説明

エレベータ式駐車装置とその火災発生時制御方法

【課題】 消火後の点検等を、迅速、且つ安定して行えるエレベータ式駐車装置の火災発生時制御方法を提供すること。
【解決手段】 駐車塔の鉛直方向に形成された昇降路に沿って昇降するエレベータ搬器で複数の駐車階にパレットを格納するエレベータ式駐車装置の火災発生時の制御を、火災発生時に、前記駐車塔の入出庫口扉の開閉状態とエレベータ搬器の現在の位置及び動作状態とを判断し、各状態に応じてエレベータ搬器の動作を制御してこのエレベータ搬器を乗入れ部に着床させて待機させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災発生時におけるエレベータ式駐車装置の火災発生時制御方法と、それを備えたエレベータ式駐車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、例えば、鉄骨構造の駐車塔に組込まれたエレベータ式駐車装置は、地上の乗入れ部(入出庫階ともいう)から鉛直上方にエレベータ搬器の昇降路が形成され、この昇降路の両側方に複数段の駐車階(駐車棚)が形成されている。そして、昇降路を昇降するエレベータ搬器と各駐車棚との間で車両搭載用パレットの受渡し(移載)を行う構成となっている。
【0003】
このようなエレベータ式駐車装置における消火設備には、駐車塔内の各所に配設された火災検知手段(煙感知器や熱感知器)、及び消火剤(二酸化炭素ガスCO2 、窒素ガスN2 等の不活性ガス消火剤)の噴射手段(噴射ノズル)と、入出庫口の外部に装備された、消火システム起動操作箱、及び消火剤ボンベを収納した消火剤ボンベ室等が備えられている。
【0004】
また、駐車塔には、付帯設備として換気用ガラリ及び排気手段(排気ダクト、排気ファン、排気ダンパ)が備えられている。さらに、駐車塔の内部には、通常、保守員が保守点検作業に際し、昇り降りして利用するタラップが、地上から最上部の機械室上部の屋根に至るように常設されている。このタラップは、駐車塔の鉄骨構造物と駐車装置の機械構造物との限られた狭い空所(デッドスペース)に設置されている。さらに、上記駐車塔の屋根には、開閉蓋付きの点検用出入口が設けられている。
【0005】
そして、火災が発生して消火後、消防隊員が梯子車等により駐車塔屋根に降り、上記点検用出入口から駐車塔内に入って上記タラップを利用して駐車塔内の鎮火確認や出火原因等が調査されている。また、上記タラップは、消火後の復旧作業に際して保守員によって利用されている。
【0006】
このような構成のエレベータ式駐車装置において、火災が発生して火災検知手段がこれを検知すると、火災警報が発令される。このとき一般的なエレベータ式駐車装置は、手動又は自動による消火システムの起動により、入出庫口扉が閉じている場合には、エレベータ搬器がどの現動作状況(乗入れ部又は駐車階に待機、乗入れ部でのパレット旋回中、昇降路を昇降中、駐車階でのパレット移載動作中)であっても即座に停止させられ、ガラリ及び排気ダンパを自動閉鎖させて駐車塔内をほぼ密閉状態とした上で、消火剤が噴射されて消火作業が行われる。
【0007】
なお、この種の先行技術として、立体駐車場内に複数の火災センサを設け、その火災センサが火災を検知すると全域に消火ガスを噴射させるとともに、火災を検知した駐車スペースの自動車を消火ガス濃度の濃くなる下段位置に搬送して確実な再燃防止を図るようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
また、他の先行技術として、複数の格納区画に格納された車両の火災を火災検出手段で検出すると、その火災を起した車両を格納区画から消火スペースに移動させて消火するようにしたものもある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−24129号公報
【特許文献2】特開平7−180390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記一般的なエレベータ式駐車装置のように、消火システムの起動時にエレベータ搬器がどの現動作状況(昇降路の途中、すなわち駐車階に位置している状態)であっても即座に停止させて消火作業を行うと、消火後の鎮火確認・出火原因調査・復旧作業等に、以下のような不都合を生じる。
【0011】
