説明

インライン式成膜装置、磁気記録媒体の製造方法、及びゲートバルブ

【課題】ゲートバルブの開閉動作に伴う振動の発生を抑制しながら、このゲートバルブの開閉動作を高速で行うことを可能としたインライン式成膜装置を提供する。
【解決手段】シリンダ115内のピストン114が一の方向の端部に到達する直前に、第2の開閉バルブ117aを全閉することによって第2の流量調整バルブ117bのみで排気する一方、シリンダ115内のピストン114が他の方向の端部に到達する直前に、第1の開閉バルブ116aを全閉することによって第1の流量調整バルブ116bのみで排気する。これにより、シリンダ115の端部とピストン114との接触による衝撃を緩和し、振動の発生を抑制することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のチャンバの間で成膜対象となる基板を順次搬送させながら成膜処理を行うインライン式成膜装置、このインライン式成膜装置を用いた磁気記録媒体の製造方法、並びにこのインライン式成膜装置の複数のチャンバの間で通路の開閉を行うゲートバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードディスク装置等に用いられる磁気記録媒体の分野においては記録密度の向上が著しく、特に最近では、記録密度が1年間で1.5倍程度と、驚異的な速度で伸び続けている。
【0003】
このような磁気記録媒体は、例えば非磁性基板の両面又は片面に、シード膜、下地膜、磁気記録膜、保護膜及び潤滑剤膜が順次積層された構造を有しており、一般的には、キャリアに保持された基板を複数のチャンバの間で順次搬送させながら成膜処理を行うインライン式成膜装置を用いて製造される(例えば、特許文献1を参照。)。
【0004】
具体的に、インライン式成膜装置は、成膜処理を行う複数のチャンバがゲートバルブを介して接続された構造を有している。また、各チャンバ内には、水平軸回りに回転自在に支持された複数のベアリングがキャリアの搬送方向に並んで設けられており、これら複数のベアリングの上をキャリアが移動することが可能となっている。
【0005】
一方、キャリアは、複数のホルダを有しており、これらホルダには、基板を内側に配置する孔部と、この孔部の周囲に弾性変形可能に取り付けられた複数の保持爪とが設けられている。そして、ホルダは、複数の保持爪に基板の外周部を当接させながら、これら保持爪の内側に嵌め込まれた基板を着脱自在に保持することが可能となっている。
【0006】
また、インライン式成膜装置では、各チャンバの間に設けられたゲートバルブによってキャリアが通過する通路を開閉する動作が行われる。具体的に、ゲートバルブは、上述した通路を形成する開口部が設けられた一対の隔壁と、これら一対の隔壁の間で移動操作される弁体とを有している。そして、このゲートバルブでは、エアシリンダ等の駆動機構により弁体が通路を分断する方向に移動した後に、弁体が一方の隔壁に接触する方向に傾動する動作によって、成膜処理中に開口部を閉塞することが可能となっている。一方、この動作とは逆の動作によって、キャリアの搬送中に開口部を開放することが可能となっている。さらに、このようなゲートバルブは、各チャンバの間に2つ配置されており、他方の隔壁に設けられた開口部も同様に開閉することが可能となっている。
【0007】
そして、このインライン式成膜装置では、各チャンバをゲートバルブによって隔離した後、チャンバ内を減圧することで、各チャンバ内をそれぞれ独立した圧力条件下にして成膜処理を行うことが可能である。
【0008】
磁気記録媒体は、このようなインライン式成膜装置を用いて連続的に製造を行うことができ、処理基板のハンドリングに際して基板が汚染されることが無く、さらにハンドリング工程等を少なくして製造工程を効率化し、製品歩留まりを良くして磁気記録媒体の生産性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−288888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上述したインライン式成膜装置では、磁気記録媒体の生産性を高めるため、ゲートバルブによる開閉動作を高速化することが求められている。しかしながら、従来のインライン式成膜装置では、ゲートバルブの開閉速度を上げることによって、ゲートバルブに大きな振動が発生することがあった。
【0011】
具体的に、従来のゲートバルブでは、上記弁体の駆動機構にエアシリンダを用いている。この場合、エアシリンダの駆動エア圧を高めることによってゲートバルブの開閉速度を上げることができるものの、ゲートバルブに大きな振動が発生することになる。
【0012】
インライン式成膜装置では、このようなゲートバルブの高速開閉動作に伴う振動によって、ゲートバルブの寿命低下を招くことになる。また、このような高速開閉動作に伴う摩耗の発生によりチャンバ内が汚染されてしまう。さらに、このような高速開閉動作に伴う振動によって、チャンバ内で舞い上がったダストが基板に付着したり、その振動により上記ホルダから基板が脱落したり、上記保持爪との擦れにより基板が傷付いたりすると、製造される磁気記録媒体の品質低下を招くことになる。
【0013】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて提案されたものであり、ゲートバルブの開閉動作に伴う振動の発生を抑制しながら、このゲートバルブの開閉動作を高速で行うことを可能としたインライン式成膜装置、並びにそのようなインライン式成膜装置を用いた磁気記録媒体の製造方法、そのようなインライン式成膜装置に用いて好適なゲートバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、以下の手段を提供する。
(1) 成膜処理を行う複数のチャンバと、
前記複数のチャンバ内で成膜対象となる基板を保持するキャリアと、
前記キャリアを前記複数のチャンバの間で順次搬送させる搬送機構と、
前記複数のチャンバの間に設けられて、前記キャリアが通過する通路を開閉するゲートバルブとを備え、
前記ゲートバルブは、前記通路を形成する開口部が設けられた一対の隔壁と、前記一対の隔壁の間で移動操作される弁体と、前記開口部を閉塞する位置と前記開口部を開放する位置との間で前記弁体を駆動する駆動機構とを有し、
前記駆動機構は、前記弁体に接続されたピストンと、前記ピストンが配置されるシリンダと、前記シリンダ内の第1の空間に接続された第1のバルブ機構と、前記シリンダ内の第2の空間に接続された第2のバルブ機構とを有して、
前記第1のバルブ機構を介して前記第1の空間にエアを供給しながら、前記第2のバルブ機構を介して前記第2の空間からエアが排出されることによって、前記弁体が前記開口部を閉塞する一の方向に向かって前記シリンダ内のピストンを押圧移動させる一方、
