説明

エアバッグ装置

【課題】ベントホール配設位置の自由度が高く、また、ベントホールに起因して接合部が解けてしまうことを防止できるエアバッグ装置の提供。
【解決手段】複数枚の基布37の周縁が周縁接合部39A〜39Nで接合されるとともに内側が内側接合部43N,43O,43P,43Qで接合されて袋状に形成されたエアバッグ13に、エアバッグ13内のガスを排出するベントホール48を配設してなるものであって、ベントホール48は、その周囲に内側接合部43N,43O,43P,43Qが配される位置に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の緊急時にエアバッグを展開させるエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の緊急時にエアバッグを膨張展開させて乗員を保護するエアバッグ装置がある。このようなエアバッグ装置のエアバッグには、複数枚の基布の周縁部およびその内側が織り合わされて袋状に形成され、内圧調整等のためにエアバッグ内のガスを排出するベントホールが周縁の織り合わせの中断部によって形成されたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−91492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のように周縁の織り合わせの中断部でベントホールを形成するのでは、ベントホールの配設位置が周縁に限定されることになり、自由度が制限されてしまう。また、周縁の織り合わせの中断部でベントホールを形成するのでは、負荷が加わったときにベントホールの部分から織り合わせが解けてしまう可能性がある。そのため、屈曲形状に織ってベントホールを形成することも考えられるが、屈曲する分、その周囲に余計な基布が必要となってしまう。
【0004】
したがって、本発明は、ベントホール配設位置の自由度が高く、また、ベントホールに起因して接合部が解けてしまうことを防止できるエアバッグ装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、複数枚の基布(例えば実施形態における基布37)の周縁が周縁接合部(例えば実施形態における周縁接合部39A〜39N)で接合されるとともに内側が内側接合部(例えば実施形態における内側接合部43N,43O,43P,43Q)で接合されて袋状に形成されたエアバッグ(例えば実施形態におけるエアバッグ13)に、該エアバッグ内のガスを排出するベントホール(例えば実施形態におけるベントホール48)を配設してなるエアバッグ装置であって、前記ベントホールは、その周囲に前記内側接合部が配される位置に設けられていることを特徴としている。
【0006】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記ベントホールの周囲の内側接合部は内部開口部(例えば実施形態における内部開口部45)を有しており、該内部開口部を形成する前記内側接合部の端部(例えば実施形態における端部43Pb,43Qb)が前記ベントホール側に向けて曲がっていることを特徴としている。
【0007】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において、前記内部開口部は、前記ベントホールに指向していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、周縁接合部で周縁が接合され内側接合部で内側が接合された袋状のエアバッグに、ガスを排出するベントホールを、その周囲に内側接合部が配される位置に設けるため、周縁以外に配設でき、配設位置の自由度が高くなる。また、周縁接合部にベントホールを設けるのではないため、ベントホールに起因して接合部が解けてしまうことを防止できる。さらに、エアバッグの膨張時に乗員との接触等によりエアバッグの外形とともにベントホールが変形する可能性があるが、ベントホールの周囲に変形を抑止可能な内側接合部が配されているため、エアバッグの変形によるベントホールへの影響を低減でき、安定したガス排出が可能となる。
【0009】
請求項2に係る発明によれば、ベントホールの周囲の内側接合部が内部開口部を有しているため、内部開口部を通じてベントホールからガスが排出されることになり、内部開口部によってベントホールへのガスの流量を規定および調整することができる。内部開口部を通じてベントホールからガスが排出されることになるため、ベントホールへの負荷を低減できる。内部開口部を形成する内側接合部の端部がベントホール側に向けて曲がっているため、内部開口部を形成する接合部分の強度を向上できる。
