ウイルス感染およびウイルス誘発腫瘍を治療する組成物および方法
本発明は、本発明において記載されている化合物を治療有効量で投与するステップを含む、ウイルス誘発腫瘍またはウイルス感染を治療する方法を提供する。本発明のいくつかの態様によれば、該方法は、免疫抑制剤を必要としている対象への、ウイルス感染および/またはウイルス誘発腫瘍を治療するための少なくとも1種の免疫抑制剤をさらに含み得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本願は、2009年8月3日に出願された米国仮特許出願第61/230,931号の、35U.S.C.§119(e)に基づく利益を主張するものであり、その開示は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、概して、ウイルス感染およびウイルス誘発腫瘍を治療するための化合物、その類似体および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
がんは、細胞増殖における正常な制限の破壊の結果である。がんは、ヒトの死因全体の約13%を占めている。米国がん協会によれば、2007年だけでも世界中で760万人が、がんにより死亡した。がんの重要な原因は、ウイルス感染である。ウイルスは世界中のヒトがんの15%の原因であると推定されている。ウイルス感染は、ヒトにおけるがん発生の2番目に重要な危険因子であり、喫煙だけがこれを上回っているように思われる。ヒトがんに関連する主要なウイルスは、ヒトパピローマウイルス、B型肝炎およびC型肝炎ウイルス、エプスタイン・バーウイルス、ならびにヒトTリンパ球向性ウイルスである。
【0004】
加えて、免疫不全患者は、ポリオーマウイルス(例えば、BKウイルスまたはJCウイルス)等の日和見性ウイルスに特に感染しやすい。いくつかの最近の研究は、ポリオーマウイルスとがんとの間には関連性があり得ることを示した(Fengら、Science、39巻、1096〜1100(2008年2月)およびMoensら、Cell.Mol.Life Sci.、64、1656〜1678(2007)を参照)。他の調査は、サイトメガロウイルスと結腸偽腫瘍および多形性膠芽腫(GBM)との間(Jesusら、J.Neurooncol、94:445〜448(2009)、Mitechellら、Neuro−oncology、10〜18頁(2008年2月)を参照、エプスタイン(Epstien)・バーウイルスと胃がんとの間(Truongら、J.of Experimental&Clinical Cancer Research 2009、28:14を参照)、ヒトパピローマウイルスと子宮頸がんとの間(Schiffmanら、Seminar、37巻、890〜907頁、2007年9月8日を参照、http:www.thelancet.comにて利用可能)には関連性があることも示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、ウイルス関連腫瘍を治療するため、特に免疫無防備状態の患者のために使用され得る新たな療法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様は、対象における免疫抑制に関連するウイルス誘発性状態/疾患(例えば、ウイルス誘発腫瘍またはウイルス感染)を治療する方法であって、前記対象に、治療有効量の本明細書において記載されている化合物を投与するステップを含む方法である。本明細書において記載されている化合物は、ウイルス複製および/またはウイルス感染/形質転換細胞(例えばウイルス誘発腫瘍細胞)を特異的に標的としている。
【0007】
いくつかの実施形態において、ウイルス誘発腫瘍は、ポリオーマウイルス(BK、ジョン・カニンガムウイルス(JCV)、メルケル細胞ウイルス(MCV)、KIポリオーマウイルス(KIV)、WUポリオーマウイルス(WUV)、シミアンウイルス40(SV40)を含む)、パピローマウイルス(ヒトパピローマウイルス、ワタオウサギパピローマウイルス、ウマパピローマウイルスおよびウシパピローマウイルスを含む)、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスまたはそれらの組合せに関連する。
【0008】
いくつかの実施形態において、ウイルス誘発腫瘍は、BKまたはJCウイルスに関連する。
【0009】
別の実施形態において、対象は免疫無防備状態(immnocompromised)である。さらに、一実施形態において、対象は腎移植または肝移植患者である。
【0010】
一実施形態において、化合物は、
【化1】
または薬学的に許容されるその塩である。
【0011】
本発明のさらなる態様は、免疫抑制剤を必要としている対象におけるウイルス感染の治療的および/または予防的処置のための方法であって、前記対象に、治療有効量の本明細書において記載されている化合物を、1種または複数の免疫抑制剤と組み合わせて投与するステップを含む方法である。
【0012】
いくつかの実施形態において、少なくとも1種の免疫抑制剤は、ダクリズマブ、バシリキシマブ、タクロリムス、シロリムス、ミコフェノレート(ナトリウムまたはモフェチルとして)、シクロスポリンA、グルココルチコイド、抗CD3モノクローナル抗体(OKT3)、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)、抗CD52モノクローナル抗体(キャンパス1−H)、アザチオプリン、エベロリムス、ダクチノマイシン、シクロフォスファミド、白金、ニトロソ尿素、メトトレキサート、アザチオプリン、メルカプトプリン、ムロモナブ、IFNガンマ、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、タイサブリ(ナタリズマブ)、フィンゴリモドおよびそれらの組合せから選択される。
【0013】
一実施形態において、少なくとも1種の免疫抑制剤は、タイサブリ(ナタリズマブ)である。
【0014】
本発明のさらなる態様は、(a)本明細書において記載されている化合物と、(b)少なくとも1種の免疫抑制剤と、(c)薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物を提供する。
【0015】
下記の図面は、本明細書の一部をなし、本発明のある特定の態様をさらに実証するために含まれる。本発明は、これらの図面の1つまたは複数を、本明細書において提示される具体的な実施形態の詳細な説明と組み合わせて参照することにより、よりよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】BKV負荷およびBKVタンパク質の発現に対する漸増濃度のCMX001の効果を例証する図である。図1(a)は、CMX001の濃度と細胞外BKV負荷の低減との間の関係を例証する。図1(b)は、BKV感染RPTECの感染72時間後における免疫蛍光染色の画像を示す。 図1(a)では、RPTEC上清を感染72時間後、すなわち指示されたCMX001濃度での処理開始70時間後に収穫した。BKV負荷をqPCRによって計測し、流入ウイルスを減じた。未処理細胞中のDNA負荷(1.05E+09Geq/ml)を100%として設定した。 図1(b)では、感染72時間後にメタノール固定し、後期アグノタンパク質の可視化のためのウサギ抗アグノタンパク質血清(緑色)およびBKV LTagの可視化のためのSV40 LTagモノクローナルPab416(赤色)で染色した、未処理およびCMX001処理BKV感染RPTECの間接免疫蛍光法。細胞密度を、青色に染色してドラック5によって示す。
【図2】図2(a)は、CMX001の濃度と非感染RPTECのDNA複製との間の関係を例証する。図2(b)は、CMX001の濃度と非感染RPTECの代謝活性との間の関係を例証する。 図2(a)では、BrdU取り込み(incorporation)を用いて細胞DNA複製を検査した。指示されたCMX001濃度を持つ培地を感染2時間後に添加し、感染72時間後に吸光度を計測した。未処理細胞の吸光度を100%として設定した。 図2(b)では、代謝活性をWST−1開裂として検査した。指示されたCMX001濃度を持つ培地を感染2時間後に添加し、感染72時間後に吸光度を計測した。未処理細胞の吸光度を100%として設定した。
【図3】BKVゲノム複製に対するCMX001 0.31μMの影響を例証する図である。図では、CMX001処理および未処理BKV感染RPTECを指示された時点で収穫し、細胞1個当たりの細胞内BKV DNA負荷をqPCRによって計測した。
【図4】BKVの初期および後期発現に対するCMX001 0.31μMの影響を例証する図である。図4(a)は、未処理およびCMX001処理BKV感染RPTECの間接免疫蛍光法の画像を示す。図4(b)は、CMX001処理および未処理BKV感染RPTECからの細胞抽出物を感染48および72時間後に収穫し、ウエスタンブロット法を、ウサギ抗BKV VP1、抗アグノタンパク質血清、およびハウスキーピングタンパク質GAPDHに向けられるモノクローナル抗体を用いて実施したことを示す。 図4(a)では、感染48および72時間後にメタノール固定し、後期アグノタンパク質の可視化のためのウサギ抗アグノタンパク質血清(緑色)およびBKV LTagの可視化のためのSV40 LTagモノクローナルPab416(赤色)で染色した、未処理およびCMX001処理BKV感染RPTECの間接免疫蛍光法。図4(b)では、CMX001処理および未処理BKV感染RPTECからの細胞抽出物を感染48および72時間後に収穫し、ウエスタンブロット法を、ウサギ抗−BKV VP1、抗アグノタンパク質血清、およびハウスキーピングタンパク質GAPDHに向けられるモノクローナル抗体を用いて実施した。
【図5】BKV細胞外BKV負荷に対するCMX001 0.31μMの影響を例証する図である。図5は、BKV細胞外BKV負荷に対するCMX001 0.31μMの影響を実証している。CMX001処理および未処理BKV感染RPTECからの上清を、感染後の指示された時点で収穫し、BKV負荷をqPCRによって計測した。データはBKV負荷としてGeq/mlで提示する。
【図6】感染前のRPTECの前処理に対するCMX001の衝撃を実証する図である。図6では、RPTECは、感染20時間前まで4時間処理して、このときに新たな完全成長培地を添加するか、または感染1時間前まで24時間処理して、このときに感染前の完全成長培地中で1時間洗浄するかのいずれかとした。上清を感染72時間後に収穫し、細胞外BKV負荷をqPCRによって計測した。データは、100%に設定された未処理細胞のパーセントで提示する。
【図7】CMX001の安定性を例証する図である。図7では、BKV感染RPTECを、新しく作製したCMX001、または4℃もしくは−20℃で1週間保存した1mg/mlのストック溶液からのCMX001で処理した。上清を感染72時間後に収穫し、細胞外BKV負荷をqPCRによって計測した。データは、BKV負荷として、100%に設定された未処理細胞のパーセントで提示する。
【図8】COS−7細胞におけるJCV Mad−4の複製を実証する図である。図8では、感染7日後に固定し、後期カプシドタンパク質VP1の可視化のためのウサギ抗VP1血清(赤色)およびDNAを示すためのヘキスト33342色素(青色)で染色した、JCV感染COS−7細胞の間接免疫蛍光法。マージした写真を右パネルに示す。
【図9】星状膠細胞におけるJCV Mad−4の複製およびJCV感染星状膠細胞の間接免疫蛍光法の画像を示す図である。固定および染色は、図8のものと同じである。
【図10】星状膠細胞におけるJCV複製の経過を実証する図である。図10(a)は、感染7日後に固定し、後期カプシドタンパク質VP1の可視化のためのウサギ抗VP1血清(赤色)およびDNAを示すためのヘキスト33342色素(青色)で染色した、JCV感染星状膠細胞の間接免疫蛍光法を示す。マージした写真を右パネルに示す。図10(b)は、感染14日後に固定したJCV感染星状膠細胞の間接免疫蛍光法の画像を示す。固定および染色は、a)の通りである。図10(c)は、感染14日後に固定した偽感染星状膠細胞の間接免疫蛍光法の画像を示す。固定および染色は、10(a)のものと同じである。
【図11】COS−7細胞における再連結したJCV Mad−4 DNAの複製、ならびに、トランスフェクション7日後に固定し、後期カプシドタンパク質VP1の可視化のためのウサギ抗VP1血清(赤色)およびDNAを示すためのヘキスト33342色素(青色)で染色した、JCV DNAトランスフェクトCOS−7細胞の間接免疫蛍光法の画像を実証する図である。マージした写真を右パネルに示す。
【図12】CMX001 IC−50およびIC−90の決定を実証する図である。COS−7上清を感染5日後、すなわち指示されたCMX001濃度での処理開始118時間後に収穫した。JCV負荷をqPCRによって計測し、流入ウイルスを減じた。未処理細胞中のDNA負荷(5.04×10E+9geq/ml)を100%として設定した。IC−50およびIC−90を決定するために、JCVの複製を、未処理細胞のパーセンテージとして示す。
【図13】COS−7細胞の代謝活性に対する漸増濃度のCMX001の効果を実証する図である。代謝活性をWST−1開裂として検査した。指示されたCMX001濃度を持つ培地をCOS−7細胞に添加し、播種72時間後に吸光度を計測した。未処理細胞の吸光度を100%として設定した。
【図14】COS−7細胞の複製に対する漸増濃度のCMX001の効果を例証する図である。DNA複製をBrdU取り込みによって決定した。指示されたCMX001濃度を持つ培地をCOS−7細胞に添加し、播種72時間後に吸光度を計測した。未処理細胞の吸光度を100%として設定した。
【図15】細胞外ウイルス負荷に対する漸増濃度のCMX001の効果を示す図である。CMX001処理および未処理JCV感染COS−7細胞からの上清を、感染後の指示された時点で収穫し、JCV負荷をqPCRによって計測した。データは、JCV負荷として対数geq/mlで提示する。
【図16】JCVタンパク質の発現に対する漸増濃度のCMX001の効果を例証する図である。感染7日後に固定し、後期カプシドタンパク質VP1の可視化のためのウサギ抗VP1血清(赤色)およびDNAを示すためのヘキスト33342色素(青色)で染色した、指示された濃度のCMX001で処理されたJCV感染COS−7細胞の間接免疫蛍光法。マージした写真を右パネルに示す。
【図17】星状膠細胞における細胞外ウイルス負荷に対する漸増濃度のCMX001の効果を例証する図である。指示された濃度のCMX001で処理されたJCV感染PDA細胞からの上清を感染後の指示された時点で収穫し、JCV負荷をqPCRによって計測した。データは、JCV負荷として対数geq/mlで提示する。
【図18】ドキソルビシン、シドフォビルおよびCMX001によるCaki−1細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図19】ドキソルビシン、シドフォビルおよびCMX001によるCaki−2細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図20】ドキソルビシン、シドフォビルおよびCMX001によるSCaBER細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図21】ドキソルビシン、シドフォビルおよびCMX001によるSW780細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図22】ドセタキセル(A)、シドフォビルおよびCMX001(B)によるDU145細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図23】ドセタキセル(A)、シドフォビルおよびCMX001(B)によるPC−3細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図24】ドセタキセル(A)、シドフォビルおよびCMX001(B)によるMDA−231細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図25】ドセタキセル(A)、シドフォビルおよびCMX001(B)によるMCF−7細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図26】ゲムシタビン、シドフォビルおよびCMX001によるPANC−1細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図27】ゲムシタビン、シドフォビルおよびCMX001によるMIA PaCa−2細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図28】オキサリプラチン、シドフォビルおよびCMX001によるHT−29細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図29】オキサリプラチン、シドフォビルおよびCMX001によるHCT−116細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図30】ドセタキセル(A)、シドフォビルおよびCMX001(B)によるH460細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図31】ドセタキセル(A)、シドフォビルおよびCMX001(B)によるA549細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図32】DTIC、シドフォビルおよびCMX001によるA2058細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図33】DTIC、シドフォビルおよびCMX001によるSK−MEL−2細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図34】シスプラチン、シドフォビルおよびCMX001によるC33細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図35】シスプラチン、シドフォビルおよびCMX001によるSiHa細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図36】シスプラチン、シドフォビルおよびCMX001によるSK−OV−3細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図37】シスプラチン、シドフォビルおよびCMX001によるOvCar−3細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図38】ドキソルビシン、シドフォビルおよびCMX001によるSK−HEP−1細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図39】ドキソルビシン、シドフォビルおよびCMX001によるHEP G2細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図40】シドフォビルおよびCMX001によるHet−1A細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図41】シドフォビルおよびCMX001によるTHLE−3細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ここで、本明細書において提供されている記述および方法論に関して、本発明の前述および他の態様をさらに詳細に記載する。本発明は異なる形態で具現化され得、本明細書において説明される実施形態に限定されるものとして解釈されるべきでないことを理解すべきである。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全となり、当業者に本発明の範囲を十分に伝えるように提供される。
【0018】
本明細書における本発明の記述において使用される術語は、特定の実施形態を記述することのみを目的とし、本発明の限定を意図するものではない。本発明の実施形態の記述および添付の請求項において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに別段の定めがある場合を除き、複数形も含むことが意図されている。また、本明細書において使用される場合、「および/または」は、関連して記載されている項目の1つまたは複数のあらゆる考えられる組合せを指し、かつ包含する。さらに、化合物の量、用量、時間、温度等、測定可能な値に言及する際の用語「約」は、本明細書において使用される場合、明記された量の20%、10%、5%、1%、0.5%またはさらに0.1%の変動を包含するように意味付けられている。用語「を含む(comprises)」および/または「を含む(comprising)」は、本明細書において使用される場合、挙げられた装備、整数、ステップ、動作、要素および/または成分の存在を明記するが、1つまたは複数の他の装備、整数、ステップ、動作、要素、成分および/またはそれらの群の存在または追加を除外するものではないことがさらに理解されよう。別段の定義がない限り、本明細書において使用される技術用語および科学用語を含むすべての用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。
【0019】
本明細書において参照されるすべての特許、特許出願および刊行物は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。術語に矛盾がある場合、本明細書が優先される。
【0020】
本明細書において使用される場合、「アルキル」は、1から30個までの炭素原子を含有する直鎖または分枝鎖の炭化水素を指す。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1から24、2から25、2から24、17から20、1から10または1から8個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態において、アルキル基は、17〜20個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態において、アルキル基は、17、18、19または20個の炭素原子を含有する。また他の実施形態において、アルキル基は、1〜5個の炭素原子を含有し、さらに他の実施形態において、アルキル基は、1〜4または1〜3個の炭素原子を含有する。アルキルの代表例は、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、3−メチルヘキシル、2,2−ジメチルペンチル、2,3−ジメチルペンチル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル等を含むがこれらに限定されない。追加の例または一般的に適用可能な置換基は、本明細書において記載されている実施例に示す具体的な実施形態によって例証される。
【0021】
本明細書において使用される場合、「アルケニル」は、2から30個までの炭素を含有し、かつ2個の水素の除去によって形成された少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を含有する、直鎖または分枝鎖の炭化水素を指す。いくつかの実施形態において、アルケニル基は、2から25、2から24、17から20、2から10、2から8個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態において、アルケニル基は、17〜20個の炭素原子を含有する。また他の実施形態において、アルケニル基は、17、18、19または20個の炭素原子を含有し、さらに他の実施形態において、アルケニル基は、2〜5、2〜4または2〜3個の炭素原子を含有する。「アルケニル」の代表例は、エテニル、2−プロペニル、2−メチル−2−プロペニル、3−ブテニル、4−ペンテニル、5−ヘキセニル、2−ヘプテニル、2−メチル−1−ヘプテニル、3−デセニル等を含むがこれらに限定されない。追加の例または一般的に適用可能な置換基は、本明細書において記載されている実施例に示す具体的な実施形態によって例証される。
【0022】
本明細書において使用される場合、「アルキニル」は、2から30個までの炭素原子を含有し、かつ少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を含有する、直鎖または分枝鎖の炭化水素基を指す。いくつかの実施形態において、アルキニル基は、2から25、2から24、2から10または2から8個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態において、アルキニル基は、17〜20個の炭素原子を含有する。また他の実施形態において、アルキニル基は、17、18、19または20個の炭素原子を含有し、さらに他の実施形態において、アルキニル基は、2〜5、2〜4または2〜3個の炭素原子を含有する。アルキニルの代表例は、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、3−ブチニル、2−ペンチニル、1−ブチニル等を含むがこれらに限定されない。追加の例または一般的に適用可能な置換基は、本明細書において記載されている実施例に示す具体的な実施形態によって例証される。
【0023】
本明細書において使用される場合、「アシル」は、2から30個までの炭素を含有する直鎖または分枝鎖の炭化水素を指し、該炭化水素鎖の少なくとも1個の炭素は、オキソ(=O)で置換されている。いくつかの実施形態において、アシル基は、2から25、2から24、17から20、2から10、2から8個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態において、アシル基は、17〜20個の炭素原子を含有する。また他の実施形態において、アシル基は、17、18、19または20個の炭素原子を含有し、さらに他の実施形態において、アシル基は、2〜5、2〜4または2〜3個の炭素原子を含有する。追加の例または一般的に適用可能な置換基は、本明細書において記載されている実施例に示す具体的な実施形態によって例証される。
【0024】
本明細書において使用される場合、用語「アルコキシ」は、酸素原子を介して親分子部分に結合している先に定義した通りのアルキル基を指す。いくつかの実施形態において、アルコキシ基は、1〜30個の炭素原子を含有する。他の実施形態において、アルコキシ基は、1〜20、1〜10または1〜5個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態において、アルコキシ基は、2から25、2から24、17から20、2から10、2から8個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態において、アルコキシ基は、17〜20個の炭素原子を含有する。また他の実施形態において、アルコキシ基は、17、18、19または20個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態において、アルコキシル基は、1から8個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態において、アルコキシル基は、1から6個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態において、アルコキシル基は、1から4個の炭素原子を含有する。また他の実施形態において、アルコキシル基は、1〜5個の炭素原子を含有し、さらに他の実施形態において、アルコキシル基は、1〜4または1〜3個の炭素原子を含有する。アルコキシルの代表例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシおよびn−ペントキシを含むがこれらに限定されない。追加の例または一般的に適用可能な置換基は、本明細書において記載されている実施例に示す具体的な実施形態によって例証される。
【0025】
用語「脂肪族」は、本明細書において使用される場合、1個または複数の官能基で場合により置換されている、飽和、不飽和、直鎖(すなわち非分岐鎖)、または分枝鎖、脂肪族の炭化水素を含む。いくつかの実施形態において、脂肪族は、二重結合、三重結合もしくはカルボニル基(C=O)、またはそれらの組合せから選択される1個または複数の官能基を含有し得る。当業者であれば理解するであろうが、「脂肪族」は、本明細書において、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアシル部分を含むがこれらに限定されないことが意図されている。故に、本明細書において使用される場合、用語「アルキル」は、直鎖、分枝鎖飽和基を含む。類似の慣習は、「アルケニル」、「アルキニル」、「アシル」等の他の一般用語にも当てはまる。さらに、本明細書において使用される場合、用語「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」、「アシル」等は、置換基および非置換基の両方を包含する。いくつかの実施形態において、用語「脂肪族」は、−(C1〜C24)アルキル、−(C2〜C24)アルケニル、−(C2〜C24)アルキニル、−(C1〜C24)アシルを指す。当業者には理解されるように、上記で指示されている炭素数の範囲は、該範囲内の個々の数を包含する。
【0026】
本明細書において使用される場合、「アミノ酸残基」は、第一級アミノ(−NH2)基と結合している炭素原子、カルボン酸(−COOH)基、側鎖および水素原子からなる化合物を指す。例えば、用語「アミノ酸」は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、アスパラギン酸およびグルタミン酸を含むがこれらに限定されない。本発明では、式IまたはIaにおいて、R2が−NR’Hであり、かつR’がアミノ酸残基である場合、Nは側鎖として炭素原子に結合している。加えて、本明細書において使用される場合、「アミノ酸」は、エステルおよびアミド等のアミノ酸ならびに塩の誘導体、ならびに、活性形態への代謝時に薬学的特性(pharmacoproperties)を有する誘導体を含む他の誘導体も含む。追加の例または一般的に適用可能な置換基は、本明細書において記載されている実施例に示す具体的な実施形態によって例証される。
【0027】
本明細書において使用される場合、「シクロアルキル」は、単一の水素原子の除去によってシクロアルカンから誘導される3〜12個の炭素の一価飽和環式または二環式炭化水素基を指す。いくつかの実施形態において、シクロアルキルは、3から8個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態において、シクロアルキルは、3から6個の炭素原子を含有する。シクロアルキル基は、アルキル、アルコキシ、ハロまたはヒドロキシ置換基で場合により置換されていてよい。シクロアルキルの代表例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルを含むがこれらに限定されない。一般的に適用可能な置換基の追加の例は、本明細書において記載されている実施例に示す具体的な実施形態によって例証される。
【0028】
本明細書において使用される場合、「ヘテロアルキル」、「ヘテロアルケニル」または「ヘテロアルキニル」は、例えば炭素原子の代わりに1個または複数の酸素、硫黄、窒素、リンまたはケイ素原子を含有する、アルキル、アルケニルまたはアルキニル基を指す。いくつかの実施形態において、ヘテロアルキル基は、1〜8個の炭素原子を含有する。ある特定の実施形態において、ヘテロアルケニルおよびヘテロアルキニル基は、独立に、2〜8個の炭素原子を含有する。また他の実施形態において、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニルおよびヘテラルキニルは、独立に、2〜5個の炭素原子を含有し、さらに他の実施形態において、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニルおよびヘテラルキニルは、独立に、2〜4または2〜3個の炭素原子を含有する。
【0029】
用語「ヘテロシクロアルキル」または「複素環」は、本明細書において使用される場合、環の一部として、酸素、硫黄および窒素から独立に選択される1個または複数のヘテロ原子を間に有する二環または三環式を含むがこれらに限定されない、非芳香族、飽和または不飽和の5、6もしくは7員環または多環式基を指し、ここで、(i)各5員環は0から1個の二重結合を有し、各6員環は0から2個の二重結合を有し、(ii)窒素および硫黄ヘテロ原子は、場合により酸化されていてよく、(iii)窒素ヘテロ原子は、場合により四級化されていてよく、かつ/または(iv)上記複素環式環のいずれかは、ベンゼン環と縮合していてよい。例示的な複素環は、ピロリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニルおよびテトラヒドロフリルを含むがこれらに限定されない。
【0030】
本明細書において使用される場合、用語「ハロゲン」は、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)またはヨウ素(I)を指し、用語「ハロ」は、ハロゲンラジカル:フルオロ(−F)、クロロ(−Cl)、ブロモ(−Br)およびヨード(−I)を指す。
【0031】
本明細書において使用される場合、用語「ハロアルキル」は、少なくとも1個のハロ基で置換されている少なくとも1個の炭素原子を含有する、本明細書において定義される通りの直鎖または分枝鎖アルキル基を指し、ハロは本明細書において定義される通りである。いくつかの実施形態において、ハロアルキルは、1から30個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態において、ハルアルキル(halkalkyl)は、1から8または1から6個の炭素原子を含有する。他の実施形態において、ハロアルキルは、1から4個の炭素原子を含有する。追加の例または一般的に適用可能な置換基は、本明細書において記載されている実施例に示す具体的な実施形態によって例証される。
【0032】
本明細書において使用される場合、用語「アリール」は、1個または複数の芳香族環を有する単環式炭素環式環系または二環式炭素環式縮合環系を指す。アリールの代表例は、アズレニル、インダニル、インデニル、ナフチル、フェニル、テトラヒドロナフチル等を含む。用語「アリール」は、別段の指示がない限り、置換および非置換アリールの両方を含むことが意図されている。例えば、アリールは、1個または複数のヘテロ原子(例えば、酸素、硫黄および/または窒素)で置換されていてよい。追加の例または一般的に適用可能な置換基は、本明細書において記載されている実施例に示す具体的な実施形態によって例証される。
【0033】
いくつかの実施形態において、本明細書において記載されているアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アシルは、置換部分および非置換部分の両方を含む。例示的な置換基は、ハロ、ヒドロキシル、アミノ、アミド、−SH、シアノ、ニトロ、チオアルキル、カルボン酸、−NH−C(=NH)−NH2、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキルを含むがこれらに限定されず、ここで、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルおよびヘテロシクロアルキルは、さらに置換されていてよい。
【0034】
本明細書において使用される場合、用語「アミノ酸」は、第一級アミノ(−NH2)基およびカルボン酸(−COOH)基を含む化合物を指す。本発明において使用されるアミノ酸は、天然に存在するアミノ酸および合成α、β、γまたはδアミノ酸ならびにL、Dアミノ酸を含み、タンパク質において見られるアミノ酸を含むがこれらに限定されない。例示的なアミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、プロリン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、アスパルテート、グルタメート、リジン、アルギニンおよびヒスチジンを含むがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、アミノ酸は、アラニル、バリニル、ロイシニル、イソロイシニル、プロリニル、フェニルアラニニル、トリプトファニル、メチオニニル、グリシニル、セリニル、トレオニニル、システイニル、チロシニル、アスパラギニル、グルタミニル、アスパルトイル、グルタロイル、リジニル、アルギニニル、ヒスチジニル、β−アラニル、β−バリニル、β−ロイシニル、β−イソロイシニル、β−プロリニル、β−フェニルアラニニル、β−トリプトファニル、β−メチオニニル、β−グリシニル、β−セリニル、β−トレオニニル、β−システイニル、β−チロシニル、β−アスパラギニル、β−グルタミニル、β−アスパルトイル、β−グルタロイル、β−リジニル、β−アルギニニルまたはβ−ヒスチジニルの誘導体であってよい。加えて、本明細書において使用される場合、「アミノ酸」は、エステルおよびアミド等のアミノ酸ならびに塩の誘導体、ならびに、活性形態への代謝時に薬物特性を有する誘導体を含む他の誘導体も含む。
【0035】
本明細書において使用される場合、用語「天然αアミノ酸」は、第一級アミノ(−NH2)基と結合している炭素原子、カルボン酸(−COOH)基、側鎖および水素原子を含む天然に存在するα−アミノ酸を指す。例示的な天然αアミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、プロリン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギネート、グルタミネート、アスパルテート、グルタメート、リジン、アルギニンおよびヒスチジンを含むがこれらに限定されない。
【0036】
本明細書において使用される場合、用語「ウイルス誘発腫瘍」は、本明細書において記載されているウイルスの少なくとも1種によって誘発され、引き起こされ、かつ/またはそれに関連する腫瘍として定義される。
【0037】
本発明の方法によって治療される対象は、概して、哺乳類および霊長類対象(例えば、ヒト、サル、類人猿、チンパンジー)である。対象は、雄であっても雌であってもよく、出生前(すなわち子宮内)、新生児、幼児、若年、青年、成体および高齢対象を含む、任意の年齢のものであってもよい。故に、いくつかの事例において、対象は、妊婦対象であってよい。治療は、以前に感染した対象の治療的処置および非感染対象(例えば、感染リスクが高いとして同定された対象)の予防的処置を含む、任意の目的のものであってよい。
【0038】
本明細書において使用される場合、「ヒト免疫不全ウイルス」(または「HIV」)は、本明細書において使用される場合、HIV亜型A、B、C、D、E、F、GおよびO、ならびにHIV−2を含むその亜型すべてを含むことが意図されている。
【0039】
本明細書において使用される場合、「B型肝炎ウイルス」(または「HBV」)は、本明細書において使用される場合、その亜型(adw、adr、aywおよびayr)およびまたは遺伝子型(A、B、C、D、E、F、GおよびH)すべてを含むことが意図されている。
【0040】
本明細書において使用される場合、または「治療有効量」は、対象における少なくとも1つの臨床症状において、いくらかの軽減、緩和および/または減少を提供する量を指す。当業者であれば、何らかの利益が対象に提供される限り、治療効果は完全である必要も治癒的である必要もないことを理解するであろう。
【0041】
本明細書において使用される場合、「特異性」または「に対して特異的に」は、ある特定の種類の腫瘍細胞またはウイルス感染細胞の代謝活性および/またはDNA複製を選択的に阻害し得る化合物を指す。特異性は、当業者に公知の任意の方法を使用することによって、例えば、IC90および/またはIC50を試験することによって試験され得る。いくつかの実施形態において、本明細書において記載されている化合物は、正常(非感染)細胞に対するIC90および/またはIC50よりも少なくとも約3倍低い、ウイルス感染細胞に対するIC90および/またはIC50を有し得る。いくつかの実施形態において、本明細書において記載されている化合物は、正常(非感染)細胞に対するIC90および/またはIC50よりも約3倍から10倍低い、ウイルス感染細胞に対するIC90および/またはIC50を有し得る。いくつかの実施形態において、本明細書において記載されている化合物は、正常(非感染)細胞に対するIC90および/またはIC50よりも少なくとも10倍低い、ウイルス感染細胞に対するIC90および/またはIC50を有し得る。いくつかの実施形態において、本明細書において記載されている化合物は、ウイルス感染および/または形質転換細胞に対する特異的な細胞毒性を有し得る。細胞毒性は、当業者に公知である任意の方法によって計測できる。
【0042】
別段の規定がない限り、本明細書において描写されている構造は、該構造のすべての異性(例えば、鏡像異性、ジアステレオ異性および幾何(または立体配座))形態;例えば、各不斉中心についてのRおよびS立体配置、(Z)および(E)二重結合異性体、ならびに(Z)および(E)立体配座異性体を含むように意味付けられている。したがって、本発明の化合物の単一の立体化学異性体、ならびに鏡像異性、ジアステレオ異性および幾何(または立体配座)混合物は、本発明の範囲内である。別段の規定がない限り、本発明の化合物の互変異性形態はすべて、本発明の範囲内である。
【0043】
本明細書において使用される場合、用語「治療」、「治療する」および「治療すること」は、本明細書において記載されている通りの疾患または障害の進行を回復させ、軽減し、阻害すること、あるいは、講じられる対策が存在しない場合に生じるであろうものと比較した際の、本明細書において記載されている通りの障害または疾患の発生率または発症を遅延させ、解消しまたは低減させることを指す。いくつかの実施形態において、治療は、1つまたは複数の症状が発生した後に施されてよい。他の実施形態において、治療は、症状が存在しない場合に施されてよい。例えば、治療は、症状の発症前に(例えば、症状歴に照らして、かつ/または遺伝的もしくは他の感受性要因に照らして)感受性個体に施されてよい。治療は、例えば症状の再発を予防しまたは遅延させるために、症状が消散した後も続けてよい。
【0044】
本発明の活性化合物は、場合により、本明細書において記載されている通りのウイルス感染の治療において有用な他の活性化合物および/または剤と組み合わせて(または併用して)投与され得る。2種以上の化合物を「組み合わせて」または「併用して」投与することは、2種の化合物が、複合効果、例えば相加および/または相乗効果を有するように、時間的に十分近接して投与されることを意味する。2種の化合物を、同時に(同時発生的に)または順次に投与してよく、あるいは、投与は、互いの前または後の短期間内に生じる2つ以上の事象であってよい。同時投与は、投与前に化合物を混合することによって、または同じ時点であるが異なる解剖学的部位に、もしくは異なる投与ルートを使用して、化合物を投与することによって行われ得る。いくつかの実施形態において、他の抗ウイルス剤を場合により同時発生的に投与してよい。
【0045】
A.活性化合物
本発明のいくつかの態様によれば、様々な生物学的特性を持つ化合物が提供される。本明細書において記載されている化合物は、ウイルス誘発腫瘍の治療に関わる生物学的活性を有する。
【0046】
(1)いくつかの実施形態において、本発明の化合物は、式Iの構造:
【化2】
[式中、
R1、R1’、R2およびR2’は、独立に、−H、ハロゲン、−ORi、−SRi、−NHRi、−NRiRiiであり、かつ、RiおよびRiiは、独立に、水素または脂肪族であり、
R3は、薬学的に活性なホスホネート、ビスホスホネート、または薬理活性化合物のホスホネート誘導体であり、
Xは、存在する場合、
【化3】
であり、かつmは0から6までの整数である]
を有する。
【0047】
いくつかの実施形態において、前記アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアシル部分は、1から6個の二重結合または三重結合を場合により有する。
【0048】
いくつかの実施形態において、R1およびR1’の少なくとも一方は−Hではない。
【0049】
いくつかの実施形態において、mは、0、1または2である。一実施形態において、R2およびR2’はHである。別の実施形態において、化合物は、治療用ホスホネートのエタンジオール、プロパンジオールまたはブタンジオール誘導体である。一実施形態において、本発明の化合物は、構造:
【化4】
[式中、R1、R1’およびR3は、上記で定義した通りである]
を有するエタンジオールホスホネート種である。
【0050】
いくつかの実施形態において、本発明の化合物は、構造:
【化5】
[式中、mは1であり、かつ、R1、R1’およびR3は、一般式において上記で定義した通りである]
