エレベータ故障診断装置
【課題】設置するマイクの数を減らしてコスト削減を図る。
【解決手段】かご22の外側に取り付けられ、各機器の動作音を収集する音声入力手段10,11と、音声入力手段10,11により収集された動作音に基づいて、各機器の故障有無を診断する一次診断手段1とを備えた。
【解決手段】かご22の外側に取り付けられ、各機器の動作音を収集する音声入力手段10,11と、音声入力手段10,11により収集された動作音に基づいて、各機器の故障有無を診断する一次診断手段1とを備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、エレベータのかごを昇降させる各機器の故障有無を動作音により診断するエレベータ故障診断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の機器故障を診断する装置では、診断対象とする機器それぞれにセンサやマイクを取り付け、そこから入力された音データなどから故障有無を診断していた(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−81813号公報
【特許文献2】特開平10−124790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1,2に開示される従来の故障診断装置では、診断対象それぞれにマイクやセンサを取り付けるため、診断対象が多ければそれだけマイクやセンサの数が増え、コストが増加するという課題があった。
また、遠隔のセンタ側にて二次診断をするために一次診断で使用した音データなどを診断のたびに伝送しており、伝送のためのコスト削減が図れないという課題があった。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、設置するマイクの数を減らしてコスト削減を図ることができるエレベータ故障診断装置を提供することを目的としている。
また、二次診断に必要なときだけ音データを伝送することで、コスト削減を図ることができるエレベータ故障診断装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るエレベータ故障診断装置は、かごの外側に取り付けられ、各機器の動作音を収集する音声入力手段と、音声入力手段により収集された動作音に基づいて、各機器の故障有無を診断する一次診断手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、上記のように構成したので、エレベータのかごの外側に取り付けられた音声入力手段によって収集された動作音に基づいて、各機器の故障有無を診断するように構成したので、故障診断の対象となる各機器或いは機器の近傍にマイクを取り付ける必要がなくなるため、故障診断のためのコスト削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1に係るエレベータ故障診断装置が適用されたエレベータの構成を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るエレベータ故障診断装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態2に係るエレベータ故障診断装置が適用されたエレベータの構成を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係るエレベータ故障診断装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】この発明の実施の形態3に係るエレベータ故障診断装置が適用されたエレベータの構成を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態3に係るエレベータ故障診断装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】この発明の実施の形態4に係るエレベータ故障診断装置が適用されたエレベータの構成を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態4における二次診断用音データを示す図である。
【図9】この発明の実施の形態4に係るエレベータ故障診断装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】この発明の実施の形態4に係るエレベータ故障診断装置の別の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1におけるエレベータ故障診断装置が適用されたエレベータの構成を示す図である。
図1に示すように、エレベータは、一端が固定された主ロープ20に滑車21A,21Bを介して乗ったエレベータかご22と、主ロープ20の自由端に繋がれた釣り合い重り23と、エレベータかご22と釣り合い重り23の間で滑車21C,21Dを介して主ロープ20の巻き上げを行う巻き上げ機24とを有している。
なお、図示はしていないが、エレベータかご22はかご用ガイドレールに沿って昇降し、釣り合い重り23は釣り合い重り用ガイドレールに沿ってエレベータかご22とは逆方向に昇降するように構成されている。
【0010】
また、エレベータは、過速度を検出する調速機25と滑車21Eの間に掛けられた無端状の調速機ロープ26を有し、この調速機ロープ26とエレベータかご22は連結部27により連結されている。
【0011】
上記のように構成されたエレベータに適用されたエレベータ故障診断装置は、マイク(音声入力手段)10,11及び一次故障診断装置(一次診断手段)1から構成される。
マイク10,11は、エレベータかご22外側の上部と下部に取り付けられ、外部の動作音を収集するものである。マイク10は、エレベータかご22が上昇した際には滑車21C,21D及び調速機25に近づいてその動作音を収集し、マイク11は、エレベータかご22が下降した際に滑車21E及び巻き上げ機24に近づいてその動作音を収集する。またマイク11は滑車21A,21Bの動作音も収集する。このマイク10,11により収集された動作音を示す音データは、一次故障診断装置1に送信される。
【0012】
一次故障診断装置1は、マイク10,11により収集された音データに関して音圧測定や周波数分析などを行い、エレベータの各機器(滑車21A〜21E、巻き上げ機24、調速機25)の故障の有無を診断するものである。
なお、この一次故障診断装置1は、エレベータかご22に取り付けてもよいし、あるいは、昇降路内のどこかに設置してもよい。
【0013】
次に、上記のように構成されたエレベータ故障診断装置の動作について説明する。
図2はこの発明の実施の形態1に係るエレベータ故障診断装置の動作を示すフローチャートである。
エレベータでは、巻き上げ機24が駆動して主ロープ20を巻き上げることによって、滑車21A〜21Cが回転し、かご用ガイドレールに沿ってエレベータかご22を昇降させる。この際、滑車21Dも回転して、釣り合い重り23が釣り合い重り用ガイドレールに沿ってエレベータかご22とは逆方向に昇降する。
また、エレベータかご22が昇降することでエレベータかご22に連結された調速機ロープ26が動き、それに連れて滑車21E及び調速機25が回転する。
【0014】
このようにエレベータかご22が昇降している状態においてエレベータ故障診断装置では、図2に示すように、マイク10は、エレベータかご22が上昇した際には滑車21C,21D及び調速機25の動作音を収集し、マイク11は、エレベータかご22が下降した際には滑車21E及び巻き上げ機24の動作音を収集する。また、マイク11は、滑車21A,21Bの動作音も収集する(ステップST21)。このマイク10,11により収集されたエレベータの各機器の動作音を示す音データは一次故障診断装置1に送信される。
【0015】
次いで、一次故障診断装置1は、マイク10,11により収集された音データに関して音圧測定や周波数分析などを行うことによって、エレベータの各機器の故障の有無を診断する(ステップST22)。
【0016】
以上のように、この実施の形態1によれば、エレベータかご22の外部にマイク10,11を取り付けることで、故障診断の対象となる滑車21A〜27Eや巻き上げ機24、調速機25の動作音を収集して故障診断を行うことができ、故障診断の対象となる各機器或いは機器の近傍にマイクを取り付ける必要がなくなるため、故障診断のための機器コストの削減を図ることができる。
【0017】
また、この実施の形態1では、マイク10,11をエレベータかご22に取り付けるように構成したが、これに限るものではなく、マイクを、エレベータかご22に接続され同時に昇降路を昇降する機器に取り付けたり、エレベータかご22と同様に昇降路を昇降する釣り合い重り23に取り付けるように構成してもよい。
【0018】
実施の形態2.
