説明

ウェーハ用ホルダ

【課題】大きな機械的剛性を保持しながら軽量化、低コスト化、作業性の向上を図り、大口径ウェーハ用としても好適に用いられる。
【解決手段】金属薄板を素材とし、それぞれの外周縁と内周縁に沿って一体に立ち上がり形成した立壁状の外周嵌合部10、14と内周嵌合部11、15からなる嵌合部12、16を有する第1フレーム体6と第2フレーム体7を一体化して内部空間部8を有するリング状のフレーム体3を備え、第1フレームの底面9Bにダイシングフィルム5が貼り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造工程に用いられて半導体ウェーハやガラス基板ウェーハ等(以下、ウェーハと総称する。)を保持するウェーハ用ホルダ(以下、ホルダと略称する。)に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程等においては、ウェーハ製造元から供給されたウェーハを1枚ずつ保持して各工程間の搬送或いは保管等を行う際に保持治具としてホルダ(テープフレーム)が用いられる(特許文献1)。ホルダは、主面上に多数の集積回路形成を行い、導通試験やバックグラインド処理を施したウェーハを保持し、検査工程やチップ形成のためのダイシング工程における保持治具としても用いられる。
ホルダは、金属や樹脂材等によりリング状に形成されたフレーム体と、このフレーム体の開口部を閉塞して着脱自在に貼り付けられる樹脂フィルムとから構成され、樹脂フィルム上にウェーハを載置して周囲をフレーム体により保護する。ホルダについては、半導体技術に関するスタンダード・仕様・ガイドラインについて日欧米を中心として規格化が図られたSEMI規格にも「テープフレーム」として規格化が図られており、このSEMI規格に適合する仕様により製造される。ホルダは、例えばフレーム幅1/3位置において30Nの負荷を作用させてもフレーム体に変形等が生じない機械的剛性を有すること等の仕様が規定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−65129公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ホルダは、上述した所定の規格仕様を満たすために、フレーム体が一般にある程度の厚み寸法、例えば1.5mm厚のステンレス板や鋼板等の金属板を素材として形成される。ホルダは、ウェーハの大口径化に伴ってフレーム体も大型となり、所定の規格仕様を満たす機械的剛性を得るために板厚の大きな金属素材を用いてフレーム体の製作が行われる。ホルダは、このために材料費コストがアップするとともに、重量も大きくなるといった問題があった。
ところで、ホルダは、特許文献1にも記載されるようにそれぞれにウェーハを収納した状態で整列収納構造を有する収納容器内に多数個が収納され、運搬やセット等の作業が行われる。収納容器は、全体として大きな重量となるためにその取り扱いに際して作業者に大きな負担を与えるとともに、各ホルダを取り出してダイシングマシーンにセットする等の作業性を低下させるといった問題があった。
【0005】
特許文献1には、上下一対のリング状金属薄板と、これら金属薄板により挟持されて接着剤により固定された中空金属球、発泡金属、メッシュメタル、或いはエキスパンドメタルのいずれかからなるコア材とから構成されるウェーハ用フレーム体が記載されている。ウェーハ用フレーム体は、金属薄板と軽量コア体の積層体により構成することで、軽量化とともにねじれや曲げ等に対する強度向上が図られる。かかるウェーハ用フレーム体は、大径のウェーハ用として大型に形成されても軽量化を図って所定の規格仕様を満たすことが可能である。
上述した特許文献1に記載のウェーハ用フレーム体においては、上下一対のリング状金属薄板間に全周に亘ってコア体を均一な状態で配置するとともにこれらを均一に接合する作業が極めて面倒で効率が悪いために、軽量化や材料コストを低減しても全体のコスト低減を図ることが困難である。ウェーハ用フレーム体は、例えば使用後に洗浄処理を施した場合にコア体間に洗浄水が浸入して乾きが悪く、また残留した洗浄水により金属薄板に錆が発生しやすく、さらに内部に埃等を溜めて保持したウェーハに付着させる等の問題がある。
したがって、本発明は、ウェーハを確実に保護する充分な機械的剛性を保持しながら軽量化や低コスト化或いは作業性の向上を図り、大口径ウェーハ用としても好適に用いることが可能なウェーハ用ホルダを提供することを目的に提案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成する本発明にかかるウェーハ用ホルダは、例えばステンレス薄板やメッキ処理を施した薄鋼板等の金属薄板を素材として外形抜き加工や絞り加工等のプレス加工を施してリング状の第1フレーム体及び第2フレーム体を製作し、これら第1フレーム体と第2フレーム体を一体化してフレーム体を構成し、このフレーム体にウェーハ保持体を着脱して構成する。ウェーハ用ホルダは、第1フレーム体が、第1主面部の外周縁に沿って全周に亘って立ち上がる一体の環状立壁として形成された第1外周嵌合部及び内周縁に沿って全周に亘り第1外周嵌合部と相対向して立ち上がる一体の環状立壁として形成された第1内周嵌合部とからなる第1嵌合部を有し、全体が中央開口部を有するチャンネル形状のリング状部材として形成される。ウェーハ用ホルダは、第2フレーム体が、第2主面部の外周縁に沿って全周に亘り立ち上がる第1フレーム体の第1外周嵌合部の内径よりもやや小径とされた一体の環状立壁として形成された第2外周嵌合部及び内周縁に沿って全周に亘り第2外周嵌合部と相対向して立ち上がる第1フレーム体の第1内周嵌合部の内径よりもやや大径とされた一体の環状立壁として形成された第2内周嵌合部とからなる第2嵌合部を有し、全体が中央開口部を有するチャンネル形状のリング状部材として形成される。ウェーハ用ホルダは、ウェーハ保持体が、例えばダイシング用ホルダとして用いられる場合に、表面に粘着剤を塗布した樹脂フィルムが用いられ、第1フレーム体の第1主面部又は第2フレーム体の第2主面部に外周部を貼り付けられてフレーム体の中央開口部を閉塞することによりウェーハを保持するウェーハ収納空間部を構成する。
【0007】
