説明

ウエーハのレーザー加工方法

【課題】相対的に面積が大きい方にも僅かに膨張する膨張分を考慮し、ウエーハに形成されたストリートに沿って品質上影響を及ぼすことなく効率よくレーザー加工することができるウエーハのレーザー加工方法を提供する。
【解決手段】面積が最も大きい中央領域のレーザー加工が最後になるように被加工用ウエーハをストリートに沿ってレーザー加工するレーザー加工方法であって、予めゲージ用ウエーハに対して被加工用ウエーハに形成されたストリートに対応する加工領域に所定本数の加工領域毎に第1のレーザー加工工程および第2のレーザー加工工程を実施して所定本数の加工領域毎にゲージ用ウエーハのY軸方向における中心側のズレ量を検出することにより所定本数の加工領域毎に補正データを作成し、被加工用ウエーハに対して第1のレーザー加工工程および第2のレーザー加工工程を実施する際に、所定本数のストリートに沿ってレーザー加工を実施する毎に、補正データに基づいて割り出し送り量を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャックテーブルに保持されたウエーハの表面に形成されたストリートに沿ってレーザー光線を照射し、ウエーハにストリートに沿ってレーザー加工を施すウエーハのレーザー加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等の回路を形成する。そして、半導体ウエーハをストリートに沿って切断することにより回路が形成された領域を分割して個々の半導体チップを製造している。また、サファイア基板の表面に窒化ガリウム系化合物半導体等が積層された光デバイスウエーハもストリートに沿って切断することにより個々の発光ダイオード、レーザーダイオード等の光デバイスに分割され、電気機器に広く利用されている。
【0003】
近年、半導体ウエーハ等の板状の被加工物を分割する方法として、その被加工物に対して透過性を有するパルスレーザー光線を用い、分割すべき領域の内部に集光点を合わせてパルスレーザー光線を照射するレーザー加工方法も試みられている。このレーザー加工方法を用いた分割方法は、被加工物の一方の面側から内部に集光点を合わせて被加工物に対して透過性を有する波長(例えば1064nm)のパルスレーザー光線を照射し、被加工物の内部に分割予定ラインに沿って変質層を連続的に形成し、この変質層が形成されることによって強度が低下したストリートに沿って外力を加えることにより、被加工物を分割するものである。(例えば、特許文献1参照。)
【0004】
また、上述した半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等のウエーハをストリートに沿って分割する方法として、ウエーハに形成されたストリートに沿ってウエーハに対して吸収性を有する波長(例えば355nm)のパルスレーザー光線を照射することによりレーザー加工溝を形成し、このレーザー加工溝に沿って破断する方法が提案されている。(例えば、特許文献2参照。)
【0005】
しかるに、ウエーハに形成されたストリートに沿ってレーザー光線を照射すると、ウエーハはレーザー光線が照射されたストリートと直交する方向に僅かに膨張する。この結果、レーザー光線の集光点とストリートとの位置関係が累積的にズレていくため、レーザー加工作業の途中で上記膨張によるズレを補正するためのアライメント作業を実施しなければならず、生産性が悪いという問題がある。
【0006】
この問題を解消するため、ウエーハの表面または裏面に保護部材を貼着した状態でストリートに沿ってレーザー光線を照射して変質層またはレーザー加工溝を形成すると、保護部材に貼着しているウエーハの面積が相対的に小さいほうに膨張する現象を利用して、面積が最も大きい中央領域のレーザー加工が最後になるようにウエーハをストリートに沿ってレーザー加工するレーザー加工方法が下記特許文献3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3408805号
【特許文献2】特開平10−305420号公報
【特許文献3】特開2008−60164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
而して、上記特許文献3に開示されたレーザー加工方法においても、相対的に面積が大きい方にも僅かに膨張し、ウエーハを5〜10本のストリートに沿ってレーザー加工すると、僅かの膨張分が累積されてストリートの所定位置にレーザー加工を施すことができなくなるという問題がある。
特に、ストリートの間隔が1mm以下と狭いウエーハにおいては、僅かの膨張分の累積を無視することができない。
【0009】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、相対的に面積が大きい方にも僅かに膨張する膨張分を考慮し、ウエーハに形成されたストリートに沿って品質上影響を及ぼすことなく効率よくレーザー加工することができるウエーハのレーザー加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工用ウエーハを保持し回転可能に構成されたチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハにレーザー光線を照射する集光器を備えたレーザー光線照射手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段とを相対的に加工送り方向(X軸方向)に加工送りする加工送り手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段とをX軸方向と直交する割り出し送り方向(Y軸方向)に割り出し送りする割り出し送り手段とを具備するレーザー加工装置を用いて、表面に複数の平行なストリートが形成された被加工用ウエーハにストリートに沿ってレーザー加工を施すウエーハのレーザー加工方法であって、
被加工用ウエーハの表面または裏面に保護部材を貼着し、該保護部材側を該チャックテーブルに保持するウエーハ保持工程と、
該チャックテーブルに保持されている被加工用ウエーハに形成された複数のストリートをX軸方向と平行に位置付けるウエーハ位置付け工程と、
該ウエーハ位置付け工程が実施された被加工用ウエーハのY軸方向における一方の最外側のストリートを該集光器の直下に位置付け、該集光器からレーザー光線を照射しつつ該加工送り手段を作動して該チャックテーブルを加工送りすることによりストリートに沿ってレーザー加工を施すレーザー光線照射工程と、該割り出し送り手段を作動し該チャックテーブルに保持された被加工用ウエーハにおける該レーザー光線照射工程が実施されたストリートに隣接するストリートを該集光器の直下に位置付ける割り出し送り工程とを順次実施し、被加工用ウエーハの一方の半分領域に形成された複数のストリートに沿ってレーザー加工を施す第1のレーザー加工工程と、
