説明

エアシリンダ及びそれを用いた圧着装置

【課題】エアシリンダを作動する高圧エアを用いながら強い調芯作用が得られるエア軸受にてピストンを支持したエアシリンダを提供する。
【解決手段】シリンダ本体31と、シリンダ本体31内に摺動自在に収容されたピストン32と、シリンダ本体31内のピストン32の摺動方向の少なくとも一側に配設され、高圧エアが供給される圧力室33a、33bとを備えたエアシリンダ12であって、圧力室33a、33b内の高圧エアの一部が導かれる高圧エア吹出口34をピストン32の外周でのピストン摺動方向の中央位置に配設し、ピストン32の外周でのピストン摺動方向の両側部に大気圧開放部である環状溝36a、36bを配設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピストン摺動部にエア軸受を適用したエアシリンダ及びそれを用いた圧着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板に電子部品などの部品を圧着する圧着装置において、圧着ヘッドを昇降自在に支持するとともに、この圧着ヘッドに、固定設置されたエアシリンダの下方に延出されたピストンロッドの下端を連結し、エアシリンダにて圧着ヘッドを押し下げることで所要の加圧力を作用させるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。そのエアシリンダは、シリンダ本体の内周面とピストンの外周面の間に微小な隙間を設けるとともに、ピストンの外周面に弾性リングなどのシール部材を配置した構成とされている。
【0003】
この特許文献1に記載された圧着装置では、さらにエアシリンダのピストンロッドを上方にも延出してその上端に係合部材を設けるとともに、エアシリンダの軸芯方向にストッパを移動駆動する送りねじ機構を設け、ストッパに対して係合部材をエアシリンダの加圧方向とは反対側から係合させた構成とし、圧着ヘッドを圧着部位に当接する位置まで移動させるのに、エアシリンダにて移動駆動しながら送りねじ機構にて移動制御を行うことで、当接した後のエアシリンダによる加圧動作を、エアシリンダの連続動作状態で行うようにし、それによって送りねじ機構等で圧着ヘッドとエアシリンダを移動させ、圧着ヘッドを圧着部位に当接させた後エアシリンダを起動させて加圧する場合のように、エアシリンダ起動時に生じ易いピストンの摩擦抵抗のばらつきの影響を受けないようにし、加圧力を高精度に制御できるように構成されている。
【0004】
ところが、シリンダ本体の内周面とピストン外周面の間に微小な隙間を設けるとともに、それらの間に弾性リングなどのシール部材を配置した構成では、シール部材が摩耗すると、シリンダ本体とピストンの間で軸芯ずれが発生したり、エアシリンダの動作中にピストンの摺動抵抗が大きく変化し、エアシリンダによる加圧力にばらつきが発生する恐れが生じる場合があり、そのため加圧力の高精度制御を常に確保するためには、シール部材の摩耗を防止する必要があり、頻繁にシール部材の点検・交換などのメンテナンスを行う必要があり、圧着装置の生産性を低下させるという問題があった。
【0005】
このような問題を解消できるエアシリンダの構成として、シリンダ本体の内周面とピストン外周面の間に、非接触摺動軸受であるエア軸受を配置したものが知られている。例えば、図7に示すように、シリンダ本体51の内周面におけるピストン52の外周面に対向する部分に、多孔質セラミックなどからなる軸受材53を配置するとともに、シリンダ本体51に設けた高圧エア供給口54からこの軸受材53に向けて高圧エアを送給することで、ピストン52を軸受材53の内周に発生するエアの静圧にて摺動自在に支持するエア軸受55を構成したものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、図8に示すように、シリンダ本体61内に、ピストン62を摺動自在に収容するとともにピストン62の摺動方向の両側に圧力室63a、63bを設け、各圧力室63a、63bに高圧エアを供給するように構成し、かつピストン62のピストンロッドの外周面、又はシリンダ本体61の内周面に対向するピストン62の外周面の位置に環状空間64を形成するとともに、この環状空間64内に何れかの圧力室63a、63b内に供給された高圧エアが導入されるようにしてエア軸受65を構成したエアシリンダが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特許第3601488号明細書
