説明

エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物及び発泡体

【課題】 寸法安定性に優れた発泡体を提供する。
【解決手段】 エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部に対し、有機化層状粘土0.1〜50重量部、発泡剤2〜30重量部からなるエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物、及びエチレン−酢酸ビニル共重合体、有機化層状粘土からなる発泡体を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物、及び発泡体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エチレン−酢酸ビニル共重合体は経済性、柔軟性、透明性、成形性等に優れていることから自動車分野、電気・電子分野、建築資材分野、包装分野、接着剤分野等の広範な産業分野で使用されている。
【0003】
そして、エチレン−酢酸ビニル共重合体の発泡体は軽量性、柔軟性、断熱性に優れるため様々な形状に加工されて、靴、サンダル、梱包資材、断熱材等の幅広い用途で使用されている。
【0004】
しかしながら、エチレン−酢酸ビニル共重合体の発泡体は、耐熱性が低いため、高温状態に置かれたときに寸法が収縮してしまうという課題があった。
【0005】
そこで、EVAの耐熱性を向上させるために、炭化水素系ワックスを添加した樹脂組成物(例えば、特許文献1を参照)、組成分布が制御されたエチレン−酢酸ビニル共重合体(例えば、特許文献2を参照)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−217853号公報
【特許文献2】特開2003−2923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、耐熱性は向上するものの機械強度が低下してしまうという課題があった。また、特許文献2に記載の方法は耐熱性を向上させる一定の効果はあるものの充分なものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、エチレン−酢酸ビニル共重合体及び有機化層状粘土からなる発泡体が、高温状態に置かれても寸法安定性に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、エチレン−酢酸ビニル共重合体及び有機化層状粘土からなる特定の発泡体、及びエチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部に対し、有機化層状粘土0.1〜50重量部、発泡剤2〜30重量部からなるエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物に関するものである。
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明で用いるエチレン−酢酸ビニル共重合体は、特に制限は無く公知のものを用いることができる。中でも、得られる発泡体が柔軟であることからJIS K6924−1(1997年版)に準拠して測定した酢酸ビニル含有量が、5〜50重量%であることが好ましく、10〜42重量%がさらに好ましく、10〜28重量%が特に好ましい。
【0011】
また、本発明で用いるエチレン−酢酸ビニル共重合体の、JIS K6924−1(1997年版)に準拠して測定したメルトマスフローレート(以下、MFRと記す。)は、得られる発泡体の機械強度が優れることから0.1〜30000g/10分であることが好ましく、0.5〜2500g/10分がより好ましく、1〜100g/10分であることが更に好ましい。
【0012】
また本発明に用いるエチレン−酢酸ビニル共重合体は、不飽和カルボン酸、及び/又はその誘導体で変性されていても良い。不飽和カルボン酸としては、例えばマレイン酸、イタコン酸、フマル酸、アクリル酸等が挙げられ、不飽和カルボン酸の誘導体としては、例えば無水マレイン酸、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル、イタコン酸モノエステル、イタコン酸ジエステル、無水イタコン酸、フマル酸モノエステル、フマル酸ジエステル等が挙げられる。中でも得られるエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物の耐熱性が向上することから無水マレイン酸が好ましい。
【0013】
エチレン−酢酸ビニル共重合体中の不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体の量は、耐熱性が向上することから0.01〜2.0重量%が好ましく、0.1〜1.0重量%がより好ましい。
【0014】
