説明

エストロゲンおよび抗増殖活性を有するホップ抽出物の製造

【課題】8-プレニルナリンゲニンの収率を向上させたホップ抽出物を生産する方法、特に異性体の6-プレニルナリンゲニンに比して8-プレニルナリンゲニンに富む方法の提供。
【解決手段】6-プレニルナリンゲニンに対して8-プレニルナリンゲニンの多いホップ抽出物の製造方法に関連し、該方法は、ホップ生産物を(1)溶媒としての水の存在下および塩基の量の存在下において異性化反応に付し、(2)少なくとも一回の抽出に付することを含む。こうして、(8-プレニルナリンゲニンx100%)/(8-プレニルナリンゲニン+6-プレニルナリンゲニン)の比が少なくとも50%である、6-プレニルナリンゲニンと8-プレニルナリンゲニンを含むホップ抽出物が得られる。該抽出物はまた、好ましくはキサントフモールを含み、8-プレニルナリンゲニンに対するキサントフモールの重量比は少なくとも10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一クレームの前文に従うと、6-プレニルナリンゲニンに対して8-プレニルナリンゲニンの多いホップ抽出物の製造方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
ホップは主たる三種の二次代謝物、即ち、ホップ(苦味)酸、ホップ精油、およびホップポリフェノールを含む。ホップ酸、ホップ精油、およびある程度の量の低分子量ポリフェノールがビール醸造の目的からは最も重要なホップ成分である。上記の二次代謝物を所望の比率で含むホップ抽出物を得る観点からは、醸造目的のホップ抽出物は一般にホップおよびホップ生産物から水若しくはCOの超臨界抽出により製造される。
【0003】
最近、重要な研究において、ポリフェノールの特異的なクラスを構成するプレニル化フラボノイドの生理活性について焦点が当てられている。新鮮なホップ中に存在する最も重要なプレニル化フラボノイドはカルコンであり、特に、キサントフモール、およびデスメチルキサントフモールである。これらカルコンは、イソキサントフモール(キサントフモールに由来)、8-プレニルナリンゲニン、6-プレニルナリンゲニン(いずれもデスメチルキサントフモール由来)(figure 1 参照)等のフラバノンの前駆体である。8-プレニルナリンゲニンは、その他の立証された植物性エストロゲンよりも活性の高い、ホップのエストロゲン作用の活性主体として同定された〔ミリガン等(Milligan et al.), 1999〕。8-プレニルナリンゲニンに次ぐ、その他の類似のホップ由来化合物、例えば、6-プレニルナリンゲニン、イソキサントフモール、6,8-ジプレニルナリンゲニンおよび8-ゲラニルナリンゲニン〔ミリガン等(Milligan et al.), 2000〕には弱いエストロゲン作用しか見出せなかった。8-プレニルナリンゲニンの高いエストロゲン的作用はin vivo試験で確認された〔ミリガン等(Milligan et al.), 2002〕。
【0004】
その一方、キサントフモールは発癌の開始、促進および進行の各ステージに対して特別に幅広いスペクトラムの阻害メカニズムを有する強力なガンの化学保護剤であることが示された〔ゲルハウザー等(Gerhauser et al.), 2002〕。その抗開始効力に一致して、キサントフモールは発癌の代謝および解毒作用に関わる酵素、例えば、CYP450-酵素〔ヘンダーソン等(Henderson et al.), 2000;ミランダ等(Miranda et al.), 2000c〕やキノン還元酵素〔ミランダ等(Miranda et al.), 2000a〕を強力に修飾する。その上、キサントフモールは、ヒドロキシ若しくはパーオキシラジカルを含む活性酸素種を捕集し〔ミランダ等(Miranda et al.), 2000b;ロドリゲス等(Rodriguez et al.), 2001〕、スーパーオキシドアニオンラジカルおよび一酸化窒素産生を阻害できる〔ザオ等(Zhao et al.), 2003〕ことが見出された。強力な抗発癌促進剤として、キサントフモールはシクロオキシゲナーゼ-1阻害活性およびシクロオキシゲナーゼ-2阻害活性により抗炎症活性を示す〔ゲルハウザー等(Gerhauser et al.), 2002〕。進行相における発癌を妨げる抗増殖メカニズムにはDNA合成阻害とS相における細胞サイクル停止の誘導、アポトーシスおよび細胞分化の誘導が含まれる〔ミランダ等(Miranda et al.), 1999;ゲルハウザー等(Gerhauser et al.), 2002〕。さらに、短期間in vitroと長期間in vivoの発癌モデルの橋渡し的なモデルであるマウスの乳腺器官培養において、キサントフモールはナノモル濃度で発癌物質により誘導された前新生物を妨げるのに有効であることが示された〔ゲルハウザー等(Gerhauser et al.), 2002〕。
【0005】
上述のフラボノイドはビール醸造における必須の生成物ではない。これらは主として、液体若しくは超臨界COによりホップから目的化合物が抽出された後の残渣中に残存する。通常の醸造条件ではホップ全体、ホップ生産物または特にホップ分画が用いられるが、プレニル化フラボノイドの全濃度はビール1リットル中最大で4mgである〔スチブンス等(Stevens et al.), 1999〕。
ドイツ特許199 39 350号には、キサントフモールに富むホップ抽出物の製造方法が記載されており、これによるとホップ生成物は有機溶媒またはアルカリ水にて抽出される。この抽出に先立ち、ホップ生成物を水で抽出し親水性物質を除去してもよい。適切な有機溶媒として、水/エタノール溶液が開示される。しかしながら、ホップ抽出物中におけるプレニル化フラバノンの存在は何も言及していない。
【0006】