を有するプロパンジオール種である。
【0051】
一実施形態において、本発明の化合物は、構造:
【化6】
[式中、mは1であり、R2はHであり、R2’はOHであり、かつ、Cα上のR2およびR2’はいずれも−Hである]を有するグリセロール種である。グリセロールは、光学活性分子である。グリセロールに立体特異的番号付け規則を使用すると、グリセロールキナーゼによってリン酸化される位置はsn−3位である。グリセロール残基を有する本発明の化合物において、R3部分は、グリセロールのsn−3またはsn−1位のいずれかで結合していてよい。
【0052】
いくつかの実施形態において、R1は、式−O−(CH2)t−CH3[式中、tは0〜24である]を有するアルコキシ基である。一実施形態において、tは11〜19である。別の実施形態において、tは15または17である。
【0053】
加えて、シドフォビル、環式シドフォビル、アデフォビル、テノフォビル等の抗ウイルスホスホネートを、本発明に従ってR3基として使用してよい。
【0054】
(2)本発明の一態様によれば、抗ウイルス性化合物は、式A、A’またはBの構造:
【化7】
[式中、
Mは
【化8】
であり、MのOは−P(=X)と結合しており、
ここで、R1、R1’、R2およびR2’は、独立に、−H、ハロゲン、−ORi、−SRi、−NHRi、−NRiRiiであり、かつ、RiおよびRiiは、独立に、水素または脂肪族であり、
Qは、存在する場合、
【化9】
であり、mは0から6までの整数であり、
Bは、水素、F、CF3、CHF2、−CH3、−CH2CH3、−CH2OH、−CH2CH2OH、−CH(OH)CH3、−CH2F、−CH=CH2および−CH2N3からなる群から選択され、
Xは、セレン、硫黄または酸素(いくつかの実施形態において、酸素)であり、
R3は、ヒドロキシ、−OR2a、−BH3、C1〜8アルキル、C2〜8アルケニル、C2〜8アルキニル、C1〜8ヘテロアルキル、C2〜8ヘテロアルケニル、C2〜8ヘテロアルキニルまたは−NR’Hであり(いくつかの実施形態において、R2はヒドロキシルである)、
R2aは、C1〜8アルキル、C2〜8アルケニル、C2〜8アルキニル、C1〜8ヘテロアルキル、C2〜8ヘテロアルケニル、C2〜8ヘテロアルキニル、−P(=O)(OH)2または−P(=O)(OH)OP(=O)(OH)2であり、
R’は、C1〜8アルキル、C2〜8アルケニル、C2〜8アルキニル、C1〜8ヘテロアルキル、C2〜8ヘテロアルキニル、C2〜8ヘテロアルケニル、C6〜10アリール、または置換もしくは非置換アミノ酸残基であり、
Zは、少なくとも1個のNを含む複素環式部分(いくつかの実施形態において、該複素環式部分はプリンまたはピリミジンから選択される)を含み、かつ
符号*は、式A、A’またはB中のメチレン部分とZとの結合点が、該複素環式部分の利用可能な窒素を介していることを指示する]
または薬学的に許容されるその塩を有する。
【0055】
いくつかの実施形態において、抗ウイルス性化合物は、鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ体、立体異性体、互変異性体、回転異性体またはそれらの混合物の形態である。
【0056】
別の実施形態において、Bは−CH3または−CH2OHである。
【0057】
いくつかの実施形態において、R3はヒドロキシルである。
【0058】
いくつかの実施形態において、Mは、−O−(CH2)2−O−C1〜24アルキ(alky)、−O−(CH2)3−O−C1〜24アルキル、−O−CH2−CH(OH)−CH2−O−C1〜24アルキルまたは−O−CH2−CH(OH)−S−C1〜24アルキルから選択される。別の実施形態において、Mは−O−(CH2)a−O−(CH2)t−CH3[ここで、aは2から4であり、かつtは11から19である]である。いくつかの実施形態において、aは2または3であり、かつtは15または17である。いくつかの実施形態において、Mは−O−(CH2)2−O−(CH2)15CH3または−O−(CH2)2−O−(CH2)17CH3である。一実施形態において、Mは−O−(CH2)3−O−(CH2)15CH3または−O−(CH2)3−O−(CH2)17CH3である。
【0059】
一実施形態において、Mは、式a、bまたはc
【化10】
[式中、RaおよびRbは、独立に、−H、ハロゲン、−ORi、−SRi、−NHRi、−NRiRiiであり、かつ、RiおよびRiiは、独立に、水素または脂肪族である]から選択される。いくつかの実施形態において、RiおよびRiiは、独立に、−(C1〜C24)アルキル、−(C2〜C24)アルケニル、−(C2〜C24)アルキニルまたは−(C1〜C24)アシルである。
【0060】
いくつかの実施形態において、RaまたはRbの少なくとも一方は水素ではない。いくつかの実施形態において、RaおよびRbは、−H、場合により置換されている−O(C1〜C24)アルキル、−O(C2〜C24)アルケニル、−O(C1〜C24)アシル、−S(C1〜C24)アルキル、−S(C2〜C24)アルケニルおよび−S(C1〜C24)アシルからなる群から独立に選択される。
【0061】
いくつかの実施形態において、M、R1、R1’、R2またはR2’は、独立に、−O(C1〜C24)アルキル、−O(C2〜C24)アルケニル、−O(C2〜C24)アルキニル、−O(C1〜C24)アシル、−S(C1〜C24)アルキル、−S(C2〜C24)アルケニル、−S(C2〜C24)アルキニル、−S(C1〜C24)アシル、−NH(C1〜C24)アルキル、−NH(C2〜C24)アルケニル、−NH(C2〜C24)アルキニル、−NH(C1〜C24)アシル、−N((C1〜C24)アルキル)((C2〜C24)アルキル)、−N((C1〜C24)アルキル)((C2〜C24)アルケニル)、−N((C1〜C24)アルキル)((C2〜C24)アシル)、−N((C1〜C24)アルキル)((C2〜C24)アルキニル)、−N((C1〜C24)アルケイル))((C2〜C24)アルキニル)、−N((C1〜C24)アルケニル)((C2〜C24)アルケニル)、−N((C1〜C24)アルキニル)((C2〜C24)アルキニル)、−N((C1〜C24)アシル)((C2〜C24)アルキニル)または−N((C1〜C24)アシル)((C2〜C24)アルケニル)である。
【0062】
一実施形態において、Zは、少なくとも1個の置換基によって場合により置換されていてよいプリンまたはピリミジンを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1個の置換基は、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、置換アミノ、二置換アミノ、硫黄、ニトロ、シアノ、アセチル、アシル、アザ、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C6〜10アリール、およびC1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニルまたはC6〜10アリールで置換されているカルボニル、ハロアルキル、ならびにアミノアルキルからなる群から選択され得る。
【0063】
いくつかの実施形態において、Zは、アデニン、6−クロロプリン、キサンチン、ヒポキサンチン、グアニン、8−ブロモグアニン、8−クロログアニン、8−アミノグアニン、8−ヒドラジノグアニン、8−ヒドロキシグアニン、8−メチルグアニン、8−チオグアニン、2−アミノプリン、2,6−ジアミノプリン、チミン、シトシン、5−フルオロシトシン、ウラシル;5−ブロモウラシル、5−ヨードウラシル、5−エチルウラシル、5−エチニルウラシル、5−プロピニルウラシル、5−プロピルウラシル、5−ビニルウラシルまたは5−ブロモビニルウラシルから選択され得る。いくつかの実施形態において、Zは、グアニン−9−イル、アデニン−9−イル、2,6−ジアミノプリン−9−イル、2−アミノプリン−9−イルもしくはそれらの1−デアザ、3−デアザ、8−アザ化合物、またはシトシン−1−イルから選択される。いくつかの実施形態において、Zは、グアニン−9−イルまたは2,6−ジアミノプリン−9−イルである。
【0064】
別の実施形態において、Zは、6−アルキルプリンおよびN6−アルキルプリン、N6−アシルプリン、N6−ベンジルプリン、6−ハロプリン、N6−アセチレンプリン、N6−アシルプリン、N6−ヒドロキシアルキルプリン、6−チオアルキルプリン、N2−アルキルプリン、N4−アルキルピリミジン、N4−アシルピリミジン、4−ハロピリミジン、N4−アセチレンピリミジン、4−アミノおよびN4−アシルピリミジン、4−ヒドロキシアルキルピリミジン、4−チオアルキルピリミジン、チミン、シトシン、6−アザシトシン、2−および/または4−メルカプトピリミジンを含む6−アザピリミジン、ウラシル、C5−アルキルピリミジン、C5−ベンジルピリミジン、C5−ハロピリミジン、C5−ビニルピリミジン、C5−アセチレンピリミジン、C5−アシルピリミジン、C5−ヒドロキシアルキルプリン、C5−アミドピリミジン、C5−シアノピリミジン、C5−ニトロピリミジン、C5−アミノピリミジン、N2−アルキルプリン、N2−アルキル−6−チオプリン、5−アザシチジニル、5−アザウラシリル、トリアゾロピリジニル、イミダゾロピリジニル、ピロロピリミジニル、ならびにピラゾロピリミジニルから選択される。塩基上の官能性酸素および窒素基は、必要または要望に応じて保護され得る。適切な保護基は当業者に周知であり、トリメチルシリル、ジメチルヘキシルシリル、t−ブチルジメチルシリルおよびt−ブチルジフェニルシリル、トリチル、アルキル基、アセチルおよびプロピオニル等のアシル基、メタンスルホニル、ならびにp−トルエンスルホニルを含む。好ましい塩基は、シトシン、5−フルオロシトシン、ウラシル、チミン、アデニン、グアニン、キサンチン、2,6−ジアミノプリン、6−アミノプリン、6−クロロプリンおよび2,6−ジクロロプリンを含む。
【0065】
一実施形態において、Zは、
【化11】
[式中、式1〜4中の符号*は、Nと式A、A’またはB中のメチレンとの結合点を指示する]
である。
【0066】
Zの例は、米国特許第6,583,149号においてさらに記載されており、該特許は引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0067】
Zの追加の例は、一般式:
【化12】
[式中、
YはNまたはCXであり、
Xは、H、ハロ、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、CN、CF3、N3、NO2、C6〜10アリール、C6〜10ヘテロアリールおよびCORbからなる群から選択され、
Rbは、H、OH、SH、C1〜6アルキル、C1〜6アミノアルキル、C1〜6アルコキシおよびC1〜6チオアルキルからなる群から選択され、かつ
R11は、H、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C3〜6シクロアルキル、C4〜12アルキルシクロアルキル、C6〜10アリール、およびC1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニルまたはC6〜10アリールで置換されているカルボニルからなる群から選択される]
の部分を含むがこれらに限定されない。
【0068】
Zの追加の例は、一般式:
【化13】
[式中、
Yは−NRaRbまたは−ORaであり、
L2は、共有結合(すなわち、存在しない)、−N(−R15)−、N(−R15)C(=O)−、−O−、−S−、−S(=O)−または−S(=O)2−であり、
R13は、H、C1〜6アルキル、C1〜6ヘテロアルキル、C2〜6アルケニル、C6〜10アリール、C7〜16アリールアルキル、C3〜10カルボシクリル、C6〜10ヘテロシクリルまたはC7〜16ヘテロシクリルアルキルであり、
R14は、H、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、−O(CH2)xOC(=O)OR15またはOC(=O)OR15であり、ここで、xは、2または3から10、15または20であり、
R15は、H、C1〜6アルキル、C1〜6ヘテロアルキル、C2〜6アルケニル、C6〜10アリール、C7〜16アリールアルキル、C3〜10シクロアルキル、C6〜10ヘテロシクリルまたはC7〜16ヘテロシクロアルキル(heterocyclalkyl)であり、かつ
Ra、Rbは、水素、C1〜6アルキルまたはC3〜6シクロアルキルおよびC3〜8ヘテロシクリルからなる群から独立に選択され、ここで、C3〜6シクロアルキルおよびC3〜8ヘテロシクリルは、1個または複数のC1〜5アルキルで場合により置換されていてよい]
の化合物を含むがこれらに限定されない。
【0069】
Zの追加の例は、一般式:
【化14】
[R16およびR17は、水素、C1〜6アルキルもしくはC3〜6シクロアルキル、またはC3〜8ヘテロシクリルからなる群から独立に選択され、ここで、C3〜6シクロアルキルおよびC3〜8ヘテロシクリルは、1個または複数のC1〜5アルキルで場合により置換されていてよい]
の部分を含むがこれに限定されない。
【0070】
本発明の例示的な化合物は、
【化15A】
【化15B】
または薬学的に許容されるその塩
を含むがこれらに限定されない。
【0071】
さらなる例示的な化合物を以下に示す。
【化16】
【0072】
本発明のさらなる態様によれば、シドフォビル、テノフォビル、環式シドフォビルおよびアデフォビル等の非環式ヌクレオチドホスホネートの多様な脂質誘導体を、本明細書において提供される方法および組成物において活性剤として使用してもよい。一実施形態において、活性剤は、下記の構造:
【化17】
[式中、W1、W2およびW3は、それぞれ独立に、−O−、−S−、−SO−、−SO2、−O(C=O)−、−(C=O)O−、−NH(C=O)−、−(C=O)NH−または−NH−であり、一実施形態において、それぞれ独立に、O、Sまたは−O(C=O)−であり、
nは0または1であり、mは0または1であり、pは0または1であり、
R1は、場合により置換されているアルキル、アルケニルまたはアルキニル、例えば、C1〜30アルキル、C2〜30アルケニルまたはC2〜30アルキニルであるか、あるいは一実施形態において、R1は、場合により置換されているC8〜30アルキル、C8〜30アルケニルまたはC8〜30アルキニルであるか、あるいはR1は、C8〜24アルキル、C8〜24アルケニルまたはC8〜24アルキニル(例えば、C17、C18、C19、C20、C21、C22、C23もしくはC24アルキル、アルケニルまたはアルキニル)であり、
R2およびR3は、それぞれ独立に、場合により置換されているC1〜25アルキル、C2〜25アルケニルまたはC2〜25アルキニルであり、
Dは、式V〜Xにおいて描写されている通りのメチレン基と直接連結しているシドフォビル、テノフォビル、環式シドフォビルまたはアデフォビルであってよい]を有する。例えば、Dがテノフォビルである場合、Dは、式:
【化18】
の部分である。
【0073】
Dがシドフォビルである場合、Dは、式:
【化19】
の部分である(例えば、シドフォビルまたはテノフォビルは、ホスホネートヒドロキシル基を介して式V〜Xのメチレン基と直接連結している)。
【0074】
式V〜Xのいくつかの実施形態において、
W1、W2およびW3は、それぞれ独立に、−O−、−S−または−O(CO)−であり、
nは0または1であり、mは0または1であり、pは0または1であり、
R1は、場合により置換されているC12〜24アルキルまたはアルケニル(例えば、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20、C21、C22、C23もしくはC24アルキルまたはアルケニル)であり、
R2およびR3は、それぞれ独立に、場合により置換されているC1〜24アルキルもしくはC2〜24アルケニル、またはC2〜24アルキニルである。
Dは、式V〜Xにおいて描写されている通りのメチレン基と直接連結しているシドフォビル、テノフォビル、環式シドフォビルまたはアデフォビルである。
【0075】
別の実施形態において、式V〜Xの活性化合物は、下記の構造の1つを有し、ここで、R1は、場合により置換されているC8〜24アルキル、例えばC12〜24アルキルであり、Dは、式V〜Xにおいて描写されている通りのメチレン基と直接連結しているシドフォビル、テノフォビル、環式シドフォビルまたはアデフォビルである。
【0076】
(3)本発明を行うために使用され得る、化合物、組成物、製剤および対象を治療する方法は、米国特許第6,716,825号、米国特許第7,034,014号、米国特許第7,094,772号、米国特許第7,098,197号、米国特許第7,452,898号および米国特許第7,687,480号において記載されているものを含むがこれらに限定されず、その開示は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0077】
いくつかの実施形態において、活性化合物は、構造式C:
【化20】
[式中、
R1、R1’、R2およびR2’は、独立に、−H、ハロゲン、−NH2、−OHもしくは−SHまたは場合により置換されている−XRiであり、ここで、Xは、O、S、−NHまたは−NRiiであり、かつ、RiおよびRiiは、独立に、−(C1〜C24)アルキル、−(C1〜C24)アルケニル、−(C1〜C24)アルキニルまたは−(C1〜C24)アシルである]
を有する。
【0078】
いくつかの実施形態において、R1およびR1’の少なくとも一方は−Hではない。いくつかの実施形態において、前記アルケニルまたはアシル部分は、1から6個の二重結合を場合により有し、
R3は、任意選択のリンカーL上の官能基と、またはCα上の利用可能な酸素原子と連結している、薬学的に活性なホスホネート、ビスホスホネート、または薬理活性化合物のホスホネート誘導体であり、
Xは、存在する場合、
【化21】
であり、
Lは、原子価結合、または式−J−(CR2)t−G−[式中、tは1から24の整数であり、JおよびGは、独立に、−O−、−S−、−C(O)O−または−NH−であり、かつ、Rは、−H、置換もしくは非置換アルキル、またはアルケニルである]の二官能性連結分子であり、
mは0から6の整数であり、かつ
nは0または1である。
【0079】
いくつかの実施形態において、m=0、1または2である。いくつかの実施形態において、R2およびR2’はHであり、このときプロドラッグは、治療用ホスホネートのエタンジオール、プロパンジオールまたはブタンジオール誘導体である。例示的なエタンジオールホスホネート種は、構造:
【化22】
[式中、R1、R1’、R3、Lおよびnは、上記で定義した通りである]
を有する。
【0080】
いくつかの実施形態において、プロパンジオール種は、構造:
【化23】
[式中、m=1であり、かつ、R1、R1’、R3、Lおよびnは、一般式において上記で定義した通りである]
を有する。
【化24】
[式中、m=1、R2=H、R2’=OHであり、かつ、Cα上のR2およびR2’はいずれも−Hである]。グリセロールは、光学活性分子である。グリセロールに立体特異的番号付け規則を使用すると、グリセロールキナーゼによってリン酸化される位置はsn−3位である。グリセロール残基を有する本発明の化合物において、−(L)n−R3部分は、グリセロールのsn−3またはsn−1位のいずれかで結合していてよい。
【0081】
別の実施形態において、R1は、式−O−(CH2)t−CH3[式中、tは0〜24である]を有するアルコキシ基である。より好ましくは、tは11〜19である。最も好ましくは、tは、15または17である。
【0082】
例示的なR3基は、臨床的に有用であることが公知であるビスホスホネート、例えば、化合物:
エチドロネート:1−ヒドロキシエチリデンビスホスホン酸(EDHP)、
クロドロネート:ジクロロメチレンビスホスホン酸(C12 MDP)、
チルドロネート(Tiludromate):クロロ−4−フェニルチオメチレンビスホスホン酸、
パミドロネート:3−アミノ−1−ヒドロキシプロピリデンビスホスホン酸(ADP)、
アレンドロネート:4−アミノ−1−ヒドロキシブチリデンビスホスホン酸、
オルパドロネート:3ジメチルアミノ−1−ヒドロキシプロピリデンビスホスホン酸(ジメチル−APD)、
イバンドロネート:3−メチルペンチルアミノ−1−ヒドロキシプロピリデンビスホスホン酸(BM21.0955)、
EB−1053:3−(1−ピロリジニル)−1−ヒドロキシプロピリデンビスホスホン酸、
リセドロネート(Risedmnate):2−(3−ピリジニル)−1−ヒドロキシ−エチリデンビスホスホン酸、
アミノ−オルパドロネート:3−(N,N−ジメチルアミノ−1−アミノプロピリデン)ビスホスホネート(IG9402)
等を含む。
【0083】
R3は、同じく本明細書における使用を企図されている、多様なホスホネート含有ヌクレオチド(またはそれらの対応するホスホネートに誘導体化され得るヌクレオシド)から選択されてもよい。好ましいヌクレオシドは、2−クロロ−デオキシアデノシン、1−β−D−アラビノフラノシル−シチジン(シタラビン、ara−C)、フルオロウリジン、フルオロデオキシウリジン(フロキシウリジン)、ゲムシタビン、クラドリビン、フルダラビン、ペントスタチン(2’−デオキシコホルマイシン)、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、および置換または非置換1−β−D−アラビノフラノシル−グアニン(ara−G)、1−β−D−アラビノフラノシル−アデノシン(ara−A)、1−β−D−アラビノフラノシル−ウリジン(ara−U)等、不適切な細胞増殖によって引き起こされる障害を治療するために有用なものを含む。
【0084】
ウイルス感染を治療するために有用なヌクレオシドは、R3基としての使用のために、それらの対応する5’−ホスホネートにも変換できる。そのようなホスホネート類似体は、典型的に、抗ウイルス性ヌクレオシドの5’−ヒドロキシルを置換するホスホネート(−PO3H2)またはメチレンホスホネート(−CH2−PO3H2)基のいずれかを含有する。5’−ヒドロキシルを−PO3H2で置換することによって誘導される抗ウイルス性ホスホネートのいくつかの例は、
【表1】
である。
【0085】
5’−ヒドロキシルを−CH2−PO3H2で置換することによって誘導される抗ウイルス性ホスホネートのいくつかの例は、
【表2】
である。
【0086】
他の例示的な抗ウイルス性ヌクレオチドホスホネートは、ddA、ddI、ddG、L−FMAU、DXG、DAPD、L−dA、L−dI、L−(d)T、L−dC、L−dG、FTC、ペンシクロビル等を含む抗ウイルス性ヌクレオシドから同様に誘導される。
【0087】
加えて、シドフォビル、環式シドフォビル、アデフォビル、テノフォビル等の抗ウイルス性ホスホネートを、本発明に従ってR3基として使用してよい。
【0088】
例えば、それぞれ引用することにより本明細書の一部をなすものとする下記の特許において開示されている化合物:米国特許第3,468,935号(エチドロネート)、米国特許第4,327,039号(パミドロネート)、米国特許第4,705,651号(アレンドロネート)、米国特許第4,870,063号(ビスホスホン酸誘導体)、米国特許第4,927,814号(ジホスホネート)、米国特許第5,043,437号(アジドジデオキシヌクレオシドのホスホネート)、米国特許第5,047,533号(非環式プリンホスホネートヌクレオチド類似体)、米国特許第5,142,051号(ピリミジンおよびプリン塩基のN−ホスホニルメトキシアルキル誘導体)、米国特許第5,183,815号(骨活性剤)、米国特許第5,196,409号(ビスホスホネート)、米国特許第5,247,085号(抗ウイルス性プリン化合物)、米国特許第5,300,671号(Gem−ジホスホン酸)、米国特許第5,300,687号(トリフルオロメチルベンジルホスホネート)、米国特許第5,312,954号(ビス−およびテトラキス−ホスホネート)、米国特許第5,395,826号(グアニジンアルキル−1,1−ビスホスホン酸誘導体)、米国特許第5,428,181号(ビスホスホネート誘導体)、米国特許第5,442,101号(メチレンビスホスホン酸誘導体)、米国特許第5,532,226号(トリフルオロメチルベンジルホスホネート(Trifluoromethybenzylphosphonates))、米国特許第5,656,745号(ヌクレオチド類似体)、米国特許第5,672,697号(ヌクレオシド−5’−メチレンホスホネート)、米国特許第5,717,095号(ヌクレオチド類似体)、米国特許第5,760,013号(チミジレート類似体)、米国特許第5,798,340号(ヌクレオチド類似体)、米国特許第5,840,716号(ホスホネートヌクレオチド化合物)、米国特許第5,856,314号(チオ置換、窒素含有、複素環式ホスホネート化合物)、米国特許第5,885,973号(オルパドロネート)、米国特許第5,886,179号(ヌクレオチド類似体)、米国特許第5,877,166号(鏡像異性的に純粋な2−アミノプリンホスホネートヌクレオチド類似体)、米国特許第5,922,695号(抗ウイルス性ホスホノメトキシヌクレオチド類似体)、米国特許第5,922,696号(プリンのエチレンおよびアレンホスホネート誘導体)、米国特許第5,977,089号(抗ウイルス性ホスホノメトキシヌクレオチド類似体)、米国特許第6,043,230号(抗ウイルス性ホスホノメトキシヌクレオチド類似体)、米国特許第6,069,249号(抗ウイルス性ホスホノメトキシヌクレオチド類似体);ベルギー特許第672205号(クロドロネート);欧州特許第753523号(アミノ置換ビスホスホン酸);欧州特許出願第186405号(ジェミナルジホスホネート)等、それらの薬理活性を改善するため、またはそれらの経口吸収を増大させるために、本発明に従って誘導体化され得る多くのホスホネート化合物が存在する。
【0089】
ある特定のビスホスホネート化合物は、人間を含む哺乳動物において、スクアレンシンターゼを阻害し血清中コレステロールレベルを低減させる能力を有する。これらのビスホスホネートの例は、例えば、Paulsらによる米国特許第5,441,946号および同5,563,128号、Phosphonate derivatives of lipophilic aminesにおいて開示されており、これらはいずれも引用することにより本明細書の一部をなすものとする。本発明に従って化合物を阻害するこれらのスクアレンシンターゼの類似体およびヒトの脂質障害の治療におけるそれらの使用は、本発明の範囲内である。本発明のビスホスホネートは、引用することにより本明細書の一部をなすものとする米国特許第5,270,365号において開示される通り、歯周疾患を予防または治療するために、経口的にまたは局所的に使用され得る。
【0090】
いくつかの実施形態において、活性化合物は、シドフォビル、アデフォビル、環式シドフォビルおよびテノフォビルからなる群から選択される抗ウイルス性化合物と、アルキルグリセロール、アルキルプロパンジオール、1−S−アルキルチオグリセロール、アルコキシアルカノールもしくはアルキルエタンジオールからなる群から選択されるアルコールまたは薬学的に許容されるその塩との共有結合によって形成されるホスホン酸エステルを有する。
【0091】
いくつかの実施形態において、活性化合物は、5’−ヒドロキシル基が、アルキルエタンジオールと共有結合しているホスホネートまたはメチルホスホネートを置換した、抗ウイルス性ヌクレオシド化合物を含む。
【0092】
本発明のある特定の化合物は、例えば糖部分中に1つまたは複数のキラル中心を保有し、故に光学活性形態で存在し得る。同じように、化合物がアルケニル基または不飽和アルキルもしくはアシル部分を含有する場合、化合物のシス−およびトランス−異性形態の可能性が存在する。追加の不斉炭素原子は、アルキル基等の置換基中に存在し得る。R−およびS−異性体、ならびにラセミ混合物とシス−およびトランス−異性体の混合物とを含むその混合物は、本発明によって企図されている。すべてのそのような異性体およびその混合物は、本発明に含まれることが意図されている。特定の立体異性体が望ましい場合、当業者に周知の方法により、不斉中心を含有し既に分割されている出発材料との立体特異的反応を使用して、または代替として、立体異性体の混合物をもたらす方法および既知の方法による分割によって、調製できる。
【0093】
化合物が安定な非毒性酸または塩基塩を形成するために十分塩基性または酸性である事例において、薬学的に許容される塩としての化合物の投与が適切となり得る。薬学的に許容される塩は、親化合物の望ましい生物学的活性を保持し、かつ望ましくない毒物学的効果を付与しない塩である。薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される無機または有機塩基および酸から誘導されるものを含む。適切な塩は、カリウムおよびナトリウム等のアルカリ金属;カルシウムおよびマグネシウム等のアルカリ土類金属;またはアンモニウムから誘導される塩、薬学分野において周知の数ある他の酸の中でも、ジシクロヘキシルアミンおよびN−メチル−D−グルカミン等の有機塩基とのアンモニウム塩を含む。いくつかの実施形態において、薬学的に許容される塩は、生理学的に許容されるアニオンを形成する酸と形成された有機酸付加塩、例えば、トシル酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、酒石酸塩(tartarate)、コハク酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、α−ケトグルタル酸塩およびα−グリセロリン酸塩から選択される。硫酸塩、硝酸塩、重炭酸塩および炭酸塩を含む適切な無機塩も形成され得る。
【0094】
塩を形成するために使用され得る例示的な作用物質は、(1)無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸;または有機酸、例えば、酢酸、クエン酸、フマル酸、アルギン酸、グルコン酸、ゲンチシン酸、馬尿酸、安息香酸、マレイン酸、タンニン酸、L−マンデル酸、オロチン酸、シュウ酸、サッカリン、コハク酸、L−酒石酸、アスコルビン酸、パルミチン酸、ポリグルタミン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ポリガラクツロン酸等の酸、(2)アンモニア、一または二置換アンモニア;水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属塩基;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類塩基;エルアルギニン、ジエチルアミン、ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、イミダゾール、L−リジン、2−ヒドロキシエチルモルホリン、N−メチル−グルカミン、カリウムメタノレート、亜鉛tert−ブトキシド等の有機塩基等の塩基を含むがこれらに限定されない。
【0095】
本明細書において記載されている通りの活性化合物は、公知の手順、または当業者には明らかであろうその変形形態に従って調製できる。例えば、Painterら、Evaluation of Hexadecyloxypropyl−9−R−[2−(Phosphonomethoxy)Propyl]−Adenine,CMX157,as a Potential Treatment for Human Immunodeficiency Virus Type 1 and Hepatitis B Virus Infections、Antimicrobial Agents and Chemotherapy 51、3505〜3509(2007)およびAlmondらによる米国特許出願公開第2007/0003516号を参照されたい。
【0096】
薬学的に許容される塩は、当技術分野において周知の標準的な手順を使用して、例えば、アミン等の十分に塩基性の化合物を適切な酸と反応させて生理学的に許容されるアニオンを産出することによって得ることができる。カルボン酸のアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウムまたはリチウム)またはアルカリ土類金属(例えばカルシウム)塩を作製することもできる。
【0097】
B.活性化合物の合成
本明細書において記載されている化合物の調製において利用される過程は、望ましい特定化合物によって決まる。特定置換基の選択および特定置換基の種々の可能な場所等の要因はいずれも、本発明の特定化合物の調製において辿られる経路において役割を果たす。それらの要因は、当業者には容易に認識される。
【0098】
概して、本発明の化合物は、当技術分野において公知の標準的な技術によって、およびそれに類似する公知の過程によって調製できる。本発明の化合物を調製するための一般的方法を以下に説明する。
【0099】
下記の記述において、すべての変数は、別段の注記がない限り、本明細書において記載されている式において定義されている通りである。下記の非限定的な記述は、本明細書において記載されている化合物を得るために使用され得る一般的方法論を例証するものである。
【0100】
本発明において有用な化合物(またはプロドラッグ)は、米国特許第6,716,825号のスキームI〜VIにおいて概ね描写されている通り、多様な手法で調製できる。以下に記載する一般的なホスホネートエステル化法は、例証目的でのみ提供され、いかようにも本発明を限定するものとして解釈されるべきでない。実際に、ホスホン酸とアルコールとの直接縮合のための数種の方法が開発された(例えば、R.C.Larock、Comprehensive Organic Transformations、VCH、New York、1989、966頁およびその中で引用されている参考文献を参照)。実施例において記載されている化合物および中間体の単離および精製は、要望に応じて、例えば、濾過、抽出、結晶化、フラッシュカラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、蒸留、またはそれらの手順の組合せ等、任意の適切な分離または精製手順によって達成され得る。適切な分離および単離手順の具体的例証は、以下の実施例において記す。当然ながら、他の同等の分離および単離手順を使用してもよい。
【0101】
米国特許第6,716,825号のスキームIは、パミドロネートまたはアレンドロネート等の第一級アミノ基を含有するビスホスホネートプロドラッグの合成を概説するものである。その中の実施例1は、1−O−ヘキサデシルオキシプロピル−アレンドロネート(HDP−アレンドロネート)または1−O−ヘキサデシルオキシプロピル−パミドロネート(HDP−パミドロネート)の合成のための条件を提供している。この過程において、ピリジン溶液中のジメチル4−フタルイミドブタノイルホスホネート(1b、米国特許第5,039,819号において記載されている通りに調製したもの))およびヘキサデシルオキシプロピルメチルホスファイト(2)の混合物をトリエチルアミンで処理してビスホスホネートテトラエステル3bを生み出し、これをシリカゲルクロマトグラフィーによって精製する。Kers,A.、Kers,I.、Stawinski,J.、Sobkowski,M.、Kraszewski,A.Synthesis、1995年4月、427 430において記載されている通りのジフェニルホスファイトのエステル交換によって、中間体2を得る。このように、ピリジン溶液中のジフェニルホスファイトを、最初にヘキサデシルオキシプロパン−1−オールで、次いでメタノールで処理して、化合物2を提供する。
【0102】
該過程の重要な態様は、ヘキサデシルオキシプロパン−1−オールの代わりに他の長鎖アルコールを使用して、本発明の種々の化合物を生成できることである。アセトニトリル中のブロモトリメチルシランによる中間体3bの処理により、メチルエステルを選択的に開裂してモノエステル4bを生み出す。混合溶媒系(20%メタノール/80%1,4−ジオキサン)中のヒドラジンによる4bの処理は、示されている通り、フタルイミド保護基の除去を招く。所望のアレンドロネートプロドラッグを濾過によって収集し、メタノール性アンモニアでの処理によって三アンモニウム塩に変換する。
【0103】
米国特許第6,716,825号のスキームIIは、第一級アミノ基を欠くビスホスホネートの類似体の合成を例証するものであり、この事例において、処理ステップは、フタルイミド基での保護およびその後のヒドラジン分解による脱保護が不必要であることを除き、スキーム1のものと同様である。アミノ−オルパドロネート等の1−アミノ基を有するビスホスホネートは、米国特許第6,716,825号のスキームIIIにおいて示されている過程を若干修正したものを使用して、本発明による類似体のプロドラッグに変換され得る。化合物2および3−(ジメチルアミノ)プロピオニトリルの混合物の乾燥HClによる処理、続いてジメチルホスファイトの添加によりテトラエステル3を産出し、ブロモトリメチルシランでの脱メチル化後、ヘキサデシルオキシプロピル−アミノ−オルパドロネートを生み出す。
【0104】
米国特許第6,716,825号のスキームIVは、ホスホン酸エステルとしてではなく、脂質基を親化合物の第一級アミノ基と結合させる、ビスホスホネート類似体の合成を例証するものである。
【0105】
米国特許第6,716,825号のスキームVは、シドフォビル、環式シドフォビルおよび他のホスホネートのアルキルグリセロールまたはアルキルプロパンジオール類似体の一般的合成を例証するものである。ジメチルホルムアミド中のNaHでの2,3−イソプロピリデングリセロール1の処理、続いてアルキルメタンスルホネートとの反応により、アルキルエーテル2を生み出す。酢酸での処理によるイソプロピリデン基の除去、続いてピリジン中のトリチルクロリドとの反応により、中間体3を生み出す。ハロゲン化アルキルによる中間体3のアルキル化により、化合物4を生じさせる。80%酢酸水溶液によるトリチル基の除去により、O,O−ジアルキルグリセロール5を産出する。化合物5の臭素化、続いて環式シドフォビルまたは他のホスホネート含有ヌクレオチドのナトリウム塩との反応により、所望のホスホネート付加物7を生み出す。環式付加物の開環は、水酸化ナトリウム水溶液との反応によって遂行される。プロパンジオール種の化合物は、スキームVにおける化合物5を1−O−アルキルプロパン−3−オールで代用することによって合成され得る。テノフォビルおよびアデフォビル類似体は、スキームVの反応(f)におけるcCDVをこれらのヌクレオチドホスホネートで代用することによって合成され得る。同様に、本発明の他のヌクレオチドホスホネートがこの方式で形成され得る。
【0106】
米国特許第6,716,825号のスキームVIは、例として1−O−ヘキサデシルオキシプロピル−アデフォビルを使用する本発明のヌクレオチドホスホネートの合成のための一般的方法を例証するものである。ヌクレオチドホスホネート(5mmol)を乾燥ピリジンに懸濁させ、アルコキシアルカノールまたはアルキルグリセロール誘導体(6mmol)および1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(dicyclohexylcarbodiimde)(DCC、10mmol)を添加する。混合物を加熱還流し、薄層クロマトグラフィーによってモニターしながら縮合反応が完了するまで激しく撹拌する。次いで混合物を冷却し、濾過する。濾液を減圧下で濃縮し、残留物をシリカゲルに吸着させ、フラッシュカラムクロマトグラフィー(およそ9:1ジクロロメタン/メタノールでの溶離)によって精製して、対応するホスホネートモノエステルを生み出す。
【0107】
スキームVII(Kernら、AAC 46(4):991において図1として参照されるもの)は、シドフォビル(CDV)および環式シドフォビル(cCDV)のアルコキシアルキル類似体の合成を例証するものである。図1において、矢印は、下記の試薬:(a)N,N−ジシクロヘキシルモルホリノカルボキサミド、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド、ピリジン、100℃;(b)1−ブロモ−3−オクタデシルオキシエタン(ODE)、または1−ブロモ−3−ヘキサデシルオキシプロパン(HDP)、N,N−ジメチルホルムアミド、80℃;(c)0.5M NaOHを指示している。
【0108】
当業者であれば、当業者に公知である任意の適用可能な方法を使用することにより、本願において開示されている塩を遊離酸に変換することができるはずである。
【化25】
【0109】
本明細書において記載されている通り、本発明の化合物は、上記で概ね例証されているもの、または本発明の特定のクラス、サブクラスおよび種によって例示されているもの等、1個または複数の置換基で場合により置換されていてよい。概して、用語「置換されている」は、明記された置換基のラジカルによる、所与の構造中の水素ラジカルの置き換えを指す。別段の指示がない限り、置換されている基は、該基の各置換可能な位置に置換基を有し得、任意の所与の構造における複数の位置が、明記された基から選択される複数の置換基で置換されていてよい場合、置換基は、すべての位置で同じであっても異なっていてもよい。本発明によって想定される置換基の組合せは、安定なまたは化学的に実現可能な化合物の形成を招くものとなり得る。
【0110】
C.医薬製剤および投与
一実施形態において、本発明は、本明細書において記載されている化合物を含む医薬組成物である。別の実施形態において、医薬組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む。用語「薬学的に許容される担体」は、本明細書において使用される場合、対象への治療剤の送達のためのビヒクルとして使用される、それ自体は治療剤でない任意の物質を指す。薬学的に許容される担体、および種々の組成物の製造方法の例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Publishing Co.(1990)(米国特許出願第US2007/0072831号も参照)において記載されているものを含むがこれらに限定されない。
【0111】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、第E項において記載されている1種または複数の免疫抑制剤をさらに含む。
【0112】
活性成分を単独で投与することが可能である場合、該成分を医薬製剤として提示することが好ましい。本発明の製剤は、獣医学のためおよびヒト使用のためのいずれであっても、上記で定義した通りの少なくとも1種の活性成分を、その1種または複数の薬学的に許容される担体(添加剤、賦形剤等)および場合により他の治療成分と一緒に含む。担体(複数可)は、製剤の他の成分と適合し、そのレシピエントに有害でないという意味で「許容される」ものでなくてはならない。
【0113】
本発明の化合物は、通常の実務に準拠して選択される、慣例的な担体、賦形剤および添加剤とともに製剤化され得る。錠剤は、添加剤、流動促進剤、充填剤、結合剤、賦形剤等を含有することになる。水性製剤は、無菌形態で調製され、経口投与以外による送達が意図されている場合、概して等張性となる。製剤は、「Handbook of Pharmaceutical Excipients」(1986)において説明されているもの等の添加剤を場合により含有し、アスコルビン酸および他の酸化防止剤、EDTA等のキレート剤、デキストリン等の炭水化物、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ステアリン酸等を含む。
【0114】
哺乳動物、とりわけヒトに、有効投薬量の本発明の化合物を提供するために、任意の適切な投与ルートが用いられ得る。例えば、本発明の組成物は、経口、非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、髄腔内および硬膜外を含む)、吸入噴霧、局所、経直腸、経鼻、舌下、口腔内、膣内または埋込みレザバー投与等のための製剤に適切となり得る。いくつかの実施形態において、組成物は、経口的に、局所的に、腹腔内にまたは静脈内に投与される。これらの懸濁剤は、当技術分野において公知の技術に従い、適切な分散または湿潤剤および懸濁化剤を使用して製剤化され得る。許容されるビヒクルおよび溶媒の中でも、用いられ得るのは、水、リンゲル液および等張塩化ナトリウム溶液である。加えて、滅菌固定油が溶媒または懸濁媒として慣例的に用いられる。
【0115】
本発明の化合物およびその生理学的に許容される塩(以後、活性成分と総称する)は、治療される状態に適切な任意のルート、経口、経直腸、経鼻、局所(眼内、口腔内および舌下を含む)、膣内および非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、髄腔内および硬膜外を含む)を含む適切なルートによって投与され得る。好ましい投与ルートは、例えばレシピエントの状態に伴って変動し得る。
【0116】
