説明

インホイールモータ駆動装置および車両用モータ駆動装置

【課題】複数の曲線板において伝達トルクを均一にすることができるインホイールモータ駆動装置を提供する。
【解決手段】減速部は、モータ側回転部材の回転軸線から偏心してモータ側回転部材に結合する複数の円盤形状の偏心部材と、軸線方向に配列された複数の偏心部材にそれぞれ支持されモータ側回転部材の回転に伴って回転軸線を中心とする公転運動を行う複数の公転部材26l,26m,26nと、公転部材の外周部に係合して公転部材の自転運動を生じさせる外周係合部材と、回転軸線と平行に延在するピン形状であって根元側が車輪側回転部材28と結合し先端側が公転部材に係合して公転部材の自転運動を取り出す内側係合部材31とを有する。内側係合部材の内ピンカラー31bは、複数の公転部材とそれぞれ当接し、先端側に支持される内ピンカラーの外径寸法Dlが根元側に支持される内ピンカラーの外径寸法Dnよりも大きくなるよう形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイクロイド減速機構を備えたインホイールモータ駆動装置および車両用モータ駆動装置に関し、特にサイクロイド減速機構の構成部品になる内側係合部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のインホイールモータ駆動装置は、例えば、特開2006−258289号公報(特許文献1)に記載されている。特許文献1のインホイールモータ駆動装置は、駆動モータと、この駆動モータから駆動力を入力されて回転数を減速して車輪側に出力する減速機と、減速機の出力軸と結合する車輪のハブ部材とが同軸かつ直列に配列されている。この減速機はサイクロイド減速機構であることから、従来の減速機として一般的な遊星歯車式減速機構と比較して高減速比が得られる。したがって、駆動モータの要求トルクを小さくすることができ、インホイールモータ駆動装置のサイズおよび重量を低減することができるという点で頗る有利である。
【0003】
このサイクロイド減速機構は、車輪側回転部材と結合する内ピンと、モータと同じ高回転数で公転するとともに低回転数で自転する曲線板を備える。そして内ピンが曲線板の自転を取り出すことにより、回転数を減速して車輪側回転部材へ伝達する。また、2枚の曲線板の位相が180度異なるよう配置されているため、半径方向の遠心力を釣り合わせることができる。また、複数本の内ピンが曲線板と係合することから、伝達トルクを複数本の内ピンで分散して伝達することが可能になり、内ピン1本当たりの伝達トルクを軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−258289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来のようなインホイールモータ駆動装置にあっては、更に改善すべき点があることを本発明者は見出した。つまり、回転軸線と平行に延在する内ピンは、車輪側回転部材に片持ち支持される構造であるため、荷重作用点における弾性変形、すなわち内ピンたわみ量、は軸線方向位置により異なる。
【0006】
図8は、トルク伝達中の内ピンと曲線板との係合部分を軸線方向からみた様子を拡大して示す説明図である。図9はトルク伝達中の内ピンの側面を表し、理解を容易にするため内ピンの弾性変形を誇張して描いた説明図である。図8に示すように、偏心部材101の外周に回転自在に支持されて回転軸線の周りを公転する曲線板102は、外ピン103と係合しながら自転し、曲線板102の孔104と係合する内ピン105にトルク伝達を行う。この自転によるトルク伝達中に内ピン105は曲線板102から荷重Fを受ける。車輪側回転部材106に片持ち支持される内ピン105は、図9に示すように荷重Fにより弾性変形(たわみ変形)する。
【0007】
このため図9に示すように、同じ荷重Fであっても、車輪側回転部材106に近い根元側では弾性変形量が小さく、車輪側回転部材106から遠い先端側では弾性変形量が大きいことがわかる。
【0008】
また曲線板は、回転軸線方向に2枚配列されている。かかる従来の記載のインホイールモータ駆動装置の他、円滑なトルク伝達を実現するため3枚以上の曲線板を軸線方向に複数配列する構成が採用される場合もある。多数枚の曲線板を有する場合、回転軸線と平行に延在する内ピンは、弾性変形量が異なる根元側および先端側でそれぞれの曲線板と係合する。
【0009】
かかる理由により、従来のインホイールモータ駆動装置では、内ピンの弾性変形量の差異により曲線板からの伝達トルクに差異が生じてしまうという問題が生じる。つまり、車輪側回転部材に近い方(根元側)の曲線板が伝達する伝達トルクが、車輪側回転部材から遠い方(先端側)の曲線板が伝達する伝達トルクよりも大きくなってしまい、複数の曲線板の間で伝達トルクの不均一が生じてしまう。
【0010】
各曲線板が伝達するトルクは等しいことが望ましい。しかしながら各曲線板の伝達トルクが異なると、減速機構の耐久性および振動性能が低下する。
【0011】