国際公開公報WO03014287によると、ホップ抽出物のエストロゲン活性は基本的には8-プレニルナリンゲニンの存在に帰せられ、これが最も重要なエストロゲン活性を示す化合物である。8-プレニルナリンゲニンよりも低いが、6-プレニルナリンゲニンもまたエストロゲン活性を示すこと、およびキサントフモールが細胞代謝に作用しがん防止薬とみなし得ることが報告されている。WO03014287のホップ抽出物は、エストロゲンの欠乏または性ステロイドホルモン、特にエストロゲンの代謝における障害による症状の予防または治療の用途に適していることが開示されている。
【0007】
WO03014287はまた、キサントフモール、イソキサントフモール、6-プレニルナリンゲニンおよび8-プレニルナリンゲニンのようなフラバノンやカルコンに富むホップ抽出物の製造方法を開示する。当該方法は、
(1)ホップまたはホップ生産物をC5−C7アルカンまたは超臨界COにより抽出し、ホップ中の疎水性物質を除去する工程、
(2)ホップ中に含まれる親水性物質を除去するため、工程(1)で得られた残渣を水で抽出する工程、そして最後に、
(3)工程(2)で得られた残渣を、アルコール、水性アルコール、ケトン、水性ケトンまたはエステルまたはそれらの混合物よりなる群から選択される有機溶媒で抽出する工程、を含む。
【0008】
こうして得られたホップ抽出物中のイソキサントフモール、6-プレニルナリンゲニンおよび8-プレニルナリンゲニンの濃度は、工程(2)の水抽出で温度を高くすると増加することが見出された。しかしながら、すべての例において8-PN/(8-PN+6PN)の重量比は18%-25%の間である。
WO02/085393に開示されたホップ抽出物は少なくとも3重量%のプレニル化フラボノイド、特にキサントフモール、イソキサントフモール、および8-プレニルナリンゲニンを含むことが報告されている。しかしながら、WO02/085393の抽出物の大多数は、伝統的な富んでいない抽出物に比べて富んでいるエストロゲン活性を示さない。その上、抽出物組成とエストロゲン活性の間に関連性を示さない。また、エストロゲン性がないのは8-プレニルナリンゲニンのためである。さらに、抽出物のエストロゲン性は、1-30重量%のキサントフモール、0.01-50重量%のイソキサントフモール、0.0005-10重量%の8-プレニルナリンゲニンを含む場合特に表れると断言される。WO02/085393のホップ抽出物はエストロゲン性を有する医薬品、化粧品組成物、栄養補助品および食事用製品の製造に適している。
【0009】
ハンセルとシュルツ〔Hansel and Schulz (1988)〕は、主題に対し新しく収穫したホップのコーンから単離したデスメチルキサントフモールおよびキサントフモールが5%の水酸化カリウムエタノール溶液中で異性化することを開示する。キサントフモールは回収率80%でイソキサントフモールに異性化し、デスメチルキサントフモールの異性化は6-プレニルナリンゲニンおよび8-プレニルナリンゲニンをそれぞれ回収率35%と30%で与えた。こうして、46%の8-PN/(8-PN+6-PN)比が得られ、熱力学的により安定な6-プレニルナリンゲニンが好適に生成することが示された。
或いは、ミリガン等〔Milligan et al. (2002)〕は、イソキサントフモールの脱メチル化を経由する8-プレニルナリンゲニンの調製を開示するが、ここでイソキサントフモールは、乾燥ホップコーンのジクロロメタン抽出物残渣を5%の水酸化カリウムエタノール溶液中で異性化させて得られた。脱メチル化工程は、アセトニトリルとジクロロメタンの混合物中三塩化ホウ素を用いて行なわれ、収率は53%しかなかった。
【0010】
多くの特許、例えば、米国特許5,370,897号、3,839,588号および1,246,425号は、イソα酸を製造するときにα酸をアルカリ異性化工程に供することを開示する。しかしながら、そのような異性化反応に適した抽出物はたいていヘキサン、超臨界若しくは液体二酸化炭素を抽出溶媒とする抽出により得られる。そのような抽出物はキサントフモールやデスメチルキサントフモールを含まないので、異性化抽出物は対応するプレニル化フラバノンを欠く。さらに、米国特許1,274,678号は、α酸を含むもとの抽出物がベンゼン抽出により得られた場合、プレニル化フラバノイド、キサントフモール、イソキサントフモールは製造工程と干渉するのでこれらを除去することが必須であることが分かると開示する。こうして、アルカリ溶媒中の異性化に関する発見は本発明との関係がない。
抽出物をプレニル化フラバノイドに富んだものとする方法は得られているが、その異性体6-プレニルナリンゲニンに比して高度にエストロゲン的な8-プレニルナリンゲニンが多く存在するホップ抽出物を得る方法は今まで知られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って本発明の目的は、8-プレニルナリンゲニンの収率を向上させたホップ抽出物を生産する方法、特に異性体の6-プレニルナリンゲニンに比して8-プレニルナリンゲニンに富む方法を提供することである。
本発明の更なる目的は、その生物学的活性を考慮して特異的かつ最適化された、すべての関連するプレニル化フラボノイドまたは誘導体の組成を有するホップ抽出物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これは、第一クレームの特徴的な部分の技術的特長を示す工程を用いて、本発明により達成される。
本発明の方法はホップまたはホップ生産物を(1)溶媒としての水の存在と、塩基の量の存在下で異性化反応に付し、(2)少なくとも一回の抽出に付すことで特徴付けられる。
本発明の方法においては、異性化反応の溶媒として水を用いることが好ましい。