ウェーハ用ホルダは、第1フレーム体と第2フレーム体が、第1嵌合部内に第2嵌合部を嵌合して組み合わされる。ウェーハ用ホルダは、第1フレーム体側の第1外周嵌合部の内側面に第2フレーム体側の第2外周嵌合部の外側面を結合するとともに、第1フレーム体側の第1内周嵌合部の内側面に第2フレーム体側の第2内周嵌合部の外側面を結合して一体化する。ウェーハ用ホルダは、第1フレーム体と第2フレーム体を一体化することにより、内部空間部を有する全体がリング状のフレーム体を構成する。ウェーハ用ホルダは、例えば第1フレーム体の底面に中央開口部を閉塞するようにしてウェーハ保持体の外周部位を貼り付けて、第1フレーム体と第2フレーム体を一体化したフレーム体によって外周を取り囲まれたウェーハ収納空間部を構成する。ウェーハ用ホルダは、ウェーハ収納空間部内にウェーハを収納して運搬・搬送等の取り扱いが行われるようにし、またウェーハ収納空間部内に収納した状態で集積回路の導通試験やウェーハを所定の大きさに裁断するダイシング工程が施されるようにする。
ウェーハ用ホルダは、上述したように従来の比較的厚みの大きな金属板、例えば1.5mm厚の金属板と比較して例えば0.2mm厚と低コストで軽量の金属薄板に簡易なプレス加工を施して相対する嵌合部を有する簡易な形状の第1フレーム体と第2フレーム体を形成し、これら第1フレーム体と第2フレーム体を一体化して内部空間部を有するリング状のフレーム体を製作する。ウェーハ用ホルダは、材料や工程のコスト低減が図られて廉価に提供され、軽量化とともに対曲げ特性や対捻れ特性が大きい充分な機械的剛性を有することから大口径のウェーハであっても大量かつ確実に処理することを可能とする。
【0008】
また、ウェーハ用ホルダは、第1フレーム体と第2フレーム体を一体化したフレーム体の内部空間部がほぼ密閉された空間部(略密閉空間部)を構成する。ウェーハ用ホルダは、フレーム体が、使用後に施される洗浄処理等においても内部空間部に浸入した洗浄水等による錆発生を防止して長寿命化や乾燥工程の簡易化が図られ、内部に埃等を溜めて保持したウェーハに付着させる等の不都合が生じないようにする。
ウェーハ用ホルダは、第1フレーム体と第2フレーム体が、相対して結合される第1外周嵌合部の内側面と第2外周嵌合部の外側面及び第1内周嵌合部の内側面と第2内周嵌合部の外側面とを、かしめ結合、溶接又は接着剤による接合のいずれか1の方法により結合して一体化されてフレーム体を構成する。ウェーハ用ホルダは、第1フレーム体と第2フレーム体が強固に一体化されることにより、軽量であっても充分な機械的剛性を有するフレーム体を構成する。
【0009】
ウェーハ用ホルダは、第1フレーム体の第1外周嵌合部と第1内周嵌合部に、それぞれ周方向に所定の間隔を以って厚み方向に貫通する複数個の接着剤充填孔が形成される。各接着剤充填孔は、例えば周方向を長軸とした長孔として形成される。ウェーハ用ホルダにおいては、接着剤充填孔から接着剤を充填して相対する第1外周嵌合部の内側面と第2外周嵌合部の外側面及び第1内周嵌合部の内側面と第2内周嵌合部の外側面とを結合して一体化されたフレーム体を構成する。
ウェーハ用ホルダは、第1フレーム体側の第1外周嵌合部及び第1内周嵌合部に対して第2フレーム体側の第2外周嵌合部及び第2内周嵌合部が第1主面部の厚み寸法分低い高さ寸法を以って形成され、第1嵌合部内に第2嵌合部を嵌合した状態で相対する第1主面部の内面に突き当てられる。ウェーハ用ホルダは、相対する嵌合部の突当て構造により、第1フレーム体と第2フレーム体が位置決めされた状態で高精度に一体化されるとともに大きな機械的剛性を有する軽量化を図ったフレーム体を構成する。
ウェーハ用ホルダは、第1フレーム体と第2フレーム体により構成されるリング状の内部空間部内に、第1主面部と第2主面部に相対する厚み方向の側面をそれぞれ結合されるリング状のコア体を設けてなる。ウェーハ用ホルダは、コア体が、第1嵌合部内に第2嵌合部を嵌合した状態で、金属薄板により形成した第1フレーム体と第2フレーム体の第1主面部と第2主面部の対向間隔を全周に亘って保持することで、高さ調整と変形を抑制して機械的剛性の向上が図られたフレーム体を構成する。
【0010】
ウェーハ用ホルダは、コア体が、それぞれ内部空間部の高さとほぼ等しい厚みを有しかつ外径を異にする複数個のリング体からなり、これらコア体を内部空間部内に同心円状に配置するとともにそれぞれを第1フレーム体の第1主面部と第2フレーム体の第2主面部に結合してなる。ウェーハ用ホルダは、第1フレーム体と第2フレーム体との間を複数個のコア体により保持してフレーム体の機械的剛性のさらなる向上を図ってより薄厚の金属薄板を用いることを可能とし、より軽量化やコスト低減を図ることを可能とする。
ウェーハ用ホルダは、第1フレーム体の第1主面部又は第2フレーム体の第2主面部の内面に、第1外周嵌合部と第1内周嵌合部又は第2外周嵌合部と第2内周嵌合部との間において全周に亘り同心円状に立ち上がる環状立壁からなるコア凸部が一体に形成される。ウェーハ用ホルダは、コア凸部が、第1嵌合部内に第2嵌合部を嵌合した状態においてフレーム体の幅方向(直径方向)の途中位置において相手側の主面部の内面に突き当てられて、金属薄板を用いた第1フレーム体と第2フレーム体の変形を抑制して全周に亘って第1主面部と第2主面部の対向間隔を保持し、機械的剛性の向上が図られたフレーム体を構成する。
ウェーハ用ホルダは、第1フレーム体の第1主面部の内面に、第1外周嵌合部と第1内周嵌合部との間において全周に亘り同心円状に立ち上がる環状立壁からなる第1コア凸部を一体に形成する。ウェーハ用ホルダは、第2フレーム体の第2主面部の内面に、第2外周嵌合部と第2内周嵌合部との間において全周に亘り同心円状に立ち上がりかつ第1コア凸部と半径を異にする環状立壁からなる第2コア凸部を一体に形成する。ウェーハ用ホルダは、第1フレーム体側の第1コア凸部と第2フレーム体側の第2コア凸部が、第1嵌合部内に第2嵌合部を嵌合した状態で、フレーム体の幅方向の領域を2箇所において相手側の主面部の内面に上下から突き当てられる。ウェーハ用ホルダは、第1コア凸部と第2コア凸部により金属薄板を用いた第1フレーム体と第2フレーム体の変形をより確実に抑制して全周に亘って第1主面部と第2主面部の対向間隔を保持してさらに機械的剛性の向上が図られたフレーム体を構成する。
【発明の効果】
【0011】
