インドール骨格含有樹脂、インドール骨格含有エポキシ樹脂、エポキシ樹脂組成物及びその硬化物
【課題】優れた高耐熱性、耐湿性を有し、難燃性及び異種材料との高密着性に優れた硬化物を与えるエポキシ樹脂及びその中間体となるインドール骨格含有樹脂を提供する。
【解決手段】インドール骨格含有樹脂は、下記一般式(1)で表すことができ、インドール類とフェノール類の合計100モルに対し、アルデヒド、キシリレングリコール等の架橋剤10〜90モルとを反応させることにより得られる。インドール骨格含有エポキシ樹脂は、このインドール骨格含有樹脂を、エピクロルヒドリンでエポキシ化して得られる。
H-L-(X-L)n-H (1)
ここで、Lはインドール類及びフェノール類から生じる2価の基であり、両者の存在割合(モル比)が1:9〜9:1の範囲であり、Xはアルデヒド、ケトン、キシリレングリコール、ジビニルベンゼン等の架橋剤から生じる2価の基であり、nは1〜10の数を示す。
【解決手段】インドール骨格含有樹脂は、下記一般式(1)で表すことができ、インドール類とフェノール類の合計100モルに対し、アルデヒド、キシリレングリコール等の架橋剤10〜90モルとを反応させることにより得られる。インドール骨格含有エポキシ樹脂は、このインドール骨格含有樹脂を、エピクロルヒドリンでエポキシ化して得られる。
H-L-(X-L)n-H (1)
ここで、Lはインドール類及びフェノール類から生じる2価の基であり、両者の存在割合(モル比)が1:9〜9:1の範囲であり、Xはアルデヒド、ケトン、キシリレングリコール、ジビニルベンゼン等の架橋剤から生じる2価の基であり、nは1〜10の数を示す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂の硬化剤、改質剤等として有用なインドール骨格含有樹脂、インドール骨格含有エポキシ樹脂、これら用いたエポキシ樹脂組成物並びにその硬化物に関するものであり、プリント配線板、半導体封止等の電気電子分野の絶縁材料等に好適に使用される。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は工業的に幅広い用途で使用されてきているが、その要求性能は近年ますます高度化している。例えば、エポキシ樹脂を主剤とする樹脂組成物の代表的分野に半導体封止材料があるが、半導体素子の集積度の向上に伴い、パッケージサイズは大面積化、薄型化に向かうとともに、実装方式も表面実装化への移行が進展しており、半田耐熱性に優れた材料の開発が望まれている。従って、封止材料としては、低吸湿化に加え、リードフレーム、チップ等の異種材料界面での接着性・密着性の向上が強く求められている。回路基板材料においても同様に、半田耐熱性向上の観点から低吸湿性、高耐熱性、高密着性の向上に加え、誘電損失低減の観点から低誘電性に優れた材料の開発が望まれている。これらの要求に対応するため、様々な新規構造のエポキシ樹脂及び硬化剤が検討されている。更に最近では、環境負荷低減の観点から、ハロゲン系難燃剤排除の動きがあり、より難燃性に優れたエポキシ樹脂及び硬化剤が求められている。
【0003】
【特許文献1】特開平5−1099345号公報
【特許文献2】特開平11−140166号公報
【特許文献3】特開2004−46522号公報
【特許文献4】特開2004−59792号公報
【特許文献5】特開平4−173831号公報
【特許文献6】特開2000−129092号公報
【特許文献7】特開平3−90075号公報
【特許文献8】特開平3−281623号公報
【0004】
従って、上記背景から種々のエポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤が検討されている。エポキシ樹脂硬化剤の一例として、ナフタレン系樹脂が知られており、特許文献1にはナフトールアラルキル樹脂を半導体封止材へ応用することが示されている。但し、ナフトールアラルキル樹脂は、低吸湿性、低熱膨張性等に優れるものの、硬化性に劣る欠点があった。また、特許文献2にはビフェニル構造を有する硬化剤が提案され、難燃性向上に有効であることが記載されているが、硬化性に劣る欠点があった。更に、ナフタレン系樹脂、ビフェニル系樹脂ともに、炭化水素のみで構成される主骨格を有することから、難燃性の発現に十分ではなかった。また、特許文献3には芳香族オレフィンと共重合したインドール系オリゴマーが記載されている。
【0005】
一方、エポキシ樹脂についても、これらの要求を満足するものは未だ知られていない。例えば、周知のビスフェノール型エポキシ樹脂は、常温で液状であり、作業性に優れていることや、硬化剤、添加剤等との混合が容易であることから広く使用されているが、耐熱性、耐湿性の点で問題がある。また、耐熱性を改良したものとして、ノボラック型エポキシ樹脂が知られているが、耐湿性、接着性等に問題がある。更には、主骨格が炭化水素のみで構成される従来のエポキシ樹脂では、難燃性を全くもたない。
【0006】
ハロゲン系難燃剤を用いることなく難燃性を向上させるための方策として、リン酸エステル系の難燃剤を添加する方法が開示されている。しかし、リン酸エステル系の難燃剤を用いる方法では、耐湿性が十分ではない。また、高温、多湿な環境下ではリン酸エステルが加水分解を起こし、絶縁材料としての信頼性を低下させる問題があった。
【0007】
リン原子やハロゲン原子を含むことなく、難燃性を向上させるものとして、特許文献2、5、6ではビフェニル構造を有するアラルキル型エポキシ樹脂を半導体封止材へ応用した例が開示されている。特許文献4には、ナフタレン構造を有するアラルキル型エポキシ樹脂を使用する例が開示されている。しかしながら、これらのエポキシ樹脂は難燃性や、耐湿性、耐熱性のいずれかにおいて性能が十分でない。なお、特許文献7及び8にはナフトール系アラルキル型エポキシ樹脂及びこれを含有する半導体封止材料が開示されているが、難燃性に着目したものはない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、エポキシ樹脂組成物の硬化剤、改質剤等に有用なインドール骨格含有樹脂を提供すること、難燃性に優れるとともに、耐湿性、耐熱性、金属基材との接着性等にも優れた性能を有し、積層、成形、注型、接着等の用途に有用なインドール骨格含有エポキシ樹脂を提供すること、優れた成形性を有するとともに、低吸湿性、耐熱性、密着性、及び難燃性等に優れた硬化物を与える電気・電子部品類の封止、回路基板材料等に有用なエポキシ樹脂組成物を提供すること、及びその硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のインドール骨格含有樹脂は、下記一般式(1)で表される。
H-L-(X-L)n-H (1)
ここで、
Lは下記式(2)及び式(3)
【化1】
で表される基のいずれかであり、R1は水素原子、水酸基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、Aは炭素数1〜8のアルキル基若しくは水酸基が置換してもよいベンゼン環又はナフタレン環からなる基を示し、式(2)と式(3)で表される基の存在割合(モル比)が1:9〜9:1の範囲であり、
Xは下記(a)又は式(b)
【化2】
で表される架橋基であり、R2、R3、R4及びR5は独立に、水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、Bはベンゼン環、ビフェニル環又はナフタレン環からなる基を示し、
nは1〜10の数を示す。
【0010】
このインドール骨格含有樹脂は、下記式(4)で表されるインドール類と下記式(5)で表されるフェノール類のモル比が1:9〜9:1の範囲であり、両者の合計100モルに対し、下記式(6)、(7)、(8)又は(9)で表される架橋剤10〜90モルとを反応させることにより得ることができる。
【化3】
【化4】
但し、
R1は水素原子、水酸基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、
Aは炭素数1〜8のアルキル基若しくは水酸基が置換してもよいベンゼン環又はナフタレン環からなる基を示し、
R2、R3、R4及びR5は独立に、水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、
Bはベンゼン環、ビフェニル環又はナフタレン環からなる基を示し、
Y及びZは独立にOH、アルコキシ又はハロゲンを示す。
【0011】
本発明のインドール骨格含有エポキシ樹脂は、下記一般式(10)で表される。
H-L1-(X-L1)n-H (10)
ここで、
L1は下記式(11)又は式(12)
【化5】
で表される基のいずれかであり、R6は水素原子、グリシジルオキシ基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、Aは炭素数1〜8のアルキル基若しくはグリシジルオキシ基が置換してもよいベンゼン環又はナフタレン環からなる基を示し、式(11)と式(12)で表される基の存在割合(モル比)が1:9〜9:1の範囲であり、
Xは一般式(1)と同じ意味を有し、Yは水素原子、炭素数1〜8の炭化水素基又はグリシジル基を示し、Gはグリシジル基を示し、
nは1〜10の数を示す。
【0012】
このインドール骨格含有エポキシ樹脂は、一般式(1)で表されるインドール骨格含有樹脂と、エピクロルヒドリンを反応させることにより得ることができる。
【0013】
本発明のフェノール樹脂組成物は、多価フェノール性化合物類100重量部に対して、インドール骨格含有樹脂を2〜200重量部配合してなる。エポキシ樹脂及び硬化剤よりなる本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化剤の一部又は全部としてインドール骨格含有樹脂を、エポキシ樹脂100重量部に対して2〜200重量部配合してなるか、又はエポキシ樹脂の一部又は全部として前記インドール骨格含有エポキシ樹脂を配合してなる。本発明のエポキシ樹脂硬化物は、このフェノール樹脂組成物を硬化させることにより得られる。
【0014】
本発明のインドール骨格含有樹脂(以下、ISRともいう)は一般式(1)で表される。また、本発明のインドール骨格含有エポキシ樹脂(以下、ISEともいう)は一般式(10)で表される。ISEは、ISRをエポキシ化することにより得ることができるので、ISRはISEの中間体でもある。
【0015】
一般式(1)において、Lは式(2)及び式(3)で表される基から選ばれる基であり、その存在割合は1:9〜9:1、好ましくは2:8〜8:2である。また、Xは式(a)又は式(b)で表される基であり、nは1〜10の数である。ここで、式(1)中のn+1個のL及びn個のXは、それぞれ同一であっても異なっていてもよいが、Lは樹脂中に上記存在割合で式(2)及び式(3)で表される基が存在する。しかし、樹脂は混合物であるため、平均として存在すればよい。なお、nについても、樹脂は混合物であるので、その平均(数平均)は上記範囲にあることがよい。
【0016】
式(2)及び式(3)において、R1は水素原子、水酸基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子又は炭素数1〜7の炭化水素基を示し、Aはフェノール類(多価フェノール類や多環芳香族フェノール類であってもよい)から生じる基である。
【0017】
Xは式(a)又は式(b)で表される架橋基であるが、R2、R3、R4及びR5は独立に、水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を示し、Bはベンゼン環、ビフェニル環又はナフタレン環からなる基を示す。なお、Bを構成するこれらの環は、炭素数1〜6の炭化水素基で置換されていてもよい。XはLを架橋するが、Lを構成する式(2)及び式(3)で表される基に対するXの置換位置は、特に限定するものではなく、例えばインドール環の1位から7位の水素原子が架橋基で置換されて連結した構造をとり得るが、式(2)においてインドール環の1位の水素原子が残存していることが好ましい。すべてのインドール環の1位の水素原子が残存している必要はないが、すべてのインドール環の1位の水素原子が置換されていると、本発明のインドール骨格含有樹脂の硬化剤としての機能が十分に発現されない。
【0018】
ISRの軟化点は40〜200℃であることがよく、好ましくは50〜160℃、より好ましくは60〜120℃の範囲である。ここで、軟化点は、JISK−6911の環球法に基づき測定される軟化点を指す。これより低いと、これをエポキシ樹脂に配合したとき、硬化物の耐熱性が低下し、これより高いと成形時の流動性が低下する。
【0019】
本発明のISRは、それ自体をフェノール樹脂組成物又はエポキシ樹脂組成物の一成分とすることができるが、場合により、インドール骨格含有樹脂にハロゲン化アルキル化合物、ハロゲン化アルケニル化合物、エピハロヒドリン化合物等を反応させることにより、インドール骨格含有樹脂中の-NH-及び-OHの水素原子の一部又は全部をアルキル基、アルケニル基、グリシジル基等に置換することができる。