ホップまたはホップ生産物は、例えばペレット化ホップのような加工ホップの任意の形態、またはプレニル化フラボノイドを含むホップ由来の残渣若しくは抽出物の任意のものを含むと解される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】Figure 1 は、ホップ(Humulus lupulus L.)中の主要なプレニル化フラボノイドを示す。
【0014】
【図2】Figure 2 は、8-プレニルナリンゲニンにより刺激された乳ガン細胞MCF-7の増殖と、存在するキサントフモール濃度を増加させたときの増殖阻害を示す。
【0015】
【図3】Figure 3 は、8-イソペンチルナリンゲニンを含む8-アルキルナリンゲニンの合成スキームを示す。
【0016】
【図4】Figure 4 は、エストロゲン誘導酵母スクリーン中における、17β-エストラジオール(E2)、8-プレニルナリンゲニン(8PN)、8-イソペンチルナリンゲニン(8PN-H2)およびジヒドロイソキサントフモール(Isox-H2)のエストロゲン作用の用量-応答曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明者は溶媒として水の存在下で異性化反応を行なっているとき、プレニル化フラボノイドにさらに富んだホップ抽出物が得られることを見出した。特に、本発明については
6-プレニルナリンゲニンよりも8-プレニルナリンゲニン(およびキサントフモール)に富む抽出物が得られる可能性があり、技術状況と比較してこの富裕化は異性化反応における溶媒として排他的に水を使用した場合に特に発現される。8-プレニルナリンゲニンが多く含まれるため、エストロゲン作用がより強いホップ抽出物が得られ、8-プレニルナリンゲニンの存在により引き起こされる潜在的増殖作用はキサントフモールの抗増殖作用により拮抗を受ける(figure 2参照)。この点において、キサントフモールが発癌過程、即ち、発癌、促進、進行のすべてにおいて阻害するメカニズムの、例外的に広い阻害スペクトルを示すことを指摘するのは重要である〔ゲルハウザー等(Gerhauser et al.), 2002〕。
本発明において、異性化と少なくとも一回の抽出がなされる順序は重要ではない。実際、これは異性化および少なくとも一回の抽出はどちらが最初でもよいことを意味している。
【0018】
異性化反応
温度が上昇するとデスメチルキサントフモールおよびキサントフモール-ホップまたはホップ生産物中に存在する最も重要なプレニル化フラボノイド(カルコン)-はマイケル型の分子内環化付加反応により相当するフラバノンに容易に熱異性化することが知られている。キサントフモールは事実上排他的にイソキサントフモールへと異性化するが、デスメチルキサントフモールの異性化は8-プレニルナリンゲニン(8-PN)および6-プレニルナリンゲニン(6-PN)の混合物を生成し、そのモル比(8-PN x100%)/(8-PN + 6-PN)は通常15%から25%の間であって6-PNに比して8-PNの熱力学的安定性が低いためであろう。驚くべきことに、異性化反応を水の存在下で特異的なアルカリ条件の下で行なうと、(8-PN + 6-PN)の全終了は影響されないが、 (8-PN x100%)/(8-PN + 6-PN)の比が熱力学的には不安定な8-PNへとシフトすることが見出された。8-PNは6-プレニルナリンゲニンまたはその他のホップ由来化合物と比較して高いエストロゲン作用を有する化合物であるから、こうして得られたホップ抽出物のエストロゲン作用は既知のホップ抽出物(例えば、高い温度でのヒドロアルコール抽出)の3-5倍増加するかも知れない。改良された8-PNの富裕化は異性化反応で水を排他的に用いた場合に見出された。
【0019】
本発明の方法の好ましい態様は、KOH水溶液濃度(w/v%)が少なくとも0.5%、好ましくは少なくとも1%、より好ましくは少なくとも5%に相当するアルカリ条件で異性化反応が行なわれる点で特徴付けられる。
増加するアルカリ濃度条件で異性化反応を行なうと(8-PN x100%)/(8-PN + 6-PN)の比を技術的に知られている15-25%から50%以上、時には60および75%以上へとシフトさせさらに8-PN優位とさえなり得るが、(8-PN + 6-PN)全体の終了は事実上影響されない。その結果、8-PNに富むホップ抽出物が得られる。または換言すれば、本発明は6-PN/8-PNの比を逆転させることが可能で、最先端の技術では6-PNを選択的に富裕化するところ、本発明は高いエストロゲン作用を有する化合物である8-PNを選択的に富裕化させることができる。本発明の方法の中で一般的な反応条件では、ホップ抽出物中に存在し反応させられる最大で95%のキサントフモールがイソキサントフモールへと異性化される。この異性化工程は、デスメチルキサントフモールがすべてある割合の(8-PN x100%)/(8-PN + 6-PN)へと定量的に変換された抽出物についてもまた、このように進行することが見出された。
【0020】
公知技術においては、カルコンから相当するフラバノンへの異性化は通常5%水酸化カリウム-エタノール溶液中で行なわれ(例えば、ハンセルとシュルツ〔Hansel and Schulz (1988)〕)、30分間還流して(8-PN x100%)/(8-PN + 6-PN)比は40-46%であることに気づく。しかしながら本発明では、水中の特に周辺温度における異性化により、熱力学的に不安定な8-PNの富裕化を有意に進行させることができる。
反応物および反応性生物の酸化の危険性を最小化するためには、異性化反応を不活性雰囲気下で行なうのが好ましい。反応物、特にキサントフモールとデスキサントフモール、および反応性生物のイソキサントフモールと8-プレニルナリンゲニンは酸化に敏感な二重結合とフェノール性基を有している。
【0021】
