説明

エレベータの地震救出運転装置

【課題】地震時の救出運転を実施するスイッチの機能を乗場呼び釦に割り当てるように構成することにより、大型の警報盤や監視盤を設けることなく、地震時の救出運転を行えるようにする。
【解決手段】乗場呼び釦22を非常停止した乗りかご10を低速で移動させるための地震時低速スイッチに切り替え、乗場呼び釦22が押され、かつ乗りかご内の戸閉釦16が押された場合に、乗りかご10を低速で最寄り階に移動させる地震時の救出運転を開始させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータの地震救出運転装置に係り、特に、地震発生時に、乗りかごを非常停止させた後、最寄りの停止階まで低速運転で移動させて乗りかご内の乗客を救出するエレベータの地震救出運転装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、エレベータでは、比較的大きな地震が発生したときには自動的に地震管制運転を働かせ、乗りかごを非常停止させている。このとき乗りかごの停止した位置が目的階への途中であった場合には、乗りかごの乗客を救出するために、最寄りの停止階まで低速で移動させている。この種の地震救出運転に関する先行技術としては、例えば、特許文献1、2を挙げることができる。
【0003】
地震の発生によってエレベータが非常停止した場合、地震救出運転制御システムでは、低速運転を実施するスイッチを、エレベータの運転を監視する監視盤や、エレベータの運転に異常が発生したときに警報を発する警報盤に設けていた。
【0004】
地震が発生して乗りかごが非常停止した時には、ビルや管制センタの管理者は、乗りかごに乗っている乗客の有無や、安全回路に異常がなくエレベータの運転が可能であること、等を確認してから、警報盤や監視盤にあるスイッチを押して、地震救出運転を行えるように準備をする。
【0005】
もっともこの段階では、乗りかごは非常停止したままである。地震救出運転を開始するには、管理者はインターホンを使って乗りかごの乗客に連絡を取り、救出運転の実施に表な手順を説明する。例えば、地震救出運転を始めるために、乗りかご内の戸閉釦を押し続けるように指示する。
【0006】
地震救出運転は、戸閉釦を押し続けるなど乗りかご内の乗客が所定の動作をすることを条件に開始され、乗りかごは低速で一番近い最寄りの階まで移動し、乗客はこの階で乗りかごから救出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−68629号公報
【特許文献2】特開2008−50113号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の地震発生に備えた地震救出運転システムでは、地震時に低速運転を実施するスイッチを入れて地震救出運転を有効にしているが、このスイッチは警報盤や監視盤に設けることが常識であった。
【0009】
そして従来の地震時の低速運転スイッチを備えた警報盤や監視盤は、大型のものが多く、建物によっては、警報盤や監視盤の設置スペースを確保することが困難なことがあり、その設置場所に苦慮するという問題があった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、前記従来技術の有する問題点を解消し、地震時救出運転を実施するスイッチの機能を乗場呼び釦に割り当てるように構成することにより、大型の警報盤や監視盤を設けることなく、地震発生に備えた救出運転システムを構築できるようにしたエレベータの地震救出運転装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するために、本発明は、地震の発生を地震感知器が検知したときに、エレベータを非常停止させてから乗りかごを低速で最寄り階に移動させる地震救出運転を行う地震救出運転装置において、各階のエレベータ乗場に設けられかご呼びをするための乗場呼び釦を非常停止した乗りかごを低速で移動させるための地震時低速スイッチに切り替えるスイッチ切替手段と、前記乗場呼び釦が押され、かつ乗りかご内の戸閉釦が押された場合に、乗りかごを低速で最寄り階に移動させる地震救出運転を開始させる運転制御手段と、を具備したことを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、地震の発生を地震感知器が検知したときに、エレベータを非常停止させてから乗りかごを低速で最寄り階に移動させる地震救出運転を行う地震救出運転装置において、エレベータを運転休止状態にさせるパーキングスイッチを非常停止した乗りかごを低速で移動させるための地震時低速スイッチに切り替えるスイッチ切替手段と、前記パーキングスイッチが押され、かつ乗りかご内の戸閉釦が押された場合に、乗りかごを低速で最寄り階に移動させる地震救出運転を開始させる運転制御手段と、を具備したことを特徴とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明によるエレベータの地震救出運転装置が適用されるエレベータの全体構成説明図である。