該第1のレーザー加工工程が実施された被加工用ウエーハのY軸方向における他方の最外側のストリートを該集光器の直下に位置付け、該集光器からレーザー光線を照射しつつ該加工送り手段を作動して該チャックテーブルを加工送りすることによりストリートに沿ってレーザー加工を施すレーザー光線照射工程と、該割り出し送り手段を作動し該チャックテーブルに保持された被加工用ウエーハにおける該レーザー光線照射工程が実施されたストリートに隣接するストリートを該集光器の直下に位置付ける割り出し送り工程とを順次実施し、被加工用ウエーハの他方の半分領域に形成された複数のストリートに沿ってレーザー加工を施す第2のレーザー加工工程と、を含み、
予めゲージ用ウエーハに対して被加工用ウエーハに形成されたストリートに対応する加工領域に所定本数の加工領域毎に該第1のレーザー加工工程および該第2のレーザー加工工程を実施して所定本数の加工領域毎にゲージ用ウエーハのY軸方向における中心側のズレ量を検出することにより所定本数の加工領域毎に補正データを作成し、
被加工用ウエーハに対して該第1のレーザー加工工程および該第2のレーザー加工工程を実施する際に、該所定本数のストリートに沿ってレーザー加工を実施する毎に、該補正データに基づいて割り出し送り量を補正する、
ことを特徴とするウエーハのレーザー加工方法が提供される。
【0011】
上記補正データは、ゲージ用ウエーハに対して被加工用ウエーハに形成された複数のストリートに対応する加工領域における第1のレーザー加工工程および第2のレーザー加工工程を実施する前の最初の加工領域のY軸方向の基準位置を検出する基準位置検出工程と、
ゲージ用ウエーハに対して被加工用ウエーハに形成された複数のストリートに対応する加工領域に第1のレーザー加工工程および第2のレーザー加工工程を実施し、所定本数の加工領域毎に最初の加工領域と最後の加工領域とのY軸方向における総距離を測定する総距離測定工程と、
レーザー加工が実施された最初の加工領域と該基準位置とのY軸方向のズレ量を測定するズレ量測定工程と、
該総距離測定工程によって得られた総距離から被加工用ウエーハに形成された複数のストリートの所定本数の間隔と該ズレ量測定工程によって得られたズレ量を減算した値を補正値とする補正データ作成工程とによって求める。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるウエーハのレーザー加工方法においては、予めゲージ用ウエーハに対して被加工用ウエーハに形成されたストリートに対応する加工領域に所定本数の加工領域毎に上記第1のレーザー加工工程および上記第2のレーザー加工工程を実施して所定本数の加工領域毎にゲージ用ウエーハのY軸方向における中心側のズレ量を検出することにより所定本数の加工領域毎に補正データを作成するズレ量検出工程を実施し、被加工用ウエーハに対して上記第1のレーザー加工工程および上記第2のレーザー加工工程を実施する際に、所定本数のストリートに沿ってレーザー加工を実施する毎に、補正データに基づいて割り出し送り量を補正するので、所定本数のストリートに沿ってレーザー加工を実施することにより、被加工用ウエーハの中央側への僅かな変位(伸び)が累積されていても、次の所定本数の最初のストリートは集光器の直下に正確に位置付けられる。このように、本発明によるウエーハのレーザー加工方法においては、所定本数のストリートに沿って第1のレーザー加工工程および第2のレーザー加工工程を実施する毎に中心側のズレ量に対応して割り出し送り量を補正するので、被加工用ウエーハをストリートに沿って品質上影響を及ぼすことなく効率よくレーザー加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明によるウエーハのレーザー加工方法を実施するためのレーザー加工装置の斜視図。
【図2】図1に示すレーザー加工装置に装備されるレーザー光線照射手段の構成を簡略に示すブロック図。
【図3】本発明によるウエーハのレーザー加工方法によって加工される被加工用ウエーハとしての半導体ウエーハを示す斜視図。
【図4】図3に示す半導体ウエーハの表面を環状のフレームに装着された保護テープに貼着した状態を示す斜視図。
【図5】本発明によるウエーハのレーザー加工方法の第1の実施形態における第1のレーザー加工工程においてウエーハの割り出し送り方向における一方の最外側のストリートを集光器の直下に位置付けた状態を示す説明図。
【図6】本発明によるウエーハのレーザー加工方法の第1の実施形態における第1のレーザー加工工程におけるレーザー光線照射工程の説明図。
【図7】本発明によるウエーハのレーザー加工方法の第1の実施形態における第1のレーザー加工工程が実施され内部に第1のストリートに沿って変質層が形成された半導体ウエーハの平面図。
【図8】本発明によるウエーハのレーザー加工方法の第1の実施形態における第2のレーザー加工工程においてウエーハの割り出し送り方向における他方の最外側のストリートを集光器の直下に位置付けた状態を示す説明図。
【図9】半導体ウエーハに形成された第1のストリートに沿って本発明によるウエーハのレーザー加工方法の第1の実施形態における第1のレーザー加工工程および第2のレーザー加工工程が実施され内部に第1のストリートに沿って変質層が形成された半導体ウエーハの平面図。
【図10】半導体ウエーハに形成された第2のストリートに沿って本発明によるウエーハのレーザー加工方法の第1の実施形態における第1のレーザー加工工程が実施され内部に第2のストリートに沿って変質層が形成された半導体ウエーハの平面図。
【図11】半導体ウエーハに形成された第2のストリートに沿って本発明によるウエーハのレーザー加工方法の第1の実施形態における第1のレーザー加工工程および第2のレーザー加工工程が実施され内部に第2のストリートに沿って変質層が形成された半導体ウエーハの平面図。
【図12】本発明によるウエーハのレーザー加工方法に用いる補正データを作成するためのゲージ用ウエーハを環状のフレームに装着された保護テープに貼着した状態を示す斜視図。
【図13】本発明によるウエーハのレーザー加工方法に用いる補正データを作成するための基準位置検出工程の説明図。
【図14】本発明によるウエーハのレーザー加工方法に用いる補正データを作成するための総距離測定工程とズレ量測定工程および補正データ作成工程の説明図。
【図15】本発明によるウエーハのレーザー加工方法に用いる補正データを作成するための補正データ作成工程の説明図。
【図16】本発明によるウエーハのレーザー加工方法に用いる補正データを作成するための補正データ作成工程の説明図。
【図17】本発明によるウエーハのレーザー加工方法に用いる補正データを作成するための補正データ作成工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明によるウエーハのレーザー加工方法の好適な実施形態について、添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0015】
図1には、本発明によるウエーハのレーザー加工方法を実施するためのレーザー加工装置の斜視図が示されている。図1に示すレーザー加工装置1は、静止基台2と、該静止基台2に矢印Xで示す加工送り方向(X軸方向)に移動可能に配設され被加工物を保持するチャックテーブル機構3と、静止基台2に上記X軸方向と直交する矢印Yで示す割り出し送り方向(Y軸方向)に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット支持機構4と、該レーザー光線ユニット支持機構4に矢印Zで示す方向(Z軸方向)に移動可能に配設されたレーザー光線照射ユニット5とを具備している。
