説明

エキスを抽出する方法及び化粧料

【課題】化粧料として十分な効果を発揮し、傷んでしまった皮膚や毛髪を本質から改善する効果を奏する化粧料を提供するために、安定配合が可能であり、低コストで生産することができる特定の植物である百合科の植物である、黒百合、カタクリ、キスゲのいずれかのエキスを抽出する抽出方法と、この抽出方法で抽出されたエキスを含有する化粧料を提供する。
【解決手段】溶媒を用いてエキスを抽出する方法又は炭酸ガスによる超臨界抽出法を適用して粉砕された黒百合、カタクリ、キスゲの葉及び/又は球根からエキスを抽出してろ過するようにしている。またこのような方法で抽出されたエキスを含有する化粧料が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定種類の植物からエキスを抽出する方法及びこの方法で抽出されたエキスを含有する化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
生薬などの植物由来の成分による皮膚の潤いの付与や肌荒れ改善、毛髪のパサツキ予防などの効果が注目され、各種の植物抽出エキスが利用されている(下記の特許文献1、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−55139号公報
【特許文献2】特開2001−220313号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来使用されている植物抽出エキス(百合など)は、肌荒れなどの予防効果はある程度あるが、その効果が不足していたり、傷んでしまった皮膚や毛髪を本質から改善する効果は乏しく、効果を発揮させるために高濃度、かつ、長期間の使用が必要であったりする。また、皮膚や毛髪を本質的に改善するには、ビタミンCなどのビタミン類、ペプチド類、グリシン・シスチンなどのアミノ酸類、マグネシウムなどの微量元素、各種酵素の使用が必要とされていて、安定配合が困難であったり、コスト的に問題がある。さらに、上記特許文献1、特許文献2に記載のカタクリ・山百合の場合、抽出方法が水蒸気蒸留に限定されており、またそれらのエキスを含有する化粧料の効果が明確でない。
【0004】
そこで本発明は、化粧料として十分な効果を発揮し、傷んでしまった皮膚や毛髪を本質から改善する効果を奏する化粧料を提供するために、安定配合が可能であり、低コストで生産することができる特定の植物である百合科の植物である、黒百合、カタクリ、キスゲのいずれかのエキスを抽出する抽出方法と、この抽出方法で抽出されたエキスを含有する化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記目的を達成するために、溶媒を用いてエキスを抽出する方法又は炭酸ガスによる超臨界抽出法を適用して粉砕された黒百合、カタクリ、キスゲの葉及び/又は球根からエキスを抽出してろ過するようにしている。またこのような方法で抽出されたエキスを含有する化粧料が提供される。
【0006】
すなわち本発明によれば、黒百合の葉及び/又は球根からエキスを抽出する方法であって、
黒百合の葉及び/又は球根を粉砕するステップと、
粉砕された原料を溶媒と混合し、攪拌してエキスを抽出するステップと、
エキスが抽出された混合物をろ過するステップとを、
有する黒百合の葉及び/又は球根からエキスを抽出する方法が提供される。
【0007】
また本発明によれば、黒百合の葉及び/又は球根からエキスを抽出する方法であって、
黒百合の葉及び/又は球根を粉砕するステップと、
粉砕された原料に対し炭酸ガスによる超臨界抽出法を適用して、エキスを抽出するステップと、
抽出されたエキスをろ過するステップとを、
有する黒百合の葉及び/又は球根からエキスを抽出する方法が提供される。
【0008】
また本発明によれば、エキスを抽出する上記方法で抽出された黒百合の葉及び/又は球根を含有する化粧料が提供される。
【0009】
また本発明によれば、カタクリの葉及び/又は球根からエキスを抽出する方法であって、
カタクリの葉及び/又は球根を粉砕するステップと、
粉砕された原料を溶媒と混合し、攪拌してエキスを抽出するステップと、
エキスが抽出された混合物をろ過するステップとを、
有するカタクリの葉及び/又は球根からエキスを抽出する方法が提供される。
【0010】
また本発明によれば、カタクリの葉及び/又は球根からエキスを抽出する方法であって、
カタクリの葉及び/又は球根を粉砕するステップと、
粉砕された原料に対し炭酸ガスによる超臨界抽出法を適用して、エキスを抽出するステップと、
抽出されたエキスをろ過するステップとを、
有するカタクリの葉及び/又は球根からエキスを抽出する方法が提供される。
【0011】
また本発明によれば、エキスを抽出する上記方法で抽出されたカタクリの葉及び/又は球根を含有する化粧料が提供される。
【0012】
また本発明によれば、キスゲの葉及び/又は球根からエキスを抽出する方法であって、