前記第2のバルブ機構を介して前記第2の空間にエアを供給しながら、前記第1のバルブ機構を介して前記第1の空間からエアが排出されることによって、前記弁体が前記開口部を開放する他の方向に向かって前記シリンダ内のピストンを押圧移動させるエアシリンダ機構であって、
前記エアシリンダ機構は、前記シリンダ内のピストンが前記一の方向の端部に到達する直前に、前記第2のバルブ機構を流れるエアの流量を絞って排気する一方、
前記シリンダ内のピストンが前記他の方向の端部に到達する直前に、前記第2のバルブ機構を流れるエアの流量を絞って排気することを特徴とするインライン式成膜装置。
(2) 前記第1のバルブ機構は、前記シリンダ内の第1の空間に並列に接続された第1の開閉バルブ及び第1の流量調整バルブを有し、
前記第2のバルブ機構は、前記シリンダ内の第2の空間に並列に接続された第2の開閉バルブ及び第2の流量調整バルブを有し、
前記エアシリンダ機構は、前記第1の開閉バルブ及び第1の流量調整バルブを介して前記第1の空間にエアを供給しながら、前記第2の開閉バルブ及び第2の流量調整バルブを介して前記第2の空間からエアが排出されることによって、前記弁体が前記開口部を閉塞する一の方向に向かって前記シリンダ内のピストンを押圧移動させ、このピストンが前記一の方向の端部に到達する直前に、前記第2の開閉バルブを全閉することによって前記第2の流量調整バルブのみで排気する一方、
前記第2の開閉バルブ及び第2の流量調整バルブを介して前記第2の空間にエアを供給しながら、前記第1の開閉バルブ及び第1の流量調整バルブを介して前記第1の空間からエアが排出されることによって、前記弁体が前記開口部を開放する他の方向に向かって前記シリンダ内のピストンを押圧移動させ、このピストンが前記他の方向の端部に到達する直前に、前記第1の開閉バルブを全閉することによって前記第1の流量調整バルブのみで排気することを特徴とする前項(1)に記載のインライン式成膜装置。
(3) 前記第1及び第2の開閉バルブが電磁バルブであり、前記第1及び第2の流量調整バルブがニードルバルブであることを特徴とする前項(2)に記載のインライン式成膜装置。
(4) 前記弁体と一体に移動する移動体と、前記移動体が係合されるガイド孔とを有して、前記移動体が前記ガイド孔内を移動することによって、前記弁体を前記通路の分断方向に移動可能に案内するガイド機構を備え、
前記ガイド機構は、前記移動体が前記ガイド孔の少なくとも一方の端部に位置するとき、当該移動体と当接される樹脂ストッパを有することを特徴とする前項(2)又は(3)に記載のインライン式成膜装置。
(5) 前項(1)〜(4)の何れか一項に記載のインライン式成膜装置を用いて、前記基板の表面に少なくとも磁性層を形成する工程を含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
(6) 複数のチャンバの間で通路の開閉を行うゲートバルブであって、
前記通路を形成する開口部が設けられた一対の隔壁と、前記一対の隔壁の間で移動操作される弁体と、前記開口部を閉塞する位置と前記開口部を開放する位置との間で前記弁体を駆動する駆動機構とを有し、
前記駆動機構は、前記弁体に接続されたピストンと、前記ピストンが配置されるシリンダと、前記シリンダ内の第1の空間に接続された第1のバルブ機構と、前記シリンダ内の第2の空間に接続された第2のバルブ機構とを有して、
前記第1のバルブ機構を介して前記第1の空間にエアを供給しながら、前記第2のバルブ機構を介して前記第2の空間からエアが排出されることによって、前記弁体が前記開口部を閉塞する一の方向に向かって前記シリンダ内のピストンを押圧移動させる一方、
前記第2のバルブ機構を介して前記第2の空間にエアを供給しながら、前記第1のバルブ機構を介して前記第1の空間からエアが排出されることによって、前記弁体が前記開口部を開放する他の方向に向かって前記シリンダ内のピストンを押圧移動させるエアシリンダ機構であって、
前記エアシリンダ機構は、前記シリンダ内のピストンが前記一の方向の端部に到達する直前に、前記第2のバルブ機構を流れるエアの流量を絞って排気する一方、
前記シリンダ内のピストンが前記他の方向の端部に到達する直前に、前記第2のバルブ機構を流れるエアの流量を絞って排気することを特徴とするゲートバルブ。
(7) 前記第1のバルブ機構は、前記シリンダ内の第1の空間に並列に接続された第1の開閉バルブ及び第1の流量調整バルブを有し、
前記第2のバルブ機構は、前記シリンダ内の第2の空間に並列に接続された第2の開閉バルブ及び第2の流量調整バルブを有し、
前記エアシリンダ機構は、前記第1の開閉バルブ及び第1の流量調整バルブを介して前記第1の空間にエアを供給しながら、前記第2の開閉バルブ及び第2の流量調整バルブを介して前記第2の空間からエアが排出されることによって、前記弁体が前記開口部を閉塞する一の方向に向かって前記シリンダ内のピストンを押圧移動させ、このピストンが前記一の方向の端部に到達する直前に、前記第2の開閉バルブを全閉することによって前記第2の流量調整バルブのみで排気する一方、
前記第2の開閉バルブ及び第2の流量調整バルブを介して前記第2の空間にエアを供給しながら、前記第1の開閉バルブ及び第1の流量調整バルブを介して前記第1の空間からエアが排出されることによって、前記弁体が前記開口部を開放する他の方向に向かって前記シリンダ内のピストンを押圧移動させ、このピストンが前記他の方向の端部に到達する直前に、前記第1の開閉バルブを全閉することによって前記第1の流量調整バルブのみで排気することを特徴とする前項(6)に記載のゲートバルブ。
(8) 前記第1及び第2の開閉バルブが電磁バルブであり、前記第1及び第2の流量調整バルブがニードルバルブであることを特徴とする前項(7)に記載のゲートバルブ。
(9) 前記弁体と一体に移動する移動体と、前記移動体が係合されるガイド孔とを有し、前記移動体が前記ガイド孔内を移動することによって、前記弁体を前記通路の分断方向に移動可能に案内するガイド機構を備え、
前記ガイド機構は、前記移動体が前記ガイド孔の少なくとも一方の端部に位置するとき、当該移動体と当接される樹脂ストッパを有することを特徴とする前項(7)又は(8)に記載のゲートバルブ。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明に係るインライン式成膜装置では、シリンダ内のピストンが一の方向の端部に到達する直前に、第2のバルブ機構を流れるエアの流量を絞って排気する一方、シリンダ内のピストンが他の方向の端部に到達する直前に、第1のバルブ機構を流れるエアの流量を絞って排気することで、ゲートバルブの開閉動作に伴う振動等の発生を抑制することが可能であり、これによってキャリアに保持された基板に傷等が生じたりすることを防ぐと共に、ゲートバルブの開閉動作を高速で行うことが可能である。