【特許文献2】特許第3483443号明細書
【特許文献3】特許第3818712号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、図7に示したような構成のエアシリンダにおいては、エア軸受55に高圧エアを供給する高圧エア供給手段を別途に配設する必要があり、設備構成が複雑になるという問題があり、またピストン52を単にエアの静圧によって非接触で摺動自在に支持するものであるため、高いエア圧を供給する必要があるとともに、ピストン52が偏芯したときに同芯位置に復元させる調芯作用は、軸受部がエアシリンダの作動用エアの影響を受けるため、不十分にしか得られないという問題がある。
【0008】
また、図8に示したような構成のエアシリンダにおいては、ピストン62の摺動方向の両側の圧力室63a、63bに供給される高圧エアをエア軸受65に導入するように構成されているので、別途に高圧エア供給手段を設ける必要がなく、設備構成は簡単になるが、単にエアの静圧にてピストン62を浮遊状態で支持するものであるため、エアシリンダの作動用の高圧エアではピストン62の偏芯に対応した十分な支持荷重を確保し難く、ここでピストン62が偏芯したときに同芯位置に復元させる調芯作用は、軸受部がエアシリンダの作動用エアの影響を受けるため、不十分にしか得られなく、このピストン62の芯ずれにより加圧力に変動を生じて、高精度の加圧力制御を実現することが困難であるという問題がある。
【0009】
本発明は、上記従来の問題に鑑み、エアシリンダを作動する高圧エアを用いながら強い調芯作用が得られるエア軸受にてピストンを支持したエアシリンダ及びそれを用いた圧着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のエアシリンダは、シリンダ本体と、シリンダ本体内に摺動自在に収容されたピストンと、シリンダ本体内のピストンの摺動方向の少なくとも一側に配設され、高圧エアが供給される圧力室とを備えたエアシリンダであって、圧力室内の高圧エアの一部が導かれる高圧エア吹出部をピストンの外周でのピストンの摺動方向の中央位置に配設し、ピストンの外周でのピストンの摺動方向の両側部に大気圧開放部を配設したものである。
【0011】
この構成によれば、圧力室に供給された高圧エアの一部が、ピストンの外周でのピストンの摺動方向の中央位置の高圧エア吹出部から吹出すことにより、ピストンの外周でのピストンの摺動方向の中央部に高圧エア層が形成されてピストンが浮遊状態で支持され、かつ高圧エア吹出部から成るエアの給気孔の周縁とピストンの軸受隙間にて形成される環状の流路部分が最小流路断面となって自成絞りを構成しているため、ピストンが何れか一方に偏芯すると、隙間の大きくなった部分では、ピストンの外周でのピストンの摺動方向の両側部に配設されている大気圧開放部に対する連通路が広くなって、これに反比例してエアの流量抵抗が小さくなり、給気孔付近の圧力が低い圧力分布になる一方、隙間の小さくなった部分では、大気圧開放部に対する連通路が狭くなって、これに反比例してエアの流量抵抗が大きくなり、給気孔付近の圧力が高い圧力分布になる。更に、ピストンの外周でのピストンの摺動方向の両側部に大気圧開放部を配設していることで、エアシリンダの作動エアが軸受部に干渉しないため、上記作用が確保され、ピストンを適正な軸芯に復元させる大きな力が発生して強い調芯作用が得られ、そのためピストンの芯ずれが生じ難くかつその結果エアシリンダを作動する程度の高圧エアでも十分な支持荷重を確保することができる。
【0012】
また、高圧エア吹出部を、ピストンの外周でのピストンの摺動方向の中央位置でかつ周方向に均等に配置された3箇所以上の位置に開口し、かつ圧力室内の高圧エアの一部が導かれる高圧エア吹出口にて構成し、大気圧開放部を、ピストンの外周でのピストンの摺動方向の両側部に配設され、かつ大気開放通路にて大気に連通された環状溝にて構成すると、ピストンの摺動方向の両側に圧力室がある場合に何れの圧力室に高圧エアが供給されていても、それぞれの圧力室の高圧エアが周方向に均等に配置された高圧エア吹出口から周方向に均等に吹き出すので、周方向に均等に支持荷重が得られ、かつ大気圧開放部が全周に形成されているので、上記作用を安定して確実に得ることができる。
