説明

インモールド用転写箔、及びそれを用いた成形品

【課題】
耐熱性と伸縮追従性がよく、割れや白化などの少なく、パール印刷図柄、ホログラム図柄及びパール調ホログラム図柄の3図柄が同時に観察できるインモールド用転写箔、及びそれを用いた成形品を提供する。
【解決手段】
基材11/離型層13/ハードコート層14/パターン状のパール印刷層21/全面レリーフのホログラム層15/パターン状の反射層17/接着層19からなり、透明部分37に浮かぶように、パール印刷図柄35、ホログラム図柄31及びパール調ホログラム図柄33の3図柄が、同時に観察することができ、該3図柄は高精度で位置合わせされていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インモールド用転写箔に関し、さらに詳しくは、成形用金型内へ挿入し成形することで、成形品の立体面への追従性がよく、白化せずに、パール印刷図柄、ホログラム図柄及びパール調ホログラム図柄が同時に観察される転写層を転写することのできるインモールド用転写箔、及び成形品に関するものである。
【0002】
本明細書において、配合を示す「比」、「部」、「%」などは特に断わらない限り質量基準であり、「/」印は一体的に積層されていることを示す。また、「PET」は「ポリエチレンテレフタレート」の略語、同意語、機能的表現、通称、又は業界用語である。また、「ホログラム」は「ホログラムと、回折格子などの光回折性機能を有するものも含む。
【背景技術】
【0003】
(主なる用途)本発明のインモールド用転写箔を用いた成形品の主なる用途としては、日用品や生活用品などの機器本体、食品や各種物品の容器類、電子機器や事務用品などの筐体類など立体成形品で、成形品の表面に、パール印刷図柄、ホログラム図柄及びパール調ホログラム図柄が同時に観察される特異な意匠性やセキュリティ性を向上させたもので、成形品の形状や内容物は任意である。しかしながら、意匠性やセキュリティ性を向上させるために、成形品の表面にパール印刷図柄、ホログラム図柄及びパール調ホログラム図柄が同時に観察される層を転写した用途であれば、特に限定されるものではない。
【0004】
(背景技術)従来、上記の用途の媒体、例えば、ブランド品や高級品では経済的価値を持つため、不正に偽造されることが絶えず、種々の改竄防止策が提案され、セキュリティ性の向上が図られている。偽造が困難で、セキュリティ性に優れ、光回折効果を持つホログラムを媒体へ転写することが知られている。また、セキュリティ性に加え、意匠性も常に新しいものが求められており、ホログラムとパール印刷などの意匠性のよい印刷を併用することも行われている。しかしながら、単にホログラムとパール印刷の2図柄が観察されるのみでる。一方、射出成形などによる成形品の平面や曲面では、成形時に、ホログラムなどの転写箔を金型内へ挿入して、射出成形と同時にホログラムを転写することが行われている。しかしながら、該転写は平面又は1方向の曲面に制限される。立体部分は溶融した高温の射出成形樹脂の流れによって、ホログラムなどの転写箔が伸張しシワや破れが発生し、また伸張及び/又は収縮によって、割れ、伸縮ジワによって光輝性が変化し、特に反射層がアルミニウム薄膜のみの場合には、本来の金属光沢が伸縮によって白化し全く金属光沢が失われ、ホログラムも消失してしまう。従来は伸縮の影響を最小に押えようと、伸縮の少ない部分へホログラムを貼着又は転写したり、小さい面積のホログラムとしたりすることで、伸縮の影響を最小に押えなければならなかった。
従って、さらなる意匠性やセキュリティ性の向上のために、ホログラムを有する転写箔を用いてインモールド射出成形法で転写した立体の射出成形品であっても、熱で白化しない耐熱性と、立体面へよく追従して割れや白化などが少なく、単にホログラムとパール印刷の2図柄のみでなく、さらにこれらの組み合わせ図柄、即ちパール印刷図柄、ホログラム図柄及びパール調ホログラム図柄の3図柄が同時に観察できるインモールド用転写箔、及びそれを用いた成形品が求められている。
【0005】
(先行技術)従来、基材、印刷層、光回折構造層(本発明のホログラム層に相当する)及び熱接着性樹脂層とを含む積層シートで作製したラベルを、インモールドラベリング方式の射出成形により一体化成形するカップ状容器が知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、ホログラム層が成形される周壁は平面であり立体面ではない。
また、加飾転写層(本発明のホログラム層を含む)を伸縮性材料に転写した後に、少なくとも表面の一部に凹凸又は曲面を有する成形品本体の表面の一部分に加熱加圧により転写した表面装飾成形品が知られている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、加飾転写層を直接成形品へ転写はできないという欠点がある。
さらに、ベースフィルム、保護層、金属薄膜(本発明のホログラム層と反射層に相当する)、接着層とからなる転写フィルムを作製し、この転写フィルムを挟んで一対の金型を型締めし、該金型内に溶融樹脂を射出して金属薄膜をつけ爪本体の表面に転写するつけ爪の製法が知られている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、つけ爪は1方向の大きな曲面で、転写フィルム自身は平面を巻き付けた状況であり、三次元の立体とは言い難い、また、転写フィルムを構成する保護層、金属薄膜、及び接着層の材料についても、極く一般的なものであり、立体物への転写で最大の問題点であある材料の伸縮性については記載も示唆もされていない。
さらにまた、本出願人も立体成形品を成形する際に微細な凹凸を予め形成しておいてから、該微細な凹凸面へ反射層を設けてホログラムとするものを開示している(例えば、特許文献4〜5参照。)。しかしながら、微細な凹凸を予め形成せるために微細な凹凸を賦型する専用の賦型フィルムを作成せねばならず、またそれを用いたインモールド成形方法も煩雑であり、さらに形成した微細な凹凸へ反射層を設ける工程が必要で、高コストとなるという問題点がある。