【0016】
また、本発明に係る磁気記録媒体の製造方法では、このようなインライン式成膜装置を用いることによって、磁気記録媒体の製造能力を高めると共に、高品質の磁気記録媒体を製造することが可能である。
【0017】
また、本発明に係るゲートバルブでは、振動の発生を抑制しながら、通路を高速で開閉することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を適用して製造される磁気記録媒体の一例を示す断面図である。
【図2】磁気記録再生装置の一例を示す断面図である。
【図3】本発明を適用したインライン式成膜装置の構成を示す平面図である。
【図4】本発明を適用したインライン式成膜装置のキャリアを示す側面図である。
【図5】本発明を適用したインライン式成膜装置の要部を示す側面図である。
【図6】本発明を適用したインライン式成膜装置の要部を示す断面図である。
【図7】ゲートバルブの構成及び動作を説明するための図であり、弁体が通路を開放した状態を示す断面図である。
【図8】ゲートバルブの構成及び動作を説明するための図であり、弁体が通路と対向した状態を示す断面図である。
【図9】ゲートバルブの構成及び動作を説明するための図であり、弁体が通路を閉塞した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本実施形態では、複数のチャンバの間で成膜対象となる基板を順次搬送させながら成膜処理を行うインライン式成膜装置を用いて、ハードディスク装置に搭載される磁気記録媒体を製造する場合を例に挙げて説明する。
【0020】
(磁気記録媒体)
本発明を適用して製造される磁気記録媒体は、例えば図1に示すように、非磁性基板80の両面に、軟磁性層81、中間層82、記録磁性層83及び保護層84が順次積層された構造を有し、更に最表面に潤滑膜85が形成されてなる。また、軟磁性層81、中間層82及び記録磁性層83によって磁性層810が構成されている。
【0021】
非磁性基板80としては、Alを主成分とした例えばAl−Mg合金等のAl合金基板や、通常のソーダガラス、アルミノシリケート系ガラス、結晶化ガラス類、シリコン、チタン、セラミックス、各種樹脂からなる基板など、非磁性基板であれば任意のものを用いることができる。
【0022】
その中でも、Al合金基板や、結晶化ガラス等のガラス製基板、シリコン基板を用いることが好ましく、また、これら基板の平均表面粗さ(Ra)は、1nm以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.5nm以下であり、その中でも特に0.1nm以下であることが好ましい。
【0023】
磁性層810は、面内磁気記録媒体用の面内磁性層でも、垂直磁気記録媒体用の垂直磁性層でもかまわないが、より高い記録密度を実現するためには垂直磁性層が好ましい。また、記録磁性層83は、主としてCoを主成分とする合金から形成するのが好ましい。例えば、垂直磁気記録媒体用の磁性層810としては、例えば軟磁性のFeCo合金(FeCoB、FeCoSiB、FeCoZr、FeCoZrB、FeCoZrBCuなど)、FeTa合金(FeTaN、FeTaCなど)、Co合金(CoTaZr、CoZrNB、CoBなど)等からなる軟磁性層81と、Ru等からなる中間層82と、60Co−15Cr−15Pt合金や70Co−5Cr−15Pt−10SiO合金からなる記録磁性層83とを積層したものを利用できる。また、軟磁性層81と中間層82との間にPt、Pd、NiCr、NiFeCrなどからなる配向制御膜を積層してもよい。一方、面内磁気記録媒体用の磁性層810としては、非磁性のCrMo下地層と強磁性のCoCrPtTa磁性層とを積層したものを利用できる。
【0024】
磁性層810の全体の厚さは、3nm以上20nm以下、好ましくは5nm以上15nm以下とし、磁性層810は使用する磁性合金の種類と積層構造に合わせて、十分なヘッド出入力が得られるように形成すればよい。磁性層810の膜厚は、再生の際に一定以上の出力を得るにはある程度以上の磁性層の膜厚が必要であり、一方で記録再生特性を表す諸パラメーターは出力の上昇とともに劣化するのが通例であるため、最適な膜厚に設定する必要がある。
【0025】
保護層84としては、炭素(C)、水素化炭素(HC)、窒素化炭素(CN)、アルモファスカーボン、炭化珪素(SiC)等の炭素質層やSiO、Zr、TiNなど、通常用いられる保護層材料を用いることができる。また、保護層84は、2層以上の層から構成されていてもよい。保護層84の膜厚は、10nm未満とする必要がある。保護層84の膜厚が10nmを越えるとヘッドと記録磁性層83との距離が大きくなり、十分な出入力信号の強さが得られなくなるからである。
【0026】
潤滑膜85に用いる潤滑剤としては、フッ素系潤滑剤、炭化水素系潤滑剤及びこれらの混合物等を挙げることができ、通常は1〜4nmの厚さで潤滑層85を形成する。
【0027】
(磁気記録再生装置)
また、上記磁気記録媒体を用いた磁気記録再生装置としては、例えば図2に示すようなハードディスク装置を挙げることができる。このハードディスク装置は、上記磁気記録媒体である磁気ディスク86と、磁気ディスク86を回転駆動させる媒体駆動部87と、磁気ディスク86に情報を記録再生する磁気ヘッド88と、ヘッド駆動部89と、記録再生信号処理系90とを備えている。そして、磁気再生信号処理系90は、入力されたデータを処理して記録信号を磁気ヘッド88に送り、磁気ヘッド88からの再生信号を処理してデータを出力する。
【0028】
(インライン式成膜装置)
具体的に、上記磁気記録媒体を製造する際は、例えば図3に示すような本発明を適用したインライン式成膜装置(磁気記録媒体の製造装置)を用いて、成膜対象となる非磁性基板80の両面に、少なくとも軟磁性層81、中間層82及び記録磁性層83、保護層を順次積層し、磁性層810を形成する工程と、保護層84を形成する工程とを経ることによって、品質の高い磁気記録媒体を安定して得ることができる。
【0029】
具体的に、本発明を適用したインライン式成膜装置は、ロボット台1と、ロボット台1上に截置された基板移載ロボット3と、ロボット台1に隣接する基板供給ロボット室2と、基板供給ロボット室2内に配置された基板供給ロボット34と、基板供給ロボット室2に隣接する基板取り付け室52と、キャリア25を回転させるコーナー室4、7、14、17と、各コーナー室4、7、14、17の間に配置された複数のチャンバ5、6、8〜13、15、16、18〜21と、チャンバ21に隣接して配置された基板取り外し室53と、基板取り外し室53に隣接して配置された基板取り外しロボット室22と、基板取り外しロボット室22内に設置された基板取り外しロボット49とを有している。
【0030】