キスゲの葉及び/又は球根を粉砕するステップと、
粉砕された原料を溶媒と混合し、攪拌してエキスを抽出するステップと、
エキスが抽出された混合物をろ過するステップとを、
有するキスゲの葉及び/又は球根からエキスを抽出する方法が提供される。
【0013】
また本発明によれば、キスゲの葉及び/又は球根からエキスを抽出する方法であって、
キスゲの葉及び/又は球根を粉砕するステップと、
粉砕された原料に対し炭酸ガスによる超臨界抽出法を適用して、エキスを抽出するステップと、
抽出されたエキスをろ過するステップとを、
有するキスゲの葉及び/又は球根からエキスを抽出する方法が提供される。
【0014】
また本発明によれば、エキスを抽出する方法で抽出されたキスゲの葉及び/又は球根を含有する化粧料が提供される。
【0015】
なお、上記化粧料が、化粧水、クリーム、美白剤、アクネエッセンスのいずれかであることは、本発明の好ましい態様である。
【発明の効果】
【0016】
本発明により提供される特定の植物のエキスは、粘液多糖体などを大量に含有するため、化粧料の原料として用いると皮膚保湿作用・保護作用が高い。また、このエキスは、傷んだ皮膚を改善し、かつ滑らかにする作用も強い。さらに、このエキスは、皮膚内細菌と皮膚脂肪の過剰分泌を抑制し、ニキビ、吹き出物の予防・改善に有効である。よって、本発明の方法で得られたエキスを含有する化粧料は、皮膚の肌荒れ、シワ、シミ、毛髪のパサツキ、脱毛などの予防ができ、かつ傷んでしまった皮膚や毛髪を本質から改善するという効果を奏する。特定の植物としては、百合科系植物があり、特に黒百合、カタクリ、キスゲの葉及び/又は球根のエキスは、皮膚及び身体への有用性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明では、黒百合、カタクリ、キスゲの葉及び/又は球根を対象としているが、以下これらについて説明する。まず上記特定の植物の葉及び/又は球根からエキスを抽出する方法について説明する。図1は、特定の植物として黒百合を用いた場合のエキス抽出法を示すフローチャートである。
【0018】
図1のフローチャートに示すように、まず黒百合の葉と球根を水で洗浄する。洗浄は、効率の点から、葉と球根とで別々に行うことが一般的だが、特に分ける必然性はないので、葉と球根を一緒に洗浄してもよい。洗浄が終了すると、通常の粉砕に使用するミキサーに葉と球根を入れて、粉砕する。この場合、葉及び/又は球根1kg当たり、10分〜30分間、粉砕を行う。粉砕が終了すると、抽出ステップへ移行する。ここでは、粉砕物200g当たり、抽出溶媒50〜1000mlを用い、攪拌機により混合抽出を行う。なお抽出時間は15分以上とする。ここで、抽出溶媒としては、1.3ブチレングリコールと水の混合体(又はいずれか一方)を用いることができる。1.3ブチレングリコールと水の混合比は、100:0〜0:100とすることができる。他の抽出溶媒としては、エタノールと水の混合体(混合比100:0〜10:90)や、ショ糖と水の混合体(混合比75:25〜10:90)などを使用することができる。
【0019】
なお、抽出方法としては、上記混合抽出によるものの他、炭酸ガスによる超臨界抽出法を適用することもできる。この場合、温度は室温又は加温(30℃〜100℃:好ましくは30℃〜50℃)とし、常圧あるいは加圧下とすることができる。超臨界抽出法による抽出時間は200g当たり10分以上数時間以内とする。なお、ここで10分以上としたのは、10分で90%以上の抽出が行われるからである。
【0020】
抽出が終了すると、混合液体をろ過する。ろ過に用いるろ過膜は、50〜300メッシュである。ろ過方法としては、自然ろ過、吸引ろ過、加圧ろ過のいずれをも用いることができ、ろ過時間は、混合液の量に応じて都度設定する。ろ過の結果得られたろ液は、必要に応じて次に濃縮される。濃縮には、減圧蒸留を用いることができる。濃縮ステップを終了すると、脱臭、脱色精製を行う。この工程ではステンレス製タンクなどを使用し、活性炭処理による吸着精製を行う。活性炭の量は、濃縮後のろ液200g当たり1〜10g程度である。
【0021】
その後、更にろ過を行う。ろ過に用いるろ過膜は、50〜300メッシュである。ろ過方法としては、自然ろ過、吸引ろ過、加圧ろ過のいずれをも用いることができ、ろ過を終了して得られるものが黒百合の葉及び/又は球根のエキスであり、これを用いて各種化粧料を生産することができる。なお、図1は、黒百合の場合のエキス抽出法を示しているが、他の植物、すなわちカタクリやキスゲの場合もほぼ同様である。
【0022】
次に、上記方法で抽出されたエキスを用いた化粧料の実施例について比較例との関係で説明する。表1は、黒百合の球根から得たエキスを用いた化粧水(実施例1)と、カタクリの球根から得たエキスを用いた化粧水(実施例2)を2つの比較例と対比したものである。実施例1及び実施例2は、2つの比較例より保湿性が高く、ベタツキが少ないことが専門パネル官能評価による評価結果として得られている。
【0023】
【表1】

