説明

インナーウェザストリップ

【課題】ドアトリムとドアガラスとの間に隙間が生じることを抑制可能なインナーウェザストリップを提供する。
【解決手段】ドアトリム11とドアガラス27との間に配されるインナーウェザストリップ30であって、ドアトリム11の上縁部25に沿って取り付けられる取付基部31と、取付基部31から車室外側に向かって上方に傾斜しつつ延設されるとともにドアガラス27に当接するガラス当接部32と、ガラス当接部32の先端から車室内側に向かって延設されるとともにドアトリム11の上縁部25に当接し、当該上縁部25とドアガラス27との間をシールするシール部33と、を備え、ガラス当接部32とシール部33とは、それぞれ断面視中空状の三角形の1辺をなすように形成されており、シール部33は、ガラス当接部32より薄肉とされ、ドアガラス27の昇降によりガラス当接部32が変位するのに伴って、撓み変形することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インナーウェザストリップに関する。
【背景技術】
【0002】
車両ドアの車室内側に取り付けられるドアトリムとドアガラスとの間に配されるインナーウェザストリップとしては、ガーニッシュ(ドアトリム)に取り付けられる取付基部からドアガラスに向けて上方に伸び出すリップ状のシール部を備えているものが知られている(例えば、下記特許文献1)。このようなインナーウェザストリップの構成では、シール部の上面を一辺として、断面V字状の溝部が形成され、ドアトリムとドアガラスとの間に隙間が生じることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−86669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようにインナーウェザストリップのシール部の上面を一辺として、断面V字状の溝部が形成され、ドアトリムとドアガラスとの間に隙間が生じる場合には、当該溝部にゴミやほこりがたまり易いとともに、ゴミやほこりがたまった場合に取り除くことが難しく、問題となる。
【0005】
さらに、インナーウェザストリップは、一般に、車両の座席に着座する者から視認され易い位置に配されており、ドアトリムとドアガラスとの間に隙間が生じると見栄えがよくない。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ドアトリムとドアガラスとの間に隙間が生じることを防止ないし抑制可能なインナーウェザストリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のインナーウェザストリップは、車室内側に取り付けられるドアトリムと当該ドアトリムより車室外側に昇降自在に取り付けられるドアガラスとを備える車両ドアにおける、当該ドアトリムと当該ドアガラスとの間に配されるインナーウェザストリップであって、前記ドアトリムの上縁部に沿って取り付けられる取付基部と、前記取付基部から車室外側に向かって上方に傾斜しつつ延設されるとともに前記ドアガラスに当接するガラス当接部と、前記ガラス当接部の先端から車室内側に向かって延設されるとともに前記ドアトリムの前記上縁部に当接し、当該上縁部と前記ドアガラスとの間をシールするシール部と、を備え、前記ガラス当接部と前記シール部とは、それぞれ断面視中空状の三角形の1辺をなすように形成されており、前記シール部は、前記ガラス当接部より薄肉とされ、前記ドアガラスの昇降により前記ガラス当接部が変位するのに伴って、撓み変形することに特徴を有する。
【0008】
本発明においては、ドアトリムの上縁部とドアガラスとの間をシールするシール部が辺状に設けられているから、ドアトリムとドアガラスとの間に上方に向かって開口する溝部が生じることがなく、当該溝部にほこりやゴミがたまることを防止でき、また、見栄えもよい。さらに、シール部はドアガラスの昇降に伴って、撓み変形するから、当該撓み変形により、ガラス当接部とドアガラスとの当接状態と、シール部とドアトリムの上縁部との当接状態を維持することができる。このため、ドアガラスとドアトリムとの間に隙間が生じることを抑制でき、インナーウェザストリップの水密性及び気密性を高めるとともに、当該隙間にほこりやゴミがたまることを抑制できる。
【0009】