【0020】
本発明のISRは、式(4)で表されるインドール類及び式(5)で表されるフェノール類と、式(6)、式(7)、(8)又は(9)で表される架橋剤を反応させることにより合成することができる。この場合の架橋剤の使用量は、インドール類及びフェノール類の合計1モルに対して、0.1〜0.9モルの範囲であるが、好ましくは0.2〜0.8モルの範囲である。これより小さいと合成の際、未反応のインドール類及びフェノール類が多くなり、ISRの生産性が低下するとともに、合成されたISRの軟化点が低くなり、エポキシ樹脂硬化剤として使用した場合の硬化物の耐熱性が低下する。また、これより大きいとISRの軟化点が高くなり、場合により合成の際にISRがゲル化することがある。なお、インドール類及びフェノール類の使用割合は前記割合となるように調整されるが、インドール類の方が架橋剤との反応性が高いので、フェノール類を理論量よりいくらか多めとすることがよい場合がある。
【0021】
この反応は無触媒又は酸触媒の存在下に行うことができる。この酸触媒としては、周知の無機酸、有機酸より適宜選択することができる。例えば、塩酸、硫酸、燐酸等の鉱酸や、ギ酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、p-トルエンスルホン酸、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等の有機酸や、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化鉄、三フッ化ホウ素等のルイス酸あるいはイオン交換樹脂、活性白土、シリカ-アルミナ、ゼオライト等の固体酸等が挙げられる。
【0022】
また、この反応は通常、10〜250℃で1〜20時間行われる。更に、反応の際には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のアルコール類や、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族化合物等を溶媒として使用することができる。
【0023】
原料として使用するインドール類としては、インドール以外に、置換基として水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子又は炭化水素基が置換したインドールがある。例えば、ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子等があり、アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、ビニルエーテル基、イソプロポキシ基、アリルオキシ基、プロパルギルエーテル基、プトキシ基、フェノキシ基が挙げられる。また、炭化水素基としてはメチル基、エチル基、ビニル基、エチン基、イソプロピル基、アリル基、プロパルギル基、ブチル基、アミル基、フェニル基、ベンジル基等を有する種々の置換インドール類を用いることができるが、好ましくはインドールである。
【0024】
フェノール類としては、フェノールの他、クレゾール類、キシレノール類等のアルキルフェノール類、ヒドロキノン等の多価フェノール類、ナフトール類、ナフタレンジオール類等の多環フェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール類、あるいはフェノールノボラック、フェノールアラルキル樹脂等の多官能性フェノール化合物が例示される。これらのモノマー類は、1種又は2種以上を混合して用いることができるが、インドール骨格含有樹脂を含有して得られる硬化物の物性面からは、インドール骨格含有樹脂のインドール類骨格の含有率が高いほどよいが特に制約はない。
【0025】
架橋剤としては、式(6)で表されるホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類が挙げられるが、ホルムアルデヒドが好ましい。反応に用いる際の好ましいホルムアルデヒドの原料形態としては、ホルマリン水溶液、パラホルムアルデヒド、トリオキサン等が挙げられる。また、式(7)で表されるアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン等のケトン類も架橋剤として使用できる。
【0026】
更に、式(8)で表される架橋剤としては、p-キシリレングリコール、p-キシリレングリコールジメチルエーテル、p-キシリレンジクロライド、4,4’-ジメトキシメチルビフェニル、4,4’-ジクロロメチルビフェニル、ジメトキシメチルナフタレン類、ジクロロメチルナフタレン類が挙げられる。
また、式(9)で表されるジビニルベンゼン類、ジビニルビフェニル類、ジビニルナフタレン類等も架橋剤として使用できる。
【0027】
反応終了後、場合により、得られたISRには、未反応のインドール類及びフェノール類が残存する。残存したインドール類及びフェノール類は、通常、減圧蒸留、あるいは溶剤分割等の方法により系外に除去される。ISRに残存する未反応のインドール類及びフェノール類の量は少ない方が望ましく、通常は、5重量%以下であり、好ましくは3重量%以下、更に好ましくは1重量%以下である。残存するインドール類及びフェノール類の量が多いと、成形物を作成する際に揮発し、成形作業性を低下させるとともに成形物のボイドの原因になることがある。また、成形物の難燃性も低下する。
【0028】
本発明のフェノール樹脂組成物は、多価フェノール性化合物類中に上記ISRを含有してなる。ISRの含有率は、多価フェノール性化合物類100重量部に対し、2〜200重量部、好ましくは5〜100重量部、更に好ましくは10〜80重量部の範囲である。これより少ないと低吸湿性、耐熱性、密着性、及び難燃性等の改質効果が小さく、これより多いと粘度が高くなり成形性が低下する。
【0029】
ここで言う多価フェノール性化合物類とは、1分子中にフェノール性水酸基を2個以上有するもの全てを指し、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、4,4’-ビフェノール、2,2’-ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール等の2価のフェノール類、あるいは、トリス-(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、フェノールノボラック、o-クレゾールノボラック、ナフトールノボラック、ポリビニルフェノール等に代表される3価以上のフェノール類がある。更には、フェノール類、ナフトール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、4,4’-ビフェノール、2,2’-ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール等の2価のフェノール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p-ヒドロキシベンズアルデヒド、p-キシリレングリコール、p-キシリレングリコールジメチルエーテル、4,4’-ジメトキシメチルビフェニル、4,4’-ジメトキシメチルジフェニルエーテル、ジビニルベンゼン類、ジビニルビフェニル類、ジビニルナフタレン類等の架橋剤との反応により合成される多価フェノール性化合物等がある。以下、多価フェノール性化合物類を、フェノール樹脂で代表して述べることがある。
【0030】
フェノール樹脂の軟化点は、通常、40〜200℃、好ましくは60〜150℃の範囲である。これより低いと、エポキシ樹脂の硬化剤として使用して得られた硬化物の耐熱性が低下する。またこれより高いとISRとの混合性が低下する。
【0031】
本発明のフェノール樹脂組成物は、フェノール樹脂又はISRのいずれか一方の軟化点以上の温度で、撹袢、混練等により均一に混合する溶融混合法と、それぞれを溶解する溶媒に両者を溶解させて、撹袢、混練等により均一に混合する溶液混合法等の方法で得ることができる。溶液混合法に用いる溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族系溶媒などを挙げることができる。なお、この組成物を得る際に、エポキシ樹脂、無機充填材、他のフェノール樹脂、その他の添加剤(材)を配合することもできる。
【0032】
本発明のフェノール樹脂組成物は、ヘキサメチルテトラミン等のフェノール樹脂成形材料に一般的に用いる硬化剤と併用することにより、フェノール樹脂硬化物とすることができる。
【0033】
次に、一般式(10)で表される本発明のISEについて述べる。
上記一般式(10)において、L1は式(11)又は式(12)で表される基から選ばれる基であり、その存在割合は1:9〜9:1、好ましくは2:8〜8:2である。また、Xは式(a)又は式(b)で表される基であり、nは1〜10の数である。ここで、L1及びXが式(10)中に複数ある場合は、それらは同一であっても異なっていてもよいが、L1は樹脂中に上記存在割合で式(11)及び式(12)で表される基が存在する。しかし、樹脂は混合物であるため、平均として存在すればよい。
【0034】
式(11)及び式(12)において、R6は水素原子、炭素数1〜8のアルコキシ基、グリシジルオキシ基、ハロゲン原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示す。ここで、アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、ビニルエーテル基、イソプロポキシ基、アリルオキシ基、プロパルギルエーテル基、プトキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基が挙げられ、ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子等が例示される。また、炭化水素基としてはメチル基、エチル基、ビニル基、エチン基、n−プロピル基、イソプロピル基、アリル基、プロパルギル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−アミル基、sec−アミル基、tert−アミル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基等が挙げられる。また、Aはフェノール類(多価フェノール類や多環芳香族フェノール類であってもよい)をエポキシ化して生じる基である。
【0035】
X及びnは一般式(1)のX及びnと同じ意味を有する。すなわち、Xは式(a)又は
式(b)で表される架橋基である。nは1〜10の数である。なお、樹脂は混合物であるが、その平均(数平均)のnも上記範囲にあることがよい。
【0036】
本発明のISEは、上記一般式(1)で表されるISRと、エピクロルヒドリンを反応させることより製造することが有利であるが、この反応に限らない。なお、上記一般式(1)で表されるISRは、エピクロルヒドリンでエポキシ化される部位の少なくとも一部、好ましくは全部がH又はOHとなっている樹脂であり、上記式(10)〜(12)において、グリシジルエーテル基となっている部位がOHであり、グリシジル基となっている部位がHである化合物に該当する。なお、一般式(11)において、Yの一部がHであり、一部がグリシジル基であるようにエポキシ化することは難燃性の点で有利である。
【0037】
ISRをエピクロルヒドリンと反応させる反応の他、ISRとハロゲン化アリルを反応させ、アリルエーテル化合物とした後、過酸化物と反応させる方法をとることもできる。上記ISRをエピクロルヒドリンと反応させる反応は、通常のエポキシ化反応と同様に行うことができる。
【0038】
例えば、上記ISRを過剰のエピクロルヒドリンに溶解した後、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の存在下に、20〜150℃、好ましくは、30〜80℃の範囲で1〜10時間反応させる方法が挙げられる。この際のアルカリ金属水酸化物の使用量は、ISRの水酸基1モルに対して、0.8〜1.5モル、好ましくは、0.9〜1.2モルの範囲である。また、エピクロルヒドリンはISR中の水酸基1モルに対して過剰に用いられるが、通常、ISR中の水酸基1モルに対して、1.5〜30モル、好ましくは、2〜15モルの範囲である。反応終了後、過剰のエピクロルヒドリンを留去し、残留物をトルエン、メチルイソブチルケトン等の溶剤に溶解し、濾過し、水洗して無機塩を除去し、次いで溶剤を留去することにより目的のエポキシ樹脂を得ることができる。