【図2】本発明の第1実施形態によるエレベータの地震救出運転の制御内容を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第2実施形態によるエレベータの地震救出運転の制御内容を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第3実施形態によるエレベータの地震救出運転の制御内容を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第4実施形態によるエレベータの地震救出運転の制御内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明によるエレベータの地震救出運転装置の一実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
第1実施形態
図1は、本発明によるエレベータの地震救出運転装置が適用されるエレベータの全体構成を示す図である。図1において、参照番号10は、エレベータの乗りかごを示す。参照番号11はシーブを示す。図示しない巻上機によって駆動されるシーブ11にロープが巻き掛けられており、このロープの一端は乗りかご10に連結され、他端は図示しないカウンタウェイト12に連結されている。
【0015】
乗りかご10の内部には、行き先階登録装置14、非常呼び釦15、戸閉釦16、戸開釦17などが設けられている。また、乗りかご10の内部には、かご位置を表示したり、乗客に報知する各種情報を表示する表示装置18、乗場と通話するためのインターホン19が設けられている。
【0016】
図1において、参照番号20は、それぞれエレベータ乗り場を示している。各エレベータ乗場20には、乗場呼び釦22が設けられている。また、一部のエレベータ乗場20には、乗りかご10に乗っている乗客と連絡をとるためのインターホン24と、パーキングスイッチ26と、各種情報を乗客に報知するための乗場表示装置27と音声出力装置28が設けられている。パーキングスイッチ26は、エレベータを通常運転から運転休止状態に切り替えるためのスイッチである。
【0017】
この実施形態では、各エレベータ乗場20に設けられている乗場呼び釦22は、本来のかご呼び信号を送信する乗場呼び釦としての機能を有するだけでなく、地震が発生したときに、乗りかごを低速で移動させる地震救出運転を実施するスイッチとして機能するようになっている。各エレベータ乗場20の乗場呼び釦22は通信ケーブル29を介してエレベータ制御装置30と接続されている。
エレベータには、震度5弱を越えるような比較的大きな地震が発生したときに、地震管制運転を実行するために、高ガル感知器などの地震感知器32が設けられている。地震感知器32が地震を感知すると、エレベータ制御装置30は、乗りかご10を非常停止させる。
【0018】
また、エレベータ制御装置30は、乗場呼び釦22の本来のかご呼び機能を無効にして、乗場呼び釦22を乗りかご10を低速で移動させる地震救出運転を実施するためのスイッチに切り替えるスイッチ切替回路34を備えている。このスイッチ切替回路34によって、乗場呼び釦22のスイッチ回路を切り替えた後、乗場呼び釦22が押され、かつ乗りかご10内の戸閉釦16が押されると、エレベータ制御装置30は、乗りかごを低速で最寄り階に移動させる地震救出運転を開始させる運転制御手段として機能するようになっている。36は、インターホン24が通話中であること検知する通話検知部である。
【0019】
次に、図1および図2のフローチャートを参照しながら、地震が発生した場合の地震救出運転の制御内容について詳細に説明する。
まず、比較的大きな、例えば震度5以上の地震が発生したとする。地震が地震感知器32によって感知されると(ステップS10のyes)、地震検知信号がエレベータ制御装置30に送られる。次いで、エレベータ制御装置30は、乗りかご10がエレベータ乗場20のあるいずれかの階床の着床可能ゾーンに入っていないかどうかを判別する(ステップS11)。乗りかご10が着床可能ゾーンに入っていない場合は、階と階の間の途中に乗りかご10があることになり、大きな揺れがある状況では危険であるため、エレベータ制御装置30は、乗りかご10を即時に非常停止させる(ステップS12)。なお、乗りかご10が既に着床可能ゾーンに入っていた場合には、そのまま乗りかご10を着床させる(ステップS11のno)。