薬学的に許容される油を、本発明の組成物において溶媒または懸濁媒として用いてよい。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体等の脂肪酸は、注射用製剤において適宜含まれ、オリーブ油またはヒマシ油等の天然の薬学的に許容される油も、とりわけそのポリオキシエチル化バージョンで含まれる。本発明の組成物を含有する油は、カルボキシメチルセルロース、または乳剤および懸濁剤を含む薬学的に許容される剤形の製剤において一般的に使用される同様の分散剤等、長鎖アルコール賦形剤または分散剤も含有し得る。組成物は、適宜、界面活性剤(Tween(登録商標)またはSpan(登録商標)を含む非イオン性洗剤等)、他の乳化剤またはバイオアベイラビリティー増強剤をさらに含む。
【0117】
本発明の組成物は、カプセル剤、錠剤、懸濁剤または液剤を含むがこれらに限定されない経口的に許容される剤形の形態であってよい。経口剤形は、少なくとも1種の添加剤を含み得る。本発明の経口製剤において使用される添加剤は、賦形剤、不快な味または臭気をマスキングまたは相殺するために添加される物質、香味料、色素、香料、および組成物の外観を改善するために添加される物質を含み得る。本発明のいくつかの経口剤形は、組成物の用量単位の、経口投与に適したカプセル剤または錠剤等の不連続な物品への形成を可能にしまたは容易にする、崩壊剤、結合剤、接着剤、湿潤剤、ポリマー、滑沢剤または流動促進剤等の添加剤を適宜含む。本発明の添加剤含有錠剤組成物は、1種または複数の添加剤を本発明の化合物と、溶解、懸濁、ナノ粒子、微粒子、またはその制御放出、緩徐放出、プログラム放出、時限放出、パルス放出、持続放出もしくは長時間放出形態の組合せにおいて併せるステップを含む、任意の適切な調剤方法によって調製できる。
【0118】
経口投与に適した本発明の製剤は、所定量の活性成分をそれぞれ含有するカプセル剤、カシェ剤または錠剤等の不連続単位として、散剤または顆粒剤として、水性液体または非水性液体中の液剤または懸濁剤として、あるいは水中油型液体乳剤または油中水型液体乳剤として提示され得る。活性成分は、ボーラス剤、舐剤またはペースト剤としても提示され得る。
【0119】
錠剤は、場合により1種または複数の副成分とともに、圧縮または成型によって作製され得る。圧縮錠剤は、結合剤、滑沢剤、不活性賦形剤、保存剤、表面活性剤または分散剤と場合により混合されている散剤または顆粒剤等の易流動性形態の活性成分を、適切なマシン内で圧縮することによって調製できる。成型錠剤は、不活性液体賦形剤で湿らせた粉末状化合物の混合物を、適切なマシン内で成型することによって作製できる。錠剤は、場合によりコーティングされているかまたは切り込み線が入れられていてよく、その中の活性成分の緩徐または制御放出を提供するように製剤化されていてよい。
【0120】
口中への局所投与に適した製剤は、香味付けされた基剤、通常はスクロースおよびアカシアまたはトラガカント中に活性成分を含むロゼンジ剤、ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシア等の不活性基剤中に活性成分を含むパステル剤、ならびに適切な液体担体中に活性成分を含む洗口剤を含む。
【0121】
経直腸投与用の製剤は、例えばココアバターまたはサリチレートを含む適切な基剤を有する坐剤として提示され得る。
【0122】
担体が固体である経鼻投与に適した製剤は、例えば20から500ミクロンの範囲内の粒子サイズ(20から500ミクロンの間の範囲内の粒子サイズを、30ミクロン、35ミクロン等、5ミクロン刻みで含む)を有する粗散剤を含み、鼻で吸い込む方式で、すなわち、鼻に接近して保持した散剤の容器から鼻孔を経由する急速吸入によって、投与される。担体が液体である場合、例えば鼻腔用スプレーまたは点鼻剤としての投与に適した製剤は、活性成分の水性または油性溶液を含む。エアゾール投与に適した製剤は、慣例的な方法に従って調製でき、ニューモシスチス肺炎の治療用のペンタミジン等、他の治療剤とともに送達され得る。
【0123】
膣内投与に適した製剤は、活性成分に加えて、適切であることが当技術分野において公知であるような担体を含有する、ペッサリー、リング、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、フォーム剤またはスプレー製剤として提示され得る。
【0124】
非経口投与に適した製剤は、製剤を意図されているレシピエントの血液と等張にする、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤および溶質を含有し得る水性および非水性滅菌注射液、ならびに懸濁化剤および増粘剤を含み得る水性および非水性滅菌懸濁剤を含む。製剤は、単回用量または複数回用量容器、例えば、密封したアンプルおよびバイアル内に提示され得、滅菌液体担体、例えば注射用水を使用直前に添加するだけでよいフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存できる。即席の注射液および懸濁液は、先に記載した種類の滅菌粉末、顆粒剤および錠剤から調製できる。好ましい単位投薬量製剤は、本明細書において上記に列挙した通りの日用量もしくは単位分割日用量、またはその適切な画分の活性成分を含有するものである。
【0125】
特に上述した成分に加えて、本発明の製剤は、問題の製剤の種類を考慮して当該技術分野において慣例的な他の作用物質を含み得ること、例えば、経口投与に適した製剤は香味剤を含み得ることを理解すべきである。
【0126】
本発明の薬学的に許容される組成物は、活性構成要素が1種または複数の担体に懸濁または溶解されている、局所液剤、軟膏剤またはクリーム剤の形態であってよい。本発明の化合物の局所投与用の担体は、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ロウおよび水を含むがこれらに限定されない。局所製剤が軟膏剤またはクリーム剤の形態である場合、適切な担体は、鉱油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステルロウ、セテアリルアルコール、2オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水を含むがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、本発明の局所組成物は、スプレー剤の形態である。
【0127】
本発明の薬学的に許容される組成物は、経鼻、エアゾールによって、または吸入投与ルートによって投与されてもよい。そのような組成物は、医薬製剤の分野において周知の技術に従って調製され、ベンジルアルコールまたは他の適切な保存剤、バイオアベイラビリティーを増強するための吸収促進剤、フッ化炭素、および/または他の慣例的な可溶化または分散剤を用い、生理食塩水中溶液として調製され得る。いくつかの実施形態において、本発明の組成物の経鼻投与は、スプレー剤の形態である。噴霧適用のための任意の適切な担体が本発明において使用され得る。
【0128】
代替として、本発明の薬学的に許容される組成物は、経直腸投与用の坐剤の形態であってよい。坐剤は、作用物質を、室温では固体であるが直腸温では液体であり、したがって直腸内で融解して薬物を放出する、適切な非刺激性の添加剤と混合することによって調製できる。そのような材料は、ココアバター、蜜ロウおよびポリエチレングリコールを含む。
【0129】
加えて、本発明の化合物を含む医薬製剤は、非経口製剤の形態であってよい。用語「非経口」は、本明細書において使用される場合、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、肝内、病巣内および頭蓋内注射または注入技術を含む。
【0130】
ある特定の実施形態において、本発明の薬学的(pharmaceutically)組成物は、経口投与用に製剤化される。ヒトへの経口投与では、投薬量範囲は、分割用量で体重1kgにつき0.01から1000mgである。一実施形態において、投薬量範囲は、分割用量で体重1kgにつき0.1から100mgである。別の実施形態において、投薬量範囲は、分割用量で体重1kgにつき0.5から20mgである。経口投与では、組成物は、治療される患者に対する投薬量の対症調整のために、1.0から1000ミリグラムの活性成分、特に、1、5、10、15、20、25、50、75、100、150、200、250、300、400、500、600、750、800、900および1000ミリグラムの活性成分を含有する錠剤またはカプセル剤の形態で提供され得る。
【0131】
任意の特定の患者のための具体的な投薬量および治療レジメンは、用いられる特定化合物の活性、投薬モード、年齢、体重、全身の健康、性別、食習慣、排泄率、薬物の組合せ、および治療を行う医師の判断、治療されている状態および該状態の重症度を含む多様な要因によって決まることも理解すべきである。そのような投薬量は、当業者によって容易に解明され得る。この投薬レジメンは、最適な治療応答を提供するように調整され得る。
【0132】
本発明は、上記で定義した通りの少なくとも1種の活性成分を獣医用担体と一緒に含む獣医用組成物をさらに提供する。獣医用担体は、組成物を投与する目的のために有用な材料であり、獣医学分野において別様に不活性または許容され、かつ活性成分と適合する、固体、液体または気体材料であってよい。これらの獣医用組成物は、経口的に、非経口的に、または任意の他の所望のルートによって投与され得る。
【0133】
本発明の化合物を使用して、活性成分として1種または複数の本発明の化合物を含有し、ここで該活性成分の放出は、頻度の少ない投薬を可能にするように、または所与の発明化合物の薬物動態もしくは毒性プロファイルを改善するように制御および調節され得る、制御放出医薬製剤(「制御放出製剤」)を提供することができる。不連続単位が1種または複数の本発明の化合物を含む、経口投与に適応する制御放出製剤は、慣例的な方法に従って調製できる。制御放出製剤は、種々のウイルス感染および/またはウイルス誘発腫瘍の治療または予防に用いられ得る。例示的なウイルス感染および/またはウイルス誘発腫瘍は、ヘルペスウイルス(CMV、HSV1、HSV2、VZV等)、パピローマウイルス、ポリオーマウイルス(JCウイルス、BKウイルス、SV40等)、レトロウイルス、アデノウイルス等のウイルスに関連するヒトウイルス感染または腫瘍を含むがこれらに限定されない。制御放出製剤を使用して、結核、マラリア、ニューモシスチス肺炎、CMV網膜炎、AIDS、AIDS関連症候群(ARC)および進行性全身性リンパ節症(lymphadeopathy)(PGL)等のHIV感染および関連状態、ならびに多発性硬化症および熱帯性痙性不全対麻痺等のAIDS関連神経学的状態を治療することもできる。本発明による制御放出製剤で治療され得る他のヒトレトロウイルス感染は、ヒトT細胞リンパ向性ウイルスおよびHIV−2感染を含む。本発明は、したがって、上述したヒトまたは獣医学的状態の治療または予防において使用するための医薬製剤を提供する。
【0134】
薬物動態増強剤。本発明の化合物は、薬物動態増強剤(時に「ブースター剤」とも称される)と組み合わせて用いられ得る。本発明の一態様は、本発明の化合物の薬物動態を増強するまたは「ブーストする」ために有効量の増強剤の使用を提供する。増強剤の有効量、例えば、本発明の活性化合物または追加の活性化合物を増強するために必要な量は、単独で使用される場合のそのプロファイルと比較した際に、化合物の薬物動態プロファイルまたは活性を改善するのに必要な量である。化合物は、増強剤の添加がない場合よりも効果的な薬物動態プロファイルを保有する。化合物の効能を増強するために使用される薬物動態増強剤の量は、好ましくは、治療量以下(例えば、患者における感染を治療的に処置するために慣例的に使用されるブースター剤の量を下回る投薬量)である。本発明の化合物の増強用量は、感染を治療するための治療量以下であるが、本発明の化合物の代謝変調を達成するには十分高いため、患者におけるそれらの暴露は、バイオアベイラビリティーの増大、血中レベルの増大、半減期の増大、時間対ピーク血漿濃度の増大、HIVインテグラーゼ、RTもしくはプロテアーゼの阻害の増大/加速、および/または全身(systematic)クリアランスの低減によってブーストされる。薬物動態増強剤の一例は、RITONAVIR(商標)(Abbott Laboratories)である。
【0135】
組合せ。上記で注記した通り、本発明の組成物は、上記の第A項において記載されている通りの活性化合物を、以下の第E項において記載されているような1種または複数(例えば、1、2、3種)の免疫抑制剤と、当技術分野において公知のものと類似の方式で組み合わせて含み得る。
【0136】
そのような組合せの具体例は、ダクリズマブ、バシリキシマブ、タクロリムス、シロリムス、ミコフェノレート(ナトリウムまたはモフェチルとして)、シクロスポリンA、グルココルチコイド、抗CD3モノクローナル抗体(OKT3)、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)、抗CD52モノクローナル抗体(キャンパス1−H)、アザチオプリン、エベロリムス、ダクチノマイシン、シクロフォスファミド、白金、ニトロソ尿素、メトトレキサート、アザチオプリン、メルカプトプリン、ムロモナブ、IFNガンマ、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、タイサブリ(ナタリズマブ)、フィンゴリモドおよびそれらの組合せから選択される少なくとも1種の免疫抑制剤と組み合わせたCMX001または薬学的に許容されるその塩を含むがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、CMX001、タイサブリ(ナタリズマブ)および薬学的に許容される担体を含む。
【0137】
D.使用方法
本発明の一態様は、対象(例えばヒト)における免疫抑制に関連するウイルス誘発性状態/疾患(例えば、ウイルス誘発腫瘍またはウイルス感染)を治療する方法であって、該対象に、治療有効量の本明細書において記載されている化合物を投与するステップを含む方法を提供する。一実施形態において、本明細書において記載されている化合物は、ウイルス複製および/またはウイルス感染/形質転換細胞を特異的に標的とする。例えば、CMX001は、BKウイルスおよびJCウイルス感染細胞等のポリオーマウイルス感染細胞に対する特異性を実証する(以下の実施例2参照)。一実施形態において、本明細書において記載されている化合物は、ウイルス感染および/または形質転換細胞に対し、正常(非感染細胞)と比較して高い細胞毒性を有する。
【0138】
一態様によれば、本明細書において記載されている化合物を使用して、ウイルス誘発腫瘍を治療することもできる。例示的なウイルス誘発腫瘍は、脳がん、結腸直腸がん、上咽頭癌(NPC)、バーキットリンパ腫(BL)、リンパ腫(例えば、B細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、ダンカン症候群)、メルケル細胞癌(MCC)、前立腺がん、肝細胞癌、子宮頸がん、肺がん、頭頸部扁平上皮がん、前立腺がん、乳がん、急性リンパ性白血病、成人急性骨髄性白血病、成人非ホジキンリンパ腫、脳腫瘍、小児がん、小児肉腫、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、食道がん、有毛細胞白血病、腎臓がん、肝臓がん、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、口腔がん、膵臓がん、原発性中枢神経系リンパ腫、皮膚がんおよびそれらの組合せから選択される。一実施形態において、ウイルス誘発腫瘍は、パピローマウイルスに関連する子宮頸がんである。別の実施形態において、ウイルス誘発腫瘍は、エプスタイン・バーウイルス(EBV)に関連する移植後リンパ増殖性障害(PTLD)である。
【0139】
いくつかの実施形態において、ウイルス誘発腫瘍は、ポリオーマウイルス(BK、ジョン・カニンガムウイルス(JCV)、メルケル細胞ウイルス(MCV)、KIポリオーマウイルス(KIV)、WUポリオーマウイルス(WUV)、シミアンウイルス40(SV40)を含む)、パピローマウイルス(ヒトパピローマウイルス、ワタオウサギパピローマウイルス、ウマパピローマウイルスおよびウシパピローマウイルスを含む)、単純ヘルペスウイルス−1(HSV−1)、単純ヘルペスウイルス−2(HSV−2)、ヒトヘルペスウイルス6(HHV−6)等のヒトヘルペスウイルスを含むがこれらに限定されないヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、リンホクリプトウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)(ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)を含むがこれに限定されない)、オルトポックスウイルス、天然痘、牛痘、ラクダ痘、サル痘、B型肝炎、C型肝炎ウイルス、大痘瘡および小痘瘡、ワクシニア、エボラウイルス、パピローマウイルス、アデノウイルスまたはポリオーマウイルス、ならびにそれらの組合せに関連する。
【0140】
一実施形態において、ウイルス誘発腫瘍は、ポリオーマウイルス、パピローマウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスまたはそれらの組合せに関連する。前記ウイルス誘発腫瘍が、ヒトパピローマウイルス、ワタオウサギパピローマウイルス、ウマパピローマウイルスおよびウシパピローマウイルスからなる群から選択されるパピローマウイルスに関連する、請求項4に記載の方法。
【0141】
いくつかの実施形態において、ウイルス誘発腫瘍は、BKウイルスまたはJCVに関連する。
【0142】
一実施形態において、本明細書において記載されている腫瘍は、サイトメガロウイルスに関連する結腸偽腫瘍;サイトメガロウイルスに関連する膠芽細胞腫、エプスタイン・バーウイルスに関連する胃がん、SV(40)またはCMVに関連する脳腫瘍、B型肝炎および/またはC型肝炎ウイルスに関連する肝臓がん、メルケル細胞ポリオーマウイルスに関連するメルケル細胞癌;EBVに関連するバーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)または上咽頭癌、あるいは、ヒトパピローマウイルスに関連する頚部、肛門または陰茎のがんである。
【0143】
一実施形態において、対象はヒトである。一実施形態において、対象は免疫無防備状態の対象である。
【0144】
本明細書において使用される場合、免疫不全(または免疫機能不全)は、感染性疾患と闘う免疫系の能力が損なわれているまたは全く存在しない状況である。免疫無防備状態の対象は、任意の種類のまたは任意のレベルの免疫不全を有する対象である。例示的な免疫無防備状態の対象は、原発性免疫不全を持つ対象(生まれつき免疫系に欠陥がある対象)および続発性(後天性)免疫不全を持つ対象を含むがこれらに限定されない。加えて、続発性免疫不全の他の一般的な原因は、栄養失調、加齢および特定の投薬法(例えば、化学療法、疾患修飾性抗リウマチ薬、臓器移植後の免疫抑制薬、グルココルチコイド等の免疫抑制療法)を含むがこれらに限定されない。免疫系を直接的にまたは間接的に低下させる他の例示的な疾患は、各種のがん(例えば、骨髄および血球(白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫))、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)によって引き起こされる後天性免疫不全症候群(AIDS)、慢性感染および自己免疫疾患(例えば、急性播種性脳脊髄炎(ADEM)、アジソン病、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群(APS)、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患、水疱性類天疱瘡、セリアック病、シャーガス病、慢性閉塞性肺疾患、クローン病、皮膚筋炎、1型真性糖尿病、子宮内膜症、グッドパスチャー症候群、バセドウ病、ギラン・バレー症候群(GBS)、橋本病、化膿性汗腺炎、川崎病、IgA腎症、特発性血小板減少性紫斑病、間質性膀胱炎、エリテマトーデス、混合性結合組織疾患、限局性強皮症、多発性硬化症(MS)、重症筋無力症、ナルコレプシー、神経筋緊張症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、乾癬、乾癬性関節炎、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、関節リウマチ、統合失調症、強皮症、シェーグレン症候群、スティッフパーソン症候群、側頭動脈炎(「巨細胞性動脈炎」としても公知である)、潰瘍性結腸炎、血管炎、白斑、ウェゲナー肉芽腫症)を含むがこれらに限定されない。
【0145】
一実施形態において、対象は、免疫抑制剤を使用中の移植患者である。一実施形態において、移植患者は、腎臓、骨髄、肝臓、肺、胃、骨、精巣、心臓、膵臓および腸からなる群から選択される少なくとも1つの移植臓器を有する。
【0146】
いくつかの実施形態において、本明細書において記載されている化合物は、免疫抑制薬治療中の対象(例えば、移植患者または過敏性免疫系を患っている対象)、ある特定の種類の化学療法を受けている対象、またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染している対象に適用される。
【0147】
さらに、一実施形態において、ウイルス誘発腫瘍は、脳がん、結腸直腸がん、上咽頭癌(NPC)、バーキットリンパ腫(BL)、リンパ腫(例えば、B細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、ダンカン症候群)、メルケル細胞癌(MCC)、前立腺がん、肝細胞癌、子宮頸がんおよびそれらの組合せから選択される。
【0148】
本発明のいくつかの態様によれば、免疫抑制剤を必要としている対象について、本明細書において記載されている化合物は、ウイルス感染および/またはウイルス誘発腫瘍を治療するための免疫抑制剤と(同時発生的にまたは順次に)組み合わせて投与され得る。任意の適切な免疫抑制剤を、本明細書において記載されている化合物と組み合わせて使用してよい。例示的な免疫抑制剤を以下の第E項において記載する。
【0149】
一実施形態において、
【化26】
の構造を有する化合物または薬学的に許容されるその塩は、ウイルス感染および/またはウイルス誘発腫瘍を治療するためのタイサブリ(ナタリズマブ)である少なくとも1種の免疫抑制剤と組み合わせて投与され得る。
【0150】
E.ウイルス感染またはウイルス誘発腫瘍を治療するための免疫抑制剤との組合せ
本明細書において記載されている化合物は、免疫抑制投薬法を必要としている対象のウイルス感染またはウイルス誘発腫瘍を治療するための追加の免疫抑制剤と組み合わせて使用され得る。当業者に公知である任意の免疫抑制剤を、本明細書において記載されている化合物と組み合わせて使用してよい。例示的な免疫抑制剤は、ダクリズマブ、バシリキシマブ、タクロリムス、シロリムス、ミコフェノレート(ナトリウムまたはモフェチルとして)、シクロスポリンA、グルココルチコイド、抗CD3モノクローナル抗体(OKT3)、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)、抗CD52モノクローナル抗体(キャンパス1−H)、アザチオプリン、エベロリムス、ダクチノマイシン、シクロフォスファミド、白金、ニトロソ尿素、メトトレキサート、アザチオプリン、メルカプトプリン、ムロモナブ、IFNガンマ、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、タイサブリ(ナタリズマブ)、フィンゴリモドおよびそれらの組合せを含むがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、CMX001およびタイサブリ(ナタリズマブ)を含む。
【0151】
追加の例示的な免疫抑制剤は、Mukherjeeら、A comprehensive review of immunosuppression used for liver transplantation、Journal of Transplantation、2009巻、論文ID701464、およびWoodroffeら、Clinical and cost−effectiveness of newer immunosuppressive regimens in renal transplantation:a systematic review and modeling study、Health Technology Assessment、9巻、21号(2005)においてさらに記載されている。
【0152】
F.実施例
ここで、下記の例を参照して、本発明をさらに詳細に記述する。しかしながら、これらの例は例証を目的として与えられるものであり、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきでない。
【0153】
下記の実施例において、CMX001は、
【化27】
または薬学的に許容されるその塩である。
【0154】
下記の実施例において、シドフォビルは、
【化28】
である。
【実施例1】
【0155】
I BKウイルスに対するCMX001の抗ウイルス活性
BKウイルスの複製を阻害するCMX001の活性を試験するために、BKウイルスのストックをHFF細胞中で調製し、ウイルスストックの希釈物を使用して、初代ヒト尿細管上皮細胞(RPTEC)を感染させた。次いで、感染細胞を含有するウェルにCMX001を添加し、プレートを5日間インキュベートした。全DNAを該プレートから調製し、ウイルスのDNAをqPCRによって定量化した。
【0156】
BKウイルス複製に対するCMX001のインビトロ活性を表1に示す。CMX001は、RPTECにおいてBKウイルスに対する良好な活性を呈した。CMX001の活性は、シドフォビルよりも強力であった(表1参照)。陰性対照薬物であるガンシクロビルは、本質的に不活性であった。細胞株におけるアッセイ最適化により、多重感染がシドフォビルおよびCMX001の有効性に衝撃を与えるらしいことも明らかにされた。
【表3】
【0157】
II JCウイルスに対するCMX001の抗ウイルス活性
JCウイルスを阻害するCMX001の能力を試験するために、COS−7細胞に、0.2の推定TCID50でJCV(Mad−4)を感染させた。37℃で2時間インキュベーション後、CMX001の量を増大させることなく、または増大させて、上清を新鮮培地に置き換え、5日間インキュベートした。DNA抽出後、JCウイルスをqPCRによって定量化した。
【0158】
JCウイルス複製を阻害するCMX001のインビトロデータを表2に示す。表2に示されている通り、CMX001はJCウイルスに対して活性であった。
【表4】
【実施例2】
【0159】
I.CMX001は初代ヒト尿細管細胞においてポリオーマウイルスBK複製を阻害する
A.材料および方法
Bernhoffらによって記載されている通りの初代ヒト近位尿細管上皮細胞(RPTEC)、BKV(Dunlop)およびすべての方法(Bernhoffら、Cidofovir inhibits polyomavirus BK replication in human renal tubular cells downstream of viral early gene expression、Am J Transplant 8、1413〜1422(2008)を参照)。唯一の例外として、細胞内または細胞外BKV DNA負荷を定量化するための定量的PCR(qPCR)は、LTag遺伝子も標的とする異なるプライマー/プローブセットで実施した(Hirschら、J.Prospective study of polyomavirus type BK replication and nephropathy in renal−transplant recipients、N Engl J Med.、347、488〜496(2002)を参照)。各実験の前に、CMX001をメタノール/水/水酸化アンモニウム(50/50/2)中1mg/mlに新しく溶解した。それをRPTEC成長培地中でさらに希釈した。
【0160】
B.実験および結果
(1)阻害濃度IC90の決定
BKV後代に対するCMX001の効果を調査するために、感染2時間後に漸増濃度のCMX001を添加し、上清を感染72時間後に収穫した。CMX001が細胞外BKV負荷を濃度依存方式で低減させたことが観察された(図1a参照)。ウイルス流入を減じた場合、CMX001 0.31μMは、阻害濃度IC90を定義する平均90%だけBKV負荷を低減させた。BKV感染RPTECの感染72時間後における免疫蛍光染色は、CMX001濃度を増大させるにつれてBKV感染細胞の数が減少することを実証した(図1b)。CMX001 0.31uMで、BKVアグノタンパク質発現細胞におけるおよそ60%の減少が見られた。LTagを発現している細胞の数はあまり低減しなかったが、シグナル強度は未処理細胞におけるものよりも低かった。2.5uMのCMX001では、わずかな細胞のみがアグノタンパク質およびLTag発現について陽性であったが、ウェル中の細胞総数は低減しているように思われた。5uMのCMX001では、弱くLTag染色された細胞のみがわずかに観察されたがアグノタンパク質発現細胞は観察されず、総細胞数に対してはより顕著な効果があった。10uMのCMX001では、BKV感染細胞は観察されず、総細胞数はより一層低減した。結論として、CMX001は初期および後期BKVタンパク質の発現ならびに細胞外後代の産生を低減させたが、高濃度ではRPTECの増殖速度にも影響を及ぼすようであったということである。
【0161】
(2)RPTECに対するCMX001の効果(DNA複製および代謝活性)
位相差顕微鏡法によるRPTECの検査は、CMX001 0.31μMへの3日間の暴露中、生存能力低下の兆候を何ら明らかにしなかった。より感受性の高いアッセイを使用するために、非感染RPTECにおけるBrdU取り込みおよびWST−1アッセイを使用する、宿主細胞DNA複製および代謝活性を使用した。CMX001の添加は、非感染RPTECのDNA複製(図2a)および代謝活性(図2b)の両方を濃度依存方式で低減させた。未処理RPTECと比較して、0.08から10μMのCMX001は、DNA複製を15%から93%、および代謝活性を41%から88%、それぞれ減少させた。BKV複製の90%阻害を引き起こした0.31μMの濃度において、BrdU取り込みおよびWST−1活性におけるおよそ20%の低減が観察される。
【0162】
(3)BKVゲノム複製に対するCMX001の効果
BKVゲノム複製がCMX001の影響を受けたかを調査するために、感染24〜72時間後における細胞内BKV負荷をqPCRによって計測した。記載されている通りのアスパルトアシラーゼ(ACY)遺伝子を使用して、細胞内BKV負荷を細胞数に正規化した(Bernhoffら、2008;Randhawaら、Quantitation of DNA of polyomaviruses BK and JC in human kidneys.J Infect Dis.、192、504〜509(2005)を参照)。未処理RPTECと比較して、CMX001 0.31μMは、細胞内BKV負荷を、感染48時間後において94%、72時間後において63%低減させた(図3)。次いで、BKV生活環の第2ステップである細胞内BKVゲノム複製に対するCMX001の有意な阻害効果を同定することができる。このステップは、2つの機序によって:1.後期遺伝子転写のためのDNAテンプレートを増大させること、および2.後期プロモーターからの転写を活性化することによって、ウイルスの後期遺伝子発現も増大させる、LTag発現を必要とすることが公知である(Cole,C.N.、Polyomavirinae:The Viruses and Their Replication.In Fields Virology、第3版、1997〜2043頁、B.N.Fields、D.M.KnipeおよびP.H.Howley編、New York:Lippincott−Raven(1996))。
【0163】
(4)BKV初期および後期遺伝子発現に対するCMX001の効果
単一細胞レベルでのLTagの発現を調査するために、感染48および72時間後に免疫蛍光染色を実施した。感染48時間後において、BKV陽性細胞の数は、CMX001および未処理ウェルにおけるものとほぼ同じであった。感染72時間後において、CMX001処理細胞は、より少ないLTagプロ細胞を発現したようであった(図4a)。感染48および72時間後における後期タンパク質発現を免疫蛍光染色によって検査すると、CMX001処理RPTECにおいてアグノタンパク質(図4a)およびVP1(データは図示せず)の有意な低減が観察された。ウエスタンブロッティングにより、VP1の減少は感染48および72時間後においてそれぞれ86%および63%であることが分かり(図4b)、一方、LTag染色は感染48および72時間後においてそれぞれ33%および30%低減したことが分かった。興味深いことに、免疫蛍光法は、最大2.5μMのCMX001濃度を持つ未処理細胞にも匹敵するレベルでアグノタンパク質を発現するCMX001処理培養物において、いくつかの治療抵抗性細胞も明らかにした。CMX001は後期タンパク質発現を有意に低減させるだけでなく、感染の後期の時点において初期タンパク質発現も阻害すると結論付けられた。
【0164】
(5)細胞外BKV負荷におけるCMX001の時間経過
BKV後代に対するCMX001の効果を経時的に検査するために、処理および未処理細胞の上清を指示された時点で収穫した。以前に記載された通り(Bernhoffら、2008)、未処理RPTEC中におけるBKV(Dunlop)の最初の生活環の完了には、48から72時間の間を要する。感染48時間後に、未処理細胞からの上清においてBKV負荷の増大が観察されたが、感染48時間後のCMX001処理細胞においては流入ウイルスのみが検出できた。72時間では、未処理およびCMX001処理細胞の両方においてウイルス負荷の増大が見られたが、CMX001処理細胞からの上清におけるBKV負荷は、未処理細胞におけるものよりも84%低かった(1.13×108Geq/ml)(図5)。CMX001処理RPTECにおける後代産生は、遅延し得ると結論付けられる。
【0165】
(6)感染前におけるRPTECの処理
ウイルス接種前における細胞の前処理によってBKV感染を阻害し得るか否かを調査するために、RPTECを4時間処理し、かつCMX001を感染20時間前に完全成長培地によって置き換えるか、または細胞を感染24時間前に23時間処理するがCMX001を感染1時間前に完全成長培地で置き換えるかのいずれかとした。感染20時間前に終了する4時間の処理は感染72時間後のBKV負荷にほとんど効果を及ぼさなかったが、感染1時間前までの23時間の処理は、ウイルス負荷を約50%低減させた(図6)。故に、CMX001前処理は、BKV複製を低減させるが予防しない。
【0166】
(7)CMX001の安定性
CMX001の安定性を検査するために、ストック溶液1mg/mlを4または−20℃で1週間置き、次いで0.31uMに希釈し、感染3日後にBKV感染RPTECにおける細胞外BKV負荷を計測することにより、その抗ウイルス効果について試験した。新しく調製した薬物と比較して、4℃で保存した薬物は60%未満の活性を有し、一方、−20℃で保存した薬物はおよそ90%の活性を有していた(図7)。
【0167】
C.考察
BKV感染RPTECをCMX001で処理することによる暫定結果を、図1〜7および図1〜7に関連する上記の考察に示した。CMX001は、CDVよりも約400倍低い濃度におけるBKVゲノム複製のレベルでBKV感染を阻害する(CDV 40ug/ml=127uM対CMX001 0.31uM)。0.31uMの濃度のCMX001は、IC90を定義するおよそ90%、細胞外BKV負荷を低減させた。同じCMX001濃度は、非感染細胞における細胞DNA複製を22%、および代謝活性を20%減少させた。しかしながら、先の調査(Bernhoffら、2008)において、BKV感染は細胞DNA複製を約40%、および代謝活性を20%前後(round)増大させ、したがって、CMX001 0.31uMを使用してBKV−感染細胞を治療すると、DNA複製および代謝活性の両方が非感染細胞のレベルになるという仮説が成り立つことが示されているものがある。
【0168】
0.31uMのCMX001は、感染48時間後にBKV DNA複製を94%低減させる。同時に、VP1発現は86%低減する。しかしながら、感染72時間後において、DNA複製の減少はわずか63%である。この矛盾は、感染上清に対する効果を含むさらなる研究を必要とする。
【0169】
感染24、48および72時間後に細胞外BKV負荷を計測したところ、感染48時間後のCMX001処理細胞において流入のみが検出可能であり、感染48時間後よりも前に放出されるウイルスは極めて少ないまたは無いことを指示していた。感染72時間後において、BKV負荷におけるごくわずかな増大が観察され、未処理細胞と比較して84%の低減に相当するものであった。
【0170】
BKV複製を予防し得る感染前のCMX001によるRPTECの前処理の効果を検査するための実験を行い、結果を上記に示す。感染24時間前の4時間の前処理は、BKV複製を阻害しなかった。しかしながら、感染1時間前までの24時間の前処理は、ウイルス負荷を約50%低減させた。故に、細胞の前処理は、BKV複製を部分的に阻害することになる。
【0171】
感染72時間後のCMX001 IC90処理細胞およびCDV IC90処理細胞の免疫蛍光染色を比較すると(Bernhoffら、2008)、感染72時間後のLT−ag発現は、CDVによってよりもCMX001によって、より低減するようである。CDVに関しては、IC90よりも8倍高いCMX001濃度においても治療抵抗性細胞が存在していた。CMX001は有機アニオン輸送体に依存しないため、細胞内におけるこの輸送体の選択的発現によって該現象を説明することはできない。
【0172】
各CMX001実験について、新鮮なストック溶液を調製した。これにより、実験ごとの濃度変動をわずかにすることができた。そこで、CMX001ストック溶液を保存することの効果を試験した。4℃または−20℃における1週間のCMX001の保存は、抗ウイルス活性を減少させた。しかしながら、保存したCMX001と新しく調製したCMX001との異なる活性が、ストックにおけるわずかな濃度差によるものである可能性は排除できない。
【0173】
結論として、初代ヒト近位尿細管上皮細胞におけるBKウイルス複製に対するCMX001のIC90は0.31μMであったということである。非感染細胞において、0.31μMのCMX001は、代謝活性およびDNA複製をおよそ20%阻害した。
【0174】
加えて、CMX001はCDVのように、最初のLT−ag発現の下流の初代ヒトRPTECにおけるBKV複製を阻害する。おそらく、より好適な取り込み(uptake)により、RPTERCSにおけるCMX001についてのIC90は、CDVについてのものよりも410倍低い。宿主細胞毒性は、CDVに匹敵するようである。BKV治療におけるCMX001の明らかな利点は、経口投与が可能なことである。
【0175】
II.CMX001によるポリオーマウイルスJC複製の阻害
A.材料および方法
(1)細胞培養物
COS−7細胞をDMEM−5%中で成長させた。前駆細胞に由来する星状膠細胞を、ゲンタマイシンを補充したMEM−E−10%中に維持した。感染COS−7細胞からのJCV Mad−4(ATCC VR−1583)上清に、1ml当たり104.5のTCID50を加えたものを、培養細胞の感染に使用した。
【0176】
(2)感染およびCDV処理
COS−7または星状膠細胞に、60〜70%の集密で、JCV(Mad−4)を0.2の推定TCID50で感染させた。37℃で2時間インキュベーション後、CMX001の濃度を増大させることなく、または増大させて、上清を新鮮培地に置き換えた。CMX001をメタノール/水/水酸化アンモニウム(50/50/2)中1mg/mlに新しく溶解し、次いで、それぞれの成長培地中でさらに希釈した。
【0177】
(3)JCVゲノムのトランスフェクション
リポフェクタミン2000(Invitrogen)を製造業者の取扱説明書に従って0.8:1のDNA:脂質比で使用することにより、再連結したJCV Mad−4 DNAを50%から70%集密的COS−7細胞にトランスフェクトした。
【0178】
(4)免疫蛍光法
リン酸緩衝生理食塩水、pH6.8(PBS)中4%のp−ホルムアルデヒド(PFA)で、室温にて20分間細胞を固定し、PBS中0.2%のトリトンX−100で、室温にて10分間透過化した。室温にて5分間、PBSで2回洗浄した後、PFAをPBS中0.5MのNH4Clで室温にて7分間クエンチし、続いて、室温にて5分間、PBSで2回洗浄した。非特異的結合部位のブロッキングを、PBS中3%の乳で37℃にて15分間行った。一次抗体(3%乳PBS中ウサギ抗VP1 1:300)を、37℃で45〜60分間インキュベートした。細胞を、振とう器上室温にて5分間、PBSで2回洗浄した。二次抗体(ニワトリ抗ウサギCy3 1:2000)、およびDNAを染色するための5μg/mlのヘキスト33342色素を細胞に与え、次いで37℃で45〜60分間インキュベートした。細胞をPBSで2回、前述同様に洗浄した。カバーガラスをN没食子酸プロピル上に載置した。
【0179】
(5)リアルタイムPCR
100ulの細胞培養物上清、ならびにCorbett X−トラクタージーンおよびCorbett VX試薬(Qiagen、Hombrechtikon、Switzerland)からのDNA抽出後に、JCV負荷を定量化した。JCV DNA試料の検出のためのリアルタイムPCRプロトコールは、JCVラージTコード配列を標的としており、(5)の他の箇所に記載されている。
【0180】
(6)WST−1アッセイ
生存細胞におけるミトコンドリアデヒドロゲナーゼの比色WST−1アッセイ(Roche)によって、代謝活性をモニターした。COS−7細胞を96ウェルプレートに播種し、CMX001を指示された濃度で添加した。WST−1開裂生成物を、450nm(試料)および650nm(バックグラウンド)で計測した。WST−1プラス培地単独では、ブランクとして役立った。
【0181】
(7)BrdUアッセイ
「細胞増殖ELISA、BrdU」キット(Roche)を使用する、増殖性細胞におけるDNAへのBrdU取り込みの比色計測によって、DNA合成を定量化した。COS−7細胞を96ウェルプレートに播種し、CMX001を指示された濃度で添加した。450nm(試料)および650nm(バックグラウンド)における吸光度を、基質の添加2時間後に決定した。
【0182】
B.実験および結果
(1)細胞培養物中におけるJCV Mad−4の複製
COS−7および星状膠細胞培養物中におけるJCV Mad−4の複製特徴を第一に調査した。感染7日後(d.p.i.)、JCV感染COS−7細胞を固定し、間接免疫蛍光法によって染色した。図8に示されている通り、JCV後期ウイルス性カプシドタンパク質VP1は、JCVがCOS−7細胞においてウイルスの生活環を完了していることを示唆する赤色シグナルとして検出可能である(図8、左パネル)。ヘキスト33342でのDNAの対比染色は、核を青色にマークした(図8、中央パネル)。両方の写真をマージしたもの(図8、右パネル)は、JCV Mad−4 VP1が感染COS−7細胞の核に存在することを指示していた。さらに高倍率では、VP1シグナルは核全体にわたって分散していたが、核小体は残してあった(図8、左パネル)。核において強度のVP1シグナルを示す細胞は、細胞質においても拡散染色パターンを有していた。JCV感染細胞は、同じ細胞培養物中に存在する非感染細胞(図8、右パネル)と比較して拡大した核(図8、中央パネル)を示した。データは、COS−7細胞がJCV Mad−4感染に感受性であること、および感染7日後に細胞の約30%がJCV生活環の後期に入ったことを実証している。
【0183】
星状膠細胞にJCV Mad−4を感染させる同様の実験を実施した。感染7日後、JCV VP1の細胞内分布は、JCV Mad−4感染COS−7細胞と同様であるように思われた(図9、左パネル、赤色)。ヘキスト33342でのDNAの対比染色は、星状膠細胞核を青色にマークした(図9、中央パネル)。両方の写真をマージしたものは、JCV−Mad4 VP1が感染星状膠細胞の核に存在することを指示していた。COS−7細胞のJCV Mad−4感染と比較すると、有意に少ない星状膠細胞が後期タンパク質VP1について陽性であった(図9、右パネル)。さらに高倍率では、VP1シグナルは、主に核小体を残した核において、および星状膠細胞の細胞質において、やや拡散パターンで見られた(図9、左パネル)。DNAの染色は、JCV感染細胞(図9、右パネル)に属する大核が細胞物中に存在することを指示していた(図9、中央パネル)。星状膠細胞も予想通りウイルス性初期タンパク質ラージT抗原(LT)が染色され、LTは感染細胞の核内に位置付けられていた(データは図示せず)。後期タンパク質VP1について陽性なすべての細胞がLTも発現し、LTについてのみ陽性な星状膠細胞はわずかであった。この観察は、JCV Mad−4が予想通りポリオーマウイルスの生活環を経た(proceded)ことを指示していた。感染7日後における集密度は、星状膠細胞が成長の遅い細胞であり、故に、JCV複製がヒト近位尿細管上皮細胞におけるBKV複製と比較して長期にわたっていることを指示していた。本発明者らの観察は、7日間の成長期間が効率的なJCV複製に最適ではないことを示唆している。