本発明は、上述の実情に鑑み、複数の曲線板において曲線板の伝達トルクを均一にすることができるインホイールモータ駆動装置および車両用モータ駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的のため本発明によるインホイールモータ駆動装置は、モータ側回転部材を回転駆動するモータ部と、モータ側回転部材の回転を減速して車輪側回転部材に伝達する減速部と、車輪側回転部材に固定連結された車輪ハブとを備え、減速部は、モータ側回転部材の回転軸線から偏心してモータ側回転部材に結合する複数の円盤形状の偏心部材と、軸線方向に配列された複数の偏心部材にそれぞれ支持されモータ側回転部材の回転に伴って回転軸線を中心とする公転運動を行う複数の公転部材と、公転部材の外周部に係合して公転部材の自転運動を生じさせる外周係合部材と、回転軸線と平行に延在するピン形状であって根元側が車輪側回転部材と結合し先端側が公転部材に係合して公転部材の自転運動を取り出す内側係合部材とを有し、内側係合部材は、先端側の外径寸法が根元側の外径寸法よりも大きくなるよう形成される。
【0013】
かかる本発明によれば、内側係合部材は、先端側の外径寸法が根元側の外径寸法よりも大きくなるよう形成されることから、たわみによって内側係合部材が弾性変形しても、1の公転部材に当接する内側係合部材の根元側の当接点と、他の公転部材に当接する内側係合部材の先端側の当接点との変位量を略同じにすることが可能になる。つまり、1の公転部材から内側係合部材の根元側が受ける荷重と、他の公転部材から内側係合部材の先端側が受ける荷重が略同じとなる。したがって、車輪側回転部材に近い方(根元側)の公転部材が伝達する伝達トルクを、車輪側回転部材から遠い方(先端側)の公転部材が伝達する伝達トルクと略同じにすることが可能となり、複数の公転部材の間で伝達トルクを均一にすることができる。
【0014】
ピン形状の内側係合部材は、公転部材とすべり接触するものであってもよいが、好ましくは公転部材と転がり接触するよう構成される。すなわち、内側係合部材は、根元側が車輪側回転部材と結合し軸線方向に延在する円柱形状の内ピンと、内周が内ピンの外周に回転自在に支持される環状体であって外周が複数の公転部材とそれぞれ当接する複数の内ピンカラーとを含み、複数の内ピンカラーは、軸線方向に配列され、内ピンの先端側に支持される内ピンカラーの外径寸法が内ピンの根元側に支持される内ピンカラーの外径寸法よりも大きい。かかる実施形態によれば、内ピンの外周に回転自在に支持される内ピンカラーが転がり軸受の構成部品となり、内側係合部材が公転部材と転がり接触することから、フリクションロスを低減することができる。しかも内ピンの先端側に支持される内ピンカラーの外径寸法が内ピンの根元側に支持される内ピンカラーの外径寸法よりも大きいことから、車輪側回転部材に近い方(内ピン根元側)の公転部材が伝達する伝達トルクを、車輪側回転部材から遠い方(内ピン先端側)の公転部材が伝達する伝達トルクと略同じにすることが可能となり、複数の公転部材の間で伝達トルクを均一にすることができる。
【0015】
本発明は一実施形態に限定されるものではないが、内ピンカラーの外周は、軸線方向中央部から軸線方向両端側に向かって外径寸法が小さくなるよう曲面状に形成されてもよい。かかる実施形態によれば、内ピンカラーの軸線方向両端部の外径寸法が軸線方向中央部の外径寸法よりも小さくなることから、内ピンカラーの外周面にエッジロードが作用することを防止することが可能になり、内側係合部材の長寿命化に資する。
【0016】
本発明は一実施形態に限定されるものではないが、具体例として、内ピンカラーの外周は、軸線を含む平面における断面形状において、外側にふくらんだ円弧状に形成される。
【0017】
また本発明による車両用モータ駆動装置は、モータ側回転部材を回転駆動するモータ部と、モータ側回転部材の回転を減速して車輪側回転部材に伝達する減速部と、車輪側回転部材の回転を複数の車輪へ駆動伝達する差動装置とを備え、減速部は、モータ側回転部材の回転軸線から偏心してモータ側回転部材に結合する複数の円盤形状の偏心部材と、軸線方向に配列された複数の偏心部材にそれぞれ支持されモータ側回転部材の回転に伴って回転軸線を中心とする公転運動を行う複数の公転部材と、公転部材の外周部に係合して公転部材の自転運動を生じさせる外周係合部材と、回転軸線と平行に延在するピン形状であって根元側が車輪側回転部材と結合し先端側が公転部材に係合して公転部材の自転運動を取り出す内側係合部材とを有し、内側係合部材は、先端側の外径寸法が根元側の外径寸法よりも大きくなるよう形成される。
【0018】
かかる本発明によれば、内側係合部材は、先端側の外径寸法が根元側の外径寸法よりも大きくなるよう形成されることから、たわみによって内側係合部材が弾性変形しても、1の公転部材に当接する内側係合部材の根元側の当接点と、他の公転部材に当接する内側係合部材の先端側の当接点との変位量を略同じにすることが可能になる。つまり、1の公転部材から内側係合部材の根元側が受ける荷重と、他の公転部材から内側係合部材の先端側が受ける荷重が略同じとなる。したがって、車輪側回転部材に近い方(根元側)の公転部材が伝達する伝達トルクを、車輪側回転部材から遠い方(先端側)の公転部材が伝達する伝達トルクと略同じにすることが可能となり、複数の公転部材の間で伝達トルクを均一にすることができる。
