説明

エポキシ樹脂組成物

【課題】 本発明は、プリプレグの取り扱い性と硬化物の高い剛性とを両立した、エポキシ樹脂組成物を提供するものである。
【解決手段】 次の成分(A)、(B)を含み、成分(A)および成分(B)の合計量100質量%に対して、成分(A)が10〜80質量%であるエポキシ樹脂組成物である。
(A)シリカ微粒子がコロイド状に分散したエポキシ樹脂
(B)多官能エポキシ樹脂100質量部とジアミノジフェニルスルホン5〜10質量部とを120〜160℃の温度で1〜20時間反応させた予備反応物
成分(B)中の多官能エポキシ樹脂としてアミノフェノール型エポキシ樹脂を含むこと、成分(B)中の多官能エポキシ樹脂としてアミノクレゾール型エポキシ樹脂を含むことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の繊維強化複合材料は、繊維方向の引張強度は良好であるが、繊維方向に圧縮されると繊維の座屈やせん断により繊維の破壊を起こしやすく、繊維方向の圧縮強度が低いことから、圧縮強度の向上が強く望まれている。
【0003】
一般的に、マトリックス樹脂の弾性率を高めることで炭素繊維強化複合材料の圧縮強度が向上することが知られており、その手法として、マトリックス樹脂に無機微粒子を添加する方法が一般に知られている。
【0004】
繊維強化複合材料の中間材料であるプリプレグには、硬化後の機械的特性に優れることは勿論のこと、取り扱い性に優れ適度なタック(粘着性)を有しており、且つ成型時の樹脂流れが少ないこと等の特性が必要であり、マトリックス樹脂には適度な粘度が要求される。
【0005】
マトリックス樹脂を適度な粘度に調整方法として、エポキシ樹脂組成物に熱可塑性樹脂を添加する試みが行われている。特許文献1には、エポキシ樹脂組成物にポリビニルホルマール樹脂を添加し表面タックを調整する方法が開示されている。
【0006】
しかし、特許文献1の方法では、無機微粒子を添加したエポキシ樹脂樹脂では分散した無機微粒子が凝集する問題があった。このため、プリプレグの取り扱い性と硬化物の高い剛性とを両立することは、これまで非常に困難であった。
【特許文献1】特開昭58−8724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、プリプレグの取り扱い性と硬化物の高い剛性とを両立した、エポキシ樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨は、次の成分(A)、(B)を含み、成分(A)および成分(B)の合計量100質量%に対して、成分(A)が10〜80質量%であるエポキシ樹脂組成物である。
(A)シリカ微粒子がコロイド状に分散したエポキシ樹脂
(B)多官能エポキシ樹脂100質量部とジアミノジフェニルスルホン5〜10質量部とを120〜160℃の温度で1〜20時間反応させた予備反応物
成分(B)中の多官能エポキシ樹脂としてアミノフェノール型エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【0009】
また、成分(B)中の多官能エポキシ樹脂としてアミノクレゾール型エポキシ樹脂を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、プリプレグの取り扱い性と硬化物の高い剛性とを両立した、エポキシ樹脂組成物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
「シリカ微粒子がコロイド状に分散したエポキシ樹脂(A)」
本発明に用いられる成分(A)は、コロイド状に分散されたシリカ微粒子を含むエポキシ樹脂である。成分(A)および成分(B)の合計量100質量%に対して、成分(A)が10〜80質量%である。
【0012】
成分(A)の配合量は10質量%以上であれば、エポキシ樹脂組成物の硬化物の剛性を高めることができ、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは45質量%以上含むことが好ましい。
【0013】
繊維強化複合材料用のマトリクス樹脂として使用する場合、シリカ微粒子がエポキシ樹脂中に高度に分散していることが重要である。繊維強化複合材料を製造するためには、強化繊維にエポキシ樹脂組成物を含浸させるが、この際、シリカ微粒子がエポキシ樹脂中に高度に分散していない場合、分散せずに凝集したシリカ微粒子が強化繊維に濾しとられ、いわゆるフィルトレート問題が発生する。このフィルトレートが発生した繊維強化複合材料は靭性や耐熱性など物性の低下や、繊維強化複合材料の一部に樹脂がいきわたらない「樹脂枯れ」などの外観不良を引きおこす。
