説明

エチレンの2段重合において短鎖分岐の分布を狭める方法および生成物

第1反応器においてエチレンホモポリマーを生成させ、第2反応器において短鎖分岐分布が狭められたエチレンコポリマーを製造する改良2段重合法。コポリマーの狭められた短鎖分岐分布は、第2反応器に特定のシラン変性剤を含有させることによって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メルトインデックスの高いエチレンホモポリマーおよび短鎖分岐の分布が狭められたメルトインデックスの低いエチレンコポリマーを別々の重合帯域で製造することによって物理的性能が改良されたポリエチレン樹脂を得る改良方法に関する。短鎖分岐の分布に所望の修正を施すために共重合反応器に特定のアルコキシシラン変性剤が導入される。
【背景技術】
【0002】
ヘキサンやヘプタン等の不活性炭化水素媒体中に分散されたチーグラー型触媒を用いてエチレンを2段重合させる方法が知られている。米国特許第4357448号には、第1重合帯域で生成したポリエチレンを、触媒、溶媒、および未反応のエチレンと一緒に第2重合帯域に供給する方法が記載されている。第2重合反応器には追加のエチレンおよびコモノマーが添加され、そして最終生成物が回収される。この重合は、グリニャール試薬を式
【0003】
【化1】

【0004】
(式中、Rは、アルキル、アリール、アラルキル、アルコキシ、またはアリールオキシ基を表し、aは、0、1または2であり、bは、1、2または3であり、a+bは、3以下である)のヒドロポリシロキサンまたは有機基およびヒドロキシル基を含むケイ素化合物と反応させることによって得られる反応生成物を、アルミニウムアルコキシド、アルミニウムアルコキシハロゲン化合物、またはこのアルミニウム化合物を水と反応させることによって得られる反応生成物の存在下または非存在下で、チタンまたはバナジウムの含ハロゲン化物と反応させることによって得られる特定の固体触媒成分ならびに有機アルミニウム化合物を含む触媒活性の高い触媒を用いて比較的低い温度および圧力で実施される。
【0005】
このような方法によって製造された樹脂は、加工性および押出成形性が良好であるため、フィルム、ブロー成形品、パイプ等の製造に非常に有用である。
【0006】
水素を分子量調節剤として使用し、また、第1ステップにおいて生成するポリマー対第2ステップにおいて生成するポリマーの比率を変化させるこのような方法において、最終樹脂生成物の分子量分布を制御することができる能力は非常に有利であり、製造に多様性を与えるものである。第1ステップにおいてエチレンホモポリマーを生成させ、第2ステップにおいてエチレンコポリマーを生成させる上述の種類の2段法において、第2ステップにおいて生成するコポリマーの短鎖分岐の分布を狭めることができればより一層有利であろう。短鎖分岐の分布が狭くなれば、メタロセン樹脂の特徴により近い特徴を持つ樹脂を製造することができるであろう。
【0007】
遷移金属触媒の調製には様々なシラン化合物が利用されている。米国特許第6171993号には、例えば、有機マグネシウム化合物と化学処理された担体との接触生成物を、遷移金属化合物と接触させる前に様々なヒドロカルビルアルコキシシランと反応させることが開示されている。上述のように調製された触媒は、エチレンおよびヘキセン−1またはブテン−1を気相法または液相法のいずれかで共重合させるために従来のアルミニウム含有共触媒と一緒にされる。
【0008】
様々な有機ケイ素化合物はまた、主としてプロピレンおよびエチレンの重合においてアイソタクティシティーを修正するための選択性制御剤として、チーグラー−ナッタ触媒と一緒に用いられている。このような方法は、PCT国際公開第WO2005/005489A1において詳しく検討されている。ここに開示されている方法では、プロピレン、またはプロピレンとエチレンとの混合物を重合するために特定の混合物(好ましくは3種のシラン化合物を含む)を利用している。
【0009】
米国特許第6642326号には、ボラアリールシングルサイト触媒の活性を高めるためにヒドロシランおよびポリシロキシヒドロシラン変性剤を使用することが開示されている。
【0010】
米国特許第5731392号には、気相流動床オレフィン重合反応器にオルトケイ酸テトラアルキルを添加することによって静電気を抑制し、ポリマー材料の反応器壁への堆積を低減することが開示されている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、短鎖分岐の分布が狭められたポリエチレン樹脂を製造するための改良された2段法を提供するものである。この2段重合法においては、第1反応器においてエチレンホモポリマーを生成させ、第2反応器においては短鎖分岐の分布が狭められたエチレンコポリマーを製造する。この2段法の共重合段階には、コポリマー樹脂の短鎖分岐の分布を狭めるための特定のアルコキシシラン変性剤、すなわちモノアルキルトリアルコキシシランが含まれる。
