより処理し、処理した画像データを記録装置1に送信する。また、ホストコンピュータは、プリンタドライバにおいてユーザによって指定された記録媒体の種類(普通紙、光沢紙、厚紙等)や記録モードの種類(はやい、ふつう、きれい等)等の記録条件に関する情報や記録開始指令を示す情報等も記録装置1に送信する。記録装置1に送信された画像データやその他の情報等は、制御部200のRAM212に格納される。
【0026】
制御部200は、CPU210、ROM211、RAM212を備えている。CPU210は、ROM211に格納されている制御プログラムやテーブルに従って、所定の演算、判定、設定、選択、決定および制御等を行う。例えば、環境センサ30による検知結果に基づいて必要な予備吐出の回数を設定(判定)したり、この予備吐出の回数に従って実行すべき予備吐出モードを選択(決定)したりする。より詳しくは、制御部200は、図11に示されるように、多湿環境の場合には予備吐出の回数をX回に設定し、常湿環境の場合には予備吐出の回数をY回(Y>X)に設定し、低湿環境の場合には予備吐出の回数をZ(Z>Y>X)回に設定する。そして、設定された予備吐出の回数が閾値以上(ここでは、Z回以上)であれば上述した第1の予備吐出モードを選択し、設定された予備吐出の回数が閾値未満であれば上述した第2の予備吐出モードを選択する。また、CPU210は、ホストコンピュータにより送信された記録開始指令を示す情報に従って、データ処理やキャップ離間動作等の記録処理を開始する。
【0027】
ROM211は、CPU210によって実行される制御プログラムや予備吐出回数を決定するためのテーブルなどを格納するためのものである。このROM211には、例えば、図20、図21に示されるフローチャートを実行するための制御プログラムや、図11に示されるような環境センサによる検知結果と予備吐出回数との対応関係を示したテ−ブル等が格納されている。RAM212は、ホストコンピュータから送信される画像データや記録条件に関する情報、記録開始指令を示す情報等を格納するためのデータメモリ及びCPU210によって演算処理を実行するためのワーキングメモリとして機能するものである。
【0028】
また、制御部200には、ヘッド駆動回路202、キャリッジモータ204、搬送モータ206、キャップ駆動モータ67等が接続されている。ヘッド駆動回路202は、記録ヘッド2の吐出口に連通するインク流路内に設けられた記録素子(例えば、ヒータ)を駆動するための回路である。キャリッジモータ204は、キャリッジ3を往復移動させるためのモータであり、搬送モータ206は、記録媒体を搬送するための搬送ローラ205を回転させるモータであり、キャップ駆動モータ67は、キャップ6を上下方向に移動させるモータである。そして、制御部200は、記録開始指令に従って、ヘッド駆動回路202、キャリッジモータ204および搬送モータ206を駆動することによって、インクの吐出、キャリッジの移動および記録媒体の搬送を制御し、これにより記録媒体に画像を記録させる。このように制御部200は、記録媒体に画像を記録させる記録制御手段として機能する。また、制御部200は、ヘッド駆動回路202、キャリッジモータ204を駆動することによって、キャップ6あるいはインク受け部9に対する予備吐出動作を制御する予備吐出制御手段としても機能する。
【0029】
以上の構成を有する記録装置1では、ホストコンピュータ300のプリンタドライバから記録開始指令を示す情報を受け取ると、不図示の給紙部により記録媒体10が給紙される。そして、給紙された記録媒体10は、プラテン11に支持されながら搬送ローラ205によって、記録ヘッド2に対向する位置(記録領域)まで搬送される。次いで、記録ヘッド2に対向する位置まで搬送された記録媒体10に対して、記録ヘッド2をキャリッジ50と共に走査方向に移動(走査)させながら、画像データに従って記録ヘッドからインクを吐出させて、1バンド分の記録を行う。このような記録走査が終了すると、走査方向と直交する搬送方向へ記録媒体10を所定量だけ搬送する。その後、次のバンドへの記録を行うために、再度記録走査を行う。このような記録走査と搬送動作を繰り返すことにより、記録媒体に所望の画像が形成される。