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体中の酢酸ビニルは部分的に鹸化されていても構わない。
【0015】
本発明で用いる有機化層状粘土は、層状粘土の層間の陽イオンを有機イオンでイオン交換されたものであれば特に制限は無く、公知のものを用いることができる。中でも、得られる発泡体が寸法安定性に優れることから有機化層状粘土は有機オニウムイオン変性層状粘土であることが好ましい。
【0016】
有機イオンとしては、有機オニウムイオン等が挙げられる。有機オニウムイオンとしては、例えばアンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、スルホニウムイオン、イミダゾリウムイオン等が挙げられる。中でも得られる発泡体の寸法安定性が向上することからアンモニウムイオンが好ましい。
【0017】
アンモニウムイオンとしては特に制限は無く、例えばメチルアンモニウムイオン、ヘキシルアンモニウムイオン、オクチルアンモニウムイオン、2−エチルヘキシルアンモニウムイオン、ドデシルアンモニウムイオン、ラウリルアンモニウムイオン、オクタデシルアンモニウムイオン、ステアリルアンモニウムイオン、水素化タローアンモニウムイオン、ジオクチルジメチルアンモニウムイオン,トリオクチルアンモニウムイオン,トリメチルステアリルアンモニウムイオン、トリメチルオクタデシルアンモニウムイオン、トリオクチルメチルアンモニウムイオン、トリメチル水素化タローアンモニウムイオン、ジメチルオクタデシルベンジルアンモニウムイオン、ジメチルジオクタデシルアンモニウムイオン、ジステアリルジメチルアンモニウムイオン、水素化タロージメチルベンジルアンモニウムイオン、2−エチルヘキシル水素化タローメチルアンモニウムイオン、ジ水素化タローメチルアンモニウムイオン、ジ水素化タロージメチルアンモニウムイオン、ジヤシアルキルジメチルアンモニウムイオン等のアルキルアンモニウムイオン;ジヒドロキシエチルタローアンモニウムイオン、ジヒドロキシエチルメチルタローアンモニウムイオン、ジヒドロキシエチル水素化タローアンモニウムイオン、ジヒドロキシエチルメチル水素化タローアンモニウムイオン、ジヒドロキシエチルオレイルアンモニウムイオン、ジヒドロキシエチルメチルオレイルアンモニウムイオン、ヤシアルキルメチルビス(ヒドロキシエチル)アンモニウムイオン等のヒドロキシアルキルアンモニウムイオン;ポリオキシプロピレンメチルジエチルアンモニウムイオン等のポリオキシアルキルアンモニウムイオンを挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0018】
中でも得られる発泡体の寸法安定性が特に向上することから、トリオクチルメチルアンモニウムイオン、ジメチルオクタデシルベンジルアンモニウムイオン、ジメチルジオクタデシルアンモニウムイオン、ジ水素化タロージメチルアンモニウムイオン、ジヒドロキシエチルメチル水素化タローアンモニウムイオンが好ましく、トリオクチルメチルアンモニウムイオン、ジメチルジオクタデシルアンモニウムイオン、ジ水素化タロージメチルアンモニウムイオン、ヤシアルキルメチルビス(ヒドロキシエチル)アンモニウムイオン、ジヤシアルキルジメチルアンモニウムイオン、ジヒドロキシエチルメチル水素化タローアンモニウムイオンが特に好ましい。
【0019】
層状粘土としては、例えばモンモリロナイト、ベントナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト等のスメクタイト;合成マイカ等のマイカ;バーミキュライト、パイロフィライト等が挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。中でも得られる発泡体の寸法安定性が向上することからモンモリロナイト、合成マイカが好ましく、合成マイカが特に好ましい。
【0020】
本発明で用いる有機化層状粘土は、得られる発泡体の寸法安定性が向上することから、450℃に加熱した際の熱減量が20〜60重量%であることが好ましく、25〜45重量%であることが更に好ましい。熱減量は、有機化層状粘土を室温から10℃/分で450℃まで加熱した際の、加熱前の重量と加熱後の重量の差をいう。
【0021】
本発明で用いる有機化層状粘土の量は、エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部に対し0.1〜50重量部であり、0.5〜30重量部がより好ましく、1〜10重量部が特に好ましい。0.1重量部未満では得られる発泡体の寸法安定性が不充分である。50重量部を超えると得られる発泡体が硬くなってしまう。
【0022】
本発明で用いる有機化層状粘土は、例えば層状粘土の層間の陽イオンを有機オニウムイオンでイオン交換することにより得られる。
【0023】
具体的には、例えば層状粘土を水中に分散させた後、有機塩を添加し撹拌後に生成物を固液分離、洗浄して副生塩類を除去した後、乾燥、粉砕して得ることができる。