【0020】
こうして乗りかご10を非常停止させた後、それまでの平常運転から乗りかご10を低速で移動させる地震救出運転に切り替えることになる。そこで、ステップS13では、スイッチ切替回路34を切り替え、各エレベータ乗場20にある乗場呼び釦22を地震救出運転を実施する地震時低速スイッチとして働くように切り替えを行う。これにより、乗場呼び釦22は、本来の乗場呼びをするスイッチとしての機能は無効となり、釦を押すと地震救出運転で使う地震時低速スイッチとして機能することになる。
【0021】
そこで、地震発生の警報を受けてエレベータ乗場10に出てきた管理人によって乗場呼び釦22が押されると(ステップS14のyes)、これ以後は、乗場呼び釦22を押してもかご呼びをすることはできなくなり、地震救出運転だけが有効になる。
【0022】
そして、乗りかご10に乗っている乗客によって戸閉釦16が押されると(ステップS15のyes)、乗りかご10は、ゆっくりと動き出し、一番近い最寄りの階までゆっくりと低速で移動する(ステップS16)。図1では、乗りかご10はゆっくりX階に移動してこの階で着床することになる。地震救出運転中は、安全面から乗りかご10とカウンタウェィト12がお互いに近づく方向に乗りかご10を移動させず、必ずカウンタウェイト12から離れる方向に乗りかご10を移動させる。
【0023】
こうして、地震救出運転が行われ、乗りかご10が最寄り階に到着すると(ステップS17のyes)、かご扉が開く(ステップS18)。乗りかご10に乗っていた乗客は、閉じこめられたままま放置されることなく、無事に救出される。このとき管理人のいる乗場では、乗り場表示装置27に着床完了が表示され、救出運転が完了したことを確認できる。なお、地震が発生していないときには(ステップS10のno)、平常運転が継続される(ステップS19)
以上のように、本実施形態によれば、乗場呼び釦22に地震時低速スイッチとしての働きが割り当てられており、地震が感知されると、乗場呼び釦22は地震救出運転で使用する地震時低速スイッチとして働くようになっている。このため、従来のように、地震時低速スイッチを警報盤や監視盤に設ける必要がなくなり、これらを設置するスペースのない建物でも地震救出運転のシステムを容易に構築することができる。
第2実施形態
次に、図3は、本発明の第2実施形態による地震救出運転の制御内容を示すフローチャートである。
【0024】
この第2実施形態は、図1において、エレベータ乗場20に設置したインターホン24と乗りかご10内のインターホン19との間が通話中であることを通話検出部36によって検出し、地震感知後に、エレベータ乗場20のインターホン24と乗りかご10内のインターホン19との間が通話中であることが検出された場合に、エレベータ乗場の乗場呼び釦22を地震時低速スイッチに切り替えるようにした実施の形態である。
【0025】
そこで、図1および図3のフローチャートを参照しながら、地震が発生した場合の地震救出運転の制御内容について詳細に説明する。
まず、比較的大きな、例えば震度5以上の地震が発生したとする。地震が地震感知器32によって感知されると(ステップS20のyes)、地震検知信号がエレベータ制御装置30に送られる。次いで、エレベータ制御装置30は、乗りかご10がエレベータ乗場20のあるいずれかの階床の着床可能ゾーンに入っていないかどうかを判別する(ステップS21)。乗りかご10が着床可能ゾーンに入っていない場合は、階と階の間の途中に乗りかご10があることになり、大きな揺れがある状況では危険であるため、エレベータ制御装置30は、乗りかご10を即時に非常停止させる(ステップS22)。なお、乗りかご10が既に着床可能ゾーンに入っていた場合には、そのまま乗りかご10を着床させる(ステップS21のno)。
【0026】
こうして乗りかご10が非常停止した後は、この実施形態では、インターホンによる通話を契機にして、それまでの平常運転から乗りかご10を低速で移動させる地震救出運転に切り替えることになる。
【0027】
地震を感知した場合には警報が鳴るため、管理人は、直ちにインターホン24の設置されているエレベータ乗場10に急行する。管理人は、インターホン24をとって乗りかご10内の乗客と連絡を取ることになる。このとき、インターホン24の受話器が取られたことより、信号がエレベータ制御装置30に送信される。エレベータ制御装置30は、インターホン24の受話器が取られたことを検知すると(ステップS23のyes)、続くステップS24では、スイッチ切替回路34を切り替え、各エレベータ乗場20にある乗場呼び釦22を地震救出運転で使用する地震時低速スイッチとして働くように切り替えを行う(ステップS24)。これにより、乗場呼び釦22は、本来の乗場呼びをするスイッチとしての機能は無効となり、釦を押すと地震救出運転で使う地震時低速スイッチとして機能することになる。
