説明

インプリント用モールドおよび該モールドを用いたパターン形成方法

【課題】インプリントにおいて、モールドと被加工基板上の樹脂とを離型するに際して、離型速度を制御して離型時の欠陥発生を低減したモールドおよびそのモールドを用いたパターン形成方法を提供する。
【解決手段】凹凸のパターンを形成したモールドを被加工基板上の樹脂に押し付け、前記樹脂を硬化させるとともに前記樹脂に前記パターンを転写した後、前記モールドを前記樹脂から離型するインプリント法に用いるインプリント用モールドであって、前記モールド上の前記パターンが、転写すべき主パターンと、離型する際の離型力調節用のダミーパターンとを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な凹凸パターンが形成されたインプリント用モールドおよびそのモールドを用いたパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特に半導体デバイスについては、微細化の一層の進展により高速動作、低消費電力動作が求められ、また、システムLSIという名で呼ばれる機能の統合化などの高い技術が求められている。このような中、半導体デバイスのパターンを作製する要となるリソグラフィ技術は、パターンの微細化が進むにつれ、露光装置などが極めて高価になってきており、また、それに用いるマスク価格も高価になっている。
【0003】
これに対して、1995年Princeton大学のChouらによって提案されたナノインプリント法(インプリント法とも呼ばれる)は装置価格や使用材料などが安価でありながら、10nm程度の高解像度を有する微細パターン形成技術として注目されている(特許文献1参照)。
【0004】
インプリント法は、予め表面にナノメートルサイズの凹凸パターンを形成したモールド(テンプレート、スタンパ、金型とも呼ばれる)を、被加工材である基板表面に塗布形成された樹脂などの転写材料に押し付けて力学的に変形させて微細パターンを精密に転写し、パターン形成された樹脂をレジストマスクとして被加工材を加工する技術である。一度モールドを作製すれば、ナノ構造が簡単に繰り返して成型できるため高いスループットが得られて経済的であるとともに、有害な廃棄物が少ないナノ加工技術であるため、近年、半導体デバイスに限らず、さまざまな分野への応用が期待されている。
【0005】
このようなインプリント法には、熱可塑性樹脂を用いて熱により凹凸パターンを転写する熱インプリント法や、光硬化性樹脂を用いて紫外線により凹凸パターンを転写する光インプリント法(例えば、特許文献2参照)などが知られている。転写材料である樹脂としては、熱インプリント法では熱可塑性樹脂、光インプリント法では光硬化性樹脂が用いられる。光インプリント法は、室温で低い印加圧力でパターン転写でき、熱インプリント法のような加熱・冷却サイクルが不要でモールドや樹脂の熱による寸法変化が生じないために、解像性、アライメント精度、生産性などの点で優れていると言われている。
【0006】
インプリント法で用いられるモールドには、パターン寸法の安定性、耐薬品性、加工特性などが求められる。光インプリント法の場合を例に取ると、一般的には光硬化に用いる紫外線を透過する石英ガラスが用いられている。インプリント法においては、モールドのパターン形状を忠実に転写材料である樹脂に転写しなければならない。そのためには、モールド形状を樹脂に転写してから、モールドを離すときに、樹脂に形状変化を与えずに離型する必要がある。
【0007】
しかし、通常、石英ガラスなどによるモールドはパターン転写材料である樹脂との離型性が低く、転写パターンを形成した樹脂からモールドを離型する際に樹脂の一部がモールド側に密着してしまうため、転写された樹脂の凹凸パターンに欠け欠陥を生じ、パターン精度が低下しやすいという問題があった。また樹脂がパターンに付着したモールドは、付着樹脂を取り除かないと以後のパターン転写に使えなくなるという問題がある。このため、モールドと樹脂との離型性を向上させる方法として、例えば、モールドの凹凸パターン表面にフッ素樹脂などの離型剤の薄膜を塗布形成して離型性を高める方法が提案されている。
【0008】
しかし、たとえ離型剤を用いたとしても、モールドを連続使用してインプリントする場合、塗布された離型剤が凹凸パターン表面から徐々に失われて離型性が低下し、その結果、転写時に樹脂がモールドに付着し、正確なパターン転写ができなくなるという問題があった。
【0009】
したがって、モールドの凹凸パターンと転写材料との離型性が良いかどうかは、インプリントされる製品の品質・歩留・生産性を左右する上で極めて重要である。