【0030】
図20は、本実施形態の予備吐出動作の処理を示すフローチャートである。この処理は、ROM211に格納されている制御プログラムに従って、CPU210が各部を制御することにより実行される。
【0031】
まず、記録開始を示す指令が入力されると、ステップ1において環境センサ30により検知した結果を確認する。より詳しくは、CPU210がRAM212に記憶されている検知結果を読み出すことで、使用環境を確認することになる。本実施形態では、低湿環境、常湿環境および多湿度環境のいずれであるかを検知するものとし、検知した結果はRAM212に記憶される。環境センサによる検知は定期的あるいは不定期的に何度も行われるため、RAMには検知結果が上書きの保存されることになる。
【0032】
環境センサによる検知は、記録開始指令を受けたタイミングで実行してもよいし、記録開始指令とは無関係に所定のタイミング(例えば、電源オン時のタイミングや所定期間経過毎のタイミング等)で実行してもよい。前者の場合、ステップS1では、記録開始指令を受けた直後に使用環境を検知し、その検知結果をRAMに格納し、RAMに格納された検知結果を読み出すことになる。一方、後者の形態の場合、ステップS1では、記録開始指令を受ける以前にRAMに格納された検知結果を読み出すことになる。
【0033】
次いで、ステップS2では、ステップS1において得られた使用環境に応じて、記録走査と記録走査の間に行われる予備吐出動作における各吐出口からの予備吐出数(予備吐出の回数)を設定する。より詳しくは、環境センサによる検知結果(多湿、常湿、低湿)と各吐出口からの予備吐出数(X発、Y発、Z発)との対応関係を示したテ−ブルがRAM212に格納されており、このテーブルを参照することで、環境に応じた予備吐出数を設定する。なお、記録走査と記録走査の間に行われる予備吐出とは、非記録領域を記録ヘッドが走査しているときに行われる予備吐出、あるいは、非記録領域において記録ヘッドが停止しているときに行われる予備吐出を指す。また、各吐出口からの予備吐出数は、記録ヘッド2a〜2d間で別個の値を設定してもよいし共通の値を設定してもよいが、本例では、記録ヘッド間で共通の値を設定するものとする。
【0034】
使用環境が常湿環境あるいは多湿環境の場合、低湿環境の場合に比べて、吐出不良は起こりにくい。従って、各吐出口からの予備吐出数は比較的少なめに設定する。例えば、図11に示されるように、多湿環境の場合にはX発(例えば、Xは6発)、常湿環境の場合にはY発(Y>X。例えば、Yは8発)に設定する。一方、使用環境が低湿環境の場合、インクの揮発成分(主に水分)が吐出口から蒸発しインクが増粘しやすいため、吐出口からのインクの吐出状態が不安定になりやすい。そこで、本実施形態では、使用環境が低湿環境の場合、常湿環境あるいは多湿環境の場合に比べて、予備吐出数を増加させる。すなわち、図11に示されるように、予備吐出回数をZ発(Z>Y>X。例えば、Zは30発)に設定する。なお、本例では、X=6、Y=8、Z=30に設定したが、X,Y,Zの値はこれに限られるものではない。X,Y,Zの値は、記録ヘッドからのインクの吐出状態を良好にするという予備吐出の機能が発揮できる範囲内で、インクの特性や記録ヘッドの特性に応じて適宜決定すればよい。
【0035】
次いで、ステップS3では、ステップS2において設定された予備吐出の回数が所定数(閾値)以上であるか否かを判定する。ここで、閾値(所定数)は、Z発(Z=20)に設定されている。ステップS3において予備吐出の回数が閾値以上であると判定された場合には、ステップS4においてキャップに対して予備吐出を行う第1の予備吐出モードを設定する。図7は、この第1の予備吐出モードに従って予備吐出を行う状態を示す図である。上述した通り、予備吐出数が多いときはインクミストの発生量が多くなるため、記録ヘッドの吐出口面までの距離(L1)が短いキャップ6に対して予備吐出が行なわれる。すなわち、キャップ6の場合、インク受け部9に比して、記録ヘッドの吐出口面までの重力方向(インク吐出方向)の距離が相対的に近いため、予備吐出されたインクが着弾地点まで到達せずにミストになってしまう確率が低く、ミストを抑制するのに有効である。
