説明

エアバッグの折り畳み方法

【課題】左半側エアバッグ及び右半側エアバッグが早期のうちに上下方向及び左右方向に広範囲に展開することが可能なエアバッグの折り畳み方法を提供する。
【解決手段】エアバッグ10を折り畳む場合、まず、右半側エアバッグ11及び左半側エアバッグ12の略前後方向の厚さを小さくし、且つ該右半側エアバッグ11の右側面と左半側エアバッグ12の左側面とを少なくとも部分的に左右に離反させるように折り畳むことにより、エアバッグ10を略上下方向及び左右方向に平たく展延された1次折り畳み体10Aとし、その後、この1次折り畳み体10Aを、略上下方向及び左右方向の幅が小さくなるように折り畳むことにより、最終折り畳み体10Cとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両衝突時等に乗員を拘束するためのエアバッグの折り畳み方法に係り、特に、乗員の前方の左側及び右側においてそれぞれ膨張する左半側エアバッグ及び右半側エアバッグを有したエアバッグの折り畳み方法に関する。なお、本発明において、前後方向及び左右方向とは、乗員にとっての前後方向及び左右方向と一致する。
【背景技術】
【0002】
車両衝突時等に乗員を拘束するためのエアバッグとして、乗員の前方の左側及び右側においてそれぞれ膨張する左半側エアバッグ及び右半側エアバッグを有し、これらが共通のインフレータによって膨張するように構成されたエアバッグがある。特開2007−45190に、このエアバッグの折り畳み方法が記載されている。
【0003】
同号においては、エアバッグを折り畳む場合、まず左半側エアバッグ及び右半側エアバッグをそれぞれ横向きに置き、これらをそれぞれ上下方向及び前後方向に平たく展延させた状態とする。次に、左半側エアバッグを上端側及び下端側から上下方向の中央側に向ってロール状又は蛇腹状に折り畳み、前後方向に細長い短冊状の折り畳み体とする。また、これと同様に、右半側エアバッグも、上端側及び下端側から上下方向の中央側に向ってロール状又は蛇腹状に折り畳み、前後方向に細長い短冊状の折り畳み体とする。その後、これらの左半側エアバッグ及び右半側エアバッグの折り畳み体をそれぞれ前後方向の長さが小さくなるように折り畳み、塊状の最終折り畳み体とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−45190
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特開2007−45190においては、左半側エアバッグ及び右半側エアバッグは、前後方向に細長い短冊状の折り畳み体とされた後、前後方向の長さが小さくなるように
折り畳まれているので、エアバッグの膨張時には、左半側エアバッグ及び右半側エアバッグは、まず、この前後方向の折り畳みが解けて前後方向に展開し、次いで、上下方向の折り畳みが解けて上下方向に展開し、その後、左右方向に幅が大きくなるように展開する。そのため、エアバッグが膨張を開始した後、左半側エアバッグ及び右半側エアバッグが上下方向及び左右方向に広範囲に展開するまでに時間がかかる。
【0006】
本発明は、乗員の前方の左側及び右側においてそれぞれ膨張する左半側エアバッグ及び右半側エアバッグを有するエアバッグの折り畳み方法において、エアバッグの膨張開始後、左半側エアバッグ及び右半側エアバッグが早期のうちに上下方向及び左右方向に広範囲に展開することが可能なエアバッグの折り畳み方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明(請求項1)のエアバッグの折り畳み方法は、乗員前方の左側において膨張する左半側エアバッグと、乗員前方の右側において膨張する右半側エアバッグとを有するエアバッグの折り畳み方法において、該左半側エアバッグ及び右半側エアバッグの略前後方向の厚さを小さくし、且つ該左半側エアバッグの左側面と右半側エアバッグの右側面とを少なくとも部分的に左右方向に離反させるように折り畳むことにより、該エアバッグを略上下方向及び左右方向に平たく展延された1次折り畳み体とする1次折り畳み工程と、該1次折り畳み体を略上下方向及び左右方向に幅が小さくなるように折り畳んで最終折り畳み体とする2次折り畳み工程とを行うことを特徴とするものである。
【0008】
請求項2のエアバッグの折り畳み方法は、請求項1において、前記2次折り畳み工程において、前記1次折り畳み体の上端側、下端側、左端側及び右端側をそれぞれ該1次折り畳み体の上下方向及び左右方向の中央側に向って折り畳むことを特徴とするものである。
【0009】
請求項3のエアバッグの折り畳み方法は、請求項2において、前記2次折り畳み工程において、前記1次折り畳み体の上端側、下端側、左端側及び右端側の少なくとも一部を該1次折り畳み体の上下方向及び左右方向の中央側に向ってロール状に折り畳むことを特徴とするものである。
【0010】
請求項4のエアバッグの折り畳み方法は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記2次折り畳み工程において、前記1次折り畳み体を左右方向に幅が小さくなるように折り畳んだ後、上下方向に幅が小さくなるように折り畳むことを特徴とするものである。
【0011】
請求項5のエアバッグの折り畳み方法は、請求項4において、前記1次折り畳み体を上下方向に幅が小さくなるように折り畳むに際し、該1次折り畳み体の上端側及び下端側をそれぞれ該1次折り畳み体の上下方向の中央側に向って折り畳んだ後、該下端側の折り畳み体の上方に該上端側の折り畳み体を配置することを特徴とするものである。
【0012】
請求項6のエアバッグの折り畳み方法は、請求項5において、前記エアバッグは、車両のインストルメントパネルから乗員に接近するように車両後方へ向って膨張するものであり、前記左半側エアバッグと右半側エアバッグとの間に、該エアバッグが膨張した状態において該エアバッグを略上下方向に貫通する空洞部が設けられており、該空洞部は、該エアバッグが膨張した状態において、その下端側が、少なくとも部分的に、インストルメントパネルの車両後方側の端部よりも車両後方に位置するように構成されたものであることを特徴とするものである。
【0013】