【0016】
上記チャックテーブル機構3は、静止基台2上にX軸方向に沿って平行に配設された一対の案内レール31、31と、該案内レール31、31上にX軸方向に移動可能に配設された第一の滑動ブロック32と、該第1の滑動ブロック32上に矢印Yで示す割り出し送り方向に移動可能に配設された第2の滑動ブロック33と、該第2の滑動ブロック33上に円筒部材34によって支持されたカバーテーブル35と、被加工物保持手段としてのチャックテーブル36を具備している。このチャックテーブル36は多孔性材料から形成された吸着チャック361を具備しており、吸着チャック361上に被加工物である例えば円盤状の半導体ウエーハを図示しない吸引手段によって保持するようになっている。このように構成されたチャックテーブル36は、円筒部材34内に配設された図示しないパルスモータによって回転せしめられる。なお、チャックテーブル36には、後述する環状のフレームを固定するためのクランプ362が配設されている。
【0017】
上記第1の滑動ブロック32は、その下面に上記一対の案内レール31、31と嵌合する一対の被案内溝321、321が設けられているとともに、その上面にY軸方向に沿って平行に形成された一対の案内レール322、322が設けられている。このように構成された第1の滑動ブロック32は、被案内溝321、321が一対の案内レール31、31に嵌合することにより、一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第1の滑動ブロック32を一対の案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動させるための加工送り手段37を具備している。加工送り手段37は、上記一対の案内レール31と31の間に平行に配設された雄ネジロッド371と、該雄ネジロッド371を回転駆動するためのパルスモータ372等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド371は、その一端が上記静止基台2に固定された軸受ブロック373に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ372の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド371は、第1の滑動ブロック32の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ372によって雄ネジロッド371を正転および逆転駆動することにより、第一の滑動ブロック32は案内レール31、31に沿ってX軸方向に移動せしめられる。
【0018】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、上記チャックテーブル36の加工送り量を検出するための加工送り量検出手段374を備えている。加工送り量検出手段374は、案内レール31に沿って配設されたリニアスケール374aと、第1の滑動ブロック32に配設され第1の滑動ブロック32とともにリニアスケール374aに沿って移動する読み取りヘッド374bとからなっている。この送り量検出手段374の読み取りヘッド374bは、図示の実施形態においては0.1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36の加工送り量を検出する。なお、上記加工送り手段37の駆動源としてパルスモータ372を用いた場合には、パルスモータ372に駆動信号を出力する後述する制御手段の駆動パルスをカウントすることにより、チャックテーブル36の加工送り量を検出することもできる。また、上記加工送り手段37の駆動源としてサーボモータを用いた場合には、サーボモータの回転数を検出するロータリーエンコーダが出力するパルス信号を後述する制御手段に送り、制御手段が入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36の加工送り量を検出することもできる。
【0019】
上記第2の滑動ブロック33は、その下面に上記第1の滑動ブロック32の上面に設けられた一対の案内レール322、322と嵌合する一対の被案内溝331、331が設けられており、この被案内溝331、331を一対の案内レール322、322に嵌合することにより、矢印Yで示す割り出し送り方向に移動可能に構成される。図示の実施形態におけるチャックテーブル機構3は、第2の滑動ブロック33を第1の滑動ブロック32に設けられた一対の案内レール322、322に沿ってY軸方向に移動させるための第1の割り出し送り手段38を具備している。第1の割り出し送り手段38は、上記一対の案内レール322と322の間に平行に配設された雄ネジロッド381と、該雄ネジロッド381を回転駆動するためのパルスモータ382等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド381は、その一端が上記第1の滑動ブロック32の上面に固定された軸受ブロック383に回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ382の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド381は、第2の滑動ブロック33の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された貫通雌ネジ穴に螺合されている。従って、パルスモータ382によって雄ネジロッド381を正転および逆転駆動することにより、第2の滑動ブロック33は案内レール322、322に沿ってY軸方向に移動せしめられる。
【0020】
図示の実施形態におけるレーザー加工装置は、上記第2の滑動ブロック33の割り出し加工送り量を検出するための割り出し送り量検出手段384を備えている。割り出し送り量検出手段384は、案内レール322に沿って配設されたリニアスケール384aと、第2の滑動ブロック33に配設され第2の滑動ブロック33とともにリニアスケール384aに沿って移動する読み取りヘッド384bとからなっている。この割り出し送り量検出手段384の読み取りヘッド384bは、図示の実施形態においては0.1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。そして後述する制御手段は、入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36の割り出し送り量を検出する。なお、上記第1の割り出し送り手段38の駆動源としてパルスモータ382を用いた場合には、パルスモータ382に駆動信号を出力する後述する制御手段の駆動パルスをカウントすることにより、チャックテーブル36の割り出し送り量を検出することもできる。また、上記第1の割り出し送り手段38の駆動源としてサーボモータを用いた場合には、サーボモータの回転数を検出するロータリーエンコーダが出力するパルス信号を後述する制御手段に送り、制御手段が入力したパルス信号をカウントすることにより、チャックテーブル36の割り出し送り量を検出することもできる。
