説明

インバータ電源装置及びアーク加工用電源装置

【課題】 電源装置に内蔵されているインバータ回路を複数並列に設けて並列運転を行ったとき、各インバータ回路の出力電流の平衡が実現すること。
【解決手段】 1次整流回路とこの回路に並列に設けた平滑コンデンサと、第1インバータ回路、第1変圧器、第1の2次整流回路及び第1直流リアクトルから成る主回路を平滑コンデンサと出力端子との間にN個並列に設けN個の主回路の総出力電流を検出する出力電流検出回路と、総出力電流に基づいてN個のパルス幅変調信号のパルス幅を制御するパルス幅変調回路と、N個の変圧器の出力電圧を検出するN個の出力電圧検出回路と、各出力電圧を整流するN個の出力電圧整流回路と、N個の直流電圧を平均し平均基準電圧とする平均基準電圧回路と、N個の直流電圧が平均基準電圧と略同一にするN個のパルス幅を補正するパルス幅補正回路と、を備えたインバータ電源装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に内蔵されているインバータ回路を複数並列に設けて、並列運転するインバータ電源装置及びアーク加工用電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アーク加工用電源装置において、出力電流の増大をはかるためにインバータ回路を複数並列に設け並列運転を行って対応してきた。
【0003】
図4は、インバータ回路、主変圧器、2次整流回路及び直流リアクトルで形成された主回路を、例えば2つ並列に設けた従来技術のアーク加工用電源装置である。同図において、商用交流電源ACを整流して直流電圧を出力する1次整流回路DR1と、直流電圧を平滑する平滑コンデンサC1とで直流電源回路が形成される。
【0004】
図4に示す、ブリッジ接続された第1のインバータ回路IN1は、第1のスイッチング素子TR1乃至第4のスイッチング素子TR4によって形成され、相対向する第1のスイッチング素子TR1及び第4のスイッチング素子TR4と、第2のスイッチング素子TR2及び第3のスイッチング素子TR3とが一対となり、一対が交互に導通と遮断とを繰り返して直流電圧を高周波交流電圧に変換して出力する。また、第2のインバータ回路IN2は、第5のスイッチング素子TR5乃至第8のスイッチング素子TR8によって形成され、第1のインバータ回路IN1と並列に設けられている。
【0005】
第1の主変圧器INT1は、第1のインバータ回路IN1によって変換された高周波交流電圧をアーク加工に適した高周波交流電圧に変換し、第1の2次整流回路DR2は、第1の主変圧器INT1の出力電力を整流し第1の直流リアクトルDCL1を介してトーチTHと被加工物Mとの間に電力を供給する。
【0006】
第2の主変圧器INT2は、第2のインバータ回路IN2によって変換された高周波交流電圧をアーク加工に適した高周波交流電圧に変換し、第2の2次整流回路DR3は、第2の主変圧器INT2の出力電力を整流して第2の直流リアクトルDCL2を介してトーチTHと被加工物Mとの間に電力を供給する。
【0007】
第1の出力電流検出回路ID1は、第1の主変圧器INT1の2次側の整流された出力電流を検出して第1の出力電流検出信号Id1として出力し、第2の出力電流検出回路ID2は、第2の主変圧器INT2の2次側の整流された出力電流を検出して第2の出力電流検出信号Id2として出力する。
【0008】
電流対応パルス幅変調回路PWIは、パルス周波数が一定でパルス幅を変調するPWM制御を行ない、第1の出力電流検出信号Id1と出力電流設定信号との偏差に基づいて第1のパルス幅変調Pw1及び第2のパルス幅変調信号Pw2のパルス幅を変調すると共に、第2の出力電流検出信号Id2と出力電流設定信号との偏差に基づいて第3のパルス幅変調Pw3及び第4のパルス幅変調Pw4のパルス幅を変調する。
【0009】