【0012】
より具体的には、本発明は、エチレンホモポリマーが第1重合反応器で生成し、エチレン−α−オレフィンコポリマーが第2重合反応器で生成する、改良された2段法であり、この重合は、高活性遷移金属含有固体触媒および有機アルミニウム共触媒を用いて不活性炭化水素媒体中で実施され、これらホモポリマーおよびコポリマーを一緒にすることによって最終ポリエチレン樹脂生成物が得られる。この改良には、第2重合反応器内における共重合を、不活性炭化水素を基準として1〜100ppmの式
2Si(OR33
(式中、R2は、C110アルキル基であり、R3は、C15アルキル基である)のモノアルキルトリアルコキシシランの存在下で、密度が0.940g/cm3以下のコポリマーが生成するように反応器条件および供給量を維持しながら実施することが含まれる。
【0013】
本発明の特に有用な態様においては、モノアルキルトリアルコキシシランはメチルトリエトキシシランである。このシラン変性剤は、第1反応器に添加し、そして第1反応器で形成したホモポリマー生成物と一緒に第2反応器に移送してもよいが、シラン変性剤を第2反応器内にのみ存在させる方が普通である。
【0014】
本発明の改良方法によって生成するポリエチレン樹脂は、密度が0.930〜0.975g/cm3の範囲にあり、メルトインデックスが0.001〜80g/10分の範囲にある。この生成物のコポリマー成分は、好ましくは、メルトインデックスが0.001〜10g/10分、密度が0.915〜0.940g/cm3であり、低短鎖分岐体を90パーセント以上含む、エチレン−ブテン−1、エチレン−ヘキセン−1、またはエチレン−オクテン−1コポリマーである。最終ポリエチレン樹脂生成物中のコポリマーの量は、35〜65重量パーセントの範囲にある。本方法によって製造される特に有用なポリエチレン樹脂は、密度が0.930〜0.954g/cm3であり、メルトインデックスが0.01〜2.5g/10分である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
ホモポリマーおよびコポリマー成分を含み、短鎖分岐の分布が狭められた改良ポリエチレン樹脂が得られる本方法は、共重合段階において特定のアルコキシシラン変性剤を存在させる2段法である。
【0016】
この方法は、第1重合帯域においてエチレンホモポリマー樹脂を生成させ、そして第2重合帯域においてエチレン−α−オレフィンコポリマー樹脂を生成させることと、これら樹脂を所望の比率で合わせることによって最終ポリエチレン樹脂生成物を得ることとを含む。この重合は、好ましくは不活性炭化水素媒体中におけるスラリー法で、並列または直列式に連結されていてもよい別々の反応器において実施される。最も典型的には、反応器は直列に連結されており、その場合は、第1反応器で生成したホモポリマーが触媒、溶媒、および未反応のエチレンと一緒に第2反応器に供給され、ここにコモノマーおよび追加のエチレンが添加される。このような2段法は周知であり、米国特許第4357448号に記載されており、その詳細を参考文献として本明細書に援用する。好ましい運転方式はスラリー重合であるが、気相重合および超臨界媒体中で実施される重合も同様に可能である。
【0017】
予期せぬことに、特定の種類のシラン変性剤、すなわちモノアルキルトリアルコキシシランを第2共重合段階に含有させた場合、そこで生成するコポリマーの短鎖分岐(SCB)の分布を大幅に狭めることができることがここに見出された。SCB分布を修正できるこの能力により、既に非常に用途の広いこの方法を用いて特定の目標特性を有する樹脂を製造するさらなる他の手段が樹脂製造業者に提供される。
【0018】
本明細書において用いられる第1反応器または第1反応帯域という用語は、エチレンホモポリマーが生成するステップを指し、第2反応器または第2反応帯域という用語は、エチレンが1種以上のα−オレフィンコモノマーと共重合するステップを指す。この用語は、たとえ反応器が並列式に連結されている場合であっても適用される。第1反応器において形成される生成物は主としてホモポリマーであるが、特定の運転条件下においては第1反応器で少量のコポリマーが形成される場合もあることを当業者は理解するであろう。これは、例えば少量のコモノマーを含み得る再循環ガスを使用して第1反応器に供給する商業的な運転において起こり得る。
【0019】
