説明

ウレタン系塗膜防水材組成物

【課題】臭気がなく、混合性、硬化性、仕上がり性に優れ、発泡しにくく、低粘度のウレタン系塗膜防水材組成物の提供。
【解決手段】ウレタンプレポリマーと、硬化剤と、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートとを含有するウレタン系塗膜防水材組成物であって、前記2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート以外の成分100質量部に対して、前記2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートを1〜15質量部含有するウレタン系塗膜防水材組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン系塗膜防水材組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
土木建築分野において、ポリウレタンは種々の用途に使用されており、その具体例としては、建築物の外壁用の塗膜防水材、建築物の壁面に生じた亀裂や割れ目を塞ぐ止水材(封止材)等が挙げられる。
ウレタン系塗膜防水材は、建築物の外壁(例えば、屋上の床面、屋外の壁面、ベランダ)の面全体にウレタン系の組成物を塗装し硬化させ塗膜とすることによって、建築物への水の浸入、浸透を防ぐ防水材である。
ウレタン系止水材は、ウレタン系の組成物を、コンクリート等の内壁面や外壁面に生じた亀裂や割れ目(以下、「亀裂等」という。)に注入し、これを水で発泡、硬化させて亀裂等を塞ぐものである。止水剤は、外壁面に生じた亀裂等からの水の浸入、浸透や、トンネルのような構造物の内壁面に生じた亀裂等からの漏水、湧水を防ぐために使用される。
【0003】
従来、ウレタン系塗膜防水材組成物やウレタン系止水材組成物には、施工時に使用される環境等に応じて粘度が適切となるように、様々な工夫が施されている。例えば、ウレタン系塗膜防水材組成物の場合、冬期は使用温度が低くウレタン系塗膜防水材組成物の粘度が上がるため、粘度調節剤(減粘剤)をウレタン系塗膜防水材組成物に配合する方法が採用されている。減粘剤としては、トルエン、キシレン、ミネラルスピリット、灯軽油留分の水添化物のような安価な石油系溶剤やひまし油系脂肪酸エステルが用いられている。
【0004】
しかし、上記の化合物は、臭気が強く衛生上好ましくないことから、労働安全衛生法や化学物質排出移動量届出制度(以下、「法律等」ということがある。)により現在使用が規制されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さらに、本発明者は、灯軽油留分の水素添加物またはひまし油系脂肪酸エステルには、臭気の他に、ウレタン系塗膜防水材組成物中で混ざりにくいという問題点、これらを含有するウレタン系組成物の塗膜はベタつきが強いという問題点があることを見出した。
このように、従来の減粘剤を含むウレタン系組成物には、臭気性、混合性、硬化性に問題があった。
【0006】
本発明者は、法律等に規制されず、ウレタン系塗膜防水材の減粘剤として使用することができる化合物について種々検討し、その中で、エチルシクロヘキサンと、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート(この化合物は無臭である。)とに注目した。
しかしながら、エチルシクロヘキサンは、法律等では使用が制限されてはいないものの、やはり臭気を有するため衛生面の観点から使用に適さないことを本発明者は見出した。また、本発明者は、エチルシクロヘキサンを含有するウレタン系組成物の塗膜は、表面に色ムラができ、仕上がり性が悪いことを見出した。
【0007】
なお、特開2003−3153号公報には、均一な泡硬化物を生じ、優れた止水効果を示し、環境汚染を引き起こさないことを目的とする構造物亀裂封止材が記載されている。特開2003−3153号公報に記載されている構造物亀裂封止材は、ウレタンプレポリマー含有構造物亀裂封止材において、(A)分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと(B)減粘剤としてトリメリット酸エステルおよび安息香酸エステルとを含有する構造物亀裂封止材である。トリメリット酸エステルおよび安息香酸エステル以外の減粘剤の1つとして、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートが記載されている。(A)分子末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーは、水や空気中の水分によって発泡して硬化するウレタンプレポリマーであることが記載されている。
【0008】
特開2003−3153号公報に記載されている(B)減粘剤は、ポリウレタンの均一な泡硬化物を得ることを目的として使用されている。このため、発明者は特開2003−3153号公報に記載されている減粘剤をそのまま塗膜防水材の減粘剤として使用することはできないと考えた。なぜなら、特開2003−3153号公報に記載されている減粘剤を用いて適正な作業性を得るための量を添加すると、塗膜物性が柔らかくなりすぎ必要な物性が得られない。また、物性への影響が少ない範囲の添加量で塗膜防水材を得ようとしても、塗膜防水材が平坦にならず仕上がり性が悪いことから、得られる塗膜に気泡が生じてしまうことが推察できたからである。ウレタン系塗膜防水材は、水によって発泡すると防水性が低下し水漏れが起こりやすくなる。このように、ウレタン系塗膜防水材は、仕上がり性に優れ、発泡しにくいことが必要である。
