インク吐出方法及びインクジェット方式画像形成装置
【課題】搬送速度を変更させても主滴と副滴の着弾位置のずれを防止できるインク吐出方法を提供する。
【解決手段】ロール紙Pの搬送速度が変更されても、一つのインク滴Idの主滴mと副滴sがロール紙Pに着弾する位置が同じ位置になるようにメニスカスMの位置を変更した。メニスカスMの位置を変更するに当たっては、圧力調整ポンプ82(図3等参照)の回転数を変更することにより、記録ヘッド22Kに付与する負圧の大きさ、即ち、ノズル22Kn内のインクに作用する負圧の大きさを変更した。この負圧に応じてメニスカスMの位置が変更される。
【解決手段】ロール紙Pの搬送速度が変更されても、一つのインク滴Idの主滴mと副滴sがロール紙Pに着弾する位置が同じ位置になるようにメニスカスMの位置を変更した。メニスカスMの位置を変更するに当たっては、圧力調整ポンプ82(図3等参照)の回転数を変更することにより、記録ヘッド22Kに付与する負圧の大きさ、即ち、ノズル22Kn内のインクに作用する負圧の大きさを変更した。この負圧に応じてメニスカスMの位置が変更される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドに形成された複数のノズルのインク吐出口から記録媒体にインク(インク滴)を吐出するインク吐出方法及びインクジェット方式画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録ヘッドに形成された複数のノズルから記録媒体にインク(インク滴)を吐出して画像を形成するインクジェット方式画像形成装置(インクジェットプリンタ)が広く使用されている。ノズルからインク滴を吐出させる技術として、駆動パルスに応じた熱エネルギをノズル内のインクに供給して膜沸騰による気泡を形成させ、この気泡によってノズルからインク滴を吐出させる技術が知られている。この技術では、形成する画像に応じた多数のインク滴がノズルから記録媒体に吐出されることにより記録媒体に画像が形成される。
【0003】
上記の技術を採用したインクジェットプリンタのなかには、画像記録速度(画像形成速度)を向上させるために、インク吐出口及びインク流路等からなるノズルを複数集積したマルチノズルヘッドを記録媒体の搬送方向に直交させて多数配列させたラインヘッドを有し、記録媒体の搬送に合わせて複数のノズルのインク吐出口から同時にインクを吐出させるタイプのもの(ラインプリンタ)がある。
【0004】
記録媒体に画像を形成する画像形成装置には、一般に、高画像品位で高解像度の画像を高速で形成することが求められるが、上記のラインプリンタをはじめとするインクジェットプリンタを使用することによりこれらの要求を満足させることができる。また、インクジェットプリンタは、画像形成時(画像記録時)に記録ヘッド(記録ヘッド)と記録媒体とが非接触であるので、非常に安定した画像記録を行うことができるという利点も有している。
【0005】
しかし一方で、インクジェットプリンタでは、流体であるインクを扱うので、流体力学的な種々の不都合が記録ヘッドで発生する。また、インクは液体であるので、環境温度や放置時間等によって粘性が随時変わっていく。このような粘性の変化は画像記録に大きな影響を及ぼす。また、ノズルから吐出するインク滴の特性として、ノズルから吐出した一つのインク滴が主滴と副滴(サテライト)に分離することが知られている。主滴は副滴よりも先にノズルのインク吐出口から離れ、主滴に続いて副滴がインク吐出口から離れる。
【0006】
ところで、産業用のインクジェットプリンタとコンシューマープリンタ(家庭用のインクジェットプリンタ)とを比較した場合、産業用のインクジェットプリンタではコンシューマープリンタよりも、印刷速度(記録媒体の搬送速度)や印字デュティー(記録媒体の単位面積当たりに着弾したインク滴の数)が格段に増加している。記録媒体の搬送速度を速めた(例えば、約120m/分)場合、ノズルから吐出した一つのインク滴の主滴が記録媒体に着弾する位置(着弾位置)と、副滴が記録媒体に着弾する着弾位置とがずれることがある。このように、一つのインク滴を構成する主滴と副滴の着弾位置がずれた場合、一つのインク滴が別々の位置に着弾することとなるので画像品位が低下することがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような主滴と副滴の着弾位置のずれを防止するために、複数のインク吐出口が形成されたインク吐出口面を傾斜させて、主滴と副滴の着弾位置を一致させる技術が提案されている。しかし、この技術では、インク吐出口面の傾斜角度が一定であり、主滴と副滴の吐出角度が固定されているので、記録媒体の搬送速度が変更になった場合、主滴と副滴の着弾位置が一致しないことがある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、搬送速度を変更させても主滴と副滴の着弾位置のずれを防止できるインク吐出方法及びインクジェット方式画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明のインク吐出方法は、インクのメニスカスが形成された筒状のノズルのインク吐出口から記録媒体にインクを吐出して画像を形成するインクジェット方式画像形成装置における、搬送中の記録媒体に前記インク吐出口からインクを吐出するインク吐出方法において、
(1)記録媒体が搬送される搬送方向の上流側に向くように傾斜し複数の前記インク吐出口が形成された平面状のインク吐出口面を有すると共に、前記ノズルの延びる軸線方向に対して前記インク吐出口面が直交していない記録ヘッドを使用し、
(2)前記インク吐出口から吐出された一つのインク滴を構成する主滴と副滴が記録媒体に着弾する着弾位置が同じ位置になるように前記メニスカスの位置を変更させて前記インク吐出口からインクを吐出することを特徴とするものである。
【0010】
また、上記目的を達成するための本発明の他のインク吐出方法は、インクのメニスカスが形成された筒状のノズルのインク吐出口から記録媒体にインクを吐出して画像を形成するインクジェット方式画像形成装置における、搬送中の記録媒体に前記インク吐出口からインクを吐出するインク吐出方法において、
(3)複数の前記インク吐出口が形成されると共に、記録媒体が搬送される搬送方向の上流側に向くように傾斜する平面状のインク吐出口面を有する記録ヘッドを使用し、
(4)前記インク吐出口から吐出された一つのインク滴を構成する主滴と副滴が記録媒体に着弾する着弾位置が同じ位置になるように前記メニスカスの位置を変更させて前記インク吐出口からインクを吐出することを特徴とするものである。
【0011】
ここで、
(5)記録媒体が搬送される搬送速度に基づいて前記メニスカスの位置を変更させてもよい。
【0012】
また、
(6)前記主滴の吐出速度をVmとし、前記副滴の吐出速度をVsとし、記録媒体の搬送速度をVfとし、前記インク吐出口から記録媒体までの距離をhとしたときに、前記主滴の吐出方向と前記軸線方向との成す角度δは、
(1/Vs)−1/(Vm・cosδ)=tanδ/Vf
を満たすようにしてもよい。
【0013】
さらにまた、
(7)前記メニスカスの位置を変更するに当たり、前記ノズル内のインクに作用する圧力を制御して前記メニスカスの位置を変更してもよい。
【0014】
さらにまた、
(8)前記着弾位置が同じ位置になるようにするに当たり、前記主滴が吐出する方向とは相違する方向に前記副滴を吐出させてもよい。
【0015】
さらにまた、
(9)前記副滴の吐出方向は、前記主滴の吐出方向よりも記録媒体搬送方向の下流側を向いているものであってもよい。
【0016】
さらにまた、
(10)前記ノズルに配置された発熱体を発熱させて前記ノズル内のインク中で発泡することにより、前記インク吐出口からインクを吐出させてもよい。
【0017】
さらにまた、
(11)前記インク吐出口から吐出されたインク滴が着弾する記録媒体の搬送速度に基づいて、前記ノズル内のインクに作用する圧力を制御してもよい。
【0018】
さらにまた、
(12)前記ノズルは不動状態でインクを吐出するものであってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、複数のインク吐出口が形成された平面状のインク吐出口面を有すると共に、ノズルの延びる軸線方向に対してインク吐出口面が直交していない記録ヘッドを使用し、インク吐出口から吐出された一つのインク滴を構成する主滴と副滴が記録媒体に着弾する着弾位置が同じ位置になるようにメニスカスの位置を変更させてインク吐出口からインクを吐出させるので、搬送速度を変更させても主滴と副滴の着弾位置のずれを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、記録ヘッドに形成された複数のノズルから記録媒体にインクを吐出して画像を形成するインクジェット方式のプリンタに実現された。
【実施例1】
【0021】
図1を参照して、本発明のインク吐出方法が採用されたプリンタの一例を説明する。
【0022】
図1は、本発明のインク吐出方法が採用されたプリンタの一例を模式的に示す正面図である。
【0023】
プリンタ10は、このプリンタ10に画像情報を送るホストPC(パソコン)12に接続されている。プリンタ10には、4つ(4本)の記録ヘッド22K、22C、22M、22Yが記録媒体(ここではロ−ル紙)Pの搬送方向(矢印A方向)に並んで配置されている。4つの記録ヘッド22K、22C、22M、22Yからはそれぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエローの各色のインクが吐出される。これら4つの記録ヘッド22K、22C、22M、22Yは、所謂ラインヘッドであり、図1の紙面に直交する方向(矢印A方向に直交する方向)に延びている。これら4つの記録ヘッド22K、22C、22M、22Yの長さは、プリンタ10で印字できる記録媒体のうち最大の幅(図1の紙面に直交する方向の長さ)よりもやや長い。また、これら4つの記録ヘッド22K、22C、22M、22Yは、画像形成中は固定されて動かない(不動状態である)。
【0024】
4つの記録ヘッド22K、22C、22M、22Yから安定してインクを吐出できるように、プリンタ10には回復ユニット40が組み込まれている。この回復ユニット40によって、記録ヘッド22K、22C、22M、22Yからのインク吐出状態は初期のインク吐出状態に回復する。回復ユニット40には、回復動作のときに4つの記録ヘッド22K、22C、22M、22Yのインク吐出口形成面22Ks、22Cs、22Ms、22Ysからインクを除去するキャッピング機構50が備えられている。キャッピング機構50は各記録ヘッド22K、22C、22M、22Yに独立して設けられており、図1の例では6色分け(即ち、6つのキャッピング機構50)が示されているが、このうち2色分は記録ヘッド追加時の予備的な機構である。キャッピング機構50は、周知のブレード、インク除去部材、ブレード保持部材、キャップ等から構成されている。
【0025】
ロ−ル紙Pはロール紙供給ユニット24から供給されて、プリンタ10に組み込まれた搬送機構26によって矢印A方向に搬送される。搬送機構26は、ロ−ル紙Pを載置して搬送する搬送ベルト26a、この搬送ベルト26aを回転させる搬送モータ26b、搬送ベルト26aに張力を与えるローラ26cなどから構成されている。
【0026】
ロ−ル紙Pに画像を形成する際には、搬送中のロ−ル紙Pの記録開始位置がブラックの記録ヘッド22Kの下に到達した後に、記録データ(画像情報)に基づいて記録ヘッド22Kからブラックインクを選択的に吐出する。同様に記録ヘッド22C、記録ヘッド22M、記録ヘッド22Yの順に、各色のインクを吐出してカラー画像をロ−ル紙Pに形成する。この場合、ロール紙Pは停止せずに搬送されながら各記録ヘッド22K、22C、22M、22Yからロール紙Pにインクが吐出される。プリンタ10には、上記の部品・部材の他、各記録ヘッド22K、22C、22M、22Yに供給されるインクを貯めておくメインタンク28K、28C、28M、28Yや、記録ヘッド22K、22C、22M、22Yにインクを供給したり回復動作をしたりするための各種ポンプ(図3等参照)などが備えられている。
【0027】
図2を参照して、プリンタ10の電気的な系統を説明する。
【0028】
図2は、図1のプリンタの電気的な系統を示すブロック図である。
【0029】