また、これら各室の接続部には、ゲートバルブ55〜72が設けられ、これらゲートバルブ55〜72が閉状態のとき、各チャンバ内は、それぞれ独立の密閉空間となる。そして、これら各室の間で後述する搬送機構によりキャリア25を順次搬送させながら、各チャンバ5、6、8〜13、15、16、18〜21内において、キャリア25に保持された非磁性基板80の両面に、上述した軟磁性層81、中間層82及び記録磁性層83、及び保護層84を順次成膜することによって、最終的に上記図1に示す磁気記録媒体が得られるように構成されている。また、各コーナー室4、7、14、17は、キャリア25の移動方向を変更する室であり、その内部にキャリア25を回転させて次のチャンバに移動させる機構が設けられている。
【0031】
基板移載ロボット3は、成膜前の非磁性基板80が収納されたカセットから、基板取り付け室2に非磁性基板80を供給するとともに、基板取り外しロボット室22で取り外された成膜後の非磁性基板80(磁気記録媒体)を取り出す。この基板取り付け・取り外しロボット室2、22の一側壁には、外部に開放された開口を開閉する扉51、55が設けられている。
【0032】
基板取り付け室52の内部では、基板供給ロボット34を用いて成膜前の非磁性基板80がキャリア25に保持される。一方、基板取り外し室53の内部では、基板取り外しロボット49を用いて、キャリア25に保持された成膜後の非磁性基板80(磁気記録媒体)が取り外される。
【0033】
上記磁気記録媒体を作製するための成膜処理等を行う各チャンバ5、6、8〜13、15、16、18〜21の構成ついては、処理内容に応じて処理装置の構成が異なる以外は基本的に同様であることから、その具体的な構成については、図5に示すチャンバ91においてまとめて説明するものとする。
【0034】
このチャンバ91には、図5に示すように、キャリア25に保持された非磁性基板80に対して成膜処理を行う2つの処理装置92が、キャリア25を挟んだ両側において互いに対向配置されている。
【0035】
2つの処理装置92は、例えば、成膜処理をスパッタリングによって行う場合は、スパッタ放電を生じさせるためのカソードユニット、成膜処理をCVD法によって行う場合は、CVD法による成膜空間を形成するための電極ユニット、成膜処理をPVD法によって行う場合は、イオンガン等から構成されている。
【0036】
また、チャンバ91には、内部に原料ガスや雰囲気ガスを導入するガス導入管93が設けられている。また、このガス導入管93には、図示しない制御機構によって開閉が制御されるバルブ94が設けられ、このバルブ94を開閉操作することにより、ガス導入管93からのガスの供給が制御される。
【0037】
また、チャンバ91には、それぞれ真空ポンプ(図示せず。)と接続されたガス排出管95が設けられている。そして、チャンバ91は、この真空ポンプに接続されたガス排出管95を通じて内部を減圧排気することが可能となっている。
【0038】
キャリア25は、図4及び図6に示すように、支持台26と、支持台26の上面に設けられた複数のホルダ27とを有している。なお、本実施形態では、ホルダ27を2基搭載した構成のため、これらホルダ27に保持される2枚の非磁性基板80を、それぞれ第1成膜用基板23及び第2成膜用基板24として扱うものとする。
【0039】
また、本実施形態では、例えば、図4中の実線で示す第1処理位置にキャリア25が停止した状態において、2つの処理装置91がキャリア25の左側の第1成膜用基板23の両面に対して成膜処理等を行い、その後、キャリア25が図5中の破線で示す第2処理位置に移動し、この第2処理位置にキャリア25が停止した状態において、2つの処理装置91がキャリア25の右側の第2成膜用基板24の両面に対して成膜処理等を行うことができる。
【0040】
なお、キャリア25を挟んだ両側に、それぞれ第1及び第2成膜用基板23、24に対向した4つの処理装置92がある場合は、キャリア25の移動は不要となり、キャリア25に保持された第1及び第2成膜用基板23、24に対して同時に成膜処理等を行うことができる。
【0041】
2つのホルダ27は、第1及び第2成膜用基板23、24が縦置き(基板23,24の主面が重力方向と平行となる状態)に保持されるように、すなわち第1及び第2成膜用基板23、24の主面が支持台26の上面に対して略直交し、且つ、略同一面上となるように、支持台26の上面に並列して設けられている。
【0042】
各ホルダ27は、第1及び第2成膜用基板23,24の厚さの1〜数倍程度の厚さを有する板体28に、これら成膜用基板23、24の外周より若干大径となされた円形状の孔部29が形成されてなる。
【0043】
また、各ホルダ27の孔部29の周囲には、複数の支持部材30が弾性変形可能に取り付けられている。これら支持部材30は、孔部29の内側に配置された第1及び第2成膜用基板23,24の外周部を、その外周上の最下位に位置する下部側支点と、この下部側支点を通る重力方向に沿った中心線に対して対称となる外周上の上部側に位置する一対の上部側支点との3点で支持するように、ホルダ27の孔部29の周囲に一定の間隔で3つ並んで設けられている。
【0044】
これにより、キャリア25は、3つの支持部材30に第1及び第2成膜用基板23、24の外周部を当接させながら、これら支持部材30の内側に嵌め込まれた第1及び第2成膜用基板23、24を着脱自在にホルダ27に保持することが可能となっている。また、ホルダ27に対する第1及び第2成膜用基板23、24の着脱は、上記基板供給ロボット34又は基板取り外しロボット49が下部側支点の支持部材30を下方に押し下げることにより行われる。
【0045】
各支持部材30は、図6に示すように、L字状に折り曲げられたバネ部材からなり、その基端側がホルダ27に固定支持されると共に、その先端側が孔部29の内側に向かって突出された状態で、それぞれホルダ27の孔部29の周囲に形成されたスリット31内に配置されている。また、各支持部材30の先端部には、図示を省略するものの、それぞれ第1及び第2成膜用基板23,24の外周部が係合されるV字状の溝部が設けられている。
【0046】
インライン式成膜装置は、図5及び図6に示すように、このようなキャリア25を搬送させる搬送機構として、キャリア25を非接触状態で駆動する駆動機構201を備えている。
【0047】
この駆動機構201は、キャリア25の下部にN極とS極とが交互に並ぶように配置された複数の磁石202と、その下方にキャリア25の搬送方向に沿って配置された回転磁石203とを備え、この回転磁石203の外周面には、N極とS極とが二重螺旋状に交互に並んで形成されている。
【0048】
また、複数の磁石202と回転磁石203との間には、真空隔壁204が介在されている。この真空隔壁204は、複数の磁石202と回転磁石203とが磁気的に結合されるように透磁率の高い材料で形成されている。また、真空隔壁204は、回転磁石203の周囲を囲むことによって、チャンバ91の内側と大気側とを隔離している。