【0010】
モールドと樹脂との離型性には様々な要因が関係しているが、例えば、モールド把持部の離型速度、モールドと被加工基板との間の離型角度、離型温度を制御することにより、パターン欠陥の発生を防止する方法が提案されている(特許文献3参照)。また、モールドと樹脂を離型する際に、モールドを変形するようにして離型する方法も提案されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表2004−504718号公報
【特許文献2】特開2002−93748号公報
【特許文献3】特開2008−183731号公報
【特許文献4】US2007/0126156A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献3に記載の方法は、モールドを離型する際に、離型速度、離型角度を制御することで離型時の欠陥の発生を防ぐという内容であり、その図15に示されたグラフの離型速度と欠陥数の関係から、離型速度が欠陥発生に関連した要素であることがわかるものの、モールドのどの部位に欠陥が発生し、どのように防止するかという具体的な解決策は何も開示されていないという問題があった。また、特許文献4は、変形し得るモールドを用いるために、モールド材料や構造が限定されてしまい、転写されたパターンの位置精度に誤差を生じるという問題があった。
【0013】
そこで、本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、インプリントにおいて、モールドと被加工基板上の樹脂とを離型するに際して、離型速度を制御して離型時の欠陥発生を低減したモールドおよびそのモールドを用いたパターン形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1の発明に係るインプリント用モールドは、凹凸のパターンを形成したモールドを被加工基板上の樹脂に押し付け、次に前記樹脂を硬化させるとともに前記樹脂に前記パターンを転写した後、前記モールドを前記樹脂から離型するインプリント法に用いるインプリント用モールドであって、前記モールド上の前記パターンが、転写すべき主パターンと、離型する際の離型力調節用のダミーパターンとを有することを特徴とするものである。
【0015】
本発明の請求項2の発明に係るインプリント用モールドは、請求項1に記載のインプリント用モールドにおいて、前記ダミーパターンが、前記主パターンよりも前記樹脂から離型しにくくされており、前記モールドが最後に離型する領域に少なくとも形成されていることを特徴とするものである。
【0016】
本発明の請求項3の発明に係るインプリント用モールドは、請求項2に記載のインプリント用モールドにおいて、前記樹脂から前記モールドが最後に離型する領域が、前記モールドの中央部であることを特徴とするものである。
【0017】
本発明の請求項4の発明に係るインプリント用モールドは、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のインプリント用モールドにおいて、前記ダミーパターンが、前記主パターンよりもパターン密度が大きいことを特徴とするものである。
【0018】
本発明の請求項5の発明に係るインプリント用モールドは、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のインプリント用モールドにおいて、前記ダミーパターンが、表面修飾されているかもしくは前記主パターンに施す表面修飾をしないかにより、前記ダミーパターンと前記樹脂との密着性を前記主パターンと前記樹脂との密着性よりも大きくしたことを特徴とするものである。
【0019】
本発明の請求項6の発明に係るインプリント用モールドは、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のインプリント用モールドにおいて、前記ダミーパターンが、前記モールドが最初に離型する領域から最後に離型する領域に向けてパターン密度分布を持ち、前記最後に離型する領域のパターン密度が最も大きいことを特徴とするものである。
【0020】
