エマルジョン粒子及びそれを用いたスクリーン印刷用マスクの作製方法
【課題】本発明の課題は、溶剤を含浸したウエス擦りに対しても樹脂層剥がれの発生しにくい樹脂層を形成するためのエマルジョン粒子、およびそれを用いて樹脂層を形成してなるスクリーン印刷用マスクの作製方法を提供することである。
【解決手段】高絶縁性媒体中に分散した分散剤と芯重合体とからなるエマルジョン粒子において、該芯重合体がヒドロキシ基及びブロック化されたイソシアネート基を含み、かつ、カルボキシル基とメトキシエチル基とから選択される少なくともひとつの基を含有することを特徴とするエマルジョン粒子、及び該エマルジョン粒子をスクリーン印刷用マスクの開口部に電着してフィルム化した後、架橋させるスクリーン印刷用マスクの作製方法。
【解決手段】高絶縁性媒体中に分散した分散剤と芯重合体とからなるエマルジョン粒子において、該芯重合体がヒドロキシ基及びブロック化されたイソシアネート基を含み、かつ、カルボキシル基とメトキシエチル基とから選択される少なくともひとつの基を含有することを特徴とするエマルジョン粒子、及び該エマルジョン粒子をスクリーン印刷用マスクの開口部に電着してフィルム化した後、架橋させるスクリーン印刷用マスクの作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エマルジョン粒子及びそれを用いた開口部の内壁に樹脂層を形成してなるスクリーン印刷用マスクの作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型化、多機能化に伴い、プリント配線基板の高密度化や配線パターンの微細化が進められており、プリント配線基板への電子部品の高密度実装化が広く行われている。このプリント配線基板への電子部品の高密度実装化においては、プリント配線基板面に電子部品を実装するためにクリーム半田を印刷し、半田端子に電子部品を搭載した後にリフロー炉で加熱して半田付けを行う。上記クリーム半田の印刷方法としては、スクリーン印刷による工程が広く用いられている。一般的に、スクリーン印刷は、パターン状の開口部が形成されたスクリーン印刷用マスクを印刷すべき被印刷基板の上面にセットし、スクリーン印刷用マスクのスキージ面にクリーム半田等のペースト材料を供給してスキージによって掻き寄せることによって、開口部を通してペースト材料をパターン状に転写印刷する方法である。
【0003】
しかしながら、スクリーン印刷用マスクを用いてクリーム半田を印刷する際、パターンが高密度かつ高精細になると、クリーム半田のスクリーン印刷用マスクからの抜け性が悪化する。また、近年、環境面の問題からクリーム半田の素材も無鉛化の動きが高まっており、その対策の一環として、鉛を含まない鉛フリー半田がクリーム半田の素材として用いられるようになってきている。鉛フリーのクリーム半田は、従来のクリーム半田に比べ転写性に劣る傾向がある。クリーム半田のスクリーン印刷用マスクからの抜け性の悪化により、半田端子の突起や欠け、ひび割れ、抜け等の欠陥が発生し、歩留まり低下の大きな原因となっていた。
【0004】
このような問題を解決するために、スクリーン印刷用マスクの少なくとも開口部の内壁に樹脂層を形成したスクリーン印刷用マスクが提案されている。これによれば、樹脂を塗布することで開口部の内壁に樹脂層を形成し、内壁の凹凸を平滑とすることで、クリーム半田と内壁の摩擦が減少し、クリーム半田の抜け性を向上させている。また、開口部の内壁にクリーム半田とのはじき性または滑り性の良好な化合物(例えば、フッ素樹脂、シリコン樹脂等)を形成することで、クリーム半田の抜け性を向上させている。樹脂層を内壁に形成する手段としては、ディップ法、スプレー法、スピンコート等が考えられる。これらの方法では、表面張力によって開口部のエッジ部に塗布液がたまる問題、開口の鋭角部分に塗布液がたまる問題、塗布液の垂れや乾燥ムラの問題が発生し、均一な薄膜を形成することが難しい。そのため、図17に示すように、スクリーン印刷用マスク1に樹脂層の突起9、隔壁10または埋まり11等の欠陥が発生することがあり、樹脂層が不均一になるという問題があった。
【0005】
一方、高絶縁性媒体中に分散された樹脂粒子を電着して樹脂層を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。この方法では、まず、図9に示したように、開口部5を有するスクリーン印刷用マスク1の片面に保護シート7を貼り付ける。その後、図10に示したように、スクリーン印刷用マスク1に対向するように電極12を設置し、スクリーン印刷用マスク1を接地して適正なバイアス電圧を印加すると、電界に従って帯電したエマルジョン粒子13がスクリーン印刷用マスク1方向に電気泳動する。電気泳動によって、スクリーン印刷用マスク1方向に近づいてきたエマルジョン粒子13は、電位が0に近いところから付着するため、接地したスクリーン印刷用マスク1の表面を覆うようにしてエマルジョン粒子13が均一に付着していく。そのため、電着法では、図11に示すように、開口部5の内壁であっても、樹脂層の突起9、隔壁10および埋まり11等の欠陥が生じることがなく、均一な樹脂層2を開口部5の内壁に形成できる。
【0006】
また、スクリーン印刷用マスクを繰り返し使用することにより、スクリーン印刷用マスクの開口部または被印刷基板接触面にクリーム半田の残存物が発生する。この際、アルコール類やグリコール類といった有機溶剤によって超音波洗浄したり、有機溶剤を含浸したウエスによって拭き取ったりする必要が生じる。そのため、有機溶剤に膨潤せず、ウエスの擦れに耐えうる樹脂層の形成が必要であった。そのような樹脂層を電着法で形成する方法として、少なくともイソシアネート基および活性水素基を含有したエマルジョン粒子を加熱により架橋する方法が提案されている。しかしながら、このエマルジョン粒子では、溶剤を含浸したウエスによる強い擦れに対して樹脂層の剥離が生じることがあり、さらなる改良が望まれていた(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−155554号公報
【特許文献2】特開2008−246738号公報
【特許文献3】特開2008−201850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、有機溶剤を含浸したウエス擦りに対しても樹脂層の剥離が発生しにくい樹脂層を形成するためのエマルジョン粒子、及びそれを用いて樹脂層を形成してなるスクリーン印刷用マスクの作製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
高絶縁性媒体中に分散した分散剤と芯重合体とからなるエマルジョン粒子において、該芯重合体がヒドロキシ基及びブロック化されたイソシアネート基を含み、かつ、カルボキシル基とアルコキシアルキル基とから選択される少なくともひとつの基を含有することを特徴とするエマルジョン粒子によって上記課題が解決されることを見出した。
【0010】
上記エマルジョン粒子の酸価が、60mgKOH/g以下であることが好ましいことを見出した。
【0011】
また、少なくとも開口部の内壁に樹脂層を形成してなるスクリーン印刷用マスクの作製方法において、金属材料からなるスクリーン印刷用マスクの少なくとも開口部の内壁に上記のエマルジョン粒子を電着する工程、エマルジョン粒子をフィルム化する工程、フィルム化した層を加熱によって架橋させる工程を含むことを特徴とするスクリーン印刷用マスクの作製方法によって上記課題が解決されることを見出した。
【発明の効果】
【0012】
本発明のエマルジョン粒子は、ヒドロキシ基及びブロック化されたイソシアネート基を含んでいる。このエマルジョン粒子を金属材料からなるスクリーン印刷用マスクの少なくとも開口部の内壁に電着し、低温加熱でフィルム化した後に、さらに、高温の条件にて処理することで、イソシアネート基が発生する。このイソシアネート基とヒドロキシ基とが反応することで、樹脂層の架橋が起こり、耐溶剤性が著しく向上する。本発明のエマルジョン粒子は、カルボキシル基とアルコキシアルキル基とから選択される少なくともひとつの基をさらに含有しているが、カルボキシル基は、ヒドロキシ基と同様にイソシアネート基と架橋するほか、ヒドロキシ基とイソシアネート基との反応を促進させるため、樹脂層の架橋密度が向上して耐溶剤性がさらに向上する。なお、エマルジョン粒子の酸価が60mgKOH/g以下となるようにカルボキシル基を導入すると、エマルジョン粒子が高絶縁性媒体で凝集しなくなるという効果が得られる。アルコキシアルキル基は、粒子の分散性を良好にし、また、架橋後の耐溶剤性も向上させる効果をもたらす。よって、本発明のエマルジョン粒子を用いて樹脂層が形成されたスクリーン印刷用マスクの作製方法は、有機溶剤を含浸したウエス擦りに対しても樹脂層の剥離が発生しにくいスクリーン印刷用マスクが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】開口部の内壁のみに樹脂層を形成したメタルマスクの断面図である。
【図2】開口部の内壁および被印刷基板接触面に樹脂層を形成したメタルマスクの断面図である。
【図3】全表面に樹脂層を形成したメタルマスクの断面図である。
【図4】開口部の内壁のみに樹脂層を形成したソリッドマスクの断面図である。
【図5】開口部の内壁および被印刷基板接触面に樹脂層を形成したソリッドマスクの断面図である。
【図6】全表面に樹脂層を形成したソリッドマスクの断面図である。
【図7】全表面に樹脂層を形成したサスペンドマスクの断面図である。
【図8】メタルマスクの断面図である。
【図9】保護シートを貼り付けたメタルマスクの断面図である。
【図10】電着装置の概念図である。
【図11】本発明のスクリーン印刷用マスクの作製方法の一工程図である。
【図12】開口部の内壁および被印刷基板接触面に樹脂層を形成したメタルマスクの断面図である。
【図13】樹脂層と厚膜樹脂層がこの順に積層したスクリーン印刷用マスクの断面図である。
【図14】厚膜樹脂層と樹脂層がこの順に積層したスクリーン印刷用マスクの断面図である。
【図15】樹脂層と厚膜樹脂層がこの順に積層したスクリーン印刷用マスクの断面図である。
【図16】厚膜樹脂層と樹脂層がこの順に積層したスクリーン印刷用マスクの断面図である。
【図17】樹脂層の突起、隔壁、埋まりの概念図である。
【図18】本発明のスクリーン印刷用マスクの作製方法の一工程図である。