図3はこの発明のエレベータ故障診断装置が適用されたエレベータの構成を示す図である。図3に示す実施の形態2に係るエレベータ故障診断装置は、図1に示す実施の形態1に係るエレベータ故障診断装置の一次故障診断装置1を一次故障診断装置(一次診断手段)2に変更し、通信回線50を経由してエレベータ側機器と遠隔のセンタ側機器との通信を行う通信装置3A,3Bと、遠隔のセンタ側における二次故障診断装置(二次診断手段)4とを追加したものである。その他の同一もしくは相当部分の構成については同一の符号を付しその説明を省略する。
【0019】
一次故障診断装置2は、一次故障診断装置1と同様に、マイク10,11により収集された音データに関して音圧測定や周波数分析などを行い、エレベータの各機器の故障の有無を診断するものである。また、一次故障診断装置2は、エレベータの機器に故障が有ると判定した場合には、一次診断に用いた音データ及び一次診断結果を示す情報を通信装置3A、通信回線50及び通信装置3Bを経由して二次故障診断装置4に送信する。
なお、一次故障診断装置2は、エレベータかご22に取り付けてもよいし、あるいは、昇降路内のどこかに設置してもよい。
【0020】
二次故障診断装置4は、一次故障診断装置2による音データ及び一次診断結果に基づいて、一次故障診断装置2よりも豊富なハードウェア資源を用いて、より高精度な故障診断を行うものである。
【0021】
次に、上記のように構成されたエレベータ故障診断装置の動作について説明する。
図4はこの発明の実施の形態2に係るエレベータ故障診断装置の動作を示すフローチャートである。なお、図4に示す実施の形態2に係るエレベータ故障診断装置の動作において、図2に示す実施の形態1に係るエレベータ故障診断装置と同様の動作についてはその説明を簡略化させる。
エレベータかご22が昇降している状態においてエレベータ故障診断装置では、図4に示すように、マイク10,11はエレベータの各機器の動作音を収集する(ステップST41)。このマイク10,11により収集されたエレベータの各機器の動作音を示す音データは一次故障診断装置2に入力される。
【0022】
次いで、一次故障診断装置2は、マイク10,11により収集された音データに関して音圧測定や周波数分析などを行うことによって、エレベータの各機器の故障の有無を診断する(ステップST42)。
【0023】
このステップST42において、一次故障診断装置2は、エレベータの機器に故障有りと判定した場合には、次いで、一次診断に用いた音データ及び一次診断結果を示す情報を通信装置3A、通信回線50及び通信装置3Bを経由して二次故障診断装置4に送信する(ステップST43)。
【0024】
次いで、二次故障診断装置4は、一次故障診断装置2による音データ及び一次診断結果に基づいて、一次故障診断装置2よりも豊富なハードウェア資源を用いて、より高精度な故障診断を行う(ステップST44)。例えば、一次故障診断装置2よりもデータ蓄積容量が大きいハードウェア資源を用いて、複数の一次故障診断装置2から収集した音データ及び一次診断結果や、各一次故障診断装置2の過去の音データ及び一次診断結果を蓄積しておき、これら蓄積された大量のデータを用いて、類似性や経時変化などを用いることで、より高精度な故障診断を行う。
【0025】
以上のように、この実施の形態2によれば、エレベータかご22の外部にマイク10,11を取り付けることで、故障診断の対象となる滑車21A〜21Eや巻き上げ機24、調速機25の動作音を収集して故障診断を行うことができ、故障診断の対象となる各機器或いは機器の近傍にマイクを取り付ける必要がなくなるため、故障診断のための機器コストの削減を図ることができる。また、通信装置3A,3Bを経由して二次故障診断装置4に一次診断結果及び一次診断に用いた音データを通知することで高精度な二次診断結果を得ることができる。
【0026】
また、この実施の形態2では、マイク10,11をエレベータかご22に取り付けるように構成したが、これに限るものではなく、マイクを、エレベータかご22に接続され同時に昇降路を昇降する機器に取り付けたり、エレベータかご22と同様に昇降路を昇降する釣り合い重り23に取り付けるように構成してもよい。
【0027】
また、この実施の形態2における二次故障診断装置4では、機器が故障の診断を行うように構成したが、保守員が一次診断に使用した動作音を聞くことで故障の有無や種類等の診断をするように構成してもよい。
【0028】
実施の形態3.
図5はこの発明の形態3に係るエレベータ故障診断装置が適用されたエレベータの構成を示す図である。図5に示す実施の形態3に係るエレベータ故障診断装置は、図3に示す実施の形態2に係るエレベータ故障診断装置に二次診断用データ判定装置(二次診断実施判定手段)5を追加したものである。その他の同一もしくは相当部分の構成については同一の符号を付しその説明を省略する。
【0029】
なお、一次故障診断装置2は、エレベータの機器に故障が有ると判定した場合には、一次診断結果を示す情報を通信装置3A、通信回線50及び通信装置3Bを経由して二次診断用データ判定装置5に送信する。また、一次故障診断装置2は、二次診断用データ判定装置5から一次診断に用いた音データを二次故障診断装置4に送る旨を示す信号を受信した場合に、当該音データ及び一次診断結果を示す情報を通信装置3A、通信回線50及び通信装置3Bを経由して二次故障診断装置4に送信する。
【0030】
二次診断用データ判定装置5は、一次故障診断装置2による一次診断結果に基づいて、故障の重要度(すぐに保守員を派遣すべき故障なのか、経過観察とする故障なのか、或いは更なる二次診断が必要なのか等)を判定し、一次診断に用いた動作音を二次故障診断装置4に送信させて二次故障診断装置4に高精度な診断をさせるか否かを判定するものである。ここで、二次診断用データ判定装置5は、二次故障診断装置4による二次診断が必要であると判定した場合には、一次診断に用いた音データを二次故障診断装置4に送る旨を示す信号を通信装置3B,通信回線50及び通信装置3Aを経由して一次故障診断装置2に出力する。重要度の判定は、故障箇所や同一故障の頻度、故障によって発生した音の音量などを用いて行う。例えば、重要部品にて発生した故障や大きな音量が発生する故障であればすぐに保守員を派遣し、重要部品では無い箇所で1回だけの通知であれば経過観察、同一故障の通知の頻度が一定以上あれば二次診断とする。
【0031】
次に、上記のように構成されたエレベータ故障診断装置の動作について説明する。
図6はこの発明の実施の形態3に係るエレベータ故障診断装置の動作を示すフローチャートである。なお、図6に示す実施の形態3に係るエレベータ故障診断装置の動作において、図4に示す実施の形態2に係るエレベータ故障診断装置と同様の動作についてはその説明を簡略化させる。