請求項7のエアバッグの折り畳み方法は、請求項1ないし6のいずれか1項において、前記エアバッグは、前記左半側エアバッグ及び右半側エアバッグの膨張時の前後方向の途中部に、それぞれ、該左半側エアバッグ及び右半側エアバッグの左右の側面同士を連結した連結部材が設けられており、前記1次折り畳み工程において、該左半側エアバッグの左側面及び右半側エアバッグの右側面のうち、該連結部材よりも該左半側エアバッグ及び右半側エアバッグの後端側同士、並びに該連結部材よりも該左半側エアバッグ及び右半側エアバッグの前端側同士をそれぞれ左右方向に離反させることにより、該エアバッグを左右方向に展延させることを特徴とするものである。
【0014】
請求項8のエアバッグの折り畳み方法は、請求項7において、前記2次折り畳み工程において、前記左半側エアバッグ及び右半側エアバッグの前記連結部材よりも後端側同士並びに前端側同士をそれぞれ前記1次折り畳み体の左右方向の中間側に向って折り畳むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のエアバッグの折り畳み方法によれば、エアバッグは、まず、左半側エアバッグ及び右半側エアバッグの略前後方向の厚さを小さくし、且つ該左半側エアバッグの左側面と右半側エアバッグの右側面とを少なくとも部分的に左右に離反させるように折り畳むことにより、略上下方向及び左右方向に平たく展延された1次折り畳み体とされ(1次折り畳み工程)、その後、この1次折り畳み体を略上下方向及び左右方向の幅が小さくなるように折り畳むことにより、最終折り畳み体とされている(2次折り畳み工程)。そのため、このエアバッグが膨張を開始した場合には、該エアバッグは、まず、その上下方向及び左右方向の折り畳みが解けて上下方向及び左右方向に展開し、その後、前後方向の厚さが大きくなるように展開する。これにより、エアバッグは、膨張開始後、早期のうちに上下方向及び左右方向に広範囲に展開することができる。そのため、例えば乗員が比較的前方に着座した状況でエアバッグが膨張を開始し、早期の段階でこの膨張途中のエアバッグに乗員が接触した場合でも、エアバッグは、乗員の身体を広範囲に受け止めることができる。これにより、膨張途中のエアバッグに乗員が接触したときに、乗員の頭部や首などに局所的に荷重が加えられることが防止される。
【0016】
本発明においては、エアバッグの膨張時には、左半側エアバッグが乗員前方左側において膨張して乗員の左胸を受け止め、右半側エアバッグが乗員前方右側において膨張して乗員の右胸を受け止める。この左右の胸には硬くて強い肋骨が存在するので、これらの左半側エアバッグ及び右半側エアバッグによって乗員をしっかりと受け止めることができる。
【0017】
請求項2の通り、2次折り畳み工程において、1次折り畳み体の上端側、下端側、左端側及び右端側をそれぞれ該1次折り畳み体の上下方向及び左右方向の中央側に向って折り畳むことが好ましい。このように折り畳むことにより、エアバッグ膨張時には、該エアバッグは、上下左右に早期に且つ略均等に膨張するようになる。
【0018】
この場合、請求項3の通り、エアバッグの1次折り畳み体の上端側、下端側、左端側及び右端側の少なくとも一部を該1次折り畳み体の上下方向及び左右方向の中央側に向ってロール状に折り畳むことが好ましい。このようにエアバッグを折り畳んだ場合、エアバッグの膨張時には、このロール状に折り畳まれた部分は、エアバッグの外方へ向って転がるようにして巻きを解きながら膨張展開する。その際、巻きが解かれた部分から順次に膨張していくので、これらの部分は、ロール折りの巻き芯線方向と略平行方向において略均等に膨張するようになる。即ち、1次折り畳み体の上端側及び下端側はそれぞれ左右方向に略均等に膨張し、左端側及び右端側はそれぞれ上下方向に略均等に膨張するようになる。
【0019】
請求項4の通り、2次折り畳み工程において、1次折り畳み体を左右方向の幅が小さくなるように折り畳んだ後、上下方向の幅が小さくなるように折り畳むことにより、エアバッグの膨張開始後、該エアバッグが上下方向に速やかに膨張するようになる。
【0020】
この場合、請求項5の通り、1次折り畳み体を上下方向の幅が小さくなるように折り畳むに際し、該1次折り畳み体の上端側及び下端側をそれぞれ該1次折り畳み体の上下方向の中央側に向って折り畳んだ後、該下端側の折り畳み体の上方に該上端側の折り畳み体を配置することが好ましい。このように折り畳んだ場合、エアバッグの上端側が下端側よりも早く展開するようになり、乗員の頭部や胸部の前方に早期のうちにエアバッグを展開させることが可能となる。また、これにより、例えばエアバッグ膨張時に、インストルメントパネル等のエアバッグ装置設置部の近傍に物体が存在していても、エアバッグは、この物体の上方を飛び越えるようにして車両後方へ膨張展開するようになるので、膨張途中のエアバッグがこのエアバッグ装置設置部の近傍の物体を過度に後方へ押圧することが防止される。
【0021】
この請求項5の折り畳み方法は、請求項6の通り、左半側エアバッグと右半側エアバッグとの間に、膨張したエアバッグを略上下方向に貫通する空洞部を設け、エアバッグが膨張した状態において、該空洞部の下端側が少なくとも部分的にインストルメントパネルの車両後方側の端部よりも車両後方に位置するように構成されたエアバッグに適用するのに好適である。このエアバッグにあっては、仮にエアバッグ膨張時にインストルメントパネルの近傍に物体が存在していても、この物体が該空洞部に呑み込まれるようになる。このエアバッグを請求項5の折り畳み方法により折り畳んだ場合、エアバッグ膨張時には、前述の通り、エアバッグはインストルメントパネルの近傍の物体の上方を飛び越えるようにして車両後方へ膨張展開する。その後、エアバッグは、この物体に上方から被さるように下方へ膨張するので、この物体がスムーズにエアバッグの空洞部に呑み込まれるようになる。
【0022】
請求項7の通り、エアバッグは、左半側エアバッグ及び右半側エアバッグの膨張時の前後方向の途中部に、それぞれ、該左半側エアバッグ及び右半側エアバッグの左右の側面同士を連結した連結部材が設けられたものであってもよい。この場合、1次折り畳み工程において、左半側エアバッグの左側面及び右半側エアバッグの右側面のうち、該連結部材よりも左半側エアバッグ及び右半側エアバッグの後端側同士、並びに該連結部材よりも左半側エアバッグ及び右半側エアバッグの前端側同士をそれぞれ左右方向に離反させることにより、エアバッグを左右方向に展延させることが好ましい。このように折り畳むことにより、左半側エアバッグ及び右半側エアバッグの左右の側面同士を連結した連結部材が設けられたエアバッグであっても、左右方向に十分に展延させることができる。