すなわち、消防隊員は、鎮火した頃を見計らって、先ず入出庫口付近の非常用出入口から駐車塔内に入り、タラップを昇り降りし、梁を介し各駐車階のパレット及び搭載車両を隈無く点検し、出火場所・出火原因・損壊状況を調査する。この調査は、駐車塔の内部に消火剤ガスが充満しているので、入出庫口扉を開いて内部の点検・復旧作業を行うと消火剤ガスが入出庫口から一気に外部に放出されて逆に大気が入り込んで火災発生源が再燃するおそれがあるため、通常、上記非常用出入口から入って行われる。
【0012】
しかし、この鎮火確認等の作業では、駐車塔内に消火剤(窒素ガスN2 や有害な二酸化炭素ガスCO2 等)が充満している上、煙で視界が悪く塔内照明も消えているため、消防隊員は吸引用酸素ボンベを背負うとともに、照明器具及び種々工具等を携帯することとなり、重装備を余儀なくされる。
【0013】
そのため、このような重装備で駐車塔内を移動する消防隊員は、エレベータ搬器が昇降路途中の駐車階にあると、これが昇降路のほぼ全体を塞いでしまうので、上記非常用出入口から入ってタラップを昇るにしても、上記屋根の点検用出入口から入ってタラップで降りるにしても、このエレベータ搬器が点検・復旧作業の大きな障害となり、迅速な鎮火確認・出火原因調査・復旧作業等が行えず、多くの時間と労力を要してしまう。
【0014】
また、火災によってエレベータ搬器の昇降駆動部等が損壊した場合、エレベータ搬器が火災発生時に停止した駐車階で動作不能となり、消火後の復旧作業時に障害となる。
【0015】
なお、上記特許文献1,2では、何れもセンサが検出した火災発生源である車両を搬送手段で搬送するようにしているが、火災発生源の車両を鎮火確認前等に搬送することで二次災害を生じるおそれがある。
【0016】
そこで、本発明は、消火後の点検等を、迅速、且つ安定して行えるエレベータ式駐車装置の火災発生時制御方法と、それを備えたエレベータ式駐車装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明に係るエレベータ式駐車装置の火災発生時制御方法は、駐車塔の鉛直方向に形成された昇降路に沿って昇降するエレベータ搬器で複数の駐車階にパレットを格納するエレベータ式駐車装置の火災発生時制御方法であって、火災発生時に、前記駐車塔の入出庫口扉の開閉状態と前記エレベータ搬器の現在の位置及び動作状態とを判断し、各状態に応じてエレベータ搬器の動作を制御して該エレベータ搬器を乗入れ部に着床させるようにしている。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における「消火システム」は、駐車塔内を密閉して消火剤を噴射することによって消火作業を行う機能を有するシステムをいう。これにより、火災発生時には、エレベータ搬器の動作状態に応じたエレベータ搬器の動作制御を行って、最終的には乗入れ部に着床させて待機させるの
で、消火後の昇降路は全体が空洞状態となっており、鎮火の点検作業や出火原因調査、鎮火後の復旧作業等の容易化を図ることができる。
【0018】
また、前記火災発生時に、前記エレベータ搬器を乗入れ部に着床させる制御と並行して消火システムを起動させるように制御してもよい。このようにすれば、火災発生時にエレベータ搬器を乗入れ部に着床させて待機させる動作と並行して消火システムによる消火作業を迅速に開始することができる。
【0019】
さらに、前記火災発生時に、前記エレベータ搬器を乗入れ部に着床させた後、消火システムを起動させるように制御してもよい。このようにすれば、エレベータ搬器の乗入れ部への着床動作制御と、消火システムを起動させる指令制御とを順に行う簡単な制御で、エレベータ搬器の乗入れ部着床と消火作業とを行うことができる。
【0020】
また、前記火災発生時に、前記エレベータ搬器の待機モードが出庫優先モードであれば入庫優先モードに切替えて前記エレベータ搬器を乗入れ部に着床させるように制御してもよい。このようにすれば、火災発生時に自動的にエレベータ搬器が乗入れ部に着床して待機する入庫優先モードとなるので、エレベータ搬器が自動的に乗入れ部へ着床するような制御にできる。
【0021】
