インバータ用スナバコンデンサ及びスナバ回路の冷却構造
【課題】コンデンサモジュール、金属ケース及びスナバモジュールを小形、安価にする。
【解決手段】インバータ回路3に並列に接続されたスナバコンデンサ8をモールド材が充填されたコンデンサモジュール17内に収納するとともに、スナバコンデンサ8の電極8aと半導体スイッチS1,S2を冷却する冷却フィン14に接続された導体19とを高絶縁性でかつ高熱伝導性のシート20を介して接続する。
【解決手段】インバータ回路3に並列に接続されたスナバコンデンサ8をモールド材が充填されたコンデンサモジュール17内に収納するとともに、スナバコンデンサ8の電極8aと半導体スイッチS1,S2を冷却する冷却フィン14に接続された導体19とを高絶縁性でかつ高熱伝導性のシート20を介して接続する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンデンサ等を直流電源として、高電圧・大電流のパルスを発生させるパルス電源に関し、特に、コンデンサを周期的にある設定電圧まで高速充電するコンデンサ充電装置に使用されるインバータ用スナバコンデンサ及びスナバ回路の冷却構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8は従来のコンデンサ充電装置の回路構成を示し、1はコンデンサであり、コンデンサ1には漂遊インダクタンス2を介してインバータ3を接続する。インバータ回路3は、IGBT等からなる半導体スイッチS1,S2をブリッジ接続して構成し、直流電力を交流電力に変換する。インバータ回路3の出力には昇圧トランス4を介してダイオードブリッジ回路からなり、交流電圧を直流電圧に変換する整流回路5を接続し、整流回路5の出力はリアクトル6を介してコンデンサ7に接続する。この回路動作を説明すると、まずコンデンサ1に3相電源や整流回路等を用いて直流電圧を蓄えておき、一対の半導体スイッチS1のオンにより昇圧トランス4の一次側にコンデンサ1から漂流インダクタンス2、半導体スイッチS1、昇圧トランス4の一次巻線、半導体スイッチS1の経路で電流i1を流し、また昇圧トランス4の二次側に整流回路5、リアクトル6、コンデンサ7の経路で電流i2を流し、リアクトル6にエネルギーを蓄積しつつコンデンサ7を充電する。次に、半導体スイッチS1をオフすると、リアクトル6、コンデンサ7、整流回路5の経路で電流i3が流れ、リアクトル6に蓄えられたエネルギーはコンデンサ7に移行し、コンデンサ7はさらに充電される。ただし、インバータ回路3の半導体スイッチS1をオフした瞬間、電流i1と漂遊インダクタンス2の影響により、半導体スイッチS1には過電圧が発生する。そこで、この過電圧により半導体スイッチS1が破損するのを防止するため、インバータ回路3と並列にスナバコンデンサ8を接続する。図9(a),(b)はコンデンサ7の充電電流と充電電圧である。
【0003】
図10は他の従来のコンデンサ充電装置の回路構成を示し、図8との相違点は、スナバ回路として、スナバコンデンサ8に代わって、半導体スイッチS1にスナバコンデンサ9とスナバダイオード10の直列回路からなるスナバモジュール11を並列に接続するとともに、スナバコンデンサ9とスナバダイオード10との接続点とインバータ3の反対側の直流端子との間にスナバ抵抗12を接続してインバータ用充電型RCDスナバ回路を構成している点である。動作もスナバ回路以外の動作及びコンデンサ7の充電電流、充電電圧は図8の回路の場合と同様であり、スナバ回路においては、スナバコンデンサ9は常時スナバ抵抗12を介してコンデンサ1の直流電圧と同一の電圧に充電されており、半導体スイッチS1がターンオフしたときに発生するサージ電圧がコンデンサ1の直流電圧よりも高くなった分がスナバダイオード10を介してスナバコンデンサ9に充電され、この充電電荷はスナバ抵抗12を介して元のコンデンサ1の充電電圧まで放電される。
【0004】
なお、この発明に関連する先行技術文献情報としては、次のものがある。
【特許文献1】特開平8−140338号公報
【特許文献2】特開平6−14562号公報
【特許文献3】特開平7−7924号公報
【特許文献4】特開平6−169038号公報
【特許文献5】特開平10−285907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来のコンデンサ充電装置において、スナバコンデンサ8は、吸湿による絶縁劣化の防止や他部品との絶縁を保つために、通常はモールド材が充填されたモジュール内に収納されている。モジュール化されたスナバコンデンサ8は、半導体スイッチS1,S2との間のインダクタンスをできる限り少なくするために、図11に示すように、スナバコンデンサ8の電極8aを半導体スイッチS1,S2の接続端子13と接続し、いわゆる直付け構造としている。14は半導体スイッチS1,S2が取り付けられた冷却フィンである。しかしながら、モジュール化されたスナバコンデンサ8の温度上昇の要因は主に二つあり、その一つは半導体スイッチS1,S2や導体で発生した熱が図11の矢印15に示すようにモジュール化されたスナバコンデンサ8に伝達され、温度上昇することであり、もう一つの要因はコンデンサ固有のtanδ(誘電正接)の影響により自己発熱することである。
【0006】
モジュール化されたスナバコンデンサ8はモールド材を介して上記要因で発生した熱を空気中に放熱するが、モールド材は熱伝導率が低いために、冷却効率が悪い。従って、温度上昇を抑えるために、コンデンサ8の並列数を増加するか、あるいは冷却効率を上げるために、モジュールの表面積を増加する必要があり、結果的にモジュール化されたスナバコンデンサ8の大形化につながり、高価にもなった。
【0007】
又、図10に示すスナバモジュール11においても、スナバコンデンサ9やスナバダイオード10は同じくモールド材が充填されたモジュール内に収納されており、スナバモジュール11は半導体スイッチS1との間のインダクタンスをできる限り少なくするために、図12に示すように、スナバモジュール11の電極11aを半導体スイッチS1の接続端子13と接続し、直付け構造としている。しかしながら、スナバモジュール11においても、半導体スイッチS1や導体で発生した熱が矢印16に示すような経路でスナバモジュール11に伝達され、またスナバコンデンサ9の自己発熱、あるいはスナバダイオード10の損失による自己発熱により温度が上昇し、モールド材を介して放熱するが、やはり放熱効果が悪く、スナバコンデンサ9及びスナバダイオード10の並列数を増加したり、スナバモジュール11の表面積を増加したりする必要があり、スナバモジュール11が大形で高価となった。