第1のインバータ駆動回路SD1は、第1のパルス幅変調Pw1に応じて、第1スイッチング素子駆動信号Tr1及び第4スイッチング素子駆動信号Tr4を出力し、第2のパルス幅変調信号Pw2に応じて、第2スイッチング素子駆動信号Tr2及び第3スイッチング素子駆動信号Tr3を出力する。また、第2のインバータ駆動回路SD2は、第3のパルス幅変調信号Pw3に応じて、第5スイッチング素子駆動信号Tr5及び第8スイッチング素子駆動信号Tr8を出力し、第4のパルス幅変調信号Pw4に応じて、第6スイッチング素子駆動信号Tr6及び第7スイッチング素子駆動信号Tr7を出力する。
【0010】
つぎに、動作について説明する。
電流対応パルス幅変調回路PWIは、第1の出力電流検出回路ID1によって検出された第1の出力電流検出信号Id1と予め定めた出力電流設定信号Irとを比較し、第1のパルス幅変調信号Pw1及び第2のパルス幅変調信号Pw2を生成すると共に、第2の出力電流検出回路ID2によって検出された第2の出力電流検出信号Id2と出力電流設定信号Irとを比較し、第3のパルス幅変調信号Pw3及び第4のパルス幅変調信号Pw4を生成して出力する。
【0011】
このとき、電流対応パルス幅変調回路PWIは、第1の出力電流検出信号Id1の値と出力電流設定信号Irとが略同一になるよう第1のパルス幅変調信号Pw1及び第2のパルス幅変調信号Pw2のパルス幅を変調すると共に、第2の出力電流検出信号Id2の値と出力電流設定信号Irとが略同一になるよう第3のパルス幅変調信号Pw3及び第4のパルス幅変調信号Pw4のパルス幅を変調するので、第1のインバータ回路IN1と第2のインバータ回路IN2との出力電流が平衡させることができ、インバータ回路の並列運転が可能となる。(例えば、特許文献1)
【0012】
しかし、複数の主回路を並列運転するには、主回路の台数に応じて高価な出力電流検出回路を複数必要とする。
【0013】
【特許文献1】実開平6−34873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従来技術において、インバータ回路、主変圧器、2次整流回路及び直流リアクトルから成る主回路をN個並列に設けたアーク加工用電源装置では、各主回路からの出力電流を検出し、この各出力電流を所定の出力電流設定値と比較し各出力電流が出力電流設定値と略同一になるようにパルス幅変調信号を制御し、この各パルス幅変調信号によって各インバータ回路を駆動すると、並列に設けられたN個の主回路の出力電流が略平衡となり並列運転が可能となる。
【0015】
しかし、N個の主回路を並列運転するには、台数に応じて出力電流検出回路が複数必要となるが、この出力電流検出回路は、高価なホールデバイスとそれに付属する電子部品によって形成されているために、価格が高くなり製品価格を下げる妨げとなる大きな要因となっていた。
【0016】
よって、本発明では、上述した課題を解決することができるアーク加工用電源装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
複数の主回路を並列運転する場合において、各主回路に流れる電流のバランスを取ることが必要となり、この電流バランスが崩れる最も大きな要因は、インバータ駆動回路を形成する部品及びインバータ回路を成する各スイッチング素子のばらつきによるON及びOFFのタイミングの差であることが解明されている。
上述の課題を解決するために、第1の発明は、商用交流電源を整流し直流電圧を出力する1次整流回路と、前記1次整流回路に並列に設けて直流電圧を平滑する平滑コンデンサと、前記直流電圧を高周波交流電圧に変換する第1のインバータ回路と、前記第1のインバータ回路の出力を所定の負荷に適した高周波交流電圧に変換する第1の主変圧器と、前記第1の主変圧器の出力電力を整流する第1の2次整流回路と、前記整流された出力電力を平滑して出力端子に出力する第1の直流リアクトルと、前記平滑コンデンサと出力端子との間にインバータ回路、主変圧器、2次整流回路及び直流リアクトルが直列接続して形成される主回路を(N−1)個並列に設け、前記主回路の総出力電流を検出し総出力電流検出信号として出力する総出力電流検出回路と、