説明

エマルションの製造方法

【課題】高剪断攪拌を要することがなくとも、平均粒子径が小さく、粒度分布が狭いエマルション粒子群を含むエマルションの製造方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】エマルションの原料が攪拌された流体を、連続的に静止型分散機へ供給して、該静止型分散機により分散させることを特徴とするエマルションの製造方法、並びに、下記(1)〜(4)を具備するエマルション製造装置。
(1)エマルションの原料を(2)に供給する手段
(2)エマルションの原料を攪拌する手段
(3)(2)で得られた流体を(4)に連続的に供給する手段
(4)妨害材を有する管路に(3)から供給された流体を移動させ、該管路中の流体に、衝突、分割、合流、転換及び反転からなる群から選ばれる少なくとも一つの作用を与え、分散させる手段

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
食品、化学工業薬品、医薬品、農薬品、化粧品などに用いられるエマルションの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エマルションの製造方法としては、例えば、水、油及び乳化剤を分散させる方法、高分子のモノマーを乳化剤存在下に水中にて重合させながら分散させる方法などがあり、得られたエマルションは、牛乳、マーガリンなどの食品;離型剤、紙塗工剤、接着剤などの化学工業薬品;スプレー、注射薬などの医農薬品;クリーム、ローションなどの化粧品などに広く用いられている。
このようなエマルションとしては、平均粒子径が小さく、粒度分布が狭いエマルション粒子群を含むエマルションが求められており、具体的には、エマルションの原料を攪拌によって分散させて比較的大きな平均粒子径を有するエマルション粒子群を含むエマルションを製造したのち、さらに高剪断攪拌により小さい平均粒子径のエマルション粒子群を含むエマルションを製造する方法が提案されている(特許文献1及び特許文献2)。
しかしながら、これらの方法においては、高剪断攪拌することのできる装置が必要であり、得られるエマルション粒子群の粒度分布については開示されていない。
【0003】
【特許文献1】特開平7−173294号公報(請求項1、[0021][発明の効果])
【特許文献2】特開2004−285139号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、高剪断攪拌を要することがなくとも、平均粒子径が小さく、粒度分布が狭いエマルション粒子群を含むエマルションの製造方法及び製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、エマルションの原料を攪拌し、得られた流体を連続的に静止型分散機へ供給して、該静止型分散機により分散させることを特徴とするエマルションの製造方法、並びに、下記(1)〜(4)を具備するエマルション製造装置である。
(1)エマルションの原料を(2)に供給する手段
(2)エマルションの原料を攪拌する手段
(3)(2)で得られた流体を(4)に連続的に供給する手段
(4)妨害材を有する管路に(3)から供給された流体を移動させ、該管路中の流体に、衝突、分割、合流、転換及び反転からなる群から選ばれる少なくとも一つの作用を与え、分散させる手段
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、攪拌による分散及び静止型分散機による分散という2つの異なる手段を順次、用いることにより、高剪断攪拌を要することがなくとも、平均粒子径が小さく、粒度分布が狭いエマルション粒子群を含むエマルションを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明について、詳細に説明する。
本発明の製造方法で得られるエマルションとしては、通常、(I)水及び油を乳化剤によって分散させたもの、(II)高分子の粒子を乳化剤で分散させたものなどが挙げられる。(I)の場合のエマルションの原料としては、水、油及び乳化剤などであり、(II)の場合のエマルションの原料としては、高分子の単量体、重合開始剤、水及び乳化剤などが挙げられる。
【0008】
(I)及び(II)の共通のエマルション原料である乳化剤としては、例えば、部分ケン化ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの保護コロイド;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなどのノニオン系界面活性剤;アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステルなどのアニオン系界面活性剤;アルキルアンモニウム塩、アルキルベンジルアンモニウム塩、ベタイン、イミダゾリウムベタイン、レシチンなどのカチオン系界面活性剤などが挙げられる。
乳化剤の使用量は、エマルションの安定性などの観点から、通常使用する水100重量部に対して0.01〜20重量部程度であり、乳化剤が界面活性剤の場合は0.01〜10重量部程度、保護コロイドの場合は、0.1〜20重量部程度である。