【0039】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、少なくともエポキシ樹脂及び硬化剤を含むものであるが、次の3種類がある。
1)硬化剤の一部又は全部として前記ISRを配合した組成物。
2)エポキシ樹脂の一部又は全部として前記ISEを配合した組成物。
3)エポキシ樹脂及び硬化剤の一部又は全部として前記ISRとISEを配合した組成物。
【0040】
上記1)及び3)の組成物の場合、ISRの配合量は、通常、エポキシ樹脂100重量部に対して2〜200重量部、好ましくは5〜80重量部の範囲である。これより少ないと低吸湿性、密着性及び難燃性向上の効果が小さく、これより多いと成形性及び硬化物の強度が低下する問題がある。
【0041】
硬化剤の全量として本発明のISRを用いる場合、通常、ISRの配合量は、ISRの-NH-基及び-OH基とエポキシ樹脂中のエポキシ基の当量バランスを考慮して配合する。エポキシ樹脂及び硬化剤の当量比は、通常、0.2〜5.0の範囲であり、好ましくは0.5〜2.0の範囲である。これより大きくても小さくても、エポキシ樹脂組成物の硬化性が低下するとともに、硬化物の耐熱性、力学強度等が低下する。
【0042】
硬化剤として本発明のISR以外の硬化剤を併用することができる。その他の硬化剤の配合量は、ISRの配合量が、通常、エポキシ樹脂100重量部に対して2〜200重量部、好ましくは5〜80重量部の範囲が保たれる範囲内で決定される。ISRの配合量がこれより少ないと低吸湿性、密着性及び難燃性向上の効果が小さく、これより多いと成形性及び硬化物の強度が低下する問題がある。
【0043】
ISR以外の硬化剤としては、一般にエポキシ樹脂の硬化剤として知られているものはすべて使用でき、ジシアンジアミド、酸無水物類、多価フェノール類、芳香族及び脂肪族アミン類等がある。これらの中でも、半導体封止材等の高い電気絶縁性が要求される分野においては、多価フェノール類を硬化剤として用いることが好ましい。以下に、硬化剤の具体例を示す。
【0044】
酸無水物硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチル無水ハイミック酸、無水ドデシニルコハク酸、無水ナジック酸、無水トリメリット酸等がある。
【0045】
多価フェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、4,4’-ビフェノール、2,2’-ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール等の2価のフェノール類、あるいは、トリス-(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、フェノールノボラック、o-クレゾールノボラック、ナフトールノボラック、ポリビニルフェノール等に代表される3価以上のフェノール類がある。更には、フェノール類、ナフトール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、4,4’-ビフェノール、2,2’-ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール等の2価のフェノール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p-ヒドロキシベンズアルデヒド、p-キシリレングリコール等の縮合剤により合成される多価フェノール性化合物等がある。また、前記の本発明のフェノール樹脂組成物を配合することもできる。
【0046】
アミン類としては、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、p-キシリレンジアミン等の芳香族アミン類、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族アミン類がある。
【0047】
上記組成物には、これら硬化剤の1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0048】
上記組成物に使用されるエポキシ樹脂としては、1分子中にエポキシ基を2個以上有するもの中から選択される。例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、4,4’-ビフェノール、2,2’-ビフェノール、テトラブロモビスフェノールA、ハイドロキノン、レゾルシン等の2価のフェノール類、あるいは、トリス-(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタンや、フェノール、クレゾール、ナフトール等のノボラック樹脂、フェノール、クレゾール、ナフトール等のアラルキル樹脂等の3価以上のフェノール性化合物のグルシジルエーテル化物等がある。これらのエポキシ樹脂は1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0049】
上記2)及び3)の組成物の場合、硬化剤としては、一般にエポキシ樹脂の硬化剤として知られているものはすべて使用できる。例えば、前記したジシアンジアミド、多価フェノール類、酸無水物類、芳香族及び脂肪族アミン類等がある。また、上記一般式(1)で表されるISRも好ましく例示される。この樹脂組成物には、これら硬化剤の1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0050】
また、このエポキシ樹脂組成物中には、エポキシ樹脂成分として、一般式(10)で表されるISE以外に別種のエポキシ樹脂を配合してもよい。この場合のエポキシ樹脂としては、分子中にエポキシ基を2個以上有する通常のエポキシ樹脂はすべて使用できる。例を挙げれば、ビスフェノールA、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン等の2価のフェノール類、あるいは、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック等の3価以上のフェノール類、フェノール系アラルキル樹脂類、ナフトール系アラルキル樹脂類、又はテトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類から誘導されるグルシジルエーテル化物等がある。これらのエポキシ樹脂は、1種又は2種以上を混合して用いることができる。そして、本発明のISEを必須成分とする組成物の場合、一般式(1)で表されるISEの配合量はエポキシ樹脂全体中、5〜100%、好ましくは60〜100%の範囲であることがよい。
【0051】
本発明のエポキシ樹脂組成物中には、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテル、ポリウレタン、石油樹脂、インデン樹脂、インデン・クマロン樹脂、フェノキシ樹脂等のオリゴマー又は高分子化合物を他の改質剤等として適宜配合してもよい。添加量は、通常、エポキシ樹脂100重量部に対して、2〜30重量部の範囲である。
【0052】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物には、無機充填剤、顔料、難然剤、揺変性付与剤、カップリング剤、流動性向上剤等の添加剤を配合できる。無機充填剤としては、例えば、球状あるいは、破砕状の溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ粉末、アルミナ粉末、ガラス粉末、又はマイカ、タルク、炭酸カルシウム、アルミナ、水和アルミナ等が挙げられ、半導体封止材に用いる場合の好ましい配合量は70重量%以上であり、更に好ましくは80重量%以上である。
【0053】
顔料としては、有機系又は、無機系の体質顔料、鱗片状顔料、等がある。揺変性付与剤としては、シリコン系、ヒマシ油系、脂肪族アマイドワックス、酸化ポリエチレンワックス、有機ベントナイト系等を挙げることができる。
【0054】
更に、本発明のエポキシ樹脂組成物には必要に応じて硬化促進剤を用いることができる。例を挙げれば、アミン類、イミダゾール類、有機ホスフィン類、ルイス酸等があり、具体的には、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの三級アミン、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−へプタデシルイミダゾールなどのイミダゾール類、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフイン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィンなどの有機ホスフィン類、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・エチルトリフェニルボレート、テトラブチルホスホニウム・テトラブチルボレートなどのテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレートなどのテトラフェニルボロン塩などがある。添加量としては、通常、エポキシ樹脂100重量部に対して、0.2から5重量部の範囲である。
【0055】
更に必要に応じて、本発明の樹脂組成物には、カルナバワックス、OPワックス等の離型剤、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のカップリング剤、カーボンブラック等の着色剤、三酸化アンチモン等の難燃剤、シリコンオイル等の低応力化剤、ステアリン酸カルシウム等の滑剤等を使用できる。
【0056】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、有機溶剤の溶解させたワニス状態とした後に、ガラスクロス、アラミド不織布、液晶ポリマー等のポリエステル不織布、等の繊維状物に含浸させた後に溶剤除去を行い、プリプレグとすることができる。また、場合により銅箔、ステンレス箔、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム等のシート状物上に塗布することにより積層物とすることができる。
【0057】
本発明のエポキシ樹脂組成物を加熱硬化させれば、エポキシ樹脂硬化物とすることができ、この硬化物は低吸湿性、高耐熱性、密着性、難燃性等の点で優れたものとなる。この硬化物は、エポキシ樹脂組成物を注型、圧縮成形、トランスファー成形等の方法により、成形加工して得ることができる。この際の温度は通常、120〜220℃の範囲である。
【発明の効果】
【0058】
本発明のISRは、エポキシ樹脂中間体、エポキシ樹脂の硬化剤、及び改質剤として有用であり、エポキシ樹脂組成物に応用した場合、優れた高耐熱性、耐湿性を有するとともに、難燃性及び異種材料との高密着性に優れた硬化物を与え、電気・電子部品類の封止、回路基板材料等の用途に好適に使用することが可能である。本発明のISR又はISEを配合したエポキシ樹脂組成物を加熱硬化させれば、エポキシ樹脂硬化物とすることができ、この硬化物は難燃性、低吸湿性、高耐熱性、密着性等の点で優れたものを与え、電気・電子部品類の封止、回路基板材料等の用途に好適に使用することが可能である。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
ここで、粘度はB型粘度計を用い、軟化点はJIS K−6911に従い環球法で測定した。また、GPC測定条件は、装置;HLC−82A(東ソー(株)製)、カラム;TSK−GEL2000×3本及びTSK−GEL4000×1本(いずれも東ソー(株)製)、溶媒;テトラヒドロフラン、流量;1 ml/min、温度;38℃、検出器;RIであり、検量線にはポリスチレン標準液を使用した。
【0060】
実施例1
撹拌機、冷却管、窒素導入管のついた500mL、3口セパラブルフラスコに、インドール25.0g、1−ナフトール276.9g、p-キシリレンジクロライド112.2g、モノクロロベンゼン276gを仕込み、窒素を導入しながら80℃に加熱し溶解させた。その後、減圧下にて撹拌しながら150℃に昇温し3時間反応させた。この間、反応により生成する塩酸およびモノクロロベンゼンは系外に除いた。その後、減圧下230℃に昇温し、塩酸及び未反応1−ナフトール、インドールを除去し、ISR−A203.6gを得た。得られた樹脂の軟化点は100℃、150℃における溶融粘度は0.65Pa・sであった。GPC測定により求めた残存モノマー量は0.5wt%であった。
【0061】
実施例2