ホストPC12から送信された記録データやコマンドはインターフェイスコントローラ102を介してCPU100に受信される。CPU100は、プリンタ10の記録データの受信、記録動作、ロ−ル紙Pのハンドリング等全般の制御を掌る演算処理装置である。CPU100では、受信したコマンドを解析した後に、記録データの各色成分のイメージデータをイメージメモリ106にビットマップ展開して描画する。記録前の動作処理としては、出力ポート114、モータ駆動部116を介してキャッピングモータ122とヘッドアップダウンモータ118を駆動し、各記録ヘッド22K、22C、22M、22Yをキャッピング機構50から離して記録位置(画像形成位置)に移動させる。
【0030】
続いて、出力ポート114、モータ駆動部116を介してロ−ル紙Pを繰り出すロールモータ(図示せず)、及び低速度でロ−ル紙Pを搬送する搬送モータ120等を駆動してロ−ル紙Pを記録位置に搬送する。一定速度で搬送されるロ−ル紙Pにインクを吐出し始めるタイミング(記録タイミング)を決定するための先端検知センサ(図示せず)でロ−ル紙Pの先端位置を検出する。その後、ロ−ル紙Pの搬送に同期して、CPU100はイメージメモリ106から対応する色の記録データを順次に読み出し、この読み出したデータを各記録ヘッド22K、22C、22M、22Yに記録ヘッド制御回路112を経由して(介して)転送する。
【0031】
CPU100の動作はプログラムROM104に記憶された処理プログラムに基づいて実行される。プログラムROM104には、制御フローに対応する処理プログラム及びテーブルなどが記憶されている。また、作業用のメモリとしてワークRAM108を使用する。各記録ヘッド22K、22C、22M、22Yのクリーニングや回復動作時に、CPU100は、出力ポート114、モータ駆動部116を介してポンプモータ124を駆動し、インクの加圧、吸引等の制御を行う。
【0032】
図3を参照して、プリンタ10に組み込まれたインク供給装置について説明する。
【0033】
図3は、インクジェット方式画像形成装置に組み込まれたインク供給装置を示す模式図である。図3では、記録ヘッド22Kにインクを供給したり、この記録ヘッド22Kを回復させたりするためのインク供給装置を示すが、他の記録ヘッド22C、22M、22Yについても同じ構成のインク供給装置が備えられている。また、図3では、図1と図2に示す構成要素と同一の構成要素には同一の符号が付されている。
【0034】
プリンタ10(図1参照)には、記録ヘッド22Kにインクを供給するインク供給装置60が組み込まれている。インク供給装置60は、プリンタ10の本体に着脱自在なメインタンク28Kと、このメインタンク28Kと記録ヘッド22Kとをつなぐインク供給路62の途中に配置されたサブタンク27Kなどから構成されている。サブタンク27Kの下に記録ヘッド22Kが配置されている。
【0035】
サブタンク27Kと記録ヘッド22Kは、2つのインク流路64,66で接続されて(つながれて)いる。サブタンク27Kから加圧バルブ67まで、及びサブタンク27Kから待機バルブ69まではプリンタ10の本体装置フレ−ムに固定されており、インク流路64,66の一部はフレキシブルチューブ製である。このため、記録ヘッド22Kは移動できる。インク流路64には、記録ヘッド22Kをクリーニングする際に稼動するクリーニングポンプ68や、所定のタイミングでインク流路64を開閉する待機バルブ69が取り付けられている。一方、インク流路66には、所定のタイミングでインク流路66を開閉する加圧バルブ67が取り付けられている。インク流路66のうち加圧バルブ67と下記の圧力調整ポンプ82の間の部分には、インク流路66内のインク圧力を検出する圧力検出センサ81が取り付けられている。
【0036】
サブタンク27Kの内部には、記録ヘッド22Kの多数のノズル22Knに適正な圧力を付与するための圧力調整ポンプ82が配置されている。圧力調整ポンプ82はサブタンク27Kの底面のやや上方に位置しており、この底面から所定間隔離れている。圧力調整ポンプ82は、サブタンク27Kに貯められているインクに浸かっている状態である。サブタンク27Kの上方には、圧力調整ポンプ82を駆動させる駆動ユニット83が配置されており、この駆動ユニットは、CPU100(図2参照)によって制御されている。また、サブタンク27Kの上壁には、サブタンク27Kの内部圧力を大気圧にするための大気開放バルブ84が固定されている。この大気開放バルブ84を開放することにより、サブタンク27Kの内部圧力は大気圧に等しくなる。
【0037】
また、サブタンク27Kには、このサブタンク27Kに貯められているインク(貯蔵インク)の液面レベルを検知する周知の液面検知センサ86が取り付けられている。サブタンク27K内のインク液面が一定レベル以下になったことを液面検知センサ86が検知したときは、供給ポンプ72が稼動し始めてメインタンク28Kからインクが吸引されてサブタンク27Kに供給される。一方、サブタンク27K内のインク液面が予め決められている上限レベルになったことを液面検知センサ86が検知したときは、供給ポンプ72が停止してインクの供給は停止される。
【0038】
メインタンク28Kには、このメインタンク28K内のインクの有無を検出する検出センサ(図示せず)が取り付けられている。また、プリンタ10の本体にメインタンク28Kを装着するときに接続されるエア−流路には、メインタンク28Kの内部圧力を大気圧にするための大気開放バルブ74が取り付けられている。
【0039】
図4から図6までを参照して、圧力調整ポンプ82によって記録ヘッド22K内の圧力を調整する技術について説明する。
【0040】
図4は、サブタンクと記録ヘッドを詳細に示す拡大図である。図5は、圧力調整ポンプの羽根を示す上面図である。図6は、図5に示す羽根の回転数と記録ヘッド内のインクに作用する圧力との関係を示すグラフである。これらの図では、図3に示す構成要素と同一の構成要素には同一の符号が付されている。
【0041】
上記した加圧バルブ67、待機バルブ69、大気開放バルブ84としては、図4に示すように、ソレノイドのプランジャー130に一体化されたバルブシ−ト132によってインク流路の遮断を行う電磁バルブが採用されるが、本発明においてはこれらの方式を何ら限定するものではなく他の方式のものを採用しても何ら問題無い。
【0042】
記録時には記録ヘッド22Kに適正な負圧を付与する(記録ヘッド22Kのインク吐出口(ノズルの出口)においてインクのメニスカスが形成されるような圧力をインクに作用させる)必要がある。この場合、加圧バルブ67と大気開放バルブ84は開放状態にあり、待機バルブ69は密閉状態にある。この状態で圧力調整ポンプ82を駆動することにより、図5の矢印C方向に圧力調整ポンプ82の羽根82aが回転し、この羽根82aの中心Cから羽面82bに沿ってインクは遠心力を受ける。つまり、圧力調整ポンプ82の回転軸中心部(中心Cの周辺部)は相対的に負圧となるので、サブタンク27Kの吸引口80aからインク流路66を介して記録ヘッド22Kに負圧を付与することができる。吸引口80aはサブタンク27Kの底壁に形成されており、圧力調整ポンプ82は吸引口80aから所定間隔離れた上方に配置されている。なお、羽根82aの回転数は、CPU100(図2参照)に制御されている。
【0043】
上記のように圧力調整ポンプ82を駆動させて羽根82aを矢印C方向に回転させるときに発生する遠心力によって、この圧力調整ポンプ82が記録ヘッド22K内のインクを、インク流路66と吸引口80aを経由してサブタンク27K内に吸い込もうとし(実際に吸い込まれることはほとんど無い)、この結果、記録ヘッド22K内のインクに負圧(インク吐出口の外側周辺の大気圧よりも低い圧力)が与えられてインク吐出口においてインクのメニスカスが形成されることとなる。なお、羽根82aが矢印C方向とは反対方向に回転するように圧力調整ポンプ82を駆動させた場合は、サブタンク82内のインクが吸引口80aから押し出されようとするので、記録ヘッド22K内のインクに正圧(インク吐出口の外側周辺の大気圧よりも高い圧力)が与えられる。この結果、インク吐出口からはインクが排出される。
【0044】
圧力調整ポンプ82の羽根82aが図5の矢印C方向に回転するときの回転数に応じて、図6に示すように、圧力調整ポンプ82が発生させる負圧の大きさが変動する。羽根82aが矢印C方向に速く回転するほど(単位時間当たりの回転数が多いほど)大きな負圧が発生するので、記録ヘッド22K内のインクは強い力でサブタンク82内に吸い上げられようとすることとなり、記録ヘッド22K内(ノズル22Kn内)のインクに作用する負圧が大きくなる。この逆に、羽根82aが矢印C方向に遅く回転するほど(単位時間当たりの回転数が少ないほど)小さな負圧しか発生しないので、記録ヘッド22K内のインクは弱い力でサブタンク82内に吸い上げられようとすることとなり、記録ヘッド22K内のインクに作用する負圧が小さくなる。すなわち、記録ヘッド22Kに付与する負圧の大きさは圧力調整ポンプ82の回転数に応じて制御できるので、圧力調整ポンプ82を駆動させることにより、インク流路66を開放したままの状態で記録ヘッド22K内の圧力が調整されることとなる。
【0045】
圧力調整ポンプ82としては、一般的にタ−ボ形と分類されるポンプを使用することが望ましい。タ−ボ形ポンプとしては、本実施例で採用した遠心ポンプ形式や斜流形式、軸流形式などが挙げられる。これらはインク流路(液流路)を遮断する(閉じる)ことなく圧力を発生できるので、差圧に応じてインクがポンプ内を移動できる。例えば、記録ヘッド22Kからインクが吐出したときは、記録ヘッド22K内のインクが減少するので、記録ヘッド22Kから圧力調整ポンプ(遠心ポンプ)82までの間が減圧される。この場合、サブタンク27K内のインクがインク流路66を経由して記録ヘッド22Kに供給される。これに対し、圧力調整ポンプ82として、いわゆる容積式に分類されるピストンポンプ等を用いた場合は、インクを圧送するためにインク流路66を遮断するので、インクがピストンポンプ内を通じて自由に移動できないばかりか、記録ヘッド22Kのノズル22Knのインク吐出口から外気を容易に吸引してしまう。
【0046】
図7を参照してノズル22Knの構造を説明する。他の記録ヘッド22Y,22M,22Cのノズルも同一の構造である。図7は、ノズルとその周辺部を示す断面図である。図7には、1つのノズル22Knを示すが、記録ヘッド22Kには多数のノズルが形成されている。
【0047】
記録ヘッド22Kには、インクを吐出する多数の筒状(一般的には円筒状)のノズル22Knが、図7の紙面の垂直方向に並んで形成されている。多数のノズル22Knは、インクが貯められた共通液室150につながっている(連通している)。この共通液室150はサブタンク27K(図3参照)につながっており、サブタンク27Kから共通液室150にインクが供給される。従って、サブタンク27K内の圧力調整ポンプ82(図3等参照)の回転数を変更することにより、記録ヘッド22Kに付与する負圧の大きさ、即ち、ノズル22Kn内のインクに作用する負圧の大きさを変更できる。
【0048】
ノズル22Knには、このノズル22Kn内のインク中で発泡させる発熱体152が配置されている。後述するように、発熱体152を発熱させることによりノズル22Kn内のインク中で泡が発生し、ノズル22Knの出口(インク吐出口22Km)からインクが押し出されて吐出される。発熱体152は、シリコン素子基板156上に周知の技術で形成されている。このシリコン素子基板156には、後述するメニスカスMの近傍においてインクの濡れ性を均一化させるために天板ノズル158とノズル土手160が形成されており、これら天板ノズル158とノズル土手160はノズル22Knの内壁に面している。天板ノズル158とノズル土手160は樹脂で被覆されている。ノズル土手160はノズル22Knのインク吐出口22Kmの近傍の内壁に形成されており、ノズル22Knを狭めるものである。
【0049】
上記した共通液室150もシリコン素子基板156に形成されている。また、発熱体152による発泡時にエネルギーを効率良くインク吐出口22Kmに向かわせる可動弁162の弁台座161や、天板ノズル158からノズル22Kn内部に向かって垂直方向に延びる流路壁164もシリコン素子基板156に形成されている。ノズル土手160は、多数のノズル22Kn等を作製する場合において天板ノズル158を切断するときに欠け(チッピング)を生じさせないためのものである。シリコン素子基板156のうち共通液室150に面する部分にはサブヒータ166が形成されており、このサブヒータ166は、記録ヘッド22K内のインクの温度を一定に保って粘性を安定させることによりインクの安定吐出範囲内で印字させることを目的としている。
