説明

エレベータ制御装置

【課題】 指紋を認証することによりエレベータの運行を制御するエレベータ制御装置における指紋読取部を常に清浄化し得るエレベータ制御装置を提供すること。
【解決手段】 エレベータの運行制御を行う制御盤2と、エレベータのかごまたは乗り場に設けられ、読取った指紋を前記制御盤に出力することにより利用者の認証を行わせる指紋読取部5と、前記制御盤によってエレベータが利用されていないと判断された時に前記指紋読取部に紫外線を照射する紫外線照射装置7と、を有することを特徴とするエレベータ制御装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ制御装置に係わり、特にエレベータの動作に利用者の認証を関連させるようにしたエレベータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、セキュリティ向上の必要性が高まり、建物に出入りする利用者の認証のための認証システムが導入され、建物設備であるエレベータにも、利用者を認証して安全性を高めるシステムが採用されている。
【0003】
このような指紋認証システムを用いたエレベータ制御装置として、例えば特許文献1に示されたエレベータが知られている。
【0004】
すなわち、図9に示すように、巻上機1により昇降されるカゴ2があり、巻上機1は制御盤3により動作制御される。制御盤3には、乗り場操作盤4、ならびにカゴ2内の指紋読取部5に接続された指紋判断手段6が接続されており、この指紋判断手段6の検出結果に応じて巻上機1の制御を行う。
【特許文献1】特開平5−139641号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
指紋読取部5は、多数の不特定人が接触するものであるから、汚染が避けられず、読み取り精度を損なったり、衛生上の不具合を生じたりする。しかし、指紋読取部を清掃する動作は指紋認証を妨げるものであった。
【0006】
本発明は上述の点を考慮してなされたもので、指紋を認証することによりエレベータの運行を制御するエレベータ制御装置における指紋読取部を常に清潔化し得るエレベータ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的達成のため、本発明では、
エレベータの運行制御を行う制御盤と、
エレベータのかごまたは乗り場に設けられ、読取った指紋を前記制御盤に出力することにより利用者の認証を行わせる指紋読取部と、
前記制御盤によってエレベータが利用されていないと判断された時に前記指紋読取部に紫外線を照射する紫外線照射装置と、
を有することを特徴とするエレベータ制御装置、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は上述のように、例えばエレベータの利用がない時に紫外線照射装置を用いて指紋読取部の殺菌を行うようにしたため、指紋読取部が常に清潔に保たれると共に読取り精度の低下を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図1乃至図8を参照して本発明の実施形態を説明する。
【実施形態1】
【0010】
図1は、本発明の第1実施形態の全体構成を示したものである。この図1に示すように、巻上機1は制御盤2により制御され、巻上機1から延びるロープの一端に吊り下げられたカゴ3を昇降させる。制御盤2には、乗り場操作盤4からの昇降操作入力が与えられる。
【0011】
カゴ3内には、指紋読取部5が設けられ、この指紋読取部5は指紋判断手段6に接続されている。カゴ3内の指紋読取部5で読み取った利用者の指紋を指紋判断手段6で判断し、その判断結果を制御盤2に与える。
【0012】
これらの構成により、指紋認証により利用者を識別した上でエレベータの昇降制御が行われる。
【0013】
ここで、指紋読取部5には、紫外線照射装置7から紫外線が照射されるように構成されているが、紫外線照射装置7はエレベータの利用者がいない時にのみ起動される。すなわち、乗り場呼び操作盤4やかご内呼び操作盤(図示せず)、あるいは指紋判断手段6などから所定時間にわたり信号の入力が無い場合、制御盤2はエレベータの利用者がいないと判断する。そして、制御盤2は指紋判断手段6を介して紫外線照射指令信号8を生成し、紫外線照射装置7に紫外線を照射する。
【0014】