予め定めた出力電流設定信号を設定する出力電流設定回路と、前記総出力電流検出信号と前記出力電流設定信号との偏差に基づいて第1のパルス幅変調信号及び第2のパルス幅変調信号のパルス幅を変調するパルス幅変調回路と、前記第1の主変圧器の出力電圧を検出する第1の出力電圧検出回路乃至前記第Nの主変圧器の出力電圧を検出する第Nの出力電圧検出回路と、前記第1の出力電圧を整流し第1の直流電圧として出力する第1の出力電圧整流回路乃至前記第Nの出力電圧を整流し第Nの直流電圧として出力する第Nの出力電圧整流回路と、前記第1の直流電圧乃至第Nの直流電圧の平均を算出し平均基準電圧として出力する平均基準電圧回路と、前記第1の直流電圧と前記平均基準電圧との値が略同一になるように第1のパルス幅変調信号及び第2のパルス幅変調信号のパルス幅を補正し第1のパルス幅補正信号及び第2のパルス幅補正信号として出力する第1のパルス幅補正回路乃至前記第Nの直流電圧と前記平均基準電圧との値が略同一になるように第1のパルス幅変調信号及び第2のパルス幅変調信号のパルス幅を補正し第(2N−1)のパルス幅補正信号及び第(2N)のパルス幅補正信号として出力する第Nのパルス幅補正回路と、第1のパルス幅補正信号及び第2のパルス幅補正信号に応じて前記第1のインバータ回路を駆動する第1のインバータ駆動回路乃至前記第(2N−1)のパルス幅補正信号及び第(2N)のパルス幅補正信号に応じて前記第Nのインバータ回路を駆動する第Nのインバータ駆動回路と、を備えたことを特徴とするインバータ電源装置である。
【0018】
第2の発明は、前記パルス幅変調信号のパルス幅の補正は、前記平均基準電圧と前記直流電圧との偏差を算出し、前記偏差の値が正のとき前記正の値に基づいてパルス幅を短くし、前記偏差の値が負のとき前記負の値に基づいてパルス幅を長くすること、を特徴とする請求項1に記載のインバータ電源装置である。
【0019】
第3の発明は、前記第1の出力電圧検出回路乃至第Nの出力電圧検出回路は、前記第1の主変圧器乃至第Nの主変圧器の2次側に補助巻線を設けて形成すること、を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインバータ電源装置である。
【0020】
第4の発明は、前記請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のインバータ電源装置の出力電圧を、アーク負荷に適したアーク加工用電圧に変換すること、を特徴とするアーク加工用電源装置である。
【発明の効果】
【0021】
第1及び第2の発明によれば、インバータ回路、主変圧器、2次整流回路及び直流リアクトルが直列接続してなる主回路をN個並列に設け、この主回路の総出力電流を1個の出力電流検出回路で検出し、その検出した総出力電流に基づいて各インバータ回路のパルス幅変調信号のパルス幅を制御するアーク加工用電源装置において、抵抗及びホトカプラー等の低価な部品で形成される出力電圧検出回路を各主変圧器の2次側に設けて出力電圧を検出し、各出力電圧を整流して直流電圧とし、この複数の直流電圧を平均して平均基準電圧を求め、平均基準電圧と各主変圧器の直流電圧との偏差の値に基づいてインバータ回路を制御するパルス幅変調信号のパルス幅を補正すると、各直流電圧が平均基準電圧とが略同一になり、並列に設けられたN個の主回路の出力電流が略平衡する。
上記より、高価な出力電流検出回路1個と低価な出力電圧検出回路N個によって並列運転が可能となり、高価な出力電流検出回路の数を減少させることができる。
【0022】
第3の発明によれば、各主変圧器の2次側に補助巻線を設けることによって出力電圧検出回路が形成され、回路構成が非常に簡素化になり価格がさらに下がる。
【0023】
第4の発明によれば、アーク加工用電源装置にも適用でき溶接電流の増大が低価格で容易にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