インドール40.0g、フェノール289.2g、4,4’−ビスクロロメチルビフェニル257.4g、モノクロロベンゼン147gを仕込み、窒素を導入しながら80℃に加熱し溶解させた。その後、減圧下にて撹拌しながら150℃まで昇温し1時間反応させた。この間、反応により生成する塩酸およびモノクロロベンゼンは系外に除いた。その後、減圧下180℃にて塩酸及び未反応フェノール、インドールを除去し、ISR−B348.6gを得た。得られた樹脂の軟化点は94℃、150℃における溶融粘度は0.93Pa・sであった。GPC測定により求めた残存モノマー量は0.5wt%であった。
【0062】
実施例3
インドール11.5g、フェノール83.2g、ビスクロロメチルナフタレン49.3g、モノクロロベンゼン36gを用いて実施例2と同様に反応を行い、ISR−C70.1gを得た。得られた樹脂の軟化点は119℃、150℃における溶融粘度は12.3Pa・sであった。GPC測定により求めた残存モノマー量は0.4wt%であった。
【0063】
実施例4
撹拌機、冷却管、窒素導入管のついた500mL、3口セパラブルフラスコに、インドール72.5g、フェノール233.1g、92%パラホルムアルデヒド27.9g、を仕込み、窒素を導入しながら90℃に加熱し溶解させた。その後、撹拌しながら130℃に昇温し3時間反応させた。この間、反応により生成する水は系外に除いた。その後、減圧下、180℃に昇温し、縮合水及び未反応フェノール、インドールを除去し、ISR−D150gを得た。得られた樹脂の軟化点は83℃、150℃における溶融粘度は0.12Pa・sであった。GPC測定により求めた残存モノマー量は0.5wt%であった。
【0064】
実施例5
インドール106.3g、フェノール199.2g、92%パラホルムアルデヒド27.2gを用いて実施例1と同様に反応を行い、ISR−E130gを得た。得られた樹脂の軟化点は135℃、180℃における溶融粘度は0.58Pa・sであった。GPC測定により求めた残存モノマー量は0.4wt%であった。
【0065】
ISR−Aの1H−NMRスペクトルを図1、赤外吸収スペクトルを図2、GPCチャートを図3に示す。ISR−Bの1H−NMRスペクトルを図4、赤外吸収スペクトルを図5、GPCチャートを図6に示す。ISR−Cの1H−NMRスペクトルを図7、赤外吸収スペクトルを図8、GPCチャートを図9に示す。ISR−Dの1H−NMRスペクトルを図10、赤外吸収スペクトルを図11、GPCチャートを図12に示す。
【0066】
実施例6
150℃に溶融させた100gのフェノールノボラック(軟化点82℃、OH当量103)中に、実施例2で得たISR−B100gを加え、均一に溶融させてフェノール樹脂組成物200gを得た(樹脂組成物A)。得られたフェノール樹脂組成物の軟化点は90℃、150℃での溶融粘度は0.60Pa・sであった。
【0067】
実施例7
150℃に溶融させた100gのフェノールノボラック(軟化点82℃、OH当量103)中に、実施例4で得たISR−D100gを加え、均一に溶融させてフェノール樹脂組成物200gを得た(樹脂組成物B)。得られたフェノール樹脂組成物の軟化点は82℃、150℃での溶融粘度は0.18Pa・sであった。
【0068】
実施例8〜18及び比較例1〜4
エポキシ樹脂成分としてo-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(OCNE;エポキシ当量200、軟化点65℃)、硬化剤として実施例1、2、3、4、5で得たISR−A、ISR−B、ISR−C、ISR−D、ISR−E、実施例6、7で得たフェノール樹脂組成物(樹脂組成物A、B)、フェノールノボラック(硬化剤A:群栄化学製、PSM−4261;OH当量103、軟化点 82℃)、フェノールアラルキル樹脂(硬化剤B;明和化成製、MEH−7800SS、OH当量175、軟化点67℃)を用い、充填剤としてシリカ(平均粒径18μm)、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィンを表1及び表3に示す配合で混練しエポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物を用いて175℃にて成形し、175℃にて12時間ポストキュアを行い、硬化物試験片を得た後、各種物性測定に供した。
【0069】
ガラス転移点(Tg)及び線膨張係数(CTE)の測定は、熱機械測定装置を用いて10℃/分の昇温速度で求めた。また吸水率は、直径50mm、厚さ3mmの円形の試験片を用いて、85℃、85%RHの条件で100時間吸湿させた吸水率は、本エポキシ樹脂組成物を用いて、直径50mm、厚さ3mmの円盤を成形し、ポストキュア後133℃、3atm、96時間吸湿させた後の重量変化率とした。接着強度は、銅板2枚の間に25mm×12.5mm×0.5mmの成形物を圧縮成形機により175℃で成形し、180℃にて12時間ポストキュアを行った後、引張剪断強度を求めることにより評価した。難燃性は、厚さ1/16インチの試験片を成形し、UL94V-0規格によって評価し、5本の試験片での合計の燃焼時間で表した。結果をまとめて表2及び表4に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
実施例19
実施例2で得たISR−B150gをエピクロルヒドリン403g、ジエチレングリコールジメチルエーテル60gに溶解した。その後、撹拌しながら減圧下65℃にて48.9%水酸化ナトリウム44.3gを4時間かけて添加し、添加終了後更に70℃にて1時間反応を継続した。反応終了後、エピクロルヒドリンを減圧留去した後、MIBKに溶解させた。濾過により生成した塩を除き、更に水洗した後MIBKを減圧留去し、エポキシ樹脂(ISE−B)146gを得た。得られたエポキシ樹脂の軟化点は83℃、溶融粘度は0.97Pa・s、エポキシ当量は330g/eq.であった。ISE−BについてNMR、IR及びGPC測定した結果を図13、14及び15に示す。
【0075】
実施例20
実施例4で得たISR−D100gをエピクロルヒドリン178g、ジエチレングリコールジメチルエーテル36gに溶解した。その後、撹拌しながら50℃にて96%水酸化カリウム33.7gを3時間かけて添加し、添加終了後更に1時間反応を継続した。反応終了後、濾過により生成した塩を除き、更に水洗したのちエピクロルヒドリンを留去し、エポキシ樹脂(ISE−D)110gを得た。得られたエポキシ樹脂の軟化点は78℃、溶融粘度は0.28Pa・s、エポキシ当量は278g/eq.であった。ISE−DについてNMR、IR及びGPC測定した図16、17及び18に示す
【0076】
実施例21〜28及び比較例5〜10
エポキシ樹脂成分として、実施例19で合成したISE−B、実施例20で合成したISE−D、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(OCNE;エポキシ当量200、軟化点65℃)、ビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製、YX4000HK;エポキシ当量 195、融点 105℃)を用い、硬化剤成分として、実施例1で合成したISR−A、実施例4で合成したISR−D、フェノールノボラック(硬化剤A:群栄化学製、PSM−4261;OH当量103、軟化点 82℃)、1−ナフトールアラルキル型樹脂(硬化剤B:新日鐵化学製、SN−475;OH当量210、軟化点 77℃)を用いた。更に、充填剤として球状シリカ(平均粒径 18μm)、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィンを用い、表5及び7に示す配合でエポキシ樹脂組成物を得た。表中の数値は配合における重量部を示す。
【0077】
このエポキシ樹脂組成物を用いて175℃で成形し、更に175℃にて12時間ポストキュアを行い、硬化物試験片を得た後、各種物性測定に供した。結果を表6及び8に示す。
【0078】
【表5】
【0079】
【表6】
【0080】
【表7】
【0081】
【表8】
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】ISR−Aの1H−NMRスペクトル
【図2】ISR−Aの赤外吸収スペクトル
【図3】ISR−AのGPCチャート
【図4】ISR−Bの1H−NMRスペクトル
【図5】ISR−Bの赤外吸収スペクトル
【図6】ISR−BのGPCチャート
【図7】ISR−Cの1H−NMRスペクトル
【図8】ISR−Cの赤外吸収スペクトル
【図9】ISR−CのGPCチャート
【図10】ISR−Dの1H−NMRスペクトル
【図11】ISR−Dの赤外吸収スペクトル
【図12】ISR−DのGPCチャート
【図13】ISE−Bの1H−NMRスペクトル
【図14】ISE−Bの赤外吸収スペクトル
【図15】ISE−BのGPCチャート
【図16】ISE−Dの1H−NMRスペクトル
【図17】ISE−Dの赤外吸収スペクトル
【図18】ISE−DのGPCチャート
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂の硬化剤、改質剤等として有用なインドール骨格含有樹脂、インドール骨格含有エポキシ樹脂、これら用いたエポキシ樹脂組成物並びにその硬化物に関するものであり、プリント配線板、半導体封止等の電気電子分野の絶縁材料等に好適に使用される。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は工業的に幅広い用途で使用されてきているが、その要求性能は近年ますます高度化している。例えば、エポキシ樹脂を主剤とする樹脂組成物の代表的分野に半導体封止材料があるが、半導体素子の集積度の向上に伴い、パッケージサイズは大面積化、薄型化に向かうとともに、実装方式も表面実装化への移行が進展しており、半田耐熱性に優れた材料の開発が望まれている。従って、封止材料としては、低吸湿化に加え、リードフレーム、チップ等の異種材料界面での接着性・密着性の向上が強く求められている。回路基板材料においても同様に、半田耐熱性向上の観点から低吸湿性、高耐熱性、高密着性の向上に加え、誘電損失低減の観点から低誘電性に優れた材料の開発が望まれている。これらの要求に対応するため、様々な新規構造のエポキシ樹脂及び硬化剤が検討されている。更に最近では、環境負荷低減の観点から、ハロゲン系難燃剤排除の動きがあり、より難燃性に優れたエポキシ樹脂及び硬化剤が求められている。
【0003】
【特許文献1】特開平5−1099345号公報
【特許文献2】特開平11−140166号公報
【特許文献3】特開2004−46522号公報
【特許文献4】特開2004−59792号公報
【特許文献5】特開平4−173831号公報
【特許文献6】特開2000−129092号公報
【特許文献7】特開平3−90075号公報
【特許文献8】特開平3−281623号公報
【0004】
従って、上記背景から種々のエポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤が検討されている。エポキシ樹脂硬化剤の一例として、ナフタレン系樹脂が知られており、特許文献1にはナフトールアラルキル樹脂を半導体封止材へ応用することが示されている。但し、ナフトールアラルキル樹脂は、低吸湿性、低熱膨張性等に優れるものの、硬化性に劣る欠点があった。また、特許文献2にはビフェニル構造を有する硬化剤が提案され、難燃性向上に有効であることが記載されているが、硬化性に劣る欠点があった。更に、ナフタレン系樹脂、ビフェニル系樹脂ともに、炭化水素のみで構成される主骨格を有することから、難燃性の発現に十分ではなかった。また、特許文献3には芳香族オレフィンと共重合したインドール系オリゴマーが記載されている。
【0005】
一方、エポキシ樹脂についても、これらの要求を満足するものは未だ知られていない。例えば、周知のビスフェノール型エポキシ樹脂は、常温で液状であり、作業性に優れていることや、硬化剤、添加剤等との混合が容易であることから広く使用されているが、耐熱性、耐湿性の点で問題がある。また、耐熱性を改良したものとして、ノボラック型エポキシ樹脂が知られているが、耐湿性、接着性等に問題がある。更には、主骨格が炭化水素のみで構成される従来のエポキシ樹脂では、難燃性を全くもたない。
【0006】
ハロゲン系難燃剤を用いることなく難燃性を向上させるための方策として、リン酸エステル系の難燃剤を添加する方法が開示されている。しかし、リン酸エステル系の難燃剤を用いる方法では、耐湿性が十分ではない。また、高温、多湿な環境下ではリン酸エステルが加水分解を起こし、絶縁材料としての信頼性を低下させる問題があった。
【0007】