このような紫外線照射の動作は、エレベータの利用者がいない時に任意に行われるように設定することができる。しかし設定方法としては、例えば前回の紫外線照射から少なくとも所定時間(数分)経過後に次回の紫外線照射を行うとか、利用者による呼び登録を所定回数(数回)受けた後に次回の紫外線照射を行うとか、目的や要求に応じて各種の設定が可能である。もちろん、エレベータの休止中(パーキング操作が行われている時など)や待機中などに紫外線照射を行うこともできる。
【0015】
そしてこのような本発明によれば、多くの利用者の認証に供される指紋読取部5が自動的に殺菌されるため、指紋読取部5が常に清潔に保たれると共に読取り精度の低下が防止される。そして、利用者の衛生面に配慮したエレベータのセキュリティが実現する。
【実施形態2】
【0016】
図2は、本発明の第2の実施形態を示したものである。この第2の実施形態では、紫外線照射装置7が階床乗り場に設置されている。そして、紫外線照射装置7の近傍に人感センサ9が設けられている。
【0017】
これにより、人感センサ9が利用者のいないことを感知しているときに、指紋判断手段6が紫外線照射装置7を作動させて指紋読取部5の殺菌を行うことができる。したがって、エレベータの休止中や待機中などを利用して、サービス運転を妨げることなく殺菌を行うことができる。
【実施形態3】
【0018】
図3は、本発明の第3実施形態を示したものである。この第3の実施形態では、指紋読取部5の読取り面を帯状の薄いシート10が覆っている。利用者の指紋はこのシート10を介して読取られる。そしてシート10は、巻取装置11により循環供給および循環回収され、移動経路の途中に設けられたシート清掃装置12内で紫外線が照射されるなどして清掃される。
これにより、指紋読取部5は常に清潔に保たれる。
【実施形態4】
【0019】
図4は、本発明の第4実施形態を示したものである。この第4実施形態は、カゴ3内にある指紋読取部5の読取り面に開閉式カバー13を設けて、指紋読取部5の読取り面への塵埃の付着を抑制するものである。
【0020】
これにより、エレベータの休止中や待機中などにおける指紋読取部5の殺菌中において紫外線の漏れを防止することができる。よって、紫外線の利用効率の向上、および紫外線漏れによる他の機器への悪影響を防止することもできる。
【0021】
図5は、本発明の第4実施形態の動作を示すフローチャートである。このフローチャートに示すように、指紋読取部5に開閉式カバー13を有する実施形態4では、エレベータのドア開閉との関連において開閉式カバー13の開閉、および紫外線による殺菌処理を行う。
【0022】
すなわち、ステップ101においてドアが閉じているか否かを判断し、閉じていなければステップ102による指紋スキャン待ちを経てステップ103による指紋スキャンありか否かの判断を行う。指紋スキャンがなければステップ101に戻り、指紋スキャンがあればステップ104による指紋認証処理を行ってからステップ101に戻る。
【0023】
一方、ステップ101でドアが閉じていれば、ステップ105により開閉式カバー13を閉じてステップ106による殺菌処理を行い、ドアが開いてないことをステップ107で確認している間、殺菌処理を続ける。ドアが開いたらステップ108により開閉式カバー13を開いてステップ102に移り、指紋のスキャン待ちとなる。
【0024】
なお、ステップ101におけるドア閉とは、利用者による指紋スキャンが完了している状態を意味している。
【0025】
このように、エレベータのドアが閉じるとともに指紋読取部5の開閉式カバー13も閉じるため、指紋読取部5へのガム詰め等のいたずらを防止し指紋読取部5を保護することができる。
【実施形態5】
【0026】
図6は、本発明の第5実施形態を示したものである。この第5実施形態は、指紋読取部5および人感センサ9を階床乗り場に設け、かつ指紋読取部5に開閉式カバー13を設けたものである。
【0027】
これにより、第4実施形態と同様に、指紋読取部5自体を保護すること、ならびにエレベータの休止中や待機中などにおける紫外線を用いた指紋読取部5の殺菌中において、紫外線の利用効率の向上、および紫外線漏れによる他の機器への悪影響を防止することができる。
【実施形態6】
【0028】
図7は、本発明の第6実施形態を示したものである。この第6実施形態では、指紋読取部5の近傍、たとえば開閉式カバー13の上部に、「紫外線殺菌中」なる表示を行う表示部14が設けられている。なお、表示部14はここでは図示を省略した紫外線照射指令信号8に応じて点灯するようになっている。
