説明

インバータトランスおよびそれを用いた放電灯点灯装置

【課題】簡易で安価な構造でありながら二次側負荷の半開放状態を検出可能なインバータトランス、及び、そのインバータトランスを用いた放電灯点灯装置を提供する。
【解決手段】放電灯点灯装置20は、インバータトランスT1と、ブリッジ回路23と、制御回路22とを備え、インバータトランスT1の二次巻線部の両端に放電灯La21,La22を接続し、放電灯La21,La22の両端に逆位相の交流電圧を加えて点灯させるものである。インバータトランスT1は、二次側負荷の半開放状態により誘起される異常電圧を検出するために、一次巻線部用の入力端子および二次巻線部用の出力端子とは独立した検出端子17を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータトランスおよびそれを用いた放電灯点灯装置に関し、特に、インバータトランスに設けられる検出端子によって放電灯の半開放状態を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビジョン、パーソナルコンピュータなどの電子機器に用いられる液晶ディスプレイ装置は液晶が非発光のため、バックライト装置のような照明装置を必要とする。このバックライト装置の光源には放電灯が用いられており、そのような放電灯として冷陰極蛍光管が一般に用いられている。近年、液晶ディスプレイ装置の大型化に伴い、液晶テレビジョン装置等の大型の液晶ディスプレイ装置では、高輝度の表示を必要とするため、バックライト装置の光源には複数本の冷陰極蛍光管(CCFL)が用いられている。この複数本の冷陰極蛍光管を点灯させる放電灯点灯装置には、高電圧が必要であるため、インバータ回路のスイッチング部にて高周波電圧を発生させ、インバータトランスで昇圧して点灯に必要な高電圧を得て冷陰極蛍光管に印加している。
【0003】
従来、放電灯点灯装置に用いられるインバータトランスは1出力型が一般的であり、1出力型の構造では、複数本の冷陰極蛍光管を点灯するために冷陰極蛍光管と同数のインバータトランスが必要となるため、大型の液晶ディスプレイ装置において、多数のインバータトランスを搭載する結果、バックライト装置が大型化してしまうという問題がある。このため、近年の放電灯点灯装置では、インバータトランスの二次巻線部の両端に2本の放電灯が接続され、2本の放電灯のそれぞれの一端に逆位相の交流電圧を加えることにより2本の放電灯を点灯する方式が採用されるようになってきている(例えば、特許文献1の図5参照)。
【0004】
特許文献1の図5に開示されているような放電灯点灯装置においては、二次側負荷が開放状態にある場合に、放電灯に印加される電圧を検出して制御回路にフィードバックして、放電灯に過電圧が印加されないようにするための保護回路が一般的に設けられる。
【0005】
図8は、従来の保護回路を設けた放電灯点灯装置の一例である放電灯点灯装置200の回路構成を示す図である。図8に示す放電灯点灯装置200は、制御回路202、制御回路202に接続されたフルブリッジ回路203、フルブリッジ回路203に接続されたインバータトランスT201を備えている。
【0006】
放電灯点灯装置200において、制御回路202(一つのICにより構成されている)はフルブリッジ回路203を作動させ、フルブリッジ回路203はインバータトランスT201の一次側に駆動信号を送信し、インバータトランスT201は、その二次側の両端にそれぞれ接続された2本の放電灯(La201,La202)を駆動して、放電灯点灯装置を構成している。
【0007】
インバータトランスT201は、リーケージ型のインバータトランスであり、一次巻線W201と二次巻線W202が設けられている。二次巻線W202用の2つの出力端子のそれぞれには、2本の放電灯(La201,La202)のそれぞれの一端が接続され、2本の放電灯(La201,La202)のそれぞれの他端は、ともにGNDに接続されている(この例では、他端同士が互いに接続されるとともに、その接続点がGNDに接続されている)。放電灯点灯装置200は、インバータトランスT201の二次巻線W202用の2つの端子から2本の放電灯(La201,La202)の一端のそれぞれに逆位相の交流電圧が印加され、インバータトランスT201の一つの二次巻線W202で2本の放電灯(La201,La202)を駆動する構成となっている。
【0008】
この二次巻線W202の両端のそれぞれには直列接続された2つのコンデンサ(C201、C202)の一端が接続され、他端はGNDに接続されている。2つのコンデンサ(C201、C202)の中間点と制御回路202とはダイオードD201を介して接続されている。
【0009】
