説明

インビボおよび/またはインビトロ安定性が増大した生物学的に活性なタンパク質

本発明は、少なくとも2つのドメインを含む生物学的に活性なタンパク質に関し、前記少なくとも2つのドメインの第1のドメインは、前記生物活性を有し、かつ/または媒介するアミノ酸配列を含み、前記少なくとも2つのドメインの第2のドメインは、好ましくは少なくとも約100アミノ酸残基からなり、ランダムコイルコンフォメーションを形成するアミノ酸配列を含み、これにより前記ランダムコイルコンフォメーションは、前記生物学的に活性なタンパク質のインビボおよび/またはインビトロ安定性の増大を媒介する。さらに、本発明の生物学的に活性なタンパク質をコードする核酸分子、ならびに前記核酸分子を含むベクターおよび細胞が開示される。さらに、本発明は、本発明の化合物を含む組成物、ならびに本発明の生物学的に活性なタンパク質、核酸分子、ベクターおよび細胞の特定の使用を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2つのドメインを含む生物学的に活性なタンパク質に関し、前記少なくとも2つのドメインの第1のドメインは、前記生物活性を有し、かつ/または媒介するアミノ酸配列を含み、前記少なくとも2つのドメインの第2のドメインは、好ましくは少なくとも約100アミノ酸残基からなり、ランダムコイルコンフォメーションを形成するアミノ酸配列を含み、これにより前記ランダムコイルコンフォメーションは、前記生物学的に活性なタンパク質のインビボおよび/またはインビトロ安定性の増大を媒介する。さらに、本発明の生物学的に活性なタンパク質をコードする核酸分子、ならびに前記核酸分子を含むベクターおよび細胞が開示される。さらに、本発明は、本発明の化合物を含む組成物、ならびに本発明の生物学的に活性なタンパク質、核酸分子、ベクターおよび細胞の特定の使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
ヒト血清アルブミン(HSA)およびヒト化抗体を含む免疫グロブリン(Ig)などの一般的な血漿タンパク質は、典型的には2〜3週間の長い半減期を示す。これは、新生児Fc受容体(FcRn)とこれらとの特異的相互作用に寄与し、エンドソームリサイクリングをもたらす(Ghetie(2002年)Immunol Res,25.97〜113頁)。一方、薬学的目的のほとんどの他のタンパク質、特に組換え抗体フラグメント、ホルモン、インターフェロン等は、急速な(血中)クリアランスを受ける。これは特に、腎濾過の閾値約70kDaより小さいサイズのタンパク質に当てはまる(Caliceti(2003年)Adv Drug Deliv Rev 55:1261〜1277頁)。これらのケースでは、非修飾薬学的タンパク質の血漿半減期は1時間よりかなり短い場合があり、故にほとんどの治療適用に対し該タンパク質を本質的に役に立たなくする。薬理作用を持続させ、患者のコンプライアンス(数日または数週間延びる所要投与間隔への)も改善するため、幾つかの戦略が生物薬剤開発の目的で以前に確立された。
【0003】
第1に、天然血漿タンパク質のリサイクリング機構が、IgのFC部分を有する融合タンパク質、例えばTNFα受容体の細胞外ドメインとヒトIgG1との間のハイブリッドであるEnbrel(登録商標)(Goldenberg(1999年)Clin Ther 21:75〜87頁)、または血清アルブミンを有する融合タンパク質、例えばHSAとIFNαの対応する融合であるAlbuferon(登録商標)(Osborn(2002年)J Pharmacol Exp Ther 303:540〜548頁)の生成により使用されている。600μMの高い血漿濃度を有するアルブミンも間接的方法で活用されており、例えば連鎖球菌プロテインG由来の細菌アルブミン結合ドメイン(ABD)(Makrides(1996年)J Pharmacol Exp Ther 277:534〜542頁)、またはファージディスプレイライブラリーからHSAに対して選択されたペプチド(Dennis(2002年)J Biol Chem、277:35035〜35043頁;Nguyen(2006年)Protein Eng Des Sel 19:291〜297頁)との融合により、アルブミン結合機能を備えた生物薬剤用の担体ビヒクルとして役立つ。
【0004】
第2に、生物薬剤の血漿半減期を延長するための根本的に異なる方法が、高度に溶媒和され生理的に不活性な化学ポリマーとの結合であり、故に約3〜5nmの糸球体孔サイズを超えて治療タンパク質の流体力学半径を効果的に拡大する(Caliceti(2003年)同上)。Lys側鎖(Clark(1996年)J Biol Chem 271:21969〜21977年)、または特異的に導入されたCys残基(Rosendahl(2005年)BioProcess International:52〜60頁)のどちらか無作為による、ポリエチレングリコール(PEG)活性化誘導体との生化学的に穏和な条件下での共有結合は、適度に成功しており、現在、幾つかの承認薬剤に適用されている。相当する利点は特に、特定の薬理活性を有する低分子タンパク質、例えば化学的にペグ化した組換えIFN−α−2a(Harris(2003年)Nat Rev Drug Discov、2:214〜221頁;Walsh(2003年)Nat Biotechnol 21:865〜870年)であるPegasys(登録商標)との併用で得られている。
【0005】
しかし、合成ポリマーと生物学的に活性なタンパク質の化学結合は、生物薬剤の開発および製造に関して欠点を有する場合がある。適切なPEG誘導体は、特に高い純度が必要であるほど高価となり、組換えタンパク質との結合は追加のインビトロ処理および精製ステップを要し、収量を低下させ製造コストを増大させる。事実、PEGは、アルデヒドおよびペルオキシドにより汚染される場合が多く(Ray(1985年)Anal Biochem 146:307〜312頁)、本質的に、酸素存在下での貯蔵時に化学分解する傾向がある。また、治療タンパク質の生化学的活性部位の近くのアミノ酸側鎖がペグ化プロセスにより修飾されるようになれば、該タンパク質の薬学的機能は妨害される。さらに、合成ポリマーとの化学結合は、通常、分子の不均一混合物をもたらし、インビボ活性の実質的な不均一を示す可能性がある。
【0006】
第3に、新しいN−結合グリコシル化コンセンサス配列が導入された生物学的に活性なタンパク質のグリコシル化アナログの使用が、血清半減期を延長するために提案された。WO 02/02597、Perlman(2003年)J Clin Endocrinol Metab 88:2327〜2335頁、またはElliott(2003年)Nat Biotechnol 21:414〜420頁を参照されたい)。しかし、記載された糖鎖改変タンパク質(glycoenginerredprotein)は、変化したインビボ活性を示した。これは、新たな炭水化物側鎖が、改変タンパク質の生物活性に影響することを示す。さらに、別の炭水化物側鎖が、得られた生物学的活性分子の抗原性を増加させる可能性があり、重大な安全上の懸念をもたらす。
【0007】
さらに、クルーズトリパノソーマ由来人工反復配列PSTADを含む融合タンパク質は、トランスシアリダーゼの血漿半減期の延長を誘導することが報告されている(Alvarez(2004年)PNAS 279:3375〜3381頁)。だが、こうしたクルーズトリパノソーマ由来反復は、液性免疫応答を誘導することが報告されている(Alvarez(2004年)同上)。したがって、生物学的に活性なタンパク質の作用を延長する代替手段が望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の根底にある技術的問題は、インビボおよび/またはインビトロ安定性が増大した生物学的に活性なタンパク質の提供である。上記技術的問題の解決は、特許請求の範囲に特徴づけられた実施形態の提供により得られる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明は、少なくとも2つのドメインを含む生物学的に活性なタンパク質に関し、
(a)前記少なくとも2つのドメインの第1のドメインは、前記生物活性を有し、かつ/または媒介するアミノ酸配列を含み、
(b)前記少なくとも2つのドメインの第2のドメインは、好ましくは少なくとも約100アミノ酸残基からなり、ランダムコイルコンフォメーションを形成するアミノ酸配列を含む。
【0010】
本発明によれば、ランダムコイルコンフォメーションを形成する/とる前記第2のドメインは、前記生物学的に活性なタンパク質のインビボおよび/またはインビトロ安定性の増大を媒介することができる。したがって、前記第2のドメインは、本明細書で後述されるように、所与の生物活性を有し、かつ/または媒介する所与のタンパク質(またはこのフラグメント)のインビボおよび/またはインビトロ安定性の増大をもたらす。
【0011】
本明細書で以下および添付の実施例に記載されるように、静脈投与された、ランダムコイルドメイン/部分を含むように修飾された生物学的に活性なタンパク質は、驚くべきことに、非修飾の生物学的に活性なタンパク質(すなわち前記ランダムコイルドメインを欠く)と比べた場合、予期せぬ血漿半減期の延長を示すことが見出された。
【0012】
本明細書では、用語「ランダムコイル」は、アミノ酸ポリマーを含む高分子の特定のコンフォメーションに関し、前記ポリマー構造を形成する個々のモノマー要素は、基本的に、隣接するモノマー要素方向に対してランダムに配向すると同時に、前記隣接するモノマー要素に化学結合している。特に、「ランダムコイルコンフォメーション」をとる/有する/形成するポリペプチドまたはアミノ酸ポリマーは、明確な2次および3次構造を実質的に欠く。ポリペプチドランダムコイルの性質およびこの実験的同定方法は、当業者に知られており、科学文献に記載されている(Cantor(1980年)Biophysical Chemistry、第2版、W.H.Freeman and Company、New York;Creighton(1993年)Proteins−Structures and Molecular Properties、第2版、W.H.Freeman and Company、 New York;Smith(1996年)Fold Des 1:R95〜R106頁)。
【0013】
本発明の生物学的に活性なタンパク質は、生理学的条件でランダムコイルコンフォメーションをとる/形成するドメイン(本発明の生物学的に活性なタンパク質の前記「第2のドメイン」として本明細書で上述された)を含む。用語「生理学的条件」は当技術分野で知られており、タンパク質が通常、天然の(native)コンフォメーションをとるような状態に関する。より具体的には、用語「生理学的条件」は、典型的には高次の生物形態、特に哺乳類、最も好ましくはヒトにおいて有効なため、生物物理学的パラメータに関する。用語「生理学的条件」は、通常は哺乳類の体で(特に体液で)および特にヒトにおいて見出されるため、生化学的および生物物理学的パラメータに関する場合がある。前記「生理学的条件」は、健康な体で見出される対応するパラメータ、および病気の哺乳類またはヒト患者で見出されるパラメータに関する場合がある。例えば、病気の哺乳類またはヒト患者は、前記哺乳類または前記ヒトが発熱する場合、より高温だが、「生理学的な」温度条件を有する場合がある。タンパク質が天然のコンフォメーション/状態をとる「生理学的条件」に関して、最も重要なパラメータは、温度(ヒトの体では37℃)、pH(ヒト血液では7.35〜7.45)、オスモル濃度(280〜300mmol/kg HO)、および必要であれば、タンパク質含量(66〜85g/l血清)である。その一方で、当業者は、生理学的条件でこれらのパラメータは変化する場合があり、例えば温度、pH、オスモル濃度、およびタンパク質含量は、血液、脳脊髄液、腹水およびリンパ液などの所与の体液または組織液で異なる場合があることを認識している(Klinke(2005年)Physiologie、第5版、Georg Thieme VerIag、Stuttgart)。脳脊髄液では、例えばオスモル濃度は、約290mmol/kg HOであり得、タンパク質濃度は0.15g/l〜0.45g/lの間であり得る。リンパ球では、pHは約7.4であり得、タンパク質含量は3g/l〜5g/lの間であり得る。
【0014】
アミノ酸ポリマー配列が、本明細書で後述される方法により実験条件下でランダムコイルコンフォメーションを形成する/とるかどうかを判定する場合、温度、pH、オスモル濃度およびタンパク質含量などの生物物理学的パラメータは、通常インビボで見出される生理学的条件とは異なる可能性がある。1℃〜42℃または好ましくは4℃〜25℃の間の温度は、インビトロでの生理学的条件下でタンパク質の生物物理学的特性および生物活性をテストし、かつ/または検証するのに有用と考えることができる。
【0015】
特に実験的設定(例えばタンパク質構造の判定、特に円二色性(CD)測定、および当業者がタンパク質/アミノ酸ストレッチの構造特性を判定するのを可能にする他の方法における)での幾つかの緩衝液、または医薬組成物のための緩衝液、溶媒および/もしくは賦形剤は、インビトロでの「生理学的溶液」/「生理学的条件」となると考えられる。こうした緩衝液の例は、例えばリン酸緩衝生理食塩水(PBS:115mM NaCl、4mM KHPO、16mM NaHPO pH7.4)、トリス緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液または添付の実施例で使用されるもののような類似の緩衝液である。一般に、「生理学的溶液条件」となる緩衝液のpHは6.5〜8.5の範囲、好ましくは7.0〜8.0の範囲、最も好ましくは7.2〜7.7の範囲にあるべきであり、オスモル濃度は100〜1000mmol/kg HOの範囲、より好ましくは50〜500mmol/kg HOの範囲および最も好ましくは200〜350mmol/kg HOの範囲にあるべきである。場合によっては、生理学的溶液条件となる緩衝液のタンパク質含量は、生物活性自体を備えるタンパク質を無視して、0〜100g/lの範囲にあってよく、これにより典型的な安定化タンパク質(stabilizing protein)、例えばヒトまたはウシ血清アルブミンを使用することができる。
【0016】
したがって、本発明の生物学的に活性なタンパク質の上記に定義された「第2のドメイン」に含まれるようなランダムコイルコンフォメーションは、液体医薬品のような医薬組成物において維持されることも本発明と関連して想定される。好ましくは、「生理学的条件」は、対応する緩衝液系、溶媒および/または賦形剤で使用されるべきである。ただし、例えば凍結乾燥または乾燥組成物(例えば医薬組成物のような)では、本発明の生物学的に活性なタンパク質の「第2のドメイン」に含まれるようなランダムコイルコンフォメーションは、一過性に現れないおよび/または検出され得ないことが想定される。しかし、前記「第2のドメイン」は、本発明のタンパク質構築物により、対応する緩衝液/溶液/賦形剤/溶媒に再溶解した後にランダムコイルを再びとる/形成するであろう。これは、例えば本発明のタンパク質構築物が凍結乾燥または乾燥されていた(例えば医薬組成物の形態で)場合である。本明細書で定義された「第1の」および「第2の」ドメインを含む、こうした凍結乾燥/乾燥された本発明のタンパク質構築物の再溶解後、ランダムコイル部分/ドメインは再び現れるので、対応する本発明の構築物を、例えば、医学的介入を必要とする哺乳類またはヒト患者に投与することができる。
【0017】
上述のように、本発明の生物学的に活性なタンパク質は、生理学的条件で/下でランダムコイルコンフォメーションをとる/形成するドメイン(本発明の生物学的に活性なタンパク質の前記「第2のドメイン」として本明細書で上記に定義された)を含む。
【0018】
本発明の生物学的に活性なタンパク質とは対照的に、変性タンパク質は、機能的コンフォメーションを喪失し、前記変性の結果、部分的にランダムコイルコンフォメーションをとることができるタンパク質である。タンパク質は、非生理学的な温度、pHおよび/もしくは塩濃度への曝露、または尿素/塩化グアニジンのような変性剤および洗浄剤への曝露を含むさまざまな手段により変性することができる。したがって、生理学的条件下でタンパク質を試験する場合、尿素、塩化グアニジンまたはドデシル硫酸ナトリウムなど、タンパク質に対する変性効果を有することが知られている化合物の存在は避けるべきである。尿素は、ヒト血液または尿における生理学的条件下で適用するためタンパク質を調べる場合、それぞれ、10mmol/lまたはさらには300mmol/lの濃度まで許容することができる。
【0019】
変性ポリペプチドとは対照的に、本発明のタンパク質構築物に含まれるようなランダムコイルドメイン(前記「第2のドメイン」)のアミノ酸配列は、特にインビボで、および医学的介入を必要とする哺乳類またはヒト患者に投与される場合、自然にはランダムコイルコンフォメーションをとる/有する。したがって、本発明のタンパク質構築物(上記に定義された「第1の」および「第2のドメイン」を含む)は、本明細書で特定されたアラニン、セリン、およびプロリンストレッチ(または生理学的条件下でランダムコイルを形成する/有する/とる他のアミノ酸ストレッチ)の形態で「第2の」、ランダムコイル形成/採用ドメインを含むことができるが、(例えば、凍結乾燥物または乾燥組成物のような特定の組成物の形態で)一過性にまたは一時的にランダムコイル形態ではない場合があることも想定される。ただし、本発明のタンパク質構築物のこうした「第2のドメイン」は、例えば、対応する緩衝液(好ましくは「生理学的」緩衝液/賦形剤および/または溶媒)に再溶解した後に、本明細書で定義されたランダムコイルを再びとることが重要である。前記「第2のドメイン」は、(対応する再構成後に)本発明の生物学的に活性なタンパク質のインビボおよび/またはインビトロ安定性の増大を媒介することができる。本発明の生物学的に活性なタンパク質は、本明細書で定義された別の「第2のドメイン」を含まない、同じ「目的のタンパク質」/「第1のドメイン」に比べて、長いインビボおよび/またはインビトロ半減期および安定性を有する。
【0020】
本明細書では、用語「ドメイン」は、特定の構造および/または機能を自律的にとることができるアミノ酸配列の任意の領域/部分に関する。したがって、本発明と関連して「ドメイン」は、機能ドメインまたは構造ドメインを意味することができる。 本明細書に記載されたように、本発明のタンパク質は、生物活性を有し、かつ/または媒介する、少なくとも1つのドメイン/部分、ならびにランダムコイルコンフォメーションを形成する、少なくとも1つのドメイン/部分を含む。ただし、本発明のタンパク質はまた、2つを超えるドメインからなることができ、例えば本明細書で定義された2つのドメイン/部分間で別のリンカー構造、または例えばプロテアーゼ感受性切断部位、His−タグもしくはStrep−タグなどの親和性タグ、シグナルペプチド、保持ペプチド、膜輸送ペプチドのような標的ペプチドのようなもう1つのドメイン/部分、または抗腫瘍毒もしくはプロドラッグ活性化等のための酵素と結合した腫瘍標的用抗体フラグメントのような別のエフェクタードメインを含むことができる。
【0021】
アミノ酸ポリマーがランダムコイルコンフォメーションを形成する/とるかどうかを判定する方法は、当技術分野で知られている(Cantor(1980年)同上;Creighton(1993年)同上;Smith(1996年)同上)。こうした方法には、本明細書で以下に例示されるように円二色性(CD)分光法が含まれる。CD分光法は、物質による右および左円偏光の吸光度差が測定される光吸収分光法を意味する。タンパク質の2次構造は、波長が約190〜250nmの間の遠紫外線スペクトルを用いるCD分光法により判定することができる。これらの波長では、α−ヘリックス、平行および逆平行β−シートならびにランダムコイルコンフォメーションは各々、CDスペクトルの特徴的な形状およびサイズを生じさせるため、ポリペプチドで一般に見出される異なる2次構造を分析することができる。したがって、CDスペクトルを用いて、当業者は、アミノ酸ポリマーが生理学的条件でランダムコイルコンフォメーションを形成する/とるかどうかを容易に判定することができる。他の確立された生物物理学的方法には、核磁気共鳴(NMR)分光法、吸光分析法、赤外およびラマン分光法、サイズ除外クロマトグラフィーによる流体力学的体積測定、分析的超遠心分離法または動的/静的光散乱および摩擦係数または固有粘度の測定が含まれる(Cantor(1980年)同上;Creighton(1993年)同上;Smith(1996年)同上)。
【0022】
別の実施形態では、本発明の生物学的に活性なタンパク質は、分析的ゲル濾過(サイズ除外クロマトグラフィー、SECとしても知られる)での測定において、少なくとも70kDa、好ましくは少なくとも80kDa、より好ましくは少なくとも90kDa、さらにより好ましくは少なくとも100kDa、特に好ましくは少なくとも125kDaおよび最も好ましくは少なくとも150kDaの流体力学的体積を有する。当業者は、特定のタンパク質の流体力学的体積を容易に判定することができる。こうした方法には、本明細書で以下に例示されるような動的/静的光散乱、分析的超遠心分離法または分析的ゲル濾過を含めることができる。分析的ゲル濾過は、巨大分子の流体力学的体積を測定するための当技術分野で知られる方法を代表するものである。あるいは、球状ポリペプチドの流体力学的体積は、この分子量により推定することができる。しかし、本明細書で後述されるように、上記に定義された第2のドメイン、すなわち少なくとも100アミノ酸残基を含み、およびランダムコイルコンフォメーションを有するドメインを含む本発明のタンパク質の流体力学的体積は、分子量に基づく、対応する折り畳まれた球状タンパク質の推定流体力学的体積に比べて、予想外に高い流体力学的体積を有することが示される。
【0023】
上記の他にも、タンパク質における2次構造を予測する理論的方法が記載されている。こうした理論的方法の一例は、X線結晶学により解析された既知のタンパク質構造に基づくα−ヘリックス、β−シート、およびターンにおける各アミノ酸の相対的頻度分析に基づく、チョウ−ファスマン(Chou−Fasman)法(Chou and Fasman(1974年)Biochemistry 13:222〜245頁)である。しかし、タンパク質2次構造の理論的予測は信頼できないことが知られている。本明細書で以下に例示されるように、チョウ−ファスマン法によりαヘリックス2次構造をとることが期待されるアミノ酸配列は、ランダムコイルを形成することが見出された。したがって、チョウ−ファスマンアルゴリズムなどの理論的方法は、所与のアミノ酸ポリマーがランダムコイルコンフォメーションをとるかどうかきわめて限定的な予測値しか持たない。
【0024】
一実施形態では、ランダムコイルコンフォメーションをとる/有する/形成するアミノ酸配列は、少なくとも約100アミノ酸残基、好ましくは少なくとも約150アミノ酸残基、より好ましくは少なくとも約200アミノ酸残基、さらにより好ましくは少なくとも約250アミノ酸残基、特に好ましくは少なくとも約300アミノ酸残基、より特に好ましくは少なくとも約350アミノ酸残基および最も好ましくは少なくとも約400アミノ酸残基からなる。別の実施形態では、ランダムコイルコンフォメーションを形成するアミノ酸配列は、最大約1000アミノ酸残基、好ましくは最大約900アミノ酸残基、より好ましくは最大約800アミノ酸残基、さらにより好ましくは最大約700アミノ酸残基、特に好ましくは最大約600アミノ酸残基からなる。故に、ランダムコイルコンフォメーションを形成するアミノ酸配列は、最大約500アミノ酸残基または最大約450アミノ酸残基からなることができる。ランダムコイルコンフォメーションを形成するアミノ酸配列は、最大約1200、約1500および最大約3000アミノ酸残基からなることができることも本明細書では想定される。したがって、ランダムコイルコンフォメーションを形成するアミノ酸配列は、約100〜約3000アミノ酸残基からなることができる。特定の実施形態ではランダムコイルコンフォメーションを形成する前記アミノ酸配列は、本明細書で特徴づけられるような、すなわち以下に定義されるようにアラニン、セリンおよびプロリンを主要または固有の残基として含む約100〜1000アミノ酸残基からなる。したがって、本発明の主旨は、生理学的条件下でランダムコイルコンフォメーションを形成し、そして主としてこれら3つのアミノ酸残基からなり、これによりプロリン残基が好ましくはランダムコイル形成ドメインの約4%〜約40%を占めるアミノ酸ポリマーの提供である。アラニンおよびセリン残基は、前記ランダムコイル形成ドメインの残りの少なくとも60%〜96%を含む。しかし、本明細書で以下に詳述されるように、前記ランダムコイル形成ドメインは、微量成分としてアラニン、セリン、およびプロリンとは異なるアミノ酸もさらに含み得る。
【0025】
用語「少なくとも約100/150/200/250/300/300/350(等)アミノ酸残基」は、簡単なアミノ酸残基数に限定されず、さらなる10%〜20%の残基を含むまたは10%〜20%少ない残基を含むアミノ酸ストレッチも含む。例えば「少なくとも約100アミノ酸残基」は、本発明の主旨から逸脱することなく80〜100および約100〜120アミノ酸残基も含み得る。好ましくは、本発明の生物学的に活性なタンパク質(複数可)/ポリペプチド(複数可)の「第2のドメイン」は、最長約1000アミノ酸残基を含む。しかし、より長い「第2のドメイン」、すなわち生理学的条件下で所望のランダムコイルコンフォメーションを提供し、最大約3000アミノ酸残基を含む「第2のドメイン」も本発明と関連して想定される。この場合もやはり、この文脈での用語「約」は、簡単なアミノ酸残基量に限定または制限されず、本発明から逸脱することなく+/−約10%または+/−約20%を含み得る。
【0026】
本発明と関連して、アラニンおよびセリン残基から主としてなるまたは、好ましい実施形態では主に又は固有にアラニン、セリン、およびプロリン残基からなるアミノ酸ポリマーは、驚くべきことに、生理学的条件下でランダムコイルコンフォメーションを形成することが見出された。したがって、本発明は、生物学的に活性なタンパク質/ポリペプチドの、本明細書で定義された「第2のドメイン」の(1つまたは複数の)部分として使用することができる、アラニン、セリン、およびプロリンからなるモジュール/配列単位/ポリマー反復/ポリマーカセット/構成単位を提供する。ただし、当業者は、アラニン、セリン、およびプロリン以外の残基が前記「第2のドメイン」に微量成分として含まれる場合も、アミノ酸ポリマーはランダムコイルコンフォメーションを形成し得ることを認識している。本明細書では用語「微量成分」は、最大10%すなわち100個のアミノ酸の最大10個がアラニン、セリンおよびプロリンとは異なり得、好ましくは最大8%すなわち100個のアミノ酸の最大8個がアラニン、セリンおよびプロリンと異なり得、より好ましくは最大6%すなわち100個のアミノ酸の最大6個がアラニン、セリンおよびプロリンとは異なり得、さらにより好ましくは最大5%すなわち100個のアミノ酸の最大5個がアラニン、セリンおよびプロリンとは異なり得、特に好ましくは最大4%すなわち100個のアミノ酸の最大4個がアラニン、セリンおよびプロリンとは異なり得、より特に好ましくは最大3%すなわち100個のアミノ酸の最大3個がアラニン、セリンおよびプロリンとは異なり得、さらにより特に好ましくは最大2%すなわち100個のアミノ酸の最大2個がアラニン、セリンおよびプロリンとは異なり得、および最も好ましくは最大1%すなわちランダムコイル形成ドメインをコードするアミノ酸100個の最大1個がアラニン、セリンおよびプロリンとは異なり得ることを意味する。アラニン、セリンおよびプロリンとは異なる前記アミノ酸は、Arg、Asn、Asp、Cys、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Lys、Met、Phe、Thr、Trp、TyrおよびValからなる群から選択することができる。
【0027】
本明細書に開示されるような、および本発明によるアラニン、セリン、およびプロリンからなるアミノ酸ポリマーは、生理学的条件下でランダムコイルコンフォメーションをとることが驚くべきことに見出された。したがって、これらは、本発明の生物学的に活性なタンパク質(複数可)/ポリペプチド(複数可)、すなわち生理学的条件下でランダムコイルコンフォメーションを形成し、これにより生物学的に活性な(「機能的な」)タンパク質(複数可)またはポリペプチド(複数可)に対するインビボおよび/またはインビトロ安定性の増大を媒介するポリペプチドストレッチの、本明細書で定義された「第2のドメイン」を提供するのに有利な分子である。前記ランダムコイルドメインに融合される機能的タンパク質の流体力学的体積は、本明細書で言及される、および添付の実施例でも説明される標準的方法を用いて推定することができるように、劇的に増大する。ランダムコイルドメインは、単独で安定な構造または機能をとることはないと考えられることから、これが融合される、目的の機能的タンパク質により媒介される生物活性は基本的に保存される。さらに、本明細書に開示されるようなランダムコイルドメインを形成するアミノ酸ポリマーは、特に血漿におけるタンパク質分解、免疫原性、等電点/帯電挙動、細胞表面受容体との結合および内在化に関して生物学的に不活性であると考えられるが、依然として生分解性であり、PEGなどの合成ポリマーよりも明らかな利点を提供する。
【0028】
別の実施形態では、生理学的条件下でランダムコイルコンフォメーションをとるアミノ酸ポリマーは、複数の「アミノ酸反復」/「アミノ酸カセット」/「カセット反復」を含む。前記「アミノ酸反復」/「アミノ酸カセット」/「カセット反復」は、Ala、Ser、およびPro残基(本明細書では「PAS」、または「APS」として示される)からなり、6以下の連続するアミノ酸残基は同一であり、前記プロリン残基は、ランダムコイルを形成する前記第2のドメインのアミノ酸の4%超および40%未満を構成する。生理学的条件下でランダムコイルコンフォメーションをとるアミノ酸ポリマーは、複数の同一アミノ酸反復/カセット反復または複数の非同一アミノ酸反復を含み得る。Ala、SerおよびPro残基からなる「アミノ酸反復」、「構成単位」、「モジュール」、「反復」、「アミノ酸カセット」等の非限定例は、本明細書で以下に提供される。配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26および配列番号28またはこれらの配列のフラグメントもしくは多量体を参照されたい。「フラグメント」は、少なくとも3個のアミノ酸を含み、および少なくとも1個のアラニン、1個のセリンおよび/または1個のプロリンを含む。
【0029】
本発明によるアミノ酸反復は、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30以上のアミノ酸残基からなってよく、各反復は、(1または複数)のAla、Ser、およびPro残基を含む。一実施形態では、本発明によるアミノ酸反復は、100を超えるアミノ酸残基を含まない。好ましくは、本明細書で定義されたアミノ酸反復/カセット反復は、約4%を超える、好ましくは約5%を超える、さらにより好ましくは約6%を超える、特に好ましくは約8%を超える、より特に好ましくは約10%を超える、さらにより特に好ましくは約15%を超える、および最も好ましくは約20%を超えるプロリン残基を含む。本明細書で定義されたこうしたアミノ酸反復/カセット反復は、好ましくは、約40%未満または約35%未満のプロリン残基を含む。本明細書で以下に提供されるPAS構築物も参照されたい。
【0030】
さらに別の実施形態では、生理学的条件下でランダムコイルコンフォメーションを形成するアミノ酸ポリマーは、式(I):
Ser[Ala Ser]n
を有する。式(I)による前記アミノ酸ポリマーはさらに、本明細書で定義されたプロリン残基を含み、xは整数0〜6から独立に選択される。さらに、nごとに、yは整数1〜6から独立に選択され、各zは整数1〜6から独立に選択される。最後に、nは、前記第2のドメインが少なくとも約100アミノ酸残基、および特に少なくとも約100〜約3000アミノ酸残基、好ましくは約2000までおよびより好ましくは約1000アミノ酸残基までからなるような任意の整数である。
【0031】
好ましい実施形態では、ランダムコイルコンフォメーションを形成する上記に定義された「アミノ酸反復」/「アミノ酸カセット」/「カセット反復」を含むアミノ酸ポリマーは、5以下の同一の連続するアミノ酸残基、より好ましくは4以下の同一の連続するアミノ酸残基、および最も好ましくは3以下の同一の連続するアミノ酸残基を含む。
【0032】
本明細書で上記に既に示されたように、ランダムコイルコンフォメーションを形成する本発明のアミノ酸ポリマーは、プロリン残基を含み、前記プロリン残基は、ランダムコイル形成ドメインを構成するアミノ酸の約4%超、好ましくは約5%超、さらにより好ましくは約6%超、特に好ましくは約8%超、より特に好ましくは約10%超、さらにより特に好ましくは約15%超、および最も好ましくは約20%超を構成する。ランダムコイルコンフォメーションを形成する本発明のこうしたアミノ酸ポリマーは、好ましくは、ランダムコイル形成ドメインを構成するアミノ酸の約40%未満、または約35%未満を含む。添付実施例13に示されるように、Pro残基の割合がより少ないPAS#1P2ポリマーは、CDスペクトルでは200nm付近であまりはっきりしない極小を示す。これは、プロリン残基含量に対する、本発明によるアミノ酸ポリマーのランダムコイル特性の依存性を示すものである。
【0033】
別の好ましい実施形態では、ランダムコイルコンフォメーションを形成する上記に定義された「アミノ酸反復」/「アミノ酸カセット」/「カセット反復」を含むアミノ酸ポリマーは、ランダムコイル形成ドメインを構成するアミノ酸の、約4%を超えるが約50%未満、好ましくは約10%を超えるが約50%未満、および最も好ましくは約20%を超えるが約50%未満のアラニン残基を含む。
【0034】
さらに好ましい実施形態では、上記に定義された「アミノ酸反復」/「アミノ酸カセット」/「カセット反復」ランダムコイルコンフォメーションを含むことを形成するアミノ酸ポリマーは、ランダムコイル形成ドメインを構成するアミノ酸の、約4%を超えるが約50%未満、好ましくは約10%を超えるが約50%未満、および最も好ましくは約20%を超えるが約50%未満のセリン残基を含む。
【0035】
したがって、ランダムコイルコンフォメーションを形成するアミノ酸ポリマーは、ランダムコイル形成ドメインを構成するアミノ酸の、約35%のプロリン残基、約50%のアラニン残基、および約15%のセリン残基を含んでよい。あるいは、ランダムコイルコンフォメーションを形成するアミノ酸ポリマーは、ランダムコイル形成ドメインを構成するアミノ酸の、約35%のプロリン残基、約15%のアラニン残基、および約50%のセリン残基を含んでよい。本明細書で上記に使用された用語「約」は、正確な値の所与のパーセンテージにも関する。
【0036】
AAAASSASSASSSSSAAASA(piSA;配列番号2)AASAAASSAAASAAAASASS(配列番号4)、ASASASASASASSAASAASA(配列番号6)、SAASSSASSSSAASSASAAA(配列番号8)、SSSSAASAASAAAAASSSAS(配列番号10)、SSASSSAASSSASSSSASAA(配列番号12)、SASASASASASAASSASSAS(配列番号14)およびASSAAASAAAASSAASASSS(配列番号16)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むアミノ酸ポリマーが、本明細書でさらに記載される。記載されたアラニン−セリンモジュール/配列単位の多量体は、得られたアミノ酸配列がさらに、本明細書で上記に定義されたプロリン残基を含む場合にランダムコイルコンフォメーションを形成する。これらの例示されたモジュール/配列単位は、以下の配列を含む核酸分子によりコードすることができる。
GCCGCTGCTGCATCCTCTGCAAGCTCCGCTTCTTCCTCTAGCTCCGCAGCTGCATCTGCT(配列番号1)、
GCTGCTTCCGCTGCTGCTTCCTCCGCTGCTGCTTCCGCTGCTGCTGCTTCCGCTTCCTCC(配列番号3)、
GCTTCCGCTTCCGCTTCCGCTTCCGCTTCCGCTTCCTCCGCTGCTTCCGCTGCTTCCGCT(配列番号5)、
TCCGCTGCTTCCTCCTCCGCTTCCTCCTCCTCCGCTGCTTCCTCCGCTTCCGCTGCTGCT(配列番号7)、
TCCTCCTCCTCCGCTGCTTCCGCTGCTTCCGCTGCTGCTGCTGCTTCCTCCTCCGCTTCC(配列番号9)、
TCCTCCGCTTCCTCCTCCGCTGCTTCCTCCTCCGCTTCCTCCTCCTCCGCTTCCGCTGCT(配列番号11)、
TCCGCTTCCGCTTCCGCTTCCGCTTCCGCTTCCGCTGCTTCCTCCGCTTCCTCCGCTTCC(配列番号13)および
GCTTCCTCCGCTGCTGCTTCCGCTGCTGCTGCTTCCTCCGCTGCTTCCGCTTCCTCCTCC(配列番号15)。
【0037】
好ましい実施形態では、ランダムコイルコンフォメーションを形成するアミノ酸ポリマーは、ASPAAPAPASPAAPAPSAPA(PAS#1;配列番号18)、AAPASPAPAAPSAPAPAAPS(PAS#2;配列番号20)、SAPSSPSPSAPSSPSPASPS(修飾PAS#3;修飾された配列番号22)、APSSPSPSAPSSPSPASPSS(PAS#3、配列番号22、非修飾)からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。あるいは、若干修飾されたものの活性なPAS#3は、上記に列挙された配列SAPSSPSPSAPSSPSPASPS(配列番号63)を有し得る。この配列は、本明細書で提供される配列番号22の円順列変異形に相当するものであり、配列番号22の最後のセリンが除去され、もう1つのセリンが開始アミノ酸として付加されている。従って、本発明によるこの修飾配列の多量体は基本的に、最初と最後の残基以外、非修飾配列の多量体として同じ内部反復単位を有する。したがって、この修飾PAS#3(配列番号63)は、本発明により本明細書で提供されるアミノ酸ポリマーのさらなる「モジュール」/「構成単位」の一例とみなすことができる。本明細書で提供されるアミノ酸ポリマーの他の「モジュール」および(より短い)フラグメントまたは円順列変異バージョンもまた、提供される生物学的に活性なタンパク質の、本明細書で定義された「第2のドメイン」の「モジュール」、「反復」および/または構成単位として使用できることが当業者には明らかである。ただし、さらなるおよび実例となるランダムコイルコンフォメーションを形成するアミノ酸ポリマーは、SSPSAPSPSSPASPSPSSPA(PAS#4;配列番号24)、AASPAAPSAPPAAASPAAPSAPPA(PAS#5;配列番号26)およびASAAAPAAASAAASAPSAAA(PAS#1P2;配列番号28)からなる群から選択され得るアミノ酸配列を含むことができる。この場合もやはり、同様にまたはこれらの配列および本明細書で上記に提供された配列の(1つまたは複数の)フラグメントもしくは(1つまたは複数の)多量体もしくは円順列変異バージョンは、本発明の生物学的に活性なタンパク質(複数可)/ポリペプチド(複数可)の本明細書で定義された「第2のドメイン」の構成単位として、本発明と関連して使用することができる。当業者は、生理学的条件下でランダムコイルコンフォメーションを形成し、本明細書で定義されたアラニン、セリン、およびプロリンから主として構成される、さらなるアミノ酸ポリマーを容易に生成することができる。本発明の生物学的に活性なタンパク質(複数可)/ポリペプチド(複数可)の、本明細書で定義された「第2のドメイン」の構成単位またはモジュールとして使用されるランダムコイルコンフォメーション形成アミノ酸ポリマーの、こうした他の例およびさらなる例は、特に、上記に示された特定の「構成単位」、「ポリマーカセット」または「ポリマー反復」の組合せおよび/またはフラグメントもしくは円順列変異バージョンを含むことができる。したがって、ランダムコイルドメインの例示されたモジュール/配列単位/ポリマー反復/ポリマーカセットは、本発明によるさらなるモジュール/配列単位/ポリマー反復/ポリマーカセットを形成するため新たに結合され得る個々のフラグメントも提供することができる。
【0038】
用語「モジュール(複数可)」、「配列単位(複数可)」、「ポリマー反復(複数可)」、「ポリマーカセット(複数可)」および「構成単位(複数可)」は、本明細書では同義語として使用され、本発明の生物学的に活性なタンパク質(複数可)/ポリペプチド(複数可)の、本明細書で定義された「第2のドメイン」を形成するのに使用され得る個々のアミノ酸ストレッチに関する。前記第2のドメインは、好ましくは少なくとも約100アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含み、生理学的条件下でランダムコイルコンフォメーションを形成する。
【0039】
本発明の生物学的に活性なタンパク質/ポリペプチドのランダムコイルドメインの、上記に例示されたモジュール/配列単位/ポリマー反復/ポリマーカセット/構成単位(すなわち前記生物学的に活性なタンパク質/ポリペプチドの本明細書で定義された「第2のドメイン」)は、以下の配列を含む核酸分子によりコードすることができる。
GCCTCTCCAGCTGCACCTGCTCCAGCAAGCCCTGCTGCACCAGCTCCGTCTGCTCCTGCT(配列番号17)、
GCTGCTCCGGCTTCCCCGGCTCCGGCTGCTCCGTCCGCTCCGGCTCCGGCTGCTCCGTCC(配列番号19)、
GCTCCGTCCTCCCCGTCCCCGTCCGCTCCGTCCTCCCCGTCCCCGGCTTCCCCGTCC-TCC(配列番号21)、
TCCTCCCCGTCCGCTCCGTCCCCGTCCTCCCCGGCTTCCCCGTCCCCGTCCTCCCCGGCT(配列番号23)、
GCCGCTTCTCCAGCAGCTCCTTCTGCTCCACCAGCAGCTGCAAGCCCTGCTGCACCAAGCGCACCTCCTGCT(配列番号25)および/または
GCCTCTGCTGCAGCACCTGCAGCAGCAAGCGCAGCTGCATCTGCTCCATCTGCAGCTGCT(配列番号27)。
【0040】
上記の修飾PAS#3(修飾配列番号22)は、以下の核酸配列によりコードすることができる:TCCGCTCCGTCCTCCCCGTCCCCGTCCGCTCCGTCCTCCCCGTCCCCGGCTTCCCCGTCC(修飾された配列番号21)。
【0041】
当業者の知識により、ランダムコイルドメイン(またはこのフラグメント、またはこの多量体もしくは円順列変異バージョン)の、本明細書に記載および例示されたモジュール/配列単位/ポリマー反復/ポリマーカセット/構成単位が、遺伝子コード(縮重性質を持つ、すなわち異なるヌクレオチドトリプレットコドンが同じアミノ酸残基をコードし得る)により異なる核酸配列によりコードされ得ることは、注目すべきであり本発明を制限するものではない。さらに、末端残基は、本発明によるヌクレオチド配列カセットの設計、およびこの多量体を得るために適用されるライゲーション戦略により異なる可能性がある。例えば、配列番号18および30で示されるような「モジュール」PAS#1は、それぞれ、核酸配列の配列番号17および29によりコードすることができる。配列番号18とは対照的に、配列番号30は、C末端で別のアラニンを含む。該アラニンのコドンは、添付実施例の幾つかで記載されるように、個々のヌクレオチド配列カセットが粘着末端を介してライゲートされる場合、欠失され得る。
【0042】
上記により、ランダムコイルコンフォメーションを形成するアミノ酸ポリマーは、本明細書で上記に開示されている配列番号18、20、22、24、26または28を有するアミノ酸配列のいずれか1つからなる多量体を含むこともでき、またはアミノ酸配列の配列番号18、20、22、24、26および28のうち複数からなる多量体を含むこともできる。さらに、また、これらの例示された配列のフラグメントまたは円順列変異バージョンも本発明の生物学的に活性なタンパク質(複数可)/ポリペプチド(複数可)のランダムコイルドメイン(「第2のドメイン」)のさらなるモジュール/配列単位/ポリマー反復/ポリマーカセット/構成単位を構築するのに使用されることが想定される。
【0043】
別の実施形態では、ランダムコイルコンフォメーションを形成するアミノ酸ポリマーは、ASPAAPAPASPAAPAPSAPA(配列番号18)、AAPASPAPAAPSAPAPAAPS(配列番号20)、APSSPSPSAPSSPSPASPSS(配列番号22、または修飾配列としてS-APSSPSPSAPSSPSPASPS(配列番号63)、SSPSAPSPSSPASPSPSSPA(配列番号24)、AASPAAPSAPPAAASPAAPSAPPA(配列番号26)およびASAAAPAAASAAASAPSAAA(配列番号28)またはこれらの(円)順列変異配列の(1つまたは複数の)多量体からなる群から選択されるアミノ酸配列の(円)順列変異からなる多量体を含むことができる。
【0044】
さらに別の実施形態では、ランダムコイルコンフォメーションを形成するアミノ酸ポリマーは、ASPAAPAPASPAAPAPSAPA(配列番号18)、AAPASPAPAAPSAPAPAAPS(配列番号20)、APSSPSPSAPSSPSPASPSS(配列番号22、または修飾配列としてS-APSSPSPSAPSSPSPASPS((配列番号63))、SSPSAPSPSSPASPSPSSPA(配列番号24)、AASPAAPSAPPAAASPAAPSAPPA(配列番号26)およびASAAAPAAASAAASAPSAAA(配列番号28)またはこれらの例示されたモジュール/配列単位/ポリマー反復/ポリマーカセット/構成単位の(1つまたは複数の)多量体からなる群から選択されるアミノ酸配列のフラグメント/部分からなる多量体を含むことができる。本発明の生物学的に活性なタンパク質/ポリペプチドの「第2のドメイン」を生成するため本発明により使用されるこれらの配列の「フラグメント」は、前記配列番号18、20、22、24、26および28からなる群から選択されるアミノ酸配列の少なくとも3個、好ましくは少なくとも4個、より好ましくは少なくとも5個、さらにより好ましくは少なくとも6個、さらにより好ましくは少なくとも8個、特に好ましくは少なくとも10個、より特に好ましくは少なくとも12個、さらにより特に好ましくは少なくとも14個、さらにより特に好ましくは少なくとも16個、および最も好ましくは少なくとも18個の連続するアミノ酸からなることができる。
【0045】
本明細書で上記に言及されたような、ランダムコイルドメインの本明細書で提供されるモジュール/配列単位/構成単位等は、生理学的条件下でランダムコイルコンフォメーションを形成する本発明のアミノ酸ポリマーの例に過ぎない。本発明の主旨により、これらの「モジュール」、「配列単位」および/または「反復」は、アラニン、セリンおよびプロリンの上記に特定された含量/画分を含む。したがって、本発明によりさらなるこうした「モジュール」、「配列単位」および/または「反復」を生成することは、当業者の通常の技術内である。例えば、本明細書で特定された本発明の「モジュール」、「配列単位」および/または「反復」の個々のフラグメントは、アラニン、セリンおよびプロリンの全体的分布および量に関する上記に特定された原則が尊重される限り、さらなる個々の「モジュール」、「配列単位」および/または「反復」に結合することができる。この場合もやはり、これらの「モジュール」、「配列単位」および/または「反復」は、さらなるアミノ酸残基も含むことができるが、最小または微量成分(個々の「モジュール」、「配列単位」および/または「反復」の最大10%、好ましくは最大2%)としてのみである。前記個々の「モジュール」、「配列単位」および/または「反復」は、本発明によれば、少なくとも約100アミノ酸残基からなる。個々の「モジュール」、「配列単位」および/または「反復」は、より長いランダムコイル形成アミノ酸ポリマーを形成するために結合することができる。これにより生物学的に活性なタンパク質の本明細書で定義された「第2のドメイン」の最長は、約3000アミノ酸である。本発明と関連して、少なくとも2つのドメインを含む生物学的に活性なタンパク質が好ましい。前記少なくとも2つのドメインの、本明細書で上記に定義された第1のドメインは、前記生物活性を有し、かつ/または媒介するアミノ酸配列を含み、前記少なくとも2つのドメインの、本明細書で上記に定義された第2のドメインは、少なくとも約100アミノ酸残基から好ましくはなるアミノ酸配列、および生理学的条件下でランダムコイルコンフォメーションを含む。本明細書で提供され、アラニン、セリン、およびプロリンから主としてなる前記ランダムコイルコンフォメーションは、前記生物学的に活性なタンパク質のインビボおよび/またはインビトロ安定性の増大を媒介する。前記第2のドメインは、本明細書で提供されるような個々の「モジュール」、「配列単位」および/または「反復」からなることができる、またはこれらの個々の、実例となる「モジュール」、「配列単位」および/または「反復」のフラグメントまたは部分を含むことができる。しかし、前記第2のドメインは、本明細書で上記に提供された教示を尊重し従い、本明細書の以下および添付の実施例で例示される、さらなるおよびまたは他の個々の「モジュール」、「配列単位」、「構成単位」および/または「反復」から構築することができる。例えば、添付実験部分は、本明細書で定義された、生理学的条件下でランダムコイル確認を提供する別の「第2のドメイン」を含むタンパク質(例えば約200または約400または約600アミノ酸残基からなり、「構成単位」としてPAS#1/配列番号18、PAS#2/配列番号20、PAS#3/配列番号22、PAS#5/配列番号26および/またはPAS#1P2/配列番号28を含むポリマー)が、非修飾の生物学的に活性なタンパク質に比べてインビボにおいてさえ、優れた血清安定性または血漿半減期を有するという十分な証拠を示す。本発明の非限定例として、非修飾IFNa2bのインビボ安定性が、生理学的条件下でランダムコイルコンフォメーションをとる、本明細書で定義された別の「第2のドメイン」を含んだ修飾IFNa2bのインビボ安定性と比較された。
【0046】
ほとんどのアミノ酸、特に疎水性アミノ酸のホモ−ポリマーは、通常、水溶液に不溶である(Bamford(1956年)Synthetic polypeptides−Preparation、Structure、and Properties、第2版、Academic Press、New York)。幾つかの親水性アミノ酸のホモ−ポリマーは、2次構造、例えばAlaの場合はα−ヘリックス(Shental−Bechor(2005年)Biophys J 88:2391〜2402頁)およびSerの場合はβ−シート(Quadrifoglio(1968年)J Am Chem Soc 90:2760〜2765頁)を形成するのに対し、最も固いホモオリゴペプチドであるポリ−プロリン(Schimmel(1967年)Proc Natl Acad Sci USA 58:52〜59頁)は、水溶液でタイプIIトランスヘリックスを形成する(Cowan(1955年)Nature 176:501〜503頁)ことが知られている。
【0047】
ポリマー生物物理学の理論的原則により、200アミノ酸残基の鎖のランダムコイルの直径は、ポリ−グリシンの場合、例えば、約75Åに達するであろう。この値は、下記の数式を用い、各Cα−Cαについて、長さl(=距離3.8Å)の回転可能結合数n=200およびポリ(Gly)の「特性比」C≒2.0(Brant(1967年)J Mol Biol 23:47〜65;Creighton、(1993年)同上)として、二乗平均平方根末端間距離の平均値
【0048】
【数1】