リン原子やハロゲン原子を含むことなく、難燃性を向上させるものとして、特許文献2、5、6ではビフェニル構造を有するアラルキル型エポキシ樹脂を半導体封止材へ応用した例が開示されている。特許文献4には、ナフタレン構造を有するアラルキル型エポキシ樹脂を使用する例が開示されている。しかしながら、これらのエポキシ樹脂は難燃性や、耐湿性、耐熱性のいずれかにおいて性能が十分でない。なお、特許文献7及び8にはナフトール系アラルキル型エポキシ樹脂及びこれを含有する半導体封止材料が開示されているが、難燃性に着目したものはない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、エポキシ樹脂組成物の硬化剤、改質剤等に有用なインドール骨格含有樹脂を提供すること、難燃性に優れるとともに、耐湿性、耐熱性、金属基材との接着性等にも優れた性能を有し、積層、成形、注型、接着等の用途に有用なインドール骨格含有エポキシ樹脂を提供すること、優れた成形性を有するとともに、低吸湿性、耐熱性、密着性、及び難燃性等に優れた硬化物を与える電気・電子部品類の封止、回路基板材料等に有用なエポキシ樹脂組成物を提供すること、及びその硬化物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のインドール骨格含有樹脂は、下記一般式(1)で表される。
H-L-(X-L)n-H (1)
ここで、
Lは下記式(2)及び式(3)
【化1】
で表される基のいずれかであり、R1は水素原子、水酸基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、Aは炭素数1〜8のアルキル基若しくは水酸基が置換してもよいベンゼン環又はナフタレン環からなる基を示し、式(2)と式(3)で表される基の存在割合(モル比)が1:9〜9:1の範囲であり、
Xは下記(a)又は式(b)
【化2】
で表される架橋基であり、R2、R3、R4及びR5は独立に、水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、Bはベンゼン環、ビフェニル環又はナフタレン環からなる基を示し、
nは1〜10の数を示す。
【0010】
このインドール骨格含有樹脂は、下記式(4)で表されるインドール類と下記式(5)で表されるフェノール類のモル比が1:9〜9:1の範囲であり、両者の合計100モルに対し、下記式(6)、(7)、(8)又は(9)で表される架橋剤10〜90モルとを反応させることにより得ることができる。
【化3】
【化4】
但し、
R1は水素原子、水酸基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、
Aは炭素数1〜8のアルキル基若しくは水酸基が置換してもよいベンゼン環又はナフタレン環からなる基を示し、
R2、R3、R4及びR5は独立に、水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、
Bはベンゼン環、ビフェニル環又はナフタレン環からなる基を示し、
Y及びZは独立にOH、アルコキシ又はハロゲンを示す。
【0011】
本発明のインドール骨格含有エポキシ樹脂は、下記一般式(10)で表される。
H-L1-(X-L1)n-H (10)
ここで、
L1は下記式(11)又は式(12)
【化5】
で表される基のいずれかであり、R6は水素原子、グリシジルオキシ基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、Aは炭素数1〜8のアルキル基若しくはグリシジルオキシ基が置換してもよいベンゼン環又はナフタレン環からなる基を示し、式(11)と式(12)で表される基の存在割合(モル比)が1:9〜9:1の範囲であり、
Xは一般式(1)と同じ意味を有し、Yは水素原子、炭素数1〜8の炭化水素基又はグリシジル基を示し、Gはグリシジル基を示し、
nは1〜10の数を示す。
【0012】
このインドール骨格含有エポキシ樹脂は、一般式(1)で表されるインドール骨格含有樹脂と、エピクロルヒドリンを反応させることにより得ることができる。
【0013】
本発明のフェノール樹脂組成物は、多価フェノール性化合物類100重量部に対して、インドール骨格含有樹脂を2〜200重量部配合してなる。エポキシ樹脂及び硬化剤よりなる本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化剤の一部又は全部としてインドール骨格含有樹脂を、エポキシ樹脂100重量部に対して2〜200重量部配合してなるか、又はエポキシ樹脂の一部又は全部として前記インドール骨格含有エポキシ樹脂を配合してなる。本発明のエポキシ樹脂硬化物は、このフェノール樹脂組成物を硬化させることにより得られる。
【0014】
本発明のインドール骨格含有樹脂(以下、ISRともいう)は一般式(1)で表される。また、本発明のインドール骨格含有エポキシ樹脂(以下、ISEともいう)は一般式(10)で表される。ISEは、ISRをエポキシ化することにより得ることができるので、ISRはISEの中間体でもある。
【0015】
一般式(1)において、Lは式(2)及び式(3)で表される基から選ばれる基であり、その存在割合は1:9〜9:1、好ましくは2:8〜8:2である。また、Xは式(a)又は式(b)で表される基であり、nは1〜10の数である。ここで、式(1)中のn+1個のL及びn個のXは、それぞれ同一であっても異なっていてもよいが、Lは樹脂中に上記存在割合で式(2)及び式(3)で表される基が存在する。しかし、樹脂は混合物であるため、平均として存在すればよい。なお、nについても、樹脂は混合物であるので、その平均(数平均)は上記範囲にあることがよい。
【0016】
式(2)及び式(3)において、R1は水素原子、水酸基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子又は炭素数1〜7の炭化水素基を示し、Aはフェノール類(多価フェノール類や多環芳香族フェノール類であってもよい)から生じる基である。
【0017】
Xは式(a)又は式(b)で表される架橋基であるが、R2、R3、R4及びR5は独立に、水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を示し、Bはベンゼン環、ビフェニル環又はナフタレン環からなる基を示す。なお、Bを構成するこれらの環は、炭素数1〜6の炭化水素基で置換されていてもよい。XはLを架橋するが、Lを構成する式(2)及び式(3)で表される基に対するXの置換位置は、特に限定するものではなく、例えばインドール環の1位から7位の水素原子が架橋基で置換されて連結した構造をとり得るが、式(2)においてインドール環の1位の水素原子が残存していることが好ましい。すべてのインドール環の1位の水素原子が残存している必要はないが、すべてのインドール環の1位の水素原子が置換されていると、本発明のインドール骨格含有樹脂の硬化剤としての機能が十分に発現されない。
【0018】
ISRの軟化点は40〜200℃であることがよく、好ましくは50〜160℃、より好ましくは60〜120℃の範囲である。ここで、軟化点は、JISK−6911の環球法に基づき測定される軟化点を指す。これより低いと、これをエポキシ樹脂に配合したとき、硬化物の耐熱性が低下し、これより高いと成形時の流動性が低下する。
【0019】
本発明のISRは、それ自体をフェノール樹脂組成物又はエポキシ樹脂組成物の一成分とすることができるが、場合により、インドール骨格含有樹脂にハロゲン化アルキル化合物、ハロゲン化アルケニル化合物、エピハロヒドリン化合物等を反応させることにより、インドール骨格含有樹脂中の-NH-及び-OHの水素原子の一部又は全部をアルキル基、アルケニル基、グリシジル基等に置換することができる。
【0020】
本発明のISRは、式(4)で表されるインドール類及び式(5)で表されるフェノール類と、式(6)、式(7)、(8)又は(9)で表される架橋剤を反応させることにより合成することができる。この場合の架橋剤の使用量は、インドール類及びフェノール類の合計1モルに対して、0.1〜0.9モルの範囲であるが、好ましくは0.2〜0.8モルの範囲である。これより小さいと合成の際、未反応のインドール類及びフェノール類が多くなり、ISRの生産性が低下するとともに、合成されたISRの軟化点が低くなり、エポキシ樹脂硬化剤として使用した場合の硬化物の耐熱性が低下する。また、これより大きいとISRの軟化点が高くなり、場合により合成の際にISRがゲル化することがある。なお、インドール類及びフェノール類の使用割合は前記割合となるように調整されるが、インドール類の方が架橋剤との反応性が高いので、フェノール類を理論量よりいくらか多めとすることがよい場合がある。
【0021】
この反応は無触媒又は酸触媒の存在下に行うことができる。この酸触媒としては、周知の無機酸、有機酸より適宜選択することができる。例えば、塩酸、硫酸、燐酸等の鉱酸や、ギ酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、p-トルエンスルホン酸、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等の有機酸や、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化鉄、三フッ化ホウ素等のルイス酸あるいはイオン交換樹脂、活性白土、シリカ-アルミナ、ゼオライト等の固体酸等が挙げられる。
【0022】
また、この反応は通常、10〜250℃で1〜20時間行われる。更に、反応の際には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のアルコール類や、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族化合物等を溶媒として使用することができる。
【0023】
原料として使用するインドール類としては、インドール以外に、置換基として水酸基、アルコキシ基、ハロゲン原子又は炭化水素基が置換したインドールがある。例えば、ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子等があり、アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、ビニルエーテル基、イソプロポキシ基、アリルオキシ基、プロパルギルエーテル基、プトキシ基、フェノキシ基が挙げられる。また、炭化水素基としてはメチル基、エチル基、ビニル基、エチン基、イソプロピル基、アリル基、プロパルギル基、ブチル基、アミル基、フェニル基、ベンジル基等を有する種々の置換インドール類を用いることができるが、好ましくはインドールである。
【0024】
フェノール類としては、フェノールの他、クレゾール類、キシレノール類等のアルキルフェノール類、ヒドロキノン等の多価フェノール類、ナフトール類、ナフタレンジオール類等の多環フェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール類、あるいはフェノールノボラック、フェノールアラルキル樹脂等の多官能性フェノール化合物が例示される。これらのモノマー類は、1種又は2種以上を混合して用いることができるが、インドール骨格含有樹脂を含有して得られる硬化物の物性面からは、インドール骨格含有樹脂のインドール類骨格の含有率が高いほどよいが特に制約はない。
【0025】
架橋剤としては、式(6)で表されるホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、ブチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類が挙げられるが、ホルムアルデヒドが好ましい。反応に用いる際の好ましいホルムアルデヒドの原料形態としては、ホルマリン水溶液、パラホルムアルデヒド、トリオキサン等が挙げられる。また、式(7)で表されるアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン等のケトン類も架橋剤として使用できる。
【0026】
更に、式(8)で表される架橋剤としては、p-キシリレングリコール、p-キシリレングリコールジメチルエーテル、p-キシリレンジクロライド、4,4’-ジメトキシメチルビフェニル、4,4’-ジクロロメチルビフェニル、ジメトキシメチルナフタレン類、ジクロロメチルナフタレン類が挙げられる。
また、式(9)で表されるジビニルベンゼン類、ジビニルビフェニル類、ジビニルナフタレン類等も架橋剤として使用できる。
【0027】
反応終了後、場合により、得られたISRには、未反応のインドール類及びフェノール類が残存する。残存したインドール類及びフェノール類は、通常、減圧蒸留、あるいは溶剤分割等の方法により系外に除去される。ISRに残存する未反応のインドール類及びフェノール類の量は少ない方が望ましく、通常は、5重量%以下であり、好ましくは3重量%以下、更に好ましくは1重量%以下である。残存するインドール類及びフェノール類の量が多いと、成形物を作成する際に揮発し、成形作業性を低下させるとともに成形物のボイドの原因になることがある。また、成形物の難燃性も低下する。
【0028】
