説明

インモールドラベル付き容器

【課題】容器本体に外力が作用した場合でも、インモールドラベルの合わせ部が位置する部分を起点とした割れの発生を防止できるインモールドラベル付き容器を提供する。
【解決手段】インモールドラベル20が成形金型内に配置され、この成形金型内に画成されたキャビティに原料を注入することで容器本体11が形成されるとともに容器本体11の外周面にインモールドラベル20が貼着されて構成されるインモールドラベル付き容器10において、インモールドラベル20は、その両端部が周方向に僅かに間隔をおいて貼着されて、インモールドラベル20の合わせ部21が画成されており、容器本体11のうち合わせ部21が位置する部分には、容器本体11の内周面から内方に向けて膨出して一段肉厚とされた肉盛部16が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体の外周面にインモールドラベルが貼着されたインモールドラベル付き容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のインモールドラベル付き容器として、例えば特許文献1に示されるように、有底筒状をなす容器本体の側壁の外側面(外周面)にインモールドラベルが添設されたものが広く提供されている。
このようなインモールドラベル付き容器は、インモールドラベルを予め成形金型内に配置しておき、この成形金型内に合成樹脂等の原料を注入することで容器本体を成形するとともに、容器本体の外周面にラベルを貼着することにより製造されるものである。
【特許文献1】特開2005−132067号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、従来のインモールドラベル付き容器においては、図6及び図7に示すように、インモールドラベル1が容器本体2の外周面に巻き付くように貼着され、その両端部が容器本体2の周方向に僅かに間隔をあけてインモールドラベル1の合わせ部3が画成されている。ここで、成形金型によって容器本体2を成形する際には、インモールドラベル1の合わせ部3にも原料が流れ込み、この合わせ部3の部分に容器本体2の外周面から外方に向けて突出した突条部4が形成されることになる。
このようなインモールドラベル付き容器に対して内方に向けて圧縮するような外力が作用した場合には、容器本体2の外周面に形成された突条部4に応力が集中し易く、この突条部4の付け根部分を起点として容器本体2に割れが発生するおそれがあった。
【0004】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、容器本体に外力が作用した場合でも、インモールドラベルの合わせ部が位置する部分を起点とした割れの発生を防止できるインモールドラベル付き容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決するために、本発明のインモールドラベル付き容器は、インモールドラベルが成形金型内に配置され、この成形金型内に画成されたキャビティに原料を注入することで容器本体が形成されるとともに該容器本体の外周面に前記インモールドラベルが貼着されて構成されるインモールドラベル付き容器において、前記インモールドラベルは、その両端部が周方向に僅かに間隔をおいて貼着されて、前記インモールドラベルの合わせ部が画成されており、前記容器本体のうち前記合わせ部が位置する部分には、前記容器本体の内周面から内方に向けて膨出して一段肉厚とされた肉盛部が設けられていることを特徴としている。
【0006】
この構成のインモールド付き容器においては、インモールドラベルの両端が周方向に間隔をあけて貼着されてインモールドラベルの合わせ部が画成され、この合わせ部に容器本体の外周面から外方に向けて突出する突条部が形成されているが、容器本体のうち前記合わせ部が位置する部分、すなわち、前記突条部が形成された部分に、容器本体の内周面から内方に向けて膨出して一段肉厚とされた肉盛部が設けられているので、この合わせ部が位置する部分の容器本体の剛性を確保でき、容器本体に外力が作用した場合でも、前記突条部の付け根部分を起点とした割れの発生を防止できる。
【0007】
ここで、前記インモールドラベルに、前記成形金型内での周方向位置を固定するためのガイド部を形成してもよい。