【0024】
有機塩としては、有機オニウム塩等が挙げられる。有機オニウム塩としては、例えばアンモニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、イミダゾリウム塩等が挙げられる。アンモニウム塩としては、例えばトリオクチルメチルアンモニウム塩、ジメチルジオクタデシルアンモニウム塩、ジ水素化タロージメチルアンモニウム塩、ヤシアルキルメチルビス(ヒドロキシエチル)アンモニウム塩、ジヤシアルキルジメチルアンモニウム塩、及び/又はジヒドロキシエチルメチル水素化タローアンモニウム塩等のアンモニウム塩を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0025】
有機イオンの対イオンとしては、例えば塩化物イオン、臭化物イオン、フッ化物イオン、硝酸イオン、酢酸イオン、水酸化物イオン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0026】
有機塩の量は、得られるエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物の耐熱性が優れることから、層状粘土100重量部に対して25〜150重量部が好ましく、30〜100重量部が更に好ましい。
【0027】
本発明で用いる発泡剤は、公知のものであれば特に制限はなく、例えば熱分解型発泡剤を用いることができる。熱分解型発泡剤としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物を加熱溶融した際に分解してガスを発生するものであれば特に制限はなく、有機系または無機系の化学発泡剤が使用でき、例えばアゾジカルボンアミド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、アゾヘキサヒドロベンゾニトリル、ジアゾアミノベンゼン等のアゾ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジド、ベンゼン−1,3−スルホニルヒドラジド、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルフォニルヒドラジド、ジフェニルオキシド−4,4’−ジスルフォニルヒドラジド、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、パラトルエンスルフォニルヒドラジド等のスルホニルヒドラジド化合物;N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’−ジニトロソ−N,N’−ジメチルフタルアミド等のニトロソ化合物;テレフタルアジド、p−t−ブチルベンズアジド等のアジド化合物;重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム等の無機化合物等が挙げられ、これらの少なくとも一種が用いられる。中でも効率的に高倍率の発泡体が得られることからアゾジカルボンアミド、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)が好ましい。
【0028】
本発明で用いる発泡剤の添加量としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部に対して2〜30重量部であり、2〜20重量部が好ましい。
【0029】
本発明のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物は、発泡倍率の高い発泡体が得られることから架橋剤をさらに含むことが好ましい。架橋剤としては、例えば熱分解法など簡易な方法により架橋できる有機過酸化物が好ましく用いられ、有機過酸化物としては、例えばハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシエステル類等を用いることができ、中でも1分半減期を与える分解温度が90℃を越えるものが好適である。ここで、有機過酸化物を熱分解させた際に残存量が初期値の半分に減少するまでの時間を半減期といい、1分半減期温度とは半減期が1分になる温度を意味する。
【0030】
そのような有機過酸化物としては、例えばジクミルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキシフタレート、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、2,5−ジメチルヘキサン、2,5−ジハイドロパーオキサイド、3−ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ジクミルパーオキサイド、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルパーオキシベンゾエート;ベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。