エレベータかご22が昇降している状態においてエレベータ故障診断装置では、図6に示すように、マイク10,11はエレベータの各機器の動作音を収集し、一次故障診断装置2は音データに基づいてエレベータの各機器の故障の有無を診断する(ステップST61,62)。
【0032】
このステップST62において、一次故障診断装置2は、エレベータの機器に故障有りと判定した場合には、次いで、一次診断結果を示す情報を通信装置3A、通信回線50及び通信装置3Bを経由して二次診断用データ判定装置5に送信する(ステップST63)。
【0033】
次いで、二次診断用データ判定装置5は、一次故障診断装置2による一次診断結果に基づいて、故障の重要度を判定し、一次診断に用いた動作音を二次故障診断装置4に送信させるか否かを判定する(ステップST64)。
【0034】
このステップST64において、二次診断用データ判定装置5は、二次故障診断装置4による二次診断が必要と判定した場合には、一次診断に用いた動作音のデータを二次故障診断装置4に送る旨を示す信号を通信装置3B、通信回路50及び通信装置3Aを経由して一次故障診断装置2に出力する(ステップST65)。
【0035】
次いで、一次故障診断装置2は、二次診断用データ判定装置5から一次診断に用いた音データを二次故障診断装置4に送る旨を示す信号を受信した場合に、当該音データ及び一次診断結果を示す情報を通信装置3A、通信回線50及び通信装置3Bを経由して二次故障診断装置4に送信する(ステップST66)。
【0036】
次いで、二次故障診断装置4は、一次故障診断装置2による音データ及び一次診断結果に基づいて、一次故障診断装置2よりも豊富なハードウェア資源を用いて、より高精度な故障診断を行う(ステップST67)。
【0037】
以上のように、この実施の形態3によれば、エレベータかご22の外部にマイク10,11を取り付けることで、故障診断の対象となる滑車21A〜21Eや巻き上げ機24、調速機25の動作音を収集して故障診断を行うことができ、故障診断の対象となる各機器或いは機器の近傍にマイクを取り付ける必要がなくなるため、故障診断のための機器コストの削減を図ることができる。また、必要なときだけ通信装置3A,通信回路50及び通信装置3Bを経由して二次故障診断装置4に一次診断結果及び一次診断に用いた音データを通知することで高精度な二次診断結果を得ることができると共に、回線コストの削減を図ることができる。
【0038】
また、この実施の形態3では、マイク10,11をエレベータかご22に取り付けるように構成したが、これに限るものではなく、マイクを、エレベータかご22に接続され同時に昇降路を昇降する機器に取り付けたり、エレベータかご22と同様に昇降路を昇降する釣り合い重り23に取り付けるように構成してもよい。
【0039】
また、この実施の形態3における二次診断用データ判定装置5では、機器が故障の重要度の判定を行うように構成したが、保守員が一次診断結果から二次診断の必要性を判定するように構成してもよい。
【0040】
また、この実施の形態3における二次故障診断装置4では、機器が故障の診断を行うように構成したが、保守員が一次診断に使用した動作音を聞くことで故障の有無や種類等の診断をするように構成してもよい。
【0041】
実施の形態4.
図7はこの発明の形態4に係るエレベータ故障診断装置が適用されたエレベータの構成を示す図である。図7に示す実施の形態4に係るエレベータ故障診断装置は、図5に示す実施の形態3に係るエレベータ故障診断装置にエレベータ運転制御部(エレベータ運転制御手段)6及び二次診断用音データ作成装置(二次診断用音データ作成手段)7を追加したものである。その他の同一もしくは相当部分の構成については同一の符号を付しその説明を省略する。
【0042】
なお、一次故障診断装置2は、二次診断用音データ作成装置7からの要求に応じて、一次診断に用いた音データ及び一次診断結果を示す情報を二次診断用音データ作成装置7に送信する。
また、二次診断用データ判定装置5は、二次故障診断装置4による二次診断が必要と判定した場合には、二次診断用音データを二次故障診断装置4に送る旨を示す信号を通信装置3B、通信回路50、通信装置3Aを経由して二次診断用音データ作成装置7に出力する。
【0043】
エレベータ運転制御部6は、エレベータのドアの開閉や上昇/下降、かご位置、かご移動速度などのエレベータの動作を制御するものである。このエレベータ運転制御部6によるエレベータ動作状況に関する情報は二次診断用音データ作成装置7に送信される。
【0044】
二次診断用音データ作成装置7は、エレベータ運転制御部6によるエレベータ動作状況と一次故障診断装置2による一次診断に用いた音データとに基づいて、図8に示すように、診断した箇所でのエレベータの位置や速度などの動作状況やその前後でのエレベータ動作状況と動作音とを関連付けた二次診断用音データを作成するものである。この二次診断用音データ作成装置7により作成された二次診断用音データは、二次診断用データ判定装置5による指示に従い、二次故障診断装置4に送信される。
【0045】
次に、上記のように構成されたエレベータ故障診断装置の動作について説明する。
図9はこの発明の実施の形態4に係るエレベータ故障診断装置の動作を示すフローチャートである。なお、図9に示す実施の形態4に係るエレベータ故障診断装置の動作において、図6に示す実施の形態3に係るエレベータ故障診断装置と同様の動作についてはその説明を簡略化させる。
エレベータかご22が昇降している状態においてエレベータ故障診断装置では、図9に示すように、マイク10,11はエレベータの各機器の動作音を収集し、一次故障診断装置2は音データに基づいてエレベータの各機器の故障の有無を診断する(ステップST91,92)。
【0046】
このステップST92において、一次故障診断装置2はエレベータの機器に故障有りと判定した場合には、一次診断結果を示す情報を二次診断用データ判定装置5に送信し、二次診断用データ判定装置5は、一次故障診断装置2による一次診断結果に基づいて、故障の重要度を判定し、一次診断に用いた動作音を二次故障診断装置4に送信させるか否かを判定する(ステップST93,94)。
【0047】
このステップST94において、二次診断用データ判定装置5は、二次故障診断装置4による二次診断が必要と判定した場合には、二次診断用音データを二次故障診断装置4に送る旨を示す信号を通信装置3B、通信回路50及び通信装置3Aを経由して二次診断用音データ作成装置7に出力する(ステップST95)。
【0048】
次いで、二次診断用音データ作成装置7は、エレベータ運転制御部6によるエレベータ動作状況に関する情報と一次故障診断装置2による音データとに基づいて、二次診断用音データを作成する(ステップST96)。この二次診断用音データ作成装置7により作成された二次診断用音データは、二次診断用データ判定装置5による指示に従い、二次故障診断装置4に送信される。
【0049】