上記構成において、前記取付基部は、前記断面三角形の中空状の1辺をなすように形成されており、前記ガラス当接部は、前記取付基部より薄肉とされているものとすることができる。
【0010】
このような構成とすれば、取付基部は取り付けに必要な剛性を有する厚さにするとともに、ガラス当接部は取付基部より薄肉にし、ドアガラスの昇降に伴って変位し易い厚さにすることができる。
【0011】
上記構成において、前記取付基部は、前記ドアトリムの車室外側の面に取り付けられているものとすることができる。
【0012】
このような構成とすれば、一般に、黒色のゴム製とされるインナーウェザストリップは、車室内から視た場合、シール部の上面がドアガラスとドアトリムとの間に視認されるのみとなる。このため、ドアトリムの車室内側の意匠面を損なうことなくインナーウェザストリップを取り付けることができ、車室内の見栄えをよくすることができる。
【0013】
上記構成において、前記シール部は、前記ドアガラスの上端部が前記ドアトリムの前記上縁部の位置より下に位置するときには当該ドアトリムの上面と面一となるとともに、前記ドアガラスの前記上端部が前記ドアトリムの前記上縁部の位置と同じまたは前記上縁部の位置より上に位置するときには当該ドアトリムの上面より膨出するものとすることができる。
【0014】
このような構成とすれば、窓を全開にした状態においても、ドアトリムの上縁部とシール部との当接が維持されることとなり、ドアトリムとインナーウェザストリップとの間に隙間が生じることを抑制できる。さらに、窓を一部または全部閉めた状態においては、シール部が膨出することにより、シール部が弾性復帰しようとする弾性力が生じることとなる。このため、インナーウェザストリップとドアトリムの接触圧及びインナーウェザストリップとドアガラスの接触圧が高くなり、より一層ドアガラスとドアトリムとの間に隙間が生じることを抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ドアトリムとドアガラスとの間に隙間が生じることを防止ないし抑制可能なインナーウェザストリップを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態1に係るインナーウェザストリップが取り付けられたドアトリムを示す斜視図。
【図2】図1のドアトリムが適用された車両ドアの部分拡大図であって、窓が開いた状態におけるインナーウェザストリップ近傍を示す断面図(図1のA−A線断面部分に対応)。
【図3】図1のドアトリムが適用された車両ドアの部分拡大図であって、窓が閉じた状態におけるインナーウェザストリップ近傍を示す断面図(図1のA−A線断面部分に対応)。
【図4】本発明の実施形態1の変形例1に係るドアトリムが適用された車両ドアの部分拡大図であって、窓が開いた状態におけるインナーウェザストリップ近傍を示す断面図。
【図5】本発明の実施形態2に係るドアトリムが適用された車両ドアの部分拡大図であって、窓が開いた状態におけるインナーウェザストリップ近傍を示す断面図。
【図6】図5の場合であって、窓が閉じた状態におけるインナーウェザストリップ近傍を示す断面図。
【図7】本発明の実施形態3に係るドアトリムが適用された車両ドアの部分拡大図であって、窓が開いた状態におけるインナーウェザストリップ近傍を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図3によって説明する。図1は、インナーウェザストリップ30が取り付けられたドアトリム11を示す斜視図である。図2は、図1に示したインナーウェザストリップ30近傍の断面図であり、ドアガラス27の上端部27Aの上下方向における位置がドアトリム11の上縁部25の位置より下方とされ、窓が開いた状態を図示している。図3は、同インナーウェザストリップ30近傍の断面図であり、ドアガラス27の上端部27Aの上下方向における位置がドアトリム11の上縁部25の位置より上方とされ、窓が一部または全部閉まった状態を図示している。
【0018】
車両ドア10は、車両の座席のサイドドアとして使用されるもので、車体パネルを構成する金属製のドアインナパネル(不図示)の車室内側に取り付けられるドアトリム11と、ウィンドウレギュレータ(不図示)によって上下方向に昇降可能なドアガラス27と、ドアトリム11とドアガラス27との間をシールするインナーウェザストリップ30とを備えている。
【0019】
