説明

エポキシ樹脂組成物、繊維強化複合材料、および繊維強化複合材料の製造方法

【課題】適切なアルキル化エステルを使用することで、高温硬化系においてゲル化および硬化時間を繊維強化複合材料の成形に適切なかたちに制御することが可能であり、また、かつ耐熱性と機械物性に有用なエポキシ樹脂組成物および、高耐熱性、機械強度に優れた繊維強化複合材料、または、その製造方法を提供することである。
【解決手段】構成要素(A)1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂、構成要素(B)25℃で液状アニオン重合開始剤、および構成要素(C)トルエンスルホン酸エステルを有してなり、かつ70℃における粘度が、0.001〜1Pa・sの範囲であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車外板部材等に好適に用いられるエポキシ樹脂組成物、繊維強化複合材料およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガラス繊維、炭素繊維およびアラミド繊維などの強化繊維と、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂およびビスマレイミド樹脂等のマトリックス樹脂からなる繊維強化複合材料は、軽量でありながら、強度や剛性や耐衝撃性などの機械物性に優れるため、航空機部材、宇宙機部材、人工衛星部材、自動車部材、鉄道車両部材、船舶部材御およびスポーツ用具部材などの数多くの分野に応用されてきた。
【0003】
特に自動車材料用途では、近年、燃費向上の要求から車体の軽量化を目的に従来鋼板で製造されている自動車外板部材(フードおよびルーフ等)を中心に材質を繊維強化複合材料に置き換ようとする動きが高まってきている。
【0004】
これらの繊維強化複合材料の製造には、プリプレグ法、ハンドレイアップ法、フィラメントワイディング法、RTM法(レジン・トランスファー・モールディング法)などの各種の方式が適用される。この内、RTM法は、強化繊維からなるプリフォームを型内に入れ、型内に樹脂を注入してプリフォームに含浸させ、その後に樹脂を硬化させて成型品を得る方法であり、特に複雑な形状を有する大形部材の成型を短時間で成型できる点が注目されている。これらのマトリックス樹脂には優れた耐熱性、弾性率および耐薬品性を有し、かつ硬化収縮が小さいエポキシ樹脂が最もよく用いられている。
【0005】
自動車外板部材を繊維強化複合材料する場合の問題点の一つとして、その着色方法が挙げられる。着色方法としては、原着法(すなわち材料自体を着色する)、着色フィルムを積層する方法、部品のみ別工程で塗装する方法、および、部品を組み込んだ状態で車全体を塗装する方法(いわゆるオンライン塗装)などが挙げられる。
【0006】
しかしながら、オンライン塗装における焼き付け温度は140℃以上であり、特に近年は、塗料によっては揮発性の低い媒体を使用し、より遠くからスプレー操作をするものがある。そのため、その媒体を揮発させるためにより高い温度が必要となっている。この操作の目的はムラのない塗装にある。したがって上記のオンライン塗装を可能とするためには、耐熱性の高い樹脂組成物が要求される。
【0007】
繊維強化複合材料の自動車部材用途への応用には、生産性向上のために短時間での成形が可能なものとしてすでに多くの実績がある。例えば、エポキシ樹脂組成物を短時間で硬化せしめるその方法として、エポキシ樹脂にイミダゾール誘導体と1分子中に2個以上の水酸基を有するアルコール類を配合させ、一定温度において硬化時間を3〜30分で硬化せしめ、樹脂硬化物得る方法がある(特許文献1)。
【0008】
この方法では、樹脂組成物にプロトン供与体(1分子中に2個以上の水酸基を有するアルコール類)を使用し、硬化時のエポキシ樹脂の高分子量化、ゲル化を妨げ、粘度上昇を抑える結果、注入可能な時間を長く確保できることを特徴としている。しかしながら、高温硬化系においてさらなるゲル化時間の遅延させる必要があり、プロトン供与体を配合したとしてもゲル化時間を遅延させることができない。
【0009】
また、エポキシ樹脂およびイミダゾール系硬化促進剤に硬化遅延剤を使用することにより、プリント回路基板(PCB)に用いられる難燃性銅箔積層板用樹脂組成物を得る方法がある(特許文献2)。特許文献2では、硬化遅延剤として多数の薬品を挙げている。しかしながら、特許文献2では遅延剤として使用されている薬品は固形であるものが多く、RTM法を用いて成形を行う場合において樹脂が高粘度となるため成形型内への樹脂注入が困難となる。
【0010】