として計算できる。
この関係は、当業者であれば、ランダム鎖アミノ酸ポリマーの流体力学的体積が、(a)より長い鎖長lを用いる、または(b)より大きな特性比、Cを示すアミノ酸を用いる、のどちらかにより拡大できると期待することを示している。Cは、分子ランダム鎖の固有の剛性に関する尺度であり、ほとんどのアミノ酸に対し一般値9を有する(Brant(1967年)同上)。側鎖を欠くGlyのみが、およびイミノ酸Proも著しく小さな値を示す。故に、GlyおよびPro(変性条件下の)は、ランダムコイルタンパク質の次元の減少に寄与することが期待される(Miller(1968年)Biochemistry 7:3925〜3935頁)。したがって、プロリン残基を含むアミノ酸ポリマーは、比較的コンパクトな流体力学的体積を有することが期待される。しかし、この教示とは対照的に、アラニン、セリン、およびプロリン残基の混合物を含む本発明のアミノ酸ポリマーの流体力学的体積は、期待される流体力学的体積と比較した場合、分析的ゲル浸透クロマトグラフィーで判定した流体力学的体積が劇的に増加することが、本明細書で示される。事実、これら3つのアミノ酸の混合物(各々が単独で、定義された2次構造を有するホモオリゴペプチドを形成する傾向がある)を含むポリペプチドが、生理学的条件下でランダムコイルコンフォメーションをとることは驚くべきことである。こうした本発明のポリペプチドは、同じ数のGly残基を含むホモ−ポリマーよりも大きな流体力学的半径を有し、該ポリペプチドは、本発明による生物学的に活性なタンパク質に対しより優れた可溶性を与える。
【0049】
WO2006/081249は、主要成分にGly、Asn、およびGlnを、微量成分にSer、Thr、Asp、Gln、Glu、His、およびAsnを有する2〜500単位のアミノ酸反復を含むポリペプチドに結合する生物学的に活性なタンパク質を含む、タンパク質結合体を記載する。前記タンパク質結合体は、結合しない生物学的に活性なタンパク質と比較した場合、血漿半減期が増大または減少することが記載されている。しかし、WO2006/081249は、特定のアミノ酸反復が、結合体の血漿半減期を減少または増大させるかどうかを予測するためのいずれの教示も提供していない。さらに、WO2006/081249は、結合したタンパク質が、本発明に示されるようなランダムコイルコンフォメーションを形成するアミノ酸反復を含む場合、タンパク質の血漿半減期は増大し得ることを教示または示唆していない。さらに、WO2006/081249に開示されたアミノ酸反復は、Gly、Asn、およびGlnから選択される少なくとも2つの残基を含む。これは、選択的にAla、Ser、およびPro残基からなる本発明のポリペプチド反復とは明らかに対照的である。
【0050】
本明細書では、用語「生物活性」は、生物に対する物質の生物学的効果を記載する。したがって、本明細書では用語「生物学的に活性なタンパク質」または「生物活性を有し、かつ/または媒介するポリペプチド」は、前記タンパク質またはポリペプチドに曝露される生細胞/生物に生物学的効果を誘導することができるタンパク質またはポリペプチドに関する。ただし、本発明と関連して、用語「生物学的に活性なタンパク質」は、前記生物活性を有し、かつ/または媒介するアミノ酸配列、ならびにランダムコイルコンフォメーションを形成するアミノ酸配列の両方を含む本発明のタンパク質全体に関することに注目すべきである。
【0051】
したがって、本明細書では用語「生物活性を有し、かつ/または媒介するアミノ酸配列」または「生物活性を備えるアミノ酸配列」は、上記に定義された「生物活性」を媒介するまたは有する、または媒介するもしくは有することができる、本発明の生物学的に活性なタンパク質の上記に定義された「第1のドメイン」に関する。用語「生物活性を有し、かつ/または媒介するアミノ酸配列」または「生物活性を備えるアミノ酸配列」はまた、本発明の、および前記生物学的に活性なタンパク質の「第1のドメイン」に関する「生物学的に活性なポリペプチド」または「生物学的に活性なポリペプチドストレッチ」にも関する。また、(半減期を、インビボまたはインビトロのいずれかで、延長する必要がある)任意の目的のタンパク質の機能的フラグメントも、用語「生物活性を有し、かつ/または媒介するアミノ酸配列」または「生物活性を備えるアミノ酸配列」に含まれる。本発明の一実施形態では、本発明により生物活性を有し、かつ/または媒介するアミノ酸配列は、任意の「目的のタンパク質」、すなわち薬学的もしくは生物学的な目的の任意のタンパク質または治療/診断薬として有用な任意のタンパク質から推定することができる。したがって、本発明による生物学的に活性なタンパク質は、自然に生成されたポリペプチドまたは組換えDNA技術により生成されたポリペプチドから得られる生物学的に活性なアミノ酸配列を含むことができる。好ましい実施形態では、目的のタンパク質は、結合タンパク質、免疫グロブリン、抗体フラグメント、輸送タンパク質、(サイトカイン、成長因子、ホルモンまたは酵素などの)シグナル伝達タンパク質/ペプチドからなる群から選択することができる。
【0052】
本明細書では、用語「結合タンパク質」は、潜在的結合パートナー(複数可)と潜在的結合パートナー(複数可)である複数の別の分子とを区別できるように(潜在的結合パートナー(複数可)である前記複数の別の分子プールから、前記潜在的結合パートナー(複数可)のみが結合される、または著しく結合される程度に)、前記(1つまたは複数の)潜在的結合パートナーと特異的に相互作用することができる分子に関する。潜在的結合パートナーとの結合タンパク質の結合の測定方法は、当技術分野で知られており、例えばELISA、等温滴定熱量測定、平衡透析、プルダウンアッセイまたはビアコア装置を用いて日常的に行うことができる。本発明と関連して有用な例示的な結合タンパク質には、抗体、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、一本鎖可変フラグメント(scFv)などの抗体フラグメント、抗体の単離した可変領域(VL−および/またはVH−領域)、CDR、単一ドメイン抗体、CDR由来ペプチドミメティック、レクチン、リポカリン、または例えば、Skerra(2000年)J Mol Recognit 13:167〜187頁またはBinz(2005年)Nat Biotechnol 23:1257〜1268頁に記載されたさまざまなタイプのスカフォールド由来結合タンパク質が含まれるが、これらに限定されない。
【0053】
他の例示的な、本発明と関連して有用な目的の生物学的に活性なタンパク質には、顆粒球コロニー刺激因子、ヒト成長ホルモン、α−インターフェロン、β−インターフェロン、γ−インターフェロン、腫瘍壊死因子、エリスロポエチン、凝固第VIII因子などの凝固因子、gp120/gp160、可溶性腫瘍壊死因子IおよびII受容体、レテプラーゼなどの血栓溶解剤、エキセンジン−4、アナキンラなどのインターロイキン−1受容体アンタゴニスト、インターロイキン−2および好中球ゼラチナーゼ関連リポカリンまたはWalsh(2003年)Nat Biotechnol 21:865〜870頁またはWalsh(2004年)Eur J Pharm Biopharm 58:185〜196頁に列挙されたものが含まれるが、これらに限定されない。
【0054】
本明細書で上記に言及された好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL;ヒト好中球リポカリン、24p3、ウテロカリン(uterocalin)、シデロカリン(siderocalin)、またはノイ関連リポカリン(neu-related lipocalin)とも呼ばれる)は、好中球顆粒成分として最初に同定された、結合タンパク質のリポカリンファミリーのメンバーである。NGALは、カテコレート−型シデロホア FeIII−エンテロケリン/エンテロバクチン(Goetz(2002年)Mol Cell 10:1033〜1043頁)、およびツベルクロシス・カルボキシマイコバクチン(M. tuberculosis carboxymycobactin)(Hplmes(2005年)Structure 13:29〜41頁)を含む、マイコバクテリアの幾つかの他のシデロホアと堅固に結合することが示された。これらのシデロホアは、ヒト体液で生じ、特殊化した細菌輸入(bacterial import)系による鉄取り込みを可能にすることから、限界鉄濃度に反応して病原菌により分泌されるきわめて強力な鉄キレート剤である。故に、好中球は、生来の免疫系の抗菌戦略として感染部位でNGAL(最近では「シデロカリン」とも呼ばれる)を放出するように思われる。NGALの生理的関連性が、対応するノックアウトマウスで調べられており、エンテロケリンを産生する細菌の成長を制限することが示された(Flo(2004年)Nature 432:917〜921頁)。この結果、NGALは、細菌の鉄取り込みを防いで作用する新種の抗菌剤として適用される可能性がある。これとは別に、NGALは、腎臓による鉄回収のための生理学的経路に関与することが記載された(Yang(2002年)Mol Cell 10:1045〜1056頁)。この機構は、重度の腎不全のマウスモデルにおける腎臓の虚血再灌流損傷を防ぐことが最近実証され(Mori(2005年)J Clin Invest 115:610〜621頁)、治療適用の別の領域を開くことができるであろう。
【0055】
さらに別の実施形態では、本発明は、前記生物活性を有し、かつ/または媒介するポリペプチドをコードするアミノ酸配列を含む前記第1のドメイン、ならびにランダムコイルコンフォメーションを形成する前記第2のドメインが、ポリペプチドリンカーにより結合される、本発明の生物学的に活性なタンパク質に関する。前記第1のドメインと前記第2のドメインの間に挿入されるこのポリペプチドリンカーは、好ましくは、これらのドメインに共有結合される複数の、親水性の、ペプチド結合アミノ酸を含む。さらに別の実施形態では前記ポリペプチドリンカーは、生物活性を有し、かつ/または媒介するポリペプチドを含む前記第1のドメインの制御放出を可能にする、血漿プロテアーゼ切断部位を含む。異なるタイプまたは長さのリンカーは、特定のポリペプチドの完全な機能活性を得るための過重な負担をすることなく同定することができる。
【0056】
好ましい実施形態では、本発明の生物学的に活性なタンパク質は、融合タンパク質である。本明細書に記載された融合タンパク質は、生物活性を媒介する少なくとも1つのドメイン、および単一のマルチドメインポリペプチドにおいてランダムコイルコンフォメーションを形成する少なくとも1つの他のドメインを含むことが意図される。別の実施形態では、本発明による生物学的に活性なタンパク質は、目的のタンパク質、または生物活性を有し、かつ/もしくは媒介するポリペプチド/ポリペプチドストレッチ/アミノ酸配列が、ランダムコイルコンフォメーションを形成するアミノ酸配列に非ペプチド結合を介して結合される、タンパク質結合体であってよい。架橋タンパク質に有用な非ペプチド結合は、当技術分野で知られており、ジスルフィド結合(例えばCys側鎖間の)、チオエーテル結合、またはスベリン酸ジスクシンイミジル(DSS)もしくはスルホスクシンイミジル4−[p−マレイミドフェニル]酪酸(Sulfo−SMPB)などの化学架橋剤に誘導された非ペプチド共有結合、および非共有タンパク質−タンパク質相互作用を含めることができる。
【0057】
本発明の「生物学的に活性なタンパク質」は、複数の「生物活性を有し、かつ/または媒介するアミノ酸配列」も含むことができること、すなわち生物学的に活性なタンパク質の本明細書で定義された「第1のドメイン」は、本発明と関連して単一の目的の生物活性に限定されないことに注目すべきである。さらに、当業者は、本発明の生物学的に活性なタンパク質に含まれるような「生物活性を有し、かつ/または媒介するアミノ酸配列」および「ランダムコイルドメイン/部分」を、特定の順序で構築できることを認識している。1つのランダムコイルドメイン/部分(すなわち少なくとも約100アミノ酸残基からなり、ランダムコイルを形成するアミノ酸配列)ならびに異なる生物活性を有し、かつ/または媒介する2つのアミノ酸配列を含む本発明の「生物学的に活性なタンパク質」の非限定例、ドメインの順序は、「第1の生物活性を有し、かつ/または媒介するアミノ酸配列」−「ランダムコイルドメイン/部分」−「第2の生物活性を有し、かつ/または媒介するアミノ酸配列」となり得る。
【0058】
したがって、および本発明と関連して、本発明の生物学的に活性なポリペプチドの、本明細書で定義された「第1の」および「第2の」ドメインの順序は、前記「第1のドメイン」(すなわち目的のタンパク質、「生物活性を有し、かつ/または媒介するアミノ酸配列」)がアミノ(N−)末端に位置し、前記「第2のドメイン」(すなわちランダムコイルコンフォメーションを形成する/とる少なくとも約100アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含むドメイン)が本発明のポリペプチドのカルボキシ(C−)末端に位置する順序に並べることができる。しかし、この順序は逆にすることもでき、例えば前記「第1のドメイン」(すなわち目的のタンパク質、「生物活性を有し、かつ/または媒介するアミノ酸配列」)はカルボキシ(C−)末端に位置し、前記「第2のドメイン」(すなわちランダムコイルコンフォメーションを形成する/とる少なくとも約100アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含むドメイン)は本発明のポリペプチドのアミノ(N−)末端に/で位置する。
【0059】
ただし、上記で指摘されたように、生物活性を有し、かつ/または媒介するアミノ酸配列を含む、またはからなる、複数のドメインが、本発明のポリペプチド構築物と関連して使用されることも想定される。したがって、前記「第2のドメイン」(すなわちランダムコイルコンフォメーションを形成する/とる少なくとも約100アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含むドメイン)は、目的のまたは所望の生物活性を有し、かつ/または媒介するアミノ酸ストレッチである、前記「第1のドメイン」間に位置することができる。したがって、「ランダムコイルストレッチ」は、所望の生物活性を有し、かつ/または媒介する2つのドメイン間に位置することができる。本発明のポリペプチド/生物学的に活性なタンパク質の全ての実施形態と同様に、前記生物活性を有し、かつ/または媒介するアミノ酸配列を含む前記ドメイン(複数可)はまた、所望の生物学的機能を有する所与のタンパク質の生物学的に活性なフラグメントであってもよい。したがって、本明細書で定義された「第2のドメイン」(ランダムコイルを形成する少なくとも約100アミノ酸残基からなるアミノ酸配列)は、目的のタンパク質の2つの生物学的に活性なフラグメント間、または目的の2つのタンパク質の生物学的に活性なフラグメント間に位置することができる。ただし、「生物活性を有し、かつ/または媒介する」複数のドメインが、本発明の生物学的に活性なタンパク質に含まれる場合も、本明細書で定義された「第2のドメイン」、すなわちランダムコイルコンフォメーションを形成する少なくとも約100アミノ酸残基からなるアミノ酸配列は、本発明の生物学的に活性なタンパク質のN−またはC末端に位置することができる。N末端から開始する、対応する非限定例は次の通りである:
「第1の生物活性を有し、かつ/または媒介するアミノ酸配列」−「ランダムコイルドメイン/部分」−「第2の生物活性を有し、かつ/または媒介するアミノ酸配列」
または
「第1の生物活性を有し、かつ/または媒介するアミノ酸配列」−「第2の生物活性を有し、かつ/または媒介するアミノ酸配列」−「ランダムコイルドメイン/部分」
または
「ランダムコイルドメイン/部分」−「第1の生物活性を有し、かつ/または媒介するアミノ酸配列」−「第2の生物活性を有し、かつ/または媒介するアミノ酸配列」
【0060】
対応する順序(複数可)は、表現が本発明の生物学的に活性なタンパク質/ポリペプチドのC末端から開始する場合にも想定される。上記の表現において本明細書では用語「ランダムコイルドメイン/部分」は、本明細書で定義された「第2のドメイン」、すなわち生理学的条件下でランダムコイルコンフォメーションをとる/有する少なくとも約100アミノ酸残基からなるアミノ酸配列に対応する。この場合もやはり、用語「第1の生物活性を有し、かつ/または媒介するアミノ酸配列」は、前記生物活性または機能を有し、かつ/または媒介する完全長ポリペプチドに限定されず、この生物学的および/または薬学的に活性なフラグメントも指すことが指摘されなければならない。特に(しかしこれのみではないが)、本明細書で定義された2つ以上の「第1のドメイン」が、本発明の「生物学的に活性なタンパク質」に含まれる状況では、これらの「第1のドメイン」が、タンパク質複合体またはタンパク質複合体のこうした部分のフラグメントの異なる部分である/を表すことも想定される。
【0061】
さらに、ランダムコイルコンフォメーションを形成する/とる少なくとも約100アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含む、複数のドメインは、本発明のポリペプチド構築物と関連して使用されることも想定される。したがって、目的のまたは所望の生物活性を有し、かつ/または媒介するアミノ酸ストレッチである、前記「第1のドメイン」は、2つの「第2のドメイン」(すなわちランダムコイルコンフォメーションを形成する/とる少なくとも約100アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含むドメイン)の間に位置することができる。したがって「ランダムコイルストレッチ」は、所望の生物活性を有し、かつ/または媒介するドメインのN末端およびC末端の両方に位置することができる。
【0062】
本明細書で以下に例示されるように、ランダムコイルドメインを含むように修飾された本発明の生物学的に活性なタンパク質は、前記ランダムコイルドメインを欠く非修飾の生物学的に活性なタンパク質と比較した場合、驚くべきことにインビボおよび/またはインビトロ安定性の増大を示す。本明細書では、用語「インビボ安定性」は、生体に投与される特定の物質の、生物学的に利用可能であり生物学的に活性なままである能力に関する。インビボでは、物質は分泌、凝集、分解および/または代謝過程により除去および/または不活化され得る。したがって、本発明と関連して、インビボ安定性が増大した生物学的に活性なタンパク質は、腎臓(尿)を通じてもしくは糞便を介して十分には分泌され得ず、かつ/またはタンパク質分解に対して、特に血液、脳脊髄液、腹水およびリンパ液のような体液におけるインビボタンパク質分解に対して、より安定であり得る。一実施形態では、生物学的に活性なタンパク質のインビボ安定性の増大は、前記生物学的に活性なタンパク質の延長された血漿半減期として現れる。
【0063】
生物学的に活性なタンパク質のインビボ安定性の測定方法は、当技術分野で知られている。本明細書で以下に例示されるように、生物学的に活性なタンパク質は、ウェスタンブロッティング法または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を用いて血漿で特異的に検出することができる。ただし、当業者は、他の方法を目的のタンパク質の血漿半減期を特異的に測定するのに使用することができることを認識している。こうした方法には、放射活性標識された目的のタンパク質の物理的検出が含まれるが、これに限定されない。タンパク質の放射活性標識方法(例えば放射性ヨウ素化による)は、当技術分野で知られている。
【0064】
本明細書では用語「インビトロ安定性の増大」は、生物学的に活性なタンパク質の、インビトロ環境での分解および/または凝集に抵抗する能力ならびに本来の生物活性を維持する能力に関する。生物学的に活性なタンパク質の生物活性の測定方法は当技術分野でよく知られている。
【0065】
別の実施形態では、本発明は、本明細書に記載された生物学的に活性なタンパク質をコードする核酸分子に関する。したがって、前記核酸分子は、生物活性を有するポリペプチドをコードする核酸配列、およびランダムコイルコンフォメーションを形成する/とるアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むことができる。さらに別の実施形態では前記核酸分子は、ランダムコイルコンフォメーションを形成する/とる、本明細書で開示されたアミノ酸配列の1つをコードする核酸配列を含むことができる。用語「核酸分子」は、本明細書では、DNA分子およびRNA分子などの核酸分子を含むことが意図される。前記核酸分子は、一本鎖または二本鎖であってよいが、好ましくは二本鎖DNAである。好ましくは、前記核酸分子は、ベクターに含まれてよい。
【0066】
さらに、本明細書に記載された核酸分子またはベクターにより細胞をトランスフェクトすることが想定される。さらなる実施形態では、本発明は、発現時に本発明の生物学的に活性なタンパク質をコードする核酸分子に関する。ただし、さらなる実施形態では、本発明は、生理学的条件下でランダムコイルコンフォメーションを全体または一部において形成する/とる本明細書で開示されたポリペプチドを、発現時にコードする核酸分子に関する。前記核酸分子は、ポリペプチドの適正な転写および翻訳を確保することが当技術分野で知られる適切な発現制御配列、ならびに細胞分泌またはオルガネラ標的を確保するシグナル配列に融合することができる。こうしたベクターは、適切な宿主細胞および適切な条件下での前記ベクターの選択を可能にするマーカー遺伝子など、さらなる遺伝子を含むことができる。
【0067】
好ましくは、本発明の核酸分子は、本明細書に記載された生物学的に活性なタンパク質をコードする核酸分子が、原核細胞または真核細胞での発現を可能にする発現制御配列に操作可能に結合した、組換えベクターに含まれる。前記核酸分子の発現は、翻訳可能なmRNAへの核酸分子の転写を含む。原核宿主細胞での発現を可能にする調節要素は、例えば、大腸菌のラムダPL、lac、trp、tac、tetまたはT7プロモーターを含む。真核細胞、好ましくは哺乳類細胞または酵母での発現を確保する可能性のある調節要素は、当業者によく知られている。これらは通常、転写開始を確保する調節配列、ならびに場合によっては、転写終了および転写物の安定化を確保するポリ−Aシグナルを含む。別の調節要素には、転写および翻訳エンハンサー、ならびに/または天然に関連するもしくは異種のプロモーター領域を含めることができる。真核宿主細胞での発現を可能にする調節要素の例は、酵母のAOX1もしくはGAL1プロモーター、またはCMV、SV40、RSVプロモーター(ラウス肉腫ウイルス)、CMVエンハンサー、SV40エンハンサー、または哺乳類および他の動物細胞のグロビンイントロンである。転写開始に関与する要素とは別に、こうした調節要素は、コーディング領域の下流の、SV40−ポリ−A部位またはtk−ポリ−A部位などの転写終了シグナルを含むこともできる。
【0068】
当業者によく知られている方法を、組換えベクターを構築するのに使用することができる(例えば、Sambrook(1989年)、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、Cold Spring harbor Laboratory N.Y.およびAusubel(1989年)、Current Protocols in Molecular Biology、Green Publishing AssociatesおよびWiley Interscience、N.Yに記載された手法を参照されたい)。この文脈では、Okayama−Berg cDNA発現ベクターpcDV1(Pharmacia社)、pCDM8、pRc/CMV、pcDNA1、pcDNA3、pPICZalpha A(Invitrogen社)、またはpSPORT1(GIBCO BRL社)などの適切な発現ベクターが当技術分野で知られている。さらに、使用される発現系により、細胞内コンパートメントにポリペプチドを導くこと、またはこれを培養培地に分泌することができるリーダー配列を、本発明の核酸分子のコード配列に付加することができる。
【0069】
本発明はまた、本発明の生物学的に活性なタンパク質をコードする核酸分子を含む遺伝子組換え技術に従来使用されるベクター、特にプラスミド、コスミド、ウイルス、およびバクテリオファージにも関する。したがって、本発明はまた、本発明の核酸分子を含むベクターにも関する。好ましくは、前記ベクターは、発現ベクターおよび/または遺伝子導入もしくは標的ベクターである。レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルスまたはウシパピローマウイルスなどのウイルス由来発現ベクターは、本発明のポリヌクレオチドまたはベクターを標的細胞集団に送達するのに使用することができる。本発明の核酸分子を含有するベクターは、細胞宿主のタイプにより異なるよく知られた方法により宿主細胞に移動することができる。したがって、本発明はさらに、前記核酸分子または前記ベクターを含む細胞に関する。例えば、こうした方法には、Sambrook(1989年)、同上およびAusubel(1989年)、同上に記載された手法が含まれる。したがって、塩化カルシウムトランスフェクションが、一般に原核細胞に利用されるのに対し、リン酸カルシウム処理またはエレクトロポレーションは他の細胞宿主に使用することができる(Sambrook(1989)、同上を参照されたい)。さらなる代替として、本発明の核酸分子およびベクターは、標的細胞への送達のためリポソームに再構成することができる。宿主細胞にある本発明の核酸分子またはベクターは、宿主細胞のゲノムに組み込むことができるか、または染色体外で維持することができる。したがって、本発明はまた、本発明の核酸分子および/またはベクターを含む宿主細胞にも関する。ポリペプチドを発現するための宿主細胞は、当技術分野でよく知られており、原核細胞のほか、例えば大腸菌細胞、酵母細胞、無脊椎動物細胞、CHO−細胞、CHO−K1−細胞、Hela細胞、COS−1サル細胞、ボーズ(Bowes)細胞などのメラノーマ細胞、マウスL−929細胞、スイス由来3T3系、Balb−cまたはNIHマウス、BHKまたはHaKハムスター細胞系などの真核細胞を含む。
【0070】
さらなる態様では、本発明は、本発明の(宿主)細胞を培養することと、本明細書に記載された培養物から前記生物学的に活性なタンパク質を単離することを含む、本発明の生物学的に活性なタンパク質の調製方法を含む。ランダムコイルドメインを含む本発明の生物学的に活性なタンパク質は、例えば本発明の生物学的に活性なタンパク質をコードする記載された核酸分子またはベクターを含む細胞の培養、および培養物からの前記生物学的に活性なタンパク質の単離による組換えDNA技術により生成することができる。本発明の生物学的に活性なタンパク質は、原核細胞、例えば大腸菌BL21もしくは3M83、または真核細胞、例えばピキア・パストリス(Pichia pastoris)酵母株X−33もしくはCHO細胞を含む任意の適切な細胞培養系で生成することができる。当技術分野で知られているさらなる適切な細胞系は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)のような細胞系寄託機関から得ることができる。用語「原核の」が細菌細胞を含むことを意味するのに対し、用語「真核の」は酵母、高等植物、昆虫および哺乳類の細胞を含むことを意味する。形質転換された宿主は、発酵槽で増殖および当技術分野で知られている手法により培養して最適な細胞増殖を実現することができる。さらなる実施形態では、本発明は、生物学的に活性なタンパク質の発現に適切な条件下で本発明の細胞を培養すること、および培養物または培養培地から生物学的に活性なタンパク質を単離することを含む、上記の生物学的に活性なタンパク質の調製工程に関する。
【0071】
本発明の生物学的に活性なタンパク質は、増殖培地、細胞溶解物または細胞膜画分から単離することができる。本発明の発現ポリペプチドの単離および精製は、硫安沈殿、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動などを含む、任意の従来手段(Scopes(1982年)、「Protein Purification」、Springer−Verlag、N.Y.)により行うことができ、モノクローナルまたはポリクローナル抗体(例えば、本発明の生物学的に活性なタンパク質と融合したタグに対する)の使用を含むことができる。例えば、該タンパク質は、添付の実施例に記載されるように、ストレプトアビジンアフィニティークロマトグラフィーを用いたStrep−タグII(Skerra(2000年)Methods Enzymol 326:271〜304頁)により精製することができる。薬学的用途では、実質的には少なくとも約90〜95%の均一性の純粋なポリペプチドが好ましく、98〜99%以上の均一性が最も好ましい。生成手順に使用される宿主により、本発明のポリペプチドは、グリコシル化され得、または非グリコシル化され得る。
【0072】
本発明はさらに、前記生物学的に活性なタンパク質のインビボおよび/またはインビトロ安定性が増大した医薬品の調製のための、本発明の生物学的に活性なタンパク質、本発明の核酸分子、本発明のベクターまたは本発明の(宿主)細胞の使用に関する。
【0073】
さらに別の実施形態では、本発明は、前記生物学的に活性なタンパク質の改善した安定性から恩恵を受ける疾患および/または障害の治療方法(本明細書に記載された生物学的に活性なタンパク質をこうした治療を必要とする哺乳類に投与することを含む)に関する。本発明のタンパク質の生物活性に応じて、当業者は、どの疾患/障害が本発明の特定の生物学的に活性なタンパク質により治療されるかを容易に判定することができる。幾つかの非限定的な例が以下の表に挙げられている。
【0074】
【表1】