一方、本発明に係るエレベータ式駐車装置は、入出庫口扉を備えた駐車塔と、該駐車塔の乗入れ部から鉛直方向に形成された昇降路に沿って昇降するエレベータ搬器と、該昇降路の側方に形成されたパレット格納用の複数の駐車階と、前記駐車塔内の火災を検知する火災検知手段と、該駐車塔内に消火剤を噴射して消火する消火システムと、を備えたエレベータ式駐車装置であって、火災発生時に、前記入出庫口扉の開閉状態と前記エレベータ搬器の現在の位置及び動作状態とを判断し、各状態に応じてエレベータ搬器の動作を制御して該エレベータ搬器を前記乗入れ部に着床させる指令を出す制御装置を備えている。これにより、火災発生時には、エレベータ搬器の動作状態に応じたエレベータ搬器の動作制御を行って、最終的には乗入れ部に着床させて待機させるので、消火後の昇降路は全体が空洞状態となっており、鎮火の点検作業や出火原因調査、鎮火後の復旧作業等の容易化を図ることができる。
【0022】
また、前記制御装置は、前記エレベータ搬器を乗入れ部に着床させる指令を出すとともに、並行して前記消火システムを起動させる指令を出す機能を備えていてもよい。このようにすれば、火災発生時にエレベータ搬器を乗入れ部に着床させて待機させる動作と並行して消火システムによる消火作業を迅速に開始することができる。
【0023】
さらに、前記制御装置は、前記エレベータ搬器の乗入れ部への着床検知後に、前記消火システムを起動させる指令を出す機能を備えていてもよい。このようにすれば、エレベータ搬器の乗入れ部への着床動作制御と、消火システムを起動させる指令制御とを順に行う簡単な制御で、エレベータ搬器の乗入れ部着床と消火作業とを行うことができる。
【0024】
また、前記制御装置は、火災発生時に、前記エレベータ搬器の待機モードが出庫優先モードであれば入庫優先モードに切替えて該エレベータ搬器を乗入れ部に着床させる機能を備えていてもよい。このようにすれば、火災発生時に自動的にエレベータ搬器が乗入れ部に着床して待機する入庫優先モードとなるので、エレベータ搬器は自動的に乗入れ部に着床するようにできる。
【0025】
さらに、前記制御装置は、火災発生時に警報を出す警報手段を備えていてもよい。この警報手段としては、駐車塔内外における警報案内の放送、駐車塔外における警報表示灯の点灯等がある。このようにすれば、火災発生時に利用者に対して迅速な退場案内を行うこ
とができるとともに、消火作業中の消火剤充満状態等を外部に知らせることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、火災発生時にエレベータ搬器を乗入れ部に着床させるので、消火後は昇降路の全体が空洞状態となってスムーズに移動することができ、鎮火の点検、出火場所・出火原因・損壊状況等の調査を、迅速、且つ安定して行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明を採用したエレベータ式駐車装置の外装板を外した全体概略正面図である。
【図2】図1に示すII−II矢視拡大平面図である。
【図3】図1に示すエレベータ式駐車装置の制御ブロック図である。
【図4】図1に示すエレベータ式駐車装置の火災発生時における制御フローチャートである。
【図5】図1に示すエレベータ式駐車装置の火災発生時における他の制御フローチャートである。
【図6】図1に示すエレベータ式駐車装置の火災発生時における更に他の制御フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明を採用したエレベータ式駐車装置の外装板を外した全体概略正面図であり、図2は、図1に示すII−II矢視拡大平面図である。この明細書及び特許請求の範囲の書類中における上下左右方向の概念は、図1に示す駐車設備の正面に向った状態の上下左右方向の概念と一致するものとする。
【0029】
図1に示すように、エレベータ式駐車装置1は、鉄骨主柱2と梁3とが組まれ、これらの間が斜め配置のブレース6によって補強された鉄骨構造体の外面に外装板4が設けられて駐車塔5が形成されている。この実施の形態では、駐車塔5の地上1階が乗入れ部7となっている。乗入れ部7の乗入れ床8には、エレベータ搬器23が着床するピット9が形成されている。また、駐車塔5の側部には、消火剤ガスボンベ10が収納されたボンベ室11が設けられている。
【0030】
上記乗入れ部7の前部には入出庫口12が設けられ、この入出庫口12には開閉式の入出庫口扉13が設けられている。入出庫口12の外部の右方側部には、運転操作盤14と、消火システム起動操作箱15とが設けられている。また、入出庫口12の左方側部には非常用出入口16が設けられ、乗入れ部7内には警報案内放送手段17(スピーカ;警報手段)が設けられている。さらに、入出庫口扉13の上方には、消火剤充満表示灯18(警報手段)が設けられている。