本発明で用いることが好ましい架橋剤の量は、得られる発泡体の発泡倍率と発泡成形性の観点から、エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部に対して0.1〜3重量部が好ましく、0.3〜2.0重量部がより好ましい。
【0031】
本発明のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物は、得られる発泡体の寸法安定性が向上することから架橋助剤をさらに含むことが好ましい。
【0032】
架橋助剤としては、例えばトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等の3官能の架橋助剤の他、(メタ)アクリルエステル(例、NKエステル等)の単官能又は2官能の架橋助剤等を挙げることができる。中でも、トリアリルシアヌレートおよびトリアリルイソシアヌレートが好ましく、特にトリアリルイソシアヌレートが好ましい。
【0033】
架橋助剤の量は、架橋工程におけるガスの発生を抑制できることからエチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部に対して0.1〜5重量部が好ましく、1.0〜2.0重量部がより好ましく、0.1〜0.5重量部が特に好ましい。
【0034】
本発明のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物は、熱分解型発泡剤の分解温度を低下させる目的で発泡助剤を用いることもでき、発泡助剤としては、例えば酸化亜鉛、硝酸亜鉛、フタル酸鉛、炭酸鉛、三塩化リン酸塩、三塩基性硫酸鉛等の無機塩;亜鉛脂肪酸石鹸、鉛脂肪酸石鹸、カドミウム脂肪酸石鹸等の金属石鹸;ほう酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸等の酸類;尿素;エタノールアミン;グルコース;グリセリン等が挙げられる。
【0035】
また、本発明のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物は、熱分解型発泡剤の分解温度を上げる目的で発泡抑制剤を用いることもできる。発泡抑制剤としては、例えばマレイン酸、フマル酸、フタル酸、無水マレイン酸、無水フタル酸等の有機酸;ステアロイルクロリド、フタロイルクロリド等のハロゲン化有機酸;ハイドロキノン等の多価アルコール;脂肪酸アミン;アミド;オキシム;イソシアネート等の含有機硫黄化合物;亜リン酸塩化物等のリン酸塩;ジブチルスズマレート、塩化スズ、硫酸スズ等のスズ化合物;その他ヘキサクロロペンタジエン等が挙げられる。
【0036】
本発明のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物は、着色を抑制できることから酸化防止剤をさらに含むことが好ましい。
【0037】
酸化防止剤としては、何ら制限はなく、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、ビタミンE系酸化防止剤等が挙げられる。
【0038】
これらの酸化防止剤は、より大きな効果を発現するために2種以上を併用して用いることができる。
【0039】
これらの酸化防止剤の中でも、着色を抑制する効果が大きいことから、フェノール系酸化防止剤である2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)が好ましい。
【0040】
本発明で含むことが好ましい酸化防止剤の量は、得られる発泡体の着色を抑制できることから、エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部に対して0.1〜2000ppm添加することが好ましく、1〜1000ppmがさらに好ましく、10〜500ppmが特に好ましい。
【0041】
本発明のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で各種ポリマー、各種添加剤を含有していても良い。
【0042】
各種ポリマーとしては、何ら制限はなく、例えば、ポリエチレン、エチレン系共重合体、ポリプロピレン、ポリプロピレン系共重合体、さらにこれらポリオレフィン樹脂の塩素化物等を挙げることができる。さらに詳しくは、ポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン等が挙げられる。エチレン系共重合体としては、例えば、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−ビニルエステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体等が挙げられ、具体的には、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−4−メチルペンテン−1樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体の鹸化物、エチレン−ビニルアルコール樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体等が挙げられる。ポリプロピレン系共重合体としては、例えば、ポリプロピレンブロックコポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマー等が挙げられる。