【0050】
発熱体152は電気抵抗層及び配線をパターニングして形成されたものである。この配線を経由して電気抵抗層に電圧を印加して電流を流すことにより発熱体152が発熱する。この発熱によって発熱体152の周辺のインク中に泡(気泡)を発生させ、インク吐出口22Kmからインクを押し出して吐出させている。また、シリコン素子基板156と発熱体152に蓄積された熱の温度(蓄熱温度)を検知するためのDiセンサ(図示せず)がシリコン素子基板156に配置されており、このDiセンサが検知した検知温度に応じて記録ヘッド22Kの駆動条件が決定される。
【0051】
上述したように、1つの記録ヘッド22Kでは複数のノズル22Knが図7の紙面の垂直方向に並んで形成されており、複数のノズル22Knそれぞれのインク吐出口22Kmは、平面状のインク吐出口面(フェイス面)22Ksに一列に並んで形成されている。インク吐出口面22Ksは、図7の紙面の垂直方向に延びている。また、インク吐出口面22Ksは、記録ヘッド22Kのうち、各インク吐出口22Kmから吐出したインクが着弾する搬送中のロール紙Pに向き合う部分に形成されている。インク吐出口面22Ksは、ノズル22Knの軸線L1(軸線方向)に対しては直交しておらず、矢印A方向に搬送中のロール紙Pに対して傾斜している。ここでいう軸線L1とは、円筒状のノズル22Knの横断面の中心を通る直線をいい、仮想の直線L1である。インク吐出口面22Ksは、ロール紙Pの搬送方向(矢印A方向)の上流側に向くように角度θで傾斜しており、メニスカスMの位置を調整し、一つのインク滴を構成する主滴と副滴の吐出方向を制御することによってロール紙Pの搬送速度が変更されても一つのインク滴を構成する主滴と副滴がロール紙Pに着弾する着弾位置を同じにさせることができる。なお、他の記録ヘッド22C、22M、22Yについても上記と同様である。上記の角度θについて説明する。
【0052】
上述したように、インク吐出口面22Ksはノズル22Knの軸線L1に対しては直交せずに、インク吐出口面22Ksの法線L2と軸線L1とは角度θを成す。換言すれば、矢印A方向に搬送中のロール紙Pを基準にした場合、インク吐出口面22Ksは、ロール紙Pの搬送方向(矢印A方向)の上流側に向かって角度θだけ傾斜している。即ち、インク吐出口面22Ksは、軸線L1に直交する面F0(搬送中のロール紙Pに平行な面)をロール紙Pの搬送方向上流側(図7の紙面の左側)に向けて角度θだけ傾けた面でもある。角度θの大きさは、後述するように、ロール紙Pと記録ヘッド22Kの相対移動速度などを考慮して決定する。
【0053】
ここで、一つのインク滴の主滴mの吐出速度をVm(m/sec)とし、副滴sの吐出速度をVs(m/sec)とし、ロール紙Pの搬送速度をVf(m/sec)とし、インク吐出口22Kmからロール紙Pまでの距離をh(m)とした場合、インク吐出口面22Ksが面F0に一致するときは、主滴mと副滴sの着弾位置のずれ量dは、下式によって表される。
d={(1/Vs)−(1/Vm)}×h×Vf
【0054】
インク吐出口面22Ksが面F0に一致するときは、主滴mの吐出速度Vm、副滴sの吐出速度Vs、インク吐出口面22Ksからロール紙Pまでの距離h、ロール紙Pの搬送速度Vfに応じた大きさのずれ量dが発生し、一つのインク滴の主滴mと副滴sの着弾位置を一致させることはできない。
【0055】
一方、インク吐出口面22Ksが、下記の条件を満たすように、搬送中のロール紙Pに対して角度θだけ傾けることにより、一つのインク滴の主滴mと副滴sの着弾位置を一致させられる。
〔(1/Vs)−{(1/Vm・cosθ)}〕×h×Vf=h・tanθ
上式を整理すると下式となる。
(1/Vs)−{1/(Vm・cosθ)}=tanθ/Vf
【0056】
即ち、一つのインク滴の主滴の吐出速度をVm(m/sec)とし、副滴の吐出速度をVs(m/sec)とし、ロール紙Pの搬送速度をVf(m/sec)とし、インク吐出口22Kmからロール紙Pまでの距離をh(m)としたときに、角度θ(°)は、
(1/Vs)−1/(Vm・cosθ)=tanθ/Vf
を満たす。なお、ロール紙Pの搬送速度Vfが変更になった場合は、後述するように圧力調整ポンプ82を駆動させてメニスカスMの位置を調整する。
【0057】
メニスカスMの位置を調整する(変更する)に当たっては、上記したように圧力調整ポンプ82(図3等参照)の回転数を変更する。これにより、記録ヘッド22Kに付与する負圧の大きさ、即ち、ノズル22Kn内のインクに作用する負圧の大きさを変更でき(負圧を制御でき)、メニスカスMの位置を調整できることとなる。
【0058】
ここで、上記のような負圧制御をせずに水頭差方式のみでノズル22Knに負圧を作用させたときの発泡からインクの着弾までについて、図8と図9を参照して説明する。
【0059】
図8(a)は、発熱体を発熱させる前の待機状態を示す模式図であり、(b)は、発熱体が発熱してインク中に泡が発生すると同時にインク吐出口から少量のインクが押し出された状態を示す模式図であり、(c)は、(b)の状態に続いてインク吐出口から多量のインクが押し出された状態を示す模式図であり、(d)は、泡が小さくなると共にインク吐出口から吐出した一つのインク滴が主滴と副滴に分離する直前の状態を示す模式図であり、(e)は、消泡すると共にインク吐出口から吐出した一つのインク滴が主滴と副滴に分離した状態を示す模式図であり、(f)は、主滴が記録媒体に着弾した状態を示す模式図であり、(g)は、主滴に遅れて副滴が記録媒体に着弾した状態を示す模式図である。図9(a)は、主滴の吐出方向を示す模式図であり、(b)は、インクとインク吐出口面の接触角を示す模式図である。
【0060】
図8(a)に示すように、発熱体152が通電されずにノズル22Kn内のインクが加熱される前の状態では、インク吐出口22Km付近のインクはメニスカスMを形成している。図8(b)、(c)に示すように、発熱体152が通電されて、この発熱体152の発熱によってインクが加熱されることにより、インクの膜沸騰を伴って泡(気泡)Bが生じる。この場合、気泡Bの発生に基づく圧力の伝播方向は、可動弁162が弁台座161を支点として変位することによりインク吐出口22Kmに導かれる。発泡によって生じた圧力の伝播に伴ってメニスカスMが吐出方向に前進し始めることにより、インク吐出口22Km付近のインクは、図9(b)に示すように、インク吐出口面22Ks上のノズル土手160と天板ノズル158に対して等しい接触角αを保ちながら、インク吐出口22Kmから押し出される。このとき、インクが押し出される方向A1と、ノズル22Knの軸線L1との成す角度は、図9(a)に示すように、インク吐出口面22Ksの傾き角度θとなる。つまりインク吐出口22Km付近のインクは、図8(b)、(c)と図9に示すように、インク吐出口面22Ksに直交する法線L2に沿うように、矢印A1方向に押し出されることとなる。一方、発熱体152の近傍に位置するインクは、図8(b)、(c),及び(d)に示すように、ノズル22Knの軸線L1の方向に沿って矢印A2方向に押し出される。
【0061】
その後、図8(d)に示すように気泡Bが収縮過程に入ることにより、インク吐出口22Km付近のインクがノズル22Kn内に引き込まれるので、図8(e)に示すように、主滴mと副滴sが形成される。主滴mと副滴sは、発泡よって押し出された方向が異なるため、図8(e)のように、主滴mは、軸線L1と角度θを成す矢印A1方向(図9に示す法線L2方向)へ飛翔し、副滴sは矢印A2方向(軸線L1方向)に飛翔する。この矢印A2方向は、矢印A1方向よりも搬送方向(矢印A方向)の下流側を向いている。
【0062】
インク吐出口22Kmからインク滴Id(主滴mと副滴s)が吐出した後、後退したメニスカスMの位置は、ノズル22Knの毛細管力(リフィル)によって、図8(f)、(g)に示すように待機状態まで復帰する。一方、吐出したインク滴Idの主滴mは、搬送中のロール紙P上に着弾する。主滴mがロール紙Pに着弾した後、副滴sがこのロール紙Pに着弾するまでの間、ロール紙Pは矢印A方向(搬送方向)に搬送される(移動する)。しかし、副滴sの吐出方向は矢印A2方向なので、図8(g)に示すように、ロール紙P上の主滴m(ロール紙Pに吸収されている)が着弾した位置と同じ位置に副滴sが着弾する。このように、主滴mと副滴sは着弾位置が同じ位置になるので、一つのインク滴Idの主滴mと副滴sの着弾位置が相違することによる画像品位の低下を防止でき、画像品位を向上させられる。
【0063】
ロール紙Pの搬送速度が変更になった場合、一つのインク滴Idの主滴mと副滴sの着弾位置が相違するおそれがある。
この結果、主滴mと副滴sでは、着弾位置にずれが発生する。このずれの距離(間隔)は、記録媒体Pの搬送速度が速くなるほど長くなる(大きくなる)。このように一つのインク滴Idの主滴mと副滴sが記録媒体P上の相違する位置に着弾したときは画質が低下する。
【0064】
そこで、本発明では、メニスカスMの位置によって主滴mの吐出方向が変化することに着目し、ロール紙Pの搬送速度が変更されても、一つのインク滴Idの主滴mと副滴sがロール紙Pに着弾する位置が同じ位置になるようにメニスカスMの位置を変更した。メニスカスMの位置を変更するに当たっては、圧力調整ポンプ82(図3等参照)の回転数を変更することにより、記録ヘッド22Kに付与する負圧の大きさ、即ち、ノズル22Kn内のインクに作用する負圧の大きさを変更した。この負圧に応じてメニスカスMの位置が変更される。
【0065】
図10は、ロール紙の搬送速度に応じてメニスカスMの位置を変更したときの説明図である。
【0066】
図10(a)は、発熱体を発熱させる前の待機状態を示す模式図であり、(b)は、発熱体が発熱してインク中に泡が発生すると同時にインク吐出口から少量のインクが押し出された状態を示す模式図であり、(c)は、(b)の状態に続いてインク吐出口から多量のインクが押し出された状態を示す模式図であり、(d)は、泡が小さくなると共にインク吐出口から吐出したインク滴が主滴と副滴に分離する直前の状態を示す模式図であり、(e)は、消泡すると共にインク吐出口から吐出したインク滴が主滴と副滴に分離した状態を示す模式図であり、(f)は、主滴が記録媒体に着弾した状態を示す模式図であり、(g)は、主滴に遅れて副滴が記録媒体に着弾した状態を示す模式図である。
【0067】
図10(a)に示すように、ノズル22Kn内のインクのメニスカスMは、図8(a)に示すメニスカスMの位置よりも後方に位置している。発泡によって生じた圧力の伝播に伴ってメニスカスMがインク吐出口22Kmに向かって前進し始めることにより、図8(b)ではインク吐出口面22Ksの傾き角度θを持ちながらインクが押し出されるが、図10(b)ではメニスカスMが後退しているので、インクはノズル22Kn内を移動している。続いて、図10(c)に示すようにメニスカスMがインク吐出口22Kmに到達するので、インク吐出口面22Ksの傾き角度θを持ちながらインクが押し出されようとする。
【0068】
しかし、図10(b)に示すようにノズル22Knの軸線L1方向(矢印A2方向)に沿ってインクが押し出されているので、インク吐出口面22Ksの傾き角度θを持ちながらインクが押し出されようとしても、軸線L1方向の力が働き、矢印A1方向(図8参照)と矢印A2方向の力が合成された方向(矢印A3方向)へインクは押し出される。ここで、(矢印A1方向と矢印A2方向のなす角)>(矢印A2方向とA3のなす角)となる。一方、発熱体152の近傍に存在するインクは、図8の場合と同様に、ノズル22Knの軸線L1方向に沿って矢印A2方向に押し出される。
【0069】
その後、図10(d)に示すように気泡Bが収縮過程に入ることにより、インク吐出口22Km付近のインクがノズル22Kn内に引き込まれて、図10(e)に示すように主滴mと副滴sが形成される。主滴mと副滴sは、発泡よって押し出された方向が異なるため、図10(e)に示すように、主滴mは、矢印A1方向と矢印A2方向を合成した矢印A3方向へ飛翔し、副滴sは矢印A2方向に飛翔する。A3とA2のなす角度をδとすると、このδに関して、上記に説明した式の角度θをδに置き換えた式が成り立つ。
【0070】
上記のように、ロール紙Pの搬送速度が変更されても、この搬送速度に応じてメニスカスMの位置を変更することにより、δが変化し、主滴mと副滴sは着弾位置が同じ位置になる。このため、一つのインク滴Idの主滴mと副滴sの着弾位置が相違することによる画像品位の低下を防止でき、画像品位を向上させられる。
【0071】
