説明

ウレタン樹脂組成物、硬化体及び硬化体を用いた光半導体装置

【課題】本発明は、硬質でガラス転移温度が高く、透明性の均一さに優れた硬化体、それを用いた光半導体装置、及びそれらを得ることが可能なウレタン樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】ポリオール成分を含むA液とポリイソシアネート成分を含むB液とからなるウレタン樹脂組成物であって、上記A液が、水酸基価が600mgKOH/g以上1300mgKOH/g以下、分子量が400以下である3官能以上のポリオール化合物を含むことを特徴とするウレタン樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン樹脂組成物、硬化体及び硬化体を用いた光半導体装置に関し、より詳しくは、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを含むウレタン樹脂組成物、硬化体及び硬化体を用いた光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光半導体装置では、光半導体素子を保護するために樹脂組成物を硬化することによって封止部材を成型する。樹脂組成物の硬化、成型は、通常、ケース内やリードフレームのキャビティ内に注型するポッティング法や、成型装置内の成型金型によって形成されるキャビティ内に樹脂組成物を充填する液状トランスファー成型法や、コンプレッション成型法等で行われる。このとき、透明樹脂とリードフレームのみで光半導体装置の形状を形成する構造や、透明樹脂でレンズ形状を形成する構造においては、硬質な透明樹脂が求められる。
【0003】
また、各種の実装信頼性を確保するために硬化体のガラス転移温度は高い方が好ましい。硬質、高ガラス転移温度の硬化体を得るには、架橋密度を高く設定することが一般的である。ウレタン樹脂系においても高架橋密度を得るには、ポリオール成分に短鎖長の多官能ポリオール化合物を含有することが有効であり、非特許文献1では、トリメチロールプロパンやグリセリンをポリオール成分に含有する例が示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Journal of Wuhan University of Technology Mater.Sci.Ed Vol.20, No.2. Jun.2005,24−28
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、トリメチロールプロパンやグリセリン等のポリオールは極性が高いためイソシアネート成分との相溶性に劣る、立体障害が大きいためイソシアネート成分との反応性に劣る等の問題がある。特に上記ポリオールを他のポリオール化合物と併用した場合には、反応性の違いから硬化体にゆらぎが見られる等、均一な硬化体が得られ難い傾向がある。
【0006】
ウレタン樹脂においても、高架橋密度を得るために短鎖長の多官能ポリオールを使用することが知られている。しかしながら、その導入量が多くなると他のポリオール化合物との反応性の違いから均一な硬化体が得られ難い、未硬化な成分が起因と推察される気泡の発生等の不具合が見られる。
【0007】
このように、短鎖長の多官能ポリオールの導入率を多くすると、硬質で高ガラス転移温度の硬化体が得られるが、硬化体の均一性が劣る傾向があり、その両方が必ずしも高い水準で保持されるものではなかった。
【0008】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、硬質でガラス転移温度が高く、且つ均一性に優れる硬化体を得ることが可能なウレタン樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、ポリオール成分を含むA液と、ポリイソシアネート成分を含むB液とから成るウレタン樹脂組成物であって、上記A液が水酸基価が600mgKOH/g以上1300mgKOH/g以下、分子量が400以下である3官能以上のポリオール化合物を含むことを特徴とするウレタン樹脂組成物である。このようなウレタン樹脂組成物から得られる硬化体は硬質でガラス転移温度が高く、更に均一性にも優れている。
【0010】
本発明のウレタン樹脂組成物によって、その硬化体が硬質で高いガラス転移温度と均一性を両立できる理由は必ずしも明らかではないが、本発明者らは以下のように考えている。すなわち、水酸基価を600mgKOH/g以上1300mgKOH/g以下、分子量が400以下の範囲に設定したポリオール化合物により、ポリオール成分の好ましくは、80質量%以上を構成する場合、ポリオール成分が反応性の異なる複数種のポリオールから構成される場合より、ポリオール種間での反応性の差が少ないため、硬度やガラス転移温度は維持したまま、より均一な硬化体が得られると考えられる。
【0011】
上記ポリイソシアネート成分は、脂環基及び2個又は3個のイソシアネート基を有し、少なくとも1個のイソシアネート基が上記脂環基を構成する第二級炭素に結合している脂環式ポリイソシアネート化合物を30質量%以上含むことが好ましい。ポリイソシアネート成分がこのような構造を有するポリイソシアネートを含むことによって、得られる硬化体のガラス転移温度を更に向上させることができる。
【0012】
また、上記ポリオール化合物がトリメチロールプロパン又はプロパン−1,2,3−トリオールに、プロピレンオキサイド,エチレンオキサイド又はカプロラクトンを付加した化合物であることが好ましい。
【0013】