以上のように構成された本発明にかかるウェーハ用ホルダは、金属薄板を素材として簡易な工程により、それぞれの外周縁と内周縁に沿って一体に立ち上がり形成して相対する立壁状の外周嵌合部と内周嵌合部からなる嵌合部を有する第1フレーム体と第2フレーム体を製作し、これら第1フレーム体と第2フレーム体を一体化して構成した内部空間部を有するリング状のフレーム体を備える。ウェーハ用ホルダによれば、第1フレーム体と第2フレーム体を薄厚の金属板を用いて製作することにより、フレーム体が軽量化とともにコスト低減を図りながらウェーハを確実に保持する大きな機械的剛性を有する。ウェーハ用ホルダによれば、大口径ウェーハ用にも好適に用いられ、作業性の向上を図って半導体の生産効率を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態として示すウェーハ用ホルダの平面図である。
【図2】同ウェーハ用ホルダの要部断面図である。
【図3】同ウェーハ用ホルダの要部分解斜視図である。
【図4】第2の実施の形態として示すウェーハ用ホルダの要部斜視図である。
【図5】第3の実施の形態として示すウェーハ用ホルダの要部斜視図である。
【図6】第4の実施の形態として示すウェーハ用ホルダの要部斜視図である。
【図7】第5の実施の形態として示すウェーハ用ホルダの要部側面図である。
【図8】同ウェーハ用ホルダの要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態として示すウェーハ用ホルダ(以下、ホルダと略称する。)1について図面を参照して詳細に説明する。ホルダ1は、主面上に多数の集積回路形成を行ったウェーハ2を保持し、検査工程やチップ形成のためのダイシング工程等を施すために用いるSEMI規格に適合する仕様を有するダイシング用ホルダである。なお、ホルダ1は、半導体製造工程において、1枚のウェーハ2を保持し、単独或いは収納容器内に収納されて各工程間の搬送或いは保管等を行う際の保持治具としても用いられる。
ホルダ1は、図1に示すようにウェーハ2の外径よりも大径の中央開口部4を有するリング状のフレーム体3と、このフレーム体3に対して中央開口部4を閉塞して着脱されるウェーハ保持体、すなわちダイシングフィルム5とから構成される。ホルダ1は、ダイシングフィルム5により底面側を閉塞された中央開口部4が、フレーム体3により周囲を囲まれたウェーハ収納空間部を構成する。ホルダ1は、ウェーハ2を、中央開口部4内においてダイシングフィルム5上に保持するとともにフレーム体3により外周部を取り囲む。なお、ホルダ1は、ダイシング用ホルダであることから、ウェーハ保持体として詳細を後述するダイシングフィルム5が着脱されるが、他の用途に用いるホルダである場合には所定のウェーハ保持体が着脱される。
【0014】
ホルダ1は、例えば直径300mmのウェーハ2の保持用として用いられ、ウェーハ2を中央開口部4内に収納してダイシングフィルム5上に保持する。ホルダ1は、中央開口部4の内径、すなわちフレーム体3の口径が350mmであり、フレーム体3の外径が400mmに形成される。したがって、ホルダ1は、フレーム体3が、全周に亘って50mm/2、すなわち25mm幅のリング体として形成される。ホルダ1は、ダイシングフィルム5が、例えば厚みが約0.3mm程度のポリプロピレン或いはPETのフィルム材を基材としてその表面に例えばアクリル系粘着接着剤が塗布される。
ダイシング用ホルダであるホルダ1には、SEMI規格に適合する仕様として、図1に示すように収納容器内に位置決め収納するためにフレーム体3の外周部に互いに90°の間隔を以って3箇所に直線部位からなる係合部1A、1B、1Cが形成される。ホルダ1には、中央の係合部1Bと対向する外周部側に位置して中心軸を挟む対称位置に、ダイシングマシーン側の位置決めピンが相対係合する一対の位置決め用凹部(ノッチ)1D、1Eが形成されている。
ホルダ1は、フレーム体3が、共同して中央開口部4を構成する第1中央開口部6A、第2中央開口部7Aを有する詳細を後述するリング状の第1フレーム体(下フレーム体)6と第2フレーム体(上フレーム体)7を一体に組み合わせて構成される。フレーム体3は、第1フレーム体6と第2フレーム体7が、それぞれ後述するようにチャンネル形状のリング状部材からなる。フレーム体3は、第1フレーム体6が第2フレーム体7よりもやや大径に形成され、相対する開口部を突き合わせるように組み合わされることにより密閉された環状空間部からなる内部空間部8を構成して一体化される。フレーム体3は、底面部にダイシングフィルム5を貼り付けるとともに内部空間部8内に補強用かつ高さ調整用のリング状コア体18を結合してホルダ1を構成する。
【0015】
フレーム体3は、後述するように第1フレーム体6と第2フレーム体7が、例えばステンレス薄板や無電解ニッケルメッキ処理等を施した薄鋼板等の約0.2mm厚の金属薄板を素材として形成される。フレーム体3は、かかる金属薄板を素材として内部空間部8を有する中空部材として構成されることにより、重さが約120gである。したがって、フレーム体3は、厚みが1.5mmの金属板を素材として形成した重さが約300gの従来品と比較して大幅な軽量化が図られる。フレーム体3は、素材コストが低減されるとともにプレス金型或いは工程も簡易化されて製作されることにより、コスト低減が図られる。フレーム体3は、後述する構造から従来品と同等の機械的剛性を有する。
フレーム体3は、第1フレーム体6と第2フレーム体7が、それぞれ同一素材の金属薄板に対して、リング状の中間体を形成する外形抜きプレス加工と、外内周縁に沿って立壁部を一体に立ち上がり形成する絞り加工を施して形成される。なお、フレーム体3は、第1フレーム体6と第2フレーム体7の製作工程が、かかる工程に限定されないことは勿論である。
【0016】
すなわち、第1フレーム体6は、素材に対してフレーム体3の幅寸法よりもやや大きな幅寸法を有するリング状の中間体を形成する外形抜き加工や、この中間体の外周縁及び内周縁に沿って全周に亘り立壁部位を一体に立ち上がり形成する絞り加工を施してチャンネル形状のリング状部材として形成される。第1フレーム体6は、図2及び図3に示すようにリング状の第1主面部9の外周縁に沿って第1外周嵌合部10を一体に立設するとともに、内周縁に沿って第1内周嵌合部11を一体に立設する。第1フレーム体6は、これら同心円状の第1外周嵌合部10と第1内周嵌合部11が第1嵌合部12を構成する。
【0017】
第1フレーム体6は、第1外周嵌合部10が、第1主面部9の外周縁に沿って全周に亘って立ち上がる一体の環状立壁からなり、例えば立ち上がり寸法が約1.5mmに形成される。なお、第1フレーム体6は、第1外周嵌合部10が、上述した係合部1A、1B、1Cの対応部位を直線状の立壁として形成されるとともに位置決め用凹部1D、1Eの対応部位を内周側に凹む立壁として形成される。