【0075】
本発明はまた、例えば細胞ベースの遺伝子療法アプローチまたは核酸ベースの遺伝子療法アプローチのような医学的アプローチにおける、本発明の核酸分子またはベクターを含む核酸分子、ベクターおよびトランスフェクト細胞の使用にも関する。
【0076】
さらなる実施形態では、本発明の本明細書で定義された「第1の」および「第2の」ドメインを含む本発明の生物学的に活性なタンパク質(または本発明の核酸分子またはベクターまたは宿主細胞)は、組成物の部分である。前記組成物は、1つまたは複数の本発明の生物学的に活性なタンパク質またはこれをコードおよび/もしくは発現する核酸分子、ベクターもしくは宿主細胞を含むことができる。
【0077】
前記組成物は、医薬組成物であってよく、場合によってはさらに薬学的に許容可能な担体および/または希釈剤を含むことができる。さらなる実施形態では、本発明は、医薬組成物の摂取を必要とする疾患の予防、治療、改善のための医薬組成物を調製するための、本明細書に記載された生物学的に活性なタンパク質の使用に関する。
【0078】
さらなる実施形態では、本明細書に記載された組成物は、場合によってはさらに適切な検出手段を含む診断組成物であってよく、前記診断組成物は増大したインビボおよび/またはインビトロ安定性を有する。
【0079】
本発明の組成物は、固体または液体形態であってよく、特に、(1つまたは複数の)粉末、(1つまたは複数の)錠剤、(1つまたは複数の)溶液または(1つまたは複数の)エアロゾルの形態であってよい。さらに、本発明の医薬品は、医薬組成物の意図された使用に応じて、さらなる生物学的に活性な剤を含み得ることが想定される。
【0080】
適切な(医薬)組成物の投与は、さまざまな方法、例えば、非経口、皮下、腹腔内、局所、気管支内、肺内および鼻内投与により、局所治療に所望であれば病巣内投与により達成することができる。非経口投与には、腹腔内、筋肉内、皮膚内、皮下静脈内または動脈内投与が含まれる。本発明の組成物は、例えば、特に効果の出る器官のような、外部標的または内部標的部位への微粒子銃送達により、標的部位に直接投与することもできる。
【0081】
適切な薬学的担体、賦形剤および/または希釈剤の例は、当技術分野でよく知られており、リン酸緩衝生理食塩水、水、油/水エマルジョンなどの乳剤、さまざまなタイプの湿潤剤、滅菌溶液等が含まれる。こうした担体を含む組成物は、よく知られた従来方法で処方することができる。適切な担体は、本発明の生物学的に活性なタンパク質と結合した場合に、生物学的に活性なタンパク質の生物活性を保持する任意の物質を含むこともできる(Remington’s Pharmaceutical Sciences(1980年)第16版、Osol、A.編を参照されたい)。非経口投与製剤には、滅菌水溶液または非水溶液、懸濁液、および乳剤)が含まれ得る。医薬組成物と関連して使用されるような緩衝液、溶媒および/または賦形剤は、好ましくは、本明細書で上記に定義されたように「生物学的」である。非水溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注入可能な有機エステルである。水性担体には、生理食塩水および緩衝媒体を含む、水、アルコール/水溶液、乳剤または懸濁液が含まれる。非経口ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸リンゲル、または固定油が含まれ得る。静脈内ビヒクルには、液体および栄養補充剤、電解質補充剤(リンゲルデキストロースに基づくものなど)などが含まれ得る。保存剤および他の添加剤も、例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガスなどを含め存在してよい。さらに、本発明の医薬組成物は、例えば、好ましくはヒト由来の血清アルブミンまたは免疫グロブリンのような、タンパク質担体を含むことができる。
【0082】
これらの医薬組成物は、適切な投与量で被験者に投与することができる。投与レジメンは、担当医師および臨床的因子により決定されるであろう。医学分野でよく知られているように、任意の1人の患者に対する投与量は、患者のサイズ、体表面積、年齢、投与する特定の化合物、性別、投与時間および経路、全般的健康、ならびに同時投与する他剤を含む、多くの要因により決まる。薬学的に活性な物質は、投与量当たり1μg〜20mg/体重kgの間、例えば0.1mg〜10mg/kg体重の間、例えば0.5mg〜5mg/kg体重の間の量で存在することができる。レジメンが持続注入であれば、これもまた1分当たり体重キログラム当たり1μg〜20mgの範囲であるべきである。ただし、特に先述の要因を考慮すれば、示された例示範囲より下または上の投与量も想定される。
【0083】
さらに、本発明の医薬組成物は、医薬組成物の意図された使用に応じて、さらなる生物学的に活性な剤を含み得ることが想定される。これらのさらなる生物学的に活性な剤は、例えば抗体、抗体フラグメント、ホルモン、成長因子、酵素、結合分子、サイトカイン、ケモカイン、核酸分子および薬剤であってよい。
【0084】
本発明は、医薬組成物に限定されないことに注目すべきである。研究でまたは診断薬(複数可)として使用される組成物も想定される。例えば、本明細書で定義されたランダムコイルドメインを含む生物学的に活性なタンパク質が、診断設定で使用されることが想定される。こうした目的のため、本明細書で定義された「第1の」および「第2の」ドメインを含む、本発明の生物学的に活性なタンパク質は、検出可能に標識することができる。こうした標識は、放射性標識([H]水素[125I]ヨウ化物または[123I]ヨウ化物のような)、蛍光標識(緑色蛍光タンパク質(GFP)のような蛍光タンパク質、またはフルオレセインイソチオシアネート(FITC)のようなフルオロフォアを含むがこれらに限定されない)またはNMR標識(ガドリニウムキレートのような)を含むが、これらに限定されない。ここで定義された標識またはマーカーは、決して限定的な、および単に実例となる例を代表するものではない。本発明の診断組成物は、追跡実験または診断医学的設定において特に有用である。
【0085】
さらに別の実施形態では、本発明は、本明細書に記載された生物学的に活性なタンパク質、前記生物学的に活性なタンパク質をコードする核酸分子、前記核酸分子を含むベクターまたは前記核酸もしくは前記ベクターを含む細胞を含むキットを提供する。好適には、本発明のキットはさらに、場合によっては(1つまたは複数の)緩衝液、保存溶液、および/または医学的、科学的もしくは診断的アッセイおよび目的の実施に必要な残りの試薬もしくは物質を含む。さらに、本発明のキットの部分は、バイアルもしくはボトル、または容器もしくはマルチ容器ユニットにおける組合せで個別に包装することができる。
【0086】
本発明のキットは、特に、本発明の方法を実施するのに有利に使用することができ、本明細書で言及されたさまざまな適用に、例えば、診断キットとして、研究ツールとして、または医療ツールとして使用することができる。さらに、本発明のキットは、科学的、医学的および/または診断的目的に適切な検出手段を含有することができる。キットの製造は、好ましくは当業者に知られた標準手順に従う。
【0087】
本発明は、これより以下の非限定的図および例により説明される。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】Pro−Ala−Ser#1(PAS#1;配列番号18)、Pro−Ala−Ser#2(PAS#2;配列番号20)、Pro−Ala−Ser#3(PAS#3;配列番号22)、(Pro−Ala−Ser#5(PAS#5;配列番号26)、Pro−Ala−Ser#1P2(PAS#1P2;配列番号28およびSer−Ala(piSA;配列番号2)ポリマー配列に関する遺伝子設計を示す図である。 (A)EcoO109IおよびSapI制限酵素認識部位と適合可能な2つの粘着末端(小文字)を有する、2つの相補的オリゴデオキシヌクレオチドのハイブリダイゼーションにより得られたPAS#1(それぞれ、配列番号29および30)に関する構成単位のヌクレオチドおよびコードされたアミノ酸配列。 (B)EcoO109IおよびSapI制限酵素認識部位と適合可能な2つの粘着末端(小文字)を有する、2つの相補的オリゴデオキシヌクレオチドのハイブリダイゼーションにより得られたPAS#2(それぞれ、配列番号31および32)に関する構成単位のヌクレオチドおよびコードされたアミノ酸配列。 (C)EcoO109IおよびSapI制限酵素認識部位と適合可能な2つの粘着末端(小文字)を有する、2つの相補的オリゴデオキシヌクレオチドのハイブリダイゼーションにより得られたPAS#3(それぞれ、配列番号33および34)に関する構成単位のヌクレオチドおよびコードされたアミノ酸配列。 (D)EcoO109IおよびSapI制限酵素認識部位と適合可能な2つの粘着末端(小文字)を有する、2つの相補的オリゴデオキシヌクレオチドのハイブリダイゼーションにより得られたPAS#5(それぞれ、配列番号35および36)に関する構成単位のヌクレオチドおよびコードされたアミノ酸配列。 (E)EcoO109IおよびSapI制限酵素認識部位と適合可能な2つの粘着末端(小文字)を有する、2つの相補的オリゴデオキシヌクレオチドのハイブリダイゼーションにより得られたPAS#1P2(それぞれ、配列番号39および40)に関する構成単位のヌクレオチドおよびコードされたアミノ酸配列。 (F)EcoO109IおよびSapI制限酵素認識部位と適合可能な2つの粘着末端(小文字)を有する、2つの相補的オリゴデオキシヌクレオチドのハイブリダイゼーションにより得られたpiSA(それぞれ、配列番号37および38)に関する構成単位のヌクレオチドおよびコードされたアミノ酸配列。
【図2−1】IFNa2bおよびIL−1raとの融合としてのPro−Ala−Serポリマー配列に関するクローニング戦略を示す図である。 (A)ポリマー配列(配列番号55)をサブクローニングするのに使用される、pASK75の誘導体であるpASK−2xSapIのヌクレオチド配列ストレッチ。ヌクレオチド配列は、逆相補的配向での2つのSapI制限酵素認識部位をコードし、図1に示された合成遺伝子カセット(棒で示された)と適合可能な突出末端に消化時につながる。認識配列は下線が引かれている。 (B)pASK−2xSapIプラスミドへの挿入後、pPAS(#1)200をもたらす200残基を有するPAS#1ポリマーのヌクレオチドおよびコードされたアミノ酸配列(それぞれ、配列番号41および42)。ポリマー配列に隣接するSapI制限酵素認識部位が標識されている(認識配列は下線が引かれている)。 (C)pASK−IBA4(IBA GmbH社、ゲッティンゲン)でのクローニング後、IFNa2bのヌクレオチドおよびコードされたアミノ酸配列(それぞれ、配列番号43および44)。融合タンパク質のクローニングに使用される単一制限酵素認識部位KasIおよびHindIIIならびにポリマー配列挿入のための単一制限酵素認識部位SapIが標識されている(認識配列は下線が引かれている)。Strep−タグIIの2つのC末端アミノ酸が下線が引かれている。成熟IFNa2bの最初のアミノ酸が+1で標識されている。
【図2−2】(D)PAS#1ポリマー配列挿入後のIFNa2bのN末端のヌクレオチドおよびコードされたアミノ酸配列(それぞれ、配列番号45および46)。単一制限酵素認識部位KasI、HindIII、およびSapIが標識されている(認識配列は下線が引かれている)。融合タンパク質の部分であるIFNa2bの最初のアミノ酸が標識され(1)、Strep−タグIIの2つのC末端アミノ酸は下線が引かれている。 (E)pASK−IBA4(IBA GmbH社、ゲッティンゲン)でのクローニング後、IL−1raのヌクレオチドおよびコードされたアミノ酸配列(それぞれ、配列番号47および48)。融合タンパク質のクローニングに使用される単一制限酵素認識部位KasIおよびHindIIIのほか、ポリマー配列挿入のための単一制限酵素認識部位SapIが標識されている(認識配列は下線が引かれている)。Strep−タグIIの2つのC末端アミノ酸は下線が引かれている。成熟IL−1raの最初のアミノ酸が+1で標識されている。 (F)PAS#1ポリマー配列挿入後のIL−1raのN末端のヌクレオチドおよびコードされたアミノ酸配列(それぞれ、配列番号49および50)。単一制限酵素認識部位KasI、HindIII、およびSapIが標識されている(認識配列は下線が引かれている)。融合タンパク質の部分であるIL1raの最初のアミノ酸が標識され(1)、Strep−タグIIの2つのC末端アミノ酸は下線が引かれている。
【図2−3】(G)pPAS(#1)200−IFNa2bのプラスミドマップ。PAS(#1)200−IFNa2b(細菌OmpAシグナルペプチド、Strep−タグII、200残基、すなわち図1Aに示された配列の10反復コピーを有するPAS#1ポリマー、PAS(#1)200、およびヒトIFNa2bを含む)に関する構造遺伝子は、テトラサイクリンプロモーター/オペレーター(tetp/o)の転写制御下にあり、リポタンパク質ターミネーター(tlpp)で終わる。プラスミド骨格、すなわちXbaIおよびHindIII制限酵素認識部位に隣接した発現カセットの外側は、一般的なクローニングおよび発現ベクターpASK75(Skerra(1994年)Gene 151:131〜135頁)のものと同一である。単一制限酵素認識部位が示されている。PAS(#1)400−IFNa2bおよびPAS(#1)600−IFNa2bの発現ベクターは、400または600残基、すなわち図1Aに示された配列の20または30反復コピーを有するPAS#1ポリマーが、PAS(#1)200の代わりにコードされることを除いて同一である。同様に、PAS(#2)200−IFNa2bおよびPAS(#3)200−IFNa2bの発現ベクターは、200、すなわちそれぞれ、図1Bおよび1Cに示された配列の10反復コピーのPAS#2またはPAS#3ポリマーを保有する。同様に、PAS(#5)192−IFNa2bおよびPAS(#5)384−IFNa2bの発現ベクターは、192または384残基、すなわち図1Dに示された配列の8または16反復コピーのPAS#5ポリマーを保有する。同様に、PAS(#1P2)140−IFNa2bの発現ベクターは、140残基、すなわち図1Eに示された配列の7反復コピーのPAS#1P2ポリマーを保有する。PAS(#1)200−IL1ra、PAS(#1)400−IL1ra、PAS(#5)192−IL1raおよびPAS(#5)384−IL1raの発現ベクターは、IFNa2bの代わりにIL−1raのコーディング遺伝子を保有することを除いてIFNa2bの対応するベクターに類似している。
【図3】ヒト好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン、NGALとの融合である、図1によるPro−Ala−SerおよびSer−Alaポリマー配列に関するクローニング戦略を示す図である。 (A)pASK75誘導体pNGAL15(Breustedt(2006年)Biochim Biophys Acta 1764:161〜173頁)でクローニングされた、Strep−タグII(イタリック体のアミノ酸配列)を保有するNGAL変異体のC末端(下線)のヌクレオチドおよびコードされたアミノ酸配列(それぞれ、配列番号51および52)。EcoO109I制限酵素認識部位は両方のコーディング領域の接合部で導入され、合成遺伝子カセット(棒で示された)と適合可能な突出末端に消化時につながり、pNGAL15−Ecoをもたらす。発現カセットの3’末端における固有のHindIII制限酵素認識部位が標識されている(認識配列は下線が引かれている)。 (B)PAS#1ポリマー配列挿入後のNGALのC末端のヌクレオチドおよびコードされたアミノ酸配列(それぞれ、配列番号53および54)、これに続くStrep−タグII(イタリック体)。遺伝子発現カセットの3’末端における固有のHindIII制限酵素認識部位が標識されている(認識配列は下線が引かれている)。 (C)pNGAL−PAS(#1)200のプラスミドマップ。NGAL−PAS(#1)200(OmpAシグナルペプチド、修飾NGAL、および200残基を有するPAS#1、PAS(#1)200、ならびにStrep−タグIIを含む)に関する構造遺伝子は、テトラサイクリンプロモーター/オペレーター(tetp/o)の転写制御下にあり、リポタンパク質ターミネーター(tlpp)で終わる。プラスミド骨格、すなわちXbaIおよびHindIII制限酵素認識部位に隣接した発現カセットの外側は、一般的なクローニングおよび発現ベクターpASK75(Skerra(1994年)Gene 151:131〜135頁)のものと同一である。単一制限酵素認識部位が示されている。NGAL−PAS(#1)100およびNGAL−piSA100の発現ベクターは、ちょうど100残基を有する図1によるPAS#1またはpiSAポリマーがコードされることを除いて同一である。
【図4−1】精製組換えIFNa2b、IL−1ra、およびNGAL、ならびにSDS−PAGEによるこれらのポリマー融合の分析、これに続くクマシーブリリアントブルーR−250による染色を示す図である。組換えタンパク質は、ペリプラズム分泌を介して大腸菌BL21で産生され、ストレプトアビジンアフィニティークロマトグラフィーを用いてStrep−タグIIの手段により精製された。 (A)10%SDS−PAGEによる、精製組換えIFNa2bおよびそれぞれ、200、400または600残基を有するこのPAS#1融合の分析。ゲルは、IFNa2b、PAS(#1)200−IFNa2b、PAS(#1)400−IFNa2b、およびPAS(#1)600−IFNa2b各々の2μgタンパク質試料を示す。左側の試料が2−メルカプトエタノールで還元されたのに対し、右側の対応する試料は非還元のままであった。タンパク質マーカーのサイズ(kDa)(還元状態下で適用)が左側に示されている。全ての4つのタンパク質は、還元型でそれぞれ、約20kDa、約80kDa、約170kDa、および約300kDaの見かけの分子サイズを有する単一の均一なバンドとして現れる。これらの値は、PAS(#1)200−IFNa2bで37.4kDa、PAS(#1)400−IFNa2bで54.0kDa、およびPAS(#1)600−IFNa2bで70.5kDaの計算された質量よりも有意に大きい。IFNa2b自体(計算された質量20.9kDaを有する)は正常な電気泳動移動度を示すことから、この影響は明らかに、長さの異なるPro−Ala−Serポリマーによるものである。非還元状態でのIFNa2bは、2つの分子内ジスルフィド架橋によって生じるよりコンパクトな形態のため、わずかに高い電気泳動移動度を有する。 (B)10%SDS−PAGEによる、精製組換えPAS(#5)192−IFNa2bおよびPAS(#5)384−IFNa2bの分析。ゲルは、各タンパク質の2μg試料を示す。左側の試料が2−メルカプトエタノールで還元されたのに対し、右側の対応する試料は非還元のままであった。タンパク質マーカーのサイズ(kDa)(還元状態下で適用)が左側に示されている。2つのタンパク質は、還元および非還元状態のいずれも、それぞれ、約75kDaおよび約120kDaの見かけの分子サイズを有する単一の均一なバンドとして現れる。これは、PAS(#5)192−IFNa2bで36.7kDa、およびPAS(#5)384−IFNa2bで52.6kDaの計算された質量よりも有意に大きい。この影響は、この場合もやはり長さの異なるPro−Ala−Serポリマーによるものである。
【図4−2】(C)12%SDS−PAGEによる、精製組換えPAS(#1)200−IFNa2b、PAS(#2)200−IFNa2b、PAS(#3)200−IFNa2b、PAS(#5)192−IFNa2b、PAS(#1P2)140−IFNa2b、およびIFNa2bの分析。ゲルは、2−メルカプトエタノールで還元された各タンパク質の2μg試料を示す。タンパク質マーカーのサイズ(kDa)が左側に示されている。6つのタンパク質はそれぞれ、約75kDa(PAS(#1)200−IFNa2b、PAS(#2)200−IFNa2b、PAS(#3)200−IFNa2b)、約70kDa(PAS(#5)192−IFNa2b)、約40kDa(PAS(#1P2)140−IFNa2b)、および約20kDa(IFNa2b)の見かけの分子サイズを有する単一の均一なバンドとして現れる。故に、ポリマー融合は、PAS(#1)200−IFNa2bで37.4kDa、PAS(#2)200−IFNa2bで37.4kDa、PAS(#3)200−IFNa2bで38.6kDa、PAS(#5)192−IFNa2bで36.7kDa、およびPAS(#1P2)140−IFNa2bで31.7kDaの計算された質量よりも有意に大きいサイズを示す。この影響は、この場合もやはり長さの異なるPro−Ala−Serポリマーによるものである。 (D)12%SDS−PAGEによる、精製組換えIL−1ra、ならびにそれぞれ200、400または192および384残基を有するこのPAS#1およびPAS#5融合の分析。ゲルは、2−メルカプトエタノールで還元されたIL−1ra、PAS(#1)200−IL1ra、PAS(#1)400−IL1ra、PAS(#5)192−IL1raおよびPAS(#5)384−IL1ra各々の2μgタンパク質試料を示す。タンパク質マーカーのサイズ(kDa)が左側に示されている。全ての5つのタンパク質は、それぞれ、約20kDa、約70kDa、約140kDa、66kDaおよび約125kDaの見かけの分子サイズを有する単一の均一なバンドとして現れる。ポリマー融合ではこれらの値は、PAS(#1)200−IL1raで35.3kDa、PAS(#1)400−IL1raの51.9kDa、PAS(#5)192−IL1raで34.6kDaおよびPAS(#5)384−IL1raで50.5kDaの計算された質量よりも有意に大きい。IL−1ra自体(計算された質量19.8kDaを有する)は正常な電気泳動移動度を示すことから、この影響は明らかに、長さの異なるPro−Ala−Serポリマーによるものである。
【図4−3】(E)12%SDS−PAGEによる、精製組換えNGALおよびそれぞれ、100または200残基を有するこのPAS#1ポリマー融合の分析。ゲルは、NGAL、NGAL−PAS(#1)100、およびNGAL−PAS(#1)200各々の4μgタンパク質試料を示す。左側の試料が2−メルカプトエタノールで還元されたのに対し、右側の対応する試料は非還元のままであった。タンパク質マーカーのサイズ(kDa)(還元状態下で適用)が左側に示されている。NGAL−PAS(#1)100およびNGAL−PAS(#1)200は、還元および非還元状態のいずれも、それぞれ、約45kDaおよび約60kDaの見かけの分子サイズを有する単一の均一なバンドとして現れる。これは、NGAL−PAS(#1)100で29.8kDaおよびNGAL−PAS(#1)200で38.1kDaの計算された質量よりも有意に大きい。NGAL自体(計算された質量21.5kDaを有する)は正常な電気泳動移動度を示すことから、この影響は長さの異なるPro−Ala−Serポリマーによるものである。
【図5−1】精製組換えIFNa2b、IL−1ra、NGAL、およびこれらのポリマー融合の流体力学的体積の定量分析を示す図である。 (A)IFNa2b、PAS(#1)200−IFNa2b、PAS(#1)400−IFNa2b、およびPAS(#1)600−IFNa2bの分析的ゲル浸透クロマトグラフィー。濃度0.25mg/mlでの各タンパク質250μlを、リン酸緩衝生理食塩水、PBSで平衡化したSuperdex S200 10/300 GLカラムに適用した。280nmでの吸収をモニターし、各クロマトグラフィーのラン(run)のピークを値1に対して正規化した。矢印はカラムの除外容積(8.0ml)を示す。
【図5−2】(B)PAS(#5)192−IFNa2bおよびPAS(#5)384−IFNa2bの分析的ゲル浸透クロマトグラフィー。濃度0.25mg/mlでの各タンパク質250μlを、PBS緩衝液で平衡化したSuperdex S200 10/300 GLカラムに適用した。280nmでの吸収をモニターし、各クロマトグラフィーのランのピークを値1に対して正規化した。矢印はカラムの除外容積(8.0ml)を示す。
【図5−3】(C)Superdex S200 10/300 GLを用いた(A)および(B)からのクロマトグラムのための較正曲線。マーカータンパク質の分子量(MW)の対数(RNase A、13.7kDa;炭酸脱水酵素、29.0kDa;オボアルブミン、43.0kDa;ウシ血清アルブミン、66.3kDa;トランスフェリン、81.0kDa;アルコール脱水素酵素、150kDa)を、これらの溶出体積(黒丸)に対してプロットし、直線に適合させた。IFNa2bおよびこの融合タンパク質(黒い四角)の観察された溶出体積から、これらの見かけの分子量を次の通りに判定した:IFNa2b:22.5kDa(計算された質量:20.9kDa);PAS(#1)200−IFNa2b:176kDa(計算された質量:37.4kDa);PAS(#1)400−IFNa2b;346kDa(計算された質量:54.0kDa);PAS(#1)600−IFNa2b:522kDa(計算された質量:70.5kDa);PAS(#5)192−IFNa2b:162kDa(計算された質量:36.7kDa);PAS(#5)384−IFNa2b:280kDa(計算された質量:52.6kDa)。 (D)PAS(#2)200−IFNa2b、PAS(#3)200−IFNa2b、およびPAS(#1P2)140−IFNa2bの分析的ゲル浸透クロマトグラフィー。濃度0.25mg/mlでの各タンパク質250μlを、リン酸緩衝生理食塩水、PBSで平衡化したSuperdex S200 10/300 GLカラムに適用した。280nmでの吸収をモニターし、各クロマトグラフィーのランのピークを値1に対して正規化した。矢印はカラムの除外容積(V=8.0ml)を示す。
【図5−4】(E)同じSuperdex S200 10/300 GLカラムを用いた(D)からのクロマトグラムのための較正曲線。マーカータンパク質の分子量(MW)の対数(RNase A、13.7kDa;炭酸脱水酵素、29.0kDa;オボアルブミン、43.0kDa;ウシ血清アルブミン、66.3kDa;トランスフェリン、81.0kDa;アルコール脱水素酵素、150kDa)を、これらの溶出体積(黒丸)に対してプロットし、直線に適合させた。IFNa2bおよびこの融合タンパク質(黒い四角)の観察された溶出体積から、これらの見かけの分子サイズを次の通りに判定した:PAS(#2)200−IFNa2b:168kDa(計算された質量:37.4kDa);PAS(#3)200−IFNa2b:146kDa(計算された質量:38.6kDa);PAS(#1P2)140−IFNa2b:66.4kDa(計算された質量:31.7kDa)。 (F)IL−1ra、PAS(#1)200−IL1ra、PAS(#1)400−IL1ra、PAS(#5)192−IL1ra、およびPAS(#5)384−IL1raの分析的ゲル浸透クロマトグラフィー。濃度0.25mg/mlでの各タンパク質250μlを、リン酸緩衝生理食塩水、PBSで平衡化したSuperdex S200 10/300 GLカラムに適用した。280nmでの吸収をモニターし、各クロマトグラフィーのランのピークを値1に対して正規化した。矢印はカラムの除外容積を示す。よりわかりやすくするためピークのみが示されている。
【図5−5】(G)同じSuperdex S200 10/300 GLカラムを用いた(F)からのクロマトグラムのための較正曲線。マーカータンパク質の分子量(MW)の対数(RNase A、13.7kDa;炭酸脱水酵素、29.0kDa;オボアルブミン、43.0kDa;ウシ血清アルブミン、66.3kDa;トランスフェリン、81.0kDa;アルコール脱水素酵素、150kDa)を、これらの溶出体積(黒丸)に対してプロットし、直線に適合させた。IL−1raおよびこの融合タンパク質(黒い四角)の観察された溶出体積から、これらの見かけの分子サイズを次の通りに判定した:IL−1ra:19.8kDa(計算された質量:18.8kDa);PAS(#1)200−IL1ra:161kDa(計算された質量:35.3kDa);PAS(#1)400−IL1ra:336kDa(計算された質量:51.9kDa);PAS(#5)192−IL1ra:148kDa(計算された質量:34.6kDa);PAS(#5)384−IL1ra:305kDa(計算された質量:50.5kDa)。
【図5−6】(H)NGAL、NGAL−PAS(#1)100、NGAL−PAS(#1)200およびNGAL−piSA100の分析的ゲル浸透クロマトグラフィー。濃度0.25mg/mlでの各タンパク質250μlを、PBS緩衝液で平衡化したSuperdex S75 10/300GL(NGALおよびNGAL−piSA100)またはSuperdex S200 10/300GL(NGAL−PAS(#1)100およびNGAL−PAS(#1)200)カラムに適用した。280nmでの吸収をモニターし、各クロマトグラフィーのランのピークを値1に対して正規化した。矢印はカラムの除外体積(それぞれ、7.5mlおよび8.2ml)を示す。