本発明のフェノール樹脂組成物は、多価フェノール性化合物類中に上記ISRを含有してなる。ISRの含有率は、多価フェノール性化合物類100重量部に対し、2〜200重量部、好ましくは5〜100重量部、更に好ましくは10〜80重量部の範囲である。これより少ないと低吸湿性、耐熱性、密着性、及び難燃性等の改質効果が小さく、これより多いと粘度が高くなり成形性が低下する。
【0029】
ここで言う多価フェノール性化合物類とは、1分子中にフェノール性水酸基を2個以上有するもの全てを指し、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、4,4’-ビフェノール、2,2’-ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール等の2価のフェノール類、あるいは、トリス-(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、フェノールノボラック、o-クレゾールノボラック、ナフトールノボラック、ポリビニルフェノール等に代表される3価以上のフェノール類がある。更には、フェノール類、ナフトール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、4,4’-ビフェノール、2,2’-ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール等の2価のフェノール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p-ヒドロキシベンズアルデヒド、p-キシリレングリコール、p-キシリレングリコールジメチルエーテル、4,4’-ジメトキシメチルビフェニル、4,4’-ジメトキシメチルジフェニルエーテル、ジビニルベンゼン類、ジビニルビフェニル類、ジビニルナフタレン類等の架橋剤との反応により合成される多価フェノール性化合物等がある。以下、多価フェノール性化合物類を、フェノール樹脂で代表して述べることがある。
【0030】
フェノール樹脂の軟化点は、通常、40〜200℃、好ましくは60〜150℃の範囲である。これより低いと、エポキシ樹脂の硬化剤として使用して得られた硬化物の耐熱性が低下する。またこれより高いとISRとの混合性が低下する。
【0031】
本発明のフェノール樹脂組成物は、フェノール樹脂又はISRのいずれか一方の軟化点以上の温度で、撹袢、混練等により均一に混合する溶融混合法と、それぞれを溶解する溶媒に両者を溶解させて、撹袢、混練等により均一に混合する溶液混合法等の方法で得ることができる。溶液混合法に用いる溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族系溶媒などを挙げることができる。なお、この組成物を得る際に、エポキシ樹脂、無機充填材、他のフェノール樹脂、その他の添加剤(材)を配合することもできる。
【0032】
本発明のフェノール樹脂組成物は、ヘキサメチルテトラミン等のフェノール樹脂成形材料に一般的に用いる硬化剤と併用することにより、フェノール樹脂硬化物とすることができる。
【0033】
次に、一般式(10)で表される本発明のISEについて述べる。
上記一般式(10)において、L1は式(11)又は式(12)で表される基から選ばれる基であり、その存在割合は1:9〜9:1、好ましくは2:8〜8:2である。また、Xは式(a)又は式(b)で表される基であり、nは1〜10の数である。ここで、L1及びXが式(10)中に複数ある場合は、それらは同一であっても異なっていてもよいが、L1は樹脂中に上記存在割合で式(11)及び式(12)で表される基が存在する。しかし、樹脂は混合物であるため、平均として存在すればよい。
【0034】
式(11)及び式(12)において、R6は水素原子、炭素数1〜8のアルコキシ基、グリシジルオキシ基、ハロゲン原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示す。ここで、アルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、ビニルエーテル基、イソプロポキシ基、アリルオキシ基、プロパルギルエーテル基、プトキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基が挙げられ、ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子等が例示される。また、炭化水素基としてはメチル基、エチル基、ビニル基、エチン基、n−プロピル基、イソプロピル基、アリル基、プロパルギル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−アミル基、sec−アミル基、tert−アミル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基等が挙げられる。また、Aはフェノール類(多価フェノール類や多環芳香族フェノール類であってもよい)をエポキシ化して生じる基である。
【0035】
X及びnは一般式(1)のX及びnと同じ意味を有する。すなわち、Xは式(a)又は
式(b)で表される架橋基である。nは1〜10の数である。なお、樹脂は混合物であるが、その平均(数平均)のnも上記範囲にあることがよい。
【0036】
本発明のISEは、上記一般式(1)で表されるISRと、エピクロルヒドリンを反応させることより製造することが有利であるが、この反応に限らない。なお、上記一般式(1)で表されるISRは、エピクロルヒドリンでエポキシ化される部位の少なくとも一部、好ましくは全部がH又はOHとなっている樹脂であり、上記式(10)〜(12)において、グリシジルエーテル基となっている部位がOHであり、グリシジル基となっている部位がHである化合物に該当する。なお、一般式(11)において、Yの一部がHであり、一部がグリシジル基であるようにエポキシ化することは難燃性の点で有利である。
【0037】
ISRをエピクロルヒドリンと反応させる反応の他、ISRとハロゲン化アリルを反応させ、アリルエーテル化合物とした後、過酸化物と反応させる方法をとることもできる。上記ISRをエピクロルヒドリンと反応させる反応は、通常のエポキシ化反応と同様に行うことができる。
【0038】
例えば、上記ISRを過剰のエピクロルヒドリンに溶解した後、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の存在下に、20〜150℃、好ましくは、30〜80℃の範囲で1〜10時間反応させる方法が挙げられる。この際のアルカリ金属水酸化物の使用量は、ISRの水酸基1モルに対して、0.8〜1.5モル、好ましくは、0.9〜1.2モルの範囲である。また、エピクロルヒドリンはISR中の水酸基1モルに対して過剰に用いられるが、通常、ISR中の水酸基1モルに対して、1.5〜30モル、好ましくは、2〜15モルの範囲である。反応終了後、過剰のエピクロルヒドリンを留去し、残留物をトルエン、メチルイソブチルケトン等の溶剤に溶解し、濾過し、水洗して無機塩を除去し、次いで溶剤を留去することにより目的のエポキシ樹脂を得ることができる。
【0039】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、少なくともエポキシ樹脂及び硬化剤を含むものであるが、次の3種類がある。
1)硬化剤の一部又は全部として前記ISRを配合した組成物。
2)エポキシ樹脂の一部又は全部として前記ISEを配合した組成物。
3)エポキシ樹脂及び硬化剤の一部又は全部として前記ISRとISEを配合した組成物。
【0040】
上記1)及び3)の組成物の場合、ISRの配合量は、通常、エポキシ樹脂100重量部に対して2〜200重量部、好ましくは5〜80重量部の範囲である。これより少ないと低吸湿性、密着性及び難燃性向上の効果が小さく、これより多いと成形性及び硬化物の強度が低下する問題がある。
【0041】
硬化剤の全量として本発明のISRを用いる場合、通常、ISRの配合量は、ISRの-NH-基及び-OH基とエポキシ樹脂中のエポキシ基の当量バランスを考慮して配合する。エポキシ樹脂及び硬化剤の当量比は、通常、0.2〜5.0の範囲であり、好ましくは0.5〜2.0の範囲である。これより大きくても小さくても、エポキシ樹脂組成物の硬化性が低下するとともに、硬化物の耐熱性、力学強度等が低下する。
【0042】
硬化剤として本発明のISR以外の硬化剤を併用することができる。その他の硬化剤の配合量は、ISRの配合量が、通常、エポキシ樹脂100重量部に対して2〜200重量部、好ましくは5〜80重量部の範囲が保たれる範囲内で決定される。ISRの配合量がこれより少ないと低吸湿性、密着性及び難燃性向上の効果が小さく、これより多いと成形性及び硬化物の強度が低下する問題がある。
【0043】
ISR以外の硬化剤としては、一般にエポキシ樹脂の硬化剤として知られているものはすべて使用でき、ジシアンジアミド、酸無水物類、多価フェノール類、芳香族及び脂肪族アミン類等がある。これらの中でも、半導体封止材等の高い電気絶縁性が要求される分野においては、多価フェノール類を硬化剤として用いることが好ましい。以下に、硬化剤の具体例を示す。
【0044】
酸無水物硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチル無水ハイミック酸、無水ドデシニルコハク酸、無水ナジック酸、無水トリメリット酸等がある。
【0045】
多価フェノール類としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、4,4’-ビフェノール、2,2’-ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール等の2価のフェノール類、あるいは、トリス-(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、フェノールノボラック、o-クレゾールノボラック、ナフトールノボラック、ポリビニルフェノール等に代表される3価以上のフェノール類がある。更には、フェノール類、ナフトール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、4,4’-ビフェノール、2,2’-ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール等の2価のフェノール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p-ヒドロキシベンズアルデヒド、p-キシリレングリコール等の縮合剤により合成される多価フェノール性化合物等がある。また、前記の本発明のフェノール樹脂組成物を配合することもできる。
【0046】
アミン類としては、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、p-キシリレンジアミン等の芳香族アミン類、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族アミン類がある。
【0047】
上記組成物には、これら硬化剤の1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0048】
上記組成物に使用されるエポキシ樹脂としては、1分子中にエポキシ基を2個以上有するもの中から選択される。例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、4,4’-ビフェノール、2,2’-ビフェノール、テトラブロモビスフェノールA、ハイドロキノン、レゾルシン等の2価のフェノール類、あるいは、トリス-(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタンや、フェノール、クレゾール、ナフトール等のノボラック樹脂、フェノール、クレゾール、ナフトール等のアラルキル樹脂等の3価以上のフェノール性化合物のグルシジルエーテル化物等がある。これらのエポキシ樹脂は1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0049】
上記2)及び3)の組成物の場合、硬化剤としては、一般にエポキシ樹脂の硬化剤として知られているものはすべて使用できる。例えば、前記したジシアンジアミド、多価フェノール類、酸無水物類、芳香族及び脂肪族アミン類等がある。また、上記一般式(1)で表されるISRも好ましく例示される。この樹脂組成物には、これら硬化剤の1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0050】