【0021】
上記レーザー光線照射ユニット支持機構4は、静止基台2上に矢印Yで示す割り出し送り方向に沿って平行に配設された一対の案内レール41、41と、該案内レール41、41上にY軸方向に移動可能に配設された可動支持基台42を具備している。この可動支持基台42は、案内レール41、41上に移動可能に配設された移動支持部421と、該移動支持部421に取り付けられた装着部422とからなっている。装着部422は、一側面にZ軸方向に延びる一対の案内レール423、423が平行に設けられている。図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット支持機構4は、可動支持基台42を一対の案内レール41、41に沿ってY軸方向に移動させるための第2の割り出し送り手段43を具備している。第2の割り出し送り手段43は、上記一対の案内レール41、41の間に平行に配設された雄ネジロッド431と、該雄ネジロッド431を回転駆動するためのパルスモータ432等の駆動源を含んでいる。雄ネジロッド431は、その一端が上記静止基台2に固定された図示しない軸受ブロックに回転自在に支持されており、その他端が上記パルスモータ432の出力軸に伝動連結されている。なお、雄ネジロッド431は、可動支持基台42を構成する移動支持部421の中央部下面に突出して設けられた図示しない雌ネジブロックに形成された雌ネジ穴に螺合されている。このため、パルスモータ432によって雄ネジロッド431を正転および逆転駆動することにより、可動支持基台42は案内レール41、41に沿ってY軸方向に移動せしめられる。
【0022】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット5は、ユニットホルダ51と、該ユニットホルダ51に取り付けられたレーザー光線照射手段52を具備している。ユニットホルダ51は、上記装着部422に設けられた一対の案内レール423、423に摺動可能に嵌合する一対の被案内溝511、511が設けられており、この被案内溝511、511を上記案内レール423、423に嵌合することにより、Z軸方向に移動可能に支持される。
【0023】
図示の実施形態におけるレーザー光線照射ユニット5は、ユニットホルダ51を一対の案内レール423、423に沿ってZ軸方向に移動させるための移動手段53を具備している。移動手段53は、一対の案内レール423、423の間に配設された雄ネジロッド(図示せず)と、該雄ネジロッドを回転駆動するためのパルスモータ532等の駆動源を含んでおり、パルスモータ532によって図示しない雄ネジロッドを正転および逆転駆動することにより、ユニットホルダ51およびレーザ光線照射手段52を案内レール423、423に沿ってZ軸方向に移動せしめる。なお、図示の実施形態においてはパルスモータ532を正転駆動することによりレーザー光線照射手段52を上方に移動し、パルスモータ532を逆転駆動することによりレーザー光線照射手段52を下方に移動するようになっている。
【0024】
図示のレーザー光線照射手段52は、実質上水平に配置された円筒形状のケーシング521を含んでいる。また、レーザー光線照射手段52は、図2に示すようにケーシング521内に配設されたパルスレーザー光線発振手段522および伝送光学系523と、ケーシング521の先端に配設されパルスレーザー光線発振手段522によって発振されたパルスレーザー光線を上記チャックテーブル36に保持された被加工物に照射する集光器524を具備している。上記パルスレーザー光線発振手段522は、YAGレーザー発振器或いはYVO4レーザー発振器からなるパルスレーザー光線発振器522aと、これに付設された繰り返し周波数設定手段522bとから構成されている。この繰り返し周波数設定手段522bは、後述する制御手段によって制御される。上記伝送光学系523は、ビームスプリッタの如き適宜の光学要素を含んでいる。
【0025】
図1に戻って説明を続けると、上記レーザー光線照射手段52を構成するケーシング521の先端部には、レーザー光線照射手段52によってレーザー加工すべき加工領域を検出する撮像手段6が配設されている。この撮像手段6は、可視光線によって撮像する通常の撮像素子(CCD)の外に、被加工物に赤外線を照射する赤外線照明手段と、該赤外線照明手段によって照射された赤外線を捕らえる光学系と、該光学系によって捕らえられた赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成されており、撮像した画像信号を制御手段8に送る。
【0026】
制御手段8はコンピュータによって構成されており、制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置(CPU)81と、制御プログラム等を格納するリードオンリメモリ(ROM)82と、後述する被加工物の設計値のデータや演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ(RAM)83と、カウンター84と、入力インターフェース85および出力インターフェース86とを備えている。制御手段8の入力インターフェース85には、上記加工送り量検出手段374、割り出し送り量検出手段384および撮像手段6等からの検出信号が入力される。そして、制御手段8の出力インターフェース86からは、上記パルスモータ372、パルスモータ382、パルスモータ432、パルスモータ532、レーザー光線照射手段52および表示手段80等に制御信号を出力する。なお、上記ランダムアクセスメモリ(RAM)83は、後述する補正値の制御マップや検出値のデータや加工条件のデータを記憶する記憶領域を備えている。
【0027】
次に、上述したレーザー加工装置1によって加工される被加工用ウエーハとしての半導体ウエーハについて、図3を参照して説明する。図3に示す半導体ウエーハ10は、例えば厚さが100μmのシリコンウエーハからなっており、表面10aには第1の方向に複数の第1のストリート11が平行に形成されているとともに、該第1のストリート11と直交する第2の方向に複数の第2のストリート12が平行に形成されている。このように、複数の第1のストリート11と複数の第2のストリート12によって区画された複数の領域にそれぞれIC、LSI等のデバイス13が形成されている。
【0028】
次に、上述した半導体ウエーハ10に上記第1のストリート11および第2のストリート12に沿ってレーザー光線を照射し、半導体ウエーハ10の内部に第1のストリート11および第2のストリート12に沿って変質層を形成するレーザー加工方法について説明する。
先ず、上述した半導体ウエーハ10は、図4に示すように環状のフレーム20に装着されたポリオレフィン等の合成樹脂シートからなる保護テープ30に表面10a側を貼着する。従って、半導体ウエーハ10は、裏面10bが上側となる。
【0029】