【0009】
(I)のエマルションの原料として用いられる油は、乳化剤によって水に分散させ得る液体の有機化合物であり、例えば、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素やパラフィンなどの炭化水素、長鎖脂肪酸のアルキルエステル、脂肪酸とグリセリンとのエステルなどの脂肪酸エステルなどが挙げられる。
医農薬品や化粧品などの場合には、例えば、有効成分が結晶であっても油に溶解させてエマルションを製造することができ、本発明の製造方法によって有効成分をエマルション粒子に含有するエマルションが製造できる。
【0010】
(II)のエマルションである場合、エマルション原料とは、高分子の単量体、重合開始剤、水及び乳化剤などであり、本発明の製造方法によって高分子を合成し、得られた高分子は、平均粒子径の小さく、かつ、粒度分布の狭いエマルション粒子として水中に分散されている。
医農薬品や化粧品などの場合には、例えば、有効成分が溶液状であっても、有効成分をエマルション原料として用い、合成される高分子に吸着あるいは包含されながら該高分子とともに水中に分散されて、有効成分を含むエマルションを製造することができる。
【0011】
(II)のエマルション粒子が付加重合体である場合、エマルションの原料としては、例えば、エチレン、プロピレンなどのポリオレフィン;酢酸ビニル、バーサチック酸ビニルなどのビニルエステル;スチレン、塩化ビニルなどのビニルエステル以外のビニル化合物;アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステルなどのα,β−不飽和カルボン酸類等の付加重合し得る単量体などが例示さる。
【0012】
(II)のエマルション粒子がポリウレタンである場合、エマルションの原料としては、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物などが挙げられる。
ポリイソシアネート化合物としては、分子内にイソシアネート基及び/又はそのアダクト体が複数有する化合物であり、例えば、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート、メチルシクロヘキシル−2,4−ジイソシアネート、メチルシクロヘキシル−2,6−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネート)メチルシクロヘキサン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類;2,4−トルイレンジイソシアネート、2,6−トルイレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、1,5′−ナフテンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、ジフェニルメチルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジベンジルジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類;、リジンエステルトリイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、1,8−イソシアネート−4,4−イソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネート、ビシクロヘプタントリイソシアネート、トリメチロールプロパンとトルイレンジイソシアネートとのアダクト体、トリメチロールプロパンと1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートとのアダクト体等のトリイソシアネート類などの付加重合し得る単量体などが挙げられる。
【0013】
ポリオール化合物としては、分子内に水酸基を2個以上有する化合物であり、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の多価アルコール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のポリエーテルポリオール類;アジピン酸、セバシン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フマル酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸等のジカルボン酸類と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,3−プロパンジオール、トリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等のポリオール化合物とから得られるポリエステルポリオール類;ポリカプロラクトンポリオール、ポリβ−メチル−δ−バレロラクトン等のポリラクトン系ポリエステルポリオール類;ポリブタジエンポリオール又はその水添物、ポリカーボネートポリオール、ポリチオエーテルポリオール、ポリアクリル酸エステルポリオールなどが挙げられる。
【0014】