【0010】
請求項3に係る発明によれば、内部開口部が、ベントホールに指向しているため、ガスがベントホールに向けてスムーズに流れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の一実施形態のエアバッグ装置を図面を参照して以下に説明する。
図1は、本実施形態のエアバッグ装置11の車体12への取付状態を概略的に示すもので、エアバッグ装置11を構成する袋状のエアバッグ13を展開状態で示している。
【0012】
図1に示すように、車体12のルーフの側端部を形成する車両前後方向に沿うルーフサイドレール15には、車両前部側から順に、フロントピラー16、センタピラー17、リヤクォータピラー18およびリヤピラー19が下方に延出するように連結されている。そして、車体12には、フロントピラー16とセンタピラー17との間にフロントドアの上部のフロントサイドウインドウ25が配置され、センタピラー17とリヤクォータピラー18との間にリヤドアの上部のリヤサイドウインドウ26が配置され、リヤクォータピラー18とリヤピラー19との間にはリヤクォータウインドウ27が配置されている。
【0013】
そして、本実施形態のエアバッグ装置11においては、上記したルーフサイドレール15の車室内側にこのルーフサイドレール15に沿うように一つのエアバッグ13が取り付けられている。
【0014】
エアバッグ13は、ルーフサイドレール15に沿ってフロントサイドウインドウ25、、センタピラー17、リヤサイドウインドウ26、リヤクォータピラー18およびリヤクォータウインドウ27の範囲に取り付けられており、膨張展開には、これらフロントサイドウインドウ25、センタピラー17、リヤサイドウインドウ26、リヤクォータピラー18およびリヤクォータウインドウ27の車室内側にこれらに沿ってカーテン状に展開する。つまり、エアバッグ13は、図示略の一列目シートに着席した乗員、図示略のニ列目シートに着席した乗員および図示略の三列目シートに着席した乗員の側方を覆う。
【0015】
エアバッグ13には、上部の中間部のやや後側に、前側において後方に開口する連結口31と、連結口31と対向するように後側において前方に開口する連結口32とが形成されている。
【0016】
そして、エアバッグ装置11は、リヤクォータピラー18に取り付けられるとともにエアバッグ13の前側の連結口31に連結されてエアバッグ13の中間部から前部に向けてガスを導入するインフレータ33と、リヤクォータピラー18に取り付けられるとともにエアバッグ13の後側の連結口32に連結されてエアバッグ13の後部に向けてガスを導入するインフレータ34とを有している。
【0017】
エアバッグ13は、複数枚(図1において手前側の一枚のみ示す)の基布37の周縁が、縫製、織り込みあるいは接着等による線状の周縁接合部39A〜39Nで接合されて袋状をなしている。
【0018】
つまり、エアバッグ13は、その後端縁に沿う周縁接合部39Aと、この周縁接合部39Aの上端からエアバッグ13の後部の上縁に沿って後側の連結口32の上縁まで至る周縁接合部39Bと、エアバッグ13の前側の連結口31の上縁からエアバッグ13の中間部および前部の上縁に沿う周縁接合部39Cと、この周縁接合部39Cの前端から前下がりに延出する周縁接合部39Dと、この周縁接合部39Dの前端からさらに急角度で前下がりに延出する周縁接合部39Eとを有しており、この周縁接合部39Eの下端部39Eaは上側に中心を有する半円状をなして前方に延出している。
【0019】
また、エアバッグ13は、その周縁接合部39Aの下端からエアバッグ13の後部の下縁に沿って中間所定位置まで至る周縁接合部39Fと、この周縁接合部39Fの前端から略鉛直上方に延出する周縁接合部39Gと、この周縁接合部39Gの上端から半円状に折り返す周縁接合部39Hと、この周縁接合部39Hの前端から略鉛直下方に延出する周縁接合部39Iと、この周縁接合部39Iの下端から前方に延出する周縁接合部39Jと、この周縁接合部39Jの前端から下側に中心を有する円弧状をなして前方に延出する周縁接合部39Kと、この周縁接合部39Kの前端から前方に延出する周縁接合部39Lと、この周縁接合部39Lの前端から前上がりに延出する周縁接合部39Mとを有しており、この周縁接合部39Mの前端部39Maは下側に中心を有する半円状をなして前方に延出している。
【0020】
さらに、エアバッグ13は、前側の連結口31の下縁と後側の連結口32の下縁と、これらよりも下側とを結ぶ周縁接合部39Nを有している。
【0021】