【図19】本発明のスクリーン印刷用マスクの作製方法の一工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係わる高絶縁性媒体としては、直鎖状もしくは分枝状の脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素およびこれらのハロゲン置換体が挙げられる。例として、オクタン、イソオクタン、デカン、イソデカン、デカリン、ノナン、ドデカン、イソドデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等が挙げられる。商品名として、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL(EXXON社製)、IP1620(商品名、出光興産社製)等がある。これらの高絶縁性媒体は単独もしくは混合して用いることができる。
【0015】
本発明に係わる分散剤は、長鎖単量体を重合して得られる高絶縁性媒体に可溶の重合体である。分散剤の質量平均分子量は1000以上が好ましく、これ未満の分子量ではエマルジョン粒子の分散安定性が低下し、エマルジョン粒子の凝集、沈降が生じやすくなることがある。分散剤の分子量の上限は特に定められていないが、分子量が100万を超える場合には重合体溶液の粘度が上昇し、取り扱い難くなる場合がある。長鎖単量体として、一般式化1もしくは化2で示されるような化合物を少なくとも50質量%以上100質量%以下含んでいることが好ましい。これ以外の重合成分としては、適当な単量体を、生成する分散剤の高絶縁性媒体に対する溶解度を損なわない範囲で含有させることができる。
【0016】
【化1】
【0017】
(化1中、R1は水素原子またはメチル基を、R2は炭素数8以上30以下のアルキル基を表す。また、連結基Tは−COO−基もしくは−CONH−基を表す。)
【0018】
【化2】
【0019】
(化2中、R3は炭素数8以上30以下のアルキル基を表す。)
【0020】
本発明のエマルジョン粒子の芯重合体は、ブロック化されたイソシアネート基を含有する。ブロック化されたイソシアネート基とは、イソシアネート基をブロック剤と反応させて得られ、加熱をすることでブロック剤が開裂しイソシアネート基が発生する官能基である。ブロック化されたイソシアネート基を芯重合体に含有させる方法は、ブロック化されたイソシアネート基を有する単量体を芯重合体の単量体の一成分として使用するか、イソシアネート基を有する単量体を重合して側鎖にイソシアネート基を有する重合体を形成した後にブロック剤と反応させる方法がある。
【0021】
ブロック剤としては、フェノール、クレゾール、p―エチルフェノール、p―tert―ブチルフェノール等のフェノール系、エタノール、ブタノール、エチレングリコール、メチルセルソルブ、ベンジルアルコール等のアルコール系、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル等の活性メチレン系、アセトアニリド、アセトアミド等の酸アミド系、その他イミド系、アミン系、イミダゾール系、ピラゾール系、尿素系、カルバミン酸系、イミン系、ホロドアルドキシム、アセトアルドキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム系、メルカプタン系、重亜硫酸ソーダ系、重亜硫酸カリウム等の亜硫酸塩系、ラクタム系等がある。
【0022】
イソシアネート基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリロイルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、p−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアナート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアナートが挙げられる。また、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類と2,4−トリレンジイソシアネートまたはイソホロンジイソシアネート等の2官能イソシアネート化合物を1:1付加物等も挙げられる。
【0023】
ブロック化されたイソシアネート基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−(O−[1′−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(O−[1′−エチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(O−[1′−ブチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸O−[1′−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノメチル、(メタ)アクリル酸3−(O−[1′−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸O−(1′−メチリデンアミノ)カルボキシアミノメチル、(メタ)アクリル酸2−(O−[1′−メチリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸3−(O−[1′−メチリデンアミノ]カルボキシアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸O−(1′−エチリデンアミノ)カルボキシアミノメチル、(メタ)アクリル酸2−(O−[1′−エチリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸3−(O−[1′−エチリデンアミノ]カルボキシアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸O−(1′−プロピリデンアミノ)カルボキシアミノメチル、(メタ)アクリル酸2−(O−[1′−プロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸3−(O−[1′−プロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−[(3,5−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチル等がある。
【0024】
芯重合体を合成する際のブロック化されたイソシアネート基を有する単量体の配合比率は、粒子の凝集等が発現しない範囲内で調整することができ、芯重合体の全単量体100質量部に対して10〜70質量部の範囲内で使用することが好ましく、20〜60質量部がより好ましく、30〜50質量部がさらに好ましい。10質量部より少ないと樹脂層の耐溶剤性が不足することがあり、70質量部より多いとエマルジョン粒子の凝集が発生しやすくなる。
【0025】
本発明のエマルジョン粒子の芯重合体は、ヒドロキシ基を含有する。ヒドロキシ基を含有させるには、ヒドロキシ基を有する単量体を芯重合体の単量体の一成分として使用する。ヒドロキシ基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキサンジメタノール、(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、(メタ)アクリル酸グリセリン、(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール等が挙げられる。ヒドロキシ基を有する単量体の配合比率は、粒子の凝集等が発生しない範囲内で調整することができ、ブロック化されたイソシアネート基1モルに対して、0.1〜10モルの範囲内で使用することが好ましく、0.2〜4モルがより好ましく、0.3〜1.5モルがさらに好ましい。
【0026】
本発明のエマルジョン粒子は、保存時及び電着時には粒子形状であり、電着後にフィルム化される必要がある。フィルム化は加熱等の手段による。ブロック化されていないイソシアネート基があると、エマルジョン粒子は保存時に架橋反応が進行するが、本発明のエマルジョン粒子はイソシアネート基がブロック化されていることで、保存時における架橋反応の進行を抑制できる。そして、架橋が進んでいない本発明のエマルジョン粒子は融点または軟化点が低いため、低温にて容易にフィルム化することができる。フィルム化した後にさらに融点または軟化点よりも高温の条件にて処理することでイソシアネート基が発生し、発生したイソシアネート基とヒドロキシ基とが反応することで、樹脂層の架橋が起こり、耐溶剤性が著しく向上する。
【0027】
本発明のエマルジョン粒子の芯重合体は、カルボキシル基とアルコキシアルキル基とから選択される少なくともひとつの基を含有する。カルボキシル基を含有させるには、カルボキシル基を有する単量体を芯重合体の単量体の一成分として使用する。カルボキシル基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマール酸、マレイン酸等が挙げられる。カルボキシル基はイソシアネート基と架橋するほか、ヒドロキシ基との反応を促進し、架橋密度が向上し、耐溶剤性が向上する。カルボキシル基を有する単量体の配合比率は、エマルジョン粒子の酸価が60mgKOH/g以下の範囲内となるようにすることが好ましい。酸価が60mgKOH/g以下の場合、保存時の凝集が発生しにくいという効果が得られる。本発明に係わる酸価とは、エマルジョン粒子1gを中和するのに要するKOHのmg数である。
【0028】
アルコキシアルキル基を含有させるには、アルコキシアルキル基を有する単量体を芯重合体の単量体の一成分として使用する。アルコキシアルキル基を有する単量体としては、一般式化3で示されるような化合物が挙げられる。アルコキシアルキル基を有する単量体は、粒子の分散性を良好にし、架橋後の耐溶剤性も向上する効果をもたらすが、R5、R6の炭素数は1以上2以下であると、これらの効果がより高まるので好ましい。配合比率は、重合体の全単量体100質量部に対して10〜70質量部の範囲内で使用することが好ましく、20〜60質量部がより好ましく、30〜50質量部がさらに好ましい。10質量部より少ないと樹脂層の耐溶剤性が不足することがあり、70質量部より多いとエマルジョン粒子の凝集が発生しやすくなる。