第1フレーム体6は、第1内周嵌合部11が、第1主面部9の内周縁に沿って全周に亘って立ち上がり第1外周嵌合部9と全周に亘って対向することにより同心円をなす一体の環状立壁からなる。第1フレーム体6は、第1内周嵌合部11も、第1外周嵌合部10と同等の立ち上がり寸法を有し、例えば約1.5mmに形成される。第1フレーム体6は、このように第1主面部9の外内周縁に沿って相対する第1外周嵌合部10と第1内周嵌合部11を一体に立ち上がり形成することにより、上述したように断面が上向きコ字状を呈するチャンネル形状のリング状部材として形成される。
【0018】
第2フレーム体7は、素材に対して第1フレーム体6の中間体よりも板厚分小さな外形寸法を有するリング状の中間体を形成する外形抜き加工を施し、この中間体の外周縁及び内周縁に沿って立壁部を一体に立ち上がり形成する絞り加工を施してチャンネル形状のリング状部材として形成される。第2フレーム体7も、図2及び図3に示すように第2主面部13の外周縁に沿った第2外周嵌合部14と内周縁に沿った第2内周嵌合部15を一体に形成してなる。第2フレーム体7は、これら同心円状の第2外周嵌合部14と第2内周嵌合部15により第2嵌合部16を構成する。
第2フレーム体7も、第2外周嵌合部14が、第2主面部13の外周縁に沿って全周に亘り立ち上がる一体の環状立壁からなる。第2フレーム体7は、第2外周嵌合部14が、外周面の外径を第1フレーム体6側の第1外周嵌合部10の内周面の外径とほぼ等しくなるように全体がやや小径に形成される。第2フレーム体7は、後述するように第1フレーム体6に対して第2外周嵌合部14を第1主面部9の内面に突き合わせて組み付けられて密閉された内部空間部8を構成することから、この第2外周嵌合部14が立ち上がり寸法を例えば約1.3mmに形成される。なお、第2フレーム体7も、第1フレーム体6側と同様に係合部1A、1B、1Cの対応部位を直線状の立壁として形成するとともに位置決め用凹部1D、1Eの対応部位を内周側に凹む立壁として形成する。
【0019】
第2フレーム体7も、第2内周嵌合部15が、第2主面部13の内周縁に沿って全周に亘って立ち上がり、第2外周嵌合部14と全周に亘って対向することにより同心円をなす一体の環状立壁として形成される。第2フレーム体7は、第2内周嵌合部15を、外周面の外径を第1フレーム体6側の第1内周嵌合部11の内周面の外径とほぼ等しくなるようにして形成される。第2フレーム体7も、第2内周嵌合部15が立ち上がり寸法を例えば約1.3mmに形成される。第2フレーム体7も、このように第2主面部13の外内周縁に沿って相対する第2外周嵌合部14と第2内周嵌合部15を一体に立ち上がり形成することにより、上述したように断面が下向きコ字状を呈するチャンネル形状のリング状部材として形成される。
【0020】
フレーム体3は、上述した第1フレーム体6に対して第2フレーム体7が、図3矢印で示すように第1嵌合部12に第2嵌合部16を全周に亘って嵌合することにより組み合わされる。フレーム体3は、第1フレーム体6に対して第2フレーム体7が、図2に示すように第1フレーム体6側の第1外周嵌合部10の内側面10Aに沿って第2フレーム体7側の第2外周嵌合部14の外側面14Aが嵌合される。フレーム体3は、第1フレーム体6側の第1内周嵌合部11の内側面11Aに沿って第2フレーム体7側の第2内周嵌合部15の外側面15Aが嵌合される。フレーム体3は、これにより第1フレーム体6の第1中央開口部6Aと第2フレーム体7の第2中央開口部7Aが共同して中央開口部4を構成し、全体がリング状となる。
フレーム体3は、第1フレーム体6と第2フレーム体7が第1嵌合部12と第2嵌合部16を組み合わせた状態で、図2に示すように第2フレーム体7側の第2外周嵌合部14と第2内周嵌合部15がそれぞれの先端部を第1フレーム体6側の第1主面部9の内面9Aに突き合わされる。フレーム体3は、第1フレーム体6と第2フレーム体7が、第1フレーム体6の第1外周嵌合部10及び第1内周嵌合部11の先端部と、第2フレーム体7側の第2主面部13がほぼ同一面を構成して組み合わされる。
【0021】
フレーム体3は、第1フレーム体6と第2フレーム体7が、図2に示すように外周部において嵌合された第1外周嵌合部10の内側面10Aと第2外周嵌合部14の外側面14Aとの間に充填した接着剤17により結合される。フレーム体3は、第1フレーム体6と第2フレーム体7が、内周部において嵌合された第1内周嵌合部11の内側面11Aと第2内周嵌合部15の外側面15Aとの間に充填した接着剤17により結合される。フレーム体3は、第1フレーム体6と第2フレーム体7が、突き合わされた第1主面部9の内面9Aと第2外周嵌合部14及び第2内周嵌合部15の先端部との間に充填した接着剤17により結合される。
フレーム体3は、上述したように第1フレーム体6と第2フレーム体7が、内部空間部8を構成して一体化される。フレーム体3は、第1フレーム体6と第2フレーム体7の上述した組み合わせ構造により、第1フレーム体6側の第1外周嵌合部10及び第1内周嵌合部11の高さ寸法1.5mmが全体の厚み寸法となる。フレーム体3は、図2に示すように結合された第1フレーム体6側の第1外周嵌合部10と第2フレーム体7側の第2外周嵌合部14が共同して、厚みが0.4mmの外周壁部を構成する。フレーム体3は、結合された第1フレーム体6側の第1内周嵌合部11と第2フレーム体7側の第2内周嵌合部15が共同して、厚みが0.4mmの内周壁部を構成する。
【0022】
フレーム体3は、第1フレーム体6側の第1主面部9を底面部とし、第2フレーム体7側の第2主面部13を天井部として、内部に内部空間部8を構成してなる。フレーム体3は、全体の幅が25mm、高さが1.5mmであり、平坦性を有して変形や歪み等の発生を防止した機械的剛性の大きなフレーム体を構成する。フレーム体3は、中空構造であり厚み寸法の小さな金属板を素材として形成することにより、軽量化が図られる。
フレーム体3には、図1乃至図3に示すように、内部空間部8内に第1フレーム体6の第1主面部9と第2フレーム体7の第2主面部13の対向間隔を保持するリング状のコア体18が設けられる。フレーム体3は、上述した第1フレーム体6と第2フレーム体7の組み合わせ構造により充分な機械的剛性を有しているが、コア体18を設けることにより補強されてさらに機械的剛性の向上が図られる。フレーム体3は、例えば30Nの偏倚荷重を1分間に亘って負荷しても変形や歪み発生が生じることはなく、SEMI規格に適合する仕様を有してウェーハ2を確実に保持する軽量のホルダ1を構成する。