【発明の効果】
【0019】
このように本発明は、内側係合部材は、先端側の外径寸法が根元側の外径寸法よりも大きくなるよう形成されることから、内側係合部材根元側に位置する1の公転部材から内側係合部材の根元側が受ける荷重と、内側係合部材先端側に位置する他の公転部材から内側係合部材の先端側が受ける荷重が略同じとなる。したがって、複数の公転部材の間で伝達トルクを均一にすることができ、すべての公転部材の耐久性を略等しくして減速部の長寿命化に資する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施例になるインホイールモータ駆動装置を示す縦断面図である。
【図2】図1のII−IIにおける断面図である。
【図3】図1にIIIで示す領域を拡大して示す説明図である。
【図4】同実施例の内ピンカラーを1個取り出し、軸線を含む平面で切断した様子を示す説明図である。
【図5】同実施例の内ピンカラーを内ピンの軸線方向に3個配列した状態を示す縦断面図である。
【図6】図5に示す内ピンおよび内ピンカラーのトルク伝達中の様子を示す縦断面図である。
【図7】本発明の他の実施例になる車両用モータ駆動装置を示す展開断面図である。
【図8】トルク伝達中の内ピンと曲線板との係合部分を軸線方向からみた様子を拡大して示す説明図である。
【図9】トルク伝達中の内ピンの側面を表し、理解を容易にするため内ピンの弾性変形を誇張して描いた説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
【0022】
図1は、本実施例になるインホイールモータ駆動装置を示す縦断面図である。図2は、図1のII−IIにおける断面図である。図3は図1にIIIで示す領域を拡大して示す説明図である。
【0023】
インホイールモータ駆動装置21は、駆動力を発生させるモータ駆動装置としてのモータ部Aと、モータ部Aの回転を減速して出力する減速部Bと、減速部Bからの出力を図示しない駆動輪に伝える車輪ハブ軸受部Cとを備える。モータ部Aはモータ部の外郭を形成するモータケーシング22a、ポンプケーシング22p、およびモータカバー22tに収納され、減速部Bは減速部の外郭を形成する減速部ケーシング22bに収納され、車輪ハブ軸受部Cは減速部ケーシング22bに固定された軸受部ケーシング22cに回転自在に支持されて、例えば電気自動車のホイールハウジング内に取り付けられる。あるいは鉄道車両の台車に取り付けられる。これらモータケーシング22a、ポンプケーシング22p、モータカバー22t、減速部ケーシング22b、および軸受部ケーシング22cは相互に結合して1個のケーシング22を構成する。
【0024】
モータ部Aは、円筒形状のモータケーシング22aの内周に固定されるステータ23と、ステータ23の内径側に径方向に開いた隙間を介して対面する位置に配置されるロータ24と、ロータ24の中心に固定連結されてロータ24と一体回転する回転軸35とを備えるラジアルギャップモータである。
【0025】
回転軸35の端部は、転がり軸受63を介してモータカバー22tに回転自在に支持される。また回転軸35の反対側の端部は、転がり軸受62を介してポンプケーシング22pに回転自在に支持されるとともに減速部入力軸25の一端と結合する。モータカバー22tはモータケーシング22aの一方端の開口を閉塞する円盤形状の部材であり、モータ部Aの端部であるとともに、インホイールモータ駆動装置21の端部でもある。ポンプケーシング22pはモータケーシング22aの他方端の開口を閉塞する円盤形状の部材であり、後述するオイルポンプ51を備える。
【0026】
減速部Bは、回転軸35と結合する減速部入力軸25と、減速部入力軸25に結合した第1偏心部材25l、第2偏心部材25m、および第3偏心部材25nと、これら第1偏心部材〜第3偏心部材25l〜25nにそれぞれ回転自在に保持される公転部材としての第1曲線板26l、第2曲線板26m、および第3曲線板26nと、これら曲線板26l,26m,26nの外周部に係合する外周係合部材としての複数の外ピン27と、外ピン27の両端を支持する減速部ケーシング22bと、曲線板26l,26m,26nの自転運動を取り出す内側係合部材としての内ピン31と、内ピン31と結合する車輪側回転部材28と、曲線板26l,26m同士の隙間に取り付けられてこれら曲線板26l,26mの端面に当接して曲線板の傾きを防止するセンターカラー29と、曲線板26m,26n同士の隙間に取り付けられてこれら曲線板26m,26nの端面に当接して曲線板の傾きを防止するセンターカラー30と、内ピン31と係合しオイルポンプ51を駆動する回転部材61とを有する。
【0027】
減速部入力軸25は、外径寸法、すなわち太さが一定であり、偏心する部分を有しない。モータ部Aから遠い側にある減速部入力軸25の一端は、軸受64を介して、後述する車輪側回転部材28の端部に回転自在に支持される。またモータ部Aに近い側にある減速部入力軸25の他端は回転軸35の一端と結合する。これら両端間で、減速部入力軸25の外周には、回転軸線Oから直角方向に偏心して偏心部材25l,25m,25nが嵌合固定される。3個の円盤形状の偏心部材25l,25m,25nは、偏心運動による遠心力で発生する振動を互いに打ち消し合うために、回転軸線Oと中心として周方向180度位相を変えて設けられている。