【0043】
各種添加剤としては、例えば、染料、有機顔料、無機顔料、無機補強剤、可塑剤、アクリル加工助剤等の加工助剤、紫外線吸収剤、光安定剤、滑剤、ワックス、結晶核剤、可塑剤、離型剤、加水分解防止剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、防徽剤、防錆剤、イオントラップ剤、難燃剤、難燃助剤、無機充填材、有機充填材等を挙げることができる。
【0044】
本発明のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物を得る方法は、本発明のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物を製造することが可能であればいかなる方法も用いることが可能であり、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体、有機化層状粘土、発泡剤、架橋剤、架橋助剤等を、例えば溶液混合、溶融混合等の混合方法により製造することが可能であり、中でも効率良く混合できることから溶融混合が好ましく用いられる。
【0045】
溶融混合には、例えばバンバリーミキサー(ファレル社製)、加圧ニーダー((株)森山製作所製)、インターナルミキサー(栗本鉄工所製)、インテンシブミキサー(日本ロール製造(株)製)等の機械加圧式混練機;ロール成形機、単軸押出し機、二軸押出し機等の押出し成形機;等のプラスチックまたはゴムの加工に使用される混練成形機が使用できる。溶融混合する際の温度は、熱分解型発泡剤、有機過酸化物が分解しない温度であることが好ましく、例えば80〜200℃が好ましく、特に好ましくは120〜180℃である。特に押出機を使用する際には、押出機のダイから吐出する溶融樹脂組成物の温度が120℃以上180℃以下になるように温度設定することが好ましい。
【0046】
本発明の発泡体は、エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部及び有機化層状粘土0.1〜50重量部からなる発泡体であって、ゲル分率(120℃、24時間におけるp−キシレン抽出直後、80℃で24時間減圧乾燥した後の残分量)が10〜90重量%、好ましくは30〜85重量%であり、式(1)で示される膨潤度が30以下、好ましくは25以下であれば特に制限は無い。
【0047】
【数1】

ゲル分率が10重量%未満では発泡成形時にガスが樹脂から散逸してしまい発泡体にならないことがある。ゲル分率が90重量%を超えると気泡の成長が抑制され高発泡体にならないばかりでなく、発泡体の表面にひび割れが生じることがある。
【0048】
また、膨潤度が30を超えると得られる発泡体の寸法変化が大きくなる。
【0049】
また、本発明の発泡体は、柔軟性、強靭性に優れることから発泡倍率が2以上であることが好ましい。
【0050】
本発明の発泡体を得る方法としては、例えば放射線架橋発泡法、加熱架橋発泡法を挙げることができる。放射線架橋発泡法は、本発明のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物を所望の形状に成形した後、放射線を照射して架橋させるとともに加熱して架橋発泡させる方法である。一方、加熱架橋発泡法は、本発明のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物に本発明で用いることが好ましい有機過酸化物を混合して所望の形状に成形した後、更に加熱し有機過酸化物を分解させて架橋し、ついで熱分解型発泡剤を分解させて架橋発泡させる方法である。具体的には、例えば本発明のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物を金型に充填し、一定時間加圧下に140〜170℃で加熱し、熱分解型発泡剤及び有機過酸化物を完全に分解させ、除圧することにより発泡体を得ることができる。
【0051】