【0029】
これにより、開閉式カバー13が閉じている状態では指紋読取部5が紫外線による殺菌中であることを利用者に認識させることができると共に開閉式カバー13が故障で閉じているのではないことを利用者に認識させることができる。
【実施形態7】
【0030】
図8は、本発明の第7実施形態を示したものである。この第7実施形態は、カゴ3内に火気検出手段16を有するもので、その検出信号を指紋判断手段6に送るように構成されている。火気検出手段16が火気や熱を検出した場合、開閉式カバー13を閉じるように制御される。なお、火気検出手段16は、階床乗り場に設けてもよい。
【0031】
これにより、火気検出手段16がカゴ3内で火気を検出した場合に指紋判断手段6が開閉式カバー13を閉じるので、指紋読取部5がタバコやライターなどによっていたずらされることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態1の構成を示す説明図。
【図2】本発明の実施形態2の構成を示す説明図。
【図3】本発明の実施形態3の構成を示す説明図。
【図4】本発明の実施形態4の構成を示す説明図。
【図5】本発明の実施形態4の動作を示すフローチャート。
【図6】本発明の実施形態5の構成を示す説明図。
【図7】本発明の実施形態6の構成を示す説明図。
【図8】本発明の実施形態7の構成を示す説明図。
【図9】従来の指紋認証システムを有するエレベータの構成を示す説明図。
【符号の説明】
【0033】
1 巻上機
2 制御盤
3 カゴ
4 乗り場操作盤
5 指紋読取部
6 指紋判断手段
7 紫外線照射装置
8 紫外線照射指令信号
9 人感センサ
10 シート
11 シート巻取装置
12 シート清掃装置
13 指紋読取部カバー
14 表示部
16 火気検出手段
17 火気検出信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの運行制御を行う制御盤と、
エレベータのかごまたは乗り場に設けられ、読取った指紋を前記制御盤に出力することにより利用者の認証を行わせる指紋読取部と、
前記制御盤によってエレベータが利用されていないと判断された時に前記指紋読取部に紫外線を照射する紫外線照射装置と、
を有することを特徴とするエレベータ制御装置。
【請求項2】
前記読取部の近傍を検出する人感センサを設け、前記人感センサが人を検知していない時に前記紫外線照射装置を動作させてなることを特徴とする請求項1記載のエレベータ制御装置。
【請求項3】
エレベータの運行制御を行う制御盤と、
エレベータのかごまたは乗り場に設けられ、読取り面に循環供給されるシートを介して読取った指紋を前記制御盤に出力することにより利用者の認証を行わせる指紋読取部と、
前記制御盤によってエレベータが利用されていないと判断された時に循環回収された前記シートを清掃する清掃装置と、
を有することを特徴とするエレベータ制御装置。
【請求項4】
エレベータの運行制御を行う制御盤と、
エレベータのかごまたは乗り場に設けられ、読取った指紋を前記制御盤に出力することにより利用者の認証を行わせる指紋読取部と、
前記制御盤によってエレベータのドアが閉じていると判断された時に前記指紋読取部の読取り面を覆うカバーと、
前記カバーで覆われた状態で前記指紋読取部に紫外線を照射する紫外線照射装置と、
を有することを特徴とするエレベータ制御装置。
【請求項5】
前記カバーが前記指紋読取部の読取り面を覆った状態の時に前記指紋読取部に紫外線が照射されている旨を表示する表示部を設けたことを特徴とする請求項4記載のエレベータ制御装置。
【請求項6】
前記かご内に設けられ、火気を検出した場合に前記カバーにより前記指紋読取部を覆う火気検出手段を有することを特徴とする請求項4記載のエレベータ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−188328(P2006−188328A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−1293(P2005−1293)
【出願日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(390025265)東芝エレベータ株式会社 (2,543)
【Fターム(参考)】