【0028】
つまり、ロータ24に近い側に配置された第1偏心部材25lと、ロータ24から遠い側に配置された第3偏心部材25nは、同位相に設けられる。これに対し、第1偏心部材25lと第3偏心部材25nとの間に配置された第2偏心部材25mは、第1偏心部材25lおよび第3偏心部材25nに対し180度位相を変えて設けられている。回転軸35および減速部入力軸25は、モータ部Aの駆動力を減速部Bに伝達するモータ側回転部材を構成する。
【0029】
図2を参照して、第2偏心部材25mの外周には第2曲線板26mが同心円状に取り付けられている。第2曲線板26mは、外周部にエピトロコイド等のトロコイド系曲線で構成されて径方向に窪んだ複数の曲線凹部を有し、これら曲線凹部が後述する外ピン27と係合する。また第2曲線板26mは一方側端面から他方側端面に貫通する複数の貫通孔30a,30bを有する。
【0030】
円盤形状の第2偏心部材25mの中心Xmは、曲線板26mの自転軸心でもあり、軸線Oから偏心した位置に設けられている。
【0031】
貫通孔30aは、第2曲線板26mの自転軸心Xmを中心とする円周上に等間隔に複数個設けられており、内ピン31をそれぞれ受入れる。内ピン31の外周には針状ころ軸受31aが設けられており、これにより内ピン31の外周が貫通孔30aの孔壁面と転がり接触する。また、貫通孔30bは、第2曲線板26mの中心Xmに設けられており、第2曲線板26mの内周になる。貫通孔30bの内周面と第2偏心部材25mの外周面との間には転がり軸受41を介在させる。第2曲線板26mは、転がり軸受41を介して、第2偏心部材25mの外周に相対回転可能に取り付けられる。
【0032】
この転がり軸受41は、第2偏心部材25mの外周面に嵌合する内輪部材42と、複数のころ44と、周方向で隣り合うころ44の間隔を保持する保持器(図示省略)とを備え、貫通孔30bの孔壁面を外側軌道面とする円筒ころ軸受である。あるいは深溝玉軸受であってもよい。内輪部材42は、ころ44が転走する内輪部材42の内側軌道面42aを軸線O方向に挟んで向かい合う1対の鍔部をさらに有し、ころ44を1対の鍔部間に保持する。
【0033】
これまで第2曲線板26mを代表して説明してきたが、第1曲線板26lも同様に第1偏心部材25lの外周に同心円状に取り付けられている。第3曲線板26nも同様に第3偏心部材25nの外周に同心円状に取り付けられている。なお、第1曲線板26lおよび第3曲線板26nも転がり軸受41でそれぞれ回転自在に支持され、具体的には深溝玉軸受で支持される。本明細書において、曲線板26と記載する場合、第1曲線板26l〜第3曲線板26nの少なくともいずれかを指す。
【0034】
説明を図1に戻すと、複数の内ピン31は、軸線Oと平行に延び、モータ部Aから遠い側にある根元側で車輪側回転部材28に共通に片持ち支持される。車輪側回転部材28は、軸線Oに沿って延びる軸部28bと、軸部28bの端部に形成されて内ピン31の根元と結合するフランジ部28aとを有する。フランジ部28aの端面には、車輪側回転部材28の回転軸線Oを中心とする円周上の等間隔に内ピン31を固定する穴が形成されている。軸部28bの外周面には、後述する車輪ハブ軸受部Cの車輪ハブ32が固定されている。
【0035】
フランジ部28aから離れた側にある内ピン31の先端には、円環状の回転部材61が係合する。回転部材61は、複数の内ピン31先端と係合するフランジ形状の円環部61bと、円環部61bの内径部分から軸線O方向にモータ部Aへ延びる円筒部61cとを含む。回転部材61の中央孔には、減速部入力軸25と回転軸35との結合部が挿通される。円筒部61cの先端は、オイルポンプ51を駆動結合する。車輪側回転部材28とともに複数の内ピン31が回転すると、回転部材61が内ピン31に連れ回されてオイルポンプ51を駆動する。オイルポンプ51はインホイールモータ駆動装置21の内部に潤滑油を循環させる。
【0036】
曲線板26l,26m,26nの外周と係合する外ピン27は、減速部入力軸25の回転軸線Oを中心とする円周軌道上に等間隔に複数設けられる。そして、曲線板26l,26m,26nが偏心部材25l,25m,25nに連れ回されて公転運動すると、曲線板26l,26m,26nの外周の曲線凹部と外ピン27とが係合して、曲線板26l,26m,26nに自転運動を生じさせる。
【0037】
なお、減速部ケーシング22b内部に配設された外ピン27は、減速部ケーシング22bに直接保持されていてもよいが、好ましくは減速部ケーシング22bの内壁に嵌合固定されている外ピン保持部45に保持されている。より具体的には、外ピン27の軸線方向両端部を外ピン保持部45に取り付けられた針状ころ軸受27aによって回転自在に支持されている。このように、外ピン27を外ピン保持部45に回転自在に取り付けることにより、曲線板26l,26m,26nとの係合による接触抵抗を低減することができる。