【0031】
上記駐車塔5の中央鉛直方向には昇降路20が形成され、この昇降路20を挟んで左右両側の鉛直方向に設けられた棚柱21に複数段の駐車棚22が形成されている。これらの駐車棚22の間が駐車階19となっており、図1のエレベータ式駐車装置1では、11階の駐車階19が形成されている。
【0032】
一方、上記昇降路20を昇降するエレベータ搬器23は、駐車塔5の上部に形成された機械室24内の昇降駆動部25によって昇降させられている。この昇降駆動部25は、エレベータ搬器23に接続されたワイヤロープ26を昇降させるものである。ワイヤロープ26の反エレベータ搬器側にはカウンタウエイト27が設けられている。
【0033】
また、エレベータ搬器23には、パレット31を持上げて旋回させ、移載するパレット持上・旋回・移載機構29が備えられている。このパレット持上・旋回・移載機構29により、エレベータ搬器23のレール30から、駐車棚22の棚レール(図では駐車棚22と同一)にパレット31の車輪32を移載するようになっている。図示するエレベータ搬器23は、所定駐車階19の位置の昇降路20で、パレット空載状態で待機している状態を優先させる出庫優先モードによって運転されている状態を示している。
【0034】
そして、このようなエレベータ式駐車装置1の所定位置に火災検知器35が設けられている。この実施の形態では、各梁3に、煙検知と火災検知ができる火災検知器35が設けられている。また、駐車塔5の内部には、駐車塔内の全域に向けて消火剤を噴射する消火剤噴射ノズル36が設けられている(図1,2)。
【0035】
さらに、このようなエレベータ式駐車装置1には、乗入れ床8から駐車塔5の屋根37まで延びる保守点検用のタラップ38が設けられている。このタラップ38は、例えば、駐車塔5内の前後位置に設けられ(図2)、通常の点検作業を保守員が行うとき、及び火災発生時の鎮火状況や出火原因調査等を消防隊員が行うときに使用される。このタラップ38の上端は、屋根37に設けられた点検用出入口39に通じている。この点検用出入口39は、主に、火災鎮火後、消防隊員の侵入に使用され、常時、点検蓋40によって塞がれている。
【0036】
また、駐車塔5内には、ピット9内から屋根37まで延びる排気ダクト41が設けられ、上部に設けられた排気ファン42によってピット9内のガス吸引口43から吸引されたガスが排気口44から塔外に排出されるようになっている。この排気ダクト41の乗入れ部7位置には、常時は開放状態で、火災発生時等に自動閉鎖する排気ダンパ45が設けられている。さらに、駐車塔5の上部側面には、常時、開状態のガラリ46(換気窓)が設けられている。
【0037】
図2に示すように、上記エレベータ式駐車装置1の所定駐車階19にエレベータ搬器23が待機している状態では、昇降路20はこのエレベータ搬器23によって塞がれ、その両側部の駐車棚22は、車両Vを搭載して格納されたパレット31及び空載状態で格納されたパレット31によって塞がれた状態となる。
【0038】
そのため、図示するようにエレベータ搬器23が駐車階19に待機中の場合、上記保守点検用タラップ38を保守員や消防隊員Mが昇り降りする場合、エレベータ搬器23と駐車塔5との隙間、又はパレット31と駐車塔5との隙間の狭い空間で行うことになる。
【0039】
図3は、図1に示すエレベータ式駐車装置の制御ブロック図である。図示するように、上記エレベータ式駐車装置1の制御ブロックとしては、RAMやCPU等を備え、以下の各部を制御する信号を出す制御装置50と、エレベータ搬器の昇降駆動部、パレットの持上げ・旋回・移載駆動部、入出庫口扉の開閉駆動部、ガラリの閉駆動部、排気ダンパの閉駆動部等を備えた駆動部51と、乗入れ部の物体検知手段、入出庫口の物体検知手段、火災検知手段等を備えた検知部52と、乗入れ部内の警報・案内放送手段17(例えば、スピーカによって、「火災発生!! 直ちに場外へ避難して下さい」という避難警報を放送)と、乗入れ部外(入出庫口三方枠上部)の消火剤充満表示灯18(例えば、消火システム起動中における表示として「消火剤充満、危険・立入禁止」等の表示)と、上記消火システム起動操作箱15と、上記運転操作盤14とが、I/O装置53(入出力装置)を介して接続されており、各部の間で信号の送受信が行われるようになっている。
【0040】
上記消火システム起動操作箱15には、最上部に「起動中」や「消火剤放出中」等を表示する表示部55が設けられ、その下方には、自動/手動の切替スイッチ56(キー)と