重合は、従来のチーグラー型触媒を用いて不活性炭化水素媒体中で実施される。典型的には、両方の重合に同じ触媒が用いられるが、このことは、特に重合が並列で実施される場合は必須ではない。直列で実施される場合は、第2反応器に追加の触媒を添加することが望ましい場合もあり、この触媒は、第1反応器で用いられた触媒と同一であっても異なっていてもよい。
【0020】
本方法に使用することができる不活性炭化水素としては、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、イソブテン、およびこれらの混合物等の飽和脂肪族炭化水素が挙げられる。触媒は、典型的には、重合媒体として使用されたものと同じ炭化水素中に分散されて、反応器に計量添加される。
【0021】
第1および第2反応器における重合は、300psiまでの圧力およびl00℃までの温度で実施される。重合温度は、最も典型的には、60℃〜95℃、より好ましくは65℃〜85℃の間に維持される。圧力は、重合媒体としてヘキサンを用いる場合は、最も一般的には80psi〜200psi、より好ましくは80psi〜160psiの間である。分子量を調節するために反応器のいずれか一方または両方に水素を含有させてもよい。
【0022】
最終ポリエチレン樹脂生成物の特性は、各反応器で生成した個々のホモポリマーおよびコポリマー生成物の特性ならびにホモポリマーおよびコポリマー樹脂成分の比率に応じて変化する。しかしながら、最終ポリエチレン樹脂は、通常は、密度が0.925g/cm3以上であり、メルトインデックス(MI)が100g/10分未満である。本方法によって製造されるポリエチレン樹脂の密度は、好ましくは、0.930〜0.975g/cm3の範囲にあり、MIは、好ましくは、0.001〜80g/10分の範囲にある。フィルム、ブロー成形、および押出成形用途に特に有用なポリエチレン樹脂生成物は、密度が0.930〜0.954g/cm3であり、MIが0.01〜2.5g/10分である。本明細書にいう密度およびMIは、それぞれ、ASTM D 1505およびASTM D 1238−01、条件190/2.16に準じて測定されるものである。コポリマーは、典型的には、最終ポリエチレン樹脂生成物の35〜65重量%、より好ましくは45〜55重量%を構成するであろう。
【0023】
本方法を普通に実施する場合は、主としてエチレンホモポリマーである密度がより高くMIがより高いポリマーが第1反応器で生成し、密度がより低くMIがより低いエチレン/ブテン−1、エチレン/ヘキセン−1、またはエチレン/オクテン−1コポリマーが第2反応器で生成する。これを達成するために第1反応器で用いられる水素対エチレンのモル比は1〜10であり、一方、第2反応器で用いられる水素対エチレンのモル比は0.01〜1である。直列式で運転する場合に第2反応器内において所望の水素:エチレン比を達成するためには、ホモポリマーを移送する前に水素を排出することが必要な場合もある。これは、2つの反応器の間に設けられたフラッシュタンクを用いることによって容易に達成することができる。
【0024】
第1反応器で生成するポリマーのMIおよび密度は、それぞれ1〜1000g/10分および0.955〜0.975g/cm3の範囲にある。一方、第2反応器で生成するコポリマーのMIおよび密度は、それぞれ0.001〜10g/10分および0.915〜0.940g/cm3の範囲にある。本発明の特に有利な実施態様においては、第2反応器で生成するコポリマーの密度は0.925〜0.938g/cm3であり、MIは0.01〜5g/10分である。
【0025】
重合に用いられる高活性触媒系は、遷移金属含有固体触媒成分および有機アルミニウム共触媒成分を含む。
【0026】
遷移金属含有固体触媒成分は、グリニャール試薬を式
【0027】
【化2】

【0028】
(式中、Rは、1価の有機基としてのアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシ、またはアリールオキシ基を表し、aは、0、1、または2であり、bは、1、2、または3であり、a+bは、3以下である)のヒドロポリシロキサンまたは有機基およびヒドロキシル基を含むケイ素化合物と反応させることによって得られる反応生成物を、アルミニウムアルコキシド、アルミニウムアルコキシハロゲン化物、またはこのアルミニウム化合物を水と反応させることによって得られる反応生成物の存在下または非存在下で、チタンまたはバナジウムの含ハロゲン化合物と反応させることによって得られる。
【0029】
有機アルミニウム共触媒は、一般式
AlR1n3-n
(式中、R1は、C1〜C8炭化水素基であり、Xは、ハロゲンまたはアルコキシ基であり、nは、1、2、または3である)に相当する。上述の種類の有用な有機アルミニウム化合物としては、トリエチルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムエトキシド等が挙げられる。