また、上記ポリオール化合物がトリメチロールプロパン1モルに対しプロピレンオキサイドを1〜2モル付加した化合物であることが好ましい。
【0014】
また、上記ポリオール化合物の含有量が、上記ポリオール成分の全量に対して、80質量%以上であることが好ましい。上記範囲で含むことによって、硬化体の硬度とガラス転移温度を高く、同時に、均一な硬化体をバランスよく得ることができる。
【0015】
また、上記A液又はB液が、下記一般式(1)で表される飽和脂肪酸を含むか、又は、上記飽和脂肪酸と、下記一般式(2)で表される重量平均分子量が16000以下のシリコーン−カプロラクトンブロック共重合体と、を更に含むことが好ましい。
【0016】
【化1】

【0017】
式中、Rは炭素数7〜28の直鎖状又は分岐状の炭化水素基を示す。
【0018】
【化2】

【0019】
式中、m及びnは、m/nが0.5〜1.0を満たす正の整数である。R及びRは、それぞれ独立に、2価の炭化水素基又はポリエーテル鎖を示す。
【0020】
上記飽和脂肪酸及びシリコーン−カプロラクトンブロック共重合体は、いずれも離型剤として機能する。A液又はB液が、これらの化合物を更に含むことによって、ウレタン樹脂組成物を成型して硬化体を得る際に、銀メッキとの密着性を損なわずに、成型用の金型との離型性を向上させることができる。
【0021】
また、上記A液又は上記B液が無機充填材を更に含むことが好ましい。無機充填材を更に含むことによって、硬化体の熱膨張係数をリードフレームの熱膨張係数に近づけ、耐熱試験や温度サイクル試験において、リードフレームとの剥離が生じにくくすることができる。
【0022】
また、上記A液又は上記B液が、銀メッキやパラジウムメッキとの接着性付与剤を更に含むことが好ましい。銀メッキやパラジウムメッキとの接着性を高めることによって耐熱試験や温度サイクル試験において、リードフレームとの剥離が生じにくくすることができる。
【0023】
本発明では更に、上記ウレタン樹脂組成物の硬化体からなる封止部材を備える光半導体装置が提供される。このような光半導体装置は、硬化体の光透過性、均一性が高く、耐光着色等の光学特性及び機械特性に優れる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、硬質でガラス転移温度が高く、且つ均一性に優れる硬化体を得ることが可能なウレタン樹脂組成物を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】光半導体装置の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0027】
本実施形態のウレタン樹脂組成物は、ポリオール成分を含むA液と、ポリイソシアネート成分を含むB液とから成るウレタン樹脂組成物で、上記A液が水酸基価が600mgKOH/g以上1300mgKOH/g以下であり、分子量が400以下である3官能以上のポリオール化合物を含むことを特徴とするウレタン樹脂組成物である。
(ポリオール成分)
本実施形態におけるポリオール成分は、3つ以上のアルコール性水酸基を有する化合物(ポリオール)からなる成分である。ポリオールとしては、例えば脂肪族ポリオール、脂環式ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、アクリル樹脂ポリオールが挙げられる。
【0028】
本実施形態におけるポリオール成分は、水酸基価が600mgKOH/g以上1300mgKOH/g以下、分子量が400以下であるポリオール化合物を含む。上記ポリオール化合物はトリメチロールプロパン又はプロパン−1,2,3−トリオールに、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイド又はカプロラクトンを付加した化合物が好ましく、トリメチロールプロパン1モルに対してプロピレンオキサイドを1〜2モル付加した化合物であることがより好ましい。このような水酸基当量及び分子量のポリオールを選択することによって、硬質でガラス転移温度の高い硬化体を得ることができる。特に、固体性状であるトリメチロールプロパン1モルに対してプロピレン、又はエチレンオキサイドを1〜2モル付加した誘導体は液状であり、更にはプロピレンオキサイドを用いた場合、そのメチル基の立体障害によってエチレンオキサイドより硬化体のガラス転移温度を高めることが可能であり好ましい。
【0029】
これらは単独で用いてもよいが、架橋密度や粘度を調整するために、他のポリオールと併用することが好ましい。その場合、上記水酸基価が600mgKOH/g以上1300mgKOH/g以下、分子量が400以下であるポリオール化合物は、ポリオール成分の全量に対して80質量%以上とすることが好ましい。このような範囲にすることで、ポリオールを数種併用した場合でも、均一な硬化体が得られ、未硬化な成分が起因と推察される気泡の発生等の不具合も低減できる。
【0030】
上記ポリオール成分には、水酸基残存プレポリマーが含まれてもよい。ポリオール成分に、水酸基残存プレポリマーを含むことによって、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との相溶性を向上させることができる。水酸基残存プレポリマーは、上記ポリオールと後述するポリイソシアネート(好ましくは後述する脂環基を有するポリイソシアネート)とを、上記ポリオール中の水酸基が、上記ポリイソシアネート中イソシアネート基に対して過剰になるように反応させることによって得られる。ポリオール中の水酸基当量をX、ポリイソシアネート中のイソシアネート基当量をYとしたときの比をX/Yとすると、水酸基残存プレポリマーは、X/Yが3〜20となるように、ポリオールとポリイソシアネートとを混合、反応させて得られることが好ましい。X/Yが3以上の値をとることによって、上記水酸基残存プレポリマーの分子量の増大を抑制し、取り扱いやすい粘度に保つことが可能となる。X/Yが20以下の値をとることによって、プレポリマーの効果を有効に得ることができる傾向にある。また、水酸基残存プレポリマーの合成は、触媒を添加することによって短縮することもできるが、ポリマーの着色を避けるために無触媒下で室温又は加熱反応させることが好ましい。