【0049】
また、回転磁石203は、回転モータ205により回転駆動される回転軸206と互いに噛合される複数のギアを介して連結されている。これにより、回転モータ205からの駆動力を回転軸206を介して回転磁石203に伝達しながら、この回転磁石203を軸回りに回転させることが可能となっている。
【0050】
以上のように構成される駆動機構201は、キャリア25側の磁石202と回転磁石203とを非接触で磁気的に結合させながら、回転磁石203を軸回りに回転させることにより、キャリア25を回転磁石203の軸方向に沿って直線駆動する。
【0051】
また、チャンバ91内には、搬送されるキャリア25をガイドするガイド機構として、水平軸回りに回転自在に支持された複数の主ベアリング96がキャリア25の搬送方向に並んで設けられている。一方、キャリア25は、支持台26の下部側に複数の主ベアリング96が係合されるガイドレール97を有しており、このガイドレール97には、V字状の溝部が支持台26の長手方向に沿って形成されている。
【0052】
また、チャンバ91内には、垂直軸回りに回転自在に支持された一対の副ベアリング98が、その間にキャリア25を挟み込むようにして設けられている。これら一対の副ベアリング98は、複数の主ベアリング96と同様に、キャリア25の搬送方向に複数並んで設けられている。
【0053】
なお、主ベアリング96及び副ベアリング98は、機械部品の摩擦を減らし、スムーズな機械の回転運動を確保する軸受であって、具体的には転がり軸受からなり、チャンバ91内に設けられたフレーム(取付部材)に固定された支軸(図5において図示せず。)に回転自在に取り付けられている。
【0054】
キャリア25は、ガイドレール97に複数の主ベアリング96を係合させた状態で、これら複数の主ベアリング96の上を移動すると共に、一対の副ベアリング98の間に挟み込まれることによって、その傾きが防止されている。
【0055】
ところで、本発明を適用したインライン式成膜装置は、図7〜図9に示すようなゲートバルブ100を備えている。なお、上記各ゲートバルブ55〜72については、基本的にゲートバルブ100と同様な構成を有することから、その具体的な構成については、ゲートバルブ100によってまとめて説明するものとする。また、図7〜図9は、ゲートバルブ100を上面側から見た断面図である。
【0056】
このゲートバルブ100は、キャリア25が通過する通路101を形成する開口部102a,102bが設けられた一対の隔壁103A,103Bと、一対の隔壁103A,103Bの間で移動操作される弁体104と、開口部102bを閉塞する位置と開口部102bを開放する位置との間で弁体104を駆動する駆動機構105とを備えている。
【0057】
弁体104は、開口部102bを閉塞するのに足る大きさで略矩形状に形成された平板部材であり、この弁体104の開口部102bと対向する面には、開口部102bを囲む位置にて隔壁103Bに押し付けられるシール部材106が設けられている。
【0058】
シール部材106は、フッ素ゴム等のゴム製又は樹脂製の弾性部材をリング状に形成したOリングからなる。このシール部材106は、弁体104の開口部102bと対向する面に設けられた溝部に嵌め込まれた状態で取り付けられている。また、シール部材106は、その一部が溝部の外側にはみ出すように配置されている。
【0059】
また、ゲートバルブ100は、弁体104を通路101の分断方向に移動可能に案内するガイド機構107と、開口部102bと対向する位置にて弁体104を隔壁103Bと接離可能な方向に傾動可能に案内するカム機構108とを備えている。
【0060】
具体的に、弁体104は、通路101を分断する方向に延長されたアーム109の先端に、当該アーム107と直交した状態(いわゆるT字状)で取り付けられている。
【0061】
ガイド機構107は、アーム109の中間部に設けられて弁体104と一体に移動するガイドプレート(移動体)110と、このガイドプレート110が係合されるガイド孔111とを有し、ガイドプレート110がガイド孔111内を移動することによって、弁体104を通路101の分断方向に移動可能に案内する。
【0062】
カム機構108は、アーム109の基端部に設けられて弁体104と一体に移動するカムプレート(移動体)112と、このカムプレート112が係合されるカム孔113とを有し、カムプレート112がカム孔113内を移動することによって、弁体104を隔壁103Bと接離可能な方向に傾動可能に案内する。
【0063】
駆動機構105は、駆動力にエア圧を利用したエアシリンダ機構であり、アーム107の基端部に接続されたピストン114と、このピストン114が配置されるシリンダ115と、このシリンダ115内の第1の空間S1に並列に接続された第1の開閉バルブ116a及び第1の流量調整バルブ116bからなる第1のバルブ機構116と、第1の開閉バルブ116a及び第1の流量調整バルブ116bへのエアの供給又は排出を切り替える切替バルブ116cと、このシリンダ115内の第2の空間S2に並列に接続された第2の開閉バルブ117a及び第2の流量調整バルブ117bからなる第2のバルブ機構117と、第2の開閉バルブ117a及び第2の流量調整バルブ117bへのエアの供給又は排出を切り替える切替バルブ117cとを有している。
【0064】
具体的に、第1の空間S1は、シリンダ115内のピストン114を挟んだ弁体104とは反対側(図7〜9中の下側)に形成される空間であり、第2の空間S2は、シリンダ115内のピストン114を挟んだ弁体104側(図7〜9中の上側)に形成される空間である。そして、第1及び第2の開閉バルブ116a,117aには、流路の開閉のみを行う電磁バルブが用いられ、第1及び第2の流量調整バルブ116b,117bには、流路の開閉に加えて流路を流れるエアの流量調整が可能なニードルバルブが用いられている。
【0065】
以上のような構造を有するゲートバルブ100では、図7に示すように、通路101の開口部102bが開放された状態から、駆動機構105により弁体104を通路101の分断方向の一方側(図7〜9中の上方側)に移動させる。
【0066】
このとき、駆動機構105は、第1の切替バルブ116cから第1の開閉バルブ116a及び第1の流量調整バルブ116bを介して第1の空間S1にエアを供給しながら、第2の切替バルブ117cから第2の開閉バルブ117a及び第2の流量調整バルブ117bを介して第2の空間S2からエアが排出されることによって、シリンダ115内のピストン114を一の方向(図7〜9中の上方)に向かって押圧移動させる。
【0067】