、「起動解除」釦57が設けられ、その下方に手動操作部58が設けられている。この手動操作部58は、火災発生時における火災検知器35(図1)の自動作動よりも先に、駐車場管理人又は利用者が火災を発見したときに手動操作で消火システムを起動させるものである。この手動操作部58を操作する場合、駐車場管理人又は利用者が携帯のキーを使って切替スイッチ56を「手動」に切替える。次いで、蓋59の取っ手60を掴んで開ける。これにより、自動的に内蔵ブザーが鳴動する。そして、指で薄いプラスチックカバー61を押し破り、さらに押して手動起動用押釦スイッチ62を押動することにより、消火システムの一連の動作が起動される。
【0041】
一方、上記運転操作盤14には、最上部に表示部65が設けられており、その下方には、表示灯を備えた「スタート」、「安全確認」、「終了扉閉」、「暗証」と「空呼」、「取消」の各釦が配設された釦部66が設けられている。この釦部66の側方には、「入口番号」と「呼番号」との案内表示部67とが設けられている。また、この案内表示部67の下方には、入出庫を行うパレット番号や暗証番号の入力等に使用されるテンキー68が設けられている。このテンキー68の側方には、警報・案内放送を行う放送手段69(スピーカ;警報手段)が設けられ、その下方には、非常停止表示ランプを備えた「非常停止」釦70が設けられている。さらに、最下部には、「制御電源」、「運転モード」、「運転管理」、「待機モード」の各選択スイッチが配置されたスイッチ部71が設けられている。
【0042】
このスイッチ部71の「待機モード」選択スイッチ72は、図示する「出庫優先」を選択した場合、エレベータ搬器23が駐車階19の昇降路20にパレット空載状態で待機している状態を優先させるモードであり、図1に実線で示すエレベータ搬器23の状態を優先させるモードである。この選択スイッチ72で「入庫優先」を選択した場合、空パレットを搭載したエレベータ搬器23が最下部の乗入れ部7に待機している状態を優先させるモードであり、図1に二点鎖線で示すエレベータ搬器23の状態を優先させるモードである。
【0043】
図4は、図1に示すエレベータ式駐車装置の火災発生時における制御フローチャートである。この制御フローチャートは、「火災警報発令」時に消火システムを起動させ、その消火作業と並行してエレベータ搬器を乗入れ部に着床させる制御方式である。この図に基いて、上記エレベータ式駐車装置1で火災が発生した時におけるエレベータ搬器23の現動作状況(状態)ごとの動作を以下に説明する。なお、以下の説明では、上記図面の符号を用いて説明する。
【0044】
図示するように、まず共通の動作として、消火システムが手動起動されたか否かの判断と(S1)、火災検知器35が作動したか否かの判断がなされ(S2)、これらのいずれかが作動すると、「火災警報発令」がなされる(S3)。
【0045】
そして、この「火災警報発令」によって「運転操作盤による入出庫呼び操作無効化」となった後(S4)、エレベータ搬器23の現動作状況ごとに、以下のように動作する。
【0046】
(1) 入出庫口扉が開いている場合
エレベータ式駐車装置1では、入出庫口扉13が閉まっていないとエレベータ搬器23の昇降動作やパレット旋回動作等を不可とするインターロック安全システムが備えられている。そのため、入出庫口扉13が開いているか否かの判断(S5)で「入出庫口扉が開いている」ということは、エレベータ搬器23が乗入れ部7に着床し、利用者による実際の入・出庫作業が行われていることを意味する。
【0047】
従って、火災警報(ブザーや警報放送)により、乗入れ部7内に残っている利用者は速
やかに入出庫口12から塔外に退場する。そして、利用者又は駐車場管理人は、人の塔内閉じ込め防止を図るべく、乗入れ部7内の無人を確認した上で(S6)、入出庫口扉13を手動操作で閉める。又は、警報放送により利用者に外への退場を促し、一定時間後、入出庫口扉13を自動的に閉めてもよい(S7)。
【0048】
次に、制御装置50は、入出庫口扉13の閉完了に伴い(S8)、「消火システムの起動指令」を行う(S9)。これにより、ガラリ46の閉指令、排気ダンパ45の閉指令、消火剤の噴射指令が出され、ガラリ46及び排気ダンパ45が自動で閉じた後、消火剤が噴射ノズル36から噴射されて消火作業が行われる。
【0049】
(2) 入出庫口扉が閉じている場合