さらに、エポキシ樹脂/イミダゾール/スルホン酸化合物の樹脂組成物を一液型エポキシ樹脂組成物とし、その特徴として、スルホン酸化化合物をp−トルエンスルホン酸エチルを用いることで、常温では硬化反応を抑制しまた加熱硬化させるときは効果促進剤として作用する方法がある(特許文献3)。この方法では、イミダゾール化合物は常温で固体であり、常温での硬化抑制の効果はあるものの、60℃以上の温度で注入成形した際の硬化反応の抑制効果については、特許文献3には記載も示唆もない。
【0011】
また、エポキシ樹脂に芳香族および脂環式、脂肪族のアミン硬化剤を用いて、硬化を遅延させる方法の1つとしてスルホン酸エステル使用している方法がある。(特許文献4)。この方法におけるアミン硬化剤と呼ばれるものは、主に重付加型硬化剤と呼ばれるアミンを使用しており、アニオン重合開始剤との硬化における重合反応の違いから、加熱硬化反応が遅くなり短時間、速硬化において実用性に乏しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第02−81540号パンフレット
【特許文献2】特表2004−503632
【特許文献3】特開平7−224148
【特許文献4】特表平9−507262
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、かかる従来技術に鑑み、適切なトルエンスルホン酸エステルを使用することで、高温硬化系においてゲル化および硬化時間を繊維強化複合材料の成形に適切なかたちに制御することが可能であり、かつ耐熱性と機械物性に有用なエポキシ樹脂組成物および、高耐熱性、機械強度に優れた繊維強化複合材料、または、その製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる課題を解決するために、本発明では高温硬化系において構成要素(A)1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂、構成要素(B)25℃で液状のアニオン重合開始剤、および構成要素(C)トルエンスルホン酸エステルを有してなり、かつ70℃における粘度が、0.001〜1Pa・sの範囲であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物である。
【0015】
また、本発明の構成要素(B)は、少なくとも次の一般式を含むアニオン重合開始剤であることが好ましい。
【0016】
【化1】

【0017】
(式中、R1 はシアノエチル基、R2 は脂肪族基または芳香族基、R3およびR4はアルキル基を示す)。
【0018】
また、本発明の繊維強化複合材料は、上記エポキシ樹脂組成物の樹脂硬化物と強化繊維とからなる繊維強化複合材料である。
【発明の効果】
【0019】
室温において液状であるトルエンスルホン酸エステルは、高温硬化系において遅延効果が有効であるため、トルエンスルホン酸エステルを有してなる本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、優れた耐熱性を有し、かつ、繊維強化複合材料の成形に際し、ゲル化および硬化時間を適切に制御できる。
【0020】
本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、強化繊維に液状の熱硬化性樹脂を含浸させる工程を含むRTM法およびRFI法(レジン・フィルム・インフュージョン法)などを用いるにより、自動車部材等を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例で用いたエポキシ樹脂組成物のキュアインデックスを時間に対してプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の構成要素(A)とは、1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂を指す。
【0023】
構成要素(A)のエポキシ樹脂として、公知のものを使用することができ、例えば、水酸基を複数有するフェノールから得られる芳香族グリシジルエーテル、水酸基を複数有するアルコールから得られる脂肪族グリシジルエーテル、アミンから得られるグリシジルアミン、カルボキシル基を複数有するカルボン酸から得られるグリシジルエステル、分子内に複数の2重結合を有する化合物を酸化して得られるポリエポキシド等が挙げられる。
【0024】