【0030】
本発明の改良方法に有用な上述の種類の高活性触媒系は周知であり、米国特許第4357448号に詳述されており、この内容を参考文献として本明細書に援用する。
【0031】
SCB分布が狭められたコポリマーの生成を可能にする本改良方法に必須の特徴は、第2反応器において特定のアルコキシシラン変性剤を利用することにある。予期せぬことに、第2反応器において密度が0.940g/cm3以下のコポリマーを生成させる場合、エチレンモノマー、コモノマー、触媒、共触媒、不活性炭化水素、ならびに場合によりエチレンホモポリマーおよび/または水素と一緒に共重合反応器にモノアルキルトリアルコキシシランを含有させることによって、コポリマーのSCB分布を大幅に狭めることが可能であることが認められた。より具体的には、本方法の第2段階においてモノアルキルトリアルコキシシラン変性剤を利用することによって、低SCB体の重量百分率が90パーセント以上であるコポリマーを生成させることが可能となる。
【0032】
SCB分布が狭くなることにより、典型的には、耐衝撃性が改良され、および/または環境応力亀裂耐性が改良されるなど、樹脂の特性が改良される。モノアルキルトリアルコキシシラン化合物は、好ましくは炭化水素で希釈されて第2反応器に添加されるが、直列運転を行う場合は、これを第1反応器に添加し、そしてホモポリマー、未反応のエチレン、触媒、および不活性炭化水素と一緒に第2反応器に移送してもよい。シラン変性剤を第1反応器に添加しても、ホモポリマーが影響を受けることはほとんどまたは全くない。
【0033】
本発明の改良方法に用いるのに好適なモノアルキルトリアルコキシシラン化合物は、一般式
2Si(OR33
(式中、R2は、C110アルキル基であり、R3は、C15アルキル基である)に相当する。メチルトリエトキシシラン(MTEOS)が特に有利である。第2反応器に存在するシラン変性剤の量は、不活性炭化水素を基準として1〜100ppmの範囲にあってもよく、より好ましくは、10〜50ppmの範囲である。
【0034】
短鎖分岐は、ヨウおよびガレスピーによる「ポリオレフィン特性解析のためのGPC−TREFにおける高感度分子量検出器を用いた新たな手法」(Polymer、第42巻、2001年、pp.8947〜8958)と題した記事に記載された温度上昇溶離分別(TREF)技法を用いて測定される。その手順は、SCB含有量が異なるポリマーを分離するために結晶化および再溶解法を利用するというものである。より具体的には、ポリマーを好適な溶媒中に溶解し、充填カラムに注入し、これをゆっくりと冷却する。冷却される間にSCBの程度が異なるポリマー画分が析出し、充填粒子を層状に被覆し、最も高度に分岐した画分が最後に析出してカラム内で最外層を形成する。次いで、このカラムを制御しながら加熱することによって溶離を行う。ここで、時間の経過に伴い温度が上昇すると、より高度に分岐した分子が先に溶出して、後になるほどSCBの程度が低い分子が溶出する。好適な検出手段、典型的には赤外検出器を利用することにより、溶出温度範囲全体に対するポリマー濃度をプロットすることによって、SCB分布曲線、すなわちTREF曲線を得ることができる。
【0035】
TREF曲線の幅はSCB分布を表している。ポリマーの密度が等しい場合、TREF曲線がより狭いことは、SCB分布がより狭い、すなわち、ポリマー鎖の短鎖分岐の量がより似通っていることを示す。
【0036】
第2反応器で生成するコポリマーのSCB分布、したがって、樹脂生成物全体のSCB分布を狭くすることができる能力は、本発明の方法に従ってエチレンおよびブテン−1を共重合させ、結果として得られたコポリマーのSCB分布を測定した以下に示す実施例によって実証される。これらの実施例は本発明をより十分に例示するものであるが、当業者は、本発明の精神および特許請求の範囲から逸脱しない変形形態を認識するであろう。
【実施例】
【0037】
実施例に報告する共重合に用いた触媒はすべて米国特許第4357448号の実施例1(a)および(b)に従い調製された遷移金属(Ti)含有固体触媒である。
【0038】