【0024】
表2は、黒百合の球根から得たエキスを用いたエッセンス(実施例3)と、キスゲの球根から得たエキスを用いたエッセンス(実施例4)を2つの比較例と対比したものである。実施例3及び実施例4は、2つの比較例より濃厚感が大きく、保湿性が高く、持続性も大きく、ベタツキが少ないことが専門パネル官能評価による評価結果として得られている。
【0025】
【表2】

【0026】
表3は、黒百合の球根から得たエキスを用いたクリーム(実施例5)と、黒百合の葉から得たエキスを用いたクリーム(実施例6)を2つの比較例と対比したものである。実施例5及び実施例6は、2つの比較例より潤いの持続性が強く、スベスベ感が高いことが専門パネル官能評価による評価結果として得られている。また、実施例5及び実施例6は、2つの比較例より皮膚バリア機能への影響(TEWL: Transepidermal Water Loss /経皮水分蒸散量)が少なく、保湿効果があることが分かる。さらに35才から57才の35名の女性を被験者として1ヶ月の使用実験を行った結果、実施例5及び実施例6は、2つの比較例より肌改善効果と目尻のシワ改善効果が顕著であった。
【0027】
【表3】

【0028】
表4は、黒百合の葉から得たエキスを用いたアクネエッセンス料(実施例7)と、キスゲの球根から得たエキスを用いたアクネエッセンス料(実施例8)と、キスゲの葉から得たエキスを用いたアクネエッセンス料(実施例9)とを2つの比較例と対比したものである。実施例7、実施例8及び実施例9は、2つの比較例よりさっぱり感、収斂感がしっかりし、皮膚柔軟性もあることが専門パネル官能評価による評価結果として得られている。さらに脂性肌の20才代の18名の第1群の女性と、20名の第2群の女性と、18名の第3群の女性を被験者として、第1群は、実施例7と表4の比較例1を半顔ずつ1ヶ月使用し、第2群は、実施例8と表4の比較例1を半顔ずつ1ヶ月使用し、第3群は、実施例9と表4の比較例1を半顔ずつ1ヶ月使用する実験を行った結果、実施例7、実施例8及び実施例9は、比較例1より皮膚状態とニキビの状態における改善効果が顕著であった。
【0029】
【表4】