フルブリッジ回路203は、直流電源からの直流電圧Vinを入力して、制御回路202からの駆動パルス信号により高周波電圧をインバータトランスT201の一次側に入力し、二次側で昇圧させる。そして、この昇圧された電圧を二次巻線W202に接続された2本の放電灯(La201,La202)に印加し、2本の放電灯(La201,La202)を放電、点灯させている。
【0010】
図8に示すように、制御回路202は、三角波回路(発振回路)210、エラーアンプ回路211、PWM回路212、及びロジック回路213を備えている。この制御回路202は、三角波回路210からの三角波出力をPWM回路212に入力して、2本の放電灯(La201,La202)のそれぞれに印加される交流電圧が分圧されてエラーアンプ回路211の反転入力部に入力されるようになっている。エラーアンプ回路211は、放電灯に応じた出力電圧をPWM回路212に出力し、PWM回路212は、三角波出力とエラーアンプ回路211の出力電圧を比較してパルス信号をロジック回路213に出力する。ロジック回路213は、三角波回路210の出力パルス信号とPWM回路212からの出力パルス信号により、フルブリッジ回路203へ入力するゲート信号を供給する。
【0011】
ロジック回路213のゲート信号によりフルブリッジ回路203が動作し、インバータトランスT201の一次側の一次巻線W201に交流電流を流して、二次巻線W202に昇圧された電圧を誘起させて2本の放電灯(La201,La202)を駆動する。
【0012】
制御回路202には、放電灯の調光を行うためのバースト信号を供給するバースト回路(図示略)が設けられている。この回路からの出力は、バースト信号となり、この信号によって、放電灯の電流をフィードバック制御するエラーアンプの反転入力をプルアップさせ、トランスの一次側を非作動にして、放電灯を断続的に作動させて調光ができるようになっている。
【0013】
また、インバータトランスT201の二次側の両端に接続された2つのコンデンサ(C201、C202)で分圧された信号が、それぞれ、ダイオードD201を介して制御回路202のエラーアンプ回路211及び過電圧保護回路(図示略)に供給される。インバータトランスT201の二次側負荷が半開放状態(2本の放電灯(La201,La202)のうちのどちらか1本の放電灯が抜けた開放状態)、あるいは、コネクタオープン(2本の放電灯(La201,La202)の両方がランプコネクタに未接続である開放状態)などの開放状態になった場合は、2つのコンデンサ(C201、C202)で分圧された信号の電圧値が上昇し、この電圧が制御回路202にフィードバックされることで、フルブリッジ回路203の作動が停止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2005−12176号公報(図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ここで、図8に示した放電灯点灯装置200には、次のような問題があった。すなわち、放電灯点灯装置200では、インバータトランスT201の二次側の開放状態を検出する方法として、インバータトランスT201の二次側の両端に設けられた2つのコンデンサ(C201、C202)により分圧された出力電圧のみを検出してフィードバック制御するようにしているため、放電灯点灯装置200の動作制御上、半開放状態とコネクタオープンとの切り分けができない。また、複数の放電灯群のそれぞれがコネクタに接続される放電灯点灯装置においては、全開放状態(複数の放電灯群がそれぞれ接続されるコネクタのすべてが開放状態)も半開放状態あるいはコネクタオープンと切り分けできないため、放電灯点灯時の開放電圧をそれぞれの開放状態に応じた適切な電圧値に調整することができず、精度の高いフィードバック制御が困難であるという問題があった。
【0016】
また、放電灯装置200では、インバータトランスT201の二次側の両端のそれぞれに2つのコンデンサ(C201、C202)を設ける必要があり、これらのコンデンサには高い耐圧を要求される高圧コンデンサを用いる必要があるため、部品コストが高騰する要因となり、コストダウンが困難である。
【0017】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、簡易で安価な構造でありながら二次側負荷の半開放状態を検出可能なインバータトランス、及び、そのインバータトランスを用いて二次側負荷の半開放状態時にその異常電圧を高い精度で検出して駆動制御が可能な放電灯点灯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、さらに他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0019】