上記入出庫口扉13が開いているか否かの判断(S5)で「入出庫口扉が閉じている」場合には、即座に「消火システムの起動指令」が行われて消火作業が開始されるとともに(S10)、その消火作業に並行して、下記(a) 〜(e) の動作状態に応じてそれぞれの動作が行われる。なお、上記「消火システムの起動指令」(S10)が行われると、上記したように、ガラリ46の閉指令、排気ダンパ45の閉指令、消火剤の噴射指令が出され、ガラリ46及び排気ダンパ45が自動的に閉じた後、消火剤が噴射ノズル36から噴射されて消火作業が行われる。
【0050】
(a) 乗入れ部に待機している状態(S11)
この場合、概ね、待機モードが「入庫優先モード」で、空パレットを搭載したエレベータ搬器23が乗入れ部7に着床しているので、そのままの状態とする。
【0051】
(b) 乗入れ部7でパレット31を旋回させ、入庫搭載車両の方向転換を行っている状態(S11)
この場合、上記パレット31の旋回を完了させたところで、そのまま乗入れ部7に待機させる。
【0052】
(c) 昇降路を昇降中の状態(S12)
エレベータ搬器23が下降中であれば、そのまま下降動作を続行させ、乗入れ部7に着床させる。エレベータ搬器23が上昇中であれば、昇降停止指令を出して(S13)一旦緊急停止させた上で、「乗入れ部への緊急呼び指令(下降指令)」を行い(S14)、エレベータ搬器23を乗入れ部7に着床させる(S15)。
【0053】
(d) 駐車階に待機している状態(S16)
この場合、概ね、待機モードが「出庫優先モード」で、パレット31を搭載しない状態でエレベータ搬器23が昇降路20の途中の何れかの駐車階19で待機しているので、直ちに「乗入れ部への緊急呼び指令(下降指令)」を行い(S14)、エレベータ搬器23を乗入れ部7に着床させる(S15)。
【0054】
(e) 駐車階でパレット移載中の状態(S17)
エレベータ搬器23から駐車棚22へのパレット移載中、又は駐車棚22からエレベータ搬器23への移載中の何れにしても、この移載の完了を待って「乗入れ部への緊急呼び指令(下降指令)」を行い(S14)、エレベータ搬器23を乗入れ部7に着床させる(S15)。
【0055】
このように、この制御フローチャートでは、入出庫口扉13が閉じている場合には、直ちに消火システムを起動させ、その消火作業に並行してエレベータ搬器23が乗入れ部7に着床させられる。
【0056】
また、このような制御は、上記運転操作盤14の「待機モード」選択スイッチ72が「出庫優先」の状態であったとしても、火災発生に伴い、消火システムの起動(手動又は自動)制御と、エレベータ搬器23(パレット空載、搭載にかかわらず)の乗入れ部7への退避制御とが行われる。
【0057】
図5は、図1に示すエレベータ式駐車装置の火災発生時における他の制御フローチャートである。この制御フローチャートは、エレベータ搬器を乗入れ部に着床させた上で、消火システムを起動させる制御方式である。図示するように、この制御フローチャートは、上述した図4の制御フローチャートにおいて、「火災警報発令」(S3)によって「運転操作盤による入出庫呼び操作無効化」となった後(S4)、入出庫口扉13が開いているか否かの判断(S5)で「入出庫口扉が閉じている」場合に即座に行われる「消火システムの起動指令」(S10)が無いものである。
【0058】
従って、上記「火災警報発令」時にエレベータ搬器23がどの現動作状況であっても、エレベータ搬器23を上記図4の制御フローチャートと同一の動作で乗入れ部7に着床させた後、「消火システムの起動指令」が行われ(S9)、ガラリ46の閉指令、排気ダンパ45の閉指令、消火剤の噴射指令が出され、ガラリ46及び排気ダンパ45が自動で閉じた後、消火剤が噴射ノズル36から噴射されて消火作業が行われる。なお、エレベータ搬器23の各現動作状況ごとの動作は上記図4の動作と同一であるため、その説明は省略する。
【0059】
このように、この制御フローチャートでは、同時並行作業はなく、エレベータ搬器23の乗入れ部7への着床と、消火システムの起動指令とが順に行われる。すなわち、この制御フローチャートでは、入出庫口扉13が閉じている場合でも、エレベータ搬器23が乗入れ部7に着床していることをもって、「消火システムの起動指令」が行われる。
【0060】
図6は、図1に示すエレベータ式駐車装置の火災発生時における更に他の制御フローチャートである。この制御フローチャートは、「火災警報発令」時に、待機モードが「出庫優先モード」であれば「入庫優先モード」に切替えて、消火システムを起動させる制御方式である。