複数の主回路を並列運転する場合において、並列運転の電流ばらつきの大きな要因は、各インバータ回路のON期間のばらつきであり、これにより、並列に設けられたN個の主回路の出力電流のバランスが取れなくなる。よって、本発明では、各主変圧器の2次側の出力電圧を検出し、この複数の出力電圧を平均して平均出力電圧を求め、この平均出力電圧と各主変圧器の出力電圧とが略同一になるように各インバータ回路を制御するパルス幅変調信号のパルス幅を補正すると、各インバータ回路のON期間のばらつきが抑制され、並列に設けられたN個の主回路の出力電流が略平衡となる。
【0025】
図1は、複数のインバータ回路のON期間のばらつきを抑制する本発明の実施形態に係る(例えば、主回路を2つ並列に設けた)アーク加工用電源装置である。同図において、図4に示す従来技術のアーク加工用電源装置の電気接続図と同一符号の構成物は、同一動作を行うので説明は省略し、符号の相違する構成物についてのみ説明する。
【0026】
第1の出力電圧検出回路VD1は、図示省略の抵抗及びホトカプラーによって形成し、第1の主変圧器INT1の2次側に設けることによって交流出力電圧を検出し第1の出力電圧検出信号Vd1として出力し、第2の出力電圧検出回路VD2は、図示省略の抵抗及びホトカプラーによって形成し、第2の主変圧器INT2の2次側に設けることによって交流出力電圧を検出し第2の出力電圧検出信号Vd2として出力する。
【0027】
第1の出力電圧整流回路AR1は、第1の出力電圧検出信号Vd1を整流し第1の直流電圧Ar1として出力し、第2の出力電圧整流回路AR2は、第2の出力電圧検出信号Vd2を整流し第2の直流電圧Ar2として出力し、第1の直流電圧Ar1及び第2の直流電圧Ar2はスイッチング素子のON時間に比例した電圧となる。
【0028】
平均基準電圧回路EAは、第1の直流電圧Ar1及び第2の直流電圧Ar2の2つの直流電圧の平均値を算出し平均基準電圧Eaとして出力する。
【0029】
パルス幅変調回路PWは、パルス周波数が一定でパルス幅を変調するPWM制御を行ない、総出力電流検出信号Idと出力電流設定信号Irとの偏差に基づいて第1のパルス幅変調信号Pw1及び第2のパルス幅変調信号Pw2のパルス幅を変調して出力する。
【0030】
第1のパルス幅補正回路SV1は、第1の直流電圧Ar1と平均基準電圧Eaとの偏差を算出し、この偏差の値に基づいて第1のパルス幅変調信号Pw1及び第2のパルス幅変調信号Pw2のパルス幅を補正して第1のパルス幅補正信号Sv1及び第2のパルス幅補正信号Sv2として出力する。
【0031】
第2のパルス幅補正回路SV2は、第2の直流電圧Ar2と平均基準電圧Eaとの偏差を算出し、この偏差の値に基づいて第1のパルス幅変調信号Pw1及び第2のパルス幅変調信号Pw2のパルス幅を補正して第3のパルス幅補正信号Sv3及び第4のパルス幅補正信号Sv4として出力する。
【0032】
第1のインバータ駆動回路SD1は、第1のパルス幅補正信号Sv1に応じて第1スイッチング素子駆動信号Tr1及び第4スイッチング素子駆動信号Tr4を出力し、第2のパルス幅補正信号Sv2に応じて、第2スイッチング素子駆動信号Tr2及び第3スイッチング素子駆動信号Tr3を出力する。
【0033】
第2のインバータ駆動回路SD2は、第3のパルス幅補正信号Sv3に応じて第5スイッチング素子駆動信号Tr5及び第8スイッチング素子駆動信号Tr8を出力し、第4のパルス幅補正信号Sv4に応じて、第6スイッチング素子駆動信号Tr6及び第7スイッチング素子駆動信号Tr7を出力する。
【0034】
図2は、本発明の実施の形態の動作を説明するための波形タイミング図である。図2において、同図(A)の波形は第1のパルス幅変調号Pw1を示し、同図(B)の波形は第2のパルス幅変調号Pw2を示し、同図(C)の波形は第1のスイッチング素子TR1及び図示省略の第4のスイッチング素子TR4のON時間を示し、同図(D)の波形は第2のスイッチング素子TR2及び図示省略の第3のスイッチング素子TR3のON時間を示し、同図(E)の波形は第1の直流電圧Ar1を示し、同図(F)の波形は第1のパルス幅補正信号Sv1を示し、同図(G)の波形は第2のパルス幅補正信号Sv2を示し、同図(H)の波形は第5のスイッチング素子TR5及び図示省略の第8のスイッチング素子TR8のON時間を示し、同図(I)の波形は第6のスイッチング素子TR6及び図示省略の第7のスイッチング素子TR7のON時間を示し、同図(J)の波形は第2の直流電圧Ar2を示し、同図(K)の波形は第3のパルス幅補正信号Sv3を示し、同図(L)の波形は第4のパルス幅補正信号Sv4を示す。