【0013】
また、ピストンの外周でのピストンの摺動方向の両側部に、ピストンの摺動方向の側端から間隔をあけて大気圧開放部を構成する環状溝を設けるとともに、ピストンの摺動方向の両側端部に段差を設けてステップ絞りを構成すると、ステップ絞りにてエアシリンダの作動エアに対する大気圧開放部のシール性が向上するとともに、エアシリンダの作動エアを有効利用してステップ絞り部分でも調芯作用を持たることができ、エアシリンダの作動エアと軸受部とのエアの干渉を防止し、ピストンの軸受剛性を一層向上できる。
【0014】
また、本発明の圧着装置は、圧着ヘッドを上下に摺動自在に支持するとともに、エアシリンダにて圧着ヘッドを押し下げることで基板上に配置された部品に所要の加圧力を作用させ、基板に部品を圧着する圧着装置において、上記エアシリンダのピストンから延設されたピストンロッドを、摺動自在に支持された圧着ヘッドに連結したものであり、エアシリンダのピストンをエア軸受にてシリンダ本体内のピストンの摺動部分に対して非接触で支持しているので、摩耗を生じず、そのためメンテナンスを行わずに長期間稼動することができて生産性が向上し、かつピストンの芯ずれを発生しないので、高精度の加圧力制御を行うことができ、高品質でばらつきのない圧着状態を確保することができる。
【0015】
また、シリンダ本体の両端を貫通してピストンロッドを延出し、シリンダ本体の一端側から延出されたピストンロッドの先端を圧着ヘッドに連結し、シリンダ本体の他端側から延出されたピストンロッドの先端に係合部材を設け、ストッパをエアシリンダの軸芯方向に移動駆動する移動手段を設け、ストッパに対して係合部材を基板に部品を圧着するエアシリンダの加圧方向とは反対側から係合させた構成とすると、エアシリンダを連続動作させた状態で加圧動作を行うことができるのでエアシリンダ起動時に生じ易いピストンの摩擦抵抗のばらつきの影響を受けず、そのため上記強い調芯作用と相俟って高精度に加圧力を制御することができ、特に高精度の加圧力制御が必要な圧着装置に効果的である。
【発明の効果】
【0016】
本発明のエアシリンダ及びそれを用いた圧着装置によれば、圧力室に供給された高圧エアの一部がピストンの外周でのピストンの摺動方向の中央部の高圧エア吹出部から吹出して高圧エア層が形成されることでピストンが浮遊状態で支持され、かつピストンの外周でのピストンの摺動方向の両側部に大気圧開放部が配設されているのでピストンが何れか一方に偏芯すると、圧力分布の差によってピストンを適正な軸芯に復元させる大きな力が発生するためピストンの芯ずれが生じ難く、その結果エアシリンダを作動する程度の高圧エアでも十分な支持荷重を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を、液晶表示パネルのガラス基板に電子部品や電子部品を接合するための異方性導電材などの部品を圧着する圧着装置に適用した一実施形態について、図1〜図6を参照して説明する。
【0018】
図1において、本実施形態の圧着装置は、ガラス基板などの基板1を保持テーブル2上に支持して移動及び位置決めする位置決め手段3と、圧着すべき部品5が配置された基板1の側端部を下方から支持する下受け部4と、部品5を上方から加圧して圧着させる圧着機構部6にて構成されている。
【0019】
圧着機構部6は、下部基台7aと、下部基台7aに対し立設された縦フレーム7bと、縦フレーム7bの上部に下部基台7aに対向して配設された上側基部7cとを有するフレーム7を備えている。下部基台7a上に上記下受け部4が配置され、縦フレーム7bの側面に垂直に設けられたガイドレール8に沿って摺動自在なスライダ9に逆L字状の昇降ブラケット10が固定され、この昇降ブラケット10に下受け部4の直上に対向するように圧着ヘッド11が装着されている。
【0020】
上側基部7c上には、圧着ヘッド11の直上に同芯状にエアシリンダ12が配設されている。エアシリンダ12からは下方と上方の両方向に、ピストンロッド13a、13bが延出され、下方に延出されたピストンロッド13aは上側基部7cを貫通してその先端が昇降ブラケット10に結合され、上方に延出されピストンロッド13bの先端には係合部材14が設けられている。