【0008】
この発明は上記のような課題を解決するために成されたものであり、スナバコンデンサを収納したコンデンサモジュール、金属ケース及びスナバコンデンサ、スナバダイオードを収納したスナバモジュールを小形、安価にすることができるインバータ用スナバコンデンサ及びスナバ回路の冷却構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の請求項1に係るインバータ用スナバコンデンサの冷却構造は、複数の半導体スイッチから構成されるとともに、直流電力を交流電力に変換するインバータ回路に並列に接続されたインバータ用スナバコンデンサにおいて、スナバコンデンサをモールド材が充填されたコンデンサモジュール内に収納するとともに、スナバコンデンサの電極と半導体スイッチを冷却する冷却フィンに接続された導体とを高絶縁性でかつ高熱伝導性のシートを介して接続したものである。
【0010】
請求項2に係るインバータ用スナバコンデンサの冷却構造は、複数の半導体スイッチから構成されるとともに、直流電力を交流電力に変換するインバータ回路に並列に接続されたスナバコンデンサにおいて、スナバコンデンサを絶縁油を封入した金属ケース内に収納し、金属ケースと半導体スイッチを冷却する冷却フィンとを導体により接続したものである。
【0011】
請求項3に係るインバータ用スナバ回路の冷却構造は、直流端子間に接続されるとともに、複数の半導体スイッチから構成され、直流電力を交流電力に変換するインバータ回路の半導体スイッチに、スナバコンデンサとスナバダイオードの直列回路からなり、モールド材が充填されたスナバモジュールを並列に接続し、スナバコンデンサとスナバダイオードとの接続点とインバータ回路の反対側の直流端子との間にスナバ抵抗を接続したインバータ用スナバ回路において、スナバモジュール内においてスナバダイオードと半導体スイッチを冷却する冷却フィンに接続された導体とを高絶縁性でかつ高熱伝導性のシートを介して接続したものである。
【0012】
請求項4に係るインバータ用スナバ回路の冷却構造は、上記導体を冷却フィンにねじにより取り付け、このねじを冷却フィンの上方が開放された上面又は側面に取り付けたものである。
【0013】
請求項5に係るインバータ用スナバ回路の冷却構造は、直流端子間に接続されるとともに、複数の半導体スイッチから構成され、直流電力を交流電力に変換するインバータ回路の半導体スイッチに、スナバコンデンサとスナバダイオードの直列回路からなり、モールド材が充填されたスナバモジュールを並列に接続し、スナバコンデンサとスナバダイオードとの接続点とインバータ回路の反対側の直流端子との間にスナバ抵抗を接続したインバータ用スナバ回路において、スナバモジュール内のスナバダイオード及びスナバモジュールの電極と水配管と接続された導体とを高絶縁性でかつ高熱伝導性のシートを介して接続したものである。
【発明の効果】
【0014】
以上のようにこの発明の請求項1によれば、スナバコンデンサの電極は高熱伝導性のシート及び導体を介して冷却フィンと接続されており、スナバコンデンサの熱は冷却フィンに伝わり易くなる。このため、スナバコンデンサの冷却効果が向上し、スナバコンデンサの温度上昇は生じ難くなり、スナバコンデンサの並列設置数を増加させる必要が無く、スナバコンデンサを収納したコンデンサモジュールの表面積を増加させる必要もないので、コンデンサモジュールを小形安価にすることができる。又、スナバコンデンサをモールド材が充填されたコンデンサモジュール内に収納したので、吸湿等による絶縁劣化を生じることがない。
【0015】
請求項2によれば、スナバコンデンサを絶縁油を封入した金属ケース内に収納し、金属ケースと半導体スイッチを冷却する冷却フィンとを導体により接続しており、スナバコンデンサの熱は高熱伝導性の絶縁油を介して金属ケースに伝わり、さらに導体を介して冷却フィンへと伝わる。このため、スナバコンデンサと冷却フィンとの間の熱抵抗が小さくなり、スナバコンデンサの冷却効果が向上し、スナバコンデンサの温度上昇は生じ難くなり、スナバコンデンサの並列設置数を増加させる必要が無く、スナバコンデンサを収納した金属ケースの表面積を増加させる必要もないので、金属ケースを小形安価にすることができる。又、スナバコンデンサを絶縁油が充填されたコンデンサモジュール内に収納したので、吸湿等による絶縁劣化を生じることがない。
【0016】
請求項3によれば、モールド材が充填されたスナバモジュール内においてスナバダイオードと冷却フィンに接続された導体とを高熱伝導性のシートを介して接続しており、スナバダイオードの熱は高熱伝導性のシート及び導体を介して冷却フィンへと伝わる。このため、スナバダイオードと冷却フィンとの間の熱抵抗が小さくなり、スナバダイオードの冷却効果が向上し、スナバダイオードの温度上昇は生じ難くなり、スナバダイオードの並列設置数を増加させる必要が無く、スナバダイオードを収納したスナバモジュールの表面積を増加させる必要もないので、スナバモジュールを小形安価にすることができる。又、スナバコンデンサ及びスナバモジュールをモールド材が充填されたスナバモジュール内に収納したので、吸湿等による絶縁劣化を生じることがない。
【0017】
請求項4にとれば、導体を冷却フィンにねじにより取り付け、このねじを冷却フィンの上方が開放された上面又は側面に取り付けており、上方が開放された上面に取り付けた場合には、取付作業性が良くなり、側面に取り付けた場合には、上面に取り付けられない場合に、取付が容易になる。
【0018】
請求項5によれば、スナバモジュール内のスナバダイオードが高熱伝導性のシート及び導体を介して水配管と接続されるとともに、スナバモジュール内のスナバモジュールの電極が高熱伝導性のシート及び導体を介して水配管と接続されており、スナバコンデンサ及びスナバダイオードの熱はシート及び導体を介して水配管に伝達される。このため、スナバコンデンサ及びスナバダイオードと水配管との間の熱抵抗が小さくなり、冷却効果が向上し、スナバコンデンサ及びスナバダイオードの温度上昇は生じ難くなり、周囲(空気)温度の影響も受け難くなる。従って、スナバコンデンサ及びスナバダイオードの並列数を増加させる必要がなく、スナバコンデンサ及びスナバダイオードを収納したスナバモジュールの表面積を増加させる必要もなく、スナバモジュールを小形安価にすることができる。又、スナバコンデンサ及びスナバダイオードはモールド材が充填されたスナバモジュール内に収納されているので、吸湿等により絶縁劣化を生じることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