(1)ボビンと、前記ボビンの巻芯部の外周に巻回された一次巻線から構成される一次巻線部と、前記ボビンの巻芯部の外周に巻回された二次巻線から構成される二次巻線部とを備えるインバータトランスにおいて、前記ボビンに、前記一次巻線部用の入力端子および前記二次巻線部用の出力端子と独立して、二次側負荷の半開放状態により誘起される異常電圧を検出するための検出端子を設けたことを特徴とするインバータトランス(請求項1)。
【0020】
(2)(1)項に記載のインバータトランスにおいて、前記検出端子は、前記一次巻線部用の前記入力端子が設けられた端子台に配設されることを特徴とするインバータトランス(請求項2)。
【0021】
(3)(2)項に記載のインバータトランスにおいて、前記ボビンの巻芯部の外周に巻回された三次巻線から構成される三次巻線部をさらに備え、前記検出端子は前記三次巻線用の出力端子が設けられた端子台に配設されることを特徴とするインバータトランス(請求項3)。
【0022】
(4)(1)項に記載のインバータトランスにおいて、前記検出端子は、前記ボビンの前記巻芯部の外周部より径方向に延出して設けられた端子台に配設されることを特徴とするインバータトランス(請求項4)。
【0023】
(5)(1)〜(4)項のいずれか1項に記載のインバータトランスと、該インバータトランスを所定の駆動周波数で駆動するブリッジ回路と、該ブリッジ回路の作動を制御する制御回路とを備え、前記インバータトランスの二次巻線部の両端に放電灯が接続され、該放電灯の両端に逆位相の交流電圧を加えることにより前記放電灯を点灯する放電灯点灯装置であって、前記インバータトランスの二次側負荷が半開放状態のとき、前記インバータトランスのボビンに設けられた検出端子に誘起される異常電圧を検出し、該異常電圧に基づいた信号を前記制御回路にフィードバックすることにより、前記ブリッジ回路の作動を停止することを特徴とする放電灯点灯装置(請求項5)。
【0024】
(6)(5)項に記載の放電灯点灯装置において、前記放電灯は、2本の直管によって構成されており、前記インバータトランスの前記二次巻線部の両端のそれぞれには、前記2本の直管のそれぞれの一端が接続され、前記2本の直管のそれぞれの他端は、ともにGNDに接続されるか、または、GNDに接続されることなく互いに接続され、前記2本の直管のうちの1本が開放状態のときに、前記インバータトランスのボビンに設けられた前記検出端子に誘起される異常電圧を検出し、該異常電圧に基づいた信号を前記制御回路にフィードバックすることにより、前記ブリッジ回路の作動を停止することを特徴とする放電灯点灯装置(請求項6)。
【0025】
(7)(5)項に記載の放電灯点灯装置において、前記放電灯は1本のU字管によって構成されており、前記インバータトランスの前記二次巻線部の両端のそれぞれには、前記1本のU字管の両端のそれぞれが接続され、前記1本のU字管の一端が開放状態のときに、前記インバータトランスのボビンに設けられた前記検出端子に誘起される異常電圧を検出し、該異常電圧に基づいた信号を前記制御回路にフィードバックすることにより、前記ブリッジ回路の作動を停止することを特徴とする放電灯点灯装置(請求項7)。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、以上のように構成したことにより、簡易で安価な構造でありながら二次側負荷の半開放状態を検出可能なインバータトランス、及び、そのインバータトランスを用いて二次側負荷の半開放状態時にその異常電圧を高い精度で検出して駆動制御が可能な放電灯点灯装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態における放電灯点灯装置の概略の回路構成を示す図である。
【図2】図1に示す放電灯点灯装置に用いられるインバータトランスを示す上面図である。
【図3】図2に示すインバータトランスに用いられるボビンの構成を、詳細に示す上面図である。
【図4a】正常動作時において、図2に示すインバータトランスの検出端子によって検出される電圧波形を示す図である。
【図4b】一本の放電灯の抜けによる二次側負荷の半開放状態において、図2に示すインバータトランスの検出端子によって検出される電圧波形を示す図である。
【図4c】二次側負荷の全開放状態において、図2に示すインバータトランスの検出端子17によって検出される電圧波形を示す図である。
【図5】図1に示す放電灯点灯装置に用いられるインバータトランスの別の例を示す上面図である。
【図6】図1に示す放電灯点灯装置に用いられるインバータトランスのさらに別の例を示す上面図である。
【図7】本発明の第2実施形態における放電灯点灯装置の概略の回路構成を示す図である。