【0023】
コア体18は、素材として例えば亜鉛メッキ処理を施した薄厚鋼板が用いられ、この素材に外形抜きプレス加工を施して、横長矩形の断面形状を有して第2フレーム体7の第2外周嵌合部14よりも小径でありかつ第2内周嵌合部15よりも大径のリング体として形成される。コア体18は、後述するように内部空間部8内において第1フレーム体6と第2フレーム体7とに結合されるが、内部空間部8のほぼ中央部に配置される外径であることが好ましい。
コア体18は、厚み寸法が内部空間部8の高さ寸法(1.1mm)よりもやや薄厚の1mmであり、幅寸法が約3mmに形成される。コア体18は、かかる寸法値に限定されないことは勿論であるが、大きな幅寸法とした場合にフレーム体3の重量を大きくし、また小さな幅寸法とした場合にフレーム体3の補強作用が低下する。コア体18は、上述した厚み寸法により内部空間部8を構成する第1フレーム体6の第1主面部9と第2フレーム体7の第2主面部13との間において約0.1mmの間隙が生じるが、図2に示すようにこの間隙に接着剤17が充填されるようにする。
【0024】
コア体18は、図3に示すように例えば第1フレーム体6に対して第1主面部9の内面9A上に接合される。コア体18は、第1外周嵌合部10と第1内周嵌合部11と同心円を構成して第1フレーム体6の第1主面部9の内面9Aに底面を結合される。コア体18は、第1フレーム体6に対して第2フレーム体7が組み合わされることにより、第2外周嵌合部14と第2内周嵌合部15と同心円を構成して第2フレーム体7の第2主面部13の内面13Aに上面を結合される。コア体18は、これにより第1フレーム体6の第1主面部9と第2フレーム体7の第2主面部13の対向間隔を保持する。
なお、コア体18は、底面を第1フレーム体6の第1主面部9に結合するとともに上面を第2フレーム体7の第2主面部13に結合するようにしたが、第1フレーム体6と第2フレーム体7がしっかりと固定されることから、例えば底面のみを第1フレーム体6側と固定し第2フレーム体7の第2主面部13を支えるようにしてもよい。また、コア体18は、底面側を第1主面部9に対して溶接によって結合し、上面側を接着剤17により第2主面部13と結合するようにしてもよい。
【0025】
フレーム体3は、上述したように第1フレーム体6と第2フレーム体7及びコア体18の相対する各部を接着剤17により接合して一体化される。接着剤17には、例えばアクリル系接着剤やエポキシ系接着剤等の金属用接着剤が用いられ、また室温硬化型或いは加熱硬化型接着剤が用いられる。フレーム体3は、上述したように略密閉空間部を構成する内部空間部8内において各部を接合することから、接着剤17が流れ出してウェーハ2を汚損させる等の不都合が生じることは無い。
フレーム体3は、上述した第1フレーム体6と第2フレーム体7とコア体18の結合を接着剤17により接合して一体化する構造に限定されないことは勿論である。フレーム体3は、第1嵌合部12と第2嵌合部16をきつい嵌合、いわゆる「かしめ結合」構造とすることによって第1フレーム体6と第2フレーム体7を一体化するようにしてもよい。また、フレーム体3は、例えば第1外周嵌合部10及び第1内周嵌合部11の先端部と相対する第2外周嵌合部14及び第2内周嵌合部15の基端部との間を全周に亘って溶接することにより、第1フレーム体6と第2フレーム体7を一体化するようにしてもよい。
【0026】
以上のように構成されたフレーム体3には、図2に示すように第1フレーム体6の第1主面部9の底面9Bにダイシングフィルム5が貼り付けられホルダ1を構成する。ダイシングフィルム5は、フレーム体3の外径よりもやや小径であり、接着剤として粘着性接着剤を用いることにより外周部位を第1主面部9の底面9Bに対して着脱される。ダイシングフィルム5は、第1フレーム体6に貼り付けることにより、図1に示すように中央開口部4の底面部を閉塞してフレーム体3により周囲を囲まれたウェーハ収納空間部を構成する。ダイシングフィルム5は、詳細を省略するがウェーハ収納空間部の構成領域において上面にウェーハ2を保持する粘着剤が塗布される。
以上のように構成されたホルダ1は、フレーム体3が、上述したようにそれぞれ従来品よりも薄厚であり低コスト化と加工性の向上が図られる金属薄板を素材として簡易なプレス加工を施して第1フレーム体6と第2フレーム体7を形成する。ホルダ1は、フレーム体3が、第1フレーム体6と第2フレーム体7を簡易な工程により一体化して内部を中空とする内部空間部8を有して構成することから軽量化が図られる。ホルダ1は、フレーム体3が、第1フレーム体6と第2フレーム体7の嵌合構造により大きな機械的剛性を以って構成される。ホルダ1は、フレーム体3の内部空間部8内に補強部材のコア体18を設けたことによってさらに大きな機械的剛性を有する。
【0027】
ホルダ1は、フレーム体3の中央開口部4により構成されるウェーハ収納空間部内にウェーハ2を収納してダイシングフィルム5上に保持する。ホルダ1は、ウェーハ2を収納保持した状態で運搬・搬送等の取り扱いを行い、ウェーハ2を所定の大きさに裁断するダイシング工程が施されるようにする。ホルダ1は、大きな機械的剛性を有するフレーム体3によりウェーハ2の周囲を取り囲んで確実に保護する。ホルダ1は、上述したように材料や工程のコスト低減が図られて廉価であり、大幅な軽量化が図られるも対曲げ特性や対捻れ特性が大きい充分な機械的剛性を有するフレーム体3を備えることにより、大口径のウェーハであっても大量かつ確実に処理することを可能とする。
上述したホルダ1においては、フレーム体3に薄厚鋼板を素材にして断面横長矩形のリング状に形成したコア体18を設けたが、かかるコア体18に限定されないことは勿論である。図4に第2の実施の形態として示したホルダ20も、上述した第1フレーム体6と第2フレーム体7を組み合わせてフレーム体3を構成し、このフレーム体3にダイシングフィルム5を貼り付けてなる。ホルダ20は、フレーム体3の内部空間部8内に2本の第1コア線材21と第2コア線材22からなるコア体を設けてなる。
【0028】
第1コア線材21及び第2コア線材22は、メッキ処理を施した直径1mmの鋼線を素材とし、それぞれ所定長に切断した後に両端部を突き合わせて溶接することによりリング状に形成される。第1コア線材21は、第2フレーム体7の第2外周嵌合部14よりもやや小径であり、内部空間部8の中心円径よりもやや大径とされたリング状線材からなる。第2コア線材22は、第2フレーム体7の第2内周嵌合部15よりもやや大径であり、内部空間部8の中心円径よりもやや小径とされたリング状線材からなる。