【0184】
星状膠細胞におけるJCV Mad−4の緩徐な複製速度を考慮して、感染14日後における感染状況を検査した。結果は、初期LTag(データは図示せず)および後期VP1について陽性である細胞の数がおよそ4倍増大したことを指示していた(図10)。このように、星状膠細胞はJCV Mad−4複製を支援したが、生活環はCOS−7細胞において観察されるものと比較してかなり長期にわたっているようであった。
【0185】
次に、COS−7細胞にトランスフェクトされる再連結したJCV Mad−4 DNAの複製能を試験した。このアプローチは、JCV突然変異株に対するCMX001有効性を試験するための逆遺伝学を実施するのに役立つツールとなるであろう。図11に示されている通り、JCV後期ウイルス性カプシドタンパク質VP1は、JCVが、トランスフェクション7日後(d.p.t.)に、COS−7細胞において複製能を有することを指示する赤色シグナルとして検出可能である(図11、左パネル)。ヘキスト33342色素でのDNAの対比染色は、核を青色にマークした(図11、中央パネル)。両方の写真をマージしたもの(図11、右パネル)は、JCV Mad−4 VP1がトランスフェクトCOS−7細胞の核に存在することを指示していた。さらに高倍率では、VP1シグナルは核全体にわたって分散していたが、核小体は残してあった(図11、左パネル)。核において強度のVP1シグナルを示す細胞は、細胞質においても拡散染色パターンを有していた。JCVトランスフェクト細胞は、同じ細胞培養物中に存在する正常細胞(図11、右パネル)と比較して拡大した核(図11、中央パネル)を示した。データは、COS−7細胞がJCV Mad−4 DNAトランスフェクションに感受性であること、および感染7日後までに細胞の約15%がJCV生活環の後期に入ったことを実証している。トランスフェクション後、後期タンパク質VP1の細胞内染色パターンは、JCV Mad−4感染後のVP1染色と同一であった。
【0186】
(2)阻害濃度IC90の決定
JCV後代に対するCMX001の効果を調査するために、感染2時間後に漸増濃度のCMX001を添加し、上清を感染5日後に収穫した。CMX001が細胞外JCV負荷を濃度依存方式で低減させたことが観察された(図12)。感染1日後と5日後との間で、未処理細胞におけるウイルス負荷は約2.5対数(1.24×107対5.09×109)増加した。対照的に、2.5μMのCMX001で処理した細胞においては、同じ期間中に2と2分の1倍(9.69×106対2.44×107)しか増大しないことが観察される。感染1日後のウイルス負荷として定義されるウイルス流入を減じると、CMX001は、0.15μMでJCVウイルス負荷を50%超低減させ、0.6μMでJCVを90%超低減させ、それぞれ感染5日後における阻害濃度IC−50およびIC−90を定義するものであった。
【0187】
(3)COS−7細胞代謝活性に対するCMX001の効果
位相差顕微鏡法によるCOS−7の検査は、CMX001 0.6μMへの7日間の暴露中、生存能力低下の兆候を何ら明らかにしなかった。より感受性の高いアッセイを使用するために、非感染COS−7細胞におけるWST−1アッセイおよびBrdU取り込みを使用して、細胞代謝活性に対する効果を調査した。CMX001の添加は、非感染COS−7細胞の代謝活性(図13)およびDNA複製(図14)を濃度依存方式で低下させた。未処理COS−7細胞と比較して、CMX001濃度を0.08から10μMまで増大させることにより、代謝活性を3%から52%まで、およびDNA複製を83%から10%、それぞれ減少させた。0.6μMにおいて、COS−7細胞は、17%の代謝活性のささやかな損失、およそ50%低減したBrdU取り込みを示した。まとめると、CMX001は、高濃度では、宿主細胞代謝活性およびDNA複製を有意に低減させた。0.08から5μMのCMX001濃度の星状膠細胞でも同様の実験を行った。非感染星状膠細胞におけるDNA複製は、最高CMX001濃度において25%から92%減少した(データは図示せず)。両細胞型のDNA複製のCMX001関連阻害を比較すると、COS−7の感受性が若干低い(それぞれ83%対92%)ようであった。しかしながら、星状膠細胞について、該アッセイの2時間の基質インキュベーション期間は、光学密度がCOS−7の測定値と比較して低いため、最適ではないようであった。これは、星状膠細胞がCOS−7細胞と比較して緩徐な代謝を有していたとする本発明者らの観察と一致する。
【0188】
(4)COS−7における細胞外JCV負荷に対するCMX001効果
JCV後代レベルに対するCMX001の効果を経時的に検査するために、処理および未処理細胞の上清を指示された時点で収穫した。感染1日後の上清を、流入ウイルスの目安として採取した。未処理細胞において、細胞外JCV負荷は、7日間の観察期間にわたって3を超える対数(1.24×107対5.67×1010geq/ml)だけ増大した。5μMのCMX001の存在下では、JCV負荷における1対数未満のささやかな変化のみが観察される(1.34×107対8.85×107geq/ml(図15)。JCウイルス負荷を、感染7日後のCMX001 5uM処理細胞について、感染3日後の未処理細胞におけるウイルス後代と比較すると、CMX001処理細胞におけるウイルス負荷は(9.72×107対8.85×107geq/ml)の91%にしか達していなかった。CMX001処理COS−7細胞における後代産生は遅延し得ると結論付けられた。
【0189】
(5)CMX001はJCV後期遺伝子発現を低減させる
後期遺伝子発現に対するCMX001の効果を調査するために、JCV VP1について免疫蛍光染色を実施した。感染7日後に、未処理COS−7細胞のJCV VP1を比較として染色した(図16、上部パネル)。1.25μMのCMX001の添加は、JCV VP1シグナル(signaly)の有意な低減と関連していた(図16、中央パネル)。5μMの最高CMX001濃度では、本質的に免疫蛍光法によって観察され得るVP1陽性細胞はない(図16、下部パネル)。CMX001は、1.25μMから5μMの間のJCV後期タンパク質発現を有意に低減させると結論付けられた。
【0190】
(6)星状膠細胞における細胞外JCV負荷に対するCMX001効果
JCV後代レベルに対するCMX001の効果を経時的に検査するために、処理および未処理細胞の上清を指示された時点で収穫した。流入ウイルスを決定するために、感染1日後に試料を採取した。未処理細胞の感染経過において、細胞外JCV負荷は、7日間の観察期間にわたっておよそ1対数(3.22×107対2.30×108geq/ml)変化する。CMX001の存在下では、1対数未満のJCV負荷が見られた(1.34×107対8.85×107geq/ml(図17)。JCV複製は、COS−7よりも星状膠細胞において有意に緩徐であると結論付けられた。低濃度のCMX001の後代産生を阻害する傾向にもかかわらず、7日間の観察期間ではCMX001の阻害効果の計測が可能にならなかった。
【0191】
C.考察
暫定結果は、CMX001がCOS−7細胞におけるJCV複製を阻害することを示唆している。0.6μMのCMX001濃度は、細胞外JCV負荷をおよそ90%低減させた。この濃度は、CDV阻害について報告された濃度よりも2桁低いが、BKVについて観察されたものと同じ範囲内である。ここで、BKV複製のCMX001 IC−90を、初代尿細管上皮細胞において0.31μMと決定した(34)。CMX001は、宿主細胞代謝活性を17%、およびDNA複製を約50%減少させることが観察された。感染1から7日後に細胞外JCV負荷を計測すると、最高濃度のCMX001(5μM)で処理した細胞からのJCV負荷は、感染1日後における流入ウイルスよりも感染5日後において若干高いだけであり、4日以内に放出されるウイルスは極めて少ないまたは無いことを指示していた。感染7日後において、この濃度でJCV負荷におけるごくわずかな増大があり、後代ウイルスのレベルは、未処理細胞の感染3日後に計測されたウイルス負荷を下回っていた。星状膠細胞においては、低濃度のCMX001が後代ウイルスの蓄積を遅延させ得るという動向がある。しかしながら、感染7日後の未処理星状膠細胞における非効率的な後代ウイルス産生は、JCV複製周期が有意に緩徐であることを実証するものであった。
【0192】
COS−7と星状膠細胞との間の差は、より効率的なJCVの複製周期を支援するSV40ラージT抗原の発現を含むCOS−7細胞の形質転換表現型による可能性が高い。星状膠細胞において、これはかなり緩徐である。
【0193】
結論として、COS−7細胞におけるインビトロでのJCウイルス複製に対するCMX001のIC50およびIC90値は、それぞれ0.15および0.6μMであったということである。非感染COS−7細胞において、代謝活性およびDNA複製に対するCMX001のIC50は、それぞれおよそ5および0.6μMであった。特に、ポリオーマウイルスT抗原を発現するこれらの細胞は、CMX001の効果に対し特異的に感受性であり得る。
【実施例3】
【0194】
EBV関連頭蓋内移植後リンパ増殖性障害(PTLD)のヒト患者に対してCMX001を使用する例
第一の患者は、鎌状赤血球貧血が発生したEBV関連頭蓋内移植後リンパ増殖性障害(PTLD)の病歴がある11歳の患者である。EBVは血漿中において陽性(2010年12月7日および12月14日)であり、脳生検はPTLDと一致していた。12月上旬に、患者は、持続性頭痛、悪心、嘔吐および下痢の3日間の病歴を提示した。患者は入院し、発作活動を伴う可能性がある激しい頭痛の急性エピソードを起こした。脳のCTは、右前頭葉におけるリング状増強塊を示し、脳生検はEBV関連PTLDと一致していた。患者はPICUに入れられた。高い頭蓋内圧力、無呼吸に関連する反復性発作は、挿管およびCMX001の緊急要求につながった。このEBV関連PTLD患者におけるCMX001の使用は、2009年12月26日から継続中である。患者はCMX001に十分耐性があったため、週に2回4mg/kgを受け続けている。該患者には、疾患の兆候および症状の臨床的改善、ならびに頭蓋内塊の低減とはいえないまでも安定化があった。血漿中におけるEBVは陰性のままである。
【0195】
第二の患者は、EBV関連PTLDがある、生後6か月の心臓移植レシピエントであった。患者は、手術後に原発性EBV感染を獲得した。PETスキャンは、PTLDと一致する肝臓、肺および骨(腸骨稜)において病変を示した。臨床状態は、CSFにおいて検出されるEBV、臨床およびEEG相関発作活動を伴うEBV関連脳炎と推測されるものによって不安定化し続け、応答性および精神状態の変化を減少させた。CMX001の要求時、患者は人工呼吸器使用中であり、該患者の肺の肺炎およびPTLD両方の証拠、脳症が存在することの臨床基準を満たす発作活動の証拠を有していた。患者は、NGチューブを介し、2010年3月3日にCMX001 20mg(およそ3.3mg/kg)の初回投薬を、2010年3月7日に第二回投薬を受けた。患者は、EBVウイルス負荷において267,338(2010年3月3日)から47,427コピー/mL(2010年3月7日)までの有意な減退を起こした。患者は、進行性神経損傷の証拠を示し続けた。CMX001の第二回投薬の翌日に、親が支援を中止した。
【実施例4】
【0196】
I.ヒト腫瘍細胞株のパネルに対するCMX001の非GLPインビトロ評価
CMX001、シドフォビルおよび標準的な作用物質(細胞株の腫瘍型に応じて変動する)の細胞成長阻害活性を、多数の腫瘍型に由来する細胞株のパネルにおいて、MTSまたはSRBベースの細胞増殖アッセイを使用して評価した。
【0197】
化合物は、細胞株に対して様々な程度の阻害活性を示した。CMX00lは、研究において評価した24の細胞株のほぼすべてにおいて、その親化合物であるシドフォビルよりも強力であった。腫瘍細胞株におけるCMX00lのIC50値は、標準的な作用物質の値と比較すると相対的に中程度である、6.6μMから100μM超までの範囲であった。
【0198】
I 材料および方法
(1)細胞株:
試験において使用した細胞株を表3に収載する。細胞に新鮮培地を2〜3日ごとに供給し、それらの成長速度に応じて3〜5日ごとに継代させた。10〜15継代後、細胞を廃棄し、凍結ストックから新鮮培養物を確立した。細胞培養物をマイコプラスマおよび他の汚染物質について定期的に点検した。
【表5】
【0199】
(2)被検物質:
滅菌ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS、pH7.4)中100mMのストックをCMX001およびシドフォビルについて作製し、−20℃で保存した。ドキソルビシン、ドセタキセル、オキサリプラチン、DTIC(ダカルバジン)およびシスプラチンは、Sigma−Aldrich(St.Louis、MO)から購入した。ゲムシタビンはEli Lilly and Companyによって製造され、Infusion Solutions Pharmacy(Tucson、AZ)から購入した。
【0200】
(3)実験手順:
インビトロ細胞増殖アッセイは、96ウェルプレートベースのMTSアッセイ(CellTiter96(C)アクオスワンソリューション細胞増殖アッセイ、Promega)またはSRB(スルホローダミンB)アッセイ(1〜3)を使用して実施した。手短に述べると、細胞を0日目に96ウェルマイクロタイタープレート(Falcon3072番)内において100μlの培地中で平板培養した。1日目、各化合物の10μlの連続希釈物(100μMの出発濃度での1:2希釈物9種;いくつかの事例において、400μM(CMX001またはシドフォビル)または1μM(いくつかの標準的な作用物質)の出発濃度)をプレートに3通り添加した。DMSOを溶媒として使用する標準的な作用物質については、0.5%の出発濃度でのDMSOの連続希釈物も、ビヒクル対照として含まれていた。
【0201】
加湿インキュベーター内、37℃で3日間インキュベーション後、MTSまたはSRBアッセイのいずれかによって生存細胞を計測した。MTSアッセイでは、(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム、内塩(MTS、2mg/ml)および電子カップリング試薬、フェナジンメトスルフェート(PMS、DPBS中0.92mg/ml)の20:1混合物20μlを各ウェルに添加し、37℃で3時間インキュベートした。BioTek synergy(商標)HT多重検出マイクロプレートリーダーを490nmで使用して、吸光度を計測した。SRBアッセイでは、50μLの冷トリクロロ酢酸(TCA、10%w/vの最終濃度)で60分間、細胞をインシチュで固定した。次いで、細胞をH2Oで5回洗浄し、風乾させた。
【0202】
次に、1%酢酸中0.2%のSRB20μLで細胞を染色し、室温で30分間インキュベートし、1%酢酸で5回洗浄することによって結合しなかったSRBを除去し、風乾させた。最後に、結合したSRB染色剤を50μLの50μMトリス緩衝液中で可溶化した後、BioTekマイクロプレートリーダーを使用して570nmでの光学密度計測をした。成長阻害データは、バックグラウンド補正した吸光度から算出した細胞生存のパーセンテージとして表現した。細胞の生存分率は、被験剤で処理した試料の平均吸光度値を未処理対照の平均吸光度値で割ることによって決定した。
【0203】
(4)統計的分析:
BioTek synergy(商標)HT多重検出マイクロプレートリーダーを使用して原データを獲得し、分析のためにMicrosoftエクセルにインポートした。各処理の平均シグナルは、ブランクシグナルを減じた後に3通りから算出した。生存パーセンテージ値は、下記の式:生存%=(薬物治療の平均シグナル/未処理対照の平均シグナル)×100を使用して算出した。データを最後にプリズム4ソフトウェア(GraphPad Software、San Diego、CA)にインポートして、非線形回帰曲線当てはめを使用して用量−活性曲線を生成し、IC50値を算出した。
【0204】
B.結果および考察
各細胞株におけるCMX001、シドフォビルおよび標準的な作用物質の成長阻害プロファイルを、図18〜41に示す。IC50(50%成長を達成するために必要とされる濃度値を表4に収載する。
【表6】
【0205】
要するに、CMX001は、研究において評価した24の細胞株のほぼすべてにおいて、その親化合物であるシドフォビルよりも強力であった。腫瘍細胞株におけるCMX00lのIC50値は、標準的な作用物質の値と比較すると相対的に中程度である、6.6μMから100μM超までの範囲であった。試験した22の腫瘍細胞株の中でも、CMX001はPC−3(IC50=6.6μM)およびSK−HEP−1(IC50=7.4μM)において最も活性であった。概して、CMX001は、前立腺、肝臓および子宮頸がん細胞株において最も活性であり、腎臓、膀胱および卵巣がん細胞株において最も活性が低かった。興味深いことに、CMX001は、2つの不死化ヒト正常上皮細胞株、Het−1A(食道)およびTHLE−3(肝臓)に対しても相当に活性であり、それぞれ20.5μMおよび7.0μMのIC50であった。いずれの細胞株も、SV40ラージT抗原ウイルス(4〜5)によって不死化されたものであった。
【0206】
DTIC(ダカルバジン)は、黒色腫細胞株に対して活性ではなかった(IC50>100μM)。細胞増殖アッセイにおけるDTICのこの低活性の1つの説明は、DTICがその抗腫瘍活性に肝臓の活性化を必要とすることである。しかしながら、肝臓の活性化を必要としないDTICの類似体であるテモゾロマイドは、これら2つの細胞株のいずれにおいても良好な活性を示さなかった(IC50>100μM、データは図示せず)。したがって、いくつかの他の黒色腫細胞株において示されている通り、単にこれら2つの細胞株がDTICおよびテモゾロマイドに抵抗性があるということであり得る(6〜7)。CMX001がこれら2つの黒色腫細胞株においていくらかの活性を示したという事実は、潜在的に有望である。活性を伴う暴露持続時間の影響に目を向けた研究を考慮する価値があり得る。この点について、より長い暴露時間は細胞毒性の増強を招き得る。
【0207】
前述は、本発明を例証するものであり、その限定であるとして解釈すべきではない。本発明の少数の例示的な実施形態を記載してきたが、当業者であれば、本発明の新規の教示および利点から著しく逸脱することなく、例示的な実施形態において多くの修正が可能であることを容易に理解するであろう。したがって、そのような修正はすべて、請求項において定義される通りの本発明の範囲内に含まれることが意図されている。したがって、前述は本発明を例証するものであり、開示されている具体的な実施形態に限定されるものとして解釈すべきではないこと、ならびに、開示されている実施形態への修正および他の実施形態は、添付の請求項の範囲内に含まれるように意図されていることを理解されたい。本発明は、下記の請求項によって定義され、請求項の均等物はその中に含まれる。
【図1(1)】
【図1(2)】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本願は、2009年8月3日に出願された米国仮特許出願第61/230,931号の、35U.S.C.§119(e)に基づく利益を主張するものであり、その開示は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、概して、ウイルス感染およびウイルス誘発腫瘍を治療するための化合物、その類似体および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
がんは、細胞増殖における正常な制限の破壊の結果である。がんは、ヒトの死因全体の約13%を占めている。米国がん協会によれば、2007年だけでも世界中で760万人が、がんにより死亡した。がんの重要な原因は、ウイルス感染である。ウイルスは世界中のヒトがんの15%の原因であると推定されている。ウイルス感染は、ヒトにおけるがん発生の2番目に重要な危険因子であり、喫煙だけがこれを上回っているように思われる。ヒトがんに関連する主要なウイルスは、ヒトパピローマウイルス、B型肝炎およびC型肝炎ウイルス、エプスタイン・バーウイルス、ならびにヒトTリンパ球向性ウイルスである。
【0004】
加えて、免疫不全患者は、ポリオーマウイルス(例えば、BKウイルスまたはJCウイルス)等の日和見性ウイルスに特に感染しやすい。いくつかの最近の研究は、ポリオーマウイルスとがんとの間には関連性があり得ることを示した(Fengら、Science、39巻、1096〜1100(2008年2月)およびMoensら、Cell.Mol.Life Sci.、64、1656〜1678(2007)を参照)。他の調査は、サイトメガロウイルスと結腸偽腫瘍および多形性膠芽腫(GBM)との間(Jesusら、J.Neurooncol、94:445〜448(2009)、Mitechellら、Neuro−oncology、10〜18頁(2008年2月)を参照、エプスタイン(Epstien)・バーウイルスと胃がんとの間(Truongら、J.of Experimental&Clinical Cancer Research 2009、28:14を参照)、ヒトパピローマウイルスと子宮頸がんとの間(Schiffmanら、Seminar、37巻、890〜907頁、2007年9月8日を参照、http:www.thelancet.comにて利用可能)には関連性があることも示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、ウイルス関連腫瘍を治療するため、特に免疫無防備状態の患者のために使用され得る新たな療法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様は、対象における免疫抑制に関連するウイルス誘発性状態/疾患(例えば、ウイルス誘発腫瘍またはウイルス感染)を治療する方法であって、前記対象に、治療有効量の本明細書において記載されている化合物を投与するステップを含む方法である。本明細書において記載されている化合物は、ウイルス複製および/またはウイルス感染/形質転換細胞(例えばウイルス誘発腫瘍細胞)を特異的に標的としている。
【0007】
いくつかの実施形態において、ウイルス誘発腫瘍は、ポリオーマウイルス(BK、ジョン・カニンガムウイルス(JCV)、メルケル細胞ウイルス(MCV)、KIポリオーマウイルス(KIV)、WUポリオーマウイルス(WUV)、シミアンウイルス40(SV40)を含む)、パピローマウイルス(ヒトパピローマウイルス、ワタオウサギパピローマウイルス、ウマパピローマウイルスおよびウシパピローマウイルスを含む)、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスまたはそれらの組合せに関連する。
【0008】
いくつかの実施形態において、ウイルス誘発腫瘍は、BKまたはJCウイルスに関連する。
【0009】
別の実施形態において、対象は免疫無防備状態(immnocompromised)である。さらに、一実施形態において、対象は腎移植または肝移植患者である。
【0010】
一実施形態において、化合物は、
【化1】
または薬学的に許容されるその塩である。
【0011】
本発明のさらなる態様は、免疫抑制剤を必要としている対象におけるウイルス感染の治療的および/または予防的処置のための方法であって、前記対象に、治療有効量の本明細書において記載されている化合物を、1種または複数の免疫抑制剤と組み合わせて投与するステップを含む方法である。
【0012】
いくつかの実施形態において、少なくとも1種の免疫抑制剤は、ダクリズマブ、バシリキシマブ、タクロリムス、シロリムス、ミコフェノレート(ナトリウムまたはモフェチルとして)、シクロスポリンA、グルココルチコイド、抗CD3モノクローナル抗体(OKT3)、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)、抗CD52モノクローナル抗体(キャンパス1−H)、アザチオプリン、エベロリムス、ダクチノマイシン、シクロフォスファミド、白金、ニトロソ尿素、メトトレキサート、アザチオプリン、メルカプトプリン、ムロモナブ、IFNガンマ、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、タイサブリ(ナタリズマブ)、フィンゴリモドおよびそれらの組合せから選択される。
【0013】
一実施形態において、少なくとも1種の免疫抑制剤は、タイサブリ(ナタリズマブ)である。
【0014】
本発明のさらなる態様は、(a)本明細書において記載されている化合物と、(b)少なくとも1種の免疫抑制剤と、(c)薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物を提供する。
【0015】
下記の図面は、本明細書の一部をなし、本発明のある特定の態様をさらに実証するために含まれる。本発明は、これらの図面の1つまたは複数を、本明細書において提示される具体的な実施形態の詳細な説明と組み合わせて参照することにより、よりよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】BKV負荷およびBKVタンパク質の発現に対する漸増濃度のCMX001の効果を例証する図である。図1(a)は、CMX001の濃度と細胞外BKV負荷の低減との間の関係を例証する。図1(b)は、BKV感染RPTECの感染72時間後における免疫蛍光染色の画像を示す。 図1(a)では、RPTEC上清を感染72時間後、すなわち指示されたCMX001濃度での処理開始70時間後に収穫した。BKV負荷をqPCRによって計測し、流入ウイルスを減じた。未処理細胞中のDNA負荷(1.05E+09Geq/ml)を100%として設定した。 図1(b)では、感染72時間後にメタノール固定し、後期アグノタンパク質の可視化のためのウサギ抗アグノタンパク質血清(緑色)およびBKV LTagの可視化のためのSV40 LTagモノクローナルPab416(赤色)で染色した、未処理およびCMX001処理BKV感染RPTECの間接免疫蛍光法。細胞密度を、青色に染色してドラック5によって示す。
【図2】図2(a)は、CMX001の濃度と非感染RPTECのDNA複製との間の関係を例証する。図2(b)は、CMX001の濃度と非感染RPTECの代謝活性との間の関係を例証する。 図2(a)では、BrdU取り込み(incorporation)を用いて細胞DNA複製を検査した。指示されたCMX001濃度を持つ培地を感染2時間後に添加し、感染72時間後に吸光度を計測した。未処理細胞の吸光度を100%として設定した。 図2(b)では、代謝活性をWST−1開裂として検査した。指示されたCMX001濃度を持つ培地を感染2時間後に添加し、感染72時間後に吸光度を計測した。未処理細胞の吸光度を100%として設定した。
【図3】BKVゲノム複製に対するCMX001 0.31μMの影響を例証する図である。図では、CMX001処理および未処理BKV感染RPTECを指示された時点で収穫し、細胞1個当たりの細胞内BKV DNA負荷をqPCRによって計測した。
【図4】BKVの初期および後期発現に対するCMX001 0.31μMの影響を例証する図である。図4(a)は、未処理およびCMX001処理BKV感染RPTECの間接免疫蛍光法の画像を示す。図4(b)は、CMX001処理および未処理BKV感染RPTECからの細胞抽出物を感染48および72時間後に収穫し、ウエスタンブロット法を、ウサギ抗BKV VP1、抗アグノタンパク質血清、およびハウスキーピングタンパク質GAPDHに向けられるモノクローナル抗体を用いて実施したことを示す。 図4(a)では、感染48および72時間後にメタノール固定し、後期アグノタンパク質の可視化のためのウサギ抗アグノタンパク質血清(緑色)およびBKV LTagの可視化のためのSV40 LTagモノクローナルPab416(赤色)で染色した、未処理およびCMX001処理BKV感染RPTECの間接免疫蛍光法。図4(b)では、CMX001処理および未処理BKV感染RPTECからの細胞抽出物を感染48および72時間後に収穫し、ウエスタンブロット法を、ウサギ抗−BKV VP1、抗アグノタンパク質血清、およびハウスキーピングタンパク質GAPDHに向けられるモノクローナル抗体を用いて実施した。
【図5】BKV細胞外BKV負荷に対するCMX001 0.31μMの影響を例証する図である。図5は、BKV細胞外BKV負荷に対するCMX001 0.31μMの影響を実証している。CMX001処理および未処理BKV感染RPTECからの上清を、感染後の指示された時点で収穫し、BKV負荷をqPCRによって計測した。データはBKV負荷としてGeq/mlで提示する。
【図6】感染前のRPTECの前処理に対するCMX001の衝撃を実証する図である。図6では、RPTECは、感染20時間前まで4時間処理して、このときに新たな完全成長培地を添加するか、または感染1時間前まで24時間処理して、このときに感染前の完全成長培地中で1時間洗浄するかのいずれかとした。上清を感染72時間後に収穫し、細胞外BKV負荷をqPCRによって計測した。データは、100%に設定された未処理細胞のパーセントで提示する。
【図7】CMX001の安定性を例証する図である。図7では、BKV感染RPTECを、新しく作製したCMX001、または4℃もしくは−20℃で1週間保存した1mg/mlのストック溶液からのCMX001で処理した。上清を感染72時間後に収穫し、細胞外BKV負荷をqPCRによって計測した。データは、BKV負荷として、100%に設定された未処理細胞のパーセントで提示する。
【図8】COS−7細胞におけるJCV Mad−4の複製を実証する図である。図8では、感染7日後に固定し、後期カプシドタンパク質VP1の可視化のためのウサギ抗VP1血清(赤色)およびDNAを示すためのヘキスト33342色素(青色)で染色した、JCV感染COS−7細胞の間接免疫蛍光法。マージした写真を右パネルに示す。
【図9】星状膠細胞におけるJCV Mad−4の複製およびJCV感染星状膠細胞の間接免疫蛍光法の画像を示す図である。固定および染色は、図8のものと同じである。
【図10】星状膠細胞におけるJCV複製の経過を実証する図である。図10(a)は、感染7日後に固定し、後期カプシドタンパク質VP1の可視化のためのウサギ抗VP1血清(赤色)およびDNAを示すためのヘキスト33342色素(青色)で染色した、JCV感染星状膠細胞の間接免疫蛍光法を示す。マージした写真を右パネルに示す。図10(b)は、感染14日後に固定したJCV感染星状膠細胞の間接免疫蛍光法の画像を示す。固定および染色は、a)の通りである。図10(c)は、感染14日後に固定した偽感染星状膠細胞の間接免疫蛍光法の画像を示す。固定および染色は、10(a)のものと同じである。
【図11】COS−7細胞における再連結したJCV Mad−4 DNAの複製、ならびに、トランスフェクション7日後に固定し、後期カプシドタンパク質VP1の可視化のためのウサギ抗VP1血清(赤色)およびDNAを示すためのヘキスト33342色素(青色)で染色した、JCV DNAトランスフェクトCOS−7細胞の間接免疫蛍光法の画像を実証する図である。マージした写真を右パネルに示す。
【図12】CMX001 IC−50およびIC−90の決定を実証する図である。COS−7上清を感染5日後、すなわち指示されたCMX001濃度での処理開始118時間後に収穫した。JCV負荷をqPCRによって計測し、流入ウイルスを減じた。未処理細胞中のDNA負荷(5.04×10E+9geq/ml)を100%として設定した。IC−50およびIC−90を決定するために、JCVの複製を、未処理細胞のパーセンテージとして示す。
【図13】COS−7細胞の代謝活性に対する漸増濃度のCMX001の効果を実証する図である。代謝活性をWST−1開裂として検査した。指示されたCMX001濃度を持つ培地をCOS−7細胞に添加し、播種72時間後に吸光度を計測した。未処理細胞の吸光度を100%として設定した。
【図14】COS−7細胞の複製に対する漸増濃度のCMX001の効果を例証する図である。DNA複製をBrdU取り込みによって決定した。指示されたCMX001濃度を持つ培地をCOS−7細胞に添加し、播種72時間後に吸光度を計測した。未処理細胞の吸光度を100%として設定した。
【図15】細胞外ウイルス負荷に対する漸増濃度のCMX001の効果を示す図である。CMX001処理および未処理JCV感染COS−7細胞からの上清を、感染後の指示された時点で収穫し、JCV負荷をqPCRによって計測した。データは、JCV負荷として対数geq/mlで提示する。
【図16】JCVタンパク質の発現に対する漸増濃度のCMX001の効果を例証する図である。感染7日後に固定し、後期カプシドタンパク質VP1の可視化のためのウサギ抗VP1血清(赤色)およびDNAを示すためのヘキスト33342色素(青色)で染色した、指示された濃度のCMX001で処理されたJCV感染COS−7細胞の間接免疫蛍光法。マージした写真を右パネルに示す。
【図17】星状膠細胞における細胞外ウイルス負荷に対する漸増濃度のCMX001の効果を例証する図である。指示された濃度のCMX001で処理されたJCV感染PDA細胞からの上清を感染後の指示された時点で収穫し、JCV負荷をqPCRによって計測した。データは、JCV負荷として対数geq/mlで提示する。
【図18】ドキソルビシン、シドフォビルおよびCMX001によるCaki−1細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図19】ドキソルビシン、シドフォビルおよびCMX001によるCaki−2細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図20】ドキソルビシン、シドフォビルおよびCMX001によるSCaBER細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図21】ドキソルビシン、シドフォビルおよびCMX001によるSW780細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図22】ドセタキセル(A)、シドフォビルおよびCMX001(B)によるDU145細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図23】ドセタキセル(A)、シドフォビルおよびCMX001(B)によるPC−3細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図24】ドセタキセル(A)、シドフォビルおよびCMX001(B)によるMDA−231細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図25】ドセタキセル(A)、シドフォビルおよびCMX001(B)によるMCF−7細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図26】ゲムシタビン、シドフォビルおよびCMX001によるPANC−1細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図27】ゲムシタビン、シドフォビルおよびCMX001によるMIA PaCa−2細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図28】オキサリプラチン、シドフォビルおよびCMX001によるHT−29細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図29】オキサリプラチン、シドフォビルおよびCMX001によるHCT−116細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図30】ドセタキセル(A)、シドフォビルおよびCMX001(B)によるH460細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図31】ドセタキセル(A)、シドフォビルおよびCMX001(B)によるA549細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図32】DTIC、シドフォビルおよびCMX001によるA2058細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図33】DTIC、シドフォビルおよびCMX001によるSK−MEL−2細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図34】シスプラチン、シドフォビルおよびCMX001によるC33細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図35】シスプラチン、シドフォビルおよびCMX001によるSiHa細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図36】シスプラチン、シドフォビルおよびCMX001によるSK−OV−3細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図37】シスプラチン、シドフォビルおよびCMX001によるOvCar−3細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図38】ドキソルビシン、シドフォビルおよびCMX001によるSK−HEP−1細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図39】ドキソルビシン、シドフォビルおよびCMX001によるHEP G2細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図40】シドフォビルおよびCMX001によるHet−1A細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【図41】シドフォビルおよびCMX001によるTHLE−3細胞成長の阻害を図式的に例証する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ここで、本明細書において提供されている記述および方法論に関して、本発明の前述および他の態様をさらに詳細に記載する。本発明は異なる形態で具現化され得、本明細書において説明される実施形態に限定されるものとして解釈されるべきでないことを理解すべきである。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全となり、当業者に本発明の範囲を十分に伝えるように提供される。
【0018】
本明細書における本発明の記述において使用される術語は、特定の実施形態を記述することのみを目的とし、本発明の限定を意図するものではない。本発明の実施形態の記述および添付の請求項において使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに別段の定めがある場合を除き、複数形も含むことが意図されている。また、本明細書において使用される場合、「および/または」は、関連して記載されている項目の1つまたは複数のあらゆる考えられる組合せを指し、かつ包含する。さらに、化合物の量、用量、時間、温度等、測定可能な値に言及する際の用語「約」は、本明細書において使用される場合、明記された量の20%、10%、5%、1%、0.5%またはさらに0.1%の変動を包含するように意味付けられている。用語「を含む(comprises)」および/または「を含む(comprising)」は、本明細書において使用される場合、挙げられた装備、整数、ステップ、動作、要素および/または成分の存在を明記するが、1つまたは複数の他の装備、整数、ステップ、動作、要素、成分および/またはそれらの群の存在または追加を除外するものではないことがさらに理解されよう。別段の定義がない限り、本明細書において使用される技術用語および科学用語を含むすべての用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているのと同じ意味を有する。
【0019】
本明細書において参照されるすべての特許、特許出願および刊行物は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。術語に矛盾がある場合、本明細書が優先される。
【0020】
本明細書において使用される場合、「アルキル」は、1から30個までの炭素原子を含有する直鎖または分枝鎖の炭化水素を指す。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1から24、2から25、2から24、17から20、1から10または1から8個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態において、アルキル基は、17〜20個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態において、アルキル基は、17、18、19または20個の炭素原子を含有する。また他の実施形態において、アルキル基は、1〜5個の炭素原子を含有し、さらに他の実施形態において、アルキル基は、1〜4または1〜3個の炭素原子を含有する。アルキルの代表例は、メチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、3−メチルヘキシル、2,2−ジメチルペンチル、2,3−ジメチルペンチル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル等を含むがこれらに限定されない。追加の例または一般的に適用可能な置換基は、本明細書において記載されている実施例に示す具体的な実施形態によって例証される。
【0021】
本明細書において使用される場合、「アルケニル」は、2から30個までの炭素を含有し、かつ2個の水素の除去によって形成された少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を含有する、直鎖または分枝鎖の炭化水素を指す。いくつかの実施形態において、アルケニル基は、2から25、2から24、17から20、2から10、2から8個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態において、アルケニル基は、17〜20個の炭素原子を含有する。また他の実施形態において、アルケニル基は、17、18、19または20個の炭素原子を含有し、さらに他の実施形態において、アルケニル基は、2〜5、2〜4または2〜3個の炭素原子を含有する。「アルケニル」の代表例は、エテニル、2−プロペニル、2−メチル−2−プロペニル、3−ブテニル、4−ペンテニル、5−ヘキセニル、2−ヘプテニル、2−メチル−1−ヘプテニル、3−デセニル等を含むがこれらに限定されない。追加の例または一般的に適用可能な置換基は、本明細書において記載されている実施例に示す具体的な実施形態によって例証される。
【0022】
本明細書において使用される場合、「アルキニル」は、2から30個までの炭素原子を含有し、かつ少なくとも1個の炭素−炭素三重結合を含有する、直鎖または分枝鎖の炭化水素基を指す。いくつかの実施形態において、アルキニル基は、2から25、2から24、2から10または2から8個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態において、アルキニル基は、17〜20個の炭素原子を含有する。また他の実施形態において、アルキニル基は、17、18、19または20個の炭素原子を含有し、さらに他の実施形態において、アルキニル基は、2〜5、2〜4または2〜3個の炭素原子を含有する。アルキニルの代表例は、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、3−ブチニル、2−ペンチニル、1−ブチニル等を含むがこれらに限定されない。追加の例または一般的に適用可能な置換基は、本明細書において記載されている実施例に示す具体的な実施形態によって例証される。
【0023】
本明細書において使用される場合、「アシル」は、2から30個までの炭素を含有する直鎖または分枝鎖の炭化水素を指し、該炭化水素鎖の少なくとも1個の炭素は、オキソ(=O)で置換されている。いくつかの実施形態において、アシル基は、2から25、2から24、17から20、2から10、2から8個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態において、アシル基は、17〜20個の炭素原子を含有する。また他の実施形態において、アシル基は、17、18、19または20個の炭素原子を含有し、さらに他の実施形態において、アシル基は、2〜5、2〜4または2〜3個の炭素原子を含有する。追加の例または一般的に適用可能な置換基は、本明細書において記載されている実施例に示す具体的な実施形態によって例証される。
【0024】