従って、本発明は、法律等により規制されず無臭の2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートを用いて、臭気がなく、混合性、硬化性、仕上がり性に優れ、発泡しにくく、低粘度のウレタン系塗膜防水材組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、ウレタン系塗膜防水材組成物がウレタンプレポリマーと、硬化剤と、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートとを特定の量で含有することによって、臭気がなく、混合性、硬化性、仕上がり性に優れ、発泡しにくく、低粘度のウレタン系塗膜防水材組成物が得られることを知見し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明は、以下の(1)〜(2)を提供する。
(1)ウレタンプレポリマーと、硬化剤と、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートとを含有するウレタン系塗膜防水材組成物であって、
前記2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート以外の成分100質量部に対して、前記2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートを1〜15質量部含有するウレタン系塗膜防水材組成物。
(2)ウレタンプレポリマーと、硬化剤とを含有するウレタン系塗膜防水材組成物に、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートを添加して混合物を得る混合工程と、
前記混合物を施工する施工工程とを具備する、ウレタン系塗膜防水材組成物の施工方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のウレタン系塗膜防水材組成物は、臭気がなく、混合性、硬化性、仕上がり性に優れ、発泡しにくく、低粘度のウレタン系塗膜防水材組成物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明のウレタン系塗膜防水材組成物は、ウレタンプレポリマーと、硬化剤と、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートとを含有するウレタン系塗膜防水材組成物であって、
前記2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート以外の成分100質量部に対して、前記2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートを1〜15質量部含有するウレタン系塗膜防水材組成物である。
【0013】
ウレタンプレポリマーについて、以下に説明する。
ウレタンプレポリマーは、ポリオール化合物と適量のポリイソシアネート化合物とを反応させて得られる反応生成物であって、イソシアネート基を分子末端に含有するポリマーである。
【0014】
ポリイソシアネート化合物は、特に限定されず、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI)、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′−MDI)、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′−MDI)、1,4−フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリデンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)のような芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアナートメチル(NBDI)のような脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、H6XDI(水添XDI)、H12MDI(水添MDI)のような脂環式ポリイソシアネート;上記の各ポリイソシアネートのカルボジイミド変性ポリイソシアネート、または、これらのイソシアヌレート変性ポリイソシアネートが挙げられる。これらは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0015】
ポリオール化合物は、特に限定されず、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、その他のポリオール、およびこれらの混合ポリオールが挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,2,5−ヘキサントリオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、4,4′−ジヒドロキシフェニルメタン、4,4′−ジヒドロキシフェニルプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールから選ばれる少なくとも1種に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド等から選ばれる少なくとも1種を付加させて得られるポリオール;ポリオキシテトラメチレンオキサイドが挙げられる。多価アルコールから選ばれる少なくとも1種に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド等から選ばれる少なくとも1種を付加させて得られるポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリセリン、ポリトリメチロールプロパン、ポリヘキサントリオール、ポリブタンジオール、ポリジヒドロキシフェニルメタン、ポリジヒドロキシフェニルプロパンが挙げられる。
【0016】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン、その他の低分子ポリオールの1種または2種以上と、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ダイマー酸、その他の低分子カルボン酸やオリゴマー酸の1種または2種以上との縮合重合体;プロピオンラクトン、バレロラクトン、カプロラクトンのような開環重合体が挙げられる。