ホルダ20は、上述したホルダ1と同様にして第1フレーム体6と第2フレーム体7を組み合わせてフレーム体3を構成するが、第1コア線材21と第2コア線材22がこのフレーム体3の内部空間部8に同心円状に配置される。第1コア線材21と第2コア線材22は、予め第1フレーム体6の第1主面部9の内面9A上に、例えば接着剤17或いは溶接等により固定される。
【0029】
第1コア線材21は、第1外周嵌合部10と第1内周嵌合部11と同心円を構成して第1フレーム体6の第1主面部9の内面9Aに下側外周部を結合される。第2コア線材22は、第1コア線材21よりも内周側に位置し、この第1コア線材21と第1内周嵌合部11と同心円を構成して第1フレーム体6の第1主面部9の内面9Aに下側外周部を結合される。第1コア線材21と第2コア線材22は、これにより同心円状に配置されて第1フレーム体6の第1主面部9に設けられる。
第1コア線材21及び第2コア線材22は、第1フレーム体6と第2フレーム体7を組み合わせた状態で、それぞれの上側外周部が第2フレーム体7側の第2主面部13の内面13Aに突き当てられる。第1コア線材21及び第2コア線材22は、上側外周部が内面13Aに対して接着剤17により接合されることで第2フレーム体7の第2主面部13に結合される。
【0030】
ホルダ20は、上述したように鋼線により形成した第1コア線材21と第2コア線材22を用いることにより、上述したホルダ1よりもさらにコスト低減が図られる。ホルダ20は、第1コア線材21と第2コア線材22により、内部空間部8の幅方向の2箇所で第1フレーム体6と第2フレーム体7との組み合わせ状態を補強したフレーム体3を構成する。フレーム体3は、軽量特性を保持して、より機械的剛性の向上が図られる。なお、フレーム体3は、鋼線により形成した1本のコア線材により補強を行う構造であってもよく、さらに大型のフレーム体であれば数本のコア線材を用いるようにしてもよい。
フレーム体3は、第1コア線材21と第2コア線材22を予め第1フレーム体6側に設けて第1フレーム体6と第2フレーム体7との組み合わせを行うようにしたが、かかる工程順によらないことは勿論である。フレーム体3は、第1コア線材21と第2コア線材22を予め第2フレーム体7側に設けて、第1フレーム体6と第2フレーム体7との組み合わせを行うようにしてもよい。また、フレーム体3は、第1コア線材21を第1フレーム体6側に設けるとともに第2コア線材22を第2フレーム体7に設けてもよい。フレーム体3は、第1フレーム体6と第2フレーム体7が第1コア線材21と第2コア線材22によりそれぞれの主面部を補強され、変形等を生じることなく組み合わせが行われる。
上述したホルダ1及びホルダ20においては、第1フレーム体6と第2フレーム体7を組み合わせて構成したフレーム体3の内部空間部8内に別部材であるコア体18或いは第1コア線材21や第2コア線材22を設けて補強構造を構成したが、かかる補強構造に限定されるものでは無いことは勿論である。図5に第3の実施の形態として示したホルダ30は、第1フレーム体32と第2フレーム体33を組み合わせて内部空間部8を有するフレーム体31を構成する基本的な構成をホルダ1及びホルダ20と同様とする。
【0031】
ホルダ30は、第2フレーム体33側に上述したコア体18や第1コア線材21及び第2コア線材22と同等の機能を奏するコア体構造が一体に形成された構成に特徴がある。したがって、以下のホルダ30の説明については、第2フレーム体33の特徴的な構成についてのみ説明することとし、上述したホルダ1及びホルダ20と対応する部位を有する第1フレーム体32を含むその他の部位については同一符号を付すことにより説明を省略する。
第2フレーム体33も、中間材に対して絞り加工を施して第2主面部13の外内周縁部に沿って環状立壁からなる第2外周嵌合部14と第2内周嵌合部15を一体に立ち上がり形成するが、これら第2外周嵌合部14と第2内周嵌合部15間において第2主面部13にコア凸部34が一体に形成される。第2フレーム体33は、素材から形成される中間体が、上述したホルダ1の第2フレーム体7に用いる中間体よりも約2mm程度大きな幅寸法を有している。
第2フレーム体33は、第2外周嵌合部14と第2内周嵌合部15を形成する絞り加工と同時或いはこの絞り加工に先行して、第2主面部13の幅方向のほぼ中央部に位置して環状の立壁部からなるコア凸部34を一体に形成する。コア凸部34は、第2主面部13の一部を全周に亘って内面側に突出するように絞り出すことにより、第2外周嵌合部14と第2内周嵌合部15との間において約1mmの高さを以って同心円状に一体に立ち上がり形成される。なお、第2フレーム体33は、第2主面部13に折り返し構造によりリブ作用を奏するコア凸部34を形成したことにより、機械的剛性の向上も図られる。
【0032】
ホルダ30は、第1フレーム体32に対してコア凸部34を一体に形成した第2フレーム体33を組み合わせてフレーム体31を構成する。フレーム体31は、第1フレーム体32と第2フレーム体33が、上述したように第1嵌合部12と第2嵌合部16の嵌合構造により、内部空間部8を構成して一体化される。フレーム体31は、内部空間部8の幅方向の中央部位において、コア凸部34の先端部が第1フレーム体32側の第1主面部9の内面9Aに突き当てられる。フレーム体31は、コア凸部34の先端部が接着剤17により突き当てられた内面9Aに接合される。したがって、フレーム体31は、内部空間部8の幅方向の中央部位においてコア凸部34により第1フレーム体32の第1主面部9と第2フレーム体33の第2主面部13の対向間隔が保持され、またコア凸部34により機械的剛性の向上も図られる。
なお、ホルダ30は、第2フレーム体33に1個のコア凸部34を一体に形成したが、幅方向に並んで複数のコア凸部を互いに同心円状に配列して一体に形成するようにしてもよい。また、ホルダ30は、第2フレーム体33に、上述した第1フレーム体32側の内面9Aに突き当てられるコア凸部34と、このコア凸部34と同心円状の折曲リブを一体に形成して第2フレーム体33、換言すれば全体の機械的剛性の向上を図るようにしてもよい。さらに、ホルダ30は、第2フレーム体33側にコア凸部34を一体に形成したが、第1フレーム体32側に同等のコア凸部34を一体に形成するようにしてもよい。
【0033】