実施最良形態1
以下、この発明を実施するための最良の形態を図面とともに説明する。図1はこの発明の実施最良形態1によるインバータ用スナバコンデンサの冷却構造の構成図を示し、スナバコンデンサ8の電極8aは半導体スイッチS1,S2の接続端子13と直付けされている。又、半導体スイッチS1,S2は冷却フィン14に取り付けられている。インバータ回路3に並列に接続されたスナバコンデンサ8はモールド材が充填されたコンデンサモジュール17内に収納される。又、一端がねじ18により冷却フィン14に取り付けられた銅等からなる導体19の他端がコンデンサモジュール17内においてスナバコンデンサ8の電極8aと高絶縁性でかつ高熱伝導性のシート20を挟んでプラスチック製のねじ21により締め付けられる。
【0020】
上記した実施最良形態1においては、スナバコンデンサ8の電極8aが高熱伝導性のシート20及び導体19を介して冷却フィン14と接続されており、スナバコンデンサ8の熱は矢印22の順路で冷却フィン14に伝達される。このため、スナバコンデンサ8と冷却フィン14との間の熱抵抗が小さくなり、冷却効果が向上し、スナバコンデンサ8の温度上昇は生じ難くなり、周囲(空気)温度の影響も受け難くなる。従って、スナバコンデンサ8の並列数を増加させる必要がなく、コンデンサモジュール17の表面積を増加させる必要もなく、コンデンサモジュール17を小形安価にすることができる。又、スナバコンデンサ8はモールド材が充填されたコンデンサモジュール17内に収納されているので、吸湿等により絶縁劣化を生じることがない。
【0021】
実施最良形態2
図2は実施最良形態2によるインバータ用スナバコンデンサの冷却構造の構成図を示し、スナバコンデンサ8は絶縁油23が封入された金属ケース24内に収納される。又、一端がねじ18により冷却フィン14に取り付けられた銅等からなる導体19の他端を金属ケース24にねじあるいはろう付けにより取り付ける。また、スナバコンデンサ8の電極8aは金属ケース24を挿通して半導体スイッチS1,S2の接続端子13と接続されるが、電極8aと金属ケース24との間はガラスエポキシ等の絶縁材料を用いて絶縁する。その他の構成は従来と同様である。
【0022】
上記した実施最良形態2においては、スナバコンデンサ8は絶縁油23を封入した金属ケース24内に収納されており、スナバコンデンサ8の熱は絶縁性と高熱伝導性を兼ねた絶縁油23を介して金属ケース24に伝導し、さらに金属ケース24に接続された導体19を介して冷却フィン14に矢印22に示すように伝導する。このため、スナバコンデンサ8と冷却フィン14との間の熱抵抗が小さくなり、冷却効果が向上し、スナバコンデンサ8の温度上昇は生じ難くなり、周囲(空気)温度の影響も受け難くなる。従って、スナバコンデンサ8の並列数を増加させる必要がなく、金属ケース24の表面積を増加させる必要もなく、金属ケース24を小形安価にすることができる。又、スナバコンデンサ8は絶縁油23が封入された金属ケース24内に収納されているので、吸湿等により絶縁劣化を生じることがない。
【0023】
実施最良形態3
図3は実施最良形態3によるインバータ用スナバ回路の冷却構造の構成図を示し、モールド材が充填されたスナバモジュール11内にはスナバコンデンサ9とスナバダイオード10の直列回路を収納し、この直列回路を半導体スイッチS1と並列に接続する。即ち、スナバモジュール11の電極11aを半導体スイッチS1の接続端子13と直付けする。又、スナバコンデンサ9とスナバモジュール10との接続点とインバータ回路3の反対側の直流端子との間にはスナバ抵抗12を接続し、充電型RCDスナバ回路を構成する。一端がねじ18により冷却フィン14に取り付けられた銅等からなる導体19の他端がスナバモジュール11内においてスナバダイオード10と高絶縁性でかつ高熱伝導性のシート20を挟んでプラスチック製のねじ21により締め付けられる。
【0024】
上記した実施最良形態3においては、スナバモジュール11内のスナバダイオード10が高熱伝導性のシート20及び導体19を介して冷却フィン14と接続されており、スナバダイオード10の熱は矢印22の順路で冷却フィン14に伝達される。このため、スナバダイオード10と冷却フィン14との間の熱抵抗が小さくなり、冷却効果が向上し、スナバダイオード10の温度上昇は生じ難くなり、周囲(空気)温度の影響も受け難くなる。従って、スナバダイオード10の並列数を増加させる必要がなく、スナバコンデンサ9及びスナバダイオード10を収納したスナバモジュール11の表面積を増加させる必要もなく、スナバモジュール11を小形安価にすることができる。又、スナバコンデンサ9及びスナバダイオード10はモールド材が充填されたスナバモジュール11内に収納されているので、吸湿等により絶縁劣化を生じることがない。
【0025】
実施最良形態4
図4は実施最良形態4によるインバータ用スナバ回路の冷却構造の構成図を示し、実施最良形態3と異なる点は、導体19の一端を冷却フィン14に取り付けるねじ18の位置を冷却フィン14の上方が開放された上面、即ち矢印25に示すように、上方からアクセス可能な位置にした点であり、その他の構成は実施最良形態3と同様である。
【0026】
実施最良形態4においては、導体19の一端をねじ18により冷却フィン14の上方が開放された上面に取り付けたので、取付の際の取付作業性を改善することができる。
【0027】
実施最良形態5
図5は実施最良形態5によるインバータ用スナバ回路の冷却構造の構成図を示し、実施最良形態3と異なる点は、導体19の一端を冷却フィン14に取り付けるねじ18の位置を冷却フィン14の側面にした点であり、その他の構成は実施最良形態3と同様である。
【0028】
実施最良形態5においては、導体19の一端をねじ18により冷却フィン14の側面に取り付けたので、導体19の一端を冷却フィン14の上面に取り付けられないときは、冷却フィン14の側面を利用して容易に取り付けることができる。
【0029】
実施最良形態6