【0035】
並列運転の電流ばらつきの大きな要因は、各インバータ回路のON期間のばらつきであり、これにより、並列に設けられたN個の主回路の出力電流のバランスが取れなくなる。よって、本発明では、各主変圧器の2次側の出力電圧を検出し、この複数の出力電圧を平均して平均出力電圧を求め、この平均出力電圧と各主変圧器の出力電圧とが略同一になるように各インバータ回路を制御するパルス幅変調信号のパルス幅を補正すると、各インバータ回路のON期間のばらつきが抑制され、並列に設けられた2個の主回路の出力電流が略平衡となる。
【0036】
上記の動作について、図2の波形タイミング図を用いて詳細に説明する。
図1に示す起動スイッチTSから起動信号Tsが出力されるとパルス幅変調回路PWは、総出力電流検出信号Idと出力電流設定信号Irとの偏差に基づいて定まる、図2(A)に示すパルス幅時間T1の第1のパルス幅変調信号Pw1を出力する。
【0037】
図2に示す時刻t=t1において、図2(A)に示す第1のパルス幅変調信号Pw1が第1のパルス幅補正回路SV1に入力されると、第1のパルス幅補正回路SV1は、第1のパルス幅変調信号Pw1のHighに応じて同図(F)に示す第1のパルス幅補正信号Sv1をHighにすると共に、第1のパルス幅変調信号Pw1は第2のパルス幅補正回路SV2にも入力され、第2のパルス幅補正回路SV2は、第1のパルス幅変調信号Pw1のHighに応じて同図(K)に示す第3のパルス幅補正信号Sv3をHighにする。
【0038】
図2に示す時刻t=t2において、図2(A)に示す第1のパルス幅変調信号Pw1がLowになると、第1のパルス幅補正回路SV1は第1のパルス幅変調信号Pw1のLowに応じて第1のパルス幅補正信号Sv1をLowにすると共に、第2のパルス幅補正回路SV2も第1のパルス幅変調信号Pw1のLowに応じて第2のパルス幅補正信号Sv2をLowにする。
【0039】
しかし、第1のインバータ駆動回路SD1を形成する部品及び第1のスイッチング素子TR1及び第4のスイッチング素子TR4のゲート容量等のばらつきにより、第1のスイッチング素子TR1及び第4のスイッチング素子TR4のOFFのタイミングが遅れ、図2(C)に示すT2の時間、第1のスイッチング素子TR1及び第4のスイッチング素子TR4がONし、時刻t=t4においてOFFする。
【0040】
さらに、第2のインバータ駆動回路SD2を形成する部品及び第5のスイッチング素子TR1及び第8のスイッチング素子TR8のゲート容量等のばらつきにより、第5のスイッチング素子TR5及び第8のスイッチング素子TR8のOFFのタイミングが速くなり、同図(H)に示すT5の時間、第5のスイッチング素子TR5及び第8のスイッチング素子TR8がONし、時刻t=t3においてOFFする。
【0041】
図2に示す時刻t=t5において、図2(B)に示す第2のパルス幅変調信号Pw2が第1のパルス幅補正回路SV1に入力されると、第1のパルス幅補正回路SV1は、第2のパルス幅変調信号Pw2のHighに応じて同図(G)に示す第2のパルス幅補正信号Sv2をHighにすると共に、第2のパルス幅変調信号Pw2は第2のパルス幅補正回路SV2にも入力され、第2のパルス幅補正回路SV2は、第2のパルス幅変調信号Pw2のHighに応じて同図(L)に示す第4のパルス幅補正信号Sv4をHighにする。
【0042】