【図5−7】(I)Superdex S75 10/300 GLおよびSuperdex S200 10/300 GLを用いた(H)からのクロマトグラムのための較正曲線。マーカータンパク質の分子量(MW)の対数(Superdex S75 10/300 GL:アプロチニン、6.5kDa;リボヌクレアーゼ、13.7kDa;ミオグロビン、17.6kDa;炭酸脱水酵素、29.0kDa;オボアルブミン、43.0kDa;ウシ血清アルブミン、66.3kDa;トランスフェリン、81.0kDa;Superdex S200 10/300 GL:シトクロムC、12.4kDa;炭酸脱水酵素、29.0kDa;オボアルブミン、43.0kDa;ウシ血清アルブミン、66.3kDa;トランスフェリン、81.0kDa;アルコール脱水素酵素、150kDa)を、これらの溶出体積(黒丸)に対してプロットし、直線に適合させた。IL−1raおよびこの融合タンパク質(黒い四角)の観察された溶出体積から、これらの見かけの分子サイズを次の通りに判定した:NGAL:21.5kDa(計算された質量:21.5kDa);NGAL−PAS(#1)100:72.6kDa(計算された質量:29.8kDa);NGAL−PAS(#1)200:106.4kDa(計算された質量:38.1kDa);NGAL−piSA100:54kDa(計算された質量:29.4kDa)。
【図6−1】円二色性(CD)分光法による、精製組換えIFNa2b、IL−1ra、NGAL、およびこれらのポリマー融合の実験的2次構造分析を示す図である。タンパク質ごとに、スペクトルを50mM KSO、20mM K−リン酸 pH7.5で室温で記録し、モル楕円率、Θに対して正規化した。 (A)精製組換えIFNa2b、PAS(#1)200−IFNa2b、PAS(#1)400−IFNa2b、およびPAS(#1)600−IFNa2bの円二色性(CD)スペクトル。IFNa2bのCDスペクトルは、208nmおよび220nm付近に2つの負の極大を有する顕著なα−ヘリックスタンパク質の典型的特徴(Sreerama:Circular Dichroism−Principles and Applications(2000年)Berova、Nakanishi and Woody(編)Wiley、New York:601〜620頁を示す。これは、細菌産生ヒトIFNa2bの正しいフォールディングを示している。Pro−Ala−Serポリマーを有するこの融合タンパク質のスペクトルは、205nm付近に顕著な負の極小を有する特徴的な偏差を明らかにし、明らかに、ランダムコイルコンフォメーションを示している。さらに、IFNa2bのα−ヘリックスの寄与から生じ、融合タンパク質の部分であってもIFNa2bの正しいフォールディングを示す、220nm付近の肩がある。 (B)それぞれの融合タンパク質のスペクトルからIFNa2bのスペクトルを減算して得られた、PAS(#1)200−IFNa2b、PAS(#1)400−IFNa2b、およびPAS(#1)600−IFNa2bのモル差CDスペクトル(molar difference CD spectrum)。200、400、および600残基を有するPAS#1ポリマーの差CDスペクトルは全て、200nm付近の強いを明らかにし、明らかに、緩衝水溶液中のランダムコイルコンフォメーションを示している(Greenfield(1969年)Biochemistry 8:4108〜4116頁;Sreerama(2000年)同上;Fandrich(2002年)EMBO J 21:5682〜5690頁。
【図6−2】(C)IFNa2bのスペクトルと共の、精製組換えPAS(#2)200−IFNa2b、PAS(#3)200−IFNa2bおよびPAS(#1P2)140−IFNa2bの円二色性(CD)スペクトル。ポリマー融合タンパク質のスペクトルは、ランダムコイルコンフォメーションを示す205nm付近の顕著な負の極小、および正しくフォールディングされたIFNa2bの寄与から生じる220nm付近の肩を明らかにする。 (D)IFNa2bのスペクトルを減算後の、PAS(#2)200−IFNa2b、PAS(#3)200−IFNa2bおよびPAS(#1P2)140−IFNa2bのモル差CDスペクトル。200残基を各々有するPAS#2およびPAS#3ポリマー、ならびに140残基を有するPAS#1P2ポリマーの差CDスペクトルは、200nm付近の著しい極小を明らかにし、明らかに、ランダムコイルコンフォメーションを示す(Greenfield(1969年)同上;Sreerama(2000年)同上;Fandrich(2002年)同上)。
【図6−3】(E)精製組換えPAS(#5)192−IFNa2bおよびPAS(#5)384−IFNa2bの円二色性(CD)スペクトル。これら2つの融合タンパク質のスペクトルは、ランダムコイルコンフォメーションを示す205nm付近の顕著な負の極小、およびフォールディングされたIFNa2bの寄与から生じる220nm付近の肩を明らかにする。 (F)IFNa2bのスペクトルを減算後の、PAS(#5)192−IFNa2bおよびPAS(#5)384−IFNa2bのモル差CDスペクトル。192および384残基を有するPAS#5ポリマーの差CDスペクトルは、200nm付近の強い極小を明らかにし、明らかに、ランダムコイルコンフォメーションを示す(Greenfield(1969年)同上;Sreerama(2000年)同上;Fandrich(2002年)同上)。
【図6−4】(G)精製組換えIL−1ra、PAS(#1)200−IL1ra、PAS(#1)400−IL1ra、PAS(#5)192−IL1ra、およびPAS(#5)384−IL1raの円二色性(CD)スペクトル。4つの融合タンパク質のスペクトルは、ランダムコイルコンフォメーションを示す200nm付近の顕著な負の極小を明らかにする。 (H)IL−1raのスペクトルを減算後の、PAS(#1)200−IL1ra、PAS(#1)400−IL1ra、PAS(#5)192−IL1ra、およびPAS(#5)384−IL1raのモル差CDスペクトル。それぞれ、200または400および192または384残基を有する、PAS#1およびPAS#5ポリマー両方の差CDスペクトルは、200nm付近の強い極小を明らかにし、明らかに、ランダムコイルコンフォメーションを示す(Greenfield(1969年)同上;Sreerama(2000年)同上;Fandrich(2002年)同上)。
【図6−5】(I)精製組換えNGAL、NGAL−PAS(#1)100、およびNGAL−PAS(#1)200のCDスペクトル。NGALのCDスペクトルは、212nm付近に負の極大を有する顕著なβ−シートタンパク質の典型的特徴(Sreerama(2000年)同上)を有する。200nmより下の正のバンドの欠如は、このマウスオルソログ24p3のCDスペクトル(Chu(1998年)J Pept Res 52:390〜397年)と一致する。以上のことから、これらのデータは、細菌産生ヒトNGALタンパク質の正しいフォールディングを支持している。2つの融合タンパク質のスペクトルは、195nm付近に顕著な負の極小(ランダムコイルコンフォメーションを示す)を有する特徴的な偏差、および200nm付近の肩(200nmで負の極小を有するNGALの寄与から生じる)を明らかにする。後者の観察は、Pro−Ala−Serポリマーと融合した場合のNGALタンパク質の正しいフォールディングを示す。 (J)NGALのスペクトルを減算後の、NGAL−PAS(#1)100およびNGAL−PAS(#1)200のモル差CDスペクトル。100および200残基を有するPAS#1ポリマーの差CDスペクトルは、200nm付近の強い極小を明らかにし、明らかに、ランダムコイルコンフォメーションを示す(Greenfield(1969年)同上;Sreerama(2000年)同上;Fandrich(2002年)同上)。
【図6−6】(K)精製組換えNGAL−piSA100のCDスペクトル、およびNGALのスペクトルを減算後のこのモル差CDスペクトル。NGAL−piSA100のCDスペクトルおよびpiSA100ポリマーの差CDスペクトルはいずれも、218nm付近に負の極大を、200nmより下に正の極大を有する顕著なβ−シートタンパク質の典型的特徴(Sreerama(2000年)同上)を有する。故に、差スペクトルは、同程度の長さを有するPro−Ala−Serポリマー融合のものとは明らかに異なり、ポリマー融合パートナーに起因するランダムコイルコンフォメーションにより明らかに支配されている。
【図7】PAS(#1)200−IFNa2bおよびPAS(#5)192−IFNa2bの血清安定性テストの図である。 PAS(#1)200−IFNa2b(A)およびPAS(#5)192−IFNa2b(B)の血清安定性は、濃度0.17mg/mlで83%v/vマウス血漿(Rockland Immunochemicals社、ギルバーツビル、PA)中で37℃にて最大48時間、融合タンパク質をインキュベーションして分析した。試料(6μl)を示された時点で採取し、54μl SDS−PAGE電気泳動バッファーおよびβ−メルカプトエタノール含有15μl SDS−PAGEローディングバッファーで希釈した。アリコート25μl(0.33μgテストタンパク質に相当)および参照試料(0.1μg)を12%SDS−PAGEに適用し、ニトロセルロースメンブレンにブロットした。組換えタンパク質を、Strep−タグIIを認識するStrepTactin(登録商標)アルカリホスファターゼ複合体(IBA社、ゲッティンゲン、ドイツ)と共にインキュベーションして検出し、色素産生反応により発色させた。 両方のテストタンパク質について、ブロットは全ての時点の一定強度のシグナルを明らかにする。分解産物を検出することはできず、調査した時間的経過の中でテストタンパク質濃度の低下をもたらすタンパク質凝集の徴候はなかった。
【図8】精製組換えIFNa2bおよび200または400残基を有するこのPAS#1ポリマー融合の薬物動態を示す図である。 体重約25gのBALB/cマウスに、IFNa2b、PAS(#1)200−IFNa2b、またはPAS(#1)400−IFNa2bタンパク質いずれかの約125μlを1mM EDTA含有PBS中1mg/mlの濃度で注射し、体重(b.w.)kg当たり5mgテストタンパク質の投与量を達成した。血液試料は示されたように採取した。透明な血漿試料のアリコートをPBSで1:5に希釈した。希釈試料10μl(1μl血漿に相当)のアリコートを、12%SDS−PAGEに適用しニトロセルロースメンブレンにブロットした。組換えタンパク質を、マウス抗ヒトIFNa2b抗体9D3(Abcam社、ケンブリッジ、UK)と共にインキュベーション、続いて抗マウスIgGアルカリホスファターゼ複合体(Sigma−Aldrich社、セントルイス、MO)と共にインキュベーションして検出し、色素産生反応において発色させた。 左端のレーン(M)は、参照として、精製IFNa2b、PAS(#1)200−IFNa2b、およびPAS(#1)400−IFNa2b(各0.1μg、すなわち血漿試料中t=0が期待されるような量)の混合物を示す。他のレーンは、示された時点でのIFNa2b、PAS(#1)200−IFNa2b、およびPAS(#1)400−IFNa2bの血漿試料を示す。 ブロットは、最も早い時点、すなわち30分後の全ての3つのタンパク質試料に関する最も高いシグナルを明らかにし、既に、2時間後にはもはや検出できないIFNa2bの急速な減衰を明らかにする。対照的に、両方のPAS(#1)200−IFNa2bおよびPAS(#1)400−IFNa2bは、最大6時間検出することができ(200残基融合に比べて400残基融合の保持が明らかに強い)、非融合IFNa2bタンパク質と比較した場合、有意に長い循環を示す。特に、どちらのタンパク質試料のタンパク質分解も示されなかった。故に、目的のIFNa2bタンパク質だけでなくポリマー融合部分も、高い血清安定性を明らかにする。
【図9】精製組換えIFNa2bおよび200または400残基を有するこのPAS#1ポリマー融合の薬物動態の定量分析を示す図である。 図8で調査したのと同じ動物からの血漿試料を、IFNa2b、PAS(#1)200−IFNa2bまたはPAS(#1)400−IFNa2b濃度について、サンドイッチELISAを用いて定量的にアッセイした。したがって、マイクロタイタープレートのウェルを、検出抗体としての抗ヒトIFNa抗体9D3(Abcam社、ケンブリッジ、UK)でコートし、群A(IFNa2bを注射)、群B(PAS(#1)200−IFNa2bを注射)、および群C(PAS(#1)400−IFNa2bを注射)の動物からの血漿試料の希釈系列を適用した。結合したIFNa2b、PAS(#1)200−IFNa2b、およびPAS(#1)400−IFNa2bを、検出抗体より異なるエピトープを認識する2次抗ヒトIFNa2b抗体HRP複合体(4E10−HRP;Abcam社、ケンブリッジ、UK)により検出し、続いて色素産生反応を行った。IFNa2b、PAS(#1)200−IFNa2b、およびPAS(#1)400−IFNa2bの濃度を、既知の濃度で適用した同じ精製組換えタンパク質で作成した標準曲線との比較により定量化した。IFNa2b、PAS(#1)200−IFNa2b、およびPAS(#1)400−IFNa2bの血漿半減期を推定するため、得られた濃度値を静脈注射後時間に対してプロットし、単一指数減衰と仮定して数値的に適合させた。 この結果、非融合IFNa2bタンパク質は、5.5±1×10−5分の半減期できわめて速いクリアランスを示した。対照的に、PAS(#1)200−IFNa2bおよびPAS(#1)400−IFNa2bについて判定した排出相は、それぞれ、61.7±5.4分および約6±3時間の半減期で有意に遅延し、故に非融合IFNa2bに比べて、それぞれ200および400残基を有するPro−Ala−Serポリマー融合のため10倍および60倍を超える延長した循環を示す。
【図10】それぞれ、200、400、600残基を有する精製組換えIFNa2b PAS#1ポリマー融合ならびに192および384残基を有する精製組換えPAS#5ポリマー融合の薬物動態の定量分析を示す図である。 体重約18gのC57BL/6マウスに、PAS(#1)200−IFNa2b、PAS(#1)400−IFNa2b、PAS(#1)600−IFNa2b、PAS(#5)−IFNa2bまたはPAS(#5)384−IFNa2bタンパク質いずれかの約125μlを1mM EDTA含有PBS中1mg/mlの濃度で注射し、体重(b.w.)kg当たり7mgテストタンパク質の投与量を達成した。血液試料は、30分、240分、360分、および480後に採取した。血漿試料を、IFNa2b、PAS(#1)200−IFNa2bまたはPAS(#1)400−IFNa2bについて、サンドイッチELISAを用いて定量的にアッセイした。PAS(#1)200−IFNa2b、PAS(#1)400−IFNa2b、PAS(#1)600−IFNa2b、PAS(#5)192−IFNa2b、およびPAS(#5)384−IFNa2bの血漿半減期を推定するため、得られた濃度値を静脈注射後時間に対してプロットし、単一指数減衰と仮定して数値的に適合させた。 結果として、PAS(#1)200−IFNa2b、PAS(#1)400−IFNa2b、およびPAS(#1)600−IFNa2bについて判定した排出相は、それぞれ、半減期66.2±5.6分、316.1±76.8分、および約406.8±60分で有意に遅延し、故に非融合IFNa2bに比べて、それぞれ200、400および600残基を有するPro−Ala−Serポリマー融合のため10倍、60倍および70倍を超える延長した循環を示す(図9)。同様に、PAS(#5)192−IFNa2bおよびPAS(#5)384−IFNa2bについて判定した排出相は、それぞれ、半減期40.4±5.6分および約321±93.6分で有意に遅延し、故に非融合IFNa2bに比べて、それぞれ192および384残基を有するPro−Ala−Serポリマー融合のため7倍、60倍を超える延長した循環を示す(図9)。
【図11】精製組換えNGALおよび100または200残基を有するこのPAS#1ポリマー融合の薬物動態を示す図である。 体重約210gのメスのウィスターラットに、NGAL、NGAL−PAS(#1)100、またはNGAL−PAS(#1)200タンパク質いずれかの約1050μlをPBS中1mg/mlの濃度で注射し、体重(b.w.)kg当たり5mgテストタンパク質の投与量を達成した。血液試料は示されたように採取した。透明な血漿試料のアリコートをPBSで1:5に希釈した。3つの異なるタンパク質の1つを各々注射した動物からの希釈試料1.25μl(0.25μl血漿に相当)の3つのアリコートを混合し、12%SDS−PAGEに適用しニトロセルロースメンブレンにブロットした。組換えタンパク質を、Strep−タグIIを認識するStrepTactin(登録商標)アルカリホスファターゼ複合体(IBA社、ゲッティンゲン、ドイツ)と共にインキュベーションして検出し、色素産生反応において発色させた。 図11Aおよび11Bは、群A(NGALを注射)、群B(NGAL−PAS(#1)100を注射)、および群C(NGAL−PAS(#1)200を注射)からの異なる動物の独立した血漿試料による2つの時系列を示す。図11Aおよび11Bの左端のレーンは分子サイズ標準を示し(左のマーカーサイズで)を示し、続くレーンは示された時点でのNGAL、NGAL−PAS(#1)100、およびNGAL−PAS(#1)200を含有する3つの血漿試料の混合物を示し、右端のレーンは、参照としての精製NGAL、NGAL−PAS(#1)100、およびNGAL−PAS(#1)200(各0.1μg)の混合物を示す。 ブロットは、最も早い時点、すなわち5分後の全ての3つのタンパク質試料に関する最も高いシグナルを明らかにし、30分後にはもはや検出できないNGALの急速な減衰を明らかにする。対照的に、両方のNGAL−PAS(#1)100およびNGAL−PAS(#1)200は、はるかに長い期間検出することができ(100残基融合に比べて200残基融合の影響がわずかに強い)、非融合NGALタンパク質と比較した場合、有意に長期の循環を示す。特に、どちらのタンパク質試料のタンパク質分解も示されなかった。故に、目的のNGALタンパク質だけでなくポリマー融合部分も、高い血清安定性を明らかにする。最後に、急性毒性または炎症のいずれかの徴候を示した動物はおらず、本発明による融合タンパク質の高い忍容性を示している。
【図12】精製組換えNGALおよび200残基を有するこのPAS#1ポリマー融合の薬物動態の定量分析を示す図である。 図11Aで調査したのと同じ動物からの血漿試料を、NGALまたはNGAL−PAS(#1)200濃度について、サンドイッチELISAを用いてアッセイした。したがって、マイクロタイタープレートのウェルを、検出抗体としての抗ヒトリポカリン−2/NGAL抗体(R&D Systems社、ミネアポリス、MN)でコートし、群A(NGALを注射)または群C(NGAL−PAS(#1)200を注射)の動物からの血漿試料の希釈系列を適用した。結合したNGALおよびNGAL−PAS(#1)200を、Strep−タグIIを認識するStrepTactin(登録商標)アルカリホスファターゼ複合体により検出し、続いて色素産生反応を行った。NGALおよびNGAL−PAS(#1)200の濃度を、既知の濃度で適用した同じ精製組換えタンパク質で作成した標準曲線との比較により定量化した。NGALおよびNGAL−PAS(#1)200の血漿半減期を推定するため、実験濃度値を静脈注射後時間に対してプロットし、単一指数減衰と仮定して数値的に適合させた。より明確にするために360分までのデータポイントのみを示す。 非融合NGALタンパク質は、3.1±0.2分の半減期できわめて速いクリアランスを示した。この値は、相対成長スケーリング(allometric scaling)の原則(Mahmood(2005)Interspecies Pharmacokinetic Scaling:Principles and Application of Allometric Scaling.Pine House Publishers、ロックヴィル、メリーランド)によれば、この特定のタンパク質に固有である可能性のある細胞取り込みの機構を示す、ヒトにおける自然のNGALの単量体型について記載された10分間の半減期(Axelsson(1995)Scand J Clin Lab Invest 55:577〜588頁)と一致する。最近、低密度リポタンパク質受容体のメンバーであるメガリンは、腎臓上皮細胞におけるNGAL受容体として作用する可能性があり、この取り込みを媒介する可能性があることが示された(Hviberg(2005年)FEBS Lett 579:773〜777頁)。 対照的に、NGAL−PAS(#1)200について判定した排出相は、末端半減期30.9±1.3分で有意に遅延し、故に非融合NGALに比べて、200残基を有するPro−Ala−Serポリマー融合のため10倍の延長した循環を示す。血漿半減期に対する減速効果は、NGALの場合と明らかに同様に特異的クリアランス機構の対象とはならない目的のタンパク質に対し、さらにより顕著となり得る。
【図13】IP−10 ELISAによる、市販のイントロンA(Schering社、ケニルワース、NJ)、組換えPAS(#1)200−IFNa2b、および組換えFabフラグメント(陰性対照となる)の比較活性分析を示す図である。2×10ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を、異なる濃度で、イントロンA、PAS(#1)200−IFNa2bまたはPAS(#1)200−IFNa2bと同様に調製したFabフラグメントでインキュベートした。イントロンAの特異的活性は、製造者のデータシートによれば2.6×10U/mgであった。誘導されたIP−10タンパク質を、ヒトIP−10 ELISAセット(BD OpteEIA(商標)、BD Biosciences社、ファーミンゲン、USA)により定量化した。イントロンAおよびPAS(#1)200−IFNa2bは、類似の効果で濃度依存的にIP−10の放出を誘導する。刺激されていないPBMCおよびFabフラグメントで処置したPBMCは、いずれの有意なIP−10産生も示さなかった。
【図14】チョウ−ファスマン法(Chou and Fasman(1974年)Biochemistry 13:222〜245頁)による、Pro−Ala−SerおよびSer−Alaポリマー配列の2次構造の理論的予測を示す図である。この図は、バージニア大学のSequence ComparisonおよびSecondary Structure予測サーバー(URL:http://fasta.bioch.virginia.edu/fasta_www2)上で実行されるようなCHOFASコンピュータアルゴリズムからのアウトプットを示す。アミノおよびカルボキシ末端での境界効果を避けるため、図1による各アミノ酸配列ブロックを3つの反復コピーにペーストし、中央のブロック(囲み)に対するアウトプットのみを検討した。piSAポリマー配列(配列番号56)のケースではチョウ−ファスマンアルゴリズムは、20残基中20残基に対し(すなわち100%)α−ヘリックス2次構造を予測する。これは、融合タンパク質の一部であるこのポリマー配列について実験的に観察された主要なβ−シートコンフォメーションとは明らかに対照的である(図6を参照されたい)。PAS#1ポリマー配列(配列番号57)のケースではチョウ−ファスマンアルゴリズムは、20残基中12残基に対し(すなわち60%)、α−ヘリックス2次構造を予測する。これは、融合タンパク質の一部であるこのポリマー配列について実験的に観察された主要なランダムコイルコンフォメーションとは対照的である(図6を参照されたい)。PAS#5ポリマー配列(配列番号58)のケースではチョウ−ファスマンアルゴリズムは、24残基中20残基に対し(すなわち83.3%)、α−ヘリックス2次構造を予測する。この場合もやはり、これは、融合タンパク質の一部であるこのポリマー配列について実験的に観察された主要なランダムコイルコンフォメーションとは明らかに対照的である(図6を参照されたい)。
【発明を実施するための形態】
【0089】
実施例
本発明は、さらに、本発明のより良い理解および本発明の多くの利点を提供する以下の実例となる非限定例により記載される。
【0090】
特に指示のない限り、例えば、Sambrook、Russell「Molecular Cloning、A Laboratory Manual」、Cold Spring harbor Laboratory、N.Y.(2001年)に記載されているような組換え遺伝子技術の確立された方法が使用された。
【0091】
以下の例は本発明を説明する:
【実施例1】
【0092】
Pro−Ala−SerおよびSer−Alaアミノ酸ポリマーの遺伝子合成
本明細書で上述されたように、Pro、Ala、およびSer残基からなるアミノ酸反復は、本明細書では「PAS」と表現される(正式には「APS」としても知られる)。Pro、Ala、およびSer残基(配列番号18に対応するPAS#1、配列番号20に対応するPAS#2、配列番号22に対応するPAS#3、配列番号26に対応するPAS#5、および配列番号28に対応するPAS#1P2)またはSerおよびAla(配列番号2に対応するpiSA)を含む反復ポリマー配列をコードする遺伝子フラグメントは、相互に適合可能だが非パリンドロームな粘着末端を利用し、定方向様式でのコンカテマー形成により、図1A〜Fに示された2つの相補的オリゴデオキシヌクレオチドをハイブリダイゼーションおよびライゲーションして得た。オリゴデオシキヌクレオチドをIBA社(ゲッティンゲン、ドイツ)から購入し、分取尿素ポリアクリルアミドゲル電気泳動により精製した。配列番号30、32、34、36、38および40に表されたアミノ酸配列は、追加のアラニンを含む、それぞれ配列番号18、20、22、26、2および28のクローニングバージョンを表している。同様に、配列番号29、31、33、35、37および39に表された核酸配列(配列番号30、32、34、36、38および40に示されたアミノ酸をコードする)は、粘着末端を介してライゲーション時に排除されるようになる、アラニンの追加のcggコドンを含む。酵素のリン酸化は、両方のオリゴデオキシヌクレオチド200pmolを100μl 150mM Tris/HCl pH7.6、10mM MgCl、5mM DTT、1mM ATP中に混合し、10uポリヌクレオチドキナーゼ(MBI Fermentas社、セントレオンロット、ドイツ)の存在下、37℃で30分間インキュベーションして行った。80℃で10分間の変性後、混合物を一晩、室温まで冷却してハイブリダイゼーションを達成した。次いでこの溶液50μlを、1u T4 DNAリガーゼ(MBI Fermentas社)および10μl 100mM Tris/HCl pH7.4、50mM MgCl、20mM DTT、10mM ATP、ならびに幾つかのケースでは5mMの各dATP、dCTP、dGTP、およびdTTP(全容積100μl)を添加し、氷上で50分間インキュベーションしてライゲートした。70℃で10分の熱不活化後、ライゲーション産物を、TAE緩衝液(40mM Tris、20mM酢酸、1mM EDTA)の存在下、1%(w/v)アガロースゲル電気泳動により単離した。エチジウムブロマイドで染色後、300bp(piSA)、420bp(PAS#1P2)、576bp(PAS#5)、および600bp(PAS#1、2、3)長の構築した遺伝子セグメントに対応するバンドを励起し、フェノール抽出により単離した。
【実施例2】
【0093】
インターフェロンα−2b(IFNa2b)のPAS#1、PAS#2、PAS#3、PAS#5、およびPAS#1P2融合タンパク質に対する発現ベクターの構築
実施例1からのPAS#1、PAS#2、PAS#3、PAS#1P2、およびPAS#5をコーディングする合成遺伝子フラグメントのクローニングについては、逆相補的配向で2つのSapI制限酵素認識部位を有するヌクレオチド配列を保有する(図2A)、pASK75誘導体(Skerra,A.(1994年)Gene 151:131〜135頁)のpASK−2xSapIを使用した。このベクターを、SapIで切断し、エビアルカリホスファターゼ(USB社、クリーブランド、OH)で脱リン酸化し、合成DNAフラグメントとライゲートした(図2B)。得られた中間体プラスミドを、pPAS(#1)200、pPAS(#2)200、pPAS(#3)200、pPAS(#5)192、およびpPAS(#1P2)140と命名した。
【0094】
大腸菌XL1−Blue(Bullock(1987年)Biotechniques 5:376〜378頁)を形質転換後、プラスミドを単離し、クローン化合成核酸インサートの配列を、制限分析、ならびにBigDye(商標)ターミネーターキットおよび両側からの配列決定を可能にするオリゴデオシキヌクレオチドプライマーを用いた自動化二本鎖DNA配列決定(ABI−Prism(商標)310 Genetic分析器、Perkin−Elmer Applied Biossystems社、ヴァイターシュタッド、ドイツ)により確認した。約200残基ポリマー配列を保有する得られたプラスミドは、ポリマー配列インサートの単純なさらなるサブクローニングを可能にする中間体ベクターの役割を果たした。