また、このエポキシ樹脂組成物中には、エポキシ樹脂成分として、一般式(10)で表されるISE以外に別種のエポキシ樹脂を配合してもよい。この場合のエポキシ樹脂としては、分子中にエポキシ基を2個以上有する通常のエポキシ樹脂はすべて使用できる。例を挙げれば、ビスフェノールA、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、4,4’−ビフェノール、2,2’−ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン等の2価のフェノール類、あるいは、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック等の3価以上のフェノール類、フェノール系アラルキル樹脂類、ナフトール系アラルキル樹脂類、又はテトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類から誘導されるグルシジルエーテル化物等がある。これらのエポキシ樹脂は、1種又は2種以上を混合して用いることができる。そして、本発明のISEを必須成分とする組成物の場合、一般式(1)で表されるISEの配合量はエポキシ樹脂全体中、5〜100%、好ましくは60〜100%の範囲であることがよい。
【0051】
本発明のエポキシ樹脂組成物中には、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテル、ポリウレタン、石油樹脂、インデン樹脂、インデン・クマロン樹脂、フェノキシ樹脂等のオリゴマー又は高分子化合物を他の改質剤等として適宜配合してもよい。添加量は、通常、エポキシ樹脂100重量部に対して、2〜30重量部の範囲である。
【0052】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物には、無機充填剤、顔料、難然剤、揺変性付与剤、カップリング剤、流動性向上剤等の添加剤を配合できる。無機充填剤としては、例えば、球状あるいは、破砕状の溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ粉末、アルミナ粉末、ガラス粉末、又はマイカ、タルク、炭酸カルシウム、アルミナ、水和アルミナ等が挙げられ、半導体封止材に用いる場合の好ましい配合量は70重量%以上であり、更に好ましくは80重量%以上である。
【0053】
顔料としては、有機系又は、無機系の体質顔料、鱗片状顔料、等がある。揺変性付与剤としては、シリコン系、ヒマシ油系、脂肪族アマイドワックス、酸化ポリエチレンワックス、有機ベントナイト系等を挙げることができる。
【0054】
更に、本発明のエポキシ樹脂組成物には必要に応じて硬化促進剤を用いることができる。例を挙げれば、アミン類、イミダゾール類、有機ホスフィン類、ルイス酸等があり、具体的には、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの三級アミン、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−へプタデシルイミダゾールなどのイミダゾール類、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフイン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィンなどの有機ホスフィン類、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・エチルトリフェニルボレート、テトラブチルホスホニウム・テトラブチルボレートなどのテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレートなどのテトラフェニルボロン塩などがある。添加量としては、通常、エポキシ樹脂100重量部に対して、0.2から5重量部の範囲である。
【0055】
更に必要に応じて、本発明の樹脂組成物には、カルナバワックス、OPワックス等の離型剤、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のカップリング剤、カーボンブラック等の着色剤、三酸化アンチモン等の難燃剤、シリコンオイル等の低応力化剤、ステアリン酸カルシウム等の滑剤等を使用できる。
【0056】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、有機溶剤の溶解させたワニス状態とした後に、ガラスクロス、アラミド不織布、液晶ポリマー等のポリエステル不織布、等の繊維状物に含浸させた後に溶剤除去を行い、プリプレグとすることができる。また、場合により銅箔、ステンレス箔、ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム等のシート状物上に塗布することにより積層物とすることができる。
【0057】
本発明のエポキシ樹脂組成物を加熱硬化させれば、エポキシ樹脂硬化物とすることができ、この硬化物は低吸湿性、高耐熱性、密着性、難燃性等の点で優れたものとなる。この硬化物は、エポキシ樹脂組成物を注型、圧縮成形、トランスファー成形等の方法により、成形加工して得ることができる。この際の温度は通常、120〜220℃の範囲である。
【発明の効果】
【0058】
本発明のISRは、エポキシ樹脂中間体、エポキシ樹脂の硬化剤、及び改質剤として有用であり、エポキシ樹脂組成物に応用した場合、優れた高耐熱性、耐湿性を有するとともに、難燃性及び異種材料との高密着性に優れた硬化物を与え、電気・電子部品類の封止、回路基板材料等の用途に好適に使用することが可能である。本発明のISR又はISEを配合したエポキシ樹脂組成物を加熱硬化させれば、エポキシ樹脂硬化物とすることができ、この硬化物は難燃性、低吸湿性、高耐熱性、密着性等の点で優れたものを与え、電気・電子部品類の封止、回路基板材料等の用途に好適に使用することが可能である。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。
ここで、粘度はB型粘度計を用い、軟化点はJIS K−6911に従い環球法で測定した。また、GPC測定条件は、装置;HLC−82A(東ソー(株)製)、カラム;TSK−GEL2000×3本及びTSK−GEL4000×1本(いずれも東ソー(株)製)、溶媒;テトラヒドロフラン、流量;1 ml/min、温度;38℃、検出器;RIであり、検量線にはポリスチレン標準液を使用した。
【0060】
実施例1
撹拌機、冷却管、窒素導入管のついた500mL、3口セパラブルフラスコに、インドール25.0g、1−ナフトール276.9g、p-キシリレンジクロライド112.2g、モノクロロベンゼン276gを仕込み、窒素を導入しながら80℃に加熱し溶解させた。その後、減圧下にて撹拌しながら150℃に昇温し3時間反応させた。この間、反応により生成する塩酸およびモノクロロベンゼンは系外に除いた。その後、減圧下230℃に昇温し、塩酸及び未反応1−ナフトール、インドールを除去し、ISR−A203.6gを得た。得られた樹脂の軟化点は100℃、150℃における溶融粘度は0.65Pa・sであった。GPC測定により求めた残存モノマー量は0.5wt%であった。
【0061】
実施例2
インドール40.0g、フェノール289.2g、4,4’−ビスクロロメチルビフェニル257.4g、モノクロロベンゼン147gを仕込み、窒素を導入しながら80℃に加熱し溶解させた。その後、減圧下にて撹拌しながら150℃まで昇温し1時間反応させた。この間、反応により生成する塩酸およびモノクロロベンゼンは系外に除いた。その後、減圧下180℃にて塩酸及び未反応フェノール、インドールを除去し、ISR−B348.6gを得た。得られた樹脂の軟化点は94℃、150℃における溶融粘度は0.93Pa・sであった。GPC測定により求めた残存モノマー量は0.5wt%であった。
【0062】
実施例3
インドール11.5g、フェノール83.2g、ビスクロロメチルナフタレン49.3g、モノクロロベンゼン36gを用いて実施例2と同様に反応を行い、ISR−C70.1gを得た。得られた樹脂の軟化点は119℃、150℃における溶融粘度は12.3Pa・sであった。GPC測定により求めた残存モノマー量は0.4wt%であった。
【0063】
実施例4
撹拌機、冷却管、窒素導入管のついた500mL、3口セパラブルフラスコに、インドール72.5g、フェノール233.1g、92%パラホルムアルデヒド27.9g、を仕込み、窒素を導入しながら90℃に加熱し溶解させた。その後、撹拌しながら130℃に昇温し3時間反応させた。この間、反応により生成する水は系外に除いた。その後、減圧下、180℃に昇温し、縮合水及び未反応フェノール、インドールを除去し、ISR−D150gを得た。得られた樹脂の軟化点は83℃、150℃における溶融粘度は0.12Pa・sであった。GPC測定により求めた残存モノマー量は0.5wt%であった。
【0064】
実施例5
インドール106.3g、フェノール199.2g、92%パラホルムアルデヒド27.2gを用いて実施例1と同様に反応を行い、ISR−E130gを得た。得られた樹脂の軟化点は135℃、180℃における溶融粘度は0.58Pa・sであった。GPC測定により求めた残存モノマー量は0.4wt%であった。
【0065】
ISR−Aの1H−NMRスペクトルを図1、赤外吸収スペクトルを図2、GPCチャートを図3に示す。ISR−Bの1H−NMRスペクトルを図4、赤外吸収スペクトルを図5、GPCチャートを図6に示す。ISR−Cの1H−NMRスペクトルを図7、赤外吸収スペクトルを図8、GPCチャートを図9に示す。ISR−Dの1H−NMRスペクトルを図10、赤外吸収スペクトルを図11、GPCチャートを図12に示す。
【0066】
実施例6
150℃に溶融させた100gのフェノールノボラック(軟化点82℃、OH当量103)中に、実施例2で得たISR−B100gを加え、均一に溶融させてフェノール樹脂組成物200gを得た(樹脂組成物A)。得られたフェノール樹脂組成物の軟化点は90℃、150℃での溶融粘度は0.60Pa・sであった。
【0067】
実施例7
150℃に溶融させた100gのフェノールノボラック(軟化点82℃、OH当量103)中に、実施例4で得たISR−D100gを加え、均一に溶融させてフェノール樹脂組成物200gを得た(樹脂組成物B)。得られたフェノール樹脂組成物の軟化点は82℃、150℃での溶融粘度は0.18Pa・sであった。
【0068】
実施例8〜18及び比較例1〜4
エポキシ樹脂成分としてo-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(OCNE;エポキシ当量200、軟化点65℃)、硬化剤として実施例1、2、3、4、5で得たISR−A、ISR−B、ISR−C、ISR−D、ISR−E、実施例6、7で得たフェノール樹脂組成物(樹脂組成物A、B)、フェノールノボラック(硬化剤A:群栄化学製、PSM−4261;OH当量103、軟化点 82℃)、フェノールアラルキル樹脂(硬化剤B;明和化成製、MEH−7800SS、OH当量175、軟化点67℃)を用い、充填剤としてシリカ(平均粒径18μm)、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィンを表1及び表3に示す配合で混練しエポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物を用いて175℃にて成形し、175℃にて12時間ポストキュアを行い、硬化物試験片を得た後、各種物性測定に供した。
【0069】
ガラス転移点(Tg)及び線膨張係数(CTE)の測定は、熱機械測定装置を用いて10℃/分の昇温速度で求めた。また吸水率は、直径50mm、厚さ3mmの円形の試験片を用いて、85℃、85%RHの条件で100時間吸湿させた吸水率は、本エポキシ樹脂組成物を用いて、直径50mm、厚さ3mmの円盤を成形し、ポストキュア後133℃、3atm、96時間吸湿させた後の重量変化率とした。接着強度は、銅板2枚の間に25mm×12.5mm×0.5mmの成形物を圧縮成形機により175℃で成形し、180℃にて12時間ポストキュアを行った後、引張剪断強度を求めることにより評価した。難燃性は、厚さ1/16インチの試験片を成形し、UL94V-0規格によって評価し、5本の試験片での合計の燃焼時間で表した。結果をまとめて表2及び表4に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
実施例19
実施例2で得たISR−B150gをエピクロルヒドリン403g、ジエチレングリコールジメチルエーテル60gに溶解した。その後、撹拌しながら減圧下65℃にて48.9%水酸化ナトリウム44.3gを4時間かけて添加し、添加終了後更に70℃にて1時間反応を継続した。反応終了後、エピクロルヒドリンを減圧留去した後、MIBKに溶解させた。濾過により生成した塩を除き、更に水洗した後MIBKを減圧留去し、エポキシ樹脂(ISE−B)146gを得た。得られたエポキシ樹脂の軟化点は83℃、溶融粘度は0.97Pa・s、エポキシ当量は330g/eq.であった。ISE−BについてNMR、IR及びGPC測定した結果を図13、14及び15に示す。