これにより、弁体104は、図8に示すように、ガイド機構107により案内されながら、隔壁103Bの開口部102bと対向する位置まで移動される。そして、更に駆動機構105がシリンダ115内のピストン114を一の方向(図7〜9中の上方)に向かって押圧移動させる。
【0068】
これにより、弁体104は、図9に示すように、カム機構108により案内されながら、隔壁103Bと近接する方向に向かって傾動する。そして、弁体104は、最終的に隔壁103Bにシール部材105を圧接させた状態で開口部102bを閉塞する。
【0069】
これにより、インライン式成膜装置では、このゲートバルブ100を介して接続された2つのチャンバ間に設けられた通路101を閉塞することが可能となっている。また、チャンバ同士を独立した圧力に維持するために行われるゲートバルブ100の閉動作(プロセス閉)と共に、整備時に大気側と真空側とを隔離するために行われるゲートバルブ100の閉動作(大気閉)を行うことが可能となっている。
【0070】
一方、ゲートバルブ100では、上述した動作とは逆の動作によって、通路101を開放することが可能である。すなわち、このゲートバルブ100では、図9に示すように、弁体104により通路101の開口部102bが閉塞された状態から、駆動機構105により弁体104を通路101の分断方向の他方側(図7〜9中の下方側)に移動させる。
【0071】
このとき、駆動機構105は、第2の切替バルブ117cから第2の開閉バルブ117a及び第2の流量調整バルブ117bを介して第2の空間S2にエアを供給しながら、第1の切替バルブ116cから第1の開閉バルブ116a及び第1の流量調整バルブ116bを介して第1の空間S1からエアが排出されることによって、弁体104が開口部102bを開放する他の方向(図7〜9中の下方)に向かってシリンダ115内のピストン114を押圧移動させる。
【0072】
これにより、弁体104は、図8に示すように、カム機構108により案内されながら、隔壁103Bと離間する方向に向かって傾動し、隔壁103Bの開口部102bと対向する位置まで移動する。そして、更に駆動機構105がシリンダ115内のピストン114を他の方向(図7〜9中の下方)に向かって押圧移動させる。
【0073】
これにより、弁体104は、図7に示すように、ガイド機構107により案内されながら、通路101の分断方向の他方側(図7〜9中の下方側)へと移動する。そして、弁体104は、最終的に隔壁103Bの開口部102bを開放する位置まで移動する。
【0074】
これにより、インライン式成膜装置では、キャリア25の搬送時に、このゲートバルブ100を介して接続された2つのチャンバ間に設けられた通路101を開放することが可能となっている。なお、このようなゲートバルブ100は、各チャンバの間に2つ配置されており、他方の隔壁103Aに設けられた開口部102aも同様に開閉することが可能となっている。
【0075】
ところで、本発明を適用したゲートバルブ100では、弁体104により通路101を閉塞する際に、シリンダ115内のピストン114が一の方向(一方)の端部に到達する直前に、第2の開閉バルブ117aを全閉することによって第2の流量調整バルブ117bのみで排気する。これにより、シリンダ115内のピストン114が一方の端部に到達したとき、このシリンダ115の一方の端部とピストン114とが接触することにより発生する振動を抑制することができる。
【0076】
すなわち、上記駆動機構5では、シリンダ115内のピストン114が一方の端部に到達する直前に、第2のバルブ機構117によってシリンダ115内の第2の空間S2から排出されるエアの流量を絞り込む(低下させる)ことで、シリンダ115内で一の方向へと向かうピストン114の排気抵抗が増すことになる。そして、この排気抵抗がいわゆるエアークッションの役割をすることで、シリンダ115の一方の端部とピストン114との接触による衝撃を緩和し、振動の発生を抑制することが可能となる。
【0077】
また、本発明を適用したゲートバルブ100では、弁体104により通路101を開放する際も同様に、シリンダ115内のピストン114が他の方向(他方)の端部に到達する直前に、第1の開閉バルブ116aを全閉することによって第1の流量調整バルブ116bのみで排気する。これにより、シリンダ115内のピストン114が他方の端部に到達したとき、このシリンダ115の他方の端部とピストン114とが接触することにより発生する振動を抑制することができる。
【0078】
すなわち、上記駆動機構5では、シリンダ115内のピストン114が他方の端部に到達する直前に、第1のバルブ機構116によってシリンダ115内の第1の空間S1から排出されるエアの流量を絞り込む(低下させる)ことで、シリンダ115内で他の方向へと向かうピストン114の排気抵抗が増すことになる。そして、この排気抵抗がいわゆるエアークッションの役割をすることで、シリンダ115の他方の端部とピストン114との接触による衝撃を緩和し、振動の発生を抑制することが可能となる。
【0079】
さらに、上記ガイド機構107には、ガイドプレート110がガイド孔111の一方の端部まで位置したときに、このガイドプレート110と当接される樹脂ストッパ118が配置されている。
【0080】
この場合も、ガイドプレート110とガイド孔111の一方の端部との接触による衝撃を樹脂ストッパ118により緩和し、シリンダ115内のピストン114が上方側の端部に到達したときの振動の発生を抑制することが可能である。
【0081】
なお、このような樹脂ストッパ118は、上述したガイド孔111の一方の端部以外にも、ガイド孔111の他方の端部に設けることが可能である。この場合、ガイドプレート110とガイド孔111の他方の端部との接触による衝撃を樹脂ストッパ118により緩和し、シリンダ115内のピストン114が他方の端部に到達したときの振動の発生を抑制することが可能である。
【0082】
また、本発明では、上記駆動機構5における可動部分の軽量化を図ることで、上記ゲートバルブ100の開閉動作に伴う振動の発生を更に抑制することが可能である。
【0083】
以上のように、本発明を適用したインライン式成膜装置では、上記ゲートバルブ100によってキャリア25が通過する通路101を開閉する動作を高速で行うことが可能である。また、ゲートバルブ100が通路101を開閉する際の振動等の発生を抑制することが可能なため、キャリア25に保持された非磁性基板80に傷等が生じたりすることを防ぐことが可能である。
【0084】
なお、本発明は、上記実施形態のものに必ずしも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