図2に示す時刻t=t6において、図2(B)に示す第2のパルス幅変調信号Pw2がLowになると、第1のパルス幅補正回路SV1は第2のパルス幅変調信号Pw2のLowに応じて第2のパルス幅補正信号Sv2をLowにすると共に、第2のパルス幅補正回路SV2も第2のパルス幅変調信号Pw2のLowに応じて第4のパルス幅補正信号Sv4をLowにする。
【0043】
しかし、第2のインバータ駆動回路SD1を形成する部品及び第2のスイッチング素子TR2及び第3のスイッチング素子TR3のゲート容量等のばらつきにより、第2のスイッチング素子TR2及び第3のスイッチング素子TR3のOFFのタイミングが遅れ、図2(D)に示すT2の時間、第2のスイッチング素子TR2及び第3のスイッチング素子TR3がONし、時刻t=t8においてOFFする。
【0044】
さらに、第2のインバータ駆動回路SD2を形成する部品及び第6のスイッチング素子TR6及び第7のスイッチング素子TR7のゲート容量等のばらつきにより、第6のスイッチング素子TR6及び第7のスイッチング素子TR7のOFFのタイミングが速くなり、同図(I)に示すT5の時間、第6のスイッチング素子TR6及び第7のスイッチング素子TR7がONし、時刻t=t7においてOFFする。
【0045】
つぎに、時刻t=t8において、第1のパルス幅補正回路SV1は、図2(E)に第1の直流電圧Ar1と平均基準電圧Eaとの偏差を求めて正の偏差値を算出する。
【0046】
時刻t=t9において、図2(A)に示す第1のパルス幅変調信号Pw1が第1のパルス幅補正回路SV1に入力されると、第1のパルス幅補正回路SV1は、第1のパルス幅変調信号Pw1のHighに応じて同図(F)に示す第1のパルス幅補正信号Sv1をHighにする。そして、正の偏差値に基づいて第1のパルス幅補正信号Sv1のON時間がT4と短くなるように補正を行ない、時刻t=t10において、第1のパルス幅補正信号Sv1をLowにし、所定時間が経過した時刻t=t11において、第1のパルス幅変調信号Pw1がLowになる。
【0047】
第1のスイッチング素子TR1及び第4のスイッチング素子TR4のON時間は、補正された第1のパルス幅補正信号Sv1に応じて、図2(C)に示すT3のON時間が決定され時刻t=t13においてOFFする。
【0048】
時刻t=t8において、第2のパルス幅補正回路SV2は、図2(J)に第2の直流電圧Ar2と平均基準電圧Eaとの偏差を求めて負の偏差値を算出する。
【0049】
時刻t=t9において、図2(A)に示す第1のパルス幅変調信号Pw1が第2のパルス幅補正回路SV2に入力されると、第2のパルス幅補正回路SV2は、第1のパルス幅変調信号Pw1のHighに応じて同図(K)に示す第3のパルス幅補正信号Sv3をHighにする。そして、負の偏差値に基づいて第3のパルス幅補正信号Sv3のON時間がT6と長くなるように補正を行ない、時刻t=t12において、第3のパルス幅補正信号Sv3をLowにする。
【0050】
第5のスイッチング素子TR5及び第8のスイッチング素子TR8のON時間は、補正された第3のパルス幅補正信号Sv3に応じて、図2(H)に示すT3のON時間が決定され時刻t=t13においてOFFする。
【0051】
時刻t=t14において、図2(B)に示す第2のパルス幅変調信号Pw2が第1のパルス幅補正回路SV1に入力されると、第1のパルス幅補正回路SV1は、第2のパルス幅変調信号Pw2のHighに応じて同図(G)に示す第2のパルス幅補正信号Sv2をHighにする。そして、正の偏差値に基づいて第2のパルス幅補正信号Sv2のON時間がT4と短くなるように補正を行ない、時刻t=t15において、第2のパルス幅補正信号Sv2をLowにし、所定時間が経過した時刻t=t16において、第2のパルス幅変調信号Pw2がLowになる。
【0052】
第2のスイッチング素子TR2及び第3のスイッチング素子TR3のON時間は、補正された第2のパルス幅補正信号Sv2に応じて、図2(D)に示すT3のON時間が決定され時刻t=t16においてOFFする。
【0053】