芳香族グリシジルエーテルの例としては、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールADのジグリシジルエーテル、ビスフェノールSのジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAのジグリシジルエーテル等のビスフェノール等から得られるジグリシジルエーテル、フェノールやアルキルフェノール、ハロゲン化フェノール等から得られるノボラックのポリグリシジルエーテル、レゾルシノールのジグリシジルエーテル、ヒドロキノンのジグリシジルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニルのジグリシジルエーテル、1,6−ジヒドロキシナフタレンのグリシジルエーテル、9,9’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンのジグリシジルエーテル、テトラキス(p−ヒドロキシフェニル)エタンのテトラグリシジルエーテル、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルと2官能イソシアネートを反応させて得られるオキサゾリドン骨格を有するジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0025】
脂肪族グリシジルエーテルとしては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールのジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、グリセリンのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールエタンのジグリシジルエーテル、トリメチロールエタンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールのテトラグリシジルエーテル、ドデカヒドロビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ドデカヒドロビスフェノールFのジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0026】
グリシジルアミンとしては、ジグリシジルアニリン、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、グリシジルエーテルとグリシジルアミンの両構造を併せ持つ、トリグリシジル−m−アミノフェノール、トリグリシジル−p−アミノフェノール等が挙げられる。
【0027】
グリシジルエステルとしては、フタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステル等が挙げられる。
【0028】
上記した以外に、トリグリシジルイソシアヌレート、また、分子内に複数の2重結合を有する化合物を酸化して得られる、分子内にエポキシクロヘキサン環を有するエポキシ樹脂や、エポキシ化大豆油等が挙げられる。
【0029】
中でも、ビスフェノールAから得られるビスフェノールA型エポキシ樹脂は、注入特性および樹脂硬化物の耐熱性に優れるため好適に用いられるが、構成要素(A)が室温もしくは注入温度時において液状であることが好ましい。
【0030】
本発明において、構成要素(B)は、エポキシ樹脂の硬化剤として用いられるアニオン重合開始剤である。アニオン重合開始剤とは、エポキシ樹脂のアニオン重合を開始する能力のある化合物を指す。
【0031】
構成要素(B)の例として、3級アミンが好適に用いられ、3級アミンの具体例としては、トリエチルアミンジメチルベンジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、3−ジメチルアミノプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、3−ジブチルアミノプロピルアミン、2−ジエチルアミノエチルアミン、1−ジエチルアミノ−4−アミノペンタン、N−(3−アミノプロピル)−N−メチルプロパンジアミン、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、1,4−ビス(2−アミノエチル)ピペラジン、3−(3−ジメチルアミノプロピル)プロピルアミン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、4−(2−アミノエチル)モルホリン、4−(3−アミノプロピル)モルホリン、イミダゾール誘導体等が挙げられる。
【0032】
中でも、アニオン重合開始剤としての能力が高く、エポキシ樹脂組成物を短時間で硬化できるという理由から、構成要素(B)は、イミダゾール誘導体を含むことが好ましく、高温時での短時間、速硬化という観点から、少なくとも次の一般式で表されるイミダゾール誘導体を含むことがより好ましい。
【0033】
【化2】

【0034】
(式中、R1 はシアノエチル基、R2 は脂肪族基または芳香族基、R3およびR4はアルキル基を示す)。
【0035】
なお、上記一般式で表されるイミダゾール誘導体以外のイミダゾール誘導体は、常温(25℃)で液状のものと固形のものがあるが、常温で液状のものは低温で硬化するものが多く、また高温で硬化するものは常温で固形のものが多い。そこで、高温時での短時間、速硬化に適するアニオン重合開始剤として、上記一般式で表されるイミダゾール誘導体を用いることが好ましい。