【0017】
その他のポリオールとしては、例えば、ポリマーポリオール;ポリカーボネートポリオール;ポリブタジエンポリオール、水素添加されたポリブタジエンポリオール;ひまし油系ポリオール;アクリルポリオール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオールのような低分子ポリオールが挙げられる。
これらのポリオール化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0018】
ポリオール化合物とイソシアネート化合物との組み合わせは、特に限定されない。ポリオール化合物のそれぞれと、イソシアネート化合物のそれぞれとを任意の組み合わせで用いることができる。中でも、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、および、ポリエステルポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種と、TDI、および、MDI、HDIからなる群から選ばれる少なくとも1種とから得られるウレタンプレポリマーが、入手の容易さの点から好ましい。
【0019】
ウレタンプレポリマーは、その製法について特に限定されない。例えば、反応温度を50〜100℃程度とし、常圧下でポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させてウレタンプレポリマー得る方法が挙げられる。また、有機スズ化合物、有機ビスマス化合物のようなウレタン化触媒を用いることができる。
【0020】
ウレタンプレポリマーの製造において、ポリオール化合物のヒドロキシ基に対するポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の当量比(NCO/OH)が1.4〜であるのが好ましく、1.7〜2.2であるのがより好ましい。NCO/OHがこのような範囲である場合、ポリイソシアネート化合物の残存による発泡や、分子鎖延長に起因するウレタンプレポリマーの粘度増加がなく、本発明のウレタン系塗膜防水材組成物の硬化後の物性が良好となる。
【0021】
ウレタンプレポリマーは、ブロックイソシアネート基を含有することができる。ここで、「ブロックイソシアネート基」とは、イソシアネート基を保護基でブロックした基であって、熱、湿気等により保護基が容易に外れてイソシアネート基を発生しうる基をいう。ブロックイソシアネート基としては、例えば、イソシアネート基を、アルコール類、フェノール類、オキシム類、ピラゾール類、トリアゾール類、カプロラクタム類のようなブロック剤でブロックした基が挙げられる。
【0022】
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ヘキサノール、ラウリルアルコール、t−ブタノール、シクロヘキサノールが挙げられる。フェノール類としては、例えば、キシレノール、ナフトール、4−メチル−2,6−ジ−t−ブチルフェノールが挙げられる。
【0023】
オキシム類としては、例えば、2,6−ジメチル−4−ヘプタノンオキシム、メチルエチルケトオキシム、2−ヘプタノンオキシムが挙げられる。ピラゾール類としては、例えば、3,5−ジメチルピラゾールが挙げられる。トリアゾール類としては、例えば、1,2,4−トリアゾールが挙げられる。
【0024】
ブロックイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーは、その製法について特に制限されない。例えば、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック剤で保護して得られたブロック化ポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物とを反応させる方法、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基をブロック剤で保護する方法が挙げられる。
ウレタンプレポリマーのイソシアネート基のブロック化率は特に限定されない。用途、硬化後の物性等に応じて、イソシアネート基の全部、または、イソシアネート基の一部をブロック剤で保護することができる。
【0025】
ウレタンプレポリマーは、取扱い性の観点から室温で液状であるのが好ましい。また、ウレタンプレポリマーは、イソシアネート基のほかに、例えば、ヒドロキシ基、酸無水物基、アミノ基、潜在性アミノ基、メルカプト基およびカルボキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基を更に分子内に有することができる。これらのようなイソシアネート基と反応し架橋できる基を有すると、架橋密度が向上し、硬化後の物性が優れたものとなる。
【0026】
本発明のウレタン系塗膜防水材組成物に使用される硬化剤について、以下に説明する。
本発明のウレタン系塗膜防水材組成物に使用される硬化剤は、イソシアネート基と反応可能な官能基を有する化合物であれば特に制限されず、例えば、分子内にアミノ基を2つ以上有するポリアミン化合物、分子内にヒドロキシ基を2つ以上有するポリオール化合物が挙げられる。
【0027】
ポリアミン化合物としては、例えば、ジアミン化合物(脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン等)、トリアミン化合物が挙げられる。
脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,14−テトラデカンジアミン、1,16−ヘキサデカンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、イミノビスプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン(デュポン・ジャパン社製「MPMD」)、イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン(三菱ガス化学社製「1,3BAC」)、1−シクロヘキシルアミノ−3−アミノプロパン、3−アミノメチル−3,3,5−トリメチル−シクロヘキシルアミン、ノルボルナン骨格のジメチレンアミン(三井化学社製「NBDA」)、メタキシリレンジアミン(MXDA)が挙げられる。
【0028】
芳香族ジアミンとしては、例えば、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルメタン(MOCA)、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、2,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジアミノジフェニルメタン、3,4′−ジアミノジフェニルメタン、2,2′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジアミノビフェニル、2,4−ジアミノフェノール、2,5−ジアミノフェノール、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,3−トリレンジアミン、2,4−トリレンジアミン、2,5−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、3,4−トリレンジアミンが挙げられる。
【0029】
分子内にヒドロキシ基を2つ以上有するポリオール化合物としては、例えば、上記のウレタンプレポリマーの原料として使用されているポリオール化合物と同様のものが挙げられる。
【0030】
中でも、MOCA、ポリプロピレングリコールが好ましい。硬化剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
硬化剤の量は、ウレタンプレポリマーに含まれるNCO基に対して、硬化剤に含まれる、イソシアネート基と反応可能な官能基が、モル比で、0.8〜1.2であるのが好ましく、0.9〜1.1であるのがより好ましい。硬化剤の量がこのような範囲の場合、可使時間が十分確保でき、硬化時間の調節がしやすい。
【0031】
本発明のウレタン系塗膜防水材組成物に含有される2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートについて、以下に説明する。
本発明のウレタン系塗膜防水材組成物において、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートは減粘剤として使用される。2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートは、下記の式(1)で表わされる化合物である。
【0032】
【化1】

【0033】
2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートは、透明で殆ど無臭の液体であり、労働安全衛生法57条の2、労働安全衛生法有機溶剤中毒予防規則、化学物質排出移動量届出制度による規制の対象に該当しない。
【0034】
2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートの量は、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート以外の成分100質量部に対して、1〜15質量部であり、3〜10質量部であるのが好ましく、3〜5質量部であるのがより好ましい。ここで「2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート以外の成分」は、本発明のウレタン系塗膜防水材組成物に含有される、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート以外の成分をいう。2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート以外の成分には、本発明のウレタン系塗膜防水材組成物の必須成分であるウレタンプレポリマーおよび硬化剤が含まれる。また、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート以外の成分としては、ウレタンプレポリマーおよび硬化剤のほかに、例えば、下記の添加剤(例えば、充填剤、硬化触媒)が挙げられる。従って、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート以外の成分は、ウレタンプレポリマーと硬化剤と、例えば、下記の添加剤(例えば、充填剤、硬化触媒)とを含有することができる。
【0035】
本発明のウレタン系塗膜防水材組成物は、このように少量の2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートで、ウレタン系塗膜防水材組成物の粘度を十分に低くすることができる。特に低温でウレタン系塗膜防水材組成物を低粘度とすることができる。2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートの量がこのような範囲の場合、ウレタン系塗膜防水材組成物は、低粘度で、発泡が少なく、混合性、硬化性に優れ、低温で塗布しやすく作業性に優れ、得られる塗膜防水材には色ムラや亀甲模様がなく平坦であるので仕上がり性に優れている。2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートの量が1質量部以上の場合、得られる塗膜防水材は色ムラや亀甲模様がなく平坦で、低温で塗布しやすく作業性に優れる。2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートの量が15質量部以下の場合、得られる塗膜防水材にベタつきが少なく硬化性に優れる。