(ポリイソシアネート成分)
本実施形態におけるポリイソシアネート成分は、2以上のイソシアネート基を有する化合物(ポリイソシアネート)からなる成分である。ポリイソシアネートは、脂肪族や脂環式ポリイソシアネートが好ましく、脂環基及び2個又は3個のイソシアネート基を有し、少なくとも1個のイソシアネート基が上記脂環基を構成する第二級炭素に結合している脂環式ポリイソシアネート化合物がより好ましい。その具体例としては、イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス−(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−ビス−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、又はノルボルネンジイソシアネート(2,5−(2,6)−ビス−イソシアネトメチル[2,2,1]ヘプタン)等が挙げられる。
【0031】
また、ポリイソシアネートを原料としたイソシアヌレート型、ビゥレット型、又はアダクト型のポリイソシアネートを用いてもよく、特にヘキサメチレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネートを原料としたイソシアヌレート型ポリイソシアネートが好ましい。これらのようなポリイソシアネートを用いることで、得られる硬化体のガラス転移温度を向上させることができる。上記脂環基を有するポリイソシアネートのポリイソシアネート成分全体に対する割合は、30質量%以上であることがより好ましい。これによって、硬化体の耐高温高湿性をより向上させることができる。
【0032】
ポリイソシアネート成分には、イソシアネート基残存プレポリマーが含まれることが好ましい。ポリイソシアネート成分に、イソシアネート基残存プレポリマーを含むことによって、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との相溶性を向上させることができる。イソシアネート基残存プレポリマーは、上記ポリイソシアネート(好ましくは上記脂環基を有するポリイソシアネート)と上記ポリオールとを、上記ポリイソシアネート中のイソシアネート基が、上記ポリオール中の水酸基に対して過剰になるように反応させることによって得られる。イソシアネート基残存プレポリマーは、上述のX/Yが0.05〜0.3となるように、ポリオールとポリイソシアネートとを混合、反応させて得られることが好ましい。X/Yが0.05以上の値をとることで、プレポリマーの効果を有効に得ることができるようになる傾向にある。X/Yが0.3以下の値をとることで、上記イソシアネート基残存プレポリマーの分子量の増大を抑制し、取り扱いやすい粘度に保つことが可能となる。また、イソシアネート基残存プレポリマーの合成は、触媒を添加することによって短縮することもできるが、ポリマーの着色を避けるために無触媒下で室温又は加熱反応させることが好ましい。
(離型剤)
本実施形態におけるA液及び/又はB液が、離型剤として下記一般式(1)で表される飽和脂肪酸、又は上記飽和脂肪酸と、下記一般式(2)で表されるシリコーン−カプロラクトンブロック共重合体とを更に含むことが好ましい。
【0033】
【化3】

【0034】
式中、Rは炭素数7〜28の直鎖状又は分岐状の炭化水素基を示す。
【0035】
【化4】

【0036】
式中、m及びnは、m/nが0.5〜1.0を満たす正の整数を示す。R及びRは、それぞれ独立に、2価の炭化水素基又はポリエーテル鎖を示す。
【0037】
上記飽和脂肪酸としては、カプリル酸、ペラルゴン酸、ラウリン酸、ミスチリン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸等が挙げられる。また、一般式(1)においてRの炭素数は、通常7〜28であり、10〜22であることが好ましく、14〜18であることがより好ましい。中でも、炭素数が17のイソステアリン酸は液体で、ウレタン樹脂組成物の粘度を調整できる点で特に好ましい。
【0038】
上記飽和脂肪酸において、式中のm/nは0.5〜1.0を満たすことが好ましい。m/nの比が0.5以上のとき、他の材料との相溶性が高く、硬化体に白濁が生じる等の不具合を抑制できる。また、m/nの比が1.0以下のとき、成型金型との優れた離型性を得ることができる。上記シリコーン−カプロラクトンブロック共重合体は、溶解性に優れる点で重量平均分子量が16000以下であることが好ましい。
【0039】
ウレタン樹脂組成物に、上記飽和脂肪酸及び上記シリコーン−カプロラクトンブロック共重合体を含むことで、ウレタン樹脂組成物を成型して硬化体を得る際に、成型金型との離型性を向上させることができる。
【0040】