【0095】
IFNa2bのコーディング遺伝子を、オリゴデオキシヌクレオチド5'-TCTGTGGGCGCC AGCTCTTCTGCCTGTGATCTGCCTCAAACCCAC(配列番号59)および5'-GAACCA AAGCTTATTCCTTACTTCTTAAAC(配列番号60)をプライマーに用いて、対応するcDNAを保有するプラスミドIRAMp995M1713Q(RZPD社、ベルリン、ドイツ)から増幅した。第1のプライマーが5’末端にKasI制限酵素認識部位、続いてSapI制限酵素認識部位(下線)を含有するのに対し、第2のプライマーはHindIII制限酵素認識部位(下線)を含有する。増幅産物を精製し、KasIおよびHindIIIで消化し、適宜切断されたベクターpASK−IBA4(IBA社、ゲッティンゲン、ドイツ)とライゲートした。大腸菌XL1−Blueを形質転換後、プラスミドを調製し、クローン化合成核酸インサートの配列を制限分析および自動化二本鎖DNA配列決定により確認した。N末端Strep−タグIIとの融合であるIFNa2bをコードするプラスミドを、pASK−IFNa2bと命名した(図2C)。
【0096】
PAS(#1)200、PAS(#1)400、およびPAS(#1)600との融合であるIFNa2bをコードする発現プラスミドの構築については、pASK−IFNa2bをSapIで切断し、エビアルカリホスファターゼで脱リン酸化し、SapIによる制限消化により中間体プラスミドpPAS(#1)200から単離した200残基ポリマーの過剰な遺伝子フラグメントとライゲートした(図2D)。大腸菌JM83(Yanisch−Peron.(1985年)Gene 33:103〜119頁)を形質転換後、プラスミドを調製し、インサートをコードするポリマーのサイズを制限分析により確認した。200、400および600残基ポリマー配列を保有するIFNa2b、すなわちPAS(#1)200−IFNa2b、PAS(#1)400−IFNa2b、およびPAS(#1)600−IFNa2bをコードするプラスミドを、それぞれ、pASK−PAS(#1)200−IFNa2b(図2G)、pASK−PAS(#1)400−IFNa2b、およびpASK−PAS(#1)600−IFNa2bと命名した。PAS(#2)200−IFNa2b、PAS(#3)200−IFNa2b、PAS(#1P2)140−IFNa2b、PAS(#5)192−IFNa2b、およびPAS(#5)384−IFNa2bをコードするプラスミドを、各々のアミノ酸ポリマー配列をコードする適切な対応する遺伝子カセットを用いて同様の方法で構築した。
【実施例3】
【0097】
インターロイキン−1受容体アンタゴニスト(IL−1ra)のPAS#1およびPAS#5融合タンパク質に対する発現ベクターの構築
IL−1raのコーディング遺伝子(Carter(1990年)Nature 344:633〜638頁)を、オリゴデオキシヌクレオチド5'-ACGATCGGCGCCAGCTCTTCTGCCCGACCCTCTGGGAGAAAATCC(配列番号61)および5'-CTGGGCAAGCTTACTCGTCCTCCTGGAAGTAG(配列番号62)をプライマーに用いて、クローン化cDNAを有するプラスミドIRANp969G0350D6IL1RN(RZPD社、ベルリン、ドイツ)から増幅した。第1のプライマーが5’末端にKasI制限酵素認識部位、続いてSapI制限酵素認識部位(下線)を含有するのに対し、第2のプライマーはHindIII制限酵素認識部位(下線)を含有する。増幅産物を精製し、KasIおよびHindIIIで消化し、適宜切断されたベクターpASK−IBA4(IBA社、ゲッティンゲン、ドイツ)とライゲートした。大腸菌XL1−Blueを形質転換後、プラスミドを調製し、クローン化合成核酸インサートの配列を制限分析および自動化二本鎖DNA配列決定により確認した。N末端Strep−タグIIとの融合であるIL1raをコードするプラスミドを、pASK−IL1raと命名した(図2E)。
【0098】
アミノ酸ポリマー配列PAS(#1)200、PAS(#1)400、PAS(#5)192、およびPAS(#5)384、pASK−IL1raとの融合であるIL−1raをコードする発現プラスミドの構築については、pASK−IL1raをSapIで切断し、エビアルカリホスファターゼで脱リン酸化し、SapIによる制限消化により対応する中間体プラスミドpPAS(#1)200およびpPAS(#5)192からそれぞれ単離した、200残基PAS#1ポリマーまたは192残基PAS#5ポリマーの過剰な遺伝子フラグメントとライゲートした(図2F)。大腸菌JM83(Yanisch−Peron.(1985年)Gene 33:103〜119頁)を形質転換後、プラスミドを調製し、ライゲーション時に1つまたは幾つかの反復コピーにインサートされたポリマーコード領域のサイズを、制限分析により判定した。200または400残基PAS#1ポリマー配列を保有するIL−1ra、すなわちPAS(#1)200−IL1raまたはPAS(#1)400−IL1raをコードするプラスミド、および192または384残基PAS#5ポリマー配列、すなわちPAS(#5)192−IL1raまたはPAS(#5)384−IL1raを保有するプラスミドを、それぞれpASK−PAS(#1)200−IL1ra、pASK−PAS(#1)400−IL1ra、pASK−PAS(#5)192−IL1ra、およびpASK−PAS(#5)384−IL1raと命名した。
【実施例4】
【0099】
好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)のPAS#1およびpiSA融合タンパク質に対する発現ベクターの構築
NGALのPAS#1およびpiSA融合タンパク質の発現ベクターの構築については、実施例1からの対応する合成遺伝子フラグメントを、間にEcoO 109I制限酵素認識部位保有するC末端Strep−タグII(Skerra、(2000年)Methods Enzymol 326:271〜304頁)と融合したNGAL変異体(Breustedt(2006年)同上)のcDNAを保有する、pASK75誘導体(Skerra,A.(1994年)Gene 151:131〜135頁)でクローニングした(図3A)。pNGAL15−Ecoとも呼ばれるこのベクターを、EcoO 109Iで切断し、エビアルカリホスファターゼ(USB社、クリーブランド、OH)で脱リン酸化し、PAS#1またはpiSAをコードする合成DNAフラグメントとライゲートした(図3B)。
【0100】
大腸菌XL1−Blue(Bullock(1987年)Biotechniques 5:376〜378頁)を形質転換後、プラスミドを調製し、クローン化合成核酸インサートの配列を、制限分析、ならびにBigDye(商標)ターミネーターキットおよび両側からの配列決定を可能にするオリゴデオシキヌクレオチドプライマーを用いた自動化二本鎖DNA配列決定(ABI−Prism(商標)310 Genetic分析器)により確認した。PAS(#1)100およびPAS(#1)200残基ポリマー配列を保有するNGAL、すなわちNGAL−PAS(#1)100およびNGAL−PAS(#1)200をコードするプラスミドを、それぞれpNGAL−PAS(#1)100およびpNGAL−PAS(#1)200(図3C)と命名した。piSA100残基ポリマー配列を保有するNGAL、NGAL−piSA100をコードするプラスミドを、pNGAL−piSA100と命名した。
【実施例5】
【0101】
IFNa2bと、遺伝的にコードされたPAS#1、PAS#2、PAS#3、PAS#5、およびPAS#1P2ポリマーとの間の融合タンパク質の細菌産生および精製
IFNa2b(計算された質量:20.9kDa)、PAS(#1)200−IFNa2b(計算された質量:37.4kDa)、PAS(#1)400−IFNa2b(計算された質量:54.0kDa)、PAS(#1)600−IFNa2b(計算された質量:70.5kDa)、PAS(#5)192−IFNa2b(計算された質量:36.7kDa)、およびPAS(#5)384−IFNa2b(計算された質量:52.6kDa)を、組換えFabフラグメントの生成に関する記載された手順(Schiweck(1995年)Proteins 23:561〜565頁)に続いて、100mg/lアンピシリンおよび30mg/lクロラムフェニコールを追加した合成グルコース無機培地を含む8L卓上発酵槽を用いて、フォールディングヘルパープラスミドpTUM4(Schlapschy(2006年)Protein Eng.Des.Sel.20:273〜284頁)と共に、実施例2からの対応する発現プラスミドを保有する大腸菌BL21(Novagen社、マジソン、USA;Wood(1966年)J Mol Biol 16:118〜133頁)において産生した。組換え遺伝子発現は、培養物がOD550=20に達するとすぐに、500μg/lアンヒドロテトラサイクリン(Skerra(1994年)Gene 151:131〜135頁)を添加して誘導した。2.5時間の誘導期間の後、細胞を遠心分離により回収し、氷冷したペリプラズム分画緩衝液(500mMスクロース、1mM EDTA、100mM Tris/HCl pH8.0;L当たり2mlおよびOD550)で10分間再懸濁した。15mM EDTAおよび250μg/mlリゾチームを添加後、細胞懸濁液を氷上で20分間インキュベートし、数回遠心分離し、組換えタンパク質を含有する透明な上清を回収した。IFNa2b変異体を、N末端に融合したStrep−タグII(Skerra(2000年)Methods Enzymol 326:271〜304頁)、およびSuperdex S75またはS200 HiLoad 16/60カラム(Amersham Biosciences社、ウプサラ、スウェーデン)を用いたゲル濾過により精製した。
【0102】
PAS(#2)200−IFNa2b(計算された質量:37.4kDa)、PAS(#3)200−IFNa2b(計算された質量:38.6kDa)、およびPAS(#1P2)140−IFNa2b(計算された質量:31.7kDa)を、100mg/lアンピシリンおよび30mg/lクロラムフェニコール含有2L LB培地による振盪フラスコ培養を用いて、フォールディングヘルパープラスミドpTUM4と共に、実施例2からの対応する発現プラスミドを保有する大腸菌BL21において22℃で産生した。外来遺伝子発現の誘導は、OD550=0.5でアンヒドロテトラサイクリンにより一晩かけて行った(典型的には回収時に約1.0のOD550となる)。1ml当たり50μgリゾチームを含有する、500mMスクロース、1mM EDTA、100mM Tris/HCl pH8.0の存在下、ペリプラズム抽出を記載されたように実施し(Breustedt(2005年)同上)、続いて高塩緩衝液(500mM NaCl、1mM EDTA、100mM Tris/HCl、pH8.0)によるストレプトアビジンアフィニティークロマトグラフィー(Skerra(2000年)同上)を用いて、Strep−タグIIにより精製した。
【0103】
全ての組換えIFNa2bタンパク質に関し、IFNa2bについては0.15mg L−1 OD−1、PAS(#1)200−IFNa2bについては0.1mg L−1 OD−1、PAS(#1)400−IFNa2bについては0.06mg L−1 OD−1、PAS(#1)600−IFNa2bについては0.04mg L−1 OD−1、PAS(#2)200−IFNa2bについては0.05mg L−1 OD−1、PAS(#3)200−IFNa2bについては0.05mg L−1 OD−1、PAS(#5)192−IFNa2bについては0.08mg L−1 OD−1、PAS#(5)384−IFNa2bについては0.04mg L−1 OD−1、およびPAS(#1P2)140−IFNa2bについては0.05mg L−1 OD−1の収量で、均一なタンパク質調製物を得た(図4A/B/C)。
【0104】
インビトロ活性アッセイについては、タンパク質調製物におけるエンドトキシン汚染をさらに除去した。したがって、精製タンパク質を、PBS(115mM NaCl、4mM KHPO、16mM NaHPO pH7.4)に対し3回透析し、50ml スーパーループ(Amersham Biosciences社)を備えたAkta精製器10システムおよびランニング緩衝液であるPBSを用いて、Q Sepharose FF16/200カラム(Amersham Biosciences社、ウプサラ、スウェーデン)に適用した。組換えタンパク質を含有する流出液を回収し、Amicon Ultra遠心分離フィルター装置(30000MWCO;15ml;Millipore社、ビレリカ、MA)を用いた限外濾過により約1.5mg/mlに濃縮した。追加のエンドトキシン除去ステップは、PBSをランニング緩衝液に用いるEndoTrap(登録商標)アフィニティーカラム(Profos AG社、レーゲンスブルク、ドイツ)を用いて実施した。最終エンドトキシン含量は、Endosafe PTSキット(Charles River Laboratories社、ラルブレル、フランス)を用いた測定において1mg/mlのタンパク質濃度で1EU/mlより少なかった。
【0105】
SDS−PAGEは、高モル濃度トリス緩衝液系(Fling and Gregerson(1986年)Anal Biochem 155:83〜88頁)を用いて実施した。本発明によるIFNa2bおよびこのさまざまなポリマー融合は、芳香族酸を欠くためUV吸収に寄与しなかったことから、本発明によるIFNa2bおよびこのさまざまなポリマー融合の両方のタンパク質濃度を、23590M−1 cm−1の計算された吸光係数(Gill and von Hippel(1989年)Anal Biochem 182:319〜326頁)を用いて280nmでの吸光により判定した。
【実施例6】
【0106】
IL−1raと、遺伝的にコードされたPAS#1およびPAS#5ポリマーとの間の融合タンパク質の細菌産生および精製
IL−1ra(計算された質量:19.8kDa)、PAS(#1)200−IL1ra(計算された質量:35.3kDa)、PAS(#1)400−IL1ra(計算された質量:51.9kDa)、PAS(#5)192−IL1ra(計算された質量:34.6kDa)、およびPAS(#5)384−IL1ra(計算された質量:50.5kDa)を、100mg/lアンピシリンおよび30mg/lクロラムフェニコール含有2L LB培地による振盪フラスコ培養を用いて、22℃でフォールディングヘルパープラスミドpTUM4と共に、実施例3からの対応する発現プラスミドを保有する大腸菌BL21において産生した。外来遺伝子発現の誘導は、OD550=0.5でアンヒドロテトラサイクリンにより一晩かけて行った(典型的には回収時に約1.0のOD550となる)。1ml当たり50μgリゾチームを含有する、500mMスクロース、1mM EDTA、100mM Tris/HCl pH8.0の存在下、ペリプラズム抽出を記載されたように実施し(Breustedt(2005年)同上)、続いて高塩緩衝液(500mM NaCl、1mM EDTA、100mM Tris/HCl、pH8.0)によるストレプトアビジンアフィニティークロマトグラフィー(Skerra(2000年)同上)を用いて、Strep−タグIIにより精製した。
【0107】
全ての組換えIL−1raタンパク質に関し、IL−1raについては0.1mg L−1 OD−1、PAS(#1)200−IL1raについては0.1mg L−1 OD−1、PAS(#1)400−IL1raについては0.05mg L−1 OD−1、PAS(#5)192−IL1raについては0.1mg L−1 OD−1、およびPAS(#5)384−IL1raについては0.04mg L−1 OD−1の収量で、均一なタンパク質調製物を得た(図4D)。
【実施例7】
【0108】
NGALと、遺伝的にコードされたPAS#1およびpiSAポリマーとの間の融合タンパク質の細菌産生および精製
NGAL(計算された質量:21.5kDa)を、基本的に、実施例4に記載された8L卓上発酵槽を用いて、発現プラスミドpNGAL15を保有する大腸菌BL21において産生した。NGALを、C末端に融合したStrep−タグII(Skerra(2000年)Methods Enzymol 326:271〜304頁)により精製した。
【0109】
NGAL−PAS(#1)100、NGAL−PAS(#1)200、およびNGAL−piSA100(それぞれ、計算された質量:29.8kDa、38.1kDa、および29.4kDa)を、100mg/lアンピシリン含有2L LB培地による振盪フラスコ培養を用いて、実施例4からの対応する発現プラスミドを保有する大腸菌BL21において22℃で産生した。外来遺伝子発現の誘導は、OD550=0.5でアンヒドロテトラサイクリンにより一晩かけて行った(典型的には回収時に約1.8のOD550となる)。1ml当たり50μgリゾチームを含有する、500mMスクロース、1mM EDTA、100mM Tris/HCl pH8.0の存在下、ペリプラズム抽出を記載されたように実施し(Breustedt(2005年)J Biol Chem 280:484〜493頁、続いて高塩緩衝液(500mM NaCl、1mM EDTA、100mM Tris/HCl、pH8.0)によるストレプトアビジンアフィニティークロマトグラフィー(Skerra(2000年)同上)を用いて、Strep−タグIIにより精製した。
【0110】
NGAL−PAS(#1)100およびNGAL−PAS(#1)200に関し、NGALについては0.1mg L−1 OD−1、NGAL−PAS(#1)100については0.5mg L−1 OD−1、およびNGAL−PAS(#1)200については0.8mg L−1 OD−1の収量で、ワンステップアフィニティークロマトグラフィー(図4E)後に均一なタンパク質調製物を得た。NGAL−piSA100を、Superdex S75HR 10/300カラム(Amersham Biosciences社、ウプサラ、スウェーデン)を用いたゲル濾過によりさらに精製し、0.01mg L−1 OD−1を得た。
【0111】
メスのウィスターラットにおけるインビボPK試験については、エンドトキシン汚染をさらに除去した。したがって、精製NGAL、NGAL−PAS(#1)100、およびNGAL−PAS(#1)200タンパク質を、PBSに対し3回透析し、50ml スーパーループ(Amersham Biosciences社)を備えたAkta精製器10システムおよびランニング緩衝液であるPBSを用いて、Q Sepharose FF16/200カラム(Amersham Biosciences社)に適用した。組換えタンパク質を含有する流出液を回収し、Amicon Ultra遠心分離フィルター装置(10000MWCO;15ml;Millipore社、ビレリカ、MA)を用いた限外濾過により約1.5mg/mlに濃縮した。追加のエンドトキシン除去ステップは、PBSをランニング緩衝液に用いるEndoTrap(登録商標)アフィニティーカラム(Profos AG社、レーゲンスブルク、ドイツ)を用いて実施した。最終エンドトキシン含量は、Endosafe PTSキット(Charles River Laboratories社、ラルブレル、フランス)を用いた測定において1mg/mlのタンパク質濃度で5.17から21.9EU/mlの間であった。
【実施例8】
【0112】
分析的ゲル濾過による、IFNa2bと、異なる長さの遺伝的にコードされたPAS#1、PAS#2、PAS#3、PAS#5またはPAS#1P2ポリマーとの間の組換え融合タンパク質の流体力学的体積の測定
ゲル浸透クロマトグラフィーを、ランニング緩衝液であるPBS(115mM NaCl、4mM KHPO、16mM NaHPO pH7.4)によりAkta精製器10システム(Amersham Biosciences社)を用いて、流速1ml/分でSuperdex S200 HR 10/300 GLカラム(Amersham Biosciences社)上で実施した。実施例5に記載されたStrep−タグIIアフィニティークロマトグラフィーから得られた、精製IFNa2bおよび200、400および600残基を有するこのPAS#1ポリマー融合、または200残基を有するPAS#2およびPAS#3ポリマー、または192および384残基を有するPAS#5ポリマー融合、または140残基を有するPAS#1P2ポリマーの試料250μlは、PBS中0.25mg/mlの濃度で個々に適用した。全ての6つのタンパク質を、図5A/B/Dに示されたように単一の均一なピークとして溶出した。
【0113】
図5C/Eに示されたカラムキャリブレーションについては、以下の球状タンパク質(Sigma社、ダイゼンホーフェン、ドイツ)の混合物250μlを、PBSで適用した:RNase A(0.2mg/ml)、炭酸脱水酵素(0.2mg/ml)、オボアルブミン(0.5mg/ml)、ウシ血清アルブミン(0.5mg/ml)、トランスフェリン(0.2mg/ml)およびアルコール脱水素酵素(0.4mg/ml)。
【0114】
結果として、200、400および600残基を有するPAS#1ポリマーならびに192および384残基を有するPAS#5ポリマーを有する融合タンパク質は、同じ分子量を有する対応する球状タンパク質より有意に大きなサイズを示した。PAS(#1)200−IFNa2b、PAS(#1)400−IFNa2bおよびPAS(#1)600−IFNa2bのサイズの増大は、非融合IFNa2bタンパク質に比べて、それぞれ8.4倍、16.5倍および24.9倍であった。対照的に、真の質量は、1.8倍、2.6倍および3.4倍大きいのみであった。PAS(#5)192−IFNa2bおよびPAS(#5)384−IFNa2bのサイズ増大は、非融合IFNa2bタンパク質に比べて、それぞれ7.7倍および13.3倍であった。これらのケースでは真の質量は1.8倍および2.5倍大きいのみであった。
【0115】
同様に、200残基を有するPAS#2およびPAS#3ポリマーを有する融合タンパク質は、同じ分子量を有する対応する球状タンパク質より有意に大きなサイズを示した。PAS(#2)200−IFNa2bおよびPAS(#3)200−IFNa2bのサイズの増大は、非融合IFNa2bタンパク質に比べて、それぞれ8倍および7倍であった。対照的に、真の質量は、両方のケースで1.8倍大きいのみであった。140残基を有するPAS#1P2ポリマーを有する融合タンパク質も、同じ分子量を有する対応する球状タンパク質より大きなサイズを示した。しかし、PAS(#1P2)140−IFNa2bのサイズの増大が、非融合IFNa2bタンパク質に比べてちょうど3倍であったのに対し、真の質量はちょうど1.5倍大きかった。故に、プロリン残基数が減少した(PAS(#1P2)140で14)PAS(#1P2)140−IFNa2bのサイズの増大はあまり顕著でなかった。これは、該アミノ酸ポリマー配列のランダムコイル特性に対するPro含量の大きな影響を示している。
【0116】
一般に、これらの観察は明らかに、Pro−Ala−Serポリマー配列がランダムコイルコンフォメーションをとる場合、当然予想されるような大幅に増加した流体力学的体積(Squire(1981年)J Chromatogr A 210:433〜442頁)の影響を示している。
【実施例9】
【0117】
分析的ゲル濾過による、IL−1raと、異なる長さの遺伝的にコードされたPAS#1およびPAS#5ポリマーとの間の組換え融合タンパク質の流体力学的体積の測定
ゲル浸透クロマトグラフィーを、実施例8に記載されたようにAkta精製器10システム(Amersham Biosciences社)を用いて、流速1ml/分でSuperdex S200 HR 10/300 GLカラム(Amersham Biosciences社)上で実施した。全ての5つのタンパク質を、図5Fに示されたように単一の均一なピークとして溶出した。
【0118】
図5Gに示されたようにカラムキャリブレーションについては、以下の球状タンパク質(Sigma社、ダイゼンホーフェン、ドイツ)の混合物250μlを、PBSで適用した:RNase A(0.2mg/ml)、炭酸脱水酵素(0.2mg/ml)、オボアルブミン(0.5mg/ml)、ウシ血清アルブミン(0.5mg/ml)、トランスフェリン(0.2mg/ml)およびアルコール脱水素酵素(0.4mg/ml)。
【0119】
結果として、200および400残基を有するPAS#1ポリマーならびに192および384残基を有するPAS#5ポリマーを有する融合タンパク質は、同じ分子量を有する対応する球状タンパク質より有意に大きなサイズを示した。PAS(#1)200−IL1raおよびPAS(#1)400−IL1raのサイズの増大は、非融合IL−1raタンパク質に比べて、それぞれ8倍および17倍であった。対照的に、真の質量は、1.8倍および2.6倍大きいのみであった。PAS(#5)192−IL1raおよびPAS(#5)384−IL1raのサイズ増大は、非融合IL−1raタンパク質に比べて、それぞれ7倍および15倍であった。これらのケースでは真の質量は1.7倍および2.5倍大きいのみであった。
【0120】
この場合もやはり、これらの観察は明らかに、Pro−Ala−Serポリマー配列がランダムコイルコンフォメーションをとる場合、当然予想されるような大幅に増加した流体力学的体積(Squire(1981年)同上)の影響を示している。
【実施例10】
【0121】
分析的ゲル濾過による、NGALと、遺伝的にコードされたPAS#1およびpiSAポリマーとの間の組換え融合タンパク質の流体力学的体積の測定
ゲル浸透クロマトグラフィーを、実施例8に記載されたようにAkta精製器10システム(Amersham Biosciences社)を用いて、流速0.5ml/分でSuperdex S75 HR 10/300 GLカラムまたはSuperdex S200 HR 10/300 GLカラム(Amersham Biosciences社)上で実施した。全ての4つのタンパク質(NGAL、NGAL−PAS(#1)100、NGAL−PAS(#1)200およびNGAL−piSA100)を、図5Hに示されたように単一の均一なピークとして溶出した。
【0122】
図5Iに示されたカラムキャリブレーションについては、以下の球状タンパク質(Sigma社、ダイゼンホーフェン、ドイツ)の混合物250μlを、PBSで適用した:
Superdex S75 10/300 GLランについては、アプロチニン(0.5mg/ml)、リボヌクレアーゼ(0.4mg/ml)、ミオグロビン(0.2mg/ml)、炭酸脱水酵素(0.2mg/ml)、オボアルブミン(0.5mg/ml)、ウシ血清アルブミン(0.5mg/ml)およびトランスフェリン(0.2mg/ml);
Superdex S200 10/300 GLランについては、シトクロムc(0.2mg/ml)、炭酸脱水酵素(0.2mg/ml)、オボアルブミン(0.5mg/ml)、ウシ血清アルブミン(0.5mg/ml)、トランスフェリン(0.2mg/ml)およびアルコール脱水素酵素(0.4mg/ml)。
【0123】
結果として、100残基を有するPAS#1ポリマーおよび、さらにより顕著な200残基を有するバージョンを有する融合タンパク質は、同じ分子量を有する対応する球状タンパク質より有意に大きなサイズを示した。NGAL−PAS(#1)100およびNGAL−PAS(#1)200のサイズの増大は、非融合NGALタンパク質に比べて、それぞれ3.4倍および4.9倍であった。真の質量は、それぞれ1.4倍および1.8倍大きいのみであった。これらの測定結果は、Pro−Ala−Serポリマー配列がランダムコイルコンフォメーションをとる場合に当然予想される大きな流体力学的体積(Squire(1981年)J Chromatogr A 210:433〜442頁)による影響を明確に示すものである。
【0124】
対照的に、100残基を有するpiSAポリマーを有する融合タンパク質は、同じ分子量を有する対応する球状タンパク質に比べて有意ではないサイズの増大を示した。NGAL−piSA100のサイズの増大は、真の質量が1.4倍大きかった非融合NGALタンパク質に比べてちょうど2.5倍であった。故に、100残基Pro−Ala−Serポリマーを有する融合は、100残基Ala−Serポリマーを有するより流体力学的体積の有意に大きな増大をもたらす。
【実施例11】
【0125】
円二色性分光法による、IFNa2bと融合した遺伝的にコードされたPAS#1ポリマーのランダムコイルコンフォメーションの検出
2次構造を、石英キュベット106−QS(0.1mmパス長;Hellma社、ムルハイム、ドイツ)を備えたJ−810分光偏光計(Jasco社、グロースウムシュタット、ドイツ)を用いて分析した。スペクトルは、50mM KSO、20mM K−リン酸 pH7.5中15.9〜38.7μMタンパク質溶液を用いて、16または32ラン(バンド幅1nm、スキャン速度100nm/分、レスポンス4秒)を積算して室温で190〜250nmを記録した。溶液のブランクを補正後、機器ソフトウェアを用いてスペクトルを平滑化し、モル楕円率Θを方程式により計算した:
【0126】
【数2】