【0029】
【化3】
【0030】
(化3中、R4は水素原子またはメチル基を、R5は炭素数1以上3以下のアルキレン基を、R6は炭素数1以上3以下のアルキル基を表す。R5、R6の炭素数が3の場合、直鎖状であっても、分岐状であっても良い。)
【0031】
本発明のエマルジョン粒子の芯重合体は、上記の単量体のほかに、高絶縁性媒体に可溶であり、重合により該高絶縁性媒体に不溶となる単量体を共重合できる。このような単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、クロロ酢酸ビニル等の炭素数1から炭素数6までの脂肪族カルボン酸のビニルエステル、安息香酸ビニルエステル、あるいはアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等の炭素数1から6までのアルキルエステル類またはアミド類、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メチレンビスアクリルアミド、スチレンおよびその誘導体、ジビニルベンゼン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール等が挙げられる。
【0032】
本発明のエマルジョン粒子は、分散剤と芯重合体がウレタン結合によって結合していることが好ましい。分散剤と芯重合体をウレタン結合で結合する方法は、分散剤にヒドロキシ基を含有させたのち、イソシアネート基と重合性二重結合基を有する単量体のイソシアネート基と分散剤のヒドロキシ基を化学結合させてウレタン結合を形成し、分散剤に未反応の重合性二重結合基を含有させ、次に芯重合体の単量体成分と重合させる方法、分散剤にイソシアネート基を含有させたのち、ヒドロキシ基と重合性二重結合基を有する単量体のヒドロキシ基と分散剤のイソシアネート基を化学結合させてウレタン結合を形成し、分散剤に未反応の重合性二重結合基を含有させ、次に芯重合体の単量体成分と重合させる方法等が挙げられる。分散剤と芯重合体がウレタン結合で結合されていることで、エマルジョン粒子の経時安定性を向上させることが可能となる。
【0033】
本発明のエマルジョン粒子の分散剤と芯重合体の配合比は、分散状態の維持の観点から、分散剤100質量部に対して、芯重合体が50〜5000質量部の範囲内であることが好ましく、さらには100〜2000質量部の範囲で使用することが好ましい。また、エマルジョン粒子のコールターカウンター法で測定した平均粒径は、樹脂層としての厚みの確保、分散状態の維持の観点から、0.05〜1.0μmの範囲であることが好ましく、さらには0.1〜0.6μmの範囲にあることが好ましい。
【0034】
本発明のエマルジョン粒子は、従来公知の重合方法によって作製することができる。例えば、アニオン重合あるいはカチオン重合等のイオン重合法、また、重合開始剤および/または連鎖移動剤を用いてラジカル重合して得られるラジカル重合法、また、重付加あるいは重縮合反応による方法が挙げられる。
【0035】
本発明のエマルジョン粒子は、電着することにより樹脂層を形成できる。この場合、粒子をプラスもしくはマイナスの荷電粒子とせしめ、適正な電界を印加しながらエマルジョン粒子を電着する。そのため、エマルジョン粒子の液に適当な電荷制御剤を添加することにより、該エマルジョン粒子に電荷を付与することとなる。電荷制御剤としては、例えば、特開平6−51567号公報等に示されるカルボキシル基を含有する重合体、ホモゲノールL18(商品名、花王社製)等のポリカルボン酸型高分子界面活性剤を用いることが可能である。また、電着特性に悪影響を及ぼさない範囲で着色剤等の添加剤を含有させることもできる。
【0036】
本発明に係わる金属材料からなるスクリーン印刷用マスクとは、スキージ面にペースト材料をのせ、スキージで掻き寄せることでクリーム半田等のペースト材料を被印刷基板上に転写することができるものであれば、いずれの方式で作製したスクリーン印刷用マスクも使用することができる。例えば、ソリッドマスク、サスペンドマスク、または、メタルマスク(エッチング法、レーザー法、アディティブ法、機械加工法)等、いずれのものも使用可能である。材質は、ニッケル、銅、クロム、亜鉛、鉄等を主成分とする金属、あるいは合金、またはステンレス等を適用できる。また、スクリーン印刷用マスクの開口パターンについても特に制限はなく、例えば、正円形、楕円形等の円形、正方形、長方形、菱形、台形等の四角形、六角形、八角形等の多角形、その他、ひょうたん形、ダンベル形等の不定形等が挙げられる。金属材料からなるスクリーン印刷用マスクの厚みは、通常30〜500μmであり、ペースト材料の転写量によって厚みを決定する。開口部の大きさは、一般的な表面実装において、数百μm〜数十mm、高密度実装においては、大きさ50〜300μm、ピッチ間隔50〜500μmである。さらに、スクリーン印刷用マスクの開口部の断面形状はテーパーを有している場合もある。
【0037】
本発明に係わる、少なくとも開口部の内壁に樹脂層を形成してなるスクリーン印刷用マスクの例を図1〜3に示した。図1〜3は、スクリーン印刷用マスクとしてメタルマスクを適用した例である。図1は、開口部5の内壁のみに樹脂層2を形成したものである。図2は、開口部5の内壁および被印刷基板接触面4に樹脂層2を形成したものである。図3は、全表面に樹脂層2を形成したものである。図3のように、スキージ面3に樹脂層2が形成されている場合、スキージが高い押し込み圧力で何回も接触すると、樹脂層の剥離が発生することがある。この剥離した樹脂層2がペースト材と混入してしまうことがあるため、スキージ面3には樹脂層2がない方が好ましい。図4〜7は、ソリッドマスク及びサスペンドマスクのように、スキージ面3にメッシュ6を形成してなるスクリーン印刷板用マスクの例である。図4は、開口部5の内壁および開口部のメッシュ6周囲に樹脂層2を形成したものである。図5は、メッシュ6のスキージ面3以外の全表面に樹脂層2を形成したものである。図6及び7は、全表面に樹脂層2を形成したものである。樹脂層2を形成する前後における開口部5の開口面積の差を小さくするために、樹脂層2の厚みは、0.1μmから5μmであることが好ましい。樹脂層の厚みが、0.1μmよりも薄くなると、スクリーン印刷用マスク1と樹脂層2との密着性が低下する場合がある。また、5μmよりも厚くなると均一な膜形成が困難となる場合がある。
【0038】
本発明のスクリーン印刷用マスクの作製方法を、樹脂層2を開口部5の内壁および被印刷基板接触面4に形成したメタルマスクを例にとって、工程順に図8〜12にて詳説する。まず、開口部5を有したスクリーン印刷用マスク(メタルマスク)1(図8)に保護シート7を貼り付ける(図9)。次に、樹脂層2に用いられるエマルジョン粒子13を高絶縁性媒体中に分散させた液中にて、被印刷基板接触面4に対向するように電極12を設置する(図10)。次に、スクリーン印刷用マスク1および電極12の間に適正な電位差を生じさせ、エマルジョン粒子13をスクリーン印刷用マスク1の方向へ電気泳動させ、開口部5の内壁および被印刷基板接触面4へエマルジョン粒子13を付着させる。次に、スクリーン印刷用マスク1を液中から取り出し、高絶縁媒体を蒸発させる。次いで、電着法によって付着したエマルジョン粒子13を、加熱等によってフィルム化させて定着させる(図11)。続いて、保護シート7を剥離する。次に、加熱によって、架橋させることにより、樹脂層2を開口部5の内壁および被印刷基板接触面4に形成したメタルマスクが作製できる(図12)。
【0039】
保護シートとしては、スクリーン印刷用マスクに貼り付けることが可能であり、エマルジョン粒子を分散する高絶縁性媒体に触れることがあっても溶解せず、電着処理およびエマルジョン粒子のフィルム化(定着)における加熱、加圧、光、水等の処理にさらされた後においても、容易にスクリーン印刷用マスクから剥離でき、剥離した後でも粘着物がスクリーン印刷用マスクに残存しないものであれば、いずれのものでも良い。例えば、エレップマスキングN−380(商品名、日東電工社製)、ペイントエース720A(商品名、日東電工社製)、SPV−K100(商品名、日東電工社製)、スコッチメッキ用マスキングテープ851A(商品名、住友3M社製)、スコッチ耐熱マスキングテープ214−3MNE(商品名、住友3M社製)、マスキングテープNo2311(商品名、ニチバン社製)、リオエルムLE970(商品名、東洋インキ製造社製)等が挙げられるがこれに限定されるものではない。保護シートの粘着層は、高絶縁媒体への難溶解性の観点から、アクリル系粘着剤が好適に使用できる。
【0040】
また、少なくとも開口部の内壁に樹脂層を形成してなるスクリーン印刷用マスクは、図13または14のように、金属材料からなるスクリーン印刷用マスク1の開口部5の内壁に樹脂層2が形成してあり、かつ、このスクリーン印刷用マスク1の被印刷基板接触面4の非開口部に樹脂層2と厚膜樹脂層16が積層して形成されているスクリーン印刷用マスクであっても良い。樹脂層と厚膜樹脂層の積層の順はどちらにおいても良好な印刷特性が発現する。樹脂層2を開口部5の内壁および被印刷基板接触面4に形成した後に、厚膜樹脂層16を被印刷基板接触面4の非開口部に形成することで、図13のスクリーン印刷用マスクが作製できる。厚膜樹脂層16を被印刷基板接触面4に形成した後に、樹脂層2を開口部5の内壁および被印刷基板接触面4の非開口部に形成することで、図14のスクリーン印刷用マスクが作製できる。該厚膜樹脂層16の厚みは、5〜200μmの範囲内の厚みとすることが好ましい。5μm未満であると、十分なクッション性が得られずペースト材料の滲み出しが発生する場合がある。一方、200μmを超えると、厚膜樹脂層16の体積膨張が発生した際に開口部の形状変化が大きくなり、ペースト材料の転写量が変化する問題が発生することがある。
【0041】
厚膜樹脂層16を有するスクリーン印刷用マスクは、図15に示すように、スクリーン印刷用マスク1の開口部5の幅L1よりも、厚膜樹脂層16の開口部5の幅L2を大きくしても良い。また、図16に示すように、スクリーン印刷用マスクの開口部の幅L1よりも、樹脂層2で覆われた厚膜樹脂層16の開口部の幅L2を大きくしても良い。(L2−L1)の1/2の値(d)は0〜200μmであるのが好ましく、さらに好ましくは0〜30μmである。dがマイナスの値となる場合、すなわち、厚膜樹脂層16の開口部の幅L2がスクリーン印刷用マスクの開口部の幅L1より小さくなって、厚膜樹脂層16が庇のように開口部にはみ出した状態では、適正な量のペースト材料の転写できなくなったり、ペースト材料とスクリーン印刷用マスクの抜け性について十分な効果が得られない場合がある。一方dが200μmより大きくなると、高精細な転写パターンの形成が困難になるだけでなく、ペースト材料の粒子が入り込んで滲みが発生しやすくなる。