【0028】
このとき、管理人は、乗りかご10内にあるインターホン19を通じて、乗りかご内に異常がないか状況を把握するとともに、地震を感知したため非常停止をしたこと、エレベータのシステムには異常はないので安心してよいこと、これから地震救出運転を始めるので指示に従ってほしいこと、などを乗客に伝えることになる。
【0029】
そこで、管理人よって乗場呼び釦22が押されると(ステップS25のyes)、これ以後は、乗場呼び釦22を押してもかご呼びをすることはできなくなり、地震救出運転だけが有効になる。
【0030】
そして、乗りかご10に乗っている乗客は、管理人の指示にしたがって戸閉釦16を押すと(ステップS26のyes)、乗りかご10は、ゆっくりと動き出し、一番近い最寄りの階までゆっくりと低速で移動する(ステップS27)。図1では、乗りかご10はゆっくりX階に移動してこの階で着床することになる。地震救出運転中は、安全面から乗りかご10とカウンタウェィト12がお互いに近づく方向に乗りかご10を移動させず、必ずカウンタウェイト12から離れる方向に乗りかご10を移動させる。
【0031】
こうして、地震救出運転が行われ、乗りかご10が最寄り階に到着すると(ステップS28のyes)、かご扉が開く(ステップS29)。乗りかご10に乗っていた乗客は、閉じこめられたままま放置されることなく、無事に救出される。このとき管理人のいる乗場では、乗り場表示装置27に着床完了が表示され、救出運転が完了したことを確認できる。
なお、地震が発生していないときには(ステップS20のno)、平常運転が継続される(ステップS29)
以上の第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、地震時低速スイッチを警報盤や監視盤に設ける必要がなくなり、これらを設置するスペースのない建物でも地震救出運転のシステムを容易に構築することができる。さらに、インターホンによる通話を契機に乗場呼びスイッチが自動的に地震時低速スイッチに切り替わるので、乗りかご内の状況を把握しながら、乗客と緊密に連絡を取りつつ地震救出運転を的確に行うことが可能になる。
【0032】
第3実施形態
次に、図4は、本発明の第3実施形態による地震救出運転の制御内容を示すフローチャートである。
この第3実施形態は、インターホンによる通話を契機にエレベータ乗場の乗場呼び釦22を地震時低速スイッチに切り替える点は第2実施形態と同様であるが、乗りかご10の乗客の方からも地震救出運転のイニシアチブを取れるようにした実施の形態である。
【0033】
そこで、図1および図4のフローチャートを参照しながら、地震が発生した場合の地震救出運転の制御内容について詳細に説明する。
まず、比較的大きな、例えば震度5以上の地震が発生したとする。地震が地震感知器32によって感知されると(ステップS31のyes)、地震検知信号がエレベータ制御装置30に送られる。次いで、エレベータ制御装置30は、乗りかご10がエレベータ乗場20のあるいずれかの階床の着床可能ゾーンに入っていないかどうかを判別する(ステップS32)。乗りかご10が着床可能ゾーンに入っていない場合は、階と階の間の途中に乗りかご10があることになり、大きな揺れがある状況では危険であるため、エレベータ制御装置30は、乗りかご10を即時に非常停止させる(ステップS33)。なお、乗りかご10が既に着床ゾーンに入っていた場合には、そのまま乗りかご10を着床させる(ステップS32のno)。
【0034】
こうして乗りかご10が非常停止した後は、この実施形態では、インターホンによる通話を契機にして、それまでの平常運転から乗りかご10を低速で移動させる地震救出運転に切り替えることになるが、次のようにして、非常停止した乗りかご10に乗っている乗客の方から救出運転を始めるようにエレベータ乗場にいる人(管理人、その他の人を含む)に要求することができるようになっている。
【0035】
すなわち、乗りかご10に乗っている乗客が、かご内にある非常呼び釦15を押すと(ステップS34のyes)、この非常呼び釦15から出力されるオン信号に基づいて、エレベータ制御装置30は、インターホン24のあるエレベータ乗場20に設置されている乗場表示装置27と音声出力装置28を通じて乗客が救出要求を要求している旨を文字および音声で報知する(ステップS35)。
【0036】