以上の特許文献1〜5のいずれにも、ホログラム層の伸縮についての記載も示唆もない。さらに、 についての記載も示唆もない。
【0006】
【特許文献1】特開2005−7647号公報
【特許文献2】特開2004−58599号公報
【特許文献3】特開2003−9941号公報
【特許文献4】特開2004−163482号公報
【特許文献5】特開2004−284178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明はこのような問題点を解消するためになされたものである。その目的は、さらなる意匠性やセキュリティ性の向上のために、ホログラムを有する転写箔を用いてインモールド射出成形法で転写した立体の射出成形品であっても、熱で白化しない耐熱性と、立体面へよく追従して割れや白化などが少なく、単にホログラムとパール印刷の2図柄のみでなく、さらにこれらの組み合わせ図柄、即ちパール印刷図柄、ホログラム図柄及びパール調ホログラム図柄の3図柄が同時に観察できるインモールド用転写箔、及びそれを用いた成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明に係わるインモールド用転写箔は、基材と、該基材の一方の面へ離型層、ハードコート層、パール印刷層、ホログラム層、反射層及び接着層が設けてなるインモールド用転写箔において、前記離型層がメラミン系樹脂で、前記ハードコート層、前記パール印刷層及び前記ホログラム層の主成分が電離放射線硬化樹脂であり、前記ホログラム層に賦型されている光回折効果を有するレリーフが全面状で、前記パール印刷層及び前記反射層がパターン状の図柄からなり、(イ)前記パール印刷層の図柄部分と前記反射層の図柄のない部分との構成からパール印刷図柄が、(ロ)前記ホログラム層と前記反射層の図柄部分との構成からホログラム図柄が、(ハ)前記パール印刷層の図柄部分と前記ホログラム層と前記反射層の図柄部分との構成からパール調ホログラム図柄が同時に観察され、かつ、前記ホログラム層が(1)電離放射線硬化前の塗膜が指乾状態で、(2)電離放射線硬化後の23℃における破断伸度が5%以上で、(3)基材、離型層、ハードコート層、パール印刷層、ホログラム層、反射層及び接着層を設けたインモールド用転写箔状態で、150℃雰囲気中に1時間放置しても白化しない耐熱性を有するように、したものである。
請求項2の発明に係わる成形品は、請求項1に記載のインモールド用転写箔を用いて、インモールド射出成形法で成形された立体成形品に、ハードコート層、パール印刷層、ホログラム層、反射層及び接着層が転写され、パール印刷図柄、ホログラム図柄及びパール調ホログラム図柄が同時に観察できるように、したものである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の本発明によれば、熱で白化しない耐熱性と、伸縮率が大きくても伸縮へ追従性がよく、立体面へ割れや白化などの少なく転写することができ、かつ、単にホログラムとパール印刷の2図柄のみでなく、さらにこれらの組み合わせ図柄、即ちパール印刷図柄、ホログラム図柄及びパール調ホログラム図柄の3図柄が同時に観察できる意匠性とセキュリティ性に優れるインモールド用転写箔が提供される。
請求項2の本発明によれば、請求項1の効果に加えて、立体面へでも割れや白化などが少なく転写された成形品が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1は、本発明の1実施例を示すインモールド用転写箔の断面図である。
図2は、本発明のインモールド用転写箔を用いて、転写した成形品の断面図である。
図3は、本発明の3図柄の同時観察を説明する平面図である。
【0011】
(インモールド用転写箔)本発明のインモールド用転写箔10は、図1に示すように、基材11と、該基材11の一方の面へ離型層13、ハードコート層14、プライマ層16(必要に応じて)、パール印刷層21、ホログラム層15、反射層17、及び接着層19の層構成である。ここで、離型層13がメラミン系樹脂であり、ハードコート層14、パール印刷層21、及びホログラム層15の主成分が電離放射線硬化樹脂からなる。さらに、ホログラム層15が(1)電離放射線硬化前の塗膜が指乾状態で、(2)電離放射線硬化後の23℃における破断伸度が5%以上で、かつ、(3)基材11、離型層13、ホログラム層15、透明反射層17、高輝度インキ層18及び接着層19を設けたインモールド用転写箔10状態で、150℃雰囲気中に1時間放置しても白化しない耐熱性を有する。
【0012】
本発明によれば、次のような効果を奏することができる。(1)ホログラム層15はハードコート性の電離放射線硬化樹脂、シリコーン及びフィラーを含むことで、(1)電離放射線硬化後の23℃における破断伸度が5%以上で、(2)基材11/離型層13/ハードコート層14/プライマ層16(必要に応じて)/パール印刷層21/ホログラム層15/反射層17/接着層19のインモールド用転写箔状態で、150℃雰囲気中に1時間放置しても白化しない耐熱性を有する。このようにすることで、熱白化しない耐熱性と、立体面へ追従し割れにくい柔軟性が得られ、インモールド射出成形法でも、立体成形品の表面へ転写さることができる。(3)ホログラム層15に賦型されている光回折効果を有するレリーフが全面状で、パール印刷層21及び反射層17がパターン状の図柄とすることで、次の(イ)(ロ)(ハ)の3図柄が観察される。(イ)前記パール印刷層21の図柄部分と前記反射層17の図柄のない部分との構成からパール印刷図柄が、(ロ)前記ホログラム層15と前記反射層17の図柄部分との構成からホログラム図柄が、(ハ)前記パール印刷層21の図柄部分と前記ホログラム層15と前記反射層17の図柄部分との構成からパール調ホログラム図柄の3図柄が同時に観察することができ、意匠性及びセキュリティ性が向上する。