【0042】
厚膜樹脂層16は、化学的強度、機械的強度を有している樹脂であり、使用するペースト材料の溶媒および洗浄剤に膨潤しない特性と有していればどのような樹脂を使用しても良い。具体的には、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、エポキシ、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、フッ素樹脂、シリコン、アクリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フェノール樹脂、ポリビニルブチラール、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。ペースト材料やスクリーン印刷用マスクを洗浄するための有機溶剤に対する耐久性、機械的強度をもたせるため、紫外線硬化性、電子線硬化性または加熱硬化性等を付与することもできる。
【0043】
厚膜樹脂層16を有するスクリーン印刷用マスクの作製方法のうち、図13に例示した金属材料からなるスクリーン印刷用マスク1の開口部5の内壁に樹脂層2が形成してあり、かつ、このスクリーン印刷用マスクの被印刷基板接触面4の非開口部に樹脂層2と厚膜樹脂層16がこの順に積層して形成されているスクリーン印刷用マスクの作製方法を図18及び19を用いて詳説する。まず、上記の作製方法と同様にして、図12に示したような樹脂層2を開口部5の内壁および被印刷基板接触面4に形成したスクリーン印刷用マスク(メタルマスク)1を作製する。次に、開口部5を塞ぐように、ラミネートによって、厚膜樹脂層16及びキャリア層15を被印刷基板接触面に設ける(図18)。
【0044】
キャリア層15としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、エポキシ、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、フッ素樹脂、シリコン、アクリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリフェノール、ポリビニルブチラール、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース等の樹脂、銅、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム等の金属を使用できる。キャリア層15が樹脂を含有してなる場合、厚膜樹脂層除去液に対して不溶性の樹脂を使用する。
【0045】
次に、スキージ面3から厚膜樹脂層除去液をスプレー等により供給することにより、開口部5の厚膜樹脂層16を除去する(図19)。次に、厚膜樹脂層除去液を水洗で除去し、冷風で乾燥させた後、キャリア層15を除去する。加熱、紫外線、電子線等によって厚膜樹脂層16を硬化させても良い。このようにして、図13に例示したスクリーン印刷用マスクが作製できる。具体的には、特開2008−246738号公報の技術が適用できる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0047】
<エマルジョン粒子の合成>
攪拌機、温度計、還流冷却管を備えた4ツ口フラスコ内に、IPソルベント1620(出光興産社製)180質量部、メタクリル酸ドデシル114質量部およびメタクリル酸2−ヒドロキシエチル6質量部を混合し、窒素置換した後、80℃に加熱し、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)1.1質量部を添加し、ラジカル重合を行った。2時間後、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.1質量部、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)0.1質量部を添加した。さらに、4時間後、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)0.1質量部を追加し、温度を85℃として、7時間加熱し反応を終了させ、濃度40質量%の重合体(O−1)混合物を得た。
【0048】
上記重合体(O−1)混合物10質量部、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート0.1質量部、触媒として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン0.001質量部、IPソルベント1620(出光興産社製)20質量部を混合し、60℃で4.5時間反応させ、重合体(O−2)混合物を得た。
【0049】
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下漏斗を備えた4ツ口フラスコ内で、475質量部のIPソルベント1620、重合体(O−2)混合物30質量部、および表1に記載の単量体を混合し、窒素雰囲気下で70℃に加温した。ここに、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4―ジメチルバレロニトリル)を0.45質量部添加した。温度を70℃のままで保ち、8時間反応させて、実施例1〜9および比較例のエマルジョン粒子を合成した。
【0050】
【表1】
【0051】
得られた実施例1〜9および比較例のエマルジョン粒子において、固形分1質量部に対して0.02質量部の電荷制御剤(オクタデシルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体;質量組成比3/1、無水マレイン酸加水分解率45モル%、質量平均分子量1.3万)を添加した後、固形分濃度が0.5質量%になるようにIP1620(商品名、出光興産社製)で希釈し、正電荷が付与されたエマルジョン粒子の分散液を作製した。
【0052】
<スクリーン印刷用マスクへの樹脂層の形成>
厚さ80μmのステンレス板(SUS304)にYAGレーザーで多数の開口部を形成し、スクリーン印刷用マスクを作製した。次に、保護シートとしてリオエルムLE970(商品名、東洋インキ社製)をスキージ面側に貼り付けた。次に、図10に示す構造を有する電着装置を用いて、スクリーン印刷用マスクの全表面に、上記で作製した正電荷が付与された実施例1〜9及び比較例のエマルジョン粒子の分散液をそれぞれ用いて、印加電圧120V、20秒間の条件により電着した。次いで、IP1620(商品名、出光興産社製)を冷風で乾燥させた。次に、保護シートを剥離した。次に、80℃、3分の条件でエマルジョン粒子をフィルム化させ、定着させた。次に、180℃、1時間の条件下にさらし、フィルム化したエマルジョン粒子を架橋させた。開口部を顕微鏡にて観察したところ、樹脂層の突起、隔壁および埋まりがない、全表面に樹脂層を形成してなるスクリーン印刷用マスクを作製することができた。
【0053】
実施例1〜9及び比較例のエマルジョン粒子を用いて作製したスクリーン印刷用マスクを利用して、スキージによりペースト材料としてクリーム半田を100回繰り返しスクリーン印刷したところ、クリーム半田の抜け不良が発生せず、良好な形状の半田端子パターンの形成ができた。また、スクリーン印刷用マスクの被印刷基板接触面に発生したクリーム半田の残存物を有機溶剤で浸したウエスによって擦りとる必要が生じたため、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトンの溶剤を浸した3種類のウエスによって、拭き取り試験を行った。拭き取り試験は、断面積78.5cm2の円柱の重り500gにウエス(商品名:ナノワイパー、三菱製紙社製)を3重に巻き付け、該ウエスに各溶剤を適量含浸し、約20mm/secにて50往復擦りつけた。評価は目視で行い、下記3段階にて評価した。
○:全くキズがつかない
△:キズがつく
×:樹脂層が剥離する
【0054】
【表2】
【0055】
実施例1〜9のスクリーン印刷マスクの樹脂層は、イソプロピルアルコールを含浸して擦った場合において全くキズがつかず、樹脂層の擦りに対しては、比較例と比べて強いことが分かった。また、プロピレングリコールモノメチルエーテルを含浸して擦った場合において、実施例1、6及び7ではキズが微小に発生したが、比較例では樹脂層の剥離が観察され、実施例1〜9の樹脂層が比較例の樹脂層よりも強いことが確認できた。実施例1〜5を比較すると、メチルエチルケトンを含浸して擦った場合において、酸価が大きいものほど擦りに対して強くなることが確認できた。酸価が60mg/KOHよりも大きい実施例5のエマルジョン粒子による樹脂層は、拭き取り試験の結果は良好であったが、温度25℃、相対湿度50%以上の高湿度の環境下にて分散液の攪拌を繰り返すことで、エマルジョン粒子の凝集が発生しはじめた。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のエマルジョン粒子及びスクリーン印刷用マスクの作製方法は、広くスクリーン印刷の用途に適用可能であり、例えば、導電性材料、絶縁性材料、色材、封止材料、接着材料、レジスト材料、処理薬剤等のペースト材料を用いて、スクリーン印刷によって任意の被印刷基板上にパターン形成を行う用途に適用できる。
【符号の説明】
【0057】
1 スクリーン印刷用マスク
2 樹脂層
3 スキージ面
4 被印刷基板接触面
5 開口部
6 メッシュ
7 保護シート
9 樹脂層の突起
10 隔壁
11 埋まり
12 電極
13 エマルジョン粒子
15 キャリア層
16 厚膜樹脂層
【技術分野】
【0001】