この場合、成形金型内において、インモールドラベルの合わせ部と、容器本体の肉盛部を設ける部分との周方向位置を精度良く一致させることができ、合わせ部が位置する部分に確実に肉盛部を成形することができ、肉盛部を幅広く設ける必要がない。なお、ガイド部としてインモールドラベルに切欠部を設けておき、成形金型に前記切欠部(ガイド部)と係合可能な係合凸部を形成してもよいし、インモールドラベルに係合凸部(ガイド部)を設けておき、成形金型に前記係合凸部と係合可能な係合凹部を形成してもよい。
【0008】
また、前記容器本体の高さ方向に直交する断面において、前記肉盛部の前記容器本体内周面からの膨出高さhを、0.2mm≦h≦2.0mmの範囲内となるように設定してもよい。
この場合、肉盛部の前記膨出高さhが2.0mm以下とされているので、容器本体の内周側に大きく膨出することがなく容器本体の内周面を滑らかな形状とすることができるとともに容器本体の内容量の変化を抑えることができる。一方、肉盛部の前記膨出高さhが 0.2mm以上とされているので、肉盛部の剛性を十分に確保することができ、割れの発生を確実に防止することができる。この際、前記膨出高さhをインモールドラベルの厚さよりも大きくすることが好ましい。
【0009】
さらに、前記肉盛部の周方向長さlを、前記合わせ部の周方向長さaに対して、2×a≦l≦3×aの範囲内に設定してもよい。
この場合、前記肉盛部の周方向長さlが3×a以下とされているので、肉盛部の大きさを小さくすることができ、容器本体の内容量の変化を抑えることができる。一方、前記肉盛部の周方向長さlが2×a以上とされているので、合わせ部の内周側に肉盛部を確実に位置させることができるとともに、肉盛部をなだらかな形状とすることができ、この肉盛部に応力が集中することを防止できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るインモールドラベル付き容器によれば、インモールドラベルの合わせ部が位置する部分に一段肉厚とされた肉盛部を形成することにより、容器本体の剛性が向上してこの合わせ部が位置する部分を起点とした割れの発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態について添付した図面を参照にして説明する。図1から図3 に、本発明の実施形態であるインモールドラベル付き容器を示す。
本実施形態であるインモールドラベル付き容器10は、容器本体11と、この容器本体11の外周面に貼着されるインモールドラベル20とを備えている。
【0012】
容器本体11は、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂で構成されており、底面12と胴部13とを備えた有底筒状をなしている。胴部13は底面12から上端開口部に向かうにしたがい漸次径が大きくなるように構成されており、本実施形態では、容器本体11の上端開口部に、胴部13よりも一段大径とされた環状鍔部14が形成されている。
【0013】
容器本体11の胴部13の外周面13Aに、前記インモールドラベル20が貼着される。このインモールドラベル20は、透明な保護フィルム層と、装飾や文字情報などが印刷された印刷層と、接合層とを備えた積層構造をなしており、胴部13の外周面13Aに巻き付くように貼着されている。そして、インモールドラベル20の両端が胴部13の周方向に僅かに間隔をあけるようにして貼着されており、インモールドラベル20の合わせ部21が画成されている。
【0014】
本実施形態であるインモールドラベル付き容器10は、後述するように、成形金型30に画成されるキャビティ33内にインモールドラベル20を配置して、このキャビティ33に容器本体11の原料である合成樹脂を注入することにより成形される。このため、インモールドラベル20の合わせ部21には、容器本体11を構成する合成樹脂が入り込んで、容器本体11の胴部13の外周面13Aから径方向外側に向けて突出する突条部15が形成されることになる。
【0015】
そして、容器本体11のうち少なくともインモールドラベル20の合わせ部21が位置する部分、つまり前記突条部15が形成された部分には、胴部13の内周面13Bから径方向内方に向けて膨出して一段肉厚とされた肉盛部16が設けられている。この肉盛部16は、前記胴部13の高さ方向全体にわたって形成されている。
【0016】
本実施形態においては、肉盛部16の周方向長さlは、図3に示すように、インモールドラベル20の合わせ部21の周方向長さaに対して、2×a≦l≦3×aの範囲内に設定されており、より具体的にはl=2.5×aとされている。