図6は実施最良形態6によるインバータ用スナバ回路の冷却構造の構成図を示し、モールド材が充填されたスナバモジュール11内にはスナバコンデンサ9とスナバダイオード10の直列回路を収納し、この直列回路を半導体スイッチS1と並列に接続する。即ち、スナバモジュール11の電極11aを半導体スイッチS1の接続端子13と直付けする。又、スナバコンデンサ9とスナバモジュール10との接続点とインバータ回路3の反対側の直流端子との間にはスナバ抵抗12を接続し、充電型RCDスナバ回路を構成する。モールド材が充填されたスナバモジュール11内においては、スナバダイオード10と導体19の一端とが高絶縁性でかつ高熱伝導性のシート20を介してプラスチックねじ21により締め付けられるとともに、スナバモジュール11の電極11aと導体19の一端とが
高絶縁性でかつ高熱伝導性のシート20を介してプラスチックねじ26により締め付けられ、導体19の他端は断面長方形の水配管27とねじ18により取り付けられる。
【0030】
実施最良形態6においては、スナバモジュール11内のスナバダイオード10が高熱伝導性のシート20及び導体19を介して水配管27と接続されるとともに、スナバモジュール11内のスナバモジュール11の電極11aが高熱伝導性のシート20及び導体19を介して水配管27と接続され、スナバコンデンサ9及びスナバダイオード10の熱は矢印28に示すようにシート20及び導体19を介して水配管27に伝達される。このため、スナバコンデンサ9及びスナバダイオード10と水配管27との間の熱抵抗が小さくなり、冷却効果が向上し、スナバコンデンサ9及びスナバダイオード10の温度上昇は生じ難くなり、周囲(空気)温度の影響も受け難くなる。従って、スナバコンデンサ9及びスナバダイオード10の並列数を増加させる必要がなく、スナバコンデンサ9及びスナバダイオード10を収納したスナバモジュール11の表面積を増加させる必要もなく、スナバモジュール11を小形安価にすることができる。又、スナバコンデンサ9及びスナバダイオード10はモールド材が充填されたスナバモジュール11内に収納されているので、吸湿等により絶縁劣化を生じることがない。実施最良形態6は、水配管27の温度が冷却フィン14の温度より低い場合に効果が大きい。
【0031】
実施最良形態7
図7は実施最良形態7によるインバータ用スナバ回路の冷却構造の構成図を示し、実施最良形態6との相違点は、導体19の他端を断面円形の水配管29にろう付けした点である。その他の構成は実施最良形態6と同様である。効果も導体19の他端と水配管29とをろう付けしたので、接触熱抵抗を小さくできることであり、そのたの効果は実施最良形態6と同様である。実施最良形態7の場合も、水配管29の温度が冷却フィン14の温度より低い場合に効果が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の実施最良形態1によるインバータ用スナバコンデンサの冷却構造の構成図である。
【図2】実施最良形態2によるインバータ用スナバコンデンサの冷却構造の構成図である。
【図3】実施最良形態3によるインバータ用スナバ回路の冷却構造の構成図である。
【図4】実施最良形態4によるインバータ用スナバ回路の冷却構造の構成図である。
【図5】実施最良形態5によるインバータ用スナバ回路の冷却構造の構成図である。
【図6】実施最良形態6によるインバータ用スナバ回路の冷却構造の構成図である。
【図7】実施最良形態7によるインバータ用スナバ回路の冷却構造の構成図である。
【図8】従来のコンデンサ充電装置の回路構成図である。
【図9】従来のコンデンサ充電装置の電圧電流特性図である。
【図10】他の従来のコンデンサ充電装置の回路構成図である。
【図11】図8に示したコンデンサ充電装置の要部構造図である。
【図12】図10に示したコンデンサ充電装置の要部構造図である。
【符号の説明】
【0033】
3…インバータ回路
8,9…スナバコンデンサ
8a,11a…電極
10…スナバダイオード
11…スナバモジュール
12…スナバ抵抗
13…半導体スイッチ接続端子
14…冷却フィン
17…コンデンサモジュール
18…ねじ
19…導体
20…シート
21,26…プラスチックねじ
23…絶縁油
24…金属ケース
27,29…水配管
S1,S2…半導体スイッチ
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンデンサ等を直流電源として、高電圧・大電流のパルスを発生させるパルス電源に関し、特に、コンデンサを周期的にある設定電圧まで高速充電するコンデンサ充電装置に使用されるインバータ用スナバコンデンサ及びスナバ回路の冷却構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8は従来のコンデンサ充電装置の回路構成を示し、1はコンデンサであり、コンデンサ1には漂遊インダクタンス2を介してインバータ3を接続する。インバータ回路3は、IGBT等からなる半導体スイッチS1,S2をブリッジ接続して構成し、直流電力を交流電力に変換する。インバータ回路3の出力には昇圧トランス4を介してダイオードブリッジ回路からなり、交流電圧を直流電圧に変換する整流回路5を接続し、整流回路5の出力はリアクトル6を介してコンデンサ7に接続する。この回路動作を説明すると、まずコンデンサ1に3相電源や整流回路等を用いて直流電圧を蓄えておき、一対の半導体スイッチS1のオンにより昇圧トランス4の一次側にコンデンサ1から漂流インダクタンス2、半導体スイッチS1、昇圧トランス4の一次巻線、半導体スイッチS1の経路で電流i1を流し、また昇圧トランス4の二次側に整流回路5、リアクトル6、コンデンサ7の経路で電流i2を流し、リアクトル6にエネルギーを蓄積しつつコンデンサ7を充電する。次に、半導体スイッチS1をオフすると、リアクトル6、コンデンサ7、整流回路5の経路で電流i3が流れ、リアクトル6に蓄えられたエネルギーはコンデンサ7に移行し、コンデンサ7はさらに充電される。ただし、インバータ回路3の半導体スイッチS1をオフした瞬間、電流i1と漂遊インダクタンス2の影響により、半導体スイッチS1には過電圧が発生する。そこで、この過電圧により半導体スイッチS1が破損するのを防止するため、インバータ回路3と並列にスナバコンデンサ8を接続する。図9(a),(b)はコンデンサ7の充電電流と充電電圧である。
【0003】