本発明は、エマルジョン粒子及びそれを用いた開口部の内壁に樹脂層を形成してなるスクリーン印刷用マスクの作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型化、多機能化に伴い、プリント配線基板の高密度化や配線パターンの微細化が進められており、プリント配線基板への電子部品の高密度実装化が広く行われている。このプリント配線基板への電子部品の高密度実装化においては、プリント配線基板面に電子部品を実装するためにクリーム半田を印刷し、半田端子に電子部品を搭載した後にリフロー炉で加熱して半田付けを行う。上記クリーム半田の印刷方法としては、スクリーン印刷による工程が広く用いられている。一般的に、スクリーン印刷は、パターン状の開口部が形成されたスクリーン印刷用マスクを印刷すべき被印刷基板の上面にセットし、スクリーン印刷用マスクのスキージ面にクリーム半田等のペースト材料を供給してスキージによって掻き寄せることによって、開口部を通してペースト材料をパターン状に転写印刷する方法である。
【0003】
しかしながら、スクリーン印刷用マスクを用いてクリーム半田を印刷する際、パターンが高密度かつ高精細になると、クリーム半田のスクリーン印刷用マスクからの抜け性が悪化する。また、近年、環境面の問題からクリーム半田の素材も無鉛化の動きが高まっており、その対策の一環として、鉛を含まない鉛フリー半田がクリーム半田の素材として用いられるようになってきている。鉛フリーのクリーム半田は、従来のクリーム半田に比べ転写性に劣る傾向がある。クリーム半田のスクリーン印刷用マスクからの抜け性の悪化により、半田端子の突起や欠け、ひび割れ、抜け等の欠陥が発生し、歩留まり低下の大きな原因となっていた。
【0004】
このような問題を解決するために、スクリーン印刷用マスクの少なくとも開口部の内壁に樹脂層を形成したスクリーン印刷用マスクが提案されている。これによれば、樹脂を塗布することで開口部の内壁に樹脂層を形成し、内壁の凹凸を平滑とすることで、クリーム半田と内壁の摩擦が減少し、クリーム半田の抜け性を向上させている。また、開口部の内壁にクリーム半田とのはじき性または滑り性の良好な化合物(例えば、フッ素樹脂、シリコン樹脂等)を形成することで、クリーム半田の抜け性を向上させている。樹脂層を内壁に形成する手段としては、ディップ法、スプレー法、スピンコート等が考えられる。これらの方法では、表面張力によって開口部のエッジ部に塗布液がたまる問題、開口の鋭角部分に塗布液がたまる問題、塗布液の垂れや乾燥ムラの問題が発生し、均一な薄膜を形成することが難しい。そのため、図17に示すように、スクリーン印刷用マスク1に樹脂層の突起9、隔壁10または埋まり11等の欠陥が発生することがあり、樹脂層が不均一になるという問題があった。
【0005】
一方、高絶縁性媒体中に分散された樹脂粒子を電着して樹脂層を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。この方法では、まず、図9に示したように、開口部5を有するスクリーン印刷用マスク1の片面に保護シート7を貼り付ける。その後、図10に示したように、スクリーン印刷用マスク1に対向するように電極12を設置し、スクリーン印刷用マスク1を接地して適正なバイアス電圧を印加すると、電界に従って帯電したエマルジョン粒子13がスクリーン印刷用マスク1方向に電気泳動する。電気泳動によって、スクリーン印刷用マスク1方向に近づいてきたエマルジョン粒子13は、電位が0に近いところから付着するため、接地したスクリーン印刷用マスク1の表面を覆うようにしてエマルジョン粒子13が均一に付着していく。そのため、電着法では、図11に示すように、開口部5の内壁であっても、樹脂層の突起9、隔壁10および埋まり11等の欠陥が生じることがなく、均一な樹脂層2を開口部5の内壁に形成できる。
【0006】
また、スクリーン印刷用マスクを繰り返し使用することにより、スクリーン印刷用マスクの開口部または被印刷基板接触面にクリーム半田の残存物が発生する。この際、アルコール類やグリコール類といった有機溶剤によって超音波洗浄したり、有機溶剤を含浸したウエスによって拭き取ったりする必要が生じる。そのため、有機溶剤に膨潤せず、ウエスの擦れに耐えうる樹脂層の形成が必要であった。そのような樹脂層を電着法で形成する方法として、少なくともイソシアネート基および活性水素基を含有したエマルジョン粒子を加熱により架橋する方法が提案されている。しかしながら、このエマルジョン粒子では、溶剤を含浸したウエスによる強い擦れに対して樹脂層の剥離が生じることがあり、さらなる改良が望まれていた(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−155554号公報
【特許文献2】特開2008−246738号公報
【特許文献3】特開2008−201850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、有機溶剤を含浸したウエス擦りに対しても樹脂層の剥離が発生しにくい樹脂層を形成するためのエマルジョン粒子、及びそれを用いて樹脂層を形成してなるスクリーン印刷用マスクの作製方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
高絶縁性媒体中に分散した分散剤と芯重合体とからなるエマルジョン粒子において、該芯重合体がヒドロキシ基及びブロック化されたイソシアネート基を含み、かつ、カルボキシル基とアルコキシアルキル基とから選択される少なくともひとつの基を含有することを特徴とするエマルジョン粒子によって上記課題が解決されることを見出した。
【0010】
上記エマルジョン粒子の酸価が、60mgKOH/g以下であることが好ましいことを見出した。
【0011】
また、少なくとも開口部の内壁に樹脂層を形成してなるスクリーン印刷用マスクの作製方法において、金属材料からなるスクリーン印刷用マスクの少なくとも開口部の内壁に上記のエマルジョン粒子を電着する工程、エマルジョン粒子をフィルム化する工程、フィルム化した層を加熱によって架橋させる工程を含むことを特徴とするスクリーン印刷用マスクの作製方法によって上記課題が解決されることを見出した。
【発明の効果】
【0012】
本発明のエマルジョン粒子は、ヒドロキシ基及びブロック化されたイソシアネート基を含んでいる。このエマルジョン粒子を金属材料からなるスクリーン印刷用マスクの少なくとも開口部の内壁に電着し、低温加熱でフィルム化した後に、さらに、高温の条件にて処理することで、イソシアネート基が発生する。このイソシアネート基とヒドロキシ基とが反応することで、樹脂層の架橋が起こり、耐溶剤性が著しく向上する。本発明のエマルジョン粒子は、カルボキシル基とアルコキシアルキル基とから選択される少なくともひとつの基をさらに含有しているが、カルボキシル基は、ヒドロキシ基と同様にイソシアネート基と架橋するほか、ヒドロキシ基とイソシアネート基との反応を促進させるため、樹脂層の架橋密度が向上して耐溶剤性がさらに向上する。なお、エマルジョン粒子の酸価が60mgKOH/g以下となるようにカルボキシル基を導入すると、エマルジョン粒子が高絶縁性媒体で凝集しなくなるという効果が得られる。アルコキシアルキル基は、粒子の分散性を良好にし、また、架橋後の耐溶剤性も向上させる効果をもたらす。よって、本発明のエマルジョン粒子を用いて樹脂層が形成されたスクリーン印刷用マスクの作製方法は、有機溶剤を含浸したウエス擦りに対しても樹脂層の剥離が発生しにくいスクリーン印刷用マスクが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】開口部の内壁のみに樹脂層を形成したメタルマスクの断面図である。
【図2】開口部の内壁および被印刷基板接触面に樹脂層を形成したメタルマスクの断面図である。
【図3】全表面に樹脂層を形成したメタルマスクの断面図である。
【図4】開口部の内壁のみに樹脂層を形成したソリッドマスクの断面図である。
【図5】開口部の内壁および被印刷基板接触面に樹脂層を形成したソリッドマスクの断面図である。
【図6】全表面に樹脂層を形成したソリッドマスクの断面図である。
【図7】全表面に樹脂層を形成したサスペンドマスクの断面図である。
【図8】メタルマスクの断面図である。
【図9】保護シートを貼り付けたメタルマスクの断面図である。
【図10】電着装置の概念図である。
【図11】本発明のスクリーン印刷用マスクの作製方法の一工程図である。
【図12】開口部の内壁および被印刷基板接触面に樹脂層を形成したメタルマスクの断面図である。
【図13】樹脂層と厚膜樹脂層がこの順に積層したスクリーン印刷用マスクの断面図である。
【図14】厚膜樹脂層と樹脂層がこの順に積層したスクリーン印刷用マスクの断面図である。
【図15】樹脂層と厚膜樹脂層がこの順に積層したスクリーン印刷用マスクの断面図である。
【図16】厚膜樹脂層と樹脂層がこの順に積層したスクリーン印刷用マスクの断面図である。
【図17】樹脂層の突起、隔壁、埋まりの概念図である。
【図18】本発明のスクリーン印刷用マスクの作製方法の一工程図である。
【図19】本発明のスクリーン印刷用マスクの作製方法の一工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係わる高絶縁性媒体としては、直鎖状もしくは分枝状の脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素およびこれらのハロゲン置換体が挙げられる。例として、オクタン、イソオクタン、デカン、イソデカン、デカリン、ノナン、ドデカン、イソドデカン、シクロヘキサン、シクロオクタン、シクロデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等が挙げられる。商品名として、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL(EXXON社製)、IP1620(商品名、出光興産社製)等がある。これらの高絶縁性媒体は単独もしくは混合して用いることができる。
【0015】
本発明に係わる分散剤は、長鎖単量体を重合して得られる高絶縁性媒体に可溶の重合体である。分散剤の質量平均分子量は1000以上が好ましく、これ未満の分子量ではエマルジョン粒子の分散安定性が低下し、エマルジョン粒子の凝集、沈降が生じやすくなることがある。分散剤の分子量の上限は特に定められていないが、分子量が100万を超える場合には重合体溶液の粘度が上昇し、取り扱い難くなる場合がある。長鎖単量体として、一般式化1もしくは化2で示されるような化合物を少なくとも50質量%以上100質量%以下含んでいることが好ましい。これ以外の重合成分としては、適当な単量体を、生成する分散剤の高絶縁性媒体に対する溶解度を損なわない範囲で含有させることができる。
【0016】
【化1】
【0017】