【0013】
本発明のインモールド用転写箔10は、インモールド射出成形法で、立体成形品へハードコート層14/プライマ層16(必要に応じて)/パール印刷層21/ホログラム層15/反射層17/接着層19を転写した成形品100を図2に示す。なお、図2は作図の都合上、成形品は平面に描いているが、三次元の立体状である。成形品100では、即ちパール印刷図柄、ホログラム図柄及びパール調ホログラム図柄の3図柄が同時に観察でき、しかも、立体面へ転写された成形品である。
【0014】
(インモールド射出成形法)まず、インモールド射出成形法とは、(1)インモールド用転写箔10を準備する工程と、(2)該インモールド用転写箔10を射出成形用金型内へ挿入する工程と、(3)該射出成形用金型へ樹脂を射出成形し密着させることで、該射出樹脂101の表面へインモールド用転写箔10のハードコート層14/プライマ層16(必要に応じて)/パール印刷層21/ホログラム層15/反射層17/接着層19を転写する工程と、(4)冷却後、金型を解放し、インモールド用転写箔10の基材11及び離型層13を剥離して成形品を取り出す工程と、からなる射出成形法で、立体面へホログラムが転写された成形品100を製造できる。
【0015】
(基材)基材11としては、耐熱性、機械的強度、製造に耐える機械的強度、耐溶剤性などがあれば、用途に応じて種々の材料が適用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン6などのポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニルなどのビニル系樹脂、ポリメチルメタアクリレートなどのアクリル系樹脂、ポリカーボネート、セロファン、セルロースアセテートなどのセルロース系フィルム、などがある。好ましくは、耐熱性、機械的強度の点で、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂のフィルムで、ポリエチレンテレフタレートが最適である。該基材の厚さは、通常、12〜100μm程度が適用できるが、16〜50μmが転写性の点で好ましい。
【0016】
該基材11は、これら樹脂を主成分とする共重合樹脂、または、混合体(アロイを含む)、若しくは複数層からなる積層体であっても良い。また、該基材は、延伸フィルムでも、未延伸フィルムでも良いが、強度を向上させる目的で、一軸方向または二軸方向に延伸したフィルムが好ましい。該基材は、これら樹脂の少なくとも1層からなるフィルム、シート、ボード状として使用する。該基材は、塗布に先立って塗布面へ、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム処理、プライマー(アンカーコート、接着促進剤、易接着剤とも呼ばれる)塗布処理、予熱処理、除塵埃処理、アルカリ処理、などの易接着処理を行ってもよい。また、必要に応じて、充填剤、可塑剤、着色剤、帯電防止剤などの添加剤を加えても良い。
【0017】
(離型層)離型層13としては、離型性樹脂、離型剤を含んだ樹脂、電離放射線で架橋する硬化性樹脂などがあるが、本発明ではメラミン系樹脂を用いる。該メラミン系樹脂を用いることで、後述するハードコート層14との組合わせで安定した剥離性を発揮する。
【0018】
離型層13の形成は、メラミン系樹脂を溶媒へ分散又は溶解して、ロールコート、グラビアコート、コンマコート、プレーコートなどの印刷又はコーティング方法で、少なくとも1部に塗布し乾燥して塗膜を形成する。また、要すれば、温度30℃〜120℃で加熱乾燥、あるいはエージングしてもよい。離型層13の厚さとしては、通常は0.01μm〜5μm程度、好ましくは0.5μm〜3μm程度である。該厚さは薄ければ薄い程良いが、0.1μm以上であればより良い成膜が得られて剥離力が安定する。
【0019】
(ハードコート層)ハードコート層14としては、少なくとも電離放射線硬化樹脂を主成分とし、必要に応じてフィラーを含むようにする。該電離放射線硬化性樹脂としては、(イ)分子中にイソシアネート基を3個以上有するイソシアネート類、(ロ)分子中に水酸基を少なくとも1個と(メタ)アクリロイルオキシ基を少なくとも2個有する多官能(メタ)アクリレート類、又は(ハ)分子中に水酸基を少なくとも2個有する多価アルコール類の反応生成物であるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーで、電離放射線硬化性を有するウレタン変性アクリレート樹脂である。好ましいウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの詳細は、特開2001−329031号公報で開示されている光硬化性樹脂が好ましい。具体的には、MHX405ニス(ザ・インクテック(株)製、電離放射線硬化性樹脂商品名)、ユピマーUV・V3031(三菱化学(株)製、電離放射線硬化性樹脂商品名)が例示できる。
【0020】
(フィラー)フィラーとしてはマイクロシリカやポリエチレンワックスなどが例示でき、ポリエチレンワックスとしては、ポリエチレン系樹脂の粒子やビーズが挙げられるが、好ましくは球状ビーズである。その添加量は、電離放射線硬化樹脂100質量部に対して、0.01〜10質量部程度、好ましくは0.1〜5質量部とする。転写後にはハードコート層14が最表面層となり、含まれるフィラーは、機械的な摩擦、及び摩耗から媒体を保護し、後述する画像などの固有情報も保護する。
【0021】