【0023】
この場合、請求項8の通り、2次折り畳み工程においては、左半側エアバッグ及び右半側エアバッグの該連結部材よりも後端側同士並びに前端側同士をそれぞれ1次折り畳み体の左右方向の中間側に向って折り畳むことが好ましい。このように折り畳むことにより、エアバッグ膨張時には、左半側エアバッグ及び右半側エアバッグの該連結部材よりも後端側同士と前端側同士とがそれぞれ左右方向に展開するため、エアバッグの左右方向への展開が早期化される。また、この左半側エアバッグ及び右半側エアバッグの該連結部材よりも後端側同士と前端側同士とがそれぞれ左右方向に展開するのに伴い、これらがそれぞれ前後方向の厚みを増大させるように膨張するため、エアバッグの前後方向への展開も早期化される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施の形態に係るエアバッグの折り畳み方法により折り畳まれるエアバッグの斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】エアバッグの1次折り畳み方法を示す、図2と同様部分の断面図である。
【図5】(a)図はエアバッグの1次折り畳み体の正面図、(b)図は(a)図のB−B線に沿う断面図、(c)図は(a)図のC−C線に沿う断面図である。
【図6】エアバッグの1次折り畳み体の背面図である。
【図7】(a)図はエアバッグの2次折り畳み方法を示す正面図、(b)図は(a)図のB−B線に沿う断面図である。
【図8】(a)図はエアバッグの2次折り畳み方法を示す正面図、(b)図は(a)図のB−B線に沿う断面図である。
【図9】(a)図はエアバッグの2次折り畳み方法を示す正面図、(b)図は(a)図のB−B線に沿う断面図である。
【図10】(a)図はエアバッグの2次折り畳み方法を示す正面図、(b)図は(a)図のB−B線に沿う断面図である。
【図11】(a)図はエアバッグの2次折り畳み方法を示す正面図、(b)図は(a)図のB−B線に沿う断面図である。
【図12】(a)図はエアバッグの2次折り畳み方法を示す正面図、(b)図は(a)図のB−B線に沿う断面図である。
【図13】(a)図はエアバッグの2次折り畳み方法を示す正面図、(b)図は(a)図のB−B線に沿う断面図である。
【図14】エアバッグの2次折り畳み方法を示す、図13(b)と同様部分の断面図である。
【図15】エアバッグの2次折り畳み方法を示す、図13(b)と同様部分の断面図である。
【図16】エアバッグの2次折り畳み方法を示す、図13(b)と同様部分の断面図である。
【図17】エアバッグの2次折り畳み方法を示す、図13(b)と同様部分の断面図である。
【図18】エアバッグの2次折り畳み方法を示す、図13(b)と同様部分の断面図である。
【図19】エアバッグの2次折り畳み方法を示す、図13(b)と同様部分の断面図である。
【図20】エアバッグの2次折り畳み方法を示す、図13(b)と同様部分の断面図である。
【図21】エアバッグの2次折り畳み方法を示す、図13(b)と同様部分の断面図である。
【図22】エアバッグの最終折り畳み形状を示す、図13(b)と同様部分の断面図である。
【図23】(a)図はエアバッグ膨張時の側面図、(b)図はエアバッグ膨張時の上面図である。
【図24】(a)図はエアバッグ膨張途中時の側面図、(b)図はエアバッグ膨張完了時の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0026】
第1図は実施の形態に係るエアバッグの折り畳み方法により折り畳まれるエアバッグの斜視図である。第2図は第1図のII−II線に沿う断面図である。第3図は第2図のIII−III線に沿う断面図である。第4図はエアバッグの1次折り畳み方法を示す、第2図と同様部分の断面図である。第5図(a)はエアバッグの1次折り畳み体の正面図、第5図(b)は第5図(a)のB−B線に沿う断面図、第5図(c)は第5図(a)のC−C線に沿う断面図である。第6図はエアバッグの1次折り畳み体の背面図である。第7図(a),(b)〜第21図は、エアバッグの2次折り畳み方法の説明図である。なお、第7図(a)、第8図(a)、第9図(a)、第10図(a)、第11図(a)、第12図(a)、第13図(a)はそれぞれエアバッグの正面図であり、第7図(b)、第8図(b)、第9図(b)、第10図(b)、第11図(b)、第12図(b)、第13図(b)はそれぞれ第7図(a)、第8図(a)、第9図(a)、第10図(a)、第11図(a)、第12図(a)、第13図(a)のB−B線に沿う断面図である。第5図(b)、第7図(b)、第8図(b)、第9図(b)、第10図(b)、第11図(b)、第12図(b)においては、右半側エアバッグ及び左半側エアバッグの膨張時の左右幅を規制するための連結帯の図示が省略されている。第14図〜第21図は、第13図(b)と同様部分の断面図である。第22図は、このエアバッグの最終折り畳み形状を示す、第13図(b)と同様部分の断面図である。第23図(a)は、このエアバッグが膨張した時の側面図であり、第23図(b)は、この膨張したエアバッグの上面図である。第24図(a)は、このエアバッグの膨張途中時の側面図であり、第24図(b)は、このエアバッグの膨張完了時の側面図である。なお、第23図(a),(b)は、乗員が比較的前方に位置した状況を示し、第24図(a),(b)は、インストルメントパネルの近傍に物体(乗員を含む)が存在した状況を示している。
【0027】
以下の説明において、前後方向及び左右方向は、それぞれ車両乗員にとっての前後方向及び左右方向と合致する。また、エアバッグを山折りするとは、折り目がエアバッグの外方に向って凸となるように折ることをいい、谷折りするとは、折り目がエアバッグの内方に向って凸となるように折ることをいう。
【0028】