【図8】従来の放電灯点灯装置の一例の概略の回路構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面に基づいて説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における放電灯点灯装置20の概略の回路構成を示す図である。図1に示す放電灯点灯装置20は、制御回路22、制御回路22に接続されたフルブリッジ回路23、フルブリッジ回路23に接続されたインバータトランスT1を備えている。
【0029】
放電灯点灯装置20は、例えば大型液晶TV用に好適な放電灯点灯装置またはその一部に相当するものであり、制御回路22(一つのICにより構成されている)はフルブリッジ回路23の作動を制御し、フルブリッジ回路23はインバータトランスT1の一次巻線W1に所定の駆動周波数を有する駆動信号を送信し、インバータトランスT1は、二次巻線W2に接続された2本の放電灯(La21,La22)を駆動する。
【0030】
本実施形態で用いられるインバータトランスT1は、その二次巻線部を構成する二次巻線W2用の2つの出力端子のそれぞれに、2本の直管から構成される放電灯(La21,La22)のそれぞれの一端が接続されており、2本の放電灯(La21,La22)のそれぞれの他端は、ともにGNDに接続されている(この例では、他端同士が互いに接続されるとともに、その接続点がGNDに接続されている)。
【0031】
制御回路22は、図8に示した従来の放電灯点灯装置200の制御回路202と同様な構成を有するため、詳細な図示および説明は省略する。
【0032】
フルブリッジ回路23は、直流電源からの電圧Vinを入力して、制御回路22からの駆動パルス信号により、インバータトランスT1の一次巻線部を構成する一次巻線W1に高周波電圧を入力し、二次巻線W2で昇圧させる。そして、この昇圧された電圧を二次巻線W2に接続された2本の放電灯(La21,La22)に印加し、2本の放電灯を放電、点灯させている。また、放電灯点灯装置20には、インバータトランスT1の二次側にリーケージインダクタンスと容量による共振回路が構成されている。
【0033】
放電灯点灯装置20は、インバータトランスT1の二次巻線W2用の2つの端子から2本の放電灯(La21,La22)の一端のそれぞれに逆位相の交流電圧が印加され、インバータトランスT1の二次巻線W2で2本の放電灯(La21,La22)を駆動する構成となっている。
【0034】
ここで、本実施形態による放電灯点灯装置20において、インバータトランスT1を用いて開放電圧を検出する回路の動作について説明する。インバータトランスT1には、二次巻線部と一定の間隔を設けて三次巻線部が配置されている。三次巻線部を構成する三次巻線W3の一端は、GNDに接続され、他端はダイオードD21を介して制御回路22に接続されている。
【0035】
三次巻線W3の一端側に流れる電流は、検出抵抗R1により電圧に変換され、ダイオードD1を介して制御回路22にフィードバックされる。インバータトランスT1の二次巻線部の両端のどちらかあるいは両方でランプ抜け、コネクタオープンなどによって開放状態となった場合は、インバータトランスT1の二次側に構成されたリーケージインダクタンスと容量による共振回路の共振特性が正常時に対して変化することにより発生する開放電圧が検出抵抗R1によって検出され、この開放電圧がダイオードD21を介して制御回路22にフィードバックされて、制御回路22によって、インバータトランスT1の駆動電圧が一定の電圧になるように、フルブリッジ回路23の動作が制御される。
【0036】
また、インバータトランスT1には、一次巻線W1用の入力端子、二次巻線W2用の出力端子、および三次巻線W3用の出力端子のほかに、本発明の特徴部分である、巻線が巻回されていない検出端子17が設けられており、半開放状態(2本の放電灯(La21,La22)のどちらか一方が開放状態)のときに、それに伴い誘起される異常電圧がこの検出端子17によって検出されるものである。検出された異常電圧は、2つのダイオード(D22,D23)により構成される平滑回路24を介して制御回路22にフィードバックされ、この異常電圧が所定の基準電圧値を超えたときに、制御回路22によって、フルブリッジ回路23の動作が停止される。
【0037】
ここで、本実施形態によるインバータトランスT1の構成の詳細について、図2及び図3を参照して説明する。図2は、放電灯点灯装置20に用いられるインバータトランスT1を示す上面図、図3は、インバータトランスT1に用いられるボビン3の構成を詳細に示す上面図である。
【0038】
