説明

エッチング装置

【課題】面内均一性の向上を図ることができる容量結合型のエッチング装置を提供する。
【解決手段】エッチング装置1は、真空槽10と、真空槽内にエッチングガスを供給するガス供給部10eと、真空槽内に配置されて、その上面に基板Sbが載置される平板状のステージ電極13と、ステージ電極13とプラズマ生成空間Sを介して対向する平板状の上部電極板17と、ステージ電極13に高周波電力を供給する高周波電源20と、直径がそれぞれ異なる3本の環状の磁気コイル31〜33から構成され、それらの磁気コイル31〜33の中心が同軸となるように真空槽10の上方に設けられるとともに、最も外側の磁気コイル31の直径が基板Sbの直径よりも大きく、中央の磁気コイル32の直径が基板Sbの直径以下であって、プラズマ生成空間Sに磁気中性線NLを生成する磁気コイル群30とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、シリコン基板の深堀り加工には、主にドライエッチングが用いられている。シリコンとフッ素の反応は自発的であることから、エッチングガスとして、SF、NF、COF、XeF等のフッ素系ガスが広く使用されている。
【0003】
ドライエッチング装置としては、容量結合型プラズマ源(Capacitively Coupled Plasma )を有する装置、誘導結合型プラズマ源(Inductively Coupled Plasma)を有する装置等があるが(特許文献1参照)、このうち、容量結合型のエッチング装置は、他の装置に比べ放電圧力が高く、エッチング速度の向上に寄与するフッ素ラジカルを高い密度で生成できることができるといった利点を有するために多用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−141116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、容量結合型のエッチング装置においては、プラズマの位置や形状を制御することが困難であって、プラズマ分布は基板中央部で密となり、基板中央部を除く基板エッジ部で疎となる。その結果、基板の径方向におけるエッチング速度の均一性が低下するといった問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、面内均一性の向上を図ることができる容量結合型のエッチング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、真空槽と、前記真空槽内にエッチングガスを供給するガス供給部と、前記真空槽内に配置されて、その上面に基板が載置される平板状の第1電極と、前記第1の電極とプラズマ生成空間を介して対向する平板状の第2電極と、前記第1電極又は前記第2電極に高周波電力を供給する高周波電源と、直径がそれぞれ異なる3本の環状の磁気コイルから構成され、それらの磁気コイルの中心が同軸となるように前記真空槽の上方に設けられるとともに、最も外側の磁気コイルの直径が前記基板の直径よりも大きく、中央の前記磁気コイルの直径が前記基板の直径以下であって、前記プラズマ生成空間に磁気中性線を生成する磁場発生手段とを備えたことを要旨とする。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、磁気中性線を生成する磁場発生手段は、最も外側の磁気コイルが基板の直径よりも大きな直径を有し、中央の磁気コイルは基板の直径以下の直径を有する。この構成により、プラズマ生成空間内に生成される磁気中性線は、その直径が基板の直径とほぼ同じか若干小さくなるため、磁気中性線は基板中央部を除く基板エッジ部の上方に位置することとなる。このため、平板状の電極を有するエッチング装置においても、基板エッジ部におけるプラズマ密度を高めることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記各磁気コイルは、前記真空槽の上壁部に接して配置されていることを要旨とする。
請求項2に記載の発明によれば、各磁気コイルは、真空槽の上壁部に接して配置されている。このため、磁気コイルと基板との相対距離が短くなるため、磁気中性線の位置を基板表面近傍に近づけ、基板表面付近のプラズマ密度を高めることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記各磁気コイルは、その中心軸が前記基板の中心軸と同軸となるように配置されていることを要旨とする。
請求項3に記載の発明によれば、磁気コイルは、その中心軸が基板の中心軸と同軸になるように配置されている。このため、基板上のプラズマ分布の偏りを抑制し、基板の面内均一性をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】エッチング装置の全体概略図。