また、肉盛部16の胴部13内周面13Bからの膨出高さhは、0.2mm≦h≦2.0mmの範囲内となるように設定されており、好ましくは、インモールドラベル20の厚さbに対して、h=b+α(α≦b)とされている。
【0017】
次に、この構成のインモールドラベル付き容器10の成形方法について説明する。図4及び図5に、本実施形態であるインモールドラベル付き容器10を成形する成形金型30を示す。
この成形金型30は、成形凹部31が設けられた雌型32と、この成形凹部31内に挿入されて前記容器本体11を成形するためのキャビティ33を画成するコア34が設けられた雄型35と、を備えている。
【0018】
前記雌型32の成形凹部31の内壁面には、径方向外方に向けて延びる複数の吸引孔36が開口されており、この吸引孔36の一端は吸引装置(図示なし)に接続されている。インモールドラベル20は、成形凹部31の内壁面に配置されて前記吸引装置で吸引することで固定される。また、成形凹部31の内壁面には、インモールドラベル20に設けられた切欠部22に係合される係合凸部(図示なし)が形成されており、インモールドラベル20の合わせ部21の周方向位置が成形凹部31内の所定位置となるように構成されている。
さらに、雌型32には、成形凹部31の底面部に開口して、容器本体11を構成する合成樹脂を射出するための射出孔37が穿設されている。
【0019】
雄型35は、容器本体11の内面を形成するものである。そして、コア34の前記インモールドラベル20の合わせ部21が位置する部分には、径方向内方に向けて凹んで高さ方向に延びる凹溝(図示なし)が設けられている。
【0020】
雌型32と雄型35とが嵌合されて成形凹部31内にコア34が挿入され、容器本体11を成形するためのキャビティ33が画成される。成形凹部31の内壁面にインモールドラベル20を固定した状態で、射出孔37を通じて容器本体11を構成する合成樹脂をキャビティ33内に注入する。これにより、容器本体11を成形するとともに容器本体11の胴部13外周面13Aにインモールドラベル20を貼着する。このとき、コア34のインモールドラベル20の合わせ部21が位置する部分に前記凹溝が設けられているので、この凹溝内にも樹脂材料が流れ込んでいき、容器本体11の胴部13の内周面13Bから径方向内方に向けて膨出した肉盛部16が成形される。
【0021】
このようにして構成されたインモールドラベル付き容器10においては、インモールドラベル20の両端が周方向に間隔をあけて配置されて合わせ部21が形成され、容器本体11の胴部13外周面13Aに径方向外方に向けて突出した突条部15が画成されており、容器本体11のうちインモールドラベル20の合わせ部21が位置する部分(前記突条部15が形成された部分)に、胴部13の内周面13Bから径方向内方に向けて膨出して一段肉厚とされた肉盛部16が設けられているので、この合わせ部21が位置する部分の剛性を向上させることができ、容器本体11に外力が作用した場合でも、合わせ部21に形成された突条部15の付け根部分を起点とした割れの発生を防止することができる。
【0022】
ここで、容器本体11の高さ方向に直交する断面における肉盛部16の胴部13内周面13Bからの膨出高さhが、0.2mm≦h≦2.0mmの範囲内となるように、好ましくは、インモールドラベル20の厚さbに対して、h=b+α(α≦b)に設定されているので、肉盛部16が容器本体11の径方向内方に大きく膨出することがなく、容器本体11の内面を滑らかな形状とすることができるとともに容器本体11の内容量の変化を抑えることができる。さらに、肉盛部16の肉厚を十分に確保して容器本体11の剛性を向上させることができ、合わせ部21を起点とした割れの発生を確実に防止することができる。
【0023】
また、肉盛部16の周方向長さlが、インモールドラベル20の合わせ部21の周方向距離aに対して、2×a≦l≦3×aの範囲内に設定され、より具体的には、l=2.5×aとされているので、肉盛部16の大きさを小さくすることができ、容器本体11の内容量の変化を抑えることができる。さらに、合わせ部21の内周側に肉盛部16を確実に位置させることができるとともに、少なくとも肉盛部16の周方向両端部分をなだらかな形状として肉盛部16に応力が集中することを防止できる。
【0024】