【0014】
このような、シリカ微粒子がエポキシ樹脂中に高度に分散した状態を得る手段としては、エポキシ樹脂中にコロイド状に分散したシリカ微粒子を含むエポキシ樹脂を用いる方法がある。エポキシ樹脂中に分散したシリカ微粒子は凝集することなく、ほぼ単独でエポキシ樹脂中に分散しているため、このようなシリカ分散エポキシ樹脂を配合するだけで、シリカ微粒子が高度に分散したエポキシ樹脂組成物を得ることができるため、分散工程が非常に簡略化でき非常に好ましい。
【0015】
本発明で使用するエポキシ樹脂(A)としては、エポキシ樹脂中にシリカ微粒子が分散したものであればよい。
【0016】
このようなシリカ微粒子分散エポキシ樹脂として好適なものは、nanoresinsAG社製のNanopoxシリーズとしてNanopox F400、Nanopox F430、Nanopox F440、Nanopox F520、Nanopox F630、Nanopox F640、Nanopox E400、Nanopox E430、Nanopox E440、Nanopox E520、Nanopox E630、Nanopox E640、日産化学工業株式会社製のLENANOCシリーズとしてLENANOC Eなどが挙げられる。
【0017】
シリカ微粒子の配合量は成分(A)および成分(B)の合計量100質量部に対して、10質量部以上であることが好ましい。一方、シリカ微粒子の配合量を多くしすぎるとエポキシ樹脂組成物の比重が重くなり、また、エポキシ樹脂に対する分散性が悪くなる。シリカ微粒子の配合量を成分(A)および成分(B)の合計量100質量部に対して70質量部以下にすることにより、エポキシ樹脂組成物の比重を抑えることができ、またシリカ微粒子のエポキシ樹脂に対する分散性を良くすることができるため好ましい。より好ましくは50重量部以下である。
【0018】
シリカ微粒子の形状としては特に制限は無いが、アスペクト比が高くなると、シリカ微粒子を配合したエポキシ樹脂組成物にチキソ性がでてくるため、配合量を高くすることができなくなる。球状であればこのようなチキソ性は出にくく、シリカ微粒子の配合量を高めることができるため好ましい。
【0019】
シリカ微粒子の粒径としては特に制限はないが、100nm以下であると強化繊維に含浸させる際に、フィルトレートが発生しないため好ましい。より好ましくは50nm以下の粒径である。
【0020】
「多官能エポキシ樹脂に対し、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)5〜10質量%を120〜160℃の温度で1〜20時間反応させた予備反応物(B)」
本発明で用いられる成分(B)は多官能エポキシ樹脂に対し、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)5〜10質量%を反応させた予備反応物である。多官能エポキシ樹脂としては、エポキシ当量が500以下であれば特に制限はないが、エポキシ当量が300以下の多官能エポキシ樹脂が特に望ましい。エポキシ当量が500を超えるとジアミノジフェニルスルホン(DDS)との予備反応物である成分(B)の粘度が高くなりすぎでその後の作業性が悪くなるので好ましくない。
【0021】
本発明において、好適に用いられる成分(B)の多官能エポキシ樹脂の代表例としてはテトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタン、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタンのようなグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノール、トリグリシジルアミノクレゾール、テトラグリシジルキシレンジアミンのようなグリシジルアミン型エポキシ樹脂やナフタレン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などを挙げることができる。
【0022】
より好ましい成分(B)の多官能エポキシ樹脂としては、アミノフェノール型エポキシ樹脂、アミノクレゾール型エポキシ樹脂が挙げられる。これらの多官能エポキシ樹脂を用いることで、エポキシ樹脂組成物の剛性と共に耐熱性を高くすることができる。またこのような構造の多官能エポキシ樹脂の中でも、官能基がメタ位やオルト位に配合した樹脂を用いると、エポキシ樹脂組成物の硬化物の剛性を高めることができるため好ましい。