【0038】
インホイールモータ駆動装置21の軽量化の観点から、ケーシング22は、アルミ合金やマグネシウム合金等の軽金属で形成する。一方、高い強度が求められる外ピン保持部45は、炭素鋼で形成するのが望ましい。
【0039】
車輪ハブ軸受部Cは、車輪側回転部材28に固定連結された車輪ハブ32と、車輪ハブ32を回転自在に保持する車輪ハブ軸受33と、車輪ハブ軸受33を支持する軸受部ケーシング22cとを備える。車輪ハブ軸受33は複列アンギュラ玉軸受であって、その外輪が円筒形状の軸受部ケーシング22cの内周に嵌合固定され、その内輪が車輪ハブ32の外周面に嵌合固定される。車輪ハブ32は、車輪側回転部材28の軸部28bを受け入れる円筒形状の中空部32aと、中空部32aの減速部Bから遠い側の軸線O方向端に形成されたフランジ部32bとを有する。フランジ部32bにはボルト32cによって図示しない駆動輪のロードホイールが連結固定される。
【0040】
上記構成のインホイールモータ駆動装置21の作動原理を詳しく説明する。
【0041】
モータ部Aは、例えば、ステータ23に交流電流を供給することによって生じる電磁力を受けて、磁性体または永久磁石を含むロータ24が回転する。これにより、ロータ24に接続された回転軸35が回転すると、回転軸35とともに減速部入力軸25が回転し、減速部入力軸25と結合する偏心部材25l,25m,25nが軸線Oを中心として偏心運動する。
【0042】
そうすると曲線板26l,26m、26nはモータ側回転部材の回転軸線Oを中心として公転運動する。このとき、外ピン27が、曲線板26l,26m、26nの外周に形成された曲線凹部と転がり接触しつつ係合して、曲線板26l,26m、26nをモータ側回転部材の回転とは逆向きに自転運動させる。
【0043】
貫通孔30aに挿通される針状ころ軸受31aの内ピンカラー31b外周は、貫通孔30aの内径よりも十分に細く、曲線板26l,26m、26nの自転運動に伴って貫通孔30aの孔壁面と当接する。これにより、曲線板26l,26m、26nの公転運動が内ピン31に伝わらず、曲線板26l,26m、26nの自転運動のみが車輪側回転部材28を介して車輪ハブ軸受部Cに伝達される。
【0044】
このとき、軸線Oと同軸に配置された車輪側回転部材28は、減速部Bの出力軸として曲線板26l,26m、26nの自転を取り出す。減速部Bの減速比は、外ピン27の数をZ、曲線板26l,26m、26nの波形の数をZとすると、(Z−Z)/Zで算出される。図2に示す実施形態では、Z=12、Z=11であるので、減速比は1/11と、非常に大きな減速比を得ることができる。これにより、減速部入力軸25の回転が減速部Bによって減速されて車輪側回転部材28に伝達されるので、低トルク、高回転型のモータ部Aを採用した場合でも、駆動輪に必要なトルクを伝達することが可能となる。
【0045】
このように、多段構成とすることなく大きな減速比を得ることができる減速部Bを採用することにより、コンパクトで高減速比のインホイールモータ駆動装置21を得ることができる。また、外ピン27を外ピン保持部45に対して回転自在とし、内ピン31の曲線板26l,26m、26nに当接する位置にそれぞれ針状ころ軸受31aを設けたことにより、摩擦抵抗が低減されるので、減速部Bの伝達効率が向上する。
【0046】
本実施例に係るインホイールモータ駆動装置21を電気自動車に採用することにより、ばね下重量を抑えることができる。その結果、走行安定性に優れた電気自動車を得ることができる。
【0047】
また、本実施例においては、車輪側回転部材28に固定された内ピン31と、曲線板26l,26m、26nに設けられた貫通孔30aとで構成される例を示したが、これに限ることなく、減速部Bの回転を車輪ハブ32に伝達可能な任意の構成とすることができる。例えば、曲線板に固定された内ピンと、車輪側回転部材に形成された穴とで構成される運動変換機構であってもよい。
【0048】
なお、本実施例における作動の説明は、各部材の回転に着目して行ったが、実際にはトルクを含む動力がモータ部Aから駆動輪に伝達される。したがって、上述のように減速された動力は高トルクに変換されたものとなっている。
【0049】
また、本実施例における作動の説明では、モータ部Aに電力を供給してモータ部Aを駆動させ、モータ部Aからの動力を駆動輪に伝達させたが、これとは逆に、車両が減速したり坂を下ったりするようなときは、駆動輪側からの動力を減速部Bで高回転低トルクの回転に変換してモータ部Aに伝達し、モータ部Aで発電しても良い。さらに、ここで発電した電力は、バッテリーに蓄電しておき、後でモータ部Aを駆動させてもよいし、車両に備えられた他の電動機器等の作動に用いてもよい。
【0050】
図1にIIIで示す領域を拡大して示す説明図であって内ピンを拡大して示す縦断面図である図3を参照して、回転軸線Oと平行に延在するピン形状の内ピン31は、根元側が車輪側回転部材28と結合し先端側が曲線板26l,26m、26nに係合してこれら曲線板26l,26m、26nの自転運動を取り出す内側係合部材である。
【0051】