この救出要求を受けて、エレベータ乗場20にいる人がインターホン24を取ると、インターホン24の受話器が取られたことより、信号がエレベータ制御装置30に送信される。エレベータ制御装置30は、インターホン24の受話器が取られたことを検知すると(ステップS36のyes)、続くステップS37では、スイッチ切替回路34が切り替わり、各エレベータ乗場20にある乗場呼び釦22を地震救出運転で使用する地震時低速スイッチとして働くように切り替えを行う。これにより、乗場呼び釦22は、本来の乗場呼びをするスイッチとしての機能は無効となり、釦を押すと地震救出運転で使う地震時低速スイッチとして機能することになる。その上で、そのエレベータ乗場20にある乗場表示装置27と音声出力装置28を通じて、乗場呼び釦22が地震時低速スイッチに切り替わったことが報知される(ステップS38)。
【0037】
そこで、乗場にいる人は、乗りかご10内にあるインターホン19を通じて、乗客と連絡を取りながら、乗場呼び釦22を押し(ステップS39のyes)、これ以後は、乗場呼び釦22を押してもかご呼びをすることはできなくなり、地震救出運転だけが有効になる。
【0038】
そして、乗りかご10に乗っている乗客により、戸閉釦16が押されると(ステップS40のyes)、乗りかご10は、ゆっくりと動き出し、一番近い最寄りの階までゆっくりと低速で移動する(ステップS41)。図1では、乗りかご10はゆっくりX階に移動してこの階で着床することになる。地震救出運転中は、安全面から乗りかご10とカウンタウェィト12がお互いに近づく方向に乗りかご10を移動させず、必ずカウンタウェイト12から離れる方向に乗りかご10を移動させる。
【0039】
地震救出運転が行われている間、乗場表示装置27と音声出力装置28によって地震救出運転が実施されていることが文字および音声で報知される(ステップS42)。乗りかご10が最寄り階に到着すると(ステップS43のyes)、かご扉が開く(ステップS44)。乗りかご10に乗っていた乗客は、閉じこめられたままま放置されることなく、無事に救出される。このとき管理人のいる乗場では、乗り場表示装置27に着床完了が表示され、救出運転が完了したことを確認できる。
なお、地震が発生していないときには(ステップS20のno)、平常運転が継続される(ステップS29)
この第3実施形態によれば、乗りかごの乗客から乗場にいる人に救出要求を報知することができるようになるので、地震救出運転を迅速かつ的確に行うことができる。
【0040】
第4実施形態
次に、図5は、本発明の第4実施形態による地震救出運転の制御内容を示すフローチャートである。
この第4実施形態は、エレベータを運転休止状態にさせるパーキングスイッチを乗りかごを低速で移動させる地震時低速スイッチに切り替えるようにした実施の形態である。
【0041】
そこで、図1および図5のフローチャートを参照しながら、地震が発生した場合の地震救出運転の制御内容について詳細に説明する。
まず、比較的大きな、例えば震度5以上の地震が発生したとする。地震が地震感知器32によって感知されると(ステップS50のyes)、地震検知信号がエレベータ制御装置30に送られる。次いで、エレベータ制御装置30は、乗りかご10がエレベータ乗場20のあるいずれかの階床の着床可能ゾーンに入っていないかどうかを判別する(ステップS51)。乗りかご10が着床可能ゾーンに入っていない場合は、階と階の途中に乗りかごがあることになり、大きな揺れがある状況では危険であるため、エレベータ制御装置30は、乗りかご10を即時に非常停止させる(ステップS52)。なお、乗りかご10が既に着床ゾーンに入っていた場合には、そのまま乗りかご10を着床させる(ステップS51のno)。
【0042】
こうして乗りかご10を非常停止させた後、それまでの平常運転から乗りかご10を低速で移動させる地震救出運転に切り替えることになる。そこで、ステップS53では、スイッチ切替回路34が切り替わり、エレベータ乗場20にあるパーキングスイッチ26を地震救出運転を実施にする地震時低速スイッチとして働くように切り替えを行う。これにより、パーキングスイッチ26は、本来の乗場呼びをするスイッチとしての機能は無効となり、釦を押すと地震救出運転で使う地震時低速スイッチとして機能することになる。
【0043】
そこで、地震発生の警報を受けてエレベータ乗場10に出てきた管理人によってパーキングスイッチ26が押されると(ステップS54のyes)、これ以後は、乗場呼び釦22を押してもかご呼びをすることはできなくなり、地震救出運転だけが有効になる。
【0044】
そして、乗りかご10に乗っている乗客によって戸閉釦16が押されると(ステップS55のyes)、乗りかご10は、ゆっくりと動き出し、一番近い最寄りの階までゆっくりと低速で移動する(ステップS56)。図1では、乗りかご10はゆっくりX階に移動してこの階で着床することになる。地震救出運転中は、安全面から乗りかご10とカウンタウェィト12がお互いに近づく方向に乗りかご10を移動させず、必ずカウンタウェイト12から離れる方向に乗りかご10を移動させる。