この実施の形態では、エアバッグ10は、車両の助手席乗員を拘束するための助手席用エアバッグ装置に装備される助手席用エアバッグである。第23図(a),(b)に示すように、助手席用エアバッグ装置は、このエアバッグ10と、折り畳まれた該エアバッグ10を収容しており、車両の助手席前方のダッシュボード1に設置される上開容器状のリテーナ2と、該エアバッグ10を膨張させるためのインフレータ3と、該エアバッグ10の折り畳み体を保形するための帯状の保形シート4(第22図)等を備えている。符号6は、インストルメントパネル1の上方のウィンドシールドを示している。リテーナ2はインストルメントパネル1の裏側に配置される。インストルメントパネル1には、エアバッグ10の膨張時に開裂して該エアバッグ10の車室内への膨出を許容するドア部(図示略)が形成されている。なお、インストルメントパネル1と別体に形成されたリッド(蓋部材)がリテーナ2の上面開口に装着されることもある。
【0029】
エアバッグ10は、乗員前方の右側において膨張する右半側エアバッグ11と、乗員前方の左側において膨張する左半側エアバッグ12と、該右半側エアバッグ11及び左半側エアバッグ12の基端側に連通する基端室13とを有する。基端室13の底面の前端側には、インフレータ3からのガスの導入口13aが設けられている。
【0030】
基端室13の内側からこのガス導入口13aの周縁部に、エアバッグ10をリテーナ2に連結するための押えプレート7が重ね合わされている。押えプレート7からは複数個のスタッドボルト7aが突設されており、各スタッドボルト7aがガス導入口13aの周縁部を貫通してエアバッグ10の外部に延出している。押えプレート7には、円柱形のインフレータ3を保持するための略円筒形状のインフレータ保持部7bが設けられている。
【0031】
インフレータ3からのガスは、このガス導入口13aから基端室13に導入されて該基端室13を膨張させ、次いで基端室13から右半側エアバッグ11及び左半側エアバッグ12にそれぞれ流入して該右半側エアバッグ11及び左半側エアバッグ12を膨張させる。膨張した状態における右半側エアバッグ11の右側面及び左半側エアバッグ12の左側面(以下、これらを右半側エアバッグ11及び左半側エアバッグ12の外側面ということがある。)にはそれぞれベントホール14が設けられている。
【0032】
この実施の形態では、右半側エアバッグ11と左半側エアバッグ12との膨張時の対峙面(即ち右半側エアバッグ11の左側面と左半側エアバッグ12の右側面)の前後方向の途中部分同士が縫目15によって縫合されている。第2,3図の通り、この縫目15は環状に延設されており、膨張状態における右半側エアバッグ11及び左半側エアバッグ12の上面、下面及び後面(乗員対向面)よりも該対峙面の上下方向及び前後方向の中央側を周回している。これにより、右半側エアバッグ11及び左半側エアバッグ12が膨張した状態においては、これらの上面同士の間、下面同士の間及び後面同士の間に、連続した凹部16が形成される。
【0033】
エアバッグ10が膨張完了した状態にあっては、右半側エアバッグ11と左半側エアバッグ12の後端部同士の間にタイパネルなどの架渡部材は存在せず、凹部16は、乗員に向って(即ち、第1図〜第4図において右方に向って)開放している。凹部16の最奥部は上記の縫目15である。このエアバッグ10が膨張完了した状態にあっては、第2図の通り、右半側エアバッグ11の最後端11tと左半側エアバッグ12の最後端12tとの間隔Wは150〜450mm特に170〜430mmであることが好ましい。また、このエアバッグ10が膨張完了した状態にあっては、右半側エアバッグ11及び左半側エアバッグ12の後面側における凹部16の深さD(第3図)は25〜400mm特に50〜350mmであることが好ましい。
【0034】
第3図の通り、縫目15の前端側は基端室13の後端側から離隔しており、これらの間には、右半側エアバッグ11と左半側エアバッグ12との間を略上下方向に貫通する空洞部17が存在している。第3図の通り、この空洞部17は、右半側エアバッグ11及び左半側エアバッグ12が膨張した状態において、その上下方向の途中部から下端側ほど前後方向の幅が大きくなるように形成されている。この空洞部17により、右半側エアバッグ11及び左半側エアバッグ12の下面側の凹部16は、基端室13側ほど深さが大きくなっている。第24図(b)に示すように、この空洞部17は、エアバッグ10の膨張完了状態において、その下端側が少なくとも部分的にインストルメントパネル1の最後端部1aよりも車両後方側に位置するように形成されている。即ち、エアバッグ10の膨張完了状態においては、この空洞部17の下端側の開口部が、少なくとも部分的に、インストルメントパネル1の最後端部1aよりも車両後方において該エアバッグ10の下面に露呈する。従って、第24図(b)の通り、エアバッグ10が膨張するときに、インストルメントパネル1の近傍に物体Cが存在していても、この物体Cが空洞部17に呑み込まれるようになる。
【0035】
この実施の形態では、右半側エアバッグ11及び左半側エアバッグ12の膨張時の上下方向の中間付近且つ前後方向の中間付近に、それぞれ、これらの左右の側面同士を連結して膨張時の左右幅を規制する連結部材としての連結帯18が設けられている。第2図の通り、各連結帯18は、右半側エアバッグ11内及び左半側エアバッグ12内を略左右方向に横切るように配置され、両端が該右半側エアバッグ11及び左半側エアバッグ12の左右の側面にそれぞれ接続されている。
【0036】
第2図の通り、各連結帯18は、一端が右半側エアバッグ11の左側面又は左半側エアバッグ12の右側面(即ちこれらの対峙面)に接続された第1の帯部材18aと、一端が右半側エアバッグ11の右側面又は左半側エアバッグ12の左側面(即ちこれらの外側面)に接続された第2の帯部材18bとを有している。これらの帯部材18a,18bの他端同士がそれぞれ右半側エアバッグ11内及び左半側エアバッグ12内で結合されることにより、各連結帯18は右半側エアバッグ11及び左半側エアバッグ12の左右の側面同士を連結したものとされている。符号18cは、各第1の帯部材18aの一端をそれぞれ右半側エアバッグ11及び左半側エアバッグ12の対峙面に縫着した縫目を示し、符号18dは、各第2の帯部材18bの一端をそれぞれ右半側エアバッグ11及び左半側エアバッグ12の外側面に縫着した縫目を示し、符号18eは、これらの他端同士を縫合した縫目を示している。符号19(第1図)は、各第2の帯部材18bと右半側エアバッグ11及び左半側エアバッグ12の外側面との縫合部を補強する補強布を示している。この実施の形態では、右半側エアバッグ11内の第1の帯部材18aと左半側エアバッグ12内の第1の帯部材18aとの一端同士は、該右半側エアバッグ11及び左半側エアバッグ12の対峙面同士を挟んで共通の縫目18cにより縫合されている。凹部16の最奥部となる前記縫目15は、第3図の通り、この縫目18cを取り囲んでいる。