異性化反応を行なう温度は本発明にとって重要ではなく、反応混合物の氷点から沸点の間の任意の温度でよい。40℃から60℃の間の温度、特に約50℃が適切と考えられるが、最も適切には、反応は周辺温度で行なわれる。
発明者等はさらに、異性化反応が速い速度で進行し、周辺温度においてさえ15分よりも短い時間で事実上完結することを見出した。8-プレニルナリンゲニンの産生を好む観点からは異性化反応を0.25から4時間の間で行なうのが好ましい。当業者であれば一般に異性化反応を行なう温度及び時間を調整することが可能であり、目的の生成物に対する選択性と変換を最適化して、異性化反応を長時間続けた場合に生じるかもしれない、望ましくない副生成物産生の危険性を最小化するであろう。
【0022】
抽出工程
異性化反応を終了させる前または終了後のいずれかにおいて、ホップまたはホップ生産物から目的の化合物を単離するため、ホップまたはホップ生産物は少なくとも一度抽出工程に付される。
プレニル化フラボノイドの抽出は、ホップまたはホップ生産物を、アルコール、水性アルコール、ケトン、水性ケトン若しくはエステル、またはこれらの混合物またはアルカリ水よりなる群から選択される少なくとも一種の溶媒を用いた抽出に付して得られる。使用に適した有機溶媒の例は、中程度の極性の溶媒、例えば酢酸エチル若しくはアセトン、または高極性の溶媒、例えば、エタノール若しくはメタノール、またはそれらの混合物で、例えば、90/10(v/v)=酢酸エチル/メタノール、ヒドロアルコール混合物〔75/25(v/v)=エタノール/水〕等である。
【0023】
好ましくは、ホップまたはホップ生産物を少なくとも一度抽出に付する前もしくはその後、またはホップまたはホップ生産物を少なくとも一度異性化反応に供する前若しくはその後、ホップまたはホップ生産物を水および/または少なくとも一種の非極性有機溶媒による追加的抽出に付して、プレニル化フラボノイドに富む抽出物または残渣を回収する。水による追加的抽出は、富裕化抽出物中に存在する、無機能の親水性バラスト物質をできる限り除去することにより、富裕化ホップ抽出物中のプレニル化フラボノイドを高度に濃縮する目的でなされる。そのような無機能のバラスト物質の例としてはタンパク質が含まれる。非極性有機溶媒による少なくとも一種の追加的抽出は、無機能の疎水性(親油性)バラスト物質の濃度を減少させ、プレニル化フラボノイドに富む抽出物中のプレニル化フラボノイド濃度をさらに濃縮させる。
【0024】
異性化反応および抽出に付される出発物質のホップまたはホップ生産物中の疎水性バラスト物質濃度が高い場合は、少なくとも一種の非極性有機溶媒による追加的抽出が想定される。そのような追加的抽出に付される生産物はたいてい、ホップの一次抽出後に残ったホップ残渣であろう。該一次抽出は、液体若しくは超臨界COを用いてそれほど徹底的でない条件下(温和な温度と圧力)で、関連するプレニル化フラボノイドを含むより極性の二次代謝物を含む残渣からビール醸造に利益のある化合物を分離するためになされる。
【0025】
親水性および疎水性のバラスト物質抽出は当業者に知られた適切な抽出方法で行なうことができる。適切な抽出手段には溶媒-溶媒抽出(例えば、水と酢酸エチル、ヘキサンと水性アルコール混合物等)または固相抽出(親水性および疎水性物質を水および非極性有機溶媒へそれぞれ可溶化、またはシリカ若しくはシリカ誘導体の使用)が含まれる。水および非極性有機溶媒でそれぞれ抽出した後のプレニル化フラボノイド分画の分離は、例えば、傾斜法、濾過、および/または遠心分離により達成できる。
可能な抽出方法としては例えば、ホップを液体若しくは超臨界COを用いて抽出し残渣を回収してから、その残渣をアルカリ条件下で異性化反応に供することを含む。その後に、煮沸した使用済みホップを含む反応混合物を中性pHにまで酸性化し、残渣を例えば濾過または水洗後遠心分離等により回収する。その後、プレニル化フラボノイドは適切な溶媒またはその混合物を用いて選択的に抽出することができる。
【0026】
前処理
本発明の経済的な実現可能性を改良し目的化合物をさらに濃縮する観点から、異性化反応と抽出の組み合わせに供する前に、ホップまたはホップ生産物を、液体若しくは超臨界COまたは少なくとも一種の非極性有機溶媒中の抽出に付してから、プレニル化フラボノイドを含む残渣を回収する。
これは実際のところ、醸造目的上利益のある抽出物を回収し、他方ではプレニル化フラボノイドに富む残渣となり前抽出により疎水性バラスト物質の主要部分が除かれることを意味する。この前もって富裕化した残渣を任意の順序で異性化反応及び少なくとも一度の抽出に付する。
別の可能性は、エタノール性のいわゆる「純粋樹脂抽出物」といわれる液体若しくは超臨界CO抽出物の使用を含み、これは担体〔例えば、キーゼルグール(Kieselguhr)〕と混合して担体上に残渣を回収する。それから、プレニル化フラボノイドを含む残渣を任意の順序で異性化反応及び少なくとも一度の抽出に付する。
【0027】
適切な製剤
富裕化ホップ抽出物は8-プレニルナリンゲニンのエストロゲン作用によって誘導される増殖活性の可能性があるところ、本発明者等は富裕化抽出物中にキサントフモールがあることでその活性が阻害されまたは拮抗され得ることを見出した。キサントフモールは抗増殖作用を有することが知られているからである。しかしながら本発明者等は、8-プレニルナリンゲニンに対するキサントフモールの重量比が十分に高い条件の場合にのみそのような阻害が得られることを見出した。特に、8-プレニルナリンゲニンに対するキサントフモールの重量比が少なくとも10、好ましくは少なくとも30である場合に十分な阻害を見出した。このような比は富裕化抽出物に対してキサントフモールを過剰に追加して得られるだろう(figure 2参照)。換言すると、8-プレニルナリンゲニンに対するキサントフモールの特別な重量比において、8-プレニルナリンゲニンのエストロゲン作用に関連する増殖作用に対する有効な阻害がキサントフモールの抗増殖作用により得られる。