Θは測定された楕円率、cはタンパク質濃度[mol/l]、dは石英キュベットのパス長[cm]を意味する。Θ値を、Kaleidagraph(Synergy Software社、リーディング、PA)を用いて波長に対してプロットした。組換えIFNa2bの円二色性(CD)スペクトルが、このα−ヘリックスバンドルタンパク質について以前に発表されたデータ(Radhakrishnan(1996年)Structure 4:1453〜1463頁)と一致するのに対し、PAS(#1)200−IFNa2b、PAS(#1)400−IFNa2b、およびPAS(#1)600−IFNa2bのスペクトルは、ランダムコイルコンフォメーションの著しい寄与を明らかにする(図6A)。より詳細に該ポリマー融合パートナーによる分光学的寄与を分析するため、非融合IFNa2bに関してモル差CDスペクトルを計算した(図6B)。結果として、100から200残基への増幅の増大に伴い、ランダムコイルコンフォメーションの特徴である200nm付近の強い極小(Greenfield(1969年)同上;Sreerama(2000年)同上;Fandrich(2002年)同上)を観察した。故に、組換え融合タンパク質の一部であるPro−Ala−Ser配列は、生理学的緩衝条件下でランダムコイルポリマーとして存在するように思われる。
【実施例12】
【0127】
円二色性分光法による、IFNa2bと融合した遺伝的にコードされたPAS#5 ポリマーのランダムコイルコンフォメーションの検出
2次構造を、2.3〜5.1μMタンパク質溶液を用いて実施例11に記載されたようにCDにより分析した。PAS(#5)192−IFNa2bおよびPAS(#5)384−IFNa2bのスペクトルは、ランダムコイルコンフォメーションの著しい寄与を明らかにする(図6E)。より詳細に該ポリマー融合パートナーによる分光学的寄与を分析するため、非融合IFNa−2bに関してモル差CDスペクトルを計算した(図6F)。結果として、ランダムコイルコンフォメーションの特徴である200nm付近の強い極小(Greenfield(1969年)同上;Sreerama(2000年)同上;Fandrich(2002年)同上)を観察した。故に、組換え融合タンパク質の一部であるPro−Ala−Ser配列は、生理学的緩衝条件下でランダムコイルポリマーとして存在するように思われる。
【実施例13】
【0128】
円二色性分光法による、IFNa2bと融合した遺伝的にコードされたPAS#2、PAS#3およびPAS#1P2ポリマーのランダムコイルコンフォメーションの検出
2次構造を、16.1〜22.9μMタンパク質溶液を用いて実施例11に記載されたようにCDにより分析した。PAS(#2)200−IFNa2b、PAS(#3)200−IFNa2b、およびPAS(#1P2)140−IFNa2bのスペクトルは、ランダムコイルコンフォメーションの著しい寄与を明らかにする(図6C)。より詳細に該ポリマー融合パートナーによる分光学的寄与を分析するため、非融合IFNa2bに関してモル差CDスペクトルを計算した(図6D)。結果として、ランダムコイルコンフォメーションの特徴である200nm付近の極小(Greenfield(1969年)同上;Sreerama(2000年)同上;Fandrich(2002年)同上)を観察した。故に、組換え融合タンパク質の一部であるPro−Ala−Ser配列は、生理学的緩衝条件下でランダムコイルポリマーとして存在するように思われる。しかし、プロリン残基数の減少したPAS#1P2ポリマーのケースでは、ランダムコイルに対するCDシグナルは有意に減少する。これは、アミノ酸ポリマー配列におけるPro含量へのランダムコイル特性の依存を示している。
【実施例14】
【0129】
円二色性分光法による、IL−1raと融合した遺伝的にコードされたPAS#1およびPAS#5ポリマーのランダムコイルコンフォメーションの検出
2次構造を、0.9〜3.3μMタンパク質溶液を用いて実施例11に記載されたようにCDにより分析した。組換えIL−1raの円二色性(CD)スペクトルが、この主にβ−シートであるタンパク質(predominantly β-sheet protein)の結晶構造(Schreuder(1997年)Nature 386:194〜200頁)と一致するのに対し、PAS(#1)200−IL1ra、PAS(#1)400−IL1ra、PAS(#5)192−IL1ra、およびPAS(#5)384−IL1raのスペクトルは、ランダムコイルコンフォメーションの著しい画分を明らかにする(図6G)。より詳細に該ポリマー融合パートナーによる分光学的寄与を分析するため、非融合IL−1raに関してモル差CDスペクトルを計算した(図6H)。結果として、ランダムコイルコンフォメーションの特徴である200nm付近の強い極小(Greenfield(1969年)同上;Sreerama(2000年)同上;Fandrich(2002年)同上)を観察した。故に、IL−1raの組換え融合タンパク質の一部であるPro−Ala−Ser配列は、生理学的緩衝条件下でランダムコイルポリマーとして存在するように思われる。
【実施例15】
【0130】
円二色性分光法による、NGALと融合した遺伝的にコードされたPAS#1ポリマーのランダムコイルコンフォメーションの検出
2次構造を、23〜28μMタンパク質溶液を用いて実施例11に記載されたようにCDにより分析した。組換えNGALのCDスペクトルが、以前に発表されたデータ(Breustedt(2006年)同上)と一致するのに対し、NGAL−PAS(#1)100およびNGAL−PAS(#1)200のスペクトルは、ランダムコイルコンフォメーションの著しい寄与を明らかにする(図6I)。より詳細に該ポリマー融合パートナーによる分光学的寄与を分析するため、非融合NGALに関してモル差CDスペクトルを計算した(図6J)。結果として、ランダムコイルコンフォメーションの特徴である200nm付近の強い極小(Greenfield(1969年)同上;Sreerama(2000年)同上;Fandrich(2002年)同上)を観察した。故に、組換え融合タンパク質の一部であるPro−Ala−Ser配列は、生理学的緩衝条件下でランダムコイルポリマーとして存在するように思われる。
【実施例16】
【0131】
円二色性分光法による、NGALと融合した遺伝的にコードされたpiSAポリマーのβ−シートコンフォメーションの検出
2次構造を、5μMタンパク質溶液を用いて実施例11に記載されたように分析した。NGAL−piSA100のスペクトルは、β−シートコンフォメーションの著しい含量を明らかにする(図6K)。より詳細に該ポリマー融合パートナーによる分光学的寄与を分析するため、非融合NGALに関してモル差CDスペクトルを計算した(図6K)。結果として、β−シートコンフォメーションの特徴である218nmでの強い極小(Greenfield(1969年)同上;Sreerama(2000年)同上;Fandrich(2002年)同上)を観察した。故に、組換え融合タンパク質の一部であるAla−Serポリマー配列は、生理学的緩衝条件下で主にコンパクトなβ−シート2次構造をとるように思われる。
【実施例17】
【0132】
IFNa2b、NGAL、およびこれらのポリマー融合の2次構造の定量分析
IFNa2b、PAS(#1)200−IFNa2b、PAS(#1)400−IFNa2b、PAS(#1)600−IFNa2b、PAS(#5)192−IFNa2b、PAS(#5)384−IFNa2b、NGAL、NGAL−PAS(#1)100、NGAL−PAS(#1)200、およびNGAL−piSA100の2次構造を、複合CDスペクトルのデコンボリューションに対する33ベーススペクトルセットにより、2次構造デコンボリューションプログラムCDNNバージョン2.1(Bohm(1992年)Prot Eng 5:191〜195頁)を用いて、実施例11、12、15および16で測定された対応するCDスペクトルから定量化した。前記デコンボリューションプログラムCDNNを用いて得られた結果を、以下の表に提供する:
【0133】
【表2】