【0036】
一方、ステップS3において予備吐出の回数が閾値よりも少ないと判定された場合には、ステップS5においてインク受け部9に対して予備吐出を行う第2の予備吐出モードを設定する。図8は、この第2の予備吐出モードに従って予備吐出を行う状態を示す図である。上述した通り、予備吐出数が少ないときは、スループットに有利なインク受け部9に対して予備吐出が行われる。すなわち、予備吐出数が少ないときは、もともとインクミストの発生が少ないため、記録ヘッドの吐出口面までの距離(L2)が長いインク受け部9に予備吐出を行っても、問題になるほどミストは発生しない。そこで、インク受け部9を選択し、キャリッジ反転時の加速中に、記録ヘッド2a→2b→2c→2dの順に予備吐出を行い、予備吐出のための時間を削減し、スループット低下を抑制している。なお、図8(A)は記録ヘッド2aから予備吐出を行っている様子であり、図8(B)は記録ヘッド2dから予備吐出を行っている様子である。
【0037】
以上のようにして、第1の予備吐出モードあるいは第2の予備吐出モードを実行することで、図20に示されるフローチャートの処理は終了する。
【0038】
以上説明したように本実施形態によれば、予備吐出の回数が少ないときにはスループットに有利なインク受け部に対する予備吐出を実行し、予備吐出の回数が多いときにはインクミスト発生の抑制に有利なキャップ部に対する予備吐出を実行する。これにより、予備吐出に伴うスループット低下の抑制と、予備吐出に伴うインクミスト発生の低減とを両立させることができる。
【0039】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。予備吐出の回数が少ないときには第1の予備吐出モードを実行し、予備吐出の回数が多いときには第2の予備吐出モードを実行する点は、上述した第1の実施形態と同じであるため、予備吐出モードの選択の仕方については説明を省略する。
【0040】
本実施形態では、記録ヘッドとプラテンの間隔(以下、ヘッド−プラテン間距離)を変更できる機構を有しており、必要に応じてヘッド−プラテン間距離を広げる。ヘッド−プラテン間距離を広げた状態で予備吐出を行うと、インクミストの発生量が増加する傾向になる。特に、予備吐出数が多い第1の予備吐出モードでは上記傾向が顕著である。そこで、本実施形態では、ヘッド−プラテン間距離を広げた状態で第1の予備吐出モードを実行しても、インクミストの発生量が増えないようにするべく、記録ヘッドにキャップを近づけようにキャップを上方へ移動させる。すなわち、ヘッド−プラテン間距離が広がったとしても、記録ヘッドとキャップとの間隔(以下、ヘッド−キャップ間距離)が変わらないように、ヘッド−キャップ間距離を制御するのである。これにより、ヘッド−キャップ間距離は第1の実施形態の場合と同じになるため、予備吐出数が多い第1の予備吐出モードでのインクミストの発生を増加させずに済む。
【0041】
なお、ヘッド−プラテン間距離を広げた状態で第2の予備吐出モードを実行すると、広げた距離にもよるが、第1の実施形態よりはインクミストが発生しやすくなる。しかし、上述した通り、第2の予備吐出モードでは予備吐出数が少ないため、インクミストは殆ど問題にならない。従って、本実施形態では、第1の実施形態と同じように第2の予備吐出モードを実行する。
【0042】
ここで、記録ヘッドとプラテンの間隔を変更するための基本構成の一例に関し、図12〜図16を用いて説明する。図12および図13は、キャリッジを走査方向からみた断面図であり、図12はヘッド−プラテン間距離が比較的大きい状態を表しており、図13はヘッド−プラテン間距離が比較的小さい状態を表している。
【0043】
図14〜図16はキャリッジを記録媒体搬送方向からみた断面図であり、図14は記録ヘッドによる記録時の様子を、図15は予備吐出やキャッピングを行うときの様子を、図16はヘッド−プラテン間距離を変更するときの様子を、それぞれ示している。