次いで、二次故障診断装置4は、二次診断用音データ作成装置7による二次診断用音データに基づいて、一次故障診断装置2よりも豊富なハードウェア資源を用いて、より高精度な故障診断を行う(ステップST97)。
【0050】
以上のように、この実施の形態4によれば、エレベータかご22の外部にマイク10,11を取り付けることで、故障診断の対象となる滑車21A〜21Eや巻き上げ機24、調速機25の動作音を収集して故障診断を行うことができ、故障診断の対象となる各機器或いは機器の近傍にマイクを取り付ける必要がなくなるため、故障診断のための機器コストの削減を図ることができる。また、必要なときだけ通信装置3A、通信回路50及び通信装置3Bを経由して二次故障診断装置4に二次診断用音データを通知することで高精度な二次診断結果を得ることができると共に、回線コストの削減を図ることができる。
【0051】
なお、一次故障診断装置2による一次診断の結果に基づいて、二次故障診断装置4に必要な音データのみを送るようにすることも可能である。具体的には、次のように構成することができる。
図10はこの発明の実施の形態4に係るエレベータ故障診断装置の別の動作を示すフローチャートである。なお、図10において、図9に示すエレベータ故障診断装置と同様の動作についてはその説明を簡略化させる。
エレベータかご22が昇降している状態においてエレベータ故障診断装置では、図10に示すように、マイク10,11はエレベータの各機器の動作音を収集し、一次故障診断装置2は音データに基づいてエレベータの各機器の故障の有無を診断し、エレベータの機器に故障有りと診断した場合には、一次診断結果を含むエレベータ動作状況情報を通信装置3A、通信回線50及び通信装置3Bを経由して二次診断用データ判定装置5に送信する(ステップST101〜103)。
【0052】
次いで、二次診断用データ判定装置5は、一次故障診断装置2によるエレベータ動作状況情報に基づいて、故障の重要度を判定し、すぐに保守員を派遣すべき故障なのか、経過観察とする故障なのか、或いは更なる二次診断が必要なのかを判定する(ステップST104)。
【0053】
このステップST104において、二次診断用データ判定装置5は、二次故障診断装置4による二次診断が必要であると判定した場合には、次いで、二次診断が必要な対象または運転状況に絞った音データからなる二次診断用音データを二次故障診断装置4に送る旨を示す信号を通信装置3B、通信回路50及び通信装置3Aを経由して二次診断用音データ作成装置7に出力する。または、二次診断が必要な対象または運転状況に対する音データの再収集・送信を行う旨を示す信号をエレベータ運転制御部6と二次診断用音データ作成装置7に出力する(ステップST105)。
【0054】
次いで、二次診断用音データ作成装置7は、二次診断用データ判定装置5からの指示に従い、二次診断が必要な対象または運転状況に絞った音データからなる二次診断用音データを作成する(ステップST106)。この二次診断用音データ作成装置7により作成された二次診断用音データは、二次診断用データ判定装置5による指示に従い、二次故障診断装置4に送信される。
【0055】
次いで、二次故障診断装置4は、二次診断用音データ作成装置7による二次診断用音データに基づいて、一次故障診断装置2よりも豊富なハードウェア資源を用いて、より高精度な故障診断を行う(ステップST107)。
このようにすることで、同様の効果に加え、回線コストの更なる削減、または、精度の高い二次診断結果を得ることができる。
【0056】
また、この実施の形態4では、マイク10,11をエレベータかご22に取り付けるように構成したが、これに限るものではなく、マイクを、エレベータかご22に接続され同時に昇降路を昇降する機器に取り付けたり、エレベータかご22と同様に昇降路を昇降する釣り合い重り23に取り付けるように構成してもよい。
【0057】
また、この実施の形態4における二次診断用データ判定装置5では、機器が故障の重要度の判定を行うように構成したが、保守員が一次診断結果から二次診断の必要性を判定するように構成してもよい。
【0058】
また、この実施の形態4における二次故障診断装置4では、機器が故障の診断を行うように構成したが、保守員が一次診断に使用した動作音を聞くことで故障の有無や種類等の診断をするように構成してもよい。
【0059】
また、この実施の形態4における二次診断用音データ作成装置7では、二次診断用データ判定装置5からの二次診断用音データの送付指示が無くとも、一次故障診断装置2にて故障と診断して一次診断結果を示す情報を二次故障診断装置4に送信する際に一緒に二次診断用音データを送信するように構成してもよい。なお、この場合には、二次診断用データ判定装置5は不要である。
【符号の説明】
【0060】
1,2 一次故障診断装置(一次診断手段)、3A,3B 通信装置、4 二次故障診断装置(二次診断手段)、5 二次診断用データ判定装置(二次診断実施判定手段)、6 エレベータ運転制御部(エレベータ運転制御手段)、7 二次診断用音データ作成装置(二次診断用音データ作成手段)、10,11 マイク(音声入力手段)、20 主ロープ、21A〜21E 滑車、22 エレベータかご、23 釣り合い重り、24 巻き上げ機、25 調速機、26 調速機ロープ、27 連結部、50 通信回線。
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、エレベータのかごを昇降させる各機器の故障有無を動作音により診断するエレベータ故障診断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の機器故障を診断する装置では、診断対象とする機器それぞれにセンサやマイクを取り付け、そこから入力された音データなどから故障有無を診断していた(例えば、特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−81813号公報
【特許文献2】特開平10−124790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1,2に開示される従来の故障診断装置では、診断対象それぞれにマイクやセンサを取り付けるため、診断対象が多ければそれだけマイクやセンサの数が増え、コストが増加するという課題があった。
また、遠隔のセンタ側にて二次診断をするために一次診断で使用した音データなどを診断のたびに伝送しており、伝送のためのコスト削減が図れないという課題があった。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、設置するマイクの数を減らしてコスト削減を図ることができるエレベータ故障診断装置を提供することを目的としている。
