説明

インバータ装置およびそれを用いた誘導加熱装置

【課題】スイッチング素子の耐数年数をのばすと共に、駆動電圧を低下させることによるスイッチング素子の損失増加も改善させるインバータ装置およびそれを用いた誘導加熱装置を提供することを目的とする。
【解決手段】交流電圧を直流電圧に変換するコンバータ回路30と、スイッチング素子24で構成され直流電圧を任意の電圧と周波数の電力に変換し、負荷に高周波電流を供給するインバータ回路31と、インバータ回路31のスイッチング素子24にスイッチング信号を供給する駆動回路25と、インバータ回路31の出力電力を検知する電力検知手段26とを備え、電力検知手段26で検知した電力に応じて、インバータ回路31のスイッチング素子24に供給するスイッチング信号の駆動電圧を可変させる駆動電圧可変手段27とを備えた構成とすることで、インバータの出力電力に応じて、スイッチング素子24の駆動電圧を可変させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流を交流に変換するインバータを制御するインバータ制御装置およびそれを用いたトッププレート上の被加熱物を加熱する複数の加熱手段を備えた誘導加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のインバータ装置およびそれを用いた誘導加熱装置として、スイッチング素子を駆動する駆動回路とスイッチング素子のゲート端子との間に接続するゲート抵抗を可変抵抗とするインバータ制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4は特許文献1に記載されたインバータ制御装置の図である。図4は抵抗8を可変抵抗8aとすることで、スイッチングにおけるdv/dtを任意に決定することで、スイッチング時に発生するノイズを低減したインバータ制御装置としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−236266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の構成では、ゲート抵抗を可変できる構成とすることで、スイッチング速度を調整し、ノイズの低減を図っているがスイッチング時の損失が増大したり、スイッチング素子を駆動する駆動電圧は一定であるため、スイッチング素子のゲート酸化膜等の経時的な破壊現象が発生し、スイッチング素子の耐数年数が短くなったりするという課題があった。
【0006】
また、スイッチング素子を駆動する駆動電圧を低下させることで、スイッチング素子の耐数年数をのばすことは可能であるが、駆動電圧を低下させることにより、スイッチング素子のスイッチング速度の低下やスイッチング素子のオン抵抗の増大により損失が増大するという課題を有していた。
【0007】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、スイッチング素子の寿命をのばすと共に、駆動電圧を低下させることによるスイッチング素子の損失増加も改善させるインバータ装置およびそれを用いた誘導加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決するために、本発明のインバータ装置およびそれを用いた誘導加熱装置は、交流電圧を直流電圧に変換するコンバータと、スイッチング素子で構成され直流電圧を任意の電圧と周波数の電力に変換し、負荷に高周波電流を供給するインバータ部と、インバータ部のスイッチング素子にスイッチング信号を供給する駆動回路と、インバータ部の出力電力を検知する電力検知手段とを備え、電力検知手段で検知した電力に応じて、インバータ部のスイッチング素子に供給するスイッチング信号の駆動電圧を可変させる駆動電圧可変手段とを備えたものである。
【0009】
これにより、インバータの出力電力に応じて、スイッチング素子の駆動電圧を可変させることにより、スイッチング素子の寿命をのばすと共に、駆動電圧を低下させることによるスイッチング素子の損失増加も改善させることが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のインバータ装置およびそれを用いた誘導加熱装置は、スイッチング素子の寿命をのばすことができ、また駆動電圧を低下させることによるスイッチング素子の損失増加も改善させることができるため、スイッチング素子を用いたインバータ装置自体の製品寿命をのばすことができ、さらに損失増加も改善させることで、効率の良いインバータ装置およびそれを用いた誘導加熱装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施の形態1における誘導加熱装置の回路構成図
【図2】本実施の形態1におけるスイッチング素子の特性図
【図3】本実施の形態2における電気掃除機の回路構成図
【図4】従来の他のインバータ制御装置の構成図
【発明を実施するための形態】
【0012】