図2に示すインバータトランスT1は、例えばNi−Zn系フェライト材からなる2つのU型コア2A、2Bと、例えば液晶ポリマー等の合成樹脂により矩形筒状に成形されたボビン3と、ボビン3の外周に巻回された一次巻線、二次巻線、および三次巻線からそれぞれ構成される一次巻線部4、二次巻線部5、および三次巻線部6を備えている。一次巻線部4、二次巻線部5、および三次巻線部6は、ボビン3の巻芯部10の中心軸方向に沿って所定の間隔を空けて、この順番に並べて配設されている。
【0039】
コア2A、2Bは、それぞれの一方の脚2a、2bがボビン3の中央孔に挿入され、ボビン3の外側に配置される他方の脚2a’、2b’とともに、コア2A、2Bの対向面を突き合わせて接合することにより、一体のUU型コア2を構成するものである。また、ボビン3には、一次巻線用入力端子14、二次巻線用出力端子(巻線の引き出し部からげ用)16a,16a’、二次巻線用出力端子(パターン接続用)16b,16b’、三次巻線用出力端子15がそれぞれ植設されている。
【0040】
ボビン3は、図3に示すように、巻芯部10を分割する複数のフランジを有しており、第1のフランジ11aと第2のフランジ11bの間には、一次巻線部4が形成される第1の巻芯部10aが設けられ、第2のフランジ11bと第3のフランジ11cの間には、一次巻線部4と二次巻線部5との間の絶縁距離を形成する第1の空間溝部12aが設けられている。また、第3のフランジ11cと第5のフランジ11eの間には、二次巻線部5が形成される第2の巻芯部10bが設けられ、第5のフランジ11eと第6のフランジ11fとの間には、二次巻線部5と三次巻線部6との間の絶縁距離を形成する第2の空間溝部12bが、第6のフランジ11fと第7のフランジ11gの間には、三次巻線部6が形成される第3の巻芯部10cが設けられている。さらに、第2の巻芯部10bは、複数(図3では8個)の第4のフランジ11dによって分割されており、二次巻線部5は分割巻きにて巻回される。
【0041】
ボビン3の両端には、第1のフランジ11aによって仕切られた第1の端子台13aと第7のフランジ11gによって仕切られた第2の端子台13bが設けられている。さらに、ボビン3の、第2のフランジ11bから第3のフランジ11cにまたがる部分の一方の側面には第3の端子台13cが、また、第5のフランジ11eから第6のフランジ11fにまたがる部分の第3の端子台13cと同一の側面には、第4の端子台13dが設けられている。
【0042】
第1の端子台13aには一次巻線用入力端子14が、第2の端子台13bには三次巻線用出力端子15が植設されており、第3の端子台13cには、二次巻線用出力端子(巻線の引き出し部からげ用)16a’と二次巻線用出力端子(パターン接続用)16b’が植設され、第4の端子台13dには二次巻線用出力端子(巻線の引き出し部からげ用)16aと二次巻線用出力端子(パターン接続用)16bが植設されている。一次巻線用入力端子14と三次巻線用出力端子15は、それぞれ、巻芯部10の中心軸方向に延び、かつ、ボビン3の両端に配置されている。そして、二次巻線用出力端子(巻線の引き出し部からげ用)16aと二次巻線用出力端子(パターン接続用)16bは、ボビン3の一方の側面から一次巻線用入力端子14および三次巻線用出力端子15の両方に対して直角方向に延び、二次巻線用出力端子(巻線の引き出し部からげ用)16a’と二次巻線用出力端子(パターン接続用)16b’も、ボビン3の同一の側面から一次巻線用入力端子14および三次巻線用出力端子15の両方に対して直角方向に延びている。また、インバータトランスT1では、二次巻線部5と三次巻線部6との間および一次巻線部4と二次巻線部5との間は所定の距離をおいて離隔している。
【0043】
さらに、本実施形態におけるインバータトランスT1では、ボビン3の第1の端子台13aに検出端子17が植設されている。
【0044】
図3に示すように、検出端子17は、ボビン3の第1の端子台13aにおいて、2つの一次巻線用入力端子14の中間部分に配設されている。検出端子17は、二次側負荷の半開放状態を検出するためのものであり、他の巻線用の端子と同様な材質からなるものであるが、他の巻線用の端子とは異なり、巻線がからげられていない。
【0045】
ボビン3に検出端子17を設けることにより、放電灯点灯装置20において、インバータトランスT1の二次側負荷が半開放状態(2本の放電灯(La21,La22)のどちらか一方が開放状態)のときに、それに伴い誘起される異常電圧がこの検出端子17によって検出され、検出された異常電圧は、2つのダイオード(D22,D23)により構成される平滑回路24を介して制御回路22にフィードバックされる。そして、異常電圧が所定の基準電圧値を超えたときに、制御回路22によって、フルブリッジ回路23の動作が停止される。
【0046】
次に、検出端子17による検出される電圧の実測例について説明する。