【0036】
イミダゾール誘導体としては、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−アミノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
中でも、液状のシアノエチル基を有するイミダゾール誘導体が、特に好ましく使用され1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデンシルイミダゾールが好ましい。
【0038】
構成要素(B)の配合量は、構成要素(A)100質量部に対して0.1〜15質量部、好ましくは5〜10質量部、より好ましくは5〜7質量部の範囲内であるのが良い。この範囲より大きいと構成要素(B)の残留分が可塑剤として作用し、得られる樹脂硬化物の耐熱性や、弾性率等の力学物性が低下することがある。
【0039】
本発明において、構成要素(C)は、トルエンスルホン酸エステルである。これらを用いることにより、注入時間やトータルの成形時間を制御するために必要な成分である。
【0040】
トルエンスルホン酸エステルとして、例えば、p−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸エチル、p−トルエンスルホン酸−n−プロピル、p−トルエンスルホン酸ブチル、p−トルエンスルホン酸オクチル、p−トルエンスルホン酸フェニルなどのスルホン酸エステル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
特に、トルエンスルホン酸エステルの中でも、液状であるトルエンスルホン酸エステルが好ましく、その中でも、p−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸エチル、p−トルエンスルホン酸−n−プロピル等がさらに好ましい。
【0042】
また、構成要素(C)は、樹脂混合時や成形時における強化繊維への含浸性を良くするため室温において液状であることが好ましく、構成要素(A)のエポキシ樹脂100質量部に対して1〜10質量部、好ましくは1〜5質量部、特に好ましくは1〜3質量部の範囲内であるのが良い。この範囲より小さいと、樹脂のゲル化および硬化時間を自由に制御することが難しくなることがあり、また成形時における強化繊維への含浸性が悪くなる傾向になるため好ましくない。この範囲より大きいと、得られる硬化特性および樹脂硬化物の耐熱性や、弾性率等の力学物性が低下することがある。
【0043】
本発明のエポキシ樹脂組成物においては、少なくとも注入温度において、構成要素(A)が液体でかつ構成要素(B)および(C)が構成要素(A)に対して均一に溶解していることが好ましい。これらの構成要素の一部が固体であったり、液状であっても分離した相をなしたりする場合は、含浸過程において成分の局所的な不均一性を招くおそれがあるため、好ましくない。ただし、室温においてこれらの構成要素が均一溶液とならない組成であっても、加熱により上記の要件を満たすならば問題とはならず、好ましい。
【0044】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記構成要素以外の添加剤に、界面活性剤、内部離型剤、色素、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を含むこともできる。
【0045】
これらの添加剤は、本発明のエポキシ樹脂組成物中に均一に溶解するものであることが最も好ましい。ただし、均一に溶解しないものであっても、液滴あるいは粒子の形態で安定なコロイド状態を保つ場合は問題ない。この場合、液滴あるいは粒子の径は1μm以下であることが好ましく、0.3μm以下であればさらに好ましい。液滴や粒子の径が大きいと、強化繊維の間隙の通過に困難をきたし、組成の不均一性を招くおそれがある。
【0046】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、70℃での初期粘度が、0.001〜1Pa・sであり、好ましくは0.001〜0.8Pa・sの範囲内であるものが良い。この範囲より大きいと、樹脂組成物の強化繊維への含浸に時間がかかることがある。
【0047】
本発明において、エポキシ樹脂組成物は、次の一般式(1)で得られる樹脂硬化物のガラス転移温度Tgを満たす温度の範囲は、60〜180℃、好ましくは130〜170℃の範囲が好ましい。ガラス転移温度Tgが硬化過程における最高温度Tcより10℃高いことが好ましい理由として、樹脂硬化物Tgが硬化過程における最高温度Tcと同等および低い場合、成形後の脱型時において成形物が変形するおそれがあるからである。
【0048】
Tg≧Tc+10・・・(1)
Tc:硬化過程における最高温度(℃)(60≦Tc≦180)