【0134】
組換えIFNa2bの主にα−ヘリカルな(predominantly α-helical)2次構造含量(α−ヘリックスバンドルタンパク質(Radhakrishnan(1996年)同上)としてのこの既知の3次元構造と一致する)に比べて、ランダムコイルおよびタンパク質全体のターンを含む構造化されていないコンフォメーションの画分は、IFNa2bに融合したPAS(#1)およびPAS(#5)ポリマーの長さにより明らかに増大する(プログラムCDNNによるCDスペクトルデコンボリューションの結果を要約する、上記に示した表の最下段の行を参照されたい)。概ね似ているがそれほど顕著ではない影響を、NGAL−PAS(#1)100およびNGAL−PAS(#1)200について見ることができる。これらの分光学的データは、実施例8および10で判定されたようなIFNa2bおよびNGALのPAS(#1)およびPAS(#5)融合タンパク質の実験的に判定された流体力学的体積の拡大と一致する。これは、構造化されていないランダムコイルコンフォメーション対して当然予想される(Cantor(1980年)同上;Creighton(1993年)同上)。
【0135】
対照的に、NGAL−piSA100融合タンパク質のケースでは、ターンおよびランダムコイルの量が組換えNGALよりもさらに低いのに対し、逆平行β−シート量はNGALでの38.3%からNGAL−piSA100での50.0%に増大する。故に、SerおよびAla残基のみを含むpiSA100ポリマーは、ランダムコイルよりむしろβ−シート構造をとる。これは、実施例10で測定されたような流体力学的体積のそれほど有意ではない増大に反映されている。
【0136】
PAS#1、PAS#5、およびpiSAポリマー配列の理論的分析を、チョウ−ファスマンアルゴリズム(Chou and Fasman(1974年)同上)を用いて実施した場合、異なる結果が得られた。この分析の結果を図14に図示する。アミノ酸ポリマーのアミノ酸組成物および配列に関係なく、このアルゴリズムは50%を超えるα−ヘリックス2次構造を予測する。これは、実験データとは明らかに対照的である。故に、このアルゴリズムは、アミノ酸ポリマーの構造化されていないコンフォメーションを自信を持って予測するには有用ではない。
【実施例18】
【0137】
PAS(#1)200−IFNa2bおよびPAS(#5)192−IFNa2bの血清安定性テスト
PAS(#1)200−IFNa2bおよびPAS(#5)192−IFNa2bの血清安定性を、濃度1mg/mlでの10μlテストタンパク質および50μlマウス血漿(Rockland Immunochemicals、ギルバーツビル、PA)を混合して分析し、テストタンパク質濃度0.17mg/mlおよび血漿濃度83%(v/v)という結果となった。試料を37℃で24時間または48時間インキュベートした。試料(6μl)を、PAS(#5)192−IFNa2bのケースでは0時間、1時間、3時間、6時間、8時間、および24時間で、PAS(#1)200−IFNa2bのケースでは0時間、1時間、3時間、6時間、8時間、24時間、32時間、および48時間で採取し、54μl SDS−PAGE電気泳動バッファー(50mM Tris/HCl pH8.8、190mMグリシン、1g/lSDS)および15μl SDS−PAGEローディングバッファー(250mM Tris/HCl pH8.0、25%(v/v)グリセリン、7.5%(w/v)SDS、0.25mg/mlブロモフェノールブルー、12.5%(v/v)β−メルカプトエタノール)で直ちに希釈した。95℃で5分間加熱後、これらの試料および参照試料25μl(対応するテストタンパク質0.1μg)を12%SDS−PAGEにかけた。半乾燥ブロッティング装置によりニトロセルロースメンブレン(Schleicher&Schuell社、ダッセル、ドイツ)へのエレクトロトランスファー後、メンブレンをディッシュに入れ、10ml PBST(0.1%v/v トゥィーン20含有PBS)により20分間に3回洗浄した。メンブレンを、2μg/ml卵白アビジン含有20ml PBSTで10分間インキュベートして内因性タンパク質結合ビオチン群をマスクし、次いで20μlのStrepTactin(登録商標)アルカリホスファターゼ複合体(IBA社、ゲッティンゲン、ドイツ)を、(1:1000の希釈で)直接添加した。1時間のインキュベーション、ならびにメンブレンを20ml PBSTおよびPBSによる5分間に2回の洗浄、および20ml AP緩衝液(100mM Tris/HCl pH8.8、100mM NaCl、5mM MgCl)による5分間に1回の洗浄の後、5μlニトロブルーテトラゾリウム(NBT、Biomol社、ハンブルグ、ドイツ;70%w/v DMF中75mg/ml)および30μl 5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−フォスフェート p−トルイジン塩(BCIP、Roth社、カールスルーエ、ドイツ;DMF中50mg/ml)をAP緩衝液10mlに添加して、バンドが現れるまで色素産生反応を(振盪せずに)実施した。メンブレンを水で洗浄し風乾して反応を停止した。
【0138】
両方のテストタンパク質について、ブロットは全ての時点の一定強度のシグナルを明らかにする(図7A/B)。また、分解産物を検出することはできなかった。故に、PAS(#5)192−IFNa2bについては24時間、およびPAS(#1)200−IFNa2bについては48時間の調査期間内でテストタンパク質の減少の原因となり得るタンパク質分解または凝集徴候はない。
【実施例19】
【0139】
IFNa2bと、遺伝的にコードされたPAS#1ポリマーとの間の組換え融合タンパク質のインビボでの延長した血漿半減期の検出
次の表に従い、成体BALB/cマウス(Harlan−Winckelmann社、ボルヒェン、ドイツ)に静脈注射した。
【0140】
【表3】