尚、種々の特性を持たせるために、数種類の多官能エポキシ樹脂を混合して用いることも可能であり、また前記多官能エポキシ樹脂の変性物も使用可能である。
【0023】
更に、成分(B)におけるジアミノジフェニルスルホン(DDS)の添加量は多官能エポキシ樹脂に対して5〜10質量%であれば、適切な粘度向上の効果が得られ、かつ、反応中にゲル化する部分も無く安全である。ジアミノジフェニルスルホン(DDS)の各種異性体は、耐熱性の良好な硬化物を与えるため本発明には適している。特に3,3‘−ジアミノジフェニルスルホンは硬化物の剛性を高くすることができるため最適である。
【0024】
本発明における成分(B)として多官能エポキシ樹脂とジアミノジフェニルスルホン(DDS)を予め反応させた予備反応物を用いることはきわめて重要であり、この予備反応物によりプリプレグ化に適した粘度を付与する。単に多官能エポキシ樹脂とDDSとを混合しただけの混合物ではこのようなプリプレグ化に適した粘度を得ることはできない。この場合の予備反応は120〜160℃の温度で、目的とする成分(B)の分子量に応じて1〜20時間行うことが望ましい。
【0025】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物には添加剤として、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーおよびエラストマーからなる群から選ばれた1種以上の樹脂を少量であれば添加することができる。多量に添加すると、エポキシ樹脂中に分散したシリカ微粒子の高分子凝集剤として作用し、シリカ微粒子の凝集を起こしフィルトレート問題が発生する。添加量はエポキシ樹脂に対して10質量%以下であることが望ましく、より望ましくは5質量%以下である。
【0026】
この添加剤は、エポキシ樹脂組成物の硬化物の靭性を向上させ、かつ、エポキシ樹脂組成物の粘弾性を変化させて粘度、貯蔵弾性率およびチキソトロピー性を適正化する役割がある。添加剤として用いられる熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーまたはエラストマーは、単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。
熱可塑性樹脂としては、主鎖に、炭素−炭素結合、アミド結合、イミド結合、エステル結合、エーテル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、尿素結合、チオエーテル結合、スルホン結合、イミダゾール結合、およびカルボニル結合からなる群から選ばれた結合を有する熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリアラミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、ポリベンズイミダゾール、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、およりポリエーテルスルホンのようなエンジニアリングプラスチックに属する熱可塑性樹脂の一群がより好ましく用いられる。特に好ましくは、耐熱性に優れることから、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホンおよびポリエーテルスルホンなどが好ましく使用される。また、これらの熱可塑性樹脂が、熱硬化性樹脂との反応性を有することは、靭性向上および硬化樹脂の耐環境性維持の観点から好ましい態様である。特に好ましい官能基としては、カルボキシル基、アミノ基および水酸基などが挙げられる。
【0027】
また、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化剤としては、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンのような芳香族アミン、脂肪族アミン、イミダゾール誘導体、ジシアンジアミド、テトラメチルグアニジン、チオ尿素付加アミン、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物のようなカルボン酸無水物、カルボン酸ヒドラジド、カルボン酸アミド、ポリフェノール化合物、ノボラック樹脂、ポリメルカプタン、三フッ化ホウ素エチルアミン錯体のようなルイス酸錯体などが挙げられる。