ドアトリム11は、ドアインナパネル(不図示)の車室内側に対して、例えばクリップ(不図示)などを介して取り付けられている。ドアトリム11は、図1に示すように、合成樹脂材料、あるいは合成樹脂材料と天然繊維(ケナフなど)を混合した材料等を板状にしたトリムボード13からなり、表側(車室内側)に張り出す形でアームレスト14が形成されており、インサイドドアハンドル15、スピーカグリル16、プルハンドル17などが設けられている。
【0020】
ドアトリム11の上部は、図2に示すように、断面視湾曲状をなし車両ドア10の車室内側面(意匠面)を構成する本体部23と、本体部23の上端から下方に折れ曲がるように延出する延出部24とで構成されている。本体部23の上端部は略水平に配されるとともに延出部24の上端部は略垂直に配されており、本体部23の上端部と延出部24の上端部とが直交するように角をなして、ドアトリム11の上縁部25が形成されている。延出部24は、図2及び図3に示すように、車両ドア10のうちドアガラス27に対向する位置に配されている。延出部24には、後述するインナーウェザストリップ30を取り付けるための取付孔24Aが設けられており、ドアガラス27に対向する面に、インナーウェザストリップ30が取り付けられている。
【0021】
インナーウェザストリップ30は、図1及び図2に示すように、長尺状をなす、黒色の合成ゴム製あるいは黒色の熱可塑性エラストマー製等とされており、取付基部31と、ガラス当接部32と、シール部33と、補助ガラス当接部34とが一体的に形成されている。インナーウェザストリップ30の上部は、取付基部31の上部と、ガラス当接部32と、シール部33とが、それぞれ断面視中空状の三角形の1辺をなすように形成されている。また、インナーウェザストリップ30の下部は、取付基部31の下部に取付突起31Aが設けられるとともに、取付基部31の下部から車室外側に向かって上方に傾斜しつつ延設される補助ガラス当接部34が設けられている。
【0022】
取付基部31は、延出部24に沿って設けられた細長い平板状をなし、上端をドアトリム11の上縁部25に重ねて、ドアトリム11の延出部24に取り付けられている。取付基部31には、車室内側に向けて突出する複数の(本実施形態では5個)の取付突起31Aが設けられており、当該取付突起31Aを延出部24に設けられた取付孔24Aに圧入することにより取り付けられている。
【0023】
ガラス当接部32は、取付基部31より薄肉の細長い平板状をなし、取付基部31の上下方向における中央の付近から車室外側に向かって上方に傾斜しつつ延設されている。ガラス当接部32の先端は、上下方向において、取付基部31の上端と同じ位置、すなわち、ドアトリム11の上縁部25の位置と同じ位置とされている。また、ガラス当接部32は、先端に向かう程、水平面に対する傾斜角が大きくなるように、すなわち、略垂直に配されるドアガラス27の内面に沿うように、緩やかな弧をなして延設されている。このため、ガラス当接部32の先端部において、ドアガラス27との当接部分の面積が十分に確保されるようになっている。ガラス当接部32のドアガラス27に対向する面には、図示しない植毛等が施してあり、ドアガラス27の昇降に伴ってドアガラス27の内面を払拭するものとされている。なお、補助ガラス当接部34は、ガラス当接部32と同様にドアガラス27の内面を払拭するとともに、ドアトリム11とドアガラス27との間をシールするものとされている。
【0024】
シール部33は、ガラス当接部32より薄肉の細長い平板状をなし、ガラス当接部32の先端から車室内側に向かって延設されるとともに取付基部31の上端に接続し、ドアトリム11の上縁部25に当接するものとされている。シール部33は、図2に示すように、窓を全開にし、ドアガラス27の上端部27Aがドアトリム11の上縁部25の位置より下に位置するときには、ドアトリム11の本体部23の上面と面一となるものとされている。さらに、シール部33は、窓を全開にした状態において、車室の内外方向における寸法が、図3に示すように、窓を閉めた状態におけるドアトリム11の上縁部25とドアガラス27との間の距離より長い寸法設計とされている。また、シール部33は、図2に示すように、車室内外方向に沿って切断した断面視にて、中央部が上方に膨らむように、緩やかな弧をなして設けられている。
【0025】