本発明による2段法の第2段階において製造されたコポリマーのSCB分布が予想外に大幅に狭められることを実証するために、上に定めた高活性Ti触媒を利用し、MTEOS変性剤の存在下でエチレンおよびブテン−1を共重合させた。共重合を行うために触媒スラリー(ヘキサン1リットル当たりTi0.00015モル)を調製して反応器に20ポンド毎時(pph)の速度で連続供給しながら、エチレン(26pph)、ブテン−1(3.52pph)、ヘキサン(118.5pph)、およびトリエチルアルミニウム共触媒1重量%を含むヘキサン溶液(0.24ガロン毎時(gph))も供給した。MTEOS800ppmwを含むヘキサン溶液を、反応器内のMTEOSがヘキサンの総重量を基準として12ppmを維持する速度で供給した。水素も反応器に供給し、気相空間の水素対エチレンのモル比が約0.29に維持されるようにした。圧力および温度をそれぞれ約82psigおよび74℃に維持した。上述の条件は、MIが約0.1g/10分、密度が0.940g/cm3未満のコポリマーが生成するように選択した。
【0039】
回収されたエチレン−ブテン−1コポリマーは、MIが0.11g/10分、密度が0.933g/cm3であり、MTEOS変性剤を添加せずに同じように生成したコポリマーと比較してSCB分布が大幅に狭くなっていた。SCB分布が狭まっていることは、TREF曲線の3つの異なる温度帯域で溶出されるコポリマーの重量百分率を比較することによって確認した。これらの3つの温度帯域(40℃未満、40℃〜85℃、および85℃〜110℃)はそれぞれ、高SCBコポリマー、中SCBコポリマー、および低SCBコポリマーが溶出される温度範囲に相当する。本発明においては、高SCBコポリマーを、総炭素原子1000個当たりの分岐鎖が50を超えるコポリマー分子として定義し、中SCBコポリマーを、総炭素原子1000個当たりの分岐鎖が10〜50であるコポリマー分子として定義し、低SCBコポリマーを、総炭素原子1000個当たりの分岐鎖が10未満であるコポリマー分子として定義する。
【0040】
本発明に従いMTEOS変性剤を用いて製造されたエチレン−ブテン−1コポリマーは、高SCBコポリマーを含んでおらず、また、中SCBコポリマーを4%しか含んでいなかった。コポリマーの96%は低SCB体であった。一方、MTEOSを反応器に添加せずに製造されたコポリマーは、低SCB体を82%しか含んでいなかった。残りの18%は中SCB体であった。上述のデータから、本発明の改良方法を用いることによってSCB分布が大幅に狭められることがはっきりと示される。
【0041】
これらの結果の予想外の性質を実証するために、他の広範に使用されているアルコキシシラン化合物(モノアルキルトリアルコキシシラン以外のもの)を用いて再度共重合を実施した。この比較例に使用したシラン化合物はシクロヘキシルメチルジメトキシシラン(CHMDS)であった。共重合は同一の条件および供給量を用いて実施した。CHMDS変性剤を用いて生成されたエチレン−ブテン−1コポリマーの方がはるかに広いSCB分布を有していた。比較用コポリマーは、高SCBコポリマーを含んでいなかったが、中SCBコポリマーが生成物の12%を構成し、中SCB体の量はわずか88%であった。
【0042】
より密度の高いコポリマーを生成させる場合は、MTEOSであっても他の慣用されているシランであっても似たような結果になることを鑑みれば、第2段反応器で生成するコポリマーのSCB分布を狭めることができる能力はさらに予想外である。このことを実証するために、MIが1g/10分を超え、密度が0.942g/cm3を超えるコポリマーを目指したことを除いて、上述の手順に従い、共重合を実施した。使用したシラン化合物には、MTEOS、CHMDS、ジメチルジメトキシシラン(DMDS)、ジsecブチルジメトキシシラン(DSBS)が含まれた。用いた供給量および条件は以下に示す通りであった。
【0043】
【表1】

【0044】
生成したコポリマーのMIはいずれも約2g/10分であり、密度はいずれも約0.943g/cm3であった。
【0045】
どのシラン化合物を用いても高SCBコポリマーは生成しなかった。各シランを用いて生成された低および中SCBコポリマーの重量百分率は以下に示す通りであった。
MTEOS−中9%/低91%
CHMDS−中9%/低91%
DMDS−中10%/低90%
DSBS−中10%/低90%
上のデータから、共重合反応器内でより高密度/より高MIのコポリマーを目指した場合は、試験に供したどのシランでもSCB分布が類似したものになるとともに、本発明の方法に従いより低密度のコポリマーを生成した際に達成された狭いSCB分布は、どのシランを用いても、MTEOSを用いてさえも得られなかったことが明らかである。
【0046】