また、二次診断に必要なときだけ音データを伝送することで、コスト削減を図ることができるエレベータ故障診断装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るエレベータ故障診断装置は、かごの外側に取り付けられ、各機器の動作音を収集する音声入力手段と、音声入力手段により収集された動作音に基づいて、各機器の故障有無を診断する一次診断手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、上記のように構成したので、エレベータのかごの外側に取り付けられた音声入力手段によって収集された動作音に基づいて、各機器の故障有無を診断するように構成したので、故障診断の対象となる各機器或いは機器の近傍にマイクを取り付ける必要がなくなるため、故障診断のためのコスト削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1に係るエレベータ故障診断装置が適用されたエレベータの構成を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るエレベータ故障診断装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態2に係るエレベータ故障診断装置が適用されたエレベータの構成を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係るエレベータ故障診断装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】この発明の実施の形態3に係るエレベータ故障診断装置が適用されたエレベータの構成を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態3に係るエレベータ故障診断装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】この発明の実施の形態4に係るエレベータ故障診断装置が適用されたエレベータの構成を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態4における二次診断用音データを示す図である。
【図9】この発明の実施の形態4に係るエレベータ故障診断装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】この発明の実施の形態4に係るエレベータ故障診断装置の別の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1におけるエレベータ故障診断装置が適用されたエレベータの構成を示す図である。
図1に示すように、エレベータは、一端が固定された主ロープ20に滑車21A,21Bを介して乗ったエレベータかご22と、主ロープ20の自由端に繋がれた釣り合い重り23と、エレベータかご22と釣り合い重り23の間で滑車21C,21Dを介して主ロープ20の巻き上げを行う巻き上げ機24とを有している。
なお、図示はしていないが、エレベータかご22はかご用ガイドレールに沿って昇降し、釣り合い重り23は釣り合い重り用ガイドレールに沿ってエレベータかご22とは逆方向に昇降するように構成されている。
【0010】
また、エレベータは、過速度を検出する調速機25と滑車21Eの間に掛けられた無端状の調速機ロープ26を有し、この調速機ロープ26とエレベータかご22は連結部27により連結されている。
【0011】
上記のように構成されたエレベータに適用されたエレベータ故障診断装置は、マイク(音声入力手段)10,11及び一次故障診断装置(一次診断手段)1から構成される。
マイク10,11は、エレベータかご22外側の上部と下部に取り付けられ、外部の動作音を収集するものである。マイク10は、エレベータかご22が上昇した際には滑車21C,21D及び調速機25に近づいてその動作音を収集し、マイク11は、エレベータかご22が下降した際に滑車21E及び巻き上げ機24に近づいてその動作音を収集する。またマイク11は滑車21A,21Bの動作音も収集する。このマイク10,11により収集された動作音を示す音データは、一次故障診断装置1に送信される。
【0012】
一次故障診断装置1は、マイク10,11により収集された音データに関して音圧測定や周波数分析などを行い、エレベータの各機器(滑車21A〜21E、巻き上げ機24、調速機25)の故障の有無を診断するものである。
なお、この一次故障診断装置1は、エレベータかご22に取り付けてもよいし、あるいは、昇降路内のどこかに設置してもよい。
【0013】
次に、上記のように構成されたエレベータ故障診断装置の動作について説明する。
図2はこの発明の実施の形態1に係るエレベータ故障診断装置の動作を示すフローチャートである。
エレベータでは、巻き上げ機24が駆動して主ロープ20を巻き上げることによって、滑車21A〜21Cが回転し、かご用ガイドレールに沿ってエレベータかご22を昇降させる。この際、滑車21Dも回転して、釣り合い重り23が釣り合い重り用ガイドレールに沿ってエレベータかご22とは逆方向に昇降する。
また、エレベータかご22が昇降することでエレベータかご22に連結された調速機ロープ26が動き、それに連れて滑車21E及び調速機25が回転する。
【0014】
このようにエレベータかご22が昇降している状態においてエレベータ故障診断装置では、図2に示すように、マイク10は、エレベータかご22が上昇した際には滑車21C,21D及び調速機25の動作音を収集し、マイク11は、エレベータかご22が下降した際には滑車21E及び巻き上げ機24の動作音を収集する。また、マイク11は、滑車21A,21Bの動作音も収集する(ステップST21)。このマイク10,11により収集されたエレベータの各機器の動作音を示す音データは一次故障診断装置1に送信される。
【0015】
次いで、一次故障診断装置1は、マイク10,11により収集された音データに関して音圧測定や周波数分析などを行うことによって、エレベータの各機器の故障の有無を診断する(ステップST22)。
【0016】
以上のように、この実施の形態1によれば、エレベータかご22の外部にマイク10,11を取り付けることで、故障診断の対象となる滑車21A〜27Eや巻き上げ機24、調速機25の動作音を収集して故障診断を行うことができ、故障診断の対象となる各機器或いは機器の近傍にマイクを取り付ける必要がなくなるため、故障診断のための機器コストの削減を図ることができる。
【0017】
また、この実施の形態1では、マイク10,11をエレベータかご22に取り付けるように構成したが、これに限るものではなく、マイクを、エレベータかご22に接続され同時に昇降路を昇降する機器に取り付けたり、エレベータかご22と同様に昇降路を昇降する釣り合い重り23に取り付けるように構成してもよい。
【0018】
実施の形態2.
