説明

ウエハ貼着用貼着シートおよびウエハの加工方法

【課題】安価に製造可能なウエハ貼着用粘着シートを用い、かつダイシング時に発生するチッピングの発生を低減できるウエハ貼着用粘着シートを提供する。
【解決手段】基材フィルムと該基材フィルム上に形成された粘着剤層とからなる粘着シートであって、該粘着シートを350μm厚のベアウエハの一方の面に10枚重ねて貼合して130mm×20mmに加工した条件における、中央加振法により測定した損失係数(23℃、周波数600〜700Hz)が0.07以上であるウエハ貼着用粘着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウエハ貼着用粘着シートおよびウエハの加工方法に関し、さらに詳しくは、半導体ウエハを小片に切断分離する際に発生するチップの欠けもしくはヒビ(以後、チッピングと記載)を低減することができるウエハ貼着用粘着シートおよびウエハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSIなどの半導体装置の製造工程においては、シリコン、ガリウムヒ素などの半導体ウエハを小片に切断分離(ダイシング)する工程の後、ピックアップ工程に供される(例えば、特許文献1参照。)。一般的な半導体ウエハのダイシング工程及びピックアップ工程について図3〜6に示した断面図を参照しながら説明する。
【0003】
まず、両端がホルダー11に固定されている、基材フィルム上に粘着剤を塗布した粘着シート12に、半導体ウエハ13を貼着し(図3)、ダイシングによりウエハを素子小片(チップ)14に分割する(図4)。次いで、チップ14をピックアップするために、実線矢印方向15にエキスパンダー16により突き上げ、点線矢印方向17にエキスパンドしてチップ14間の間隔を拡張し(図5)、全チップ14のピックアップもしくは一部チップ14のピックアップを行う(図6)。なお、図3〜6において、同一の符号は同じものを意味し、一部の図面について、その説明を省略している。
【0004】
従来、半導体ウエハのダイシング工程からピックアップ工程に至る工程では、基材フィルムに粘着剤を塗布した粘着シートが用いられてきた。このような粘着シートにおいて、エキスパンド性を考慮して、比較的軟質な樹脂からなる基材が用いられており、たとえばポリ塩化ビニルフィルムやポリエチレン系フィルムが用いられることがある。
ダイシング時には、チッピングと呼ばれるチップの欠け・ヒビが生じ、大きさは100μm以上となることは珍しくなく、回路面にチッピングが達すると回路そのものの性能に支障を来たすこともある。また、ピックアップ工程の際にチッピングにより生じたチップの破片が他のチップ表面に付着し、回路そのものを破壊することがある。
【0005】
チッピングはダイシング時のブレードと呼ばれる回転刃により、切削中のチップが振動してしまい、チップとブレードの接触により生じる。従って、粘着シートの代わりにワックスでウエハを完全に固定し、振動が起こらないようにする方法もあるが、製造工程のように繰り返しダイシングを行う場合はワックスによる固定・除去が手間となってしまい、現実的ではない。また、ワックスが完全に除去できない場合はウエハの汚染として残るため、汚染物質を極度に嫌う電子機器においては、適用が難しい。
【特許文献1】特開平7−169718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題点を解決しようとするものであり、安価に製造可能なウエハ貼着用粘着シートを用い、かつダイシング時に発生するチッピングの発生を低減できるウエハ貼着用粘着シートおよびウエハの加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、ウエハ貼着用粘着シートに特定の損失係数を有するようにすることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明はそのような知見に基づきなされたものである。
すなわち、本発明は、
(1)基材フィルムと該基材フィルム上に形成された粘着剤層とからなる粘着シートであって、該粘着シートを350μm厚のベアウエハの一方の面に10枚重ねて貼合して130mm×20mmに加工した条件における、中央加振法により測定した損失係数(23℃、周波数600〜700Hz)が0.07以上であることを特徴とするウエハ貼着用粘着シート、
(2)前記粘着剤層が、ベンゼン環に結合した水素原子の少なくとも1つがアルキル基で置換されたフェノール化合物を含有することを特徴とする(1)項記載のウエハ貼着用粘着シート、