【0028】
これに関して、figure 2は8-プレニルナリンゲニンの濃度の上昇はMCF-7乳癌細胞の増殖を増加させることを示す。驚くべきことに、8-プレニルナリンゲニンの各濃度において低濃度のキサントフモール(<1μM)、特に8-プレニルナリンゲニンに対するキサントフモールの比が10より小さい濃度においては8-プレニルナリンゲニンの増殖誘導を刺激した。ところが、少なくとも5μMの高濃度のキサントフモールは8-プレニルナリンゲニンの増殖誘導を有意に阻害した。
【0029】
デスメチルキサントフモールから8-プレニルナリンゲニンおよび6-プレニルナリンゲニンへの最も効果的な異性化を与え、同時に8-プレニルナリンゲニンの生成を好む反応条件において、キサントフモールは残念ながら殆ど定量的にイソキサントフモールへと異性化してしまう。一方、ホップまたはホップ生産物を非異性化条件下(室温で中性もしくは酸性条件下で抽出)で少なくとも一度抽出に付することで、キサントフモールに富むホップ抽出物を製造することができる。従って、本発明の方法は好ましくは、上述の異性化と抽出の手段を組み合わせた方法により得られる抽出物と、キサントフモールに富むホップの二次抽出物とを混合する工程を含む。こうして、キサントフモールと8-プレニルナリンゲニンの両方を特定の重量比で含むホップ抽出物が得られる。8-プレニルナリンゲニンに対するキサントフモールの重量比は少なくとも10、より好ましくは少なくとも30であり、この範囲内であれば8-プレニルナリンゲニンの存在に基づくエストロゲン作用と、キサントフモールの存在に基づく癌化学保護作用の適切な組み合わせを示す混合物が得られるからである。この混合は、少なくとも一回の異性化反応に続く、キサントフモールからイソキサントフモールへの異性化によるキサントフモール濃度の減少についての代償を可能とする。本発明の異性化-抽出の組み合わせによる得られる8-プレニルナリンゲニンに富む抽出物と、キサントフモールに富む抽出物を混合することにより、本発明は、キサントフモールに対する8-プレニルナリンゲニンの特定の重量比を有するホップ抽出物を得ることを可能とし、これは異性化反応におけるキサントフモールからイソキサントフモールへの変換の程度と関係しない。
【0030】
こうして本発明により、少なくとも0.15重量%の8-プレニルナリンゲニンと少なくとも3重量%のキサントフモール、より好ましくは少なくとも0.33重量%の8-プレニルナリンゲニンと少なくとも10重量%のキサントフモールを含むホップ抽出物を得ることができる。
【0031】
キサントフモールに富む抽出物を得る適切な方法は、ホップまたはホップ生産物を少なくとも一回液体若しくは超臨界COまたは少なくとも一種の実質的に非極性の有機溶媒を用いる抽出に付して、キサントフモールに富む残渣を回収し、そしてキサントフモールをさらに濃縮する観点から、適切な溶媒若しくはその混合物を用いてさらに該残渣を少なくとも一回する工程を含む。
或いは、エタノール性のいわゆる「純粋樹脂抽出物」といわれる液体若しくは超臨界CO抽出は、担体〔例えば、キーゼルグール(Kieselguhr)〕と混合されてプレニル化フラボノイドに富む担体上の残渣へと導く。その後該樹脂は適切な溶媒若しくはその混合物を用いて少なくとも一回の抽出に付される。
【0032】
エストロゲン的ポテンシャルの増大
本発明によるホップ抽出物製造方法のさらに好ましい態様においては、該方法は少なくとも一回の抽出と異性化反応により得られる抽出物と、8-アルキルナリンゲニンのような高エストロゲン活性化合物、好ましくは水素化-8-プレニルナリンゲニンである8-イソペンチルナリンゲニン、に富む抽出物の量とを混合する工程を追加的に含む。8-イソペンチルナリンゲニンを追加する理由は、8-イソペンチルナリンゲニンがエストロゲン活性を示し、そのエストロゲン活性は8-プレニルナリンゲニンより3-4倍弱い(figure 4参照)のみであることを発明者等は意外にも見出したからである。8-イソペンチルナリンゲニンに関しては、そのエストロゲン活性は8-プレニルナリンゲニンよりも3-4倍弱いことが見出されたけれども8-イソペンチルナリンゲニンは8-プレニルナリンゲニンに比べて代謝されにくいため、高い生物学的利用率と安定性を示すことがわかった。これはおそらく側鎖に二重結合が存在しないためであろう。
【0033】
8-イソペンチルナリンゲニンに富む抽出物は、いくつかの方法によって得ることができる。
第一の可能な方法としては、以下のステップを含む;
a.キサントフモールに富むホップ抽出物を異性化反応に付してキサントフモールをイソキサントフモールに変換する;
b.ステップ(a)で得られた抽出物を触媒的水素化反応に付し、イソキサントフモールをジヒドロイソキサントフモールに変換する。触媒的水素化反応は好ましくは、例えば担体で支持されたPtやPd、その他の触媒のような水素化触媒の存在下でH2を導入することにより行われる。適切な担体の例は活性炭である。水素化反応は好ましくはMeOH中で行なわれる;
【0034】
c.ステップ(b)の反応性生物を脱メチル化反応に付する。これはジヒドロイソキサントフモールを8-イソペンチルナリンゲニンへと変換するために行なう。脱メチル化反応は例えば、三臭化ホウ素またはその他の脱メチル化試薬を用いて行なわれる。
かくして、上記の方法により、エストロゲン活性のないキサントフモールが高エストロゲン活性を有する化合物、即ち、8-イソペンチルナリンゲニンへと変換される。ホップ中のキサントフモール濃度(0.3-1.2重量%)は、8-プレニルナリンゲニンの前駆体であるデスメチルキサントフモール濃度(0.005-0.2重量%)より大変に高いのでこれは極めて有利である。上記の方法により、8-PNのみならず8-イソペンチルナリンゲニンにも富むホップ抽出物が得られ、その結果、エストロゲン活性は有意に増加する。