本発明の請求項7の発明に係るパターン形成方法は、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のインプリント用モールドを用い、被加工基板上の樹脂に前記モールドを押し付け、次に前記樹脂を硬化させるとともに前記樹脂に前記モールドのパターンを転写した後、前記モールドを前記樹脂から離型することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明のインプリント用モールドは、インプリントされる樹脂から最後に離型するモールドの領域を離型力調節用のダミーパターンとし、離型しにくくしたダミーパターンが支えとなって、モールドと樹脂との離型速度を制御し、モールドが主パターン部分から急速に離型するのを防ぎ、主パターンでの離型時の欠陥発生が抑止もしくは低減される効果を奏する。
【0022】
本発明のパターン形成方法は、離型力調節用のダミーパターンを設けたインプリント用モールドを用いてインプリントすることにより、モールドが主パターン部分から急速に離型するのを防ぎ、主パターンでの離型時の欠陥発生が防止もしくは低減され、高品質の転写パターンを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明における離型力調節用のダミーパターンを設けたインプリント用モールドの第1の実施形態を示す平面図である。
【図2】本発明における離型力調節用のダミーパターンを設けたインプリント用モールドの第2の実施形態を示す平面図である。
【図3】本発明における離型力調節用のダミーパターンを設けたインプリント用モールドの第3の実施形態を示す平面図である。
【図4】モールドと光硬化性樹脂とを離型するときの一例を示す断面図と、インプリントによる転写欠陥を生じたモールド側の領域を示す平面図である。
【図5】本発明のパターン形成方法の一例を示す工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明者は、インプリント用モールドと樹脂とを離型する際の欠陥の発生状況を、光インプリント法の場合について検討を行った。図4は、モールドと光硬化性樹脂とを離型するときの一例を示す断面図と、インプリントによる転写欠陥を生じたモールド表面の領域を示す平面図である。図4(a)に示すように、被加工基板43上に光硬化性樹脂を塗布し、モールド40を押し付け、次に光照射して硬化した光硬化性樹脂44を形成してから、モールド40の両端から一定の離型力Fでモールド40を離型する。図4(b)は、離型後の転写欠陥が生じたモールド40表面側の欠陥発生領域(破線円内)45を示し、主パターン41を有するモールド40の中央部に離型時の欠陥が集中して発生している状態を示す。離型時の欠陥は、光硬化性樹脂の一部がモールド40側に付着したことによる欠陥を意味するものであり、光硬化性樹脂44側に生じた欠けなどの欠陥に対応している。
【0025】
図4に示すように、離型時の欠陥がモールド40の中央部に集中するのは、モールド40と光硬化性樹脂44とを離型する際に、一定の力でモールド40の両端から離型を開始すると、モールド40の転写領域の周辺部から中央部に向けて剥離が進み、モールド40の中央部では時間当たりの剥離面積が小さくなって、離型速度が大きくなり、モールド40の中央部に対応する領域の光硬化性樹脂44に大きな離型力が作用し、樹脂が引きちぎられて欠陥になると推察される。
【0026】
(インプリント用モールド)
そこで、本発明のインプリント用モールドは、モールド上に転写すべき主パターンを形成するとともに、モールド離型時に欠陥が発生し易い領域に離型力調整用のダミーパターンを設け、ダミーパターンによりモールドの離型速度が大きくなるのを制御し、離型時の欠陥の発生を抑止もしくは低減するものである。ここで、主パターンとは、モールド上に形成されているパターンのうち、被加工基板上の樹脂に転写すべき所望のパターンである。ダミーパターンとは、モールド上に形成されているパターンのうち、被加工基板の実際の加工には用いられないパターンであり、主パターンの被加工基板上の樹脂への転写を補助する機能を有するパターンを意味する。
【0027】
上記のダミーパターンは、モールドが被加工基板上の樹脂から最後に離型する領域に少なくとも形成されているのが好ましく、さらに主パターンよりも樹脂から離型しにくくされているのがより好ましい。
以下、図面を参照しながら本発明のインプリント用モールドについて、光インプリント法の場合を例にして実施形態を説明する。
【0028】
(第1の実施形態)
本実施形態のインプリント用モールドは、ダミーパターンがモールドの中心部にある場合である。モールドの凹凸パターンを形成した側の平面的な外形は、インプリントのショットに対応して、通常は正方形を含む矩形形状である。図1は、第1の実施形態のインプリント用モールドを示すパターン側から見た平面図であり、モールド10上のパターンとしては、転写すべき主パターン11と、離型する際の離型力調節用のダミーパターン12とを有するものである。図1に示す例では、主パターン11は6チップ設けられており、モールド10の中心部で主パターン11の間にダミーパターン12が形成されている。