【0044】
記録ヘッド2を保持するキャリッジ3は、トランスレータ3a、ヘッドホルダ3b、昇降カム3c、昇降カム軸3d、昇降ガイド3e、昇降ばね3f、伝達ギア3g、走査ガイド軸受3hによって構成される。ヘッドホルダ3bは、記録ヘッド2を固定するための部材である。ヘッドホルダ3bは、昇降ばね3fによって矢印AA方向に付勢されており、昇降カム3cが回転することにより昇降ガイド3eに沿って矢印AA及びその反対方向にトランスレータ3a内を移動する。昇降カム3cは、伝達ギア3gと共に昇降カム軸3dに結合しており、伝達ギア3gと共に矢印AB及びその反対方向に回転する。
【0045】
キャリッジ3は、その移動領域(走査領域)において記録中は図14のようにプラテンおよび記録媒体の真上に位置しているが、キャップへの予備吐出時やキャッピング時には図15のように回復処理機構15の真上に位置する。更に、上述した通り、記録ヘッドとプラテンの間隔(ヘッド−プラテン間距離)を切り替える場合、キャリッジ3は図16に示される位置に移動する。このとき、伝達ギア3gは、装置本体シャーシにとりつけられた切替ギア3iと係合する。切替ギア3iは、切替モータ3jから駆動力を受け矢印AB及びその反対方向に回転し、伝達ギア3gを回転させることで記録ヘッドとプラテンとの間隔を変更することができる。3kは切替ポジションセンサで、伝達ギア3gの特定部位を検出しその回転位置を特定可能である。そのため、伝達ギア3gを特定の回転位置で停止するように切替モータ3jを制御部200によって制御することで、記録ヘッドとプラテンとの間隔を所定の間隔に設定することができる。
【0046】
なお、トランスレータ3a、昇降カム3c、昇降カム軸3d、昇降ガイド3e、昇降ばね3f、伝達ギア3g、走査ガイド軸受3h、切替ギア3iは、切替モータ3j等は間接的に記録ヘッドを昇降させるものである。従って、これら部材をヘッド昇降手段と称する。
【0047】
使用環境による記録媒体の変形や記録媒体自体の腰により、記録ヘッドと記録媒体とが接触することで画像品位が低下してしまう場合がある。しかし、前述の構成によって、記録ヘッドと記録媒体の間隔を広げることで、厚紙を用いる場合や用紙浮き・用紙の変形等が生じる場合であっても、記録ヘッドと記録媒体とを接触させないようにすることができる。これにより、記録ヘッドと記録媒体とが接触することで生じる画像品位の低下を招かずに済む。
【0048】
ここで、記録ヘッドを通常よりもΔLだけ上昇させて、記録ヘッド2とプラテンの間隔を広くした状態での予備吐出制御について、図9〜図10を用いて説明する。図9は、ヘッド−プラテン距離を変更した場合の、記録ヘッド2とインク受け部9との間隔の変化の様子を示す図であり、(A)は前記間隔が狭い状態、(B)は前記間隔が広い状態を示している。図9(A)の場合、記録ヘッドとインク受け部との間隔はおおよそL2であるのに対して、図9(B)の場合、記録ヘッドとインク受け部との間隔はおおよそL2+ΔLであり、図9(B)の場合は図9(A)に比して前記間隔がΔLだけ広くなる。そのため、予備吐出されたインクがインク受け部に着弾する確率が減り、インクミストが発生やすくなる。しかし、インク受け部に対して予備吐出を行う第2の予備吐出モードでは、予備吐出の回数自体が少ないので、もともとインクミストの発生量が少ない。そこで、本実施形態では、第1の実施形態と同様、設定される予備吐出数が閾値よりも小さい場合には第2の予備吐出モードを実行する。但し、本実施形態の場合、記録ヘッドとインク受け部との間隔がL2+ΔLの状態で、インク受け部に対して予備吐出を行う。
【0049】
一方、図10は、ヘッド−プラテン距離を通常よりもΔLだけ広くした状態での、キャップ6に対する予備吐出の様子を示す図である。記録ヘッドとプラテンとの間隔がΔLだけ広くなっても、後述する図17〜図18の構成によってキャップ6をΔLだけ上昇させてキャップ6を記録ヘッド2へ近づけるため、記録ヘッドとキャップとの距離をL1に保つことができる。このため、インクミストの増加を防止できる。このように本実施形態によれば、図12〜図16の構成によって、記録ヘッドとプラテンとの間隔を広げたとしても、記録ヘッドとキャップとの距離は一定(L1)に保たれるため、予備吐出数が多い第1の予備吐出モードを実行しても、インクミストを増加させずに済む。