図3はこの発明のエレベータ故障診断装置が適用されたエレベータの構成を示す図である。図3に示す実施の形態2に係るエレベータ故障診断装置は、図1に示す実施の形態1に係るエレベータ故障診断装置の一次故障診断装置1を一次故障診断装置(一次診断手段)2に変更し、通信回線50を経由してエレベータ側機器と遠隔のセンタ側機器との通信を行う通信装置3A,3Bと、遠隔のセンタ側における二次故障診断装置(二次診断手段)4とを追加したものである。その他の同一もしくは相当部分の構成については同一の符号を付しその説明を省略する。
【0019】
一次故障診断装置2は、一次故障診断装置1と同様に、マイク10,11により収集された音データに関して音圧測定や周波数分析などを行い、エレベータの各機器の故障の有無を診断するものである。また、一次故障診断装置2は、エレベータの機器に故障が有ると判定した場合には、一次診断に用いた音データ及び一次診断結果を示す情報を通信装置3A、通信回線50及び通信装置3Bを経由して二次故障診断装置4に送信する。
なお、一次故障診断装置2は、エレベータかご22に取り付けてもよいし、あるいは、昇降路内のどこかに設置してもよい。
【0020】
二次故障診断装置4は、一次故障診断装置2による音データ及び一次診断結果に基づいて、一次故障診断装置2よりも豊富なハードウェア資源を用いて、より高精度な故障診断を行うものである。
【0021】
次に、上記のように構成されたエレベータ故障診断装置の動作について説明する。
図4はこの発明の実施の形態2に係るエレベータ故障診断装置の動作を示すフローチャートである。なお、図4に示す実施の形態2に係るエレベータ故障診断装置の動作において、図2に示す実施の形態1に係るエレベータ故障診断装置と同様の動作についてはその説明を簡略化させる。
エレベータかご22が昇降している状態においてエレベータ故障診断装置では、図4に示すように、マイク10,11はエレベータの各機器の動作音を収集する(ステップST41)。このマイク10,11により収集されたエレベータの各機器の動作音を示す音データは一次故障診断装置2に入力される。
【0022】
次いで、一次故障診断装置2は、マイク10,11により収集された音データに関して音圧測定や周波数分析などを行うことによって、エレベータの各機器の故障の有無を診断する(ステップST42)。
【0023】
このステップST42において、一次故障診断装置2は、エレベータの機器に故障有りと判定した場合には、次いで、一次診断に用いた音データ及び一次診断結果を示す情報を通信装置3A、通信回線50及び通信装置3Bを経由して二次故障診断装置4に送信する(ステップST43)。
【0024】
次いで、二次故障診断装置4は、一次故障診断装置2による音データ及び一次診断結果に基づいて、一次故障診断装置2よりも豊富なハードウェア資源を用いて、より高精度な故障診断を行う(ステップST44)。例えば、一次故障診断装置2よりもデータ蓄積容量が大きいハードウェア資源を用いて、複数の一次故障診断装置2から収集した音データ及び一次診断結果や、各一次故障診断装置2の過去の音データ及び一次診断結果を蓄積しておき、これら蓄積された大量のデータを用いて、類似性や経時変化などを用いることで、より高精度な故障診断を行う。
【0025】
以上のように、この実施の形態2によれば、エレベータかご22の外部にマイク10,11を取り付けることで、故障診断の対象となる滑車21A〜21Eや巻き上げ機24、調速機25の動作音を収集して故障診断を行うことができ、故障診断の対象となる各機器或いは機器の近傍にマイクを取り付ける必要がなくなるため、故障診断のための機器コストの削減を図ることができる。また、通信装置3A,3Bを経由して二次故障診断装置4に一次診断結果及び一次診断に用いた音データを通知することで高精度な二次診断結果を得ることができる。
【0026】
また、この実施の形態2では、マイク10,11をエレベータかご22に取り付けるように構成したが、これに限るものではなく、マイクを、エレベータかご22に接続され同時に昇降路を昇降する機器に取り付けたり、エレベータかご22と同様に昇降路を昇降する釣り合い重り23に取り付けるように構成してもよい。
【0027】
また、この実施の形態2における二次故障診断装置4では、機器が故障の診断を行うように構成したが、保守員が一次診断に使用した動作音を聞くことで故障の有無や種類等の診断をするように構成してもよい。
【0028】
実施の形態3.
図5はこの発明の形態3に係るエレベータ故障診断装置が適用されたエレベータの構成を示す図である。図5に示す実施の形態3に係るエレベータ故障診断装置は、図3に示す実施の形態2に係るエレベータ故障診断装置に二次診断用データ判定装置(二次診断実施判定手段)5を追加したものである。その他の同一もしくは相当部分の構成については同一の符号を付しその説明を省略する。
【0029】
なお、一次故障診断装置2は、エレベータの機器に故障が有ると判定した場合には、一次診断結果を示す情報を通信装置3A、通信回線50及び通信装置3Bを経由して二次診断用データ判定装置5に送信する。また、一次故障診断装置2は、二次診断用データ判定装置5から一次診断に用いた音データを二次故障診断装置4に送る旨を示す信号を受信した場合に、当該音データ及び一次診断結果を示す情報を通信装置3A、通信回線50及び通信装置3Bを経由して二次故障診断装置4に送信する。
【0030】
二次診断用データ判定装置5は、一次故障診断装置2による一次診断結果に基づいて、故障の重要度(すぐに保守員を派遣すべき故障なのか、経過観察とする故障なのか、或いは更なる二次診断が必要なのか等)を判定し、一次診断に用いた動作音を二次故障診断装置4に送信させて二次故障診断装置4に高精度な診断をさせるか否かを判定するものである。ここで、二次診断用データ判定装置5は、二次故障診断装置4による二次診断が必要であると判定した場合には、一次診断に用いた音データを二次故障診断装置4に送る旨を示す信号を通信装置3B,通信回線50及び通信装置3Aを経由して一次故障診断装置2に出力する。重要度の判定は、故障箇所や同一故障の頻度、故障によって発生した音の音量などを用いて行う。例えば、重要部品にて発生した故障や大きな音量が発生する故障であればすぐに保守員を派遣し、重要部品では無い箇所で1回だけの通知であれば経過観察、同一故障の通知の頻度が一定以上あれば二次診断とする。
【0031】
次に、上記のように構成されたエレベータ故障診断装置の動作について説明する。
図6はこの発明の実施の形態3に係るエレベータ故障診断装置の動作を示すフローチャートである。なお、図6に示す実施の形態3に係るエレベータ故障診断装置の動作において、図4に示す実施の形態2に係るエレベータ故障診断装置と同様の動作についてはその説明を簡略化させる。
エレベータかご22が昇降している状態においてエレベータ故障診断装置では、図6に示すように、マイク10,11はエレベータの各機器の動作音を収集し、一次故障診断装置2は音データに基づいてエレベータの各機器の故障の有無を診断する(ステップST61,62)。
【0032】
このステップST62において、一次故障診断装置2は、エレベータの機器に故障有りと判定した場合には、次いで、一次診断結果を示す情報を通信装置3A、通信回線50及び通信装置3Bを経由して二次診断用データ判定装置5に送信する(ステップST63)。
【0033】
次いで、二次診断用データ判定装置5は、一次故障診断装置2による一次診断結果に基づいて、故障の重要度を判定し、一次診断に用いた動作音を二次故障診断装置4に送信させるか否かを判定する(ステップST64)。
【0034】
このステップST64において、二次診断用データ判定装置5は、二次故障診断装置4による二次診断が必要と判定した場合には、一次診断に用いた動作音のデータを二次故障診断装置4に送る旨を示す信号を通信装置3B、通信回路50及び通信装置3Aを経由して一次故障診断装置2に出力する(ステップST65)。
【0035】
次いで、一次故障診断装置2は、二次診断用データ判定装置5から一次診断に用いた音データを二次故障診断装置4に送る旨を示す信号を受信した場合に、当該音データ及び一次診断結果を示す情報を通信装置3A、通信回線50及び通信装置3Bを経由して二次故障診断装置4に送信する(ステップST66)。
【0036】
次いで、二次故障診断装置4は、一次故障診断装置2による音データ及び一次診断結果に基づいて、一次故障診断装置2よりも豊富なハードウェア資源を用いて、より高精度な故障診断を行う(ステップST67)。
【0037】
以上のように、この実施の形態3によれば、エレベータかご22の外部にマイク10,11を取り付けることで、故障診断の対象となる滑車21A〜21Eや巻き上げ機24、調速機25の動作音を収集して故障診断を行うことができ、故障診断の対象となる各機器或いは機器の近傍にマイクを取り付ける必要がなくなるため、故障診断のための機器コストの削減を図ることができる。また、必要なときだけ通信装置3A,通信回路50及び通信装置3Bを経由して二次故障診断装置4に一次診断結果及び一次診断に用いた音データを通知することで高精度な二次診断結果を得ることができると共に、回線コストの削減を図ることができる。
【0038】
また、この実施の形態3では、マイク10,11をエレベータかご22に取り付けるように構成したが、これに限るものではなく、マイクを、エレベータかご22に接続され同時に昇降路を昇降する機器に取り付けたり、エレベータかご22と同様に昇降路を昇降する釣り合い重り23に取り付けるように構成してもよい。
【0039】
また、この実施の形態3における二次診断用データ判定装置5では、機器が故障の重要度の判定を行うように構成したが、保守員が一次診断結果から二次診断の必要性を判定するように構成してもよい。
【0040】
また、この実施の形態3における二次故障診断装置4では、機器が故障の診断を行うように構成したが、保守員が一次診断に使用した動作音を聞くことで故障の有無や種類等の診断をするように構成してもよい。
【0041】
実施の形態4.