図11を参照して、記録ヘッド22Knの負圧、メニスカスMの位置、及び主滴の吐出方向の関係を説明する。
【0072】
図11は、インク吐出口面からメニスカスまでの距離と記録ヘッド内の負圧との関係、及び主滴の吐出角度と記録ヘッドの負圧との関係を示すグラフであり、横軸は、記録ヘッド(ノズル内のインク)に作用する負圧(ヘッド内圧)を表し、右の縦軸は、主滴の吐出角度を表し、左の縦軸は、インク吐出口面からメニスカスまでの距離(メニスカスの後退位置)を表す。横軸は、右に行くほどヘッド内の負圧が大きくなる(大気圧よりも低くなる)。なお、1mmAq=9.8paとする。
【0073】
図中、線分Xは、ヘッド内圧と主滴の吐出角度との関係を表す。線分Xで表されるように、(a)の範囲内のヘッド内圧では、主滴の吐出角度は同じで変わらないが、(b)の範囲内のヘッド内圧((a)の範囲内のヘッド内圧よりも低い内圧(大きい負圧))では、ヘッド内圧が低くなるほど主滴mの吐出角度δ(図8等参照)は大きくなる。即ち、ノズル22Kn内のインクに作用する負圧が大きく(大気圧よりも低くなる)なるほど主滴mは搬送方向(図8の矢印A方向)下流側に吐出する。なお、図中のP1は、メニスカスMがノズル内部に後退を開始するときのヘッド内圧である。
【0074】
また、図中、線分Yは、ヘッド内圧とメニスカスMの後退した位置との関係を表す。線分Yで表されるように、ヘッド内圧が小さく(負圧が大きく)なるほど(ノズル22Kn内のインクに作用する負圧が大きくなるほど)メニスカスMが後退する(ノズル22Knの奥に移動する)。但し、ノズル22KnでメニスカスMが形成される負圧(メニスカス保持力)が大きすぎると(負圧が大きすぎる)場合((c)の範囲)は、メニスカスMがノズル土手160より後方に移動してしまい、本発明で提案している挙動を取らなくなってしまう。
【0075】
上記したノズル後退位置と記録ヘッドの負圧との関係、及び主滴の吐出角度と記録ヘッドの負圧との関係に基づいて圧力調整ポンプ82(図3等参照)の回転数を制御してノズル22Kn内のインクに作用する負圧を決定する。
【0076】
図12を参照して、圧力調整ポンプ82(図3等参照)の回転数を制御してノズル22Kn内のインクに作用する負圧を決定してインクを吐出するインク吐出方法の手順の一例を説明する。
【0077】
図12は、インク吐出方法の手順の一例を示すフロー図である。
【0078】
インク吐出方法では、ロール紙Pの搬送速度に応じて圧力調整ポンプ82(図3等参照)の回転数を制御することによりメニスカスM(図8等参照)の位置を変えて主滴m(図10等参照)の吐出角度θ(図7等参照)を制御してインクを吐出させる。この制御は、主滴制御シーケンスが起動することにより開始される。先ず、ホストPC(図1参照)からの印刷データの有無の判別を行い(S1201)、印刷データがある場合は、その印刷データにおけるヘッド内圧のシミュレーションを印字デュティー等のカウントにより算出する(S1202)。この算出されたデータをもとに、図11で示したグラフを参照にして、印刷速度(記録媒体の搬送速度)に応じた主滴の吐出角度θを算出し、その角度θに対応するメニスカスMの後退位置を決める(S1203)。メニスカスMを後退させるために、圧力調整ポンプ82(図3等参照)の回転数を決め(S1204)、印刷を開始する(S1205)。印刷の途中で、印字デュティーの変化等に起因してヘッド内圧が変動し(S1206)、ヘッド内圧が上昇したときは、図11で示したグラフを参照にして(S1207)、圧力調整ポンプ82(図3等参照)の回転数を上げる(S1208)。一方、ヘッド内圧が下降したときは、図11で示したグラフを参照にして(S1209)、圧力調整ポンプ82(図3等参照)の回転数を下げる(S1210)。
【0079】
上記の制御は、ヘッド内圧が上昇しても下降しても、ロール紙Pの搬送速度に応じて最適な主滴の吐出角度を得るために、メニスカスMの位置を変更する制御である。印刷データがある場合は、上記のシーケンスを続けて実行する(S1211)。
【0080】
上記したインク吐出方法は、複数の機器(例えばホストコンピュータ、インタフェイス機器、リーダ、プリンタなど)から構成されるシステムに適用しても、一つの機器からなる装置(例えば、複写機、ファクシミリ装置など)に適用してもよい。また、上記のインク吐出方法は、上記実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読出し実行することによっても、達成されることは言うまでもない。この場合、記憶媒体から読出されたプログラムコード自体が上記実施例の機能を実現することとなる。このプログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えばフロッピ(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。
【0081】
また、コンピュータが読出したプログラムコードを実行することにより、上記実施例の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づきコンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって上記実施例の機能が実現される場合も含まれる。さらに、記憶媒体から読出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって上記実施例の機能が実現される場合も含まれる。
【0082】
ヘッド内圧、主滴の吐出角度δ、ロール紙Pの搬送速度の一例を表1に示す。
【表1】
【0083】
表1に示すようにロール紙Pの搬送速度が速くなるほどヘッド内の負圧を小さくして(メニスカスMをインク吐出口面に近づける)、主滴の吐出角度θを大きくする。この逆に、ロール紙Pの搬送速度が遅くなるほどヘッド内の負圧を大きくして(メニスカスMをインク吐出口面から遠ざけて)、主滴の吐出角度θを小さくする。このように、ロール紙Pの搬送速度に応じてメニスカスMの位置を変更して一つのインク滴の主滴と副滴の着弾位置を一致させることにより画質を向上できる。なお、表1において、1mmAq=9.8Paである。
【0084】
ここで、図13を参照して、主滴及び副滴の吐出速度を測定する方法を説明する。
【0085】
図13は、主滴及び副滴の吐出速度を測定する方法を示す模式図である。
【0086】
ストロボ200を2回発光させ、一つの主滴mをCCDカメラで同じ画面上に撮影する。この画像上では、2つの液滴(吐出前後の一つの主滴m)の距離と時間がわかるので、主滴(又は副滴)の吐出速度を算出できる。この方法は自動化された試験装置(ツール)として知られている。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明のインク吐出方法が採用されたプリンタの一例を模式的に示す正面図である。
【図2】図1のプリンタの電気的な系統を示すブロック図である。
【図3】インクジェット方式画像形成装置に組み込まれたインク供給装置を示す模式図である。
【図4】サブタンクと記録ヘッドを詳細に示す拡大図である。
【図5】圧力調整ポンプの羽根を示す上面図である。
【図6】図5に示す羽根の回転数と記録ヘッド内のインクに作用する圧力との関係を示すグラフである。
【図7】ノズルとその周辺部を示す断面図である。
【図8】(a)は、発熱体を発熱させる前の待機状態を示す模式図であり、(b)は、発熱体が発熱してインク中に泡が発生すると同時にインク吐出口から少量のインクが押し出された状態を示す模式図であり、(c)は、(b)の状態に続いてインク吐出口から多量のインクが押し出された状態を示す模式図であり、(d)は、泡が小さくなると共にインク吐出口から吐出したインク滴が主滴と副滴に分離する直前の状態を示す模式図であり、(e)は、消泡すると共にインク吐出口から吐出したインク滴が主滴と副滴に分離した状態を示す模式図であり、(f)は、主滴が記録媒体に着弾した状態を示す模式図であり、(g)は、主滴に遅れて副滴が記録媒体に着弾した状態を示す模式図である。
【図9】(a)は、主滴の吐出方向を示す模式図であり、(b)は、インクとインク吐出口面の接触角を示す模式図である。
【図10】(a)は、発熱体を発熱させる前の待機状態を示す模式図であり、(b)は、発熱体が発熱してインク中に泡が発生すると同時にインク吐出口から少量のインクが押し出された状態を示す模式図であり、(c)は、(b)の状態に続いてインク吐出口から多量のインクが押し出された状態を示す模式図であり、(d)は、泡が小さくなると共にインク吐出口から吐出したインク滴が主滴と副滴に分離する直前の状態を示す模式図であり、(e)は、消泡すると共にインク吐出口から吐出したインク滴が主滴と副滴に分離した状態を示す模式図であり、(f)は、主滴が記録媒体に着弾した状態を示す模式図であり、(g)は、主滴に遅れて副滴が記録媒体に着弾した状態を示す模式図である。
【図11】インク吐出口面からメニスカスまでの距離と記録ヘッド内の負圧との関係、及び主滴の吐出角度と記録ヘッドの負圧との関係を示すグラフである。
【図12】インク吐出方法の手順の一例を示すフロー図である。
【図13】主滴及び副滴の吐出速度を測定する方法を示す模式図である。
【符号の説明】
【0088】
10 プリンタ
22K、22C、22M、22Y 記録ヘッド
22Kn ノズル
22Km インク吐出口
22Ks インク吐出口面(フェイス面)
M メニスカス
m 主滴
s 副滴
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドに形成された複数のノズルのインク吐出口から記録媒体にインク(インク滴)を吐出するインク吐出方法及びインクジェット方式画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録ヘッドに形成された複数のノズルから記録媒体にインク(インク滴)を吐出して画像を形成するインクジェット方式画像形成装置(インクジェットプリンタ)が広く使用されている。ノズルからインク滴を吐出させる技術として、駆動パルスに応じた熱エネルギをノズル内のインクに供給して膜沸騰による気泡を形成させ、この気泡によってノズルからインク滴を吐出させる技術が知られている。この技術では、形成する画像に応じた多数のインク滴がノズルから記録媒体に吐出されることにより記録媒体に画像が形成される。
【0003】
上記の技術を採用したインクジェットプリンタのなかには、画像記録速度(画像形成速度)を向上させるために、インク吐出口及びインク流路等からなるノズルを複数集積したマルチノズルヘッドを記録媒体の搬送方向に直交させて多数配列させたラインヘッドを有し、記録媒体の搬送に合わせて複数のノズルのインク吐出口から同時にインクを吐出させるタイプのもの(ラインプリンタ)がある。
【0004】
記録媒体に画像を形成する画像形成装置には、一般に、高画像品位で高解像度の画像を高速で形成することが求められるが、上記のラインプリンタをはじめとするインクジェットプリンタを使用することによりこれらの要求を満足させることができる。また、インクジェットプリンタは、画像形成時(画像記録時)に記録ヘッド(記録ヘッド)と記録媒体とが非接触であるので、非常に安定した画像記録を行うことができるという利点も有している。
【0005】
しかし一方で、インクジェットプリンタでは、流体であるインクを扱うので、流体力学的な種々の不都合が記録ヘッドで発生する。また、インクは液体であるので、環境温度や放置時間等によって粘性が随時変わっていく。このような粘性の変化は画像記録に大きな影響を及ぼす。また、ノズルから吐出するインク滴の特性として、ノズルから吐出した一つのインク滴が主滴と副滴(サテライト)に分離することが知られている。主滴は副滴よりも先にノズルのインク吐出口から離れ、主滴に続いて副滴がインク吐出口から離れる。
【0006】