以上のような構成により、インナーウェザストリップ30は、約6mm程度とされるドアトリム11とドアガラス27との間を、その上方においては、シール部33によってシールするとともに、その下方においては、補助ガラス当接部34によってシールするものとされている。これら2重のシール構造により、車両ドア10の内部に水等が進入することを抑制するとともに、車室内の気密性を高めるものとされている。
【0026】
次に、窓の開閉に伴って、インナーウェザストリップ30に応力が掛かる場合について、その変形態様を説明する。
まず、図2に示すように、窓を全開にした状態においては、ドアガラス27の上端部27Aはドアトリム11の上縁部25の下方に位置するから、ガラス当接部32の先端部がドアガラス27の上端部27Aの上方に重なるように配されることとなる。このため、インナーウェザストリップ30に掛かる応力はなく、インナーウェザストリップ30は上述したような形状をなしている。
【0027】
続いて、図3に示すように、窓を閉めた状態においては、ガラス当接部32は、ドアガラス27によって車室内側に変形させられ、その先端部が車室内側に移動することとなる。ここで、シール部33は、一端がガラス当接部32の先端に一体的に形成されるとともに、他端がドアトリム11の上縁部25に当接しているから、ガラス当接部32の先端部が車室側の位置に移動することにより、車室内側から車室外側に向かう断面視にて、中央部が上方に膨出するように撓み変形する。
【0028】
図3に示すように、シール部33が上方に膨出するように撓み変形した状態においては、シール部33の弾発力により、取付基部31の上端とドアトリム11の上縁部25との接触圧が高くなるとともに、ガラス当接部32とドアガラス27との接触圧が高くなる。このため、ドアトリム11とインナーウェザストリップ30の間、及びインナーウェザストリップ30とドアガラス27の間に隙間が生じ難くなる。
【0029】
続いて、図2に示すように、再度、窓を全開にした状態においては、インナーウェザストリップ30に掛かる応力がなくなり、ガラス当接部32及びシール部33は弾性復帰し、弾性変形する前の形状となる。
【0030】
次に、本実施形態1のインナーウェザストリップ30における効果を説明する。本実施形態1においては、ドアトリム11の上縁部25とドアガラス27との間をシールするシール部33が辺状に設けられているから、ドアトリム11とドアガラス27との間に上方に向かって開口する溝部が生じることがなく、当該溝部にほこりやゴミがたまることを防止できる。さらに、ドアトリム11の上縁部25とドアガラス27との間をシールするシール部33が辺状に設けられているから、ドアトリム11とドアガラス27の間に隙間が生じることを防止ないし抑制可能となり、見栄えがよい。
【0031】
さらに、シール部33はドアガラス27の昇降に伴って、撓み変形するから、ガラス当接部32とドアガラス27との当接状態と、シール部33とドアトリム11の上縁部25との当接状態を維持することができる。このため、ドアガラス27とドアトリム11との間に隙間が生じることを抑制でき、インナーウェザストリップ30の水密性及び気密性を高めるとともに、当該隙間にほこりやゴミがたまることを抑制できる。
【0032】
また、本実施形態1においては、取付基部31は取り付けに必要な剛性を有する厚さにするとともに、ガラス当接部32は取付基部31より薄肉にし、ドアガラス27の昇降に伴って変位し易い厚さにすることができる。
【0033】
また、本実施形態1においては、黒色とされるインナーウェザストリップ30は、車室内から視た場合、シール部33の上面がドアガラス27とドアトリム11との間に視認されるのみとなる。このため、ドアトリム11の車室内側の意匠面を損なうことなくインナーウェザストリップ30を取り付けることができ、車室内の見栄えをよくすることができる。具体的には、ドアトリム11とドアガラス27との間に上方に向かって開口する溝部を生じさせない構成として、例えば、インナーウェザストリップ30をドアトリム11の本体部23の上面に取り付け、ドアトリム11の上縁部25とともに、ドアトリム11とドアガラス27との間を覆う構成が考えられる。しかしながら、ドアトリム11の本体部23の上面は車室内側の意匠面を構成するため、当該意匠面を黒色のインナーウェザストリップ30で覆うと見栄えが良くない。一方、本実施形態1では、インナーウェザストリップ30はドアトリム11の本体部23の上面を覆わず、シール部33の上面がドアガラス27とドアトリム11との間に視認されるのみであり、見栄えがよい。