図7はこの発明の形態4に係るエレベータ故障診断装置が適用されたエレベータの構成を示す図である。図7に示す実施の形態4に係るエレベータ故障診断装置は、図5に示す実施の形態3に係るエレベータ故障診断装置にエレベータ運転制御部(エレベータ運転制御手段)6及び二次診断用音データ作成装置(二次診断用音データ作成手段)7を追加したものである。その他の同一もしくは相当部分の構成については同一の符号を付しその説明を省略する。
【0042】
なお、一次故障診断装置2は、二次診断用音データ作成装置7からの要求に応じて、一次診断に用いた音データ及び一次診断結果を示す情報を二次診断用音データ作成装置7に送信する。
また、二次診断用データ判定装置5は、二次故障診断装置4による二次診断が必要と判定した場合には、二次診断用音データを二次故障診断装置4に送る旨を示す信号を通信装置3B、通信回路50、通信装置3Aを経由して二次診断用音データ作成装置7に出力する。
【0043】
エレベータ運転制御部6は、エレベータのドアの開閉や上昇/下降、かご位置、かご移動速度などのエレベータの動作を制御するものである。このエレベータ運転制御部6によるエレベータ動作状況に関する情報は二次診断用音データ作成装置7に送信される。
【0044】
二次診断用音データ作成装置7は、エレベータ運転制御部6によるエレベータ動作状況と一次故障診断装置2による一次診断に用いた音データとに基づいて、図8に示すように、診断した箇所でのエレベータの位置や速度などの動作状況やその前後でのエレベータ動作状況と動作音とを関連付けた二次診断用音データを作成するものである。この二次診断用音データ作成装置7により作成された二次診断用音データは、二次診断用データ判定装置5による指示に従い、二次故障診断装置4に送信される。
【0045】
次に、上記のように構成されたエレベータ故障診断装置の動作について説明する。
図9はこの発明の実施の形態4に係るエレベータ故障診断装置の動作を示すフローチャートである。なお、図9に示す実施の形態4に係るエレベータ故障診断装置の動作において、図6に示す実施の形態3に係るエレベータ故障診断装置と同様の動作についてはその説明を簡略化させる。
エレベータかご22が昇降している状態においてエレベータ故障診断装置では、図9に示すように、マイク10,11はエレベータの各機器の動作音を収集し、一次故障診断装置2は音データに基づいてエレベータの各機器の故障の有無を診断する(ステップST91,92)。
【0046】
このステップST92において、一次故障診断装置2はエレベータの機器に故障有りと判定した場合には、一次診断結果を示す情報を二次診断用データ判定装置5に送信し、二次診断用データ判定装置5は、一次故障診断装置2による一次診断結果に基づいて、故障の重要度を判定し、一次診断に用いた動作音を二次故障診断装置4に送信させるか否かを判定する(ステップST93,94)。
【0047】
このステップST94において、二次診断用データ判定装置5は、二次故障診断装置4による二次診断が必要と判定した場合には、二次診断用音データを二次故障診断装置4に送る旨を示す信号を通信装置3B、通信回路50及び通信装置3Aを経由して二次診断用音データ作成装置7に出力する(ステップST95)。
【0048】
次いで、二次診断用音データ作成装置7は、エレベータ運転制御部6によるエレベータ動作状況に関する情報と一次故障診断装置2による音データとに基づいて、二次診断用音データを作成する(ステップST96)。この二次診断用音データ作成装置7により作成された二次診断用音データは、二次診断用データ判定装置5による指示に従い、二次故障診断装置4に送信される。
【0049】
次いで、二次故障診断装置4は、二次診断用音データ作成装置7による二次診断用音データに基づいて、一次故障診断装置2よりも豊富なハードウェア資源を用いて、より高精度な故障診断を行う(ステップST97)。
【0050】
以上のように、この実施の形態4によれば、エレベータかご22の外部にマイク10,11を取り付けることで、故障診断の対象となる滑車21A〜21Eや巻き上げ機24、調速機25の動作音を収集して故障診断を行うことができ、故障診断の対象となる各機器或いは機器の近傍にマイクを取り付ける必要がなくなるため、故障診断のための機器コストの削減を図ることができる。また、必要なときだけ通信装置3A、通信回路50及び通信装置3Bを経由して二次故障診断装置4に二次診断用音データを通知することで高精度な二次診断結果を得ることができると共に、回線コストの削減を図ることができる。
【0051】
なお、一次故障診断装置2による一次診断の結果に基づいて、二次故障診断装置4に必要な音データのみを送るようにすることも可能である。具体的には、次のように構成することができる。
図10はこの発明の実施の形態4に係るエレベータ故障診断装置の別の動作を示すフローチャートである。なお、図10において、図9に示すエレベータ故障診断装置と同様の動作についてはその説明を簡略化させる。
エレベータかご22が昇降している状態においてエレベータ故障診断装置では、図10に示すように、マイク10,11はエレベータの各機器の動作音を収集し、一次故障診断装置2は音データに基づいてエレベータの各機器の故障の有無を診断し、エレベータの機器に故障有りと診断した場合には、一次診断結果を含むエレベータ動作状況情報を通信装置3A、通信回線50及び通信装置3Bを経由して二次診断用データ判定装置5に送信する(ステップST101〜103)。
【0052】
次いで、二次診断用データ判定装置5は、一次故障診断装置2によるエレベータ動作状況情報に基づいて、故障の重要度を判定し、すぐに保守員を派遣すべき故障なのか、経過観察とする故障なのか、或いは更なる二次診断が必要なのかを判定する(ステップST104)。
【0053】
このステップST104において、二次診断用データ判定装置5は、二次故障診断装置4による二次診断が必要であると判定した場合には、次いで、二次診断が必要な対象または運転状況に絞った音データからなる二次診断用音データを二次故障診断装置4に送る旨を示す信号を通信装置3B、通信回路50及び通信装置3Aを経由して二次診断用音データ作成装置7に出力する。または、二次診断が必要な対象または運転状況に対する音データの再収集・送信を行う旨を示す信号をエレベータ運転制御部6と二次診断用音データ作成装置7に出力する(ステップST105)。