【0029】
通常、離型時には、上記の図4に示したように、モールドの相対する両端から一定の力でモールドと光硬化性樹脂とを離型する場合が多いので、モールドが光硬化性樹脂から最後に離型する領域はモールド中心部となり、モールド中心部における離型速度は他の領域における離型速度よりも大きくなる。そこで、図1に示すように、モールド10中心部にダミーパターン12を設け、より好ましくはダミーパターン12を主パターン11よりも離型しにくくし、ダミーパターン12およびその周辺の離型速度を遅くさせ、離型時の主パターン11の欠陥発生を防止もしくは減少させるものである。
【0030】
上記のダミーパターンを主パターンよりも離型しにくくする方法としては、ダミーパターンのパターン密度を主パターンのパターン密度よりも大きくする方法、あるいはダミーパターンを表面修飾するかもしくはダミーパターンを主パターンに施す表面修飾をしないかにより、ダミーパターンと光硬化性樹脂との密着性を主パターンと光硬化性樹脂との密着性よりも大きくする方法などが適用できる。
【0031】
ダミーパターンのパターン密度を大きくするには、例えば、ダミーパターンとして密ピッチのホールパターンなどを設けることにより、パターン密度を上げてパターンの表面積を大きくし、離型しにくくすることができる。
【0032】
表面処理の有無によりダミーパターンと光硬化性樹脂との密着性を大きくするには、例えば、ダミーパターン以外の領域にフッ素系シランカップリング剤などの有機化合物による化学修飾処理またはフッ素プラズマによる表面改質処理などを適用して表面修飾し、ダミーパターン領域には表面修飾しない方法を用いることができる。
【0033】
(第2の実施形態)
本実施形態のインプリント用モールドは、ダミーパターンがモールドの周辺部の一辺付近にある場合である。図2は、第2の実施形態のインプリント用モールドを示すパターン側から見た平面図であり、モールド20上のパターンとしては、転写すべき主パターン21と、離型する際の離型力調節用のダミーパターン22とを有するものである。図2に示す例では、主パターン21は4チップ設けられており、モールド20の周辺部で主パターン21の外側の一辺付近にダミーパターン22が形成されている。
【0034】
第2の実施形態では、モールド20の離型は、ダミーパターン22のある端部に相対するモールド20上の他方の端部側から行われ、モールド20が光硬化性樹脂から最後に離型する領域はダミーパターン22を設けたモールド20端部となる。ダミーパターン22を設けることにより、ダミーパターン22およびその周辺の離型速度を遅くさせ、離型時の主パターン21の欠陥発生を防止もしくは減少させるものである。
【0035】
(第3の実施形態)
本実施形態のインプリント用モールドは、ダミーパターンが、モールドが最初に離型する領域から最後に離型する領域に向けてパターン密度分布を持ち、最後に離型する領域のパターン密度が最も大きい場合である。例えば、最初に離型する領域をモールドの周辺部、最後に離型する領域をモールドの中心部とし、ダミーパターンが、モールドの周辺部から中心部に向けて密度分布を持ち、モールド中心部のパターン密度が最も大きい場合である。
【0036】
図3は、第3の実施形態の一例であり、インプリント用モールドを示すパターン側から見た平面図であり、モールド30上のパターンとしては、転写すべき主パターン31と、離型する際の離型力調節用のダミーパターン32とを有するものである。ダミーパターン32は、モールド30の周辺部から中心部に向けて密度分布を有する。また、ダミーパターン32は複数設けられている状態を示す。
【0037】
図3に例示した第3の実施形態では、モールド30の離型は、モールド30の相対する両端から行われ、モールド30が光硬化性樹脂から最後に離型する領域はモールド30の中心部となる。ダミーパターン32をモールド30の周辺部から中心部に向けて密度分布を持たせることにより、ダミーパターン32とその周辺の離型速度を遅くさせ、離型時の主パターン31の欠陥発生を防止もしくは減少させるものである。
【0038】