本明細書において使用される場合、用語「アルコキシ」は、酸素原子を介して親分子部分に結合している先に定義した通りのアルキル基を指す。いくつかの実施形態において、アルコキシ基は、1〜30個の炭素原子を含有する。他の実施形態において、アルコキシ基は、1〜20、1〜10または1〜5個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態において、アルコキシ基は、2から25、2から24、17から20、2から10、2から8個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態において、アルコキシ基は、17〜20個の炭素原子を含有する。また他の実施形態において、アルコキシ基は、17、18、19または20個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態において、アルコキシル基は、1から8個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態において、アルコキシル基は、1から6個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態において、アルコキシル基は、1から4個の炭素原子を含有する。また他の実施形態において、アルコキシル基は、1〜5個の炭素原子を含有し、さらに他の実施形態において、アルコキシル基は、1〜4または1〜3個の炭素原子を含有する。アルコキシルの代表例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシおよびn−ペントキシを含むがこれらに限定されない。追加の例または一般的に適用可能な置換基は、本明細書において記載されている実施例に示す具体的な実施形態によって例証される。
【0025】
用語「脂肪族」は、本明細書において使用される場合、1個または複数の官能基で場合により置換されている、飽和、不飽和、直鎖(すなわち非分岐鎖)、または分枝鎖、脂肪族の炭化水素を含む。いくつかの実施形態において、脂肪族は、二重結合、三重結合もしくはカルボニル基(C=O)、またはそれらの組合せから選択される1個または複数の官能基を含有し得る。当業者であれば理解するであろうが、「脂肪族」は、本明細書において、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアシル部分を含むがこれらに限定されないことが意図されている。故に、本明細書において使用される場合、用語「アルキル」は、直鎖、分枝鎖飽和基を含む。類似の慣習は、「アルケニル」、「アルキニル」、「アシル」等の他の一般用語にも当てはまる。さらに、本明細書において使用される場合、用語「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」、「アシル」等は、置換基および非置換基の両方を包含する。いくつかの実施形態において、用語「脂肪族」は、−(C1〜C24)アルキル、−(C2〜C24)アルケニル、−(C2〜C24)アルキニル、−(C1〜C24)アシルを指す。当業者には理解されるように、上記で指示されている炭素数の範囲は、該範囲内の個々の数を包含する。
【0026】
本明細書において使用される場合、「アミノ酸残基」は、第一級アミノ(−NH2)基と結合している炭素原子、カルボン酸(−COOH)基、側鎖および水素原子からなる化合物を指す。例えば、用語「アミノ酸」は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、アスパラギン酸およびグルタミン酸を含むがこれらに限定されない。本発明では、式IまたはIaにおいて、R2が−NR’Hであり、かつR’がアミノ酸残基である場合、Nは側鎖として炭素原子に結合している。加えて、本明細書において使用される場合、「アミノ酸」は、エステルおよびアミド等のアミノ酸ならびに塩の誘導体、ならびに、活性形態への代謝時に薬学的特性(pharmacoproperties)を有する誘導体を含む他の誘導体も含む。追加の例または一般的に適用可能な置換基は、本明細書において記載されている実施例に示す具体的な実施形態によって例証される。
【0027】
本明細書において使用される場合、「シクロアルキル」は、単一の水素原子の除去によってシクロアルカンから誘導される3〜12個の炭素の一価飽和環式または二環式炭化水素基を指す。いくつかの実施形態において、シクロアルキルは、3から8個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態において、シクロアルキルは、3から6個の炭素原子を含有する。シクロアルキル基は、アルキル、アルコキシ、ハロまたはヒドロキシ置換基で場合により置換されていてよい。シクロアルキルの代表例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルを含むがこれらに限定されない。一般的に適用可能な置換基の追加の例は、本明細書において記載されている実施例に示す具体的な実施形態によって例証される。
【0028】
本明細書において使用される場合、「ヘテロアルキル」、「ヘテロアルケニル」または「ヘテロアルキニル」は、例えば炭素原子の代わりに1個または複数の酸素、硫黄、窒素、リンまたはケイ素原子を含有する、アルキル、アルケニルまたはアルキニル基を指す。いくつかの実施形態において、ヘテロアルキル基は、1〜8個の炭素原子を含有する。ある特定の実施形態において、ヘテロアルケニルおよびヘテロアルキニル基は、独立に、2〜8個の炭素原子を含有する。また他の実施形態において、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニルおよびヘテラルキニルは、独立に、2〜5個の炭素原子を含有し、さらに他の実施形態において、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニルおよびヘテラルキニルは、独立に、2〜4または2〜3個の炭素原子を含有する。
【0029】
用語「ヘテロシクロアルキル」または「複素環」は、本明細書において使用される場合、環の一部として、酸素、硫黄および窒素から独立に選択される1個または複数のヘテロ原子を間に有する二環または三環式を含むがこれらに限定されない、非芳香族、飽和または不飽和の5、6もしくは7員環または多環式基を指し、ここで、(i)各5員環は0から1個の二重結合を有し、各6員環は0から2個の二重結合を有し、(ii)窒素および硫黄ヘテロ原子は、場合により酸化されていてよく、(iii)窒素ヘテロ原子は、場合により四級化されていてよく、かつ/または(iv)上記複素環式環のいずれかは、ベンゼン環と縮合していてよい。例示的な複素環は、ピロリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニルおよびテトラヒドロフリルを含むがこれらに限定されない。
【0030】
本明細書において使用される場合、用語「ハロゲン」は、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)またはヨウ素(I)を指し、用語「ハロ」は、ハロゲンラジカル:フルオロ(−F)、クロロ(−Cl)、ブロモ(−Br)およびヨード(−I)を指す。
【0031】
本明細書において使用される場合、用語「ハロアルキル」は、少なくとも1個のハロ基で置換されている少なくとも1個の炭素原子を含有する、本明細書において定義される通りの直鎖または分枝鎖アルキル基を指し、ハロは本明細書において定義される通りである。いくつかの実施形態において、ハロアルキルは、1から30個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態において、ハルアルキル(halkalkyl)は、1から8または1から6個の炭素原子を含有する。他の実施形態において、ハロアルキルは、1から4個の炭素原子を含有する。追加の例または一般的に適用可能な置換基は、本明細書において記載されている実施例に示す具体的な実施形態によって例証される。
【0032】
本明細書において使用される場合、用語「アリール」は、1個または複数の芳香族環を有する単環式炭素環式環系または二環式炭素環式縮合環系を指す。アリールの代表例は、アズレニル、インダニル、インデニル、ナフチル、フェニル、テトラヒドロナフチル等を含む。用語「アリール」は、別段の指示がない限り、置換および非置換アリールの両方を含むことが意図されている。例えば、アリールは、1個または複数のヘテロ原子(例えば、酸素、硫黄および/または窒素)で置換されていてよい。追加の例または一般的に適用可能な置換基は、本明細書において記載されている実施例に示す具体的な実施形態によって例証される。
【0033】
いくつかの実施形態において、本明細書において記載されているアルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アシルは、置換部分および非置換部分の両方を含む。例示的な置換基は、ハロ、ヒドロキシル、アミノ、アミド、−SH、シアノ、ニトロ、チオアルキル、カルボン酸、−NH−C(=NH)−NH2、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキルを含むがこれらに限定されず、ここで、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルおよびヘテロシクロアルキルは、さらに置換されていてよい。
【0034】
本明細書において使用される場合、用語「アミノ酸」は、第一級アミノ(−NH2)基およびカルボン酸(−COOH)基を含む化合物を指す。本発明において使用されるアミノ酸は、天然に存在するアミノ酸および合成α、β、γまたはδアミノ酸ならびにL、Dアミノ酸を含み、タンパク質において見られるアミノ酸を含むがこれらに限定されない。例示的なアミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、プロリン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、アスパルテート、グルタメート、リジン、アルギニンおよびヒスチジンを含むがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、アミノ酸は、アラニル、バリニル、ロイシニル、イソロイシニル、プロリニル、フェニルアラニニル、トリプトファニル、メチオニニル、グリシニル、セリニル、トレオニニル、システイニル、チロシニル、アスパラギニル、グルタミニル、アスパルトイル、グルタロイル、リジニル、アルギニニル、ヒスチジニル、β−アラニル、β−バリニル、β−ロイシニル、β−イソロイシニル、β−プロリニル、β−フェニルアラニニル、β−トリプトファニル、β−メチオニニル、β−グリシニル、β−セリニル、β−トレオニニル、β−システイニル、β−チロシニル、β−アスパラギニル、β−グルタミニル、β−アスパルトイル、β−グルタロイル、β−リジニル、β−アルギニニルまたはβ−ヒスチジニルの誘導体であってよい。加えて、本明細書において使用される場合、「アミノ酸」は、エステルおよびアミド等のアミノ酸ならびに塩の誘導体、ならびに、活性形態への代謝時に薬物特性を有する誘導体を含む他の誘導体も含む。
【0035】
本明細書において使用される場合、用語「天然αアミノ酸」は、第一級アミノ(−NH2)基と結合している炭素原子、カルボン酸(−COOH)基、側鎖および水素原子を含む天然に存在するα−アミノ酸を指す。例示的な天然αアミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、プロリン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギネート、グルタミネート、アスパルテート、グルタメート、リジン、アルギニンおよびヒスチジンを含むがこれらに限定されない。
【0036】
本明細書において使用される場合、用語「ウイルス誘発腫瘍」は、本明細書において記載されているウイルスの少なくとも1種によって誘発され、引き起こされ、かつ/またはそれに関連する腫瘍として定義される。
【0037】
本発明の方法によって治療される対象は、概して、哺乳類および霊長類対象(例えば、ヒト、サル、類人猿、チンパンジー)である。対象は、雄であっても雌であってもよく、出生前(すなわち子宮内)、新生児、幼児、若年、青年、成体および高齢対象を含む、任意の年齢のものであってもよい。故に、いくつかの事例において、対象は、妊婦対象であってよい。治療は、以前に感染した対象の治療的処置および非感染対象(例えば、感染リスクが高いとして同定された対象)の予防的処置を含む、任意の目的のものであってよい。
【0038】
本明細書において使用される場合、「ヒト免疫不全ウイルス」(または「HIV」)は、本明細書において使用される場合、HIV亜型A、B、C、D、E、F、GおよびO、ならびにHIV−2を含むその亜型すべてを含むことが意図されている。
【0039】
本明細書において使用される場合、「B型肝炎ウイルス」(または「HBV」)は、本明細書において使用される場合、その亜型(adw、adr、aywおよびayr)およびまたは遺伝子型(A、B、C、D、E、F、GおよびH)すべてを含むことが意図されている。
【0040】
本明細書において使用される場合、または「治療有効量」は、対象における少なくとも1つの臨床症状において、いくらかの軽減、緩和および/または減少を提供する量を指す。当業者であれば、何らかの利益が対象に提供される限り、治療効果は完全である必要も治癒的である必要もないことを理解するであろう。
【0041】
本明細書において使用される場合、「特異性」または「に対して特異的に」は、ある特定の種類の腫瘍細胞またはウイルス感染細胞の代謝活性および/またはDNA複製を選択的に阻害し得る化合物を指す。特異性は、当業者に公知の任意の方法を使用することによって、例えば、IC90および/またはIC50を試験することによって試験され得る。いくつかの実施形態において、本明細書において記載されている化合物は、正常(非感染)細胞に対するIC90および/またはIC50よりも少なくとも約3倍低い、ウイルス感染細胞に対するIC90および/またはIC50を有し得る。いくつかの実施形態において、本明細書において記載されている化合物は、正常(非感染)細胞に対するIC90および/またはIC50よりも約3倍から10倍低い、ウイルス感染細胞に対するIC90および/またはIC50を有し得る。いくつかの実施形態において、本明細書において記載されている化合物は、正常(非感染)細胞に対するIC90および/またはIC50よりも少なくとも10倍低い、ウイルス感染細胞に対するIC90および/またはIC50を有し得る。いくつかの実施形態において、本明細書において記載されている化合物は、ウイルス感染および/または形質転換細胞に対する特異的な細胞毒性を有し得る。細胞毒性は、当業者に公知である任意の方法によって計測できる。
【0042】
別段の規定がない限り、本明細書において描写されている構造は、該構造のすべての異性(例えば、鏡像異性、ジアステレオ異性および幾何(または立体配座))形態;例えば、各不斉中心についてのRおよびS立体配置、(Z)および(E)二重結合異性体、ならびに(Z)および(E)立体配座異性体を含むように意味付けられている。したがって、本発明の化合物の単一の立体化学異性体、ならびに鏡像異性、ジアステレオ異性および幾何(または立体配座)混合物は、本発明の範囲内である。別段の規定がない限り、本発明の化合物の互変異性形態はすべて、本発明の範囲内である。
【0043】
本明細書において使用される場合、用語「治療」、「治療する」および「治療すること」は、本明細書において記載されている通りの疾患または障害の進行を回復させ、軽減し、阻害すること、あるいは、講じられる対策が存在しない場合に生じるであろうものと比較した際の、本明細書において記載されている通りの障害または疾患の発生率または発症を遅延させ、解消しまたは低減させることを指す。いくつかの実施形態において、治療は、1つまたは複数の症状が発生した後に施されてよい。他の実施形態において、治療は、症状が存在しない場合に施されてよい。例えば、治療は、症状の発症前に(例えば、症状歴に照らして、かつ/または遺伝的もしくは他の感受性要因に照らして)感受性個体に施されてよい。治療は、例えば症状の再発を予防しまたは遅延させるために、症状が消散した後も続けてよい。
【0044】
本発明の活性化合物は、場合により、本明細書において記載されている通りのウイルス感染の治療において有用な他の活性化合物および/または剤と組み合わせて(または併用して)投与され得る。2種以上の化合物を「組み合わせて」または「併用して」投与することは、2種の化合物が、複合効果、例えば相加および/または相乗効果を有するように、時間的に十分近接して投与されることを意味する。2種の化合物を、同時に(同時発生的に)または順次に投与してよく、あるいは、投与は、互いの前または後の短期間内に生じる2つ以上の事象であってよい。同時投与は、投与前に化合物を混合することによって、または同じ時点であるが異なる解剖学的部位に、もしくは異なる投与ルートを使用して、化合物を投与することによって行われ得る。いくつかの実施形態において、他の抗ウイルス剤を場合により同時発生的に投与してよい。
【0045】
A.活性化合物
本発明のいくつかの態様によれば、様々な生物学的特性を持つ化合物が提供される。本明細書において記載されている化合物は、ウイルス誘発腫瘍の治療に関わる生物学的活性を有する。
【0046】
(1)いくつかの実施形態において、本発明の化合物は、式Iの構造:
【化2】
[式中、
R1、R1’、R2およびR2’は、独立に、−H、ハロゲン、−ORi、−SRi、−NHRi、−NRiRiiであり、かつ、RiおよびRiiは、独立に、水素または脂肪族であり、
R3は、薬学的に活性なホスホネート、ビスホスホネート、または薬理活性化合物のホスホネート誘導体であり、
Xは、存在する場合、
【化3】
であり、かつmは0から6までの整数である]
を有する。
【0047】
いくつかの実施形態において、前記アルキル、アルケニル、アルキニルまたはアシル部分は、1から6個の二重結合または三重結合を場合により有する。
【0048】
いくつかの実施形態において、R1およびR1’の少なくとも一方は−Hではない。
【0049】
いくつかの実施形態において、mは、0、1または2である。一実施形態において、R2およびR2’はHである。別の実施形態において、化合物は、治療用ホスホネートのエタンジオール、プロパンジオールまたはブタンジオール誘導体である。一実施形態において、本発明の化合物は、構造:
【化4】
[式中、R1、R1’およびR3は、上記で定義した通りである]
を有するエタンジオールホスホネート種である。
【0050】
いくつかの実施形態において、本発明の化合物は、構造:
【化5】
[式中、mは1であり、かつ、R1、R1’およびR3は、一般式において上記で定義した通りである]
を有するプロパンジオール種である。
【0051】
一実施形態において、本発明の化合物は、構造:
【化6】
[式中、mは1であり、R2はHであり、R2’はOHであり、かつ、Cα上のR2およびR2’はいずれも−Hである]を有するグリセロール種である。グリセロールは、光学活性分子である。グリセロールに立体特異的番号付け規則を使用すると、グリセロールキナーゼによってリン酸化される位置はsn−3位である。グリセロール残基を有する本発明の化合物において、R3部分は、グリセロールのsn−3またはsn−1位のいずれかで結合していてよい。
【0052】
いくつかの実施形態において、R1は、式−O−(CH2)t−CH3[式中、tは0〜24である]を有するアルコキシ基である。一実施形態において、tは11〜19である。別の実施形態において、tは15または17である。
【0053】
加えて、シドフォビル、環式シドフォビル、アデフォビル、テノフォビル等の抗ウイルスホスホネートを、本発明に従ってR3基として使用してよい。
【0054】
(2)本発明の一態様によれば、抗ウイルス性化合物は、式A、A’またはBの構造:
【化7】
[式中、
Mは
【化8】
であり、MのOは−P(=X)と結合しており、
ここで、R1、R1’、R2およびR2’は、独立に、−H、ハロゲン、−ORi、−SRi、−NHRi、−NRiRiiであり、かつ、RiおよびRiiは、独立に、水素または脂肪族であり、
Qは、存在する場合、
【化9】
であり、mは0から6までの整数であり、
Bは、水素、F、CF3、CHF2、−CH3、−CH2CH3、−CH2OH、−CH2CH2OH、−CH(OH)CH3、−CH2F、−CH=CH2および−CH2N3からなる群から選択され、
Xは、セレン、硫黄または酸素(いくつかの実施形態において、酸素)であり、
R3は、ヒドロキシ、−OR2a、−BH3、C1〜8アルキル、C2〜8アルケニル、C2〜8アルキニル、C1〜8ヘテロアルキル、C2〜8ヘテロアルケニル、C2〜8ヘテロアルキニルまたは−NR’Hであり(いくつかの実施形態において、R2はヒドロキシルである)、
R2aは、C1〜8アルキル、C2〜8アルケニル、C2〜8アルキニル、C1〜8ヘテロアルキル、C2〜8ヘテロアルケニル、C2〜8ヘテロアルキニル、−P(=O)(OH)2または−P(=O)(OH)OP(=O)(OH)2であり、
R’は、C1〜8アルキル、C2〜8アルケニル、C2〜8アルキニル、C1〜8ヘテロアルキル、C2〜8ヘテロアルキニル、C2〜8ヘテロアルケニル、C6〜10アリール、または置換もしくは非置換アミノ酸残基であり、
Zは、少なくとも1個のNを含む複素環式部分(いくつかの実施形態において、該複素環式部分はプリンまたはピリミジンから選択される)を含み、かつ
符号*は、式A、A’またはB中のメチレン部分とZとの結合点が、該複素環式部分の利用可能な窒素を介していることを指示する]
または薬学的に許容されるその塩を有する。
【0055】
いくつかの実施形態において、抗ウイルス性化合物は、鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ体、立体異性体、互変異性体、回転異性体またはそれらの混合物の形態である。
【0056】
別の実施形態において、Bは−CH3または−CH2OHである。
【0057】
いくつかの実施形態において、R3はヒドロキシルである。
【0058】
いくつかの実施形態において、Mは、−O−(CH2)2−O−C1〜24アルキ(alky)、−O−(CH2)3−O−C1〜24アルキル、−O−CH2−CH(OH)−CH2−O−C1〜24アルキルまたは−O−CH2−CH(OH)−S−C1〜24アルキルから選択される。別の実施形態において、Mは−O−(CH2)a−O−(CH2)t−CH3[ここで、aは2から4であり、かつtは11から19である]である。いくつかの実施形態において、aは2または3であり、かつtは15または17である。いくつかの実施形態において、Mは−O−(CH2)2−O−(CH2)15CH3または−O−(CH2)2−O−(CH2)17CH3である。一実施形態において、Mは−O−(CH2)3−O−(CH2)15CH3または−O−(CH2)3−O−(CH2)17CH3である。
【0059】
一実施形態において、Mは、式a、bまたはc
【化10】
[式中、RaおよびRbは、独立に、−H、ハロゲン、−ORi、−SRi、−NHRi、−NRiRiiであり、かつ、RiおよびRiiは、独立に、水素または脂肪族である]から選択される。いくつかの実施形態において、RiおよびRiiは、独立に、−(C1〜C24)アルキル、−(C2〜C24)アルケニル、−(C2〜C24)アルキニルまたは−(C1〜C24)アシルである。
【0060】
いくつかの実施形態において、RaまたはRbの少なくとも一方は水素ではない。いくつかの実施形態において、RaおよびRbは、−H、場合により置換されている−O(C1〜C24)アルキル、−O(C2〜C24)アルケニル、−O(C1〜C24)アシル、−S(C1〜C24)アルキル、−S(C2〜C24)アルケニルおよび−S(C1〜C24)アシルからなる群から独立に選択される。
【0061】
いくつかの実施形態において、M、R1、R1’、R2またはR2’は、独立に、−O(C1〜C24)アルキル、−O(C2〜C24)アルケニル、−O(C2〜C24)アルキニル、−O(C1〜C24)アシル、−S(C1〜C24)アルキル、−S(C2〜C24)アルケニル、−S(C2〜C24)アルキニル、−S(C1〜C24)アシル、−NH(C1〜C24)アルキル、−NH(C2〜C24)アルケニル、−NH(C2〜C24)アルキニル、−NH(C1〜C24)アシル、−N((C1〜C24)アルキル)((C2〜C24)アルキル)、−N((C1〜C24)アルキル)((C2〜C24)アルケニル)、−N((C1〜C24)アルキル)((C2〜C24)アシル)、−N((C1〜C24)アルキル)((C2〜C24)アルキニル)、−N((C1〜C24)アルケイル))((C2〜C24)アルキニル)、−N((C1〜C24)アルケニル)((C2〜C24)アルケニル)、−N((C1〜C24)アルキニル)((C2〜C24)アルキニル)、−N((C1〜C24)アシル)((C2〜C24)アルキニル)または−N((C1〜C24)アシル)((C2〜C24)アルケニル)である。
【0062】
一実施形態において、Zは、少なくとも1個の置換基によって場合により置換されていてよいプリンまたはピリミジンを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも1個の置換基は、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、置換アミノ、二置換アミノ、硫黄、ニトロ、シアノ、アセチル、アシル、アザ、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C6〜10アリール、およびC1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニルまたはC6〜10アリールで置換されているカルボニル、ハロアルキル、ならびにアミノアルキルからなる群から選択され得る。
【0063】
いくつかの実施形態において、Zは、アデニン、6−クロロプリン、キサンチン、ヒポキサンチン、グアニン、8−ブロモグアニン、8−クロログアニン、8−アミノグアニン、8−ヒドラジノグアニン、8−ヒドロキシグアニン、8−メチルグアニン、8−チオグアニン、2−アミノプリン、2,6−ジアミノプリン、チミン、シトシン、5−フルオロシトシン、ウラシル;5−ブロモウラシル、5−ヨードウラシル、5−エチルウラシル、5−エチニルウラシル、5−プロピニルウラシル、5−プロピルウラシル、5−ビニルウラシルまたは5−ブロモビニルウラシルから選択され得る。いくつかの実施形態において、Zは、グアニン−9−イル、アデニン−9−イル、2,6−ジアミノプリン−9−イル、2−アミノプリン−9−イルもしくはそれらの1−デアザ、3−デアザ、8−アザ化合物、またはシトシン−1−イルから選択される。いくつかの実施形態において、Zは、グアニン−9−イルまたは2,6−ジアミノプリン−9−イルである。
【0064】
別の実施形態において、Zは、6−アルキルプリンおよびN6−アルキルプリン、N6−アシルプリン、N6−ベンジルプリン、6−ハロプリン、N6−アセチレンプリン、N6−アシルプリン、N6−ヒドロキシアルキルプリン、6−チオアルキルプリン、N2−アルキルプリン、N4−アルキルピリミジン、N4−アシルピリミジン、4−ハロピリミジン、N4−アセチレンピリミジン、4−アミノおよびN4−アシルピリミジン、4−ヒドロキシアルキルピリミジン、4−チオアルキルピリミジン、チミン、シトシン、6−アザシトシン、2−および/または4−メルカプトピリミジンを含む6−アザピリミジン、ウラシル、C5−アルキルピリミジン、C5−ベンジルピリミジン、C5−ハロピリミジン、C5−ビニルピリミジン、C5−アセチレンピリミジン、C5−アシルピリミジン、C5−ヒドロキシアルキルプリン、C5−アミドピリミジン、C5−シアノピリミジン、C5−ニトロピリミジン、C5−アミノピリミジン、N2−アルキルプリン、N2−アルキル−6−チオプリン、5−アザシチジニル、5−アザウラシリル、トリアゾロピリジニル、イミダゾロピリジニル、ピロロピリミジニル、ならびにピラゾロピリミジニルから選択される。塩基上の官能性酸素および窒素基は、必要または要望に応じて保護され得る。適切な保護基は当業者に周知であり、トリメチルシリル、ジメチルヘキシルシリル、t−ブチルジメチルシリルおよびt−ブチルジフェニルシリル、トリチル、アルキル基、アセチルおよびプロピオニル等のアシル基、メタンスルホニル、ならびにp−トルエンスルホニルを含む。好ましい塩基は、シトシン、5−フルオロシトシン、ウラシル、チミン、アデニン、グアニン、キサンチン、2,6−ジアミノプリン、6−アミノプリン、6−クロロプリンおよび2,6−ジクロロプリンを含む。
【0065】
一実施形態において、Zは、
【化11】
[式中、式1〜4中の符号*は、Nと式A、A’またはB中のメチレンとの結合点を指示する]
である。
【0066】
Zの例は、米国特許第6,583,149号においてさらに記載されており、該特許は引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0067】
Zの追加の例は、一般式:
【化12】
[式中、
YはNまたはCXであり、
Xは、H、ハロ、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、CN、CF3、N3、NO2、C6〜10アリール、C6〜10ヘテロアリールおよびCORbからなる群から選択され、
Rbは、H、OH、SH、C1〜6アルキル、C1〜6アミノアルキル、C1〜6アルコキシおよびC1〜6チオアルキルからなる群から選択され、かつ
R11は、H、C1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニル、C3〜6シクロアルキル、C4〜12アルキルシクロアルキル、C6〜10アリール、およびC1〜6アルキル、C2〜6アルケニル、C2〜6アルキニルまたはC6〜10アリールで置換されているカルボニルからなる群から選択される]
の部分を含むがこれらに限定されない。
【0068】
Zの追加の例は、一般式:
【化13】
[式中、
Yは−NRaRbまたは−ORaであり、
L2は、共有結合(すなわち、存在しない)、−N(−R15)−、N(−R15)C(=O)−、−O−、−S−、−S(=O)−または−S(=O)2−であり、
R13は、H、C1〜6アルキル、C1〜6ヘテロアルキル、C2〜6アルケニル、C6〜10アリール、C7〜16アリールアルキル、C3〜10カルボシクリル、C6〜10ヘテロシクリルまたはC7〜16ヘテロシクリルアルキルであり、
R14は、H、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、−O(CH2)xOC(=O)OR15またはOC(=O)OR15であり、ここで、xは、2または3から10、15または20であり、
R15は、H、C1〜6アルキル、C1〜6ヘテロアルキル、C2〜6アルケニル、C6〜10アリール、C7〜16アリールアルキル、C3〜10シクロアルキル、C6〜10ヘテロシクリルまたはC7〜16ヘテロシクロアルキル(heterocyclalkyl)であり、かつ
Ra、Rbは、水素、C1〜6アルキルまたはC3〜6シクロアルキルおよびC3〜8ヘテロシクリルからなる群から独立に選択され、ここで、C3〜6シクロアルキルおよびC3〜8ヘテロシクリルは、1個または複数のC1〜5アルキルで場合により置換されていてよい]
の化合物を含むがこれらに限定されない。
【0069】
Zの追加の例は、一般式:
【化14】
[R16およびR17は、水素、C1〜6アルキルもしくはC3〜6シクロアルキル、またはC3〜8ヘテロシクリルからなる群から独立に選択され、ここで、C3〜6シクロアルキルおよびC3〜8ヘテロシクリルは、1個または複数のC1〜5アルキルで場合により置換されていてよい]
の部分を含むがこれに限定されない。
【0070】
本発明の例示的な化合物は、
【化15A】
【化15B】
または薬学的に許容されるその塩
を含むがこれらに限定されない。
【0071】
さらなる例示的な化合物を以下に示す。
【化16】
【0072】
本発明のさらなる態様によれば、シドフォビル、テノフォビル、環式シドフォビルおよびアデフォビル等の非環式ヌクレオチドホスホネートの多様な脂質誘導体を、本明細書において提供される方法および組成物において活性剤として使用してもよい。一実施形態において、活性剤は、下記の構造:
【化17】
[式中、W1、W2およびW3は、それぞれ独立に、−O−、−S−、−SO−、−SO2、−O(C=O)−、−(C=O)O−、−NH(C=O)−、−(C=O)NH−または−NH−であり、一実施形態において、それぞれ独立に、O、Sまたは−O(C=O)−であり、
nは0または1であり、mは0または1であり、pは0または1であり、
R1は、場合により置換されているアルキル、アルケニルまたはアルキニル、例えば、C1〜30アルキル、C2〜30アルケニルまたはC2〜30アルキニルであるか、あるいは一実施形態において、R1は、場合により置換されているC8〜30アルキル、C8〜30アルケニルまたはC8〜30アルキニルであるか、あるいはR1は、C8〜24アルキル、C8〜24アルケニルまたはC8〜24アルキニル(例えば、C17、C18、C19、C20、C21、C22、C23もしくはC24アルキル、アルケニルまたはアルキニル)であり、
R2およびR3は、それぞれ独立に、場合により置換されているC1〜25アルキル、C2〜25アルケニルまたはC2〜25アルキニルであり、
Dは、式V〜Xにおいて描写されている通りのメチレン基と直接連結しているシドフォビル、テノフォビル、環式シドフォビルまたはアデフォビルであってよい]を有する。例えば、Dがテノフォビルである場合、Dは、式:
【化18】
の部分である。
【0073】
Dがシドフォビルである場合、Dは、式:
【化19】
の部分である(例えば、シドフォビルまたはテノフォビルは、ホスホネートヒドロキシル基を介して式V〜Xのメチレン基と直接連結している)。
【0074】
式V〜Xのいくつかの実施形態において、
W1、W2およびW3は、それぞれ独立に、−O−、−S−または−O(CO)−であり、
nは0または1であり、mは0または1であり、pは0または1であり、
R1は、場合により置換されているC12〜24アルキルまたはアルケニル(例えば、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20、C21、C22、C23もしくはC24アルキルまたはアルケニル)であり、
R2およびR3は、それぞれ独立に、場合により置換されているC1〜24アルキルもしくはC2〜24アルケニル、またはC2〜24アルキニルである。
Dは、式V〜Xにおいて描写されている通りのメチレン基と直接連結しているシドフォビル、テノフォビル、環式シドフォビルまたはアデフォビルである。
【0075】
別の実施形態において、式V〜Xの活性化合物は、下記の構造の1つを有し、ここで、R1は、場合により置換されているC8〜24アルキル、例えばC12〜24アルキルであり、Dは、式V〜Xにおいて描写されている通りのメチレン基と直接連結しているシドフォビル、テノフォビル、環式シドフォビルまたはアデフォビルである。
【0076】
(3)本発明を行うために使用され得る、化合物、組成物、製剤および対象を治療する方法は、米国特許第6,716,825号、米国特許第7,034,014号、米国特許第7,094,772号、米国特許第7,098,197号、米国特許第7,452,898号および米国特許第7,687,480号において記載されているものを含むがこれらに限定されず、その開示は、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【0077】
いくつかの実施形態において、活性化合物は、構造式C:
【化20】
[式中、
R1、R1’、R2およびR2’は、独立に、−H、ハロゲン、−NH2、−OHもしくは−SHまたは場合により置換されている−XRiであり、ここで、Xは、O、S、−NHまたは−NRiiであり、かつ、RiおよびRiiは、独立に、−(C1〜C24)アルキル、−(C1〜C24)アルケニル、−(C1〜C24)アルキニルまたは−(C1〜C24)アシルである]
を有する。
【0078】
いくつかの実施形態において、R1およびR1’の少なくとも一方は−Hではない。いくつかの実施形態において、前記アルケニルまたはアシル部分は、1から6個の二重結合を場合により有し、
R3は、任意選択のリンカーL上の官能基と、またはCα上の利用可能な酸素原子と連結している、薬学的に活性なホスホネート、ビスホスホネート、または薬理活性化合物のホスホネート誘導体であり、
Xは、存在する場合、
【化21】
であり、
Lは、原子価結合、または式−J−(CR2)t−G−[式中、tは1から24の整数であり、JおよびGは、独立に、−O−、−S−、−C(O)O−または−NH−であり、かつ、Rは、−H、置換もしくは非置換アルキル、またはアルケニルである]の二官能性連結分子であり、
mは0から6の整数であり、かつ
nは0または1である。
【0079】
いくつかの実施形態において、m=0、1または2である。いくつかの実施形態において、R2およびR2’はHであり、このときプロドラッグは、治療用ホスホネートのエタンジオール、プロパンジオールまたはブタンジオール誘導体である。例示的なエタンジオールホスホネート種は、構造:
【化22】
[式中、R1、R1’、R3、Lおよびnは、上記で定義した通りである]
を有する。
【0080】
いくつかの実施形態において、プロパンジオール種は、構造:
【化23】
[式中、m=1であり、かつ、R1、R1’、R3、Lおよびnは、一般式において上記で定義した通りである]
を有する。
【化24】
[式中、m=1、R2=H、R2’=OHであり、かつ、Cα上のR2およびR2’はいずれも−Hである]。グリセロールは、光学活性分子である。グリセロールに立体特異的番号付け規則を使用すると、グリセロールキナーゼによってリン酸化される位置はsn−3位である。グリセロール残基を有する本発明の化合物において、−(L)n−R3部分は、グリセロールのsn−3またはsn−1位のいずれかで結合していてよい。
【0081】
別の実施形態において、R1は、式−O−(CH2)t−CH3[式中、tは0〜24である]を有するアルコキシ基である。より好ましくは、tは11〜19である。最も好ましくは、tは、15または17である。
【0082】
例示的なR3基は、臨床的に有用であることが公知であるビスホスホネート、例えば、化合物:
エチドロネート:1−ヒドロキシエチリデンビスホスホン酸(EDHP)、
クロドロネート:ジクロロメチレンビスホスホン酸(C12 MDP)、
チルドロネート(Tiludromate):クロロ−4−フェニルチオメチレンビスホスホン酸、
パミドロネート:3−アミノ−1−ヒドロキシプロピリデンビスホスホン酸(ADP)、
アレンドロネート:4−アミノ−1−ヒドロキシブチリデンビスホスホン酸、
オルパドロネート:3ジメチルアミノ−1−ヒドロキシプロピリデンビスホスホン酸(ジメチル−APD)、
イバンドロネート:3−メチルペンチルアミノ−1−ヒドロキシプロピリデンビスホスホン酸(BM21.0955)、
EB−1053:3−(1−ピロリジニル)−1−ヒドロキシプロピリデンビスホスホン酸、
リセドロネート(Risedmnate):2−(3−ピリジニル)−1−ヒドロキシ−エチリデンビスホスホン酸、
アミノ−オルパドロネート:3−(N,N−ジメチルアミノ−1−アミノプロピリデン)ビスホスホネート(IG9402)
等を含む。
【0083】
R3は、同じく本明細書における使用を企図されている、多様なホスホネート含有ヌクレオチド(またはそれらの対応するホスホネートに誘導体化され得るヌクレオシド)から選択されてもよい。好ましいヌクレオシドは、2−クロロ−デオキシアデノシン、1−β−D−アラビノフラノシル−シチジン(シタラビン、ara−C)、フルオロウリジン、フルオロデオキシウリジン(フロキシウリジン)、ゲムシタビン、クラドリビン、フルダラビン、ペントスタチン(2’−デオキシコホルマイシン)、6−メルカプトプリン、6−チオグアニン、および置換または非置換1−β−D−アラビノフラノシル−グアニン(ara−G)、1−β−D−アラビノフラノシル−アデノシン(ara−A)、1−β−D−アラビノフラノシル−ウリジン(ara−U)等、不適切な細胞増殖によって引き起こされる障害を治療するために有用なものを含む。
【0084】
ウイルス感染を治療するために有用なヌクレオシドは、R3基としての使用のために、それらの対応する5’−ホスホネートにも変換できる。そのようなホスホネート類似体は、典型的に、抗ウイルス性ヌクレオシドの5’−ヒドロキシルを置換するホスホネート(−PO3H2)またはメチレンホスホネート(−CH2−PO3H2)基のいずれかを含有する。5’−ヒドロキシルを−PO3H2で置換することによって誘導される抗ウイルス性ホスホネートのいくつかの例は、
【表1】
である。
【0085】
5’−ヒドロキシルを−CH2−PO3H2で置換することによって誘導される抗ウイルス性ホスホネートのいくつかの例は、
【表2】
である。
【0086】
他の例示的な抗ウイルス性ヌクレオチドホスホネートは、ddA、ddI、ddG、L−FMAU、DXG、DAPD、L−dA、L−dI、L−(d)T、L−dC、L−dG、FTC、ペンシクロビル等を含む抗ウイルス性ヌクレオシドから同様に誘導される。
【0087】
加えて、シドフォビル、環式シドフォビル、アデフォビル、テノフォビル等の抗ウイルス性ホスホネートを、本発明に従ってR3基として使用してよい。
【0088】
例えば、それぞれ引用することにより本明細書の一部をなすものとする下記の特許において開示されている化合物:米国特許第3,468,935号(エチドロネート)、米国特許第4,327,039号(パミドロネート)、米国特許第4,705,651号(アレンドロネート)、米国特許第4,870,063号(ビスホスホン酸誘導体)、米国特許第4,927,814号(ジホスホネート)、米国特許第5,043,437号(アジドジデオキシヌクレオシドのホスホネート)、米国特許第5,047,533号(非環式プリンホスホネートヌクレオチド類似体)、米国特許第5,142,051号(ピリミジンおよびプリン塩基のN−ホスホニルメトキシアルキル誘導体)、米国特許第5,183,815号(骨活性剤)、米国特許第5,196,409号(ビスホスホネート)、米国特許第5,247,085号(抗ウイルス性プリン化合物)、米国特許第5,300,671号(Gem−ジホスホン酸)、米国特許第5,300,687号(トリフルオロメチルベンジルホスホネート)、米国特許第5,312,954号(ビス−およびテトラキス−ホスホネート)、米国特許第5,395,826号(グアニジンアルキル−1,1−ビスホスホン酸誘導体)、米国特許第5,428,181号(ビスホスホネート誘導体)、米国特許第5,442,101号(メチレンビスホスホン酸誘導体)、米国特許第5,532,226号(トリフルオロメチルベンジルホスホネート(Trifluoromethybenzylphosphonates))、米国特許第5,656,745号(ヌクレオチド類似体)、米国特許第5,672,697号(ヌクレオシド−5’−メチレンホスホネート)、米国特許第5,717,095号(ヌクレオチド類似体)、米国特許第5,760,013号(チミジレート類似体)、米国特許第5,798,340号(ヌクレオチド類似体)、米国特許第5,840,716号(ホスホネートヌクレオチド化合物)、米国特許第5,856,314号(チオ置換、窒素含有、複素環式ホスホネート化合物)、米国特許第5,885,973号(オルパドロネート)、米国特許第5,886,179号(ヌクレオチド類似体)、米国特許第5,877,166号(鏡像異性的に純粋な2−アミノプリンホスホネートヌクレオチド類似体)、米国特許第5,922,695号(抗ウイルス性ホスホノメトキシヌクレオチド類似体)、米国特許第5,922,696号(プリンのエチレンおよびアレンホスホネート誘導体)、米国特許第5,977,089号(抗ウイルス性ホスホノメトキシヌクレオチド類似体)、米国特許第6,043,230号(抗ウイルス性ホスホノメトキシヌクレオチド類似体)、米国特許第6,069,249号(抗ウイルス性ホスホノメトキシヌクレオチド類似体);ベルギー特許第672205号(クロドロネート);欧州特許第753523号(アミノ置換ビスホスホン酸);欧州特許出願第186405号(ジェミナルジホスホネート)等、それらの薬理活性を改善するため、またはそれらの経口吸収を増大させるために、本発明に従って誘導体化され得る多くのホスホネート化合物が存在する。
【0089】
ある特定のビスホスホネート化合物は、人間を含む哺乳動物において、スクアレンシンターゼを阻害し血清中コレステロールレベルを低減させる能力を有する。これらのビスホスホネートの例は、例えば、Paulsらによる米国特許第5,441,946号および同5,563,128号、Phosphonate derivatives of lipophilic aminesにおいて開示されており、これらはいずれも引用することにより本明細書の一部をなすものとする。本発明に従って化合物を阻害するこれらのスクアレンシンターゼの類似体およびヒトの脂質障害の治療におけるそれらの使用は、本発明の範囲内である。本発明のビスホスホネートは、引用することにより本明細書の一部をなすものとする米国特許第5,270,365号において開示される通り、歯周疾患を予防または治療するために、経口的にまたは局所的に使用され得る。
【0090】