【図2】実施例1による凹部の模式図。
【図3】比較例1による凹部の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1に従って説明する。
図1は、エッチング装置1の概略図である。エッチング装置1は、容量結合型のプラズマ源を有するエッチング装置であって、略有底筒状に形成された真空槽10を有している。真空槽10はアルミニウム等の金属製であって接地され、その上部開口を上壁部10a等によって密閉されている。また、その側壁10bには、シリコンからなる基板Sbを隣室から真空槽内へ搬入するとともに、真空槽10から他の処理室へ搬送するための搬送口10cがそれぞれ貫通形成されている。さらに、真空槽10には、真空槽内のエッチングガスや大気、パーティクル等の流体を排気する排出口10dが底壁部等に貫通形成されている。さらに、上壁部10aにはガス供給管11が挿入されるガス供給部10eが設けられ、SF、NF、COF、XeF等のフッ素系ガスを含むエッチングガスが真空槽内に供給される。
【0013】
真空槽10の下部には、略円筒状のステージ12が設けられている。ステージ12は、その上面が平坦に形成され、その中央には、ステージ電極13を内側に収容可能な電極収容部12aが設けられている。電極収容部12aには、ステージ電極13を下方から支持固定するための固定部14が備えられている。
【0014】
ステージ電極13には、高周波電源20がマッチングボックス21を介して電気的に接続されている。マッチングボックス21は、プラズマ生成領域と高周波電源20から基板Sbまでの伝送路とのインピーダンスの整合を図る整合回路とブロッキングコンデンサとを含んでいる。
【0015】
ステージ電極13の上面であって略中央は、処理対象となる基板Sbが載置される基板位置となっている。基板位置の外周とステージ12の上面とには、イオン等の基板Sbへの入射効率を高めるために、石英等の絶縁材から形成されたフォーカスリング15が載置されている。
【0016】
また、真空槽10の上部には、電極支持部16が設けられている。電極支持部16は、ガス供給管11から送出されたガスを一時的に貯留する図示しないバッファを備え、その下面に上部電極板17を支持している。上部電極板17はアノードとして機能するとともに、上記バッファ内に蓄えられたガスを、上部電極板17とステージ電極13との間のプラズマ生成空間Sに噴出するシャワープレートとして機能する。
【0017】
真空槽10の外側であって、その上壁部10aには、磁気コイル群30が設けられている。磁気コイル群30は、3本の各磁気コイル31〜33から構成される。各磁気コイル31〜33は、環状に形成され、且つ直径がそれぞれ異なり、その中心が基板Sbの中心軸と同軸となるように配置されている。即ち、上壁部10a側からみた平面視において、各磁気コイル31〜33は同心円状に配置されている。また、磁気コイル群30は、基板Sbに対する相対距離が可能な限り短くなるように、真空槽10の上壁部10aに載置されている。
【0018】
最も外側の第1磁気コイル31は、その直径が基板Sbの直径よりも大きく、中央の第2磁気コイル32は、その直径が基板Sbの直径以下である。また最も内側の第3磁気コイル33は、基板Sbの直径よりも小さい直径を有する。
【0019】
第1磁気コイル31と第3磁気コイル33には、それぞれ同一方向に電流が供給され、中央の第2磁気コイル32には他の各磁気コイル31,33と逆方向に電流が供給される。これによりプラズマ生成空間S内に、磁場がゼロとなる、いわゆる磁気中性線NLが環状に連続して生成される。このとき、第1磁気コイル31及び第2磁気コイル32を上記した直径にすることによって、磁気中性線NLは、第2磁気コイル32の下方付近であって、基板Sbのエッジ部上方のいずれかの位置に生成される。尚、エッジ部とは、基板Sbの直径の半分を直径とする円状の領域を中央部とすると、その中央部を除いた部分をいう。
【0020】
ステージ電極13に高周波電力が印加されると、プラズマ生成空間内にプラズマが生成される。磁気中性線NL付近に存在する電子は、高周波電場を印加され、電子サイクロン共鳴条件が整った磁場中で加速運動を繰り返し、最終的にエネルギーを得る。即ち、磁気中性線NL付近において高周波電力を効率よく吸収できるため、プラズマ密度を高くすることができる。特に、磁気中性線NL付近はプラズマ密度が高くなり、シリコン基板のエッチングに寄与するフッ素ラジカルが多く生成されるため、基板エッジ部におけるエッチング速度を向上することができる。従って、平行平板型の電極のみでプラズマを生成する場合、自ずと基板中央部のプラズマ密度は高くなり基板エッジ部のプラズマ密度は低くなるが、磁気中性線NLを生成することにより、基板エッジ部のプラズマ密度を高めてプラズマ分布の偏りを抑制することができる。