図10は他の従来のコンデンサ充電装置の回路構成を示し、図8との相違点は、スナバ回路として、スナバコンデンサ8に代わって、半導体スイッチS1にスナバコンデンサ9とスナバダイオード10の直列回路からなるスナバモジュール11を並列に接続するとともに、スナバコンデンサ9とスナバダイオード10との接続点とインバータ3の反対側の直流端子との間にスナバ抵抗12を接続してインバータ用充電型RCDスナバ回路を構成している点である。動作もスナバ回路以外の動作及びコンデンサ7の充電電流、充電電圧は図8の回路の場合と同様であり、スナバ回路においては、スナバコンデンサ9は常時スナバ抵抗12を介してコンデンサ1の直流電圧と同一の電圧に充電されており、半導体スイッチS1がターンオフしたときに発生するサージ電圧がコンデンサ1の直流電圧よりも高くなった分がスナバダイオード10を介してスナバコンデンサ9に充電され、この充電電荷はスナバ抵抗12を介して元のコンデンサ1の充電電圧まで放電される。
【0004】
なお、この発明に関連する先行技術文献情報としては、次のものがある。
【特許文献1】特開平8−140338号公報
【特許文献2】特開平6−14562号公報
【特許文献3】特開平7−7924号公報
【特許文献4】特開平6−169038号公報
【特許文献5】特開平10−285907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来のコンデンサ充電装置において、スナバコンデンサ8は、吸湿による絶縁劣化の防止や他部品との絶縁を保つために、通常はモールド材が充填されたモジュール内に収納されている。モジュール化されたスナバコンデンサ8は、半導体スイッチS1,S2との間のインダクタンスをできる限り少なくするために、図11に示すように、スナバコンデンサ8の電極8aを半導体スイッチS1,S2の接続端子13と接続し、いわゆる直付け構造としている。14は半導体スイッチS1,S2が取り付けられた冷却フィンである。しかしながら、モジュール化されたスナバコンデンサ8の温度上昇の要因は主に二つあり、その一つは半導体スイッチS1,S2や導体で発生した熱が図11の矢印15に示すようにモジュール化されたスナバコンデンサ8に伝達され、温度上昇することであり、もう一つの要因はコンデンサ固有のtanδ(誘電正接)の影響により自己発熱することである。
【0006】
モジュール化されたスナバコンデンサ8はモールド材を介して上記要因で発生した熱を空気中に放熱するが、モールド材は熱伝導率が低いために、冷却効率が悪い。従って、温度上昇を抑えるために、コンデンサ8の並列数を増加するか、あるいは冷却効率を上げるために、モジュールの表面積を増加する必要があり、結果的にモジュール化されたスナバコンデンサ8の大形化につながり、高価にもなった。
【0007】
又、図10に示すスナバモジュール11においても、スナバコンデンサ9やスナバダイオード10は同じくモールド材が充填されたモジュール内に収納されており、スナバモジュール11は半導体スイッチS1との間のインダクタンスをできる限り少なくするために、図12に示すように、スナバモジュール11の電極11aを半導体スイッチS1の接続端子13と接続し、直付け構造としている。しかしながら、スナバモジュール11においても、半導体スイッチS1や導体で発生した熱が矢印16に示すような経路でスナバモジュール11に伝達され、またスナバコンデンサ9の自己発熱、あるいはスナバダイオード10の損失による自己発熱により温度が上昇し、モールド材を介して放熱するが、やはり放熱効果が悪く、スナバコンデンサ9及びスナバダイオード10の並列数を増加したり、スナバモジュール11の表面積を増加したりする必要があり、スナバモジュール11が大形で高価となった。
【0008】
この発明は上記のような課題を解決するために成されたものであり、スナバコンデンサを収納したコンデンサモジュール、金属ケース及びスナバコンデンサ、スナバダイオードを収納したスナバモジュールを小形、安価にすることができるインバータ用スナバコンデンサ及びスナバ回路の冷却構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の請求項1に係るインバータ用スナバコンデンサの冷却構造は、複数の半導体スイッチから構成されるとともに、直流電力を交流電力に変換するインバータ回路に並列に接続されたインバータ用スナバコンデンサにおいて、スナバコンデンサをモールド材が充填されたコンデンサモジュール内に収納するとともに、スナバコンデンサの電極と半導体スイッチを冷却する冷却フィンに接続された導体とを高絶縁性でかつ高熱伝導性のシートを介して接続したものである。
【0010】
請求項2に係るインバータ用スナバコンデンサの冷却構造は、複数の半導体スイッチから構成されるとともに、直流電力を交流電力に変換するインバータ回路に並列に接続されたスナバコンデンサにおいて、スナバコンデンサを絶縁油を封入した金属ケース内に収納し、金属ケースと半導体スイッチを冷却する冷却フィンとを導体により接続したものである。
【0011】
請求項3に係るインバータ用スナバ回路の冷却構造は、直流端子間に接続されるとともに、複数の半導体スイッチから構成され、直流電力を交流電力に変換するインバータ回路の半導体スイッチに、スナバコンデンサとスナバダイオードの直列回路からなり、モールド材が充填されたスナバモジュールを並列に接続し、スナバコンデンサとスナバダイオードとの接続点とインバータ回路の反対側の直流端子との間にスナバ抵抗を接続したインバータ用スナバ回路において、スナバモジュール内においてスナバダイオードと半導体スイッチを冷却する冷却フィンに接続された導体とを高絶縁性でかつ高熱伝導性のシートを介して接続したものである。
【0012】
請求項4に係るインバータ用スナバ回路の冷却構造は、上記導体を冷却フィンにねじにより取り付け、このねじを冷却フィンの上方が開放された上面又は側面に取り付けたものである。
【0013】
請求項5に係るインバータ用スナバ回路の冷却構造は、直流端子間に接続されるとともに、複数の半導体スイッチから構成され、直流電力を交流電力に変換するインバータ回路の半導体スイッチに、スナバコンデンサとスナバダイオードの直列回路からなり、モールド材が充填されたスナバモジュールを並列に接続し、スナバコンデンサとスナバダイオードとの接続点とインバータ回路の反対側の直流端子との間にスナバ抵抗を接続したインバータ用スナバ回路において、スナバモジュール内のスナバダイオード及びスナバモジュールの電極と水配管と接続された導体とを高絶縁性でかつ高熱伝導性のシートを介して接続したものである。
【発明の効果】
【0014】