いくつかの実施形態において、活性化合物は、シドフォビル、アデフォビル、環式シドフォビルおよびテノフォビルからなる群から選択される抗ウイルス性化合物と、アルキルグリセロール、アルキルプロパンジオール、1−S−アルキルチオグリセロール、アルコキシアルカノールもしくはアルキルエタンジオールからなる群から選択されるアルコールまたは薬学的に許容されるその塩との共有結合によって形成されるホスホン酸エステルを有する。
【0091】
いくつかの実施形態において、活性化合物は、5’−ヒドロキシル基が、アルキルエタンジオールと共有結合しているホスホネートまたはメチルホスホネートを置換した、抗ウイルス性ヌクレオシド化合物を含む。
【0092】
本発明のある特定の化合物は、例えば糖部分中に1つまたは複数のキラル中心を保有し、故に光学活性形態で存在し得る。同じように、化合物がアルケニル基または不飽和アルキルもしくはアシル部分を含有する場合、化合物のシス−およびトランス−異性形態の可能性が存在する。追加の不斉炭素原子は、アルキル基等の置換基中に存在し得る。R−およびS−異性体、ならびにラセミ混合物とシス−およびトランス−異性体の混合物とを含むその混合物は、本発明によって企図されている。すべてのそのような異性体およびその混合物は、本発明に含まれることが意図されている。特定の立体異性体が望ましい場合、当業者に周知の方法により、不斉中心を含有し既に分割されている出発材料との立体特異的反応を使用して、または代替として、立体異性体の混合物をもたらす方法および既知の方法による分割によって、調製できる。
【0093】
化合物が安定な非毒性酸または塩基塩を形成するために十分塩基性または酸性である事例において、薬学的に許容される塩としての化合物の投与が適切となり得る。薬学的に許容される塩は、親化合物の望ましい生物学的活性を保持し、かつ望ましくない毒物学的効果を付与しない塩である。薬学的に許容される塩は、薬学的に許容される無機または有機塩基および酸から誘導されるものを含む。適切な塩は、カリウムおよびナトリウム等のアルカリ金属;カルシウムおよびマグネシウム等のアルカリ土類金属;またはアンモニウムから誘導される塩、薬学分野において周知の数ある他の酸の中でも、ジシクロヘキシルアミンおよびN−メチル−D−グルカミン等の有機塩基とのアンモニウム塩を含む。いくつかの実施形態において、薬学的に許容される塩は、生理学的に許容されるアニオンを形成する酸と形成された有機酸付加塩、例えば、トシル酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、酒石酸塩(tartarate)、コハク酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、α−ケトグルタル酸塩およびα−グリセロリン酸塩から選択される。硫酸塩、硝酸塩、重炭酸塩および炭酸塩を含む適切な無機塩も形成され得る。
【0094】
塩を形成するために使用され得る例示的な作用物質は、(1)無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸;または有機酸、例えば、酢酸、クエン酸、フマル酸、アルギン酸、グルコン酸、ゲンチシン酸、馬尿酸、安息香酸、マレイン酸、タンニン酸、L−マンデル酸、オロチン酸、シュウ酸、サッカリン、コハク酸、L−酒石酸、アスコルビン酸、パルミチン酸、ポリグルタミン酸、トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、メタンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ポリガラクツロン酸等の酸、(2)アンモニア、一または二置換アンモニア;水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属塩基;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類塩基;エルアルギニン、ジエチルアミン、ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、イミダゾール、L−リジン、2−ヒドロキシエチルモルホリン、N−メチル−グルカミン、カリウムメタノレート、亜鉛tert−ブトキシド等の有機塩基等の塩基を含むがこれらに限定されない。
【0095】
本明細書において記載されている通りの活性化合物は、公知の手順、または当業者には明らかであろうその変形形態に従って調製できる。例えば、Painterら、Evaluation of Hexadecyloxypropyl−9−R−[2−(Phosphonomethoxy)Propyl]−Adenine,CMX157,as a Potential Treatment for Human Immunodeficiency Virus Type 1 and Hepatitis B Virus Infections、Antimicrobial Agents and Chemotherapy 51、3505〜3509(2007)およびAlmondらによる米国特許出願公開第2007/0003516号を参照されたい。
【0096】
薬学的に許容される塩は、当技術分野において周知の標準的な手順を使用して、例えば、アミン等の十分に塩基性の化合物を適切な酸と反応させて生理学的に許容されるアニオンを産出することによって得ることができる。カルボン酸のアルカリ金属(例えば、ナトリウム、カリウムまたはリチウム)またはアルカリ土類金属(例えばカルシウム)塩を作製することもできる。
【0097】
B.活性化合物の合成
本明細書において記載されている化合物の調製において利用される過程は、望ましい特定化合物によって決まる。特定置換基の選択および特定置換基の種々の可能な場所等の要因はいずれも、本発明の特定化合物の調製において辿られる経路において役割を果たす。それらの要因は、当業者には容易に認識される。
【0098】
概して、本発明の化合物は、当技術分野において公知の標準的な技術によって、およびそれに類似する公知の過程によって調製できる。本発明の化合物を調製するための一般的方法を以下に説明する。
【0099】
下記の記述において、すべての変数は、別段の注記がない限り、本明細書において記載されている式において定義されている通りである。下記の非限定的な記述は、本明細書において記載されている化合物を得るために使用され得る一般的方法論を例証するものである。
【0100】
本発明において有用な化合物(またはプロドラッグ)は、米国特許第6,716,825号のスキームI〜VIにおいて概ね描写されている通り、多様な手法で調製できる。以下に記載する一般的なホスホネートエステル化法は、例証目的でのみ提供され、いかようにも本発明を限定するものとして解釈されるべきでない。実際に、ホスホン酸とアルコールとの直接縮合のための数種の方法が開発された(例えば、R.C.Larock、Comprehensive Organic Transformations、VCH、New York、1989、966頁およびその中で引用されている参考文献を参照)。実施例において記載されている化合物および中間体の単離および精製は、要望に応じて、例えば、濾過、抽出、結晶化、フラッシュカラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、蒸留、またはそれらの手順の組合せ等、任意の適切な分離または精製手順によって達成され得る。適切な分離および単離手順の具体的例証は、以下の実施例において記す。当然ながら、他の同等の分離および単離手順を使用してもよい。
【0101】
米国特許第6,716,825号のスキームIは、パミドロネートまたはアレンドロネート等の第一級アミノ基を含有するビスホスホネートプロドラッグの合成を概説するものである。その中の実施例1は、1−O−ヘキサデシルオキシプロピル−アレンドロネート(HDP−アレンドロネート)または1−O−ヘキサデシルオキシプロピル−パミドロネート(HDP−パミドロネート)の合成のための条件を提供している。この過程において、ピリジン溶液中のジメチル4−フタルイミドブタノイルホスホネート(1b、米国特許第5,039,819号において記載されている通りに調製したもの))およびヘキサデシルオキシプロピルメチルホスファイト(2)の混合物をトリエチルアミンで処理してビスホスホネートテトラエステル3bを生み出し、これをシリカゲルクロマトグラフィーによって精製する。Kers,A.、Kers,I.、Stawinski,J.、Sobkowski,M.、Kraszewski,A.Synthesis、1995年4月、427 430において記載されている通りのジフェニルホスファイトのエステル交換によって、中間体2を得る。このように、ピリジン溶液中のジフェニルホスファイトを、最初にヘキサデシルオキシプロパン−1−オールで、次いでメタノールで処理して、化合物2を提供する。
【0102】
該過程の重要な態様は、ヘキサデシルオキシプロパン−1−オールの代わりに他の長鎖アルコールを使用して、本発明の種々の化合物を生成できることである。アセトニトリル中のブロモトリメチルシランによる中間体3bの処理により、メチルエステルを選択的に開裂してモノエステル4bを生み出す。混合溶媒系(20%メタノール/80%1,4−ジオキサン)中のヒドラジンによる4bの処理は、示されている通り、フタルイミド保護基の除去を招く。所望のアレンドロネートプロドラッグを濾過によって収集し、メタノール性アンモニアでの処理によって三アンモニウム塩に変換する。
【0103】
米国特許第6,716,825号のスキームIIは、第一級アミノ基を欠くビスホスホネートの類似体の合成を例証するものであり、この事例において、処理ステップは、フタルイミド基での保護およびその後のヒドラジン分解による脱保護が不必要であることを除き、スキーム1のものと同様である。アミノ−オルパドロネート等の1−アミノ基を有するビスホスホネートは、米国特許第6,716,825号のスキームIIIにおいて示されている過程を若干修正したものを使用して、本発明による類似体のプロドラッグに変換され得る。化合物2および3−(ジメチルアミノ)プロピオニトリルの混合物の乾燥HClによる処理、続いてジメチルホスファイトの添加によりテトラエステル3を産出し、ブロモトリメチルシランでの脱メチル化後、ヘキサデシルオキシプロピル−アミノ−オルパドロネートを生み出す。
【0104】
米国特許第6,716,825号のスキームIVは、ホスホン酸エステルとしてではなく、脂質基を親化合物の第一級アミノ基と結合させる、ビスホスホネート類似体の合成を例証するものである。
【0105】
米国特許第6,716,825号のスキームVは、シドフォビル、環式シドフォビルおよび他のホスホネートのアルキルグリセロールまたはアルキルプロパンジオール類似体の一般的合成を例証するものである。ジメチルホルムアミド中のNaHでの2,3−イソプロピリデングリセロール1の処理、続いてアルキルメタンスルホネートとの反応により、アルキルエーテル2を生み出す。酢酸での処理によるイソプロピリデン基の除去、続いてピリジン中のトリチルクロリドとの反応により、中間体3を生み出す。ハロゲン化アルキルによる中間体3のアルキル化により、化合物4を生じさせる。80%酢酸水溶液によるトリチル基の除去により、O,O−ジアルキルグリセロール5を産出する。化合物5の臭素化、続いて環式シドフォビルまたは他のホスホネート含有ヌクレオチドのナトリウム塩との反応により、所望のホスホネート付加物7を生み出す。環式付加物の開環は、水酸化ナトリウム水溶液との反応によって遂行される。プロパンジオール種の化合物は、スキームVにおける化合物5を1−O−アルキルプロパン−3−オールで代用することによって合成され得る。テノフォビルおよびアデフォビル類似体は、スキームVの反応(f)におけるcCDVをこれらのヌクレオチドホスホネートで代用することによって合成され得る。同様に、本発明の他のヌクレオチドホスホネートがこの方式で形成され得る。
【0106】
米国特許第6,716,825号のスキームVIは、例として1−O−ヘキサデシルオキシプロピル−アデフォビルを使用する本発明のヌクレオチドホスホネートの合成のための一般的方法を例証するものである。ヌクレオチドホスホネート(5mmol)を乾燥ピリジンに懸濁させ、アルコキシアルカノールまたはアルキルグリセロール誘導体(6mmol)および1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(dicyclohexylcarbodiimde)(DCC、10mmol)を添加する。混合物を加熱還流し、薄層クロマトグラフィーによってモニターしながら縮合反応が完了するまで激しく撹拌する。次いで混合物を冷却し、濾過する。濾液を減圧下で濃縮し、残留物をシリカゲルに吸着させ、フラッシュカラムクロマトグラフィー(およそ9:1ジクロロメタン/メタノールでの溶離)によって精製して、対応するホスホネートモノエステルを生み出す。
【0107】
スキームVII(Kernら、AAC 46(4):991において図1として参照されるもの)は、シドフォビル(CDV)および環式シドフォビル(cCDV)のアルコキシアルキル類似体の合成を例証するものである。図1において、矢印は、下記の試薬:(a)N,N−ジシクロヘキシルモルホリノカルボキサミド、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド、ピリジン、100℃;(b)1−ブロモ−3−オクタデシルオキシエタン(ODE)、または1−ブロモ−3−ヘキサデシルオキシプロパン(HDP)、N,N−ジメチルホルムアミド、80℃;(c)0.5M NaOHを指示している。
【0108】
当業者であれば、当業者に公知である任意の適用可能な方法を使用することにより、本願において開示されている塩を遊離酸に変換することができるはずである。
【化25】
【0109】
本明細書において記載されている通り、本発明の化合物は、上記で概ね例証されているもの、または本発明の特定のクラス、サブクラスおよび種によって例示されているもの等、1個または複数の置換基で場合により置換されていてよい。概して、用語「置換されている」は、明記された置換基のラジカルによる、所与の構造中の水素ラジカルの置き換えを指す。別段の指示がない限り、置換されている基は、該基の各置換可能な位置に置換基を有し得、任意の所与の構造における複数の位置が、明記された基から選択される複数の置換基で置換されていてよい場合、置換基は、すべての位置で同じであっても異なっていてもよい。本発明によって想定される置換基の組合せは、安定なまたは化学的に実現可能な化合物の形成を招くものとなり得る。
【0110】
C.医薬製剤および投与
一実施形態において、本発明は、本明細書において記載されている化合物を含む医薬組成物である。別の実施形態において、医薬組成物は、薬学的に許容される担体をさらに含む。用語「薬学的に許容される担体」は、本明細書において使用される場合、対象への治療剤の送達のためのビヒクルとして使用される、それ自体は治療剤でない任意の物質を指す。薬学的に許容される担体、および種々の組成物の製造方法の例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Publishing Co.(1990)(米国特許出願第US2007/0072831号も参照)において記載されているものを含むがこれらに限定されない。
【0111】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、第E項において記載されている1種または複数の免疫抑制剤をさらに含む。
【0112】
活性成分を単独で投与することが可能である場合、該成分を医薬製剤として提示することが好ましい。本発明の製剤は、獣医学のためおよびヒト使用のためのいずれであっても、上記で定義した通りの少なくとも1種の活性成分を、その1種または複数の薬学的に許容される担体(添加剤、賦形剤等)および場合により他の治療成分と一緒に含む。担体(複数可)は、製剤の他の成分と適合し、そのレシピエントに有害でないという意味で「許容される」ものでなくてはならない。
【0113】
本発明の化合物は、通常の実務に準拠して選択される、慣例的な担体、賦形剤および添加剤とともに製剤化され得る。錠剤は、添加剤、流動促進剤、充填剤、結合剤、賦形剤等を含有することになる。水性製剤は、無菌形態で調製され、経口投与以外による送達が意図されている場合、概して等張性となる。製剤は、「Handbook of Pharmaceutical Excipients」(1986)において説明されているもの等の添加剤を場合により含有し、アスコルビン酸および他の酸化防止剤、EDTA等のキレート剤、デキストリン等の炭水化物、ヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ステアリン酸等を含む。
【0114】
哺乳動物、とりわけヒトに、有効投薬量の本発明の化合物を提供するために、任意の適切な投与ルートが用いられ得る。例えば、本発明の組成物は、経口、非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、髄腔内および硬膜外を含む)、吸入噴霧、局所、経直腸、経鼻、舌下、口腔内、膣内または埋込みレザバー投与等のための製剤に適切となり得る。いくつかの実施形態において、組成物は、経口的に、局所的に、腹腔内にまたは静脈内に投与される。これらの懸濁剤は、当技術分野において公知の技術に従い、適切な分散または湿潤剤および懸濁化剤を使用して製剤化され得る。許容されるビヒクルおよび溶媒の中でも、用いられ得るのは、水、リンゲル液および等張塩化ナトリウム溶液である。加えて、滅菌固定油が溶媒または懸濁媒として慣例的に用いられる。
【0115】
本発明の化合物およびその生理学的に許容される塩(以後、活性成分と総称する)は、治療される状態に適切な任意のルート、経口、経直腸、経鼻、局所(眼内、口腔内および舌下を含む)、膣内および非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、髄腔内および硬膜外を含む)を含む適切なルートによって投与され得る。好ましい投与ルートは、例えばレシピエントの状態に伴って変動し得る。
【0116】
薬学的に許容される油を、本発明の組成物において溶媒または懸濁媒として用いてよい。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体等の脂肪酸は、注射用製剤において適宜含まれ、オリーブ油またはヒマシ油等の天然の薬学的に許容される油も、とりわけそのポリオキシエチル化バージョンで含まれる。本発明の組成物を含有する油は、カルボキシメチルセルロース、または乳剤および懸濁剤を含む薬学的に許容される剤形の製剤において一般的に使用される同様の分散剤等、長鎖アルコール賦形剤または分散剤も含有し得る。組成物は、適宜、界面活性剤(Tween(登録商標)またはSpan(登録商標)を含む非イオン性洗剤等)、他の乳化剤またはバイオアベイラビリティー増強剤をさらに含む。
【0117】
本発明の組成物は、カプセル剤、錠剤、懸濁剤または液剤を含むがこれらに限定されない経口的に許容される剤形の形態であってよい。経口剤形は、少なくとも1種の添加剤を含み得る。本発明の経口製剤において使用される添加剤は、賦形剤、不快な味または臭気をマスキングまたは相殺するために添加される物質、香味料、色素、香料、および組成物の外観を改善するために添加される物質を含み得る。本発明のいくつかの経口剤形は、組成物の用量単位の、経口投与に適したカプセル剤または錠剤等の不連続な物品への形成を可能にしまたは容易にする、崩壊剤、結合剤、接着剤、湿潤剤、ポリマー、滑沢剤または流動促進剤等の添加剤を適宜含む。本発明の添加剤含有錠剤組成物は、1種または複数の添加剤を本発明の化合物と、溶解、懸濁、ナノ粒子、微粒子、またはその制御放出、緩徐放出、プログラム放出、時限放出、パルス放出、持続放出もしくは長時間放出形態の組合せにおいて併せるステップを含む、任意の適切な調剤方法によって調製できる。
【0118】
経口投与に適した本発明の製剤は、所定量の活性成分をそれぞれ含有するカプセル剤、カシェ剤または錠剤等の不連続単位として、散剤または顆粒剤として、水性液体または非水性液体中の液剤または懸濁剤として、あるいは水中油型液体乳剤または油中水型液体乳剤として提示され得る。活性成分は、ボーラス剤、舐剤またはペースト剤としても提示され得る。
【0119】
錠剤は、場合により1種または複数の副成分とともに、圧縮または成型によって作製され得る。圧縮錠剤は、結合剤、滑沢剤、不活性賦形剤、保存剤、表面活性剤または分散剤と場合により混合されている散剤または顆粒剤等の易流動性形態の活性成分を、適切なマシン内で圧縮することによって調製できる。成型錠剤は、不活性液体賦形剤で湿らせた粉末状化合物の混合物を、適切なマシン内で成型することによって作製できる。錠剤は、場合によりコーティングされているかまたは切り込み線が入れられていてよく、その中の活性成分の緩徐または制御放出を提供するように製剤化されていてよい。
【0120】
口中への局所投与に適した製剤は、香味付けされた基剤、通常はスクロースおよびアカシアまたはトラガカント中に活性成分を含むロゼンジ剤、ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシア等の不活性基剤中に活性成分を含むパステル剤、ならびに適切な液体担体中に活性成分を含む洗口剤を含む。
【0121】
経直腸投与用の製剤は、例えばココアバターまたはサリチレートを含む適切な基剤を有する坐剤として提示され得る。
【0122】
担体が固体である経鼻投与に適した製剤は、例えば20から500ミクロンの範囲内の粒子サイズ(20から500ミクロンの間の範囲内の粒子サイズを、30ミクロン、35ミクロン等、5ミクロン刻みで含む)を有する粗散剤を含み、鼻で吸い込む方式で、すなわち、鼻に接近して保持した散剤の容器から鼻孔を経由する急速吸入によって、投与される。担体が液体である場合、例えば鼻腔用スプレーまたは点鼻剤としての投与に適した製剤は、活性成分の水性または油性溶液を含む。エアゾール投与に適した製剤は、慣例的な方法に従って調製でき、ニューモシスチス肺炎の治療用のペンタミジン等、他の治療剤とともに送達され得る。
【0123】
膣内投与に適した製剤は、活性成分に加えて、適切であることが当技術分野において公知であるような担体を含有する、ペッサリー、リング、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、フォーム剤またはスプレー製剤として提示され得る。
【0124】
非経口投与に適した製剤は、製剤を意図されているレシピエントの血液と等張にする、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤および溶質を含有し得る水性および非水性滅菌注射液、ならびに懸濁化剤および増粘剤を含み得る水性および非水性滅菌懸濁剤を含む。製剤は、単回用量または複数回用量容器、例えば、密封したアンプルおよびバイアル内に提示され得、滅菌液体担体、例えば注射用水を使用直前に添加するだけでよいフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存できる。即席の注射液および懸濁液は、先に記載した種類の滅菌粉末、顆粒剤および錠剤から調製できる。好ましい単位投薬量製剤は、本明細書において上記に列挙した通りの日用量もしくは単位分割日用量、またはその適切な画分の活性成分を含有するものである。
【0125】
特に上述した成分に加えて、本発明の製剤は、問題の製剤の種類を考慮して当該技術分野において慣例的な他の作用物質を含み得ること、例えば、経口投与に適した製剤は香味剤を含み得ることを理解すべきである。
【0126】
本発明の薬学的に許容される組成物は、活性構成要素が1種または複数の担体に懸濁または溶解されている、局所液剤、軟膏剤またはクリーム剤の形態であってよい。本発明の化合物の局所投与用の担体は、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ロウおよび水を含むがこれらに限定されない。局所製剤が軟膏剤またはクリーム剤の形態である場合、適切な担体は、鉱油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステルロウ、セテアリルアルコール、2オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水を含むがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、本発明の局所組成物は、スプレー剤の形態である。
【0127】
本発明の薬学的に許容される組成物は、経鼻、エアゾールによって、または吸入投与ルートによって投与されてもよい。そのような組成物は、医薬製剤の分野において周知の技術に従って調製され、ベンジルアルコールまたは他の適切な保存剤、バイオアベイラビリティーを増強するための吸収促進剤、フッ化炭素、および/または他の慣例的な可溶化または分散剤を用い、生理食塩水中溶液として調製され得る。いくつかの実施形態において、本発明の組成物の経鼻投与は、スプレー剤の形態である。噴霧適用のための任意の適切な担体が本発明において使用され得る。
【0128】
代替として、本発明の薬学的に許容される組成物は、経直腸投与用の坐剤の形態であってよい。坐剤は、作用物質を、室温では固体であるが直腸温では液体であり、したがって直腸内で融解して薬物を放出する、適切な非刺激性の添加剤と混合することによって調製できる。そのような材料は、ココアバター、蜜ロウおよびポリエチレングリコールを含む。
【0129】
加えて、本発明の化合物を含む医薬製剤は、非経口製剤の形態であってよい。用語「非経口」は、本明細書において使用される場合、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、肝内、病巣内および頭蓋内注射または注入技術を含む。
【0130】
ある特定の実施形態において、本発明の薬学的(pharmaceutically)組成物は、経口投与用に製剤化される。ヒトへの経口投与では、投薬量範囲は、分割用量で体重1kgにつき0.01から1000mgである。一実施形態において、投薬量範囲は、分割用量で体重1kgにつき0.1から100mgである。別の実施形態において、投薬量範囲は、分割用量で体重1kgにつき0.5から20mgである。経口投与では、組成物は、治療される患者に対する投薬量の対症調整のために、1.0から1000ミリグラムの活性成分、特に、1、5、10、15、20、25、50、75、100、150、200、250、300、400、500、600、750、800、900および1000ミリグラムの活性成分を含有する錠剤またはカプセル剤の形態で提供され得る。
【0131】
任意の特定の患者のための具体的な投薬量および治療レジメンは、用いられる特定化合物の活性、投薬モード、年齢、体重、全身の健康、性別、食習慣、排泄率、薬物の組合せ、および治療を行う医師の判断、治療されている状態および該状態の重症度を含む多様な要因によって決まることも理解すべきである。そのような投薬量は、当業者によって容易に解明され得る。この投薬レジメンは、最適な治療応答を提供するように調整され得る。
【0132】
本発明は、上記で定義した通りの少なくとも1種の活性成分を獣医用担体と一緒に含む獣医用組成物をさらに提供する。獣医用担体は、組成物を投与する目的のために有用な材料であり、獣医学分野において別様に不活性または許容され、かつ活性成分と適合する、固体、液体または気体材料であってよい。これらの獣医用組成物は、経口的に、非経口的に、または任意の他の所望のルートによって投与され得る。
【0133】
本発明の化合物を使用して、活性成分として1種または複数の本発明の化合物を含有し、ここで該活性成分の放出は、頻度の少ない投薬を可能にするように、または所与の発明化合物の薬物動態もしくは毒性プロファイルを改善するように制御および調節され得る、制御放出医薬製剤(「制御放出製剤」)を提供することができる。不連続単位が1種または複数の本発明の化合物を含む、経口投与に適応する制御放出製剤は、慣例的な方法に従って調製できる。制御放出製剤は、種々のウイルス感染および/またはウイルス誘発腫瘍の治療または予防に用いられ得る。例示的なウイルス感染および/またはウイルス誘発腫瘍は、ヘルペスウイルス(CMV、HSV1、HSV2、VZV等)、パピローマウイルス、ポリオーマウイルス(JCウイルス、BKウイルス、SV40等)、レトロウイルス、アデノウイルス等のウイルスに関連するヒトウイルス感染または腫瘍を含むがこれらに限定されない。制御放出製剤を使用して、結核、マラリア、ニューモシスチス肺炎、CMV網膜炎、AIDS、AIDS関連症候群(ARC)および進行性全身性リンパ節症(lymphadeopathy)(PGL)等のHIV感染および関連状態、ならびに多発性硬化症および熱帯性痙性不全対麻痺等のAIDS関連神経学的状態を治療することもできる。本発明による制御放出製剤で治療され得る他のヒトレトロウイルス感染は、ヒトT細胞リンパ向性ウイルスおよびHIV−2感染を含む。本発明は、したがって、上述したヒトまたは獣医学的状態の治療または予防において使用するための医薬製剤を提供する。
【0134】
薬物動態増強剤。本発明の化合物は、薬物動態増強剤(時に「ブースター剤」とも称される)と組み合わせて用いられ得る。本発明の一態様は、本発明の化合物の薬物動態を増強するまたは「ブーストする」ために有効量の増強剤の使用を提供する。増強剤の有効量、例えば、本発明の活性化合物または追加の活性化合物を増強するために必要な量は、単独で使用される場合のそのプロファイルと比較した際に、化合物の薬物動態プロファイルまたは活性を改善するのに必要な量である。化合物は、増強剤の添加がない場合よりも効果的な薬物動態プロファイルを保有する。化合物の効能を増強するために使用される薬物動態増強剤の量は、好ましくは、治療量以下(例えば、患者における感染を治療的に処置するために慣例的に使用されるブースター剤の量を下回る投薬量)である。本発明の化合物の増強用量は、感染を治療するための治療量以下であるが、本発明の化合物の代謝変調を達成するには十分高いため、患者におけるそれらの暴露は、バイオアベイラビリティーの増大、血中レベルの増大、半減期の増大、時間対ピーク血漿濃度の増大、HIVインテグラーゼ、RTもしくはプロテアーゼの阻害の増大/加速、および/または全身(systematic)クリアランスの低減によってブーストされる。薬物動態増強剤の一例は、RITONAVIR(商標)(Abbott Laboratories)である。
【0135】
組合せ。上記で注記した通り、本発明の組成物は、上記の第A項において記載されている通りの活性化合物を、以下の第E項において記載されているような1種または複数(例えば、1、2、3種)の免疫抑制剤と、当技術分野において公知のものと類似の方式で組み合わせて含み得る。
【0136】
そのような組合せの具体例は、ダクリズマブ、バシリキシマブ、タクロリムス、シロリムス、ミコフェノレート(ナトリウムまたはモフェチルとして)、シクロスポリンA、グルココルチコイド、抗CD3モノクローナル抗体(OKT3)、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)、抗CD52モノクローナル抗体(キャンパス1−H)、アザチオプリン、エベロリムス、ダクチノマイシン、シクロフォスファミド、白金、ニトロソ尿素、メトトレキサート、アザチオプリン、メルカプトプリン、ムロモナブ、IFNガンマ、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、タイサブリ(ナタリズマブ)、フィンゴリモドおよびそれらの組合せから選択される少なくとも1種の免疫抑制剤と組み合わせたCMX001または薬学的に許容されるその塩を含むがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、CMX001、タイサブリ(ナタリズマブ)および薬学的に許容される担体を含む。
【0137】
D.使用方法
本発明の一態様は、対象(例えばヒト)における免疫抑制に関連するウイルス誘発性状態/疾患(例えば、ウイルス誘発腫瘍またはウイルス感染)を治療する方法であって、該対象に、治療有効量の本明細書において記載されている化合物を投与するステップを含む方法を提供する。一実施形態において、本明細書において記載されている化合物は、ウイルス複製および/またはウイルス感染/形質転換細胞を特異的に標的とする。例えば、CMX001は、BKウイルスおよびJCウイルス感染細胞等のポリオーマウイルス感染細胞に対する特異性を実証する(以下の実施例2参照)。一実施形態において、本明細書において記載されている化合物は、ウイルス感染および/または形質転換細胞に対し、正常(非感染細胞)と比較して高い細胞毒性を有する。
【0138】
一態様によれば、本明細書において記載されている化合物を使用して、ウイルス誘発腫瘍を治療することもできる。例示的なウイルス誘発腫瘍は、脳がん、結腸直腸がん、上咽頭癌(NPC)、バーキットリンパ腫(BL)、リンパ腫(例えば、B細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、ダンカン症候群)、メルケル細胞癌(MCC)、前立腺がん、肝細胞癌、子宮頸がん、肺がん、頭頸部扁平上皮がん、前立腺がん、乳がん、急性リンパ性白血病、成人急性骨髄性白血病、成人非ホジキンリンパ腫、脳腫瘍、小児がん、小児肉腫、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、食道がん、有毛細胞白血病、腎臓がん、肝臓がん、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、口腔がん、膵臓がん、原発性中枢神経系リンパ腫、皮膚がんおよびそれらの組合せから選択される。一実施形態において、ウイルス誘発腫瘍は、パピローマウイルスに関連する子宮頸がんである。別の実施形態において、ウイルス誘発腫瘍は、エプスタイン・バーウイルス(EBV)に関連する移植後リンパ増殖性障害(PTLD)である。
【0139】
いくつかの実施形態において、ウイルス誘発腫瘍は、ポリオーマウイルス(BK、ジョン・カニンガムウイルス(JCV)、メルケル細胞ウイルス(MCV)、KIポリオーマウイルス(KIV)、WUポリオーマウイルス(WUV)、シミアンウイルス40(SV40)を含む)、パピローマウイルス(ヒトパピローマウイルス、ワタオウサギパピローマウイルス、ウマパピローマウイルスおよびウシパピローマウイルスを含む)、単純ヘルペスウイルス−1(HSV−1)、単純ヘルペスウイルス−2(HSV−2)、ヒトヘルペスウイルス6(HHV−6)等のヒトヘルペスウイルスを含むがこれらに限定されないヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、リンホクリプトウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)(ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)を含むがこれに限定されない)、オルトポックスウイルス、天然痘、牛痘、ラクダ痘、サル痘、B型肝炎、C型肝炎ウイルス、大痘瘡および小痘瘡、ワクシニア、エボラウイルス、パピローマウイルス、アデノウイルスまたはポリオーマウイルス、ならびにそれらの組合せに関連する。
【0140】
一実施形態において、ウイルス誘発腫瘍は、ポリオーマウイルス、パピローマウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスまたはそれらの組合せに関連する。前記ウイルス誘発腫瘍が、ヒトパピローマウイルス、ワタオウサギパピローマウイルス、ウマパピローマウイルスおよびウシパピローマウイルスからなる群から選択されるパピローマウイルスに関連する、請求項4に記載の方法。
【0141】
いくつかの実施形態において、ウイルス誘発腫瘍は、BKウイルスまたはJCVに関連する。
【0142】
一実施形態において、本明細書において記載されている腫瘍は、サイトメガロウイルスに関連する結腸偽腫瘍;サイトメガロウイルスに関連する膠芽細胞腫、エプスタイン・バーウイルスに関連する胃がん、SV(40)またはCMVに関連する脳腫瘍、B型肝炎および/またはC型肝炎ウイルスに関連する肝臓がん、メルケル細胞ポリオーマウイルスに関連するメルケル細胞癌;EBVに関連するバーキットリンパ腫、ホジキンリンパ腫、移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)または上咽頭癌、あるいは、ヒトパピローマウイルスに関連する頚部、肛門または陰茎のがんである。
【0143】
一実施形態において、対象はヒトである。一実施形態において、対象は免疫無防備状態の対象である。
【0144】
本明細書において使用される場合、免疫不全(または免疫機能不全)は、感染性疾患と闘う免疫系の能力が損なわれているまたは全く存在しない状況である。免疫無防備状態の対象は、任意の種類のまたは任意のレベルの免疫不全を有する対象である。例示的な免疫無防備状態の対象は、原発性免疫不全を持つ対象(生まれつき免疫系に欠陥がある対象)および続発性(後天性)免疫不全を持つ対象を含むがこれらに限定されない。加えて、続発性免疫不全の他の一般的な原因は、栄養失調、加齢および特定の投薬法(例えば、化学療法、疾患修飾性抗リウマチ薬、臓器移植後の免疫抑制薬、グルココルチコイド等の免疫抑制療法)を含むがこれらに限定されない。免疫系を直接的にまたは間接的に低下させる他の例示的な疾患は、各種のがん(例えば、骨髄および血球(白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫))、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)によって引き起こされる後天性免疫不全症候群(AIDS)、慢性感染および自己免疫疾患(例えば、急性播種性脳脊髄炎(ADEM)、アジソン病、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群(APS)、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性内耳疾患、水疱性類天疱瘡、セリアック病、シャーガス病、慢性閉塞性肺疾患、クローン病、皮膚筋炎、1型真性糖尿病、子宮内膜症、グッドパスチャー症候群、バセドウ病、ギラン・バレー症候群(GBS)、橋本病、化膿性汗腺炎、川崎病、IgA腎症、特発性血小板減少性紫斑病、間質性膀胱炎、エリテマトーデス、混合性結合組織疾患、限局性強皮症、多発性硬化症(MS)、重症筋無力症、ナルコレプシー、神経筋緊張症、尋常性天疱瘡、悪性貧血、乾癬、乾癬性関節炎、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、関節リウマチ、統合失調症、強皮症、シェーグレン症候群、スティッフパーソン症候群、側頭動脈炎(「巨細胞性動脈炎」としても公知である)、潰瘍性結腸炎、血管炎、白斑、ウェゲナー肉芽腫症)を含むがこれらに限定されない。
【0145】
一実施形態において、対象は、免疫抑制剤を使用中の移植患者である。一実施形態において、移植患者は、腎臓、骨髄、肝臓、肺、胃、骨、精巣、心臓、膵臓および腸からなる群から選択される少なくとも1つの移植臓器を有する。
【0146】
いくつかの実施形態において、本明細書において記載されている化合物は、免疫抑制薬治療中の対象(例えば、移植患者または過敏性免疫系を患っている対象)、ある特定の種類の化学療法を受けている対象、またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染している対象に適用される。
【0147】
さらに、一実施形態において、ウイルス誘発腫瘍は、脳がん、結腸直腸がん、上咽頭癌(NPC)、バーキットリンパ腫(BL)、リンパ腫(例えば、B細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、ダンカン症候群)、メルケル細胞癌(MCC)、前立腺がん、肝細胞癌、子宮頸がんおよびそれらの組合せから選択される。
【0148】
本発明のいくつかの態様によれば、免疫抑制剤を必要としている対象について、本明細書において記載されている化合物は、ウイルス感染および/またはウイルス誘発腫瘍を治療するための免疫抑制剤と(同時発生的にまたは順次に)組み合わせて投与され得る。任意の適切な免疫抑制剤を、本明細書において記載されている化合物と組み合わせて使用してよい。例示的な免疫抑制剤を以下の第E項において記載する。
【0149】
一実施形態において、
【化26】
の構造を有する化合物または薬学的に許容されるその塩は、ウイルス感染および/またはウイルス誘発腫瘍を治療するためのタイサブリ(ナタリズマブ)である少なくとも1種の免疫抑制剤と組み合わせて投与され得る。
【0150】
E.ウイルス感染またはウイルス誘発腫瘍を治療するための免疫抑制剤との組合せ
本明細書において記載されている化合物は、免疫抑制投薬法を必要としている対象のウイルス感染またはウイルス誘発腫瘍を治療するための追加の免疫抑制剤と組み合わせて使用され得る。当業者に公知である任意の免疫抑制剤を、本明細書において記載されている化合物と組み合わせて使用してよい。例示的な免疫抑制剤は、ダクリズマブ、バシリキシマブ、タクロリムス、シロリムス、ミコフェノレート(ナトリウムまたはモフェチルとして)、シクロスポリンA、グルココルチコイド、抗CD3モノクローナル抗体(OKT3)、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)、抗CD52モノクローナル抗体(キャンパス1−H)、アザチオプリン、エベロリムス、ダクチノマイシン、シクロフォスファミド、白金、ニトロソ尿素、メトトレキサート、アザチオプリン、メルカプトプリン、ムロモナブ、IFNガンマ、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、タイサブリ(ナタリズマブ)、フィンゴリモドおよびそれらの組合せを含むがこれらに限定されない。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、CMX001およびタイサブリ(ナタリズマブ)を含む。
【0151】
追加の例示的な免疫抑制剤は、Mukherjeeら、A comprehensive review of immunosuppression used for liver transplantation、Journal of Transplantation、2009巻、論文ID701464、およびWoodroffeら、Clinical and cost−effectiveness of newer immunosuppressive regimens in renal transplantation:a systematic review and modeling study、Health Technology Assessment、9巻、21号(2005)においてさらに記載されている。
【0152】
F.実施例
ここで、下記の例を参照して、本発明をさらに詳細に記述する。しかしながら、これらの例は例証を目的として与えられるものであり、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきでない。
【0153】
下記の実施例において、CMX001は、
【化27】
または薬学的に許容されるその塩である。
【0154】
下記の実施例において、シドフォビルは、
【化28】
である。
【実施例1】
【0155】
I BKウイルスに対するCMX001の抗ウイルス活性
BKウイルスの複製を阻害するCMX001の活性を試験するために、BKウイルスのストックをHFF細胞中で調製し、ウイルスストックの希釈物を使用して、初代ヒト尿細管上皮細胞(RPTEC)を感染させた。次いで、感染細胞を含有するウェルにCMX001を添加し、プレートを5日間インキュベートした。全DNAを該プレートから調製し、ウイルスのDNAをqPCRによって定量化した。
【0156】
BKウイルス複製に対するCMX001のインビトロ活性を表1に示す。CMX001は、RPTECにおいてBKウイルスに対する良好な活性を呈した。CMX001の活性は、シドフォビルよりも強力であった(表1参照)。陰性対照薬物であるガンシクロビルは、本質的に不活性であった。細胞株におけるアッセイ最適化により、多重感染がシドフォビルおよびCMX001の有効性に衝撃を与えるらしいことも明らかにされた。
【表3】
【0157】
II JCウイルスに対するCMX001の抗ウイルス活性
JCウイルスを阻害するCMX001の能力を試験するために、COS−7細胞に、0.2の推定TCID50でJCV(Mad−4)を感染させた。37℃で2時間インキュベーション後、CMX001の量を増大させることなく、または増大させて、上清を新鮮培地に置き換え、5日間インキュベートした。DNA抽出後、JCウイルスをqPCRによって定量化した。
【0158】
JCウイルス複製を阻害するCMX001のインビトロデータを表2に示す。表2に示されている通り、CMX001はJCウイルスに対して活性であった。
【表4】
【実施例2】
【0159】
I.CMX001は初代ヒト尿細管細胞においてポリオーマウイルスBK複製を阻害する
A.材料および方法