これらの硬化剤には、硬化活性を高めるために、適当な硬化助剤を組み合わせることができる。好ましい例としては、ジシアンジアミドに3−フェニルー1,1−ジメチル尿素、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1―ジメチル尿素(DCMU)、3−(3−クロロー4−メチルフェニル)−1,1−ジメチル尿素、2,4−ビス(3,3−ジメチルウレイド)トルエンのような尿素誘導体を硬化助剤として組み合わせる例、カルボン酸無水物やノボラック樹脂に三級アミンを硬化助剤として組み合わせる例、ジアミノジフェニルスルホンにイミダゾール化合物、フェニルジメチルウレア(PDMU)などのウレア化合物、三フッ化エチルアミン、三塩化アミン錯体などのアミン錯体を硬化助剤として組み合わせる例がある。
【0028】
本発明のエポキシ樹脂組成物は強化繊維に含浸し、加熱により硬化することにより強化繊維複合材料を得ることができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物と組み合わせる強化繊維には制限は無く、炭素繊維、ガラス繊維、有機繊維、ボロン繊維、スチール繊維などを、トウ、クロス、チョップドファイバー、マットなどの形態で使用できる。
これらの強化繊維のうち、炭素繊維や黒鉛繊維は非弾性率が良好で軽量化に大きな効果が認められるので本発明には好ましい。又、用途に応じてあらゆる種類の炭素繊維又は黒鉛繊維を用いることができるが、引張強度3500MPa以上、引張弾性率190GPa以上の炭素繊維又は黒鉛繊維が特に好ましい。
また、繊維強化複合材料の用途にも制限は無く、テニスラケット、ゴルフシャフトなどの汎用品に使用できるが、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いた繊維強化複合材料は繊維方向の圧縮強度に優れることから、特に航空機用部品への使用に最適である。
【0029】
繊維強化複合材料の製造方法としては、プリプレグと呼ばれるシート状の成形中間体に加工して、オートクレーブ成形、シートラップ成形、プレス成形などの成形方法や、強化繊維のフィラメントやプリフォームにエポキシ樹脂組成物を直接含浸させて成形物を得るRTM、VaRTM、フィラメントワインディリング、RFIなどの成形法を用いることができるが、これらの成形方法に限られるものではない。
【0030】
(実施例)
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
【0031】
(原材料樹脂)
シリカ微粒子がコロイド状に分散したエポキシ樹脂:
Nanopox E430
nanoresins AG社製シリカ微粒子がコロイド状に分散したエポキシ樹脂、シリカ微粒子含有量40質量%、シリカ微粒子平均粒子径30nm
多官能エポキシ樹脂:
ELM−100 住友化学株式会社製パラアミノクレゾール型エポキシ樹脂(3官能)、エポキシ当量107eq/g
ビスフェノールA型エポキシ樹脂:
ジャパンエポキシレジン株式会社製jER1002
末端水酸基変性ポリエーテルサルフォン:
住友化学工業株式会社製5003P、平均分子量24000
ジアミノジフェニルスルホン:
3,3’−ジアミノジフェニルスルホン 日本合成化工株式会社製アミン型硬化剤
(樹脂粘度の測定)
レオメトリクス社製レオメーターDSR−200を用い、直径25mmのパラレルプレートを用い、パラレルプレート間のエポキシ樹脂組成物の厚みを0.5mmとし、角速度10ラジアン/秒の条件で昇温速度2℃/分で粘度測定を行った。
【0032】
(加熱硬化樹脂板の作製方法)
エポキシ樹脂組成物を2mm厚のポリテトラフルオロエチレンのスペーサーを挟んだ2枚のガラス(2mm厚)の間に注入、180℃2時間の硬化条件で加熱硬化し、加熱硬化樹脂板を得た。
【0033】
(硬化樹脂板中のシリカ微粒子の分散状態)
硬化樹脂板中の知りか微粒子の分散状態は、硬化樹脂板の透明性を目視で評価し、以下の判断基準で評価した。
○:硬化樹脂板は透明であり、シリカ微粒子の分散状態が良好であることを示す。
×:硬化樹脂板は不透明であり、シリカ微粒子の分散状態が悪く凝集体を形成していることを示す。
【0034】
(樹脂板の曲げ弾性率の測定方法)
樹脂板を試験片(長さ60mm×幅8mm×厚み2mm)に加工し、3点曲げ冶具(圧子、サポートとも3.2mmR、サポート間距離32mm)を設置したインストロン社製万能試験機を用い曲げ特性を測定した。荷重負荷速度は2mm/分とした。
【0035】
(耐熱性の測定方法)