以上のようにこの発明の請求項1によれば、スナバコンデンサの電極は高熱伝導性のシート及び導体を介して冷却フィンと接続されており、スナバコンデンサの熱は冷却フィンに伝わり易くなる。このため、スナバコンデンサの冷却効果が向上し、スナバコンデンサの温度上昇は生じ難くなり、スナバコンデンサの並列設置数を増加させる必要が無く、スナバコンデンサを収納したコンデンサモジュールの表面積を増加させる必要もないので、コンデンサモジュールを小形安価にすることができる。又、スナバコンデンサをモールド材が充填されたコンデンサモジュール内に収納したので、吸湿等による絶縁劣化を生じることがない。
【0015】
請求項2によれば、スナバコンデンサを絶縁油を封入した金属ケース内に収納し、金属ケースと半導体スイッチを冷却する冷却フィンとを導体により接続しており、スナバコンデンサの熱は高熱伝導性の絶縁油を介して金属ケースに伝わり、さらに導体を介して冷却フィンへと伝わる。このため、スナバコンデンサと冷却フィンとの間の熱抵抗が小さくなり、スナバコンデンサの冷却効果が向上し、スナバコンデンサの温度上昇は生じ難くなり、スナバコンデンサの並列設置数を増加させる必要が無く、スナバコンデンサを収納した金属ケースの表面積を増加させる必要もないので、金属ケースを小形安価にすることができる。又、スナバコンデンサを絶縁油が充填されたコンデンサモジュール内に収納したので、吸湿等による絶縁劣化を生じることがない。
【0016】
請求項3によれば、モールド材が充填されたスナバモジュール内においてスナバダイオードと冷却フィンに接続された導体とを高熱伝導性のシートを介して接続しており、スナバダイオードの熱は高熱伝導性のシート及び導体を介して冷却フィンへと伝わる。このため、スナバダイオードと冷却フィンとの間の熱抵抗が小さくなり、スナバダイオードの冷却効果が向上し、スナバダイオードの温度上昇は生じ難くなり、スナバダイオードの並列設置数を増加させる必要が無く、スナバダイオードを収納したスナバモジュールの表面積を増加させる必要もないので、スナバモジュールを小形安価にすることができる。又、スナバコンデンサ及びスナバモジュールをモールド材が充填されたスナバモジュール内に収納したので、吸湿等による絶縁劣化を生じることがない。
【0017】
請求項4にとれば、導体を冷却フィンにねじにより取り付け、このねじを冷却フィンの上方が開放された上面又は側面に取り付けており、上方が開放された上面に取り付けた場合には、取付作業性が良くなり、側面に取り付けた場合には、上面に取り付けられない場合に、取付が容易になる。
【0018】
請求項5によれば、スナバモジュール内のスナバダイオードが高熱伝導性のシート及び導体を介して水配管と接続されるとともに、スナバモジュール内のスナバモジュールの電極が高熱伝導性のシート及び導体を介して水配管と接続されており、スナバコンデンサ及びスナバダイオードの熱はシート及び導体を介して水配管に伝達される。このため、スナバコンデンサ及びスナバダイオードと水配管との間の熱抵抗が小さくなり、冷却効果が向上し、スナバコンデンサ及びスナバダイオードの温度上昇は生じ難くなり、周囲(空気)温度の影響も受け難くなる。従って、スナバコンデンサ及びスナバダイオードの並列数を増加させる必要がなく、スナバコンデンサ及びスナバダイオードを収納したスナバモジュールの表面積を増加させる必要もなく、スナバモジュールを小形安価にすることができる。又、スナバコンデンサ及びスナバダイオードはモールド材が充填されたスナバモジュール内に収納されているので、吸湿等により絶縁劣化を生じることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
実施最良形態1
以下、この発明を実施するための最良の形態を図面とともに説明する。図1はこの発明の実施最良形態1によるインバータ用スナバコンデンサの冷却構造の構成図を示し、スナバコンデンサ8の電極8aは半導体スイッチS1,S2の接続端子13と直付けされている。又、半導体スイッチS1,S2は冷却フィン14に取り付けられている。インバータ回路3に並列に接続されたスナバコンデンサ8はモールド材が充填されたコンデンサモジュール17内に収納される。又、一端がねじ18により冷却フィン14に取り付けられた銅等からなる導体19の他端がコンデンサモジュール17内においてスナバコンデンサ8の電極8aと高絶縁性でかつ高熱伝導性のシート20を挟んでプラスチック製のねじ21により締め付けられる。
【0020】
上記した実施最良形態1においては、スナバコンデンサ8の電極8aが高熱伝導性のシート20及び導体19を介して冷却フィン14と接続されており、スナバコンデンサ8の熱は矢印22の順路で冷却フィン14に伝達される。このため、スナバコンデンサ8と冷却フィン14との間の熱抵抗が小さくなり、冷却効果が向上し、スナバコンデンサ8の温度上昇は生じ難くなり、周囲(空気)温度の影響も受け難くなる。従って、スナバコンデンサ8の並列数を増加させる必要がなく、コンデンサモジュール17の表面積を増加させる必要もなく、コンデンサモジュール17を小形安価にすることができる。又、スナバコンデンサ8はモールド材が充填されたコンデンサモジュール17内に収納されているので、吸湿等により絶縁劣化を生じることがない。
【0021】
実施最良形態2
図2は実施最良形態2によるインバータ用スナバコンデンサの冷却構造の構成図を示し、スナバコンデンサ8は絶縁油23が封入された金属ケース24内に収納される。又、一端がねじ18により冷却フィン14に取り付けられた銅等からなる導体19の他端を金属ケース24にねじあるいはろう付けにより取り付ける。また、スナバコンデンサ8の電極8aは金属ケース24を挿通して半導体スイッチS1,S2の接続端子13と接続されるが、電極8aと金属ケース24との間はガラスエポキシ等の絶縁材料を用いて絶縁する。その他の構成は従来と同様である。
【0022】
上記した実施最良形態2においては、スナバコンデンサ8は絶縁油23を封入した金属ケース24内に収納されており、スナバコンデンサ8の熱は絶縁性と高熱伝導性を兼ねた絶縁油23を介して金属ケース24に伝導し、さらに金属ケース24に接続された導体19を介して冷却フィン14に矢印22に示すように伝導する。このため、スナバコンデンサ8と冷却フィン14との間の熱抵抗が小さくなり、冷却効果が向上し、スナバコンデンサ8の温度上昇は生じ難くなり、周囲(空気)温度の影響も受け難くなる。従って、スナバコンデンサ8の並列数を増加させる必要がなく、金属ケース24の表面積を増加させる必要もなく、金属ケース24を小形安価にすることができる。又、スナバコンデンサ8は絶縁油23が封入された金属ケース24内に収納されているので、吸湿等により絶縁劣化を生じることがない。