図6に第4の実施の形態として示したホルダ40も、第1フレーム体42と第2フレーム体43を組み合わせて内部空間部8を有するフレーム体41を構成した基本的な構成を上述した各実施の形態と同様とする。フレーム体41は、第1フレーム体42に第1コア凸部44を一体に形成するとともに、第2フレーム体43に第2コア凸部45を一体に形成した構成に特徴を有している。以下のホルダ40の説明においても、第1フレーム体42と第1フレーム体43の特徴的な構成についてのみ説明することとし、上述したホルダ1及びホルダ20と対応するその他の部位については同一符号を付すことにより説明を省略する。
第1フレーム体42は、第1外周嵌合部10と第1内周嵌合部11を形成する絞り加工と同時或いはこの絞り加工に先行して、第1主面部9のやや第1外周嵌合部10側に位置して環状の立壁部からなる第1コア凸部44を一体に形成する。第1コア凸部44は、第1主面部9の一部を全周に亘って内面側に突出するように絞り出すことにより、第1外周嵌合部10と第1内周嵌合部11との間において約1mmの高さを以って同心円状に一体に立ち上がり形成される。なお、第1フレーム体42は、第1主面部9に折り返し構造によりリブ作用を奏する第1コア凸部44を形成したことにより、機械的剛性の向上も図られる。
【0034】
第2フレーム体43にも、第2外周嵌合部14と第2内周嵌合部15を形成する絞り加工と同時或いはこの絞り加工に先行して、第2主面部9のやや第2内周嵌合部15側に位置して環状の立壁部からなる第2コア凸部45を一体に形成する。第2コア凸部45も、第2主面部13の一部を全周に亘って内面側に突出するように絞り出すことにより、第2外周嵌合部14と第2内周嵌合部15との間において約1mmの高さを以って同心円状に一体に立ち上がり形成される。第2コア凸部45は、第1フレーム体42側の第1コア凸部44に対して、やや小径の環状立壁部からなる。第2フレーム体43も、第2主面部13に折り返し構造によりリブ作用を奏する第2コア凸部45を形成したことにより、機械的剛性の向上も図られる。
ホルダ40は、第1コア凸部44を一体に形成した第1フレーム体42に対して第2コア凸部45を一体に形成した第2フレーム体43が組み合わされてフレーム体41を構成する。フレーム体41は、第1フレーム体42と第2フレーム体43が、上述したように第1嵌合部12と第2嵌合部16の嵌合構造により、内部空間部8を構成して一体化される。フレーム体41は、内部空間部8内において第1コア凸部44が外周側に位置するとともに第2コア凸部45が内周側に位置して、同心円状に設けられる。
【0035】
フレーム体41は、内部空間部8内において、やや外周壁側に位置して第1フレーム体42側の第1コア凸部44がその先端部を第2フレーム体43側の第2主面部13の内面13Aに突き当てられるとともに接着剤17により接合される。フレーム体41は、やや内周側に位置して第2フレーム体43側の第2コア凸部45がその先端部を第1フレーム体42側の第1主面部9の内面9Aに突き当てられるとともに接着剤17により接合される。フレーム体41は、内部空間部8内に設けた第1コア凸部44と第2コア凸部45により、第1フレーム体42の第1主面部9と第2フレーム体43の内面13Aの対向間隔が保持され、また機械的剛性も大幅に向上される。
なお、フレーム体41は、第1フレーム体42側にやや外周壁側に位置する第1コア凸部44を形成するとともに第2フレーム体43側にやや内周側に位置する第2コア凸部45を一体に形成したが、かかる構成に限定されないことは勿論である。フレーム体41は、第1フレーム体42と第2フレーム体43に、逆位置となる第1コア凸部44と第2コア凸部45を一体に形成するようにしてもよい。
上述したようにフレーム体3においては、第1フレーム体6と第2フレーム体7を相対して形成した第1嵌合部12と第2嵌合部16を嵌合して一体化し、内部に略密閉空間部からなる内部空間部8を構成してなる。フレーム体3は、第1嵌合部12と第2嵌合部16を構成して嵌合される部位が内部空間部8内において接着剤17により接合される。したがって、フレーム体3においては、接合部位に予め接着剤17が塗布されて各部の組み合わせが行われる。
【0036】
図7及び図8に第5の実施の形態として示したフレーム体50は、後工程において接着剤17の充填を可能として接着工程の簡易化を図った構造に特徴を有している。フレーム体50についても、特徴とする接着剤充填構造についてのみ説明することとし、上述したホルダ1及びホルダ20と対応するその他の部位については同一符号を付すことにより説明を省略する。なお、図7及び図8には、第1外周嵌合部52側のみを図示している。フレーム体50は、第1内周嵌合部11側にも同等の接着剤充填孔が形成されており、以下第1外周嵌合部52側の構成について代表して説明する。
フレーム体50は、第1フレーム体51の第1外周嵌合部52と第1内周嵌合部11に複数個の接着剤充填孔53が形成される。第1フレーム体51には、第1外周嵌合部52に周方向に所定の間隔を以って、図8に示すように厚み方向に貫通する複数個の接着剤充填孔53が形成される。接着剤充填孔53は、図7に示すように周方向の長さ寸法lが高さ方向の寸法hよりも大きい楕円形状の貫通孔として形成される。なお、接着剤充填孔53については、素材に外形抜きプレス加工を施す際に、同時に打ち抜いて形成することが可能である。
【0037】
フレーム体50は、第1フレーム体51と第2フレーム体7を組み合わせた状態で、図8に示すように接着剤充填孔53を介して第2フレーム体7の第2外周嵌合部14の外側面14Aを外方に臨ませる。フレーム体50は、詳細を省略するが例えば注射器型充填器を用いて、接着剤充填孔53内に接着剤17を充填する。接着剤17は、相対嵌合された第1フレーム体51側の第1外周嵌合部52の内側面52Aと第2フレーム体7の第2外周嵌合部14の外側面14Aとの間に流れ込んで硬化することにより、第1外周嵌合部52と第2外周嵌合部14を一体化する。
フレーム体50は、上述したように第1フレーム体51に周方向を長軸とした長孔からなる接着剤充填孔53を形成したことにより、接着剤17が周方向の広い範囲に亘って流れ出るようになり第1フレーム体51と第2フレーム体7を強固に一体化する。フレーム体50は、接着剤充填孔53が、充填した接着剤17が内部において硬化することにより閉塞されることから、内部空間部8の密閉状態が保持される。なお、フレーム体50は、接着剤充填孔53を第1外周嵌合部52に対して高さ位置を異にして形成するようにしてもよい。フレーム体50は、接着剤充填孔53を第1外周嵌合部52に対して第1主面部9寄りに形成することにより、充填した接着剤17が第1主面部9の内面9Aとこれに突き当てられる第2フレーム体7側の第2外周嵌合部14の先端部との間にも流れ込んで硬化してこれらを一体化する。