以上により、エアバッグ13は、上部の連結口31,32と、周縁接合部39Eの下端部39Eaおよび周縁接合部39Mの前端部39Ma同士の間の前部ベントホール41とが、周縁接合部39A〜39Nにより形成されてエアバッグ13の内外を連通させる開口部とされている。よって、上部の連結口31,32を介してインフレータ33,34からエアバッグ13内にガスが導入されると、複数の基布37におけるこれら周縁接合部39A〜39Nで接合された部分よりも内側が離間するように袋状に膨張することになり、エアバッグ13内の内圧を調整するためにベントホール41からガスが一部排出されることになる。
【0022】
そして、エアバッグ13は、上記の膨張時に板状に膨張するように、複数枚の基布37の周縁接合部39A〜39Nよりも内側が、縫製、織り込みあるいは接着等による内側接合部43A〜43Qで接合されている。
【0023】
つまり、エアバッグ13は、その前端側の周縁接合部39Eの中間位置から後方に延びた後、上側に周縁接合部39Dの手前まで延出する線状の内側接合部43Aと、この内側接合部43Aの周縁接合部39D側の端に形成された環状の内側接合部43Bと、内側接合部43Aと周縁接合部39Iとの間で略U字状をなす線状の内側接合部43Cと、内側接合部43Cの両端で環状をなす内側接合部43D,43Eとを有している。
【0024】
また、エアバッグ13は、連結口31,32の下側から前方に延びる線状の内側接合部43Fと、内側接合部43Fの両端でそれぞれ環状をなす内側接合部43G,43Hと、内側接合部43Gから下側に若干延出した後に後方に延びる線状の内側接合部43Iと、内側接合部43Iの内側接合部43Gとは反対の端で環状をなす内側接合部43Jとを有している。
【0025】
さらに、エアバッグ13は、周縁接合部39Bと周縁接合部39Fとの間で前後方向に延びる線状の内側接合部43Kと、内側接合部43Kの両端でそれぞれ環状をなす内側接合部43L,43Mと、周縁接合部39Fの周縁接合部39A側から内側接合部43Kの下側において前上がりに延出する線状の内側接合部43Nと、内側接合部43Nの前端において環状をなす内側接合部43Oとを有している。
【0026】
さらに、エアバッグ13は、図2にも示すように、内側接合部43Oから下方に延出する線状の主部43Paと、この主部43Paの下端から後方に湾曲し上側に中心を有する略円弧状に延出する線状の端部43Pbとからなる内側接合部43Pと、内側接合部43Nの中間から前側に中心を有する略円弧状をなして下方に延出した後に前方に延出する線状の主部43Qaと、この主部43Qaの前端から上方に湾曲し後側に中心を有する略円弧状に延出する端部43Qbとからなる内側接合部43Qとを有している。
【0027】
ここで、内側接合部43Pの端部43Pbと内側接合部43Qの端部43Qbとは隙間をあけて対向しており、また、内側接合部43P,43Qと内側接合部43N,43Oとは、端部43Pb,43Qb同士が隙間をあけている以外は周回状につながっている。これにより、複数の基布37と内側接合部43N,43O,43P,43Qとで、エアバッグ13内の他の部分に端部43Pb,43Qb間の内部開口部45で開口するバッグ内空間部46が形成されている。
【0028】
そして、車室外側の基布37には、内側接合部43N,43O,43P,43Qの内側位置に、これら内側接合部43N,43O,43P,43Qから離間して、バッグ内空間部46を外に開口させるベントホール48が形成されている。このベントホール48は、内部開口部45を介してバッグ内空間部46に導入されたエアバッグ13内のガスを外に排出する。言い換えれば、このベントホール48は、その周囲に内側接合部43N,43O,43P,43Qが配される位置に設けられている。また、このベントホール48の周囲の内側接合部43N,43O,43P,43Qは、エアバッグ13内で他の部分に開口する内部開口部45を有しており、この内部開口部45を形成する内側接合部43P,43Qの端部43Pb,43Qbがベントホール48側に向けて曲がっている。さらに、内側開口部45は、ベントホール48に指向している。つまり、内側開口部45を形成する内側接合部43P,43Qの端部43Pb,43Qb同士の中心線がベントホール48に指向している。このベントホール48は基布37を例えば打ち抜くことで形成されており、その周囲の基布37が必要に応じて縫製等で補強されている。なお、ベントホール48に、そのガス排出方向やタイミングを制御するためのカバーを設けても良い。
【0029】