時刻t=t14において、図2(B)に示す第2のパルス幅変調信号Pw2が第2のパルス幅補正回路SV2に入力されると、第2のパルス幅補正回路SV2は、第2のパルス幅変調信号Pw2のHighに応じて同図(K)に示す第4のパルス幅補正信号Sv4をHighにする。そして、負の偏差値に基づいて第4のパルス幅補正信号Sv4のON時間がT6と長くなるように補正を行ない、時刻t=t17において、第4のパルス幅補正信号Sv4をLowにする。
【0054】
第6のスイッチング素子TR6及び第7のスイッチング素子TR7のON時間は、補正された第4のパルス幅補正信号Sv4に応じて、図2(H)に示すT3のON時間が決定され時刻t=t18においてOFFする。このとき、各インバータ回路を形成する第1のスイッチング素子乃至第8のスイッチング素子の各ON時間が略同一になる。
【0055】
上述の補正により時刻t=t18において、第1の直流電圧Ar1と第2の直流電圧Ar2とが略同一になり補正が終了し、時刻t=t18以後は、第1の直流電圧Ar1と第2の直流電圧Ar2とが略同一になり、並列に設けられたインバータ回路の出力電流が略平衡となり、高価な出力電流検出回路を複数使用しなくても並列運転が可能となる。
【0056】
図3は、実施形態2に係る(例えば、主回路を2つ並列に設けた)アーク加工用電源装置である。同図において、図1及び図4に示すアーク加工用電源装置の電気接続図と同一符号の構成物は、同一動作を行うので説明は省略し、符号の相違する構成物についてのみ説明する。
【0057】
第1の出力電圧検出回路VD1は、第1の主変圧器INT1の2次側の補助巻線の交流出力電圧を検出し第1の出力電圧検出信号Vd1として出力し、第2の出力電圧検出回路VD2は、第2の主変圧器INT2の2次側の補助巻線の交流出力電圧を検出し第2の出力電圧検出信号Vd2として出力する。以後は上述の同一動作を行うので説明は省略する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の形態1のアーク加工用電源装置の電気接続図である。
【図2】図1に示す本発明の動作を説明するための波形タイミング図である。
【図3】実施の形態2のアーク加工用電源装置の電気接続図である。
【図4】従来技術のアーク加工用電源装置の電気接続図である。
【符号の説明】
【0059】
AR1 第1の出力電圧整流回路
AR2 第2の出力電圧整流回路
AR3 第3の出力電圧整流回路
C1 平滑コンデンサ
DR1 1次整流回路
DR2 第1の2次整流回路
DR3 第2の2次整流回路
DR4 第3の2次整流回路
DCL1 第1の直流リアクトル
DCL2 第2の直流リアクトル
DCL3 第3の直流リアクトル
EA 平均基準電圧回路
ID 総出力電流検出回路
ID1 第1の出力電流検出回路
ID2 第2の出力電流検出回路
Id 総出力電流検出信号
Id1 第1の出力電流検出信号
Id2 第2の出力電流検出信号
IR 出力電流設定回路
Ir 出力電流設定値
INT1 第1の主変圧器
INT2 第2の主変圧器
INT3 第3の主変圧器
M 被加工物
PW パルス幅変調回路
PWI 電流対応パルス幅変調回路
Pw1 第1のパルス幅変調信号
Pw2 第2のパルス幅変調信号
Pw3 第3のパルス幅変調信号
Pw4 第4のパルス幅変調信号
SV1 第1のパルス幅補正回路
SV2 第2のパルス幅補正回路
Sv1 第1のパルス幅補正信号
Sv2 第2のパルス幅補正信号
Sv3 第3のパルス幅補正信号
Sv4 第4のパルス幅補正信号
SD1 第1のインバータ駆動回路
SD2 第2のインバータ駆動回路
TH トーチ
TS 起動スイッチ
Ts 起動信号
TR1 第1のスイッチング素子
TR2 第2のスイッチング素子
TR3 第3のスイッチング素子
TR4 第4のスイッチング素子
TR5 第5のスイッチング素子
TR6 第6のスイッチング素子
TR7 第7のスイッチング素子
TR8 第8のスイッチング素子
Tr1 第1スイッチング素子駆動信号
Tr2 第2スイッチング素子駆動信号
Tr3 第3スイッチング素子駆動信号