【0021】
また、上側基部7c上には、エアシリンダ12の軸芯方向と平行にナット部材16を昇降駆動する移動手段としての送りねじ機構15が配設され、ナット部材16に固定されたストッパ17に係合部材14が上方から係合されている。送りねじ機構15は、ナット部材16が螺合するボールねじ軸から成る送りねじ18と、送りねじ18の上下両端を回転自在に支持する軸受19a、19bと、送りねじ18を正逆回転駆動する駆動モータ20にて構成されている。なお、移動手段は、この送りねじ機構15に限らず、リニアモータ機構であっても、また昇降自在に支持された昇降体に設けたカムフォロアを回転カムに係合させ、回転カムの回転に伴って昇降体を昇降させる構成でも良い。
【0022】
エアシリンダ12の上部と下部のエア供給口21a、21bには、高圧エア源22から圧力制御部23を介して所要の圧力に制御された高圧エアを供給するように構成されるとともに、制御部24にて圧力制御部23を制御し、また制御部24にてモータ制御部25を介して駆動モータ20を制御するように構成されている。
【0023】
以上のような全体構成の圧着装置において、エアシリンダ12は、図2に詳細に示すように、シリンダ本体31内に、ピストン32を摺動自在に収容するとともに、ピストン32の摺動方向の両側に圧力室33a、33bを配設し、エア供給口21a、21bからそれぞれの圧力室33a、33bの内部に高圧エアを供給し、あるいは内部のエアを排出するように構成されている。
【0024】
ピストン32の外周でのピストンの摺動方向の中央位置には、図2(b)に示すように、周方向に60°間隔の6箇所の位置に、高圧エア吹出部としての高圧エア吹出口34が開口されている。各高圧エア吹出口34は、周方向に1つ置きに120°間隔で配置された3つの高圧エア吹出口34にて構成される2つのグループに分けられ、一方のグループは高圧エア導入通路35aにより圧力室33aと、他方のグループは高圧エア導入通路35bにより圧力室33bとそれぞれ連通されている。そのため、ピストン32には、図2(a)、(b)に示すように、一端が圧力室33aに臨んで開口し、他端が同じ周方向位置の高圧エア吹出口34に接続される120°間隔の3つの高圧エア導入通路35aと、一端が圧力室33bに臨んで開口し、他端が同じ周方向位置の高圧エア吹出口34に接続される120°間隔の3つの高圧エア導入通路35bとが、互いに60°間隔で形成されている。
【0025】
ピストン32の外周でのピストン摺動方向の両側部には、大気圧開放部を構成する環状溝36a、36bが配設されている。環状溝36a、36bは、図2(a)、(c)に示すように、ピストン32及びピストンロッド13a、13bの軸部を長手方向に貫通する軸穴37にそれぞれ放射状の連通路38a、38bを介して連通され、軸穴37はシリンダ本体2より外側に形成した大気開放穴(図示せず)を通して大気に開放されている。連通路38a、38bは、高圧エア導入通路35a、35bと干渉しない位置に形成されている。大気開放穴(図示せず)は、ピストンロッド13aの、加熱機構を有する圧着ヘッド11の上部より上の近傍で開口させ、圧着ヘッド11の加熱の影響を受ける周囲の雰囲気を流動排出させる機能を果たすようにするのが好適である。これら連通路38a、38b、軸穴37、及び大気開放穴(図示せず)にて大気開放通路39が構成されている。
【0026】
40a、40bは圧力室33a、33bの軸芯方向の内側端に配設した、ピストン32のストッパである。シリンダ本体31のピストンロッド13a、13bの貫通穴41には、ピストンロッド13a、13bに非接触でシール性を確保するステップ絞り42が設けられている。ステップ絞り42は、大気側の隙間を小さく、圧力室33a、33b側の隙間を大きくしてその間に段部を設けることでシール性の向上を図ったものである。同様に、ピストン32の摺動方向の両端部にも、ステップ絞り43が設けられている。すなわち、大気開放部としての環状溝36a、36b側の隙間を小さく、圧力室33a、33b側の隙間を大きくしてその間に段部を設けることでシール性の向上を図っている。
【0027】