(3)前記フェノール化合物が、4,4´−ブチリデンビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2´−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2´−メチレンビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,6−ジ−t−ブチル−P−クレゾールからなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする(2)項記載のウエハ貼着用粘着シート、
(4)前記粘着剤層がベースポリマー100質量部当りベンゼン環に結合した水素原子の少なくとも1つがアルキル基で置換されたフェノール化合物を30〜150質量部含有することを特徴とする(1)項記載のウエハ貼着用粘着シート、
(5)前記粘着剤層を形成する粘着剤がアクリル系粘着剤であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載のウエハ貼着用粘着シート、
(6)前記粘着剤層が複数層から形成され、かつベンゼン環に結合した水素原子の少なくとも1つがアルキル基で置換されたフェノール化合物を含有する粘着剤層が、前記複数層の最外層以外の層として配設されることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載のウエハ貼着用粘着シート、及び
(7)(1)〜(6)のいずれか1項に記載のウエハ貼着用粘着シートにウエハを貼合し、該ウエハのダイシングを行うウエハの加工方法であって、前記基材フィルムまで切り込みを行わないことを特徴とするウエハの加工方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のウエハ貼着用粘着シートは、ウエハの加工において、チッピングを大幅に減少することが可能である。
本発明のウエハの加工方法によれば、ウエハ切削をスムーズにし、チッピングを低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明のウエハ貼着用粘着シートについて説明する。
図1は、本発明のウエハ貼着用粘着シートの1つの実施形態を示す断面図である。
本発明のウエハ貼着用粘着シートは、図1の断面図で示すように、基材フィルム1と該基材フィルム上に形成された粘着剤層2とからなる実施形態とすることができる。本発明において、粘着シートは粘着テープ(例えば、ダイシングテープ)を含むものである。本発明のウエハ貼着用粘着シートは、350μm厚のベアウエハの一方の面に10枚重ねて貼合し、130mm×20mmに加工した条件にて、中央加振法にて測定した損失係数(23℃、周波数600〜700Hz)が0.07以上である。
【0010】
チッピングは、ダイシング時のブレードと呼ばれる回転刃により引き起こされるものであるが、その原因について本発明者等が鋭意検討したところ、その回転刃により、切削中のチップが振動してしまい、チップとブレードの接触により生じることを見出した。そこで、本発明のウエハ貼着用粘着シートは、制振性を持たせることで、ダイシング時に発生したチップの振動を減衰させ、チッピングを防ぐものである。ウエハ貼着用粘着シートの損失係数は0.07以上であり、望ましくは0.09以上、さらに望ましくは0.11以上である。上記損失係数は、JIS G 0602「制振鋼板の振動減衰特性試験方法」記載の中央支持定常加振法(中央加振法)に準拠するものであって、以下のように測定されるものである。ベアウエハ(350μm厚、裏面2000番仕上)裏面に、ウエハ貼着用粘着シートを10枚貼り付け、幅20mm、長さ130mmに切断する。サンプル中央のウエハ表面に支持用治具を瞬間接着剤にて固定し、装置(例えば、デンマーク国 B&K社製3550型)にセットする。測定温度23℃、測定周波数600〜700Hzで、JIS G 0602「制振鋼板の振動減衰特性試験方法」記載の減衰法または半値幅法にて損失係数を算出する。
【0011】
基材フィルム1としては、耐水性および耐熱性に優れているものが適し、特に合成樹脂フィルムが適する。伸張可能なフィルムを介在させると、エキスパンドを容易に行えるようになる。このような伸張可能なフィルムとしては、具体的には、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン・プロピレン共重合体、プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体加硫物、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エチル共重合体、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリアミド、アイオノマー、ニトリルゴム、ブチルゴム、スチレンイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、天然ゴムおよびその水添加物または変性物等からなるフィルムなどが用いられる。また、これら伸張可能なフィルムは、2種以上を配合または積層して組み合わせて用いることもできる。