【0034】
また、本実施形態1においては、窓を全開にした状態においても、ドアトリム11の上縁部25とシール部33との当接が維持されることとなり、ドアトリム11とインナーウェザストリップ30との間に隙間が生じることを抑制できる。さらに、窓を一部または全部閉めた状態においては、シール部33が膨出することにより、シール部33が弾性復帰しようとする弾発力が生じることとなる。このため、ドアトリム11とインナーウェザストリップ30の接触圧及びインナーウェザストリップ30とドアガラス27の接触圧が高くなり、より一層ドアガラス27とドアトリム11との間に隙間が生じることを抑制できる。
【0035】
<実施形態1の変形例1>
実施形態1の変形例1について図4を用いて説明する。ここでは、実施形態1の取付基部31の態様を変更した、ガラス当接部32と略同じ厚さをなす取付基部31−1を備えたインナーウェザストリップ30−1を示す。
【0036】
本変形例によれば、取付基部31−1を薄くすることができ、インナーウェザストリップ30の薄型化を図ることができる。また、インナーウェザストリップ30−1の成形に用いられる材料を低減することができる。
【0037】
<実施形態2>
本発明の実施形態2を図5及び図6によって説明する。なお、前記実施形態1との相違は、シール部133と取付基部131の上端が接続しないところにあり、その他は前記実施形態1と同様である。前記実施形態1と同一部分には、同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0038】
インナーウェザストリップ130の上部は、ガラス当接部132と、シール部133と、ガラス当接部132とシール部133とを接続する接続部135とが、それぞれ断面視中空状の三角形の1辺をなすように形成されている。また、インナーウェザストリップ130の下部は、取付基部131の下部に取付突起131Aが設けられるとともに、取付基部131の下部から車室外側に向かって上方に傾斜しつつ延設される補助ガラス当接部34が設けられている。
【0039】
取付基部131は、延出部24に沿って設けられた細長い平板状をなし、上端をドアトリム11の上縁部25の位置より下方にて当該上縁部25に沿わせるように、ドアトリム11の延出部24に取り付けられている。
【0040】
ガラス当接部132は、取付基部131より薄肉の細長い平板状をなし、取付基部131の上下方向における中央よりやや上側の位置から車室外側に向かって上方に傾斜しつつ延設されている。ガラス当接部32の先端は、上下方向において、ドアトリム11の上縁部25の位置と同じ位置とされている。
【0041】
シール部133は、ガラス当接部132より薄肉の細長い平板状をなし、ガラス当接部132の先端から車室内側に向かって延設され、ドアトリム11の上縁部25に当接するものとされている。シール部133のドアトリム11側の端部からは、ガラス当接部132に向かって接続部135が延設されている。
【0042】
次に、窓の開閉に伴って、インナーウェザストリップ130に応力が掛かる場合について、その変形態様を説明する。
まず、図5に示すように、窓を全開にした状態においては、ドアガラス27の上端部27Aはドアトリム11の上縁部25の下方に位置するから、ガラス当接部132の先端部がドアガラス27の上端部27Aの上方に重なるように配されることとなる。このため、インナーウェザストリップ130に掛かる応力はなく、インナーウェザストリップ130は上述したような形状をなしている。
【0043】
続いて、図6に示すように、窓を閉めた状態においては、ガラス当接部132はドアガラス27の接触によって弾性変形し、その先端部が車室内側に移動することとなる。ここで、シール部133は、一端がガラス当接部132の先端に一体的に形成されるとともに、他端がドアトリム11の上縁部25に当接しているから、ガラス当接部132の先端部が車室側の位置に移動することにより、車室内側から車室外側に向かう断面視にて、中央部が上方に膨出するように撓み変形する。また、ガラス当接部132の接続部135より基端部側(車室内側)の部分は、シール部133と接続部135とともに断面視三角形の一辺を構成しないものとされており、当該部分はシール部133の撓み変形を伴わずに車室内側方向へと変位する。