ところで、産業用のインクジェットプリンタとコンシューマープリンタ(家庭用のインクジェットプリンタ)とを比較した場合、産業用のインクジェットプリンタではコンシューマープリンタよりも、印刷速度(記録媒体の搬送速度)や印字デュティー(記録媒体の単位面積当たりに着弾したインク滴の数)が格段に増加している。記録媒体の搬送速度を速めた(例えば、約120m/分)場合、ノズルから吐出した一つのインク滴の主滴が記録媒体に着弾する位置(着弾位置)と、副滴が記録媒体に着弾する着弾位置とがずれることがある。このように、一つのインク滴を構成する主滴と副滴の着弾位置がずれた場合、一つのインク滴が別々の位置に着弾することとなるので画像品位が低下することがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような主滴と副滴の着弾位置のずれを防止するために、複数のインク吐出口が形成されたインク吐出口面を傾斜させて、主滴と副滴の着弾位置を一致させる技術が提案されている。しかし、この技術では、インク吐出口面の傾斜角度が一定であり、主滴と副滴の吐出角度が固定されているので、記録媒体の搬送速度が変更になった場合、主滴と副滴の着弾位置が一致しないことがある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、搬送速度を変更させても主滴と副滴の着弾位置のずれを防止できるインク吐出方法及びインクジェット方式画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明のインク吐出方法は、インクのメニスカスが形成された筒状のノズルのインク吐出口から記録媒体にインクを吐出して画像を形成するインクジェット方式画像形成装置における、搬送中の記録媒体に前記インク吐出口からインクを吐出するインク吐出方法において、
(1)記録媒体が搬送される搬送方向の上流側に向くように傾斜し複数の前記インク吐出口が形成された平面状のインク吐出口面を有すると共に、前記ノズルの延びる軸線方向に対して前記インク吐出口面が直交していない記録ヘッドを使用し、
(2)前記インク吐出口から吐出された一つのインク滴を構成する主滴と副滴が記録媒体に着弾する着弾位置が同じ位置になるように前記メニスカスの位置を変更させて前記インク吐出口からインクを吐出することを特徴とするものである。
【0010】
また、上記目的を達成するための本発明の他のインク吐出方法は、インクのメニスカスが形成された筒状のノズルのインク吐出口から記録媒体にインクを吐出して画像を形成するインクジェット方式画像形成装置における、搬送中の記録媒体に前記インク吐出口からインクを吐出するインク吐出方法において、
(3)複数の前記インク吐出口が形成されると共に、記録媒体が搬送される搬送方向の上流側に向くように傾斜する平面状のインク吐出口面を有する記録ヘッドを使用し、
(4)前記インク吐出口から吐出された一つのインク滴を構成する主滴と副滴が記録媒体に着弾する着弾位置が同じ位置になるように前記メニスカスの位置を変更させて前記インク吐出口からインクを吐出することを特徴とするものである。
【0011】
ここで、
(5)記録媒体が搬送される搬送速度に基づいて前記メニスカスの位置を変更させてもよい。
【0012】
また、
(6)前記主滴の吐出速度をVmとし、前記副滴の吐出速度をVsとし、記録媒体の搬送速度をVfとし、前記インク吐出口から記録媒体までの距離をhとしたときに、前記主滴の吐出方向と前記軸線方向との成す角度δは、
(1/Vs)−1/(Vm・cosδ)=tanδ/Vf
を満たすようにしてもよい。
【0013】
さらにまた、
(7)前記メニスカスの位置を変更するに当たり、前記ノズル内のインクに作用する圧力を制御して前記メニスカスの位置を変更してもよい。
【0014】
さらにまた、
(8)前記着弾位置が同じ位置になるようにするに当たり、前記主滴が吐出する方向とは相違する方向に前記副滴を吐出させてもよい。
【0015】
さらにまた、
(9)前記副滴の吐出方向は、前記主滴の吐出方向よりも記録媒体搬送方向の下流側を向いているものであってもよい。
【0016】
さらにまた、
(10)前記ノズルに配置された発熱体を発熱させて前記ノズル内のインク中で発泡することにより、前記インク吐出口からインクを吐出させてもよい。
【0017】
さらにまた、
(11)前記インク吐出口から吐出されたインク滴が着弾する記録媒体の搬送速度に基づいて、前記ノズル内のインクに作用する圧力を制御してもよい。
【0018】
さらにまた、
(12)前記ノズルは不動状態でインクを吐出するものであってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、複数のインク吐出口が形成された平面状のインク吐出口面を有すると共に、ノズルの延びる軸線方向に対してインク吐出口面が直交していない記録ヘッドを使用し、インク吐出口から吐出された一つのインク滴を構成する主滴と副滴が記録媒体に着弾する着弾位置が同じ位置になるようにメニスカスの位置を変更させてインク吐出口からインクを吐出させるので、搬送速度を変更させても主滴と副滴の着弾位置のずれを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、記録ヘッドに形成された複数のノズルから記録媒体にインクを吐出して画像を形成するインクジェット方式のプリンタに実現された。
【実施例1】
【0021】
図1を参照して、本発明のインク吐出方法が採用されたプリンタの一例を説明する。
【0022】
図1は、本発明のインク吐出方法が採用されたプリンタの一例を模式的に示す正面図である。
【0023】
プリンタ10は、このプリンタ10に画像情報を送るホストPC(パソコン)12に接続されている。プリンタ10には、4つ(4本)の記録ヘッド22K、22C、22M、22Yが記録媒体(ここではロ−ル紙)Pの搬送方向(矢印A方向)に並んで配置されている。4つの記録ヘッド22K、22C、22M、22Yからはそれぞれ黒、シアン、マゼンタ、イエローの各色のインクが吐出される。これら4つの記録ヘッド22K、22C、22M、22Yは、所謂ラインヘッドであり、図1の紙面に直交する方向(矢印A方向に直交する方向)に延びている。これら4つの記録ヘッド22K、22C、22M、22Yの長さは、プリンタ10で印字できる記録媒体のうち最大の幅(図1の紙面に直交する方向の長さ)よりもやや長い。また、これら4つの記録ヘッド22K、22C、22M、22Yは、画像形成中は固定されて動かない(不動状態である)。
【0024】
4つの記録ヘッド22K、22C、22M、22Yから安定してインクを吐出できるように、プリンタ10には回復ユニット40が組み込まれている。この回復ユニット40によって、記録ヘッド22K、22C、22M、22Yからのインク吐出状態は初期のインク吐出状態に回復する。回復ユニット40には、回復動作のときに4つの記録ヘッド22K、22C、22M、22Yのインク吐出口形成面22Ks、22Cs、22Ms、22Ysからインクを除去するキャッピング機構50が備えられている。キャッピング機構50は各記録ヘッド22K、22C、22M、22Yに独立して設けられており、図1の例では6色分け(即ち、6つのキャッピング機構50)が示されているが、このうち2色分は記録ヘッド追加時の予備的な機構である。キャッピング機構50は、周知のブレード、インク除去部材、ブレード保持部材、キャップ等から構成されている。
【0025】
ロ−ル紙Pはロール紙供給ユニット24から供給されて、プリンタ10に組み込まれた搬送機構26によって矢印A方向に搬送される。搬送機構26は、ロ−ル紙Pを載置して搬送する搬送ベルト26a、この搬送ベルト26aを回転させる搬送モータ26b、搬送ベルト26aに張力を与えるローラ26cなどから構成されている。
【0026】
ロ−ル紙Pに画像を形成する際には、搬送中のロ−ル紙Pの記録開始位置がブラックの記録ヘッド22Kの下に到達した後に、記録データ(画像情報)に基づいて記録ヘッド22Kからブラックインクを選択的に吐出する。同様に記録ヘッド22C、記録ヘッド22M、記録ヘッド22Yの順に、各色のインクを吐出してカラー画像をロ−ル紙Pに形成する。この場合、ロール紙Pは停止せずに搬送されながら各記録ヘッド22K、22C、22M、22Yからロール紙Pにインクが吐出される。プリンタ10には、上記の部品・部材の他、各記録ヘッド22K、22C、22M、22Yに供給されるインクを貯めておくメインタンク28K、28C、28M、28Yや、記録ヘッド22K、22C、22M、22Yにインクを供給したり回復動作をしたりするための各種ポンプ(図3等参照)などが備えられている。
【0027】
図2を参照して、プリンタ10の電気的な系統を説明する。
【0028】
図2は、図1のプリンタの電気的な系統を示すブロック図である。
【0029】
ホストPC12から送信された記録データやコマンドはインターフェイスコントローラ102を介してCPU100に受信される。CPU100は、プリンタ10の記録データの受信、記録動作、ロ−ル紙Pのハンドリング等全般の制御を掌る演算処理装置である。CPU100では、受信したコマンドを解析した後に、記録データの各色成分のイメージデータをイメージメモリ106にビットマップ展開して描画する。記録前の動作処理としては、出力ポート114、モータ駆動部116を介してキャッピングモータ122とヘッドアップダウンモータ118を駆動し、各記録ヘッド22K、22C、22M、22Yをキャッピング機構50から離して記録位置(画像形成位置)に移動させる。
【0030】
続いて、出力ポート114、モータ駆動部116を介してロ−ル紙Pを繰り出すロールモータ(図示せず)、及び低速度でロ−ル紙Pを搬送する搬送モータ120等を駆動してロ−ル紙Pを記録位置に搬送する。一定速度で搬送されるロ−ル紙Pにインクを吐出し始めるタイミング(記録タイミング)を決定するための先端検知センサ(図示せず)でロ−ル紙Pの先端位置を検出する。その後、ロ−ル紙Pの搬送に同期して、CPU100はイメージメモリ106から対応する色の記録データを順次に読み出し、この読み出したデータを各記録ヘッド22K、22C、22M、22Yに記録ヘッド制御回路112を経由して(介して)転送する。
【0031】
CPU100の動作はプログラムROM104に記憶された処理プログラムに基づいて実行される。プログラムROM104には、制御フローに対応する処理プログラム及びテーブルなどが記憶されている。また、作業用のメモリとしてワークRAM108を使用する。各記録ヘッド22K、22C、22M、22Yのクリーニングや回復動作時に、CPU100は、出力ポート114、モータ駆動部116を介してポンプモータ124を駆動し、インクの加圧、吸引等の制御を行う。
【0032】
図3を参照して、プリンタ10に組み込まれたインク供給装置について説明する。
【0033】
図3は、インクジェット方式画像形成装置に組み込まれたインク供給装置を示す模式図である。図3では、記録ヘッド22Kにインクを供給したり、この記録ヘッド22Kを回復させたりするためのインク供給装置を示すが、他の記録ヘッド22C、22M、22Yについても同じ構成のインク供給装置が備えられている。また、図3では、図1と図2に示す構成要素と同一の構成要素には同一の符号が付されている。
【0034】
プリンタ10(図1参照)には、記録ヘッド22Kにインクを供給するインク供給装置60が組み込まれている。インク供給装置60は、プリンタ10の本体に着脱自在なメインタンク28Kと、このメインタンク28Kと記録ヘッド22Kとをつなぐインク供給路62の途中に配置されたサブタンク27Kなどから構成されている。サブタンク27Kの下に記録ヘッド22Kが配置されている。
【0035】
サブタンク27Kと記録ヘッド22Kは、2つのインク流路64,66で接続されて(つながれて)いる。サブタンク27Kから加圧バルブ67まで、及びサブタンク27Kから待機バルブ69まではプリンタ10の本体装置フレ−ムに固定されており、インク流路64,66の一部はフレキシブルチューブ製である。このため、記録ヘッド22Kは移動できる。インク流路64には、記録ヘッド22Kをクリーニングする際に稼動するクリーニングポンプ68や、所定のタイミングでインク流路64を開閉する待機バルブ69が取り付けられている。一方、インク流路66には、所定のタイミングでインク流路66を開閉する加圧バルブ67が取り付けられている。インク流路66のうち加圧バルブ67と下記の圧力調整ポンプ82の間の部分には、インク流路66内のインク圧力を検出する圧力検出センサ81が取り付けられている。
【0036】
サブタンク27Kの内部には、記録ヘッド22Kの多数のノズル22Knに適正な圧力を付与するための圧力調整ポンプ82が配置されている。圧力調整ポンプ82はサブタンク27Kの底面のやや上方に位置しており、この底面から所定間隔離れている。圧力調整ポンプ82は、サブタンク27Kに貯められているインクに浸かっている状態である。サブタンク27Kの上方には、圧力調整ポンプ82を駆動させる駆動ユニット83が配置されており、この駆動ユニットは、CPU100(図2参照)によって制御されている。また、サブタンク27Kの上壁には、サブタンク27Kの内部圧力を大気圧にするための大気開放バルブ84が固定されている。この大気開放バルブ84を開放することにより、サブタンク27Kの内部圧力は大気圧に等しくなる。