【0050】
ここで、記録ヘッドとキャップの間隔を変更するための構成の一例に関し、図17、および図18を用いて説明する。図17は、記録ヘッドとキャップが密着し、記録ヘッドの吐出口面がキャップによって覆われている様子、つまり、キャッピング状態にある様子を示している。図18は、記録ヘッドとキャップが離間しており、キャッピング状態にない様子を示している。
【0051】
キャッピング動作、吸引回復動作およびワイピング動作等の回復動作を行うための回復処理機構は、ゴムキャップ21・インク吸収部材22・キャップホルダ23を有するキャップ6、回復系本体ハウジング61、キャップ昇降カム62、キャップ昇降カム軸63、キャップ昇降ガイド64、キャップ昇降ばね65、キャップ駆動伝達ユニット66、キャップ駆動モータ67、エンコーダ68、エンコーダセンサ69によって構成される。キャップホルダ23は、キャップ昇降ばね65によって矢印AC方向に付勢されており、キャップ昇降カム62が回転することによりキャップ昇降ガイド64に沿って矢印AC及びその反対方向に移動可能となっている。キャップ昇降カム62は、エンコーダ68と共にキャップ昇降カム軸63と結合しており、キャップ駆動モータ67の駆動力をキャップ駆動伝達ユニット66から受けて矢印AD及びその反対方向に回転し、ゴムキャップ21を昇降させる。エンコーダセンサ69はエンコーダ68の回転位置を検出する。制御部200は、このエンコーダセンサ69による検出結果に基づいて、キャップ昇降カム62、キャップ昇降カム軸63を特定の回転位置で停止するようにキャップ駆動モータ67を制御する。したがって、記録ヘッドの高さがどのような場合であっても、記録ヘッドとゴムキャップ21の位置関係を当接状態から離間状態まで可変できるような構成となっている。
【0052】
以上のような構成によって、記録ヘッドとプラテンとの間隔が広くなっても、キャップ6を上方へ移動させてキャップ6を記録ヘッド2へ近づけることができ、これにより、インクミストの増加を防止することができる。
【0053】
図21は、本実施形態の予備吐出動作の処理を示すフローチャートである。この処理は、ROM211に格納されている制御プログラムに従って、CPU210が各部を制御することにより実行される。なお、図21のステップS1〜S5は図20のステップS1〜S5と同じなので、詳細な説明は省略する。
【0054】
まず、記録開始を示す指令が入力されると、ステップ1において環境センサ30により検知した結果を確認する。次いで、ステップS2では、ステップS1において得られた使用環境に応じて、記録走査と記録走査の間に行われる予備吐出動作における各吐出口からの予備吐出数(予備吐出の回数)を設定する。次いで、ステップS3では、ステップS3において設定された予備吐出の回数が所定数(閾値)以上であるか否かを判定する。ステップS3において予備吐出の回数が閾値以上であると判定された場合には、ステップS5においてキャップに対して予備吐出を行う第1の予備吐出モードを設定する。一方、ステップS3において予備吐出の回数が閾値よりも少ないと判定された場合には、ステップS4においてインク受け部9に対して予備吐出を行う第2の予備吐出モードを設定する。
【0055】
次いで、ステップS5において第1の予備吐出モードが設定されたら、ステップS6において記録ヘッドとプラテンの間隔が第1の間隔(デフォルト間隔)に設定されているか第1の間隔よりも広い第2の間隔(広めの間隔)に設定されているかを判定する。なお、上述から明らかなように、第2の間隔は、第1の間隔よりもΔLだけ大きい。第1の間隔に設定されている場合には、記録ヘッドとキャップとの間隔はL1のままなので、記録ヘッドの上方への移動は行わずに、そのまま処理を終了する。一方、第2の間隔に設定されている場合にはステップS7へ進み、このままでは記録ヘッドとキャップとの間隔がL1+ΔLのままなので、キャップを上方へΔLだけ移動させて、記録ヘッドとキャップとの間隔をL1に変更する。これにより、記録ヘッドとプラテンとの間隔によらず、記録ヘッドとキャップとの間隔を一定に保つことができる。