次に、以上の構成の圧着装置にて基板1の側縁部に部品5を圧着する工程を説明する。図1に示すように、基板1の部品5が配置された側縁部を下受け部4上に位置決めした状態で、高圧エア源22から供給される高圧エアを圧力制御部23にて所定圧力に制御してエアシリンダ12のエア供給口21aに供給すると、図3(a)に示すように、圧力室33a内の高圧エアの圧力が矢印44aの如くピストン32の上面に作用し、ピストン32が白抜矢印45aのように下方に所定の加圧力で押圧される。それとともに、制御部24にてモータ制御部25を介して駆動モータ20を制御して送りねじ機構15を作動させ、ストッパ17を予め設定された速度プログラムに基づいて下降させることで、ピストン32が同速度で下方移動し、ピストンロッド13aを介して圧着ヘッド11が下降する。圧着ヘッド11が部品に当接し、さらにストッパ17が下降すると、圧着ヘッド11により上記所定の加圧力で部品5が押圧されることで、確実かつ適正に圧着が行われる。送りねじ機構15の動作は、圧着ヘッド11が部品に当接した後、わずかにさらに下降した後に停止される。このことによりエアシリンダ12の加圧力が圧着ヘッド11を介して基板1に圧着する部品5に伝えることができる。なお、圧力室33a内の高圧エアの圧力でピストン32に所定の加圧力を作用させる際に、エアシリンダ12のエア供給口21bから排出されるエア圧を圧力制御部23で制御して圧力室33b内の圧力を制御することで、加圧力をより高精度に制御することができる。
【0028】
圧着が完了すると、圧力制御部23にて高圧エアをエアシリンダ12のエア供給口21bを介して圧力室33b内に高圧エアを供給することで、図3(b)に示すように、高圧エアの圧力が矢印44bの如くピストン32の下面に作用し、ピストン32が白抜矢印45bのように上方に所定の加圧力で押圧され、ピストン32が上方移動し、ピストンロッド13aを介して圧着ヘッド11が上昇する。また、その後又はそれと同時に制御部24にてモータ制御部25を介して駆動モータ20を制御し、送りねじ機構15を作動させて、ストッパ17を予め設定された位置まで上昇させる。
【0029】
以上のエアシリンダ12におけるピストン32の摺動に際して、図3(a)、(b)に示すように、圧力室33a又は33b内の高圧エアの一部が、高圧エア導入通路35a、35bを通ってピストン32の外周でのピストンの摺動方向の中央部の高圧エア吹出口34から吹出し、ピストン32の外周とシリンダ本体31の内周との隙間に押圧エアの層が形成され、ピストン32はシリンダ本体31の内周に非接触で摺動自在に支持される。かくして、ピストン32の摺動抵抗が小さく、かつ摺動による摩耗部が存在しないので、摩耗による摺動抵抗の変化によって加圧力にばらつきが発生する恐れもなく、メンテナンスレスで加圧力を高精度に制御することができる。
【0030】
また、高圧エア吹出口34から吹出した高圧エアは、ピストン32の外周とシリンダ本体31の内周との間の微小隙間を通ってピストン外周でのピストン摺動方向の両側の環状溝36a、36bに流入し、連通路38a、38b、軸穴37、及びピストンロッド13a、および/あるいは13bの大気開放穴(図示せず)からなる大気開放通路39を通して大気中に放出される。これにより、高圧エア吹出口34から環状溝36a、36bに向けて、高圧エアの吹出し圧から大気圧に低下する略台形の圧力分布を呈するとともに、微小隙間の大きさによってその大きさが変化する。
【0031】
図4を参照して説明すると、高圧エア吹出口34の周縁と微小隙間で構成される環状流路部分が最小流路断面となることで自成絞りが形成されている。この自成絞りにおける絞り面積は、高圧エア吹出口34の直径を2r、微小隙間の大きさをhとすると、2πrhで与えられる。ここで、供給される高圧エアの圧力をPa、自成絞り直後の圧力をPsとすると、(Pa−Ps)は自成絞りによる抵抗(ka)と流量(Q)の積で与えられ、また自成絞り直後と環状溝36a、36b間で、圧力がPsから大気圧(P0 )に低下し、その圧力差(Ps−P0 )はこの間の流路の抵抗(kb)と流量(Q)の積で与えられ、かつ自成絞りの抵抗kaは隙間hの大きさに略反比例し、流路の抵抗kbは隙間hの3乗に略反比例する。その結果、自成絞り直後の圧力Psは、隙間hが大きくなれば小さくなり、隙間hが小さくなれば大きくなる。
【0032】