すなわち、本発明では、上述したシリンダ115内のピストン114が一の方向の端部に到達する直前に、第2のバルブ機構117により第2の空間S2から排出されるエアの流量を絞り込む一方、シリンダ115内のピストン114が他の方向の端部に到達する直前に、第1のバルブ機構116により第1の空間S1から排出されるエアの流量を絞り込む構成であればよい。
【0085】
例えば、本発明では、上記第1のバルブ機構116を構成する第1の開閉バルブ116a及び第1の流量調整バルブ116bと、上記第2のバルブ機構117を構成する第2の開閉バルブ117a及び第2の流量調整バルブ117bとのうち、第1及び第2の開閉バルブ116a,117aを省略した構成とし、シリンダ115内のピストン114が一の方向の端部に到達する直前に、第2の流量調整バルブ117bにより第2の空間S2から排出されるエアの流量を絞り込む一方、シリンダ115内のピストン114が他の方向の端部に到達する直前に、第1の流量調整バルブ116bにより第1の空間S1から排出されるエアの流量を絞り込む構成とすることも可能である。
【0086】
(磁気記録媒体の製造方法)
本発明を適用した磁気記録媒体の製造方法は、上記インライン式成膜装置を用いて、キャリア25に保持された第1又は第2成膜用基板23、24(非磁性基板80)を複数のチャンバ2、52、4〜20、54、3Aの間で順次搬送させながら、この非磁性基板80の両面に、軟磁性層81、中間層82、記録磁性層83により構成される磁性層810と、保護層84とを順次積層し、更に最表面に潤滑膜85を形成することによって、磁気記録媒体を製造する。
【0087】
本発明を適用した磁気記録媒体の製造方法では、上記インライン式成膜装置を用いることによって、磁気記録媒体80の製造能力を高めると共に、高品質の磁気記録媒体80を製造することが可能である。
【実施例】
【0088】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0089】
本実施例では、実際に上記図7〜図9に示すゲートバルブ100を用いて、キャリア25が通過する通路101を開閉動作させた際に、本発明のように、シリンダ115内のピストン114が一方又は他方の端部に到達する直前に、第2又は第1の開閉バルブ117a,116aを全閉することによって第2又は第1の流量調整バルブ117b,116bのみで排気する場合(実施例1)と、従来のように、シリンダ115内のピストン114が一方又は他方の端部に到達する直前に、そのような動作を行わない場合(比較例1)とのゲートバルブ100の開閉動作に伴う振動について測定を行った。
【0090】
なお、本実施例では、ゲートバルブ100のシリンダ115の底部に加速度センサ(リオン社製、PV−93B)を取り付けて、デジタルオシロレコーダ(NEC三栄社製、RA1300 RT3214)を用いて、ゲートバルブ100の開閉動作に伴う振動(最大加速度)を測定した。また、ゲートバルブ100の開動作(又は閉動作)にかかる時間をゲートバルブ100に加えるガス圧によって調整した。
【0091】
(実施例1)
実施例1では、ゲートバルブ100の閉動作時に当該ゲートバルブ100に生ずる最大加速度は、動作速度0.35秒時で2.8m/秒、動作速度0.31秒時で2.9m/秒、動作速度0.25秒時で5.5m/秒であった。一方、ゲートバルブ100の開動作時に当該ゲートバルブ100に生ずる最大加速度は、動作速度0.45秒時で2.1m/秒、動作速度0.29秒時で3.4m/秒、動作速度0.27秒時で4.0m/秒であった。
【0092】
(比較例1)
比較例1では、ゲートバルブ100の閉動作時に当該ゲートバルブ100に生ずる最大加速度は、動作速度0.35秒時で4.2m/秒、動作速度0.31秒時で7.2m/秒、動作速度0.25秒時で8.0m/秒であった。一方、ゲートバルブ100の開動作時に当該ゲートバルブ100に生ずる最大加速度は、動作速度0.45秒時で2.1m/秒、動作速度0.29秒時で4.3m/秒、動作速度0.27秒時で7.8m/秒であった。
【0093】
以上のように、本発明の流量の絞り込み動作を行った場合は、従来のように流量の絞り込み動作を行わなかった場合よりも、ゲートバルブの開閉動作に伴う振動を大幅に抑制することが可能となった。
【符号の説明】
【0094】
1…基板移載ロボット台
2…基板供給ロボット室
3…基板カセット移載ロボット
4、7、14、17…コーナー室
5、6、8〜13、15、16、18〜21…チャンバ
22…基板取り外しロボット室
23…第1成膜用基板
24…第2成膜用基板
25…キャリア
26…支持台
27…ホルダ
28…板体
29…円形状の孔部
30…支持部材
34…基板供給ロボット
49…基板取り外しロボット
52…基板取り付け室
54…基板取り外し室
55〜71…ゲートバルブ
80…非磁性基板
81…軟磁性層
82…中間層
83…記録磁性層
84…保護層
85…潤滑膜
91…チャンバ
810…磁性層
100…ゲートバルブ
101…通路
102a,102b…開口部
103A,103B…隔壁
104…弁体
105…駆動機構(エアシリンダ機構)
106…シール部材
107…ガイド機構
108…カム機構
109…アーム
110…ガイドプレート(移動体)
111…ガイド孔
112…ガイドプレート(移動体)
113…カム孔
114…ピストン
115…シリンダ
116…第1のバルブ機構
116a…第1の開閉バルブ
116b…第1の流量調整バルブ
116c…第1の切替バルブ
117…第2のバルブ機構
117a…第2の開閉バルブ
117b…第2の流量調整バルブ
117c…第2の切替バルブ
118…樹脂ストッパ
201…駆動機構(搬送機構)
202…磁石
203…回転磁石
204…真空隔壁
205…回転モータ
206…回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜処理を行う複数のチャンバと、
前記複数のチャンバ内で成膜対象となる基板を保持するキャリアと、
前記キャリアを前記複数のチャンバの間で順次搬送させる搬送機構と、
前記複数のチャンバの間に設けられて、前記キャリアが通過する通路を開閉するゲートバルブとを備え、
前記ゲートバルブは、前記通路を形成する開口部が設けられた一対の隔壁と、前記一対の隔壁の間で移動操作される弁体と、前記開口部を閉塞する位置と前記開口部を開放する位置との間で前記弁体を駆動する駆動機構とを有し、
前記駆動機構は、前記弁体に接続されたピストンと、前記ピストンが配置されるシリンダと、前記シリンダ内の第1の空間に接続された第1のバルブ機構と、前記シリンダ内の第2の空間に接続された第2のバルブ機構とを有して、
前記第1のバルブ機構を介して前記第1の空間にエアを供給しながら、前記第2のバルブ機構を介して前記第2の空間からエアが排出されることによって、前記弁体が前記開口部を閉塞する一の方向に向かって前記シリンダ内のピストンを押圧移動させる一方、