内ピン31の外周は前述した針状ころ軸受31aが軸線方向に3個配設されている。3個の針状ころ軸受31aはそれぞれ、曲線板26l,26m,26nに対応する軸線方向位置に設けられている。したがって、針状ころ軸受31aの外輪になる内ピンカラー31bは、軸線方向に3個配列され、内周が内ピン31の外周に回転自在に支持される環状体であって外周が曲線板26l,26m、26nとそれぞれ当接する。すなわち、内ピン31根元側の内ピンカラー31bの外周面(外径寸法Dn)は曲線板26nの貫通孔30a内周面と当接する。内ピン31先端側の内ピンカラー31bの外周面(外径寸法Dl)は曲線板26lの貫通孔30a内周面と当接する。これら内ピンカラーの間に位置する残りの内ピンカラー31bの外周面(外径寸法Dm)は曲線板26mの貫通孔30a内周面と当接する。なお、これら添え字のl,m,nは当接する曲線板26l,26m、26nに対応する。
【0052】
軸線O方向に配列された3個の内ピンカラー31bは、互いに対向する矢印で示されるこれら3個の内ピンカラー31bの外径寸法をDl,Dm,Dnとして、内ピン31の先端側に支持される内ピンカラーの外径寸法Dlが内ピン31の根元側に支持される内ピンカラーの外径寸法Dmよりも大きい。また、内ピン31の先端側に支持される内ピンカラーの外径寸法Dmが内ピン31の根元側に支持される内ピンカラーの外径寸法Dnよりも大きい。
【0053】
つまり、これら3個の内ピンカラー31bの外径寸法Dl,Dm,Dnは、Dl>Dm>Dnを満たし、内ピン31の根元側から先端側に向かうにつれて内ピンカラー31bの外径寸法が大きくなるのである。本実施例になる曲線板26と内ピンカラー31bとの3個の組み合わせの他、かかる組み合わせが2個であったり、4個以上であったりしても同様である。
【0054】
内ピンカラー31bの外周は、軸線方向中央部から軸線方向両端側に向かって外径寸法が小さくなるよう曲面状に形成される。例えば、円筒体の内ピンカラー31bにおいて軸線方向両端に例えば角度45度のテーパ状の面取りを設ける。
【0055】
あるいは、内ピンカラー31bの外周は、軸線方向中央部から軸線方向両端側に向かって外径寸法が小さくなるよう曲面状に形成される。図4は、1個の内ピンカラー31bを取り出し、軸線を含む平面で切断した様子を示す説明図である。具体例として図4に示すように、内ピンカラー31bの外周は、軸線を含む平面における断面形状において、外側にふくらんだ半径Rの円弧状に形成される。ここでRは、内ピンカラー31bの外径Dよりもはるかに大きいことから、内ピンカラー31bの外周面はほぼ円筒側面に近い緩やかな球帯である。なお、外径Dは、3個の内ピンカラー31bの外径寸法Dl,Dm,Dnをそれぞれ意味する。
【0056】
図5は、上述した内ピンカラー31bを内ピン31の軸線方向に3個配列した状態を示す縦断面図であり、図3に対応する。3個の内ピンカラー31bの外径Dl,Dm,Dnは互いに対向する矢印で示される。図5では、これら外径Dl,Dm,Dnがそれぞれ異なることが容易に理解できるよう、Dn<Dm<Dlを誇張して描いている。本実施例によれば、内ピン31の先端側に位置する内ピンカラー31bの外径寸法が、内ピン31の根元側に位置する内ピンカラー31bの外径寸法も大きくなるよう形成されることが理解される。
【0057】
次に本実施例になる3個の内ピンカラー31bの作用を説明する。
【0058】
図6は、図5に示す内ピン31および内ピンカラー31bのトルク伝達中の様子を示す縦断面図であり、理解を容易にするため内ピン31の弾性変形を誇張して描いた説明図である。内側係合部材の外周になる内ピンカラー31bは、内ピン先端側の外径寸法が内ピン根元側の外径寸法よりも大きくなるよう形成されることから、たわみによって内ピン31が図6に示すように弾性変形しても、一点鎖線で示すように1の曲線板26n(図6には示さず)に当接する根元側内ピンカラー31bの当接点と、他の曲線板26l(図6には示さず)に当接する先端側内ピンカラー31bの当接点との変位量を略同じにすることが可能になる。さらに、3個以上の曲線板26に対応して3個以上の内ピンカラー31bが設けられる本実施例では、一点鎖線で示すように軸線方向中央の曲線板26m(図6には示さず)に当接する中央部の内ピンカラー31bの当接点と、他の内ピンカラー31bの当接点との変位量を略同じにすることが可能になる。
【0059】
これにより、1の曲線板26n(図6には示さず)から根元側内ピンカラー31bが受ける荷重Fnと、他の曲線板26l(図6には示さず)から先端側内ピンカラー31bが受ける荷重Flが略同じとなり、軸線方向中央部の曲線板26m(図6には示さず)から内ピンカラー31bが受ける荷重Fmが略同じとなる。
【0060】
したがって、車輪側回転部材28に近い方(根元側)の曲線板26nが伝達する伝達トルクを、車輪側回転部材から遠い方(先端側)の曲線板26lが伝達する伝達トルクと略同じにすることが可能となり、中央部に配置された曲線板26mが伝達する伝達トルクも他の曲線板26l,26nが伝達する伝達トルクと略同じにすることが可能となる。この結果、複数の曲線板26l,26m,26nの間で伝達トルクを均一にすることができる。
【0061】