Tg:温度Tcにおけるエポキシ樹脂組成物のガラス転移温度。
【0049】
本発明におけるエポキシ樹脂組成物は、初期の粘度上昇が小さく、長い注入時間を有しかつ、短時間で硬化可能とする観点から、次の一般式(2)〜(4)を満たす温度Tが、得られるガラス転移温度の観点から、60〜180℃、好ましくは120〜170℃の範囲に存在するのが好ましい。
【0050】
2≦t10≦10・・・(2)
3≦t90≦30・・・(3)
1.5<t90/t10≦8・・・(4)。
【0051】
ここで、t10は、温度Tでの誘電測定において、樹脂注入時間からキュアインデックスが10%に到達するまでの時間(分)、t90は、温度Tでの誘電測定において、樹脂注入時間からキュアインデックスが90%に到達するまでの時間(分)をそれぞれ指し、また、昇温時の樹脂温度は65〜75℃の範囲内であることが好ましい。
【0052】
キュアインデックスとは、誘電測定により得られる硬化反応におけるイオン粘度が求められる値であり、エポキシの粘度、および樹脂硬化物のガラス転移温度との相関のある指標として用いられ、t10は樹脂の注入可能な時間の指標、また、t90は樹脂の硬化に要する時間の指標としてそれぞれ用いられるものである。
【0053】
10が2以下であると、注入時間が十分に取れず、また10以上であると、硬化時間が長くかかり、基材のアライメントがずれる可能性がある。
【0054】
90が3以下であると、注入時間が十分に取れないことがある、また30以上であると硬化時間が長くかかり生産性が低下する。
【0055】
90とt10は成形性の観点から上式(4)を満たしていることが成形性と生産性を両立する観点から好ましい。
【0056】
本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、構成要素(B)の種類や量に応じて、構成要素(C)の量を調整することにより、上式(2)〜(4)の範囲に持ってくることが可能である。
【0057】
また、本発明に係るエポキシ樹脂組成物を、強化繊維基材からなるプリフォームに注入する方法として、RTM(Resin Transfer Molding)成形法を採用するのが好ましい。本成形法は、プリフォームを予めセットしておいた成形型内に、樹脂組成物を注入する方法である。
【0058】
用いられるプリフォームとしては、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等の強化繊維を、マット、織物、ニット、ブレイド、一方向シート状の基材に加工したものを好適に用いることができ、これらの基材を単独で使用するもしくは、複数の基材を積層したものが使用できる。
【0059】
本発明では、軽量かつ高強度、または軽量かつ高弾性率の樹脂成形体を得るために、プリフォームに連続繊維を用いて構成された強化繊維基材を用いるのが良く、また、成形に際しては繊維体積含有率が35〜85%、好ましくは40〜80%となるように成形するのがよい。さらに、軽量かつ、高強度、または軽量かつ高弾性率の樹脂成形体を得るために、強化繊維として炭素繊維を用いるのがよい。なお、強化繊維として炭素繊維を用いる場合、補助繊維として、炭素繊維以外の繊維を含んでいても良い。
【0060】
尚、本RTM成形法では、多様な用途に対応するため、金属板、フォームコア、ハニカムコア等、前記したプリフォーム以外の素材を成形型内に予めセットしておくこともできる。
【0061】
前記成形型には、密閉されたものを用いることが好ましいが、いわゆる真空バギングを使用することもできる。また、成形型の材料には、通常アルミニウム、鋼、ステンレス等の金属を用いるのが好ましいが、70〜80℃程度の比較的低温で成形する場合は、FRP(Fiber Reinforced Plastics、繊維強化樹脂)を用いることができる。また、ここでは、成形型の加熱のため、熱媒の循環やヒーターによる加熱機能を付与する事が好ましい。
【0062】
RTM成形法では、プリフォームを成形型内にセット後、成形型を閉止して型内を密封し、さらに所定の圧力で型締めを行う。この型締めは、樹脂組成物の注入以上の圧力を付与して行うのが好ましい。本成形法では、樹脂の注入に際し、その効率を高めるため、真空吸引が併用できる。この真空吸引は樹脂注入後に完了してもよい。
【0063】
本発明では、エポキシ樹脂組成物を成形型内に注入する際に、構成要素(A)〜(C)を、所定の組み合わせでバッチ混合後、容器に保持しておき、その後ポンプへ送液、型内へ注入する方法が適用できる。
【0064】
また、構成要素(A)〜(C)の液体をそれぞれ別々の容器に保持しておき、それぞれをポンプ等で混合機に送液し、混合後の液を成形型内に注入することもできるし、構成要素(C)を、予め、構成要素(A)、および(B)に混合後、構成要素(A)、および、または、構成要素(B)および(C)からなる液を別々の容器に保持しておき、それぞれをポンプ等でさらに別の混合機に送液し、混合後の液を成形型内に注入することもできる。