粘着剤層2と接する面には密着性を向上するために、コロナ処理を施したりプライマー等の他の層を設けてもよい。基材フィルム1の厚さは特に制限されないが、好ましくは30〜200μm、特に好ましくは50〜100μmである。
【0012】
粘着剤層2は、従来より公知の種々の粘着剤により形成され得る。このような粘着剤としては、何ら限定されるものではないが、たとえばゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系等をベースポリマーとした粘着剤が用いられる。
これらのベースポリマーに凝集力を付加するために架橋剤を配合することができる。
該架橋剤としては、ベースポリマーに対応して、例えばイソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン樹脂などが挙げられる。さらに粘着剤には、本発明の目的が損なわれない範囲で、所望により、各種添加成分を含有させることができる。
また、放射線硬化型や加熱発泡型の粘着剤も用いることができる。放射線硬化型の粘着剤としては、紫外線、電子線等で硬化し、剥離時には剥離しやすくなる粘着剤を使用することができ、加熱発泡型の粘着剤とは、加熱により発泡剤や膨張剤により剥離しやすくなる粘着剤を使用することができる。さらに、粘着剤としてはダイシング・ダインボンディング兼用可能な接着剤であってもよい。放射線硬化型粘着剤としては、たとえば、特公平1−56112号公報、特開平7−135189号公報等に記載のものが好ましく使用されるがこれらに限定されることはない。本発明においては、紫外線硬化型粘着剤を用いることが好ましい。その場合には、放射線により硬化し三次元網状化する性質を有すればよく、例えば通常のゴム系あるいはアクリル系の感圧性ベース樹脂(ポリマー)に対して、分子中に少なくとも2個の光重合性炭素−炭素二重結合を有する低分子量化合物(以下、光重合性化合物という)および光重合開始剤が配合されてなるものが使用される。
上記のゴム系あるいはアクリル系のベース樹脂は、天然ゴム、各種の合成ゴムなどのゴム系ポリマー、あるいはポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとこれと共重合可能な他の不飽和単量体との共重合物などのアクリル系ポリマーが使用される。
【0013】
また上記の粘着剤中に、イソシアネート系硬化剤を混合することにより、初期の接着力を任意の値に設定することができる。このような硬化剤としては、具体的には多価イソシアネート化合物、たとえば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート、リジンイソシアネートなどが用いられる。
【0014】
紫外線硬化型粘着剤の場合には、粘着剤中に光重合開始剤を混入することにより、紫外線照射による重合硬化時間ならびに紫外線照射量を少なくなることができる。
このような光重合開始剤としては、具体的には、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンジル、ジアセチル、β−クロールアンスラキノンなどが挙げられる。
【0015】
本発明においては、ウエハ貼着用粘着シートの粘着剤層2にベンゼン環に結合した水素原子の少なくとも1つがアルキル基で置換されたフェノール化合物を含有することが好ましい。この化合物(以下、本発明におけるフェノール化合物ともいう。)を含有することで、ウエハ貼着用粘着シートの制振性を上げることができる。
本発明におけるフェノール化合物としては、具体的には、4,4´−ブチリデンビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2´−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2´−メチレンビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,6−ジ−t−ブチル−P−クレゾール等を好ましく使用することができる。
このなかでも4,4´−ブチリデンビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2´−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2´−メチレンビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)が好ましい。
【0016】
本発明におけるフェノール化合物を配合する部数は、粘着剤を構成するベースポリマー100質量部当り、30〜150質量部が好ましく、50〜100質量部がさらに好ましい。本発明におけるフェノール化合物の含有量が少なすぎると、その添加効果が不十分で制振性の向上が十分でなくなり、チッピング抑制効果が小さいことがある。また、本発明における制振剤の含有量が多すぎると、本発明におけるフェノール化合物同士が粘着層内で凝集してしまい、テープとして加工した場合、粘着層内に白い斑点状の凝集物が見られるようになり、制振性は悪化する場合がある。