本発明の製造方法は、まず、エマルション原料を攪拌させて流体を製造する。具体的には、例えば、攪拌型分散機にエマルション原料を入れ、攪拌翼を1000回/分〜10000回/分程度の高速で回転させることによりエマルション原料等を分散させる方法などが挙げられる。
前記(I)のエマルションであれば、この段階でエマルション粒子は生成するものの、エマルション粒子群の平均粒子径としては十分な小ささではなく、粒度分布も必ずしも狭くはない。
前記(II)のエマルションであれば、この段階で一部は高分子が生じているがエマルション原料は残存している場合が多い。
【0015】
攪拌型分散機としては、例えば、プロペラ攪拌機、高速回転攪拌機、ホモジナイザー(商品名、攪拌型、特殊機化工業(株)製)、ホモミキサー(商品名、攪拌型、特殊機化工業(株)製)、T.K.ホモミックラインフロー(商品名、特殊機化工業(株)製)などが挙げられる。
【0016】
攪拌型分散機における平均滞留時間は、通常、1秒〜120秒程度である。平均滞留時間が1秒以上であると、エマルションが十分に形成できる傾向があることから好ましく、120秒以下であると、得られるエマルションの平均粒子径が低減される傾向にあることから好ましい。
【0017】
攪拌された流体は、続いて、流体を静止型分散機に連続的に供給してさらに乳化分散させてエマルションを得る。
ここで、静止型分散機とは、管路内に妨害材を有しており、該管路内に攪拌された流体を移動させ、妨害材や管路面に該流体を衝突させたり、妨害材によって該流体を分割させたり、分割された流体を合流させたり、例えば流体を管路面から中央部に変えるような、流体の位置を変えることを意味する転換をさせたり、又は管路面の流体の流れを反転させる作用、あるいは、衝突、分割、合流、転換、反転の作用を組み合わせたりして、分散させる装置であり、具体的には、(a)管路に、流体が交互に回転しながら進行するようにねじり方向が反転するフィンが具備されており、該管路に流体を移動させて、フィンと衝突しながら分散させる装置、(b)管路内に複数の微小孔を設けたエレメント(エレメントが妨害材に相当する)を具備しており、該管路に流体を移動させて、エレメント及び微小孔によって衝突、分割又は合流しさせて流体が分散する装置などが挙げられる。
【0018】
(a)の装置としては、例えば、スタティックミキサー(ノリタケカンパニーリミテッド社製)、スルザースタティックミキサー(スルザーケムテック社)、ラインミキサーSMX型(コークグリッジ社製)等が挙げられ、(b)の装置としては、例えば、分散君(フジキン社製)などが挙げられる。
(b)の装置におけるエレメントの数としては、2〜30程度であり、好ましくは、4〜30程度である。エレメントの数が2以上であると分散性が向上する傾向があることから好ましく、30以下であると操作圧力が低下する傾向があることから好ましい。
【0019】
(b)の装置の入口と出口の圧力損失が50kPa〜1000kPaとなる範囲で流体を供給することで、静止型分散機において十分に分散することができる。
静止型分散機の入口と出口の圧力損失が50kPa以上であると、平均粒子径の粒度分布が狭くなる傾向があることから好ましく、1000kPa以下であると、静止型分散機や静止型分散機への流体供給ラインなどのエマルション製造装置の耐圧性が低減され、設備が簡素化される傾向があることから好ましい。
【0020】
本発明によって得られるエマルションの平均粒子径は、エマルションの種類によって異なるが、水と油からなるエマルションは、ベックマン・コールター株式会社製のコールターカウンターTA−II型で測定すると体積平均粒子径は、通常、5〜100μm、好ましくは、10〜50μm程度である。
【0021】
エマルションの粒度分布は、次式で示されるRelative span factorで表すことができる(以下、R.S.Fで表す場合がある)。
R.S.F=(D90−D10)/D50
ここで、累積粒度分布の小粒子径側からの累積10体積%がD10を表し、累積50体積%がD50を表し、累積90体積%がD90を表す。尚、D50は体積平均粒子径に相当する。累積粒度分布の体積%は、ベックマン・コールター株式会社製のコールターカウンターTA−II型で測定された値である。R.S.Fが小さい値であると、粒度分布が狭いことを表す。
本発明によって得られるエマルションのR.S.Fは、エマルションの種類によって異なるが、水、油及び界面活性剤からなるエマルションは、0.5〜1.1程度であり、水、油及び保護コロイドからなるエマルションは、1.2〜2程度である。
【0022】
本発明の装置は、下記(1)〜(4)を具備するエマルション製造装置である。
(1)エマルションの原料を(2)に供給する手段
(2)エマルションの原料を攪拌する手段
(3)(2)で得られた流体を(4)に連続的に供給する手段
(4)妨害材を有する管路に(3)から供給された流体を移動させ、該管路中の流体に、衝突、分割、合流、転換及び反転からなる群から選ばれる少なくとも一つの作用を与え、分散させる手段
【0023】
本発明の一実施態様である図1に基づいて本発明のエマルション製造装置を説明する。