【0065】
本発明において、樹脂を注入する際の成形型の温度は20〜180℃、好ましくは120〜170℃とするのがよい。20℃未満であると、樹脂の粘度が高く、成形型内への樹脂注入が困難になることがあり、180℃を越えると、樹脂の粘度上昇が過大となり、短時間でゲル化が進行し、成形が困難になることがある。
【0066】
また、本発明では、樹脂硬化温度、即ち、樹脂を硬化せしめる際の成形型の温度は、60〜180℃、好ましくは120〜170℃とするのがよい。60℃未満であると、得られる樹脂成形体の耐熱性や、弾性率等の力学特性が低下することがあり、180℃を越えると、硬化に要する熱エネルギーが過大となり、製造コストが増加する事がある。また、成形型の温度が180℃以上だと樹脂の硬化時間は、硬化に要する熱エネルギーを低減させる観点から、3〜30分とすることが好ましい。
【0067】
ここで、樹脂の硬化温度とは、成形型の昇温や降温に要する時間を低減するため、樹脂の注入温度との差を極力小さくするのが好ましい。具体的には、かかる差を実質的に±0℃とするのがよいが、実際上、0〜70℃、好ましくは0〜50℃の範囲するのがよい。また、このときの成形型の温度の変動は、設定温度の±10℃以内、好ましくは±5℃以内に抑えるのがよい。このように、成形型の温度の変動が、成形型の設定温度の±10℃以内に抑えられている場合、本発明では、硬化温度が「一定温度」に設定されていると判断する。
【0068】
また、樹脂成形体にさらに効率よく製造するため、樹脂成形体の製造過程に、昇温温度を60〜180℃の範囲の一定温度に設定し、成形時間を10〜30分として硬化せしめる工程が含まれることが望ましい。
【0069】
なお、本発明に係る繊維強化複合材料(すなわち、強化繊維を含んだ樹脂成形体)の製造方法で規定される成形時間とは、プリフォームを成形型内にセット後、樹脂を注入し、その樹脂を硬化せしめ、その樹脂成形体を成形型から脱型した後の時間を意味する。
【0070】
以上のようにして製造された繊維強化複合材料は、短時間、速硬化において大量生産が可能であるため、航空機用部材および自動車用部材に好適に用いられる。
【実施例】
【0071】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。ここでは、各物性における測定は、次に示す方法と同等の結果が得られるものであればよい。
【0072】
構成要素(A):エポキシ樹脂
・“jER(登録商標)”828:登録商標、ジャパンエポキシレジン(株)製、エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂)。
【0073】
構成要素(B):アニオン重合開始剤
・“キュアゾール(登録商標)”2MZ−G:四国化成工業(株)製、イミダゾール誘導体(2−メチルイミダゾール)
・“キュアゾール(登録商標)”2MZ−CN:四国化成工業(株)製、イミダゾール誘導体(1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール)
・“キュアゾール(登録商標)”2E4MZ−CN:四国化成工業(株)製、イミダゾール誘導体(1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール)
・“キュアゾール(登録商標)”2E4MZ:四国化成工業(株)製、イミダゾール誘導体(2−エチル−4−メチルイミダゾール)
“キュアゾール(登録商標)”1B2MZ:四国化成工業(株)製、イミダゾール誘導体(2−エチル−4−メチルイミダゾール)。
【0074】
比較例において、25℃で固形のアニオン重合開始剤および重付加型アミン硬化剤を使用した。
・“キュアゾール(登録商標)”2P4MHZ−PW:四国化成工業(株)製、イミダゾール誘導体(2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール)
・“JERキュア(登録商標)”W:JER(株)製、アミン硬化剤(2−4ジエチル−6−メチル−フェニレンジアミンと4,6−ジエチル−2−メチル−m−フェニレンジアミンとの混合物)。
【0075】
構成要素(C):硬化遅延剤(トルエンスルホン酸エステル)
・p−トルエンスルホン酸メチル:東京化成工業(株)製
・p−トルエンスルホン酸エチル:東京化成工業(株)製
・p−トルエンスルホン酸−n−プロピル:東京化成工業(株)製。
【0076】
比較例においては、その他の触媒として1分子に2個以上の水酸基を有する化合物を使用した。
・プロピレングリコール:和光純薬工業(株)製、アルコール
・BA−P2グリコール:日本乳化剤(株)製、アルコール(ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物)。