(化1中、R1は水素原子またはメチル基を、R2は炭素数8以上30以下のアルキル基を表す。また、連結基Tは−COO−基もしくは−CONH−基を表す。)
【0018】
【化2】
【0019】
(化2中、R3は炭素数8以上30以下のアルキル基を表す。)
【0020】
本発明のエマルジョン粒子の芯重合体は、ブロック化されたイソシアネート基を含有する。ブロック化されたイソシアネート基とは、イソシアネート基をブロック剤と反応させて得られ、加熱をすることでブロック剤が開裂しイソシアネート基が発生する官能基である。ブロック化されたイソシアネート基を芯重合体に含有させる方法は、ブロック化されたイソシアネート基を有する単量体を芯重合体の単量体の一成分として使用するか、イソシアネート基を有する単量体を重合して側鎖にイソシアネート基を有する重合体を形成した後にブロック剤と反応させる方法がある。
【0021】
ブロック剤としては、フェノール、クレゾール、p―エチルフェノール、p―tert―ブチルフェノール等のフェノール系、エタノール、ブタノール、エチレングリコール、メチルセルソルブ、ベンジルアルコール等のアルコール系、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル等の活性メチレン系、アセトアニリド、アセトアミド等の酸アミド系、その他イミド系、アミン系、イミダゾール系、ピラゾール系、尿素系、カルバミン酸系、イミン系、ホロドアルドキシム、アセトアルドキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム系、メルカプタン系、重亜硫酸ソーダ系、重亜硫酸カリウム等の亜硫酸塩系、ラクタム系等がある。
【0022】
イソシアネート基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリロイルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、p−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアナート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアナートが挙げられる。また、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類と2,4−トリレンジイソシアネートまたはイソホロンジイソシアネート等の2官能イソシアネート化合物を1:1付加物等も挙げられる。
【0023】
ブロック化されたイソシアネート基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−(O−[1′−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(O−[1′−エチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(O−[1′−ブチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸O−[1′−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノメチル、(メタ)アクリル酸3−(O−[1′−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸O−(1′−メチリデンアミノ)カルボキシアミノメチル、(メタ)アクリル酸2−(O−[1′−メチリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸3−(O−[1′−メチリデンアミノ]カルボキシアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸O−(1′−エチリデンアミノ)カルボキシアミノメチル、(メタ)アクリル酸2−(O−[1′−エチリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸3−(O−[1′−エチリデンアミノ]カルボキシアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸O−(1′−プロピリデンアミノ)カルボキシアミノメチル、(メタ)アクリル酸2−(O−[1′−プロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸3−(O−[1′−プロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−[(3,5−ジメチルピラゾリル)カルボニルアミノ]エチル等がある。
【0024】
芯重合体を合成する際のブロック化されたイソシアネート基を有する単量体の配合比率は、粒子の凝集等が発現しない範囲内で調整することができ、芯重合体の全単量体100質量部に対して10〜70質量部の範囲内で使用することが好ましく、20〜60質量部がより好ましく、30〜50質量部がさらに好ましい。10質量部より少ないと樹脂層の耐溶剤性が不足することがあり、70質量部より多いとエマルジョン粒子の凝集が発生しやすくなる。
【0025】
本発明のエマルジョン粒子の芯重合体は、ヒドロキシ基を含有する。ヒドロキシ基を含有させるには、ヒドロキシ基を有する単量体を芯重合体の単量体の一成分として使用する。ヒドロキシ基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキサンジメタノール、(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、(メタ)アクリル酸グリセリン、(メタ)アクリル酸ペンタエリスリトール等が挙げられる。ヒドロキシ基を有する単量体の配合比率は、粒子の凝集等が発生しない範囲内で調整することができ、ブロック化されたイソシアネート基1モルに対して、0.1〜10モルの範囲内で使用することが好ましく、0.2〜4モルがより好ましく、0.3〜1.5モルがさらに好ましい。
【0026】
本発明のエマルジョン粒子は、保存時及び電着時には粒子形状であり、電着後にフィルム化される必要がある。フィルム化は加熱等の手段による。ブロック化されていないイソシアネート基があると、エマルジョン粒子は保存時に架橋反応が進行するが、本発明のエマルジョン粒子はイソシアネート基がブロック化されていることで、保存時における架橋反応の進行を抑制できる。そして、架橋が進んでいない本発明のエマルジョン粒子は融点または軟化点が低いため、低温にて容易にフィルム化することができる。フィルム化した後にさらに融点または軟化点よりも高温の条件にて処理することでイソシアネート基が発生し、発生したイソシアネート基とヒドロキシ基とが反応することで、樹脂層の架橋が起こり、耐溶剤性が著しく向上する。
【0027】
本発明のエマルジョン粒子の芯重合体は、カルボキシル基とアルコキシアルキル基とから選択される少なくともひとつの基を含有する。カルボキシル基を含有させるには、カルボキシル基を有する単量体を芯重合体の単量体の一成分として使用する。カルボキシル基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマール酸、マレイン酸等が挙げられる。カルボキシル基はイソシアネート基と架橋するほか、ヒドロキシ基との反応を促進し、架橋密度が向上し、耐溶剤性が向上する。カルボキシル基を有する単量体の配合比率は、エマルジョン粒子の酸価が60mgKOH/g以下の範囲内となるようにすることが好ましい。酸価が60mgKOH/g以下の場合、保存時の凝集が発生しにくいという効果が得られる。本発明に係わる酸価とは、エマルジョン粒子1gを中和するのに要するKOHのmg数である。
【0028】
アルコキシアルキル基を含有させるには、アルコキシアルキル基を有する単量体を芯重合体の単量体の一成分として使用する。アルコキシアルキル基を有する単量体としては、一般式化3で示されるような化合物が挙げられる。アルコキシアルキル基を有する単量体は、粒子の分散性を良好にし、架橋後の耐溶剤性も向上する効果をもたらすが、R5、R6の炭素数は1以上2以下であると、これらの効果がより高まるので好ましい。配合比率は、重合体の全単量体100質量部に対して10〜70質量部の範囲内で使用することが好ましく、20〜60質量部がより好ましく、30〜50質量部がさらに好ましい。10質量部より少ないと樹脂層の耐溶剤性が不足することがあり、70質量部より多いとエマルジョン粒子の凝集が発生しやすくなる。
【0029】
【化3】
【0030】
(化3中、R4は水素原子またはメチル基を、R5は炭素数1以上3以下のアルキレン基を、R6は炭素数1以上3以下のアルキル基を表す。R5、R6の炭素数が3の場合、直鎖状であっても、分岐状であっても良い。)
【0031】
本発明のエマルジョン粒子の芯重合体は、上記の単量体のほかに、高絶縁性媒体に可溶であり、重合により該高絶縁性媒体に不溶となる単量体を共重合できる。このような単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、クロロ酢酸ビニル等の炭素数1から炭素数6までの脂肪族カルボン酸のビニルエステル、安息香酸ビニルエステル、あるいはアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等の炭素数1から6までのアルキルエステル類またはアミド類、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メチレンビスアクリルアミド、スチレンおよびその誘導体、ジビニルベンゼン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾール等が挙げられる。
【0032】
本発明のエマルジョン粒子は、分散剤と芯重合体がウレタン結合によって結合していることが好ましい。分散剤と芯重合体をウレタン結合で結合する方法は、分散剤にヒドロキシ基を含有させたのち、イソシアネート基と重合性二重結合基を有する単量体のイソシアネート基と分散剤のヒドロキシ基を化学結合させてウレタン結合を形成し、分散剤に未反応の重合性二重結合基を含有させ、次に芯重合体の単量体成分と重合させる方法、分散剤にイソシアネート基を含有させたのち、ヒドロキシ基と重合性二重結合基を有する単量体のヒドロキシ基と分散剤のイソシアネート基を化学結合させてウレタン結合を形成し、分散剤に未反応の重合性二重結合基を含有させ、次に芯重合体の単量体成分と重合させる方法等が挙げられる。分散剤と芯重合体がウレタン結合で結合されていることで、エマルジョン粒子の経時安定性を向上させることが可能となる。