図4に示すように、環状のフレーム20に保護テープ30を介して支持された半導体ウエーハ10は、図1に示すレーザー加工装置のチャックテーブル36上に保護テープ30側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより半導体ウエーハ10は、保護テープ30を介してチャックテーブル36上に吸引保持される。また、環状のフレーム20は、クランプ362によって固定される。
【0030】
上述したように半導体ウエーハ10を吸引保持したチャックテーブル36は、加工送り手段37によって撮像手段6の直下に位置付けられる。チャックテーブル36が撮像手段6の直下に位置付けられると、撮像手段6および制御手段8によって半導体ウエーハ10のレーザー加工すべき加工領域を検出するアライメント作業を実行する。即ち、撮像手段6および制御手段8は、半導体ウエーハ10の第1の方向に形成されている第1のストリート11と、第1のストリート11に沿ってレーザー光線を照射するレーザー光線照射手段52の集光器524との位置合わせを行うためのパターンマッチング等の画像処理を実行し、レーザー光線照射位置のアライメント工程を遂行する。また、半導体ウエーハ10に形成されている第2のストリート12に対しても、同様にレーザー光線照射位置のアライメントが遂行される。このとき、半導体ウエーハ10の第1のストリート11および第2のストリート12が形成されている表面10aは下側に位置しているが、撮像手段6が上述したように赤外線照明手段と赤外線を捕らえる光学系および赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成された撮像手段を備えているので、裏面10bから透かして分割予定ライン21を撮像することができる。
【0031】
上述したアライメント工程を実施したならば、チャックテーブル36に吸引保持されている半導体ウエーハ10に形成された第1のストリート11をX軸方向と平行に位置付けるウエーハ位置付け工程を実施する。もし、第1のストリート11とX軸方向が平行でない場合には、半導体ウエーハ10を吸引保持したチャックテーブル36を回動して第1のストリート11がX軸方向と平行になるように位置付ける。
【0032】
上述したウエーハ位置付け工程を実施したならば、図5に示すように半導体ウエーハ10のY軸方向における一方(図5において上方)の最外側の第1のストリート11を集光器524の直下に位置付け、該第1のストリート11の一端を(図5において左端)をレーザー光線照射手段52の集光器524の直下に位置付ける。次に、図6の(a)に示すようにレーザー光線照射手段52の集光器524からウエーハに対して透過性を有する波長のパルスレーザー光線を照射しつつ、加工送り手段37を作動してチャックテーブル36を矢印X1で示す加工送り方向に所定の送り速度で移動する(レーザー光線照射工程)。なお、このレーザー光線照射工程においては、パルスレーザー光線の集光点Pを半導体ウエーハ10の内部に合わせる。そして、図6の(b)に示すように第1のストリート11の他端が集光器524の直下に達したら、パルスレーザー光線の照射を停止するとともにチャックテーブル36の移動を停止する。この結果、図6の(b)および(c)に示すように半導体ウエーハ10の内部には第1のストリート11に沿って変質層110が形成される。
【0033】
なお、上記レーザー光線照射工程における加工条件は、例えば次のように設定されている。
光源 :LD励起QスイッチNd:YVO4レーザー
波長 :1064nmのパルスレーザー
集光スポット径 :φ1μm
集光点のピークパワー密度:3.2×1010W/cm2
繰り返し周波数 :100kHz
加工送り速度 :100mm/秒
【0034】
上述したように第1のストリート11に沿ってレーザー光線照射工程を実施したならば、第1の割り出し送り手段38を作動してチャックテーブル36を第1のストリート11の間隔分だけY軸方向(図5に示す実施形態においては上方に)に移動し、チャックテーブル36に保持された半導体ウエーハ10における上記レーザー光線照射工程が実施された第1のストリート11に隣接する第1のストリート11を図5において2点差線で示す集光器524の直下に位置付ける割り出し送り工程を実施する。そして、上述したレーザー光線照射工程と割り出し送り工程とを順次実施することにより、図7に示すように半導体ウエーハ10の内部には一方の半分領域に形成された複数の第1のストリート11に沿って変質層110が形成される(第1のレーザー加工工程)。
【0035】
上述したレーザー光線照射工程を実施することにより、半導体ウエーハ10は変質層110が形成された第1のストリート11と直交する方向(X軸方向)に膨張する。この結果、保護テープ30に貼着されている半導体ウエーハ10はY軸方向に変位するが、面積が相対的に小さい側に変位するので、第1のレーザー加工工程においては面積が最も大きい中央領域の第1のストリート11に沿ったレーザー光線照射工程が最後になるため、中央領域側の変異量は少ない。従って、これからレーザー加工を施す中央領域側のストリートのズレは僅かであり、ストリートの間隔が大きくストリートの本数が少ないウエーハの場合には、第1のストリート11と集光器524から照射されるレーザー光線の集光点との位置合わせを最初に行えば、第1のレーザー加工工程の途中でレーザー光線の照射によるウエーハの膨張に起因して発生する変位の補正をする必要がない。
【0036】
上述した第1のレーザー加工工程を実施したならば、図8に示すように半導体ウエーハ10の割り出し送り方向Yにおける他方(図8において下方)の最外側の第1のストリート11を集光器524の直下に位置付け、該第1のストリート11の一端を(図8において左端)をレーザー光線照射手段52の集光器524の直下に位置付ける。そして、上述したレーザー光線照射工程と割り出し送り工程とを順次実施することにより、図9に示すように半導体ウエーハ10の内部には他方の半分領域に形成された複数の第1のストリート11に沿って変質層110が形成される(第2のレーザー加工工程)。
【0037】
この第2のレーザー加工工程においても、面積が最も大きい中央領域の第1のストリート11に沿ったレーザー光線照射工程が最後になるため、中央領域側の変異量は少ない。従って、これからレーザー加工を施す中央領域側のストリートのズレは僅かであり、ストリートの間隔が大きくストリートの本数が少ないウエーハの場合には、第1のストリート11と集光器524から照射されるレーザー光線の集光点との位置合わせを最初に行えば、第1のレーザー加工工程の途中でレーザー光線の照射によるウエーハの膨張に起因して発生する変位の補正をする必要がない。
【0038】
上述したように半導体ウエーハ10の第1の方向に形成された複数の第1のストリート11に沿って第1のレーザー加工工程および第2のレーザー加工工程を実施することにより、半導体ウエーハ10の内部に第1のストリート11に沿って変質層110を形成したならば、チャックテーブル36を90度回動しチャックテーブル36に保持されている半導体ウエーハ10を90度回動せしめて、上記第1のストリート11に対して直交する方向に形成された第2のストリート12を加工送り方向Xと平行になるように位置付けるウエーハ位置付け工程を実施する。