本発明の発泡体は、例えば床材、自動車内装材、パイプ、電線被覆、パネル等に用いることができる。ベルト類、ホース類;自動車用、鉄道用、産業機械用、建築土木用等の各種緩衝材;工業用ロール、事務機用ロール、OA機器用ロール、自動化機器用ロール;化粧シート、静電防止シート、ルーフィング用シート等のシート;携帯電話のケース、電化製品等のリモコンケース等のパッキン;太陽電池、シーリング材、防水材、オイルシール、メカニカルシール、成形パッキン、グランドパッキン等の運動用シール;Oリング、ガスケット等の固定用シール;シリンジ用ガスケット、マスク、手袋、キャップ容器、レインウェア、エアバック、フレキシブルコンテナ、スポーツ床、フェンス用緩衝ゴム、舗装用ブロック、ウェザーストリップ、建築用ガスケット、手すり、滑り止め、電線、コード、ワイパーブレード、玩具、靴、サンダル、足ゴム、チューブ、電化製品のパッキン、工業部品等、ゴルフクラブ,テニスラケット,スキーポール等のグリップ部分、シーラント、シート、電気部品、電子部品、精密機器,精密加工機類の緩衝材、スポーツ用品、日用雑貨、座席シート等に使用できる。
【発明の効果】
【0052】
本発明で得られる発泡体は、高温状態に置かれても寸法安定性に優れており、床材、自動車内装材、各種緩衝材、パイプ等に有用である。
【実施例】
【0053】
以下に実施例にもとづき本発明をさらに詳しく説明するが、これらは本発明の理解を助けるための例であって本発明はこれらの実施例により何等の制限を受けるものではない。尚、用いた試薬等は断りのない限り市販品を用いた。
[試薬等]
実施例、比較例の中で用いた試薬等は、以下の略号を用いて表す。
【0054】
<エチレン−酢酸ビニル共重合体>
EVA−1;ウルトラセン(登録商標)751(酢酸ビニル含量28重量%、MFR=5.7g/10分)、東ソー株式会社製
EVA−2;ウルトラセン(登録商標)626(酢酸ビニル含量15重量%、MFR=3.0g/10分)、東ソー株式会社製
EVA−3;ウルトラセン(登録商標)543(酢酸ビニル含量10重量%、MFR=1.3g/10分)、東ソー株式会社製
EVA−4;ウルトラセン(登録商標)YX13(酢酸ビニル含量32重量%、MFR=1.0g/10分)、東ソー株式会社製
<有機化層状粘土>
有機化モンモリロナイト−1;Nanomer(登録商標)I.44P(ジ水素化タロージメチルアンモニウムイオン変性モンモリロナイト、450℃熱減量;35wt%)、Nanocor社製
有機化モンモリロナイト−2;Cloisite(登録商標)30B(ジヒドロキシエチルメチル水素化タローアンモニウムイオン変性モンモリロナイト、450℃熱減量;25wt%)、SOUTHERN CLAY PRODUCTS社製
<層状粘土>
モンモリロナイト−1;Cloisite(登録商標)Na(モンモリロナイト)、SOUTHERN CLAY PRODUCTS社製
マイカ−1;ソマシフ(登録商標)ME−100(層間にナトリウムイオンを有する膨潤性合成フッ素マイカ)、コープケミカル株式会社製
<発泡剤>
発泡剤−1;重炭酸ナトリウム
発泡剤−2;アゾジカルボンアミド
<架橋剤>
架橋剤−1;ジクミルパーオキサイド(日本油脂製、パークミルD、1分半減期温度175℃)
架橋剤−2;ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(日本油脂製、パーブチル−P、1分半減期温度175℃)
<架橋助剤>
架橋助剤−1:トリアリルイソシアヌレート(日本化成株式会社製)
<発泡助剤>
発泡助剤−1;酸化亜鉛(堺化学工業株式会社製)
<酸化防止剤>
BHT(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール);スミライザー(登録商標)BHT、住友化学工業株式会社製
AO−60(ペンタエリスリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート));アデカスタブ(登録商標)AO−60、旭電化工業株式会社製
[物性試験法]
<発泡体の加熱寸法変化測定>
発泡体の加熱寸法変化はJIS K 6767に従い、60℃で測定した。
<架橋発泡体のゲル分率および膨潤度>
架橋発泡体を裁断して0.5g秤量する。この物を120℃、24時間、50mlのP―キシレン中に保持した後、200メッシュの金網を通過させ、その残存物を80℃、24時間、100mmHgで乾燥し、減圧乾燥後の抽出残査を重量百分率で算出して求めた。また膨潤度は、120℃、24時間におけるp−キシレン抽出直後の残分量と、120℃、24時間におけるキシレン抽出直後の残分量を測定し、式(1)より計算した。
【0055】
<発泡倍率>
発泡体から10cm×10cmを切り出し、厚みt(cm)と重量W2(g)を測定し、次式で見掛密度を算出する。
【0056】
見掛密度(g/cm)=W2/(10×10×t)
発泡倍率は、この見掛密度より、次式で求められる。
【0057】
発泡倍率=1/見掛密度
<MFR>
エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物のMFRは、JIS K6924−1(1997年版)に準拠して測定した。
【0058】
参考例1