【0017】
粘着剤層2の厚さは特に制限されないが、好ましくは4〜30μm、特に好ましくは5〜25μmである。
【0018】
本発明の粘着シートの1つの実施形態として、粘着剤層を複数層で形成することができる。
図2は、本発明のウエハ貼着用粘着シートの1つの実施形態を示す断面図である。
図2において、基材フィルム1上の前記粘着剤層が、前記フェノール化合物を配合した粘着剤層3(最外層以外の粘着剤層)、前記フェノール化合物を配合しない粘着剤層4(最外層)からなる2層構造を有する。粘着剤層は2層以上であり、3層でもよい。
ここで、「最外層」とは、複数層からなる粘着剤層のうち、ウエハ貼着面を形成する層をいう。
本発明において、最外層以外の粘着剤層の層数は、特に制限するものではないが、1層ないし2層であることが好ましく、1層であることがより好ましい。
本発明において、粘着剤層を複数層とし、前記フェノール化合物を配合した粘着剤層3を基材側に配置し、前記フェノール化合物を配合しない粘着剤層4を外側に配置することにより、ウエハ裏面への汚染性をより低減することができるので好ましい。
最外層以外の粘着剤層それぞれの厚さは特に制限されないが、好ましくは4〜30μm、特に好ましくは5〜25μmである。
最外層の厚さは特に制限されないが、好ましくは4〜20μm、特に好ましくは5〜15μmである。
【0019】
本発明のウエハ貼着用粘着シートにウエハを貼合し、常法により、図3〜5に示すようなウエハのダイシングおよびピックアップを行うことができる。本発明のウエハ貼着用粘着シートを用いたウエハの加工方法においては、基材フィルムまで切り込みを行わないことが、ダイシングブレードの切削抵抗を低減し、ウエハ切削をスムーズにし、チッピングを低減するため、好ましい。切り込みが基材フィルムまで達しないためには、例えば、用いるダイシング装置の切り込み深さの設定を、マニュアルに従い適宜変更すれば良い。
【0020】
本発明に用いられるベアウエハは、本発明のウエハ貼着用粘着シートに上記の損失係数を与え得るものであれば特に限定されるものではなく、従来用いられているベアウエハから適宜選択して用いることができる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例で用いた粘着剤、基材構成樹脂は以下のとおりである。
【0022】
(粘着剤)
アクリル系ベースポリマー(2−エチルヘキシルアクリレート、メチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートからなる共重合体、重量平均分子量20万、ガラス転移点=−35℃)100質量部にポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製、商品名コロネートL)3質量部、光重合性炭素−炭素二重結合を有する化合物としてテトラメチロールメタンテトラアクリレート10質量部、光重合開始剤としてα−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン1質量部を添加し、混合して得た。
(基材フィルム)
エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)(三井・デュポンポリケミカル(株)「ニュクレルN1214」)をフィルム押し出し成形にて加工した。肉厚100μm。
【0023】
上記粘着剤100質量部に対し、表1に示す本発明におけるフェノール化合物を配合し、基材フィルム上に厚さ10μmに塗工し、表1に示すような実施例及び比較例のウエハ貼着用粘着シートを作製した。ただし、表1における実施例5、6は図2のような2層構造とし、粘着剤層3に表1に示すフェニル系添加剤を配合し、粘着剤層4にはフェニル系添加剤を配合せず、それぞれ肉厚10μmに塗工した。実施例及び比較例のウエハ貼着用粘着シートに、直径6インチ、厚さ350μmのウエハを貼合し、ダイシング装置(DISCO社製、DAD−340)を使用してチップサイズが5mm角となるようにダイシングをおこなった。ダイシング条件は、回転丸刃回転数:40000rpm、切削速度:100mm/s、切削水流量は20mLである。また、ダイシングの際、回転丸刃が粘着シートに切り込む深さは30μmとなるように行った。
【0024】
諸特性評価を下記のように行った。
(損失係数)
ベアウエハ(350μm厚、裏面2000番仕上)裏面に、ウエハ貼着用粘着シートを10枚貼り付け、幅20mm、長さ130mmに切断した。サンプル中央のウエハ表面に支持用治具を瞬間接着剤にて固定し、損失係数測定装置(B&K社製3550型)にセットした。測定温度23℃、測定周波数600〜700Hzで、JIS G 0602「制振鋼板の振動減衰特性試験方法」に基づく中央加振法により、損失係数を算出した。