【0141】
静脈投与したテストアイテムの全容積を、投与日に記録した個々の体重により計算した(例えば25g体重(b.w.)の動物は、1mg/mlテストアイテム125μlを受け取った)。血液採取は次の表に従い注射後30分、120分、および360分に実施した:
【0142】
【表4】

【0143】
各物質について、各群のうち2匹の動物に注射した。血液試料(各約100μl)を尾静脈から採取し、砕いた氷の上で約20分間保管した。4℃、10000gで10分間の遠心分離後、上清(血漿)を直ちに凍結させ−20℃で保管した。
【0144】
ウェスタンブロットでの融合タンパク質の定量的検出については、透明な血漿試料の10μlアリコートを90μl PBSにより希釈した。この10μl(1μl血漿に相当)を6μl PBSで希釈し、12.5%v/v2−メルカプトエタノールを含有する4μl SDS−PAGEローディング緩衝液(250mM Tris/HCl pH8.0、7.5%w/v SDS、25%v/vグリセロール、0.25mg/mlブロモフェノールブルーと混合した。95℃で5分間加熱後、これらの試料を10%SDS−PAGEにかけた。半乾燥ブロッティング装置によりニトロセルロースメンブレン(Schleicher&Schuell社、ダッセル、ドイツ)へのエレクトロトランスファー後、メンブレンをディッシュに入れ、10ml PBST(0.1%v/v トゥィーン20含有PBS)により20分間に3回洗浄した。次いでメンブレンを、マウス抗ヒトIFNa2b抗体9D3(Abcam社、ケンブリッジ、UK;1:1000の希釈で)20μl含有20ml PBSTで10分間インキュベートした。さらに60分間インキュベーションした後、メンブレンを10ml PBSTで20分間に3回洗浄し、次いで抗マウスIgGアルカリホスファターゼ複合体(Sigma−Aldrich社、セントルイス、MO)と共に60分間インキュベーションした。
【0145】
メンブレンを20ml PBSTにより5分間で2回、および20ml AP緩衝液(100mM Tris/HCl pH8.8、100mM NaCl、5mM MgCl)により5分間に1回洗浄した後、5μlニトロブルーテトラゾリウム(NBT、Biomol社、ハンブルグ、ドイツ;70%w/v DMF中75mg/ml)および30μl 5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−フォスフェート p−トルイジン塩(BCIP、Roth社、カールスルーエ、ドイツ;DMF中50mg/ml)をAP緩衝液10mlに添加して、バンドが現れるまで色素発生反応を(振盪せずに)実施した。メンブレンを水で洗浄し風乾して反応を停止した。
【0146】
図8は、同等の時点からのIFNa2b、PAS(#1)200−IFNa2b、およびPAS(#1)400−IFNa2bを含有する試料を示す。IFNa2bが120分後にはもはや検出できないのに対し、PAS(#1)200−IFNa2bおよびPAS(#1)400−IFNa2bは、360分までの期間検出することができる。これらのデータは、Pro−Ala−Serポリマーと融合した場合、IFNa2bの血漿半減期は有意に延長することを示している。
【0147】
ELISAでの融合タンパク質の定量的検出については、96ウェルマイクロタイタープレート(Maxisorb、NUNC社、デンマーク)のウェルを、5%(w/v)NaCHO pH9.3中のマウス抗ヒトIFNa2b抗体9D3(Abcam社、ケンブリッジ、UK)5μg/ml溶液100μlにより4℃で一晩コートした。コーティング溶液を除去後、ウェルをPBS中200μlの2%(w/v)BSAで1時間ブロックし、PBSTで3回洗浄した。動物no.1/2(IFNa2b)、no.3/4(PAS(#1)200−IFNa2b)、およびno.5/6(PAS(#1)400−IFNa2b)の血漿試料を、未処置動物由来の0.5%(v/v)マウス血漿を含有するPBSTで希釈系列に適用し、1時間インキュベートした。次いでウェルをPBSTで3回洗浄し、PBSTで2次マウス抗ヒトIFNa2b抗体HRP複合体(4E10−HRP;Abcam社、ケンブリッジ、UK)の1:1000希釈溶液100μlと共に1時間インキュベートした。PBSTで2回洗浄、およびPBSで2回洗浄後、ペルオキシダーゼの基質としてABTS緩衝液(Roche Diagnostics社、マンハイム、ドイツ)に1mg/ml ABTS溶液100μlを添加して色素産生反応を開始し、25℃で20分後、405nmでの吸光度を測定した。血漿試料中のIFNa2b、PAS(#1)200−IFNa2b、およびPAS(#1)400−IFNa2bの濃度を、標準曲線(未処置動物由来の0.5%(v/v)マウス血漿を含有するPBSTにおいて、定義した濃度で対応する精製組換えタンパク質の希釈系列について判定した)との比較により定量化した。
【0148】
IFNa2b、PAS(#1)200−IFNa2b、およびPAS(#1)400−IFNa2bの血漿半減期を推定するため、濃度値、c(t)をELISA測定から各時点について判定し、静脈注射後時間、tに対してプロットした。これらのデータは、方程式
【0149】
【数3】

により、単一指数減衰と仮定してKaleidaGraphソフトウェアを用いて数値的に適合させた。ここで、τ1/2は血漿半減期、cは時点ゼロでの総血液濃度(平均動物体重を25g、およびマウスの体重に対する血液の典型的な比を0.064と仮定して、固定値78μg/mlを定めた)である。
【0150】
図9は、インビボでの血中クリアランス動態を示す。組換えIFNa2bがちょうど約5.5分の半減期で血液からの急速なクリアランスを示すのに対し、PAS(#1)200−IFNa2bおよびPAS(#1)400−IFNa2b融合タンパク質は、それぞれ10倍および60倍を超える、約61分および6時間の延長した半減期を有する。これらのデータは、上記に示したウェスタンブロット分析と一致しており、IFNa2bのインビボ血漿半減期が、Pro−Ala−Serポリマーとの融合により有意に延長する(半減期はアミノ酸ポリマーの長さの増大に伴い長くなる)ことを証明している。
【実施例20】
【0151】
IFNa2bと、遺伝的にコードされたPAS#1およびPAS#5ポリマーとの間の組換え融合タンパク質のインビボでの延長した血漿半減期の検出
次の表に従い、成体C57BL/6マウス(Charles River Laboratories社、ラルブレル、フランス)に静脈注射した。
【0152】
【表5】

【0153】
静脈投与したテストアイテムの全容積を、投与日に記録した個々の体重により算出した(例えば18g体重(b.w.)の動物は、1mg/mlテストアイテム125μlを受け取った)。血液採取は次の表に従い注射後30分、120分、240分、および480分に実施した:
【0154】
【表6】

【0155】
各物質について、各群のうち2匹の動物に注射した。血液試料(各約100μl)を尾静脈から採取し、砕いた氷の上で約20分間保管した。4℃、10000gで10分間の遠心分離後、上清(血漿)を直ちに凍結させ−20℃で保管した。
【0156】
ELISAでの融合タンパク質の定量的検出については、96ウェルマイクロタイタープレート(Maxisorb、NUNC社、デンマーク)のウェルを、5%(w/v)NaCHO pH9.3中のマウス抗ヒトIFNa2b抗体9D3(Abcam社、ケンブリッジ、UK)5μg/ml溶液100μlにより4℃で一晩コートした。コーティング溶液を除去後、ウェルをPBS中200μlの2%(w/v)BSAで1時間ブロックし、PBSTで3回洗浄した。動物no.1/2(PAS(#1)200−IFNa2b)、no.3/4(PAS(#1)400−IFNa2b)、およびno.5/6(PAS(#1)600−IFNa2b)、no.7/8(PAS(#5)192−IFNa2b)、およびno.9/10(PAS(#5)384−IFNa2b)の血漿試料を、ダミーマウス血漿(未処置動物由来の)0.25%(v/v)を含有するPBSTで希釈系列に適用し、1時間インキュベートした。次いでウェルをPBSTで3回洗浄し、PBST中で2次マウス抗ヒトIFNa2b抗体HRP複合体(4E10−HRP;Abcam社、ケンブリッジ、UK)の1:1000希釈溶液100μlと共に1時間インキュベートした。PBSTで2回洗浄、およびPBSで2回洗浄後、1mg/ml ABTSペルオキシダーゼ基質溶液100μlを推奨緩衝液(Roche Diagnostics社、マンハイム、ドイツ)に添加して色素産生反応を開始し、25℃で20分間のインキュベーション後、405nmでの吸光度を測定した。血漿試料中のPAS(#1)200−IFNa2b、PAS(#1)400−IFNa2b、PAS(#1)600−IFNa2b、PAS(#5)192−IFNa2b、およびPAS(#5)384−IFNa2bの濃度を、標準曲線(0.25%(v/v)ダミーマウス血漿を含有するPBSTにおいて、定義した濃度で対応する精製組換えタンパク質の希釈系列について判定した)との比較により定量化した。
【0157】
PAS(#1)200−IFNa2b、PAS(#1)400−IFNa2b、PAS(#1)600−IFNa2b、PAS(#5)384−IFNa2b、およびPAS(#5)384−IFNa2bの血漿半減期を推定するため、濃度値、c(t)をELISA測定から各時点について判定し、静脈注射後時間、tに対してプロットした。これらのデータは、方程式
【0158】
【数4】

により、単一指数減衰と仮定してKaleidaGraphソフトウェアを用いて数値的に適合させた。ここで、τ1/2は血漿半減期、cは時点ゼロでの総血液濃度(平均動物体重を18g、およびマウスの体重に対する血液の典型的な比を0.064と仮定して、約116μg/mlの値を有するはず)である。
【0159】
図10は、インビボでの血中クリアランス動態を示す。PAS(#1)200−IFNa2bの半減期は約66分であり、実施例19におけるPAS(#1)200−IFNa2bの61分の半減期と一致するが、7mg/kg b.w.に比べて低投与量の5mg/kg b.w.をここでは使用した。故に、マウス系および投与量の変動は、薬物動態に有意な影響を及ぼさなかった。PAS(#1)400−IFNa2bおよびPAS(#1)600−IFNa2b融合タンパク質は、アミノ酸ポリマー配列に融合されない組換えIFNa2bに比べて、それぞれ60倍および70倍を超える、約316分および406分の延長した半減期を有する。PAS(#5)192−IFNa2bおよびPAS(#5)384−IFNa2b融合タンパク質は、それぞれ7倍および58倍を超える、約40分および321分の延長した半減期を有する。これらのデータは、IFNa2bのインビボ血漿半減期が、Pro−Ala−Serポリマーとの融合により有意に延長する(半減期はアミノ酸ポリマーの長さの増大に伴い長くなる)ことを示している。
【実施例21】
【0160】
NGALと、遺伝的にコードされたPAS#1ポリマーとの間の組換え融合タンパク質のインビボでの延長した血漿半減期の検出
次の表に従い、成体メスウィスターラットに静脈注射した:
【0161】
【表7】

【0162】
静脈投与したテストアイテムの全容積を、投与日に記録した個々の体重により算出した(例えば210g体重(b.w.)の動物no.104は、1mg/mlNGAL1050μlを受け取った)。血液採取は次の表に従い注射後5分、10分、30分、60分、120分、240分、360分、および1440分に実施した:
【0163】
【表8】

【0164】
各物質について、各群のうち2匹の動物を必要とし、各々が異なる時点で4つの試料を提供することで、実験を2重に実施した。血液試料(各約0.5μl)を軽微なエーテル麻酔下、後眼窩静脈叢(retro-orbital plexus)からパスツールピペットで採取し、リチウムヘパリン−Microvette(登録商標)バイアルに直ちに移し、手で振盪し、砕いた氷の上で約20分間保管した。4℃、10000gで10分間の遠心分離後、上清(血漿)を直ちに凍結させ−80℃で保管した。動物を最終血液採取直後にエーテル吸入により屠殺した。
【0165】
ウェスタンブロットでの融合タンパク質の定量的検出については、透明な血漿試料の100μlアリコートを400μl PBSにより希釈した。この1.25μl(0.25μl血漿に相当)を14.75μl PBSで希釈し、12.5%v/v2−メルカプトエタノールを含有する4μl SDS−PAGEローディング緩衝液(250mM Tris/HCl pH8.0、7.5%w/v SDS、25%v/vグリセロール、0.25mg/mlブロモフェノールブルーと混合した。95℃で5分間加熱後、これらの試料を12%SDS−PAGEにかけた。半乾燥ブロッティング装置によりニトロセルロースメンブレン(Schleicher&Schuell社、ダッセル、ドイツ)へのエレクトロトランスファー後、メンブレンをディッシュに入れ、10ml PBST(0.1%v/v トゥィーン20含有PBS)により20分間に3回洗浄した。次いでメンブレンを、2μg/ml卵白アビジン含有20ml PBSTで10分間インキュベートして内因性タンパク質結合ビオチン群をマスクし、次いで20μlのStrepTactin(登録商標)アルカリホスファターゼ複合体(IBA社、ゲッティンゲン、ドイツ)を、(1:1000の希釈で)直接添加し、インキュベートを60分間継続した。
【0166】
メンブレンを20ml PBSTで5分間に2回、および20ml AP緩衝液(100mM Tris/HCl pH8.8、100mM NaCl、5mM MgCl)により5分間に1回洗浄した後、5μlニトロブルーテトラゾリウム(NBT、Biomol社、ハンブルグ、ドイツ;70%w/v DMF中75mg/ml)および30μl 5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−フォスフェート p−トルイジン塩(BCIP、Roth社、カールスルーエ、ドイツ;DMF中50mg/ml)をAP緩衝液10mlにバンドが現れるまで添加して、色素発生反応を(振盪せずに)実施した。メンブレンを水で洗浄し風乾して反応を停止した。
【0167】
図11は、同等の時点からのNGAL、NGAL−PAS(#1)100、およびNGAL−PAS(#1)200を含有する混合試料の2つの系列を示す。NGALが10分後にはもはや検出できないのに対し、NGAL−PAS(#1)100およびNGAL−PAS(#1)200は、120分までの期間検出することができる。これらのデータは、Pro−Ala−Serポリマーと融合した場合、NGALの血漿半減期は有意に延長することを示している。
【0168】
ELISAでの融合タンパク質の定量的検出については、96ウェルマイクロタイタープレート(Maxisorb、NUNC社、デンマーク)のウェルを、PBS中で抗ヒトリポカリン−2/NGAL抗体(R&D Systems社、ミネアポリス、MN)5μg/ml溶液50μlにより4℃で一晩コートした。PBSTにより3回洗浄後、ウェルをPBST中200μlの3%(w/v)BSAで2時間ブロックし、PBSTにより再度3回洗浄した。動物104/105(NGAL)および116/117(NGAL−PAS(#1)200)の血漿試料を、未処置動物(Elevage Janvier社、Le Genest ST.Isle、フランス;Aurigon Life Science社、トゥツィング、ドイツ)由来の2.5%(v/v)ラット血漿を含有するPBST中で希釈系列に適用し、1.5時間インキュベートした。次いでウェルをPBSTにより3回洗浄し、StrepTactin(登録商標)アルカリホスファターゼ複合体の1:1000希釈液50μlと共に1時間インキュベートした。PBSTにより2回洗浄、およびPBSにより2回洗浄後、基質としてAP緩衝液に0.5μg/ml p−ニトロフェニルリン酸50μlを添加して色素産生反応を開始し、25℃で20分後、405nmでの吸光度を測定した。血漿試料中のNGALおよびNGAL−PAS(#1)200の濃度を、標準曲線(未処置動物由来の2.5%(v/v)マウス血漿を含有するPBSTにおいて、定義した濃度で対応する精製タンパク質の希釈系列について判定した)との比較により定量化した。
【0169】
NGALおよびNGAL−PAS(#1)200の血漿半減期を推定するため、ELISA測定から判定した濃度値、c(t)を、静脈注射後時間、tに対してプロットし、KaleidaGraphソフトウェアを用いて数値的に適合させた。方程式
【0170】
【数5】

により、単一指数減衰と仮定した。ここで、τ1/2は血漿半減期パラメータ、およびcは時点ゼロでの総血液濃度(平均動物体重を210g、およびラットの体重に対する血液の典型的な比を0.064と仮定して、約80μg/mlの値を有するはず)である。
【0171】
図12は、インビボでの血中クリアランス動態を示す。組換えNGALがちょうど約3分の半減期で血液からの急速なクリアランスを示すのに対し、NGAL−PAS(#1)200融合タンパク質は、10倍の、約31分の延長した半減期を有する。これらのデータは、上記に示したウェスタンブロット分析と一致しており、NGALのインビボ血漿半減期が、Pro−Ala−Serポリマーとの融合により有意に延長することを証明している。
【実施例22】
【0172】
ヒトPBMCによるIP−10放出アッセイによる市販のイントロンAおよび組換えPAS(#1)200−IFNa2bの活性比較
全容積100μlにおける2×10ヒトPBMCを、イントロンAの希釈系列(Schering Corporation社、ケニルワース、NJ)、PAS(#1)200−IFNa2b、および陰性対照としての非関連組換えFabフラグメントにより37℃で24時間刺激した。全ての3つのテストタンパク質の開始濃度は、データシートに明記されたようにイントロンAの2.6×10U/mgの特異的活性に関しては、10U/mlであった。この特異的単位濃度を、PAS(#1)200−IFNa2b量および同量の組換えFabフラグメントに関する等しい単位濃度を計算するのに使用した。インターフェロンアルファによる誘導時の上清における放出されたIP−10(CXCL10;インターフェロンガンマ誘導10kDaタンパク質)濃度を、ヒトIP−10 ELISAセット(BD OpteEIA(商標)、BD Biosciences社、ファーミンゲン、USA)により判定した。
【0173】
図13は、3つのテストタンパク質活性を示す。組換えPAS(#1)200−IFNa2bがより高濃度でイントロンAと同等の活性を示すのに対し、後者はより低濃度でより活性となり、平均して似たような活性プロフィールをもたらす。非刺激PBMCおよびFabフラグメントで刺激したPBMCは、著しい量のIP−10を放出しなかった。同様にIP−10の放出を誘導するエンドトキシンが、PAS(#1)200−IFNa2bおよび実施例5に記載されたFabフラグメントの両方の調製において除去されたことから、PAS(#1)200−IFNa2bの活性は、融合タンパク質のIFNa2b部分に明らかに寄与し得る。故に、Pro−Ala−SerポリマーはIFNa2bの生物活性を妨げない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのドメインを含む生物学的に活性なタンパク質であって、
(a)前記少なくとも2つのドメインの第1のドメインが、前記生物活性を有し、かつ/または媒介するアミノ酸配列を含み、
(b)前記少なくとも2つのドメインの第2のドメインが、好ましくは少なくとも約100アミノ酸残基からなり、ランダムコイルコンフォメーションを形成するアミノ酸配列を含み、
これにより前記ランダムコイルコンフォメーションが、前記生物学的に活性なタンパク質のインビボおよび/またはインビトロ安定性の増大を媒介する、生物学的に活性なタンパク質。
【請求項2】
ランダムコイルコンフォメーションを形成する前記第2のドメインが、アラニン、セリンおよびプロリン残基からなる、請求項1に記載の生物学的に活性なタンパク質。
【請求項3】
ランダムコイルコンフォメーションを形成する前記第2のドメインが複数のアミノ酸反復を含み、前記反復がAla、Ser、およびPro残基からなり、6以下の連続するアミノ酸残基が同一である、請求項1または2に記載の生物学的に活性なタンパク質。
【請求項4】
前記プロリン残基が、ランダムコイルコンフォメーションを形成する前記第2のドメインのアミノ酸の4%超および40%未満を構成する、請求項1から3のいずれか一項に記載の生物学的に活性なタンパク質。
【請求項5】
第2のドメインが、
ASPAAPAPASPAAPAPSAPA(配列番号18);AAPASPAPAAPSAPAPAAPS(配列番号20);APSSPSPSAPSSPSPASPSS(配列番号22)、SAPSSPSPSAPSSPSPASPS(配列番号63)、SSPSAPSPSSPASPSPSSPA(配列番号24)、AASPAAPSAPPAAASPAAPSAPPA(配列番号26)およびASAAAPAAASAAASAPSAAA(配列番号28)
からなる群から選択されるアミノ酸配列、またはこれらの配列の全部もしくは一部としてこれらの配列の円順列変異バージョンまたは(1つまたは複数の)多量体を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の生物学的に活性なタンパク質。
【請求項6】
前記少なくとも2つのドメインの前記第2のドメインが、ランダムコイルコンフォメーションを形成する約100から3000アミノ酸残基からなるアミノ酸配列を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の生物学的に活性なタンパク質。
【請求項7】
生物活性を有する前記ポリペプチドが、結合分子、抗体フラグメント、サイトカイン、成長因子、ホルモンまたは酵素からなる群から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の生物学的に活性なタンパク質。
【請求項8】
前記結合分子が、抗体、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、CDR由来ペプチドミメティック、一本鎖可変フラグメント(scFv)、レクチンおよびリポカリンからなる群から選択される、請求項7に記載の生物学的に活性なタンパク質。
【請求項9】
生物活性を有する前記ポリペプチドが、顆粒球コロニー刺激因子、ヒト成長ホルモン、アルファ−インターフェロン、ベータ−インターフェロン、ガンマ−インターフェロン、腫瘍壊死因子、エリスロポエチン、凝固第VIII因子、gp120/gp160、可溶性腫瘍壊死因子IおよびII受容体、レテプラーゼ、エキセンジン−4、アナキンラ、インターロイキン−2および好中球ゼラチナーゼ関連リポカリンからなる群から選択される、請求項1から8のいずれか一項に記載の生物学的に活性なタンパク質。
【請求項10】
前記生物学的に活性なタンパク質の前記インビボ安定性の増大が、前記ランダムコイルを形成する第2のドメインを欠く前記生物学的に活性なタンパク質と比較して延長された前記ランダムコイルを形成する第2のドメインを含む前記生物学的に活性なタンパク質の血漿半減期である、請求項1から9のいずれか一項に記載の生物学的に活性なタンパク質。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の生物学的に活性なタンパク質を含む組成物。
【請求項12】
随意に薬学的に許容可能な担体をさらに含んでいてもよい医薬組成物である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1から10のいずれか一項に記載の生物学的に活性なタンパク質をコードする核酸分子。
【請求項14】
請求項13に記載の核酸を含むベクター。
【請求項15】
請求項13に記載の核酸または請求項14に記載のベクターを含む細胞。
【請求項16】
請求項15に記載の細胞を培養する工程、及び該培養物から前記生物学的に活性なタンパク質を単離する工程を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の生物学的に活性なタンパク質の調製方法。
【請求項17】
ホルモン欠乏関連障害、自己免疫疾患、癌、貧血、血管新生疾患、感染性/炎症性疾患、血栓症、心筋梗塞、糖尿病、および再灌流障害または他の腎臓疾患の治療用の、前記生物学的に活性なタンパク質のインビボおよび/またはインビトロ安定性が増大した医薬品を調製するための、請求項1から10のいずれか一項に記載の生物学的に活性なタンパク質、請求項13に記載の核酸、請求項14に記載のベクターまたは請求項15に記載の細胞の使用。
【請求項18】
前記生物学的に活性なタンパク質のインビボおよび/またはインビトロ安定性が増大した医薬品として使用するための、請求項1から10のいずれか一項に記載の生物学的に活性なタンパク質、請求項13に記載の核酸、請求項14に記載のベクターまたは請求項15に記載の細胞。
【請求項19】
請求項1から10のいずれか一項に記載の生物学的に活性なタンパク質、請求項13に記載の核酸、請求項14に記載のベクターまたは請求項15に記載の細胞を含むキット。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図5−4】
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【図5−5】
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【図5−6】
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【図5−7】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図6−4】
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【図6−5】
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【図6−6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2010−531139(P2010−531139A)
【公表日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512606(P2010−512606)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【国際出願番号】PCT/EP2008/005020
【国際公開番号】WO2008/155134
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(504150162)テクニシェ ユニバーシタット ミュンヘン (3)
【Fターム(参考)】