【0021】
エッチングが行われる際には、基板Sbが、上記隣室から搬送口10cを介して真空槽内に搬送され、ステージ電極13の基板位置に載置される。さらに排出口10dから、真空槽内の大気等が排出され、ガス供給管11から所定の流量のエッチングガスが真空槽内に供給される。このとき、供給されるエッチングガスの流量と、排出口10dからの排気量とを調節することにより、真空槽内は10〜100Paの比較的高い圧力域となる。
【0022】
エッチングガスを供給した後、磁気コイル群30に電流が供給される。即ち、第1磁気コイル31及び第3磁気コイル33に同方向の電流(例えば紙面奥側方向)が供給され、第2磁気コイル32に他の各磁気コイル31,33とは逆方向の電流(例えば紙面手前側方向)が供給される。これにより、プラズマ生成空間S内において上記した位置に磁気中性線NLが生成される。また、ステージ電極13に高周波電圧が印加され、ステージ電極13と上部電極板17との間の放電により、エッチングガスが電離して、プラズマ生成空間Sにプラズマが生成される。生成されたプラズマ中の電子は、磁場勾配に沿って磁気中性線NLに集まるため、磁気中性線NL付近で効率よくプラズマが生成される。
【0023】
このとき、磁気コイル群30は、基板Sbに対する相対距離が最短となるように上壁部10aに載置されているため、磁気中性線NLが鉛直方向において生成されうる位置にお
いて最も下方に配置される。従って、基板表面の近傍で磁気中性線NLが形成されるため、基板表面近傍のプラズマ密度が高まる。プラズマ中のラジカル種及び正イオンは、基板Sbに印加されたバイアス電圧によって基板Sbに引き込まれる。指向性のないフッ素ラジカルは等方性の高いエッチングを進行させ、シリコンと反応してSiFnとなり、基板表面から脱離する。正イオンは基板Sbの厚み方向にエッチングを進行する。その結果、基板Sbの所定位置に凹部が形成される。このとき、基板表面近傍のプラズマ密度が高くなるため、エッチング速度を高めることができる。しかも、磁気中性線NLは基板Sbのエッジ部上方に形成されるため、基板エッジ部におけるプラズマ密度が、基板中央部におけるプラズマ密度よりも極端に小さくなることがなく、エッチング速度の面内均一性を向上することができる。
【0024】
またエッチング装置1において、各磁気コイル31〜33の電流の大きさをそれぞれ変化させると磁気中性線NLの位置を変化させることが知られているが、真空室内の圧力が上記したように10〜100Paと比較的高圧の場合には、プラズマ分布の調整が難しい。しかし、上記エッチング装置1では、磁気コイル群30の位置を調整することにより基板エッジ部及び表面近傍でのプラズマ密度を高めることができる。また、プラズマ密度を高めることにより、基板表面近傍に生成されるシースが薄くなり、基板Sbに入射するイオン等の方向を垂直に近い方向として、異方性の高い加工を行うことができる。
【0025】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態のエッチング装置1は、平行平板型のエッチング装置であって、平板状のステージ電極13と、ステージ電極13とプラズマ生成空間Sを解して対向する平板の上部電極板17とを有している。また真空槽10の上方に、真空槽内に磁気中性線NLを生成するための磁気コイル群30を備える。磁気コイル群30を構成する3本の磁気コイル31〜33は、環状をなすとともに直径がそれぞれ異なり、その中心が同軸となるように配置されている。また最も外側の第1磁気コイル31の直径が基板Sbの直径よりも大きく、中央の第2磁気コイル32の直径が基板Sbの直径以下である。この構成により、プラズマ生成空間内に生成される磁気中性線NLは、その直径が基板の直径とほぼ同じか若干小さくなるため、磁気中性線NLは基板中央部を除く基板エッジ部の上方に位置することとなる。このため、平板状の電極を有する容量結合型のエッチング装置1においても、基板エッジ部におけるプラズマ密度を高めることができる。
【0026】
(2)上記実施形態では、各磁気コイル31〜33を、真空槽10の上壁部10aに接して配置した。このため、各磁気コイル31〜33と基板Sbとの相対距離が短くなるため、磁気中性線NLの位置を基板表面近傍に近づけ、基板表面付近のプラズマ密度を高めることができる。
【0027】
(3)上記実施形態では、各磁気コイル31〜33は、その中心軸が基板Sbの中心軸と同軸となるように配置されている。このため、基板上のプラズマ分布の偏りを抑制し、基板の面内均一性をより高めることができる。
【0028】
[実施例1]