【0036】
2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートは、その製法について特に制限されない。また、市販品を使用することができる。市販品としては、例えば、協和発酵社製のキョーワノールDが挙げられる。
【0037】
本発明のウレタン系塗膜防水材組成物は、ウレタンプレポリマー、硬化剤および2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートのほかに、添加剤として、例えば、充填剤、硬化触媒(硬化促進剤)、潜在性硬化剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、難燃剤、補強剤、接着性付与剤、老化防止剤、酸化防止剤、揺変性付与剤、界面活性剤(レベリング剤を含む。)、分散剤、脱水剤、防錆剤、帯電防止剤を含有することができる。これらの成分は、ウレタン系の組成物に通常用いられるものを通常の含有量で用いることができる。これらはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0038】
本発明のウレタン系塗膜防水材組成物は、充填剤を含有することが好ましい。充填剤としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、ケイ酸誘導体、タルク、金属粉、炭酸カルシウム、クレーが挙げられる。中でも、炭酸カルシウム、二酸化チタンが好ましい。充填剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。充填剤の量は、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、30〜70質量部であるのが好ましく、40〜60質量部であるのがより好ましい。充填剤の量がこのような範囲の場合、ウレタン系塗膜防水材組成物の粘度やその他の物性の調節が容易となる。
【0039】
硬化触媒としては、例えば、有機金属系触媒、第三級アミンが挙げられる。
有機金属系触媒としては、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズラウレート、オクチル酸亜鉛、ネオデカン酸鉛、オクチル酸鉛、オクチル酸コバルト、有機ビスマス化合物が挙げられる。
第三級アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルグアニジン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリンが挙げられる。
【0040】
硬化触媒は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。硬化触媒の量は、硬化性、可使時間の観点から、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、0.03〜3質量部であるのが好ましく、0.1〜1質量部であるのがより好ましい。
【0041】
可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル、ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル、オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、トリメリット酸エステル、アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステルが挙げられる。可塑剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。可塑剤の量は、作業性および硬化性の観点から、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、5〜100質量部であるのが好ましく、20〜50質量部であるのがより好ましい。
【0042】
潜在性硬化剤としては、例えば、ポリアミンとカルボニル化合物との反応物であるケチミン類、エナミン類、ポリアミンとアルデヒド化合物との反応物であるアルジミン類、アミノアルコールとカルボニル化合物との反応物であるオキサゾリジン類が挙げられる。
【0043】
顔料は、無機顔料と有機顔料とに大別される。無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩が挙げられる。有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料が挙げられる。
【0044】
老化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)が挙げられる。
難燃剤としては、例えば、クロロアルキルホスフェート、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイドーポリエーテル、臭素化ポリエーテルが挙げられる。
【0045】
接着性付与剤としては、例えば、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂が挙げられる。
【0046】
本発明のウレタン系塗膜防水材組成物は、その製造方法において、特に限定されない。例えば、ウレタン系塗膜防水材組成物は、従来公知の方法に従って製造することができる。具体的には、ウレタンプレポリマー、硬化剤、および、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートと、必要に応じて使用される添加剤とを窒素ガスを封入したボールミル等の混合装置を用いて常圧下で十分にかくはんし、均一に混合させて製造する方法が挙げられる。本発明のウレタン系塗膜防水材組成物は、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートを減粘剤として含有することによって、製造時においても、混合しやすく、作業性に優れる。特に、低温での作業性に優れる。また、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートに起因する臭気がない。
