説明

インシュレータ

【課題】
解決すべき課題は、従来のインシュレータの原反には全体にわたって未硬化のフェノール樹脂等の熱硬化性結合材が含浸されていることから加熱成形後のグラスウール密度も自ずから高くなって吸音断熱効果が減少してしまうし、グラスウール密度を低くするために含浸させるべき結合材の量を少なくすると吸音断熱効果は増大するが、熱硬化後の剛性が低くなり所望の形状を保持できないという点である。
【解決手段】
未硬化の熱硬化性樹脂を含浸、熱硬化させたインシュレータにおいて、熱硬化性樹脂含浸マットと、熱硬化性樹脂非含浸マットを積層させることにより前記課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に使用されるグラスウール製の吸音断熱インシュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、グラスウール製の吸音断熱インシュレータとしては特許文献1に示されるようなものがある。
【0003】
インシュレータの吸音断熱性能はその厚さにほぼ比例して向上するため、できるだけ分厚く成形することが望まれるが、インシュレータの原反には全体にわたって未硬化のフェノール樹脂等の熱硬化性結合材が含浸されていることから加熱成形後のグラスウール密度も自ずから高くなるので、特許文献1に開示されているような方法ではインシュレータの厚さを増やしても吸音や断熱の効果は限定的にしか得られず、
また、グラスウール密度を低くするために含浸させるべき結合材の量を少なくすると吸音断熱効果は増大するが、熱硬化後の剛性が低くなり所望の形状を保持できないという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−50545
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする課題は、
従来のインシュレータの原反には全体にわたって未硬化のフェノール樹脂等の熱硬化性結合材が含浸されていることから加熱成形後のグラスウール密度も自ずから高くなって、インシュレータの厚さを増やしても吸音や断熱の効果は限定的にしか得られないという点である。
また、グラスウール密度を低くするために含浸させるべき結合材の量を少なくすると吸音断熱効果は増大するが、熱硬化後の剛性が低くなり所望の形状を保持できないという問題があった。
本発明は上記の点を解決するためになされた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を果たすため本発明は、未硬化の熱硬化性樹脂を含浸、熱硬化させたインシュレータであって、熱硬化性樹脂含浸マットと、熱硬化性樹脂非含浸マットが積層されていること最も主要な特徴とする。
【0007】
また、上記熱硬化性樹脂含浸マットまたは熱硬化性樹脂非含浸マットに表皮が貼付されていることを第2の主要な特徴とする。
また、上記熱硬化性樹脂非含浸マットの厚さが10mm以上であることを第3の主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、
熱硬化性樹脂が含まれない熱硬化性樹脂非含浸マットに含まれる空気は圧縮されても成形後すぐに膨張、復元するのでフンワリと厚手に仕上がり、分厚い空気層を保つことができるためその分グラスウール密度が低くなり、吸音断熱効果が非常に高いという利点がある。
【0009】
同時に、熱硬化性樹脂含浸マットに含まれる熱硬化性樹脂が加熱により硬化し、所望の形状をしっかりと保持するので熱硬化性樹脂非含浸マットと該熱硬化性樹脂含浸マットをあわせたインシュレータの形状もしっかりと保持されるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るインシュレータの成形断面図
【図2】本発明に係るインシュレータの成形断面図
【図3】本発明に係るインシュレータの断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
熱硬化性樹脂非含浸マット部分をフンワリと厚手に仕上げ、グラスウール密度を低くして吸音断熱効果の高いインシュレータを得るという目的を、
未硬化の熱硬化性樹脂を含浸、熱硬化させたインシュレータにおいて、熱硬化性樹脂含浸マットと、熱硬化性樹脂非含浸マットを積層させることによって、
圧熱成形という安価な工法を用いて、経済性を損なわずに実現した。
【実施例1】
【0012】
本発明の構成を発明の実施の形態に基づいて説明すると次の通りである。
【0013】
図1ないし図2は、本発明の1実施例を示すインシュレータの成形断面図である。
図1において、内部熱源等により予め加熱させた圧熱成形用の分割金型3,3’の内側に、グラスウールに未硬化のフェノール樹脂を含浸させたフェノール樹脂含浸マット1をセットし、次いで、グラスウールにフェノール樹脂を含浸させないフェノール樹脂非含浸マット2を該フェノール樹脂含浸マット1に重ねてセットする。