厚さが725μmの8インチのシリコン基板に、直径5〜10μmの開口部を有するマスクを塗布した後、上記エッチング装置1を用いて、以下の条件でエッチングを実施した。
【0029】
エッチングガス:六フッ化硫黄ガス、酸素ガス、臭化水素ガスの混合ガス
流量:75sccm、80sccm、15sccm(SF、O、HBr)
高周波電力の周波数:60MHz
出力値:3600W/cm
エッチング時の圧力:360mTorr
そして、上記エッチング条件でエッチングを8分間行うことによって、実施例1の凹部を得た(図2参照)。尚、基板Sbに対し、反応性イオンエッチングにより所定のエッチング形状(例えば凹部H)を形成する場合、反応性エッチングに先立ち所定の開口部を有したマスクMが基板Sbの上に形成される。そして、この開口部から基板Sbに対して正イオンやラジカル種が入射することにより、基板Sbがエッチングされる。
【0030】
図2に示すように、上記エッチング装置1を用いて凹部Hを形成した場合、基板近傍のプラズマ密度が高められるため、開口部Maの法線方向に沿ってエッチングが進行しやすくなる。このため、開口部Maの内径φ1に近い内径φ2で、異方性が高いエッチング形状が得られる。このとき、凹部Hの法線方向に沿った深さD1エッチング深さは、基板中央部で80μm、基板Sbの外縁に近いエッジ部で82μmである。また、エッチング速度は、基板中央部で10μm/min、基板エッジ部で10.25μm/minである。基板面内でのエッチングレートの均一性は、±1.23%であった。
【0031】
[比較例1]
上記実施形態のエッチング装置1の磁気コイル群30を省略した装置を用いて、実施例1と同様な条件でエッチングを実施した。
【0032】
図3に示すように、比較例のエッチング装置を用いて凹部Hを形成した場合、実施例1に比べ開口部Maの法線方向に沿ってエッチングが進行し難く、実施例1よりも内径φ3が大きい(φ3>φ2)、等方性が高いエッチング形状が得られる。このとき、凹部Hの法線方向に沿った深さD2は、基板中央部で70μm、基板Sbの外縁に近いエッジ部で75μmである。また、エッチング速度は、基板中央部で8.75μm/min、基板エッジ部で9.4μm/minである。基板面内でのエッチングレートの均一性は、±3.44%であった。即ち、実施例1に比べ、基板中央部とエッジ部との差が大きく、面内均一性は実施例1よりも低かった。
【0033】
尚、本実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、磁気コイル群30を真空槽10の上壁部10aに接するように配置したが、離間させてもよく、要は基板Sbに近い位置に配置すればよい。
【0034】
・上記実施形態では、処理対象の基板をシリコン基板Sbとしたが、石英基板等、その他の材質の基板を処理対象としてもよい。
【符号の説明】
【0035】
1…エッチング装置、10…真空槽、10a…上壁部、10e…ガス供給部、13…第1電極としてのステージ電極、17…第2電極としての上部電極板、20…高周波電源、30…磁場発生手段としての磁気コイル群、31〜33…磁気コイル、NL…磁気中性線、S…プラズマ生成空間、Sb…基板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空槽と、
前記真空槽内にエッチングガスを供給するガス供給部と、
前記真空槽内に配置されて、その上面に基板が載置される平板状の第1電極と、
前記第1の電極とプラズマ生成空間を介して対向する平板状の第2電極と、
前記第1電極又は前記第2電極に高周波電力を供給する高周波電源と、
直径がそれぞれ異なる3本の環状の磁気コイルから構成され、それらの磁気コイルの中心が同軸となるように前記真空槽の上方に設けられるとともに、最も外側の磁気コイルの直径が前記基板の直径よりも大きく、中央の前記磁気コイルの直径が前記基板の直径以下であって、前記プラズマ生成空間に磁気中性線を生成する磁場発生手段とを備えたことを特徴とするエッチング装置。
【請求項2】
前記各磁気コイルは、前記真空槽の上壁部に接して配置されていることを特徴とする請求項1に記載のエッチング装置。
【請求項3】
前記各磁気コイルは、その中心軸が前記基板の中心軸と同軸となるように配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のエッチング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−164766(P2012−164766A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23004(P2011−23004)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】