Bernhoffらによって記載されている通りの初代ヒト近位尿細管上皮細胞(RPTEC)、BKV(Dunlop)およびすべての方法(Bernhoffら、Cidofovir inhibits polyomavirus BK replication in human renal tubular cells downstream of viral early gene expression、Am J Transplant 8、1413〜1422(2008)を参照)。唯一の例外として、細胞内または細胞外BKV DNA負荷を定量化するための定量的PCR(qPCR)は、LTag遺伝子も標的とする異なるプライマー/プローブセットで実施した(Hirschら、J.Prospective study of polyomavirus type BK replication and nephropathy in renal−transplant recipients、N Engl J Med.、347、488〜496(2002)を参照)。各実験の前に、CMX001をメタノール/水/水酸化アンモニウム(50/50/2)中1mg/mlに新しく溶解した。それをRPTEC成長培地中でさらに希釈した。
【0160】
B.実験および結果
(1)阻害濃度IC90の決定
BKV後代に対するCMX001の効果を調査するために、感染2時間後に漸増濃度のCMX001を添加し、上清を感染72時間後に収穫した。CMX001が細胞外BKV負荷を濃度依存方式で低減させたことが観察された(図1a参照)。ウイルス流入を減じた場合、CMX001 0.31μMは、阻害濃度IC90を定義する平均90%だけBKV負荷を低減させた。BKV感染RPTECの感染72時間後における免疫蛍光染色は、CMX001濃度を増大させるにつれてBKV感染細胞の数が減少することを実証した(図1b)。CMX001 0.31uMで、BKVアグノタンパク質発現細胞におけるおよそ60%の減少が見られた。LTagを発現している細胞の数はあまり低減しなかったが、シグナル強度は未処理細胞におけるものよりも低かった。2.5uMのCMX001では、わずかな細胞のみがアグノタンパク質およびLTag発現について陽性であったが、ウェル中の細胞総数は低減しているように思われた。5uMのCMX001では、弱くLTag染色された細胞のみがわずかに観察されたがアグノタンパク質発現細胞は観察されず、総細胞数に対してはより顕著な効果があった。10uMのCMX001では、BKV感染細胞は観察されず、総細胞数はより一層低減した。結論として、CMX001は初期および後期BKVタンパク質の発現ならびに細胞外後代の産生を低減させたが、高濃度ではRPTECの増殖速度にも影響を及ぼすようであったということである。
【0161】
(2)RPTECに対するCMX001の効果(DNA複製および代謝活性)
位相差顕微鏡法によるRPTECの検査は、CMX001 0.31μMへの3日間の暴露中、生存能力低下の兆候を何ら明らかにしなかった。より感受性の高いアッセイを使用するために、非感染RPTECにおけるBrdU取り込みおよびWST−1アッセイを使用する、宿主細胞DNA複製および代謝活性を使用した。CMX001の添加は、非感染RPTECのDNA複製(図2a)および代謝活性(図2b)の両方を濃度依存方式で低減させた。未処理RPTECと比較して、0.08から10μMのCMX001は、DNA複製を15%から93%、および代謝活性を41%から88%、それぞれ減少させた。BKV複製の90%阻害を引き起こした0.31μMの濃度において、BrdU取り込みおよびWST−1活性におけるおよそ20%の低減が観察される。
【0162】
(3)BKVゲノム複製に対するCMX001の効果
BKVゲノム複製がCMX001の影響を受けたかを調査するために、感染24〜72時間後における細胞内BKV負荷をqPCRによって計測した。記載されている通りのアスパルトアシラーゼ(ACY)遺伝子を使用して、細胞内BKV負荷を細胞数に正規化した(Bernhoffら、2008;Randhawaら、Quantitation of DNA of polyomaviruses BK and JC in human kidneys.J Infect Dis.、192、504〜509(2005)を参照)。未処理RPTECと比較して、CMX001 0.31μMは、細胞内BKV負荷を、感染48時間後において94%、72時間後において63%低減させた(図3)。次いで、BKV生活環の第2ステップである細胞内BKVゲノム複製に対するCMX001の有意な阻害効果を同定することができる。このステップは、2つの機序によって:1.後期遺伝子転写のためのDNAテンプレートを増大させること、および2.後期プロモーターからの転写を活性化することによって、ウイルスの後期遺伝子発現も増大させる、LTag発現を必要とすることが公知である(Cole,C.N.、Polyomavirinae:The Viruses and Their Replication.In Fields Virology、第3版、1997〜2043頁、B.N.Fields、D.M.KnipeおよびP.H.Howley編、New York:Lippincott−Raven(1996))。
【0163】
(4)BKV初期および後期遺伝子発現に対するCMX001の効果
単一細胞レベルでのLTagの発現を調査するために、感染48および72時間後に免疫蛍光染色を実施した。感染48時間後において、BKV陽性細胞の数は、CMX001および未処理ウェルにおけるものとほぼ同じであった。感染72時間後において、CMX001処理細胞は、より少ないLTagプロ細胞を発現したようであった(図4a)。感染48および72時間後における後期タンパク質発現を免疫蛍光染色によって検査すると、CMX001処理RPTECにおいてアグノタンパク質(図4a)およびVP1(データは図示せず)の有意な低減が観察された。ウエスタンブロッティングにより、VP1の減少は感染48および72時間後においてそれぞれ86%および63%であることが分かり(図4b)、一方、LTag染色は感染48および72時間後においてそれぞれ33%および30%低減したことが分かった。興味深いことに、免疫蛍光法は、最大2.5μMのCMX001濃度を持つ未処理細胞にも匹敵するレベルでアグノタンパク質を発現するCMX001処理培養物において、いくつかの治療抵抗性細胞も明らかにした。CMX001は後期タンパク質発現を有意に低減させるだけでなく、感染の後期の時点において初期タンパク質発現も阻害すると結論付けられた。
【0164】
(5)細胞外BKV負荷におけるCMX001の時間経過
BKV後代に対するCMX001の効果を経時的に検査するために、処理および未処理細胞の上清を指示された時点で収穫した。以前に記載された通り(Bernhoffら、2008)、未処理RPTEC中におけるBKV(Dunlop)の最初の生活環の完了には、48から72時間の間を要する。感染48時間後に、未処理細胞からの上清においてBKV負荷の増大が観察されたが、感染48時間後のCMX001処理細胞においては流入ウイルスのみが検出できた。72時間では、未処理およびCMX001処理細胞の両方においてウイルス負荷の増大が見られたが、CMX001処理細胞からの上清におけるBKV負荷は、未処理細胞におけるものよりも84%低かった(1.13×108Geq/ml)(図5)。CMX001処理RPTECにおける後代産生は、遅延し得ると結論付けられる。
【0165】
(6)感染前におけるRPTECの処理
ウイルス接種前における細胞の前処理によってBKV感染を阻害し得るか否かを調査するために、RPTECを4時間処理し、かつCMX001を感染20時間前に完全成長培地によって置き換えるか、または細胞を感染24時間前に23時間処理するがCMX001を感染1時間前に完全成長培地で置き換えるかのいずれかとした。感染20時間前に終了する4時間の処理は感染72時間後のBKV負荷にほとんど効果を及ぼさなかったが、感染1時間前までの23時間の処理は、ウイルス負荷を約50%低減させた(図6)。故に、CMX001前処理は、BKV複製を低減させるが予防しない。
【0166】
(7)CMX001の安定性
CMX001の安定性を検査するために、ストック溶液1mg/mlを4または−20℃で1週間置き、次いで0.31uMに希釈し、感染3日後にBKV感染RPTECにおける細胞外BKV負荷を計測することにより、その抗ウイルス効果について試験した。新しく調製した薬物と比較して、4℃で保存した薬物は60%未満の活性を有し、一方、−20℃で保存した薬物はおよそ90%の活性を有していた(図7)。
【0167】
C.考察
BKV感染RPTECをCMX001で処理することによる暫定結果を、図1〜7および図1〜7に関連する上記の考察に示した。CMX001は、CDVよりも約400倍低い濃度におけるBKVゲノム複製のレベルでBKV感染を阻害する(CDV 40ug/ml=127uM対CMX001 0.31uM)。0.31uMの濃度のCMX001は、IC90を定義するおよそ90%、細胞外BKV負荷を低減させた。同じCMX001濃度は、非感染細胞における細胞DNA複製を22%、および代謝活性を20%減少させた。しかしながら、先の調査(Bernhoffら、2008)において、BKV感染は細胞DNA複製を約40%、および代謝活性を20%前後(round)増大させ、したがって、CMX001 0.31uMを使用してBKV−感染細胞を治療すると、DNA複製および代謝活性の両方が非感染細胞のレベルになるという仮説が成り立つことが示されているものがある。
【0168】
0.31uMのCMX001は、感染48時間後にBKV DNA複製を94%低減させる。同時に、VP1発現は86%低減する。しかしながら、感染72時間後において、DNA複製の減少はわずか63%である。この矛盾は、感染上清に対する効果を含むさらなる研究を必要とする。
【0169】
感染24、48および72時間後に細胞外BKV負荷を計測したところ、感染48時間後のCMX001処理細胞において流入のみが検出可能であり、感染48時間後よりも前に放出されるウイルスは極めて少ないまたは無いことを指示していた。感染72時間後において、BKV負荷におけるごくわずかな増大が観察され、未処理細胞と比較して84%の低減に相当するものであった。
【0170】
BKV複製を予防し得る感染前のCMX001によるRPTECの前処理の効果を検査するための実験を行い、結果を上記に示す。感染24時間前の4時間の前処理は、BKV複製を阻害しなかった。しかしながら、感染1時間前までの24時間の前処理は、ウイルス負荷を約50%低減させた。故に、細胞の前処理は、BKV複製を部分的に阻害することになる。
【0171】
感染72時間後のCMX001 IC90処理細胞およびCDV IC90処理細胞の免疫蛍光染色を比較すると(Bernhoffら、2008)、感染72時間後のLT−ag発現は、CDVによってよりもCMX001によって、より低減するようである。CDVに関しては、IC90よりも8倍高いCMX001濃度においても治療抵抗性細胞が存在していた。CMX001は有機アニオン輸送体に依存しないため、細胞内におけるこの輸送体の選択的発現によって該現象を説明することはできない。
【0172】
各CMX001実験について、新鮮なストック溶液を調製した。これにより、実験ごとの濃度変動をわずかにすることができた。そこで、CMX001ストック溶液を保存することの効果を試験した。4℃または−20℃における1週間のCMX001の保存は、抗ウイルス活性を減少させた。しかしながら、保存したCMX001と新しく調製したCMX001との異なる活性が、ストックにおけるわずかな濃度差によるものである可能性は排除できない。
【0173】
結論として、初代ヒト近位尿細管上皮細胞におけるBKウイルス複製に対するCMX001のIC90は0.31μMであったということである。非感染細胞において、0.31μMのCMX001は、代謝活性およびDNA複製をおよそ20%阻害した。
【0174】
加えて、CMX001はCDVのように、最初のLT−ag発現の下流の初代ヒトRPTECにおけるBKV複製を阻害する。おそらく、より好適な取り込み(uptake)により、RPTERCSにおけるCMX001についてのIC90は、CDVについてのものよりも410倍低い。宿主細胞毒性は、CDVに匹敵するようである。BKV治療におけるCMX001の明らかな利点は、経口投与が可能なことである。
【0175】
II.CMX001によるポリオーマウイルスJC複製の阻害
A.材料および方法
(1)細胞培養物
COS−7細胞をDMEM−5%中で成長させた。前駆細胞に由来する星状膠細胞を、ゲンタマイシンを補充したMEM−E−10%中に維持した。感染COS−7細胞からのJCV Mad−4(ATCC VR−1583)上清に、1ml当たり104.5のTCID50を加えたものを、培養細胞の感染に使用した。
【0176】
(2)感染およびCDV処理
COS−7または星状膠細胞に、60〜70%の集密で、JCV(Mad−4)を0.2の推定TCID50で感染させた。37℃で2時間インキュベーション後、CMX001の濃度を増大させることなく、または増大させて、上清を新鮮培地に置き換えた。CMX001をメタノール/水/水酸化アンモニウム(50/50/2)中1mg/mlに新しく溶解し、次いで、それぞれの成長培地中でさらに希釈した。
【0177】
(3)JCVゲノムのトランスフェクション
リポフェクタミン2000(Invitrogen)を製造業者の取扱説明書に従って0.8:1のDNA:脂質比で使用することにより、再連結したJCV Mad−4 DNAを50%から70%集密的COS−7細胞にトランスフェクトした。
【0178】
(4)免疫蛍光法
リン酸緩衝生理食塩水、pH6.8(PBS)中4%のp−ホルムアルデヒド(PFA)で、室温にて20分間細胞を固定し、PBS中0.2%のトリトンX−100で、室温にて10分間透過化した。室温にて5分間、PBSで2回洗浄した後、PFAをPBS中0.5MのNH4Clで室温にて7分間クエンチし、続いて、室温にて5分間、PBSで2回洗浄した。非特異的結合部位のブロッキングを、PBS中3%の乳で37℃にて15分間行った。一次抗体(3%乳PBS中ウサギ抗VP1 1:300)を、37℃で45〜60分間インキュベートした。細胞を、振とう器上室温にて5分間、PBSで2回洗浄した。二次抗体(ニワトリ抗ウサギCy3 1:2000)、およびDNAを染色するための5μg/mlのヘキスト33342色素を細胞に与え、次いで37℃で45〜60分間インキュベートした。細胞をPBSで2回、前述同様に洗浄した。カバーガラスをN没食子酸プロピル上に載置した。
【0179】
(5)リアルタイムPCR
100ulの細胞培養物上清、ならびにCorbett X−トラクタージーンおよびCorbett VX試薬(Qiagen、Hombrechtikon、Switzerland)からのDNA抽出後に、JCV負荷を定量化した。JCV DNA試料の検出のためのリアルタイムPCRプロトコールは、JCVラージTコード配列を標的としており、(5)の他の箇所に記載されている。
【0180】
(6)WST−1アッセイ
生存細胞におけるミトコンドリアデヒドロゲナーゼの比色WST−1アッセイ(Roche)によって、代謝活性をモニターした。COS−7細胞を96ウェルプレートに播種し、CMX001を指示された濃度で添加した。WST−1開裂生成物を、450nm(試料)および650nm(バックグラウンド)で計測した。WST−1プラス培地単独では、ブランクとして役立った。
【0181】
(7)BrdUアッセイ
「細胞増殖ELISA、BrdU」キット(Roche)を使用する、増殖性細胞におけるDNAへのBrdU取り込みの比色計測によって、DNA合成を定量化した。COS−7細胞を96ウェルプレートに播種し、CMX001を指示された濃度で添加した。450nm(試料)および650nm(バックグラウンド)における吸光度を、基質の添加2時間後に決定した。
【0182】
B.実験および結果
(1)細胞培養物中におけるJCV Mad−4の複製
COS−7および星状膠細胞培養物中におけるJCV Mad−4の複製特徴を第一に調査した。感染7日後(d.p.i.)、JCV感染COS−7細胞を固定し、間接免疫蛍光法によって染色した。図8に示されている通り、JCV後期ウイルス性カプシドタンパク質VP1は、JCVがCOS−7細胞においてウイルスの生活環を完了していることを示唆する赤色シグナルとして検出可能である(図8、左パネル)。ヘキスト33342でのDNAの対比染色は、核を青色にマークした(図8、中央パネル)。両方の写真をマージしたもの(図8、右パネル)は、JCV Mad−4 VP1が感染COS−7細胞の核に存在することを指示していた。さらに高倍率では、VP1シグナルは核全体にわたって分散していたが、核小体は残してあった(図8、左パネル)。核において強度のVP1シグナルを示す細胞は、細胞質においても拡散染色パターンを有していた。JCV感染細胞は、同じ細胞培養物中に存在する非感染細胞(図8、右パネル)と比較して拡大した核(図8、中央パネル)を示した。データは、COS−7細胞がJCV Mad−4感染に感受性であること、および感染7日後に細胞の約30%がJCV生活環の後期に入ったことを実証している。
【0183】
星状膠細胞にJCV Mad−4を感染させる同様の実験を実施した。感染7日後、JCV VP1の細胞内分布は、JCV Mad−4感染COS−7細胞と同様であるように思われた(図9、左パネル、赤色)。ヘキスト33342でのDNAの対比染色は、星状膠細胞核を青色にマークした(図9、中央パネル)。両方の写真をマージしたものは、JCV−Mad4 VP1が感染星状膠細胞の核に存在することを指示していた。COS−7細胞のJCV Mad−4感染と比較すると、有意に少ない星状膠細胞が後期タンパク質VP1について陽性であった(図9、右パネル)。さらに高倍率では、VP1シグナルは、主に核小体を残した核において、および星状膠細胞の細胞質において、やや拡散パターンで見られた(図9、左パネル)。DNAの染色は、JCV感染細胞(図9、右パネル)に属する大核が細胞物中に存在することを指示していた(図9、中央パネル)。星状膠細胞も予想通りウイルス性初期タンパク質ラージT抗原(LT)が染色され、LTは感染細胞の核内に位置付けられていた(データは図示せず)。後期タンパク質VP1について陽性なすべての細胞がLTも発現し、LTについてのみ陽性な星状膠細胞はわずかであった。この観察は、JCV Mad−4が予想通りポリオーマウイルスの生活環を経た(proceded)ことを指示していた。感染7日後における集密度は、星状膠細胞が成長の遅い細胞であり、故に、JCV複製がヒト近位尿細管上皮細胞におけるBKV複製と比較して長期にわたっていることを指示していた。本発明者らの観察は、7日間の成長期間が効率的なJCV複製に最適ではないことを示唆している。
【0184】
星状膠細胞におけるJCV Mad−4の緩徐な複製速度を考慮して、感染14日後における感染状況を検査した。結果は、初期LTag(データは図示せず)および後期VP1について陽性である細胞の数がおよそ4倍増大したことを指示していた(図10)。このように、星状膠細胞はJCV Mad−4複製を支援したが、生活環はCOS−7細胞において観察されるものと比較してかなり長期にわたっているようであった。
【0185】
次に、COS−7細胞にトランスフェクトされる再連結したJCV Mad−4 DNAの複製能を試験した。このアプローチは、JCV突然変異株に対するCMX001有効性を試験するための逆遺伝学を実施するのに役立つツールとなるであろう。図11に示されている通り、JCV後期ウイルス性カプシドタンパク質VP1は、JCVが、トランスフェクション7日後(d.p.t.)に、COS−7細胞において複製能を有することを指示する赤色シグナルとして検出可能である(図11、左パネル)。ヘキスト33342色素でのDNAの対比染色は、核を青色にマークした(図11、中央パネル)。両方の写真をマージしたもの(図11、右パネル)は、JCV Mad−4 VP1がトランスフェクトCOS−7細胞の核に存在することを指示していた。さらに高倍率では、VP1シグナルは核全体にわたって分散していたが、核小体は残してあった(図11、左パネル)。核において強度のVP1シグナルを示す細胞は、細胞質においても拡散染色パターンを有していた。JCVトランスフェクト細胞は、同じ細胞培養物中に存在する正常細胞(図11、右パネル)と比較して拡大した核(図11、中央パネル)を示した。データは、COS−7細胞がJCV Mad−4 DNAトランスフェクションに感受性であること、および感染7日後までに細胞の約15%がJCV生活環の後期に入ったことを実証している。トランスフェクション後、後期タンパク質VP1の細胞内染色パターンは、JCV Mad−4感染後のVP1染色と同一であった。
【0186】
(2)阻害濃度IC90の決定
JCV後代に対するCMX001の効果を調査するために、感染2時間後に漸増濃度のCMX001を添加し、上清を感染5日後に収穫した。CMX001が細胞外JCV負荷を濃度依存方式で低減させたことが観察された(図12)。感染1日後と5日後との間で、未処理細胞におけるウイルス負荷は約2.5対数(1.24×107対5.09×109)増加した。対照的に、2.5μMのCMX001で処理した細胞においては、同じ期間中に2と2分の1倍(9.69×106対2.44×107)しか増大しないことが観察される。感染1日後のウイルス負荷として定義されるウイルス流入を減じると、CMX001は、0.15μMでJCVウイルス負荷を50%超低減させ、0.6μMでJCVを90%超低減させ、それぞれ感染5日後における阻害濃度IC−50およびIC−90を定義するものであった。
【0187】
(3)COS−7細胞代謝活性に対するCMX001の効果
位相差顕微鏡法によるCOS−7の検査は、CMX001 0.6μMへの7日間の暴露中、生存能力低下の兆候を何ら明らかにしなかった。より感受性の高いアッセイを使用するために、非感染COS−7細胞におけるWST−1アッセイおよびBrdU取り込みを使用して、細胞代謝活性に対する効果を調査した。CMX001の添加は、非感染COS−7細胞の代謝活性(図13)およびDNA複製(図14)を濃度依存方式で低下させた。未処理COS−7細胞と比較して、CMX001濃度を0.08から10μMまで増大させることにより、代謝活性を3%から52%まで、およびDNA複製を83%から10%、それぞれ減少させた。0.6μMにおいて、COS−7細胞は、17%の代謝活性のささやかな損失、およそ50%低減したBrdU取り込みを示した。まとめると、CMX001は、高濃度では、宿主細胞代謝活性およびDNA複製を有意に低減させた。0.08から5μMのCMX001濃度の星状膠細胞でも同様の実験を行った。非感染星状膠細胞におけるDNA複製は、最高CMX001濃度において25%から92%減少した(データは図示せず)。両細胞型のDNA複製のCMX001関連阻害を比較すると、COS−7の感受性が若干低い(それぞれ83%対92%)ようであった。しかしながら、星状膠細胞について、該アッセイの2時間の基質インキュベーション期間は、光学密度がCOS−7の測定値と比較して低いため、最適ではないようであった。これは、星状膠細胞がCOS−7細胞と比較して緩徐な代謝を有していたとする本発明者らの観察と一致する。
【0188】
(4)COS−7における細胞外JCV負荷に対するCMX001効果
JCV後代レベルに対するCMX001の効果を経時的に検査するために、処理および未処理細胞の上清を指示された時点で収穫した。感染1日後の上清を、流入ウイルスの目安として採取した。未処理細胞において、細胞外JCV負荷は、7日間の観察期間にわたって3を超える対数(1.24×107対5.67×1010geq/ml)だけ増大した。5μMのCMX001の存在下では、JCV負荷における1対数未満のささやかな変化のみが観察される(1.34×107対8.85×107geq/ml(図15)。JCウイルス負荷を、感染7日後のCMX001 5uM処理細胞について、感染3日後の未処理細胞におけるウイルス後代と比較すると、CMX001処理細胞におけるウイルス負荷は(9.72×107対8.85×107geq/ml)の91%にしか達していなかった。CMX001処理COS−7細胞における後代産生は遅延し得ると結論付けられた。
【0189】
(5)CMX001はJCV後期遺伝子発現を低減させる
後期遺伝子発現に対するCMX001の効果を調査するために、JCV VP1について免疫蛍光染色を実施した。感染7日後に、未処理COS−7細胞のJCV VP1を比較として染色した(図16、上部パネル)。1.25μMのCMX001の添加は、JCV VP1シグナル(signaly)の有意な低減と関連していた(図16、中央パネル)。5μMの最高CMX001濃度では、本質的に免疫蛍光法によって観察され得るVP1陽性細胞はない(図16、下部パネル)。CMX001は、1.25μMから5μMの間のJCV後期タンパク質発現を有意に低減させると結論付けられた。
【0190】
(6)星状膠細胞における細胞外JCV負荷に対するCMX001効果
JCV後代レベルに対するCMX001の効果を経時的に検査するために、処理および未処理細胞の上清を指示された時点で収穫した。流入ウイルスを決定するために、感染1日後に試料を採取した。未処理細胞の感染経過において、細胞外JCV負荷は、7日間の観察期間にわたっておよそ1対数(3.22×107対2.30×108geq/ml)変化する。CMX001の存在下では、1対数未満のJCV負荷が見られた(1.34×107対8.85×107geq/ml(図17)。JCV複製は、COS−7よりも星状膠細胞において有意に緩徐であると結論付けられた。低濃度のCMX001の後代産生を阻害する傾向にもかかわらず、7日間の観察期間ではCMX001の阻害効果の計測が可能にならなかった。
【0191】
C.考察
暫定結果は、CMX001がCOS−7細胞におけるJCV複製を阻害することを示唆している。0.6μMのCMX001濃度は、細胞外JCV負荷をおよそ90%低減させた。この濃度は、CDV阻害について報告された濃度よりも2桁低いが、BKVについて観察されたものと同じ範囲内である。ここで、BKV複製のCMX001 IC−90を、初代尿細管上皮細胞において0.31μMと決定した(34)。CMX001は、宿主細胞代謝活性を17%、およびDNA複製を約50%減少させることが観察された。感染1から7日後に細胞外JCV負荷を計測すると、最高濃度のCMX001(5μM)で処理した細胞からのJCV負荷は、感染1日後における流入ウイルスよりも感染5日後において若干高いだけであり、4日以内に放出されるウイルスは極めて少ないまたは無いことを指示していた。感染7日後において、この濃度でJCV負荷におけるごくわずかな増大があり、後代ウイルスのレベルは、未処理細胞の感染3日後に計測されたウイルス負荷を下回っていた。星状膠細胞においては、低濃度のCMX001が後代ウイルスの蓄積を遅延させ得るという動向がある。しかしながら、感染7日後の未処理星状膠細胞における非効率的な後代ウイルス産生は、JCV複製周期が有意に緩徐であることを実証するものであった。
【0192】
COS−7と星状膠細胞との間の差は、より効率的なJCVの複製周期を支援するSV40ラージT抗原の発現を含むCOS−7細胞の形質転換表現型による可能性が高い。星状膠細胞において、これはかなり緩徐である。
【0193】
結論として、COS−7細胞におけるインビトロでのJCウイルス複製に対するCMX001のIC50およびIC90値は、それぞれ0.15および0.6μMであったということである。非感染COS−7細胞において、代謝活性およびDNA複製に対するCMX001のIC50は、それぞれおよそ5および0.6μMであった。特に、ポリオーマウイルスT抗原を発現するこれらの細胞は、CMX001の効果に対し特異的に感受性であり得る。
【実施例3】
【0194】
EBV関連頭蓋内移植後リンパ増殖性障害(PTLD)のヒト患者に対してCMX001を使用する例
第一の患者は、鎌状赤血球貧血が発生したEBV関連頭蓋内移植後リンパ増殖性障害(PTLD)の病歴がある11歳の患者である。EBVは血漿中において陽性(2010年12月7日および12月14日)であり、脳生検はPTLDと一致していた。12月上旬に、患者は、持続性頭痛、悪心、嘔吐および下痢の3日間の病歴を提示した。患者は入院し、発作活動を伴う可能性がある激しい頭痛の急性エピソードを起こした。脳のCTは、右前頭葉におけるリング状増強塊を示し、脳生検はEBV関連PTLDと一致していた。患者はPICUに入れられた。高い頭蓋内圧力、無呼吸に関連する反復性発作は、挿管およびCMX001の緊急要求につながった。このEBV関連PTLD患者におけるCMX001の使用は、2009年12月26日から継続中である。患者はCMX001に十分耐性があったため、週に2回4mg/kgを受け続けている。該患者には、疾患の兆候および症状の臨床的改善、ならびに頭蓋内塊の低減とはいえないまでも安定化があった。血漿中におけるEBVは陰性のままである。
【0195】
第二の患者は、EBV関連PTLDがある、生後6か月の心臓移植レシピエントであった。患者は、手術後に原発性EBV感染を獲得した。PETスキャンは、PTLDと一致する肝臓、肺および骨(腸骨稜)において病変を示した。臨床状態は、CSFにおいて検出されるEBV、臨床およびEEG相関発作活動を伴うEBV関連脳炎と推測されるものによって不安定化し続け、応答性および精神状態の変化を減少させた。CMX001の要求時、患者は人工呼吸器使用中であり、該患者の肺の肺炎およびPTLD両方の証拠、脳症が存在することの臨床基準を満たす発作活動の証拠を有していた。患者は、NGチューブを介し、2010年3月3日にCMX001 20mg(およそ3.3mg/kg)の初回投薬を、2010年3月7日に第二回投薬を受けた。患者は、EBVウイルス負荷において267,338(2010年3月3日)から47,427コピー/mL(2010年3月7日)までの有意な減退を起こした。患者は、進行性神経損傷の証拠を示し続けた。CMX001の第二回投薬の翌日に、親が支援を中止した。
【実施例4】
【0196】
I.ヒト腫瘍細胞株のパネルに対するCMX001の非GLPインビトロ評価
CMX001、シドフォビルおよび標準的な作用物質(細胞株の腫瘍型に応じて変動する)の細胞成長阻害活性を、多数の腫瘍型に由来する細胞株のパネルにおいて、MTSまたはSRBベースの細胞増殖アッセイを使用して評価した。
【0197】
化合物は、細胞株に対して様々な程度の阻害活性を示した。CMX00lは、研究において評価した24の細胞株のほぼすべてにおいて、その親化合物であるシドフォビルよりも強力であった。腫瘍細胞株におけるCMX00lのIC50値は、標準的な作用物質の値と比較すると相対的に中程度である、6.6μMから100μM超までの範囲であった。
【0198】
I 材料および方法
(1)細胞株:
試験において使用した細胞株を表3に収載する。細胞に新鮮培地を2〜3日ごとに供給し、それらの成長速度に応じて3〜5日ごとに継代させた。10〜15継代後、細胞を廃棄し、凍結ストックから新鮮培養物を確立した。細胞培養物をマイコプラスマおよび他の汚染物質について定期的に点検した。
【表5】
【0199】
(2)被検物質:
滅菌ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS、pH7.4)中100mMのストックをCMX001およびシドフォビルについて作製し、−20℃で保存した。ドキソルビシン、ドセタキセル、オキサリプラチン、DTIC(ダカルバジン)およびシスプラチンは、Sigma−Aldrich(St.Louis、MO)から購入した。ゲムシタビンはEli Lilly and Companyによって製造され、Infusion Solutions Pharmacy(Tucson、AZ)から購入した。
【0200】
(3)実験手順:
インビトロ細胞増殖アッセイは、96ウェルプレートベースのMTSアッセイ(CellTiter96(C)アクオスワンソリューション細胞増殖アッセイ、Promega)またはSRB(スルホローダミンB)アッセイ(1〜3)を使用して実施した。手短に述べると、細胞を0日目に96ウェルマイクロタイタープレート(Falcon3072番)内において100μlの培地中で平板培養した。1日目、各化合物の10μlの連続希釈物(100μMの出発濃度での1:2希釈物9種;いくつかの事例において、400μM(CMX001またはシドフォビル)または1μM(いくつかの標準的な作用物質)の出発濃度)をプレートに3通り添加した。DMSOを溶媒として使用する標準的な作用物質については、0.5%の出発濃度でのDMSOの連続希釈物も、ビヒクル対照として含まれていた。
【0201】
加湿インキュベーター内、37℃で3日間インキュベーション後、MTSまたはSRBアッセイのいずれかによって生存細胞を計測した。MTSアッセイでは、(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3−カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム、内塩(MTS、2mg/ml)および電子カップリング試薬、フェナジンメトスルフェート(PMS、DPBS中0.92mg/ml)の20:1混合物20μlを各ウェルに添加し、37℃で3時間インキュベートした。BioTek synergy(商標)HT多重検出マイクロプレートリーダーを490nmで使用して、吸光度を計測した。SRBアッセイでは、50μLの冷トリクロロ酢酸(TCA、10%w/vの最終濃度)で60分間、細胞をインシチュで固定した。次いで、細胞をH2Oで5回洗浄し、風乾させた。
【0202】
次に、1%酢酸中0.2%のSRB20μLで細胞を染色し、室温で30分間インキュベートし、1%酢酸で5回洗浄することによって結合しなかったSRBを除去し、風乾させた。最後に、結合したSRB染色剤を50μLの50μMトリス緩衝液中で可溶化した後、BioTekマイクロプレートリーダーを使用して570nmでの光学密度計測をした。成長阻害データは、バックグラウンド補正した吸光度から算出した細胞生存のパーセンテージとして表現した。細胞の生存分率は、被験剤で処理した試料の平均吸光度値を未処理対照の平均吸光度値で割ることによって決定した。
【0203】
(4)統計的分析:
BioTek synergy(商標)HT多重検出マイクロプレートリーダーを使用して原データを獲得し、分析のためにMicrosoftエクセルにインポートした。各処理の平均シグナルは、ブランクシグナルを減じた後に3通りから算出した。生存パーセンテージ値は、下記の式:生存%=(薬物治療の平均シグナル/未処理対照の平均シグナル)×100を使用して算出した。データを最後にプリズム4ソフトウェア(GraphPad Software、San Diego、CA)にインポートして、非線形回帰曲線当てはめを使用して用量−活性曲線を生成し、IC50値を算出した。
【0204】
B.結果および考察
各細胞株におけるCMX001、シドフォビルおよび標準的な作用物質の成長阻害プロファイルを、図18〜41に示す。IC50(50%成長を達成するために必要とされる濃度値を表4に収載する。
【表6】
【0205】
要するに、CMX001は、研究において評価した24の細胞株のほぼすべてにおいて、その親化合物であるシドフォビルよりも強力であった。腫瘍細胞株におけるCMX00lのIC50値は、標準的な作用物質の値と比較すると相対的に中程度である、6.6μMから100μM超までの範囲であった。試験した22の腫瘍細胞株の中でも、CMX001はPC−3(IC50=6.6μM)およびSK−HEP−1(IC50=7.4μM)において最も活性であった。概して、CMX001は、前立腺、肝臓および子宮頸がん細胞株において最も活性であり、腎臓、膀胱および卵巣がん細胞株において最も活性が低かった。興味深いことに、CMX001は、2つの不死化ヒト正常上皮細胞株、Het−1A(食道)およびTHLE−3(肝臓)に対しても相当に活性であり、それぞれ20.5μMおよび7.0μMのIC50であった。いずれの細胞株も、SV40ラージT抗原ウイルス(4〜5)によって不死化されたものであった。
【0206】
DTIC(ダカルバジン)は、黒色腫細胞株に対して活性ではなかった(IC50>100μM)。細胞増殖アッセイにおけるDTICのこの低活性の1つの説明は、DTICがその抗腫瘍活性に肝臓の活性化を必要とすることである。しかしながら、肝臓の活性化を必要としないDTICの類似体であるテモゾロマイドは、これら2つの細胞株のいずれにおいても良好な活性を示さなかった(IC50>100μM、データは図示せず)。したがって、いくつかの他の黒色腫細胞株において示されている通り、単にこれら2つの細胞株がDTICおよびテモゾロマイドに抵抗性があるということであり得る(6〜7)。CMX001がこれら2つの黒色腫細胞株においていくらかの活性を示したという事実は、潜在的に有望である。活性を伴う暴露持続時間の影響に目を向けた研究を考慮する価値があり得る。この点について、より長い暴露時間は細胞毒性の増強を招き得る。
【0207】
前述は、本発明を例証するものであり、その限定であるとして解釈すべきではない。本発明の少数の例示的な実施形態を記載してきたが、当業者であれば、本発明の新規の教示および利点から著しく逸脱することなく、例示的な実施形態において多くの修正が可能であることを容易に理解するであろう。したがって、そのような修正はすべて、請求項において定義される通りの本発明の範囲内に含まれることが意図されている。したがって、前述は本発明を例証するものであり、開示されている具体的な実施形態に限定されるものとして解釈すべきではないこと、ならびに、開示されている実施形態への修正および他の実施形態は、添付の請求項の範囲内に含まれるように意図されていることを理解されたい。本発明は、下記の請求項によって定義され、請求項の均等物はその中に含まれる。
【図1(1)】
【図1(2)】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象において、ウイルス誘発腫瘍を治療するための方法であって、前記対象に、治療有効量の式Aもしくは式Bの化合物
【化1】
[式中、
Mは
【化2】
であり、ここで、R1、R1’、R2およびR2’は、独立に、−H、ハロゲン、−ORi、−SRi、−NHRi、−NRiRiiであり、かつ、RiおよびRiiは、独立に、水素または脂肪族であり、
Qは、存在する場合、
【化3】
であり、mは0から6までの整数であり、
Bは、水素、−CH3、F、CF3、−CHF2、−CH2CH3、−CH2OH、−CH2CH2OH、−CH(OH)CH3、−CH2F、−CH=CH2および−CH2N3からなる群から選択され、
Xは、セレン、硫黄または酸素から選択され、
R3は、ヒドロキシ、−OR2a、−BH3、C1〜8アルキル、C2〜8アルケニル、C2〜8アルキニル、C1〜8ヘテロアルキル、C2〜8ヘテロアルケニル、C2〜8ヘテロアルキニルまたは−NR’Hであり、
R2aは、C1〜8アルキル、C2〜8アルケニル、C2〜8アルキニル、C1〜8ヘテロアルキル、C2〜8ヘテロアルケニル、C2〜8ヘテロアルキニル、−P(=O)(OH)2または−P(=O)(OH)OP(=O)(OH)2であり、
R’は、C1〜8アルキル、C2〜8アルケニル、C2〜8アルキニル、C1〜8ヘテロアルキル、C2〜8ヘテロアルキニル、C2〜8ヘテロアルケニル、C6〜10アリール、または置換もしくは非置換アミノ酸残基であり、
Zは、少なくとも1個のNを含む複素環式部分を含み、かつ
符号*は、式(A)または(B)中のメチレンとZとの結合点が、前記複素環式部分の利用可能な窒素を介していることを指示する]、
または薬学的に許容されるその塩、立体異性体、ジアステレオマー、鏡像異性体もしくはラセミ体を投与するステップを含む方法。
【請求項2】
式AまたはBの化合物が、ウイルス感染細胞および/またはウイルス複製を特異的に標的とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対象がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記腫瘍が、ポリオーマウイルス、パピローマウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスまたはそれらの組合せに関連する、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記腫瘍が、ヒトパピローマウイルス、ワタオウサギパピローマウイルス、ウマパピローマウイルスおよびウシパピローマウイルスからなる群から選択されるパピローマウイルスに関連する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記腫瘍が、ヒトパピローマウイルスに関連する子宮頸がんである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記腫瘍が、エプスタイン・バーウイルス(EBV)に関連する移植後リンパ増殖性障害(PTLD)である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記腫瘍が、サイトメガロウイルスに関連する膠芽細胞腫である、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記腫瘍が、BK、ジョン・カニンガムウイルス(JCV)、メルケル細胞ウイルス(MCV)、KIポリオーマウイルス(KIV)、WUポリオーマウイルス(WUV)、シミアンウイルス40(SV40)またはそれらの組合せに関連する、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記腫瘍が、BKウイルスまたはJCVに関連する、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記対象が免疫無防備状態である、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記対象が、免疫抑制薬治療中の移植患者である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記移植患者が、腎臓、骨髄、肝臓、肺、胃、骨、精巣、心臓、膵臓、腸およびそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの移植臓器を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記対象がHIVに感染している、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記対象が、原発性または後天性免疫不全を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記対象が、免疫抑制療法の結果として免疫無防備状態である、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つの前記腫瘍が、脳がん、結腸直腸がん、上咽頭癌(NPC)、バーキットリンパ腫(BL)、リンパ腫(例えば、B細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、ダンカン症候群)、メルケル細胞癌(MCC)、前立腺がん、肝細胞癌、子宮頸がん、肺がん、頭頸部扁平上皮がん、前立腺がん、乳がん、急性リンパ性白血病、成人急性骨髄性白血病、成人非ホジキンリンパ腫、脳腫瘍、小児がん、小児肉腫、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、食道がん、有毛細胞白血病、腎臓がん、肝臓がん、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、口腔がん、膵臓がん、原発性中枢神経系リンパ腫、皮膚がんおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
Xが酸素である、請求項1から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
R3がヒドロキシルである、請求項1から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
Zが、グアニン−9−イル、アデニン−9−イル、2,6−ジアミノプリン−9−イル、2−アミノプリン−9−イルまたはその1−デアザ、3−デアザもしくは8−アザ化合物、あるいはシトシン−1−イルである、請求項1から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
Zが、
【化4】
[ここで、式1、2、3または4中の符号*は、Nと式AまたはB中のメチレンとの結合点を指示する]
である、請求項1から19のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
R1、R1’、R2またはR2’が、独立に、−O(C1〜C24)アルキル、−O(C2〜C24)アルケニル、−O(C2〜C24)アルキニル、−O(C1〜C24)アシル、−S(C1〜C24)アルキル、−S(C2〜C24)アルケニル、−S(C2〜C24)アルキニル、−S(C1〜C24)アシル、−NH(C1〜C24)アルキル、−NH(C2〜C24)アルケニル、−NH(C2〜C24)アルキニル、−NH(C1〜C24)アシル、−N((C1〜C24)アルキル)((C2〜C24)アルキル)、−N((C1〜C24)アルキル)((C2〜C24)アルケニル)、−N((C1〜C24)アルキル)((C2〜C24)アシル)、−N((C1〜C24)アルキル)((C2〜C24)アルキニル)、−N((C1〜C24)アルケイル))((C2〜C24)アルキニル)、−N((C1〜C24)アルケニル)((C2〜C24)アルケニル)、−N((C1〜C24)アルキニル)((C2〜C24)アルキニル)、−N((C1〜C24)アシル)((C2〜C24)アルキニル)または−N((C1〜C24)アシル)((C2〜C24)アルケニル)である、請求項1から21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