【0037】
また、サブタンク27Kには、このサブタンク27Kに貯められているインク(貯蔵インク)の液面レベルを検知する周知の液面検知センサ86が取り付けられている。サブタンク27K内のインク液面が一定レベル以下になったことを液面検知センサ86が検知したときは、供給ポンプ72が稼動し始めてメインタンク28Kからインクが吸引されてサブタンク27Kに供給される。一方、サブタンク27K内のインク液面が予め決められている上限レベルになったことを液面検知センサ86が検知したときは、供給ポンプ72が停止してインクの供給は停止される。
【0038】
メインタンク28Kには、このメインタンク28K内のインクの有無を検出する検出センサ(図示せず)が取り付けられている。また、プリンタ10の本体にメインタンク28Kを装着するときに接続されるエア−流路には、メインタンク28Kの内部圧力を大気圧にするための大気開放バルブ74が取り付けられている。
【0039】
図4から図6までを参照して、圧力調整ポンプ82によって記録ヘッド22K内の圧力を調整する技術について説明する。
【0040】
図4は、サブタンクと記録ヘッドを詳細に示す拡大図である。図5は、圧力調整ポンプの羽根を示す上面図である。図6は、図5に示す羽根の回転数と記録ヘッド内のインクに作用する圧力との関係を示すグラフである。これらの図では、図3に示す構成要素と同一の構成要素には同一の符号が付されている。
【0041】
上記した加圧バルブ67、待機バルブ69、大気開放バルブ84としては、図4に示すように、ソレノイドのプランジャー130に一体化されたバルブシ−ト132によってインク流路の遮断を行う電磁バルブが採用されるが、本発明においてはこれらの方式を何ら限定するものではなく他の方式のものを採用しても何ら問題無い。
【0042】
記録時には記録ヘッド22Kに適正な負圧を付与する(記録ヘッド22Kのインク吐出口(ノズルの出口)においてインクのメニスカスが形成されるような圧力をインクに作用させる)必要がある。この場合、加圧バルブ67と大気開放バルブ84は開放状態にあり、待機バルブ69は密閉状態にある。この状態で圧力調整ポンプ82を駆動することにより、図5の矢印C方向に圧力調整ポンプ82の羽根82aが回転し、この羽根82aの中心Cから羽面82bに沿ってインクは遠心力を受ける。つまり、圧力調整ポンプ82の回転軸中心部(中心Cの周辺部)は相対的に負圧となるので、サブタンク27Kの吸引口80aからインク流路66を介して記録ヘッド22Kに負圧を付与することができる。吸引口80aはサブタンク27Kの底壁に形成されており、圧力調整ポンプ82は吸引口80aから所定間隔離れた上方に配置されている。なお、羽根82aの回転数は、CPU100(図2参照)に制御されている。
【0043】
上記のように圧力調整ポンプ82を駆動させて羽根82aを矢印C方向に回転させるときに発生する遠心力によって、この圧力調整ポンプ82が記録ヘッド22K内のインクを、インク流路66と吸引口80aを経由してサブタンク27K内に吸い込もうとし(実際に吸い込まれることはほとんど無い)、この結果、記録ヘッド22K内のインクに負圧(インク吐出口の外側周辺の大気圧よりも低い圧力)が与えられてインク吐出口においてインクのメニスカスが形成されることとなる。なお、羽根82aが矢印C方向とは反対方向に回転するように圧力調整ポンプ82を駆動させた場合は、サブタンク82内のインクが吸引口80aから押し出されようとするので、記録ヘッド22K内のインクに正圧(インク吐出口の外側周辺の大気圧よりも高い圧力)が与えられる。この結果、インク吐出口からはインクが排出される。
【0044】
圧力調整ポンプ82の羽根82aが図5の矢印C方向に回転するときの回転数に応じて、図6に示すように、圧力調整ポンプ82が発生させる負圧の大きさが変動する。羽根82aが矢印C方向に速く回転するほど(単位時間当たりの回転数が多いほど)大きな負圧が発生するので、記録ヘッド22K内のインクは強い力でサブタンク82内に吸い上げられようとすることとなり、記録ヘッド22K内(ノズル22Kn内)のインクに作用する負圧が大きくなる。この逆に、羽根82aが矢印C方向に遅く回転するほど(単位時間当たりの回転数が少ないほど)小さな負圧しか発生しないので、記録ヘッド22K内のインクは弱い力でサブタンク82内に吸い上げられようとすることとなり、記録ヘッド22K内のインクに作用する負圧が小さくなる。すなわち、記録ヘッド22Kに付与する負圧の大きさは圧力調整ポンプ82の回転数に応じて制御できるので、圧力調整ポンプ82を駆動させることにより、インク流路66を開放したままの状態で記録ヘッド22K内の圧力が調整されることとなる。
【0045】
圧力調整ポンプ82としては、一般的にタ−ボ形と分類されるポンプを使用することが望ましい。タ−ボ形ポンプとしては、本実施例で採用した遠心ポンプ形式や斜流形式、軸流形式などが挙げられる。これらはインク流路(液流路)を遮断する(閉じる)ことなく圧力を発生できるので、差圧に応じてインクがポンプ内を移動できる。例えば、記録ヘッド22Kからインクが吐出したときは、記録ヘッド22K内のインクが減少するので、記録ヘッド22Kから圧力調整ポンプ(遠心ポンプ)82までの間が減圧される。この場合、サブタンク27K内のインクがインク流路66を経由して記録ヘッド22Kに供給される。これに対し、圧力調整ポンプ82として、いわゆる容積式に分類されるピストンポンプ等を用いた場合は、インクを圧送するためにインク流路66を遮断するので、インクがピストンポンプ内を通じて自由に移動できないばかりか、記録ヘッド22Kのノズル22Knのインク吐出口から外気を容易に吸引してしまう。
【0046】
図7を参照してノズル22Knの構造を説明する。他の記録ヘッド22Y,22M,22Cのノズルも同一の構造である。図7は、ノズルとその周辺部を示す断面図である。図7には、1つのノズル22Knを示すが、記録ヘッド22Kには多数のノズルが形成されている。
【0047】
記録ヘッド22Kには、インクを吐出する多数の筒状(一般的には円筒状)のノズル22Knが、図7の紙面の垂直方向に並んで形成されている。多数のノズル22Knは、インクが貯められた共通液室150につながっている(連通している)。この共通液室150はサブタンク27K(図3参照)につながっており、サブタンク27Kから共通液室150にインクが供給される。従って、サブタンク27K内の圧力調整ポンプ82(図3等参照)の回転数を変更することにより、記録ヘッド22Kに付与する負圧の大きさ、即ち、ノズル22Kn内のインクに作用する負圧の大きさを変更できる。
【0048】
ノズル22Knには、このノズル22Kn内のインク中で発泡させる発熱体152が配置されている。後述するように、発熱体152を発熱させることによりノズル22Kn内のインク中で泡が発生し、ノズル22Knの出口(インク吐出口22Km)からインクが押し出されて吐出される。発熱体152は、シリコン素子基板156上に周知の技術で形成されている。このシリコン素子基板156には、後述するメニスカスMの近傍においてインクの濡れ性を均一化させるために天板ノズル158とノズル土手160が形成されており、これら天板ノズル158とノズル土手160はノズル22Knの内壁に面している。天板ノズル158とノズル土手160は樹脂で被覆されている。ノズル土手160はノズル22Knのインク吐出口22Kmの近傍の内壁に形成されており、ノズル22Knを狭めるものである。
【0049】
上記した共通液室150もシリコン素子基板156に形成されている。また、発熱体152による発泡時にエネルギーを効率良くインク吐出口22Kmに向かわせる可動弁162の弁台座161や、天板ノズル158からノズル22Kn内部に向かって垂直方向に延びる流路壁164もシリコン素子基板156に形成されている。ノズル土手160は、多数のノズル22Kn等を作製する場合において天板ノズル158を切断するときに欠け(チッピング)を生じさせないためのものである。シリコン素子基板156のうち共通液室150に面する部分にはサブヒータ166が形成されており、このサブヒータ166は、記録ヘッド22K内のインクの温度を一定に保って粘性を安定させることによりインクの安定吐出範囲内で印字させることを目的としている。
【0050】
発熱体152は電気抵抗層及び配線をパターニングして形成されたものである。この配線を経由して電気抵抗層に電圧を印加して電流を流すことにより発熱体152が発熱する。この発熱によって発熱体152の周辺のインク中に泡(気泡)を発生させ、インク吐出口22Kmからインクを押し出して吐出させている。また、シリコン素子基板156と発熱体152に蓄積された熱の温度(蓄熱温度)を検知するためのDiセンサ(図示せず)がシリコン素子基板156に配置されており、このDiセンサが検知した検知温度に応じて記録ヘッド22Kの駆動条件が決定される。
【0051】
上述したように、1つの記録ヘッド22Kでは複数のノズル22Knが図7の紙面の垂直方向に並んで形成されており、複数のノズル22Knそれぞれのインク吐出口22Kmは、平面状のインク吐出口面(フェイス面)22Ksに一列に並んで形成されている。インク吐出口面22Ksは、図7の紙面の垂直方向に延びている。また、インク吐出口面22Ksは、記録ヘッド22Kのうち、各インク吐出口22Kmから吐出したインクが着弾する搬送中のロール紙Pに向き合う部分に形成されている。インク吐出口面22Ksは、ノズル22Knの軸線L1(軸線方向)に対しては直交しておらず、矢印A方向に搬送中のロール紙Pに対して傾斜している。ここでいう軸線L1とは、円筒状のノズル22Knの横断面の中心を通る直線をいい、仮想の直線L1である。インク吐出口面22Ksは、ロール紙Pの搬送方向(矢印A方向)の上流側に向くように角度θで傾斜しており、メニスカスMの位置を調整し、一つのインク滴を構成する主滴と副滴の吐出方向を制御することによってロール紙Pの搬送速度が変更されても一つのインク滴を構成する主滴と副滴がロール紙Pに着弾する着弾位置を同じにさせることができる。なお、他の記録ヘッド22C、22M、22Yについても上記と同様である。上記の角度θについて説明する。
【0052】
上述したように、インク吐出口面22Ksはノズル22Knの軸線L1に対しては直交せずに、インク吐出口面22Ksの法線L2と軸線L1とは角度θを成す。換言すれば、矢印A方向に搬送中のロール紙Pを基準にした場合、インク吐出口面22Ksは、ロール紙Pの搬送方向(矢印A方向)の上流側に向かって角度θだけ傾斜している。即ち、インク吐出口面22Ksは、軸線L1に直交する面F0(搬送中のロール紙Pに平行な面)をロール紙Pの搬送方向上流側(図7の紙面の左側)に向けて角度θだけ傾けた面でもある。角度θの大きさは、後述するように、ロール紙Pと記録ヘッド22Kの相対移動速度などを考慮して決定する。
【0053】
ここで、一つのインク滴の主滴mの吐出速度をVm(m/sec)とし、副滴sの吐出速度をVs(m/sec)とし、ロール紙Pの搬送速度をVf(m/sec)とし、インク吐出口22Kmからロール紙Pまでの距離をh(m)とした場合、インク吐出口面22Ksが面F0に一致するときは、主滴mと副滴sの着弾位置のずれ量dは、下式によって表される。
d={(1/Vs)−(1/Vm)}×h×Vf
【0054】
インク吐出口面22Ksが面F0に一致するときは、主滴mの吐出速度Vm、副滴sの吐出速度Vs、インク吐出口面22Ksからロール紙Pまでの距離h、ロール紙Pの搬送速度Vfに応じた大きさのずれ量dが発生し、一つのインク滴の主滴mと副滴sの着弾位置を一致させることはできない。
【0055】
一方、インク吐出口面22Ksが、下記の条件を満たすように、搬送中のロール紙Pに対して角度θだけ傾けることにより、一つのインク滴の主滴mと副滴sの着弾位置を一致させられる。
〔(1/Vs)−{(1/Vm・cosθ)}〕×h×Vf=h・tanθ
上式を整理すると下式となる。
(1/Vs)−{1/(Vm・cosθ)}=tanθ/Vf
【0056】
即ち、一つのインク滴の主滴の吐出速度をVm(m/sec)とし、副滴の吐出速度をVs(m/sec)とし、ロール紙Pの搬送速度をVf(m/sec)とし、インク吐出口22Kmからロール紙Pまでの距離をh(m)としたときに、角度θ(°)は、
(1/Vs)−1/(Vm・cosθ)=tanθ/Vf
を満たす。なお、ロール紙Pの搬送速度Vfが変更になった場合は、後述するように圧力調整ポンプ82を駆動させてメニスカスMの位置を調整する。
【0057】