【0033】
本発明のエマルジョン粒子の分散剤と芯重合体の配合比は、分散状態の維持の観点から、分散剤100質量部に対して、芯重合体が50〜5000質量部の範囲内であることが好ましく、さらには100〜2000質量部の範囲で使用することが好ましい。また、エマルジョン粒子のコールターカウンター法で測定した平均粒径は、樹脂層としての厚みの確保、分散状態の維持の観点から、0.05〜1.0μmの範囲であることが好ましく、さらには0.1〜0.6μmの範囲にあることが好ましい。
【0034】
本発明のエマルジョン粒子は、従来公知の重合方法によって作製することができる。例えば、アニオン重合あるいはカチオン重合等のイオン重合法、また、重合開始剤および/または連鎖移動剤を用いてラジカル重合して得られるラジカル重合法、また、重付加あるいは重縮合反応による方法が挙げられる。
【0035】
本発明のエマルジョン粒子は、電着することにより樹脂層を形成できる。この場合、粒子をプラスもしくはマイナスの荷電粒子とせしめ、適正な電界を印加しながらエマルジョン粒子を電着する。そのため、エマルジョン粒子の液に適当な電荷制御剤を添加することにより、該エマルジョン粒子に電荷を付与することとなる。電荷制御剤としては、例えば、特開平6−51567号公報等に示されるカルボキシル基を含有する重合体、ホモゲノールL18(商品名、花王社製)等のポリカルボン酸型高分子界面活性剤を用いることが可能である。また、電着特性に悪影響を及ぼさない範囲で着色剤等の添加剤を含有させることもできる。
【0036】
本発明に係わる金属材料からなるスクリーン印刷用マスクとは、スキージ面にペースト材料をのせ、スキージで掻き寄せることでクリーム半田等のペースト材料を被印刷基板上に転写することができるものであれば、いずれの方式で作製したスクリーン印刷用マスクも使用することができる。例えば、ソリッドマスク、サスペンドマスク、または、メタルマスク(エッチング法、レーザー法、アディティブ法、機械加工法)等、いずれのものも使用可能である。材質は、ニッケル、銅、クロム、亜鉛、鉄等を主成分とする金属、あるいは合金、またはステンレス等を適用できる。また、スクリーン印刷用マスクの開口パターンについても特に制限はなく、例えば、正円形、楕円形等の円形、正方形、長方形、菱形、台形等の四角形、六角形、八角形等の多角形、その他、ひょうたん形、ダンベル形等の不定形等が挙げられる。金属材料からなるスクリーン印刷用マスクの厚みは、通常30〜500μmであり、ペースト材料の転写量によって厚みを決定する。開口部の大きさは、一般的な表面実装において、数百μm〜数十mm、高密度実装においては、大きさ50〜300μm、ピッチ間隔50〜500μmである。さらに、スクリーン印刷用マスクの開口部の断面形状はテーパーを有している場合もある。
【0037】
本発明に係わる、少なくとも開口部の内壁に樹脂層を形成してなるスクリーン印刷用マスクの例を図1〜3に示した。図1〜3は、スクリーン印刷用マスクとしてメタルマスクを適用した例である。図1は、開口部5の内壁のみに樹脂層2を形成したものである。図2は、開口部5の内壁および被印刷基板接触面4に樹脂層2を形成したものである。図3は、全表面に樹脂層2を形成したものである。図3のように、スキージ面3に樹脂層2が形成されている場合、スキージが高い押し込み圧力で何回も接触すると、樹脂層の剥離が発生することがある。この剥離した樹脂層2がペースト材と混入してしまうことがあるため、スキージ面3には樹脂層2がない方が好ましい。図4〜7は、ソリッドマスク及びサスペンドマスクのように、スキージ面3にメッシュ6を形成してなるスクリーン印刷板用マスクの例である。図4は、開口部5の内壁および開口部のメッシュ6周囲に樹脂層2を形成したものである。図5は、メッシュ6のスキージ面3以外の全表面に樹脂層2を形成したものである。図6及び7は、全表面に樹脂層2を形成したものである。樹脂層2を形成する前後における開口部5の開口面積の差を小さくするために、樹脂層2の厚みは、0.1μmから5μmであることが好ましい。樹脂層の厚みが、0.1μmよりも薄くなると、スクリーン印刷用マスク1と樹脂層2との密着性が低下する場合がある。また、5μmよりも厚くなると均一な膜形成が困難となる場合がある。
【0038】
本発明のスクリーン印刷用マスクの作製方法を、樹脂層2を開口部5の内壁および被印刷基板接触面4に形成したメタルマスクを例にとって、工程順に図8〜12にて詳説する。まず、開口部5を有したスクリーン印刷用マスク(メタルマスク)1(図8)に保護シート7を貼り付ける(図9)。次に、樹脂層2に用いられるエマルジョン粒子13を高絶縁性媒体中に分散させた液中にて、被印刷基板接触面4に対向するように電極12を設置する(図10)。次に、スクリーン印刷用マスク1および電極12の間に適正な電位差を生じさせ、エマルジョン粒子13をスクリーン印刷用マスク1の方向へ電気泳動させ、開口部5の内壁および被印刷基板接触面4へエマルジョン粒子13を付着させる。次に、スクリーン印刷用マスク1を液中から取り出し、高絶縁媒体を蒸発させる。次いで、電着法によって付着したエマルジョン粒子13を、加熱等によってフィルム化させて定着させる(図11)。続いて、保護シート7を剥離する。次に、加熱によって、架橋させることにより、樹脂層2を開口部5の内壁および被印刷基板接触面4に形成したメタルマスクが作製できる(図12)。
【0039】
保護シートとしては、スクリーン印刷用マスクに貼り付けることが可能であり、エマルジョン粒子を分散する高絶縁性媒体に触れることがあっても溶解せず、電着処理およびエマルジョン粒子のフィルム化(定着)における加熱、加圧、光、水等の処理にさらされた後においても、容易にスクリーン印刷用マスクから剥離でき、剥離した後でも粘着物がスクリーン印刷用マスクに残存しないものであれば、いずれのものでも良い。例えば、エレップマスキングN−380(商品名、日東電工社製)、ペイントエース720A(商品名、日東電工社製)、SPV−K100(商品名、日東電工社製)、スコッチメッキ用マスキングテープ851A(商品名、住友3M社製)、スコッチ耐熱マスキングテープ214−3MNE(商品名、住友3M社製)、マスキングテープNo2311(商品名、ニチバン社製)、リオエルムLE970(商品名、東洋インキ製造社製)等が挙げられるがこれに限定されるものではない。保護シートの粘着層は、高絶縁媒体への難溶解性の観点から、アクリル系粘着剤が好適に使用できる。
【0040】
また、少なくとも開口部の内壁に樹脂層を形成してなるスクリーン印刷用マスクは、図13または14のように、金属材料からなるスクリーン印刷用マスク1の開口部5の内壁に樹脂層2が形成してあり、かつ、このスクリーン印刷用マスク1の被印刷基板接触面4の非開口部に樹脂層2と厚膜樹脂層16が積層して形成されているスクリーン印刷用マスクであっても良い。樹脂層と厚膜樹脂層の積層の順はどちらにおいても良好な印刷特性が発現する。樹脂層2を開口部5の内壁および被印刷基板接触面4に形成した後に、厚膜樹脂層16を被印刷基板接触面4の非開口部に形成することで、図13のスクリーン印刷用マスクが作製できる。厚膜樹脂層16を被印刷基板接触面4に形成した後に、樹脂層2を開口部5の内壁および被印刷基板接触面4の非開口部に形成することで、図14のスクリーン印刷用マスクが作製できる。該厚膜樹脂層16の厚みは、5〜200μmの範囲内の厚みとすることが好ましい。5μm未満であると、十分なクッション性が得られずペースト材料の滲み出しが発生する場合がある。一方、200μmを超えると、厚膜樹脂層16の体積膨張が発生した際に開口部の形状変化が大きくなり、ペースト材料の転写量が変化する問題が発生することがある。
【0041】
厚膜樹脂層16を有するスクリーン印刷用マスクは、図15に示すように、スクリーン印刷用マスク1の開口部5の幅L1よりも、厚膜樹脂層16の開口部5の幅L2を大きくしても良い。また、図16に示すように、スクリーン印刷用マスクの開口部の幅L1よりも、樹脂層2で覆われた厚膜樹脂層16の開口部の幅L2を大きくしても良い。(L2−L1)の1/2の値(d)は0〜200μmであるのが好ましく、さらに好ましくは0〜30μmである。dがマイナスの値となる場合、すなわち、厚膜樹脂層16の開口部の幅L2がスクリーン印刷用マスクの開口部の幅L1より小さくなって、厚膜樹脂層16が庇のように開口部にはみ出した状態では、適正な量のペースト材料の転写できなくなったり、ペースト材料とスクリーン印刷用マスクの抜け性について十分な効果が得られない場合がある。一方dが200μmより大きくなると、高精細な転写パターンの形成が困難になるだけでなく、ペースト材料の粒子が入り込んで滲みが発生しやすくなる。
【0042】
厚膜樹脂層16は、化学的強度、機械的強度を有している樹脂であり、使用するペースト材料の溶媒および洗浄剤に膨潤しない特性と有していればどのような樹脂を使用しても良い。具体的には、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、エポキシ、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、フッ素樹脂、シリコン、アクリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フェノール樹脂、ポリビニルブチラール、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。ペースト材料やスクリーン印刷用マスクを洗浄するための有機溶剤に対する耐久性、機械的強度をもたせるため、紫外線硬化性、電子線硬化性または加熱硬化性等を付与することもできる。
【0043】
厚膜樹脂層16を有するスクリーン印刷用マスクの作製方法のうち、図13に例示した金属材料からなるスクリーン印刷用マスク1の開口部5の内壁に樹脂層2が形成してあり、かつ、このスクリーン印刷用マスクの被印刷基板接触面4の非開口部に樹脂層2と厚膜樹脂層16がこの順に積層して形成されているスクリーン印刷用マスクの作製方法を図18及び19を用いて詳説する。まず、上記の作製方法と同様にして、図12に示したような樹脂層2を開口部5の内壁および被印刷基板接触面4に形成したスクリーン印刷用マスク(メタルマスク)1を作製する。次に、開口部5を塞ぐように、ラミネートによって、厚膜樹脂層16及びキャリア層15を被印刷基板接触面に設ける(図18)。