【0037】
このエアバッグ10を折り畳む場合、まず、第4図〜第6図の通り、右半側エアバッグ11及び左半側エアバッグ12の略前後方向の厚さを小さくし、且つ該右半側エアバッグ11の右側面と左半側エアバッグ12の左側面とを少なくとも部分的に左右方向に離反させるように折り畳むことにより、エアバッグ10を、略上下方向及び左右方向に平たく展延された1次折り畳み体10Aとし(1次折り畳み工程)、その後、第7図(a),(b)〜第20図の通り、この1次折り畳み体10Aを、略上下方向及び左右方向に幅が小さくなるように折り畳むことにより、最終折り畳み体10Cとする(2次折り畳み工程)。以下に、このエアバッグ10の折り畳み方法について詳細に説明する。
【0038】
[1次折り畳み工程について]
エアバッグ10の1次折り畳みを行う場合、例えばエアバッグ10を、基端室13側又は右半側エアバッグ11及び左半側エアバッグ12の後端側を下にして略水平な台上に置き、該エアバッグ10を左右方向に広げながら略前後方向(基端室13側又は右半側エアバッグ11及び左半側エアバッグ12の後端側を下にして台上に置かれた状態においては略上下方向。以下、同様。)に押し潰すようにして平たく展延させる。
【0039】
その際、この実施の形態では、第4図及び第5図(c)の通り、右半側エアバッグ11の右側面及び左半側エアバッグ12の左側面の前後方向の途中部をそれぞれエアバッグ10の略上下方向(基端室13側又は右半側エアバッグ11及び左半側エアバッグ12の後端側を下にして台上に置かれた状態においては略水平方向。以下、同様。)の折り線Lに沿って谷折りし、これらを該右半側エアバッグ11と左半側エアバッグ12との対峙面に接近させる。なお、この実施の形態では、折り線Lは、右半側エアバッグ11の右側面及び左半側エアバッグ12の左側面のうち、各連結帯18を縫着した縫目18dよりも若干該右半側エアバッグ11及び左半側エアバッグ12の後端側に位置しているが、折り線Lの位置はこれに限定されない。
【0040】
また、右半側エアバッグ11の右側面及び左半側エアバッグ12の左側面のうち、この折り線Lとエアバッグ10の後面側における凹部16の最奥部(即ち縫目15の後端側)との中間付近をそれぞれ略上下方向の折り線Lに沿って山折りしつつ、これらを互いに離反させるように左右に引っ張る。なお、この折り線Lは、右半側エアバッグ11の右側面及び左半側エアバッグ12の左側面のうち、縫い目18dよりも該右半側エアバッグ11及び左半側エアバッグ12の後端側に位置している。これにより、右半側エアバッグ11及び左半側エアバッグ12のうち折り線Lよりも後端側同士が縫目15から股割れするようにして左右に平たく展延される。以下、これらの部分を右半側エアバッグ11及び左半側エアバッグ12の後端側展延部11a,12aと呼ぶ。
【0041】
また、右半側エアバッグ11の右側面及び左半側エアバッグ12の左側面のうち、折り線Lと基端室13の後端との中間付近をそれぞれ略上下方向の折り線Lに沿って山折りしつつ、これらを互いに離反させるように左右に引っ張る。なお、この折り線Lは、右半側エアバッグ11の右側面及び左半側エアバッグ12の左側面のうち、縫い目18dよりも該右半側エアバッグ11及び左半側エアバッグ12の前端側に位置している。その際、第4図の通り、右半側エアバッグ11と左半側エアバッグ12との対峙面のうち、空洞部17を取り囲む、縫目15の前端側と該対峙面同士の股部との間の部分も左右に引き伸ばして平たくする。これにより、右半側エアバッグ11及び左半側エアバッグ12のうち折り線Lよりも前端側が左右に平たく展延される。以下、これらの部分を右半側エアバッグ11及び左半側エアバッグ12の前端側展延部11b,12bと呼ぶ。
【0042】
さらに、基端室13を該右半側エアバッグ11及び左半側エアバッグ12の前端側展延部11b,12bの前面に沿うように折り畳む。その際、この実施の形態では、第4図の通り、基端室13の左右の側面を基端室13の内側に折り込みつつ、該基端室13を略上下方向に押し潰して帯状に折り畳み、次いで、この帯状の基端室13を前端側展延部11b,12bの前面に折り重ねる。その際、必要に応じ、第5図(b)及び第6図の通り、この帯状の基端室13のうちガス導入口13aよりも後端側の部分13bを前端側展延部11b,12bの前面に沿って上下にジグザグ状に折り返し、このガス導入口13aが該前端側展延部11b,12bの上下方向の略中間付近に位置するようにする。なお、この場合、好ましくは、基端室13のうちガス導入口13aよりも後端側の部分13bの一部を、第5図(b)及び第6図の通り、前端側展延部11b,12bの上下方向の略中間付近よりも上側の領域に折り重ねる。
【0043】
このように基端室13を前端側展延部11b,12bの前面に折り重ねたときに該前端側展延部11b,12bの前面に弛みが生じた場合には、第6図の通り、該前端側展延部11b,12bの前面の上下方向の中間付近を、タックを形成するように略左右方向の折り線L,Lに沿ってジグザグ状(Z字状)に折り返し、部分的に右半側エアバッグ11及び左半側エアバッグ12の内側に折り込むことにより、該前端側展延部11b,12bの前面の上下方向の弛みを取る。また、この前端側展延部11b,12bの前面の左右方向の中間付近を略上下方向の折り線Lに沿って谷折りし、該前端側展延部11b,12bの前面の左右方向の弛みを取り、根元から左方又は右方へ折って該前端側展延部11b,12bの前面に重ねる。第6図では、この部分を前端側展延部11b,12bの前面と基端室13の折り畳み体との間に折り込んでいる。なお、前端側展延部11b,12bの前面の弛みの処理方法はこれに限定されない。
【0044】
以上のようにエアバッグ10を折り畳むことにより、エアバッグ10は、略上下方向及び左右方向に平たく展延された1次折り畳み体10Aとなる。
【0045】
[2次折り畳み工程について]