メニスカスMの位置を調整する(変更する)に当たっては、上記したように圧力調整ポンプ82(図3等参照)の回転数を変更する。これにより、記録ヘッド22Kに付与する負圧の大きさ、即ち、ノズル22Kn内のインクに作用する負圧の大きさを変更でき(負圧を制御でき)、メニスカスMの位置を調整できることとなる。
【0058】
ここで、上記のような負圧制御をせずに水頭差方式のみでノズル22Knに負圧を作用させたときの発泡からインクの着弾までについて、図8と図9を参照して説明する。
【0059】
図8(a)は、発熱体を発熱させる前の待機状態を示す模式図であり、(b)は、発熱体が発熱してインク中に泡が発生すると同時にインク吐出口から少量のインクが押し出された状態を示す模式図であり、(c)は、(b)の状態に続いてインク吐出口から多量のインクが押し出された状態を示す模式図であり、(d)は、泡が小さくなると共にインク吐出口から吐出した一つのインク滴が主滴と副滴に分離する直前の状態を示す模式図であり、(e)は、消泡すると共にインク吐出口から吐出した一つのインク滴が主滴と副滴に分離した状態を示す模式図であり、(f)は、主滴が記録媒体に着弾した状態を示す模式図であり、(g)は、主滴に遅れて副滴が記録媒体に着弾した状態を示す模式図である。図9(a)は、主滴の吐出方向を示す模式図であり、(b)は、インクとインク吐出口面の接触角を示す模式図である。
【0060】
図8(a)に示すように、発熱体152が通電されずにノズル22Kn内のインクが加熱される前の状態では、インク吐出口22Km付近のインクはメニスカスMを形成している。図8(b)、(c)に示すように、発熱体152が通電されて、この発熱体152の発熱によってインクが加熱されることにより、インクの膜沸騰を伴って泡(気泡)Bが生じる。この場合、気泡Bの発生に基づく圧力の伝播方向は、可動弁162が弁台座161を支点として変位することによりインク吐出口22Kmに導かれる。発泡によって生じた圧力の伝播に伴ってメニスカスMが吐出方向に前進し始めることにより、インク吐出口22Km付近のインクは、図9(b)に示すように、インク吐出口面22Ks上のノズル土手160と天板ノズル158に対して等しい接触角αを保ちながら、インク吐出口22Kmから押し出される。このとき、インクが押し出される方向A1と、ノズル22Knの軸線L1との成す角度は、図9(a)に示すように、インク吐出口面22Ksの傾き角度θとなる。つまりインク吐出口22Km付近のインクは、図8(b)、(c)と図9に示すように、インク吐出口面22Ksに直交する法線L2に沿うように、矢印A1方向に押し出されることとなる。一方、発熱体152の近傍に位置するインクは、図8(b)、(c),及び(d)に示すように、ノズル22Knの軸線L1の方向に沿って矢印A2方向に押し出される。
【0061】
その後、図8(d)に示すように気泡Bが収縮過程に入ることにより、インク吐出口22Km付近のインクがノズル22Kn内に引き込まれるので、図8(e)に示すように、主滴mと副滴sが形成される。主滴mと副滴sは、発泡よって押し出された方向が異なるため、図8(e)のように、主滴mは、軸線L1と角度θを成す矢印A1方向(図9に示す法線L2方向)へ飛翔し、副滴sは矢印A2方向(軸線L1方向)に飛翔する。この矢印A2方向は、矢印A1方向よりも搬送方向(矢印A方向)の下流側を向いている。
【0062】
インク吐出口22Kmからインク滴Id(主滴mと副滴s)が吐出した後、後退したメニスカスMの位置は、ノズル22Knの毛細管力(リフィル)によって、図8(f)、(g)に示すように待機状態まで復帰する。一方、吐出したインク滴Idの主滴mは、搬送中のロール紙P上に着弾する。主滴mがロール紙Pに着弾した後、副滴sがこのロール紙Pに着弾するまでの間、ロール紙Pは矢印A方向(搬送方向)に搬送される(移動する)。しかし、副滴sの吐出方向は矢印A2方向なので、図8(g)に示すように、ロール紙P上の主滴m(ロール紙Pに吸収されている)が着弾した位置と同じ位置に副滴sが着弾する。このように、主滴mと副滴sは着弾位置が同じ位置になるので、一つのインク滴Idの主滴mと副滴sの着弾位置が相違することによる画像品位の低下を防止でき、画像品位を向上させられる。
【0063】
ロール紙Pの搬送速度が変更になった場合、一つのインク滴Idの主滴mと副滴sの着弾位置が相違するおそれがある。
この結果、主滴mと副滴sでは、着弾位置にずれが発生する。このずれの距離(間隔)は、記録媒体Pの搬送速度が速くなるほど長くなる(大きくなる)。このように一つのインク滴Idの主滴mと副滴sが記録媒体P上の相違する位置に着弾したときは画質が低下する。
【0064】
そこで、本発明では、メニスカスMの位置によって主滴mの吐出方向が変化することに着目し、ロール紙Pの搬送速度が変更されても、一つのインク滴Idの主滴mと副滴sがロール紙Pに着弾する位置が同じ位置になるようにメニスカスMの位置を変更した。メニスカスMの位置を変更するに当たっては、圧力調整ポンプ82(図3等参照)の回転数を変更することにより、記録ヘッド22Kに付与する負圧の大きさ、即ち、ノズル22Kn内のインクに作用する負圧の大きさを変更した。この負圧に応じてメニスカスMの位置が変更される。
【0065】
図10は、ロール紙の搬送速度に応じてメニスカスMの位置を変更したときの説明図である。
【0066】
図10(a)は、発熱体を発熱させる前の待機状態を示す模式図であり、(b)は、発熱体が発熱してインク中に泡が発生すると同時にインク吐出口から少量のインクが押し出された状態を示す模式図であり、(c)は、(b)の状態に続いてインク吐出口から多量のインクが押し出された状態を示す模式図であり、(d)は、泡が小さくなると共にインク吐出口から吐出したインク滴が主滴と副滴に分離する直前の状態を示す模式図であり、(e)は、消泡すると共にインク吐出口から吐出したインク滴が主滴と副滴に分離した状態を示す模式図であり、(f)は、主滴が記録媒体に着弾した状態を示す模式図であり、(g)は、主滴に遅れて副滴が記録媒体に着弾した状態を示す模式図である。
【0067】
図10(a)に示すように、ノズル22Kn内のインクのメニスカスMは、図8(a)に示すメニスカスMの位置よりも後方に位置している。発泡によって生じた圧力の伝播に伴ってメニスカスMがインク吐出口22Kmに向かって前進し始めることにより、図8(b)ではインク吐出口面22Ksの傾き角度θを持ちながらインクが押し出されるが、図10(b)ではメニスカスMが後退しているので、インクはノズル22Kn内を移動している。続いて、図10(c)に示すようにメニスカスMがインク吐出口22Kmに到達するので、インク吐出口面22Ksの傾き角度θを持ちながらインクが押し出されようとする。
【0068】
しかし、図10(b)に示すようにノズル22Knの軸線L1方向(矢印A2方向)に沿ってインクが押し出されているので、インク吐出口面22Ksの傾き角度θを持ちながらインクが押し出されようとしても、軸線L1方向の力が働き、矢印A1方向(図8参照)と矢印A2方向の力が合成された方向(矢印A3方向)へインクは押し出される。ここで、(矢印A1方向と矢印A2方向のなす角)>(矢印A2方向とA3のなす角)となる。一方、発熱体152の近傍に存在するインクは、図8の場合と同様に、ノズル22Knの軸線L1方向に沿って矢印A2方向に押し出される。
【0069】
その後、図10(d)に示すように気泡Bが収縮過程に入ることにより、インク吐出口22Km付近のインクがノズル22Kn内に引き込まれて、図10(e)に示すように主滴mと副滴sが形成される。主滴mと副滴sは、発泡よって押し出された方向が異なるため、図10(e)に示すように、主滴mは、矢印A1方向と矢印A2方向を合成した矢印A3方向へ飛翔し、副滴sは矢印A2方向に飛翔する。A3とA2のなす角度をδとすると、このδに関して、上記に説明した式の角度θをδに置き換えた式が成り立つ。
【0070】
上記のように、ロール紙Pの搬送速度が変更されても、この搬送速度に応じてメニスカスMの位置を変更することにより、δが変化し、主滴mと副滴sは着弾位置が同じ位置になる。このため、一つのインク滴Idの主滴mと副滴sの着弾位置が相違することによる画像品位の低下を防止でき、画像品位を向上させられる。
【0071】
図11を参照して、記録ヘッド22Knの負圧、メニスカスMの位置、及び主滴の吐出方向の関係を説明する。
【0072】
図11は、インク吐出口面からメニスカスまでの距離と記録ヘッド内の負圧との関係、及び主滴の吐出角度と記録ヘッドの負圧との関係を示すグラフであり、横軸は、記録ヘッド(ノズル内のインク)に作用する負圧(ヘッド内圧)を表し、右の縦軸は、主滴の吐出角度を表し、左の縦軸は、インク吐出口面からメニスカスまでの距離(メニスカスの後退位置)を表す。横軸は、右に行くほどヘッド内の負圧が大きくなる(大気圧よりも低くなる)。なお、1mmAq=9.8paとする。
【0073】
図中、線分Xは、ヘッド内圧と主滴の吐出角度との関係を表す。線分Xで表されるように、(a)の範囲内のヘッド内圧では、主滴の吐出角度は同じで変わらないが、(b)の範囲内のヘッド内圧((a)の範囲内のヘッド内圧よりも低い内圧(大きい負圧))では、ヘッド内圧が低くなるほど主滴mの吐出角度δ(図8等参照)は大きくなる。即ち、ノズル22Kn内のインクに作用する負圧が大きく(大気圧よりも低くなる)なるほど主滴mは搬送方向(図8の矢印A方向)下流側に吐出する。なお、図中のP1は、メニスカスMがノズル内部に後退を開始するときのヘッド内圧である。
【0074】
また、図中、線分Yは、ヘッド内圧とメニスカスMの後退した位置との関係を表す。線分Yで表されるように、ヘッド内圧が小さく(負圧が大きく)なるほど(ノズル22Kn内のインクに作用する負圧が大きくなるほど)メニスカスMが後退する(ノズル22Knの奥に移動する)。但し、ノズル22KnでメニスカスMが形成される負圧(メニスカス保持力)が大きすぎると(負圧が大きすぎる)場合((c)の範囲)は、メニスカスMがノズル土手160より後方に移動してしまい、本発明で提案している挙動を取らなくなってしまう。
【0075】
上記したノズル後退位置と記録ヘッドの負圧との関係、及び主滴の吐出角度と記録ヘッドの負圧との関係に基づいて圧力調整ポンプ82(図3等参照)の回転数を制御してノズル22Kn内のインクに作用する負圧を決定する。
【0076】
図12を参照して、圧力調整ポンプ82(図3等参照)の回転数を制御してノズル22Kn内のインクに作用する負圧を決定してインクを吐出するインク吐出方法の手順の一例を説明する。
【0077】
図12は、インク吐出方法の手順の一例を示すフロー図である。
【0078】
インク吐出方法では、ロール紙Pの搬送速度に応じて圧力調整ポンプ82(図3等参照)の回転数を制御することによりメニスカスM(図8等参照)の位置を変えて主滴m(図10等参照)の吐出角度θ(図7等参照)を制御してインクを吐出させる。この制御は、主滴制御シーケンスが起動することにより開始される。先ず、ホストPC(図1参照)からの印刷データの有無の判別を行い(S1201)、印刷データがある場合は、その印刷データにおけるヘッド内圧のシミュレーションを印字デュティー等のカウントにより算出する(S1202)。この算出されたデータをもとに、図11で示したグラフを参照にして、印刷速度(記録媒体の搬送速度)に応じた主滴の吐出角度θを算出し、その角度θに対応するメニスカスMの後退位置を決める(S1203)。メニスカスMを後退させるために、圧力調整ポンプ82(図3等参照)の回転数を決め(S1204)、印刷を開始する(S1205)。印刷の途中で、印字デュティーの変化等に起因してヘッド内圧が変動し(S1206)、ヘッド内圧が上昇したときは、図11で示したグラフを参照にして(S1207)、圧力調整ポンプ82(図3等参照)の回転数を上げる(S1208)。一方、ヘッド内圧が下降したときは、図11で示したグラフを参照にして(S1209)、圧力調整ポンプ82(図3等参照)の回転数を下げる(S1210)。
【0079】
上記の制御は、ヘッド内圧が上昇しても下降しても、ロール紙Pの搬送速度に応じて最適な主滴の吐出角度を得るために、メニスカスMの位置を変更する制御である。印刷データがある場合は、上記のシーケンスを続けて実行する(S1211)。
【0080】