(1)ポリエチレンワックスを含ませることで、転写後にはハードコート層14が最表面層となるが、極めて過酷な環境での使用、長期間にわたる使用、及び/又は多数回の繰り返し使用などでも、溶剤、機械的な摩擦、及び摩耗から被転写体に設けられた画像を保護し、傷付きにくく耐久性に優れる。(2)ハードコート層14はメラミン系樹脂を用いた離型層13と界面を接しているので、ハードコート層14と離型層13との間で剥離し、安定した剥離性となる。
【0022】
(ハードコート層の形成)ハードコート層14の形成は、上記の電離放射線硬化性樹脂にポリエチレンワックス、必要に応じて光重合開始剤、可塑剤、安定剤、界面活性剤等を加え、溶媒へ分散または溶解して、ロールコート、グラビアコート、コンマコート、ダイコートなどの公知のコーティング方法で塗布し乾燥して、紫外線などの電離放射線で反応(硬化)させればよい。
【0023】
(ハードコート層の厚味)本発明では、極めて過酷な環境での使用、使用期限がなかったり、長期にわたる使用、及び/又は多数回の繰り返し使用などでも、溶剤や機械的な摩擦及び摩耗、特に引掻きから保護し、傷付きにくい耐久性を付与するために、ハードコート層14の厚みは1〜25μm程度、好ましくは3〜15μmである。
【0024】
(パール印刷層)ハードコート層14面へ、必要に応じてプライマ層16を介して、パール印刷層21を形成する。パール印刷層21としては、少なくとも電離放射線硬化樹脂を主成分とし、パール顔料を含ませる。必要に応じて着色顔料も含ませてもよく、着色パール印刷層としてもよい。パール印刷層21の主成分である電離放射線硬化樹脂は、前述のハードコート層14に用いた電離放射線硬化樹脂が適用できる。電離放射線硬化性樹脂に、パール顔料を含ませ、必要に応じて着色顔料も含ませ、更に必要に応じて光重合開始剤、可塑剤、安定剤、界面活性剤等を加え、溶媒へ分散または溶解して、グラビア印刷、スクリーン印刷などの公知の印刷方法で印刷し乾燥して、紫外線などの電離放射線で反応(硬化)させればよい。該パール印刷層21はパターン状の図柄とするが、パール印刷層21の形成は印刷法であり、公知の印刷法でパターン状の図柄とすることができる。
【0025】
(ホログラム層)パール印刷層21面へ、必要に応じてプライマ層を介して、ホログラム層15を形成する。ホログラム層15としては、少なくとも電離放射線硬化樹脂を主成分とし、シリコーン及びフィラーを含ませる。ホログラム層15の電離放射線硬化樹脂としては、前述のハードコート層14に用いた電離放射線硬化樹脂が適用でき、必要に応じて、他のオリゴマーなどを含ませてもよい。このようにすることで、電離放射線硬化後でも熱で白化しない耐熱性と、伸縮へ追従性がよく、割れや白化などのホログラム効果の低下が少ない。
【0026】
(ハードコート層、パール印刷層、ホログラム層)また、好ましくは、ハードコート層14、パール印刷層21、及びホログラム層15の主成分の電離放射線硬化樹脂を同じものとする。これらの3層が一体化し、23℃における破断伸度が5%以上で、インモールド用転写箔状態での150℃雰囲気中に1時間放置しても白化しない耐熱性が確実性が向上する。また、これらの3層を形成した後に紫外線などの電離放射線で反応(硬化)させてもよく、もちろん、1層づつ反応(硬化)させてもよい。
【0027】
((メタ)アクリレートオリゴマー)(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、耐熱性のあるオリゴマーであればよく、例えば、日本合成化学社の商品名;紫光6630B、7510B、7630Bなどが例示できる。含有させる質量基準での割合としては、「電離放射線硬化性樹脂組成物M」100部に対して10〜30部程度、好ましくは15〜25部である。この範囲未満では耐熱性が不足し、この範囲を超えては耐熱性はよいが、ヒビ割れしやすい。
【0028】
(シリコーン)シリコーンとしてはシリコーンオイルや反応性シリコーンなどが例示できる。好ましくは反応性シリコーンで、電離放射線で硬化時に樹脂と反応し結合して一体化したり、1部は残留するものもある。該反応性シリコーンとしてはアクリル変性、メタクリル変性、又はエポキシ変性などで変性した反応性シリコーンで、該反応性シリコーンを含有させる質量基準での割合としては電離放射線硬化性樹脂100部に対して、0.1〜10部程度、好ましくは0.3〜5部である。この範囲未満ではレリーフの賦型時にプレススタンパとの剥離が不十分であり、プレススタンパの汚染を防止することが困難で賦型性が悪い。また、この範囲を超えてはホログラム層面への透明反射層の密着性が低く、ホログラム層と透明反射層との間で剥離し商品価値を失ってしまう。
【0029】
(フィラー)フィラーとしてはマイクロシリカやポリエチレンワックスが例示できる。ポリエチレンワックスとしては、ポリエチレン系樹脂の粒子やビーズが挙げられるが、好ましくは球状ビーズである。但し、ポリエチレンワックスを添加すると、箔切れ性は低下するので、その添加量は、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して、0.01〜10質量部程度、好ましくは0.1〜5質量部とする。
【0030】
このように、ホログラム層15へ電離放射線硬化樹脂、シリコーン及びフィラーを含ませることで、次の作用効果を兼ねさせることができる。(1)電離放射線硬化前の塗布状態のホログラム層15の塗膜は指乾状態でべとつかず、ブロッキングせずに巻き取ることができるので、ロールツーロール加工ができる。(2)ホログラム層15へは反応性シリコーンを含ませることで、賦型性がよいので、レリーフ構造を容易に賦型でき、賦型後に電離放射線で硬化できる。また、ホログラム層15は伸縮が大きな立体的な成形品へ転写しても、伸縮へ追従性がよく、割れや白化などのホログラム効果の低下が少ない意匠性に優れたホログラムを立体面へ転写することのできる。電離放射線硬化後の23℃における破断伸度を5%以上、好ましくは7%以上とすることができる。5%未満では伸縮時にヒビ割れたり白化したりする。7%以上であると、伸縮率が高くても伸縮時にヒビ割れたり白化したりしない。(3)基材11/離型層13/ハードコート層14/パール印刷層21/ホログラム層15/反射層17/接着層19を設けたインモールド用転写箔状態で、150℃、好ましくは170℃雰囲気中に1時間放置しても白化しない耐熱性を有するので、通常の射出成形での樹脂温度である150〜200℃の熱でもホログラムが劣化しない。200℃の熱でも瞬間的なために、ホログラム像が劣化しないのである。なお、耐熱性は接着層19を設けても設けなくとも同じである。