図4aは、正常動作時(インバータトランスT1の二次巻線部の両端に接続された2本の放電灯(La21,La22)の両方がランプコネクタに正常に接続されている場合)において、検出端子17によって検出される電圧波形を示し、図4bは、放電灯La21の抜けによる二次側負荷の半開放状態(放電灯La21のみがランプコネクタに接続されていない場合)において、検出端子17によって検出される電圧波形を示し、図4cは、二次側負荷の全開放状態(2本の放電灯(La21,La22)の両方がランプコネクタに接続されていない場合)において、検出端子17によって検出される電圧波形を示している。
【0047】
図4aに示すように、正常動作時には、検出端子17によって検出される電圧は約1V程度(実効値)と低い値となっている。これは、本実施形態による放電灯装置20においては、二次巻線W2用の2つの端子のそれぞれに出力される交流電圧がお互いに逆位相となっているため、2本の放電灯(La21,La22)の両方がランプコネクタに正常に接続されている場合、それぞれの電圧が打ち消しあい、検出端子17に電圧が誘起されないためである。
【0048】
これに対して、図4bに示すように、放電灯(La21,La22)のどちらか一方が抜けた半開放状態(この例では、放電灯La21が抜けた半開放状態)の場合、検出端子17によって検出される電圧は、10V以上(実効値)を超える非常に高い電圧値となっている。これは、2本の放電灯(La21,La22)のどちらか一方が抜けた半開放状態の場合、二次巻線W2の2つの端子間の出力バランスがくずれるため、二次巻線W2用の2つの端子の一方端(放電灯が開放状態になっている端子)には正常よりも大きな交流電圧が発生する一方、他端(放電灯が開放状態でなっていない端子)にはほとんど電圧が発生しないため、それぞれの電圧が打ち消しあうことが無く、開放状態による大きな異常電圧が検出端子17に誘起されるためである。
【0049】
一方、図4cに示すように、二次側負荷の全開放状態では、検出端子17によって検出される電圧は、正常時と同様に、約1V程度(実効値)と低い値となっている。これは、2本の放電灯(La21,La22)の両方がランプコネクタに接続されていないため、二次巻線W2用の2つの端子の両端には正常動作時よりも高い電圧が発生するものの、正常動作時と同様に、二次巻線W2用の2つの端子のそれぞれに出力される交流電圧がお互いに逆位相となっているため、それぞれの電圧が打ち消しあい、結果として、二次側負荷の開放状態による異常電圧が検出端子17に誘起されないためである。
【0050】
このように、本実施形態における放電灯点灯装置20においては、インバータトランスT1のボビン3の第1の端子台13aに検出端子17を設けたことにより、半開放状態(2本の放電灯(La21,La22)のどちらか一方が開放状態)のときに、それに伴い誘起される異常電圧を検出端子17によって検出して、制御回路22にフィードバックし、フルブリッジ回路23の動作が停止するものである。
【0051】
放電灯点灯装置20において、三次巻線W3による二次側の電流検出では、インバータトランスT1の二次側負荷の何らかの開放状態を検出することはできるものの、コネクタオープン、半開放状態、全開放状態のそれぞれの区別ができないため、放電灯点灯装置の動作制御上、半開放状態と全開放状態との切り分けができず、放電灯の点灯時の開放電圧をそれぞれの開放状態に応じた適切な電圧値に調整することはできない。しかし、インバータトランスT1は、ボビン3に検出端子17を設けたことによって、半開放状態のときに誘起される異常電圧を検出端子17によって検出し、放電灯点灯装置20の動作をフィードバック制御することが可能となるため、半開放状態とコネクタオープン、全開放状態との切り分けが可能となり、放電灯点灯時の開放電圧をそれぞれの開放状態に応じた適切な電圧値に調整することができる。
【0052】
ここで、本実施形態による放電灯点灯装置20においては、インバータトランスT1のボビン3に設けられる検出端子17は、1次巻線W1、二次巻線W2、および三次巻線W3用のそれぞれの端子とは、ボビン3内で連結されておらず独立しているが、ボビン3の成型加工時にこれらの端子を植設する工程と同じ作業工程で検出端子17を設けることができるため、検出端子17を植設するために新たな作業工程を追加する必要はなく、さらに、部品コストも低いため、インバータトランスのコストの上昇を抑制することができる。また、放電灯点灯装置20では、従来の放電灯点灯装置200とは異なり、インバータトランスT1の二次巻線部の両端のそれぞれに2つのコンデンサC201、C202を設ける必要がないため、部品コストおよび作業工数を低減することができる。
【0053】