【0044】
図6に示すように、シール部133が上方に膨出するように撓み変形した状態においては、シール部133の弾発力により、シール部133の車室内側の端部とドアトリム11の上縁部25との接触圧が高くなるとともに、ガラス当接部132とドアガラス27との接触圧が高くなる。このため、ドアトリム11とインナーウェザストリップ130の間、及びインナーウェザストリップ130とドアガラス27の間に隙間が生じ難くなる。
【0045】
続いて、図5に示すように、再度、窓を全開にした状態においては、インナーウェザストリップ130に掛かる応力はなくなり、ガラス当接部132及びシール部133は弾性復帰し、弾性変形する前の形状となる。
【0046】
本実施形態2においては、シール部133が接続部135を介してガラス当接部132に接続するから、シール部133が取付基部131に接続する場合に比べて、ガラス当接部132を窓の開閉に伴い変位しやすいものとすることができる。詳しくは、ガラス当接部132がシール部133とともに断面視三角形の一辺を形成する構成においては、ガラス当接部132が変位するのに伴ってシール部133も撓み変形することとなり、シール部133を設けない場合に比べてガラス当接部132が窓の開閉に伴う変位をし難くなる。本実施形態2では、ガラス当接部132の接続部135より基端部側(車室内側)に、シール部133とともに断面視三角形の一辺を構成しない部分が設けられており、当該部分がシール部133の撓み変形を伴わずに変位するものとされている。このため、本実施形態2では、ガラス当接部が全長に亘ってシール部とともに断面視三角形の一辺を形成する構成に比べて、ガラス当接部132を窓の開閉に伴い変位しやすいものとすることができる。
【0047】
<実施形態3>
本発明の実施形態3を図7によって説明する。なお、前記実施形態1との相違は、インナーウェザストリップ230がドアインナパネル12に取り付けられるところにあり、その他は前記実施形態1と同様である。前記実施形態1と同一部分には、同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0048】
ドアトリム11は、ドアインナパネル12の車室内側に対して、例えばクリップ(図示せず)などを介して取り付けられている。
ドアトリム11の上部は、図2に示すように、断面視湾曲状をなし車両ドア10の車室内側面(意匠面)を構成する本体部23で構成されている。本体部23の上端部は略水平に配されるとともに、端部が略垂直の断面をなすように設けられており、ドアトリム11の上縁部25が形成されている。ドアインナパネル12の上端は、ドアトリム11の上縁部25の下方に位置し、当該上縁部25に沿って配されている。ドアインナパネル12の上端(フランジ部)には、インナーウェザストリップ230が取り付けられている。
【0049】
インナーウェザストリップ230は、図7に示すように、長尺状をなす、黒色の合成ゴム製あるいは黒色の熱可塑性エラストマー製等とされており、取付基部231と、ガラス当接部32と、シール部33と、補助ガラス当接部34とが一体的に形成されている。インナーウェザストリップ230の上部は、取付基部231の上部と、ガラス当接部32と、シール部33とが、それぞれ断面視中空状の三角形の1辺をなすように形成されている。また、インナーウェザストリップ230の下部は、取付基部231の下部に取付凹部231Aが設けられるとともに、取付基部231の下部から車室外側に向かって上方に傾斜しつつ延設される補助ガラス当接部34が設けられている。
【0050】
取付基部231は、細長い平板状をなし、上端をドアトリム11の上縁部25に重ねて、ドアインナパネル12の上端に取り付けられている。取付基部231には、下方に向けて開口する溝状の取付凹部231Aが設けられており、当該取付凹部231Aの内面にはドアインナパネル12を圧接係止する圧接係止片231Bが設けられている。取付凹部231Aは、ドアインナパネル12の上端を、圧接係止片231Bと取付凹部231Aの内面との間に圧入することにより、インナーウェザストリップ230をドアインナパネル12に取り付けるものとされている。
【0051】