【0077】
<樹脂組成物の粘度測定>
ISO 2884−1における円錐−平板型回転粘度計を使用した測定方法に準拠し、構成要素(a)の粘度、および樹脂組成物を調製した直後の粘度を測定した。装置は東機産業(株)製のTVE−30H型を用いた。ここで、ローターは1゜34’×R24を用い、サンプル量は1cmとした。
【0078】
<樹脂のキュアインデックス測定>
本実施例においては、樹脂の硬化を追跡するために、誘電測定を行った。
誘電測定装置としてHolometrix−Micromet社製のMDE−10キュアモニターを使用した。TMS−1インチ型センサーを下面に埋め込んだプログラマブルミニプレスMP2000の下面に内径31.7mm、厚さ3.3mmのバイトン製Oリングを設置し、プレスの温度を所定温度Tに設定し、Oリングの内側にエポキシ樹脂組成物を注ぎ、プレスを閉じ、樹脂組成物のイオン粘度の時間変化を追跡した。誘電測定は、1、10、100、1000、および10000Hzの各周波数で行った。
【0079】
次に、次式(D)により、キュアインデックスを求め、キュアインデックスが10%に到達する時間t10に対する、キュアインデックスが90%に到達する時間t90の比t90/t10を求めた。
【0080】
キュアインデックス={log(α)−log(αmin)}/{log(αmax)−log(αmin)}×100・・・(D)
キュアインデックス:(単位:%)
α:イオン粘度(単位:Ω・cm)
αmin:イオン粘度の最小値(単位:Ω・cm)
αmax:イオン粘度の最大値(単位:Ω・cm)。
【0081】
<樹脂硬化物のガラス転移温度測定>
プログラマブルミニプレスMP2000の下面に内径31.7mm、厚さ3.3mmのバイトン製Oリングを設置し、プレスの温度を所定温度Tに設定し、Oリングの内側に樹脂組成物を注ぎ、プレスを閉じ、所定時間硬化させた。得られた樹脂硬化物を示差熱量計(DSC)を用いて、JIS K7121(1987)に基づいて昇温速度を40℃/分にて測定し、中間点温度をガラス転移温度とした。
【0082】
<強化繊維への樹脂の含浸性測定>
RTM法を用いて強化繊維への樹脂の含浸性の評価を行った。金型には、縦400mm、横400mm、高さ1.0mmのキャビティを有する、上型と下型からなるものを用いた。プリフォームとしては、縦390mm、横390mmの炭素繊維(東レ(株)製、型番:BT−70−30、CF目付け:317g/m)を、繊維方向を同一方向に揃えて5枚積層したものを用いた。
【0083】
まず、金型を各硬化温度に加温して温度安定後、金型のキャビティにプリフォームをセットし、金型側面にある吸引口(1箇所)に真空ポンプを接続し、金型内を0.1mmHg以下に減圧した後、70℃雰囲気下において主剤と硬化剤とを混合し、かつ30分間減圧下に静置して、脱泡を行った樹脂組成物を金型樹脂注入部から樹脂を注入し、プリフォームに含浸させた。樹脂が吸引口から流出した時点で、樹脂注入口、続いて吸引口を閉じ、樹脂を成形時間まで硬化させた後、平板状の複合材料の含浸状態を観察し、◎:含浸性最良、○:含浸性良好、△:一部含浸性不良、×:含浸性不良とした。
【0084】
なお、樹脂の含浸性の測定は、120℃×30分、140℃×30分、150℃×30分にて行った。
【0085】
(実施例1〜13)
実施例1〜13として、表1に示す構成要素(B)を構成要素(C)に添加、溶解させた。次に、この溶液を70℃に保持し、さらに、70℃に加温した構成要素(A)を加えて1分間撹拌して、エポキシ樹脂組成物を調製した。また、実施例の全てエポキシ樹脂組成物は、70℃において淡黄色の均一な溶液であった。
【0086】
実施例1〜13に示すエポキシ樹脂組成物の粘度測定を行い、その結果は表1の示す通りの結果となり、良好な値であった。
【0087】
実施例1〜13に示すエポキシ樹脂組成物のt90/t10を、表1に示す。各硬化温度におけるt90/t10の値はいずれも良好な値であった(図1に樹脂組成物の誘電測定により得られる、キュアインデックスの時間変化を示した。)
実施例1〜13に示すエポキシ樹脂硬化物Tgの結果については、表1に示す。エポキシ樹脂硬化物Tgについても、良好な値を示していた。また、実施例1〜13に示すエポキシ樹脂組成物の強化繊維への含浸性を表1に示す。その結果は表1に示すとおり良好な結果となった。
【0088】
【表1】

【0089】
(比較例1〜11)
比較例1として、表2に示す構成要素(B)にその他の触媒を添加し、この溶液を90℃に加温させ溶解させた。その硬化剤を70℃に保持し、さらに、70℃に加温した構成要素(A)を1分間撹拌してエポキシ樹脂組成物を調製した。得られた樹脂組成物は70℃において均一な溶液であった。
【0090】