水500mlに合成マイカ−1を15g分散させた。これに、水150mlにヤシアルキルメチルビス(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムクロライドを5.4g溶解した水溶液を撹拌しながら添加し2時間撹拌した。生成物を固液分離、洗浄して副生塩類を除去した後、乾燥、粉砕しアンモニウムイオン変性合成マイカを得た。これを有機化合成マイカ−1とする。
【0059】
450℃に加熱された際の熱減量は26%であった。
【0060】
参考例2
ヤシアルキルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムクロライド5.4gの代わりに、ジメチルジ水素化タローアンモニウムクロライド10.2gを使用した以外は参考例1と同様にしてアンモニウムイオン変性合成マイカを得た。これを有機化合成マイカ−2とする。
【0061】
450℃に加熱された際の熱減量は40%であった。
【0062】
参考例3
エチレン−酢酸ビニル共重合体EVA−1を100重量部、無水マレイン酸を1重量部、架橋剤−2をエチレン−酢酸ビニル共重合体に対して100ppmの比率でドライブレンドしたものを二軸押出機(ラボプラストミル、株式会社東洋精機製作所製)を用いて溶融混練し、エチレン−酢酸ビニル共重合体を無水マレイン酸変性した。無水マレイン酸の量は0.9重量%でありMFRは2.4g/10分であった。本無水マレイン酸変性EVAをEVA−MAHとする。
【0063】
実施例1
エチレン−酢酸ビニル共重合体としてEVA−1を100重量部、有機化層状粘土として有機化モンモリロナイト−1を5重量部、発泡剤として発泡剤−1を5重量部、架橋剤として架橋剤−1を0.5重量、酸化防止剤としてBHTをEVA−1に対して500ppmの比率で配合し、ミキシングロールを用いて90℃で混練してエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物を得た。
【0064】
得られたエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物を厚さ20mmの90×90mmの加圧密閉金型中に充填し、200kgf/cmの外圧をかけて、140℃で20分間加熱した後、除圧して、均一な微細な気泡を有した発泡体を得た。
【0065】
得られた発泡体のゲル分率、膨潤度、加熱収縮率、発泡倍率を評価した結果を表1に示す。
【0066】
【表1】

得られた発泡体は、表面が均一で、微細セルを有し、加熱収縮率の小さな発泡体であった。
【0067】
実施例2〜4
表1に示すエチレン−酢酸ビニル共重合体、有機化層状粘土、発泡剤、架橋剤、架橋助剤、発泡助剤、酸化防止剤を用いたこと以外は実施例1と同様にしてエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物を作製し、その後発泡体を成形し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0068】
実施例5
エチレン−酢酸ビニル共重合体としてEVA−3を100重量部、有機化層状粘土として有機化合成マイカ−1を1重量部、発泡剤として発泡剤−2を15重量部、架橋剤として架橋剤−1を0.8重量、発泡助剤として発泡助剤−1を0.5重量部、酸化防止剤としてAO−60をEVA−3に対して500ppmの比率で配合し、ミキシングロールを用いて100℃で混練してエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物を得た。
【0069】
得られたエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物を厚さ20mmの90×90mmの加圧密閉金型中に充填し、200kgf/cmの外圧をかけて、165℃で20分間加熱した後、除圧して、均一で微細な気泡を有した発泡倍率10倍の一段発泡工程での発泡体を得た。この発泡体を180℃に設定したオーブンに入れて、さらに20分間常圧で加熱発泡した。
【0070】
得られた発泡体のゲル分率、膨潤度、加熱収縮率、発泡倍率を評価した結果を表1に示す。
【0071】
得られた発泡体は、表面が均一で、微細セルを有し、加熱収縮率の小さな発泡体であった。
【0072】
比較例1〜5
表1に示すエチレン−酢酸ビニル共重合体、有機化層状粘土、発泡剤、架橋剤、架橋助剤、発泡助剤、酸化防止剤を用いたこと以外は実施例1と同様にしてエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物を作製し、その後発泡体を成形し、評価した。評価結果を表1に示す。
【0073】
比較例1では、有機化層状マイカを添加していないため加熱収縮率が大きかった。
【0074】
比較例2では、発泡剤の量が少なすぎたため発泡倍率が上がらなかった。
【0075】
比較例3では、発泡剤の量が多すぎたためガス抜けして良好な発泡体が得られなかった。