【0030】
表5は、黒百合の球根から得たエキスを用いた美白剤(実施例10)と、カタクリの葉から得たエキスを用いた美白剤(実施例11)とを3つの比較例と対比したものである。実施例10、実施例11は、3つの比較例より保湿性が高いことが専門パネル官能評価による評価結果として得られている。さらに培養メラノサイト増殖抑制作用について見ると、表5の比較例3の最大抑制率を100としたとき、実施例10、実施例11は、79.7〜80.5という数値を得ていて、約20%程度の改善効果があることが分かる。また、日焼け後の皮膚淡色化試験において、実施例10、実施例11は3つの比較例より美白作用が顕著であった。
【0031】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0032】
以上説明したように、本発明のエキスを抽出する方法及び化粧料によれば、従来にない優れた化粧料を提供することが可能であり、美容や、健康管理、医療などの産業において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係るエキスを抽出する方法の一例を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒百合の葉及び/又は球根からエキスを抽出する方法であって、
黒百合の葉及び/又は球根を粉砕するステップと、
粉砕された原料を溶媒と混合し、攪拌してエキスを抽出するステップと、
エキスが抽出された混合物をろ過するステップとを、
有する黒百合の葉及び/又は球根からエキスを抽出する方法。
【請求項2】
黒百合の葉及び/又は球根からエキスを抽出する方法であって、
黒百合の葉及び/又は球根を粉砕するステップと、
粉砕された原料に対し炭酸ガスによる超臨界抽出法を適用して、エキスを抽出するステップと、
抽出されたエキスをろ過するステップとを、
有する黒百合の葉及び/又は球根からエキスを抽出する方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のエキスを抽出する方法で抽出された黒百合の葉及び/又は球根を含有する化粧料。
【請求項4】
カタクリの葉及び/又は球根からエキスを抽出する方法であって、
カタクリの葉及び/又は球根を粉砕するステップと、
粉砕された原料を溶媒と混合し、攪拌してエキスを抽出するステップと、
エキスが抽出された混合物をろ過するステップとを、
有するカタクリの葉及び/又は球根からエキスを抽出する方法。
【請求項5】
カタクリの葉及び/又は球根からエキスを抽出する方法であって、
カタクリの葉及び/又は球根を粉砕するステップと、
粉砕された原料に対し炭酸ガスによる超臨界抽出法を適用して、エキスを抽出するステップと、
抽出されたエキスをろ過するステップとを、
有するカタクリの葉及び/又は球根からエキスを抽出する方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のエキスを抽出する方法で抽出されたカタクリの葉及び/又は球根を含有する化粧料。
【請求項7】
キスゲの葉及び/又は球根からエキスを抽出する方法であって、
キスゲの葉及び/又は球根を粉砕するステップと、
粉砕された原料を溶媒と混合し、攪拌してエキスを抽出するステップと、
エキスが抽出された混合物をろ過するステップとを、
有するキスゲの葉及び/又は球根からエキスを抽出する方法。
【請求項8】
キスゲの葉及び/又は球根からエキスを抽出する方法であって、
キスゲの葉及び/又は球根を粉砕するステップと、
粉砕された原料に対し炭酸ガスによる超臨界抽出法を適用して、エキスを抽出するステップと、
抽出されたエキスをろ過するステップとを、
有するキスゲの葉及び/又は球根からエキスを抽出する方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のエキスを抽出する方法で抽出されたキスゲの葉及び/又は球根を含有する化粧料。
【請求項10】
前記化粧料が、化粧水、クリーム、美白剤、アクネエッセンスのいずれかである請求項3、6、9のいずれか1つに記載の化粧料。

【図1】
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【公開番号】特開2007−308438(P2007−308438A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−140885(P2006−140885)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(504449309)株式会社ドクターズバイオ研究所 (3)
【Fターム(参考)】