尚、該フェノール樹脂非含浸マット2はフェノール樹脂の完全非含浸に限るものではなく、相手部品との取付け座面等、必要に応じて部分的にフェノール樹脂を含浸したものも包含する。
【0014】
次に、図2に示すように該分割金型3,3’を型締め、圧熱成形する。
【0015】
成形後、該分割金型3,3’から離型したインシュレータ5の断面図を図3に示す。
このように成形された該インシュレータ5は、薄手の該フェノール樹脂含浸マット1に含まれていた未硬化のフェノール樹脂が型締め時に該フェノール樹脂非含浸マット2の表面層に浸出することで、加熱後の該フェノール樹脂非含浸マット2と該フェノール樹脂含浸マット1の接触面同士が硬化、固着し、該フェノール樹脂非含浸マット2と該フェノール樹脂含浸マット1とは一体となるが、
該フェノール樹脂非含浸マット2は該フェノール樹脂含浸マット1に接する表面層部分以外(上記相手部品との取付け座面等を除く)にはフェノール樹脂が含まれておらず、そのため該フェノール樹脂非含浸マット2に含まれる空気は成形時に圧縮されても成形後すぐに膨張、復元し、分厚い空気層を保つことができるため、その分グラスウール密度が低くなって成形後もフンワリと厚手に仕上がり、良好な吸音断熱効果を得ることができる。
【0016】
この場合、良好な吸音断熱効果を得るためには該フェノール樹脂非含浸マット2の厚さを10mm以上に設定すれば十分であることが経験的に判っている。
【0017】
同時に、該フェノール樹脂含浸マット1自身に含まれる未硬化のフェノール樹脂が加熱により硬化し、所望の形状をしっかりと保持するので、該フェノール樹脂非含浸マット2と該フェノール樹脂含浸マット1とが積層された該インシュレータ5の形状もしっかりと保持される。
【0018】
尚、上記実施例ではフェノール樹脂含浸マット1とフェノール樹脂非含浸マット2とをグラスウール製としたが、これに限るものではなく繊維材で構成されたものであればよく、繊維材も無機繊維や有機繊維等、繊維であればなんでもよい。
【0019】
また、含浸させるべき結合材もフェノール樹脂に限ることは無く、メラミン樹脂、ユリア樹脂等の熱硬化性樹脂や、他の非熱的硬化性を有するもの等、結合材であればなんでもよい。
【0020】
更に、フェノール樹脂含浸マットまたはフェノール樹脂非含浸マットの表面に表皮を貼付して美観を向上させてもよい。
該表皮の形態としては織布、不織布、編み物や皮革等、美観を向上させうるものなら何でもよい。
【0021】
以上実施例に述べたように本発明によれば、未硬化のフェノール樹脂を含浸、硬化させたインシュレータにおいて、フェノール樹脂含浸マットと、フェノール樹脂非含浸マットを積層させたため、
フェノール樹脂が含まれないフェノール樹脂非含浸マット部分がフンワリと厚手に仕上がり、空気層が分厚くグラスウール密度が低くなる上に、フェノール樹脂非含浸マット部分にはフェノール樹脂が含まれないためその厚さ設定に制約がなく、必要に応じて存分に分厚く設定することができるので非常に高い吸音断熱効果を得ることができ、
しかもフェノール樹脂非含浸マット部分にフェノール樹脂が含まれない分、安価に製造できるという効果がある。
【0022】
また、該フェノール樹脂含浸マットに含まれるフェノール樹脂が加熱により硬化し、所望の形状をしっかりと保持するので該フェノール樹脂非含浸マットと該フェノール樹脂含浸マットをあわせた該インシュレータの形状もしっかりと保持されるという効果もある。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、自動車等に使用される吸音断熱インシュレータ等に利用可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 フェノール樹脂含浸マット
2 フェノール樹脂非含浸マット
3,3 分割金型
5 インシュレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未硬化の熱硬化性樹脂を含浸、熱硬化させたインシュレータであって、熱硬化性樹脂含浸マットと、熱硬化性樹脂非含浸マットが積層されていることを特徴とするインシュレータ
【請求項2】
請求項1における熱硬化性樹脂含浸マットまたは熱硬化性樹脂非含浸マットに表皮が貼付されていることを特徴とする請求項1記載のインシュレータ
【請求項3】
請求項1または請求項2における熱硬化性樹脂非含浸マットの厚さが10mm以上であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のインシュレータ

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−223933(P2012−223933A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91717(P2011−91717)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(503233130)株式会社アイテック (96)
【Fターム(参考)】