上記の各実施形態において、ダミーパターンを設ける領域は、チップとチップの間などのパターンが不要な領域が用いられる。一般に、半導体用途のインプリントの場合には、チップとチップの間などにパターンが不要な領域があり、ダミーパターンを配置することができる。ダミーパターン領域を、主パターンより離型しにくい状態として、ダミーパターン領域が最後に離型するようにすることにより、主パターンの離型速度を制御し、欠陥発生を防止もしくは減少させるものである。上記のように、ダミーパターンを設ける領域は、光硬化性樹脂からモールドが最後に離型する領域に少なくとも形成されていればよく、モールド上の1箇所または複数箇所に設けることができる。
【0039】
本発明において、ダミーパターンの大きさは、モールドの転写領域全体の大きさ、主パターンの大きさ、パターン数と配置などにより任意に設定することができる。ダミーパターンとして用いるパターンは、特にパターンの種別が限定されるわけではないが、上記のホールパターンのようにパターン密度が大きいパターンが好ましい。パターン密度を大きくすることにより、ダミーパターンを剥離しにくくし、その周辺の離型速度を遅くして、離型時の主パターンの欠陥発生を防止もしくは減少させるからである。
【0040】
(モールド材料)
本発明において用いられるモールド材料としては、従来公知のインプリント法で用いられるモールドが使用できる。光インプリント法による場合には、パターンの安定性、耐薬品性、加工特性がよく、光硬化に用いる紫外線を透過する石英ガラスが好ましい。パターンを形成したモールドは、さらにモールドを保持する部材に取り付けて用いることもできる。
【0041】
(ダミーパターンの作製方法)
本発明におけるダミーパターンは、主パターンを作製するときに同時にモールド上に形成することにより作製することができ、従来公知のモールド製造方法が適用でき、容易に本発明のモールドを作製することができる。
【0042】
(パターン形成方法)
本発明のパターン形成方法は、上記の実施形態で説明したインプリント用モールドを用い、被加工基板上の樹脂に前記モールドを押し付け、次に樹脂を硬化させるとともに樹脂にモールドのパターンを転写した後、モールドを樹脂から離型するものである。
【0043】
図5は、本発明のパターン形成方法の一例を示す光インプリント法による工程断面図である。図5(a)に示すように、まず、転写すべき主パターンと離型する際の離型力調節用のダミーパターンとを有する上記に説明した本発明のモールド50を準備する。一方、被加工基板53上に低粘性の光硬化性樹脂54aを塗布する。
【0044】
次に、図5(b)に示すように、モールド50を被加工基板53上の光硬化性樹脂54aに接触させて加圧し、モールド54を押し付けた状態で光(紫外光)56を照射し、光硬化性樹脂54を硬化させる。
【0045】
次に、図5(c)に示すように、モールド50を硬化した光硬化性樹脂54から離型する。図5(c)では、モールドの相対する両端の2箇所から紙面上方に離型力Fを加えて、離型する状態を示す。本発明のモールド50を用いることにより、主パターンの離型時の欠陥発生は防止もしくは低減されて、被加工基板53上に主パターンに欠陥のない高品質の光硬化性樹脂54による転写パターンが形成される。
【0046】
インプリント法では、モールド50の凸部に相当する部分の光硬化性樹脂54が被加工基板53上に薄い残膜として残るので、被加工基板53表面を露出させる必要がある場合には、図5(d)に示すように、酸素ガスを用いたイオンエッチング処理などで残膜を除去する。
【0047】
本発明のパターン形成方法は、離型力調節用のダミーパターンを設けたインプリント用モールドを用いてインプリントすることにより、モールドが主パターン部分から急速に離型するのを防ぎ、主パターンでの離型時の欠陥発生が防止もしくは低減されて、高品質の転写パターンを形成することができる。
【0048】
本発明のパターン形成方法において、ダミーパターン部に離型時の欠陥が生じることもあるが、主パターンでの離型欠陥の発生が抑止されている限り、ダミーパターン部での欠陥は実用上の支障にはならない。
【0049】
上記の本発明の実施形態の説明は、光インプリント法における場合について説明したが、本発明は熱インプリント法においても適用できるものである。例えば、熱インプリント法では、被加工基板上に熱可塑性樹脂を塗布し、モールド、基板、樹脂を樹脂のガラス転移温度以上に加熱し、この状態を維持したままでモールドを押し付けて樹脂を変形させ、次に樹脂を冷却して硬化させ、モールドのパターンを樹脂に転写する。樹脂が十分に冷却されて硬化したら、モールドを硬化した樹脂から離型する。モールドと硬化した樹脂との離型の問題は、熱インプリント法においても光インプリント法における場合と同様に生じるので、本発明は熱インプリント法においても適用できる。