したがって本実施例によれば、すべての曲線板26l,26m,26nおよびそれぞれに対応する内ピンカラー31bの耐久性を略等しくして減速部Bの長寿命化に資する。
【0062】
また本実施例によれば、内ピン31と、内ピン31の軸線方向に配列された3個の針状ころ軸受31aが内側係合部材を構成することから、3個の針状ころ軸受31aが3個の曲線板26l,26m,26nと転がり接触してフリクションロスを低減することができる。
【0063】
しかも、針状ころ軸受31aの構成部品として内ピン31の外周に回転自在に支持される3個の内ピンカラー31bが、軸線方向に配列され、内ピン31の先端側に支持される内ピンカラー31bの外径寸法が内ピン31の根元側に支持される内ピンカラー31bの外径寸法よりも大きいことから、車輪側回転部材28に近い方(内ピン31根元側)の曲線板26nが伝達する伝達トルクを、車輪側回転部材28から遠い方(内ピン31先端側)の曲線板28lが伝達する伝達トルクと略同じにすることが可能となり、複数の曲線板26l,26m,26nの間で伝達トルクを均一にすることができる。
【0064】
なお図示はしなかったが、針状ころ軸受31aを備えず、内ピン31が複数の曲線板26l,26m,26nとすべり接触する実施例の場合、内ピン31先端側の外径寸法が内ピン31根元側の外径寸法よりも大きくなるよう形成される。
【0065】
また本実施例では図4〜図6に示すように、内ピンカラー31bの外周は、軸線方向中央部から軸線方向両端側に向かって外径寸法が小さくなるよう曲面状に形成されることから、内ピンカラー31bの外周面にエッジロードが作用することを防止することが可能になり、内ピンカラー31bの長寿命化に資する。
【0066】
また本実施例では図4に示すように、内ピンカラー31bの外周は、軸線を含む平面における断面形状において、外側にふくらんだ半径Rの円弧状に形成される。これにより、内ピン31の弾性変形挙動に追従しつつ内ピンカラー31bの外周が貫通孔30aの内周と当接することが可能になり、荷重Fの変化により内ピン31のたわみ量が変化しても、曲線板26からの荷重を好適に受け持つことができる。したがって、減速部Bの耐久性および長寿命化に有利である。
【0067】
次に本発明の他の実施例を説明する。図7は本発明の他の実施例になる車両用モータ駆動装置を示す展開断面図である。かかる他の実施例につき、図1〜図6に示す実施例と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。
【0068】
他の実施例になる車両用モータ駆動装置71は、図7に示すように、モータ部Aとサイクロイド減速機になる減速部Bとをそれぞれ1個ずつ備え、減速部Bに隣接配置されたディファレンシャルギヤ装置72をさらに備える。
【0069】
ディファレンシャルギヤ装置72は、リングギヤ75と、ディファレンシャルギヤケース76と、ピニオンメートシャフト77と、1対のピニオンメートギヤ78,79と、2個のサイドギヤ82,83とを有し、車輪側回転部材28の回転を車両の図示しない左右輪へ駆動伝達する差動装置である。
【0070】
軸線Oに沿って延びる車輪側回転部材28の軸部28bは、フランジ部28a側を軸受34でケーシング22に回転自在に支持され、フランジ部28aから遠い先端側を軸受73でケーシング22に回転自在に支持される。これら軸受34および軸受73はいずれも転がり軸受である。軸部28bの外周は軸受34および軸受73間で歯車74の中心と結合し、歯車74は車輪側回転部材28と一体回転する。
【0071】
歯車74はディファレンシャルギヤ装置72のリングギヤ75と噛合する。リングギヤ75は、軸受80,81を介してケーシング22に回転自在に支持されたディファレンシャルギヤケース76の外側に固定されている。ディファレンシャルギヤケース76内には、その回転軸Pに対し直交するようピニオンメートシャフト77を貫通設置し、このシャフト77上に1対のピニオンメートギヤ78,79を回転自在に支持してディファレンシャルギヤケース76内に設ける。
【0072】
ディファレンシャルギヤケース76内には更に、ピニオンメートギヤ78,79間にあってこれらに噛合する1対のサイドギヤ82,83を回転自在に配置する。左側のサイドギヤ82は、回転軸Pに沿って延びる図示しない左側ドライブシャフトと結合して一体回転する。また右側のサイドギヤ83は、回転軸Pに沿って延びる図示しない右側ドライブシャフトと結合して一体回転する。
【0073】
この車両用モータ駆動装置71によれば、車輪側回転部材28の回転を複数の車輪へ駆動伝達するディファレンシャルギヤ装置72を備え、減速部Bは回転軸線Oと平行に延在するピン形状であって根元側が車輪側回転部材28と結合し先端側が曲線板26l,26m,26nに係合して曲線板26l,26m,26nの自転運動を取り出す内側係合部材としての内ピン31を有する。
【0074】
そして、内側係合部材として内ピン31の外周に回転自在に支持された3個の内ピンカラー31bにおいて(図5に示すように先端側内ピンカラー31bの外径寸法が根元側内ピンカラー31bの外径寸法よりも大きくなるよう形成されることから、たわみによって内側係合部材が弾性変形しても、図6に示す一点鎖線で示すように、1の公転部材に当接する内側係合部材の根元側の当接点と、他の公転部材に当接する内側係合部材の先端側の当接点との変位量を略同じにすることが可能になる。