【0047】
本発明のウレタン系塗膜防水材組成物は、1成分形ウレタン系塗膜防水材組成物または2成分形ウレタン系塗膜防水材組成物として使用することができる。
本発明のウレタン系塗膜防水材組成物を1成分形とする場合は、本発明のウレタン系塗膜防水材組成物に用いられるウレタンプレポリマー、硬化剤、および、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートと、必要に応じて使用される添加剤とをよく乾燥し、湿気除去された条件下で調製すればよく、湿気が入らない容器に保存しておけばよい。
本発明のウレタン系塗膜防水材組成物を2成分形とする場合は、例えば、ウレタンプレポリマーを含有する主剤と、硬化剤とその他の添加剤を混合したもの(以下、「硬化剤を含有する混合物」ということがある。)とをそれぞれ調製し、使用時に混合して用いることができる。なお、添加剤は、主剤に添加することもできる。2成分形ウレタン系塗膜防水材の場合、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートは、ウレタンプレポリマーを含有する主剤、および、硬化剤を含有する混合物の一方、または、両方に添加することができる。中でも、貯蔵安定性の観点から2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートは、硬化剤を含有する混合物に添加することが好ましい。
【0048】
また、本発明のウレタン系塗膜防水材組成物に2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートをさらに添加して使用することができる。この場合の2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートの量は、本発明のウレタン系塗膜防水材組成物100質量部に対し、1〜15質量部が好ましく、3〜10質量部がより好ましく、3〜5質量部がより好ましい。
【0049】
本発明のウレタン系塗膜防水材組成物が1成分形である場合は、湿気等によりイソシアネート基が反応して硬化し塗膜防水材となる。本発明のウレタン系塗膜防水材組成物が2成分形である場合は、使用時にウレタンプレポリマーを含有する主剤と硬化剤を含有する混合物とを混合することでこれらが反応して塗膜防水材となる。
2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートは、本発明のウレタン系塗膜防水材組成物が硬化した後、塗膜防水材から徐々に揮散する。2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートが揮散する際、塗膜表面に色むらや亀甲模様などが生じることはなく、本発明のウレタン系塗膜防水材組成物は仕上がり性に優れる。
また、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートは塗膜防水材には殆ど残留しないので、塗膜防水材の表面はベタつきがほとんどなく硬化性に優れ、かつ、硬化塗膜の物性を低下させることはない。
【0050】
また、本発明のウレタン系塗膜防水材組成物は硬化の際、粘度低減効果により混合時または施工時に巻き込んだ気泡が内部に残留しにくく、得られた塗膜防水材には気泡がほとんどない。従って、本発明のウレタン系塗膜防水材組成物から得られる塗膜防水材は優れた防水性を有する。
【0051】
本発明のウレタン系塗膜防水材組成物を塗布して得られる塗膜防水材は平坦で仕上がり性に優れる。1工程の施工で得られる塗膜防水材の厚さは、1〜2mmであるのが好ましい。
【0052】
本発明のウレタン系塗膜防水材組成物は、例えば、建築物の外壁(例えば、屋上の床面、壁面、ベランダ、開放廊下)、室内(例えば、床面)に用いることができる。
【0053】
次に、本発明のウレタン系塗膜防水材組成物の施工方法について説明する。
本発明のウレタン系塗膜防水材組成物の施工方法は、ウレタンプレポリマーと、硬化剤とを含有するウレタン系塗膜防水材組成物に、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートを添加して混合物を得る混合工程と、
前記混合物を施工する施工工程とを具備する、ウレタン系塗膜防水材組成物の施工方法である。
【0054】
本発明のウレタン系塗膜防水材組成物の施工方法において、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートは減粘剤として使用される。
【0055】
本発明のウレタン系塗膜防水材組成物の施工方法に使用されるウレタン系塗膜防水材組成物は、ウレタンプレポリマーと硬化剤とを含有するものであれば特に限定されない。
使用されるウレタン系塗膜防水材組成物としては、例えば、上記の本発明のウレタン系塗膜防水材組成物、従来公知のウレタン系塗膜防水材組成物が挙げられる。また、使用されるウレタン系塗膜防水材組成物は、例えば、本発明のウレタン系塗膜防水材組成物に含有される成分と同様の成分を含有することができる。また、使用されるウレタン系塗膜防水材組成物は、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートを含んでも含まなくてもよい。使用されるウレタン系塗膜防水材組成物が減粘剤や溶剤を含有する場合、含有される減粘剤や溶剤は、環境面、衛生面の観点から、臭気性の低いもの、または、無臭のものであるのが好ましい態様の1つである。
【0056】
混合工程について以下に説明する。
混合工程では、ウレタンプレポリマーと、硬化剤とを含有するウレタン系塗膜防水材組成物に、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートを添加して混合物が得られる。