【実施例】
【0050】
モールド用基板として、外形が縦6インチ、横6インチ、厚さ0.25インチの合成石英基板を用い、この合成石英基板の一主面上に、電子線レジストを厚さ200nmで塗布し、電子線描画し、現像した後、ドライエッチングして凹凸パターンを有するモールドを形成した。モールド上の凹凸パターンは、転写すべき主パターンと、離型力調節用のダミーパターンからなり、主パターンは転写領域内に、1チップ内に幅70nm、ピッチ140nmのライン/スペースパターンを設けた6チップのパターンであり、ダミーパターンは転写領域内のモールドの中心部でチップ同士の間のスペースに、40nm径、ピッチ80nmのホールパターンを設けたものである。
【0051】
次に、直径200mmのシリコン・ウェハ上に光硬化性樹脂PAK−01(東洋合成工業社製)をスピン塗布して塗膜を形成した後、上記のモールドを樹脂に押し付け、波長320nmの紫外光を照射し、光硬化性樹脂を硬化させた。次に、モールドの相対する2箇所の端面から上方に離型力Fを加えて、モールドを硬化した樹脂から離型した。離型時に、最後に離型したモールドの領域はモールド中央部のダミーパターン領域である。離型によりウェハ上に、光硬化性樹脂による幅70nm、ピッチ140nm、深さ70nmの主パターンと、ダミーパターンが転写された。ウェハ上の光硬化性樹脂による主パターンおよびモールドの主パターンには離型による欠陥は生じていなかった。
【符号の説明】
【0052】
10、20、30、40、50、60 モールド
11、21、31、41 主パターン
12、22、32、42 ダミーパターン
45 欠陥発生領域
53、63 被加工基板
54、64 硬化した光硬化性樹脂
55 転写欠陥発生領域
64a 光硬化性樹脂
66 光(紫外線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹凸のパターンを形成したモールドを被加工基板上の樹脂に押し付け、次に前記樹脂を硬化させるとともに前記樹脂に前記パターンを転写した後、前記モールドを前記樹脂から離型するインプリント法に用いるインプリント用モールドであって、
前記モールド上の前記パターンが、転写すべき主パターンと、離型する際の離型力調節用のダミーパターンとを有することを特徴とするインプリント用モールド。
【請求項2】
前記ダミーパターンが、前記主パターンよりも前記樹脂から離型しにくくされており、前記モールドが最後に離型する領域に少なくとも形成されていることを特徴とする請求項1に記載のインプリント用モールド。
【請求項3】
前記樹脂から前記モールドが最後に離型する領域が、前記モールドの中央部であることを特徴とする請求項2に記載のインプリント用モールド。
【請求項4】
前記ダミーパターンが、前記主パターンよりもパターン密度が大きいことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のインプリント用モールド。
【請求項5】
前記ダミーパターンが、表面修飾されているかもしくは前記主パターンに施す表面修飾をしないかにより、前記ダミーパターンと前記樹脂との密着性を前記主パターンと前記樹脂との密着性よりも大きくしたことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のインプリント用モールド。
【請求項6】
前記ダミーパターンが、前記モールドが最初に離型する領域から最後に離型する領域に向けてパターン密度分布を持ち、前記最後に離型する領域のパターン密度が最も大きいことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のインプリント用モールド。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のインプリント用モールドを用い、
被加工基板上の樹脂に前記モールドを押し付け、次に前記樹脂を硬化させるとともに前記樹脂に前記モールドのパターンを転写した後、前記モールドを前記樹脂から離型することを特徴とするパターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−116032(P2011−116032A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275488(P2009−275488)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】