【0075】
したがって、車輪側回転部材28に近い方(根元側)の曲線板26nが伝達する伝達トルクを、車輪側回転部材28から遠い方(先端側)の曲線板26lが伝達する伝達トルクと略同じにすることが可能となり、複数の曲線板26l,26m,26nの間で伝達トルクを均一にすることができる。
【0076】
図7に示す本実施例によれば、すべての曲線板26l,26m,26nおよびそれぞれに対応する内ピンカラー31bの耐久性を略等しくして、車両用モータ駆動装置71の減速部Bの長寿命化に資する。
【0077】
以上、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0078】
この発明になるインホイールモータ駆動装置および車両用モータ駆動装置は、電気自動車およびハイブリッド車両において有利に利用される。
【符号の説明】
【0079】
21 インホイールモータ駆動装置、22 ケーシング、22a モータケーシング、22p ポンプケーシング、22t モータカバー、22b 減速部ケーシング、23 ステータ、24 ロータ、25 減速部入力軸、25l 第1偏心部材、25m 第2偏心部材、25n 第3偏心部材、26 曲線板(公転部材)、26l 第1曲線板(公転部材)、26m 第2曲線板(公転部材)、26n 第3曲線板(公転部材)、27 外ピン、28 車輪側回転部材、31 内ピン(内側係合部材)、31a 針状ころ軸受(内側係合部材)、31b 内ピンカラー(内側係合部材)、32 車輪ハブ、33 車輪ハブ軸受、35 回転軸、41 転がり軸受、51 オイルポンプ、61 回転部材、71 車両用モータ駆動装置、72 ディファレンシャルギヤ装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ側回転部材を回転駆動するモータ部と、前記モータ側回転部材の回転を減速して車輪側回転部材に伝達する減速部と、前記車輪側回転部材に固定連結された車輪ハブとを備え、
前記減速部は、前記モータ側回転部材の回転軸線から偏心してモータ側回転部材に結合する複数の円盤形状の偏心部材と、軸線方向に配列された前記複数の偏心部材にそれぞれ支持され前記モータ側回転部材の回転に伴って前記回転軸線を中心とする公転運動を行う複数の公転部材と、前記公転部材の外周部に係合して公転部材の自転運動を生じさせる外周係合部材と、前記回転軸線と平行に延在するピン形状であって根元側が前記車輪側回転部材と結合し先端側が前記公転部材に係合して公転部材の自転運動を取り出す内側係合部材とを有し、
前記内側係合部材は、先端側の外径寸法が根元側の外径寸法よりも大きくなるよう形成される、インホイールモータ駆動装置。
【請求項2】
前記内側係合部材は、根元側が前記車輪側回転部材と結合し軸線方向に延在する円柱形状の内ピンと、内周が前記内ピンの外周に回転自在に支持される環状体であって外周が前記複数の公転部材とそれぞれ当接する複数の内ピンカラーとを含み、
前記複数の内ピンカラーは、軸線方向に配列され、前記内ピンの先端側に支持される内ピンカラーの外径寸法が前記内ピンの根元側に支持される内ピンカラーの外径寸法よりも大きい、請求項1に記載のインホイールモータ駆動装置。
【請求項3】
前記内ピンカラーの外周は、軸線方向中央部から軸線方向両端側に向かって外径寸法が小さくなるよう曲面状に形成される、請求項2に記載のインホイールモータ駆動装置。
【請求項4】
前記内ピンカラーの外周は、軸線を含む平面における断面形状において、外側にふくらんだ円弧状に形成される、請求項3に記載のインホイールモータ駆動装置。
【請求項5】
モータ側回転部材を回転駆動するモータ部と、前記モータ側回転部材の回転を減速して車輪側回転部材に伝達する減速部と、前記車輪側回転部材の回転を複数の車輪へ駆動伝達する差動装置とを備え、
前記減速部は、前記モータ側回転部材の回転軸線から偏心してモータ側回転部材に結合する複数の円盤形状の偏心部材と、軸線方向に配列された前記複数の偏心部材にそれぞれ支持され前記モータ側回転部材の回転に伴って前記回転軸線を中心とする公転運動を行う複数の公転部材と、前記公転部材の外周部に係合して公転部材の自転運動を生じさせる外周係合部材と、前記回転軸線と平行に延在するピン形状であって根元側が前記車輪側回転部材と結合し先端側が前記公転部材に係合して公転部材の自転運動を取り出す内側係合部材とを有し、
前記内側係合部材は、先端側の外径寸法が根元側の外径寸法よりも大きくなるよう形成される、車両用モータ駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−260476(P2010−260476A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113759(P2009−113759)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】