上記したインク吐出方法は、複数の機器(例えばホストコンピュータ、インタフェイス機器、リーダ、プリンタなど)から構成されるシステムに適用しても、一つの機器からなる装置(例えば、複写機、ファクシミリ装置など)に適用してもよい。また、上記のインク吐出方法は、上記実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読出し実行することによっても、達成されることは言うまでもない。この場合、記憶媒体から読出されたプログラムコード自体が上記実施例の機能を実現することとなる。このプログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えばフロッピ(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。
【0081】
また、コンピュータが読出したプログラムコードを実行することにより、上記実施例の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づきコンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって上記実施例の機能が実現される場合も含まれる。さらに、記憶媒体から読出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって上記実施例の機能が実現される場合も含まれる。
【0082】
ヘッド内圧、主滴の吐出角度δ、ロール紙Pの搬送速度の一例を表1に示す。
【表1】
【0083】
表1に示すようにロール紙Pの搬送速度が速くなるほどヘッド内の負圧を小さくして(メニスカスMをインク吐出口面に近づける)、主滴の吐出角度θを大きくする。この逆に、ロール紙Pの搬送速度が遅くなるほどヘッド内の負圧を大きくして(メニスカスMをインク吐出口面から遠ざけて)、主滴の吐出角度θを小さくする。このように、ロール紙Pの搬送速度に応じてメニスカスMの位置を変更して一つのインク滴の主滴と副滴の着弾位置を一致させることにより画質を向上できる。なお、表1において、1mmAq=9.8Paである。
【0084】
ここで、図13を参照して、主滴及び副滴の吐出速度を測定する方法を説明する。
【0085】
図13は、主滴及び副滴の吐出速度を測定する方法を示す模式図である。
【0086】
ストロボ200を2回発光させ、一つの主滴mをCCDカメラで同じ画面上に撮影する。この画像上では、2つの液滴(吐出前後の一つの主滴m)の距離と時間がわかるので、主滴(又は副滴)の吐出速度を算出できる。この方法は自動化された試験装置(ツール)として知られている。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明のインク吐出方法が採用されたプリンタの一例を模式的に示す正面図である。
【図2】図1のプリンタの電気的な系統を示すブロック図である。
【図3】インクジェット方式画像形成装置に組み込まれたインク供給装置を示す模式図である。
【図4】サブタンクと記録ヘッドを詳細に示す拡大図である。
【図5】圧力調整ポンプの羽根を示す上面図である。
【図6】図5に示す羽根の回転数と記録ヘッド内のインクに作用する圧力との関係を示すグラフである。
【図7】ノズルとその周辺部を示す断面図である。
【図8】(a)は、発熱体を発熱させる前の待機状態を示す模式図であり、(b)は、発熱体が発熱してインク中に泡が発生すると同時にインク吐出口から少量のインクが押し出された状態を示す模式図であり、(c)は、(b)の状態に続いてインク吐出口から多量のインクが押し出された状態を示す模式図であり、(d)は、泡が小さくなると共にインク吐出口から吐出したインク滴が主滴と副滴に分離する直前の状態を示す模式図であり、(e)は、消泡すると共にインク吐出口から吐出したインク滴が主滴と副滴に分離した状態を示す模式図であり、(f)は、主滴が記録媒体に着弾した状態を示す模式図であり、(g)は、主滴に遅れて副滴が記録媒体に着弾した状態を示す模式図である。
【図9】(a)は、主滴の吐出方向を示す模式図であり、(b)は、インクとインク吐出口面の接触角を示す模式図である。
【図10】(a)は、発熱体を発熱させる前の待機状態を示す模式図であり、(b)は、発熱体が発熱してインク中に泡が発生すると同時にインク吐出口から少量のインクが押し出された状態を示す模式図であり、(c)は、(b)の状態に続いてインク吐出口から多量のインクが押し出された状態を示す模式図であり、(d)は、泡が小さくなると共にインク吐出口から吐出したインク滴が主滴と副滴に分離する直前の状態を示す模式図であり、(e)は、消泡すると共にインク吐出口から吐出したインク滴が主滴と副滴に分離した状態を示す模式図であり、(f)は、主滴が記録媒体に着弾した状態を示す模式図であり、(g)は、主滴に遅れて副滴が記録媒体に着弾した状態を示す模式図である。
【図11】インク吐出口面からメニスカスまでの距離と記録ヘッド内の負圧との関係、及び主滴の吐出角度と記録ヘッドの負圧との関係を示すグラフである。
【図12】インク吐出方法の手順の一例を示すフロー図である。
【図13】主滴及び副滴の吐出速度を測定する方法を示す模式図である。
【符号の説明】
【0088】
10 プリンタ
22K、22C、22M、22Y 記録ヘッド
22Kn ノズル
22Km インク吐出口
22Ks インク吐出口面(フェイス面)
M メニスカス
m 主滴
s 副滴
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクのメニスカスが形成された筒状のノズルのインク吐出口から記録媒体にインクを吐出して画像を形成するインクジェット方式画像形成装置における、搬送中の記録媒体に前記インク吐出口からインクを吐出するインク吐出方法において、
記録媒体が搬送される搬送方向の上流側に向くように傾斜し複数の前記インク吐出口が形成された平面状のインク吐出口面を有すると共に、前記ノズルの延びる軸線方向に対して前記インク吐出口面が直交していない記録ヘッドを使用し、
前記インク吐出口から吐出された一つのインク滴を構成する主滴と副滴が記録媒体に着弾する着弾位置が同じ位置になるように前記メニスカスの位置を変更させて前記インク吐出口からインクを吐出することを特徴とするインク吐出方法。
【請求項2】
インクのメニスカスが形成された筒状のノズルのインク吐出口から記録媒体にインクを吐出して画像を形成するインクジェット方式画像形成装置における、搬送中の記録媒体に前記インク吐出口からインクを吐出するインク吐出方法において、
複数の前記インク吐出口が形成されると共に、記録媒体が搬送される搬送方向の上流側に向くように傾斜する平面状のインク吐出口面を有する記録ヘッドを使用し、
前記インク吐出口から吐出された一つのインク滴を構成する主滴と副滴が記録媒体に着弾する着弾位置が同じ位置になるように前記メニスカスの位置を変更させて前記インク吐出口からインクを吐出することを特徴とするインク吐出方法。
【請求項3】
記録媒体が搬送される搬送速度に基づいて前記メニスカスの位置を変更させることを特徴とする請求項1又は2に記載のインク吐出方法。
【請求項4】
前記主滴の吐出速度をVmとし、前記副滴の吐出速度をVsとし、記録媒体の搬送速度をVfとし、前記インク吐出口から記録媒体までの距離をhとしたときに、前記主滴の吐出方向と前記軸線方向との成す角度δは、
(1/Vs)−1/(Vm・cosδ)=tanδ/Vf
を満たすことを特徴とする請求項1に記載のインク吐出方法。
【請求項5】
前記メニスカスの位置を変更するに当たり、前記ノズル内のインクに作用する圧力を制御して前記メニスカスの位置を変更することを特徴とする請求項1から4までのうちのいずれか一項に記載のインク吐出方法。
【請求項6】
前記着弾位置が同じ位置になるようにするに当たり、前記主滴が吐出する方向とは相違する方向に前記副滴を吐出させることを特徴とする請求項1から5までのうちのいずれか一項に記載のインク吐出方法。
【請求項7】
前記副滴の吐出方向は、前記主滴の吐出方向よりも記録媒体搬送方向の下流側を向いているものであることを特徴とする請求項1から6までのうちのいずれか一項に記載のインク吐出方法。
【請求項8】
前記ノズルに配置された発熱体を発熱させて前記ノズル内のインク中で発泡することにより、前記インク吐出口からインクを吐出させることを特徴とする請求項1から7までのうちのいずれか一項に記載のインク吐出方法。
【請求項9】
前記インク吐出口から吐出されたインク滴が着弾する記録媒体の搬送速度に基づいて、前記ノズル内のインクに作用する圧力を制御することを特徴とする請求項1から8までのうちのいずれか一項に記載のインク吐出方法。
【請求項10】
前記ノズルは不動状態でインクを吐出することを特徴とする請求項1から9までのうちのいずれか一項に記載のインク吐出方法。
【請求項11】
前記請求項1から10までのうちのいずれか一項に記載のインク吐出方法によって記録媒体にインクを吐出して画像を形成することを特徴とするインクジェット方式画像形成装置。
【請求項1】
インクのメニスカスが形成された筒状のノズルのインク吐出口から記録媒体にインクを吐出して画像を形成するインクジェット方式画像形成装置における、搬送中の記録媒体に前記インク吐出口からインクを吐出するインク吐出方法において、
記録媒体が搬送される搬送方向の上流側に向くように傾斜し複数の前記インク吐出口が形成された平面状のインク吐出口面を有すると共に、前記ノズルの延びる軸線方向に対して前記インク吐出口面が直交していない記録ヘッドを使用し、
前記インク吐出口から吐出された一つのインク滴を構成する主滴と副滴が記録媒体に着弾する着弾位置が同じ位置になるように前記メニスカスの位置を変更させて前記インク吐出口からインクを吐出することを特徴とするインク吐出方法。
【請求項2】
インクのメニスカスが形成された筒状のノズルのインク吐出口から記録媒体にインクを吐出して画像を形成するインクジェット方式画像形成装置における、搬送中の記録媒体に前記インク吐出口からインクを吐出するインク吐出方法において、
複数の前記インク吐出口が形成されると共に、記録媒体が搬送される搬送方向の上流側に向くように傾斜する平面状のインク吐出口面を有する記録ヘッドを使用し、
前記インク吐出口から吐出された一つのインク滴を構成する主滴と副滴が記録媒体に着弾する着弾位置が同じ位置になるように前記メニスカスの位置を変更させて前記インク吐出口からインクを吐出することを特徴とするインク吐出方法。
【請求項3】
記録媒体が搬送される搬送速度に基づいて前記メニスカスの位置を変更させることを特徴とする請求項1又は2に記載のインク吐出方法。
【請求項4】
前記主滴の吐出速度をVmとし、前記副滴の吐出速度をVsとし、記録媒体の搬送速度をVfとし、前記インク吐出口から記録媒体までの距離をhとしたときに、前記主滴の吐出方向と前記軸線方向との成す角度δは、
(1/Vs)−1/(Vm・cosδ)=tanδ/Vf
を満たすことを特徴とする請求項1に記載のインク吐出方法。
【請求項5】
前記メニスカスの位置を変更するに当たり、前記ノズル内のインクに作用する圧力を制御して前記メニスカスの位置を変更することを特徴とする請求項1から4までのうちのいずれか一項に記載のインク吐出方法。
【請求項6】
前記着弾位置が同じ位置になるようにするに当たり、前記主滴が吐出する方向とは相違する方向に前記副滴を吐出させることを特徴とする請求項1から5までのうちのいずれか一項に記載のインク吐出方法。
【請求項7】
前記副滴の吐出方向は、前記主滴の吐出方向よりも記録媒体搬送方向の下流側を向いているものであることを特徴とする請求項1から6までのうちのいずれか一項に記載のインク吐出方法。
【請求項8】
前記ノズルに配置された発熱体を発熱させて前記ノズル内のインク中で発泡することにより、前記インク吐出口からインクを吐出させることを特徴とする請求項1から7までのうちのいずれか一項に記載のインク吐出方法。
【請求項9】
前記インク吐出口から吐出されたインク滴が着弾する記録媒体の搬送速度に基づいて、前記ノズル内のインクに作用する圧力を制御することを特徴とする請求項1から8までのうちのいずれか一項に記載のインク吐出方法。
【請求項10】
前記ノズルは不動状態でインクを吐出することを特徴とする請求項1から9までのうちのいずれか一項に記載のインク吐出方法。
【請求項11】
前記請求項1から10までのうちのいずれか一項に記載のインク吐出方法によって記録媒体にインクを吐出して画像を形成することを特徴とするインクジェット方式画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−68576(P2008−68576A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−250996(P2006−250996)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]