また、検出端子17は、ボビン3の成型加工時に一体成型されるため、寸法精度が高く、また、インバータトランスT1に一体に設けられるため、異常電圧の検出精度が高い。このように、本実施形態による放電灯点灯装置20によれば、簡易で安価な構造でありながら二次側負荷の半開放状態を検出可能なインバータトランス、及び、そのインバータトランスを用いて二次側負荷の半開放状態時にその異常電圧を高い精度で検出して駆動制御が可能な放電灯点灯装置を提供することができる。
【0054】
尚、インバータトランスT1では、図3に示すように、検出端子17が、ボビン3の第1の端子台13aの2つの一次巻線用入力端子14の中間部分に配設されているが、検出端子17の配設位置は、この位置に限定されるものではなく、植設可能な部分であれば第1の端子台13aの端部など、第1の端子台13aのどこに配設するものであってもよい。さらに、検出端子17の配設は、第1の端子台13aに限定されるものではなく、植設が可能なところであれば、ボビン3の外周部のどの位置であってもよい。例えば、図5に示すボビン3aのように、第2の端子台13bに検出端子17aが配設される構造、図6に示すボビン3bのように、第1の巻芯部10aの外周部より径方向に延出して設けられた第5の端子台13eに検出端子17bが配設される構造などが可能である。また、放電灯点灯装置20では、インバータトランスT1に三次巻線部6が備えられているが、三次巻線部6は本発明の必須の構成要素ではなく、省略可能である。
【0055】
(第2の実施形態)
図7は、本発明の第2実施形態における放電灯点灯装置30の概略の回路構成を示す図である。尚、以下の説明では、図7に示す放電灯点灯装置30において、図1に示す放電灯点灯装置20と同一または対応する構成要素には同一の符号を付して参照し、共通する部分の説明は適宜省略し、主として両者の相違点について説明する。
【0056】
本実施形態における放電灯点灯装置30は、そのインバータトランスT2が三次巻線を有しておらず、二次巻線W2の両端のそれぞれに、直列接続された2つのコンデンサ(C21、C22)の一端が接続される点で第1実施形態における放電灯点灯装置20と相違するものである。尚、直列接続された2つのコンデンサの他端は、GNDに接続されている。
【0057】
放電灯点灯装置30では、インバータトランスT2の二次巻線部の両端に接続された2つのコンデンサ(C21、C22)で分圧された信号が、それぞれ、ダイオードD24を介して制御回路22に供給され、インバータトランスT2の二次側負荷が半開放状態またはコネクタオープンなどの開放状態になった場合は、2つのコンデンサ(C21、C22)で分圧された信号の電圧値が上昇し、この電圧が制御回路22にフィードバックされる。
【0058】
放電灯点灯装置30においても、第1実施形態における放電灯点灯装置20におけるインバータトランスT1の三次巻線W3による二次側の電流検出と同様に、2つのコンデンサ(C21、C22)による電圧検出のみでは、半開放状態と全開放状態との切り分けはできない。しかし、放電灯点灯装置30のインバータトランスT2が検出端子17を有することによって、半開放状態のときに誘起される異常電圧を検出端子17によって検出し、放電灯点灯装置30の動作をフィードバック制御することが可能となるため、半開放状態と全開放状態との切り分けが可能となり、放電灯点灯時の開放電圧をそれぞれの開放状態に応じた適切な電圧値に調整することができる。
【0059】
以上、本発明を好ましい実施形態によって説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で、例えば以下に記載したような、種々の変形や応用が可能である。
【0060】
インバータトランスを構成するコア形状は、UU型に限定されるものではなく、CI型など、他のコア形状であってもよく、また、コア材質も、Ni−Zn系フェライトに限定されるものではなく、例えば、Mn−Zn系あるいはMn−Zn系とNi−Zn系フェライトの組み合わせなどが適用可能である。
【0061】
また、放電灯点灯装置の回路構成は、実施形態の回路構成に限定されるものではなく、様々な構成が適用可能である。例えば、ブリッジ回路はハーフブリッジ回路であってもよく、または、プッシュプル回路であってもよい。
【0062】
また、2本の直管により構成される放電灯は、一端がインバータトランスの二次巻線部の両端に接続される2本の放電灯のそれぞれの他端が、GNDに接続されることなく互いに接続されるものであってもよい。
【0063】
また、インバータトランスの二次巻線部の両端に接続される放電灯の構成は、2本の直管による構成に限定されず、1本のU字管またはコ字管により構成され、インバータトランスの二次巻線部の両端のそれぞれに、U字管またはコ字管の両端のそれぞれが接続されるものであってもよい。この場合、インバータトランスの二次側負荷の半開放状態は、1本のU字管またはコ字管のいずれかの一端が開放状態の場合である。
【符号の説明】