1は油の1種である流動パラフィン貯蔵タンクであり、2は乳化剤を含んだ水貯蔵タンクである。ポンプ3及び4を使って、これら2つのタンクから「エマルションの原料を攪拌する手段(2)」すなわち、攪拌型分散機5に水と流動パラフィンを供給する。
次いで、オーバーフローの形式で静止型分散機に連続的に供給される。手段(4)である静止型分散機は流体が移送する際にエレメントにより圧損失を与えることから、大気圧から50kPa〜1000kPaの範囲に加圧されて供給され、エレメントによってさらに分散されて、粒子群の平均粒子径が小さく、粒度分布の狭いエマルションを10から取り出すことができる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例を挙げて、本発明を説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【0025】
(実施例1)
流動パラフィン(商品名:クリストールN72、エクソンモービル製)を油相とし、イオン交換水100kg及びノニオン系界面活性剤ポリオキシエチレンラウリルエーテル(商品名:ペグノールL4、東邦化学社製)0.4kgを予め調製して水相とした。図1に記載の装置を用いて、ポンプを用いて油相及び水相をいずれも250kg/hrで、攪拌型分散機のT.K.ホモミックラインフロー(特殊機化工業製)に連続供給した。攪拌数=6020回/分で分散させ、オーバーフローライン9より排出した。攪拌型分散機における平均滞留時間は、10秒であった。オーバーフローラインの直後に設置している静止型分散機の分散君(7、フジキン社製)で分散させた。エレメントの微小孔径は2mmとし、使用したエレメント数は2枚とした。この時、ポンプ吐出側から分散君入り口間での操作圧力は140kPaG(ゲージ圧、大気圧から加圧された圧力)であった。
ベックマン・コールター株式会社製のコールターカウンターTA−II型を用いてエマルション粒子径を測定したところ、体積平均粒子径は、23μmであった。R.S.Fは、0.71であった。得られたエマルションについて、体積基準粒度分布を図2に示した。
【0026】
(実施例2〜5)
攪拌型分散機5への油相及び水相の供給量、乳化剤の種類と量、攪拌型分散機5の回転数、攪拌型分散機5における平均滞留時間、静止型分散機に供給される際の大気圧からの加圧量、及び静止型分散機のエレメント数を表1とする以外は実施例1と同様に実施した。
得られたエマルションの体積平均粒径及びR.S.Fは表1に実施例1の結果とともにまとめた。実施例1及び2で得られたエマルションについて、体積基準粒度分布を図2に示した。また、実施例3及び4で得られたエマルションについて、体積基準粒度分布を図3に示した。
【0027】
【表1】

1)ノニオン系界面活性剤 ポリオキシエチレンラウリルエーテル
(商品名:ペグノールL4、東邦化学社製)
2)保護コロイド ポリビニルアルコール(商品名:Gosenol GL05、日本合成化学社製)
【0028】
(比較例1及び2)
攪拌型分散機5への油相及び水相の供給量、乳化剤の種類と量、攪拌型分散機5の回転数、攪拌型分散機5における平均滞留時間については、表2に記載のとおりとし、図1の装置のオーバーフローライン9から取り出したエマルションを比較例のエマルションとした。結果を表2にまとめた。
比較例1(四角破線)の体積基準粒度分布は実施例1(丸太線)及び実施例2(三角細線)の結果とともに図2にまとめた。比較例2(四角破線)の体積基準粒度分布は実施例3(丸太線)及び実施例4(三角細線)の結果とともに図3にまとめた。粒度分布の図から明らかなように、本発明の実施例は攪拌型分散機のみで乳化されたエマルションよりも明らかに粒度分布が狭いことがわかる。
【0029】
【表2】

1)ノニオン系界面活性剤 ポリオキシエチレンラウリルエーテル
(商品名:ペグノールL4、東邦化学社製)
2)保護コロイド ポリビニルアルコール(商品名:Gosenol GL05、日本合成化学社製)
【0030】
(実施例6)
ピリプロキシフェン21kg、ハイゾールSAS−296(商品名、1−フェニル−1−キシリルエタンと1−フェニル−1−エチルフェニルエタンの混合物、日本石油製)22kg、及びアジピン酸ジブチル(花王製)11kgと混合し均一な溶液とした後に、0.5kgのスミジュールN−3300(商品名、イソシアヌレート型多価イソシアネート、住化バイエルウレタン製)と混合し、油相を調製した。
別途、高分子アニオン系アラビアガム(商品名:アラビックコールSS、三栄薬品貿易社製) 4kg、エチレングリコール 9kg、及びイオン交換水 42kgを混合し、水相を調製した。
上記の油相と水相とを、図1に記載の装置を用いて、ポンプを用いていずれも250kg/hrで、攪拌型分散機のT.K.ホモミックラインフロー(特殊機化工業製)に連続供給した。攪拌数=5300回/分で分散させ、オーバーフローライン9より排出した。攪拌型分散機における平均滞留時間は、10秒であった。続いてオーバーフローラインの直後に設置している静止型分散機の分散君(7、フジキン社製)で分散させた。該静置型分散機におけるエレメントの穿孔口径は2mmとし、使用したエレメント数は6枚とした。この時、ポンプ吐出側から分散君入り口間での操作圧力は410kPaG(ゲージ圧、大気圧から加圧された圧力)であった。