【0054】
次いで、二次診断用音データ作成装置7は、二次診断用データ判定装置5からの指示に従い、二次診断が必要な対象または運転状況に絞った音データからなる二次診断用音データを作成する(ステップST106)。この二次診断用音データ作成装置7により作成された二次診断用音データは、二次診断用データ判定装置5による指示に従い、二次故障診断装置4に送信される。
【0055】
次いで、二次故障診断装置4は、二次診断用音データ作成装置7による二次診断用音データに基づいて、一次故障診断装置2よりも豊富なハードウェア資源を用いて、より高精度な故障診断を行う(ステップST107)。
このようにすることで、同様の効果に加え、回線コストの更なる削減、または、精度の高い二次診断結果を得ることができる。
【0056】
また、この実施の形態4では、マイク10,11をエレベータかご22に取り付けるように構成したが、これに限るものではなく、マイクを、エレベータかご22に接続され同時に昇降路を昇降する機器に取り付けたり、エレベータかご22と同様に昇降路を昇降する釣り合い重り23に取り付けるように構成してもよい。
【0057】
また、この実施の形態4における二次診断用データ判定装置5では、機器が故障の重要度の判定を行うように構成したが、保守員が一次診断結果から二次診断の必要性を判定するように構成してもよい。
【0058】
また、この実施の形態4における二次故障診断装置4では、機器が故障の診断を行うように構成したが、保守員が一次診断に使用した動作音を聞くことで故障の有無や種類等の診断をするように構成してもよい。
【0059】
また、この実施の形態4における二次診断用音データ作成装置7では、二次診断用データ判定装置5からの二次診断用音データの送付指示が無くとも、一次故障診断装置2にて故障と診断して一次診断結果を示す情報を二次故障診断装置4に送信する際に一緒に二次診断用音データを送信するように構成してもよい。なお、この場合には、二次診断用データ判定装置5は不要である。
【符号の説明】
【0060】
1,2 一次故障診断装置(一次診断手段)、3A,3B 通信装置、4 二次故障診断装置(二次診断手段)、5 二次診断用データ判定装置(二次診断実施判定手段)、6 エレベータ運転制御部(エレベータ運転制御手段)、7 二次診断用音データ作成装置(二次診断用音データ作成手段)、10,11 マイク(音声入力手段)、20 主ロープ、21A〜21E 滑車、22 エレベータかご、23 釣り合い重り、24 巻き上げ機、25 調速機、26 調速機ロープ、27 連結部、50 通信回線。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータのかごを昇降させる各機器の故障有無を診断するエレベータ故障診断装置において、
前記かごの外側に取り付けられ、前記各機器の動作音を収集する音声入力手段と、
前記音声入力手段により収集された動作音に基づいて、前記各機器の故障有無を診断する一次診断手段と
を備えたエレベータ故障診断装置。
【請求項2】
前記一次診断手段と通信回線を介して接続され、前記一次診断手段による診断結果及び診断に用いた動作音に基づいて、前記各機器の故障有無を高精度に診断する二次診断手段を備えた
ことを特徴とする請求項1記載のエレベータ故障診断装置。
【請求項3】
前記一次診断手段による診断結果に基づいて、前記二次診断手段に診断させるか否かを判定する二次診断実施判定手段を備えた
ことを特徴とする請求項2記載のエレベータ故障診断装置。
【請求項4】
前記エレベータの動作を制御するエレベータ運転制御手段と、
前記エレベータ運転制御手段によるエレベータ動作と前記一次診断手段による診断に用いた動作音とを関連付けた二次診断用音データを作成する二次診断用音データ作成手段とを備え、
前記二次診断手段は、前記二次診断用音データ作成手段により作成された二次診断用音データに基づいて、前記各機器の故障有無を診断する
ことを特徴とする請求項2または請求項3記載のエレベータ故障診断装置。
【請求項1】
エレベータのかごを昇降させる各機器の故障有無を診断するエレベータ故障診断装置において、
前記かごの外側に取り付けられ、前記各機器の動作音を収集する音声入力手段と、
前記音声入力手段により収集された動作音に基づいて、前記各機器の故障有無を診断する一次診断手段と
を備えたエレベータ故障診断装置。
【請求項2】
前記一次診断手段と通信回線を介して接続され、前記一次診断手段による診断結果及び診断に用いた動作音に基づいて、前記各機器の故障有無を高精度に診断する二次診断手段を備えた
ことを特徴とする請求項1記載のエレベータ故障診断装置。
【請求項3】
前記一次診断手段による診断結果に基づいて、前記二次診断手段に診断させるか否かを判定する二次診断実施判定手段を備えた
ことを特徴とする請求項2記載のエレベータ故障診断装置。
【請求項4】
前記エレベータの動作を制御するエレベータ運転制御手段と、
前記エレベータ運転制御手段によるエレベータ動作と前記一次診断手段による診断に用いた動作音とを関連付けた二次診断用音データを作成する二次診断用音データ作成手段とを備え、
前記二次診断手段は、前記二次診断用音データ作成手段により作成された二次診断用音データに基づいて、前記各機器の故障有無を診断する
ことを特徴とする請求項2または請求項3記載のエレベータ故障診断装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−178544(P2011−178544A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46586(P2010−46586)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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