なお、本発明は、図面を参照して説明した上述した各実施の形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲及びその要旨を逸脱することなく、様々な変更、置換或いは同等に構成されることは当業者にとって明らかである。
【符号の説明】
【0038】
1 ホルダ、2 ウェーハ、3 フレーム体、4 中央開口部(ウェーハ収納空間部)、5 ダイシングフィルム(ウェーハ保持体)、6 第1フレーム体、7 第2フレーム体、8 内部空間部、9 第1主面部、10 第1外周嵌合部、11 第1内周嵌合部、12 第1嵌合部、13 第2主面部、14 第2外周嵌合部、15 第2内周嵌合部、16 第2嵌合部、17 接着剤、18 コア体、20 ホルダ、21 第1コア線材、22 第2コア線材、30 ホルダ、31 フレーム体、32 第1フレーム体、33 第2フレーム体、34 コア凸部、40 ホルダ、41 フレーム体、42 第1フレーム体、43 第2フレーム体、44 第1コア凸部、45 第2コア凸部、50 フレーム体、51 第1フレーム体、52 第1外周嵌合部、53 接着剤充填孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面部の外周縁に沿って全周に亘り立ち上がる一体の環状立壁として形成された第1外周嵌合部と、内周縁に沿って全周に亘り前記第1外周嵌合部と相対向して立ち上がる一体の環状立壁として形成された第1内周嵌合部とからなる第1嵌合部を有し、全体が中央開口部を有するリング状のチャンネル体として形成された第1フレーム体と、
第2主面部の外周縁に沿って全周に亘り立ち上がり前記第1外周嵌合部の内径よりもやや小径とされた一体の環状立壁として形成された第2外周嵌合部と、内周縁に沿って全周に亘り前記第2外周嵌合部と相対向して立ち上がり前記第1内周嵌合部の内径よりもやや大径とされた一体の環状立壁として形成された第2内周嵌合部とからなる第2嵌合部を有し、全体が中央開口部を有するリング状のチャンネル体として形成された第2フレーム体と、
前記第1フレーム体の前記第1主面部又は前記第2フレーム体の前記第2主面部に貼り付けられて前記開口部を閉塞してウェーハ収納空間部を構成するウェーハ保持体とから構成され、
前記第1フレーム体と前記第2フレーム体が、前記第1嵌合部内に前記第2嵌合部を嵌合し、前記第1外周嵌合部の内側面に前記第2外周嵌合部の外側面を結合するとともに前記第1内周嵌合部の内側面に前記第2内周嵌合部の外側面を結合して一体化されて、内部空間部を有するリング状のフレーム体を構成するウェーハ用ホルダ。
【請求項2】
前記第1フレーム体と前記第2フレーム体を一体化してなるフレーム体が、前記内部空間部を略密閉空間部として構成する請求項1に記載のウェーハ用ホルダ。
【請求項3】
前記第1フレーム体と前記第2フレーム体が、相対して結合される前記第1外周嵌合部の内側面と前記第2外周嵌合部の外側面及び前記第1内周嵌合部の内側面と前記第2内周嵌合部の外側面とを、かしめ結合、溶接又は接着剤による接合のいずれか1の結合方法により結合して一体化されてフレーム体を構成する請求項1又は2に記載のウェーハ用ホルダ。
【請求項4】
前記第1フレーム体には、前記第1外周嵌合部と前記第1内周嵌合部に、それぞれ周方向に所定の間隔を以って厚み方向に貫通する複数個の接着剤充填孔が形成され、
前記接着剤充填孔から接着剤を充填して相対する前記第1外周嵌合部の内側面と前記第2外周嵌合部の外側面及び前記第1内周嵌合部の内側面と前記第2内周嵌合部の外側面とを結合して一体化されてフレーム体を構成する請求項1又は2に記載のウェーハ用ホルダ。
【請求項5】
前記第1フレーム体と前記第2フレーム体により構成される前記内部空間部内に、前記第1主面部と前記第2主面部に対して相対する厚み方向の側面をそれぞれ結合されることにより前記第1主面部と前記第2主面部の対向間隔を保持するリング状のコア体を設けてなる請求項1乃至4のいずれか1項に記載のウェーハ用ホルダ。
【請求項6】
前記コア体が、それぞれ前記内部空間部の高さとほぼ等しい厚みを有しかつ外径を異にする複数個のリング体からなり、これらコア体を前記内部空間部内に同心円状に配置するとともにそれぞれを前記第1主面部と前記第2主面部に結合してなる請求項5に記載のウェーハ用ホルダ。
【請求項7】
前記第1フレーム体又は前記第2フレーム体には、前記第1主面部又は前記第2主面部の内面に、前記第1外周嵌合部と前記第1内周嵌合部又は前記第2外周嵌合部と前記第2内周嵌合部との間において全周に亘って立ち上がる同心円状の環状立壁からなるコア凸部が一体に形成され、
前記第1嵌合部内に前記第2嵌合部を嵌合した状態で、前記コア凸部が相手側の主面部の内面に突き当てられて前記第1主面部と前記第2主面部の対向間隔を保持する請求項1乃至4のいずれか1項に記載のウェーハ用ホルダ。
【請求項8】
前記第1フレーム体には、前記第1主面部の内面に、前記第1外周嵌合部と前記第1内周嵌合部との間において全周に亘って立ち上がる同心円状の環状立壁からなる第1コア凸部が一体に形成され、
前記第2フレーム体には、前記第2主面部の内面に、前記第2外周嵌合部と前記第2内周嵌合部との間において全周に亘って立ち上がることにより同心円状をなしかつ前記第1コア凸部と半径を異にする環状立壁からなる第2コア凸部が一体に形成され、
前記第1コア凸部と前記第2コア凸部が、前記第1嵌合部内に前記第2嵌合部を嵌合した状態で、半径方向の異なる位置で相手側の主面部の内面に突き当てられて前記第1主面部と前記第2主面部の対向間隔を保持する請求項1乃至4のいずれか1項に記載のウェーハ用ホルダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−29217(P2011−29217A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170120(P2009−170120)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(396023719)株式会社大川金型設計事務所 (4)
【Fターム(参考)】