前記第2のバルブ機構を介して前記第2の空間にエアを供給しながら、前記第1のバルブ機構を介して前記第1の空間からエアが排出されることによって、前記弁体が前記開口部を開放する他の方向に向かって前記シリンダ内のピストンを押圧移動させるエアシリンダ機構であって、
前記エアシリンダ機構は、前記シリンダ内のピストンが前記一の方向の端部に到達する直前に、前記第2のバルブ機構により前記第2の空間から排出されるエアの流量を絞り込む一方、
前記シリンダ内のピストンが前記他の方向の端部に到達する直前に、前記第1のバルブ機構により前記第1の空間から排出されるエアの流量を絞り込むことを特徴とするインライン式成膜装置。
【請求項2】
前記第1のバルブ機構は、前記シリンダ内の第1の空間に並列に接続された第1の開閉バルブ及び第1の流量調整バルブを有し、
前記第2のバルブ機構は、前記シリンダ内の第2の空間に並列に接続された第2の開閉バルブ及び第2の流量調整バルブを有し、
前記エアシリンダ機構は、前記第1の開閉バルブ及び第1の流量調整バルブを介して前記第1の空間にエアを供給しながら、前記第2の開閉バルブ及び第2の流量調整バルブを介して前記第2の空間からエアが排出されることによって、前記弁体が前記開口部を閉塞する一の方向に向かって前記シリンダ内のピストンを押圧移動させ、このピストンが前記一の方向の端部に到達する直前に、前記第2の開閉バルブを全閉することによって前記第2の流量調整バルブのみで排気する一方、
前記第2の開閉バルブ及び第2の流量調整バルブを介して前記第2の空間にエアを供給しながら、前記第1の開閉バルブ及び第1の流量調整バルブを介して前記第1の空間からエアが排出されることによって、前記弁体が前記開口部を開放する他の方向に向かって前記シリンダ内のピストンを押圧移動させ、このピストンが前記他の方向の端部に到達する直前に、前記第1の開閉バルブを全閉することによって前記第1の流量調整バルブのみで排気することを特徴とする請求項1に記載のインライン式成膜装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の開閉バルブが電磁バルブであり、前記第1及び第2の流量調整バルブがニードルバルブであることを特徴とする請求項2に記載のインライン式成膜装置。
【請求項4】
前記弁体と一体に移動する移動体と、前記移動体が係合されるガイド孔とを有して、前記移動体が前記ガイド孔内を移動することによって、前記弁体を前記通路の分断方向に移動可能に案内するガイド機構を備え、
前記ガイド機構は、前記移動体が前記ガイド孔の少なくとも一方の端部に位置するとき、当該移動体と当接される樹脂ストッパを有することを特徴とする請求項2又は3に記載のインライン式成膜装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載のインライン式成膜装置を用いて、前記基板の表面に少なくとも磁性層を形成する工程を含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
【請求項6】
複数のチャンバの間で通路の開閉を行うゲートバルブであって、
前記通路を形成する開口部が設けられた一対の隔壁と、前記一対の隔壁の間で移動操作される弁体と、前記開口部を閉塞する位置と前記開口部を開放する位置との間で前記弁体を駆動する駆動機構とを有し、
前記駆動機構は、前記弁体に接続されたピストンと、前記ピストンが配置されるシリンダと、前記シリンダ内の第1の空間に接続された第1のバルブ機構と、前記シリンダ内の第2の空間に接続された第2のバルブ機構とを有して、
前記第1のバルブ機構を介して前記第1の空間にエアを供給しながら、前記第2のバルブ機構を介して前記第2の空間からエアが排出されることによって、前記弁体が前記開口部を閉塞する一の方向に向かって前記シリンダ内のピストンを押圧移動させる一方、
前記第2のバルブ機構を介して前記第2の空間にエアを供給しながら、前記第1のバルブ機構を介して前記第1の空間からエアが排出されることによって、前記弁体が前記開口部を開放する他の方向に向かって前記シリンダ内のピストンを押圧移動させるエアシリンダ機構であって、
前記エアシリンダ機構は、前記シリンダ内のピストンが前記一の方向の端部に到達する直前に、前記第2のバルブ機構により前記第2の空間から排出されるエアの流量を絞り込む一方、
前記シリンダ内のピストンが前記他の方向の端部に到達する直前に、前記第1のバルブ機構により前記第1の空間から排出されるエアの流量を絞り込むことを特徴とするゲートバルブ。
【請求項7】
前記第1のバルブ機構は、前記シリンダ内の第1の空間に並列に接続された第1の開閉バルブ及び第1の流量調整バルブを有し、
前記第2のバルブ機構は、前記シリンダ内の第2の空間に並列に接続された第2の開閉バルブ及び第2の流量調整バルブを有し、
前記エアシリンダ機構は、前記第1の開閉バルブ及び第1の流量調整バルブを介して前記第1の空間にエアを供給しながら、前記第2の開閉バルブ及び第2の流量調整バルブを介して前記第2の空間からエアが排出されることによって、前記弁体が前記開口部を閉塞する一の方向に向かって前記シリンダ内のピストンを押圧移動させ、このピストンが前記一の方向の端部に到達する直前に、前記第2の開閉バルブを全閉することによって前記第2の流量調整バルブのみで排気する一方、
前記第2の開閉バルブ及び第2の流量調整バルブを介して前記第2の空間にエアを供給しながら、前記第1の開閉バルブ及び第1の流量調整バルブを介して前記第1の空間からエアが排出されることによって、前記弁体が前記開口部を開放する他の方向に向かって前記シリンダ内のピストンを押圧移動させ、このピストンが前記他の方向の端部に到達する直前に、前記第1の開閉バルブを全閉することによって前記第1の流量調整バルブのみで排気することを特徴とする請求項6に記載のゲートバルブ。
【請求項8】
前記第1及び第2の開閉バルブが電磁バルブであり、前記第1及び第2の流量調整バルブがニードルバルブであることを特徴とする請求項7に記載のゲートバルブ。
【請求項9】
前記弁体と一体に移動する移動体と、前記移動体が係合されるガイド孔とを有し、前記移動体が前記ガイド孔内を移動することによって、前記弁体を前記通路の分断方向に移動可能に案内するガイド機構を備え、
前記ガイド機構は、前記移動体が前記ガイド孔の少なくとも一方の端部に位置するとき、当該移動体と当接される樹脂ストッパを有することを特徴とする請求項7又は8に記載のゲートバルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−127190(P2011−127190A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287679(P2009−287679)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】