【0076】
比較例4では、層状粘土を有機化していないため耐熱性が低く、加熱収縮率が大きかった。
【0077】
比較例6
エチレン−酢酸ビニル共重合体としてEVA−2を100重量部、有機化層状粘土として有機化モンモリロナイト−1を60重量部、発泡剤として発泡剤−1を5重量部、架橋剤として架橋剤−1を0.5重量部比率で配合し、内容量100ccのミキサー(ラボプラストミル、東洋精機製作所製)に充填し、110℃で溶融混合したが、有機化層状粘土の分散不良が見られた。
【0078】
得られたエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物を厚さ20mmの90×90mmの加圧密閉金型中に充填し、200kgf/cmの外圧をかけて、140℃で20分間加熱した後、除圧して発泡体を得た。得られた発泡体は部分的にガス抜けしたものあった。
【0079】
実施例6
エチレン−酢酸ビニル共重合体としてEVA−1を100重量部、有機化層状粘土として有機化モンモリロナイト−1を5重量部、発泡剤として発泡剤−1を5重量部の比率で配合し、ミキシングロールを用いて90℃で混練してエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物のシートを得た。
【0080】
得られたエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物のシートを25℃、窒素雰囲気下、25kGyで電子線を照射し架橋し、140℃に設定したオーブンに入れて、20分間常圧で加熱発泡した。
【0081】
得られた発泡体のゲル分率、膨潤度、加熱収縮率、発泡倍率を評価した結果を表1に示す。
【0082】
得られた発泡体は、表面が均一で、微細セルを有し、加熱収縮率の小さな発泡体であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部に対し、有機化層状粘土0.1〜50重量部及び発泡剤2〜30重量部からなることを特徴とするエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物。
【請求項2】
更に架橋剤0.1〜3重量部を含んでなることを特徴とする請求項1に記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物。
【請求項3】
更に架橋助剤を含んでなることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかの項に記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物。
【請求項4】
有機化層状粘土が有機オニウムイオン変性層状粘土であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかの項に記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物。
【請求項5】
有機オニウムイオン変性層状粘土がアンモニウムイオン変性層状粘土であることを特徴とする請求項4に記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物。
【請求項6】
アンモニウムイオン変性層状粘土がアンオモニウムイオン変性モンモリロナイト及び/又はアンモニウムイオン変性合成マイカであることを特徴とする請求項5に記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物。
【請求項7】
エチレン−酢酸ビニル共重合体100重量部及び有機化層状粘土0.1〜50重量部からなる発泡体であって、ゲル分率(120℃、24時間におけるp−キシレン抽出直後、80℃で24時間減圧乾燥した後の残分量)が10〜90重量%であり、式(1)で示される膨潤度が30以下であることを特徴とする発泡体。
【数1】

【請求項8】
発泡倍率が2以上であることを特徴とする請求項7に記載の発泡体。
【請求項9】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物を放射線架橋発泡してなることを特徴とする請求項7又は請求項8のいずれかの項に記載の発泡体。
【請求項10】
請求項1〜請求項6のいずれかに記載のエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂組成物を加熱架橋発泡してなることを特徴とする請求項7〜請求項9のいずれかの項に記載の発泡体。

【公開番号】特開2011−111566(P2011−111566A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270576(P2009−270576)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】