【0023】
実施最良形態3
図3は実施最良形態3によるインバータ用スナバ回路の冷却構造の構成図を示し、モールド材が充填されたスナバモジュール11内にはスナバコンデンサ9とスナバダイオード10の直列回路を収納し、この直列回路を半導体スイッチS1と並列に接続する。即ち、スナバモジュール11の電極11aを半導体スイッチS1の接続端子13と直付けする。又、スナバコンデンサ9とスナバモジュール10との接続点とインバータ回路3の反対側の直流端子との間にはスナバ抵抗12を接続し、充電型RCDスナバ回路を構成する。一端がねじ18により冷却フィン14に取り付けられた銅等からなる導体19の他端がスナバモジュール11内においてスナバダイオード10と高絶縁性でかつ高熱伝導性のシート20を挟んでプラスチック製のねじ21により締め付けられる。
【0024】
上記した実施最良形態3においては、スナバモジュール11内のスナバダイオード10が高熱伝導性のシート20及び導体19を介して冷却フィン14と接続されており、スナバダイオード10の熱は矢印22の順路で冷却フィン14に伝達される。このため、スナバダイオード10と冷却フィン14との間の熱抵抗が小さくなり、冷却効果が向上し、スナバダイオード10の温度上昇は生じ難くなり、周囲(空気)温度の影響も受け難くなる。従って、スナバダイオード10の並列数を増加させる必要がなく、スナバコンデンサ9及びスナバダイオード10を収納したスナバモジュール11の表面積を増加させる必要もなく、スナバモジュール11を小形安価にすることができる。又、スナバコンデンサ9及びスナバダイオード10はモールド材が充填されたスナバモジュール11内に収納されているので、吸湿等により絶縁劣化を生じることがない。
【0025】
実施最良形態4
図4は実施最良形態4によるインバータ用スナバ回路の冷却構造の構成図を示し、実施最良形態3と異なる点は、導体19の一端を冷却フィン14に取り付けるねじ18の位置を冷却フィン14の上方が開放された上面、即ち矢印25に示すように、上方からアクセス可能な位置にした点であり、その他の構成は実施最良形態3と同様である。
【0026】
実施最良形態4においては、導体19の一端をねじ18により冷却フィン14の上方が開放された上面に取り付けたので、取付の際の取付作業性を改善することができる。
【0027】
実施最良形態5
図5は実施最良形態5によるインバータ用スナバ回路の冷却構造の構成図を示し、実施最良形態3と異なる点は、導体19の一端を冷却フィン14に取り付けるねじ18の位置を冷却フィン14の側面にした点であり、その他の構成は実施最良形態3と同様である。
【0028】
実施最良形態5においては、導体19の一端をねじ18により冷却フィン14の側面に取り付けたので、導体19の一端を冷却フィン14の上面に取り付けられないときは、冷却フィン14の側面を利用して容易に取り付けることができる。
【0029】
実施最良形態6
図6は実施最良形態6によるインバータ用スナバ回路の冷却構造の構成図を示し、モールド材が充填されたスナバモジュール11内にはスナバコンデンサ9とスナバダイオード10の直列回路を収納し、この直列回路を半導体スイッチS1と並列に接続する。即ち、スナバモジュール11の電極11aを半導体スイッチS1の接続端子13と直付けする。又、スナバコンデンサ9とスナバモジュール10との接続点とインバータ回路3の反対側の直流端子との間にはスナバ抵抗12を接続し、充電型RCDスナバ回路を構成する。モールド材が充填されたスナバモジュール11内においては、スナバダイオード10と導体19の一端とが高絶縁性でかつ高熱伝導性のシート20を介してプラスチックねじ21により締め付けられるとともに、スナバモジュール11の電極11aと導体19の一端とが
高絶縁性でかつ高熱伝導性のシート20を介してプラスチックねじ26により締め付けられ、導体19の他端は断面長方形の水配管27とねじ18により取り付けられる。
【0030】
実施最良形態6においては、スナバモジュール11内のスナバダイオード10が高熱伝導性のシート20及び導体19を介して水配管27と接続されるとともに、スナバモジュール11内のスナバモジュール11の電極11aが高熱伝導性のシート20及び導体19を介して水配管27と接続され、スナバコンデンサ9及びスナバダイオード10の熱は矢印28に示すようにシート20及び導体19を介して水配管27に伝達される。このため、スナバコンデンサ9及びスナバダイオード10と水配管27との間の熱抵抗が小さくなり、冷却効果が向上し、スナバコンデンサ9及びスナバダイオード10の温度上昇は生じ難くなり、周囲(空気)温度の影響も受け難くなる。従って、スナバコンデンサ9及びスナバダイオード10の並列数を増加させる必要がなく、スナバコンデンサ9及びスナバダイオード10を収納したスナバモジュール11の表面積を増加させる必要もなく、スナバモジュール11を小形安価にすることができる。又、スナバコンデンサ9及びスナバダイオード10はモールド材が充填されたスナバモジュール11内に収納されているので、吸湿等により絶縁劣化を生じることがない。実施最良形態6は、水配管27の温度が冷却フィン14の温度より低い場合に効果が大きい。
【0031】
実施最良形態7
図7は実施最良形態7によるインバータ用スナバ回路の冷却構造の構成図を示し、実施最良形態6との相違点は、導体19の他端を断面円形の水配管29にろう付けした点である。その他の構成は実施最良形態6と同様である。効果も導体19の他端と水配管29とをろう付けしたので、接触熱抵抗を小さくできることであり、そのたの効果は実施最良形態6と同様である。実施最良形態7の場合も、水配管29の温度が冷却フィン14の温度より低い場合に効果が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の実施最良形態1によるインバータ用スナバコンデンサの冷却構造の構成図である。
【図2】実施最良形態2によるインバータ用スナバコンデンサの冷却構造の構成図である。
【図3】実施最良形態3によるインバータ用スナバ回路の冷却構造の構成図である。
【図4】実施最良形態4によるインバータ用スナバ回路の冷却構造の構成図である。
【図5】実施最良形態5によるインバータ用スナバ回路の冷却構造の構成図である。