【0056】
以上説明したように本実施形態によれば、予備吐出の回数が少ないときにはスループットに有利なインク受け部に対する予備吐出を実行し、予備吐出の回数が多いときにはインクミスト発生の抑制に有利なキャップ部に対する予備吐出を実行する。これにより、予備吐出に伴うスループット低下の抑制と、予備吐出に伴うインクミスト発生の低減とを両立させることができる。
【0057】
(その他の実施形態)
上記した実施形態では、環境センサの検知結果として湿度の情報を利用する例について説明したが、温度と湿度の情報を利用する形態であってもよく、この形態の場合、湿度と温度に応じて予備吐出数を設定することになる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明で適用可能なインクジェット記録装置の概略構成図である。
【図2】図1のインクジェット記録装置を記録媒体の搬送方向からみた図である。
【図3】キャップ6の斜視図である。
【図4】キャップ6に対して予備吐出を行うときの様子を示した図である。
【図5】インク受け部9の斜視図である。
【図6】インク受け部に対して予備吐出を行うときの様子を示した図である。
【図7】第1の予備吐出モードに従って予備吐出を行う状態を示した図である。
【図8】第2の予備吐出モードに従って予備吐出を行う状態を示した図である。
【図9】ヘッド−プラテン距離を変更した場合の、記録ヘッド2とインク受け部9との間隔の変化の様子を示す図であり、(A)は前記間隔が狭い状態、(B)は前記間隔が広い状態を示している。
【図10】ヘッド−プラテン距離を通常よりもΔLだけ広くした状態での、キャップ6に対する予備吐出の様子を示す図である。
【図11】環境センサによる検知結果と各吐出口からの予備吐出数との対応関係を示したテ−ブルである。
【図12】キャリッジを走査方向からみた断面図であり、ヘッド−プラテン間距離が比較的大きい状態を表している。
【図13】キャリッジを走査方向からみた断面図であり、ヘッド−プラテン間距離が比較的小さい状態を表している。
【図14】キャリッジを記録媒体搬送方向からみた断面図であり、記録ヘッドによる記録時の様子を示している。
【図15】キャリッジを記録媒体搬送方向からみた断面図であり、予備吐出やキャッピングを行うときの様子を示している。
【図16】キャリッジを記録媒体搬送方向からみた断面図であり、ヘッド−プラテン間距離を変更するときの様子を示している。
【図17】記録ヘッドとキャップが密着し、キャッピング状態にある様子を示している。
【図18】記録ヘッドとキャップが離間しており、キャッピング状態にない様子を示している。
【図19】インクジェット記録装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【図20】第1の実施形態における予備吐出動作の処理を示すフローチャートである。
【図21】第2の実施形態における予備吐出動作の処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0059】
1 記録装置
2 記録ヘッド
3 キャリッジ
6 キャップ
8 ワイパー
9 インク受け部
11 プラテン
14 廃インク収容部
15 回復処理機構
21 ゴムキャップ
22 インク吸収部材
23 キャップホルダ
30 環境センサ
200 制御部
210 CPU
211 ROM
212 RAM
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するための吐出口が設けられた吐出口面を有する記録ヘッドを用いて記録を行うインクジェット記録装置であって、
前記記録ヘッドの吐出口面をキャッピングするためのキャップと、