【0039】
そして、上述した第1のレーザー加工工程を実施することにより、図10に示すように半導体ウエーハ10の内部には一方(図10において上方)の半分領域に形成された複数の第2のストリート12に沿って変質層120が形成される。次に、上述した第2のレーザー加工工程を実施することにより、図11に示すように半導体ウエーハ10の内部には他方(図10において下方)の半分領域に形成された複数の第2のストリート12に沿って変質層120が形成される。
【0040】
以上のようにして、第1のストリート11に沿って変質層110が形成されるとともに、第2のストリート12に沿って変質層120が形成された半導体ウエーハ10は、次工程である分割工程に送られる。この分割工程においては、変質層110が形成された第1のストリート11および変質層120が形成された第2のストリート12に沿って外力を付与することにより、半導体ウエーハ10を第1のストリート11および第2のストリート12に沿って破断し、個々のデバイスに分割する。
【0041】
上述した第1のストリート11および第2のストリート12に沿って実施する第1のレーザー加工工程および第2のレーザー加工工程においては、半導体ウエーハ10は変質層110およびが変質層120形成された第1のストリート11および第2のストリート12と直交する方向(Y軸方向)に膨張する。この結果、保護テープ30に貼着されている半導体ウエーハ10はY軸方向に変位するが、面積が相対的に小さい側に変位するので、外周側への変異量は大きいが中央領域側への変異量は小さい。従って、これからレーザー加工を施す中央領域側のストリートのズレは僅かであり、ストリートの間隔が大きくストリートの本数が少ないウエーハに対しては上記加工方法は有効であるが、ストリートの間隔が1mm以下と小さくストリートの本数が多い場合には、複数本のストリートに沿ってレーザー加工が実施されることにより累積されるズレ量が所定値以上になると、レーザー光線照射がストリートを外れることがあり、デバイスの品質を低下させる。
【0042】
そこで、本発明においては、予めゲージ用ウエーハに対して被加工用ウエーハに形成されたストリートに対応する加工領域に所定本数の加工領域毎に上記第1のレーザー加工工程および第2のレーザー加工工程を実施し、所定本数の加工領域毎にゲージ用ウエーハのY軸方向における中心側のズレ量を検出することにより所定本数の加工領域毎に補正データを作成し、被加工用ウエーハである半導体ウエーハ10に上記第1のレーザー加工工程および第2のレーザー加工工程を実施する際に、所定本数のストリートに沿ってレーザー加工を実施する毎に、補正データに基づいて割り出し送り量を補正する。
【0043】
ここで、補正データの作成方法について、図12乃至図17を参照して説明する。
先ず、図12に示すようにゲージ用ウエーハ100を用意し、このゲージ用ウエーハ100を環状のフレーム20に装着された保護テープ30に貼着する。なお、ゲージ用ウエーハ100は、図3に示す半導体ウエーハ10と同じ大きさ、同じ厚さ、同じ材質のシリコンウエーハからなっている。
【0044】
図12に示すように、環状のフレーム20に保護テープ30を介して支持されたゲージ用ウエーハ100は、図1に示すレーザー加工装置1のチャックテーブル36上に保護テープ30側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することによりゲージ用ウエーハ100は、保護テープ30を介してチャックテーブル36上に吸引保持される。また、環状のフレーム20は、クランプ362によって固定される。
【0045】
上述したようにチャックテーブル36にゲージ用ウエーハ100を吸引保持したならば、制御手段8は加工送り手段37および第1の割り出し送り手段38を作動して、図13に示すように上記図5に示す半導体ウエーハ10のY軸方向における一方(図5において上方)の最外側の第1のストリート11(第1のレーザー加工工程を実施する前の最初のストリート)と対応する加工領域を撮像手段6の直下に位置付ける。このときにおけるゲージ用ウエーハ100のY軸方向の位置を上記割り出し送り量検出手段384からの検出信号に基づいて基準位置(A)として検出する(基準位置検出工程)。そして、制御手段8は、基準位置(A)をランダムアクセスメモリ(RAM)83に格納する。
【0046】
上述した基準位置検出工程を実施したならば、図14に示すようにゲージ用ウエーハ100に対して上記図5に示す半導体ウエーハ10の一方の半分領域に形成された複数の第1のストリート11における所定本数(例えば5本)と対応する加工領域に上記第1のレーザー加工工程を実施し、半導体ウエーハ10の内部に変質層110を形成する。このようにしてゲージ用ウエーハ100の一方の半分領域における所定本数(例えば5本)の第1のストリート11と対応する加工領域に上記第1のレーザー加工工程を実施し、半導体ウエーハ10の内部に変質層110を形成したならば、制御手段8は第1のレーザー加工工程が実施された所定本数(例えば5本)の加工領域のY軸方向の加工領域間の距離Lを測定する(総距離測定工程)。この加工領域間の総距離Lの測定は、最初にレーザー加工された加工領域(1本目の加工領域)と最後にレーザー加工された加工領域(5本目の加工領域)を撮像手段6の直下に位置付け、その両位置において上記割り出し送り量検出手段384から出力される検出信号に基づいてY軸方向の加工領域間の総距離Lを測定する。次に、最初にレーザー加工された加工領域(1本目の加工領域)と基準位置(A)とのズレ量(L1)を求める(ズレ量測定工程)。このズレ量(L1)は、最初にレーザー加工された加工領域が変移した位置(A1)から基準位置(A)を減算して求めることができる(L1=A1−A)。このズレ量(L1)は、ゲージ用ウエーハ100のY軸方向における外周側の変移量(伸び量)である。しかるに、ゲージ用ウエーハ100は、Y軸方向における中央側にも僅かに変移(伸び)している。従って、ゲージ用ウエーハ100のY軸方向における中央側への変移量(L2)は、第1のレーザー加工工程が実施された所定本数(例えば5本)の加工領域のY軸方向の加工領域間の総距離Lから上記図5に示す半導体ウエーハ10の一方の半分領域に形成された複数の第1のストリート11の所定本数(例えば5本)の間隔L0と上記ゲージ用ウエーハ100のY軸方向における外周側のズレ量(L1)を減算して求めることができる(L2=L−L0−L1)。例えば、第1のストリート11の所定本数(例えば5本)の間隔L0が4mm(各ストリート間の間隔は1mm)、加工領域間の距離Lが4.008mm、最初にレーザー加工された領域(1本目の加工領域)と基準位置(A)とのズレ量(L1)が0.007mmとすると、ゲージ用ウエーハ100のY軸方向における中央側への変移量(L2)は、L2=4.008−4−0.007=0.001mm(1μm)となる。このようにしてゲージ用ウエーハ100のY軸方向における中央側への変移量(L2)を求めたならば、制御手段8はこの変移量(L2)を6本目のレーザー加工位置に対する補正値(α1)としてランダムアクセスメモリ(RAM)83に格納する(補正データ作成工程)。
【0047】