上記離型剤の含有量は、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との全量に対し、0.01〜5.0質量%であることが好ましい。離型剤の含有量が0.01質量%以上のとき、成型金型との離型性に優れる傾向があり、5.0質量%以下のとき、硬化体のガラス転移温度等の耐熱性が低下することを抑制する傾向にある。また、上記飽和脂肪酸及び上記シリコーン−カプロラクトンブロック共重合体を併用することが好ましい。溶解性の点から上記飽和脂肪酸及び上記シリコーン−カプロラクトンブロック共重合体はイソシアネート成分のB液側に添加することが好ましい。
(接着性付与剤)
リードフレームの銀メッキやパラジウムメッキとの接着性を得るためにチオール基を有する化合物を接着性付与剤として添加することが好ましい。チオール基を有する化合物としては、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のチオール基含有シランカップリング剤や、2つ以上のチオール基を有する化合物(以下、ポリチオールという。)が好ましく、例えばチオール基が第一級炭素に結合している化合物、チオール基が第二級炭素に結合している化合物、1つ以上のチオール基が第一級炭素に結合し、1つ以上のチオール基が第二級炭素に結合している化合物等が挙げられる。
【0041】
チオール基が第一級炭素に結合している化合物としては、トリス−[(3−メルカプトプロピオニルオキシ)−エチル]−イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリス−(3−メルカプトプロピオネート)等のチオール基を3つ有する化合物;ペンタエリスリトールテトラキス−3−メルカプトプロピオネート等のチオール基を4つ有する化合物;ジペンタエリスリトールヘキサ−3−メルカプトプロピオネート等のチオール基を6つ有する化合物等が挙げられる。
【0042】
また、チオール基が第二級炭素に結合している化合物としては、1,4−ビス−(3−メルカプトブチルオキシ)ブタン等のチオール基を2つ有する化合物;1,3,5−トリス−(3−メルカプトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン等のチオール基を3つ有する化合物;ペンタエリスリトールテトラキス−3−メルカプトブチレート等のチオール基を4つ有する化合物等が挙げられる。
【0043】
チオール化合物の含有量は、上記ポリオール成分と上記イソシアネート成分との全量に対して、0.01〜2.0質量%であることが好ましい。チオール化合物の含有量が、0.01質量%以上であるとき、銀メッキとの密着性を向上させる傾向があり、2.0質量%以下であるとき、硬化体のガラス転移温度等の耐熱性を保持することができる傾向がある。また、ウレタン樹脂組成物に上述の離型剤を含む場合に、成型金型との離型性を損なうことなく、硬化体と銀メッキとの密着性を向上させることができる。
【0044】
上記チオール化合物はイソシアネート成分と反応するので、ポリオール成分のA液側に添加することが好ましい。
(無機充填材)
本実施形態に係る上記A液又は上記B液は、無機充填材を更に含んでも良い。無機充填材としては、硬化体の光透過性を維持するためにシリカであることが好ましく、ウレタン樹脂組成物中に高密充填するために粒子径の異なるシリカ粉末を混合して用いることが好ましい。ウレタン樹脂組成物に無機充填材を含むことで、硬化体の熱膨張係数を光半導体装置のリードフレームの熱膨張係数に近づけることができ、耐熱試験や温度サイクル試験において、リードフレームとの剥離が生じにくくなる。
(その他材料)
本実施形態に係る上記A液又は上記B液は、上記以外に酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、有機充填材、重合禁止剤、硬化触媒、カップリング剤等を含んでもよい。また、成型性の観点から、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤等を含んでもよい。
【0045】
酸化防止剤としては、ヒンダード型フェノール系、硫黄系、リン系等の酸化防止剤が挙げられる。これらの中でも特にヒンダード型フェノール系、硫黄系酸化防止剤を、1種を単独で、又は複数種を組み合わせて使用することが好ましい。具体的には、[2−{3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニル}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。酸化防止剤の含有量は、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との全量に対し、0.05〜5質量%であることが好ましく、0.05〜0.3質量%であることがより好ましい。酸化防止剤の含有量が0.05質量%以上であるとき、酸化防止剤としての効果が有効に得られやすい傾向にあり、5質量%以下であるとき、溶解性や硬化時の硬化体表面への析出等の問題が生じにくくなる傾向にある。
【0046】
硬化触媒としては、亜鉛、ジルコニウム、又はアルミニウム等の有機金属系、ジブチルスズラウレート等のスズ系、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカン−7−エン)のフェノール塩、オクチル酸塩、アミン、イミダゾール等の触媒を使用することができる。これらの中でも、ステアリン酸亜鉛が耐熱着色性及びウレタン樹脂組成物の室温での粘度安定性に優れるため好ましい。硬化触媒の含有量は、ウレタン樹脂組成物全量に対して、0.001〜1質量%であることが好ましく、0.002〜0.1質量%であることがより好ましい。硬化触媒の含有量が0.001質量%以上であるとき、硬化促進の効果が現れる傾向にあり、1質量%以下であるとき、硬化体の白濁を抑制できる傾向にある。硬化触媒を加えることで、ウレタン樹脂組成物の硬化性を高めることができる。