【0044】
キャリア層15としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、エポキシ、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、フッ素樹脂、シリコン、アクリル、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリフェノール、ポリビニルブチラール、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース等の樹脂、銅、ニッケル、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム等の金属を使用できる。キャリア層15が樹脂を含有してなる場合、厚膜樹脂層除去液に対して不溶性の樹脂を使用する。
【0045】
次に、スキージ面3から厚膜樹脂層除去液をスプレー等により供給することにより、開口部5の厚膜樹脂層16を除去する(図19)。次に、厚膜樹脂層除去液を水洗で除去し、冷風で乾燥させた後、キャリア層15を除去する。加熱、紫外線、電子線等によって厚膜樹脂層16を硬化させても良い。このようにして、図13に例示したスクリーン印刷用マスクが作製できる。具体的には、特開2008−246738号公報の技術が適用できる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0047】
<エマルジョン粒子の合成>
攪拌機、温度計、還流冷却管を備えた4ツ口フラスコ内に、IPソルベント1620(出光興産社製)180質量部、メタクリル酸ドデシル114質量部およびメタクリル酸2−ヒドロキシエチル6質量部を混合し、窒素置換した後、80℃に加熱し、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)1.1質量部を添加し、ラジカル重合を行った。2時間後、2,2′−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.1質量部、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)0.1質量部を添加した。さらに、4時間後、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)0.1質量部を追加し、温度を85℃として、7時間加熱し反応を終了させ、濃度40質量%の重合体(O−1)混合物を得た。
【0048】
上記重合体(O−1)混合物10質量部、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート0.1質量部、触媒として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン0.001質量部、IPソルベント1620(出光興産社製)20質量部を混合し、60℃で4.5時間反応させ、重合体(O−2)混合物を得た。
【0049】
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下漏斗を備えた4ツ口フラスコ内で、475質量部のIPソルベント1620、重合体(O−2)混合物30質量部、および表1に記載の単量体を混合し、窒素雰囲気下で70℃に加温した。ここに、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4―ジメチルバレロニトリル)を0.45質量部添加した。温度を70℃のままで保ち、8時間反応させて、実施例1〜9および比較例のエマルジョン粒子を合成した。
【0050】
【表1】
【0051】
得られた実施例1〜9および比較例のエマルジョン粒子において、固形分1質量部に対して0.02質量部の電荷制御剤(オクタデシルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体;質量組成比3/1、無水マレイン酸加水分解率45モル%、質量平均分子量1.3万)を添加した後、固形分濃度が0.5質量%になるようにIP1620(商品名、出光興産社製)で希釈し、正電荷が付与されたエマルジョン粒子の分散液を作製した。
【0052】
<スクリーン印刷用マスクへの樹脂層の形成>
厚さ80μmのステンレス板(SUS304)にYAGレーザーで多数の開口部を形成し、スクリーン印刷用マスクを作製した。次に、保護シートとしてリオエルムLE970(商品名、東洋インキ社製)をスキージ面側に貼り付けた。次に、図10に示す構造を有する電着装置を用いて、スクリーン印刷用マスクの全表面に、上記で作製した正電荷が付与された実施例1〜9及び比較例のエマルジョン粒子の分散液をそれぞれ用いて、印加電圧120V、20秒間の条件により電着した。次いで、IP1620(商品名、出光興産社製)を冷風で乾燥させた。次に、保護シートを剥離した。次に、80℃、3分の条件でエマルジョン粒子をフィルム化させ、定着させた。次に、180℃、1時間の条件下にさらし、フィルム化したエマルジョン粒子を架橋させた。開口部を顕微鏡にて観察したところ、樹脂層の突起、隔壁および埋まりがない、全表面に樹脂層を形成してなるスクリーン印刷用マスクを作製することができた。
【0053】
実施例1〜9及び比較例のエマルジョン粒子を用いて作製したスクリーン印刷用マスクを利用して、スキージによりペースト材料としてクリーム半田を100回繰り返しスクリーン印刷したところ、クリーム半田の抜け不良が発生せず、良好な形状の半田端子パターンの形成ができた。また、スクリーン印刷用マスクの被印刷基板接触面に発生したクリーム半田の残存物を有機溶剤で浸したウエスによって擦りとる必要が生じたため、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルエチルケトンの溶剤を浸した3種類のウエスによって、拭き取り試験を行った。拭き取り試験は、断面積78.5cm2の円柱の重り500gにウエス(商品名:ナノワイパー、三菱製紙社製)を3重に巻き付け、該ウエスに各溶剤を適量含浸し、約20mm/secにて50往復擦りつけた。評価は目視で行い、下記3段階にて評価した。
○:全くキズがつかない
△:キズがつく
×:樹脂層が剥離する
【0054】
【表2】
【0055】
実施例1〜9のスクリーン印刷マスクの樹脂層は、イソプロピルアルコールを含浸して擦った場合において全くキズがつかず、樹脂層の擦りに対しては、比較例と比べて強いことが分かった。また、プロピレングリコールモノメチルエーテルを含浸して擦った場合において、実施例1、6及び7ではキズが微小に発生したが、比較例では樹脂層の剥離が観察され、実施例1〜9の樹脂層が比較例の樹脂層よりも強いことが確認できた。実施例1〜5を比較すると、メチルエチルケトンを含浸して擦った場合において、酸価が大きいものほど擦りに対して強くなることが確認できた。酸価が60mg/KOHよりも大きい実施例5のエマルジョン粒子による樹脂層は、拭き取り試験の結果は良好であったが、温度25℃、相対湿度50%以上の高湿度の環境下にて分散液の攪拌を繰り返すことで、エマルジョン粒子の凝集が発生しはじめた。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のエマルジョン粒子及びスクリーン印刷用マスクの作製方法は、広くスクリーン印刷の用途に適用可能であり、例えば、導電性材料、絶縁性材料、色材、封止材料、接着材料、レジスト材料、処理薬剤等のペースト材料を用いて、スクリーン印刷によって任意の被印刷基板上にパターン形成を行う用途に適用できる。
【符号の説明】
【0057】
1 スクリーン印刷用マスク
2 樹脂層
3 スキージ面
4 被印刷基板接触面
5 開口部
6 メッシュ
7 保護シート
9 樹脂層の突起
10 隔壁
11 埋まり
12 電極
13 エマルジョン粒子
15 キャリア層
16 厚膜樹脂層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高絶縁性媒体中に分散した分散剤と芯重合体とからなるエマルジョン粒子において、該芯重合体がヒドロキシ基及びブロック化されたイソシアネート基を含み、かつ、カルボキシル基とアルコキシアルキル基とから選択される少なくともひとつの基を含有することを特徴とするエマルジョン粒子。
【請求項2】
上記エマルジョン粒子の酸価が、60mgKOH/g以下であることを特徴とするエマルジョン粒子。
【請求項3】
少なくとも開口部の内壁に樹脂層を形成してなるスクリーン印刷用マスクの作製方法において、金属材料からなるスクリーン印刷用マスクの少なくとも開口部の内壁に請求項1または2に記載のエマルジョン粒子を電着する工程、エマルジョン粒子をフィルム化する工程、フィルム化した層を加熱によって架橋させる工程を含むことを特徴とするスクリーン印刷用マスクの作製方法。
【請求項1】
高絶縁性媒体中に分散した分散剤と芯重合体とからなるエマルジョン粒子において、該芯重合体がヒドロキシ基及びブロック化されたイソシアネート基を含み、かつ、カルボキシル基とアルコキシアルキル基とから選択される少なくともひとつの基を含有することを特徴とするエマルジョン粒子。
【請求項2】
上記エマルジョン粒子の酸価が、60mgKOH/g以下であることを特徴とするエマルジョン粒子。
【請求項3】
少なくとも開口部の内壁に樹脂層を形成してなるスクリーン印刷用マスクの作製方法において、金属材料からなるスクリーン印刷用マスクの少なくとも開口部の内壁に請求項1または2に記載のエマルジョン粒子を電着する工程、エマルジョン粒子をフィルム化する工程、フィルム化した層を加熱によって架橋させる工程を含むことを特徴とするスクリーン印刷用マスクの作製方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2010−180346(P2010−180346A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26072(P2009−26072)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】
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