【図6】実施最良形態6によるインバータ用スナバ回路の冷却構造の構成図である。
【図7】実施最良形態7によるインバータ用スナバ回路の冷却構造の構成図である。
【図8】従来のコンデンサ充電装置の回路構成図である。
【図9】従来のコンデンサ充電装置の電圧電流特性図である。
【図10】他の従来のコンデンサ充電装置の回路構成図である。
【図11】図8に示したコンデンサ充電装置の要部構造図である。
【図12】図10に示したコンデンサ充電装置の要部構造図である。
【符号の説明】
【0033】
3…インバータ回路
8,9…スナバコンデンサ
8a,11a…電極
10…スナバダイオード
11…スナバモジュール
12…スナバ抵抗
13…半導体スイッチ接続端子
14…冷却フィン
17…コンデンサモジュール
18…ねじ
19…導体
20…シート
21,26…プラスチックねじ
23…絶縁油
24…金属ケース
27,29…水配管
S1,S2…半導体スイッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体スイッチから構成されるとともに、直流電力を交流電力に変換するインバータ回路に並列に接続されたインバータ用スナバコンデンサにおいて、スナバコンデンサをモールド材が充填されたコンデンサモジュール内に収納するとともに、スナバコンデンサの電極と半導体スイッチを冷却する冷却フィンに接続された導体とを高絶縁性でかつ高熱伝導性のシートを介して接続したことを特徴とするインバータ用スナバコンデンサの冷却構造。
【請求項2】
複数の半導体スイッチから構成されるとともに、直流電力を交流電力に変換するインバータ回路に並列に接続されたインバータ用スナバコンデンサにおいて、スナバコンデンサを絶縁油を封入した金属ケース内に収納し、金属ケースと半導体スイッチを冷却する冷却フィンとを導体により接続したことを特徴とするインバータ用スナバコンデンサの冷却構造。
【請求項3】
直流端子間に接続されるとともに、複数の半導体スイッチから構成され、直流電力を交流電力に変換するインバータ回路の半導体スイッチに、スナバコンデンサとスナバダイオードの直列回路からなり、モールド材が充填されたスナバモジュールを並列に接続し、スナバコンデンサとスナバダイオードとの接続点とインバータ回路の反対側の直流端子との間にスナバ抵抗を接続したインバータ用スナバ回路において、スナバモジュール内においてスナバダイオードと半導体スイッチを冷却する冷却フィンに接続された導体とを高絶縁性でかつ高熱伝導性のシートを介して接続したことを特徴とするインバータ用スナバ回路の冷却構造。
【請求項4】
上記導体を冷却フィンにねじにより取り付け、このねじを冷却フィンの上方が開放された上面又は側面に取り付けたことを特徴とする請求項3記載のインバータ用スナバ回路の冷却構造。
【請求項5】
直流端子間に接続されるとともに、複数の半導体スイッチから構成され、直流電力を交流電力に変換するインバータ回路の半導体スイッチに、スナバコンデンサとスナバダイオードの直列回路からなり、モールド材が充填されたスナバモジュールを並列に接続し、スナバコンデンサとスナバダイオードとの接続点とインバータ回路の反対側の直流端子との間にスナバ抵抗を接続したインバータ用スナバ回路において、スナバモジュール内のスナバダイオード及びスナバモジュールの電極と水配管と接続された導体とを高絶縁性でかつ高熱伝導性のシートを介して接続したことを特徴とするインバータ用スナバ回路の冷却構造。
【請求項1】
複数の半導体スイッチから構成されるとともに、直流電力を交流電力に変換するインバータ回路に並列に接続されたインバータ用スナバコンデンサにおいて、スナバコンデンサをモールド材が充填されたコンデンサモジュール内に収納するとともに、スナバコンデンサの電極と半導体スイッチを冷却する冷却フィンに接続された導体とを高絶縁性でかつ高熱伝導性のシートを介して接続したことを特徴とするインバータ用スナバコンデンサの冷却構造。
【請求項2】
複数の半導体スイッチから構成されるとともに、直流電力を交流電力に変換するインバータ回路に並列に接続されたインバータ用スナバコンデンサにおいて、スナバコンデンサを絶縁油を封入した金属ケース内に収納し、金属ケースと半導体スイッチを冷却する冷却フィンとを導体により接続したことを特徴とするインバータ用スナバコンデンサの冷却構造。
【請求項3】
直流端子間に接続されるとともに、複数の半導体スイッチから構成され、直流電力を交流電力に変換するインバータ回路の半導体スイッチに、スナバコンデンサとスナバダイオードの直列回路からなり、モールド材が充填されたスナバモジュールを並列に接続し、スナバコンデンサとスナバダイオードとの接続点とインバータ回路の反対側の直流端子との間にスナバ抵抗を接続したインバータ用スナバ回路において、スナバモジュール内においてスナバダイオードと半導体スイッチを冷却する冷却フィンに接続された導体とを高絶縁性でかつ高熱伝導性のシートを介して接続したことを特徴とするインバータ用スナバ回路の冷却構造。
【請求項4】
上記導体を冷却フィンにねじにより取り付け、このねじを冷却フィンの上方が開放された上面又は側面に取り付けたことを特徴とする請求項3記載のインバータ用スナバ回路の冷却構造。
【請求項5】
直流端子間に接続されるとともに、複数の半導体スイッチから構成され、直流電力を交流電力に変換するインバータ回路の半導体スイッチに、スナバコンデンサとスナバダイオードの直列回路からなり、モールド材が充填されたスナバモジュールを並列に接続し、スナバコンデンサとスナバダイオードとの接続点とインバータ回路の反対側の直流端子との間にスナバ抵抗を接続したインバータ用スナバ回路において、スナバモジュール内のスナバダイオード及びスナバモジュールの電極と水配管と接続された導体とを高絶縁性でかつ高熱伝導性のシートを介して接続したことを特徴とするインバータ用スナバ回路の冷却構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−113511(P2008−113511A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−295442(P2006−295442)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】
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