【0047】
カップリング剤としては、エポキシ基、ウレイド基等を有するシランカップリング剤等が挙げられる。ウレタン樹脂組成物中のカップリング剤の含有量は、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との全量に対して、0.1〜2質量%であることが好ましい。ウレタン樹脂組成物中にカップリング剤を含むことで、硬化体とリードフレームの銀メッキ、発光素子、ワイヤ、無機充填材等との密着性が向上する。
(硬化体)
本実施形態に係る硬化体は、ポリオール成分を含むA液とポリイソシアネート成分を含むB液とを混合し、これを加熱して反応させることによって製造することができる。ポリオール成分とポリイソシアネート成分との混合比、及び水酸基残存プレポリマーとイソシアネート基残存プレポリマーの混合比は、ウレタン樹脂組成物中の(ポリオールと水酸基残存プレポリマーの合計の水酸基等量)/(ポリイソシアネートとイソシアネート基残存プレポリマーの合計のイソシアネート基等量)が0.7〜1.3であることが好ましく、0.8〜1.1であることがより好ましい。上記混合比が0.7〜1.3の範囲にあることで、硬化体が耐熱性、光学特性、及び機械特性が向上する傾向にある。無機充填材は、A液とB液とを混合した後に、ウレタン樹脂組成物に加えられてもよい。
(光半導体装置)
以上のように得られるウレタン樹脂組成物を、液状トランスファー成型又はコンプレッション成型することによって光半導体素子の封止を行い、光半導体装置を製造することができる。このとき、ウレタン樹脂組成物は165℃におけるゲル化時間が25〜200秒であることが好ましい。ゲル化時間をこの範囲とすることで、従来の固形トランスファー成型とほぼ同じ成型条件での製造が可能となる。ゲル化時間が25秒より短いと、溶融したウレタン樹脂組成物が成型金型(以下、単に「金型」という。)内の流路を十分に満たす前に硬化し、硬化体の成型物に未充填部位やボイドが発生しやすくなる傾向にある。一方、ゲル化時間が200秒より長いと、硬化不十分な成型物となる傾向がある。
【0048】
図1は、光半導体装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。図1に示す光半導体装置200は、一対のリードフレーム102(102a,102b)と、一方のリードフレーム102a上に設けられた接着部材103と、接着部材103上に備えられた光半導体素子104と、光半導体素子104と他方のリードフレーム102bとを電気的に接続するワイヤ105と、一対のリードフレーム102の一部、接着部材103、光半導体素子104及びワイヤ105を封止する封止部材106とを有している。光半導体装置200は、表面実装型と呼ばれるものである。
【0049】
リードフレーム102は、一方のリードフレーム102aと他方のリードフレーム102bとからなる。このリードフレーム102は、金属等の導電材料からなる部材であり、その表面は通常銀メッキによって被覆されている。また、一方のリードフレーム102aと他方のリードフレーム102bとは、互いに分離している。接着部材103は、一方のリードフレーム102aと光半導体素子104とを接着して互いに固定すると共に、それらを電気的に接続するための部材である。接着部材103は、例えば銀ペーストから形成される。
【0050】
光半導体素子104には、順方向に電圧を加えた際に発光する発光ダイオード素子等が挙げられる。また、ワイヤ105は光半導体素子104と他方のリードフレーム102bとを電気的に接続できる金属細線等の導電ワイヤである。
【0051】
封止部材106は、上記ウレタン樹脂組成物の硬化体で形成される。封止部材106は、光半導体素子104を外気から保護すると共に、光半導体素子104から発せられた光を外部に取り出す役割を担っているため、高い光透過性を有するものである。本実施形態において、封止部材106は凸レンズ形状であるレンズ部106bによって光半導体素子104から発せられた光が集約される。
【0052】
以上説明した本実施形態の光半導体装置200は、その製造工程の一部に液状トランスファー成型又はコンプレッション成型を採用することができ、これによって成型時間を短くして生産性を高めることが可能となる。また、液状トランスファー成型又はコンプレッション成型を採用することで、図1のような光の取り出し効率が向上するようなレンズ形状を付与する効果も得られる。
【0053】
光半導体装置200は、光半導体素子と、これを封止する封止部材とを備えていればよく、上述のような表面実装型に代えて砲弾型であってもよい。
【0054】
次に、光半導体装置の製造方法の好適な実施形態について、図1の光半導体装置200を製造する場合を例にして説明する。本実施形態に係る光半導体装置200の製造方法は、上記ウレタン樹脂組成物を液状トランスファー成型又はコンプレッション成型によって硬化成型して、光半導体装置200の封止部材106を形成する工程を備えている。
【0055】
組立部品は、一対のリードフレーム102(102a,102b)と、その一方のリードフレーム102a上に設けられた接着部材103と、接着部材103上に形成された光半導体素子104と、光半導体素子104と他方のリードフレーム102bとを電気的に接続するワイヤ105とを備える。まず、この構造体を、成型装置が備える金型によって形成されるキャビティ内の所定の位置に設置する。成型装置は、液状トランスファー成型又はコンプレッション成型に用いられるものであって、その金型によって形成されるキャビティが、目的とする硬化体の形状をなしているものであれば特に限定されない。