【0035】
8-イソペンチルナリンゲニンを含む抽出物を得る第二の可能な方法は、合成ルートにより得られる生成物の添加である。多くの数の工程が含まれるため8-位の置換は通常選択性が悪く低収率であるが、発明者等は今般工程数が短く高収率の8-イソペンチルナリンゲニン合成方法を開発した。
この方法によると、有機金属試薬(例えば、イソペンチルリチウム)の存在下、2,4,6-トリメトキシベンズアルデヒド(figure 3参照)をアルキル化して、次いで脱酸素化することにより1-アルキル-2,4,6-トリメトキシベンゼン(例えば、1-イソペンチル-2,4,6-トリメトキシベンゼン)とする。脱酸素化は好ましくはトリフルオロ酢酸中トリエチルシランの存在下で行なわれる。1-アルキル-2,4,6-トリメトキシベンゼンはアセチル化し、次いで脱メチル化することにより3-アルキル-2,4,6-トリヒドロキシアセトフェノン(例えば、3-イソペンチル-2,4,6-トリヒドロキシアセトフェノン)となる。アセチル化は、好ましくは塩化アセチルと四塩化スズの存在下で行なわれる。脱メチル化は好ましくは三臭化ホウ素の存在下で行なわれる。
【0036】
この合成経路において二つのフェノール基はメトキシメチルエーテル(MOM)で選択的に保護するのが好ましい。第三のフェノール基は強い分子内水素結合のため反応に抵抗することが分かった。
こうして得られた脱メチル化反応生成物をMOM保護ベンズアルデヒドを含む混合アルドール反応に付し、カルコンを生成させる。これは、分子内マイケル型環化付加反応をおこして対応するフラバノンとなる。酸性条件下で保護基を除去し8-アルキルナリンゲニン(例えば、8-イソペンチルナリンゲニン)が得られる。
【0037】
本発明はまた、8-プレニルナリンゲニンと6-プレニルナリンゲニンの混合物を含むようなホップ抽出物に関連し、(8-プレニルナリンゲニンx100%)/(8-プレニルナリンゲニン+6-プレニルナリンゲニン)の比は少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも75%である。従って、ホップ抽出物は好ましくはキサントフモールの量を含み、8-プレニルナリンゲニンに対するキサントフモールの重量比は少なくとも10、好ましくは少なくとも20、さらに好ましくは少なくとも30である。ホップ抽出物は少なくとも0.15%(w/w)、好ましくは少なくとも0.33%(w/w)の8-プレニルナリンゲニンを含み、少なくとも3%、好ましくは少なくとも10%(w/w)のキサントフモールを含むのが好ましい。最も好ましくは、ホップ抽出物はさらに、8-アルキルナリンゲニン、好ましくは8-イソペンチルナリンゲニンの量と同様のイソキサントフモール量を含むことが好ましい。
【0038】
適応症
本発明のホップ抽出物または本発明の方法により得られるホップ抽出物は、エストロゲン作用および癌化学予防作用を組み合わせた薬物または植物医薬の製造のために使用することができ、ここでは植物エストロゲンである8-プレニルナリンゲニンの存在による可能な増殖作用は、キサントフモールの抗増殖作用により拮抗されている。さらには、本発明のホップ抽出物または本発明の方法により得られるホップ抽出物は、エストロゲン性のホルモンバランスの乱れにより引き起こされる症状、兆候、不快感または病気の予防若しくは治療のための薬物または植物起原薬として使用することができる。
好ましくは、エストロゲン性のホルモンバランスの乱れにより引き起こされる症状、兆候、不快感または病気は更年期(閉経期を含む)障害に関連する。従って、好ましくは、その病気は骨粗しょう症である。他の好ましい態様においてはその病気は性ホルモン依存性ガン、心循環器疾患、前立腺機能障害、結腸癌よりなる群から選択される。
【0039】
本発明はまた、本発明のホップ抽出物または本発明の方法により得られるホップ抽出物を含む、栄養学的組成物/サプリメントに関連する。
追加的には本発明は、本発明のホップ抽出物または本発明の方法により得られるホップ抽出物を含む、化粧品組成物に関連する。
本発明の結果の抽出物は、丸剤、カプセル、ゲルール(gelule)、溶液等の種々の剤型に組み込むことができ、最善の使用および生物学的利用率のため通常の賦形剤を用いることができる。
さらなる好ましい態様は従属項に記載される。
実施例及び図
本発明を以下の実施例及び図にてさらに説明する。
【実施例】
【0040】
実施例1.抽出
使用済みのホップからキサントフモールおよびデスメチルキサントフモールを選択的に抽出する観点から、使用済みホップ(ホップ種ナゲットNugget;202.74g)、即ち、液体若しくは超臨界COにて抽出後の天然ホップ残渣を周辺温度下、酢酸エチル/メタノール=90/10 (v/v)の混合溶媒1Lで浸漬し、抽出した。抽出物を濾過してキサントフモールおよびデスメチルキサントフモールに富む抽出物(720ml)を回収した。減圧下で溶媒を留去した後、親油性バラスト物質を抽出する目的で残渣をヘキサン/メタノールの1/1(v/v)混合溶媒100mlに再び溶解し、分液ろうとに移した。酸性の水(1N HCI)30mlを加えて親油性バラスト物質を含むヘキサン層を廃棄した。残ったメタノール層から減圧下で溶媒を留去した。水(70 ml)および酢酸エチル(100ml)を加えて分液し、最終ホップ抽出物を含む有機層を乾燥した。
【0041】
収率:
・最終ホップ抽出物 4.64g(2.3%)
・デスメチルキサントフモール 2.41重量%
HPLCにて測定
・キサントフモール 33.62重量%
HPLCにて測定
【0042】
実施例2.異性化