反応器が直列式に連結されており、第1反応器で生成したホモポリマーを、コポリマーが生成する第2反応器に供給する2段連続運転の場合のように、PEホモポリマーが共重合反応器に存在している場合も同様に、SCB分布を狭めることが達成される。典型的には商業ベースで実施されるであろうこの様式の運転を模擬することを目的として、MIが約200g/10分、密度が約0.971g/cm3であるポリエチレンホモポリマーの粉末(速度約30pph)を、触媒、共触媒、ヘキサン、エチレン、ブテン−1、MTEOS、および水素(第1実施例に定めた速度)と一緒に共重合反応器に連続供給した。この方式の運転においても、基本的に同程度にSCB分布を狭めることが達成された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1重合反応器においてエチレンホモポリマーを生成させ、第2重合反応器においてエチレン−α−オレフィンコポリマーを生成させる2段法であって、重合が不活性炭化水素媒体中において高活性遷移金属含有固体触媒および有機アルミニウム共触媒を用いて実施され、前記ホモポリマーおよびコポリマーが最終ポリエチレン樹脂生成物を得るために一緒にされる、エチレン−α−オレフィンコポリマーの短鎖分岐の分布を狭めるための方法において、前記第2重合反応器における共重合を、不活性炭化水素を基準として1〜100ppmの式
2Si(OR33
(式中、R2は、C110アルキル基であり、R3は、C15アルキル基である)のモノアルキルトリアルコキシシランの存在下で、密度が0.940g/cm3以下のコポリマーが生成するように反応条件および供給量を維持しながら実施することを含む方法。
【請求項2】
前記第2重合反応器の反応条件および供給量を、密度が0.915〜0.940g/cm3でメルトインデックスが0.001〜10g/10分であるコポリマーが生成するように維持する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2重合反応器においてエチレンと共重合されるα−オレフィンコモノマーが、ブテン−1、ヘキセン−1、またはオクテン−1である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記モノアルキルトリアルコキシシランが、メチルトリエトキシシランである、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記モノアルキルトリアルコキシシランが、不活性炭化水素を基準として10〜50ppmの量で存在する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記不活性炭化水素がヘキサンである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1および第2重合反応器が直列に連結されており、前記モノアルキルトリアルコキシシランが、第1重合反応器に添加され、第1重合反応器において生成したエチレンホモポリマーと一緒に第2重合反応器に移送される、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記モノアルキルトリアルコキシシランが、前記第2重合反応器に直接添加される、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
密度が0.930〜0.975g/cm3の範囲にあり、メルトインデックスが0.001〜80g/10分の範囲にあり、コポリマー成分が、低短鎖分岐体を90パーセント以上含むエチレン−ブテン−1、エチレン−ヘキセン−1、またはエチレン−オクテン−1コポリマーである、請求項1に記載の方法によって製造されるポリエチレン樹脂。
【請求項10】
前記コポリマーの密度が0.915〜0.940g/cm3、メルトインデックスが0.001〜10g/10分であり、前記ポリエチレン樹脂を35〜65重量パーセント含む、請求項9に記載のポリエチレン樹脂。
【請求項11】
密度が0.930〜0.954g/cm3であり、メルトインデックスが0.01〜2.5g/10分である、請求項9に記載のポリエチレン樹脂。
【請求項12】
密度が0.925〜0.938g/cm3であり、メルトインデックスが0.01〜5g/10分であるコポリマーを45〜55重量パーセント含む、請求項11に記載のポリエチレン樹脂。

【公表番号】特表2009−501260(P2009−501260A)
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−521376(P2008−521376)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際出願番号】PCT/US2006/007499
【国際公開番号】WO2007/040595
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(501391331)エクイスター ケミカルズ、 エルピー (30)
【氏名又は名称原語表記】Equistar Chemicals,LP
【Fターム(参考)】