【0056】
次に、上記ウレタン樹脂組成物を準備して、それを成型装置のポット内に充填し、プランジャーを起動させて、上記ウレタン樹脂組成物をポット内からランナ、ゲート等の流路を経由して、所定の温度に加熱した金型のキャビティ内に圧入する。金型は、通常、分離可能な上金型及び下金型から構成されており、それらを連結することによって、キャビティが形成される。その後、ウレタン樹脂組成物をキャビティ内に一定時間保持することによって、キャビティ内に充填したウレタン樹脂組成物を上記構造体上で硬化する。これによって、ウレタン樹脂組成物の硬化体が、目的とする形状に成型され、複数の組立部品を封止すると共に、上記構造体に密着する。
【0057】
金型温度は、上記流路においては、上記ウレタン樹脂組成物の流動性が高く、キャビティ内では、上記ウレタン樹脂組成物が短時間で硬化できるような温度に設定することが好ましい。この温度は、上記ウレタン樹脂組成物の組成にも依存するが、例えば120〜200℃であることが好適である。また、キャビティ内にウレタン樹脂組成物を圧入する際の射圧は、キャビティ内全体に上記ウレタン樹脂組成物を隙間なく充填できるような圧力を設定することが好ましく、具体的には2MPa以上であることが好ましい。射圧が2MPa以上であるとき、キャビティ内の未充填部位や、封止部材106内のボイドが発生しにくくなる傾向にある。
【0058】
上記ウレタン樹脂組成物の硬化体(封止部材106)を金型から取り出しやすくするために、キャビティを形成する金型内壁面に離型剤を塗布又は噴射することもできる。さらに、硬化体におけるボイドの発生を抑制するために、キャビティ内を減圧できる公知の減圧成型装置を用いてもよい。
【0059】
続いて、上記構造体及びそれに密着した上記ウレタン樹脂組成物の硬化体をキャビティから取り出した後、複数の組立部品を個々に分離するようにリードフレームを切断する。こうして、上記ウレタン樹脂組成物の硬化体を、組立部品を封止する封止部材として備える光半導体装置が得られる。
【0060】
以上説明した本実施形態の光半導体装置の製造方法によると、液状トランスファー成型法又はコンプレッション成型法を採用しているため、硬化時間を短く設定でき、光半導体装置の生産性が向上する。また、上記成型法を用いることで、硬化体に任意の形状を付与することが可能となる。
【0061】
本実施形態のウレタン樹脂組成物を用いて、注型法、ポッティング法によって光半導体装置を製造する場合は、各成分の種類、組み合わせ、添加量にもよるが、60〜150℃で1〜10時間程度加熱硬化することが好ましく、特に80〜150℃で1〜10時間程度であることが好ましい。また、急激な硬化反応によって発生する内部応力を低減するために、硬化温度を段階的に昇温することが好ましい。
【0062】
以上説明した本実施形態に係るウレタン樹脂組成物の硬化体は、光透過性が高く、耐熱、耐光着色等の光学特性、機械特性に優れる、発光ダイオード(LED)、フォトトランジスタ、フォトダイオード、固体撮像素子等の光半導体素子用途の封止部材として好適である。また、本実施形態のウレタン樹脂組成物を用いることで、均一で、気泡等の不具合が少ない光半導体素子の封止を液状トランスファー成型によって効率良く行うことができ、LEDパッケージ等の光半導体装置を生産性よく製造することが可能となる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。配合割合は、特にことわりのない限り重量部で表す。
(実施例1)
ポリオール成分として、トリメチロールプロパン(A2:Perstorp社製、分子量:134、水酸基価:1260mgKOH/g)1モルにプロピレンオキサイドを1モル付加し、分子量が192、水酸価が880mgKOH/gのポリオール(A4)64.05重量部を作製し、ポリオール成分A液を得た。一方、イソホロンジイソシアネート(C1:Degussa社製、商品名:VESTANAT IPDI)111.00重量部、ヒンダード型フェノール系酸化防止剤として、[2−{3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニル}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(G:住友化学株式会社製、商品名:スミライザーGA−80)0.18重量部を混合し、イソシアネート成分を含むB液を得た。上記A液64.05重量部とB液111.18重量部とを、室温にて均一となるまで混合撹拌し、ウレタン樹脂組成物を得た。
(実施例2)
ポリオール成分として、トリメチロールプロパン(A2)1モルにプロピレンオキサイドを1モル付加し、分子量が192、水酸価が880mgKOH/gのポリオール(A4)51.24重量部を作製し、ポリオール成分A液を得た。一方、トリメチロールプロパン(A2)8.93重量部、及びイソホロンジイソシアネート(C1)111.00重量部を混合し、窒素雰囲気下80℃で10時間加熱撹拌し、イソシアネート基残存プレポリマー(B1)を得た。さらに、ヒンダード型フェノール系酸化防止剤として、[2−{3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニル}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(G)0.17重量部を混合し、イソシアネート成分を含むB液を得た。上記A液51.24重量部とB液120.10重量部を、室温にて均一となるまで混合撹拌し、ウレタン樹脂組成物を得た。