この実施の形態では、上記の1次折り畳み体10Aを2次折り畳みする場合、まず、第7図(a),(b)〜第12図(a),(b)の通り、右半側エアバッグ11及び左半側エアバッグ12(前端側展延部11b,12b及び後端側展延部11a,12a)の左右方向の幅を小さくするように折り畳み、次いで、第13図(a),(b)〜第20図の通り、これらの上下方向の幅を小さくするように折り畳んでいる。
【0046】
詳しくは、まず、第7図(a),(b)及び第8図(a),(b)の通り、左半側エアバッグ12の前端側展延部12bをその左端側から所定幅ずつ略上下方向の折り線L,Lに沿って1次折り畳み体10Aの左右方向の中央側へ折り返し、ロール状の折り畳み体とする。なお、第7図(a),(b)及び第8図(a),(b)では、前端側展延部12bを2回折り返しているが、1回又は3回以上折り返してもよい。この際、第7図(b)及び第8図(b)の通り、前端側展延部12bをその後面側へ折り返し、この前端側展延部12bのロール折り体を後端側展延部12aと基端室13の折り畳み体との間に配置する。
【0047】
次に、第9図(a),(b)及び第10図(a),(b)の通り、右半側エアバッグ11の前端側展延部11bを左半側エアバッグ12の前端側展延部12bと同様に折り畳む。即ち、右半側エアバッグ11の前端側展延部11bをその右端側から所定幅ずつ略上下方向の折り線L,L10に沿って1次折り畳み体10Aの左右方向の中央側へ折り返し、ロール状の折り畳み体とする。第9図(a),(b)及び第10図(a),(b)では、前端側展延部11bを2回折り返しているが、1回又は3回以上折り返してもよい。この際、第9図(b)及び第10図(b)の通り、前端側展延部11bをその後面側へ折り返し、この前端側展延部11bのロール折り体を後端側展延部11aと基端室13の折り畳み体との間に配置する。
【0048】
なお、前端側展延部11b,12bを折り畳む順番はこれに限定されるものではなく、例えば、先に右半側エアバッグ11の前端側展延部11bをロール折りしてから左半側エアバッグ12の前端側展延部12bをロール折りしてもよい。
【0049】
次に、第11図(a),(b)の通り、左半側エアバッグ12の後端側展延部12aの左端側を、前端側展延部12bのロール折り体よりも左方にはみ出した分だけ、略上下方向の折り線L11に沿って1次折り畳み体10Aの左右方向の中央側へ折り返す。なお、第11図(b)では、後端側展延部12aの左端側を1回だけ折り返しているが、2回以上折り返してもよい。この際、第11図(b)の通り、後端側展延部12aの左端側をその前面側へ折り返し、該後端側展延部12aの折り線L11よりも右端側の部分と前端側展延部12bのロール折り体との間に配置する。
【0050】
次に、第12図(a),(b)の通り、右半側エアバッグ11の後端側展延部11aを左半側エアバッグ12の後端側展延部12aと同様に折り畳む。即ち、右半側エアバッグ11の後端側展延部11aの右端側を、前端側展延部11bのロール折り体よりも右方にはみ出した分だけ、略上下方向の折り線L12に沿って1次折り畳み体10Aの左右方向の中央側へ折り返す。第12図(b)では、後端側展延部11aの右端側を1回だけ折り返しているが、2回以上折り返してもよい。この際、第12図(b)の通り、後端側展延部11aの右端側をその前面側へ折り返し、該後端側展延部11aの折り線L12よりも左端側の部分と前端側展延部11bのロール折り体との間に配置する。
【0051】
なお、後端側展延部11a,12aを折り畳む順番はこれに限定されるものではなく、例えば、先に右半側エアバッグ11の後端側展延部11aを折り畳んでから左半側エアバッグ12の後端側展延部12aを折り畳んでもよい。
【0052】
これにより、1次折り畳み体10Aの縦折りが完了し、エアバッグ10は、上下方向に細長い帯状の中間折り畳み体10Bとされる。
【0053】
次に、第13図(a),(b)〜第15図の通り、この帯状の中間折り畳み体10Bをその下端側から押えプレート7の下縁付近の高さまで所定幅ずつ、略左右方向の折り線L13,L14,L15に沿って前面側へ折り返し、ロール状の折り畳み体Rとする。なお、第13図(a),(b)〜第15図では、中間折り畳み体10Bの下端側を3回折り返しているが、1回又は4回以上折り返してもよい。
【0054】
次に、第16図の通り、押えプレート7の下縁付近の高さにおいて、中間折り畳み体10Bの下端側を略左右方向の折り線L16に沿って後面側へ折り返し、ロール折り体Rを該中間折り畳み体10Bの上下方向の中間付近の後面側に配置する。
【0055】
次に、第17図〜第19図の通り、中間折り畳み体10Bをその上端側から押えプレート7の上縁付近の高さまで所定幅ずつ、略左右方向の折り線L17,L18,L19に沿って前面側へ折り返し、ロール状の折り畳み体Rとする。なお、第17図〜第19図では、中間折り畳み体10Bの上端側を3回折り返しているが、1回又は4回以上折り返してもよい。
【0056】
次に、第20図の通り、押えプレート7の上縁付近の高さにおいて、中間折り畳み体10Bの上端側を略左右方向の折り線L20に沿って後面側へ折り返し、先に折り返しておいた下端側のロール折り体Rのさらに後面側に、この上端側のロール折り体Rを配置する。
【0057】
次に、第21図の通り、基端室13のうち押えプレート7よりも前端側の部分(エアバッグ10の膨張時における前端側であって、第21図の通り、中間折り畳み体10Bにおいては、押えプレート7の上縁よりも上側に配置されている。)を、該押えプレート7の上縁付近において略左右方向の折り線L21に沿って後方へ折り、ロール折り体Rの上面側に重ねる。
【0058】
以上のようにエアバッグ10を2次折り畳みすることにより、エアバッグ10は、第21図の通り、塊状の最終折り畳み体10Cとなる。
【0059】
その後、第21図〜第22図のように、保形シート4をエアバッグ最終折り畳み体10Cに巻き付け、その先端側を押えプレート7のスタッドボルト7aに引っ掛ける。これにより、エアバッグ最終折り畳み体10Cが保形シート4によって保形される。
【0060】
このエアバッグ10の折り畳み体10Cは、エアバッグ装置組立工程に送られる。このエアバッグ装置組立工程において、押えプレート7のインフレータ保持部7bにインフレータ3が取り付けられ、このインフレータ3とエアバッグ10の折り畳み体10Cとがリテーナ2内に配置され、リテーナ2の底面にスタッドボルト7aによって押えプレート7が連結されることにより、助手席用エアバッグ装置が構成される。なお、前述の通り、必要に応じてリテーナ2の上面開口にリッド(図示略)が装着される。