【0061】
図示するように、この制御フローチャートは、上記図4の制御フローチャートにおいて、「火災警報発令」(S3)によって「運転操作盤による入出庫呼び操作無効化」となった後(S4)、待機モードが「入庫優先モード」か否かの判断がなされ(S18)、「出庫優先モード」であれば「入庫優先モード」に自動的に切替えられる(S19)。
【0062】
その後は、上述した図4の制御フローチャートと同様に、消火システムを起動させ、その消火作業と並行してエレベータ搬器23の現動作状況に応じてこのエレベータ搬器23を乗入れ部7に着床させる制御が行われる。この図において、火災発生時におけるエレベータ搬器23の現動作状況ごとの動作は上述した図4と同一であるため、図中に同一符号を付して、その説明は省略する。
【0063】
但し、この制御フローチャートでは、上記(S19)で「入庫優先モード」に切替えられているため、「乗入れ部への緊急呼び指令(下降指令)」(S14)では、エレベータ搬器23に空パレットを搭載しているか否かに拘わらず入庫優先モードの実行指令によって乗入れ部7に着床させられる。
【0064】
このように、この制御フローチャートでは、待機モードが「出庫優先モード」であれば「入庫優先モード」に切替えて、エレベータ搬器23を乗入れ部7に自動着床させて待機させるようにしている。「消火システムの起動指令」は上述した図4と同一であるため、
その説明は省略する。
【0065】
なお、上記いずれの制御フローチャートを採用するかは、エレベータ式駐車装置1の構成や設置条件、その他の条件に応じて決定すればよい。また、上記制御フローチャートを変更することも可能である。
【0066】
そして、上記制御フローチャートで消火された駐車塔5内は、消火後に鎮火確認作業等が行われるが、上記したように、消火システム起動時又は起動前にエレベータ搬器23が乗入れ部7に着床させられて消火作業が行われるので、鎮火確認作業等を行うときには昇降路20の全体が空洞状態となっており、吸引用酸素ボンベを背負い、照明器具及び種々工具等を携帯した重装備の消防隊員が、タラップ38を昇り降りして行う点検、出火場所・出火原因・損壊状況等の調査を迅速、且つ安定して行うことができる。
【0067】
また、消防隊員が行う、点検、出火場所・出火原因・損壊状況等の調査が終了した後の復旧作業も、鎮火を確認し、塔内が常温に戻ったところで、ガラリ46及び排気ダンパ45が手動又は自動で開かれ、排気ファン42の駆動により消火剤の残留ガスが排気ダクト41を介し外部へ排出された後に行われるが、この作業も、昇降路20の全体が空洞状態となっているため、タラップ38を利用して迅速、且つ安定して行うことができる。
【0068】
以上のように、上記エレベータ式駐車装置1によれば、火災発生で消火システムの手動起動又は火災検知手段による自動起動した場合、「火災警報発令」とともに「消火システムの起動指令」を行う際に、入出庫口扉13の開閉状態、並びにエレベータ搬器23の現在の位置及び動作状態を判断し、各状態に応じて対処して、最終的にはエレベータ搬器23を乗入れ部7に着床させるようにしている。
【0069】
そして、入出庫口扉13が閉じていることを前提として「消火システムの起動指令」を行う際、エレベータ搬器23の現在の動作状況に応じた対応動作を指令し、最終的にはエレベータ搬器23を乗入れ部7に着床させて昇降路20の全体を空洞状態として消火するので、消火後に重装備の消防隊員や保守員が塔内に入ってタラップ38を昇り降りして、その駐車塔5内を隈なく点検する作業が円滑に行え、消火後の作業を安定して迅速に行うことが可能となる。
【0070】
また、火災発生の初期にエレベータ搬器23を乗入れ部7に着床させておくので、火災によって昇降駆動部等が損壊したとしてもエレベータ搬器23を入出庫口12から搬出して迅速な復旧作業を行うことができる。
【0071】
なお、上記実施の形態におけるタラップ38は一例であり、例えば、乗入れ部7から屋根37まで連続したものではなく、各梁3の間を接続するタラップが、水平方向にずれて配置されているような構成でもよく、上記実施の形態に限定されるものではない。
【0072】