実施例1で得られたホップ抽出物0.5gを、種々の量のKOH(それぞれ、0g、0.2g、0.4g、および2g)を含む水中(40ml)で1時間撹拌した。続いて、6N HClを用いて溶液をpH=4〜5に酸性化した。酢酸エチルで抽出して抽出物を回収し、溶媒を除去して乾燥した。定量的HPLC分析の結果を表1に示す。塩基を添加せずに撹拌した結果は、8-プレニルナリンゲニンおよび6-プレニルナリンゲニンを市販品のホップ抽出物と極めて近い比率で含むが、加える塩基の量を増加させていくと(8-プレニルナリンゲニンx100%)/(8-プレニルナリンゲニン + 6-プレニルナリンゲニン)の比が8-プレニルナリンゲニン優位に増加することに注意すべきである。
【0043】
【表1】

【0044】
実施例3
8-プレニルナリンゲニンおよび6-プレニルナリンゲニンを含むホップ抽出物を5%水酸化カリウム水溶液中で室温下、30分間異性化反応に付した。定量的HPLC分析の結果を表2に示す。表2から分かるように、(8-プレニルナリンゲニンx100%)/(8-プレニルナリンゲニン + 6-プレニルナリンゲニン)の比は、もとの抽出物中の23%から異性化後は73%と8-プレニルナリンゲニン優位に増加した。
比較例A
5%水酸化カリウム水溶液の代わりに5%水酸化カリウムエタノール溶液を用いる以外は実施例3の異性化反応を繰り返した。表2に示された定量的HPLC分析の結果は、得られた抽出物の(8-プレニルナリンゲニンx100%)/(8-プレニルナリンゲニン + 6-プレニルナリンゲニン)の比を表すが、もとの抽出物中の23%から異性化生成物は43%にまでしか増加しなかったことを示す。
【0045】
【表2】

【0046】
適切な製剤
Figure 2は乳癌細胞MCF-7への8-プレニルナリンゲニンによる成長刺激とキサントフモールの濃度を増加させた場合のその増殖に対する阻害を示す。8-プレニルナリンゲニンによるエストロゲン依存性癌細胞の増殖を精査し、この8-プレニルナリンゲニン誘導増殖を阻害するのに必要なキサントフモール濃度を決定するため、バイオアッセイを展開した。エストロゲン応答性の乳癌細胞MCF-7を96ウェルプレート中、成長刺激濃度の8-プレニルナリンゲニンおよび種々の濃度のキサントフモールの存在下で成長させた。8-プレニルナリンゲニンの各濃度(1nM、10nM、および100nM)に対して、キサントフモール濃度はそれぞれ、0μM、0.1μM、1μM、5μM、10μMおよび25μMであった。
【0047】
エストロゲン的ポテンシャルの増加
Figure 4は、17β-エストラジオール(E2)、8-プレニルナリンゲニン(8-PN)、8-イソペンチルナリンゲニン(8PN-H2)および中間体のジヒドロイソキサントフモール(IsoX-H2)のエストロゲン作用の用量-応答曲線を示す。ヒトエストロゲン受容体を発現し、レポーター遺伝子Lac−Z〔ミリガン等(Milligan et al.), 2001〕を制御するエストロゲン応答配列を運搬する発現プラスミドを含む、エストロゲン誘導酵母スクリーン(Saccharmomyces cerevisiae)で測定した。酵母を17β-エストラジオール(ポジティブコントロール)、8-プレニルナリンゲニン(8-PN)、8-イソペンチルナリンゲニン(8PN-H2)またはジヒドロイソキサントフモール(IsoX-H2)の濃度を高めながら含む培地中で成長させた。Lac−Zレポーター遺伝子の発現は分光学的に測定して定量した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホップ抽出物の製造方法であって、ホップまたはホップ生産物を(1)溶媒としての水の存在下および塩基の量の存在下において異性化反応に付し、(2)少なくとも一回の抽出に付することを含む点で、特徴づけられる方法。
【請求項2】
異性化反応が溶媒としての水の中で行なわれることを特徴とする、請求項1の方法。
【請求項3】
異性化反応が、KOH濃度の少なくとも0.1、好ましくは少なくとも0.5、より好ましくは少なくとも1、最も好ましくは少なくとも5(w/v)%に相当するアルカリ条件下で行なわれることを特徴とする、請求項1または2の方法。
【請求項4】
ホップまたはホップ生産物を少なくとも一回の抽出および異性化反応に付する前に、ホップまたはホップ生産物を液体若しくは超臨界COまたは少なくとも一種の実質的に非極性溶媒の存在下の抽出に付し、続いてプレニル化フラボノイドに富む抽出物を含む残渣を回収することを特徴とする、請求項1から3のいずれかの方法。
【請求項5】
当該方法がさらに、少なくとも一回の抽出と異性化反応により得られるホップ抽出物の量と、キサントフモールに富むホップ抽出物の量とを混合物することを含む点を特徴とする、請求項1から4のいずれかの方法。
【請求項6】
少なくとも0.15重量%、好ましくは少なくとも0.33重量%の8-プレニルナリンゲニンと、少なくとも3重量%、好ましくは少なくとも10重量%のキサントフモールを含む抽出物が得られるまで、異性化反応と少なくとも一回の抽出が続けられることを特徴とする、請求項1から5のいずれかの方法。
【請求項7】
キサントフモール/8-プレニルナリンゲニンの比が少なくとも10、好ましくは少なくとも30の抽出物が得られるまで、異性化反応と少なくとも一回の抽出が続けられることを特徴とする、請求項1から6のいずれかの方法。
【請求項8】
(8-プレニルナリンゲニンx100%)/(8-プレニルナリンゲニン + 6-プレニルナリンゲニン)の比が少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも75%で、6-プレニルナリンゲニンと8-プレニルナリンゲニンを含む抽出物が得られるまで、異性化反応と少なくとも一回の抽出が続けられることを特徴とする、請求項1から7のいずれかの方法。
【請求項9】
水および/または少なくとも一種の非極性溶媒による追加的な抽出工程に付され、続いてプレニル化フラボノイドに富む抽出物を含む残渣が回収されるホップ生産物により、ホップ生産物としての用途が作られることを特徴とする、請求項1から8のいずれかの方法。