上述した補正データ作成工程を実施したならば、制御手段8は加工送り手段37および第1の割り出し送り手段38を作動して、図14に示すようにチャックテーブル36に保持されたゲージ用ウエーハ100における上記第1のレーザー加工工程が実施された5本目の加工領域を撮像手段11の直下に位置付ける。次に、制御手段8は第1の割り出し送り手段38を作動し、チャックテーブル36に保持されたゲージ用ウエーハ100を上記図5に示す半導体ウエーハ10に形成された複数の第1のストリート11における各ストリート間の間隔分(1mm)だけ割り出し送りする。従って、図5に示す半導体ウエーハ10に形成された複数の第1のストリート11における6本目のストリートに対応する加工領域が図14において2点鎖線で示すように撮像手段6の直下に位置付けられる。このときにおけるゲージ用ウエーハ100のY軸方向の位置を上記割り出し送り量検出手段384からの検出信号に基づいて新たな基準位置(B)として検出する(基準位置検出工程)。そして、制御手段8は、新たな基準位置(B)をランダムアクセスメモリ(RAM)83に格納する。
【0048】
上述した基準位置検出工程を実施したならば、図14に示すようにゲージ用ウエーハ100に対して上記図5に示す半導体ウエーハ10の一方の半分領域に形成された複数の第1のストリート11における所定本数(例えば5本)と対応する加工領域に上記第1のレーザー加工工程を実施し、半導体ウエーハ10の内部に変質層110をする。従って、この第1のレーザー加工工程によって加工される加工領域は最初にレーザー加工された加工領域から6本目〜10本目となる。
【0049】
上述したように、ゲージ用ウエーハ100に対して6本目〜10本目のレーザー加工を施したならば、制御手段8は上記総距離測定工程とズレ量測定工程および補正データ作成工程を実施して、11本目のレーザー加工位置に対する補正値(α2)を求め、この補正値(α2)をランダムアクセスメモリ(RAM)83に格納する。
【0050】
以上のようにして、ゲージ用ウエーハ100に対して上記図14に示す半導体ウエーハ10の一方の半分領域に形成された複数の第1のストリート11に対応して上記基準位置検出工程、第1のレーザー加工工程、総距離測定工程、ズレ量測定工程および補正データ作成工程を実施することにより、レーザー加工領域の所定本数(例えば5本)毎に補正値(α1〜αn)を求め、この補正値(α1〜αn)を制御手段8のランダムアクセスメモリ(RAM)83に格納する。
【0051】
上述したようにゲージ用ウエーハ100の一方の半分領域に対してレーザー加工領域の所定本数(例えば5本)毎に補正値(α1〜αn)を求めたならば、図15に示すようにゲージ用ウエーハ100の他方の半分領域に対して上記基準位置検出工程、第2のレーザー加工工程、総距離測定工程、ズレ量測定工程および補正データ作成工程を実施することにより、レーザー加工領域の所定本数(例えば5本)毎に補正値(β1〜βn)を求め、この補正値(β1〜βn)を制御手段8のランダムアクセスメモリ(RAM)83に格納する。
【0052】
次に、チャックテーブル36を90度回動しチャックテーブル36に保持されているゲージ用ウエーハ100を90度回動せしめる。そして、ゲージ用ウエーハ100の一方の半分領域に対して図16に示すようにゲージ用ウエーハ100の一方の半分領域に対して上記基準位置検出工程、第2のレーザー加工工程、総距離測定工程、ズレ量測定工程および補正データ作成工程を実施することにより、レーザー加工領域の所定本数(例えば5本)毎に補正値(γ1〜γn)を求め、この補正値(γ1〜γn)を制御手段8のランダムアクセスメモリ(RAM)83に格納する。
【0053】
また、図17に示すようにゲージ用ウエーハ100の他方の半分領域に対して上記基準位置検出工程、第2のレーザー加工工程、総距離測定工程、ズレ量測定工程および補正データ作成工程を実施することにより、レーザー加工領域の所定本数(例えば5本)毎に補正値(δ文字〜δn))を求め、この補正値(δ1〜δn)を制御手段8のランダムアクセスメモリ(RAM)83に格納する。
【0054】
以上のようにして、ゲージ用ウエーハ100に実施したレーザー加工領域の所定本数(例えば5本)毎に補正値(α1〜αn)(β1〜βn)(γ1〜γn)(δ1〜δn)を制御手段8のランダムアクセスメモリ(RAM)83に格納することにより、この補正値(α1〜αn)(β1〜βn)(γ1〜γn)(δ1〜δn)を用いて補正しつつ図3に示す半導体ウエーハ10に対して上記第1のレーザー加工工程および第2のレーザー加工工程を実施することができる。即ち、図3に示す半導体ウエーハ10に対して上記図5乃至図7に示す第1のレーザー加工工程を実施する際には、それぞれ5本の第1のストリート11に沿ってレーザー加工を実施して半導体ウエーハ10の内部に変質層110を形成したならば、それぞれ6本目の第1のストリート11に対する割り出し送り量は第1のストリート11の間隔に補正値(α1〜αn)を加算した値とする。この結果、5本の第1のストリート11に沿ってレーザー加工を実施して半導体ウエーハ10の内部に変質層を形成することにより、半導体ウエーハ10が膨張して中央側に僅かな変位(伸び)が累積されていても、それぞれ6本目の第1のストリート11は集光器524の直下に正確に位置付けられる。このように、所定本数の第1のストリート11に沿って第1のレーザー加工工程を実施する毎に割り出し送り量を補正するので、半導体ウエーハ10を第1のストリート11に沿って品質上影響を及ぼすことなく効率よくレーザー加工することができる。
【0055】
上述した第1のレーザー加工工程を実施したならば、上記図8および図9に示す第2のレーザー加工工程を実施する。この第2のレーザー加工工程を実施する際には、それぞれ5本の第1のストリート11に沿ってレーザー加工を実施して半導体ウエーハ10の内部に変質層110を形成したならば、それぞれ6本目の第1のストリート11に対する割り出し送り量は第1のストリート11の間隔に補正値(β1〜βn)を加算した値とする。この結果、5本の第1のストリート11に沿ってレーザー加工を実施して半導体ウエーハ10の内部に変質層110を形成することにより、半導体ウエーハ10が膨張して中央側に僅かな変位(伸び)が累積されていても、それぞれ6本目の第1のストリート11は集光器524の直下に正確に位置付けられる。
【0056】
次に、チャックテーブル36を90度回動しチャックテーブル36に保持されている半導体ウエーハ10を90度回動せしめて、上記第1のストリート11に対して直交する方向に形成された第2のストリート12に沿って上記図10に示す第1のレーザー加工工程を実施する。この第1のレーザー加工工程を実施する際には、それぞれ5本の第1のストリート11に沿ってレーザー加工を実施して半導体ウエーハ10の内部に変質層120を形成したならば、それぞれ6本目の第2のストリート12に対する割り出し送り量は第2のストリート12の間隔に補正値(γ1〜γn)を加算した値とする。この結果、5本の第2のストリート12に沿ってレーザー加工を実施して半導体ウエーハ10の内部に変質層120を形成することにより、半導体ウエーハ10が膨張して中央側に僅かな変位(伸び)が累積されていても、それぞれ6本目の第2のストリート12は集光器524の直下に正確に位置付けられる。