この結果、ピストン32とシリンダ本体31の軸芯が実質的に一致し、ピストン32の外周とシリンダ本体31の内周との間の隙間が均等に形成されている場合は、図5(a)に示すように、自成絞り直後の圧力Psが周方向に均等で、ピストン32の外周からピストン32の軸芯に向かう求心力46が周方向に均等に作用し、ピストン32の軸芯位置が維持される。
【0033】
一方、ピストン32がシリンダ本体31の軸芯に対して偏芯し、ピストン32の外周とシリンダ本体31の内周との間の隙間が周方向に不均等になると、図5(b)に示すように、隙間hの大きくなった部分では、自成絞りによる抵抗ka及び環状溝36a、36bに至る流路の抵抗kbが小さくなり、自成絞り直後の圧力PS2が小さくなって、低い圧力分布となる一方、隙間hの小さくなった部分では自成絞りによる抵抗ka及び環状溝36a、36bに至る流路の抵抗kbが大きくなり、自成絞り直後の圧力PS1が大きくなって、高い圧力分布となるので、ピストン32を適正な軸芯位置に復元させる大きな求心力46が発生して強い調芯作用が得られ、ピストン32の芯ずれを効果的に防止することができる。また、その結果エアシリンダ12を作動させる高圧エアの一部を用いてエア軸受を構成していながら、十分な支持荷重を確保することができる。
【0034】
さらに、ピストン32の外周でのピストンの摺動方向の両側部に、ピストンの摺動方向の側端から間隔をあけて環状溝36a、36bを配設するとともに、ピストンの摺動方向の両側端部に段差を設けてステップ絞り43を設けているので、このステップ絞り43にてエアシリンダ12の作動エアに対する大気圧開放部である環状溝36a、36bのシール性が向上するとともに、エアシリンダ12の作動エアを有効利用してステップ絞り43部分でも調芯作用を持たることができ、エアシリンダの作動エアと軸受部とのエアの干渉を防止し、ピストン32の軸受剛性を一層向上し、ピストン23の芯ずれを効果的に防止することができる。
【0035】
また、本実施形態の圧着装置によれば、上記エアシリンダ12にて圧着ヘッド11を加圧するようにしているので、エアシリンダ12のピストン32をエア軸受にてシリンダ本体31の内周に非接触で支持しているので、摩耗を生じず、そのためメンテナンスを行わずに長期間稼動することができて生産性が向上し、かつ上記のようにピストン32の芯ずれを発生しないので、高精度の加圧力制御を行うことがてき、高品質でばらつきのない圧着状態を確保することができる。
【0036】
また、シリンダ本体31の両端側を貫通してピストンロッド13a、13bを延出し、シリンダ本体31の一端側から延出されたピストンロッド13aの先端を圧着ヘッド11に連結し、シリンダ本体31の他端側から延出されたピストンロッド13bの先端に係合部材14を設け、送りねじ機構15にてピストン32の摺動方向であるエアシリンダ12の軸芯方向にストッパ17を移動駆動するとともに、そのストッパ17に対して係合部材14をエアシリンダ12の加圧方向とは反対側から係合させ、エアシリンダ12を連続動作させた状態で加圧動作に移行するようにしているので、加圧時にエアシリンダ12の起動時に生じ易いピストン32の摩擦抵抗のばらつきの影響を受けず、これにより上記強い調芯作用と相俟って高精度に加圧力を制御することができ、特に高精度の加圧力制御が必要な圧着装置に効果的である。
【0037】
以上の説明では、エアシリンダ12として軸芯方向両側にピストンロッド13a、13bが延出されている構成例を示したが、図6に示すように、ピストン32の摺動方向一側にのみピストンロッド13aを設け、シリンダ本体31の一端の貫通穴41を通して外部に延出し、シリンダ本体31の他端を閉鎖した構成のエアシリンダ12においても、ピストン32に同様に高圧エア吹出し口34と、圧力室33a、33bから高圧エア吹出し口34に高圧エアを導入する高圧エア導入通路35a、35bと、大気圧開放部としての環状溝36a、36bを設けることで同様の作用効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のエアシリンダ及びそれを用いた圧着装置によれば、圧力室に供給された高圧エアの一部がピストンの外周でのピストンの摺動方向の中央部の高圧エア吹出部から吹出して高圧エア層が形成されることでピストンが浮遊状態で支持され、かつピストンの外周でのピストンの摺動方向の両側部に大気圧開放部が配設されているので、ピストンが何れか一方に偏芯すると、圧力分布の差によってピストンを適正な軸芯に復元させる大きな力が発生するためピストンの芯ずれが生じ難く、その結果エアシリンダを作動する程度の高圧エアでも十分な支持荷重を確保することができるので、各種基板に各種部品を圧着する圧着装置に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態の圧着装置の全体概略構成を示す部分断面側面図。