(粒子間距離)
基材フィルムの粘着剤被塗布層断面をSEMにて観測し、粒子間距離の平均値とする(50個をサンプリング)。ただし、粒子が凝集している場合は1つの粒子とする。
(チッピング性)
使用ウエハ:表面金蒸着ウエハ
ダイシング後、UV照射を実施し(500mJ/m2)、1枚のウエハからランダムに50チップ取り出し、チップ裏面(粘着面)の各辺における最大のチッピング値を顕微鏡(100〜200倍)で測定し、全値の平均を算出した。
(ウエハ裏面への糊残り)
上記チッピング性を評価した際、チップを剥がして、ウエハ裏面に糊が貼着していないかを目視にて確認した。
【0025】
【表1】

【0026】
表1から明らかなように、比較例1の粘着シートは、損失係数が小さく、チッピング値も大きく劣っているのに対し、実施例1〜6のシートは、損失係数、チッピング値とも良好な性能を示した。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の粘着シートの一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の粘着シートの一実施形態を示す断面図である。
【図3】半導体ウエハのダイシング工程及びピックアップ工程を説明する断面図である。
【図4】半導体ウエハのダイシング工程及びピックアップ工程を説明する断面図である。
【図5】半導体ウエハのダイシング工程及びピックアップ工程を説明する断面図である。
【図6】半導体ウエハのダイシング工程及びピックアップ工程を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 基材フィルム
2 粘着剤層
3 前記フェノール化合物を配合した粘着剤層
4 最外層
11 ホルダー
12 粘着シート
13 半導体ウエハ
14 素子小片(チップ)
15 実線矢印方向
16 エキスパンダー
17 点線矢印方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと該基材フィルム上に形成された粘着剤層とからなる粘着シートであって、該粘着シートを350μm厚のベアウエハの一方の面に10枚重ねて貼合して130mm×20mmに加工した条件において、中央加振法により測定した損失係数(23℃、周波数600〜700Hz)が0.07以上であることを特徴とするウエハ貼着用粘着シート。
【請求項2】
前記粘着剤層が、ベンゼン環に結合した水素原子の少なくとも1つがアルキル基で置換されたフェノール化合物を含有することを特徴とする請求項1記載のウエハ貼着用粘着シート。
【請求項3】
前記フェノール化合物が、4,4´−ブチリデンビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2´−メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2´−メチレンビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,6−ジ−t−ブチル−P−クレゾールからなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする請求項2記載のウエハ貼着用粘着シート。
【請求項4】
前記粘着剤層がベースポリマー100質量部当りベンゼン環に結合した水素原子の少なくとも1つがアルキル基で置換されたフェノール化合物を30〜150質量部含有することを特徴とする請求項1記載のウエハ貼着用粘着シート。
【請求項5】
前記粘着剤層を形成する粘着剤がアクリル系粘着剤であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のウエハ貼着用粘着シート。
【請求項6】
前記粘着剤層が複数層から形成され、かつベンゼン環に結合した水素原子の少なくとも1つがアルキル基で置換されたフェノール化合物を含有する粘着剤層が、前記複数層の最外層以外の層として配設されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のウエハ貼着用粘着シート。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のウエハ貼着用粘着シートにウエハを貼合し、該ウエハのダイシングを行うウエハの加工方法であって、前記基材フィルムまで切り込みを行わないことを特徴とするウエハの加工方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−103655(P2008−103655A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−9632(P2007−9632)
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】