【0064】
2:UU型コア、2a,2b,2a’,2b’:脚、2A,2B:U型コア、3,3a,3b:ボビン、4:一次巻線部、5:二次巻線部、6:三次巻線部、10:巻芯部、10a:第1の巻芯部、10b:第2の巻芯部、10c:第3の巻芯部、11a:第1のフランジ、11b:第2のフランジ、11c:第3のフランジ、11d:第4のフランジ、11e:第5のフランジ、11f:第6のフランジ、11g:第7のフランジ、12a:第1の空間溝部、12b:第2の空間溝部、13a:第1の端子台、13b:第2の端子台、13c:第3の端子台、13d:第4の端子台、13e:第5の端子台、14:一次巻線用入力端子、15:三次巻線用出力端子、16a,16a’:二次巻線用出力端子(巻線の引き出し部からげ用)、16b,16b’:二次巻線用出力端子(パターン接続用)、17,17a,17b:検出端子、20,30:放電灯点灯装置、22:制御回路、23:フルブリッジ回路、24:平滑回路、C21,C22:コンデンサ、D21,D22,D23,D24:ダイオード、La21,La22:放電灯、R1:検出抵抗、T1,T2:インバータトランス、W1:一次巻線、W2:二次巻線、W3:三次巻線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボビンと、前記ボビンの巻芯部の外周に巻回された一次巻線から構成される一次巻線部と、前記ボビンの巻芯部の外周に巻回された二次巻線から構成される二次巻線部とを備えるインバータトランスにおいて、前記ボビンに、前記一次巻線部用の入力端子および前記二次巻線部用の出力端子と独立して、二次側負荷の半開放状態により誘起される異常電圧を検出するための検出端子を設けたことを特徴とするインバータトランス。
【請求項2】
前記検出端子は、前記一次巻線部用の前記入力端子が設けられた端子台に配設されることを特徴とする請求項1に記載のインバータトランス。
【請求項3】
前記ボビンの巻芯部の外周に巻回された三次巻線から構成される三次巻線部をさらに備え、前記検出端子は前記三次巻線用の出力端子が設けられた端子台に配設されることを特徴とする請求項2に記載のインバータトランス。
【請求項4】
前記検出端子は、前記ボビンの前記巻芯部の外周部より径方向に延出して設けられた端子台に配設されることを特徴とする請求項1に記載のインバータトランス。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のインバータトランスと、該インバータトランスを所定の駆動周波数で駆動するブリッジ回路と、該ブリッジ回路の作動を制御する制御回路とを備え、前記インバータトランスの二次巻線部の両端に放電灯が接続され、該放電灯の両端に逆位相の交流電圧を加えることにより前記放電灯を点灯する放電灯点灯装置であって、前記インバータトランスの二次側負荷が半開放状態のとき、前記インバータトランスのボビンに設けられた検出端子に誘起される異常電圧を検出し、該異常電圧に基づいた信号を前記制御回路にフィードバックすることにより、前記ブリッジ回路の作動を停止することを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項6】
前記放電灯は、2本の直管によって構成されており、前記インバータトランスの前記二次巻線部の両端のそれぞれには、前記2本の直管のそれぞれの一端が接続され、前記2本の直管のそれぞれの他端は、ともにGNDに接続されるか、または、GNDに接続されることなく互いに接続され、前記2本の直管のうちの1本が開放状態のときに、前記インバータトランスのボビンに設けられた前記検出端子に誘起される異常電圧を検出し、該異常電圧に基づいた信号を前記制御回路にフィードバックすることにより、前記ブリッジ回路の作動を停止することを特徴とする請求項5に記載の放電灯点灯装置。
【請求項7】
前記放電灯は1本のU字管によって構成されており、前記インバータトランスの前記二次巻線部の両端のそれぞれには、前記1本のU字管の両端のそれぞれが接続され、前記1本のU字管の一端が開放状態のときに、前記インバータトランスのボビンに設けられた前記検出端子に誘起される異常電圧を検出し、該異常電圧に基づいた信号を前記制御回路にフィードバックすることにより、前記ブリッジ回路の作動を停止することを特徴とする請求項5に記載の放電灯点灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−267659(P2010−267659A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115583(P2009−115583)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】