【図2】同実施形態のエアシリンダの構成を示し、(a)は縦断面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図、(c)は(a)のB−B矢視断面図。
【図3】同エアシリンダの動作説明図で、(a)の下降動作を説明する断面図、(b)の上昇動作を説明する断面図。
【図4】同エアシリンダにおける高圧エア吹出し口による自成絞りの作用説明図。
【図5】同エアシリンダのエア軸受の作用を示し、(a)の正常時の作用説明図、(b)の偏芯時の作用説明図。
【図6】同実施形態におけるエアシリンダの他の構成例の縦断面図。
【図7】第1の従来例のエアシリンダの縦断面図。
【図8】第2の従来例のエアシリンダの縦断面図。
【符号の説明】
【0040】
1 基板
5 部品
11 圧着ヘッド
12 エアシリンダ
13a、13b ピストンロッド
14 係合部材
15 送りねじ機構
17 ストッパ
31 シリンダ本体
32 ピストン
33a、33b 圧力室
34 高圧エア吹出口(高圧エア吹出部)
36a、36b 環状溝(大気圧開放部)
39 大気開放通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ本体と、シリンダ本体内に摺動自在に収容されたピストンと、シリンダ本体内のピストンの摺動方向の少なくとも一側に配設され、高圧エアが供給される圧力室とを備えたエアシリンダであって、圧力室内の高圧エアの一部が導かれる高圧エア吹出部をピストンの外周でのピストンの摺動方向の中央位置に配設し、ピストンの外周でのピストンの摺動方向の両側部に大気圧開放部を配設したことを特徴とするエアシリンダ。
【請求項2】
高圧エア吹出部を、ピストンの外周でのピストンの摺動方向の中央位置でかつ周方向に均等に配置された3箇所以上の位置に開口し、かつ圧力室内の高圧エアの一部が導かれる高圧エア吹出口にて構成し、大気圧開放部を、ピストンの外周でのピストンの摺動方向の両側部に配設され、かつ大気開放通路にて大気に連通された環状溝にて構成したことを特徴とする請求項1記載のエアシリンダ。
【請求項3】
ピストンの外周でのピストンの摺動方向の両側部に、ピストンの摺動方向の側端から間隔をあけて大気圧開放部を構成する環状溝を設けるとともに、ピストンの摺動方向の両側端部に段差を設けてステップ絞りを構成したことを特徴とする請求項1又は2記載のエアシリンダ。
【請求項4】
圧着ヘッドを上下に摺動自在に支持するとともに、エアシリンダにて圧着ヘッドを押し下げることで基板上に配置された部品に所要の加圧力を作用させ、基板に部品を圧着する圧着装置において、請求項1〜3の何れか1つに記載のエアシリンダのピストンから延設されたピストンロッドを、摺動自在に支持された圧着ヘッドに連結したことを特徴とする圧着装置。
【請求項5】
シリンダ本体の両端を貫通してピストンロッドを延出し、シリンダ本体の一端側から延出されたピストンロッドの先端を圧着ヘッドに連結し、シリンダ本体の他端側から延出されたピストンロッドの先端に係合部材を設け、ストッパをエアシリンダの軸芯方向に移動駆動する移動手段を設け、ストッパに対して係合部材を基板に部品を圧着するエアシリンダの加圧方向とは反対側から係合させたことを特徴とする請求項4記載の圧着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−97613(P2009−97613A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−269115(P2007−269115)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】