【0031】
さらに、次の作用効果もある。
(4)転写後のハードコート層14は最表面層となり、極めて過酷な環境での使用、長期間にわたる使用、及び/又は多数回の繰り返し使用などでも、溶剤、機械的な摩擦、及び摩耗から保護し、傷付きにくく耐久性に優れる。(5)ハードコート層14はメラミン系樹脂を用いた離型層13と界面を接しているので、安定した剥離性を有し、転写時には箔切れがよく、バリなどの発生も極めて少なくすることができる。
【0032】
(破断伸度)ホログラム層15の伸縮性を破断伸度で表し、該層の破断伸度(%)の測定方法は、23℃55%RHの条件下でUV硬化後樹脂層を24時間以上放置した後、株式会社オリエンテックテンシロン万能試験機RTA−100を用いデータ処理は、テンシロン多機能型データ処理TYPE MP−100/200S Ver.44を用い測定を行なった。試料幅10mm、チャック間距離50mm、RANGEは20%、荷重は100kgの条件で、引っ張り速度10mm/minで引っ張り、破断伸度は、引っ張り時の破断または亀裂が入ったときの破断点伸びの自長に対する伸び率とした。ホログラム層15の破断伸度の測定では、ホログラム層15膜のみを作成するのは難しいため、25μm剥離PETに10μmのホログラム層15を形成し、メタルハライドランプにて積算露光量250mjで露光した後に剥離して試料とした。
【0033】
(耐熱性)ホログラム層の耐熱性は、基材、離型層、ホログラム層、透明反射層、高輝度インキ層及び接着層を設けたインモールド用転写箔状態で、150℃から170℃のオーブン中に1時間放置して、目視によりヒビ割れ及び/又は白化しないものを合格とした。
【0034】
(ホログラム層の形成)ホログラム層15の形成は、上記の電離放射線硬化性樹脂、必要に応じてシリコーン、ポリエチレンワックス、光重合開始剤、可塑剤、安定剤、界面活性剤等を加え、溶媒へ分散または溶解して、ロールコート、グラビアコート、コンマコート、ダイコートなどの公知のコーティング方法で塗布し乾燥して、電離放射線で反応(硬化)させればよい。ホログラム層15の厚さとしては、通常は1μm〜30μm程度、好ましくは2μm〜20μm程度である。複数回の塗布でもよい。
【0035】
(ホログラム)次に、ホログラム層15の表面には、ホログラムなどの光回折効果の発現する所定のレリーフ構造を賦型し、硬化させる。ホログラムは物体光と参照光との光の干渉による干渉縞を凹凸のレリーフ形状で記録されたもので、例えば、フレネルホログラム等のレーザ再生ホログラム、及びレインボーホログラム等の白色光再生ホログラム、さらに、それらの原理を利用したカラーホログラム、コンピュータジェネレーティッドホログラム(CGH)、ホログラフィック回折格子などがある。レリーフ形状は凹凸形状であり、特に限定されるものではなく、微細な凹凸形状を有する光拡散、光散乱、光反射、光回折などの機能を発現するものでもよく、例えば、フーリエ変換やレンチキュラーレンズ、光回折パターン、モスアイ、が形成されたものである。また、光回折機能はないが、特異な光輝性を発現するヘアライン柄、マット柄、万線柄、干渉パターンなどでもよい。
【0036】
これらのレリーフ形状の作製方法としてはホログラム撮影記録手段を利用して作製されたホログラムや回折格子の他に、干渉や回折という光学計算に基づいて電子線描画装置等を用いて作製されたホログラムや回折格子をあげることもできる。また、ヘアライン柄や万線柄のような比較的大きなパターンなどは機械切削法でもよい。これらのホログラム及び/又は回折格子の単一若しくは多重に記録しても、組み合わせて記録しても良い。これらの原版は公知の材料、方法で作成することができ、通常、感光性材料を塗布したガラス板を用いたレーザ光干渉法、電子線レジスト材料を塗布したガラス板に電子線描画装置を用いてパターン作製する電子線描画法をなどが適用できる。
【0037】
(レリーフの賦型)ホログラム層15面へ、上記のレリーフ形状を賦形(複製ともいう)する。ホログラムの賦型は、公知の方法によって形成でき、例えば、回折格子やホログラムの干渉縞を表面凹凸のレリーフとして記録する場合には、回折格子や干渉縞が凹凸の形で記録された原版をプレス型(スタンパという)として用い、上記樹脂層上に前記原版を重ねて加熱ロールなどの適宜手段により、両者を加熱圧着することにより、原版の凹凸模様を複製することができる。該記ホログラム層15に賦型されている光回折効果を有するレリーフは全面に設ける。プレス型(スタンパという)を作製する際に、多面付けしてエンドレスのプレス型とすればよい。
【0038】
(レリーフの硬化)ホログラム層15は、スタンパでエンボス中、又はエンボス後に、電離放射線を照射して、電離放射線硬化性樹脂を硬化させる。上記の電離放射線硬化性樹脂は、レリーフを形成後に、電離放射線を照射して硬化(反応)させると電離放射線硬化樹脂(ホログラム層15)となる。電離放射線としては、電磁波が有する量子エネルギーで区分する場合もあるが、本明細書では、すべての紫外線(UV‐A、UV‐B、UV‐C)、可視光線、ガンマー線、X線、電子線を包含するものと定義する。従って、電離放射線としては、紫外線(UV)、可視光線、ガンマー線、X線、または電子線などが適用できるが、紫外線(UV)が好適である。電離放射線で硬化する電離放射線硬化性樹脂は、紫外線硬化の場合は光重合開始剤、及び/又は光重合促進剤を添加し、エネルギーの高い電子線硬化の場合は添加しないで良く、また、適正な触媒が存在すれば、熱エネルギーでも硬化できる。ホログラム層15として、熱硬化性樹脂を用いた場合には、使用する熱硬化性樹脂の硬化条件に応じた温湿度環境下で、エージングを行い硬化させればよい。