【0057】
2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートの量は、ウレタン系塗膜防水材組成物100質量部に対し、1〜15質量部が好ましく、3〜10質量部がより好ましく、3〜5質量部がより好ましい。このような範囲の場合、混合物は、より低粘度で、より発泡しにくく、混合性、硬化性、仕上がり性が特に優れる。
【0058】
本発明のウレタン系塗膜防水材組成物の施工方法において、ウレタン系塗膜防水材組成物が1成分形の場合、施工前にウレタン系塗膜防水材組成物に2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートを添加して混合すればよい。ウレタン系塗膜防水材組成物が2成分形の場合、混合工程において、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートを、例えば、2成分形のウレタン系塗膜防水材組成物を混合するのと同時に、または、2成分形のウレタン系塗膜防水材組成物を混合後に添加することができる。
【0059】
ウレタン系塗膜防水材組成物と、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートとの混合方法は、特に限定されない。ウレタン系塗膜防水材組成物と、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートとを、例えば、電動かくはん機を用いて施工現場で十分にかくはんし、均一に混合する方法が挙げられる。このように、本発明のウレタン系塗膜防水材組成物の施工方法は、施工現場で2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートをウレタン系塗膜防水材組成物に添加し混合物の粘度を調節することができる。
【0060】
次に、施工工程において上記の混合物を施工する。
混合物の施工方法は、特に限定されない。例えば、ゴムベラ、左官ごて、刷毛、ローラー、施工用機械装置を用いて行う方法が挙げられる。
混合物は、例えば、コンクリート、モルタル、防水層のような下地の上に施工することができる。また、例えば、すでに建築物上に施されている防水層を改修するために、防水層の上に混合物を施工することができる。
下地に混合物を施工する回数は、特に制限されない。例えば、2回以上であるのが好ましい態様の1つである。
【0061】
混合物を塗布して得られる塗膜防水材の厚さは、2〜6mmであるのが好ましい。
【0062】
なお、混合物を施工する前に、下地にプライマー処理を施すことができる。使用されるプライマーは特に限定されない。また、混合物を施工した後、保護仕上げ層を施工することができる。保護仕上げ層は、特に制限されない。
【0063】
本発明のウレタン系塗膜防水材組成物の施工方法では、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートによる臭気の発生がない。また、ウレタン系塗膜防水材組成物に、減粘剤として2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートを混合することにより、低粘度で、発泡しにくく、混合物の混合性、仕上がり性、硬化性を良好とし、作業性を優れたものとすることができる。特に混合物が冬期に使用される場合、混合物は、低温で粘度の上昇が抑制され流動性が良くなる。従って、このような混合物を施工することにより得られる塗膜防水材は、平坦で仕上がりが優れる。
【0064】
本発明のウレタン系塗膜防水材組成物の施工方法は、例えば、建築物の外壁(例えば、屋上の床面、壁面、ベランダ、開放廊下)、室内(例えば、床面)に用いることができる。
【実施例】
【0065】
以下、本発明を実施例に従ってより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0066】
1.ウレタン系塗膜防水材組成物
第1表に示す各実施例、比較例のウレタン系塗膜防水材組成物(単位は質量部)について、下記の各評価方法に従って混合性、硬化性、表面状態、作業性を評価した。結果を第1表に示す。
また、使用された各減粘剤の臭気を評価した。結果を第1表に示す。
【0067】
2.臭気の評価方法
使用された各減粘剤について臭気の有無を嗅覚により評価した。
【0068】
3.混合性の評価方法
第1表に示された各ウレタン組成物と各減粘剤とを、2リットルのフラスコに入れ、5℃、湿度50%RHで、4枚羽付きのかくはん棒(羽全体を含め直径5cm)を用いて100rpmで混合した。混合開始から1分以内にウレタン系塗膜防水材組成物が均一となった場合を○とし、そうでない場合を×とした。
【0069】
4.硬化性の評価
各ウレタン系塗膜防水材組成物を均一に混合した後、モルタル片に塗布(塗布量:湿質量で2kg/m2相当)して試験片を作製した。この試験片を実験室雰囲気(5℃、湿度50%RH)で15時間養生させた後、表面のベタつき度合いを指触により評価した。ベタつきがなかった場合を○とし、ベタつきがあった場合を×とした。
【0070】
5.表面状態(仕上がり性)の評価
上記の硬化性評価と同様に、各ウレタン系塗膜防水材組成物を均一に混合した後、モルタル片に塗布(塗布量:湿質量で2kg/m2相当)して試験片を作製した。この試験片を実験室雰囲気(5℃、湿度50%RH)で15時間養生させた後、表面の外観を目視により評価した。減粘剤を使用しない場合(比較例6)と比べて、表面の色が均一で、平坦で、発泡およびピンホールがない場合は○、表面が平坦でない場合は△、表面に色ムラがあり表面が平坦でなく発泡またはピンホールが認められる場合は×とした。
【0071】
6.作業性の評価
第1表の各ウレタン系塗膜防水材組成物を、5℃、湿度50%RHの条件下で均一に混合し、混合後から5分間経過したときに、左官ごて、ゴムベラの2種類を用いて各ウレタン系塗膜防水材組成物を塗布し、塗布のしやすさを評価した。ウレタン系塗膜防水材組成物の粘度が適度で塗布しやすい場合を○、ウレタン系塗膜防水材組成物が硬く塗布しにくい場合を×とした。