樹脂板を試験片(長さ55mm×幅12.5mm×厚み2mm)に加工し、TAインストルメンツ社製レオメーターARES−RDAを用い、測定周波数1Hz、昇温速度5℃/分で、logG’を温度に対してプロットし、logG’の平坦領域の近似直線と、G’が転移する領域の近似直線との交点から求まるガラス転移温度をG’Tgとして記録した。
【0036】
(プリプレグの作製)
簡易型ロールコーターを用い、離型紙片面に得られたエポキシ樹脂組成物を目付78g/mで均一に塗布した樹脂担持シートを得た。得られた樹脂担持シートの樹脂塗布面上に炭素繊維(三菱レイヨン株式会社製、MR50、引張強度:5400MPa、引張弾性率:290GPa)を繊維目付が145g/mになるようにドラムワイドにて巻き付けることで、炭素繊維目付145g/mで樹脂含有率35質量%の一方向プリプレグを得た。
【0037】
(タックの評価方法)
得られたプリプレグのタックは、指先による触感で試験し、以下の判断基準で評価した。
○:タック性が適度であるため扱いやすいことを示す。
×:タック性が非常に強い又は弱いために扱いにくいことを示す。
【実施例1】
【0038】
多官能エポキシ樹脂 100質量部に対してジアミノジフェニルスルホン 9質量部を160℃にて2時間予備反応させた予備反応物70質量部に、シリカ微粒子がコロイド状に分散したエポキシ樹脂 50質量部、ジアミノジフェニルスルホン 46質量部を加え、70℃にて1時間均一混合し、エポキシ樹脂組成物を調製した。
【0039】
得られたエポキシ樹脂組成物を硬化させ曲げ弾性率と耐熱性を測定した。その結果を表1に示す。
【0040】
また得られた樹脂担持シートの樹脂塗布面上に炭素繊維(三菱レイヨン株式会社製、MR50、引張強度:5400MPa、引張弾性率:290GPa)を繊維目付が145g/mになるようにドラムワイドにて巻き付けることで、炭素繊維目付145g/mで樹脂含有率35質量%の一方向プリプレグを得た。
【0041】
評価結果を表1に示した。
【0042】
実施例1で得られた硬化樹脂板の曲げ弾性率は、高い値であり、また、プリプレグのタック性も良好であった。
【0043】
(比較例1)
「多官能エポキシ樹脂 100質量部に対してジアミノジフェニルスルホン 9質量部を160℃にて2時間予備反応させた予備反応物70質量部」に替えて、「多官能エポキシ樹脂 100質量部に対してジアミノジフェニルスルホン 9質量部を加えた混合物」を用いる以外は実施例1と同様に操作しエポキシ樹脂組成物を得た。評価結果を表1に示した。
【0044】
(比較例2〜4)
樹脂組成を変更する以外は、比較例1と同様に行った。評価結果を表1に示した。比較例1〜4のエポキシ樹脂組成物は、プリプレグのタック性が強すぎ、またはシリカ微粒子が凝集しており不適であった。
【0045】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0046】
以上、詳細に説明したように、本発明のエポキシ樹脂組成物は、硬化物の剛性が高く、プリプレグとすると良好なタックを発現するプリプレグを得ることができる。そして、このプリプレグを用いることで繊維方向の圧縮強度に優れた繊維強化複合材料を得ることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)を含み、成分(A)および成分(B)の合計量100質量%に対して、成分(A)が10〜80質量%であるエポキシ樹脂組成物。
(A)シリカ微粒子がコロイド状に分散したエポキシ樹脂
(B)多官能エポキシ樹脂100質量部とジアミノジフェニルスルホン5〜10質量部とを120〜160℃の温度で1〜20時間反応させた予備反応物
【請求項2】
成分(B)中の多官能エポキシ樹脂としてアミノフェノール型エポキシ樹脂を含む、請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
成分(B)中の多官能エポキシ樹脂としてアミノクレゾール型エポキシ樹脂を含む、請求項1記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物と強化繊維とを含んでなるプリプレグ。
【請求項5】
請求項4記載のプリプレグを硬化させて得られる繊維強化複合材料。

【公開番号】特開2010−100696(P2010−100696A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−271822(P2008−271822)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】