【0061】
このエアバッグ10の折り畳み体10Cは、第22図のように、基端室13側を下にし、且つ基端室13の押えプレート7よりも前端側が右半側エアバッグ11及び左半側エアバッグ12の下端側のロール折り体Rの車両前方側に重なった姿勢にてリテーナ2内に配置されている。これにより、リテーナ2内においては、右半側エアバッグ11及び左半側エアバッグ12の上端側のロール折り体Rは、下端側のロール折り体Rの上方に配置されたものとなる。
【0062】
このエアバッグ10を備えた助手席用エアバッグ装置の作動は次の通りである。
【0063】
このエアバッグ装置を搭載した自動車が衝突した場合、インフレータ3がガス噴出作動する。このインフレータ3からのガスは、まず基端室13内に導入され、該基端室13を膨張させる。このエアバッグ10の膨張圧により、保形シート4が破断すると共に、インストルメントパネル1のドア部(又はリッド)が開裂してエアバッグ膨出用の開口が形成され、エアバッグ10がこの開口を通って車室内に膨らみ出す。
【0064】
基端室13内に導入されたガスは、次いで、右半側エアバッグ11及び左半側エアバッグ12内に流入する。これにより、右半側エアバッグ11が乗員前方右側において膨張すると共に、左半側エアバッグ12が乗員前方左側において膨張する。膨張した右半側エアバッグ11が乗員の右胸を受け止め、膨張した左半側エアバッグ12が左胸を受け止め、胸骨付近は、これらの間の凹部16に対峙する。このため、胸骨付近に加えられるエアバッグ受承時の反力が小さなものとなる。また、乗員の頭部は、凹部16に入り込んで受け止められる。
【0065】
本発明のエアバッグの折り畳み方法によれば、前述の通り、エアバッグ10は、まず、右半側エアバッグ11及び左半側エアバッグ12の略前後方向の厚さを小さくし、且つ該右半側エアバッグ11の右側面と左半側エアバッグ12の左側面とを少なくとも部分的に左右に離反させるように折り畳むことにより、略上下方向及び左右方向に平たく展延された1次折り畳み体10Aとされ、次いで、この1次折り畳み体10Aを左右方向に幅が小さくなるように折り畳むことにより、上下方向に細長い帯状の中間折り畳み体10Bとされ、その後、この中間折り畳み体10Bを上下方向に幅が小さくなるように折り畳むことにより、最終折り畳み体10Cとされている。そのため、このエアバッグ10が膨張を開始した場合には、まず、その上下方向の折り畳みが解けて上下方向に展開し、次いで左右方向の折り畳みが解けて左右方向に展開し、その後、前後方向の厚さが大きくなるように展開する。これにより、エアバッグ10は、膨張開始後、早期のうちに上下方向及び左右方向に広範囲に展開することができる。そのため、例えば第23図(a),(b)の通り、乗員が比較的前方に着座した状況でエアバッグ10が膨張を開始し、早期の段階でこの膨張途中のエアバッグ10に乗員が接触した場合でも、エアバッグ10は、乗員の肩や胸部等を広範囲に受け止めることができる。これにより、膨張途中のエアバッグ10に乗員が接触したときに、乗員の頭部や首などに局所的に荷重が加えられることが防止される。なお、第23図(a),(b)の2点鎖線は、エアバッグ10が最大まで膨張したときの輪郭を示している。
【0066】
この実施の形態では、2次折り畳み工程において、1次折り畳み体10Aの上端側、下端側、左端側及び右端側をそれぞれ該1次折り畳み体10Aの上下方向及び左右方向の中央側に向って折り畳んでいるので、エアバッグ10の膨張時には、該エアバッグ10は、上下左右に早期に且つ略均等に膨張するようになる。
【0067】
この実施の形態では、2次折り畳み工程において、エアバッグ10の1次折り畳み体10Aの上端側、下端側、左端側及び右端側をそれぞれ該1次折り畳み体10Aの上下方向及び左右方向の中央側に向ってロール状に折り畳んでいる。従って、このエアバッグ10が膨張する場合には、その上端側及び下端側は、それぞれ上方及び下方へ転がるようにして巻きを解きながら膨張展開し、左端側及び右端側は、それぞれ左方及び右方へ転がるようにして巻きを解きながら膨張展開する。このようにロール折りされたエアバッグ10の上下左右の各端部が膨張する場合、巻きが解かれた部分から順次に膨張していくので、これらの部分は、ロール折りの巻き芯線方向と略平行方向において略均等に膨張するようになる。即ち、この実施の形態では、1次折り畳み体10Aの上端側及び下端側はそれぞれ左右方向に略均等に膨張し、左端側及び右端側はそれぞれ上下方向に略均等に膨張するようになる。
【0068】
この実施の形態では、2次折り畳み工程において、1次折り畳み体10Aを左右方向の幅が小さくなるように折り畳んで中間折り畳み体10Bとした後、この中間折り畳み体10Bの上下方向の幅が小さくなるように折り畳んでいるので、エアバッグ10の膨張開始後、該エアバッグ10が上下方向に速やかに膨張するようになる。
【0069】
また、この実施の形態では、この中間折り畳み体10Bの下端側及び上端側をそれぞれロール折りし、該下端側のロール折り体Rの上側に上端側のロール折り体Rを配置している。そのため、エアバッグ10が膨張を開始した場合には、このエアバッグ10の上端側のロール折り体Rが下端側のロール折り体Rよりも先にリテーナ2から車室内に押し出され、このエアバッグ10の上端側が下端側よりも早く膨張展開する。これにより、乗員の頭部や胸部の前方に早期のうちにエアバッグ10を展開させることが可能となる。また、これにより、例えば第24図(a)の通り、インストルメントパネル1の近傍に物体Cが存在していても、エアバッグ10は、この物体Cの上方を飛び越えるようにして車両後方へ膨張展開するようになるので、膨張途中のエアバッグ10がこのインストルメントパネル1の近傍の物体Cを過度に後方へ押圧することが防止される。その後、第24図(b)の通り、エアバッグ10の下端側が膨張して物体Cが空洞部17に呑み込まれ、物体Cがエアバッグ10によって拘束されるようになる。この際、エアバッグ10は、物体Cに上方から被さるように下方へ膨張するため、物体Cがスムーズに空洞部17に呑み込まれるようになる。
【0070】