なお、保護層14の硬化はホログラム層15と同時でもよく、予め硬化させておいてもよい。
【0039】
(レリーフの絵柄)ホログラム層15の絵柄を擬似連続絵柄とすることが好ましい。擬似連続絵柄はプレス型(スタンパという)を作成する際に、小さなレリーフ版の複数を、精度よく突合せてつなぎ目を目立たなくしたり、つなぎ目を樹脂で埋めたりすればよい。このように、擬似連続絵柄とすることで、できるだけ大きな面積、又は好ましくは全面とすることもできる。大面積又は全面のホログラム絵柄を背景とし他の任意な印刷絵柄と、同調させたり、合わせたりして、さらなる特異な意匠性を向上させることができる。印刷絵柄は、層間又は層表面に、公知の印刷法などで適宜設ければよく、印刷絵柄はインモールド用転写箔、及び/又は収縮フィルムのいずれへ設けてもよい。
【0040】
(反射層)ホログラム層15面へ、反射層17をパターン状の図柄に設ける。反射層17をパターン状の図柄とする方法は、エッチング法や、当業者がパスター法と呼称する水洗法などの公知の方法が適用できる。たとえば水洗法は、水溶性樹脂を主成分とするインキを用いて、ネガ状パターンに印刷して水洗層とし、さらに該面に全面の反射層17を形成した後に、水洗することで、水洗層の水溶性樹脂が溶解して、水溶性樹脂と該水溶性樹脂に乗っている反射層17とが除去されて、水洗層のない部分の反射層17がパターン状の図柄となる。。
【0041】
(反射層)反射層17は、水洗層のネガパターン部分と、水洗層のパターンのない部分では直接ホログラム層15面へ、形成される。ホログラム層15のレリーフ面へ、反射層17へ設けることにより、レリーフの反射及び/又は回折効果を高めるので、ホログラム層15の反射率のより高れば、特に限定されない。該反射層17としては、真空薄膜法などによる金属薄膜などの金属光沢反射層、又は透明反射層のいずれでもよいが、金属光沢反射層は部分的に設け、透明反射層は被転写体へ形成されている画像の面へ転写しても、画像が観察できるので好ましい。透明反射層としては、ほぼ無色透明な色相で、その光学的な屈折率がホログラム層のそれとは異なることにより、金属光沢が無いにもかかわらず、ホログラムなどの光輝性を視認できるから、透明なホログラムを作製することができる。例えば、ホログラム層15よりも光屈折率の高い薄膜、および光屈折率の低い薄膜とがあり、前者の例としては、ZnS、TiO2、Al23、Sb23、SiO、SnO2、ITO等があり、後者の例としては、LiF、MgF2、AlF3がある。好ましくは、金属酸化物又は窒化物であり、具体的には、Be、Mg、Ca、Cr、Mn、Cu、Ag、Al、Sn、In、Te、Fe、Co、Zn、Ge、Pb、Cd、Bi、Se、Ga、Rb、Sb、Pb、Ni、Sr、Ba、La、Ce、Au等の酸化物又は窒化物他はそれらを2種以上を混合したもの等が例示できる。またアルミニウム等の一般的な光反射性の金属薄膜も、厚みが200Å以下になると、透明性が出て使用できる。透明金属化合物の形成は、金属の薄膜と同様、ホログラム層15のレリーフ面に、10〜2000nm程度、好ましくは20〜1000nmの厚さになるよう、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、CVDなどの真空薄膜法などにより設ければよい。
【0042】
(図柄)以上述べたように、ホログラム層15に賦型されている光回折効果を有するレリーフが全面状で、パール印刷層21及び反射層17がパターン状の図柄とすることで、図1及び図2に示すように、パール印刷図柄35、ホログラム図柄31及びパール調ホログラム図柄33の3図柄が同時に観察することができるのである。また、図柄の平面図を図3に示すように、パール印刷図柄35、ホログラム図柄31及びパール調ホログラム図柄33の3図柄が同時に観察することができ、またそれらの周辺の部分は透明部分37となる。
【0043】
(イ)前記パール印刷層21の図柄部分と前記反射層17の図柄のない部分との構成では、ホログラム層15面へ直接接着層19が形成されるので、ホログラム層15のレリーフが接着層19で埋まり、ホログラム層15と接着層19の屈折率がほぼ同じであり光回折効果が失われホログラム像は見えず、パール印刷図柄35のみが観察できる。(ロ)ホログラム層15と反射層19の図柄部分との構成では、ホログラム層15と反射層17の屈折率が大きく異なるのでお光回折効果が発現してホログラム像(ホログラム図柄31)が、クッキリと観察できる。(ハ)パール印刷層21の図柄部分とホログラム層15と反射層17の図柄部分との構成では、3層のすべてが目視でき、パール調ホログラム図柄33が観察される。即ち、例えば、透明部分37に浮かぶように、パール印刷図柄35、ホログラム図柄31及びパール調ホログラム図柄33の3図柄が同時に観察することができ、該3図柄は高精度で位置合わせされており、デザインの自由度も高く、高意匠性でもある。
【0044】
さらに、反射層19の図柄を決定する水洗層は、パール印刷層21と同じく印刷法であり、位置合わせ(当業者は見当合わせという)を正確にできるので、パール印刷図柄35、ホログラム図柄31及びパール調ホログラム図柄33の3図柄は正確に規制された図柄を構成させることができるので、意匠性を向上させることができる。
【0045】