このようなエアバッグ13は、折り畳まれ長尺状をなす状態でルーフサイドレール15に沿うように取り付けられることになり、適宜の展開条件が整うことで駆動されるインフレータ33,34からのガスによって、図示略の内装材を押し開きながら、フロントサイドウインドウ25、センタピラー17、リヤサイドウインドウ26、リヤクォータピラー18およびリヤクォータウインドウ27に沿って、これらの車室内側に膨出することになる。その際に、基布37が周縁接合部39A〜39Nを周縁部とする袋状に膨張することになるが、内側接合部43A〜43Qで部分的に膨張が規制されることで、全体として板状に膨張する。そして、内圧調整のため内部のガスがベントホール41から適宜排出されることになり、内部開口部45を介してベントホール48からも適宜排出されることになる。なお、上記実施形態ではベントホール48に対して内部開口部45を一つ設けているが、内部開口部45を一つに限らず複数設けても良い。
【0030】
以上に述べた本実施形態のエアバッグ装置11によれば、周縁接合部39A〜39Nで周縁が接合され内側接合部43A〜43Qで内側が接合された袋状のエアバッグ13に、ガスを排出するベントホール48を、その周囲に内側接合部43N,43O,43P,43Qが配される位置に設けるため、周縁以外に配設でき、配設位置の自由度が高くなる。また、周縁接合部39A〜39Nにベントホール48を設けるのではないため、ベントホール48に起因して接合部が解けてしまうことを防止できる。さらに、エアバッグ13の膨張時に乗員との接触等によりエアバッグ13の外形とともにベントホール48が変形する可能性があるが、ベントホール48の周囲に変形を抑止可能な内側接合部43N,43O,43P,43Qが配されているため、エアバッグ13の変形によるベントホール48への影響を低減でき、安定したガス排出が可能となる。
【0031】
また、ベントホール48の周囲の内側接合部43N,43O,43P,43Qが内部開口部45を有しているため、内部開口部45を通じてベントホール48からガスが排出されることになり、内部開口部45によってベントホール48へのガスの流量を規定および調整することができる。加えて、内部開口部45を通じてベントホール48からガスが排出されることになるため、ベントホール48への負荷を低減できる。さらに、内部開口部45を形成する内側接合部43P,43Qの端部43Pb,43Qbがベントホール48側に向けて曲がっているため、内部開口部45を形成する接合部分の強度を向上できる。
【0032】
さらには、内部開口部45が、ベントホール48に指向しているため、ガスがベントホール48に向けてスムーズに流れることになり、円滑な内圧制御が可能となる。
【0033】
なお、以上の実施形態においては、エアバッグ13が、フロントサイドウインドウ25、センタピラー17、リヤサイドウインドウ26、リヤクォータピラー18およびリヤクォータウインドウ27に沿ってカーテン状に展開する、いわゆるカーテンエアバッグ装置を例にとり説明したが、他の種々のエアバッグ装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態のエアバッグ装置においてエアバッグが展開した状態を概略的に示す側面図である。
【図2】本発明の一実施形態のエアバッグ装置におけるエアバッグの要部を示す側面図である。
【符号の説明】
【0035】
11 エアバッグ装置
13 エアバッグ
37 基布
39A〜39N 周縁接合部
43N,43O,43P,43Q 内側接合部
43Pb,43Qb 端部
45 内部開口部
48 ベントホール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の基布の周縁が周縁接合部で接合されるとともに内側が内側接合部で接合されて袋状に形成されたエアバッグに、該エアバッグ内のガスを排出するベントホールを配設してなるエアバッグ装置であって、
前記ベントホールは、その周囲に前記内側接合部が配される位置に設けられていることを特徴とするエアバッグ装置。
【請求項2】
前記ベントホールの周囲の内側接合部は内部開口部を有しており、該内部開口部を形成する前記内側接合部の端部が前記ベントホール側に向けて曲がっていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ装置。
【請求項3】
前記内部開口部は、前記ベントホールに指向していることを特徴とする請求項2に記載のエアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−283786(P2007−283786A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−109623(P2006−109623)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】