(実施例3)
ポリオール成分として、トリメチロールプロパン(A2)1モルにプロピレンオキサイドを1モル付加し、分子量が192、水酸価が880mgKOH/gのポリオール(A4)61.81重量部を作製し、更に接着性付与剤としてγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(D:信越化学工業株式会社製、商品名:KBM−803)1.06重量部を加え均一になるまで攪拌し、ポリオール成分A液を得た。
【0064】
一方、トリメチロールプロパン(A2)1.56重量部、及び4,4’−メチレンビス−(シクロヘキシルイソシアネート)(C2:Degussa社製、商品名:H12MDI)22.93重量部を混合し、窒素雰囲気下80℃で10時間加熱撹拌し、イソシアネート基残存プレポリマー(B2)を得た。
【0065】
ポリイソシアネート成分として、上記イソシアネート基残存プレポリマー(B2)24.49重量部、4,4’−メチレンビス−(シクロヘキシルイソシアネート)(C2)22.93重量部、ノルボルネンジイソシアネート(C3:三井武田ケミカル株式会社製、商品名:コスモネートNBDI)41.8重量部、イソホロンジイソシアネートの3量体であるイソシアヌレート型ポリイソシアネートの75質量%酢酸ブチル溶液(C4:Degussa社製、商品名:Vestanat T1890ME)82.00重量部、及びヒンダード型フェノール系酸化防止剤として、[2−{3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニル}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(G)0.21重量部を混合し、酢酸ブチルを減圧下で加熱脱溶した。一方、離型剤としてイソステアリン酸(F1:高級アルコール工業株式会社製、商品名:イソステアリン酸EX)5.33重量部及びシリコーン−カプロラクトンブロック共重合体(F2)1.07重量部をポリイソシアネート成分に加え、80℃で2時間加熱混合した。シリコーン−カプロラクトンブロック共重合体(F2)は両末端ポリエーテル変性シリコーン(信越化学工業株式会社製、商品名:X−22−4952)1モルにカプロラクトンを22モル付加して作製し、上記一般式(2)において、m/n=0.6、重量平均分子量Mw=4,000であった。その後、室温まで冷却後に硬化触媒として、ステアリン酸亜鉛(E:日油株式会社製、商品名:MZ−2)0.11重量部を加え、均一になるまで撹拌し、イソシアネート成分を含むB液を調製した。上記A液62.87重量部とB液157.44重量部とを室温にて均一となるまで撹拌して、ウレタン樹脂組成物を得た。
(実施例4)
ポリオール成分として、実施例3のポリオール(A4)に替わり、トリメチロールプロパン(A2)1モルにエチレンオキサイドを1モル付加し、分子量が179、水酸価が940mgKOH/gのポリオール(A5)57.73重量部を作製し、(A5)を用いたこと以外は実施例3と同様にしてウレタン樹脂組成物を得た。
(実施例5)
ポリイソシアネート成分として、実施例3の離型剤をイソステアリン酸(F1)8.53重量部とし、シリコーン−カプロラクトンブロック共重合体(F2)を除いた以外は実施例3と同様にしてウレタン樹脂組成物を得た。
(実施例6)
ポリオール成分として、実施例3のポリオール(A4)に替わり、ポリオール(A4)55.40重量部と、分子量が300、水酸価が540mgKOH/gのポリカプロラクトントリオール(A3:ダイセル化学工業株式会社製、商品名:プラクセル303、分子量:313、水酸基価:540mgKOH/g)10.43重量部とを均一となるまで攪拌して用いたこと以外は実施例3と同様にしてウレタン樹脂組成物を得た。
(比較例1)
ポリオール成分として、プロパン−1,2,3−トリオール(A1:坂本薬品工業株式会社製、商品名:精製グリセリン、分子量:92、水酸基価:1830mgKOH/g)30.64重量部と、ポリカプロラクトントリオール(A3)62.57重量部とを均一になるまで攪拌して用いたこと以外は実施例1と同様にしてウレタン樹脂組成物を得た。
(比較例2)
ポリオール成分として、トリメチロールプロパン(A2)29.92重量部と、ポリカプロラクトントリオール(A3)31.28重量部とを80℃で2時間加熱攪拌して均一なポリオール成分を用いたこと以外は実施例3と同様にしてウレタン樹脂組成物を得た。
(比較例3)
ポリオール成分として、プロパン−1,2,3−トリオール(A1)5.06重量部と、ポリカプロラクトントリオール(A3)83.42重量部とを均一になるまで攪拌して用いたこと以外は実施例3と同様にしてウレタン樹脂組成物を得た。
【0066】
実施例1〜6及び比較例1〜3で用いられる各材料の添加量を下記表1に示した。
【0067】
【表1】

【0068】
以上のようにして得られたウレタン樹脂組成物を下記方法に従って評価した。
<光半導体パッケージの作製>
実施例1、2及び比較例1で得られたウレタン樹脂組成物を、外形が5mmx5mmx1mm、キャビティの直径が4mmである発光素子実装済のセラミック製表面実装型パッケージのキャビティ内にポッティング法によって充填し、100℃で1時間、125℃で1時間、150℃で4時間、加熱、硬化して光半導体装置を作製した。また、実施例3〜6、比較例2〜3で得られたウレタン樹脂組成物を、液状トランスファー成型機を用い、金型温度165℃、射圧9.8MPa、注入時間30秒、硬化時間120秒として成型し、更に150℃で4時間、オーブン中で後硬化して、図1に示したような光半導体パッケージを作製した。作製した光半導体パッケージの封止部を顕微鏡で観察し、硬化部の均一性、すなわち、ゆらぎや気泡の有無を調べた。結果を表2に示した。