第1の発明は、交流電圧を直流電圧に変換するコンバータと、スイッチング素子で構成され直流電圧を任意の電圧と周波数の電力に変換し、負荷に高周波電流を供給するインバータ部と、インバータ部のスイッチング素子にスイッチング信号を供給する駆動回路と、インバータ部の出力電力を検知する電力検知手段とを備え、電力検知手段で検知した電力に応じて、インバータ部のスイッチング素子に供給するスイッチング信号の駆動電圧を可変させる駆動電圧可変手段とを備えたものである。これにより、インバータ部の出力電力に応じた制御が容易に可能となる。
【0013】
第2の発明は、電力検知手段で検知した電力が所定の電力以上であれば、インバータ部のスイッチング素子に供給するスイッチング信号を定格駆動電圧でスイッチング素子を制御し、電力検知手段で検知した電力が所定の電力未満であれば、インバータ部のスイッチング素子に供給するスイッチング信号を定格駆動電圧以下で制御するものである。
【0014】
これにより、スイッチング素子の寿命をのばすことができ、また駆動電圧を低下させることによるスイッチング素子の損失増加も改善させることができる。
【0015】
第3の発明は、インバータ部のスイッチング素子が、ダイヤモンド、GaN、SiC等のワイドギャップ半導体であることを特徴としている。これにより、スイッチング素子がスイッチングする際のスイッチング損失や、スイッチング素子が導通している際の導通損失を低減でき、インバータ装置およびそれを用いた誘導加熱装置の省エネを図ることができる。
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、誘導加熱装置を例とした本発明の実施の形態1の主要回路構成を示すものであり、電力変換回路、インバータ回路を示す。
【0018】
図1に示す誘導加熱装置は、200V商用電源21より整流回路・力率改善回路などを包含するフィルタ回路部22、平滑回路23のコンバータ回路30を介して、所定のタイミングで、オン・オフするスイッチング素子24により所定の周波数の高周波電力を発生させるインバータ回路31と、スイッチング素子24を駆動するための駆動信号を供給する駆動回路25と、インバータ回路30の出力電力を検知する電力検知手段26と、電力検知手段26の電力に応じて、スイッチング素子24を駆動するための駆動信号の電圧可
変させる駆動電圧可変手段27とを含む制御回路32と、高周波電力により高周波磁束を発生させる加熱手段28と、加熱手段28と直列に接続した共振コンデンサ29とを有している。
【0019】
また図示はしていないが、加熱手段28の上方に配置される硬質ガラス製のトッププレートと、加熱手段28上のガラス製トッププレートの上に鍋などの被加熱物を設置し、使用者が加熱操作を行なうことで、被加熱物の誘導加熱を行なう。
【0020】
以上のように構成された誘導加熱装置において、以下その動作、作用を説明する。使用者が被加熱物を設置し、加熱開始の操作を行なうことで、インバータ回路31は駆動回路25の駆動信号に基づいたスイッチング素子24のオンオフによって、商用電源21を整流回路22で整流し、平滑回路23で平滑した直流を高周波交流に変換し、加熱手段28に高周波電流を流すことで、加熱手段28と磁気結合した被加熱物に渦電流を発生させて、そのジュール熱で被加熱物を誘導加熱している。
【0021】
次に、被加熱物を誘導加熱する時のインバータ回路30の出力電力を電力検知手段26で検知し、検知した出力電力に応じて、駆動電圧可変手段27でスイッチング素子24を駆動するための駆動信号の電圧を可変させる。本実施の形態1では、駆動信号の電圧を可変させる電力の値を1500Wとし、スイッチング素子24を駆動するための定格駆動電圧を20Vとする。
【0022】
これにより、例えば電力検知手段26で検知した電力が2000Wであった場合、スイッチング素子24の駆動電圧は20Vで駆動し、検知した電力が1000Wであった場合は、スイッチング素子24の駆動電圧を定格駆動電圧の20V以下の15Vで駆動することができる。また、スイッチング素子には、SiC、GaN、SiGe、MOSFET、IGBTまたはトランジスタ等を使用している。
【0023】
また、図2(a)、(b)、(c)は、スイッチング素子の駆動電圧とスイッチング素子のオン抵抗、スイッチング速度、耐数年数の特性図の例をそれぞれ示す。スイッチング素子の駆動電圧を高くする程、スイッチング素子のオン抵抗は低くなり、スイッチング速度も速くなるため、スイッチング素子の損失は小さくすることが可能となる。
【0024】
しかしながら、スイッチング素子の駆動電圧を高くすることにより、スイッチング素子のゲート酸化膜等の経時的な破壊現象が所定の年数未満で発生したりして、スイッチング素子を使用している製品の保証年数未満でスイッチング素子が破壊することとなる。また、駆動電圧を下げることによりスイッチング素子の耐数年数をのばすことは可能となるが、損失が大きくなり製品の加熱効率が悪くなってしまう。
【0025】
そこで、本実施の形態のようにインバータの出力電力に応じて、駆動電圧を変えることにより、スイッチング素子の耐数年数をのばすと共に、スイッチング素子の損失においても、改善することができる。