また、上述した実施の形態は一例を示しており、本発明の要旨を損なわない範囲での種々の変更は可能であり、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明に係るエレベータ式駐車装置は、複数段の駐車棚が備えられたエレベータ式駐車装置に利用できる。
【符号の説明】
【0074】
1 エレベータ式駐車装置
5 駐車塔
6 ブレース
7 乗入れ部
8 乗入れ床
12 入出庫口
13 入出庫口扉
14 運転操作盤
15 消火システム起動操作箱
16 非常用出入口
17 警報案内放送手段(警報手段)
18 消火剤充満表示灯(警報手段)
19 駐車階
20 昇降路
23 エレベータ搬器
29 パレット持上・旋回・移載機構
31 パレット
35 火災検知器
36 消火剤噴射ノズル
37 屋根
38 タラップ
39 点検用出入口
40 点検蓋
41 排気ダクト
42 排気ファン
43 ガス吸引口
44 排気口
45 排気ダンパ
46 ガラリ
50 制御装置
55 表示部
56 切替スイッチ
58 手動操作部
62 手動起動用押釦スイッチ
69 放送手段(警報手段)
72 「待機モード」選択スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駐車塔の鉛直方向に形成された昇降路に沿って昇降するエレベータ搬器で複数の駐車階にパレットを格納するエレベータ式駐車装置の火災発生時制御方法であって、
火災発生時に、前記駐車塔の入出庫口扉の開閉状態と前記エレベータ搬器の現在の位置及び動作状態とを判断し、各状態に応じてエレベータ搬器の動作を制御して該エレベータ搬器を乗入れ部に着床させることを特徴とするエレベータ式駐車装置の火災発生時制御方法。
【請求項2】
前記火災発生時に、前記エレベータ搬器を乗入れ部に着床させる制御と並行して消火システムを起動させるように制御する請求項1に記載のエレベータ式駐車装置の火災発生時制御方法。
【請求項3】
前記火災発生時に、前記エレベータ搬器を乗入れ部に着床させた後、消火システムを起動させるように制御する請求項1に記載のエレベータ式駐車装置の火災発生時制御方法。
【請求項4】
前記火災発生時に、前記エレベータ搬器の待機モードが出庫優先モードであれば入庫優先モードに切替えて前記エレベータ搬器を乗入れ部に着床させるように制御する請求項1に記載のエレベータ式駐車装置の火災発生時制御方法。
【請求項5】
入出庫口扉を備えた駐車塔と、該駐車塔の乗入れ部から鉛直方向に形成された昇降路に沿って昇降するエレベータ搬器と、該昇降路の側方に形成されたパレット格納用の複数の駐車階と、前記駐車塔内の火災を検知する火災検知手段と、該駐車塔内に消火剤を噴射して消火する消火システムと、を備えたエレベータ式駐車装置であって、
火災発生時に、前記入出庫口扉の開閉状態と前記エレベータ搬器の現在の位置及び動作状態とを判断し、各状態に応じてエレベータ搬器の動作を制御して該エレベータ搬器を前記乗入れ部に着床させる指令を出す制御装置を備えていることを特徴とするエレベータ式駐車装置。
【請求項6】
前記制御装置は、前記エレベータ搬器を乗入れ部に着床させる指令を出すとともに、並行して前記消火システムを起動させる指令を出す機能を備えている請求項5に記載のエレベータ式駐車装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記エレベータ搬器の乗入れ部への着床検知後に、前記消火システムを起動させる指令を出す機能を備えている請求項5に記載のエレベータ式駐車装置。
【請求項8】
前記制御装置は、火災発生時に、前記エレベータ搬器の待機モードが出庫優先モードであれば入庫優先モードに切替えて該エレベータ搬器を乗入れ部に着床させる機能を備えている請求項5に記載のエレベータ式駐車装置。
【請求項9】
前記制御装置は、火災発生時に警報を出す警報手段を備えている請求項5〜8のいずれか1項に記載のエレベータ式駐車装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−248722(P2010−248722A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96941(P2009−96941)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(593139271)新明和エンジニアリング株式会社 (109)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】