得られた分散液の内1000gを取り出し、75℃にて48時間緩やかに攪拌し、マイクロカプセル被膜を形成させた。
得られたマイクロカプセル含有液に9gのザンサンガムと、2kgの防腐剤入り増粘剤水溶液(アルミニウムマグネシウムシリケート 1wt%、バイオホープL(商品名、入手先は?) 1wt%およびプロピレングリコール 4wt%を均一に分散させた水溶液)とを加えた。ベックマン・コールター株式会社製のコールターカウンターTA−II型にてマイクロカプセルの粒度分布を測定した。得られた体積平均粒径及びR.S.Fは表3にまとめた。
【0031】
(実施例7、8)
攪拌型分散機5への油相及び水相の供給量、攪拌型分散機5の回転数、攪拌型分散機5における平均滞留時間、静止型分散機に供給される際の大気圧からの加圧量、及び静止型分散機のエレメント数を表3とする以外は実施例6と同様に実施した。得られた体積平均粒径及びR.S.Fは表3に実施例6の結果とともにまとめた。
【0032】
【表3】

【0033】
(比較例3〜5)
攪拌型分散機5への油相及び水相の供給量、攪拌型分散機5の回転数、攪拌型分散機5における平均滞留時間、静止型分散機に供給される際の大気圧からの加圧量を表3とし、静止型分散機のエレメント数を0枚とする以外は実施例6と同様に実施した。得られた体積平均粒径及びR.S.Fは表4にまとめた。
R.S.Fの結果から明らかなように、本発明の実施例は攪拌型分散機のみで分散するよりも粒度分布が狭いことがわかる。
【0034】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0035】
牛乳、マーガリンなどの食品;離型剤、紙塗工剤、接着剤などの化学工業薬品;スプレー、注射薬などの医農薬品;クリーム、ローションなどの化粧品など、平均粒子径が小さく、粒度分布の狭いエマルションが求められる分野に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の一形態であるエマルション製造装置
【図2】実施例1及び2、並びに比較例1のエマルション粒子の粒度分布曲線
【図3】実施例3及び4、並びに比較例2のエマルション粒子の粒度分布曲線
【符号の説明】
【0037】
1 流動パラフィン貯蔵タンク(油相タンク)
2 水貯蔵タンク(乳化剤入り)
3 油相供給用ポンプ
4 水相供給用ポンプ
5 攪拌型分散機
6 攪拌翼
7 静止型分散機
8 エレメント
9 オーバーフローライン(攪拌型分散機から静止型分散機への流体供給ライン)
10 エマルション取出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エマルションの原料を攪拌し、得られた流体を連続的に静止型分散機へ供給して、該静止型分散機により分散させることを特徴とするエマルションの製造方法。
【請求項2】
エマルション原料が、少なくとも水、油及び乳化剤である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
エマルション原料が、少なくとも高分子の単量体、重合開始剤、水及び乳化剤である請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
エマルションの原料の攪拌を攪拌型分散機で実施する請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
攪拌型分散機における平均滞留時間が1〜120秒である請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
攪拌型分散機における攪拌数が1000回/分〜10000回/分である請求項4又は5に記載の製造方法。
【請求項7】
静止型分散機が、複数の微小孔を設けたエレメントを管路内に具備し、流体が該管路を移動して、エレメント及び微小孔によって衝突、分割、合流又は反転して流体が分散する装置である請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
エレメントの数が2〜30である請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
静止型分散機の入口と出口の圧力損失が50kPa〜1000kPaとなる範囲で流体を供給する請求項7又は8に記載の製造方法。
【請求項10】
下記(1)〜(4)を具備するエマルション製造装置。
(1)エマルションの原料を(2)に供給する手段
(2)エマルションの原料を攪拌する手段
(3)(2)で得られた流体を(4)に連続的に供給する手段
(4)妨害材を有する管路に(3)から供給された流体を移動させ、該管路中の流体に、衝突、分割、合流、転換及び反転からなる群から選ばれる少なくとも一つの作用を与え、分散させる手段

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−312165(P2006−312165A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−105941(P2006−105941)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】