【0026】
尚、本実施の形態では、インバータ回路は、フルブリッジ方式のインバータを用いているが、その他の方式のインバータを適用することができるのは言うまでもない。
【0027】
また、インバータの出力電力を電力検知手段26で検知しているが、整流回路22の手前で入力電流を検知し、入力電流に応じてスイッチング素子の駆動電圧を可変してもよい。
【0028】
また、本実施の形態では、駆動電圧を可変させる閾値を1つしか設けていないが、2つ
以上に分けて駆動させても良い。
【0029】
このようにして、スイッチング素子の耐数年数をのばすと共に極端にスイッチング素子の損失を増大させることなく、効率の良い加熱を実現することが可能となる。
【0030】
(実施の形態2)
図3は、電気掃除機を例とした本発明の実施の形態2の主要回路構成を示すものである。
【0031】
図3に示す電気掃除機は、交流電源41より整流回路・力率改善回路などを包含するフィルタ回路部42、平滑回路43のコンバータ回路50を介して、所定のタイミングで、オン・オフするスイッチング素子により所定の周波数の高周波電力を発生させるインバータ回路44と、スイッチング素子を駆動するための駆動信号を供給する駆動回路48と、モータ45に流れる電流を検出する電流検出手段47と、電流検知手段47の電流値に応じて、スイッチング素子を駆動するための駆動信号の電圧可変させる駆動電圧可変手段49とを含む制御回路51とを有している。45はモータであり、46はファンである。
【0032】
以上のように構成された電気掃除機において、以下その動作、作用を説明する。交流電源41から入力された電源は、フィルタ回路部42により整流された後、平滑コンデンサ43を通して平滑化された直流電力として、インバータ回路44により、所望の交流に変換され、ファン46を負荷とするモータ45を回転駆動する。
【0033】
次に、モータに流れる電流を電流検出手段47で検出し、検出した電流が所定の電流値以上であれば、スイッチング素子を駆動させる駆動電圧を定格駆動電圧とし、所定の電流値未満であれば、定格駆動電圧以下の電圧でスイッチング素子を駆動させる。
【0034】
また、本実施の形態では、モータ45に流れる電流を検出して駆動電圧を可変させているが、交流電源41からの入力部に設置された電力検出手段50の電力値に応じて、駆動電圧を可変しても良い。
【0035】
このように、モータに流れる電流に応じて、スイッチング素子の駆動電圧を可変させることにより、スイッチング素子の耐数年数をのばすと共に極端にスイッチング素子の損失を増大させることなく、効率の良いモータ駆動を実現することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上のように、本発明はインバータ回路を用いるあらゆる分野に応用することができるが、特に、誘導加熱装置に備えられたインバータ装置に用いると、高効率、高寿命の誘導加熱装置を実現することができる。
【符号の説明】
【0037】
24 スイッチング素子
25 駆動回路
26 電力検知手段
27 駆動電圧可変手段
28 加熱手段
29 共振コンデンサ
30 コンバータ回路
31 インバータ回路
32 制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子で構成され直流電圧を任意の電圧と周波数の電力に変換し、負荷に高周波電流を供給するインバータ部と、前記インバータ部のスイッチング素子にスイッチング信号を供給する駆動回路と、前記インバータ部の出力電力を検知する電力検知手段とを備え、前記電力検知手段で検知した電力に応じて、前記インバータ部のスイッチング素子に供給するスイッチング信号の駆動電圧を可変させる駆動電圧可変手段とを備えたインバータ装置。
【請求項2】
電力検知手段で検知した電力が所定の電力以上であれば、インバータ部のスイッチング素子に供給するスイッチング信号を定格駆動電圧で前記スイッチング素子を制御し、前記電力検知手段で検知した電力が所定の電力未満であれば、前記インバータ部のスイッチング素子に供給するスイッチング信号を定格駆動電圧以下で制御する請求項1に記載のインバータ装置。
【請求項3】
インバータ部のスイッチング素子が、ダイヤモンド、GaN、SiC等のワイドギャップ半導体である請求項1または2に記載のインバータ装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のインバータ装置を用いた誘導加熱装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−13163(P2013−13163A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249792(P2009−249792)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】