【0045】
こうして、地震救出運転が行われ、乗りかご10が最寄り階に到着すると(ステップS57のyes)、かご扉が開く(ステップS58)。乗りかご10に乗っていた乗客は、閉じこめられたままま放置されることなく、無事に救出される。このとき管理人のいる乗場では、乗り場表示装置27に着床完了が表示され、救出運転が完了したことを確認できる。
なお、地震が発生していないときには(ステップS50のno)、平常運転が継続される(ステップS59)
この第4実施形態によれば、エレベータのパーキングスイッチ26に地震時低速スイッチの働きが割り当てられており、地震が感知されると、パーキングスイッチ26は地震救出運転で使用する地震時低速スイッチとして働くようになっている。このため、従来のように、地震時低速スイッチを警報盤や監視盤に設ける必要がなくなり、これらを設置するスペースのない建物でも地震救出運転のシステムを容易に構築することができる。
【0046】
なお、第2実施形態、第3実施形態において、乗場呼び釦22の代わりにパーキングスイッチを地震時低速スイッチに割り当てるようにしてしてもよい。
【0047】
以上、実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例示として挙げたもので、発明の範囲の制限を意図するものではない。もちろん、明細書に記載された新規な方法およびシステムは、様々な形態で実施され得るものであり、さらに、本発明の主旨から逸脱しない範囲において、種々の省略、置換、変更が可能である。請求項およびそれらの均等物の範囲は、発明の主旨の範囲内で実施形態あるいはその改良物をカバーすることを意図している。
【符号の説明】
【0048】
10…乗りかご、11…シーブ、12…カウンタウェィト、15…非常呼び釦、16…戸閉釦、20…エレベータ乗場、22…乗場呼び釦、26…パーキングスイッチ、30…エレベータ制御装置、34…スイッチ切替回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地震の発生を地震感知器が検知したときに、エレベータを非常停止させてから乗りかごを低速で最寄り階に移動させる地震救出運転を行う地震救出運転装置において、
各階のエレベータ乗場に設けられかご呼びをするための乗場呼び釦を非常停止した乗りかごを低速で移動させるための地震時低速スイッチに切り替えるスイッチ切替手段と、
前記乗場呼び釦が押され、かつ乗りかご内の戸閉釦が押された場合に、乗りかごを低速で最寄り階に移動させる地震救出運転を開始させる運転制御手段と、
を具備したことを特徴とするエレベータの地震救出運転装置。
【請求項2】
エレベータ乗場に設置したインターホンと乗りかご内のインターホンとの間が通話中であることを検出する手段を更に備え、
エレベータ乗場のインターホンと乗りかご内のインターホンとの間が通話中であることが検出された場合に、前記スイッチ切替手段は、前記エレベータ乗場の乗場呼び釦を前記地震時低速スイッチに切り替えることを特徴とする請求項1に記載のエレベータの地震救出運転装置。
【請求項3】
前記乗りかご内から救出要求をエレベータ乗場側に報知する手段と、
前記乗場呼び釦が前記地震時低速スイッチに切り替わったことを乗場側に報知する手段と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項2に記載のエレベータの地震救出運転装置。
【請求項4】
地震の発生を地震感知器が検知したときに、エレベータを非常停止させてから乗りかごを低速で最寄り階に移動させる地震救出運転を行う地震救出運転装置において、
エレベータを運転休止状態にさせるパーキングスイッチを非常停止した乗りかごを低速で移動させるための地震的低速スイッチに切り替えるスイッチ切替手段と、
前記パーキングスイッチが押され、かつ乗りかご内の戸閉釦が押された場合に、乗りかごを低速で最寄り階に移動させる地震救出運転を開始させる運転制御手段と、
を具備したことを特徴とするエレベータの地震救出運転装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−30916(P2012−30916A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170942(P2010−170942)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】