【0057】
上述した第1のレーザー加工工程を実施したならば、上記図11に示す第2のレーザー加工工程を実施する。この第2のレーザー加工工程を実施する際には、それぞれ5本の第2のストリート12に沿ってレーザー加工を実施して半導体ウエーハ10の内部に変質層120を形成したならば、それぞれ6本目の第2のストリート12に対する割り出し送り量を第2のストリート12の間隔に補正値(δ1〜δn)を加算した値とする。この結果、5本の第2のストリート12に沿ってレーザー加工を実施して半導体ウエーハ10の内部に変質層120を形成することにより、半導体ウエーハ10が膨張して中央側に僅かな変位(伸び)が累積されていても、それぞれ6本目の第2のストリート12は集光器524の直下に正確に位置付けられる。
【0058】
以上のように本発明によれば、半導体ウエーハ10に形成された第1のストリート11および第2のストリート12に沿ってレーザー加工する際に、所定本数のストリートに沿ってレーザー加工工程を実施する毎に割り出し送り量を予め設定された補正値に基づいて補正するので、半導体ウエーハ10を第1のストリート11および第2のストリート12に沿って品質上影響を及ぼすことなく効率よくレーザー加工することができる。
【0059】
以上、本発明を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲で種々の変形は可能である。例えば、上述した実施形態においては半導体ウエーハの内部に第1のストリート11および第2のストリート12に沿って変質層を形成するレーザー加工について説明したが、半導体ウエーハの一方の面側から第1のストリート11および第2のストリート12に沿ってウエーハに対して吸収性を有する波長のレーザー光線を照射してレーザー加工溝を形成するレーザー加工に本発明を実施しても同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0060】
1:レーザー加工装置
2:静止基台
3:チャックテーブル機構
36:チャックテーブル
37:加工送り手段
38:第1の割り出し送り手段
4:レーザー光線照射ユニット支持機構
43:第2の割り出し送り手段
5:レーザー光線照射ユニット
52:レーザー光線照射手段
524:集光器
6:撮像手段
8:制御手段
10:半導体ウエーハ
11:第1のストリート
12:第2のストリート
13:デバイス
20:環状のフレーム
30:保護テープ
100:ゲージ用ウエーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工用ウエーハを保持し回転可能に構成されたチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハにレーザー光線を照射する集光器を備えたレーザー光線照射手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段とを相対的に加工送り方向(X軸方向)に加工送りする加工送り手段と、該チャックテーブルと該レーザー光線照射手段とをX軸方向と直交する割り出し送り方向(Y軸方向)に割り出し送りする割り出し送り手段とを具備するレーザー加工装置を用いて、表面に複数の平行なストリートが形成された被加工用ウエーハにストリートに沿ってレーザー加工を施すウエーハのレーザー加工方法であって、
被加工用ウエーハの表面または裏面に保護部材を貼着し、該保護部材側を該チャックテーブルに保持するウエーハ保持工程と、
該チャックテーブルに保持されている被加工用ウエーハに形成された複数のストリートをX軸方向と平行に位置付けるウエーハ位置付け工程と、
該ウエーハ位置付け工程が実施された被加工用ウエーハのY軸方向における一方の最外側のストリートを該集光器の直下に位置付け、該集光器からレーザー光線を照射しつつ該加工送り手段を作動して該チャックテーブルを加工送りすることによりストリートに沿ってレーザー加工を施すレーザー光線照射工程と、該割り出し送り手段を作動し該チャックテーブルに保持された被加工用ウエーハにおける該レーザー光線照射工程が実施されたストリートに隣接するストリートを該集光器の直下に位置付ける割り出し送り工程とを順次実施し、被加工用ウエーハの一方の半分領域に形成された複数のストリートに沿ってレーザー加工を施す第1のレーザー加工工程と、
該第1のレーザー加工工程が実施された被加工用ウエーハのY軸方向における他方の最外側のストリートを該集光器の直下に位置付け、該集光器からレーザー光線を照射しつつ該加工送り手段を作動して該チャックテーブルを加工送りすることによりストリートに沿ってレーザー加工を施すレーザー光線照射工程と、該割り出し送り手段を作動し該チャックテーブルに保持された被加工用ウエーハにおける該レーザー光線照射工程が実施されたストリートに隣接するストリートを該集光器の直下に位置付ける割り出し送り工程とを順次実施し、被加工用ウエーハの他方の半分領域に形成された複数のストリートに沿ってレーザー加工を施す第2のレーザー加工工程と、を含み、
予めゲージ用ウエーハに対して被加工用ウエーハに形成されたストリートに対応する加工領域に所定本数の加工領域毎に該第1のレーザー加工工程および該第2のレーザー加工工程を実施して所定本数の加工領域毎にゲージ用ウエーハのY軸方向における中心側のズレ量を検出することにより所定本数の加工領域毎に補正データを作成し、
被加工用ウエーハに対して該第1のレーザー加工工程および該第2のレーザー加工工程を実施する際に、該所定本数のストリートに沿ってレーザー加工を実施する毎に、該補正データに基づいて割り出し送り量を補正する、
ことを特徴とするウエーハのレーザー加工方法。
【請求項2】
該補正データは、ゲージ用ウエーハに対して被加工用ウエーハに形成された複数のストリートに対応する加工領域における第1のレーザー加工工程および第2のレーザー加工工程を実施する前の最初の加工領域のY軸方向の基準位置を検出する基準位置検出工程と、
ゲージ用ウエーハに対して被加工用ウエーハに形成された複数のストリートに対応する加工領域に第1のレーザー加工工程および第2のレーザー加工工程を実施し、所定本数の加工領域毎に最初の加工領域と最後の加工領域とのY軸方向における総距離を測定する総距離測定工程と、
レーザー加工が実施された最初の加工領域と該基準位置とのY軸方向のズレ量を測定するズレ量測定工程と、
該総距離測定工程によって得られた総距離から被加工用ウエーハに形成された複数のストリーの所定本数の間隔と該ズレ量測定工程によって得られたズレ量を減算した値を補正値とする補正データ作成工程とによって求める、請求項1記載のウエーハのレーザー加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−49454(P2011−49454A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198204(P2009−198204)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】