本実施形態3においては、ドアインナパネル12にインナーウェザストリップ230を取り付ける構成の車両ドア10においても、ドアトリム11の上縁部25とドアガラス27との間をシールするシール部33が辺状に設けられているから、ドアトリム11とドアガラス27との間に上方に向かって開口する溝部が生じることがなく、当該溝部にほこりやゴミがたまることを防止できる。
【0052】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0053】
(1)上記実施形態においては、インナーウェザストリップ30は、黒色の合成ゴム製あるいは黒色の熱可塑性エラストマー製を例示したが、これに限られず、例えば、取付基部31に金属薄板等がインサート成形されていてもより。この場合には、実施形態1の変形例1に例示したように、取付基部31−1をガラス当接部32と略同じ厚さにした場合であっても、所望の剛性を確保することができる。
【0054】
(2)上記実施形態においては、インナーウェザストリップ30及びインナーウェザストリップ230の取り付け構成として、取付突起31A及び取付凹部231Aを例示したが、これに限られず、例えば、インサート成形された金属をドアトリム又はドアインナパネルに係止することにより、インナーウェザストリップを取り付けてもよい。
【0055】
(3)上記実施形態においては、補助ガラス当接部34を備えるインナーウェザストリップ30を例示したが、これに限られず、補助ガラス当接部34を備えないインナーウェザストリップも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0056】
(4)上記実施形態においては、シール部33は平板状のものを例示したが、シール部33はガラス当接部32より薄肉とされていればよく、例えば、シール部のうち、車室内側と車室外側の端部に比べて中央部が薄い構成とされていてもよい。
【符号の説明】
【0057】
10…車両ドア、11…ドアトリム、12…ドアインナパネル、13…トリムボード、23…本体部、24…延出部、25…上縁部、27…ドアガラス、27A…上端部、30,130,230…インナーウェザストリップ、31,131,231…取付基部、32,132…ガラス当接部、33,133…シール部、34…補助ガラス当接部、135…接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内側に取り付けられるドアトリムと当該ドアトリムより車室外側に昇降自在に取り付けられるドアガラスとを備える車両ドアにおける、当該ドアトリムと当該ドアガラスとの間に配されるインナーウェザストリップであって、
前記ドアトリムの上縁部に沿って取り付けられる取付基部と、
前記取付基部から車室外側に向かって上方に傾斜しつつ延設されるとともに前記ドアガラスに当接するガラス当接部と、
前記ガラス当接部の先端から車室内側に向かって延設されるとともに前記ドアトリムの前記上縁部に当接し、当該上縁部と前記ドアガラスとの間をシールするシール部と、を備え、
前記ガラス当接部と前記シール部とは、それぞれ断面視中空状の三角形の1辺をなすように形成されており、
前記シール部は、前記ガラス当接部より薄肉とされ、前記ドアガラスの昇降により前記ガラス当接部が変位するのに伴って、撓み変形することを特徴とするインナーウェザストリップ。
【請求項2】
前記取付基部は、前記断面三角形の中空状の1辺をなすように形成されており、
前記ガラス当接部は、前記取付基部より薄肉とされていることを特徴とする請求項1に記載のインナーウェザストリップ。
【請求項3】
前記シール部は、前記ドアガラスの上端部が前記ドアトリムの前記上縁部の位置より下に位置するときには当該ドアトリムの上面と面一となるとともに、前記ドアガラスの前記上端部が前記ドアトリムの前記上縁部の位置と同じまたは前記上縁部の位置より上に位置するときには当該ドアトリムの上面より膨出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインナーウェザストリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−224272(P2012−224272A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95071(P2011−95071)
【出願日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】