この実施の形態では、エアバッグ10は、右半側エアバッグ11及び左半側エアバッグ12の膨張時の前後方向の途中部に、それぞれ、該右半側エアバッグ11及び左半側エアバッグ12の左右の側面同士を連結した連結帯18が設けられている。1次折り畳み工程では、右半側エアバッグ11の右側面及び左半側エアバッグ12の左側面のうち、この連結帯18よりも該右半側エアバッグ11及び左半側エアバッグ12の後端側同士並びに前端側同士をそれぞれ左右に離反させることにより、エアバッグ10を左右方向に展延させている。このように折り畳むことにより、右半側エアバッグ11及び左半側エアバッグ12の左右の側面同士を連結した連結帯18が設けられたエアバッグ10であっても、左右方向に十分に展延させることができる。
【0071】
この実施の形態では、2次折り畳み工程においては、この右半側エアバッグ11及び左半側エアバッグ12の連結帯18よりも後端側同士(即ち後端側展延部11a,12a同士)並びに前端側同士(即ち前端側展延部11b,12b同士)をそれぞれ1次折り畳み体10Aの左右方向の中間側に向って折り畳んでいる。このように折り畳むことにより、エアバッグ10の膨張時には、右半側エアバッグ11及び左半側エアバッグ12の該後端側展延部11a,12a同士と前端側展延部11b,12b同士とがそれぞれ左右方向に展開するため、エアバッグ10の左右方向への展開が早期化される。また、該後端側展延部11a,12a同士と前端側展延部11b,12b同士とがそれぞれ左右方向に展開するのに伴い、これらがそれぞれ前後方向の厚みを増大させるように膨張するため、エアバッグ10の前後方向への展開も早期化される。
【0072】
上記実施の形態はいずれも本発明の一例であり、本発明は図示以外の形態をもとりうる。
【0073】
例えば、上記の実施の形態では、エアバッグ10の1次折り畳み体10Aの上端側、下端側左端側及び右端側を全てロール状に折り畳んでいるが、これらのうちの少なくとも一部を蛇腹状に折り畳んでもよい。
【符号の説明】
【0074】
10 エアバッグ
10A 1次折り畳み体
10B 中間折り畳み体
10C 最終折り畳み体
11 右半側エアバッグ
12 左半側エアバッグ
13 基端室
15 縫目
16 凹部
17 空洞部
18 連結帯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員前方の左側において膨張する左半側エアバッグと、
乗員前方の右側において膨張する右半側エアバッグと
を有するエアバッグの折り畳み方法において、
該左半側エアバッグ及び右半側エアバッグの略前後方向の厚さを小さくし、且つ該左半側エアバッグの左側面と右半側エアバッグの右側面とを少なくとも部分的に左右方向に離反させるように折り畳むことにより、該エアバッグを略上下方向及び左右方向に平たく展延された1次折り畳み体とする1次折り畳み工程と、
該1次折り畳み体を略上下方向及び左右方向に幅が小さくなるように折り畳んで最終折り畳み体とする2次折り畳み工程と
を行うことを特徴とするエアバッグの折り畳み方法。
【請求項2】
請求項1において、前記2次折り畳み工程において、前記1次折り畳み体の上端側、下端側、左端側及び右端側をそれぞれ該1次折り畳み体の上下方向及び左右方向の中央側に向って折り畳むことを特徴とするエアバッグの折り畳み方法。
【請求項3】
請求項2において、前記2次折り畳み工程において、前記1次折り畳み体の上端側、下端側、左端側及び右端側の少なくとも一部を該1次折り畳み体の上下方向及び左右方向の中央側に向ってロール状に折り畳むことを特徴とするエアバッグの折り畳み方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記2次折り畳み工程において、前記1次折り畳み体を左右方向に幅が小さくなるように折り畳んだ後、上下方向に幅が小さくなるように折り畳むことを特徴とするエアバッグの折り畳み方法。
【請求項5】
請求項4において、前記1次折り畳み体を上下方向に幅が小さくなるように折り畳むに際し、該1次折り畳み体の上端側及び下端側をそれぞれ該1次折り畳み体の上下方向の中央側に向って折り畳んだ後、該下端側の折り畳み体の上方に該上端側の折り畳み体を配置することを特徴とするエアバッグの折り畳み方法。
【請求項6】
請求項5において、前記エアバッグは、車両のインストルメントパネルから乗員に接近するように車両後方へ向って膨張するものであり、
前記左半側エアバッグと右半側エアバッグとの間に、該エアバッグが膨張した状態において該エアバッグを略上下方向に貫通する空洞部が設けられており、
該空洞部は、該エアバッグが膨張した状態において、その下端側が、少なくとも部分的に、インストルメントパネルの車両後方側の端部よりも車両後方に位置するように構成されたものであることを特徴とするエアバッグの折り畳み方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、前記エアバッグは、前記左半側エアバッグ及び右半側エアバッグの膨張時の前後方向の途中部に、それぞれ、該左半側エアバッグ及び右半側エアバッグの左右の側面同士を連結した連結部材が設けられており、
前記1次折り畳み工程において、該左半側エアバッグの左側面及び右半側エアバッグの右側面のうち、該連結部材よりも該左半側エアバッグ及び右半側エアバッグの後端側同士、並びに該連結部材よりも該左半側エアバッグ及び右半側エアバッグの前端側同士をそれぞれ左右方向に離反させることにより、該エアバッグを左右方向に展延させることを特徴とするエアバッグの折り畳み方法。
【請求項8】
請求項7において、前記2次折り畳み工程において、前記左半側エアバッグ及び右半側エアバッグの前記連結部材よりも後端側同士並びに前端側同士をそれぞれ前記1次折り畳み体の左右方向の中間側に向って折り畳むことを特徴とするエアバッグの折り畳み方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2011−42195(P2011−42195A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190279(P2009−190279)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(306009581)タカタ株式会社 (812)
【Fターム(参考)】