<硬度、ガラス転移温度の測定>
上記ウレタン樹脂組成物の硬化体の硬度をショア硬度D、ガラス転移温度を熱機械分析装置で測定した。結果を表2に示した。
【0069】
【表2】

【0070】
表2で硬化体の均一性で、Aは均一、Bは透明性にゆらぎがあったことを表す。硬化体中の気泡で、Aは気泡が無いことを、Bは気泡が見られたことを表す。
【0071】
実施例1〜6では、いずれも硬質でガラス転移温度が120℃以上の硬化体が得られ、且つ、硬化体の透明性は均一で気泡等の欠陥は見られなかった。一方、比較例1では、A液とB液の十分な相溶性が得られず、均一な硬化体が得られなかった。また、比較例2、3では硬質でガラス転移温度が83〜84℃の硬化体が得られたが、硬化体中にゆらぎと気泡が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の硬化体は、硬質でガラス転移温度が高く、且つ、透明性の均一さに優れ、光半導体の封止に用いる硬化体として優れた性能を発揮することができる。
【符号の説明】
【0073】
102,102a,102b…リードフレーム、103…接着部材、104…光半導体素子、105…ワイヤ、106…封止部材、106a…平板状部、106b…レンズ部、200…光半導体装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール成分を含むA液と、
ポリイソシアネート成分を含むB液と、
からなるウレタン樹脂組成物であって、
前記ポリオール成分が、
水酸基価が600mgKOH/g以上1300mgKOH/g以下であり、分子量が400以下である3官能以上のポリオール化合物を含む、
ウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリイソシアネート成分が、脂環基及び2個又は3個のイソシアネート基を有し、少なくとも1個のイソシアネート基が前記脂環基を構成する第二級炭素に結合している脂環式ポリイソシアネート化合物を30質量%以上含む、請求項1に記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリオール化合物がトリメチロールプロパン又はプロパン−1,2,3−トリオールに、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイド又はカプロラクトンを付加した化合物である請求項1又は2に記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリオール化合物がトリメチロールプロパン1モルに対しプロピレンオキサイドを1〜2モル付加した化合物である請求項3に記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリオール化合物の含有量が、前記ポリオール成分の全量に対して80質量%以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
前記A液又は前記B液が、
下記一般式(1)で表される飽和脂肪酸を含むか、又は、
前記飽和脂肪酸と、下記一般式(2)で表される重量平均分子量が16000以下のシリコーン−カプロラクトンブロック重合体とを含む、
請求項1〜5のいずれか一項に記載のウレタン樹脂組成物。
【化1】


(式中、Rは炭素数7〜28の直鎖状又は分岐状の飽和炭化水素基を示す。)
【化2】


(式中、m及びnは、m/nが0.5〜1.0を満たす正の整数を示す。R及びRは、それぞれ独立に、2価の炭化水素基又はポリエーテル鎖を示す。)
【請求項7】
水酸基価が600mgKOH/g以上1300mgKOH/g以下であり、分子量が400以下である3官能以上のポリオール化合物を含むポリオール成分を含むA液と、
ポリイソシアネート成分を含むB液と、
からなるウレタン樹脂組成物を、A液とB液とを混合することによって硬化して得られる硬化体。
【請求項8】
前記A液又は前記B液が、
下記一般式(1)で表される飽和脂肪酸を含むか、又は、
前記飽和脂肪酸と、下記一般式(2)で表される重量平均分子量が16000以下のシリコーン−カプロラクトンブロック重合体とを含む、
請求項7に記載の硬化体。
【化3】


(式中、Rは炭素数7〜28の直鎖状又は分岐状の飽和炭化水素基を示す。)
【化4】


(式中、m及びnは、m/nが0.5〜1.0を満たす正の整数を示す。R及びRは、それぞれ独立に、2価の炭化水素基又はポリエーテル鎖を示す。)
【請求項9】
前記A液及び/又は前記B液が無機充填材を更に含む、請求項7又は8に記載の硬化体。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか一項に記載の硬化体からなる封止部材を備える光半導体装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−178898(P2011−178898A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44565(P2010−44565)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】