前記キャップよりも、前記記録ヘッドの記録領域に近い位置に設けられたインク受け部と、
前記記録ヘッドによるインクの予備吐出を前記キャップに対して行う第1の予備吐出モードまたは前記予備吐出を前記インク受け部に対して行う第2の予備吐出モードを選択する選択手段とを備え、
前記選択手段は、前記予備吐出の回数が閾値以上の場合には前記第1の予備吐出モードを選択し、前記予備吐出の回数が前記閾値より少ない場合には前記第2の予備吐出モードを選択することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記インクジェット記録装置の使用環境を検知する環境センサを備え、
前記予備吐出の回数は、前記環境センサの検知結果に応じて決定されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記記録ヘッドに対向する位置に設けられ、前記記録媒体を支持するためのプラテンと、
前記記録ヘッドの吐出口面と前記プラテンとの間隔を変更するために前記記録ヘッドを昇降させるためのヘッド昇降手段と、
前記記録ヘッドの吐出口面と前記キャップとの間隔を変更するために前記キャップを昇降させるためのキャップ昇降手段とを更に具え、
前記選択手段によって前記第1の予備吐出モードが選択された場合、前記キャップ昇降手段は、前記記録ヘッドと前記プラテンとの間隔に関わらず、前記記録ヘッドの吐出口面と前記キャップとの間隔が一定に保たれるように、前記キャップの昇降を制御することを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項1】
インクを吐出するための吐出口が設けられた吐出口面を有する記録ヘッドを用いて記録を行うインクジェット記録装置であって、
前記記録ヘッドの吐出口面をキャッピングするためのキャップと、
前記キャップよりも、前記記録ヘッドの記録領域に近い位置に設けられたインク受け部と、
前記記録ヘッドによるインクの予備吐出を前記キャップに対して行う第1の予備吐出モードまたは前記予備吐出を前記インク受け部に対して行う第2の予備吐出モードを選択する選択手段とを備え、
前記選択手段は、前記予備吐出の回数が閾値以上の場合には前記第1の予備吐出モードを選択し、前記予備吐出の回数が前記閾値より少ない場合には前記第2の予備吐出モードを選択することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記インクジェット記録装置の使用環境を検知する環境センサを備え、
前記予備吐出の回数は、前記環境センサの検知結果に応じて決定されることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記記録ヘッドに対向する位置に設けられ、前記記録媒体を支持するためのプラテンと、
前記記録ヘッドの吐出口面と前記プラテンとの間隔を変更するために前記記録ヘッドを昇降させるためのヘッド昇降手段と、
前記記録ヘッドの吐出口面と前記キャップとの間隔を変更するために前記キャップを昇降させるためのキャップ昇降手段とを更に具え、
前記選択手段によって前記第1の予備吐出モードが選択された場合、前記キャップ昇降手段は、前記記録ヘッドと前記プラテンとの間隔に関わらず、前記記録ヘッドの吐出口面と前記キャップとの間隔が一定に保たれるように、前記キャップの昇降を制御することを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェット記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2010−105348(P2010−105348A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281862(P2008−281862)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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