【0075】
実施例20
実施例4で得たISR−D100gをエピクロルヒドリン178g、ジエチレングリコールジメチルエーテル36gに溶解した。その後、撹拌しながら50℃にて96%水酸化カリウム33.7gを3時間かけて添加し、添加終了後更に1時間反応を継続した。反応終了後、濾過により生成した塩を除き、更に水洗したのちエピクロルヒドリンを留去し、エポキシ樹脂(ISE−D)110gを得た。得られたエポキシ樹脂の軟化点は78℃、溶融粘度は0.28Pa・s、エポキシ当量は278g/eq.であった。ISE−DについてNMR、IR及びGPC測定した図16、17及び18に示す
【0076】
実施例21〜28及び比較例5〜10
エポキシ樹脂成分として、実施例19で合成したISE−B、実施例20で合成したISE−D、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(OCNE;エポキシ当量200、軟化点65℃)、ビフェニル型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン製、YX4000HK;エポキシ当量 195、融点 105℃)を用い、硬化剤成分として、実施例1で合成したISR−A、実施例4で合成したISR−D、フェノールノボラック(硬化剤A:群栄化学製、PSM−4261;OH当量103、軟化点 82℃)、1−ナフトールアラルキル型樹脂(硬化剤B:新日鐵化学製、SN−475;OH当量210、軟化点 77℃)を用いた。更に、充填剤として球状シリカ(平均粒径 18μm)、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィンを用い、表5及び7に示す配合でエポキシ樹脂組成物を得た。表中の数値は配合における重量部を示す。
【0077】
このエポキシ樹脂組成物を用いて175℃で成形し、更に175℃にて12時間ポストキュアを行い、硬化物試験片を得た後、各種物性測定に供した。結果を表6及び8に示す。
【0078】
【表5】
【0079】
【表6】
【0080】
【表7】
【0081】
【表8】
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】ISR−Aの1H−NMRスペクトル
【図2】ISR−Aの赤外吸収スペクトル
【図3】ISR−AのGPCチャート
【図4】ISR−Bの1H−NMRスペクトル
【図5】ISR−Bの赤外吸収スペクトル
【図6】ISR−BのGPCチャート
【図7】ISR−Cの1H−NMRスペクトル
【図8】ISR−Cの赤外吸収スペクトル
【図9】ISR−CのGPCチャート
【図10】ISR−Dの1H−NMRスペクトル
【図11】ISR−Dの赤外吸収スペクトル
【図12】ISR−DのGPCチャート
【図13】ISE−Bの1H−NMRスペクトル
【図14】ISE−Bの赤外吸収スペクトル
【図15】ISE−BのGPCチャート
【図16】ISE−Dの1H−NMRスペクトル
【図17】ISE−Dの赤外吸収スペクトル
【図18】ISE−DのGPCチャート
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
H-L-(X-L)n-H (1)
ここで、
Lは下記式(2)及び式(3)
【化1】
で表される基のいずれかであり、R1は水素原子、水酸基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、Aは炭素数1〜8のアルキル基若しくは水酸基が置換してもよいベンゼン環又はナフタレン環からなる基を示し、式(2)と式(3)で表される基の存在割合(モル比)が1:9〜9:1の範囲であり、
Xは下記(a)又は式(b)
【化2】
で表される架橋基であり、R2、R3、R4及びR5は独立に、水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を示し、Bはベンゼン環、ビフェニル環又はナフタレン環からなる基を示し、
nは1〜10の数を示す;
で表されるインドール骨格含有樹脂。
【請求項2】
軟化点が40〜200℃である請求項1に記載のインドール骨格含有樹脂。
【請求項3】
下記式(4)で表されるインドール類と下記式(5)で表されるフェノール類のモル比が1:9〜9:1の範囲であり、両者の合計100モルに対し、下記式(6)、(7)、(8)又は(9)で表される架橋剤10〜90モルとを反応させることを特徴とするインドール骨格含有樹脂の製造方法。
【化3】
【化4】
ここで、
R1は水素原子、水酸基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、
Aは炭素数1〜6のアルキル基若しくは水酸基が置換してもよいベンゼン環又はナフタレン環からなる基を示し、
R2、R3、R4及びR5は独立に、水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、
Bはベンゼン環、ビフェニル環又はナフタレン環からなる基を示し、
Y及びZは独立にOH、アルコキシ又はハロゲンを示す。
【請求項4】
多価フェノール性化合物類100重量部に対して、請求項1又は2に記載のインドール骨格含有樹脂を2〜200重量部配合してなるフェノール樹脂組成物。
【請求項5】
エポキシ樹脂及び硬化剤よりなるエポキシ樹脂組成物において、硬化剤の一部又は全部として、請求項1又は2に記載のインドール骨格含有樹脂を、エポキシ樹脂100重量部に対して2から200重量部配合してなることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
請求項5に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなるエポキシ樹脂硬化物。
【請求項7】
下記一般式(10)
H-L1-(X-L1)n-H (10)
ここで、
L1は下記式(11)又は式(12)
【化5】
で表される基のいずれかであり、R6は水素原子、グリシジルオキシ基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、Aは炭素数1〜8のアルキル基若しくはグリシジルオキシ基が置換してもよいベンゼン環又はナフタレン環からなる基を示し、式(11)と式(12)で表される基の存在割合(モル比)が1:9〜9:1の範囲であり、
Xは下記式(a)又は式(b)
【化6】
で表される架橋基であり、R2、R3、R4及びR5は独立に、水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を示し、Bはベンゼン環、ビフェニル環又はナフタレン環からなる基を示し、Yは水素原子、炭素数1〜8の炭化水素基又はグリシジル基を示し、Gはグリシジル基を示し、
nは1〜10の数を示す;
で表されるインドール骨格含有エポキシ樹脂。
【請求項8】
エポキシ樹脂及び硬化剤よりなるエポキシ樹脂組成物において、請求項7に記載のエポキシ樹脂を必須成分として配合してなるエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
請求項8に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項10】
請求項7に記載のエポキシ樹脂を製造する方法において、請求項1に記載のインドール骨格含有樹脂と、エピクロルヒドリンを反応させることを特徴とするエポキシ樹脂の製造方法。
【請求項1】
下記一般式(1)
H-L-(X-L)n-H (1)
ここで、
Lは下記式(2)及び式(3)
【化1】
で表される基のいずれかであり、R1は水素原子、水酸基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、Aは炭素数1〜8のアルキル基若しくは水酸基が置換してもよいベンゼン環又はナフタレン環からなる基を示し、式(2)と式(3)で表される基の存在割合(モル比)が1:9〜9:1の範囲であり、
Xは下記(a)又は式(b)
【化2】
で表される架橋基であり、R2、R3、R4及びR5は独立に、水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を示し、Bはベンゼン環、ビフェニル環又はナフタレン環からなる基を示し、
nは1〜10の数を示す;
で表されるインドール骨格含有樹脂。
【請求項2】
軟化点が40〜200℃である請求項1に記載のインドール骨格含有樹脂。
【請求項3】
下記式(4)で表されるインドール類と下記式(5)で表されるフェノール類のモル比が1:9〜9:1の範囲であり、両者の合計100モルに対し、下記式(6)、(7)、(8)又は(9)で表される架橋剤10〜90モルとを反応させることを特徴とするインドール骨格含有樹脂の製造方法。
【化3】
【化4】
ここで、
R1は水素原子、水酸基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、
Aは炭素数1〜6のアルキル基若しくは水酸基が置換してもよいベンゼン環又はナフタレン環からなる基を示し、
R2、R3、R4及びR5は独立に、水素原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、
Bはベンゼン環、ビフェニル環又はナフタレン環からなる基を示し、
Y及びZは独立にOH、アルコキシ又はハロゲンを示す。
【請求項4】
多価フェノール性化合物類100重量部に対して、請求項1又は2に記載のインドール骨格含有樹脂を2〜200重量部配合してなるフェノール樹脂組成物。
【請求項5】
エポキシ樹脂及び硬化剤よりなるエポキシ樹脂組成物において、硬化剤の一部又は全部として、請求項1又は2に記載のインドール骨格含有樹脂を、エポキシ樹脂100重量部に対して2から200重量部配合してなることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
請求項5に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなるエポキシ樹脂硬化物。
【請求項7】
下記一般式(10)
H-L1-(X-L1)n-H (10)
ここで、
L1は下記式(11)又は式(12)
【化5】
で表される基のいずれかであり、R6は水素原子、グリシジルオキシ基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子又は炭素数1〜8の炭化水素基を示し、Aは炭素数1〜8のアルキル基若しくはグリシジルオキシ基が置換してもよいベンゼン環又はナフタレン環からなる基を示し、式(11)と式(12)で表される基の存在割合(モル比)が1:9〜9:1の範囲であり、
Xは下記式(a)又は式(b)
【化6】
で表される架橋基であり、R2、R3、R4及びR5は独立に、水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を示し、Bはベンゼン環、ビフェニル環又はナフタレン環からなる基を示し、Yは水素原子、炭素数1〜8の炭化水素基又はグリシジル基を示し、Gはグリシジル基を示し、
nは1〜10の数を示す;
で表されるインドール骨格含有エポキシ樹脂。
【請求項8】
エポキシ樹脂及び硬化剤よりなるエポキシ樹脂組成物において、請求項7に記載のエポキシ樹脂を必須成分として配合してなるエポキシ樹脂組成物。
【請求項9】
請求項8に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項10】
請求項7に記載のエポキシ樹脂を製造する方法において、請求項1に記載のインドール骨格含有樹脂と、エピクロルヒドリンを反応させることを特徴とするエポキシ樹脂の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2007−297538(P2007−297538A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−127738(P2006−127738)
【出願日】平成18年5月1日(2006.5.1)
【出願人】(000006644)新日鐵化学株式会社 (747)
【出願人】(000221557)東都化成株式会社 (53)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月1日(2006.5.1)
【出願人】(000006644)新日鐵化学株式会社 (747)
【出願人】(000221557)東都化成株式会社 (53)
【Fターム(参考)】
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