(接着層)反射層17面へ接着層19を設ける。該接着層19の材料としては、公知の加熱されると溶融または軟化して接着効果を発揮する感熱接着剤が適用でき、具体的には、塩化ビニール酢酸ビニール共重合樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂などが挙げられる。該材料樹脂を溶剤に溶解または分散させて、適宜顔料などの添加剤を添加して、公知のロールコーティング、グラビアコーティングなどの方法で塗布し乾燥させて、厚さ0.1〜30μm程度、好ましくは0.5〜10μmの層とする。接着層19の材料としては、公知の加熱されると溶融または軟化して接着効果を発揮する感熱接着剤が適用でき、具体的には、塩化ビニール酢酸ビニール共重合樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂などが挙げられる。該材料樹脂を溶剤に溶解または分散させて、適宜顔料などの添加剤を添加して、公知のロールコーティング、グラビアコーティングなどの方法で塗布し乾燥させて、厚さ0.1μmから30μmの層を得る。
【0046】
(インモールド射出成形)このようにして、(1)本発明のインモールド用転写箔10が準備できる。該インモールド用転写箔10を用いて、インモールド射出成形法して、立体面へホログラムが転写された成形品を製造することができる。まず、(2)該インモールド用転写箔10を射出成形用金型内へ挿入し、(3)該射出成形用金型へ樹脂を射出成形し密着させ、該樹脂の表面へインモールド用転写箔10を転写し、(4)冷却後、金型を解放し、インモールド用転写箔の基材11及び離型層13を剥離して成形品を取り出す公知の方法でよい。なお、離型層13の1部がホログラム層15側に残る場合もあるが、剥離に支障はなく、本発明の範囲内である。
【0047】
(ホログラム付き射出成形品)このようにして、インモールド射出成形法で立体面へ、ホログラム自身の熱で白化しない耐熱性、及び伸縮へ追従性がよく、割れや白化などが極めて少ない意匠性に優れるホログラム付き成形品を製造できる。また、インモールド用転写箔10には、ホログラム絵柄を背景とし他の任意な印刷絵柄と合わせて、さらなる特異な意匠性も向上させることができる。
【0048】
(射出成形品)射出樹脂の材料は特に限定されず、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、アクリル系樹脂などの射出樹脂のできる公知の樹脂でよい。該射出成形品の形状としては、特に限定されず、少なくとも1部分に立体部があれば、適用できる。立体部とは二次面、三次面でもよく、波状、曲面状、多面体状、円又は角錐状、球状などがあり、これらの1、又は複数の組合わせ、若しくはランダム形状でもよい。射出成形による成形品は、日用品や生活用品などの機器本体、食品や各種物品の容器類、携帯電話などの電子機器や事務用品などの筐体類などに使用できる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例及び比較例により、本発明を更に詳細に説明するが、これに限定されるものではない。なお、溶媒を除き、各層の各組成物は固形分換算の質量部である。
【0050】
(実施例1)基材11として厚さ50μmのPETフィルムを用い、該基材11の一方の面へ、グラビアコート法で、TCM01メジューム(大日本インキ社製、メラミン樹脂商品名)塗工液を乾燥後2μmになるように塗布し乾燥して、180℃20秒間焼き付けて、離型層13を形成した。
該離型層13面へ、下記の電離放射線硬化性樹脂組成物をグラビアリバースコーターで乾燥後の厚さが5μmになるように、塗工し100℃で乾燥させ、高圧水銀灯を用いて紫外線を照射して硬化させて、ハードコート層14を形成した。
・<電離放射線硬化性樹脂組成物>
ユピマーUV・V3031(三菱化学社製、紫外線硬化性樹脂商品名) 25部
メタアクリレートオリゴマー(日本合成化学社製、商品名紫光7510B)5部
マイクロシリカ 1部
光重合開始剤(チバ社製、商品名イルガキュア907) 1.75部
溶媒(酢酸エチル:メチルイソブチルケトン=1:1) 70部
該ハードコート層14面へ、下記のプライマ層組成物をグラビアリコーターで乾燥後の厚さが1μmになるように、塗工し100℃で乾燥させて、プライマ層16を形成した。
・<プライマ層組成物>
ポルエステル系樹脂 10部
塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂 10部
溶媒(酢酸エチル:トルエン) 80部
該プライマ層16面へ、下記のパール印刷層組成物を、乾燥後の厚さが2μmになるようにグラビア印刷法で、図3のパール印刷図柄35とパール調ホログラム図柄33に相当する図柄を印刷し乾燥させて、パール印刷層21を形成した。
・<パール印刷層組成物>
ユピマーUV・V3031(三菱化学社製、紫外線硬化性樹脂商品名) 25部
メタアクリレートオリゴマー(日本合成化学社製、商品名紫光7510B)5部
パール顔料 5部
青染料 1部
マイクロシリカ 1部
光重合開始剤(チバ社製、商品名イルガキュア907) 1.75部
溶媒(酢酸エチル:メチルイソブチルケトン=1:1) 70部
該パール印刷層21面へ、下記の電離放射線硬化性樹脂組成物をグラビアリバースコーターで乾燥後の厚さが2μmになるように、塗工し100℃で乾燥させて、ホログラム層15を形成した。
・<ホログラム層の電離放射線硬化性樹脂組成物>
ユピマーUV・V3031(三菱化学社製、紫外線硬化性樹脂商品名) 25部
メタアクリレートオリゴマー(日本合成化学社製、商品名紫光7510B)5部
反応性シリコーン(信越化学社製、商品名X−22−1602) 0.2部
マイクロシリカ 1部
光重合開始剤(チバ社製、商品名イルガキュア907) 1.75部
溶媒(酢酸エチル:メチルイソブチルケトン=1:1) 70部
次に、該ホログラム層15面へ、EB(電子線)描画法による回折格子から2P法で複製した擬似連続絵柄としたスタンパを複製装置のエンボスローラーに貼着して、相対するローラーと間で加熱プレス(エンボス)して、微細な凹凸パターンからなるレリーフを全面に賦形させた。賦形後直ちに、高圧水銀灯を用いて紫外線を照射して硬化させた。