また、インモールドラベル20に、成形金型30の成形凹部31内での周方向位置を固定するためのガイド部として切欠部22が形成され、成形金型30の雌型32に設けられた成形凹部31の内壁面に前記切欠部22に係合される係合凸部が設けられているので、成形金型30内においてインモールドラベル20の合わせ部21と、雄型35のコア34に設けられた凹溝との周方向位置を精度良く一致させることができ、合わせ部21の内周側に確実に肉盛部16を形成することができる。これにより、肉盛部16の周方向長さを短くすることができる。
【0025】
以上、本発明の実施形態であるインモールドラベル付き容器について説明したが、本発明の技術的範囲はこれに限定されることはなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、有底筒状をなして胴部が開口部に向かうにしたがい拡径するカップ状の容器本体を備えたものとして説明したが、これに限定されることはなく、ボトル状の容器等、成形金型に原料を注入することで成形されて外表面にインモールドラベルを貼着可能な構成であればよい。
【0026】
また、インモールドラベルを胴部の高さ方向の全体にわたるように配置したものとして説明したが、これに限定されることはなく、胴部の高さ方向の一部にのみインモールドラベルが配置されていてもよい。
さらに、インモールドラベルと容器本体との周方向における相対位置を合わせるためのガイド部としてインモールドラベルに切欠部を設け、成形金型にこの切欠部に係合する係合凸部を設けたもので説明したが、インモールドラベルに係合凹部や係合凸部等を形成してもよい。また、前記ガイド部を設けなくとも良い。
【産業上の利用可能性】
【0027】
容器本体に外力が作用した場合でも、インモールドラベルの合わせ部から割れが生じることを防止することができるインモールドラベル付き容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態であるインモールドラベル付き容器の斜視図である。
【図2】図1に示すインモールドラベル付き容器の断面図である。
【図3】図2の肉盛部の拡大図である。
【図4】図1のインモールドラベル付き容器を成形するための成形金型を示す説明図である。
【図5】図4の成形金型に原料を射出した状態を示す説明図である。
【図6】従来のインモールドラベル付き容器の一例を示す斜視図である。
【図7】図6に示すインモールドラベル付き容器の断面図である。
【符号の説明】
【0029】
10 インモールドラベル付き容器
11 容器本体
13 胴部
13A 外周面
16 肉盛部
20 インモールドラベル
21 合わせ部
22 切欠部(ガイド部)
30 成形金型
33 キャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インモールドラベルが成形金型内に配置され、この成形金型内に画成されたキャビティに原料を注入することで容器本体が形成されるとともに該容器本体の外周面に前記インモールドラベルが貼着されて構成されるインモールドラベル付き容器において、
前記インモールドラベルは、その両端部が周方向に僅かに間隔をおいて貼着されて、前記インモールドラベルの合わせ部が画成されており、
前記容器本体のうち前記合わせ部が位置する部分には、前記容器本体の内周面から内方に向けて膨出して一段肉厚とされた肉盛部が設けられていることを特徴とするインモールドラベル付き容器。
【請求項2】
前記インモールドラベルには、前記成形金型内での周方向位置を固定するためのガイド部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のインモールドラベル付き容器。
【請求項3】
前記容器本体の高さ方向に直交する断面において、前記肉盛部の前記容器本体内周面からの膨出高さhは、0.2mm≦h≦2.0mmの範囲内に設定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインモールドラベル付き容器。
【請求項4】
前記肉盛部の周方向長さlは、前記合わせ部の周方向長さaに対して、2×a≦l≦3×aの範囲内に設定されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のインモールドラベル付き容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−110805(P2008−110805A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−296457(P2006−296457)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】