比較例2〜7および11として、表2に示す構成要素(B)ないし重付加型アミン硬化剤を構成要素(C)に添加し、70℃に加温して溶解させた。次に、この溶液の温度を70℃に保持し、さらに、70℃に加温した構成要素(A)のエポキシ樹脂を加えて1分間撹拌してエポキシ樹脂組成物を調製した。得られた樹脂組成物は70℃において均一な溶液であった。
【0091】
比較例8〜10として、表2に示す構成要素(A)に固形のアニオン重合開始剤を添加して溶解させた。次に、この溶液の温度を70℃に保持し、さらに、70℃に加温した構成要素(A)ならびに固形のアニオン重合開始剤に構成要素(C)を加え、1分間撹拌してエポキシ樹脂組成物を調製した。得られた樹脂組成物は70℃において均一な溶液であった。
【0092】
比較例1〜11に示すエポキシ樹脂組成物の粘度測定を行い、その結果を表2に示す。表2に示すとおり70℃における粘度は良好な値を示していた。
【0093】
比較例1〜11に示すエポキシ樹脂組成物のt90/t10を、表2に示す。各硬化温度におけるt90/t10の値は、良好な値ではなかった。(図1に樹脂組成物の誘電測定により得られる、キュアインデックスの時間変化を示した。)
比較例1〜11に示すエポキシ樹脂硬化物Tgの結果は、表2に示すとおりである。比較例1〜7は良好な値を示していたが、比較例8〜10では、120℃および140℃では樹脂が未硬化であったため不可となり、150℃では樹脂硬化物Tgが低い結果なった。また、比較例11については、120℃では樹脂が未硬化であったため不可となり、140℃および150℃は樹脂硬化物Tgが低かった。
【0094】
比較例1〜11に示すエポキシ樹脂組成物の強化繊維への含浸性の結果は、表2に示すとおりである。比較例1〜7は120℃において比較例1〜7は含浸性最良であったが、140℃および150℃では含浸性不良となった。比較例8〜10については、120℃および140℃は樹脂が未硬化であったため不可となり、150℃では含浸性不良であった。比較例11については、120℃では樹脂が未硬化であったため不可となり、140℃および150℃では含浸性不良となった。
【0095】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、優れた耐熱性または機械物性を有しかつ、ゲル化および硬化時間を自由に制御できることにより繊維強化複合材料に好適なエポキシ樹脂組成物を提供することができる。中でも、自動車外板部材に好適に用いられ、特にこれらの繊維強化複合材料の耐熱性と製造における生産性を高めることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成要素(A)1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂、構成要素(B)25℃で液状のアニオン重合開始剤、および構成要素(C)トルエンスルホン酸エステルを有してなり、かつ70℃における粘度が、0.001〜1Pa・sの範囲であることを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
構成要素(B)が、次の一般式で示されるアニオン重合開始剤を含んでいることを特徴とする、請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
【化1】

(式中、R1 はシアノエチル基、R2 は脂肪族基または芳香族基、R3およびR4はアルキル基を示す。)
【請求項3】
次式(1)〜(3)を満たす温度Tが、60〜180℃の範囲に存在することを特徴とする、請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物。
2≦t10≦10・・・(1)
3≦t90≦30・・・(2)
1.5≦t90/t10≦8・・・(3)
10:温度Tでの誘電測定において、樹脂注入開始後キュアインデックスが10%に到達するまでの時間(分)。
90:温度Tでの誘電測定において、樹脂注入開始後キュアインデックスが90%に到達するまでの時間(分)。
【請求項4】
少なくとも、請求項1〜3のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物の樹脂硬化物と炭素繊維とからなる炭素繊維強化複合材料。
【請求項5】
型内に配置した強化繊維基材に、請求項1〜3のいずれかに記載のエポキシ樹脂組成物を注入し、硬化温度を60〜180℃の範囲に一定温度に設定し、成形時間を10〜30分として硬化せしめる繊維強化複合材料の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−1442(P2011−1442A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145011(P2009−145011)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】