Tr4 第4スイッチング素子駆動信号
Tr5 第5スイッチング素子駆動信号
Tr6 第6スイッチング素子駆動信号
Tr7 第7スイッチング素子駆動信号
Tr8 第8スイッチング素子駆動信号
VD1 第1の出力電圧検出回路
VD2 第2の出力電圧検出回路




【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用交流電源を整流し直流電圧を出力する1次整流回路と、前記1次整流回路に並列に設けて直流電圧を平滑する平滑コンデンサと、前記直流電圧を高周波交流電圧に変換する第1のインバータ回路と、前記第1のインバータ回路の出力を所定の負荷に適した高周波交流電圧に変換する第1の主変圧器と、前記第1の主変圧器の出力電力を整流する第1の2次整流回路と、前記整流された出力電力を平滑して出力端子に出力する第1の直流リアクトルと、前記平滑コンデンサと出力端子との間にインバータ回路、主変圧器、2次整流回路及び直流リアクトルが直列接続して形成される主回路を(N−1)個並列に設け、前記主回路の総出力電流を検出し総出力電流検出信号として出力する総出力電流検出回路と、予め定めた出力電流設定信号を設定する出力電流設定回路と、前記総出力電流検出信号と前記出力電流設定信号との偏差に基づいて第1のパルス幅変調信号及び第2のパルス幅変調信号のパルス幅を変調するパルス幅変調回路と、前記第1の主変圧器の出力電圧を検出する第1の出力電圧検出回路乃至前記第Nの主変圧器の出力電圧を検出する第Nの出力電圧検出回路と、前記第1の出力電圧を整流し第1の直流電圧として出力する第1の出力電圧整流回路乃至前記第Nの出力電圧を整流し第Nの直流電圧として出力する第Nの出力電圧整流回路と、前記第1の直流電圧乃至第Nの直流電圧の平均を算出し平均基準電圧として出力する平均基準電圧回路と、前記第1の直流電圧と前記平均基準電圧との値が略同一になるように第1のパルス幅変調信号及び第2のパルス幅変調信号のパルス幅を補正し第1のパルス幅補正信号及び第2のパルス幅補正信号として出力する第1のパルス幅補正回路乃至前記第Nの直流電圧と前記平均基準電圧との値が略同一になるように第1のパルス幅変調信号及び第2のパルス幅変調信号のパルス幅を補正し第(2N−1)のパルス幅補正信号及び第(2N)のパルス幅補正信号として出力する第Nのパルス幅補正回路と、第1のパルス幅補正信号及び第2のパルス幅補正信号に応じて前記第1のインバータ回路を駆動する第1のインバータ駆動回路乃至前記第(2N−1)のパルス幅補正信号及び第(2N)のパルス幅補正信号に応じて前記第Nのインバータ回路を駆動する第Nのインバータ駆動回路と、を備えたことを特徴とするインバータ電源装置。
【請求項2】
前記パルス幅変調信号のパルス幅の補正は、前記平均基準電圧と前記直流電圧との偏差を算出し、前記偏差の値が正のとき前記正の値に基づいてパルス幅を短くし、前記偏差の値が負のとき前記負の値に基づいてパルス幅を長くすること、を特徴とする請求項1に記載のインバータ電源装置。
【請求項3】
前記第1の出力電圧検出回路乃至第Nの出力電圧検出回路は、前記第1の主変圧器乃至第Nの主変圧器の2次側に補助巻線を設けて形成すること、を特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインバータ電源装置。
【請求項4】
前記請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のインバータ電源装置の出力電圧を、アーク負荷に適したアーク加工用電圧に変換すること、を特徴とするアーク加工用電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−189174(P2009−189174A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27319(P2008−27319)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】