該ホログラム層15のレリーフ面へ、乾燥後の厚さが1μmになるようにシルクスクリーン印刷法で、図3のパール印刷図柄35と透明部分37に相当する図柄を印刷し乾燥させて、水洗層を形成した。
・<水洗層の組成物>
水洗プライマー(昭和インク工業所、水溶性インキ商品名) 20部
溶媒(水:イソプロピルアルコール=9:1) 80部
該水洗層面へ真空蒸着法で厚さが500nmのアルミニウム薄膜を形成して反射層17を形成した。
次に、反射層17面へ40℃の温水を吹き付け、水洗層と反射層17を洗い流し除去して、ホログラム図柄31とパール調ホログラム図柄33の図柄部分には反射層17を残した。
該反射層17面へ、接着層組成物としてTM−A1HS(大日精化社製、商品名)をグラビアコーターで乾燥後の塗布量が1μmになるように、塗工し100℃で乾燥させて、接着層19を形成して、基材11/離型層13/ハードコート層14/プライマ層16/パール印刷層21/ホログラム層15/反射層17/接着層19の層構成からなる実施例1のインモールド用転写箔10を得た。
【0051】
(実施例2)
<射出成形>実施例1のインモールド用転写箔10を射出成形装置の自動箔送り装置に、接着層面が成形樹脂側になるように挿入(インサート)し、スミペックスSTH−55(住友化学社製、アクリル樹脂商品名)を、溶融温度250℃、金型温度80℃の通常条件で射出成形を行った。冷却後、金型を解放し、基材11/離型層13を剥離して取り出して、実施例2のインモールド用転写箔を用いたホログラム付き成形品を得た。
なお、該射出成形は成形サイクル12秒で連続的に成形した。得られた成形品は3次元形状(周囲に5mmの縁取りがあり、中央部が球面状に盛り上った直径150mmのCDプレイヤーの部材)とした。
【0052】
(評価)実施例1のインモールド用転写箔10において、硬化前のホログラム層は指乾状態であり、巻取りができ、以降の工程もロールツーロール加工ができ、ホログラム層15の破断伸度は31%であり、転写箔状態での耐熱性は170℃であった。
また、実施例1のインモールド用転写箔10は、図3に示すような、透明部分37に浮かぶように、パール印刷図柄35、ホログラム図柄31及びパール調ホログラム図柄33の3図柄が同時に観察することができ、該3図柄は高精度で位置合わせされており、高意匠性であった。
【0053】
実施例2のホログラム付き成形品100も球面部及び縁取り部分にもインモールド用転写箔10は追随し、アクリル樹脂表面に転写され、該ホログラムは、射出成形の熱でも白化せず、球面部への追従性もよく、割れや白化などもなく正常に転写できていた。
【0054】
また、実施例2のホログラム付き成形品100の最表面となっているハードコート層14面の鉛筆硬度試験を、JIS−K−5400に準拠して測定したところ、2H以上の硬度を有し、さらに、スクラッチ強度はサファイア200g以上であり、充分な耐久性を有していた。また、実施例2のホログラム付き成形品100は、図3に示すような、透明部分37に浮かぶように、パール印刷図柄35、ホログラム図柄31及びパール調ホログラム図柄33の3図柄が同時に観察することができ、該3図柄は高精度で位置合わせされており、高意匠性であった。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の1実施例を示すインモールド用転写箔の断面図である。
【図2】本発明のインモールド用転写箔を用いて、転写した成形品の断面図である。
【図3】本発明の3図柄の同時観察を説明する平面図である。
【符号の説明】
【0056】
10:インモールド用転写箔
11:基材
13:離型層
14:ハードコート層
15:ホログラム層
17:透明反射層
19:接着層
21:パール印刷層
31:ホログラム図柄
33:パール調ホログラム図柄
35:パール印刷図柄
37:透明部分
100:成形品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材の一方の面へ離型層、ハードコート層、パール印刷層、ホログラム層、反射層及び接着層が設けてなるインモールド用転写箔において、前記離型層がメラミン系樹脂で、前記ハードコート層、前記パール印刷層及び前記ホログラム層の主成分が電離放射線硬化樹脂であり、前記ホログラム層に賦型されている光回折効果を有するレリーフが全面状で、前記パール印刷層及び前記反射層がパターン状の図柄からなり、(イ)前記パール印刷層の図柄部分と前記反射層の図柄のない部分との構成からパール印刷図柄が、(ロ)前記ホログラム層と前記反射層の図柄部分との構成からホログラム図柄が、(ハ)前記パール印刷層の図柄部分と前記ホログラム層と前記反射層の図柄部分との構成からパール調ホログラム図柄が同時に観察され、かつ、前記ホログラム層が(1)電離放射線硬化前の塗膜が指乾状態で、(2)電離放射線硬化後の23℃における破断伸度が5%以上で、(3)基材、離型層、ハードコート層、パール印刷層、ホログラム層、反射層及び接着層を設けたインモールド用転写箔状態で、150℃雰囲気中に1時間放置しても白化しない耐熱性を有することを特徴とするインモールド用転写箔。
【請求項2】
請求項1に記載のインモールド用転写箔を用いて、インモールド射出成形法で成形された立体成形品に、ハードコート層、パール印刷層、ホログラム層、反射層及び接着層が転写され、パール印刷図柄、ホログラム図柄及びパール調ホログラム図柄が同時に観察できることを特徴とする成形品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−297931(P2009−297931A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152499(P2008−152499)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】