【0072】
【表1】

【0073】
第1表に示された各化合物の詳細は以下のとおりである。
・2成分形ウレタン組成物:2成分形ウレタン組成物は、A剤にウレタンプレポリマー100質量部を含み、B剤にポリプロピレングリコール15質量部、MOCA5質量部、炭酸カルシウム64.8質量部、フタル酸系可塑剤10質量部、熱安定剤2質量部、光安定剤3質量部、顔料0.2質量部を含む。
・1成分形ウレタン組成物:1成分形ウレタン組成物は、ウレタンプレポリマー100質量部、炭酸カルシウム100質量部、フタル酸系可塑剤30質量部、潜在性硬化剤7質量部、熱安定剤1質量部、光安定剤2質量部、顔料0.1質量部を含む。
・キョーワノールD:協和発酵社製、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート、沸点280℃
・エチルシクロヘキサン:丸善石油化学社製、沸点132℃
・ひまし油系脂肪酸エステル:伊藤製油社製、リックサイザー「A−182」
・灯軽油留分の蒸留、水添化物:三共油化工業社製、ナフテニック・ライトNV−260
【0074】
第1表に示される結果から明らかなように、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート(キョーワノールD)は、無臭の化合物である。これによって実施例1〜4のウレタン系塗膜防水材組成物には2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートから生じる臭気はなかった。このことから、実施例1〜4のウレタン系塗膜防水材組成物は、環境面、衛生面の観点から使用に適していると言える。
また、第1表に示された結果から明らかなように、実施例1〜4のウレタン系塗膜防水材組成物はいずれも、混合性、硬化性、仕上がり性および低温での作業性に優れていた。
また、実施例1〜4のウレタン系塗膜防水材組成物から得られた塗膜防水材には発泡による気泡がほとんどなかった。
さらに、実施例1〜4のウレタン系塗膜防水材組成物から得られた塗膜防水材の表面は、亀甲模様がなく色が均一で、かつ、平坦であった。このことから、実施例1〜4のウレタン系塗膜防水材組成物は仕上がり性に優れていると言える。
これに対して、比較例1のウレタン系塗膜防水材組成物からなる硬化物は、硬化物の表面に亀甲模様(ベナード)の色ムラが生じたことから、表面状態の均一性に劣ることが分かった。これは、減粘剤として低沸点のエチルシクロヘキサンを使用することによって、塗膜内で次のような対流が起こるためと本発明者は推察した。
比較例1のようにエチルシクロヘキサンを含有するウレタン系塗膜防水材組成物を塗布して塗膜を施工すると、塗膜からエチルシクロヘキサンが蒸発する。このエチルシクロヘキサンの蒸発に伴って、塗膜層の内部に対流が生じる。対流は、塗膜の底面から塗膜の表面に向かい、次に塗膜の表面から塗膜の底面に戻るような流れである。このときの塗膜表面付近の対流によって、塗膜表面に亀甲模様(ベナード)が生じると考えられる。
比較例2のウレタン系塗膜防水材組成物は、ひまし油系脂肪酸エステルを含有するため臭気があり、硬化後ベタつきが確認され硬化性に劣った。
比較例3のウレタン系塗膜防水材組成物は、灯軽油留分の蒸留、水素化物を含有するため臭気があり、均一に混合しにくく、上記の混合性の評価方法では均一に混合するまでに5分以上時間がかかった。また、硬化後の塗膜に曇りが生じ、仕上がり性に劣った。
比較例4のウレタン系塗膜防水材組成物は、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートを、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート以外の成分100質量部に対して15質量部より多く含有するため、硬化後表面にベタつきが生じ、硬化性に劣った。
比較例5のウレタン系塗膜防水材組成物は、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートの量が、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート以外の成分100質量部に対して1質量部より少なく、低温で高粘度であったため、表面状態および作業性に劣った。
比較例6のウレタン系塗膜防水材組成物は、溶剤を含有しないため、臭気はないが、低温で高粘度であったため、表面状態および作業性に劣った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタンプレポリマーと、硬化剤と、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートとを含有するウレタン系塗膜防水材組成物であって、
前記2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート以外の成分100質量部に対して、前記2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートを1〜15質量部含有するウレタン系塗膜防水材組成物。
【請求項2】
ウレタンプレポリマーと、硬化剤とを含有するウレタン系塗膜防水材組成物に、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレートを添加して混合物を得る混合工程と、
前記混合物を施工する施工工程とを具備する、ウレタン系塗膜防水材組成物の施工方法。

【公開番号】特開2006−249226(P2006−249226A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−67164(P2005−67164)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】