Mが、−O−(CH2)2−O−C1〜24アルキル、−O−(CH2)3−O−C1〜24アルキル、−O−CH2−CH(OH)−CH2−O−C1〜24アルキルおよび−O−CH2−CH(OH)−S−C1〜24アルキルからなる群から選択される、請求項1から22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
Mが−O−(CH2)a−O−(CH2)t−CH3[ここで、aは2から4であり、かつtは11から19である]である、請求項1から22のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
Mが−O−(CH2)2−O−(CH2)15CH3、または−O−(CH2)2−O−(CH2)17CH3である、請求項1から22のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
Mが−O−(CH2)3−O−(CH2)15CH3、または−O−(CH2)3−O−(CH2)17CH3である、請求項1から22のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
Bが−CH3、または−CH2OHである、請求項1から26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記化合物が、
【化5A】
【化5B】
【化5C】
または薬学的に許容されるその塩からなる群から選択される、請求項1から17のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記対象が免疫抑制剤を必要としている、請求項1から28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記対象に、少なくとも1種の免疫抑制剤を前記式AまたはBの化合物と組み合わせて投与するステップをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記免疫抑制剤が、前記対象に同時発生的にまたは順次に投与される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
少なくとも1種の前記免疫抑制剤が、ダクリズマブ、バシリキシマブ、タクロリムス、シロリムス、ミコフェノレート(ナトリウムまたはモフェチルとして)、シクロスポリンA、グルココルチコイド、抗CD3モノクローナル抗体(OKT3)、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)、抗CD52モノクローナル抗体(キャンパス1−H)、アザチオプリン、エベロリムス、ダクチノマイシン、シクロフォスファミド、白金、ニトロソ尿素、メトトレキサート、アザチオプリン、メルカプトプリン、ムロモナブ、IFNガンマ、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、タイサブリ(ナタリズマブ)、フィンゴリモドおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
少なくとも1種の前記免疫抑制剤がタイサブリ(ナタリズマブ)である、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記化合物が、構造:
【化6】
または薬学的に許容されるその塩を有し、かつ、前記免疫抑制剤がタイサブリ(ナタリズマブ)である、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
免疫抑制剤を必要としている対象において、ウイルス感染を治療するための方法であって、前記対象に、治療有効量の式Aもしくは式Bの化合物
【化7】
[式中、
Mは
【化8】
であり、ここで、R1、R1’、R2およびR2’は、独立に、−H、ハロゲン、−ORi、−SRi、−NHRi、−NRiRiiであり、かつ、RiおよびRiiは、独立に、水素または脂肪族であり、
Qは、存在する場合、
【化9】
であり、mは0から6までの整数であり、
Bは、水素、−CH3、F、CF3、−CHF2、−CH2CH3、−CH2OH、−CH2CH2OH、−CH(OH)CH3、−CH2F、−CH=CH2および−CH2N3からなる群から選択され、
Xは、セレン、硫黄または酸素から選択され、
R3は、ヒドロキシ、−OR2a、−BH3、C1〜8アルキル、C2〜8アルケニル、C2〜8アルキニル、C1〜8ヘテロアルキル、C2〜8ヘテロアルケニル、C2〜8ヘテロアルキニルまたは−NR’Hであり、
R2aは、C1〜8アルキル、C2〜8アルケニル、C2〜8アルキニル、C1〜8ヘテロアルキル、C2〜8ヘテロアルケニル、C2〜8ヘテロアルキニル、−P(=O)(OH)2または−P(=O)(OH)OP(=O)(OH)2であり、
R’は、C1〜8アルキル、C2〜8アルケニル、C2〜8アルキニル、C1〜8ヘテロアルキル、C2〜8ヘテロアルキニル、C2〜8ヘテロアルケニル、C6〜10アリール、または置換もしくは非置換アミノ酸残基であり、
Zは、少なくとも1個のNを含む複素環式部分を含み、かつ
符号*は、式(A)または(B)中のメチレンとZとの結合点が、前記複素環式部分の利用可能な窒素を介していることを指示する]、
または薬学的に許容されるその塩、立体異性体、ジアステレオマー、鏡像異性体もしくはラセミ体を投与するステップを含む方法。
【請求項36】
少なくとも1種の前記免疫抑制剤が、ダクリズマブ、バシリキシマブ、タクロリムス、シロリムス、ミコフェノレート(ナトリウムまたはモフェチルとして)、シクロスポリンA、グルココルチコイド、抗CD3モノクローナル抗体(OKT3)、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)、抗CD52モノクローナル抗体(キャンパス1−H)、アザチオプリン、エベロリムス、ダクチノマイシン、シクロフォスファミド、白金、ニトロソ尿素、メトトレキサート、アザチオプリン、メルカプトプリン、ムロモナブ、IFNガンマ、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、タイサブリ(ナタリズマブ)、フィンゴリモドおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
少なくとも1種の前記免疫抑制剤がタイサブリ(ナタリズマブ)である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
Xが酸素である、請求項35から37に記載の方法。
【請求項39】
R3がヒドロキシルである、請求項35から38のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
Zが、グアニン−9−イル、アデニン−9−イル、2,6−ジアミノプリン−9−イル、2−アミノプリン−9−イルまたはその1−デアザ、3−デアザもしくは8−アザ化合物、あるいはシトシン−1−イルである、請求項35から39のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
Zが、
【化10】
[ここで、式1、2、3または4中の符号*は、Nと式AまたはB中のメチレンとの結合点を指示する]
である、請求項35から39のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
R1、R1’、R2、R2’が、独立に、−O(C1〜C24)アルキル、−O(C2〜C24)アルケニル、−O(C2〜C24)アルキニル、−O(C1〜C24)アシル、−S(C1〜C24)アルキル、−S(C2〜C24)アルケニル、−S(C2〜C24)アルキニル、−S(C1〜C24)アシル、−NH(C1〜C24)アルキル、−NH(C2〜C24)アルケニル、−NH(C2〜C24)アルキニル、−NH(C1〜C24)アシル、−N((C1〜C24)アルキル)((C2〜C24)アルキル)、−N((C1〜C24)アルキル)((C2〜C24)アルケニル)、−N((C1〜C24)アルキル)((C2〜C24)アシル)、−N((C1〜C24)アルキル)((C2〜C24)アルキニル)、−N((C1〜C24)アルケイル))((C2〜C24)アルキニル)、−N((C1〜C24)アルケニル)((C2〜C24)アルケニル)、−N((C1〜C24)アルキニル)((C2〜C24)アルキニル)、−N((C1〜C24)アシル)((C2〜C24)アルキニル)または−N((C1〜C24)アシル)((C2〜C24)アルケニル)である、請求項35から41のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
Mが、−O−(CH2)2−O−C1〜24アルキ、−O−(CH2)3−O−C1〜24アルキル、−O−CH2−CH(OH)−CH2−O−C1〜24アルキルおよび−O−CH2−CH(OH)−S−C1〜24アルキルからなる群から選択される、請求項35から42のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
Mが−O−(CH2)a−O−(CH2)t−CH3[ここで、aは2から4であり、かつtは11から19である]である、請求項35から42のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
Mが−O−(CH2)2−O−(CH2)15CH3または−O−(CH2)2−O−(CH2)17CH3である、請求項35から42のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
Mが−O−(CH2)3−O−(CH2)15CH3または−O−(CH2)3−O−(CH2)17CH3である、請求項35から42のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
Bが−CH3または−CH2OHである、請求項35から46のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
前記化合物が、
【化11A】
【化11B】
【化11C】
または薬学的に許容されるその塩からなる群から選択される、請求項35から37のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
前記化合物が、構造:
【化12】
または薬学的に許容されるその塩を有し、かつ、少なくとも1種の前記少なくとも1種の免疫抑制剤がタイサブリ(ナタリズマブ)である、請求項35に記載の方法。
【請求項50】
少なくとも1種のウイルス感染が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、インフルエンザ、単純ヘルペスウイルス−1(HSV−1)、単純ヘルペスウイルス−2(HSV−2)、ヒトヘルペスウイルス6(HHV−6)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、リンホクリプトウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、オルトポックスウイルス、天然痘、牛痘、ラクダ痘、サル痘、B型肝炎、C型肝炎ウイルス、大痘瘡および小痘瘡ウイルス、ワクシニア、エボラウイルス、パピローマウイルス、アデノウイルス、ポリオーマウイルス、ならびにそれらの組合せからなる群から選択されるウイルスに関連する、請求項35から49のいずれかに記載の方法。
【請求項51】
少なくとも1種の前記ウイルスが、ヒトサイトメガロウイルス、BKウイルス、ジョン・カニンガムウイルス、ヒトヘルペスウイルス6(HHV−6)、ヒト単純ヘルペスウイルス、アデノウイルス、エプスタイン・バーウイルスおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項35から49に記載の方法。
【請求項52】
少なくとも1種の前記ウイルスが、ヒトパピローマウイルス、ワタオウサギパピローマウイルス、ウマパピローマウイルス、ウシパピローマウイルスおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項35から49に記載の方法。
【請求項53】
少なくとも1種のウイルスが、ジョン・カニンガムウイルス(JCV)、BKウイルス、SV40、メルケル細胞ウイルス(MCV)、KIポリオーマウイルス(KIV)、WUポリオーマウイルス(WUV)、シミアンウイルス40(SV40)およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
請求項1から53のいずれか一項に記載の治療方法を行うための、式AまたはBの化合物。
【請求項55】
請求項1から53のいずれか一項に記載の方法を行うための薬剤を調製するための、式AまたはBの化合物の使用。
【請求項56】
(a)式Aもしくは式Bの化合物
【化13】
[式中、
Mは
【化14】
であり、ここで、R1、R1’、R2およびR2’は、独立に、−H、ハロゲン、−ORi、−SRi、−NHRi、−NRiRiiであり、かつ、RiおよびRiiは、独立に、水素または脂肪族であり、
Qは、存在する場合、
【化15】
であり、mは0から6までの整数であり、
Bは、水素、−CH3、F、CF3、−CHF2、−CH2CH3、−CH2OH、−CH2CH2OH、−CH(OH)CH3、−CH2F、−CH=CH2および−CH2N3からなる群から選択され、
Xは、セレン、硫黄または酸素から選択され、
R3は、ヒドロキシ、−OR2a、−BH3、C1〜8アルキル、C2〜8アルケニル、C2〜8アルキニル、C1〜8ヘテロアルキル、C2〜8ヘテロアルケニル、C2〜8ヘテロアルキニルまたは−NR’Hであり、
R2aは、C1〜8アルキル、C2〜8アルケニル、C2〜8アルキニル、C1〜8ヘテロアルキル、C2〜8ヘテロアルケニル、C2〜8ヘテロアルキニル、−P(=O)(OH)2または−P(=O)(OH)OP(=O)(OH)2であり、
R’は、C1〜8アルキル、C2〜8アルケニル、C2〜8アルキニル、C1〜8ヘテロアルキル、C2〜8ヘテロアルキニル、C2〜8ヘテロアルケニル、C6〜10アリール、または置換もしくは非置換アミノ酸残基であり、
Zは、少なくとも1個のNを含む複素環式部分を含み、かつ
符号*は、式(A)または(B)中のメチレンとZとの結合点が、前記複素環式部分の利用可能な窒素を介していることを指示する]、
または薬学的に許容されるその塩、立体異性体、ジアステレオマー、鏡像異性体もしくはラセミ体と、
(b)少なくとも1種の免疫抑制剤と、
(c)薬学的に許容される担体と
を含む、医薬組成物。
【請求項57】
少なくとも1種の前記免疫抑制剤が、ダクリズマブ、バシリキシマブ、タクロリムス、シロリムス、ミコフェノレート(ナトリウムまたはモフェチルとして)、シクロスポリンA、グルココルチコイド、抗CD3モノクローナル抗体(OKT3)、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)、抗CD52モノクローナル抗体(キャンパス1−H)、アザチオプリン、エベロリムス、ダクチノマイシン、シクロフォスファミド、白金、ニトロソ尿素、メトトレキサート、アザチオプリン、メルカプトプリン、ムロモナブ、IFNガンマ、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、タイサブリ(ナタリズマブ)、フィンゴリモドおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項56に記載の組成物。
【請求項58】
少なくとも1種の前記免疫抑制剤がタイサブリ(ナタリズマブ)である、請求項56に記載の組成物。
【請求項59】
Xが酸素である、請求項56から58のいずれかに記載の組成物。
【請求項60】
R2がヒドロキシルである、請求項56から59のいずれかに記載の組成物。
【請求項61】
Zが、グアニン−9−イル、アデニン−9−イル、2,6−ジアミノプリン−9−イル、2−アミノプリン−9−イルまたはその1−デアザ、3−デアザもしくは8−アザ化合物、あるいはシトシン−1−イルである、請求項56から60のいずれかに記載の組成物。
【請求項62】
Zが、
【化16】
[ここで、式1、2、3または4中の符号*は、Nと式AまたはB中のメチレンとの結合点を指示する]
である、請求項56から60のいずれかに記載の組成物。
【請求項63】
Mが、−O−(CH2)2−O−C1〜24アルキル、−O−(CH2)3−O−C1〜24アルキル、−O−CH2−CH(OH)−CH2−O−C1〜24アルキル、および−O−CH2−CH(OH)−S−C1〜24アルキルからなる群から選択される、請求項56から62のいずれかに記載の組成物。
【請求項64】
Mが−O−(CH2)a−O−(CH2)t−CH3[ここで、aは2から4であり、かつtは11から19である]である、請求項56から62のいずれかに記載の組成物。
【請求項65】
Mが−O−(CH2)2−O−(CH2)15CH3または−O−(CH2)2−O−(CH2)17CH3である、請求項56から62のいずれかに記載の組成物。
【請求項66】
Mが−O−(CH2)3−O−(CH2)15CH3または−O−(CH2)3−O−(CH2)17CH3である、請求項56から62のいずれかに記載の組成物。
【請求項67】
Bが−CH3または−CH2OHである、請求項56から66のいずれかに記載の組成物。
【請求項68】
前記化合物が、
【化17A】
【化17B】
【化17C】
または薬学的に許容されるその塩からなる群から選択される、請求項56に記載の組成物。
【請求項69】
前記化合物が、
【化18】
または薬学的に許容されるその塩であり、かつ、前記免疫抑制剤がタイサブリ(ナタリズマブ)である、請求項56に記載の組成物。
【請求項1】
対象において、ウイルス誘発腫瘍を治療するための方法であって、前記対象に、治療有効量の式Aもしくは式Bの化合物
【化1】
[式中、
Mは
【化2】
であり、ここで、R1、R1’、R2およびR2’は、独立に、−H、ハロゲン、−ORi、−SRi、−NHRi、−NRiRiiであり、かつ、RiおよびRiiは、独立に、水素または脂肪族であり、
Qは、存在する場合、
【化3】
であり、mは0から6までの整数であり、
Bは、水素、−CH3、F、CF3、−CHF2、−CH2CH3、−CH2OH、−CH2CH2OH、−CH(OH)CH3、−CH2F、−CH=CH2および−CH2N3からなる群から選択され、
Xは、セレン、硫黄または酸素から選択され、
R3は、ヒドロキシ、−OR2a、−BH3、C1〜8アルキル、C2〜8アルケニル、C2〜8アルキニル、C1〜8ヘテロアルキル、C2〜8ヘテロアルケニル、C2〜8ヘテロアルキニルまたは−NR’Hであり、
R2aは、C1〜8アルキル、C2〜8アルケニル、C2〜8アルキニル、C1〜8ヘテロアルキル、C2〜8ヘテロアルケニル、C2〜8ヘテロアルキニル、−P(=O)(OH)2または−P(=O)(OH)OP(=O)(OH)2であり、
R’は、C1〜8アルキル、C2〜8アルケニル、C2〜8アルキニル、C1〜8ヘテロアルキル、C2〜8ヘテロアルキニル、C2〜8ヘテロアルケニル、C6〜10アリール、または置換もしくは非置換アミノ酸残基であり、
Zは、少なくとも1個のNを含む複素環式部分を含み、かつ
符号*は、式(A)または(B)中のメチレンとZとの結合点が、前記複素環式部分の利用可能な窒素を介していることを指示する]、
または薬学的に許容されるその塩、立体異性体、ジアステレオマー、鏡像異性体もしくはラセミ体を投与するステップを含む方法。
【請求項2】
式AまたはBの化合物が、ウイルス感染細胞および/またはウイルス複製を特異的に標的とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対象がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記腫瘍が、ポリオーマウイルス、パピローマウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスまたはそれらの組合せに関連する、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記腫瘍が、ヒトパピローマウイルス、ワタオウサギパピローマウイルス、ウマパピローマウイルスおよびウシパピローマウイルスからなる群から選択されるパピローマウイルスに関連する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記腫瘍が、ヒトパピローマウイルスに関連する子宮頸がんである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記腫瘍が、エプスタイン・バーウイルス(EBV)に関連する移植後リンパ増殖性障害(PTLD)である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記腫瘍が、サイトメガロウイルスに関連する膠芽細胞腫である、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記腫瘍が、BK、ジョン・カニンガムウイルス(JCV)、メルケル細胞ウイルス(MCV)、KIポリオーマウイルス(KIV)、WUポリオーマウイルス(WUV)、シミアンウイルス40(SV40)またはそれらの組合せに関連する、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記腫瘍が、BKウイルスまたはJCVに関連する、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記対象が免疫無防備状態である、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記対象が、免疫抑制薬治療中の移植患者である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記移植患者が、腎臓、骨髄、肝臓、肺、胃、骨、精巣、心臓、膵臓、腸およびそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの移植臓器を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記対象がHIVに感染している、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記対象が、原発性または後天性免疫不全を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記対象が、免疫抑制療法の結果として免疫無防備状態である、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つの前記腫瘍が、脳がん、結腸直腸がん、上咽頭癌(NPC)、バーキットリンパ腫(BL)、リンパ腫(例えば、B細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、ダンカン症候群)、メルケル細胞癌(MCC)、前立腺がん、肝細胞癌、子宮頸がん、肺がん、頭頸部扁平上皮がん、前立腺がん、乳がん、急性リンパ性白血病、成人急性骨髄性白血病、成人非ホジキンリンパ腫、脳腫瘍、小児がん、小児肉腫、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、食道がん、有毛細胞白血病、腎臓がん、肝臓がん、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、口腔がん、膵臓がん、原発性中枢神経系リンパ腫、皮膚がんおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
Xが酸素である、請求項1から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
R3がヒドロキシルである、請求項1から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
Zが、グアニン−9−イル、アデニン−9−イル、2,6−ジアミノプリン−9−イル、2−アミノプリン−9−イルまたはその1−デアザ、3−デアザもしくは8−アザ化合物、あるいはシトシン−1−イルである、請求項1から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
Zが、
【化4】
[ここで、式1、2、3または4中の符号*は、Nと式AまたはB中のメチレンとの結合点を指示する]
である、請求項1から19のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
R1、R1’、R2またはR2’が、独立に、−O(C1〜C24)アルキル、−O(C2〜C24)アルケニル、−O(C2〜C24)アルキニル、−O(C1〜C24)アシル、−S(C1〜C24)アルキル、−S(C2〜C24)アルケニル、−S(C2〜C24)アルキニル、−S(C1〜C24)アシル、−NH(C1〜C24)アルキル、−NH(C2〜C24)アルケニル、−NH(C2〜C24)アルキニル、−NH(C1〜C24)アシル、−N((C1〜C24)アルキル)((C2〜C24)アルキル)、−N((C1〜C24)アルキル)((C2〜C24)アルケニル)、−N((C1〜C24)アルキル)((C2〜C24)アシル)、−N((C1〜C24)アルキル)((C2〜C24)アルキニル)、−N((C1〜C24)アルケイル))((C2〜C24)アルキニル)、−N((C1〜C24)アルケニル)((C2〜C24)アルケニル)、−N((C1〜C24)アルキニル)((C2〜C24)アルキニル)、−N((C1〜C24)アシル)((C2〜C24)アルキニル)または−N((C1〜C24)アシル)((C2〜C24)アルケニル)である、請求項1から21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
Mが、−O−(CH2)2−O−C1〜24アルキル、−O−(CH2)3−O−C1〜24アルキル、−O−CH2−CH(OH)−CH2−O−C1〜24アルキルおよび−O−CH2−CH(OH)−S−C1〜24アルキルからなる群から選択される、請求項1から22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
Mが−O−(CH2)a−O−(CH2)t−CH3[ここで、aは2から4であり、かつtは11から19である]である、請求項1から22のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
Mが−O−(CH2)2−O−(CH2)15CH3、または−O−(CH2)2−O−(CH2)17CH3である、請求項1から22のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
Mが−O−(CH2)3−O−(CH2)15CH3、または−O−(CH2)3−O−(CH2)17CH3である、請求項1から22のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
Bが−CH3、または−CH2OHである、請求項1から26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記化合物が、
【化5A】
【化5B】
【化5C】
または薬学的に許容されるその塩からなる群から選択される、請求項1から17のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記対象が免疫抑制剤を必要としている、請求項1から28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記対象に、少なくとも1種の免疫抑制剤を前記式AまたはBの化合物と組み合わせて投与するステップをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記免疫抑制剤が、前記対象に同時発生的にまたは順次に投与される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
少なくとも1種の前記免疫抑制剤が、ダクリズマブ、バシリキシマブ、タクロリムス、シロリムス、ミコフェノレート(ナトリウムまたはモフェチルとして)、シクロスポリンA、グルココルチコイド、抗CD3モノクローナル抗体(OKT3)、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)、抗CD52モノクローナル抗体(キャンパス1−H)、アザチオプリン、エベロリムス、ダクチノマイシン、シクロフォスファミド、白金、ニトロソ尿素、メトトレキサート、アザチオプリン、メルカプトプリン、ムロモナブ、IFNガンマ、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、タイサブリ(ナタリズマブ)、フィンゴリモドおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
少なくとも1種の前記免疫抑制剤がタイサブリ(ナタリズマブ)である、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記化合物が、構造:
【化6】
または薬学的に許容されるその塩を有し、かつ、前記免疫抑制剤がタイサブリ(ナタリズマブ)である、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
免疫抑制剤を必要としている対象において、ウイルス感染を治療するための方法であって、前記対象に、治療有効量の式Aもしくは式Bの化合物
【化7】
[式中、
Mは
【化8】
であり、ここで、R1、R1’、R2およびR2’は、独立に、−H、ハロゲン、−ORi、−SRi、−NHRi、−NRiRiiであり、かつ、RiおよびRiiは、独立に、水素または脂肪族であり、
Qは、存在する場合、
【化9】
であり、mは0から6までの整数であり、
Bは、水素、−CH3、F、CF3、−CHF2、−CH2CH3、−CH2OH、−CH2CH2OH、−CH(OH)CH3、−CH2F、−CH=CH2および−CH2N3からなる群から選択され、
Xは、セレン、硫黄または酸素から選択され、
R3は、ヒドロキシ、−OR2a、−BH3、C1〜8アルキル、C2〜8アルケニル、C2〜8アルキニル、C1〜8ヘテロアルキル、C2〜8ヘテロアルケニル、C2〜8ヘテロアルキニルまたは−NR’Hであり、
R2aは、C1〜8アルキル、C2〜8アルケニル、C2〜8アルキニル、C1〜8ヘテロアルキル、C2〜8ヘテロアルケニル、C2〜8ヘテロアルキニル、−P(=O)(OH)2または−P(=O)(OH)OP(=O)(OH)2であり、
R’は、C1〜8アルキル、C2〜8アルケニル、C2〜8アルキニル、C1〜8ヘテロアルキル、C2〜8ヘテロアルキニル、C2〜8ヘテロアルケニル、C6〜10アリール、または置換もしくは非置換アミノ酸残基であり、
Zは、少なくとも1個のNを含む複素環式部分を含み、かつ
符号*は、式(A)または(B)中のメチレンとZとの結合点が、前記複素環式部分の利用可能な窒素を介していることを指示する]、
または薬学的に許容されるその塩、立体異性体、ジアステレオマー、鏡像異性体もしくはラセミ体を投与するステップを含む方法。
【請求項36】
少なくとも1種の前記免疫抑制剤が、ダクリズマブ、バシリキシマブ、タクロリムス、シロリムス、ミコフェノレート(ナトリウムまたはモフェチルとして)、シクロスポリンA、グルココルチコイド、抗CD3モノクローナル抗体(OKT3)、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)、抗CD52モノクローナル抗体(キャンパス1−H)、アザチオプリン、エベロリムス、ダクチノマイシン、シクロフォスファミド、白金、ニトロソ尿素、メトトレキサート、アザチオプリン、メルカプトプリン、ムロモナブ、IFNガンマ、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、タイサブリ(ナタリズマブ)、フィンゴリモドおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
少なくとも1種の前記免疫抑制剤がタイサブリ(ナタリズマブ)である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
Xが酸素である、請求項35から37に記載の方法。
【請求項39】
R3がヒドロキシルである、請求項35から38のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
Zが、グアニン−9−イル、アデニン−9−イル、2,6−ジアミノプリン−9−イル、2−アミノプリン−9−イルまたはその1−デアザ、3−デアザもしくは8−アザ化合物、あるいはシトシン−1−イルである、請求項35から39のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
Zが、
【化10】
[ここで、式1、2、3または4中の符号*は、Nと式AまたはB中のメチレンとの結合点を指示する]
である、請求項35から39のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
R1、R1’、R2、R2’が、独立に、−O(C1〜C24)アルキル、−O(C2〜C24)アルケニル、−O(C2〜C24)アルキニル、−O(C1〜C24)アシル、−S(C1〜C24)アルキル、−S(C2〜C24)アルケニル、−S(C2〜C24)アルキニル、−S(C1〜C24)アシル、−NH(C1〜C24)アルキル、−NH(C2〜C24)アルケニル、−NH(C2〜C24)アルキニル、−NH(C1〜C24)アシル、−N((C1〜C24)アルキル)((C2〜C24)アルキル)、−N((C1〜C24)アルキル)((C2〜C24)アルケニル)、−N((C1〜C24)アルキル)((C2〜C24)アシル)、−N((C1〜C24)アルキル)((C2〜C24)アルキニル)、−N((C1〜C24)アルケイル))((C2〜C24)アルキニル)、−N((C1〜C24)アルケニル)((C2〜C24)アルケニル)、−N((C1〜C24)アルキニル)((C2〜C24)アルキニル)、−N((C1〜C24)アシル)((C2〜C24)アルキニル)または−N((C1〜C24)アシル)((C2〜C24)アルケニル)である、請求項35から41のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
Mが、−O−(CH2)2−O−C1〜24アルキ、−O−(CH2)3−O−C1〜24アルキル、−O−CH2−CH(OH)−CH2−O−C1〜24アルキルおよび−O−CH2−CH(OH)−S−C1〜24アルキルからなる群から選択される、請求項35から42のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
Mが−O−(CH2)a−O−(CH2)t−CH3[ここで、aは2から4であり、かつtは11から19である]である、請求項35から42のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
Mが−O−(CH2)2−O−(CH2)15CH3または−O−(CH2)2−O−(CH2)17CH3である、請求項35から42のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
Mが−O−(CH2)3−O−(CH2)15CH3または−O−(CH2)3−O−(CH2)17CH3である、請求項35から42のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
Bが−CH3または−CH2OHである、請求項35から46のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
前記化合物が、
【化11A】
【化11B】
【化11C】
または薬学的に許容されるその塩からなる群から選択される、請求項35から37のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
前記化合物が、構造:
【化12】
または薬学的に許容されるその塩を有し、かつ、少なくとも1種の前記少なくとも1種の免疫抑制剤がタイサブリ(ナタリズマブ)である、請求項35に記載の方法。
【請求項50】
少なくとも1種のウイルス感染が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、インフルエンザ、単純ヘルペスウイルス−1(HSV−1)、単純ヘルペスウイルス−2(HSV−2)、ヒトヘルペスウイルス6(HHV−6)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、リンホクリプトウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、オルトポックスウイルス、天然痘、牛痘、ラクダ痘、サル痘、B型肝炎、C型肝炎ウイルス、大痘瘡および小痘瘡ウイルス、ワクシニア、エボラウイルス、パピローマウイルス、アデノウイルス、ポリオーマウイルス、ならびにそれらの組合せからなる群から選択されるウイルスに関連する、請求項35から49のいずれかに記載の方法。
【請求項51】
少なくとも1種の前記ウイルスが、ヒトサイトメガロウイルス、BKウイルス、ジョン・カニンガムウイルス、ヒトヘルペスウイルス6(HHV−6)、ヒト単純ヘルペスウイルス、アデノウイルス、エプスタイン・バーウイルスおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項35から49に記載の方法。
【請求項52】
少なくとも1種の前記ウイルスが、ヒトパピローマウイルス、ワタオウサギパピローマウイルス、ウマパピローマウイルス、ウシパピローマウイルスおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項35から49に記載の方法。
【請求項53】
少なくとも1種のウイルスが、ジョン・カニンガムウイルス(JCV)、BKウイルス、SV40、メルケル細胞ウイルス(MCV)、KIポリオーマウイルス(KIV)、WUポリオーマウイルス(WUV)、シミアンウイルス40(SV40)およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
請求項1から53のいずれか一項に記載の治療方法を行うための、式AまたはBの化合物。
【請求項55】
請求項1から53のいずれか一項に記載の方法を行うための薬剤を調製するための、式AまたはBの化合物の使用。
【請求項56】
(a)式Aもしくは式Bの化合物
【化13】
[式中、
Mは
【化14】
であり、ここで、R1、R1’、R2およびR2’は、独立に、−H、ハロゲン、−ORi、−SRi、−NHRi、−NRiRiiであり、かつ、RiおよびRiiは、独立に、水素または脂肪族であり、
Qは、存在する場合、
【化15】
であり、mは0から6までの整数であり、
Bは、水素、−CH3、F、CF3、−CHF2、−CH2CH3、−CH2OH、−CH2CH2OH、−CH(OH)CH3、−CH2F、−CH=CH2および−CH2N3からなる群から選択され、
Xは、セレン、硫黄または酸素から選択され、
R3は、ヒドロキシ、−OR2a、−BH3、C1〜8アルキル、C2〜8アルケニル、C2〜8アルキニル、C1〜8ヘテロアルキル、C2〜8ヘテロアルケニル、C2〜8ヘテロアルキニルまたは−NR’Hであり、
R2aは、C1〜8アルキル、C2〜8アルケニル、C2〜8アルキニル、C1〜8ヘテロアルキル、C2〜8ヘテロアルケニル、C2〜8ヘテロアルキニル、−P(=O)(OH)2または−P(=O)(OH)OP(=O)(OH)2であり、
R’は、C1〜8アルキル、C2〜8アルケニル、C2〜8アルキニル、C1〜8ヘテロアルキル、C2〜8ヘテロアルキニル、C2〜8ヘテロアルケニル、C6〜10アリール、または置換もしくは非置換アミノ酸残基であり、
Zは、少なくとも1個のNを含む複素環式部分を含み、かつ
符号*は、式(A)または(B)中のメチレンとZとの結合点が、前記複素環式部分の利用可能な窒素を介していることを指示する]、
または薬学的に許容されるその塩、立体異性体、ジアステレオマー、鏡像異性体もしくはラセミ体と、
(b)少なくとも1種の免疫抑制剤と、
(c)薬学的に許容される担体と
を含む、医薬組成物。
【請求項57】
少なくとも1種の前記免疫抑制剤が、ダクリズマブ、バシリキシマブ、タクロリムス、シロリムス、ミコフェノレート(ナトリウムまたはモフェチルとして)、シクロスポリンA、グルココルチコイド、抗CD3モノクローナル抗体(OKT3)、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)、抗CD52モノクローナル抗体(キャンパス1−H)、アザチオプリン、エベロリムス、ダクチノマイシン、シクロフォスファミド、白金、ニトロソ尿素、メトトレキサート、アザチオプリン、メルカプトプリン、ムロモナブ、IFNガンマ、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、タイサブリ(ナタリズマブ)、フィンゴリモドおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項56に記載の組成物。
【請求項58】
少なくとも1種の前記免疫抑制剤がタイサブリ(ナタリズマブ)である、請求項56に記載の組成物。
【請求項59】
Xが酸素である、請求項56から58のいずれかに記載の組成物。
【請求項60】
R2がヒドロキシルである、請求項56から59のいずれかに記載の組成物。
【請求項61】
Zが、グアニン−9−イル、アデニン−9−イル、2,6−ジアミノプリン−9−イル、2−アミノプリン−9−イルまたはその1−デアザ、3−デアザもしくは8−アザ化合物、あるいはシトシン−1−イルである、請求項56から60のいずれかに記載の組成物。
【請求項62】
Zが、
【化16】
[ここで、式1、2、3または4中の符号*は、Nと式AまたはB中のメチレンとの結合点を指示する]
である、請求項56から60のいずれかに記載の組成物。
【請求項63】
Mが、−O−(CH2)2−O−C1〜24アルキル、−O−(CH2)3−O−C1〜24アルキル、−O−CH2−CH(OH)−CH2−O−C1〜24アルキル、および−O−CH2−CH(OH)−S−C1〜24アルキルからなる群から選択される、請求項56から62のいずれかに記載の組成物。
【請求項64】
Mが−O−(CH2)a−O−(CH2)t−CH3[ここで、aは2から4であり、かつtは11から19である]である、請求項56から62のいずれかに記載の組成物。
【請求項65】
Mが−O−(CH2)2−O−(CH2)15CH3または−O−(CH2)2−O−(CH2)17CH3である、請求項56から62のいずれかに記載の組成物。
【請求項66】
Mが−O−(CH2)3−O−(CH2)15CH3または−O−(CH2)3−O−(CH2)17CH3である、請求項56から62のいずれかに記載の組成物。
【請求項67】
Bが−CH3または−CH2OHである、請求項56から66のいずれかに記載の組成物。
【請求項68】
前記化合物が、
【化17A】
【化17B】
【化17C】
または薬学的に許容されるその塩からなる群から選択される、請求項56に記載の組成物。
【請求項69】
前記化合物が、
【化18】
または薬学的に許容されるその塩であり、かつ、前記免疫抑制剤がタイサブリ(ナタリズマブ)である、請求項56に記載の組成物。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【公表番号】特表2013−501056(P2013−501056A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523680(P2012−523680)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/044093
【国際公開番号】WO2011/017253
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(509295343)キメリクス,インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/044093
【国際公開番号】WO2011/017253
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(509295343)キメリクス,インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】
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