【請求項10】
アルコール、水性アルコール、ケトン、水性ケトン、エステル、およびその混合物よりなる群から選択される少なくとも一種の有機溶媒またはアルカリ水で少なくとも一回抽出されることを特徴とする、請求項1から9のいずれかの方法。
【請求項11】
異性化反応が反応混合物の氷点および沸点の間の温度、好ましくは周辺温度で行なわれることを特徴とする、請求項1から10のいずれかの方法。
【請求項12】
異性化反応が周辺温度から60℃の間の温度、好ましくは周辺温度付近で行なわれることを特徴とする、請求項11の方法。
【請求項13】
異性化反応が不活性雰囲気下で行なわれることを特徴とする、請求項1から12のいずれかの方法。
【請求項14】
異性化反応が0.25時間から4時間の間行なわれることを特徴とする、請求項1から13のいずれかの方法。
【請求項15】
当該方法が、少なくとも一回の抽出および異性化反応により得られた富裕化ホップ抽出物の量と、8-アルキルナリンゲニン、好ましくは8-イソペンチルナリンゲニンに富む抽出物の量とを混合する工程を含む点を特徴とする、請求項1から14のいずれかの方法。
【請求項16】
次の工程;
(a)キサントフモールに富むホップ抽出物を異性化反応に付し、キサントフモールをイソキサントフモールに変換し;
(b)工程(a)で得られた抽出物を触媒的水素化反応に付してイソキサントフモールをジヒドロイソキサントフモールに変換し;
(c)工程(b)で得られた抽出物を脱メチル化反応に付しジヒドロイソキサントフモールを8-イソペンチルナリンゲニンへと変換する;
を含む方法により、8-イソペンチルナリンゲニンに富む抽出物を得ることを特徴とする、請求項15の方法。
【請求項17】
工程(a)の異性化反応がアルカリ条件下で行なわれることを特徴とする、請求項16の方法。
【請求項18】
合成8-アルキルナリンゲニン、好ましくは合成8-イソペンチルナリンゲニンの量を添加することにより、8-アルキルナリンゲニンに富むホップ抽出物を得ることを特徴とする、請求項15から17のいずれかの方法。
【請求項19】
(8-プレニルナリンゲニンx100%)/(8-プレニルナリンゲニン + 6-プレニルナリンゲニン)の比が少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも75%である、8-プレニルナリンゲニンおよび6-プレニルナリンゲニンの混合物を含むホップ抽出物。
【請求項20】
キサントフモールと8-プレニルナリンゲニンの混合物を含み、8-プレニルナリンゲニンに対するキサントフモールの重量比が少なくとも10、好ましくは少なくとも20、より好ましくは少なくとも30である、ことを特徴とする、請求項19のホップ抽出物。
【請求項21】
ホップ抽出物が少なくとも0.15重量%、好ましくは少なくとも0.33重量%の8-プレニルナリンゲニンと、少なくとも3重量%、好ましくは少なくとも10重量%のキサントフモールを含むことを特徴とする、請求項19または20のホップ抽出物。
【請求項22】
ホップ抽出物がさらにイソキサントフモールを含むことを特徴とする、請求項19から21のいずれかのホップ抽出物。
【請求項23】
ホップ抽出物がさらに8-アルキルナリンゲニン、好ましくは8-イソペンチルナリンゲニンの量を含むことを特徴とする、請求項19から22のいずれかのホップ抽出物。
【請求項24】
8-プレニルナリンゲニンのエストロゲン活性による増殖作用がキサントフモールの抗増殖作用により阻害され(または拮抗され)る、薬物若しくは植物医薬の製造のための、請求項19から23のいずれかのホップ抽出物、または請求項1から18のいずれかの方法により得られるホップ抽出物の使用。
【請求項25】
エストロゲン性のホルモンバランスの乱れにより引き起こされる症状、兆候、不快感または病気を治療し若しくは予防する薬物若しくは植物起原薬の製造のための、請求項19から23のいずれかのホップ抽出物、または請求項1から18のいずれかの方法により得られるホップ抽出物の使用。
【請求項26】
エストロゲン性のホルモンバランスの乱れにより引き起こされる症状、兆候、不快感または病気が更年期障害である、請求項25の使用。
【請求項27】
症状が骨粗しょう症である、請求項25のホップ抽出物の使用。
【請求項28】
症状が、性ホルモン依存性ガン、心循環器疾患、前立腺機能障害、結腸癌よりなる群から選択される、請求項25のホップ抽出物の使用。
【請求項29】
請求項19から23のいずれかのホップ抽出物、または請求項1から18のいずれかの方法により得られるホップ抽出物の量を含む、栄養学的組成物/サプリメント。
【請求項30】
請求項19から23のいずれかのホップ抽出物、または請求項1から18のいずれかの方法により得られるホップ抽出物の量を含む、化粧用組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−254085(P2012−254085A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−171628(P2012−171628)
【出願日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【分割の表示】特願2006−544180(P2006−544180)の分割
【原出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【出願人】(506203877)メタジェニックス・ベルギー・ベスローテン・フェンノートシャップ・メット・ベペルクテ・アーンスプラーケレイクヘイト (2)
【氏名又は名称原語表記】METAGENICS BELGIUM BVBA
【Fターム(参考)】